IPEの果樹園2011

今週のReview

8/29-9/3

 

*****************************

ケインズ派の攻防 ・・・市場の不安 ・・・若者の暴徒 ・・・リビアの最終局面 ・・・ユーロ・ボンドの攻防 ・・・バイデン、オーストラリア、人民元 ・・・新興市場との自由貿易

 [長いReview]

******************************

主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l         ケインズ派の攻防

FP AUGUST 18, 2011

Life After Debt

BY JAMES MACDONALD

この数週間、これまで数カ月にわたって煮えたぎってきた公的債務危機が沸騰した。ギリシャやアイルランドなら、封じ込めることができる、と思われた。しかし、アメリカ議会は世界最大の債務者がデフォルトする可能性を示し、ユーロ圏で第3位、世界でも第4位の経済規模を持つイタリアの債務危機が迫った。金利は逆に動いたが、どちらも同じ、財政赤字の削減へ向かった。

2年前とは大きく違う。2008年の金融危機の後は、J.M.ケインズの思想が最高の敬意を払われた。世界を経済崩壊に導かないために、政府は財政赤字を増やして支出すること。その結果、今の世界は中途半端な救済に終わった。失業者は危機前よりも多いし、経済は悪化しているが、ケインズの思想は支持を失った。ケインジアンの経済学者や政治家は、緊縮策を求める反対派を、クリスマスの七面鳥が投票するようなものだ、という。しかし、ケインジアンは後退した。

ケインズ派にとって、歴史は明白に自分たちを支持している。1929年の株価暴落後、間違った財政緊縮策の結果、大恐慌が起きた。政府は1932年に財政赤字による刺激を与え、1933年にはドルを切り下げた。しかし回復は、失業者が多いまま、1937年に緊縮策に転じたことで失敗に終わる。1938年、激しい、不必要な不況が襲い、完全雇用は戦争による支出で大規模に需要が追加されたときに実現した。

景気回復が確実に進まないうちに財政再建を始めることは、1930年代と同じ、二番底の不況を西側世界が経験する過ちを犯す。

しかし、緊縮策を主張する者たちは二つの戦後の歴史に目を向ける。アメリカもイギリスも、二度の世界大戦後は公的債務が大きく増えた。戦争の最後の年、財政赤字は平均でGDP25%であった。しかし、戦後2年で、両国とも赤字を減らすどころか、黒字にした。支出削減を含めて、大幅な緊縮財政が採られたのだ。

しかも、4つのケース(米英の二つの戦後)のうち3つで、最初は経済が縮小したけれど、その後、長期の持続的な成長と低失業が実現した。(そうでなかったのは第一次世界大戦後のイギリスであり、今、ユーロ圏の周辺国で求められている「内的切下げ」を採用したからだ。)

この歴史は、金融緩和でデフレを回避したまま、長期の苦痛なしに急激な財政再建が可能だ、と示しているように見える。この時期、米英の経済規模は世界経済の半分近くを占め、輸出による刺激を期待できなかったから、さらに大きな驚きだ。

しかし、二つの理由で、2011年に1919年や1945年の財政再建を実行することはできない。第一に、政治的な理由だ。戦時経済を解体する必要については、国民の間に広い合意があった。しかし、1945年以後、財政赤字を増やしたのは福祉国家である。戦争国家と違って、福祉国家は深く根を張り、多くの利益関係者がいる。支出削減をどうするか、そもそも削減するべきか、ほとんど合意がない。

第二に、経済的な理由だ。公的債務は戦時下に急速に増えたが、民間債務は減少した。第二次世界大戦中、民間債務はGDP130%から65%(20世紀の最低水準)まで減った。公的債務は60%から125%まで増えた。民間債務がそれほど少なければ、軍需から民需に転換した工業部門に十分な消費財への需要を示したことは当然だ。

しかし、今日、民間債務は膨大で、財政緊縮に代わって需要をもたらすことはない。2007年、アメリカの民間債務はGDP300%もある。大恐慌や1950年代から80年代までの23倍である。

ケインジアンの処方箋は、債務圧縮のプロセスが終わって消費が再開されるまで、政府が財政赤字を増やして経済を支える、というものだ。それほど公的債務が増やせるなら良いが、債務の水準は安全か? 市場は受け入れるのか? 民間債務の水準は、まだ270%で、ほとんど減っていない。どこまで下がれば安定するのか? 誰にもわからない。前例のない実験が続く。

この実験には3つの要素がある。第一に、ケインズ経済学。かつて、公的債務は二つの理由で受け入れられた。一つはインフラ投資、特に鉄道だ。もう一つは、戦争。しかし、ケインズ経済学は、公的債務を純粋な消費にも認める、全く新しい理由を示した。つまり、購買力を引き出すために、内部収支を変えるのだ、と。この考え方は1970年代のスタグフレーションまで、アメリカ以外の西側で広く採用された。

第二の要素は、国民に対する長期の給付約束だ。戦後の債務は公的な年金制度によるものだ。それはa pay-as-you-goで支払われ、のちの世代の債務となった。

第三に、1980年代から、民間部門の債務が膨張したことだ。かつては信用が利用できなかった人々が、社会正義や、経済的繁栄を理由に、借入ができるようになった。また、数理的な金融商品を開発する新世代の銀行家たちが、リスクを分散するデリバティブを開発した。さらに、賢明な、新世代の中央銀行家たちは1930年代のデフレや1970年代のインフレを避け、経済を安定的に低水準のインフレと金利水準に導いた。

2000年に入って少し経つまで、すべての問題の解決策は借入であった。しかし、もうそうではない。市場も、有権者も、これ以上高い債務水準を受け入れない。

ユーロ危機で衝撃的な点は、市場が公的債務の理由を区別しなくなったことだ。ギリシャも、アイルランドも、イタリアも、その理由は全く異なるが、市場は債務の水準を嫌っている。ルールが完全に変わったのだ。

ケインズは、政府がいつでも借り入れることはできる、と考えた。市場がそれを否定した。市場が政府にそれを強制できない場合でも、有権者はそれを強制する。各地の議会で、ケインズ派は財政均衡主義のタカ派に圧倒されている。

しかし、債券市場は、ケインズ主義を破壊して何をしたいのか? 将来が見えない。債務の償却やインフレーションで、市場が受け入れる水準まで債務は減るのだろう。借入は、答えにならない。

Project Syndicate 2011-08-19

The Keynes-Hayek Rematch

Robert Skidelsky

ハイエクFriedrich von Hayek1992年に、93歳で亡くなった。論敵であるケインズより、およそ半世紀も長生きして、たとえば1980年代、サッチャー政権のときに、ケインズ経済学の権威失墜に成功した。ハイエクは中央計画システムが非効率であることを説き、ケインズは市場システムには安定化が必要だ、と説いた。

完全な情報があればシステム危機は起きない、という「合理的期待」が2007-08年の危機で信用されなくなり、両者の対立が復活した。

ハイエクにとっては、過剰な信用供給、人為的な低金利で起きた過剰投資が、貯蓄に見合う生産的な投資ではないと分かったときに危機が起きる。現実の貯蓄に合わせて投資を破壊するべきだ。人工的なブームは破壊に終わり、景気回復は破産処理の後に資源配分が改善され、消費を減らして貯蓄を増やすことから生じる。

ケインズにとっては、逆に、貯蓄に対して投資が過小であることが問題である。消費や総需要が完全雇用をもたらす投資を実現するには不十分だ。利潤は期待できない。

二人の議論は、過剰な融資(債務)の働きを重視する点で観ているが、その他は異なる。ハイエクは過剰投資の破壊と貯蓄を求めるが、ケインズは貯蓄を減らし、消費を増やして利潤期待を高める。ハイエクは一層の緊縮を、ケインズは一層の支出を求めた。

1930年代の論争で、ハイエクがケインズに負けた理由は明白だ。過剰投資を破壊する政策は政治的な破滅だった。ドイツでヒトラーが権力を握ったように。ケインズが指摘したように、家計、企業、政府、皆が同時に貯蓄を増やすなら、それは誰も貯蓄できないほど貧しくなるまで不況が続くことになる。

狂信的なハイエク主義者のほかは、2009年のグローバルな協調的刺激策が大恐慌を防いだと認めている。しかし、民間部門の支出はまだ回復していないのに、ますます財政再建が求められるようになった。オバマは、フランクリン・ルーズベルト大統領の姿勢を引き継げるか? それが問題だ。

ケインジアンはマクロ管理の手段を強化することを求め、ハイエクの支持者は、いまさら中央銀行を廃止しても役に立たないから、何もしない。ハイエクは1930年代に敗北したし、今もまた敗北すべきだ。

WSJ AUGUST 24, 2011

Keynesian Economics vs. Regular Economics

By ROBERT J. BARRO

ケインズ経済学の主張に根拠はない。なぜか? ・・・要するに、ケインズ経済学は総需要に対する刺激や乗数など、不完全な反応を部分的に議論しているからだ。本当の経済学はさらに考える。すべては市場の誘因となって、新しい均衡に至るだろう。そして、ウルトラ・フリー・ランチのケインズ経済学には、何も起こせない。


l         市場の不安

FP AUGUST 18, 2011

Come Together

BY DAVID BOSCO

NYT August 18, 2011

The Wrong Idea

木曜日、ウォール街の株価は急落した。ユーロ危機とアメリカの景気不安に投資家は怯えている。

しかし、大西洋の両岸で指導者たちは緊縮財政を掲げ、赤字を削っている。それは、雇用や消費、成長を支えているのに。

また、もう一つの類似点は、指導者たちが政治的に困難な、経済的には必要な選択を、拒んでいることだ。メルケル首相とサルコジ大統領は、ユーロ・ボンドの発行と救済基金増額を決断しなかった。むしろ緊縮策をヨーロッパ中に輸出し、成長を止めつつある。ECBがいつまで融資を続けるのかわからない。

選挙を前にすれば、自動的に(増税を避け)緊縮が叫ばれる。

guardian.co.uk, Friday 19 August 2011

What a financial tailspin may mean for you and me

Ann Pettifor

FT August 19, 2011

West shows worrying signs of ‘Japanisation’

By Richard Milne

西側は日本のようになるのか?

日本で金利が2%を切ってから、それを超えることはない。アメリカでも金利は2%を切るだろう。日本化‘Japanisation’ を主張する者は、下位深暴落後の債務水準や、政治的な対応の悪さ、を指摘する。

日本の衰退にはいくつかの特徴がある。Andrew Milligan によれば、8つ(stock market and property crashes; zombie banks; deflation; zero interest rates; political stalemate; poor demographics; and a high debt-to-GDP ratio)だ。すべてではないが、似通ってきている。

しかし、Jim Reidは当時と今の違いを指摘する。日本が不況を経験した時期には世界経済が好調だった。今は違う。他方、今の西側の政策担当者たちは、日本の模索よりもはるかに積極的に、量的緩和など、先制攻撃に出ている。

日本は20年間も低成長、デフレ、超低金利を続け、投資家は株式から国債に移ってしまった。その間、日本国債の格付けは下がった。欧米の新しい金融規制は、「日本化」を加速するかもしれない。

FT August 19, 2011

Fed needs to bring out its big guns at Jackson Hole

By Dan McCrum

NYT August 21, 2011

Homeowners Need Help

guardian.co.uk, Monday 22 August 2011

As the dream of economic growth dies, a new plan awaits testing

George Monbiot

SPIEGEL ONLINE 08/22/2011

Out of Control

The Destructive Power of the Financial Markets

「オオカミの群れだ」と言われ、ハリケーンの後の「掠奪者」と呼ばれる。

なぜ金融市場はこれほど破壊的になったのか? 政治を支配し、複雑で、結び付いた、見えない金融関係を張り巡らせる。

FT August 23, 2011

Why western ways are still winning

By Martin Sandbu

guardian.co.uk, Wednesday 24 August 2011

Profit on Wall Street, recession on Main Street

Sally Kohn

WP Thursday, August 25

Inflation is not the answer

By Robert J. Samuelson

経済が高インフレーションに向かう、という不安がある。今日、経済の中心問題は自信がないことである。

住宅価格が上がるとか、金融政策のせいで実質マイナス金利になっているから、消費が刺激される。ロゴフやクルーグマンはある程度のインフレを求めている。

しかし、インフレは答にならない。経済の基本問題は信頼である。

SPIEGEL ONLINE 08/25/2011

Financial Turbulence

Market Chaos 'Potentially Dangerous for Humanity'

WP August 25

Mr. Bernanke can’t do much to assuage the economy

FT August 25, 2011

Economics: Rituals of rigour

By John Kay

FT August 25, 2011

A parable of gold bulls and bubble dynamics

By Peter Tasker

FT August 25, 2011

Bernanke must not push QE3 at Jackson Hole

By Mohamed El-Erian

QE3を選択するには、特に慎重であるように、バーナンキに求める。

量的緩和QE2は、連銀のバランス・シートを使って物価や資産価格を引き上げ、人々が豊かになって消費を増やすような気分になることを狙った。

2008-09年のQE1は成功だった。しかし、QE2はそれと性格、目的も違う。QE1は金融市場の機能が失われたことに対して、正常化を目指した。

バーナンキは知ったわけだが、QE2には有益な面だけでなく、コストとリスクが伴った。「良い」インフレ(株式や社債の価格上昇)を起こしたが、副次的な損害(商品価格の上昇から「悪い」インフレにつながる)を生じ、意図しない結果(技術的な市場の分離、政治的な攻撃を受けやすくなった)をもたらした。

インフレは高まっており、失業率は高い。世界経済も悪化している。連銀にはQE3の「ショック療法」を採用することに抵抗感が欠けているだろう。

しかし、慎重でなければならない。

Project Syndicate 2011-08-25

One Number Says it All

Stephen S. Roach

0.2%だ。この数字がすべてを示している。過去14四半期の消費の伸びを年率にすれば、たったの0.2%しか伸びていない。過去40年間、基本的なデータを調べてきたが、このような数字を観たことは一度もない。クレジット・バブルと土地バブルとが終わって、バランス・シートを回復するために支出から貯蓄へと重心が逆転したのだ。

1.消費は今でもGDP71%を占めている。

2.成長は低くなり、財政赤字に影響を及ぼす。

3.アメリカの減速を補う者は誰もいない。ヨーロッパ、日本、中国。

財政刺激策と金融緩和は恐慌の回避に役立ったが、バランス・シート不況は解消できない。消費者の債務や負担を減らす政策、金融の健全さを回復する政策、雇用や所得を維持する政策、を採るべきだ。


l         若者の暴徒

guardian.co.uk, Friday 19 August 2011

How sad to live in a society that won't invest in its young

Polly Toynbee

guardian.co.uk, Saturday 20 August 2011

Blaming a moral decline for the riots makes good headlines but bad policy

Tony Blair

今回の暴動に対する間違った分析、間違った診断、間違った処方箋を出してはいけない。

Tony Blairは、警官たちが厳しい対応を最初にとれば、暴動は鎮圧できた、と考えます。さまざまな法律や非難を考慮して、彼らの対応は遅かった。暴徒に対しては厳しい対応を取る、と明確な方針を示し、政治家たちが100%の支持を与えなければならない。

若者が社会から切り離されている、社会の主流から排除されている、道徳規範を失った行動が広がっている、といった非難を、Tony Blairは間違いであると否定します。社会全体の失敗の兆候ではなく、非常に特殊な問題であり、一部の若者たちのギャング文化が原因だ、と主張します。

イギリス社会は一般的な道徳の荒廃にある、という主張を批判し、アフリカの支援で交流した若者たちの多くが尊敬できる、責任感のある、激務を耐えられる者であった、と称賛します。訪れた「荒廃地域」でも、コミュニティーや指導者たちは健全であり、一部の若者たちがギャング文化に染まっているだけだった。それは彼らの問題であるとともに、家族の問題である。

Tony Blairが首相時代に得た結論は、若者たちを犯罪から切り離す厳格な法律の仕組みを創ること、そして、家族の問題にまで踏み込んでも、若者たちを幼い時から守ること。

若者たちを犯罪者のように扱うことは間違っている。


l         リビアの最終局面

WP August 19

An uncertain Arab transition

By David Ignatius

民主主義と自由の誕生に関わる「アラブの春」“Arab spring”とは、まだ、言えない。たとえば、シリアだ。オバマ大統領はアサドの辞任を求めた。戦車の前に多くの民衆は倒れるが、民主化を組織する指導者はいない。シリアはすでに地域の大国による代理戦争の場になっている。イラン、会う自アラビア、イスラエル、アメリカ。

アラブの政権移行“Arab transition”について注意すべき点とは何か?

1.経済改革はむしろ遅れるだろう。2.抵抗運動の参加者は民主主義に失望するだろう。彼らが求めた雇用、自由(秘密警察からの自由)、尊厳、はすぐには手に入らない。3.神権政治よりも、民衆の寛容さを求めることになる。

オバマは、歴史の正しい側に立つ、と言った。しかし、歴史は必ずしも進む方向を定めていない。

WP 08/21/2011

Gaddafi appears to be on his way out

By David Ignatius

Global Times | August 22, 2011

The battle for Tripoli begins, but what happens next?

FP Monday, August 22, 2011

Five Reasons it is Premature to Declare Mission Accomplished for Obama's Libya Strategy

Posted By Peter Feaver

NATO軍が介入の仕方を変えて事態は転換した。長期化したことで協力体制が崩れる危険もあった。これから何が起きるかで、リビア介入の意味が変わる。

FP Monday, August 22, 2011

This is not the endgame in Libya: Conclusions and implications of the fall of Qaddafi

Posted By David Rothkopf

アラブの春が生き延びた。オバマは前面に立たず、英仏の決断を支えた。その姿勢はアメリカの強さと賢明さを示した。

FP Monday, August 22, 2011

Was Libya worth it?

Posted By Blake Hounshell

FP Monday, August 22, 2011

Avoiding a 'Mission Accomplished' moment in Libya

Posted By Stephen M. Walt

政権が最終的に崩壊するまで、どれくらい多くの人が死ぬか。それが唯一の重大問題となった。幸い、トリポリにおける大規模な戦闘はないようだ。

私は最初からこの軍事介入に懐疑的だった。それは介入の勝利を疑ったからではない。コストや介入期間が拡大するとしても、勝利は明らかだった。問題は、介入の評価がカダフィ退任後に、新体制がどのようにできるか、それによって決まることだ。

サルコジ大統領は、軍事的勝利によって"Mission Accomplished" momentを繰り返す恐れがある。オバマは、人道的な介入に好意的な印象を残し、今後、R2P"Responsibility to Protect")による介入を求められるだろう。他方で、リビア情勢が悪化したときの責任を求められる。

完全な世界はない。マンデラのような指導者が現れることを願う。だから言っただろう、と後で批判する者は多い。

リビアには機能する政府機関がなく、しかも、石油の富は欲望を刺激する。イラクで観たように、独裁者の追放は簡単な局面でしかない。

guardian.co.uk, Monday 22 August 2011

Reconciliation is crucial to rebuilding Libya

Jonathan Steele

guardian.co.uk, Monday 22 August 2011

How would Libya's next government take shape?

Jane Kinninmont

guardian.co.uk, Monday 22 August 2011

Libya: a hard road ahead

解放の歴史は様々だが、一つだけ鉄の法則がある。すべての解放は、大き過ぎる期待を破壊することだ。

最初の問題は、反政府派が統一を保つことだ。内戦は避けねばならない。しかも、それは非常に難しい。第二の問題は、経済だ。経済を復興させて、カダフィが皮肉を言ったように、トリポリのエアコンが機能しなければ、支持を失う。

石油の富をどう使うか? それは社会の分断化をもたらしている。石油ビジネスと観光以外は、外国人労働者が働いていた国だ。リビアは政治的な弾圧されていたとともに、経済的には甘やかされてきた。政治改革と経済改革が必要だ。

FT August 22, 2011

Gaddafi’s fall will renew the Arab spring

By Philip Zelikow

FT August 22, 2011

Libya now needs boots on the ground

By Richard Haass

ここからが最も難しい。

カダフィとその息子、政府の閣僚は拘束しなければならない。強硬派は制圧し、武装解除する。しかし、体制側であった者も新政権に協力することを受け入れるべきだ。新体制は法によって支配されており、気まぐれではない、と示す必要がある。

反政府軍は統一を保ち、治安を維持している。略奪は起きていない。もしカダフィ派が武力行使をあきらめ、内紛が回避され、住民が平静を維持できれば、軍と警察の顧問を派遣すればよい。

政府が国際的な軍の駐留なしに機能するとは思えない。アメリカがそれを負担することは費用と危険をともなうが、リビア政府が領土の支配を失うなら、それは一層の費用と危険をもたらすだろう。機能する政府を支持する必要がある。その政府の下で、電機、食料、水、などの基本的なサービスが供給され、人々の仕事や子供の学校が始められる。

国際支援や石油の富もあるが、スピードこそが重要だ。

FT August 22, 2011

Page turns on Gaddafi

by Roula Khalaf

FP AUGUST 22, 2011

Imagining Libya, a Decade from Now

BY DANIEL SERWER

この先10年で最善の未来を予想すればどうなるか?

混沌、独裁、分裂。リビアが避けなければならない最悪の未来だ。非民主的な体制は資源をめぐって内戦を始める。部族、エスニック、地域によって、対立が深まる。

政権移行国民会議(TNC)が憲法により自由な民主主義体制の方向を明示することだ。イスラム教は国境とし、法律の源泉ともなる。

国内の和解を促す制度が必要だ。カダフィ体制に協力した人々も、不当な差別や報復を受けないことを明確にする。統一された、包括的な、法によって支配されるリビアが生まれる。

FP AUGUST 22, 2011

This Week at War: The Libya Model

BY ROBERT HADDICK

リビアの成功をNATOは他国にも拡大するのか? 

guardian.co.uk, Tuesday 23 August 2011

Foreign policy: intervention after Libya

guardian.co.uk, Tuesday 23 August 2011

The end of Gaddafi is welcome. But it does not justify the means

Simon Jenkins

guardian.co.uk, Tuesday 23 August 2011

Libya: can the rebels rule?

Steve Negus for the Arabist, part of the Guardian Comment Network

リビアの新体制が安定する兆候が見られる。

LAT August 23, 2011

The Libya lesson

WP August 23

Helping Libya become a stable, independent nation

By Daniel Serwer

FT August 23, 2011

Libyan lessons

Project Syndicate 2011-08-23

Beyond NATO’s Libyan Redemption

Christopher Hill

FP AUGUST 23, 2011

Don't Call It a Comeback

BY KURT VOLKER

Foreign Affairs, August 23, 2011

Libyan Nation Building After Qaddafi

James Dobbins and Frederic Wehrey

ボスニア、コソボ、イラク、アフガニスタン。アメリカは体制崩壊後の安定化と再建に関わってきた。リビアに秩序が構築される過程に西側諸国は参加しなければならないが、その規模、富、同質性、地理、政治的成熟度、を他のケースと比較しておくことが有益だ。

国家建設には多くの資源が必要である。それを決める第一の要因は、規模だ。ボスニア、コソボより大きい(23倍)が、イラク、アフガニスタンより小さい。比較的豊かであり、言葉や宗教などの同質性もある。他のケースは(イラク以外)内陸国であり、周辺からの介入が安定化や再建を妨げたが、リビアはその心配が少ない。

しかし、不利な条件もある。ファシスト政権のイタリア植民地から独裁体制に変わり、民主主義の経験はほとんどない。西側の軍隊が基地を置かず、再建に責任を認める国際機関がない。

西側にとって、リビアでは空爆による介入しか行わず、軍事的には容易な勝利であった。むしろ平和構築こそが難しい。その場合、治安維持が最も重要だ。反政府勢力が新しい政権としての正当性を得るには、略奪、復讐、軍閥をなくすことで民衆の信頼を得なければならない。しかし、紛争地においては、兵士が多すぎる一方で、警官は少ない。

リビアの安定と繁栄から最も大きな利益を受けるのは、EUとアラブ連盟だ。彼らが再建を指導するべきだ。国連が求めるなら、平和維持軍としてアメリカも協力しなければならない。

政治的代表制を発展させるためにも、明確な意図で経済援助を急ぐべきだ。解放が、急速に、日常生活の不安と経済的な困窮に変わっていく。リビアの民衆はユーフォリアを抜け出し、今後の着実な改革に目を向けるときだ。他のケースから見て、その条件は好ましい。しかし、長く、厳しい過程である。

LAT August 24, 2011

Libya's problems are far from over

By Max Boot

guardian.co.uk, Wednesday 24 August 2011

Libya's imperial hijacking is a threat to the Arab revolution

Seumas Milne

リビア民衆の勝利は、NATO軍の帝国的な介入による勝利へと変わった。

カダフィとその部族をどう思うかは別にして、民衆は軍事介入を石油の富を求めたものと思うだろう。欧米諸国は、イラクとアフガニスタンの失敗から学んで、地上軍を送らず、国連の支持を得て、事前の計画を立てた。

しかし、反政府勢力による国民会議TNCは、CIAMI5の支援を受けた政権を作り、NATO国家になって行く。イスラム原理主義者はもちろん、国民もそれを受け入れる用意はない。

FT August 24, 2011

Why Libya sceptics were proved badly wrong

By Anne-Marie Slaughter

思考実験をしてみよう。

国連は3月、リビアにおける軍事力の行使を認めなかった、とする。NATOは何もしない。カダフィ大佐はベンガジを制圧する。アメリカはそれを傍観する。リビアの反政府勢力は、散発的な蜂起を繰り返し、やがて壊滅される。イエメンやシリアの体制はそれに注目する。一層の激しい弾圧で、反政府運動に対抗する。西側は再び、中東における野蛮さと圧政が勝利するのを許す。

多くの賢明な人々がカダフィを阻止する介入に強く反対した。今週、その一人が、すなわち私の友人で同僚でもあるRichard Haasが少し修正を加えた。リビアはこれから一層厳しい局面に入るだろう、と。

我々が学ぶべき最初の教訓は、懐疑論者の反対にもかかわらず、これで明らかになった。すなわち、アメリカと西側の戦略的な利益は、われわれが掲げるのと同じ、民主主義や人権という価値を求めて闘う社会運動を支援することだ。中東で暮らす人口の60%がこれらを支持し、政府に実現を求めている。

また、住民たちが介入をどう見るか、という点で、彼らが望む支援を与えるとき、すなわち、東チモール、ボスニア=ヘルツェゴビナ、コソボ、リビアは、介入を敵と見なしたイラクやアフガニスタンと違う、ということだ。

アメリカは後ろから操った、というのは間違いだ。多極化した世界では、いかなる国も、単独で、問題を解決することはできない。効果的な指導力は中心から来なければならないが、各国は他国に呼び掛け、協力し、介入の条件や計画を定める。アメリカ外交は、地域の大国が行動するように促し、その計画への参加や退出を決定できる。

我々は、国家だけでなく、社会運動に注目しなければならない。さまざまな社会勢力が西側やアラブ連盟を動かしたのであり、シリアのBashar al-Assadに反対し、バーレーンの弾圧にも反対した。イスラエルやインドでも、その国内政治を変えている。

将来について、移行期の責任はアメリカよりも西側が担うだろう。リビアの計画はイラクの戦闘終了時よりはるかに進んでいる。TNCは、権利、自由、統治に関する23条の憲法草案を創った。

部族の内乱、イスラム原理主義の反政府軍、領土の分割、独裁者の交代、などを警告する者もいる。しかし、軍事介入に反対した者は、カダフィ大佐がまだ何年も野蛮な支配を続けることをましな選択と見なすのか? それはカダフィの死後、より深い混乱と悪化をもたらすだろう。

LAT August 25, 2011

After Libya, the question: To protect or depose?

By Philippe Bolopion

guardian.co.uk, Thursday 25 August 2011

Libya: a new breed of military intervention

Richard Norton-Taylor


l         ユーロ・ボンドの攻防

Project Syndicate 2011-08-19

Europe’s Financial Wasteland

Howard Davies

詩人のT.S. Eliot4月を残酷な月と呼んだ。もし彼が投資家だったら、8月をそう呼んだだろう。

ユーロ危機は収まらない。一時的な債券返済の集団的保証が必要だろう。銀行の資本は増強されず、ドイツの有権者は説得できない。

WP August 20

The real grand bargain, coming undone

By Alexander Keyssar

FT August 21, 2011

Trichet’s legacy: keeping the show on the road

By Ralph Atkins

FT August 22, 2011

Misdiagnosing the eurozone’s banks

SPIEGEL ONLINE 08/23/2011

Debating the Common Currency

'Euro Bonds Would Destroy the Euro'

ユーロ・ボンド発行について、反対するHans-Werner Sinnと、支持するHenrik Enderleinへのインタビューです。

ユーロ危機の終結にユーロ債は必要か?  Enderleinは、ユーロ債がユーロ圏の崩壊を防ぐ、と言い、Sinnは逆に、ユーロ債がユーロ圏を破壊する、と主張する。なぜなら、経済状態を無視して同じ金利を支払うのであれば、国家の債務依存は歯止めがないから。

Enderleinは、もし経済状態が上手く機能している時なら、Sinnの言う通りだが、今は危機だ、と反論する。危機を防ぐ方法として、ユーロ債による資金調達が必要だ。ギリシャなどの債務と交換に、債権者に安全な債券を渡す。その交換は50%で良い。それは債権者の損失であるが、ECBや市場での担保にもなる安全な資産が得られる。

Sinnは、1995年に比べてイタリアの債券は金利差を縮小している、と指摘する。今回、市場が要求した高金利を恐れてイタリアは今まで無視してきた「安定と成長のための合意」が求める財政再建を決めた。金利差が減れば赤字削減の圧力もなくなる。それは社会主義だ、と非難する。

Enderleinは、1995年には為替レートの切り下げも金利の決定も自由だった、と指摘する。財政再建のためには成長が必要であり、国内の緊縮政策に応じて、輸出が伸びる必要がある。ドイツは緊縮策を求めてユーロ圏を不況に追いやり、ドイツ自身も急速に景気が悪化している。

Sinnは、過重債務国は現実を直視しなければならない、という。他人からの融資で人工的なブームを続けることはできない。これに対してEnderleinは、ドイツも同じだ、という。ドイツは他国のブームによる輸出に頼り過ぎている、と。

Sinnは、ユーロ圏内でドイツから周辺のブームに資本が移動したことを認めつつも、だからドイツは競争力を高める厳しい改革を実行した、と考える。今や債務によるブームが終わって資本がドイツに帰るはずだが、それをユーロ債が吸収してしまい、南部のインフレ的なブームに使うのでは、ユーロ圏の停滞をもたらす。

ユーロ債によるドイツの負担は? Sinnによれば300億〜470億ユーロだ。Enderleinは、ユーロ圏解体のコストを考えていない、と批判する。しかも、ユーロ債は世界中で保有されるから、危機を解消できれば金利を下げることもできる、と。Sinnは、ユーロ債をユーロ圏の再建と見なすのは間違いだ、という。ユーロ債は赤字諸国の財政破綻を誘発し、ユーロ圏の解体をもたらす。

Enderleinは、債務を共有しないでユーロ債を活用する方法として、各国はGDP60%までユーロ債を発行できる、という条件を付ける。それを超える債券発行は高い金利を求められ、それゆえ教育的な効果を持つ、と。Sinnは、それは紙の上の約束でしかない、と批判する。どこかが上限に達すれば、その引き上げを求めるだろう。

Enderleinは、だからヨーロッパ財務大臣が必要だ、と応える。その大臣だけが、債券発行の上限と返済の条件を決める。過重債務国は、主権の一部を譲渡する、という代価を支払う。

ドイツは何を支払うのか? Sinnは、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアの債務合計は、東ドイツの統一コストの2倍以上だ、と指摘する。

Enderleinは、Sinnが守ろうとしているユーロとは、ドイツ人に負担をかけないユーロでしかない、と批判する。それでユーロが救えるのか?

ヨーロッパ統合に反対か? Sinnは、憲法によって一人ひとりの発言が平等に評価されるなら大賛成だ。ドイツは代表が少なすぎる。Enderleinは、ドイツは重要な決定に拒否権を持っている。

では、旧通貨に戻るとしたら? ドラクマは実現可能か? Sinnは、このままギリシャがワイマール共和国のように内戦になる危険を思えば、20%〜30%の通貨価値切り下げが必要だ。ドラクマ再生に賛成する。Enderleinは、ドラクマになればユーロ建の債務は支払えなくなる。銀行システムも崩壊する。ギリシャの債務を減らし、ユーロ債を発行し、財政に厳しい条件を課すべきだ。つまり、ドラクマ再生に反対。

Sinnは、切下げによって成長が回復する、という。しかしEnderleinは、それこそ、アメリカ政府がリーマン・ブラザーズを倒産させたときの説明だ、と批判する。ユーロ圏からの離脱、ドラクマ再建をギリシャ議会が議論するなら、一気に資本流出が始まって崩壊するしかない、と。

しかし、Sinnは警告する。ドイツはすでに4億ユーロの負債を引き受けた。さらに31000億ユーロを負担するのか? それこそドイツの政治システムを破壊する危険がある。そのリスクを忘れないように、と。

SPIEGEL ONLINE 08/23/2011

Resentment in the North

Rich EU Members Lose Patience with the 'Olive Zone'

SPIEGEL ONLINE 08/24/2011

Facing the Crisis

Time to Get Angry, Europe

An Essay by Ulrich Beck

ヘーゲル的な未来か? カール・シュミットの描く未来か? ヨーロッパの怒りは何をもたらすか?

Project Syndicate 2011-08-24

Bankers without Borders

Jan Schildbach

Project Syndicate 2011-08-25

The Trouble with Eurobonds

Hans-Werner Sinn


l         バイデン、オーストラリア、人民元

(chinadaily.com.cn) 2011-08-18

'Made in China' threat not so big after all

Global Times | August 20, 2011

Could Soviet collapse have been avoided?

FT August 21, 2011

New role for HK

WSJ AUGUST 21, 2011

A South China Sea Charade

By BARRY WAIN

WSJ AUGUST 21, 2011

A Road to Smarter Infrastructure in Asia

By CURTIS S. CHIN AND JOHN A. DONALDSON

上海万博。三峡ダム。中国のインフラ投資は世界の称賛と羨望を集めてきた。しかし、どこまで続けるのか? これ以上、スーパー・ハイウェイや巨大ダムを作るより、地方の灌漑設備に投資するべきだ。同じ問題はアジア中に見られる。

正しいインフラ投資は、貧しい村を助け、より多くの者の暮らしを改善する。

Global Times | August 22, 2011

Biden's visit serves more than petty sniping

SPIEGEL ONLINE 08/22/2011

Interview with China's Vice Minister of Foreign Affairs

'The West Has Become Very Conceited'

(China Daily) 2011-08-22

Trust between neighbors

(China Daily) 2011-08-22

Ties with ASEAN advance

By Chu Hao

FT August 22, 2011

China’s challenge: drive growth without inflation

By Jing Ulrich

WSJ AUGUST 23, 2011

Taking Beijing to Hong Kong

 (chinadaily.com.cn) 2011-08-23

South China Sea guidelines just the first step

By Ren Yuanzhe

Project Syndicate 2011-08-23

China’s New Currency Policy

Martin Feldstein

2008-09年の金融危機により止まっていた人民銀為替レートのドルに対する増価が再開され、早まるかもしれない。その理由は二つある。外貨準備の価値が失われるのを防ぐこと。国内のインフレを抑制すること。中国自身が国内消費に成長の基盤を観るようになったから、この転換は重要だ。

FP Tuesday, August 23, 2011

What if Japan really is No. 1?

Posted By Clyde Prestowitz

1979年にEzra Vogelが唱えたJapan as Number Oneと、現在の円高をもたらしている投資家たちの関心を集めるJapan as Number Oneとを比較する。

FP Tuesday, August 23, 2011

The New Epicenter of China's Discontent

BY CHRISTINA LARSON

FT August 24, 2011

Australia: Derailment danger

By Peter Smith

中国の需要はオーストラリアの鉄鋼鉱山所有者Gina Rinehartを世界最大の資産家、カルロス・スリム、ビル・ゲイツに近付けた。

しかし、この猛スピードの成長は、商品価格上昇の代理商品として世界の投資家が購入するオーストラリア・ドルとともに、非鉱山部門に苦しい再編を強いているし、また、ブームの「闇の側面」についての論争を喚起している。終わりのないゴールド・ラッシュだ、というユーフォリアとは別に、ブームが将来世代への呪いとなるだろう。

オランダ病は、通貨価値の急速な増大が輸出部門に希少資源を奪われた国内経済の破綻をもたらす現象であるし、「資源の呪い」は民主的な政治体制の無い国で資源をめぐる内戦や独裁体制が国民を苦しめる現象だ。オーストラリア経済は一体性を失い、パッチワークのように地域ごとに異なった状態を示し、製造業(その雇用)の生産性や技術革新、競争力は失われていく。鉱山の利益に課税する動きが膨大な資金力を持つ利益集団の圧力やキャンペーンで破壊されたことは、政治システムの歪みを示すだろう。

そして、結局、余りにも中国など、外部の受容に依存したブームは、その後退局面で激しい痛みを吸収できなくなる。

Global Times, August 24, 2011

'Lost decade' avoidable danger for Chinese economy

By Xu Kangning

日本の1990年代を指す「失われた10年」は、すでに20年に及ぼうとしている。他方で、中国が日本の「失われた10年」に向かっているという予告をするエコノミストがいる。有名なルービニも中国経済のハード・ランディングを予想している。中国も激しい不動産バブルに冒されているから、という理由で。

しかし、バブルは存在しているが、「失われた10年」にはならない。

日本のバブル崩壊にはアメリカが関与している。アメリカはプラザ合意で急激な円高を強いた。また、中国経済の成長に関わる輸出部門の重要性は過大評価されている。

中国企業の研究開発力もゆっくりと改善している。過剰投資や地方政府の債務問題はすでに政策によって改善されつつあり、長期の繁栄を損なうものではない。

WSJ AUGUST 24, 2011

Watch Out for China's Air Force

By MICHAEL AUSLIN

WSJ AUGUST 25, 2011

Hunting Uighurs Across Asia

 (China Daily) 2011-08-25

Dilemma of yuan revaluation

人民元の増価は、アメリカの量的緩和政策QE3による影響を受ける。危機以来、中国はアメリカ政府に責任を果たし、他の諸国に影響を及ぼさないよう、求めてきた。しかし、バイデン副大統領がドルへの信頼を求めても、QE3が始まれば、中国がドルの外貨準備を保有し続けるのは難しい。それは、両国にとって利益にならない。・・・QE3を止めること。


FT August 19, 2011

Why Buffett is wrong about soaking the rich

By Christopher Caldwell

WSJ AUGUST 22, 2011

My Response To Buffett And Obama

By HARVEY GOLUB

政府は増税する前に、その税収をもっと有効に使え。

WP August 24

Taxing the rich fairly can be done — and would raise revenue

Harvey Golubへの反論です。

guardian.co.uk, Thursday 25 August 2011

Warren Buffett is an example to British billionaires

Alexander Chancellor

guardian.co.uk, Thursday 25 August 2011

The dead end of globalisation looms before our youth

Pankaj Mishra

インドでも、イスラエルでも、中国でも、抗議の声を上げている。エジプト、チュニジア、ギリシャ、スペイン、政治の覚醒は広がっている。グローバリゼーションの支持者たちは聞くだろう。

「平等の無い繁栄。平和の無い豊かさ。」・・・彼らはそれを決して受け入れない。


FT August 19, 2011

Switzerland’s soaring franc: Hard to get a grip

By Haig Simonian

SPIEGEL ONLINE 08/25/2011

The Surging Franc

Swiss Fear the End of Economic Paradise

By Christian Teevs

通貨価値が強くなりすぎることは、旅行者が減るだけでなく、将来の深刻な問題を予想させる。


WSJ AUGUST 20, 2011

The Bailout Isn't Working

By HOLMAN W. JENKINS, JR.


BLOOMBERG Aug 22, 2011

Demographics Are Central to India’s 'Arab Spring': The Ticker

By William Pesek

BLOOMBERG Aug 23, 2011

Investor Suicides Offer Clue in World Bellwether: William Pesek

By William Pesek


l         新興市場との自由貿易

Project Syndicate 2011-08-23

The Outsourcing Bogeyman

Jagdish Bhagwati

2004年の大統領選挙で、ジョン・ケリー上院議員は、X線画像のデジタル解析処理がインドにアウトソーシングされる、というニュースにショックを受けた。仕事をインドに移した企業を非難したのだ。

発展途上諸国との貿易自由化を躊躇している中産階層のアメリカ人に、貿易自由化を支持するよう説得するためには、三つの神話を否定しなければならない。

神話1:アウトソーシングは津波のように増える。・・・それは起こらない。なぜなら、何でもアウトソーシングできないから。専門職もそうだ。

神話2:アウトソーシングは常に豊かな国から貧しい国に向かう。・・・そうでもない。特にサービス部門では逆転する分野がある。製造業で水平分業が起きたように。

神話3:アウトソーシングは雇用を減らす。Carly FiorinaHewlett-PackardCEOだった)は、35000人の雇用を輸出した、と非難された。しかし、もしそうしなければHPは倒産し、10万人が失業しただろう。

「アメリカで在宅介護を受ける患者に、投薬を1回2ドルで電話によって指示していた。この仕事はアメリカから消えるだろう。インド人が在宅介護の契約により1回25セントで電話するからだ。これは患者の健康を改善し、制約会社の利益を高め、その雇用によってインド経済を改善する。」

サービスのアウトソーシングは皆を勝者にする。

FT August 23, 2011

Don’t expect China et al to save the world

By Dani Rodrik

新興市場の成長に期待するのは難しい。アジアの数カ国が示した持続的な成長は、正統派の経済学が言うような、市場の開放性とマクロ経済の安定化だけで実現したものではなかった。積極的な介入政策や構造変化の促進、低生産性の農業やインフォーマル部門から、高生産性の製造業、貿易部門に労働力が移動した。それは市場諸力だけで実現できるものではなく、しかも政府の産業政策で管理できたわけでもなかった。

不況によってますます反感を持つ欧米諸国にとって、かつてのアジアと同じような介入政策を新興市場が取ることもできない。

FT August 24, 2011

End the charade in talks on global trade

By Jean-Pierre Lehmann

NYT August 24, 2011

America’s Sweatshop Diplomacy

By JENNIFER GORDON

******************************

The Economist, August 13th 2011

Central bankers to the rescue?

German Business and politics: Goodbye to Berlin

Financial markets: Hit me baby one more time

Buttonwood: Forty years on

Currency pegs: Poor dollar atandard

Central banking and the crisis: Emergency manoeuvres

Riots in Britain: Anarchy in the UK

Riots in England: The fire this time

Bagehot: After the inferno

(コメント) この号で注目したのは二つの話題です。一つは金融危機、もう一つは暴動。

ユーロ危機は収まらず、ヨーロッパの政治指導者たちは、当然ながら、国内政治の心配、同盟諸国の心配をして、急激な改革を決断できません。アメリカでは経済の回復が非常に弱いとわかっても、議会では財政赤字の削減だけが議論されています。

中央銀行は金融市場における投資家の不安を和らげることができるでしょう。しかし、一時的です。成長が回復する秘密の作戦ではありません。ECBによる債務不安の国の債券購入も、アメリカ連銀によるほとんど前例がない(カナダがやったそうですが)期間を決めて超低金利を約束する政策も、その効果は限られ、次第に批判されるリスクがあります。

イギリスの暴動に関しては、キャメロン首相の危機管理能力が問われるとともに、この首相の社会政治哲学が今後、前面に出ることを予想します。暴動は、多くの場合、保守強硬派に有利な政治情勢を残すのです。

******************************

IPEの想像力 8/29/11

自動車のラジオから、民主党代表者選挙の立候補者に関する説明と、彼らの演説、質問に対する回答、などが流れてきました。

ラジオで少し聞いただけでも、候補者たちの準備はかなり周到になされている、と感じました。スタッフや仲間が集まって、ドラマ「ホワイトハウス」のように、主要なテーマや重要課題を徹底的に調査し、自分の政治姿勢と一致した(他の候補と違う)答えを整理してきたのではないでしょうか。

民主党も、自民党も、「マニフェスト」や「党首選挙」が一定のメカニズムとして確立されつつあります。二大政党制を意識した、(アメリカやイギリスに学んで)積極的な面があるでしょう。しかし、それが日本の政治システムをどの程度改善したのか? 疑念も生じます。

たとえば、マニフェストが多すぎる? それは、G20の声明文のように、各政治家が自分の支持基盤の意見をマニフェストに盛り込もうとするからでしょう。マニフェストに書いておけば、選挙後に政策を実現しやすい、あるいは、書かれてなければ主張できない、と思うのかもしれません。それが、マニフェスト選挙の正しい利用方法でしょうか? ・・・何のために国会で議論するのですか?

私はこう思います。一方で、何が争点か、国会で明確に示して、与野党が妥協を拒むような、難しい、重要な選択については、最終的な討論の判定を国民に求める。他方、競争的な政党政治の原則として、政治家たちが政党として日本の課題に対する基本姿勢を示し、国民に選択してもらう。この両方で重要な役割を担う、指導者としての資質に優れた人物を各政党内で決める。それが各党の党首選挙だ、と定義してはどうでしょう。

それにしては、党首選挙の時期もやり方も、バラバラです。与党のまま首相が短期間で辞任するために、党首選が次の首相を決めてしまう。ときには自民党が、または民主党が、まるで首相公選や大統領選挙のように、日本中で演説会を開く。しかし、それは党員しか投票権がない? こんな短期間で? 所属議員数の多い派閥が事実上決める? ・・・何だ、これは? と思います。その制度の歪みが、偏ったアピール、派閥の秘密交渉、などを支配的にするのです。

候補者たちの主張を聞けば、ある部分は優れているし、異なった視点であっても対立しなければならないわけではない。むしろ、いずれも実際にやってみなければわからない、成功することで信頼を高める、と感じました。リビア軍事介入の評価が、カダフィ後の安定した秩序によって評価されるように。そうであれば、選挙後の党内結束を実行して、日本を良くするために党首が強い指導力を発揮できるよう、協力すべきです。

党首選が、党員や、所属議員だけでなく、全有権者にとって政治的な意志決定のメカニズムであるためには、与党の場合、首相の交代と衆議院の解散・総選挙を結び付ける。つまり、首相をコロコロ変えるのではなく、次の党首の下で国会論戦を激しく闘い、争点が明確になれば、ただちに解散して国民に信を問う、という気概を示すべきです。

むしろ、こんな党首選をしてはどうでしょうか?

l         1時間〜2時間かけて、自由に自分の政治信条や日本の課題について語ってもらう。もちろん、インターネット上で公開し、本人や仲間、支持者が解説し、皆が意見を書き込む。

l         日本各地で公開討論会を行う。被災地や僻地、米軍基地の前や失業者の多い地域、などで開催する。自由な質疑の時間をたっぷり取る。

l         政治評論家や日本に関心を持つ世界中の専門家たちに質問票を作成してもらい、回答させる。

l         候補者たちだけの討論会T。重要なテーマについて、候補者が自分で選択し、意見を述べ、互いに疑問や反論を述べる。

l         詳しい経歴や業績を示して、失敗も含めて、本人に説明させる。それらと結び付けて、「あなたは日本をどう変えたいのか?」に答えてもらう。

l         候補者たちだけの討論会U。(自分を除いて)首相に推すとしたら誰が最適と思うか? 他の候補者の優れた点を指摘する。

l         私は、ABCDフィッピーを議論してほしいです。すなわち、A高齢化、B官僚制、C中国、Dデフレ、F財政赤字、I不平等の拡大、P政治的混迷、Y若者、です(IPEの果樹園、20101122日)。その上に立って、外交、安全保障の問題をオープンに議論し、国民に方針を示してほしいです。

******************************