今週のReview
8/8-13
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新しい右翼のテロ ・・・アメリカの債務上限論争 ・・・終わらないユーロ危機 ・・・自転車 ・・・高速鉄道 ・・・西側の衰退 ・・・金融大収縮への対策
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)
l 新しい右翼のテロ
The Guardian, Friday 29 July 2011
The internet nourished Norway's killer, but censorship would be folly
Timothy Garton Ash
WP July 30, 2011
Norwegian attacks stem from a new ideological hate
By Abraham H. Foxman
オスロにおけるテロ行為の残忍さは、人間の良識や善意を世界中の信じる人々に衝撃を与えた。そこにはこれまでと異なるイデオロギーが見られる。
欧米におけるイスラム教への反感は、過去10年において、珍しくなかった。イスラム教徒が襲われ、殺害され、イスラム教のモスクや機関が破壊された。それらは、1.ヘイト・クライム、2.暴力的な反発や報復、3.イスラム教徒の信仰や民族に対する白人至上主義者の暴力、であった。
しかし、欧米に現れた新しい信念体系は、このイスラム教徒への不安や恐怖心を、世界に対する脅威、特に「西側(文明・文化)」に対する脅威として理解する。さらに、西側の政府や指導者は意識的であれ、無意識であれ、民主的社会へのイスラム教の浸透、さらには征服を許し、それに協力している、と主張する。
左派の「多文化主義」とは、ヨーロッパの伝統文化を破壊し、イスラム教徒の移民がそれらに代えてイスラム教の文化や価値観を広めることだ、と彼らは主張する。その結果は、西側の人口的、文化的な、そして究極においては政治的な自殺となる。もしそれを阻止する行動を起こさなければ。
このような信念体系の出現は、単なる信仰や民族に依拠した反イスラム感情を超えている。本質的に観て、それは19世紀後半から20世紀前半に反ユダヤ主義がイデオロギーとして形成された過程に重なっている。
この新しいイデオロギーとしての反イスラム主義が、ノルウェーのテロ攻撃に示されていた。反イスラム感情が動機でありながら、殺戮の対象はイスラム教徒ではなく、彼の想念を支配する「多文化主義的マルクス主義者」である、労働党に向けられた。
LAT August 4, 2011
Daum: Norway's paradise lost
Meghan Daum
Project Syndicate 2011-08-04
Breivik’s Call to Arms
Ian Buruma
オランダの右翼政治家Geert Wildersや、アメリカのScott Spencer and Pamela Gellerといった反イスラム・ブロガーの言説を犯人ブレイヴィクは宣言に用いている。Wildersも、ヨーロッパはイスラム化の最終段階にある、など、戦闘的な表現で政治を反イスラム主義に染めようとしているが、犯人はその言葉をそのまま行動に移した。
数年前に、ドイツの著述家Hans Magnus Enzensbergerは、“radical loser”に関する優れた論説を書いた。ラディカルな敗者とは、多くの場合、社会的、経済的、性的な自尊心を失った若者であり、自分の周りの世界に無関心になり、自殺的な大量破壊行為を求める。何が行動の引き金になるのか、わからない。失恋や失業、試験に失敗したことかもしれない。殺害することをイデオロギー的に正当化する理念は多くあり、何でもよい。
Wildersの言説は犯人を刺激したのだろうか? しかし、多文化主義が間違った思想だ、とか、イスラムが近代西欧の両性間の平等やゲイの権利と対立すること、大規模な移民流入が深刻な社会的衝突をもたらすことは、なんら不合理な主張ではないし、殺害を促すものでもない。
しかし、オランダ、デンマーク、フランス、ドイツ、ベルギー、イギリスなどで、一部のポピュリストたちはそれ以上のことを主張している。Wildersは、西側文明の生存が脅かされている、というのだ。イスラムとは、共産主義や国家社会主義、全体主義のイデオロギーである、と。
実存的な戦争状態に関する言葉こそがもっとも危険であり、ブレイヴィクにテロを促したのだ。ラディカルな敵対関係は、反イスラムから「イスラム・ファシズム“Islamofascism”」との戦争を導き出した。彼らにとって、2001年の9・11は1938年や1940年と同じである。西側文明を守るため、我々は再び武器を取らねばならない、と主張する。
l アメリカの債務上限論争
NYT July 28, 2011
The Centrist Cop-Out
By PAUL KRUGMAN
簡単な話だ。共和党は、アメリカとその景気回復を人質にとって交渉を要求した。より複雑なのは、ある種の人々が「財政均衡」を信仰するカルト集団であることだ。
オバマも「セントリスト(中道派)」の幻想に囚われている。問題は、共和党の中にいる極端な均衡論者であり、中道を求めることではない。
SPIEGEL ONLINE 07/29/2011
US Debt Debate
Annihilating Democracy with the Tea Party
WP July 29, 2011
The great divide
By Charles Krauthammer
これはオバマの選挙運動以来続く、政府の大きさをめぐる論争だ。
FT July 29, 2011
US economic policy is not yet triple A
FT July 29, 2011
Congress fights on edge of a cliff
Project Syndicate 2011-07-29
The Euro-American Debt Dilemma
Michael Boskin
資本主義システムと民主主義体制の混合による裕福なヨーロッパとアメリカが、財政赤字と債務の中でおぼれつつある。それは福祉国家を自慢し過ぎたからだ。ヨーロッパは財政危機の伝染を防ごうとして、アメリカは財政の急増を抑えようとしているが、将来の生活水準を損なう危険な水準まで債務は増大し、それが内外の政治制度を動揺させている。さらに、ユーロ圏解体や、国際準備通貨としてのドルが死滅することまで予見しつつある。
アメリカの民主党が長年、政府支出を増やすことにだけ熱心であったように、共和党は減税だけに熱心だ。まだ金利は低い。しかし、将来は急騰するだろう。最善の策は、財政に厳しい統制を課し、成長を高める構造改革を進めることだ。アメリカの累進課税は主要経済の中でもっとも厳しいので、これを緩和し、タックス・ベースを拡大して税率を下げるべきだ。ヨーロッパの構造改革は、引退の年齢を引き上げ、労働市場の弾力化を進めるべきだ。
どちらの債務問題が解決されないのも、政治家たちが短期の利益を求め、長期の債務を無視するからだ。この戦いは、まだ始まったばかりだ。
Project Syndicate 2011-07-29
America’s Locust Years
J. Bradford DeLong
債務額の上限が引き上げられない場合、8月3日に何が起きるのか? アメリカの金利が急速に上昇する? あるいは、他の問題を心配する投資家は債券を保有し続ける? アメリカの連銀か中国の人民銀行か、あるいは、その両方が、市場を買い支える? 世界経済の先行きを悲観し、インフレ率も低下すると予想して、投資家はさらに多くのアメリカ財務省証券を購入し、金利は低下する? ・・・?
債務上限についてどのような合意がなされるか、わからない。しかし、最近の財政赤字削減交渉はアメリカ政府の能力を奪った結果、今後18カ月に及ぶ低成長と高失業をもたらした。それは次の大統領がだれであれ、解決しなければならない課題となる。
債務上限をめぐる政治的混乱でアメリカ政府ができなかったものを考えれば、地球温暖化の対策は遅れた。雇用も減少した。国際政策協調の指揮者が失われた。アメリカは、インフラ整備、教育システム、社会保障など、短期的・長期的な課題に答えられず、財政赤字と長期債務のジレンマを解決できなくなる。
第二次世界大戦が迫る中、ウィンストン・チャーチルは議会の演説で、「イナゴに食われた数年間」を惜しんだ。ヨーロッパ大陸に広がるファシズムとの戦いに備えるべきだったが、イギリス政府はそれを怠ったからだ。1世紀の後、アメリカ政府は早くから不況が来るのを予測できたし、少なくとも、その戦いの基礎は据えた。しかし、その行方はわからない。
私は、共和党にアイゼンハワーが復活するなら、問題は解決できると思っている。ニクソンやマッカーシーではだめだ。アメリカがその役割を果たすか、あるいは、それができないなら、世界は速やかにグローバルな管理制度を必要とする。
Project Syndicate 2011-07-29
Why is America’s Budget Deficit So Large?
Martin Feldstein
WP July 30, 2011
Could a U.S. debt downgrade trigger a financial crisis?
By Neel Kashkari
FT July 31, 2011
US economic policy is not yet triple A
by Gavyn Davies
guardian.co.uk, Sunday 31 July 2011
US debt crisis: Obama's sharp right turn
The Observer, Sunday 31 July 2011
US economy: The Tea Party is a real threat to America
超保守派の大統領候補であるMichele Bachmann下院議員は、アメリカのために、毎日、祈っている。・・・アメリカには明確に “No” と言える人物が求められる。私がそうだ。彼女は「超合金の脊椎」を持ち、神と交信する。
ティー・パーティ運動の主張は愚かである。彼らが求める「アメリカの偉大さ」の多く(インターネット、コンピューター、航空宇宙産業、など)は政府によって支援された結果だ。しかし、Bachmannの土地では、そのような主張は間違いになる。アメリカの自立心や個人主義を砕き、アメリカが偉大さを取り戻す道の障害である、と見なされる。ウォール街や実業家が彼らを説得しても無駄である。所詮、そのような主張をする者は民主党のスパイなのだ。
オバマは沈黙する。
guardian.co.uk, Sunday 31 July 2011
The reckless right in the US is forgetting the basics of participation
Gary Younge
Mitt Romneyが大統領候補として有力でも、問題は、アイオワで支持を得るには極端に右寄りの姿勢を示すしかないことだ。それは彼の国政における評価を損なった。Michele Bachmannがそうだ。
世界で最も裕福な国がデフォルトに瀕している主要な理由は、共和党が政党として機能しなくなったことである。彼らはある提案に反対しているのではなく、反対するために政党を利用する。調査を見ても、民主党員の3分の2は「実現するためには妥協する」と答えるが、共和党員の3分の2は「何があろうと原則を譲らない」と答える。
NYT July 31, 2011
The President Surrenders
By PAUL KRUGMAN
債務額の上限は引き上げられた。破局を回避した、と多くの意見は述べている。しかし、それは間違いだ。
この取引は、「すでに抑圧されている経済を損ない、アメリカ政府の長期的な赤字を、改善するのではなく、悪化させ、そして、最も重要なことは、むき出しの恐喝が何の政治的な代償もなく成功することを示して、アメリカを長期的にバナナ共和国にしてしまう道へ進ませた。」
大統領には他の代替案がなかったのか? KRUGMANは、あった、と批判します。もっと強い姿勢で引き上げを求めても、市場はそれを支持しただろう。
NYT July 31, 2011
To Escape Chaos, a Terrible Deal
FT August 1, 2011
Deal or no deal, a US downgrade is deserved
By Carmen Reinhart and Vincent Reinhart
FT August 1, 2011
Beware the guns of August
By Gideon Rachman
ヨーロッパからアメリカ議会の債務危機を見れば、それは迷惑な話だ。とにかく、8月には何も起きてほしくない。
25年前の8月、ヨーロッパは戦争に投げ込まれた。1939年8月21日、独ソ不可侵条約が世界を揺るがせた。戦争は不可避になった。ヒトラーは9月31日にポーランド侵攻を命じた。
国際危機は8月によく起きる。1968年8月には「プラハの春」がソ連とワルシャワ機構の同盟軍によって粉砕された。1989年8月にはハンガリーがオーストリアとの国境を開放し、数カ月でベルリンの壁が崩壊した。1990年8月、サダム・フセインのイラクはクウェートに侵攻した。1991年8月、ブッシュはソ連でクーデタがおきたと知る。ゴルバチョフが逮捕され、数日後、ソ連は消滅した。
「8月には何があるのか?」
8月、政治家や政府は夏の休暇で機能を低下させている。独裁者や将軍たちが動きやすい。また、同じ理由で金融市場の投機が起きる。EMSからイギリスが離脱したのは1992年8月。アジア通貨危機の始まるタイ・バーツの暴落も1997年8月だった。ただし、本格的な金融危機は秋まで待つ。1929年、1987年は10月、2008年のリーマン・ショックは9月だった。
guardian.co.uk, Monday 1 August 2011
Debt deal: anger and deceit has led the US into a billionaires' coup
George Monbiot
税金の多くが累進性を取っているように、減税は逆進的である。すなわち、貧者から富者への財政移転である。
guardian.co.uk, Monday 1 August 2011
US debt deal: how Washington lost the plot
Dean Baker
SPIEGEL ONLINE 08/01/2011
The Debt Ceiling War
A Risky Victory for Obama
By Gregor Peter Schmitz in Washington
SPIEGEL ONLINE 08/01/2011
Interview with Tea Party Co-Founder Mark Meckler
'We Have Compromised Our Way Into Disaster'
WP August 1, 2011
How the Tea Party ‘hobbits’ won the debt fight
By Marc A. Thiessen
WP August 1, 2011
Back from the debt-ceiling brink
NYT August 1, 2011
Tea Party’s War on America
By JOE NOCERA
WSJ AUGUST 1, 2011
A Tea Party Triumph
LAT August 1, 2011
Debt ceiling: A squandered deal
LAT August 2, 2011
What about a war ceiling?
By Tom Engelhardt
失業が増え、インフラは老朽化し、国民は住宅を奪われている。債務によって債券格付けが低下されるにもかかわらず、なぜアメリカは世界の警察官という役割を担うのか?
guardian.co.uk, Tuesday 2 August 2011
How the Tea Party won the debt deal
Paul Harris
アメリカのリベラル派は、ティー・パーティ―運動の勝利にショックを受けている。しかし、それを非難する必要はない。彼らをまねることだ。
ティー・パーティ―運動は庶民の有権者から、一連の単純な政治的信念(小さな政府、増税反対、社会主義への不安)を体系化することによって膨れ上がった。そして、彼らはアメリカ政治を支配する2大政党の一つを占拠した。ティー・パーティ―運動は、地球上で最強の国家における政治・経済システムの全体を、自分たちの目的に捻じ曲げたのだ。
ティー・パーティ―運動は、アメリカの左派がやらない方法で成果を挙げた。彼らは旧左翼が主張したように「組織せよ! 組織せよ! 組織せよ!」と叫び、それを実践した。ティー・パーティ―運動、事実上、いかなる共和党議員の選挙区にも、対立候補を立てて、その議員を落選させることができた。ティー・パーティ―運動は彼らに忠誠を求めたのだ。2010年の中間選挙で、ティー・パーティ―運動を支持する多くの議員が重要な地位を得て、右傾化が進んだ。
民主党がこれに反撃するためには、同じことをしなければならない。中道的な方針を示すより、伝統的な民主党議員を追い出し、明確、かつ大きな声で、不合理な要求や闘いを進める。要するに、大統領は右派を恐れるように、左派を恐れなければならない。
このような方法を取ることで、初めて、アメリカの政治体制が右傾化するのを防げるだろう。
オバマが右傾化する政治の中で中道的な立場により再選されても、それに何の意味があるのか? 富裕層のために巨額の減税を唱え、貧困層のための政府支出を削減し、医療保険には保険会社に白手形を与えて、その費用に関する国民の不満を抑えてしまう。それがオバマの民主党であるなら、なぜ単純に共和党に投票しないのか?
(chinadaily.com.cn) 2011-08-02
US debt crisis and the country's future
By Han Dongping
(chinadaily.com.cn) 2011-08-02
Dollar depreciation dilemma
By Zhang Monan
WP August 2, 2011
A hold-your-nose debt deal
By Eugene Robinson
FT August 2, 2011
Relief at an agreement will give way to alarm
By Lawrence Summers
合意できてよかった。デフォルトが避けられて安心した。・・・
しかし、これは皮肉だ。客観的に観て、アメリカの財政赤字は大きくなる。・・・
最後に来るのは、将来の経済に対する不安だ。財政赤字よりも、雇用と成長が重要である。デフォルトは避けたけれど、株価の急落で莫大な富が消えてしまう。
そこには財政赤字を脱する合理的なシナリオがない。ヨーロッパの金融危機など、さまざまなショックが予想されるのに、政府は支出を削るしかない。
1.財政赤字を減らす最善の方法は、ブッシュ時代の富裕層への減税を廃止することだ。2.景気刺激のために消費税の引き下げを延長し、インフラ投資や失業保険を拡大することだ。
FT August 2, 2011
Washington’s battle is a diversion
By Martin Sandbu
FT August 3, 2011
Why America deserves to stay triple A
By Roger Altman
guardian.co.uk, Wednesday 3 August 2011
Facing gridlock and hysteria, the US may yet be reformed
Timothy Garton Ash in Stanford, California
FP Wednesday, August 3, 2011
Has the USA lost its AAA superpower rating?
Posted By Daniel W. Drezner
債務をめぐるアメリカ議会の紛糾は、インフラから教育、世界戦略の見直しまで、いよいよ超大国アメリカの衰退をもたらすか?
しかし、アメリカ議会政治の問題は新しいことではない。むしろ、三つの要因が注意を要するだろう。1.ソフト・パワーを損なうか? 私はその概念を疑っている。2.パワーとは常に相対的なものだ。アメリカが優位を失うのは、誰に対してか? 他国はもっと深刻な問題を抱えている。3.民主主義は常に、政治の愚かさとイデオロギーの暴走を抑える手段を持っている。
賢明な投資家たちは、首都の政治的暴動にもかかわらず、莫大な資金をアメリカに置いた。
(China Daily) 2011-08-04
Time to reconsider buying of US assets
By Dean Baker
中国政府が明確な不快感を示したにもかかわらず、アメリカ議会はデフォルトに及ぶ論争を辞めなかった。アメリカ政治において中国の関心は重視されない。
アメリカは常に驚くほど孤立した国だった。アメリカ人の大多数が、アメリカに直接的な関係がなければ、世界に起きていることを知らず、関心がない。それは国民だけでなく、政治家の多くについても言える。
アメリカの財政赤字は、景気変動に対する反循環的な政策と、破綻した医療保険制度の長期的な傾向とによって決まる。前者について、不況期に財政赤字を削減するのは間違いであるが、後者について医療保険制度を改善することは重要だ。しかし、産業界はその改革を阻む政治圧力を行使できるから、問題を長期的な財政赤字として誤認させている。
中国政府はこの点で、債務のデフォルトを避けるように関心を持つべきだろう。しかし、アメリカの政治家は中国の膨大なドル保有や、反中国感情を利用する。
アメリカ政府が中国に巨額の債務を負っているのは、中国に対する膨大な貿易赤字があるからであり、中国政府が貿易黒字を財務省証券に投資しているからだ。それゆえ、中国がアメリカの財政赤字に不満であれば、財務省証券を買わず、それは人民元の増価と対米貿易黒字の縮小を意味するが、アメリカ政府の中国依存をやめさせればよい。
ドル価値の暴落は、アメリカの政治家にも、ドル価値を維持するのに中国によるドル資産の購入に頼る政策を反省させるだろう。
FT August 4, 2011
China’s moment to break free of the dollar trap
By Yu Yongding
Project Syndicate 2011-08-04
A Bad Deal for America’s Future
Michael Mandelbaum
財政赤字を削ることは正しい。しかし、社会保障に関係する分野を削減の対象から外すなら、大部分が貿易費の削減に向かう。それは間違いだ。
Project Syndicate 2011-08-04
Washington and the Art of the Possible
Raghuram Rajan
FP JULY 29, 2011
The Post-Fukushima Arms Race
BY HENRY SOKOLSKI
l 終わらないユーロ危機
guardian.co.uk, Saturday 30 July 2011
What eurozone leaders are doing about the debt crisis
Herman Van Rompuy
欧州理事会議長、ファン=ロンパイによる、ユーロ圏指導者たちのギリシャ財政赤字問題に対する対応を支持した意見です。(The Economistにはこの意見への批判)
先週、ベルギーで開かれたユーロ圏の政治指導者による会合は、ギリシャの改革に融資し、その持続可能性を高め、同時に、ユーロ債務に対する市場の信頼を回復するために、重要な決定を行った。
ギリシャの債務は持続可能である。我々はその負担を軽くした。1.2014年までギリシャの改革に融資を追加した。2.金利を下げた。満期を延長した。3.2020年までに支払が求められる債務について、民間債権者の自発的な負担のメニューを支持した。
ギリシャの債務比率はまだ高いが、225%の日本と比べるなら、例外的な高さではない。EUとIMFの支援を受けてラトビアが示したように、債務比率は1992年の130%から2007年には85%まで下がった。成功の条件は、経済の無駄を省き、成長を回復することである。
ユーロ圏の他の財政危機については、民間部門の負担は1回限りであることを明確にした。この方法は、債権者を不安にするから、自発的な形で、しかも、ギリシャ以外には使用されないことを示した。また、健全な地域が危機から守られるように、その制度(EFSF、ESM、ECB)的な支援を強化した。
EFSFには十分な資源がある。もし追加の資源が必要であれば、政治指導者たちはユーロ圏の安定化のために支援する、と明確に決断した。これは、いくつかの国にとって、従来の合意を大きく超えるものであった。
こうした改革は、すべてのファンダメンタルズを改善した。それにもかかわらず債券市場でコストが上昇した国があるのは驚きである。
これはユーロ危機ではない。2008年の金融危機後、すべての先進諸国で財政状態は悪化している。ヨーロッパにおいて成長が回復し、消費者の心理が好転して、企業の投資も増える、という好循環を期待する。
FT July 31, 2011
An uncomfortable final stretch for Trichet
By Ralph Atkins in Frankfurt
アメリカ議会のチキン・ゲームはティー・パーティ―が勝ちました。ユーロ圏では、ECBが負けたようです。ECBはルールを柔軟に解釈して危機を予防するべきだ、と期待します。
Project Syndicate 2011-07-31
Europe’s Sovereignty Crisis
Joschka Fischer
guardian.co.uk, Tuesday 2 August 2011
Eurozone crisis: Failing the Healey test
金融危機の一つの指標として、the Healey testを指摘します。1976年9月28日、イギリス蔵相であったDenis Healeyは、財務大臣たちとの会合のために香港に向かいました。しかし、ポンドは急落し、会合をあきらめて財務省に戻り、IMF融資を求めます。政府は事態の変化についていけず、クリスマスには大幅な支出削減を発表しました。
金融危機とは、政府や財務大臣が事態の変化に迫られて不名誉を示すことです。
WSJ AUGUST 3, 2011
Another Failed Greek Rescue
FT August 3, 2011
Only the ECB can halt eurozone contagion
By Paul De Grauwe
政治指導者の融資決定にもかかわらず、ユーロ圏の感染が止まりません。イタリアやスペインの債券にも不安が広がりました。ECBが迅速に行動しなければ感染は終わりません。
通貨同盟における債券市場は、元来、不安定であり、満期において中央銀行による貨幣供給が保証されているから、すなわち、最後の貸し手があるから安定して取引されています。EFSFではなく、ECBだけがそれを行えます。
ユーロ圏の制度改革で最も重要なのは、このECBによる最後の貸し手を明確にすることである、と強調します。そして、政治統合も進めて、この最後の貸し手が財政のモラル・ハザードにつながるのを防止します。
Project Syndicate 2011-08-04
The Root of All Sovereign-Debt Crises
Amar Bhidé and Edmund S. Phelps
Project Syndicate 2011-08-04
The Euro’s Crisis of Democracy
Miguel Poiares Maduro
l 自転車
NYT July 30, 2011
The Dutch Way: Bicycles and Fresh Bread
By RUSSELL SHORTO
ヨーロッパは交通渋滞や温暖化を、歩行者のために都市を改造することで対応しつつある。アメリカはますます大きな都市と駐車場を建設している。その理由の一部は地理的条件であるが、それ以上に、心の姿勢が重要だ。
たとえば、自転車道だ。アメリカではそれは側道の一つにすぎない。あるいは、遊ぶためのサイクリング・コースだ。アムステルダムでは違う。自転車、自動車、バイク、市電が混在する。それらは繊細に調整されて、複雑な自転車道も組み込まれている。交通に対する違った考え方がある。
アメリカのように週に一度ではなく、アムステルダムでは自転車で毎日買い物する。何日も保存できるようなパンはなく、とても美味しい。
アメリカ人は自動車を個人の自由を拡大するものだと考える。アムステルダムから見れば、自動車は負担であり、都市は二重の負担である。自動車の必要性を減らす都市の改造は、自動車を受け入れがたいものに変えるが、個人の自由は拡大する。
アメリカの都市に自由をもたらしたいのなら、ソーシャル・プランニングの技術者になろう。
guardian.co.uk, Monday 1 August 2011
Happiness: the price of economic growth
Andrew Simms
l 高速鉄道
The Observer, Sunday 31 July 2011
China will implode if it doesn't change its authoritarian ways
Will Hutton
・・・安全でなければ、早くても意味がない。崩壊しないアパートに住みたい。安全な鉄道で旅行したい。事故が起きたら、あわてて車両を埋めてしまうような鉄道ではなく。
・・・鉄道省全体が閉鎖されるべきだ。それは汚職の巣だ。
中国は噴火するのを待つ火山である、とかつて北京で会った弁護士の団体は教えてくれた。この国を良く知らない者が、汚職の規模や、資本の浪費、すさまじい非効率、などを理解することは難しいが、党と支配体制への服従が至る所に見られる。大衆は、ケ小平が始めた「社会主義市場経済」の時代に達成された成果を誇りに感じている。しかし、権威主義的モデルが変わる必要は、広く、ますます強く、認められている。事故がそれを劇的な形で示す。
FP AUGUST 1, 2011
Red, Delicious, and Rotten
BY CHRISTINA LARSON
guardian.co.uk, Tuesday 2 August 2011
Are Foxconn robots the answer to worker suicides?
Noel Sharkey
中国の工場で労働者が自殺したことにより注目された、iPhoneなどの生産者である台湾企業Foxconnが、賃金上昇に対抗して大規模にロボットを導入する、と語りました。
FT August 3, 2011
China crashes into a middle class revolt
By David Pilling
これは新しい「大躍進the Great Leap Forward」運動か? GDPの増大を信仰することもできなくなった。高速鉄道事故への不満が抑えられないことは、天安門事件以来の大衆からの軽蔑を受けて、中国指導部の致命的な傷となる。
WSJ AUGUST 3, 2011
China's Wreckage Under Wraps
WP August 4, 2011
From a train tragedy to a battle over censorship in China
Project Syndicate 2011-07-31
Famine and Hope in the Horn of Africa
Jeffrey D. Sachs
FT August 2, 2011
Risk management can stop future famines
By Mohamed Adow
l 西側の衰退
LAT August 1, 2011
Zero-sum games in an interconnected world
Gregory Rodriguez
ますます緊密に結合した相互依存の世界において、われわれはゼロサム的な紛争と、オール・オア・ナッシングの政治を経験するだろう。なぜなら、全く見ず知らずの異邦人が、突然、遠方から我々の生活を変えてしまうから。
我々の生活は、ギリシャの債務危機、日本の地震、パキスタンの政治不安によって影響を受ける。ソーシャル・ネットワークは高速化し、24時間ニュースが流れる。
しかし、他方で我々の交渉術は大きく異なったまま、その硬直さと不寛容を増している。ノルウェーのテロ、アメリカ議会の紛糾は、オール・オア・ナッシング思考の愚劣さを示す。
人工的な転換、イデオロギーの転換が地球規模で生じている。我々は戦闘モードに入るだろう。紛争や戦争は避けられないし、以前より悪いとも言いきれない。問題は、ゼロ・サム・メンタリティーだ。それはテロや財政的な混乱を悪化させかねない。
いつか、我々は戦闘モードから脱して、相互依存を受け入れるだろう。相互依存した世界では、他者の生活が良くなる方が、自分たちの生活もよくなるのだから。我々は互いに調和し、全体として、人間的で高められた発展を実現する。
Project Syndicate 2011-08-01
The New Grammar of Power
Javier Solana and Daniel Innerarity
FP Tuesday, August 2, 2011
When did the American empire start to decline?
Posted By Stephen M. Walt
Project Syndicate 2011-08-03
The Wobbly West
Anders Åslund
世界金融危機は、決してグローバルではなく、準グローバルな危機であった。新興市場では、東欧を除いて、不況を免れた。
ユーロ圏の債務危機は、2001年のアルゼンチン危機以来、最も処理が長引いている。IMF融資はギリシャ債務の救済に多くを費やされた。それはIMF専務理事がフランス大統領になりたかったからだ。失敗した融資の後釜に、同じフランスの蔵相が就任するのは、西側の傲慢である。アジア通貨危機やロシア危機の後に、IMF専務理事がアジアやロシアから出るだろうか?
EU、アメリカ、日本は、GDPを超える政府債務を負っている。ケインズ主義や社会民主主義は各地でその信用を失うだろう。膨大な債務を遺すような財政刺激策を主張した政府に代わって、右派の政権が成立している。西側の民主的な政治システムは権力の抑制を自慢するが、明らかに、投資ブームやバブルを防ぐことはできなかった。財政に規律を求め、紙幣増発を制限し、既得権を抑えることができるのか?
政府債務は減らさねばならない。しかし、財政黒字を続けることも、公的資産を売却することも、実際には難しい。公的債務を減らせたのは、金融規制下で低金利の貯蓄を強制し、インフレによる金融抑圧を続けたからだ。しかし今、金融の安定性を維持できなかったドルやユーロを保有し続ける理由はない。
財政刺激策より、財政規律の回復を重視するべきだ。
SPIEGEL ONLINE08/04/2011
Once Upon a Time in the West
A Commentary by Jakob Augstein
FT August 4, 2011
Testing times for the west’s odd couple
By Philip Stephens
オバマとメルケルは秘密の心の友だ。慎重に考慮して、行動しないことを決断する。政治的指導力で国家を変えるという自信はない。
FT August 4, 2011
Eurozone crisis resembles US turmoil in 2008
By Gillian Tett
Project Syndicate 2011-08-04
Democracy’s Drama in Terrorism’s Theater
Joseph S. Nye
なぜオバマの外交政策から「民主主義は消えたのか?」 クリントン国務長官が唱えた「3D政策」the “three D’s” of American foreign policy – defense, diplomacy, and developmentは、ウィルソンやジョージ・W・ブッシュが掲げた民主化を取り上げた点で関心を集めた。
民主化は、ブッシュ政権の中東に対する軍事介入を正当化する道具にされ、偽善として非難された。民主主義は外から押しつけるものではない。民主主義には多くの形態がある。経済が発展し、人々が近代化に対応する中で、より大きな政治参加が求められるようになるのだ。
アメリカは民主主義を重要な目標として支持している。それを達成する手段とは別の問題である。強制や、条件が整わない国でも選挙の実施を求めないし、偽善的な利用を避ける。もっと穏健な形で、市民社会の発展や法の支配を促し、より良く組織された選挙を行う。また、アメリカ自身が民主主義の原則を尊重し、実行しなければならない。
他方、テロの脅威に対抗するには、ブッシュ政権のように国内の民主主義を弱め、ソフト・パワーを失わせてはいけない。人々は安全だけでなく自由も求めている。テロとは一種の劇場であり、弱者が強者の力を利用して優位を示す、柔道に近い。民主主義を弱めるようなアメリカを、テロリストは狙っている。
WP August 1, 2011
Japan’s post-tsunami agenda
BLOOMBERG Aug 2, 2011
Let’s Get Homer Simpson’s Hands Off the Controls
By William Pesek
BLOOMBERG Aug 3, 2011
Five Ways Japan Could Get Creative on Deflation: The Ticker
By William Pesek
旧弊を破壊する、楽天の三木谷、ソフトバンクの孫、菅首相。デフレを正すために、日本銀行は何を買えるか。
WSJ AUGUST 4, 2011
Japan's Hollow Threat
By JOSEPH STERNBERG
日本企業の海外流出は何も新しい現象ではない。震災でも、電力部族でもなく、ウォン安でもない。日本経済の硬直性が、企業を取引の自由な東南アジアへと向かわせる。
FT August 4, 2011
Japan: Protect and revive
By Mure Dickie
NYT July 31, 2011
The Diminished President
By ROSS DOUTHAT
WSJ AUGUST 1, 2011
Barack Obama the Pessimist
By FOUAD AJAMI
l 金融大収縮への対策
Project Syndicate 2011-08-02
The Second Great Contraction
Kenneth Rogoff
なぜ今も「大不況」“Great Recession”と言い続けているのか? この表現は間違いであり、その診断の間違いをもたらしている。通常の不況対策で解決できると、多くのエコノミストは信じている。
しかし、本当の問題は、世界経済が余りにもひどく債務に依存していることだ。それゆえ、債権者から債務者へ富が移転されることを除けば、瞬時の解決策などないのだ。すなわち、デフォルト、金融抑圧、インフレーションだ。
現在進行中の不況につて、より正確な、少し不安な、表現とは、「第二の大収縮」the “Second Great Contraction”である。最初の“Great Contraction”は、Anna Schwarz と Milton Friedmanが強調した「大恐慌」the Great Depressionであった。「収縮」とは、生産や雇用だけでなく、債務や信用にも使用されるし、レバレッジの圧縮には何年もかかる。
なぜ言葉の意味にこだわるのか? それは、肺炎と風邪ひきとの違いだから。通常の不況は、1年以内で、そこに達し、長期トレンドの成長が回復する。深刻な金融危機は、これとまったく異なる。我々の研究では、危機前の一人当たり所得水準に戻るのに、4年以上かかっている。
財政刺激策は失敗した。規模が小さ過ぎた、と言われるが、問題は債務が大き過ぎることだ。もし政府が高い信用格付けを持ち、資源を効率的に使えるなら、民間債務の整理を支援することが最も効果的である。たとえば、住宅債券を償却して、将来の住宅価格上昇に対する利回りを配当にした債券と交換する。また、ギリシャが成長する場合、10年か15年で高い支払が得られる条件で、ヨーロッパの裕福な諸国がより大きな救済融資を行う。
しかし、政治的な動揺と不決断には代替案がないのか?
「2008年12月のコラムで、私は、将来やってくる債務圧縮と低成長の期間を短縮する唯一の実際的な方法は、数年に及ぶ4-6%のインフレを起こすことだろう、と主張した。もちろん、インフレは不公平で、恣意的な、貯蓄者から債務者への所得移転である。しかし、最終的に、そのような移転が最も早く回復をもたらす直接的な方法なのだ。結果的に、さまざまな方法が取られるだろうが、ヨーロッパも苦労してそれを学びつつある。」
インフレを促すという異端の解決策は、不況ではなく大収縮がめったに起こらない、おそらく70年から80年間に一度の現象であるから、中央銀行がそれを容認しても、通常の金融政策について信頼を損なうことはないだろう。むしろ、間違った思考方法で財政刺激策を一斉に取った諸政府は、その失敗に苦しんでいる。
NYT August 2, 2011
A Crisis Merely Postponed
By ERSKINE B. BOWLES and ALAN K. SIMPSON
guardian.co.uk, Wednesday 3 August 2011
Are we heading for a second global financial crisis?
Richard Murphy
金融危機後、経済は二つの部分からなっている。「リアル経済the real one」と「野生経済the feral (wild and out of control) one」である。
問題は、野生経済がリアルな経済活動を制約してしまうことだ。それは金融的なバランス・シートに残る債務であったり、「資産」と見なされているものであったりする。株式、不動産、さまざまなデリバティブかもしれない。
これらは「非生産的な富」と見なせる。それらが投資や雇用を妨げている。実質賃金を抑え、融資を妨げる。それらは悪循環を成し、ますます多くの富がリアル経済から野生経済に奪われている。リアル経済の破壊は、野生経済を何も変えなかった。それは規制されず、脱税のために秘密の世界にある。
これを変えるには、野生経済を政府が支配することだ。そして、もっと生産的な投資に変える。
FT August 3, 2011
Debt deal darkens fragile US economic outlook
By Mohamed El-Erian
FT August 3, 2011
The coming crises of governments
By Robert Barro
「金融市場、住宅市場のグローバルな危機は、政府の新しい財政危機に変わりつつある。」ユーロ圏の財政危機はその警告であり、アメリカの州政府にも危機が及ぶかもしれない。
債務額の上限について合意ができた後、財政刺激策の追加が要求されるだろうが、それこそ大間違いである。オバマ政権は一貫して、非現実的な高い乗数を仮定し、刺激策の効果を過大評価している。このようなケインズの考え方を現状に当てはめるのは、クズ債券からトリプルAの債券を創るよりも頭が良くなければならない。実際、消費は縮小しており、結果的に残された財政赤字は増税を意味し、成長を妨げるのだ。
改革が必要なのは税制である。長期的な社会保障の資格を見直し、オバマとブッシュが行った、もしくは拡大した、さまざまな政府支出を廃止する。包括的な税制改革として、法人税と相続税をゼロにし、支出に関連付けた税制を廃止する。付加価値税を導入するには、それが税金吸い上げマシーンであると共和党に批判され、逆累進的であると民主党に批判されてきたが、同じ理由で支持される必要がある。
WSJ AUGUST 3, 2011
Stimulus Optimists vs. Economic Reality
By KEVIN HASSETT
SPIEGEL ONLINE 08/03/2011
Runway Wrangling
Thailand Pledges to Settle Dispute Over Prince's Jet
By Andreas Wassermann
FT August 3, 2011
Day of reckoning for fallen pharaoh
憲法の制定や経済改革には時間がかかる。改革の勢いが失われることを心配して、暫定政府はムバラクの裁判を進めた。ムバラクが法廷に立つことより、こうした変化それ自体が、エジプト人の激しい戦いの末に勝ちえた自由なのだ。
WP 08/03/2011
Can Hosni Mubarak get a fair trial?
By Jackson Diehl
LAT August 4, 2011
Mubarak: Avoiding 'victor's justice' in Egypt
YaleGlobal, 4 August 2011
A Stalled Arab Spring
Dilip Hiro
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The Economist July 23rd 2011
One more push
India’s economy: The half-finished revolution
China’s family planning: Illegal children will be confiscated
China’s population: Only and lonely
Indonesia’s middle class: Missing BRIC in the wall
Wealth, poverty and fragile states: MIFFed by misrule
Buttonwood: Swiss gold
Japan’s debt: The domino that never falls
(コメント) インドが1991年にマンモハン・シン蔵相による市場改革を始めたときの重大な意味が、今や誰にとっても明らかになっています。しかし、インドがその人口やソフトウェアにおける優位を生かして十分な高成長を維持するために、一層の改革を決断する時期が来た、と記事は主張します。特に、汚職の追放とインフラ投資に取り組むことで、食糧価格や賃金上昇を抑え、好循環を生むでしょう。
中国の人口計画は歴史的な成功だったのか? それとも、他のアジア諸国が経験したような人口転換を政治的に固定し、その代価をこれから支払うのか? インドネシアの好景気も、それが資源の輸出や資本流入を新しい発展に向けたインフラ整備に向けているとは言えません。
しかし、この雑誌の記事を、ますます見えない老眼!?と眠気を払って読む中で、いちばん興味を惹かれたのはMIFFの増大と、スイス・フランや円の増価です。
MIFFは、the Middle-Income Failed and Fragile Statesです。極度に貧困ではないが、その政治は崩壊しているか、非常に壊れやすい、政治的に複雑で危険な国が増えている、というのです。もちろん、スイスや日本はそうではありません。しかし、ちょっと似ています。世界金融危機後の不安を高める投資家たちが、金ではないけれども、同じような安全資産としてスイス・フランや円の国債に逃避しています。増価に対する介入は莫大な損失を出すしかなく、生産拠点としては後退を加速し、しかも、資本流出による金融不安を蓄積しています。
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IPEの想像力 8/8/11
これは、新しい「トリフィンのジレンマ」だ、と思いました。キンドルバーガーも、今度こそ同意するでしょう。
アメリカのドルが、国際準備資産だから保有されているのであれば、それは金との交換を保証できなくても、ドル建の債券市場(とアメリカ政治の機能)が信頼されていればよかったのです。金融ビジネスをグローバルに展開し、軍事介入し、減税することが、グローバルな成長をもたらすのであれば。それが今では、バブルと金融危機をもたらし、米軍撤退とドル安をもたらし、世界各地の政治対立を激化させるなら、国際通貨をめぐるジレンマが再び現れます。
・・・さまざまな債務危機はどうなるのか?
The Economistのオーディオ・コーナーで、William Rhodesのインタビューを聞きました。1980年代・90年代、債務処理の専門家(債権者側)として活躍し、シティの副会長でもあった人物です。面白い、と思って何度か聞いたので、いくつかの視点を紹介しましょう。
1.ギリシャとユーロの危機は深刻だ。一つは、アジア金融危機のときと同じ「伝染要因」があるからだ。もう一つは、時代の流れだ。ポール・ボルカーは現在のユーロ危機を、1980年代のラテンアメリカにそっくりだ、と述べた。ECBやEU官僚、各国の財務大臣などの間で意見対立が余りにも激しく、市場を不安にしている。救済案をギリシャ政府が実行できるか、わからない。
2.2001年のアルゼンチンのような(デフォルトの末に)債券交換が起きるかもしれない。その数年前、ブレディー・ボンドは成功だった。旧債券は割り引いた価格で新債券に交換された。IMFはそれを助けた。しかし、1年以内に民間取引が復活した。ヨーロッパは同じことができるだろう。ただし、一つの声で市場を説得しなければならない。
3.ギリシャは、外から押し付けられるのではなく、自分たちで解決策を示す必要がある。それには優れた先例がある。(1994年)ブラジルのレアル・プランはモラトリアムから安定化を進めた。2001年のトルコの世銀スタッフから首相になったデーヴィス、1997年の韓国大統領に支持された金融改革。彼らはIMFに強いられたのではなく、自分たちから金融再建を望んで、政治指導者が厳しい改革を引き受けた。
4.アメリカの債務額上限引き上げは、共和党員が世界中で起きていることを見て影響を受けている。ユーロ危機、イギリスの財政赤字削減、債券格付会社の発する警告、中国の3兆ドルを超える外貨準備(アメリカは財務省証券を海外の投資家・保有者に頼っている)。何かしなければならない、と感じている。
5.アメリカ経済の落ち込みは続くだろう。失業率が高い。頼るべき資産であった住宅価格は下がったままだ。しかも、インフレの心配がある。食糧やエネルギーの価格上昇は重要だ。バーナンキは重視していないが、アメリカ国民は真剣に心配しており、インフレ期待が現実を変えるのはラテンアメリカで示された。それゆえ、アメリカ経済の成長率は低いままであろう。
・・・しかし、債権者が優れた解決策だったと信じるケースが、債務者にとってもそうだ、と同意できるかどうか、それはわかりません。
もし、理想的な市場型の解決策があるとしたら、それは大規模に債権者が破産することでしょう。しかし、セーフティー・ネットは大幅に充実され、公的な雇用と公共事業が増えます。それは主要産業における一時的な国有化や、地方の零細企業・商店に対する公的な救済融資によって、ある程度のインフレとしても実現します。
債務処理のために金融部門の債権が段階的に圧縮・整理され、公的な規制と監視の下で主要な金融機関が資本注入・国有化された後、若い起業家たちの革新が支援され、消費や投資を回復します。若者たちの雇用が安定し、結婚や出産、新住宅地と学校の建設が、新しい公共交通網や環境・温暖化対策への投資と同時に進みます。
世界各地における債務危機の果てに、2013年、市民的な秩序を内外において強く支持するオバマが、国際秩序と社会の再生に明確な見通しを示し、大統領として再選されます。
少なくとも、さまざまな未来の一つとして。
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