IPEの果樹園2011

今週のReview

7/4-9

 

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欧州と国際秩序 ・・・ギリシャ救済か、崩壊か ・・・アメリカ再建 ・・・中国と国際秩序 ・・・世界経済政策 ・・・成長と中国共産党 ・・・IMF専務理事

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, SPIEGEL, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l         欧州と国際秩序

FT June 23, 2011

Europe’s return to Westphalia

By Philip Stephens

ドイツとフランス、Angela Merkel and Nicolas Sarkozyはユーロを守ると明言している。ユーロとEUとは分割できないものだ。それはヨーロッパの解体を意味する。

しかし、彼らの激しい言葉とは裏腹に、1年経っても、債務危機は解決できていない。政府債務危機は兆候でもあり、原因でもある。ギリシャは財政規律を失い、アイルランドは住宅バブルに酔い、ドイツの銀行は融資を喜んだ。その問題を解決することも十分に可能なはずであるが、彼らは行動しない。

弱った政府を秩序正しく破産させ、その支払能力を回復する計画を示し、債権国の側では脆弱な銀行を保証もしくは救済・整理すればよい。ギリシャ、アイルランド、ポルトガルの債務額は合計で6800億ユーロである。これは巨額に見えるが、ユーロ圏の経済規模のわずか7%でしかない。ユーロ債を発行して債務を保証すれば、金融市場のパニックは終わる。

つまり、問題は経済的なものではなく、政治的なものだ。信頼と政治的意志が欠けている。ドイツの有権者たちは自分たちの繁栄とユーロ圏の維持を結びつけて考えない。債務諸国の有権者たちは、現在の債務の罠から抜け出す説得力のある道を示されるべきだ。特に、メルケル女史は両者を結び付ける指導力を求められている。

しかし、ヨーロッパは再びウェストファリア条約の時代に戻りつつある。つまり、ナショナリズムの復活だ。近代ヨーロッパの国家は1648年のウェストファリア条約で誕生した。国家主権が、弱まっていた教会の超国家権力に代わったのだ。イギリスの外交官、Robert Cooperは、ヨーロッパの支配者たちが、国内秩序と大衆の同意を、国家間のより激しい競争において購入するようになった、とみなす。

近代国家システムは20世紀半ばまで続いたが、30年間で二度目の戦争を経て、余りの破壊的な結末に至った。ヨーロッパの指導者たちは、バランス・オブ・パワーに依拠した秩序を維持するコストを耐えられないほど大きい、と最終的に合意した。

その後の60年間、主権を共有する脱近代の実験がヨーロッパで続けられた。今、相互の利益から分割された、狭い国家利益が再現しつつある。世界はグローバルに結びつくが、政治は極めてローカルだ。ヨーロッパ諸国家はウェストファリアの再現を求める国内圧力に動かされている。

最近まで、EUは多極化する新しい国際秩序のモデルと見なされていた。主権をプールすることで、ヨーロッパはグローバリゼーションの難問を解く。国境を超える相互依存と国民政治との正しい結婚を示す。統合化によって、ゼロサム・ゲームはプラス・サム・ゲームになる。

しかし振り返るなら、すでにヨーロッパを結びつける接着剤は溶け始めていたのだ。単一通貨の誕生をもたらした1991年のマーストリヒト条約は、ヨーロッパ統合を平和と安全とをもたらす不可欠の条件と考える世代の最後の大歓声であった。それはソ連崩壊や東西ドイツ再統一と同時に起きた。独仏の若い、ドイツの贖罪意識、共産主義圏の実存的な脅威、などは歴史の教科書に去った。ヨーロッパの東でも民主主義が再建され、EUは新しい存在理由を必要とした。

特に、ドイツ再統一は独仏の同盟関係に立つEUの微妙なバランスを崩した。ベルリンは、ドイツを「普通の」国家として、イギリス、フランス、イタリアのように扱うよう求めたが、それはさらに均衡を破壊した。なぜならドイツは強すぎたし、ドイツがせまく限定された国益を追求するなら、ヨーロッパは生き残れないからだ。

ベルリンだけでなく、パリも国益を求めた。しかし、フランス人、オランダ人、などはイギリス病にかかった。ヨーロッパ硬化症は広まり、経済危機はブラッセルを解決策ではなく問題の一部と見なした。アラブの蜂起で25000人の難民が来たイタリアはパニックになり、イタリア、フランス、デンマークが国境管理の再開を求めた。

グローバリゼーションによって弱体化した政府に、人々は安全を求めている。権力や権威は各国の首都からEUに移りつつある。ブラッセルに抵抗して、我々の隣人たちを救え、と。しかし、これは難しい。世界の重心はますます進行諸国に向かっている。ヨーロッパが分裂すれば、その衰退を早めるだけだ。

ここに皮肉がある。中国、インド、ブラジルなど、新興勢力が望むのはローマ条約ではない。1648年のウェストファリア条約だ。この60年間は、短い喜劇であったのか。

guardian.co.uk, Monday 27 June 2011

How Europe can welcome the Chinese

Linda Yueh

中国の接近は間違いなくヨーロッパに利益をもたらすが、その意図や行動を理解することは難しい。たとえば、中国はユーロ圏の赤字国政府の国債を購入し、巨大な輸出市場を提供している。それはユーロ危機を回避できるという信頼を与えてくれるだろう。

もちろん、中国の目的は外貨準備をドル(US財務省証券)から分散することであった。債務危機が懸念されてからは、債券投資より、中国企業による直接投資が増えている。中国政府は「中所得国の罠」を心配しており、輸出部門を高度化し、技術革新や世界的な競争力のある外国企業を買収している。

ヨーロッパにとって、中国のユーロ投資があったから、ユーロの衰退は回避されていると言える。しかし、他方で、中国は長期的に人民元を「国際化」するだろう。企業買収と合わせて、ヨーロッパにおける中国の影響は、激しく転換するかもしれない。

中国の台頭から利益を得るには、その目的や政治的制約を深く理解しておかねばならない。

(China Daily) 2011-06-27

China's message to EU

ヨーロッパと中国とはウィン・ウィンの関係を享受している。確かに、一部の国に投資が集まれば、それを中国の影響力として心配するのかもしれない。だが、1980年代以来、中国は西側の直接投資を厚遇してきた。そして今や、西側に依存するのではなく、世界の主要な成長のエンジンとなったのだ。世界経済の大きな変化(中国の台頭)を理解するなら、ヨーロッパにもその機会は開かれている。

The Guardian, Tuesday 28 June 2011

China and the EU: The longest of marches

ロシア人ではなく、中国人を心配する。スウェーデン、Saab's Trollhättanには3800人の中国人労働者がやってきた。ヨーロッパ周辺部における中国企業の直接投資に関する論説です。

なるほど、温家宝首相は西側企業が中国で多くの投資している、と強調します。イギリスで人権問題に注文を付けたキャメロン首相に、互いを尊敬しようではないか、と温家宝首相は反論しました。中国も、成長の減速と日本のような停滞に直面する恐れがあります。経済領域から始めて、対話は続けるべきなのです。


guardian.co.uk, Friday 24 June 2011

What the Romans can teach us about refugees

Richard Miles

ローマ帝国の砦がブルガリアのBukelonにあった。帝国の境界は曖昧であり、移民の流入は帝国に兵士を供給してきた。しかし、異民族の侵入を止めるために戦争を起こした皇帝は大敗を被り、とーマ帝国衰退のはじまりとなる。


l         ギリシャ救済か、崩壊か

FT June 24, 2011

‘Deep Pasok’ must not dictate the eurozone’s fate

Tony Barber

ギリシャの歴史には、経済破綻、汚職、債務、外国からの圧力、が繰り返されてきた。ユーロ圏に入ってから、国内改革は忘れられた。現在の与党Pasokも、伝統的な利益団体のネットワークに依拠して、改革を放棄してしまう。

しかし、若者たちはEUの文化を継承している。

FT June 24, 2011

Smashing plates can’t rescue this taverna

By Tim Harford

ギリシャ、EU、ポルトガルの状況を、破産寸前の食堂再建の話に変えた政治的寓話。

WSJ JUNE 24, 2011

The EU's Greek Revisionism

By MARTA ANDREASEN

guardian.co.uk, Saturday 25 June 2011

America's role in this Greek tragedy

Mark Weisbrot

アメリカ財務省は、IMFを通じて、ギリシャの債務危機に大きな発言力を持っている。IMF、欧州委員会、ECBは、緊縮政策のトロイカ体制だ。ギリシャがデフォルトを避けられないと理解するなら、リーマン・ショックを経験したアメリカが、この体制を破壊することだろう。

WSJ JUNE 25, 2011

What the Greeks Are Teaching

By HOLMAN W. JENKINS, JR.

guardian.co.uk, Sunday 26 June 2011

The euro: A project in peril

FT June 26, 2011

Maybe Greek MPs would be right to say No

By Wolfgang Münchau

融資の条件をギリシャ議会が受け入れなければ、数日中に、ギリシャは破綻する。財政破綻がもたらす影響を考えれば、議会は受け入れるしかない。しかし、拒否することにも十分な理由があるだろう。

緊縮策を受け入れても実行は難しい。民営化によって歳入が得られ化ければさらに緊縮が必要になる。それは受け入れられないだろう。緊縮という、欺瞞を受け入れるか、デフォルトを受け入れるか?

BLOOMBERG Jun 26, 2011

What Europe Can Learn From Asia’s 1997 Crash

By William Pesek

ギリシャから6000マイル離れたアジアは、先の金融危機の発生地である。インドネシア、韓国、タイなどは、今のヨーロッパ諸国より発展が未熟であった。中国の製造業はまだ、世界市場の支配を広げておらず、アメリカは優位を示せた。その違いにもかかわらず、5つの学ぶべき点がある。

1.デフォルトとその波及は避けられない。アメリカや日本の経済も不調である。

2.「199712月、韓国は570億ドルのIMF融資に頼り、財務基盤の弱い企業や支払不能の銀行を整理した。脱税を摘発し、債務額を明確にした。」 アジア通貨危機は、たとえ苦痛が伴っても、問題の根本を解決する素早い行動が回復を早める、と教えている。

3.経済改革が必要だ。中国が影響力を増す世界で、雇用を増やすための競争力を回復するには、一層の改革が避けられない。アジアはサービス部門を開放し、クローニズムを克服した。緊縮策だけで解決できるものはない。アジアは新しいダイナミズムをつかんだ。ユーロ圏が切り下げだけで成長を回復することはない。

4.財政を健全化するのは、増税ではなく、成長である。日本はその失敗を示している。豊かな国でも、課税と誘因の配置を間違えば成長を失う。

5.IMF融資は高くつくが、重要なのはその条件だ。たとえデフォルトが起きても、否定にこだわるべきではない。危機の先には再生がある。アジアはそれを示している。

guardian.co.uk, Monday 27 June 2011

Greece is standing up to EU neocolonialism

Costas Douzinas and Petros Papaconstantinou

破滅的な緊縮策は維持できない。それは多くの知識人Amartya Sen and Jürgen Habermasや国連も認めている。時間の問題だ。

Syntagmaは緩やかな形でTahrir Squareに変わった。ギリシャは反政府デモの力によってその方向を変えてきた。自由な人々の意志決定が糾合した形で、どれほど強い政治にも負けない意味を示す。その希望は、アテネから、ダブリン、リスボン、ロンドンに広まった。

SPIEGEL ONLINE 06/27/2011

Top Economist on the Euro Crisis

'The German Government Will Pay Up'

ドイツの指導的エコノミスト、Stefan Homburgへのインタビューです。独仏が銀行にも強いた救済融資を激しく批判します。

銀行は残りの融資を守るために政府に協力した。これは公益を損なうものだ。独仏の指導者たちは危機を政治ショーに利用している。市場をゆがめる政治の介入に反対します。危機の伝染や、「大き過ぎて潰せない」という主張も拒みます。

FT June 27, 2011

The EU must step toward fiscal and political union

Peter Mandelson

FT June 27, 2011

Give Greece time to prove it can do the job

By George Papaconstantinou

20105月以後に何が起きたか、を考えることが重要だ。EUはざいせいあかじの削減を前座し、それは緊縮策で達成された。予算赤字を5%、財政赤字の15%削減、付加価値税の4%アップ(30%まで上げられる)、しかも、16%アップする可能性もある。公務員の給与は名目で15%削減された。グリーン・テクノロジーやインフラ投資に成長回復のカギを見る。

債券保有者がその関心を失わないように。

FT June 27, 2011

Greece’s hour of responsibility

guardian.co.uk, Tuesday 28 June 2011

Greece is no Lehman Brothers

Raoul Ruparel

問題は、デフォルトに対して、銀行システムが十分な自己資本を持っていないことだ。

guardian.co.uk, Tuesday 28 June 2011

Greece's crisis, Europe's nemesis

Carne Ross

ギリシャ債務危機だけでなく、ヨーロッパの政治危機も世界中に影響を及ぼす。ヨーロッパ政治は今でも、地方や個人に縛られている。

FT June 28, 2011

Five tasks for Europe’s leaders

Jean Pisani-Ferry

この危機を利用して、ギリシャ政府には行動計画を明確に示し、EUが合意形成するべきだ。

1.銀行部門から完全に問題のある資産を取り除く。脆弱な銀行には自己資本の強化策を求める。2.ギリシャ債務は、税金で処理するか、民間債権者が損失として処理するしかない。3.金融危機を処理するメカニズムEuropean Financial Stability Facility (EFSF) そして European Stability Mechanism (ESM)を積極的に利用する。4.南欧経済の成長戦略を示す。5.ユーロ圏の制度改革によって財政規律や危機処理の弱点をなくす。

NYT June 28, 2011

Leaderless in Europe

SPIEGEL ONLINE 06/29/2011

Austerity Measures

Where the Axe Will Fall in Greece

FT June 29, 2011

Greece pulls back from the brink

By Kerin Hope and Ralph Atkins in Athens

FT June 29, 2011

Greece escapes collapse, but its true problems are only just beginning

Ian Bremmer

議会が承認したことで、ギリシャはデフォルトを免れた。ただし、その成功は短命だ。500億ユーロの民営化、毎年12000ユーロの連帯税“solidarity tax”が求められる。金融危機の伝染を防いだ。さらなる改革が必要だ。

FT June 29, 2011

Germany is the loser from Greece’s wriggle

By Derek Scott

ドイツの製造業はユーロ圏によって利益を得た。それはしかし、ドイツの納税者や消費者に損失を与えた。ユーロ危機は、ドイツの製造業・銀行・政治家の間に生じた暗黙の共謀である。

ギリシャの緊縮策や改革では、この問題を解決できない。ギリシャは輸出できず、為替リスクは信用膨張に代わって、その結果の債務負担をギリシャは軽減されず、政治家たちはユーロ圏を現状のまま維持している。

FP Thursday, June 30, 2011

15 things the Greek austerity vote won’t accomplish

Posted By David Rothkopf

アテネの暴動は、人々がユーロ圏にとどまることを歓迎しない点を明らかにした。実際、緊縮策が解決しない15の問題を指摘できる。スペイン債務危機、ドイツへの依存、金融システムの脆弱さ、人口減少、移民、新興諸国、日米との競争、中東・北アフリカにおける不安定さ、など。

guardian.co.uk, Thursday 30 June 2011

Today Greece. Tomorrow Europe's Gucci-clad elite

Paul Mason, Athens

FT June 30, 2011

Greece can be saved – here’s how to do it

Jeffrey Sachs

研究者にはデフォルトを支持する者が多い。しかし、それは単純すぎる。現在のグローバルな金融市場で、私は秩序正しいデフォルトが容易に実行できるとは思わない。銀行には取り付けが起きる。他国に危機が伝染する。CDSが引き金となる。ハゲタカ資本家がギリシャ債券を捨て値で集めて裁判を起こす。ヨーロッパ政治が混乱する。他のデフォルトを招く。ユーロ圏の崩壊も排除できない。

市場における高金利は自己実現的なデフォルトに至る。金利を低く抑えるなら、ギリシャの債務はすべて返済できて、多くの者の利益になる。ヨーロッパの中で、通貨危機や債務危機は抑えることができる。

デフォルトなしの解決策もある。北西ヨーロッパの経済にユーロを介して縛られているから、ギリシャの成長を回復させるには、その成長がユーロに結びつくことだ。ギリシャには豊富な太陽光と風がある。北西ヨーロッパにエネルギーを輸出できる(観光客が来る)。


l         アメリカ再建

WSJ JUNE 24, 2011

Why the Old Jobs Aren't Coming Back

By MICHAEL SPENCE

WP 06/24/2011

The U.S. does not need to copy Germany

By Charles Lane

かつて「日本株式会社」がアメリカのジャーナリストや研究者の間で驚きをもたらした。しかし、1989年にそれは破綻した。日本脅威論は、今や膨大な中国脅威論に変わっている。もっとさかのぼれば、権威者たちが、ソ連は資本主義のブーム・バスト・サイクルを克服した、という議論を見出すだろう。

しかし、アメリカがドイツの制度を取り入れるのは間違いだ。社会、文化、政治、経済などを利用して、各国の資本主義にはそれぞれのメリットがある。

WP 06/28/2011

Two cheers for Germany

By Harold Meyerson

私は、アメリカが中国やドイツのようになれる、とは考えていない。この不況から脱出する道はないのか?

私は、アメリカの金融・小売業が支配的な経済(Wall Street-Wal-Mart economy)は機能しないこと(機能しないほどひどく分配が不平等化していること)を強調するために、ドイツについて書いた。活力ある製造業を維持することがいかに重要であるかを示したかった。私は、経済を高めるのに、中国と価格競争する必要がない国があることを読者に教えるために、ドイツについて書いた。実際、生き生きとした経済を取り戻すには、発展途上国の低賃金輸出基地と競争できるように、われわれの経済を競争的にすることなど求めていないのだ。グローバリゼーションの時代に、発展した国が下方に移動して競争しなければならない、と思われていることを正すために、私はドイツについて書いた。

guardian.co.uk, Wednesday 29 June 2011

The new Rome is not the new Greece yet, but the US must look to its laurels

Timothy Garton Ash

アメリカの独立記念日に、Thomas J Whitmore大統領は演説した。それは、アメリカと世界のためにアメリカ独立を祝福する、という尊大なモノローグで、まるでハリウッド映画のようだ、と評される。・・・

これはアメリカ一極世界が支配的であった1996年のアメリカ映画である。アメリカは新しいローマ、束縛を解かれたプロメテウスであった。

15年を経て、何が変わったのか? 世界最強の軍隊は二つの戦争を行った。イラクとアフガニスタン。どちらも勝利と呼べるものからは遠く、後者はまだ終わっていない。多くの月日が戦争の成否をめぐる論争に費やされ、今、メディアから歴史へと消えつつある。

カブールの高級ホテルで自爆テロが起きたように、自由で民主的な体制どころか、基本的な治安も確立できていない。しかし、軍事顧問たちの不満をよそに、オバマ大統領は予定通り米軍の撤退を命じた。アメリカは自国の再建に集中する必要がある、と。最近、ブログでは、オバマがもう一人のアフガニスタンから軍を撤退させた指導者と比較されました。彼も自国の経済と社会を再建する必要があったのです。ブログが呼びかける大統領は、バラク・ゴルバチョフ。

2011年のアメリカと1988年のソビエトを比較するより、1911年のイギリスと比較する方が(アメリカの条件と)近い。P.ケネディーPaul Kennedy4半世紀も前に『大国の興亡』を書いたときは、あまりにも早く、違う新興国を取り上げた。1987年というのは、ソ連が崩壊し、日本が停滞の時期に入る前であった。だから強気のアメリカ人はその本を無視した。もし今年出すのであれば、もちろん、中国を扱うだろう。

ケネディーは、アメリカが過剰拡大によって負担を強いられる、と考えた。しかし、イラクやアフガニスタン、911以後の負担は、アメリカの経済規模が拡大したために、第二次世界大戦の4倍のコストにもかかわらず、GDP比では1945年、35.8%から、2008年、1.2%に低下している。ただし、10年に及ぶグローバルの軍事紛争はアメリカの時間、関心、エネルギーを他の分野から奪った。リビアが示したように、アメリカは軍事的な「最後の貸し手」であったわけだ。

同時に、アメリカは福祉の過剰拡大にも苦しんでいる。この点で、大西洋の両岸には根本的な違いはなく、間違った印象がある。2015年までに、アメリカのメディケア、メディケイド、社会保障の支出はアメリカ政府支出の半分を占め、残った半分の半分が防衛支出である。アメリカのインフラは老朽化し、劣化しているし、教育システムの水準も国際的に観て低下している。

こうした深刻な構造問題を解決するには、党派を超えた、決定的な政治行動が必要である。この点で多くの人が同意しているし、オバマが2008-9年に登場したのもその信念であった。しかし、今、アメリカのゴルバチョフになるのを変えるとしたら、その力は両極化した政治を乗り越え、政治システムの行き詰まりを打破する、強い政治的意志を要する。連邦政府の債務上限をめぐる論争でも示されたように、イギリスの独裁が復活することを恐れたアメリカ建国の父たちは、チェック・アンド・バランスを制度化し過ぎた。

時間とともに超大国は機能マヒに陥る。富と権力が増すにつれて、アメリカには優れた技量と信念が必要になる。しかし、アメリカでも、何でもやってやる、という楽観論は退潮した。新しいローマはまだ新しいギリシャの兆候を示していないが、競争的なデカダンスの時代に入った。

アメリカは明らかに自分たちの苦境を認めている。しかし、そこから抜け出す方法について、政治的な合意を見いだせない。

guardian.co.uk, Thursday 30 June 2011

How to make short work of unemployment

Dean Baker

アメリカも、ドイツと同じように、ワーク・シェアリングで失業者を減らすことができる。


l         中国と国際秩序

FP Friday, June 24, 2011

South China Sea or me?

Posted By Clyde Prestowitz

南シナ海でアメリカと中国が争っているのはなぜか? 何についての争いか? オバマ大統領によるアフガニスタン撤退。バーナンキ議長による金融の量的緩和策。中国によるアメリカへの警告。アメリカの優位戦略における関連性。

フィリピンや日本は脅かされている。しかし、アメリカの何が、アジアで脅かされているのか? それは、未来の経済秩序である。

中国が影響力を高めるアジアにおいても、アメリカと各国との間で支持されるのは、重商主義ではなく、開放型の市場統合だろう。アジア太平洋の自由貿易圏や通貨同盟が支持される。

Global Times, June 26, 2011

Dangerous nationalism risks future of South China Sea

By Wu Shicun

(China Daily) 2011-06-28

Bilateral peace efforts

(China Daily) 2011-06-28

Seeking stability in Asia Pacific

By Shen Dingli

中国の台頭に安全保障上の拡大が加わり、アメリカはアフガニスタンから部分的に撤退し、いよいよ東アジア地域に重心を置く。アフガニスタンや中央アジアの安定化は、中国にとっても重要だ。

「アメリカは徐々に撤退し、円滑にこの目的を目指す中で、すべての関係者との協力関係を確保することが肝要だ。アメリカ軍が来月からアフガニスタンを離れるより前に、米中協議を持つなら、それは今後10年の中国西方における相互理解と協力に対する吉兆となろう。」

米中双方は朝鮮半島をめぐる交渉や衝突について関与を深めている。この先、不信を深めてはならない。そのため、アジア太平洋の事情について米中が協議のメカニズムに合意しておくことが必要だ。

二つの戦争を経て、この地域に関する米中の認識を相互に確かめるときだ。双方が何を正当な利害と見なすか、明確にできれば、地域全体の発展と安全保障を共有する条件になる。

YaleGlobal , 28 June 2011

Asia Matters for America

Satu Limaye

貿易、投資、雇用について。

WSJ JUNE 30, 2011

South China Sea Do-Si-Do

WSJ JUNE 30, 2011

Billiards in the South China Sea

By MICHAEL AUSLIN

中国はアメリカを東アジアから追い出そうとするが、アメリカは東アジア地域の覇権を中国に渡したくない。アメリカは中国と異なるゲームをしていると主張してきたが、もはや東アジアのビリヤード(玉突き)から抜け出せないだろう。

多くの意見では、中国は南シナ海の海上輸送を脅かす力を持ち、アメリカ海軍や世界貿易・石油の最も重要な輸送経路という、アメリカの国益に干渉する。他方、東南アジア諸国にとって(日本なども)、これは領土紛争だ(たとえば尖閣諸島)。この海域には石油や天然ガスの豊富な資源が埋蔵されている。

中国は自国船舶の自由な航行を主張し、他国船舶の航行を妨げて、領海を実質的に主張する。こうした嫌がらせは、中国の経済力と海軍力が増すことで、近隣諸国に拒めなくなってくる。しかしまた、中国がこの海域で海上輸送を完全に妨害するとは考えられない。直接的な軍事攻撃はただちにアメリカ海軍との衝突につながるからだ。

この戦略はビリヤード・テーブルに似ている。北京は一つ一つ、周りの球をテーブルから落として行く。これに対して、東南アジア諸国はアメリカの介入を望む。

アメリカの対応は難しい。ワシントン(アメリカ政府)が余りにも強く球を打つ場合、そして、東南アジア諸国に合同軍事演習を求める場合、北京が嫌がらせ以上に進み、中国が敵になってしまうことを、ハノイ、マニラ、ジャカルタ、などは恐れている。しかし、アメリカが余りにも弱くしか打たないと、中国の望みを受け入れるしかない、と弱小国は思うだろう。

こうしたバランスの中で、アメリカは異なるゲームを止めた。これまでアメリカは、現状維持を主張し、中国が地域の規範に挑戦するときに概ね反応してきた。アメリカの政策とは、北京にアメリカの善意を確認してもらい、中国の指導者たちに、アメリカは中国の増大する影響力を脅かしはしない、と確信させることだった。それが中国の行動を責任あるものとし、弱小国も丁寧に扱うだろう、と期待した。

今後の政策としては、中国のゲームを認めたうえで、テーブルを整備することだろう。ワシントンはテーブルを拡大し、参加者を増やす。インド、日本、オーストラリアがそうだ。そして参加者がもっと重要な役割を引き受け、中国の船舶が航行するときは協力して監視する。そうすることで領海侵犯問題に素早く行動できる。

ワシントンの目標は、インド・太平洋における海洋利益の共同体を築き、中国の行動にも対処することだ。情報を共有し、訓練を行い、小国が国際的な権利を守られるように、安全保障の手段を提供する。

アジアにおける「ミュンヘン・モーメント」(ヒトラーを融和した会議として批判されたミュンヘン会談)が迫っている、と専門家は考える。

YaleGlobal , 30 June 2011

As Number One, China to Face Hour of Choice

Richard Bush

中国がアメリカを抜いて世界最大の経済大国になる。しかし、それは自動的に、中国の望むような国際秩序に変わることを意味しない。歴史は単線ではなく、最大の国が行う選択によって変わる。

第一次世界大戦の前に、ドイツはイギリスの支配的な地位に挑戦した。1913年の経済的な規模は、故Angus Maddison によると、1990年価格で、最大の経済がアメリカ、5000億ドル以上であった。次は4カ国が2250億ドル〜2400億ドルに集まっていた。すなわち、イギリスとドイツであるが、驚いたことに、ロシアと中国も入っていた。そして、フランスは1440億ドル、日本はわずか710億ドルであった。

中国が含まれたことは不思議ではなかった。1913年にも、中国の人口は世界最大であった。しかし政治的には脆弱で、内部が分裂し、帝国主義の侵略に遭った。

当時の教訓として言えることは、1.経済規模がグローバルな政治的影響力と同じではない。2.経済規模が軍事的な強さと同じではない。3.新しい国が第一位になるには戦争を避けられない、というわけではない。アメリカは西半球で支配的な地位にあったが、イギリスはこれを許容した。日本は経済規模では3倍もあった中国とロシアに戦争で勝った。日本の商業的、植民地の利益は明白であったが、英米は戦うよりも宥和を目指した。

大国の重要性は、経済的なランクではなく、その選択である。中国は平和と繁栄に貢献するグローバルなプレーヤーになるのか、国際秩序への挑戦者になるのか? 東アジアにおいて、アメリカも、他の近隣諸国もそれを懸念している。他方、アメリカはこのまま経済的に衰退し、国際的な指導力を失うのか? 財政、教育システム、科学技術などを改善し、国力を回復するのか?

Global Times, June 30, 2011

Both players would lose in Sino-US competition

By Wang Fan

アメリカがアジアの問題に加わることが地域の安定性に貢献しているのか? 東アジアの安全は、アメリカが「世界の警察官」として行動することから、「地域の多角的安全保障メカニズム」へと移行するだろう。現在のアメリカの同盟システムは、一部の国の安全でしかなく、長期的なものでもない。

アメリカは自国のために行動する。朝鮮戦争が示したように。アメリカと中国のように、大国間の紛争は相互に失うものが多い。今後、紛争は大国と小国の間で起きるから、大国はそれに冷静に対処することが重要だ。米中関係の安定が、地域の安全を保つ。


NYT June 25, 2011

What Would Nixon Do?

By GIDEON ROSE


The Observer, Sunday 26 June 2011

Libya: Nato must up its game to finish what it started


FT June 26, 2011

Japan’s nuclear bail-out struggle

WSJ JUNE 30, 2011

The Fukushima Warning

By NICHOLAS BENES

日本の企業は、ガバナンス・システムを欠いている。それが重要であることを認めない。原発事故はこの重要な欠陥を示している。


l         世界経済政策

WP June 27, 2011

Can global economic policy be freed from its paralysis?

By Robert J. Samuelson

第一次世界大戦後のドイツから英仏に対する賠償金支払いを扱うために、1930年、BISは設立されました。その年次報告書を考察しています。

財政赤字、金利引き上げ、インフレーションが問題になります。今でも、アメリカ、ヨーロッパ、日本で、世界経済の半分を占めます。旧中枢が一斉に財政赤字削減に向かうとき、何が起きるか? 新興諸国は逆に財政政策で景気を刺激するかもしれません。民間需要が伸びるべきです。

FT June 27, 2011

Dollar seen losing global reserve status

By Jack Farchy in London

UBSの調査は、今後25年間で、ドルの準備通貨としての役割は低下する、と述べた。これは、8兆ドル以上を保有する、80カ国以上の中央銀行準備担当者、政府系投資信託、多国籍金融機関に対する調査である。昨年、Zoellick世界銀行総裁が指摘したような、複数通貨(そして金)による世界システムへと移行するだろう。

Project Syndicate, 2011-06-27

Can Food Prices Be Stabilized?

Jeffrey Frankel

サルコジ大統領がG20で唱えたように、政府が食糧価格の高騰を抑えたいと思うのは当然だ。しかし、その具体的な政策の歴史を振り返れば、間違った政策は事態を悪化させることに注意するべきだ。

たとえば、食糧を輸入している国が、金融引き締めによる通貨価値の増加で食糧価格を抑えようとする。交易条件の悪化を緩和するとしても、金融政策でそれを行うことはできない。生産国は価格変動を抑えるための国際カルテルを組織したが、ほとんど失敗した。政府による食糧備蓄は価格安定化を促すはずだが、政府が正しく管理するとは思えず、多くは失敗であった。

豊かな国では一次産品生産者が政治的な力を持っている。それゆえ農産物価格は政府によって世界価格よりも高く維持されている。それは財政負担、経済効率、消費者の利益から見て、破滅的である。

他方、多くの発展途上国では農民が政治力を欠いている。アフリカではコーヒー、ココアなどに商品ボード(政府による強制購入)がある。需給の変動を吸収して価格を安定化するためには支持されるが、実際は、独立してしばらく、世界価格よりも安価に購入して政府収入を増やそうとした。その結果、生産量が減少した。また、政治家たちは消費者(有権者)を喜ばせるために価格を抑え、それは国内の消費割当や、低価格によって増大する消費を輸入で補い、世界価格への上昇圧力になった。生産国の場合、世界価格の上昇を遮断して、国内消費者を守るために輸出を規制した。こうした政策は世界価格の急騰を加速する。むしろ、WTOが求めるように、消費国、生産国が、ともに政府介入を止めるほうが良い。

商品価格は将来も浮動的であろう。しかし、この事実を受け入れて、それがマイナスの経済効果を及ぼさないように、交易条件の変動を回避する金融手段の提供など、他の手段を用いるのが良い。サルコジ大統領は投機を非難した。しかし、投機には価格変動を抑える働きもある。投機に用いられるレバレッジを制限することは必要かもしれないが、それ以上の制限は望ましくない。

FT June 28, 2011

Why austerity alone risks a disaster

By Martin Wolf

BIS報告は、債務肥大の先進経済に緊縮策を求めた。経済不況を歓迎せよ、と。しかし、この政策は支持できない。「不況の封じ込め」がまだ必要だ。この非常時に、財政健全化を唱えることはまだ早い。民間部門の債務と対外不均衡の調整はまだ終わっていない。


l         成長と中国共産党

BLOOMBERG Jun 27-29, 2011

Shilling: Why China’s Heading for a Hard Landing, Part 1-4

By A. Gary Shilling

中国には無限の労働供給があり、無限の成長力がある、という評価は、その深刻な経済問題を隠してしまう。

労働力は高齢化しており、消費者は貯蓄が多く、支出が少なすぎる。政府は、輸出が不振な時期に、支出を抑制しつつあり、それはデフレを招く危険が高い。

「無尽蔵に見える低賃金労働力であるが、一部は厳格な一人っ子政策により、そのピークは2014年に来る。ある推定では、1970年代後半から、豊富な労働力の供給がGDP成長を年1.8%高めてきた。労働力人口の減少は、2030年まで、成長率を0.7%下げるだろう。」

アメリカでさえ不況に苦しむとき、中国は成長を維持した。同時に、中国はそれほど貧しく、経済政策の手段も未熟である。社会保障制度やインフレ抑制についても、これまでの議論を整理している。特に、インフレ、土地投機の問題は深刻だ。

「住宅ブームが北京のアパートの価格を引き上げた結果、所得上位20%の人だけが購入できる。すなわち、平均所得の22倍まで上昇した(アメリカの住宅の平均価格は平均所得の約6倍)。1平方メートル当たりの不動産価格は一人当たり所得の164倍であり、日本の33倍に比べても異常に高い。」

融資の量的制限、金利引き上げ、人民元の増価、課税、などが検討・導入されているが、その効果は予測できない。

ハイブリッド型の市場システムで、政府が過熱した経済をソフト・ランディング(軟着陸)させるのは容易でない。第二次世界大戦後、アメリカの連銀は不況を避けるために過熱した経済を冷ます試みを12回行ったが、成功したのは1度だけだった。政治的に支配されている中国の中央銀行が、つまり政府の指導者たちが、政治的に独立したアメリカ連銀よりも成功するとは思えない。

この1年で金利を5回、預金準備率を8回引き上げ、政府支出や補助金を削り、輸出部門でも売り上げが減少している。ハード・ランディングに向かうだろう。その結果は、人民元の変動制ではなく、不況による国内生産力の過剰であり、再びアメリカやヨーロッパに向けた輸出の増大、世界デフレの加速であろう。

SPIEGEL ONLINE 06/27/2011

Mao Inc.

China's Terribly Successful Communist Party Turns 90

By Erich Follath and Wieland Wagner

中国共産党は世界で最も成功した資本家集団になった。彼らの最大の課題は、いかにして権力を維持しながら民主化を進めるか? である。・・・眠くても目が覚めるほど面白い特集記事です。

中国は英雄を必要とする。社会的な模範だ。それに従って、普通の人々が社会を変える。それは儒教の時代に真実であったが、共産党の支配下では一層真実だ。1950年代の模範労働者Shi Chuanxiang(人民大会堂で表彰された労働者)と、現在のモデルEnter Duan Wenyin(北京の東60キロにあるBeigou村を図書館・人工計画・党内選挙などで近代化し、モデル村の観光地にした)について、その違いは興味深い。

「中国共産党員の数は、およそドイツの人口に等しい。7800万人が属する世界最大の、そして、最も成功した政党である。」 ソ連共産党は歴史のゴミ箱に消え、北朝鮮やキューバの共産党は国民を経済破綻に陥らせ、信用を失った。しかし、中国共産党は不治の硬化症に耐えてきたし、これからも耐えるだろう。その指導者たちは恐竜である。ただし、適応することを覚えた恐竜だ。

過去30年で、中国はGDP30倍に増やし、ドイツや日本を超えて、2020年までにアメリカも追い抜くだろう。その外貨準備のわずか3分の1で、ドイツ株価指数Germany's DAX indexに含まれる優良企業をすべて買収できる。経済的にも、政治的にも、アメリカに次ぎ超大国となった中国は自信を深め、陸海軍を増強して、日本やフィリピンなど、近隣諸国に対する領海要求を強めている。

中国共産党は、1921年、上海で、57人の党員から始まった。しかし、クリントン国務長官は、最近、The Atlanticのインタビューで、中国のシステムは滅ぶしかなく、中国官僚は歴史を止める、愚者の使徒だ、と批判した。・・・そうだろうか?

中国共産党の最高権力機関である政治局の委員は、たった9人しかいない。拡大委員会でも24人しかおらず、完全な秘密会議である。しかし、WikiLeaksに載ったアメリカ政府の公電には、合意形成が完全に民主的な形で行われる、と述べている。

裕福な個人が中国共産党の中で重要な役割を果たしているのも驚きである。2002年まで、彼らは「労働者階級の敵」であった。今では、189人の億万長者のうち、3人に1人は共産党員だ。人民代議員のZong Qinghouも、資産120億ドルを持つ、中華人民共和国で最も裕福な男だ。富を誇示することはせず、58の生産地に約30万人を雇用する。114時間働き、酒とたばこだけが贅沢で、1日に20ドル以上は使わない。

あなたは共産党員なのか? それとも、資本家なのか? (a communist or a capitalist?) 「それはとてもドイツ的な質問だ。」と、Zongは笑った。「わたしはプラグマティストだ。」 経営者の権利も、労働者の権利も、重要だ。もしこの世界に社会主義の支配的な土地あるとしたら、それはヨーロッパだ。高税、福祉国家、それで終わりだ。同情するよ。

この奇妙な中国共産党に匹敵する組織は何だろうか? これほど称賛すべき、しかも卑劣な、宗教に近い精神性を持ち、半ば化石化しながら、しかも改革を推進する、全体的な抑圧と多元主義の間で、激しい動揺を繰り返す制度。

2008年、中国共産党から非公式の代表団がバチカンを訪問した。・・・我々には政治宣伝局があり、あなたたちにはthe Heralds of the Gospelがある、我々には中央組織部があり、あなたたちにはthe College of Cardinalsがある。バチカンの代表は中国共産党の公使に、どこが違うのか? と尋ねた。・・・彼は応えた。

「あなたたちは神に遣わされた。われわれは悪魔に遣わされた。」 ・・・それほど相容れない、ということか。

FT June 28, 2011

China’s old bad banks run new risks

By Henny Sender

FT June 28, 2011

China’s emerging municipal mess

BLOOMBERG Jun 28, 2011

Women Are Antidote to China’s Old Boys’ Club

By William Pesek

中国における女性の活躍は、アジアの他の諸国に見られない。

「日本と韓国は、それが成長を制約することを考慮することなく、女性を十分に雇用しない。フィリピンでは多くの女性が海外に送られて女中として働き、送金によってその非効率な経済を支える。インドなど、アジア各地で男子を尊重し、女子を堕胎してしまう。インドネシアやマレーシアではイスラム化が進み、女性はヴェールを着け、家庭に引きこもる。」

日本は、その制度化された女性差別の弊害を示している。中国が、もし日本のような停滞を避けたいのであれば、政治や企業重役として女性を同等に扱い、増やすことだ。

WSJ JUNE 29, 2011

China Needs a Credit Crunch

By VICTOR SHIH

LAT June 29, 2011

Mao, Confucius and Louis Vuitton

By Daniel K. Gardner

天安門広場にあった三つのシンボル。毛沢東、孔子、ルイヴィトン。ただし、孔子は毛沢東の信奉者たちに批判されて、いつのまにか広場から消えた。

guardian.co.uk, Wednesday 29 June 2011

China's Confucian makeover

Isabel Hilton

FT June 29, 2011

China can yet avoid a middle-income trap

By George Magnus


l         IMF専務理事

FT June 28, 2011

How Lagarde can rescue the IMF

Mohamed El-Erian

IMF専務理事がChristine Lagardeに決まった。この数カ月に行うべき5つの課題がある。

1.IMF専務理事の仕事を政治的な野心から切り離す。前任者たち(Strauss-Kahn and Rodrigo de Rato)は自国に戻るために利用した。2.次の専務理事を決める正当な選考手続きを示す。国籍と関係なく、候補者の能力を見る。また、副専務理事の決定について、アメリカ国籍以外から決める。3.債務危機に対するIMFの分析・政策能力を高める。EU周辺部の危機に対処し、グローバルな不均衡に対処し、雇用不足を続ける構造的な硬直性を分析するべきだ。4.将来の債務危機に対する融資を行えるよう、財政の均衡を回復する。それはヨーロッパで行った多くの融資に対する説明にもかかわる。5.IMF職員の公的な地位を高める。

Eswar Shanker Prasadは、Lagardeの勝利が後味の悪いものだが、長期的には新興諸国の影響を高める、と指摘する。しかし、制度改革には消極的であろう、と考えます。

FT June 28, 2011

Sarkozy challenge undermines ECB’s independence

Martin Feldstein

Lucrezia Reichlin and Charles Wyploszの附論も含めて、ECB総裁人事の不可解さを示しています。IMF人事どころではないですね。そうか、これが政治であり、中央銀行か?

FP JUNE 28, 2011

Lagarde's To-Do List

5人の専門家(Desmond Lachman, Paul Blustein, James Raymond Vreeland, Padma Desai, Raymond C. Offenheiser)がラガルド新IMF専務理事に要求します。ギリシャへの融資を減らし、客観的な基準を示し、地域の金融機関に救済融資と整理を委ね(日本やドイツが望んだように)、経済分析能力を高め、発展途上諸国の発言をもっと聞くべきだ。

guardian.co.uk, Wednesday 29 June 2011

Christine Lagarde as IMF chief? This is a gift to the fund's critics

Peter Chowla


FT June 28, 2011

Assad deserves a swift trip to The Hague

By Madeleine Albright and Marwan Muasher

シリアのアサド大統領が市民に向けた暴力を断罪する力が国際社会にはある。アメリカの元国務長官Madeleine Albrightが明言します。安保理制裁、アラブ連盟、非難声明、国際刑事裁判所、ビジネス、市民社会、宗教指導者、すべてが国際社会における責任を果たす。


SPIEGEL ONLINE 06/29/2011

Bacillus Teutonicus

Business as Usual for Atomic Energy at the IAEA

By Cordula Meyer

SPIEGEL ONLINE 06/30/2011

Fuming over the Phase-Out

Energy Shift Deeply Divides German Companies

By Ralf Beste, Frank Dohmen and Michael Sauga

SPIEGEL ONLINE 06/30/2011

A Revolution for Renewables

Germany Approves End to the Nuclear Era


WSJ JUNE 30, 2011

Let Thais Make a Deal

By THITINAN PONGSUDHIRAK

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The Economist June 18th 2011

Sticky patch or meltdown?

Syria: Who will take on Assad?

Nuclear disarmament: Move the base camp

The euro crisis: A second wave

American economic policy: Running out of road

Digital currencies: Bits and bob

Economics focus: The great repression

(コメント) 世界経済は回復するのか? 市場の信頼は揺らいでいます。1.日本の津波とグローバル・サプライ・チェーンの影響で生産が落ち込み、2.早くも一次産品、特に、石油の価格が上昇して、3.新興諸国は金融引き締めに転じています。それどころか、欧米も日本も、財政赤字を気にして緊縮策を議論しています。ギリシャとユーロの危機は他人事ではありません。

この号では、ユーロ危機の整理が優れています。ユーロ誕生から継続してきた内在的な政治対立や経済膨張への危険性が、最初は誰も重視せず、市場は強気の金儲けに走っていたのです。その弱点整理は優れています。しかし、打開策は示しません。アメリカの経済政策も、行き詰まりが整理されています。

世界から核兵器をなくせるのか? シリアの市民虐殺を止められるか? 財政赤字の特効薬は、第二次世界大戦後を見る限り、インフレと「金融抑圧」でした。すなわち、金融規制下における実質マイナス金利です。

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IPEの想像力 7/4/11

このReviewを読まれて、何を感じたでしょうか? 私はここに多くの日本を観ます。

日本の戦後復興から経済成長が示した政治・社会的パワーは、1970年代の石油危機やインフレによって消滅するかと思われました。しかし、その危機を他国に劣らぬ速さで脱しえたことで、むしろ対外的な影響力はピークを迎え、1980年代に自国と国際秩序に関わる重要な選択に直面していました。

当時、日本は、核兵器や軍事力に頼った外交を批判し、経済援助や平和的な貿易・技術移転を重視し、巨額の貿易黒字と為替レートの変動もアメリカ(と主要諸国)との交渉で管理・調整する、安定的な多元的協調体制を模索していたのではないでしょうか? 東欧・ラテンアメリカの債務危機に対しても、天安門事件に対しても、日本は欧米と異なる独自の姿勢を示そうとした、と聞きます。

しかし、今となっては、円圏や三極通貨体制(ドル・ユーロ・円)、日米構造協議、カンボジア和平会議やPKO・選挙への協力、などが遠くの雷鳴のように思えます。国際情勢が大きく転換する中で、その後、日本は経済力に見合った発言、責任ある行動を取れませんでした。さまざまな可能性は、バブルに向かう狂騒と、その後の金融崩壊によって、政治的混乱の中に失われたのです。

アジア通貨危機に関して内外でインタビューしたことがあります。欧米の研究者の指摘には鋭いものがあり、アジアの研究者にも多様な見方と悔恨、反省がある、と思いました。しかし、日本はどうなのか? バブルの処理で紛糾し、遅滞したことを悔やむ言葉が少ない、むしろ深い理解や反省を欠くように思いました。日本は、アジア通貨危機の解決に資するより、その源泉であると疑われ、新しい制度の構築に精彩を欠き、支援策も積極的に評価されることがなかったのです。

今もそうです。

首相がだれであるか、いつやめるか、に国会の議論が終始するのは、政治の貧困であると思います。何を選択し、どう実現するのか、その目標と実現過程を競い、国民に向けて議論すべきです。

菅首相に限らず、民主党が再生可能エネルギーへの転換を重要な政治課題として掲げるなら、自民党はアジアと世界の安全保障政策を掲げて国民に訴えかけるべきでしょう。そして、震災からの復興、財政再建、成長と雇用・産業振興、貿易・安全保障をめぐる中国やアメリカと日本の関係、なども組み合わせて、未来に向けた構想を示してください。

政治家たちは被災地に立ちます。民主党、もしくは改革派・市民運動の諸政党は、脱原発から再生可能エネルギーや産業、都市、生活スタイルの転換を求めて、次の時代の先端技術や思想を実現することによって国民の心をつかみます。自民党、もしくは、自由主義的保守政党は、財政再建と産業振興、教育・技術革新の促進と、各地のインフラ整備に、既得権や非効率という批判に応えるような制度の構築で応えます。

エネルギーは国際戦略や平和の問題と切り離せないし、安全保障に関わる論争は対外摩擦や領土紛争に強く影響されるでしょう。長期的に論争と合意を積み重ねておくことが積極的な決断の条件です。

今から30年の後、東日本大震災や福島原発事故の前後に生まれた子供たちが、親となり、社会を担う基層となるとき、彼・彼女らはこの国をどう感じるでしょうか? なぜ機能しない政府や制度をもっと早く根本的に改革しなかったのか? 国際的な低い評価、衰退する政党システム・日本企業のあり方を改めようとしなかったのか? かつて社会の中軸にあった世代や選択を担った人々は批判されるでしょう。

共通市場・通貨を模索するヨーロッパ。中国の貿易・投資増大を期待すると同時に恐れるEU。弱小国の再建に政治が迷走するドイツ。世界各地の安全保障に関与する一方で、自国の産業や教育、福祉国家の基礎を問い直すアメリカ。領海をめぐって中国との紛争が激化するベトナム、フィリピン。財政再建、国際通貨ドル、食糧価格、IMFのガバナンス。結党90周年を祝う中国共産党。・・・異なる選択によって、それらが、今、ここにある日本であったはずです。

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