IPEの果樹園2011

今週のReview

6/27-7/2

 

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タイの政治 ・・・アイスランド ・・・ギリシャ債務危機U ・・・中国とリスク ・・・世界都市化 ・・・南シナ海 ・・・ドイツの脱原発 ・・・イタリア政治

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, SPIEGEL, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l         タイの政治

SPIEGEL ONLINE 06/15/2011

SPIEGEL Interview with Thaksin Shinawatra

'Thailand Must Be United Again'

なぜ妹なのか?  Yingluck Shinawatraは、タイの元首相タクシンThaksin Shinawatraの妹で、その選挙資金と農民からの支持を継承しようとしています。そして政権を得たら、タクシンは裁判や政治的権利に関して合意したうえで、タイに帰国します。

しかし、帰国するまでもない? 記事には、タクシンがバルカン諸国やロシアを訪れ、ウガンダ、南アフリカにもいるし、何度もスイスで見かける、と指摘します。タクシンはモンテネグロ市民、ニカラグアの外交官パスポートを保有し、ドバイの高級住宅街で暮らしているのです。

タイの軍隊と現政権はタクシンを嫌い、2006年、3度の選挙に勝って首相の地位にあった人物を汚職の罪で投獄しようとし、タクシンは国外に逃れました。73日の選挙で、再びその後のタクシンと政権が問われます。そこで、タクシンにインタビューし、その政党Pheu Thai Partyと妹が勝利した場合、タイの政治的な和解がどうなるのか、展望するよう求めています。

なぜ政治経験のない妹が最適な候補者なのか? あなたが決めて、妹を利用するだけではないのか? 首相としての資格を証明できますか?

選挙が不正によって敗北に終わったと思えば、再び抗議デモが起きるのか? アビシット政権を支える軍部が市民を多く殺害したことについて、どう思うか? 有権者を買収したと言われているが、そのことについて反論できるか? デモ隊を資金援助したという推測についてはどうか?

タイ王室に対する不敬罪をどう思うか? 王室の廃止を望むか? なぜ王は介入して和解を求めないのか? タイの裁判制度についてはどうか? アフリカの資源投資で投機を楽しんでいるのか?

FT June 15 2011

The ghost of Thaksin still haunts Thailand

By David Pilling

Yingluck Shinawatraを迎えるタイ農村の支持者たち。多くはタイ北部の貧しい農村の女性たちだ。彼女が誰かと問う者はいない。彼女はタクシンの妹である。彼女のあいさつは、タクシンからのあいさつだ。

この選挙はタクシンへの信認投票である。また、かつて王室が頂点になって家父長的な恩恵のシステムであったタイ政治が、近代的な雇用機会や融資、医療保険を約束した新しい政治によって廃棄される過程である。都市の最も貧しい者でさえ、近代的な権利を求めるだろう。タクシンはその機会をつかんだ。

タイ保守層も、タクシンを受け入れる政治的な妥協を求めるだろうか? しかし、タクシンが保守派にとって受け入れがたい指導者である限り、選挙による勝利は都市騒乱の再現である。

SPIEGEL ONLINE 06/20/2011

Loyal to the King

Exiled Thai Prime Minister Awaits Chance to Return

By Thilo Thielke in Dubai


l         アイスランド

WSJ JUNE 16, 2011

Iceland Comes In From the Cold

By ÁSGEIR JÓNSSON

アイスランド政府が国際債券市場に復帰しました。満期5年で3%を少し超えるだけの金利によって10億ドルを調達したのです。アイスランドの金融危機は処理に成功した、と認められました。

アイスランドは3年前、救済融資ではなく債務不履行と処理を選択しました。GDP10倍に及ぶ債務に対して、アイスランドの中央銀行では最後の貸し手になりませんでした。アイスランドはユーロ圏でもEUでもなく、銀行システムが破たんしても危機の波及を恐れる必要が少なかったからです。

アイスランドの経験はアイルランドと対比されます。アイルランドは銀行を国有化して、債務返済を政府が保証しました。それは当時、格付け機関などに称賛されましたが、あまりにも過大な負担を国民に強いました。支払不能の債務を税金を支払い続けることになったのです。

この論説は、アイスランドの処理の方が優れていたことを強調します。その通りですが、バブルの破裂を海外債権者の負担に転嫁して乗り切る、国家による銀行の分割(国内債権者・預金者だけ助ける)、という超法規的な処理は、国際的な金融秩序、金融規制と監督、最後の貸し手が存在しないことを示しています。たとえば、日本の投資家は損失を強いられ、投機的な利益を上げたアイスランドのバイキング投資家たちは逃げてしまったようです。


l         ギリシャ債務危機U

FT June 16 2011

A sorry end to too fleeting a Greek dream

By Mark Mazower

緊縮政策を続けて、勇気と自己犠牲を示したにもかかわらず、ギリシャ国民はまだ不十分だと責められる。放漫財政を終わらせることを支持してきた国民が、次第に、敵対するようになっている。数万人の民衆が街頭に出て、すべての政治階級に対する無能な指導力を非難している。

1974年に同じ民衆が軍事独裁を終わらせ、民主主義の復活をもたらした。民主主義は外国への隷属を終わらせたはずだった。同じ資格でヨーロッパに加盟したから。しかし、こうしたことすべてが疑われている。

1932年の不況において、ギリシャは債務返済を放棄した。当時の政府も金本位制を離脱して債務返済を停止したが、そのコストは大きくなかった。それは他国も破綻したからであり、国際金融システムが混乱していたから、融資を受けられないことが重要ではなかったからだ。ギリシャの債券は西ヨーロッパやアメリカの民間人が保有していた。彼らの苦痛はギリシャで考慮されなかった。さらに、デフォルトはギリシャ経済を苦しめなかった。通貨管理や貿易障壁で国際競争から保護されたまま、ギリシャ経済は新興産業を中心に急速な成長を遂げた。

1930年代には債務を破棄することが悪い判断ではなかったが、今は違う。他国が続くことはないし、グローバルな銀行システムが完全に破綻することもないだろう。ギリシャは国際金融市場に復帰するため多大なコストを支払うことになる。国内経済も70年前のような成長力を持たない。民間銀行やヨーロッパ諸国の納税者は、ギリシャの債権者として、コストの負担を嫌っている。デフォルトは債権者や国際社会の強い反発にあうだろう。

それでもデフォルトは起きるかもしれない。デフォルトの費用と便益を分析するのではなく、これはギリシャとEUにとっての政治問題であるから。国民は、それが単にヨーロッパの銀行家に高級を支払うためだと思えば、追加の政府支出削減を支持しないだろう。景気回復への積極的な対策が何もないと思えば、それを支持しないだろう。そして支持が失われれば、ギリシャはデフォルトの淵から踏み出す。EUIMFの融資に示された短期思考と楽観論を乗り越えるという課題は、ヨーロッパの指導者たちにも与えられたものだ。成長のための一層の支援策が必要だ。

FT June 16 2011

Policymakers can’t kick the can down the road for ever

By Chris Giles in London

FP Friday, June 17, 2011

If Greece had nukes, they would be bailed out by now

Posted By David Rothkopf

ギリシャの指導的なエコノミスト、Thomas Straubhaarはアメリカの格付け機関を、むしろ危機を強めている、と批判した。メッセンジャーを殺すな、という反論が起きるだろう。しかし、ギリシャは同じくjunkのランクに入るパキスタンのような核兵器やテロ組織、軍の特殊部隊がない。パキスタンはギリシャ以上に返済不能であるが、アメリカ政府がそれを放置できないのだ。

guardian.co.uk, Friday 17 June 2011

Greece: bond slave to Europe

Mark Weisbrot

「想像してみるがいい。最近の不況で最悪の年に、アメリカ政府が8000億ドル以上も予算赤字を削ると決めたらどうなっていたか? そのために政府支出を削り、増税するのだ。こうした緊縮策の結果、景気がさらに悪化して失業率が16%を超えたと想像してみるがよい。さらに大統領は、今年の支出削減と増税により、4000億ドルを減らすと約束した。その時、国民がどんな対応を示すだろうか?

これは経済規模に応じて修正しただけのギリシャの現状だ。景気循環を増幅する、こんな政策を、欧州委員会、ECBIMFといった、ギリシャ国民に責任を負わない、保守的な、超国家機関が決めたのだ。これは単に、不正直なデフォルトに過ぎない。

ギリシャの民主政府は、ヨーロッパの要求にもっと対抗しなければならない。

guardian.co.uk, Friday 17 June 2011

At last, Germany is making the right noises about the eurozone

Henning Meyer

SPIEGEL ONLINE 06/17/2011

'We Need to Find a Solution Quickly'

FT June 17 2011

Germany concedes on Greek debt deal

By Quentin Peel in Berlin, Kerin Hope in Athens, and Robin Wigglesworth in London

FT June 17, 2011

Greek crisis threatens European decade of economic implosion

Mohamed El-Erian

ギリシャ問題は二重の行き詰まりにある。すなわち、成長できないことと、債務が大き過ぎることだ。そのどちらも救済融資の関係者には影響していない。ギリシャ国民は犠牲が足りないと言う近隣諸国を巻き込んで債務返済を拒むべきだ、と考えるだろうし、債権者側は、ギリシャが自分たちで招いた債務危機に負担し続けるのは限界だ、と思うだろう。

これらの相違は妥協できない問題ではない。しかし、数カ月の猶予を与えるだけで、現在の交渉はそれに見合った妥協を示せないまま終幕に至りそうだ。

最も注意すべきことは、ギリシャ政府は街頭の抗議活動を生業できなくなることだ。次に注意すべきことは、ギリシャ政府が受け入れても、債権者側が負担に合意できないことだ。IMF融資、政府間の分担、民間債権者、ECB、それぞれの負担に合意が必要だ。

債務の組み換え、通貨価値の切下げ、財政のルール、について、ユーロ圏は一つ、さらには二つの変更が必要だろう。

この論説にはDaniel Grosの意見が付いています。ギリシャはアルゼンチンの選択に向かうのか? しかし、両者の違いは重要である。(ギリシャとアルゼンチンの数値)

1.債務依存(GDP比:150%、50%)、2.財政赤字(GDP比:12%、5%)、3.経常赤字(GDP比:10%、2%)、4.成長率(実質GDP-3%、-2%)、5.預金流出(銀行預金量:-10%、-7%)。すべてギリシャの方が悪い。

アルゼンチンは、改革の見通しもなく、無秩序なデフォルトに進んだ。ギリシャがそうするとしても、ヨーロッパ諸国には止められない。

FT June 17 2011

Greece in turmoil: Run into the ground

By Kerin Hope and Peter Spiegel

The Observer, Sunday 19 June 2011

Europe needs a new financial deal and Britain must help build it

Will Hutton

先週の水曜日、議会の外で政府に抗議する群衆は巨大な横断幕を掲げた。“Poverty is the biggest brutality.” 「(我々に与えられた)貧困は最大の野蛮さである」 IMFEU2度目の救済融資に際して、公務員の5分の1を解雇し、大幅な増税、最大にして最速の民営化、を求めた。

第一次世界大戦後のドイツ賠償金と比較して批判されると、債権者は応える。ギリシャは自分たちが豊かに暮らすために債務を増やしたのだ。戦後の賠償問題ではない、と。

しかし、ドイツは債務再編を支持している。アメリカがリーマン・ブラザーズについてやったことだ。ギリシャの場合、民間の損失はまだ少ない。しかし、ドイツの有権者もギリシャの有権者も、それを嫌っている。銀行が利益を得ることも許さない。当然だろう。

イギリスは賢明にもユーロに参加していない。しかし、保守党の反ユーロ議員たちがヨーロッパの自業自得とみなして満足した姿勢は明らかに失敗だ。イギリスの銀行システムはDGP4倍以上も融資残高がある。そして、わずかな自己資本しかない。イギリスは、銀行危機の連鎖から目を離せない。

金融パニックが、1930年代には、為替切り下げ競争や保護主義をもたらした。イギリスがヨーロッパの債務交渉を促すべきだ。債権者は債権の放棄や、新しいギリシャの資産に転換し、それを自由に売買することを許される。EU,IMF,ドイツ、そしてイギリスやアメリカ、BRICs諸国も融資に参加するだろう。また、債務削減と銀行のバランス・シートを正常化する間、銀行はボーナスと配当を禁止される。

FT June 19 2011

Against the odds, the euro will scrape through

By Wolfgang Münchau

危機に関する二つの危機がある。一つは、民間債権者が負担を分かち持つべきか? ECBが強く反対してきた。もう一つは、ギリシャの政権が持つか? 有権者が緊縮策の追加に耐えられないかもしれない。

メルケルが方針転換したのは合理的だ。メルケルはギリシャのデフォルトを望まない。また、ユーロ圏が解体すれば、ドイツは最も大きな損失を被る。そして、ギリシャ政権では、改造後の内閣に改革推進派を増やした。

それはユーロ債券発行、政治同盟への一歩だ。

WSJ JUNE 19, 2011

Greece's Bailout Brinkmanship

By TAKIS MICHAS

guardian.co.uk, Monday 20 June 2011

What makes the IMF think it's right about Greece?

Dean Baker

金融危機の予測に失敗したエコノミストたちが、今も、ギリシャ危機の融資を描いている。

SPIEGEL ONLINE 06/20/2011

Spreading Like Wildfire

A Chronicle of the Euro Crisis

SPIEGEL ONLINE 06/20/2011

Time for Plan B

How the Euro Became Europe's Greatest Threat

FT June 20 2011

Political union cannot fix the euro

By Gideon Rachman

困難な緊縮策を議論する必要はない。救済融資の必要もない。「政治同盟」があればよい。

しかし、通貨危機の究極的な解決策は「政治同盟」ではない。そのような主張をする者は、ユーロ圏の問題は「アメリカ合衆国」のような政治統合が欠けていることだ、と考える。ECBのトリシェ総裁も、ユーロ圏の財政統合を示唆した。

しかし、制度を変えると言う者にも、その前提となるヨーロッパの政治的・文化的な統合化が実現できない。ドイツ、オランダ、フィンランドの有権者が救済融資を嫌うように、ギリシャの失業や財政危機は新しい外国支配として暴動に至る。

すでにEU統合は、エリートによる政治的合意に対して、有権者が強く反発する時代になっている。そして、ユーロが豊かさを約束すると説得されてきた諸国で債務危機に応じた緊縮策を強いられた結果、政治は解決策ではなく、問題の源泉であると理解されている。

ユーロの危機を修復し続けるか、離脱を認めるしかない。

FT June 20, 2011

Europe’s problem – too deferential and too polite

Mario Monti

NYT June 20, 2011

The Great Greek Illusion

By ROGER COHEN

コソボが聖地であるように、ヨーロッパ統合は、西洋文明と民主主義誕生の聖地、ギリシャも失いたくない。しかし、ギリシャがユーロ圏に参加したのは間違いだった。その条件を満たせなかったのだ。

ギリシャはそれ以上に、近代において、恐るべき歴史を経てきた。オスマントルコの支配を脱するため、戦争と民族の居住地交換という“ethnic cleansing”を行った。ギリシャとトルコの間で、40万人のイスラム教徒と、120万人のギリシャ正教徒が交換された。1930年代の軍事独裁体制、1941-44年のナチス・ドイツによる支配、その後も左右のイデオロギー対立で内戦が続いた。1967-74年の軍事体制でも国外に逃れた左派との内戦が続いた。またキプロスをめぐってトルコと紛争が続いている。

ギリシャとは、国家への忠誠やビジネスにおける仲間よりも、血による絆がはるかに重要な社会である。納税する意識はなく、集団的な努力や、財政の均衡など考えない。ギリシャがユーロでの債務を累積し、150%に至るのも当然だった。

ギリシャでもスペインでも、人々は政治家の無能さに憤慨している。富裕層は課税を逃れ、グローバリゼーションは先端技術の利用者に多くの報酬を与え、取り残されたものを貧しくする。その意味で、ユーロ危機は現代の政治危機を象徴している。テクノクラートが支える国境を超える秩序は、低金利時代に貨幣ビジネス階級に奉仕し、その縮小期には無慈悲な圧力を生じて各地の暴動を生じている。

ヨーロッパ統合が達成してきた偉大なものはすべて後退し始めた。国境は再び閉ざされ、トルコはEU加盟に興味を失い、ドイツは戦後の理想主義を出しつくした。アメリカはEUの軍事力が余りにもお粗末なことに憤慨し、ギリシャ人もスペイン人もヨーロッパを詐欺だと思っている。

財政・政治統合の無い通貨統合は存続できない。せめて、秩序ある形でギリシャをデフォルトさせることだ。

NYT June 20, 2011

The I.M.F., Greece and Europe: Who Benefits?

ギリシャがもしデフォルトになれば、それは歴史上最大のデフォルト、ロシアとアルゼンチンを合計した額の2倍になるだろう。

Simon Johnson: EUがデフォルトを拒めば融資するしかない。アメリカや中国も、IMF融資を黙認している。安価な融資を得るために、EU諸国はIMF改革に反対する。アメリカも中国も、国際金融市場のショックを避けたい点では同じだ。

Aristides N. Hatzis: 大幅に規制された市場において、オリガークが繁栄し、組合や圧力団体が支配する。脱税は社会的に容認され、政治的に弁解される。腐敗がはびこっているが、ギリシャはEUとユーロ圏の一部であるから、アルゼンチンのようなデフォルトはしないだろう。欧米によって救済され続ける。

Alan Cibils: アルゼンチンとの類似点は多い。アルゼンチンの政府には余りにも選択肢がなかった。不況になってIMF融資に頼ったが、その緊縮政策はギリシャと同様に失敗を重ねた。不況を悪化させ、資本逃避が加速し、デフォルトに至る。通貨価値を切り下げ、4半期の不況を続けた後に回復に転じた。IMFに頼らず、自律した政策を取り戻すことが重要だ。

Veronique de Rugy: アルゼンチンは手本にならない。ギリシャは債務依存度は高く、自国通貨もない。フランスとドイツはユーロ圏の運営がどれほど失敗しているかを知られたくないから、解決策は見いだせない。

Eduardo Levy Yeyati: 支払不能になった債務者が問題を解決する道は、融資ではなく、債務額を減らすしかない。債務組み換えは苦痛をもたらすが、景気回復のために必要だ。アルゼンチンはIMF融資を受けずに行った。これで、予算赤字と競争力を回復する政治的な主導権を握ることだ。

Daniel Gros: EUの政策担当者たちはデフォルトしかないと知りながらも、無秩序なデフォルトを恐れている。しかし、他の解決策がある。ギリシャ債券はすでに市場で大きく割り引かれている。これをヨーロッパ金融安定基金(EFSF)で買い取るのだ。金融監督により、銀行は売却を促される。すべての債券を保有したEFSFは、ギリシャ政府に改革を条件として債務額の市場価格による引き下げ、返済期間の延長を認める。

Edward Harrison:一方的なデフォルトは通貨価値の急落とハイパーインフレーション、金融市場からの追放をもたらす。アルゼンチンから学ぶ正しい教訓とは、1.デフォルトは銀行システムを破綻させる。2.危機は伝染する。3.成長しなければ返済できない。これらを理解したうえで政治的意志を形成することだ。

Dani Rodrik: デフォルトによってアルゼンチンは成長できた。緊縮策を続けるより、それは成功だった。結局、ギリシャはデフォルトになるし、ドイツやフランスは銀行の過剰融資を認めて損失を埋めるしかない。しかし、ユーロ離脱国への敵対的な態度を緩和するルールを決めた方が、互いに政治危機と大きな損失を免れる。

Desmond Lachman: ユーロ離脱とデフォルトは資本規制を必要とする。他方、IMFが切下げもデフォルトも認めないままでは、緊縮策のコストが大きくなり過ぎて離脱させる。不況を長引かせるより、早期に処理する方が良かった。ただし、アルゼンチンと違って、ギリシャの債務はギリシャの法律を変更するだけで処理できる。

guardian.co.uk, Monday 20 June 2011

The Greek protests are not just about the economic crisis

Aditya Chakraborrty

guardian.co.uk, Tuesday 21 June 2011

If I were a Greek, I would be out on the streets too

Simon Jenkins

guardian.co.uk, Tuesday 21 June 2011

Germany owes Greece a debt

Albrecht Ritschl

ドイツの経済は、第一次世界大戦と第二次世界大戦による戦後の賠償によって大きな影響を受けた。WW1後の賠償金は外国からの資本流入によって支払われたが、それがバブルを生じて、1931年に破裂すると賠償金支払いは止まり、金本位制も、ワイマール共和国の民主主義体制も終わった。

第二次世界大戦後の賠償金は、アメリカがその経験を繰り返すことを心配し、またドイツを同盟国として経済復興するために、大幅に緩和された条件で賠償支払いを認めた。それは民間の債務支払も引き延ばされ、ドイツ政府は交渉を再開せず、強制労働に対してNGO経由で支払った以外は、返済しなくなった。

ドイツ・マルクの強さや財政の健全さをそうした条件の下で獲得してきたことを考えれば、ドイツは今、ギリシャに対する債権処理を賢明に行うことだろう。

SPIEGEL ONLINE 06/21/2011

Greece and the Euro Crisis

Europe's Dangerous Leap of Faith

By David Böcking and Carsten Volkery in Athens and Luxembourg

FT June 21 2011

Latin lessons for a eurozone recovery

By Alfonso Prat-Gay

ヨーロッパはラテンアメリカが前世紀に何度も陥った債務問題に落ち込みつつある。通貨危機、銀行破綻、デフォルトを避けようとするたびに、それに導かれた。つまり、これらの問題をバラバラに、少しずつ解決することは成功しない、と言うことだ。

解決策は、ヨーロッパ債務処理機構(Esdraa European sovereign debt restructuring agency)にギリシャ債券を売ってしまうことだ。Esdraはギリシャ債券を市場で買い戻す。Esdraはギリシャに融資する。それは額が減り、返済条件も良いだろう。

FT June 21 2011

Time for common sense on Greece

By Martin Wolf

融資を繰り返しても解決策にはならない。債務危機は予防的に解決するのが良い。他の債務諸国と銀行システムを強化することだ。

NYT June 21, 2011

Greece and You

世界金融危機の後も、各地の金融改革は進んでいない。ギリシャ危機はそのことを我々に教えている。

NYT June 21, 2011

The Real Reboot Greece Needs

By LOUKAS TSOUKALIS

(この優れた論説を読めば、日本の読者は大きな感慨を得ると思います。アメリカ経済は日本に似てきたと言われます。日本はギリシャから学ぶことが多いでしょう。)

George A. Papandreou首相は、火曜日、議会の信任投票で勝利を得て、社会党政権の安定化とEUからの金融支援を受ける用意ができた。

しかし、2009年末に始まった危機はさらに悪化している。5000億ドルに近いギリシャ政府債がデフォルトの危機にあり、銀行家や政治家を怯えさせている。もしデフォルトが起きれば、ドミノ効果はユーロ圏の外にまで及ぶだろう。緊急の経済改革とヨーロッパ同胞諸国からの支援がなければ、人口わずか1100万人のギリシャが強力な下降圧力をもたらす。

EUIMF〜の金融支援には厳しい改革条件が付いている。政府はまだその一部しか実行していない。予算赤字をGDP15%以上から10.5%に削減し、年金制度も大胆に改革した。それは大きな成果だが、一層の構造改革や国営企業の民営化は躊躇している。既得権を持つ組織された反対派や、党内部、労働組合からの反対があるからだ。官僚制度はあまりにも遅い。

ギリシャの古典劇が示すように、改革にはカタルシスが必要だ。人々は、公的な資金を浪費した者たちに処罰を求めている。いずれの主要政党も、このパンドラの箱を開けたくない。しかし、国民統一政権を作って、期限を決めて特別な改革を推進するなら、政治への信頼が回復し、特に、公務員の削減という、政治的に困難な改革が支持されるだろう。

ヨーロッパの周辺部にある債務に大きく依存した、競争力のない経済では、IMFのエコノミストが繰り返し唱える、財政再建と構造改革が欠かせない。しかし、緊縮策の正しい服用量は難しく、経済を破壊するほど厳しくてもいけない。国民はすでに我慢の限界に達しつつある。

成長を回復することが鍵である。それがなければ、どのような調整も失敗する。規制を緩和して投資に好ましい環境を作るべきだ。ヨーロッパの投資ファンドは地方政治家に改革を促すためにある。金融危機に苦しむ国に対して、新しいマーシャル・プランを議論する者もいる。

過去の失敗を、政府と民間とで、だれが負担するのか? どの国がどれだけ分担するのか? 部分的な政策で債券市場に遅れるのではなく、政治的な合意を示すべきだ。過度の借り入れと消費、信用バブルの崩壊がわれわれを苦しめている。戦後、数10年に及ぶ統合化と主権の共有が、失われるかもしれない。

guardian.co.uk, Wednesday 22 June 2011

It isn't just the euro. Europe's democracy itself is at stake

Amartya Sen

民主的なガバナンスが、余りにも強められた金融機関や格付け会社の役割によって掘り崩されるのを、我々は許すべきだろうか? 「ガバナンスとは討論である。」 金融機関や格付け会社は政府の緊縮策を拒否するが、彼らこそ2008年の危機前に行ったことで、アメリカ議会が告発するかどうか、議論していたはずだ。成長を削る犠牲を求めるときは、成長によって財政再建がもたらされた歴史を検討しなければならない。

私はヨーロッパの統一を強く支持するが、ユーロには激しく反対してきた。統一された民主的なヨーロッパという政治的発想が、一貫性のない金融の混成を進めるあやふやな計画と結び付いた。たとえ困難でもユーロ圏を改善するために、正統な政府の声を聞くべきだ。

SPIEGEL ONLINE 06/22/2011

Confidence Vote in Greece

Papandreou Allowed to Continue from Frying Pan to Fire

By David Böcking and Ferry Batzoglou in Athens

SPIEGEL ONLINE 06/22/2011

If the Euro Fails, Germany Will Be Responsible

By Henrik Müller

ドイツ政府を、繁栄をもたらす指導者ではなく、「ユーロ・ナチス」と見なすのは愚かであるが、ユーロ圏を崩壊するに任せればドイツが責められるだろう。ドイツは今、ユーロ圏の覇権国という、歴史的な機会を逃しつつある。第二次世界大戦後にアメリカがそうであったようなa "benevolent hegemony"として、ヨーロッパ統一の新しい制度を構築するときである。

FT June 22, 2011

Postponing Greece’s inevitable default

Martin Feldstein

ギリシャのデフォルトは避けられない。ギリシャだけならデフォルトさせてもよい。しかし、ポルトガル、アイルランド、スペインまで波及する恐れがある。その場合、ヨーロッパの銀行システムが破たんする。

それゆえECBはデフォルトを避けるように求めてきた。銀行が十分な償却を準備するまで、デフォルトを遅らせるしかない。しかも(デフォルトのように)法によって処理を強制するのではなく、「自発的に」処理させるのです。その具体的な方法をMartin Feldsteinは示します。1.利子を新規融資に含める。2.それはECBの担保に認めない(それだけ融資を減らす)。3.デフォルトを避ける共通の利益に対する「ピア・プレッシャー」を強める。

さらに、ECBは銀行に資本強化の圧力を加えます。それが終わってから、デフォルトを認めます。これはラテンアメリカの債務を処理した過程と同じだ、と考えます。

その上で、ラテンアメリカと異なるのは、ギリシャなどが債務危機を脱してもユーロ圏内であるから切下げが行えないことです。競争力を回復するためには改革が必要です。

WP June 22, 2011

Hold the celebration on Greek vote

WSJ JUNE 22, 2011

Greek Vote Sets Stage for More Cuts

By ALKMAN GRANITSAS

guardian.co.uk, Wednesday 22 June 2011

The EU needs leadership to tackle this crisis, not repeated doses of austerity

Jürgen Habermas and 18 others

The Guardian, Thursday 23 June 2011

Greece and the eurozone: Accept reality – and default

SPIEGEL ONLINE 06/23/2011

Bad for Business

Euro Crisis Has Decimated Greek Private Sector

By David Böcking and Ferry Batzoglou in Athens

SPIEGEL ONLINE 06/23/2011

Save the Euro!

By Christian Reiermann

ユーロ圏からの離脱を認めるべきか(その場合、銀行システムを守るために多くの財源が必要になる)、ユーロ圏を維持するために、1.赤字国の改革を求める、2.黒字国家等の財政移転を強める、3.その折衷案、を認めるべきか?

ドイツは財政移転に上限を課すことで有権者の合意を得たいと考えている。しかし、周辺の成長が実現できなければそれも成功しない。加盟国は主権をこれ以上放棄しないから、ヨーロッパ経済政府の提案は解決策にならない。

SPIEGEL ONLINE 06/23/2011

Fighting (for?) Europe

How European Elites Lost a Generation

ヨーロッパ債務危機の情景を描いています。


l         中国とリスク

(chinadaily.com.cn) 2011-06-16

A post-crisis world of risk

By Michael Spence

グローバル経済の現局面の特徴は、世界各国のマクロ・リスクが増大し、連動し始めたことだ。低成長や高失業率に苦しむ先進経済と、成長を回復した新興経済(ブラジル、中国、インド、インドネシア、ロシア)がある。それは財政赤字の水準に反映されている。

危機前とは逆に、アメリカの成長は内需よりも輸出部門に依存している。競争力が不足しているから高失業が続いてしまう。他方、新興経済の成長と都市化は、世界的な投資ブームを起こしている。ただし、生産性の改善が遅く、競争力のない、構造的赤字と債務依存の国には問題が残る。

構造的な問題に対する調整が必要だ。国内貯蓄で高投資を続け、生産性や競争力を改善している国は、成長を続け、また、為替レートを調整(自国通貨が増価)して実質生活水準を高めることだ。危機前には、アメリカの過剰な国内消費(そして、ヨーロッパの低金利融資)によって不均衡が無視されていた。当時の成長予測は間違っていたし、財政赤字を予測していなかった。

新興経済では、特に中国の成長が決定的に重要である。それはブラジル、インド、韓国、そしてドイツにまで、市場を提供している。しかし、インフレ抑制ができなければ、成長と国内社会の結束を損なう。また、アメリカでも、中国でも、不平等の緩和が必要だ。

中東やラテンアメリカに比べて、資源の少ないアジアにとって、商品価格の上昇は問題だ。エネルギーの安全保障も中東の安定に欠かせない。

さまざまなマクロ・リスクを含めて、市場は深く結び付いている。それはすべての国が危機意識を持って政策対応を取り、G20などの国際政策協調を進めることを必要とする。

FT June 17 2011

Unrest spreads among China’s migrant masses

By Jamil Anderlini in Beijing

WP June 19, 2011

China’s real estate bubble and its victims

中国の不動産バブルが崩壊すれば、その世界経済に対する影響はどれほど大きいのか? その前に、中国自身がどれほど苦しむのか?

都市では住宅価格が上昇して、何百万人もが市場から排除されている。地方では不動産開発のため、ときには暴力的に、住民を立ち退かせている。それは社会紛争を生じ、騒乱にも及ぶ。

しかし、不動産税より、開発のための土地売却によって収益が得られる地方政府は、こうして過熱する開発を止めようとしない。誰も入居できないようなアパートやショッピングモールが増えている。しかも、共産主義体制であるから、住民には土地の長期利用権しか手に入らない。旧住民は、市場評価よりも低い補償額を得るだけで、強制的に移住させられる。

すべての市場社会が発見したように、土地を不当に奪う抑圧的な政府への最大の防御は、私的所有に基づく「法の支配」を強化することだ。

FT June 19 2011

China’s restive migrant workers

各地の争議は国民的な支持を広げており、それは共産党の政治支配に対する脅威となっている。30年間の高度成長にもかかわらず、15000万人の出稼ぎ労働者は困窮しており、争議によって生活の改善を求めるしかない。

LAT June 21, 2011

How China unfairly bests the U.S.

By Peter Navarro

WSJ JUNE 21, 2011

Beijing's Financial Day of Reckoning Is Near

By CARL E. WALTER AND FRASER J.T. HOWIE

2009年の刺激策はその最初の衝撃を銀行システムの不良債権として生じつつある。その規模は2兆〜3兆人民元(3000億〜4500億ドル)に達すると言う。救済規模はGDP7%に及ぶだろう。皮肉なことに、それは2008年の景気刺激策、4兆人民元に匹敵するほどだ。

 (chinadaily.com.cn) 2011-06-22

The end of cheap labor in China

guardian.co.uk, Wednesday 22 June 2011

Europe's crisis is China's opportunity. No wonder nice Mr Wen is on his way

Timothy Garton Ash

かつてヨーロッパは中国の一部を植民地化した。今は中国がヨーロッパの一部を植民地化している。もちろん非公式に。中国の台頭は、ヨーロッパの衰退を明らかにし、それを利用する。

温家宝首相がヨーロッパを訪問するが、彼はイギリス、ドイツ、そしてハンガリーに向かう。中国は、ハンガリーなど、東欧や南東・南ヨーロッパに巨額の投資をしている。たとえばギリシャでは、中国がPiraeus港を35年間借りて、ヨーロッパの上海を建設しつつある。ポルトガル、スペイン、イタリア、ギリシャ、そして東欧に中国からの投資の40%が向かう。その目的は5億人のEU市場だ。

投資は政治的な目的にもかなう。投資先の小国が中国の貿易や投資家に依存するほど、彼らは中国の重要な国益に反する行動を取らなくなる。EUの政治的意志決定に対して内部のロビー活動を組織している、というのも、それほど皮肉な見方ではない。

ユーロ危機が深まる中で、中国が政府債券を購入してくれることに赤字国は感謝している。それはドルからの資産分散を図る中国の政府系投資信託にとっても利益なのだ。中国の政治指導者たちはヨーロッパの危機に同情する。それは、もちろん、中国経済にとっても好ましくない。

私たちはこのことに過剰に反応しない方が良い。自由貿易や市場を信奉するなら、それが中国製の自動車で、Saabと呼ばれても、買えばよいのだ。問題は、中国が容易にこちらの企業を買収できるのに、中国への投資は難しいことだろう。中国の経済力がヨーロッパに深く浸透している以上、政治的な影響をともなうのは仕方ない。

中国の台頭をもっと心配しているのは、近隣諸国である。中国は南シナ海の支配を死活的な国益だと主張した。最近、中国海軍の船が2度もベトナムの石油採掘船のケーブルを切断した。ヨーロッパには今も、EUこそグローバル・ガバナンスのモデルだと、国家主権を共有するポストモダン世界について夢を描く者がいる。しかし、アジアの地政学はますます、20世紀後半ではなく、19世紀後半のヨーロッパに似てきた。絶えず優位を求める国家は、海軍や陸軍を強化し、(カシミールのように)領土紛争、領海紛争を繰り返している。国益と情念が経済の相互依存を圧倒する。

中国の指導的な国際関係の著者Yan Xuetongと初めて話し合ったことを私は忘れないだろう。私は、1945年にイギリスからアメリカにグローバルな支配権が移ったのは、歴史上、戦争を行わずに平和的に実現した唯一の例だ、と述べた。Yanは手を振って話をさえぎった。「どういう意味だ? 戦争はあったさ。ただし、ほかの国と戦争したのだ。」

彼の言うとおりだ。ナチス・ドイツとの戦争が覇権移行の触媒であった。歴史は繰り返さない、と信じよう。しかし、すべての歴史の先例に従えば、この10年か20年で、中国が隣国との軍事衝突を起こさないとしたら驚きである。それが例えばベトナムであるとしたら、アメリカはどう反応するのか?

中国の台頭には、経済と政治に加えて、第3の次元、すなわち、文化的な支配力、ソフト・パワーの増大がある。Yan Xuetongは中国の政治思想を研究し、秦以前に、国家権力に関する二つの思想があった、と指摘する。すなわち、覇権、もしくは「慈悲深い権力」と、「政治システムの不断の更新」である。後者には民主制の道徳原理が含まれる、と。

2011年の中国は、「慈悲深い権力」から遠い。確かにケ小平は数億人を貧困から救いだし、中国の国家管理型資本主義は、リベラルな自由市場モデルより、貧しい国のイデオロギーとして支持されている。しかし、2012年に指導部が移行する時期を前に、体制による国内の締め付けは強化されてきた。「慈悲深い権力」とは逆行するものだ。

中国の権力が持つ三つの顔は切り離せないし、変化し続ける。外部から覇権国家の発展に与える影響はほとんどない。われわれは自分たちの国家内で規律を正し、新興の覇権国家を詳しく観察し、それが「慈悲深い権力」であることを願うしかない。

WSJ JUNE 23, 2011

China's Square Peg vs. The West's Round Hole

By JOSEPH STERNBERG

WP June 23, 2011

China’s currency of opportunity

By Robert J. Samuelson, Published

人民元の増価によって、中国はインフレ(そして住宅バブル)と対外貿易摩擦の二つを緩和できる。それはアメリカの雇用や世界経済の均衡回復にも役に立つのだ。

FT June 23, 2011

How China plans to reinforce the global recovery

By Wen Jiabao

危機に対する中国の迅速で的確な政策対応と、その成果を示しています。中国政府は成長モデルを転換し、世界の経済回復にも貢献できるし、一層の国際協調を目指している、と宣言します。


l         オバマ再選

NYT June 16, 2011

Does Foreign Policy Matter?

By ROGER COHEN

guardian.co.uk, Sunday 19 June 2011

It's not the Republican line-up but the economy that Barack Obama must fear

Gary Younge

NYT June 21, 2011

100 Days

By THOMAS L. FRIEDMAN


l         NATOEU

FT June 17 2011

Europe on the road to irrelevance

WP Saturday, June 18, 2011

Why Europe no longer matters

By Richard N. Haass

痛烈なヨーロッパ批判から、NATOの役割を見直し、アメリカの外交政策に必要な転換を主張します。NATOは冷戦とヨーロッパの安定化に重要でした。しかし、それは終わったのです。「もし今、NATOが存在しないとしたら、誰かそれを創るべきだと思うだろうか? 正直な答えは、気まずいことだが、No、である。」

ヨーロッパには共通の外交政策も防衛計画もない。リビア介入で毎日のように示されたのは、その能力の低さだ。作戦を立てるための兵站も諜報も存在しない。ヨーロッパは平和になったからこそ、このような能力に関心を持たないのだ。

これに比べてアジアほどダイナミックな地域はない。世界経済の銃身であり、戦争と平和の問題がここで決まる。かつてヨーロッパに存在した大国間の競争(ドイツ、フランス、イギリス)は、現在のアジアに強く示されている。中国、日本、インド、ベトナム、南北朝鮮、インドネシアなどが、互いを疑いの目で見ている。政治・安全保障に関する地域協定や制度はほとんどない。経済的、政治的な競争は激しく、軍事的な衝突も排除できない。

欧米は人口で見ても重要性を失っていく。大西洋同盟は、アメリカ東部のエリートがヨーロッパの情勢に強い関心を持つ時代の産物であり、アメリカの政治構造も変化したし、国際関係も大きく変化して、その役割を変えた。それに合わせて調整することだ。

guardian.co.uk, Thursday 23 June 2011

Greece, Schengen, Nato – it's time to admit the European dream is over

Martin Kettle


l         ロシア

WP 06/17/2011

Garry Kasparov has a suggestion

By Fred Hiatt

WP 17 Jun 2011

Loosening Putin’s grip

By Robert Kagan,


l         トルコ

FT17 2011

Person in the News: Recep Tayyip Erdogan

By Delphine Strauss

guardian.co.uk, Saturday 18 June 2011

Turkish democracy can rise to the Kurdish challenge

Yavuz Baydar


l         世界都市化

LAT June 19, 2011

The great shift from farm to city

「アラブ世界の革命、中国における争議、インド、トルコ、南米の経済ブーム、それらの背後にはほとんど注目されていない力がある。人類史上最大の人口移動がピークに達しており、それこそがおそらく最も重大な、誤解されている、我々の時代のグローバルな事件なのだ。」

「第二次世界大戦から数十年間で、発展途上世界にも人口移動が起きた。それは現在がピークである。1050年、世界の70%以上は農民であったが、今や50%が都市に住む。2025年までに60%、2050年には70%以上が都市に住む。21世紀の終わりまでに、世界全体が西側の私たちと同じように都市化するだろう。」

WP June 21, 2011

The New World in Dubai

By Anne Applebaum

19世紀のニューヨークやシカゴに来た外国人は、対立する感情を味わった。ヨーロッパの都市に比べて、アメリカの都市は醜悪で、下品であり、露骨に利益を求め、味気ない。その住民たちの生活水準は高いが、粗野で、エスニックが混じっている。ドイツ人、アイルランド人、イタリア人、ユダヤ人。恐ろしいものだ。

そこでは新しい世界が誕生しつつあり、まるで他の惑星のようだ、とイギリスからの旅行者は1837年に書いた。

新しいドバイのMarina居住区は、1999年に建築家たちが雇用されて、2004年に第1期が完成した。12万人が居住し、ホテル、レストラン、ヨット停泊地、ショッピングモール、ヴェニスを思わせる運河まである。建築物は模造品の集まりだ。

19世紀のアメリカがヨーロッパ人を驚嘆させたように、私はドバイ住民の富に圧倒される。高級品や高級ホテルのスウィート・ルーム、そしてエスニックの混合。インド、ナイジェリア、日本、イギリス、ロシア、フィリピン、オーストラリア。ビキニの女性のそばを、ブルカで全身を包んだ女性が歩く。

その闇の面は、説明もなく人々を拘束し、国外退去させる、アラブの警察国家だ。19世紀的な意味では、ドバイに市民はいない。抗議も起きない。120万人の20%以下しかドバイ国籍を持たない。所得税のないドバイで暮らす銀行家と貿易商人、そして、多くは南アジアから来て、債務奴隷のような暮らしを受け入れる低賃金労働者たち。彼らがアラブの春を聞くことはない。

19世紀のヨーロッパ人がアメリカを拒んだように、私もドバイが21世紀文明であることを拒んだ。しかし、ある意味では、そうかもしれない。シンガポールや香港、ロンドンの一部でも、私はドバイと同じものを観る。一時的に滞在している銀行家たち、半合法的な存在であるフィリピン人の召使い。そしてまた、パキスタンやロシアのような、混乱し、暴力に満ちた社会から来た者には、ここが清潔で、法に従う、見事に管理された楽園に見えるだろう。


l         アメリカ経済の再生

FT June 19 2011

America flirts with a fate like Japan’s

By Clive Crook

「日本のように」。これは脅し文句であり、恐怖の警告です。アメリカ経済に関する悲観論を検討します。

FT June 20 2011

Savour the sweet scent of Germany’s success

By Steven Rattner

WSJ JUNE 21, 2011

The GOP Myth of 'Job-Killing' Spending

By ALAN S. BLINDER

先週のMeltzerに対する反論です。J.M.ケインズとは逆に、政府が雇用を破壊している、と言う論者が増えている。それは正しいか?

景気刺激策は財政赤字や増税の可能性から将来の不確実性を増す。それは投資を減らす、というわけです。逆に、刺激策を止めて財政均衡を重視すれば投資家の信頼が回復し、投資を増やすだろう、と。

全く逆である、という明白な証拠がある。不確実性は大きくなっても、投資が急速に増えています。だから景気刺激策を続けながら、同時に、長期の財政赤字を減らす計画を示すことです。

FP JULY/AUGUST 2011

On the Economy, Be Careful What You Wish For

BY IAN BREMMER


l         IMFの救済

FT June 19 2011

Saving the IMF for the world

NYT June 19, 2011

Renewing the I.M.F.

フランス大蔵省のChristine Lagardeと、メキシコ中央銀行のAgustín Carstensとが争います。

YaleGlobal 21 June 2011

Growing Economies, Rising Problems – Part I

Jean-Pierre Lehmann

新興勢力によるIMFのガバナンス改革は失敗した。旧支配諸国は権力の分担を受け入れない。それは指導力を奪い、問題解決の能力を失わせる。


l         南シナ海

Global Times, June 19, 2011

Clear red line needed in South China Sea

By Ye Hailin

2002年に関係諸国が合意した行動基準は無意味になった。関係諸国が常に変化する均衡を求めている。

Global Times, June 21, 2011

China must react to Vietnam's provocation

WSJ JUNE 22, 2011

China: U.S. Should Stay Out of Regional Disputes

By JASON DEAN

WP 06/23/2011

The Philippines and Japan want U.S. help in dealing with China’s aggression

By Fred Hiatt

アフガニスタン撤退を決めて、オバマはアメリカ経済の再建に全力を上げる、と述べました。しかし、アジアの安全保障が動揺しています。中国は、フィリピンだけでなく、ベトナム、日本、などにも警戒をす。天然ガスの海底資源が発見されたことで、領海について中国の主張は攻撃的になり、操業するフィリピン漁船に対して中国のフリゲート艦が発砲した、とAlbert F. del Rosario外相はクリントン国務長官に訴えました


l         プエルトリコ

LAT June 20, 2011

It's decision time for Puerto Rico

Luisita Lopez Torregrosa


l         破綻国家

FP JULY/AUGUST 2011

Think Again: Failed States

BY JAMES TRAUB

「破綻国家」というのは、ガバナンスを考える上で、興味深いテーマです。それは究明すべき問題を提起しますが、「ジェノサイド」と同様、濫用・誤用されているかもしれません。

多くの場合、破綻国家にもガバナンスがあります。自国の安全保障について、どのような視点を求めるべきか? 植民地化、資源、など、その原因や展望を含めて、破綻国家をどのように分析するべきか?

FP JUNE 20, 2011

The Poor Will Inherit the Earth

BY URI DADUSH, WILLIAM SHAW

NYT June 20, 2011

Doing Right by the Poorest Countries

最も貧しい国を助けるために、その輸出を増やす、という「ドーハ=開発ラウンド」の取組は止まったままです。


l         ドイツの脱原発

guardian.co.uk, Monday 20 June 2011

Germany is right to opt out of nuclear

Ulrich Beck

アメリカの環境保護論者Stewart Brandtは、ドイツの原子炉全廃を「無責任」と非難した。George Monbiot and Mark Lynasも同様だ。

しかし、私はメルケル首相が指名した特別専門委員会のメンバーとして、彼らに反論したい。それは基本的に経済的な選択だった。原子力エネルギーはますます高価になり、再生可能エネルギーは安価になる。しかも、すべての選択肢を認める限り、投資は起きないだろう。

慎重な姿勢を続けるドイツ国民にエネルギー転換を実現させるには、それを確実に予感させるべきだった。21世紀の初めに我々は転換点を迎えた。再生可能なエネルギーの技術や製品に投資し、調査や訓練を進めることだ。250年前に、もし人類が石炭、鉄鋼、蒸気機関、そして鉄道を拒んでいたらどうなっただろうか?

あるいは、アメリカが50年前に、半導体やコンピューター、インターネット、その後の新しい市場に投資しなかったとすれば、どうなったかを考えてみればよい。

誰にでも利用できる太陽エネルギーの技術を開発することで、支払えない者にはエネルギーが断たれる原発の時代は終わる。それは「政治の終わり」をもたらし、エネルギーとリスク、文明と民主主義の関係も変える。

ドイツは今、歴史的な機会を手にした。


l         米軍のアフガニスタン撤退

NYT June 20, 2011

Smart Power Setback

By DAVID BROOKS

LAT June 22, 2011

Staying the course in Afghanistan

By Max Boot

WSJ JUNE 22, 2011

How to Handle the Infuriating Hamid Karzai

By MAX BOOT

外交評議会の議長であるMAX BOOTはアフガニスタン撤退に慎重です。オバマが米軍の撤退を急がないように、そして、カルザイ大統領を批判するより、もっと有能で優れた後継者を支援するように、求めています。

NYT June 22, 2011

The Way Out?

10年に及ぶ戦争で、1500人以上のアメリカ兵が命を落とし、4500億ドル以上を費やした。撤退は正しい。しかし、戦争が終わる道筋を、説得的に示すべきだ。

WP 06/22/2011

President Obama’s Afghanistan speech confirms America’s decline

By Richard Cohen

WP 06/22/2011

Obama: The postwar era begins now

By Jackson Diehl

guardian.co.uk, Thursday 23 June 2011

US surge was not a success for Afghans

Orzala Ashraf Nemat

WP June 23, 2011

The radicalization of Pakistan’s military

By Fareed Zakaria

WP 06/23/2011

Military leaders know Obama’s decision is a disaster

By Robert Kagan


l         戦争大権

LAT June 21, 2011

Say what you will, it's a war in Libya

By Jonathan Schell


l         日本

FT June 21, 2011

How a Japanese chipmaker reflects direction of growth

Jim O'Neill

日本の中小企業がグローバル・サプライ・チェーンを介して及ぼす影響に関して、世界は過小評価していました。しかし、Peter Taskerは付言します。その影響はインフレ的ではなく、デフレをもたらしているから、世界金融危機の後のデフレ克服と、新しく中国などがインフレ抑制に向かうことが注意を要する。

WSJ JUNE 22, 2011

A New Plan for Japan

日本の首相交代騒ぎには失望させられる。菅直人はリベラルな風力発電の立法化を唱えている。他方、二人の候補は、消費税の引き上げを目指す野田蔵相も、日本版マーシャル・プランを被災地に提唱する前原前外相も、その有効性は疑わしい。

日本はサプライサイドの改革を必要としている。移民開放、民営化、市場開放。新しい指導者が、正しい改革を実行するとき、日本は甦る。

FT June 22, 2011

Japan bids to turn tragedy into a triumph

By David Pilling

日本は変わったか?


l         イギリス赤字削減

guardian.co.uk, Tuesday 21 June 2011

Britain's economy is stagnating before the cuts bite. Osborne needs a plan C

Robert Skidelsky

オズボーン蔵相の財政赤字削減=民間投資説と、ケインズ理論と正反対です。その正否は景気動向によって示されます。この12カ月で、成長が上向き、失業は減るのか? もし失敗しても、政治家は政策を改めず、特別な事情を指摘する。

しかし、追加の政策を用意しておくのが賢明だろう。金融緩和。投資銀行。

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The Economist June 11th 2011

Greece’s debt crisis: Bail-out 2.0

Post-disaster politics: A grand stitch-up or an election?

Japan’s recovery: Who needs leaders?

Myanmar: Chinese takeaway kitchen

Cambodia: Courting the Khmer

Banyan: Not littorally Shangri-La

Special Report Italy: Oh for a new Risorgimento

Botswana: Not so perfect after all

Portugal’s election: A grim inheritance

The Swedish economy: North star

IBM v Carnegie Corporation: The centenarians square up

Chinese manufacturers: The end of cheap goods?

(コメント) イタリアの特集記事は最初の叙述が面白かったです。Robert Putnamの「社会資本形成」を重視した分析について、ヨーロッパの近代諸国家と比較し、イタリア南北問題の長引く背景として、もっと最近の改革失敗を強調します。変化を拒み、利益団体による政治支配を許し、老人を優遇して若者を追い出した。イタリアは国土を回復したのではない。アフリカを分割してしまったのだ。という、北部の分離独立派がいることに驚きました。

他にも、ギリシャ債務危機、ポルトガルの新首相、スウェーデンの保守系連立政権、それらの違いが興味深いです。

中国と南シナ海の問題には誰もが注目するでしょう。ベトナム、フィリピン、などと領海や島の領有権を争い、ミャンマーやカンボジアの貿易と投資を支配し、さらには建設労働者などが大規模に流入しています。日本や韓国との紛争も続きます。

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IPEの想像力 6/27/11

ギリシャの債務救済をドイツの有権者が嫌うと、ドイツも2度の世界大戦で賠償金の支払を強いられたことが指摘されます。そして、ドイツは他国を侵略し破壊した補償を求められたのであり、自分たちの財政規律を緩めて雇用や消費を増やしたギリシャとは違う、という話になります。

それは、ドイツが支払うべきであったし、ギリシャも返済しなければならない、という意味で、同じ国際的な所得の移転です。ドイツが賠償金を支払う意志を欠いて、フランスがルール地方を占領した後、インフレが放置されて、ナチスの台頭につながったという話も、ギリシャが支払えない場合(デフォルト)、ユーロ圏が崩壊して、ヨーロッパの銀行システムが停止する、という話と重ねられます。人種差別やポピュリズム、移民排斥を求める極右政党の声が高まります。

週末に、Charles P. Kindlebergerの論説を読みました("Finnish War Reparation,” 1987)。第二次大戦直後、ソ連は占領したドイツから様々な機械や物資を「賠償」として運び去りました。しかし、物的な富の移転には限界があります。むしろ英米は、占領したドイツの住民が困窮し餓死しないために、占領軍の費用も含めて、ドイツ経済の復興を求めます。

Kindlebergerの論説は、フィンランドが合意によりソ連に賠償金を支払い、しかも、経済の再建に役立てた、という事例の考察です。つまり、自発的に所得を移転し、しかも、自分たちの成長にも役立てた。経済崩壊やハイパー・インフレーションではなく。・・・あり得ないような話です。

決して少ない額ではありません。1944年の合意は3US金ドルで、フィンランド経済は破滅する、と言われました。その後、連合軍はノルマンディーに上陸し、アメリカが一般に賠償要求に反対することが影響し、緩和されました。賠償額は1952年の物価で54600万ドル、あるいは、57000万ドルと推定されます。

フィンランドは、1944年〜52年に、純国民生産(NNP)の0.4%〜6.4%を支払いました。1920年代のドイツ賠償金がNNP2%を決して超えなかったこと、フランスが普仏戦争後にドイツに支払った賠償金(国民一人当たり負担額)の名目で5倍、実質でも2倍だったことが紹介されています。

なぜ支払ったのか? 当然、ソ連軍の侵攻を恐れたからでしょう。ナチスのソ連侵攻に協力したことで、フィンランド国民は報復を恐れたはずです。ソ連に占領されて経済を解体される(共産党政権ができて内戦になる)より、フィンランドの社会秩序や労働力を守ること、そして、輸出と成長によって賠償金を支払うことが優先されました。

トランスファー問題で有名なように、賠償金は貨幣で支払われることと、物資で支払われることが、並行して生じます。普仏戦争後、フランスはドイツに賠償金を支払ってから、長期に、財・サービスを移転しました。1920年代のドイツは、アメリカからの証券投資で賠償金を支払い、それが失われると、物資の移転は混乱のうちに放棄されました。しかしフィンランドは、工業生産が回復する過程で、実際に、物資の移転も行ったのです。

こうした内外の再分配を支えた政治システムや国際情勢がどうなっていたのか、「小国」であるというだけでなく、その政治システム内の対立する諸集団について、Kindlebergerは簡潔に、協力することのメリット(あるいは、その前に、労働者が大幅な賃金引き上げを求めたときは資本逃避を招いたから、要求を抑えた)を指摘します。

ソ連に対する賠償金支払いは、独立を守るという強い政治的意志の上で、フィンランド経済を世界市場に結びつけ、投資や技術移転、輸出を促すことで成長を得ることの一部でした。

内外の政治経済システムが示す覇気や巧拙が、戦争、金融危機、あるいは震災で、その影響を組織して国民を守り、あるいは、苦しめます。

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