今週のReview
6/13-18
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アメリカの景気回復 ・・・エジプト ・・・中国とガバナンス ・・・ユーロ圏のメニュー ・・・食糧と革命 ・・・カダフィ ・・・アメリカの保守派 ・・・国際権力 ・・・アフガニスタン撤退 ・・・限度を超えた成長 ・・・オーストラリア
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, SPIEGEL, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)
l アメリカの景気回復
NYT June 2, 2011
The Mistake of 2010
By PAUL KRUGMAN
現在のアメリカ経済は1936-37年に非常によく似ている。生産が増加し、物価が少し上昇するが、失業はまだ高水準だ。そして、政府は同じ間違いを犯すのか?
2009年にオバマが実現した刺激策は規模が小さすぎたし、期間が短すぎました。2010年には効果を失い始めています。他方で、議会の関心は財政赤字の削減に向かいました。政治家や評論家たちは雇用に関心を示さず、財政赤字が債券市場から警告を受けていると騒ぎます(むしろ景気回復を予想したのだ)。また、連銀は海外における物価上昇を懸念し、ECBが金融引き締めに転じたことを意識しています。
つまり、アメリカ経済は不況を完全に脱することができないまま、財政緊縮と金融引き締めを強く求められているのです。1937年の失敗が、それ以上の形で、再現しつつあります。
われわれは、まったく同じものではないとしても、大恐慌の中にある。
FT June 3 2011
Apologies – we need a toxic rethink on the economy
By Robin Harding
ギリシャやユーロの危機は対岸の火事ではない。追加の刺激策など考えてはならない。大恐慌の再現を回避したのは2008年だ。今は、ギリシャ危機から始まる世界危機が、アメリカの債券市場を襲う危険がある。
FT June 3 2011
Dealing with the evils of stagflation
FT June 3 2011
US must move beyond financial band-aids
By Mohamed El-Erian
LAT June 3, 2011
The silent jobless
By Robert B. Reich
緩やかな景気回復にもかかわらず、1300万人以上がまだ失業している。
アメリカ経済は、失業の長期化と需要の減少とが悪循環になっている。政府による雇用拡大(WPA)、追加の刺激策、失業保険の充実が求められる。しかし、彼らの声は届かない。失業している者は政治的にも無視されている。
女性、特に未婚の母親たちがもっとも苦しんでいる。景気回復の初期に雇用をもたらす製造、輸送、建設は男の職場であり、彼女たちが働く小売り、レストラン、ホテルは落ち込んでいるからだ。初めての雇用を得られない若者、高校卒業者の30%も失業中だ。
彼らに共通しているのは、政治的な影響力や組織がないことだ。失業者のために動くワシントンのロビイストはいない。
FP Friday, June 3, 2011
The economic quake that is starting to rattle Washington
Posted By David Rothkopf
Paul Krugman and Robert Reichの論説を読んで考えたこと。
BLOOMBERG Jun 6, 2011
What Paul Krugman Misses About 1937 Redux: Echoes
By Amity Shlaes
アメリカは1937年を再現しているのか?
「その年、アメリカ人は大恐慌からようやく抜け出すはずだったが、株式市場が再び急落し、ダウ工業株平均で1937年3月の190代から1938年3月には100以下になった。ルーズベルトの工業経済を測る非農業失業者は、18%以上に上昇した。工業生産の3分の1が減少した。」
一部のエコノミストたちは、金融政策に問題があったと言う。しかし、Paul Krugmanは財政緊縮策が問題だった、と主張する。経済史が教える悪化の要因はもっと多い。
財務長官Henry Morgenthauによる増税法案が議会を通過した。社会保障費が徴収された。連銀は銀行を強くするために預金準備率を引き上げ、予想外の金融引き締めとなった。連銀も財務省も金本位制によるインフレ抑制を重視していた。
1935年にはワグナー法が成立し、1937年には労働争議が倍増した。企業は賃金を引き上げた。ルーズベルトの積極的な政府の拡大について、大企業や銀行は敵対し、市場や中小企業も「体制の不安"regime uncertainty"」を感じていた。ルーズベルトの政策は一貫していなかった。1938年の中間選挙では共和党が勝利し、大統領の権力拡大に制限を加えた。
FT June 7 2011
The road to recovery gets steeper
By Martin Wolf
アメリカ経済の工業生産は伸びず、雇用増が、予想の17万5000人ではなく、3万8000人にとどまったことは重要だ。
景気過熱よりもバブル崩壊による不況の方が抜け出すのに時間がかかる。労働政策を中心に、構造政策が必要だ。特に、為替レートを調整できないユーロ圏では、賃金の名目値を弾力的に変更しなければならない。インフレは抑制されており、量的緩和も続けることができる。
WP June 8, 2011
How will history judge Obama’s economic policy?
By Harold Meyerson
2012年の大統領選挙で敗北したオバマを将来の歴史家たちは書くとき、政権の最初の数カ月に注目するだろう。・・・なぜオバマはアメリカ国民を不況から救いだせなかったのか?
以前の不況対策から見れば、オバマは大いに成果を上げたはずだった。しかし、2011年半ばまでに、それではアメリカ経済の根本問題を解決できないことが明らかになった。「以前の回復とは違って、アメリカの主要企業・銀行は国内よりも海外に投資した。失業率は9%を超え、2009年半ばから起きた成長のほとんどは企業の利潤になり、実際、賃金は下落した。所得の減少と債務返済でアメリカ人は十分に消費できず、たとえ消費しても資金はそれらを生産する国に向かった。」
なぜオバマの政治顧問や経済顧問たちはこうした事態を放置したのか? 彼らは聡明なことで有名だった。たとえば、経済顧問として政策を支配したLarry Summersのように。過去の不況と違って、アジア市場がアメリカ企業の利益を左右し、アジアの労働コストが重要になった。アメリカ民間労働者の93%が組織されておらず、失業率が高いうちは賃金が上がらず、家計は債務から抜け出せない。
かつて景気刺激策が回復をもたらしたようなメカニズムが失われてしまったのだ。財政刺激策や金融緩和より、大規模な政府雇用プログラムが必要だった。それは、右派による政府攻撃を前提すれば、政権成立時にこそ大統領が積極的な工作をするべきだったものだ。そして、刺激策の効果が不十分であるとわかった2011年には、もはやそのような工作は不可能だ、と政治顧問たちが経済顧問を黙らせたのだ。
NYT June 8, 2011
More Trade and More Aid
By MATTHEW J. SLAUGHTER and ROBERT Z. LAWRENCE
韓国、コロンビア、パナマ、などとのFTAが議会で論争になっています。アメリカ国民の自由貿易に対する支持が低下しているからです。金融危機後の不況と失業は、貿易赤字にも強い不満を生じています。
アメリカ政府は、グローバリゼーションに応じた雇用対策として、FTAとTAA(Trade Adjustment Assistance)を同時に推進するべきだ、と考えます。TAAとは、1962年にできた、輸入増による失業者の生活と再雇用を支援する仕組みです。これは不十分なものでしたが、一気に充実されるべきだ、というわけです。
WP June 9, 2011
Getting past the paralysis on jobs
By Fareed Zakaria
「アメリカの労働者は新しい世界に住んでいる。技術進歩やグローバリゼーションは企業により少ない労働者でより多くの生産を可能にした。新興市場の無数の熟練労働者が、アメリカの価格の数分の1で同じ製品を供給できる。」・・・アメリカでは、将来も、生産と雇用が乖離するだろう。
これは構造的な問題だ。共和党が財政赤字を嫌うとしても、失業増や低成長も困るだろう。政府は新しい方法で、住宅破産や失業に遭った者たちを雇用しなければならない。その最も単純な方法が、国立インフラ銀行を設立し、アメリカのインフラを補修・再建することだ。
共和党は、これを財政刺激策の追加案として拒むが、やり方によっては、共和党の求める民営化と財政支出の効率化につながる。アメリカの公共投資は、他国に比べて、政府が管理している。今は超低金利で債券発行のチャンスであり、効率性を重視して費用便益分析に従うなら、インフラ建設は消費ではなく投資である。
l エジプト
FT June 2 2011
When Tahrir Square comes to Israel
By Philip Stephens
FP JUNE 3, 2011
Warsaw on the Nile
BY JAMES TRAUB
G8によるthe Deauville Partnershipを歓迎する。
1989年の東欧民主化革命において、ポーランドの改革は決定的に重要だった。今、エジプトはナイル川沿いのポーランドだ。しかし、エジプトはポーランドよりもっと貧しい。ロシアのように、自由化と「ショック・セラピー」により改革は加速する。エジプトの民主化を促し、経済を安定化するために、より多くの援助が必要だ。Anders Åslundは、経済を軍部が支配しないように、民営化を進めることが重要だ、と主張する。
FT June 6 2011
Time to stop propping up Egypt’s currency
By Khairi Abaza
大量の失業者を抱えているエジプトには、価格を自由化し、為替レートを変動させて、通貨価値が減価するのが望ましい。こうして初めて、市場が、内外の均衡を回復する水準がどこか、発見する。
l 中国とガバナンス
BLOOMBERG Jun 2, 2011
China’s Boom Threatened by Enron-Style Tricks
By William Pesek
「格付けが下がると面白い反応が見られる。1月、S&Pが日本の格付けを下げて、中国と同じレベルにした。日本政府が反発すると思ったら、怒ったのは中国政府だった。」
10%の成長率を実現し、3兆ドルを超える外貨準備を持つ中国が、毎年、首相が交代する、債務漬けの老人国家である日本と、同じ格付けなのはどういうことか?
しかし、こうした意見は間違っている。中国はインフレを抑制しようとしており、成長率は下がる。しかも、その過程には大きなリスクがある。2008年の金融危機を回避した中国政府の努力が、その本当のコストを示すからだ。
中国の成長は、その主要な顧客である、アメリカのウォール街が暴落しても、ヨーロッパの債務危機が起きても、日本がデフレを抜け出せないままでも、止まらなかった。その秘密は、報告されていない膨大な債務を累積したことである。
中国に点在する20の都市が国際空港を建設し、摩天楼や5つ星のホテル、6車線の高速道路、世界クラスの大学と文化センター、プラダ・ストア、メルセデス・ベンツのショールーム、そして無数の住宅を求めている。それは近代における最大の都市化である。
この建設ブームは静かに進み、北京政府の管理を大きく超えて、金融緩和と地方における債務保証が可能にしている。地方政府に対する銀行融資が一斉に破綻すれば、成長を損なうだろう。地方政府だけで救済できるのか? 北京政府が乗り出すとき、不況対策の本当のコストがわかる。規制を逃れた投資会社や不動産開発業者に対する融資は、中国の銀行融資の30%に達する。
低所得者向けの公共住宅の建設(2兆人民元の地方政府による融資増)は、インフレ対策と矛盾する。エンロン型の債務隠しが行われているだろう。しかし、それが経済の崩壊に至ることはない。かつて、1990年代後半にも、中国政府は銀行の不良債権を6500億ドル以上も救済した。
中国のインフレ率は5.4%を超えて上昇している。もし成長率が5%に下がれば、繁栄を約束してきた中国にとって経済危機を意味する。25年間で興隆と衰退をたどった日本の軌跡を免れることが、中国指導層の合意であった。不良債権は崩壊をもたらすか?
FP JUNE 3, 2011
Pakistan's Black Pearl
BY URMILA VENUGOPALAN
米中間の、インド洋からペルシャ湾にいたる海上輸送・安全保障の覇権争いが、インドに対するパキスタンの戦略と結び付きます。パキスタン政府はGwadarの軍港建設に中国を呼び込もうとして、中国政府はただちに報道を否定しています。
確かにGwadarは戦略上の重要な位置にあるけれど、中国政府の慎重姿勢は続くでしょう。それは政治的、経済的な観点も重視するからです。Baluchistan地域は政府に対抗して不安定であり、インフラもありません。パキスタン政府は地域への介入に中国を利用するつもりです。また、中国はすでに南シナ海の領土問題でアメリカとの対立を意識しており、その拡大を嫌います。
(chinadaily.com.cn) 2011-06-04
When will China's economy overtake America's?
By Yao Yang
FT June 4 2011
US warns Beijing over South China Sea
By Kathrin Hille and Demetri Sevastopulo in Singapore
アメリカのRobert Gates国防長官は、南シナ海における領土問題について警告しました。「ルールのない道路」を走っている。問題を処理するアプローチについて合意しなければ、衝突事故が起きる。
マレーシアのNajib Razak首相は、地域を米中の二つのブロックに分割して、冷戦の旧思考に戻ってはならないと呼びかけました。そのため、各国は地域安全保障に関する秩序を求めています。ベトナムのNguyen Chi Vinh防衛副大臣は、アメリカと中国も参加して、国際法を尊重し、各国の利益を守ってほしい、と。
NYT June 4, 2011
Advice for China
By THOMAS L. FRIEDMAN
胡錦濤主席に直接手紙を書いて、アラブの春を考えてもらいます。たとえば、こんな風に。
・・・アラブの春を見て、あなたも考えているでしょう。21世紀の革命はどのように起きるのか? より緊密に統合された社会で、また、より平坦に活動するグローバル経済に帰属しながら。
アラブの春は、a “hyperconnected world”と“Carlson’s Law”(革新は底辺から起きる)を受け入れなかったエジプトから中東世界に広がっています。たとえ小さな町の反抗でも、世界は注目しています。CNNやBBCを禁止した独裁者も、YouTubeやTwitter、市民が持つ携帯電話を禁止することはできませんでした。そんな時代は終わったのです。
今日、指導者の役割とは、企業であれ国家であれ、底辺から生じる革新を刺激して、それに力を与え、実現する手段を与え、そのすべてを編集し統合することです。そのためには、底辺にまで自由がなければなりません。それは技術の問題ではありません。
1991年のロシアと共通していることがあります。革命に参加する人々にとって、問題はパンと自由だけでなく、「尊厳」なのです。彼らは「市民」として扱われることを強く求めました。
GDPの成長率だけではないのです。あなたも気づいているでしょうが。
FT June 5 2011
China has another way to defuse ethnic strife
By Minxin Pei
漢民族の大規模な侵入に対する内モンゴルにおけるエスニック(民族)紛争は、この数年、比較的平穏であった。しかし中国型のジャスミン革命が起きるのではないか、という不安が高まっている。
モンゴル人の羊飼いを中国人のトラック運転手が引き殺した事件は、2000人以上の大学生による抗議デモになった。その背後には中国の民族政策に対する不満がある。
チベットやウィグルに比べて、内モンゴルの政策は成功と見なされている。人口バランスは逆転し、今や80%が漢民族だ。経済的にも完全に統合された。しかし、少数民族は人口の8%でしかないが、重要な地下資源のある地域に居住している。その開発を支配するのは中央政府や地方の漢民族官僚だ。彼らは環境破壊に苦しむ少数民族を軽視している。
漢民族の大量流入は少数民族の雇用やビジネスを奪う。新しい輸送システムの拠点や新開拓地に集まり、新技術によって雇用されるのは漢民族だ。経済的な利益は新しい対立を強める。しかし、地方政治を支配するのは漢民族であり、中央から任命された官僚だ。少数民族には経済や文化に関する特権が認められている。しかし、政治的な権力はない。
中国は、少数民族に対する政治的な自治権を拡大するべきだろう。それ以外に、分裂した社会を対立から救う道はない。
FT June 6 2011
When China becomes number one
By Gideon Rachman
IMFの最近の報告では、5年以内に、中国が世界最大の経済になる。すなわち、2016年にアメリカを超える。The Economistの予測では、2019年だ。
それは超大国という概念を変えるものだ。アメリカの時代には、世界最大の経済は世界で最も豊かな人々でもあった。中国はその関係を切る。3兆ドルの外貨準備を持つが、現在の為替レートでは、平均的アメリカ人は平均的中国人の10倍も豊かだ。
IMFなどの国際機関を見ても、アメリカの重要性は失われないだろう。アメリカの軍事力は世界規模に展開し、その技術力も秀でている。ハリウッドやシリコンバレーに代表される「ソフトパワー」も失われない。
しかも、政治と経済は非常に密接に関連している。中国が豊かになるにつれて、その影響力は強まるだろう。すでにブラジルにとって、遠方の中国の方がアメリカよりも重要だ。第一の貿易相手国であり、Dilma Rousseff新大統領は中国を最初の訪問先にした。貿易や投資を通じて、アフリカや中東でも中国の影響は強まっている。その政治的な意味は、近隣諸国で最も深刻だ。日本、韓国、オーストラリアは、その経済的・戦略的な利益を見直さなければならない。中国との経済関係が最も重要になれば、アメリカとの安全保障条約はどうなるのか?
かつてシンガポールの外交トップであったKishore Mahbubaniは、中国の影響圏が構築される過程を「アジア諸国は、1000年先にも中国はアジアにあると知っているが、100年先にもアメリカがアジアにいるかどうかわからない」と描いている。財政危機に苦しむ欧米や日本に比べて、中国のパワーは西側文明の価値を失わせる。民主主義や自由を唱える西側外交は力を失うだろう。
しかし、どの段階においてか、中国は経済的・政治的な危機に向かうだろう。高い成長率は続かないし、環境破壊や高齢化がすでに起きている。アラブの春は権威主義体制の不安定さを示したし、チベットやウィグルの分離も考えられる。
中国の将来をめぐる論争は極論に分かれている。危機が起きれば評価は一変するだろう。その両面が真実である、という意味で、中国は新しい超大国だ。
FT June 6 2011
Latin America ponders role of the renminbi
By Joe Leahy in São Paulo
WSJ JUNE 6, 2011
China's Influence Gap
By JOHN LEE
FP Monday, June 6, 2011
Fooling ourselves, but not Asia
Posted By Clyde Prestowitz
Global Times [18:55 June 06 2011]
New Silk Road could revitalize war-torn Afghanistan
By Li Xiguang
アフガニスタンからパキスタンに広がる戦争状態について、WSJによる中国政府の協力要請を支持するべきだ。パキスタン政府(タリバンを支援)はアフガニスタン政府を嫌っているが、中国が参加すれば地域安全保障を実現できる。各国はパミール地方の文化を共有している。
しかも、安全保障を支持する形で、中国はシルク・ロードを復活する貿易圏を得ることになる。それはソ連やNATOの介入で破壊されてきた。中国が、NATOに代わって、隣国の繁栄を実現することは重要だ。すでに戦争状態にもかかわらず、中国企業がアフガニスタンに進出し、インフラの建設や経済復興にも参加している。
FP JUNE 7, 2011
Crowded Waters
BY ABRAHAM M. DENMARK
「東南アジアにおける危険な軍備拡大競争は不可避ではない。アメリカは(中国などの)新興海軍力を自国の独立のために促進し、それが航行の自由や地域安全保障の妨げとならないように保証するべきだ。そのどちらもアメリカ政府にとって非常に重要である。新興諸国が台頭するにつれて、彼らはアメリカの支援や関与が続くことを期待するし、同時に、中国との良い関係も望むだろう。それは正常なことだ。結局、影響圏を競って、大国が軍事競争した20世紀は終わったのだ。21世紀の地政学は、統合によって安定性をもたらし、各国は領土の拡張より経済競争を追求する。すべての参加者はその複雑さを受け入れることだ。」
WSJ JUNE 8, 2011
Vietnam and the Dragon
(peopledaily.com.cn) 2011-06-08
US should draw lessons from arms race
By Ding Gang
(China Daily) 2011-06-09
US must change its Asia policy
Robert Gates国防長官の発言に関して、アメリカのアジア政策を批判します。中国がアジア地域の成長を指導するとき、アメリカはその過去の政策を改めて、協力と発展に参加するべきだ。
Global Times [02:27 June 09 2011]
Keep threats out of the South China Sea
WSJ JUNE 10, 2011
Selling Tea to China
By ILARIA MARIA SALA
FT June 2 2011
Japan’s political class out of tune with public
By Mure Dickie in Tokyo
皇帝ネロはローマを焼き払ったが、日本の政治家たちは口論と謀略で国を滅ぼす。
l ユーロ圏のメニュー
SPIEGEL ONLINE 06/03/2011
The Euro-Zone and Greece
Trichet's Dream of a European Finance Ministry
ECBのトリシェ総裁は、EU財務大臣会議が加盟国の予算を拒否できる仕組みを支持します。「市場が統合されただけでなく、共通通貨とヨーロッパ中央銀行(ECB)もあるEUにとって、共通の財務省をもつことも無謀なことではないだろう。」
これは「一方における国家主権と、他方における、例外的な状況における、加盟国の行動に存在する相互依存について、バランスを取ること」を意味する。
しかし、リスボン条約の変更後、EUは統合の深化に情熱を失い、特にドイツは、財務大臣Wolfgang Schäubleがトリシェの提案に熱意を欠いた支持を示しただけである。
この提案はEU内で広まるギリシャへの追加の融資(さらに、債務のソフトな再編)を牽制して、それに反対するECBが代案を示したという事情があるだろう。
FT June 5 2011
Ingredients of a European political union
By Wolfgang Münchau
ギリシャの破滅的なデフォルトを避けるために、閣僚会議は追加融資に合意するだろう。しかしユーロ危機を乗り越えるには、財政移転しかない。ユーロ圏は主権国家が参加し、離脱できると思われがちだが、参加も離脱も自由ではない。それはすでに、さまざまな法律を共有した政治体である。(カリフォルニアが、勝手にドル圏を離脱して、独自通貨を発行することはできないように。)
ユーロ圏が通貨危機を解決できないのは、政治統合が弱いからだ。ドイツやオランダがギリシャ(そして、アイルランドやポルトガル)への財政移転を認めるためには、ユーロ圏の赤字国が主権の一部をあきらめ、ユーロ圏を新しい「政治統合」に向けて進めるしかない。その意味は、少なくとも、三つの制度をともなう。
1.ユーロ圏の財務大臣を決める。コミュニティー内で利害対立が起きたとき、国家の主権を超えた決定ができる。EU閣僚会議は危機管理に失敗した。
2.ユーロ圏の財政統合を進める。ユーロ圏全体に及ぶ銀行再建・整理基金。それをEU全体の銀行監督局が支援する。しかも、ショック・アブソーバーが必要だ。その一つは、ユーロ圏全体の失業手当である。また労働市場政策を統一するのもよい。労使交渉をユーロ圏で協調することだ。
3.ユーロ債を発行する。各国は他国の債券を保証しない。その場合、ユーロ債である国のデフォルトが波及するのを防ぐのが望ましい。ECBによる「救済融資の禁止」が再確認できる。
SPIEGEL ONLINE 06/06/2011
Dubious Value
European Banks Dump Junk Bonds on ECB
By Matthias Brendel and Christoph Pauly
SPIEGEL ONLINE 06/06/2011
A Fatally Flawed Recovery Plan
Greece Back on the Brink
By Manfred Ertel, Christian Reiermann and Anne Seith
FT June 6 2011
The global fallout of a eurozone collapse
By Kenneth Rogoff
ユーロ危機は崩壊の岐路に立っている。その実験の成否は、国際通貨システム全体に及ぶだろう。私たちの孫は、無数に多くの国民通貨がある世界に住むのだろうか? あるいは、非常に少ない、複数の国に使用される
もしユーロが生き延びてドルに並ぶ準備通貨の地位を得ることに成功すれば、世界各地における通貨統合の流れを強めるだろう。ユーロ圏をまねて、それはより低い金利や、通貨危機への備えを提供する。たとえば、カナダとメキシコは、他のラテンアメリカの国も加えて、アメリカとの通貨ブロックを構成するだろう。中国と日本はその相違を超えて、アジアにおける第3の貿易圏のコアになるだろう。最近の金融危機が起きるまで、世界単一通貨の採用を唱える理想主義者を除けば、多くの研究者にとって通貨統合を考えることは非常に難しかった。(しかし、インフレを抑えるために通貨間の競争が必要であるから、世界単一通貨は望ましくない。)
他方、もしユーロが分離、解体してしまえば、ヨーロッパの指導者たちは周辺の債務負担を軽減する難しい決断ができないからだが、その後の何十年も、他の地域で通貨統合が試みられることはないだろう。1980年代と90年代が示したように、資本市場を開放した諸国が固定レート制を維持することは幻想である。ユーロは、21世紀初めのアルゼンチンの教訓に道を譲る。主権と通貨は切り離せない。混じり合うものではないのだ。
しかし、ユーロは今回の金融危機の核心ではない。震源地は、スペインや、むしろ英米であった。ヨーロッパの債務危機はその後遺症である。そのユーロ圏が、ショックを吸収するよりも、むしろ増幅する仕組みになっている。イギリスはユーロ圏に入っていないため、ポンドが急速に安くなって利益を得た。ヨーロッパの周辺諸国は競争力が改善しないまま、調整を容易に進められない。主要国が求めるように、賃金を引き下げるのは無理だろう。急速に成長すれば返済できるが、債務負担でそれもできない。
ユーロは、ヨーロッパ内で為替レートの投機的な変動を取り除くためにできた。皮肉にも、それが強すぎるユーロに苦しんでいる。大幅に通貨が安くなることで助かるのに、ドルに対してユーロは強くなった。ヨーロッパの指導者たちは、それをユーロへの信頼として自慢していた。
ユーロ危機の教訓とは、予測不可能な政治と生きるより、予測できない為替レートと生きるほうが良い、ということだ。ユーロは政治によって作られたが、経済学はそれを支持していない、とよく言われる。今の事態は、それを逆さまにしたものだ。
取引費用を減らし、規模の経済が作用するという意味で、通貨の数が少ない方が経済的には意味がある。しかし、本当の問題は、共通通貨が政治的に維持可能かどうか、である。もし世界経済の停滞が続くなら、その答えはもうすぐ出るはずだ。
BLOOMBERG Jun 6, 2011
EU Needs Trichet’s Unified Finance Ministry
By Simon Johnson
EUは財政規律を各国に求めたが失敗し、閣僚会議に求めたが合意できなかった。ユーロ圏の財務大臣を創設するべきだ。
1992年のマーストリヒト条約と1999年のユーロ誕生に至る政治家たちは、三つの選択肢について話し合った。1.単一の財政システムを作る。それは政治家たちに拒否された。中央銀行は、独立性を高めており、ECBに委ねることに賛成した。しかし、課税や支出を手放したくはなかった。2.アメリカの州のように、財政的には独立しながら、連邦による財政移転をおこなうプログラムを設けた。3.ヨーロッパの政治家たちは中間の選択をした。予算赤字はGDPの3%以内、政府債務はGDPの60%を超えない、という規律を求めた。
バーゼル合意Uは、政府債務のリスクを無視する失敗を犯した。その結果、ヨーロッパの銀行は膨大な政府債務をレバレッジによって保有した。ヨーロッパの各国債券はほとんど差がなかった。そして、間違った政策による危機と赤字が残った。ギリシャも、ドイツも、ヨーロッパの財政システムも、ECBも、その不健全な政策を維持していた。
ヨーロッパの財政システムはもっと中央集権化されるだろう。
(chinadaily.com.cn) 2011-06-07
The Euro's PIG-headed masters
By Kenneth Rogoff
ヨーロッパの政治家たちは、Portugal, Ireland, and Greece (the PIGs)の維持不可能な債務負担を軽減することなく、返済される当てのない融資を増やしている。
ユーロ圏の成長と、PIGsがユーロ圏のGDPの6%しか締めないことから考えて、債務危機は処理可能である。それを官僚たちは「流動性危機」だと主張して、問題の解決を先送りしている。債務の再編は危機を波及させる、というのだ。確かに伝染は起きるだろうが、スペインやイタリアの政府債券に、ドイツが確実な防止策を取ればよい。真に統合化した通貨圏であれば、これは当然なのだ。
なぜヨーロッパの指導者たちは中途半端な解決策しかとらないのか? おそらく、彼らは勝者と敗者を決める強いガバナンスを欠いているからだろう。EUは弱く、バラバラで、GDPの2%弱しか財源がない。重要な決定には全会一致が求められる。これでは制度を改革できない。
PIGsがこの先、返済を続けるために、何年も緊縮財政と低成長を受け入れるとは思えない。それはフランスやドイツの銀行を救済するためなのだから。IMFの専務理事をヨーロッパが独占することで、PIGs向けの融資を増やすことが解決をもたらすとも思えない。
実際、IMFは、EUに欠けたガバナンスに代わる、厳しい条件を示すべきなのだ。すなわちIMFはPortugal, Ireland, and Greeceが競争力を回復し、債務を削減して、成長を回復する条件を示すこと。もしIMFの介入を拒むなら、EUはECBを最後の貸し手として使うしかない。その結果、ECBの資産が悪化して支払不能になれば、単一通貨の将来はなくなる。
その前にユーロが急落して、EUの成長を刺激するのだろう。しかし、より強い財政統合をしないなら、通貨統合は生き残れない。
SPIEGEL ONLINE 06/07/2011
Desperate Bid to Cut Deficit
Greek Privatization Plan Faces Massive Domestic Resistance
By Manfred Ertel in Athens
BLOOMBERG Jun 7, 2011
For Merkel, a Choice Between Saving the Euro or Her Party: View
メルケル首相は重要な選択を迫られている。政治的に可能で、ドイツにとって、EUにとって、また、世界経済にとって最善の選択肢は何か? 今の経済状態にドイツ人は満足している。ギリシャ債務の再編はドイツ(その銀行)にとって大きな損失だ。ウィーン・イニシアティブ、財政統合、財政移転、が提案されている。
FP Wednesday, June 8, 2011
To be or not to be European
Posted By Clyde Prestowitz
SPIEGEL ONLINE 06/08/2011
Berlin Warns of Possible Greek Insolvency
German Finance Minister Calls for Athens Debt Restructuring
By Sven Böll and Philipp Wittrock
ドイツのWolfgang Schäuble財務大臣は、ギリシャの破産を認め、EU,ECB,IMFに、事実上の債務組み換えを求めた。しかし、ドイツ政府が求めているソフトな再編を他の債権者が合意するのは難しいだろう。
そのさまざまな問題点(民間部門、EU諸国、格付け、ドイツ国内政治、ECBの資産悪化)が指摘されます。
FT June 8 2011
A Greek crisis of cronyism and corruption
By John Sfakianakis
ギリシャが直面する危機は、債務の再編でも解決できない、もっと深い政治・社会・経済危機である。ギリシャの政治は、既得権と、慢性的な盗癖、収賄に満ちている。危機に直面して、今のAndreas Papandreou首相が政治システムを再建した結果、そのポピュリスト的、政治的権利の擁護に逆らって改革を進めることは難しい。いずれのイデオロギーでも、エリートたちは知的に破綻しており、指導力の欠如から経済混乱が続いている。
l 食糧と革命
(chinadaily.com.cn) 2011-06-03
Food for revolution
By Harold James
フランス、DeauvilleのG8について。食糧安全保障のような重要な問題を軽視し、インターネットの経済的影響のような周辺的問題を重視する。
「一見、丈夫そうに見えるグローバルな経済システムだが、国際経済協力は1945年以来の最も低い水準にある。」 そして、食糧安全保障の弱体化は近代世界における秩序崩壊につながる問題だ。それは、経済・金融のナショナリズム、通貨戦争、銀行管理、保護貿易などに結び付く。
アメリカの金融緩和は、特に新興市場で批判を引き起こしている。資本流入とインフレが続くか、それを通貨の増価によって阻止すれば、輸出や雇用を失うからだ。アメリカの金融緩和で、新興諸国の社会対立と政治不安が強まる。
食糧品の価格上昇は世界の食糧生産や雇用を刺激し、貧困からの脱出を加速した。その反面、特に都市部で、食糧価格高騰が生活水準の低下、極度の社会不安を起こしている。歴史的に、フランス、ロシア、中国など、食糧価格の高騰は革命をもたらした。その影響は、かつて1848年に革命がヨーロッパ中で波及し、アイルランドで飢饉が起きたように、国家の枠を超えている。
アラブの春が示すように、影響は地域の枠も超えて、中国の政治秩序にも変更を迫るだろう。1948年のように、食糧を求める闘いは既存の体制を襲い、正義の実現・新しい政治秩序を要求する。
guardian.co.uk, Friday 3 June 2011
Why Agustín Carstens should not be next head of the IMF
Kevin Gallagher
WSJ JUNE 6, 2011
José de Gregorio Rebeco for IMF Chief
By KEITH BOYFIELD AND BRIAN STURGESS
FT June 7 2011
Race for leadership of IMF heats up
By John Paul Rathbone and Adam Thomson in Mexico City and James Lamont in New Delhi
The Guardian, Wednesday 8 June 2011
The next IMF boss: Inside job
WSJ JUNE 8, 2011
China Still Noncommittal on Lagarde
By AARON BACK And WILLIAM HOROBIN
l カダフィ
WP June 3, 2011
For Gaddafi, a home on St. Helena
By William C. Goodfellow
オバマ大統領はロシアのメドヴェージェフ大統領と一緒に、カダフィが国外に逃れることを認めると発表した。それは象牙海岸・コートジボアールにおける独裁者Laurent Gbagboの追放に要した人命や経済破壊を繰り返したくなかったからだ。内戦状態で数千人の市民が死亡し、少なくとも80万人が難民となった。国連事務総長やフランス軍は彼を辞めさせることができなかった。
もしGbagboが数か月前に国外退去を提案されていたら、被害は抑えられたのではないか? 1815年に、ヨーロッパは同じ問題に直面していた。17年間もヨーロッパで戦争を拡大したナポレオン・ボナパルトは、600万人の人命を犠牲にした。彼は地中海のエルバ島に追放されたが、そこから戻り、ワーテルローで敗北するまで20万人の軍隊を擁していた。
2度と帰国できないように、イギリスはナポレオンを南大西洋のセント・ヘレナ島に追放した。セント・ヘレナ島は地上で最も孤絶した島であった。今もそうだ。
イギリス政府はセント・ヘレナ島を国連に貸して、カダフィを追放すればよい。カダフィとその家族は安全を約束され、そこで死ぬまで、静かに引退生活を送る。隠し口座の資産や世界各地の不動産は没収され、リビア国民に戻されるが、それらもセント・ヘレナ島では不要である。
カダフィのほかにも国外退去を求められる支配者は多い。セント・ヘレナ島には移住者による経済ブームが起きるかもしれない。
WP June 7, 2011
What to do about Libya’s stalemate?
By Anne Applebaum
南アフリカの大統領が来ても、国連の手が迫っても、NATOが空爆を続けても、カダフィは辞任しない。リビア戦争は膠着したが、それは悪いことか?
その答えは人による。非難する人は多いし、NATOが無力に見えるのは困るが、英米政府は喜んでいるだろう。カダフィが全土を掌握する見込みはなく、時間が経つほど経済制裁は効果を増す。軍事攻撃がなくても、カダフィへの支持は失われる。反政府派は時間が経つほど外交関係を広げ、政府組織を確立する。
ではなぜカダフィは辞任しないのか? カダフィは英米政府の財政負担と政治的反発を期待している。ある推定(the Guardian)では、9月までに15億ドルをイギリス政府は負担しなければならない。週に5000万ドルの支出だ。
アメリカ議会が軍事介入のコストに注目する前に、カダフィは辞任するだろうか?
FT June 7 2011
Radicals are right to take on the banks
By Sebastian Mallaby
アメリカのTim Geithner財務長官は、Basel IIIによる大銀行の自己資本を引き揚げるべきだ、と発言した。EUの金融サービス委員Michel Barnierはラディカルな改革に反対した。
金融危機を経た後、制度改革は進んでいない。自己資本規制は重要だ。
l アメリカの保守派
NYT June 4, 2011
Our Fantasy Nation?
By NICHOLAS D. KRISTOF
ティー・パーティ運動に集まる保守派はアメリカ政府の債務上限を引き上げることに反対している。彼らが望む国とはどんな姿なのか?
国民の2%以下しか税金を払わない。政府は小さく、雇用を減らす規制もない。伝統的な宗教意識が尊重され、保守派の感覚が支配する。学校でも祈り、同性の結婚などありえないし、犯罪者を甘やかさない。
軍事予算は最優先される。強い軍隊が最も尊敬される機関だ。将軍たちが決めた政策に政治家は従う。国民は強い愛国心を持ち、国旗を焼く者などいない。
これが共和党員のエデンの園であり、ユートピアだ。あるいは、パキスタン。
保守派はワシントンをポトマック河畔のイスラマバードに変えようとしている。そうではない、と言うけれど。
アメリカ人の所得はますます不平等になり、最も裕福な1%が保有する資産は最底辺から90%の国民が保有する純資産よりも多い。社会的移動性を自慢するが、高等教育システムは地方財政によるから学費が高騰している。
パキスタンやコンゴでは、富裕層が自分の子弟を私立学校や海外の大学に入学させる。警察署を維持する税金を支払うより、自分でガードマンを雇う。自国の医療保険制度はなくても、高度な医療サービスを受けるためにロンドンへ行く。
アメリカで進む公共サービスの民営化も同じではないか?
The Observer, Sunday 5 June 2011
Thatcher's dream becomes a nightmare for a jilted generation
Andrew Rawnsley
guardian.co.uk, Thursday 9 June 2011
Tony Blair as elected president of Europe? A dreadful thought
Diane Abbott
FT June 6 2011
Nuclear power: Atomised approach
By Ed Crooks and Sylvia Pfeifer
世界には440の原子力発電所が稼働しており、60が建設中であり、493以上が提案・検討されている。福島の原発事故は世界にどのような反応をもたらしているのか?
l 国際権力
(chinadaily.com.cn) 2011-06-07
Has economic power replaced military might?
By Joseph S. Nye
冷戦が終わったとき、地政学ではなく、「地経学」"geo-economics"が重要になる、という意見もあった。日本やドイツが重要な役割を果たす、と考えた。
しかし21世紀においても、軍事力は重要だ。確かに高度に相互依存した世界では軍事力を使うことは少ないだろう。「金融的な恐怖の均衡」が支配している。しかし、軍事衝突の影響はそれだけ大きく、安全保障の重要性は失われない。市場と経済的パワーは政治的な枠組みに依拠しているのだ。「それは酸素のように、少なくなるまで気づかない。」
FT June 8 2011
Syria can prove that sanctions do work
By Joseph Nye
その効果を否定する者もいるが、経済制裁は重要だ。シリアの反政府デモにおける犠牲者が1000人に近付いて、漸くオバマ政権は制裁を発表した。
確かに、経済制裁でキューバのカストロやイラクのフセインを倒すことはできなかった。しかし2007年、北朝鮮の金正日を交渉に復帰させたように、金融ネットワークに依拠した“smart sanctions”は効果的だ。指導者個人や家族、特定企業・銀行を制裁できる。現代では、シグナルやソフトパワーを駆使して、弾力性のあるスマートな制裁が可能である。
l アフガニスタン撤退
WP June 8, 2011
How to exit Afghanistan without creating wider conflict
By Henry A. Kissinger
アメリカにとってアフガニスタン撤退は何を意味するか? どのようなものでなければならないか?
アメリカはアフガニスタン介入に一定の成果を上げ、オバマ政権は交渉による撤退を模索している。ドイツ主催で、アメリカ軍とタリバンが交渉しつつある。
意味のある撤退には4つの条件が必要だ。1.停戦。2.すべての軍隊の撤退。3.連合政府の樹立、もしくは、勢力間の領土分割。4.合意を強制するメカニズム。
強制メカニズムが最も難しく、関係諸国の国際合意による強制力とともに、アメリカ軍の一部を駐留させるべきだ。
アフガニスタンの安定化は地域の安全保障に欠かせない。ともに核保有国であるインドとパキスタンが対立する。ロシア、中国、イランのイスラム教徒が影響を受ける。不安定化すれば、対立する勢力の衝突が介入を呼び、第1次大戦を招いたバルカン半島のような危険な地域になる。
イラクとアフガニスタンから撤退し、エジプトにおけるアラブの春が成功すれば、アメリカの戦略的な見通しは大きく転換する。
l 限度を超えた成長
NYT June 7, 2011
The Earth Is Full
By THOMAS L. FRIEDMAN
成長・気候変動・資源枯渇・人口圧力の相互作用が我々の社会を脅かしている。どうすればいいのか? グローバル・フットプリントがそれを示している(the Global Footprint Network)。人類はすでに、地球を1個半も必要としている。つまり、持続不可能だ。
「消費主導型成長モデル」から、「幸福主導型成長モデル」に転換するしかない。私たちはもっと外で球技を楽しみ、子供に本を読んでやり、散歩する方が良い。人生を楽しむ時間を増やして、モノを余り使わない。これはユートピアンではなく、リアリストの意見だ。人類は愚かではない。危機によって強制されるのではなく、新しいモデルを開発するだろう。
FT June 8 2011
Europe: Hidden economy
By Victor Mallet and Guy Dinmore
FP JUNE 8, 2011
Pyongyang Spring
BY SEBASTIAN STRANGIO
FT June 9 2011
China to develop N Korea trade zones
By Jamil Anderlini in Beijing and Christian Oliver in Seoul
北朝鮮は指導者の交代で、新しい成長型の体制に向かうだろうか? すでに闇(自由)市場は拡大している。中国も韓国もそれを支援するでしょう。
SPIEGEL ONLINE 06/09/2011
SPIEGEL Interview with Turkish Foreign Minister
'Turkey and Europe Need Each Other'
トルコのAhmet Davutoglu外務大臣がインタビューに応えています。トルコの政治的・経済的な重要性は様々な論説で注目されています。
SPIEGEL ONLINE 06/09/2011
The Sultan of Istancool
Is Erdogan's Success Pulling Turks Away from Europe?
By Daniel Steinvorth and Bernhard Zand
FT June 9 2011
Turkey: Eyes on a higher prize
By David Gardner
YaleGlobal 9 June 2011
Can Turkey’s Rise Lift Arab Neighbors?
Katinka Barysch
FT June 9 2011
Why Berlin is resetting its compass
By Philip Stephens
サルコジ大統領以上の歓迎を受けたメルケル首相のワシントン訪問は、両国に何をもたらすのか? オバマ大統領は、ドイツのユーロ危機の処理には不満であり、リビア介入について中国と一緒に棄権したことも不満であり、福島原発事故後も原子力エネルギーを重視する点で、ドイツの原発全廃にも不満でしょう。
メルケル首相は、アメリカが国際収支不均衡の是正を唱えても、人民元レートではなくアメリカの消費と貯蓄に問題があると思っており、ユーロ圏と同じ感想しか持たないようです。
ドイツ再統一から20年がたって、グローバルなパワー・シフトはドイツをアジア、特に中国との関係に取り込みます。ドイツの輸出市場は中国へ向かい、ドイツ政府のエネルギー政策はロシアに向かいます。
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The Economist May 28st 2011
The next Golden State
Special Report Australia: No worries?
Austerity in southern Europe: Spain’s cry of pain
China in Laos: Busted flush
China and the world economy: Crosstown traffic
Charlemagne: The Obama tonic
Europe’s debt crisis: World’s worst menu
Economics Focus: Drain or gain?
(コメント) オーストラリアの特集記事です。中国など、新興諸国の成長によって需要が増えた資源がオーストラリアには豊富だから成長した、という話は当然でしょう。交易条件が改善しているのです。そして、移民も流入しています。資源開発には巨額のインフラ投資も必要でした。
では、オーストラリアの何が問題か? 資源が豊富な国の政治的混乱、既得権層の暗躍、為替レートの増価による「オランダ病」、などが指摘されるはずです。なぜなら、これらがロシアを苦しめているから。しかし、記事によればオーストラリアは1980年代に経済不況を脱するため、自由化改革を進めたことが今の成功をもたらしました。為替レートを変動させ、独立した中央銀行の金融政策がインフレ抑制を目指し、労働市場も自由化を進めて、財政状態は健全です。
中国の成長によって、アメリカのアジアにおける役割がどう変わるか? もちろんオーストラリアは心配していますが、APECのようなルールによる開放型の国際協調を求めます。オーストラリアは、政治経済の「カモノハシ」として、アメリカ(小さな政府と不平等)でもなければ北欧(社会福祉と重税)でもない、移民を受け入れつつポピュリズムに冒されず、困難な改革も実行して競争を促進してきた、調和的な社会なのです。
他の記事。中国からの投資が繁栄をもたらすとは限らない。ラオスの不動産開発と消滅。中国の不動産バブルが不良債権と銀行危機に至るとは限らない。
オバマが危機に落ち込んだヨーロッパ市民に教えているのは、改革する機会をつかむ元気です。指導者たちの手にした最悪のメニューにも、希望が必要です。
最後の記事は「頭脳流出」の改名、「頭脳利得」です。高等教育や技術者の国外流出、出稼ぎ、移民、送金には、送り出す国にも本人にも利益がある。
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IPEの想像力 6/13/11
土曜日、朝の暴風雨は過ぎ去って、午後から晴れ間ものぞく住宅地を、古本屋に向かって散歩しました。住宅ばかりで、好きになれないのですが。
買いたかったのは山本一力の小説でした。たまたま店内放送で、「500円以上お買い上げの方には500円分の割引券」と聞いたため、2冊買いました。そして驚いたのです。割引券の使用期限は6月末まで。500円の内、この店で1000円以上買ったら100円引き。2000円以上買った場合、400円引き、と説明されたからです。 え! それはないよ、と叫んでしまいました。
商品券というのは貨幣ではないのでしょう。しかし、遠い親戚には属していると思います。いや、遠い親戚の飼っている犬が付けた首輪ぐらいでしょうか? 少なくとも、商店が[貨幣]を駆使して買い手を管理する姿勢に感心(?)しました。
他日、ブックオフの携帯電話会員に送られてきた「×月×日×時から、全品半額セール!」の情報に、喜んで行ったときも、店が人であふれているのを知り、驚きました。時間セールなので、人々は何冊も何10冊も漫画や本を抱え、時間前からレジの前に行列したのです。その列は広い店舗内を半周以上していました。
ケインズやハーシュマンなら、何と言うでしょうか。
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その帰り道で思ったのは、震災からの復興です。
たとえば、義援金の使い方。大部分が被災者に支給できていない、と聞きました。分配するより、むしろ瓦礫の除去やインフラ整備に充てるべきではないですか? もっと建設業者を入れて、瓦礫の選別や輸送、清掃など、被災者(そして失業者)の雇用に支出すればよいと思います。
開発論が指摘するように、援助より貿易、そして、雇用です。労働者が流入し、被災者に所得があれば、地元の商店も売り上げが増えて、地域の復興に向けた波及効果が生じます。被災地域で住宅を大量に建設できるルール・条件を示してください。
たとえば、住宅の再建。地盤沈下した地区から集団的に住み変えるか、低地としても十分なインフラを整備するか、その他、個別の住民に可能な選択肢を示す必要があります。選択肢を増やすには、ルールを決めて公的に監視しつつ、民間企業に競争させるのが良いでしょう。高齢者や弱者には、集合住宅を地方政府が提供するべきです。
NHKが特別番組で、「復興はなぜ進まないのか?」と問いかけました。宮城県の村井知事が示す大胆な構想に比べて、枝野官房長官の話は要点整理や原則論ばかりでした。国政の混乱を象徴していると思います。
紹介された「復興が進まない理由」は明白です。債務が残ったままで、新しいローンが利用できない。職場が破壊され、仕事がない。政府がルールを示さない。土地がどうなるのか分からない。地方政府には十分な財源がない。
たとえば、土地利用。本格的な復興には、土地や住宅をもっと動かさなければなりません。土地の利用を地方政府に委託します。これを基に、旧評価額に応じて、開発主体・自治体が土地証券を被災者に支給してはどうでしょうか? もちろん、そのまま証券を現金化してもよいでしょう。しかし、復興が進むことで証券の価格が上がれば、被災者をもっと支援できます。
東北の農村や漁村を、インフラ整備と宅地開発、産業育成・企業誘致によってよみがえらせた場合、価格は以前よりも上昇します。うまく管理すれば、財政負担を減らし、民間投資を呼び込み、開発を加速して、その利益を被災者に還元できるでしょう。新興企業や外資導入の拠点にしてほしいです。
中国とアメリカの間に、日本はあります。その地理と生態は変わりません。オーストラリアが経済改革を進めたのは1983年です。アメリカでも北欧でもない、カモノハシのような政治経済モデルによって、中国からの需要に応じました。カナダやブラジルもそうでしょう。
震災と復興を契機に、原発に頼らない、環境破壊や大量消費に偏らない、中国とアメリカの良い面を学んだ成長モデルを、そして新しい政治経済を、発見してください。
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