IPEの果樹園2011

今週のReview

5/30-6/4

 

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ユーロ危機は起きる ・・・アラブの春とイスラエル ・・・イギリス社会の革新 ・・・IMFのトップ人事 ・・・ドル本位制の終わり ・・・G8 の終わり ・・・「東電国家」 ・・・シンガポール国家

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, SPIEGEL, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l         ユーロ危機は起きる

FT May 19 2011

ECB’s political tensions flare over Greece

By Ralph Atkins in Frankfurt

guardian.co.uk, Friday 20 May 2011

Five ways to solve the eurozone crisis

Henning Meyer

ユーロ危機は悪化するばかりだ。政治家たちは打開策に合意できない。彼らの決断に必要なことを確認しよう。

1.ユーロ圏全体のGDPに比べて問題の債務額はわずかであり、イギリスやアメリカに比べて経済的に問題ではない。問題は政治的な混乱だ。

2.安定化融資は恵むのではない。債務国が借りる市場金利より低いが、デフォルトしない限り、融資を提供する国の金利よりは高い。債務国にも、債権国にも、反ユーロ感情が高まっている。

3.債務危機問題は、債務危機を介した銀行救済融資である。彼らの利益を許したまま、投資リスクを社会化している。

4.ユーロ圏からの離脱はギリシャにとって最も損失が大きい。

5.財政安定協定を破棄する。財政赤字を制限することは、債務危機の発生を防げなかった。

FT May 22 2011

Cosmetic surgery will not save the eurozone

By Wolfgang Münchau

NYT May 22, 2011

When Austerity Fails

By PAUL KRUGMAN

景気回復を目指すアメリカに比べて、ヨーロッパの財政緊縮策は1年以上も続いている。すべての問題を解く鍵は、健全な通貨と財政均衡化である、と主張する。それは経済的な幻想であり、特に、金融市場の信認を求める妄想だ。

もしギリシャの銀行が破たんすれば、ギリシャはユーロ圏を離脱し、EU全体に及ぶ金融的ドミノ倒しが始まる。

guardian.co.uk, Tuesday 24 May 2011

The European dream is in danger: prepare for another rude awakening

Paul Mason

1914年の夏、オーストリアの小説家ツヴァイクStefan Zweigは仲間の小説家や芸術家といっしょにオステンドで休暇を過ごしていた。ある日の午後、制服の兵士たちが突如として遊歩道に現れた。彼らは警察官を引きとめて話した。『なんてばかばかしいことをしているのだ。』 それは83日であり、戦争が24時間以内に迫っていた。だが、それは起こり得ないように思えたのだ。」

ヨーロッパのエリートたちは、平和の時代、社会的なリベラリズム、グローバル化した貿易が永遠に続く、と信じているから、何も見ずに終幕にむけて歩んでいる。今日、エリートたちは夢の破壊に再び近づいた。彼らは単一通貨とEUとは同じものであり、どちらの崩壊も世界の終わりに等しい、と確信している。だから、起こり得ない、と。

しかし、ギリシャは債務をデフォルトする寸前である。ドイツの借り入れコストも跳ね上がった。スペインの街路に敷き詰められた丸石が緊縮策に抗議する民衆に共鳴する。毎週、1000人もの人たちが(職を求めて)アイルランドを出て行く。北ヨーロッパじゅうで、極右政党が政権を取る日を夢見て手を叩き、あるいは、政権に対抗できることを示そうとする。

ヨーロッパは崩壊の淵にある。ヨーロッパ全域にわたる連帯感は尽きてしまったのだ。

「連帯」とは、EUにおいて、相互の防衛であった。それは軍事的脅威やテロだけでなく、自然による、あるいは、人為的な災害に対する防衛である。連合軍の勝利、マーシャル・プランから、40年後には、東ヨーロッパをEUの制度や社会に受け入れた。

ヨーロッパとは、社会的な市場である。貧しい者にはセーフティー・ネットがあり、社会基金が国境を越えた富の再分配を行う。東欧は、西側が受け入れ可能なように、組織犯罪や汚職を取り締まった。ギリシャ、ポルトガル、スペインは、独裁体制を終わらせたとき、その復讐を抑えて社会的な利益を実現した。北欧の人々は地中海で日光浴を楽しめる。

こうしたことが崩壊しつつある。アメリカとIMFから圧力を受けて、漸く、7000億ユーロの安定化基金を創った。しかし、それも政治的な対立で上手く機能していない。有権者の不満を意識して北欧諸国は厳しい融資条件を付け、ギリシャ、ポルトガル、アイルランドではデフレ圧力が強まって、政治的な分裂を強めている。IMFのトップ人事やECB総裁についても紛糾している。

ヨーロッパ各国の政治は両極化を示している。保守派や極右が支持を広げている。世代のギャップもある。旧来の組織された労働者たちは緊縮策や、この20年間に闘い取ってきた社会福祉の削減を受け入れない。しかし、若者は違う。彼らはこうした旧政治のすべてを否定する。若者の40%が失業している。

ヨーロッパのエリートたちは、追加の融資には一層の緊縮策が必要だ、と主張する。条件を守れないギリシャには、捨て値で資産を売却させるしかない。それは財政赤字を埋めるためだけで、部分的なデフォルトも認めない。しかし、債券市場はデフォルトを予想している。ギリシャだけでなく、ドイツの借入コストも上昇した。

周辺において、財政危機と社会不安は悪循環を成している。ギリシャがユーロ圏を離脱するまで続くかもしれない。いずれの選択肢も容易ではない。デフォルトは北部の年金や銀行の資産を破壊する。アイルランドと南欧への現代版マーシャル・プランは数年で数千億ユーロを費やしたが、アメリカは債務を増やさず、中国とIMFがさらに多くの債務を支える。しかし、それでは競争力を失い、社会的な利益を破壊する、という彼らにとってのユーロ危機は終わらない。システムを破壊せよ、とマドリードのプラカードは要求する。

ツヴァイクは観た。楽観は間違いだった。人々は最後に他人を支持しなくなり、外交官たちは相互に脅しをかけた。

FT May 24 2011

Eurozone: Frankfurt’s dilemma

By Ralph Atkins in Frankfurt

ユーロ圏には債務危機になった国を助ける仕組みはない。逆に、税収や支出を分離している以上、各国は自国の財政規律を守る、と考えた。そして、救済融資はしない、という強い約束をした。

他方、ECBは債券市場を守るために大規模な支援を行った。ところが、いまや財政危機の救済は失敗に終わり、赤字国政府の債券リスクをECBの資産にしてしまっている。ユーロ圏では、各国政府は財政破綻の付けを中央銀行が救済できると期待する。それが通貨市場や債券市場に一層の不安を呼ぶのだ。

この先、どうすればよいのか? ECB、欧州委員会、IMFのトロイカ体制で危機を回避していくとしても、ECBはユーロ圏諸国の政府に成長と財政再建を強く求める。

SPIEGEL ONLINE 05/24/2011

The Hidden Cost of Saving the Euro

ECB's Balance Sheet Contains Massive Risks

By Matthias Brendel and Christoph Pauly

ECBの資産悪化について、制度の変更を求めています。各国の中央銀行が金融システムの崩壊を阻止するために債券を購入して資金供給した結果、ECBの資産内容まで悪化してしまったのです。各国政府や中央銀行による銀行・企業救済を抑えることです。

NYT May 24, 2011

Is There Any Hope for Greece?

Simon Johnson:選挙を意識した政治家の無責任な財政政策がギリシャに財政危機をもたらした。政治家たちが債務の再編を議論するほど、危機は深刻になる。銀行システムには資本が不足している。赤字国の財政再建、競争力の回復を行う。政治家がそれをやるとは思えない。

Desmond Lachman:債務を削減することだ。そして、成長するためには、ユーロを離脱して切下げる。

Barry Eichengreen:ユーロ離脱は間違いだ。債務の多くはユーロ建であるから、離脱と切下げで政府も銀行も破たんする。そこで、ユーロ圏内で「内的な切下げ」を行い、債務額を減らす。すなわち、EFSFが発行する債券とギリシャ債券を市場価格で交換する。ギリシャ債券は大幅に安くなっているから、債務額は減る。しかも、新しい債券に優先的な返済が認めるなら、これによって旧債券の価格は大きく上昇しない。EUが求めている民営化・資産売却による債務の削減は効果的でないし、ギリシャ国民の不満を強める。

Edward HarrisonAnat R. AdmatiVeronique de RugyVanessa Rossiも、ギリシャ政府や銀行の改革、ユーロ圏の制度改革を問題にします。

FT May 25 2011

Germany owes more to prodigal periphery

By Olivier Jeanne, Arvind Subramanian and John Williamson

ユーロによって最も大きな利益を得ているのはドイツだ。このことは、ドイツがもっとユーロ危機の解決に貢献する理由になる。

しかし、ユーロ危機はもっぱら放蕩な周辺諸国と財政赤字を責任感のある中枢諸国との対比で議論されてきた。そのせいで、危機に対する融資と厳しい返済条件が議論を支配している。しかし、ユーロ圏の中でギリシャやアイルランドが財政危機になった結果、ユーロ安が進んでいる。それはドイツの貿易黒字を増やし、4%の成長を実現してきた。

19世紀以来、ドイツの主要な関心は輸出による経済のダイナミズムを維持することだった。さらに、ワイマール共和国のハイパーインフレーションを経験したドイツが、物価の安定を重視する本能を持つことは当然だが、ドイツが通貨同盟に参加した以上、ECBはドイツよりも広い地域のインフレに注目する。現在のギリシャのように、ユーロ圏内の他国が競争力を回復しなければならないとき、ドイツは以前よりも需要を増やし、ドイツだけなら好ましいと思う水準よりもインフレが高まるのも受け入れるべきだ。

ギリシャは、緊縮策による不況と政治不安を高めているが、投資家の信頼は回復していない。ギリシャの負担を軽くするために、EUblue bondを発行するという提案がある。新しい債券の一部は、その返済が各国の拠出した危機によって保証される。そして、ドイツが解決策に貢献することを促すため、blue bondに貢献する国ほど保証額を減らせるというのがよい。

なにより、ドイツが国内の成長を刺激することで、ギリシャの競争力、輸出、成長を実現し、債務危機を解決することが重要だ。

WSJ MAY 26, 2011

The ECB's Horror Show


l         アラブの春とイスラエル

NYT May 19, 2011

Peace and Change

アメリカは中東地域の民主化と平和に貢献すると約束した。チュニジアとエジプトへの支援と、イスラエルとパレスチナの行き詰まりを打開し、和平を推進するためにアメリカは何をするのか? オバマ大統領は、地域に民主主義が広まることの意義を強調するとともに、1967年の境界線に依拠した二国家案を支持するよう明言した。

双方について、アメリカ政府が行動することは、イスラム過激派とテロを根絶することに向かう。

SPIEGEL ONLINE 05/20/2011

Rising Literacy and a Shrinking Birth Rate

A Look at the Root Causes of the Arab Revolution

冷戦の最中に、ソ連崩壊を(ある意味で)予測したことで有名なフランスの社会学者Emmanuel Toddが、アラブ革命の起源を人口変化に求めています。家族の構造と社会革命、人口変化とは関係している。

そして、ビン・ラディンや近現代のドイツについても、独自の見解を示します。つまり、ドイツは西側のリベラルな民主主義、文化価値に属していない。独仏同盟は内部に対立を含んでおり、EUも一つの文化的型に収めることはできない。

WP May 20, 2011

A new Mideast policy

WP May 20, 2011

The news in Obama’s speech

By Charles Krauthammer

オバマ大統領は、中東の民主化、というブッシュ・ドクトリンを明白に支持した。

シリアにはどうやって民主主義を広めるのか? ガザとの連絡道で、イスラエルを分割する気か? 1967年の境界線を始めて承認した。イスラエルの世論を考えず。入植者をどうするのか?

FP MAY 20, 2011

The Middle East Crisis That Just Won't Go Away

BY SALMAN SHAIKH

Global Times [18:21 May 24 2011]

Obama avoids treading on China's toes in Middle East

By Zhao Kejin

NYT May 24, 2011

Lessons From Tahrir Sq.

By THOMAS L. FRIEDMAN

イスラエルとパレスチナの紛争は、化石化し、想像力を欠き、酸素を欠く、革命前のチュニジアやエジプトのようだ。アラブ革命は彼らを変えなかった。イスラエルの首相はアメリカ議会で喝さいを受け、パレスチナの指導者は国連へ向かった。互いを無視して。

彼らはタハリール広場で起きたことから学ぶべきだ。パレスチナ人は暴力に訴えるとテロリストにされる。暴力を抑えるとイスラエルはその間に入植地を拡大する。そこで、和平の鉄則から再出発するべきだ。すなわち、イスラエルのサイレント・マジョリティーが支持する側が勝利する。かつて、サダトはイスラエルを訪問し、アラファトはオスロ合意を得た。

いまなら、パレスチナ人はタハリール広場から学べる。毎週金曜日を「平和の日」にして、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人はエルサレムまで非暴力で行進する。片手にはオリーブの枝を持ち、もう片手にヘブライ語とアラビア語で書いたプラカードを持つ。「二つの人民に二つの国家を。パレスチナ人は、1967年の境界線による二つの国家をユダヤ人に与える。合意された調整を含む、エルサレムにおける、パレスチナ人の居住区支配と、ユダヤ人の居住区支配。」

もし数千人のパレスチナ人が、平和的な行進を始めれば、それはグローバルなニュースになる。間違いなく、世界中のニュースがそれを伝える。イスラエル国内で本当の和平論争が起きるだろう。特に、この行進にユダヤ人やアラブ人が招待されて参加するなら。

愚かな考えか? ビビ(ネタニヤフ首相)は軽蔑して笑うだろう。「パレスチナ人は絶対にそんなことをしない。ハマスが非暴力を採用するなんてありえない。パレスチナ人とはそういうものだ。」

それこそ、ムバラクがエジプト民衆について言ったことだ。しかし、エジプト人は彼を驚かせた。

ビビが学ぶべき教訓も明らかだ。あなたは和平プロセスのムバラクになるだろう。30年間、ムバラクはエジプトを民主化する緩やかな改革を指導する時間を持った。しかし、まったく改革しなかった。民衆が蜂起したとき、彼は6日間だけ試みたが、遅すぎたのだ。誰も彼を信用せず、破滅した。

イスラエルはまだ、膨大な優位を保持している。パレスチナ人よりも、イスラエルは軍事的に、経済的に圧倒的に優れており、アメリカが味方に付いている。もしネタニヤフが本気で二国案を採用するなら、アメリカも、NATOも、EU諸国も、彼を助けようとするだろう。イスラエルには和平による経済的な利益もある。

もし両者が今の姿勢を続けるなら、イスラエルは次第に西岸のすべてを吸収し、イスラエル国内のアラブ系マインリティーも支配するだろう。反対派が「ユダヤ人のアパルトヘイト国家」と批判するものになる。アメリカがそのような国家を真の友人と見なすことはないだろう。

FT May 25 2011

West must help Tunisia to nurture democracy

ByJoseph Stiglitz

チュニジアには民主化への支持が広がっていた。しかし、この半年内に支援がなければ、経済はさらに悪化し、リベラルな民主主義に反対する勢力が力を得るだろう。革命を指導した若者たちは再び怒りを高めて、希望を捨てるだろう。

第一に、政府への財政的な支援が要る。年間50億ドル、それはアフガニスタンとイラクの戦費の数週間分でしかない。難民流出に対処するにも有効だ。インフラや教育への投資も行える。特に、雇用を増やすように、技術革新や起業を助ける基金が望ましい。債務免除も重要だ。債務を株式と交換するのが良い。

第二に、彼らは市場アクセスを望んでいる。新興民主主義国家に対する特別な自由化、ヨーロッパのEBAeverything but arms)のような政策が必要だ。教育のあるチュニジア人労働者を一時的に受け入れて労働を許可するのもよい。民間の交流によって民主主義を育成するため、留学生への奨学金制度が有益だ。

G8はこれに積極的に応えてほしい。

BLOOMBERG May 25, 2011

Can Flat Taxes Energize Arab Economies?

By Joseph J. Thorndike

アラブ社会への教訓とは、ロシアや東欧が示したように、革命後の社会にはフラット・タックスが有効だ、というものだ。ポスト・ソビエトのヨーロッパが"Flat Tax Revolution"をもたらした。それは、彼らが強く求めていた、外国からの直接投資と競争力を実現したのだ。

FP Wednesday, May 25, 2011

'The smallest minds and cowardliest hearts': Is Congress clapping for apartheid?

Posted By Stephen M. Walt

ネタニヤフのアメリカ議会における演説は、二国案の拒否、という明白なメッセージであった。ネタニヤフは多くの条件を並べて、ユダヤ人国民よりも多いパレスチナ人を支配し続けることを示した。アメリカはそれを支持しなければならない、と。

二国案に代わるものがあるとすれば、それはエスニック・クレンジングを続けて、一国の中に二つの民族が住み、永久にアパルトヘイトを続けることだ。

このやっかいで、実りのない演説に対して、なぜ称賛する者たちがこれほど多いのか? すでに西岸には65万人も入植しているから? それは、1967年以来、イスラエル政府が入植を組織的・財政的に支援し、西岸地区を植民地化したからだ。安保理決議242に従って、6日間戦争の占領地からイスラエルは撤退するべきだった。

イスラエルは二国家案とアパルトヘイトのどちらかを選択しなければならなかった。ネタニヤフの答えは明白だ。彼の決定は悲劇的であり、将来の世代に苦しみを残すだろう。たとえそれが首相として彼の特権であるとしても、アメリカ議会がこの愚かな政策を、アメリカ自身の安全保障にも有害な政策を支持するのは重大な間違いだ。

なぜ、非合法かつ不正な占領によって苦しむパレスチナ人たちをアメリカは支援しないのか?

LAT May 25, 2011

Israel's settlement liability

By Dan Simon

ネタニヤフ首相は、民主的なユダヤ国家の理想と西岸の恒久的な占領とは一致しない、というオバマ大統領の演説内容を拒んだ。

入植地がイスラエルの安全保障に欠かせない、という認識は、イスラエル国民にもアメリカ議会にもあるが、間違っている。アラブの春は、イスラエルが地域の独裁政権との間に戦術的な承認を得るのではなく、アラブ民衆の支持を得なければならないことを示している。意に沿わない民衆を軍事的に支配するより、地域の政治経済が発展することに参加することで、イスラエルはより多くを得るのだ。


NYT May 19, 2011

Making Things in America

By PAUL KRUGMAN

数年前、私の隣人であったロシア人エンジニアの移住者が言った。「アメリカはとても裕福なようだが、誰かが何かを作るのを観たことがない。」

21世紀の最初の10年の半ばに、私は冗談を言った。「アメリカ人は、中国から借りた金で、互いに住宅を売買して、それで生活している。」 製造業は、かつてアメリカの強さの源だったが、今では完全に衰退した。

しかし、それが変化しつつある。今の期待はずれな景気回復の中では、もっとも有望な分野として製造業が拡大している。それは右派の描くバブル経済と景気回復によっては得られないものだ。貿易赤字は減り、自動車産業の崩壊は避けられた。問題もあるが、製造業における雇用の拡大は重要だ。

それでも右派は批判する。ドル安の恩恵を受けただけだ、と。しかし、連銀が認めたドル安こそ必要なものだった。右派は財政再建とドル高を求めている。そして、オバマによる自動車会社の救済を「資本主義との戦争」として激しく攻撃する。

まだ問題は多いが、景気回復には成功してきた。それはイデオロギーに翻弄された右派の政策に従わず、連銀やオバマ政権が正しい決定を行ったからだ。


l         イギリス社会の革新

NYT May 19, 2011

The Big Society

By DAVID BROOKS

40年前、ジェイコブズJane Jacobs“The Death and Life of Great American Cities”)は健全なコミュニティーに関する見解を発表した。イギリスのキャメロン首相は、“Big Society”という名前で、同じことを試みている。コミュニティーの絆を育て、市民活動を支援し、社会資本を増やす。

それは保守党の新しい政権を、サッチャー時代のイメージから区別するための政治用語として始まった。その言葉は政治的には失敗であったが、さまざまな政策によってイギリス社会は重大な転換をなしつつある。

キャメロンは、豊かな世界で最も「大きな政府」の一つ(GDP51%が政府支出)を引き継ぎ、それは最も「中央集権的な政府」の一つ(政府支出の70%が中央)でもあった。キャメロンはこれを縮小し、福祉も地方に分散させる。チャーター・スクールを増やし、雇用を妨げる福祉を改善し、警察や地方コミュニティーを変えた。彼はイギリスの社会規範を変えようとする。

税金を払えば政府が問題を解決してくれると思って、あなたは座って待つ。サッチャー政権は、その椅子を取り去って、ビジネスに変えた。キャメロン政権は、椅子を取り去って、あなたのコミュニティーに責任を持たせる。行動的な市民を刺激する。

左派のPolly Toynbeeは、現在の中央集権システムが統一性と公平性を実現している、と批判する。地方に頼り、分権化すれば、裕福な地域が貧しい地域を圧倒する。不平等と汚職が現れる。また、Big Societyは福祉削減の言い訳だ、と反対する者もいる。豊かな中産階級の「ノブレス・オブリージュ」である。労働者階級は二つの仕事を掛け持ちで、夜10時まで働く。

こうした批判は正しい面もある。しかし重要なのは、グローバル化した情報経済で、情報の複雑な波を加工し、信じられないほど多様な社会環境を突き進む能力を持たねばならないことだ。彼らはどうやってこの能力を磨くのか? 社会に出てからも、ソーシャル・ネットワークを持ち、活発な制度に参加し、高度な信頼を築く社会に生きることで、それは可能になる。人々がいつでも互いに助け合い、協力する環境を創る。

権力を分散し、地域の活力を高めることで、キャメロンは人的資本が成長する環境を育成しようとしている。その改革においては、官僚制度の画一性や支配と対決しなければならない。中央集権的な政府はコミュニティーのネットワークを弱め、集権的な企業は企業家や職人のネットワークを弱める。

ジェイコブズの描く生き生きとした歩道のように、Big Societyは経済的な上昇志向と、広く共有される繁栄をもたらす。学び、成長することの最新の研究を公共政策に結びつけ、キャメロンは興味深い社会改革を進めている。

NYT May 23, 2011

Britain Is Working

By DAVID BROOKS

1920年、ウィンストン・チャーチルの母は、駐英フランス大使M. Paul Cambon20年に及ぶ任期の終了を祝って晩餐会を開いた。Cambonがイギリスを称えたのはもちろんだ。イギリスは巨大な変革に直面していた。貴族政治から民主制へ、政治経済の仕組みが変わったのだ。しかも、政治的動乱を起こさず、漸進的に改革が行われた。

それは、イギリスの政治指導者が特に優れていたからではないし、政治家たちが党派を気にしない天使たちであったからでもない。システムが機能したのだ。

各政党は国家の重大問題に焦点を定め、その利益(支持者の関心)に依拠していた。反対政党が政権を得ると、前政権の最善の成果を静かに引き継いだ。そして建設的な競争を通じて、漸進的に、論争を続けることで国家を前進させた。

イギリスは今も、建設的な論争の渦中にある。Oliver Letwinによれば、1945年から1979年までの政治混乱の後、イギリスには三つの重要問題が残されていた。行き詰まった工業経済。中央集権化し過ぎた福祉国家。気力を奪われた国民。その一部は貧困の循環に陥っていた。

経済の自由化によって、マーガレット・サッチャーは最初の問題に取り組んだ。次の労働党政権はそれを確立した。他方、各政権は第2、第3の問題に取り組んだ。福祉国家の改革と国民の活性化である。この点で、激しく相手を攻撃しながら、保守党も労働党もともにそれらに焦点を合わせていた。多くの改革案は失敗だったが、その方向性は明白だ。中央集権化した、工業時代の国家から、ネットワーク型の、脱工業国家へと移行する。

キャメロンDavid Cameron首相は、巧妙にこの変化を利用してきた。増税と歳出削減を含む緊縮策は、その中でも海外援助を維持し、福祉や教育の改革に熱弁をふるった。バランスを取り、変化の流れを読んで、繰り返し、責任ある財政規律を唱えるキャメロンの主張は支持され、財政削減の苦痛を味わう地方選挙でも健闘した。

イギリスの政治文化も重要だ。ロンドンに住む、幼稚園からの友人たちが、イギリス政治を動かしている。それはゴシップに満ち、近親相姦的である。しかし、プラス面がマイナス面をしのいでいる。ケーブルTVやラジオのトークショーではなく、大新聞が政治課題を示す。典型的なアメリカの政治家は仲間内で称賛し合うが、典型的なイギリスの政治家は反対派とテーブルについて討論するだろう。

イギリスの政治家や評論家は反対派をよく知っている。彼らは歪曲や警告を多用しない。反対政党が同質的な邪悪集団だと考えない。幅広い人々から学ぼうとする。たとえ憎しみがあるとしても、それは個人的問題で、全面戦争を求めることはない。

イギリスの政治システムは多数政党にアメリカよりもはるかに大きな権限を与える。しかし、文化的な規範により、政治論争は道義的な程度を抑え、絶対的でない。イギリスの新聞は政治家の汚職を厳しく監視する。公務員の不正が僅かでも匂えば、メディアが殺到する。

オバマのイギリス訪問でその政治文化に触れて、われわれはうぬぼれを捨てるべきだ。


l         IMFのトップ人事

Global Times [20:48 May 19 2011]

Time to end Western grip on IMF

By Shan Renping

FT May 20 2011

Turning a corner, facing a crossroads

FP MAY 20, 2011

Immoral Hazard

BY PAUL BLUSTEIN

ヨーロッパの政治家たちはIMFの次のトップもヨーロッパが出すことを主張するだろうが、それは喜劇だ。

IMFと世銀のトップを欧米が謝意する慣行は、ますますグローバル・ガバナンスを侮蔑するものとなってきた。ユーロ危機の解決に果たすIMFの役割を指摘するが、それは世界経済に占める新興諸国の重要性を無視している。IMF/世銀は欧米の外交手段ではない。

むしろ、ユーロ危機の交渉を促すには、独立したIMFの権威が必要だ。その目標は、ヨーロッパ内の政治交渉ではなく、長期的な、世界の安定的金融秩序である。ストロス・カーンを、IMFにとって理想的な政治家として描くのは、ナンセンスだ。

しかし、政治家たちは改革のチャンスを無視する。4年前に元国防副長官であったウォルフォヴィッツPaul Wolfowitzも世銀総裁を辞任した。彼は世界銀行の融資をブッシュ政権の外交道具にした。その後任人事をめぐる公開の候補者選びが世界中で議論となったにも関わらず、アメリカ政府は元国務副長官のゼーリックRobert Zoellickを指名した。

WP May 20, 2011

In the IMF succession battle, a stench of colonialism­­­­

By Moises Naim

ヨーロッパの政治家や著名なコラムニストまで、IMFのトップはヨーロッパが出すべきだ、と主張している。市場の効率性、透明性、実力主義を加盟国に求める機関が、そのトップを決めるのに原則を無視している。それは人類の93%を選考から差別するものだ。

ユーロ危機を処理するためにはヨーロッパの事情をよく知るものでなければならない、という。しかし、なぜ彼らは同じような主張をアジアやラテンアメリカが債務危機に苦しんだときにもしなかったのか? この植民地主義的発想は、ストロス・カーンがホテルで黒人の若いメイドを襲ったことと同様に、醜悪だ。

IMF融資にヨーロッパ諸国が特別な保護政策を考慮してもらうというのは間違いだ。新しいIMF専務理事が、ユーロ危機だけでなく、現在のブームが終わったとき、新興諸国の危機を処理することも考えるべきだ。今では世界経済を支えるのは新興諸国の成長である。

誰に対しても開かれた、透明な選考過程で、候補者の専門的な能力や経験、高潔さだけを評価するべきだ。

NYT May 20, 2011

Who Should Run the I.M.F.?

NYT May 22, 2011

Who Will Play Strauss-Kahn?

By ROSS DOUTHAT

The Guardian, Monday 23 May 2011

IMF directorship: A rigged race

SPIEGEL ONLINE 05/23/2011

Western Dominance

Why the Next IMF Chief Will Come from Europe

By Christian Reiermann

次のトップの仕事とは何か? ストロス・カーンが回復した、IMFの危機に対する専門家としての助言機能は継承されるだろう。そして、次の新興市場から来るトップに引き渡す。

guardian.co.uk, Tuesday 24 May 2011

Dominique Strauss-Kahn and the union maid

Dean Baker

この女性労働者は組合の契約によって保護されていた。アメリカでは性的な攻撃を受けた労働者を解雇できない。

FT May 24 2011

Europe should not control the IMF

By Martin Wolf

フランスのChristine Lagarde蔵相が次のIMF専務理事にふさわしい。アメリカが支持すれば、それは確実だ。彼女にはそれを引き受ける十分な条件がある。フランス人、国際機関のトップ、女性、アメリカの法律事務所、英語に堪能、印象的な人物、である。しかし、経済学の専門知識は乏しい。ナンバー2にはアメリカのエコノミストを採用すること。

アメリカは今もブレトン・ウッズの取引に魅力を感じるだろう。何か新しい仕組みで、この二つの機関をアメリカが支配することは難しい。

IMFは現在のユーロ危機に深く関与している。政治的決断を要する役割に、ストロス・カーンは最適であった。なぜアジアの危機やラテンアメリカの危機と区別するのか? それほどユーロ圏は制度的に安定化するのが難しい条件なのだ。フランスやドイツの完全な信頼を得なければならない。

しかし、このヨーロッパの特殊事情を重視する議論は有効だが、同時に、不十分だ。ユーロ危機にも、偏りのない、独立した助言が必要だ。支払不能の政府に融資を続けるより、誰かがヨーロッパ諸国に債務再編を受け入れさせ、システムを改革するべきだ。世界経済に占めるEUの重要性は急速に低下している。そのため、ハイレベルの選考委員会を組織して、オープンな選考をすることだ。そして候補者たちは、IMFの将来の見通しやグローバルな金融改革について述べる。

ただし、高級官僚ではだめだ。IMFのトップは政治的な決断を求められる。旧来の欧米支配は続けられない。新興勢力はIMFへの関心を失い、異なる機関を作るだろう。ヨーロッパ諸国がグローバル経済の管理をバルカン化することで、誰の長期的な利益にもならない。

 

BLOOMBERG May 24, 2011

The Case for a Non-European IMF Leader

By Simon Johnson

guardian.co.uk, Wednesday 25 May 2011

The IMF has too long defined our southern lives

Flavia Dzodan

ストロス・カーンはレイプによってIMFの人事が話題になっているが、西側を除く世界の大部分では、IMFはその国に強いた政策によって記憶されている。私はアルゼンチン人として、IMFによって「レイプされた国家」を忘れない。

FT May 25 2011

IMF succession: A contested quarry

By Alan Beattie

IMFの運営と、人や国家、経済学との関係を考察します。誰がIMFのトップになろうとも、これらは引き継がれるでしょう。

FT May 25 2011

One-horse race will ill serve the IMF

FT May 25 2011

Brics must put up a fight for IMF top job

By Eswar Prasad

IMFのトップ人事をめぐる争いは醜い権力闘争になってきた。アメリカも日本も浮動票である。ヨーロッパから地位を奪うために、新興諸国は作戦を立てるべきだ。

1.新興諸国の候補者を一人にする。2.中国の支持を得る。そのために中国の最高幹部、Zhu Minを副専務理事にする。3.日米の副専務理事を5年間保証する。4.ガバナンス改革の明確な内容を示し、発展途上諸国の支持を得る。

BLOOMBERG May 25, 2011

The IMF’s Electoral Math Doesn’t Add Up

(China Daily) 2011-05-25

Troubled IMF needs changes

By Martin Khor

guardian.co.uk, Thursday 26 May 2011

Has Christine Lagarde got what it takes to head the IMF?

Philippe Marlière

 (China Daily) 2011-05-26

A brave new IMF

WP May 26, 2011

Better ways to select an IMF leader

Global Times [03:46 May 26 2011]

BRICS are wise to challenge IMF together


FP Friday, May 20, 2011

We can't advance our interests in Asia without any resources

Posted By Daniel Blumenthal

もしアメリカがもはや戦略計画を持つ能力がないと思うなら、アメリカ太平洋軍the Pacific Command (PACOM)のウィラード司令官を訪問するべきだ。彼の指揮下に、地球のほぼ半分をカバーして、325000人が活動している。

しかし、政治家たちのPACOMへの要求は増える一方で、資源は抑えられている。アメリカは太平洋の軍事作戦計画を持っていない。

「われわれは中国に攻撃を思いとどまらせたい。そして、「責任ある行動」をうながす。インドをより完全な戦略的パートナーにしたい。東南アジア諸国を、独立した、繁栄する、そして望むことなら、民主的なパートナーとしたい。日本が「普通の」役割を担うようにうながす。北朝鮮を非核化し、南の政府の下で朝鮮半島を統一したい。」しかし、軍事計画はない。我々は台湾の防衛に加わるのか? 南シナ海の紛争に加わるのか? 日中間の紛争に介入するのか? 韓国における紛争に中国が参加した場合、どうするのか? すべては分からないのだ。

PACOMは、アメリカの利益と協力する形で、この地域を「形成する」役割を果たしている("shape" the region in concert with U.S. interests)。


l         ドル本位制の終わり

(chinadaily.com.cn) 2011-05-20

More flexible RMB will help China

By Hua Xiuping

FT May 23 2011

Keynesians are complacent about the dollar

By Benn Steil and Manuel Hinds

ケインズは、1944年、ブレトン・ウッズでホワイトと戦後のドルの役割をめぐって論争した。

ホワイトはドルを国際通貨にして、法的にも金の代用物にしようと決意した。ケインズは、その対外債務を支払う金やドルがないという意味で、事実上、破産した国家の代表であった。それゆえ、ドルに国際通貨の役割を許してはならないと決意していた。イギリス帝国の生き残りは、そのポンド・スターリングが国際的に受領されるようにできるか、少なくとも、アメリカが管理するのではない国際的な交換手段(ケインズが「バンコール」と呼んだ)にアクセスできるか、にかかっていた。イギリスは何も交渉カードがない債務国であったから、ケインズは敗北した。

65年後に、中国の中央銀行総裁はケインズが敗北したことを惜しむコメントを発表した。アメリカの途方もない特権こそが、国際通貨制度を不安定にしている、と。中国は、このアメリカの国内的な金融政策に従属する国際通貨制度から離脱する準備を始めた。ロシア、ブラジル、トルコと、ドルを介さない国際決済を合意した。また、緩やかに金準備を増やしている。

興味深いことに、ケインズの現代における従者であるP.クルーグマンは、NYTのコラムで、ドルが国際通貨でなくなっても大したことではない、と書いた。たとえばオーストラリアは(コスタリカでもよいが)、アメリカと同じように貿易赤字を続けているが、その通貨は特別な地位を得ていない。アメリカが世界の貨幣生産者でなくても問題ない、と。

もし、その国の外貨準備が減らないとしたら、貿易赤字に見合うような資本流入あるのだ。魅力的な投資機会が提供できる限り、その国はもちろん貿易赤字を永久に続けられる。アメリカが特別な点は、投資機会を無から生み出せる能力だ。ドルの紙幣を刷るか、電子マネーを供給するか。

クルーグマンは、国際通貨ドルの利益はGDPに比べて小さい、という。ドルが他の通貨に、たとえばユーロに、その地位を譲ればどうなるか? アメリカの連銀は、かつて金本位制でそうであったように、ドルを増やすとき、金の保有量に制約されるだろう。「ユーロ本位制」の下では、ドルの供給にはユーロが必要になる。なぜなら、金融緩和が輸入を増やし、その支払に必要なユーロの準備を減らすからだ。

アメリカはもはやドルの魔法で赤字を続けることができず、ユーロ建の債券を発行しなければならない。もしアメリカがGDP50%に及ぶ対外債務を持つとしたら、ユーロに対するドルの3分の1の減価(ユーロの成立から今までに起きた)は、その比率を66%に高めるだろう(債務負担が増す)。それは道路や発電所を作ったわけでもないのに、世界がドルの紙幣を受け取らないから起きるのだ。

それこそ世界中で起きていることであり、彼らは資本流入と流出に際限なく苦しめられている。対外債務を支払うために帝国を解体したイギリスを代表したケインズは、減価を間違った手段と見なした。それは、よりうまく失敗しているにすぎない。アメリカはどうするか。

WSJ MAY 24, 2011

The Return of Stagflation

By RONALD MCKINNON

失業率が高いまま、物価が上昇しつつある。アメリカ経済は、1970年代に「スタグフレーション」と呼ばれた現象を再現しつつある。さまざまな力が作用しているが、その主要な原因は連銀の超低金利(near-zero)政策である。

1945年以来、世界はドル本位制であるが、ヨーロッパを除いて、今も新興市場では輸出入ともドルで契約され、銀行の国際決済も、政府の投資も、ドルが媒介通貨として使用されている。各国が目標とする為替レートを持つから、ゲームのルールはアメリカが為替レートの目標を持たないで、その決定を他国に委ねる、というものだ。

為替レートの制約がないため、アメリカの連銀は他国の中央銀行に比べて、より独立した金融政策が行える。これが国際通貨制度の安定性にとっても重要だ。ところがこの2年以上も、連銀はドル資産の短期金利をゼロ近辺にまで引き下げ、過去1年にわたって、長期金利を下げるために財務省の長期債券を大量に購入し、量的緩和策を行った。その結果、ニューヨークからアジア、ラテンアメリカの新興市場に、ホットマネーの洪水が起きた。彼らの自然金利はもっと高いものだ。

新興諸国は為替レートが増価して国際競争力を失うことを避けるために介入し、ドルを購入して国内の通貨供給を管理できなくなった。消費者物価指数(CPI)が、中国、ブラジル、インドネシアで上昇し、ドル建の一次産品価格が世界的に40%以上も高くなった。こうして、アメリカのインフレは新興市場から起きているが、その原因はワシントンにある。

次にアメリカの超低金利政策が国内経済を制約しているのは、銀行間市場である。20087月以来、銀行システムの中にあるベース・マネーは3倍になった。連銀が金利を下げるためと、財務省証券以外の非伝統的な多くの資産を購入したからだ。主要商業銀行の準備金は過剰に溜まっている。

アメリカの景気回復時に雇用を増やすのは、中小企業(SMEs)からであり、商業銀行がSMEsに融資することで雇用が増える。ところが、2010~11年の回復期には雇用がほとんど増えなかった。その理由は、銀行間市場で資金を得る消費者金融が増えるばかりで、商業銀行の過剰な準備を利用している。銀行は、それほどばかげた低金利で中小企業に融資することを嫌うのだ。

銀行の金融仲介が破綻したのは、銀行間融資の急激な減少に示されている。それは連銀の超低金利政策で悪化し、銀行融資が行われないことで、中小企業の雇用も増えないのだ。

不当なほどの金融緩和、ドル安誘導の口先介入、そして、貿易相手国へのホットマネー流出、という1970年代との類似性は明らかだ。


FT May 20 2011

The Queen in Ireland: A sovereign’s debt

By David Gardner and John Murray Brown

LAT May 21, 2011

British-Irish relations: A royal stamp of approval


FT May 20 2011

Disastrous green targets a risk to UK

By Nigel Lawson


FT May 20 2011

Henry Kissinger talks to Simon Schama

By Simon Schama

87歳になるHenry Kissingerが出版した『中国』について。マキャベリ、ビスマルク、メッテルニヒ、タレイラン、周恩来、を考察する。

「まだ誰も想像できないほどアフガニスタン情勢が悪化するシナリオを描くときも、キッシンジャーは笑う。アルカイダがそこにいても、いなくても、大した問題ではない。事実上のパキスタン分割が起きるかもしれない。インドやロシアが北部連合を承認し、パキスタンがその包囲網に対抗するため、タリバンを維持するだろう。」

パキスタンが追いつめられて、インドとパキスタンの戦争が勃発するだろう。それは次の世界戦争に向かうバルカンになる。


l         G8 の終わり

(China Daily) 2011-05-21

Creating a harmonious global society

By Klaus Schwab

世界はますます緊密に統合され、相互依存して、政府が単独で管理できることは限られています。このことは以前から主張されていますが、この論説では問題を「調和ある社会("harmonious society")」の建設に向かう中国の政策転換と結び付けて議論します。

温暖化問題も、金融危機も、グローバリゼーションではstakeholdersが互いの利益に配慮して協力する必要が強まります。そこで、中国の経済改革は、「(調和ある)世界社会a global society」の一部であり、その指導的な役割を担っている、と称賛します。

もはや、市場やビジネスの利益だけで問題を解決できるという考えは支持され亡くなりました。われわれはグローバルなシステムやグローバルな制度を創設し、それだけでなく、長期的に思考する能力を高めなければなりません。

世界経済フォーラムの主催者として、Schwabは、もう一つの試みを宣伝します。それは複雑なリスクを正しく理解し、評価する機関(Risk Response Network)です。これは、新しい「相互依存論」だと思いました。企業、政府、市民社会の指導者たちがリスクに対して正しく対処できるように、手段や組織された機会を提供します。

世界社会をstakeholders概念で結ぶとき、中国は、単にIMFG20に参加する以上に、重要な役割を担うでしょう。

FT May 26 2011

Struggling to lead our hectic world

By Philip Stephens

技術変化、金融市場、大衆の不満、地政学的変化、など、この世界はますます変化を加速している。中国の成長がこれほど急速に進むと予想できた者は少ないだろう。21世紀に入ったとき、中国の経済規模は日本の4分の1でしかなかった。それが今では追い越したのだ。

アラブの春について、その変化に対するアメリカ政府の反応は遅かった。しかし、アラブ世界が中国の台頭に匹敵する大きな意味を持つ可能性もある。G8の会談はこれに積極的に対応するべきだ。しかし、アメリカ人の多くは関心を持たず、ヨーロッパ人の多くはその結果を恐れている。

EUを動かしてきた「連帯」は、地中海を渡って、いまや北アフリカから中東世界にも及ぶ時代になった。指導者たちはこれを理解するのに遅れてはならない。相互依存から利益を得るには、その軋轢をも覚悟しなければならない。

外国人排斥を唱える右派やポピュリスト政治家の宣伝に、EUの自由な移動が脅かされている。単一通貨、ユーロも危機にある。政治は、こうした緩やかな自滅へのダンスを眺めるだけではいけない。通貨統合を守るべき中央銀行家たちは、まるでヴェルサイユ条約の賠償金を取り立てるような、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルへの厳しい返済条件を聴いている。

各国は自国の利益に閉じこもり、ヨーロッパの統一を軽視する。しかし日本でも、津波の被害を耐え忍ぶ国民の素晴らしい精神力に感動する反面、日本の政治は機能マヒしたまま、数カ月先も見えず、中国からの挑戦に応じる姿勢もない。アメリカ政治も変化への対応不足と無縁ではない。ビン・ラディン殺害に一時的に沸いても、国民は経済の苦境にしか関心を持てない。

変化は加速し、政治の遅れは顕著だ。オバマの訪英やG8は、衰退する西側にとって指導力の重要さを確認することになる。


LAT May 22, 2011

America the stony-hearted

By Neal Gabler

 (China Daily) 2011-05-25

The welfare state comes to an end?

By Michael Boskin


FT May 26 2011

Now is not the time to raise interest rates

By Adam Posen

イングランド銀行の金融政策です。今や、金利を引き上げるときだ。金融危機後、デフレの心配はなく、また、財政引き締めと同時に、金融緩和で回復を維持するべきだった(日本の失策から学んだ)。

石油や一次産品価格の上昇にも、金融政策を使わずに、正しく対応するべきだ。それらが長期のインフレ期待に影響するなら、金利を引き上げるときだ。しかしまだレバレッジの縮小とデフレが続いている。金融緩和を続けるべきだ。


l         「東電国家」

FT May 24 2011

Kan targets structural issues after quake

By Mure Dickie in Tokyo

BLOOMBERG May 24, 2011

Nuclear Meltdown Feeds Tokyo’s Inertia

By William Pesek

日本に新しい名前が付いた。「東電国家Tepco Nation」。

東電の原発事故は、アメリカのメキシコ湾における海底油田事故を起こしたBPに比較できるだろう。日本は第二次世界大戦の廃墟から経済を再建して、高度な技術と品質の評価を得てきた。東電の評価と一緒にそれが損なわれてしまうことを誰も喜ばない。それ以上に深刻な評価は、最悪の事態になって、指導者がいないことだ。投資家たちは東電を見はなした。トヨタも、東電も、日本の企業システムに内在する問題を示している。

自民党との復興会議共同主催は失敗し、日銀が破産した経済を救済するという期待も満たされない。日本に必要なのは大連合だ。12700万人の国民経済を復活させるため、小異を捨てて大同に就く。そして、日本ブランドをこれ以上損なわないために、東電の原発事故を完全に制御することだ。

これは一過性の事故ではない。日本の将来が消失する。

Global Times [18:27 May 24 2011]

China needs tough but fair hand with Japanese troublemaking

By Zhao Hongwei

YaleGlobal , 26 May 2011

The Morning After Fukushima Disaster – Part II

Richard Weitz


l         シンガポール国家

FP MAY 24, 2011

LeeKuanYew-istan Forever

BY PARAG KHANNA

選挙においてPAPが野党に議席を奪われたことで、リー・クァン・ユーLee Kuan Yew は、Goh Chok Tongとともに、シンガポール政府の閣内上級大臣を辞任した。シンガポールの建国と、その後も50年以上にわたって、この都市国家を指導してきた政治家だ。

シンガポールは、今や、21世紀の国家の理想である。不毛の領土に、食糧を必要とする過剰な人口を抱えて、それでもリーは都市国家をロイヤル・ダッチ・シェルのように経営した。経済戦略は多国籍企業の経営計画であり、政府閣僚の給与は世界最高であり、同時に、汚職は世界最低である。新興諸国が、ワシントン・コンセンサスの代わりにモデルを求めて発見したのは、北京コンセンサスではなく、シンガポールだ。

しかし、どの指導者もシンガポールと同じ効率性を実現することはないだろう。リーと同じ自己規律を実現し、同じように情熱的に国民を管理する者はいないだろう。シンガポールは、リーというテクノクラートの理想なのだ。

それはナニー(乳母)国家では決してない。シンガポールの国民は、ヨーロッパと同じような医療保険や安価な教育サービスを受けているが、ギリシャのような怠慢、スペインのような放漫財政は許されない。優れた市民として、よりときも悪いときも懸命に働くことが求められる。過度の消費も、渋滞時に利用する自動車にも、課税される。歩道にガムを吐き捨てるのも許されていない。

息子Lee Hsien Loongは父のような恐怖と敬意を持ちえないだろう。首相は選挙の敗北からも学び、21世紀最高のガバナンスを目指している。それは、西側の民主主義を採用しない、市民に対する責任を果たす政府である。民主的な制度を導入しても、シンガポールの決断力が失われないときのみ成功する。

シンガポールの成功は権威主義型資本主義の成功ではなく、計画的な革新の実現と、市場とは別に、公共政策の科学的な探究が重要であることの証明だ。

リーが成功しなかったこともある。シンガポールはマレーシアからの独立を平和的に行えなかった。またリーはシンガポールを国家として設計したが、社会にはできなかった。今もシンガポールを支配するのは中国系のエスニック集団であり、地元のマレー系は下層市民、インド系は中間層である。公共の広場や学校を推進したが、そのDNAは変わらないと思っていた。

若い世代は、冷戦も、独立時の混乱も知らない。生活水準の上昇と経済的自由によって政治を骨抜きにしたと言われるだろう。しかし、シンガポールの新しい目標は単なる物質主義以上の21世紀型都市国家モデルである。国家のステークホルダーを創り出すことには成功しなかったが、「市民主義"civicism"」に向かうだろう。人々は自分たちの都市に帰属し、誇りを持つ。

民主主義とリーの理想のどちらが勝つだろうか? 21世紀でも、私はリーに賭けるだろう。


FP MAY 24, 2011

Take Pakistan's Nukes, Please

BY KAPIL KOMIREDDI | MAY 24, 2011

FT May 24 2011

How American folly could destroy Pakistan

By Anatol Lieven


guardian.co.uk, Wednesday 25 May 2011

If Obama really wants to lead us to a free world, he should abolish the G8

Timothy Garton Ash

「イギリス軍にコックとして仕えた男の孫が」、今、「あなたの前にアメリカ大統領として立っている。」 それは、初めての、イギリス議会に集まった議員たちによる、自ら立ち上がって大歓声を巻き起こした光景だった。

これは良くできた演説だ。NATOを称え(EUは一度しか言及しない)、英米の共同指導力を強調し、お決まりのようにチャーチルを引用し、イギリス人を喜ばせた。そして、閉ざされたドアの向こうで、軍事的、金融的な分担が話し合われた。それはフランスで儀礼的に開催されるG8が引き継いだ。

アメリカの大統領は、旧い同盟国、友好関係、共有された価値を大事にする。籠の中の鳥は、森の二羽の鳥よりも貴重である。パキスタンの問題を知るには、イギリス軍からの情報が必要だ。

しかし、世界はますます西側の関心や支配から離れている。自由や人類の使命を説くのは、もはや欧米ではない。21世紀は脱西洋の世界になる。欧米の課題は、その国家機構の再生である。

21世紀の政治、経済、文化を決めるのは、G8ではなく、たとえうまく機能していないとしてもG20が中心になる。大統領が最初にすることはG8の廃止だろう。そしてオバマは、「自由世界の指導者」ではなく、「自由世界を目指す運動の指導者」になる。

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The Economist May 14th 2011

Greece’s debt crisis: Trichet the intransigent

German foreign policy: The unadventurous eagle

Charlemagne: Decision time

Fixing international banking: Unfinished business

Special Report: International Banking-Chained but untamed

Banyan: Low expectations

International justice in Africa: The International Criminal Court bares its teeth

Buttonwood: Getting the story right

Commodities (2): The price is wrong

(コメント) ギリシャの債務危機が救済融資から1年経っても改善せず、むしろ返済不能であると考えられています。最初から、融資によって時間を稼げば返済可能である、という判断が間違いでした。その処理をめぐって、ECBは債務の組み換えに反対し、ドイツのメルケル首相は財政移転やユーロ債の発行を拒んでいます。

政治や経済の制度が十分に統一できていないEUにおいて、ドイツの指導力が求められます。しかし、東西再統一に成功し、EU拡大もできたことで、ドイツは国内政治を重視するようになり、EU統合への負担増を支持しなくなった、と懸念されています。リビア空爆につながった国連決議を棄権したことは、ドイツに明確な国際戦略がないことを示し、同盟諸国に失望を与えました。

2008年の金融危機は国際金融市場の何を変えたのか? 確かに、もはや金融ビジネスが自己管理能力を持つとか、各国が規制緩和して世界金融市場に委ねることが望ましい、という考えは破棄されました。しかし、特集記事は金融ビジネスへの各国そして国際機関の規制が増えることに不信感を強めています。市場を活かした予防的な措置と、巨大かつ国際的な、多くの分野に展開する銀行を分割する実際的な道を模索しているようです。

金融危機の封じ込めと後始末として、上昇し続ける国際価格は論争を呼んでいます。景気回復の過程か、極端な金融緩和と財政赤字の結果か、むしろデフレを隠ぺいした悪質な経済破壊なのか? 日本の震災が国際価格を急激に抑制したとか、中国が香港に国際商品市場を設けて、アジアの貿易・金融取引を吸収する姿勢を見せた話は、ダイナミックな変化の兆候を示しています。

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IPEの想像力 5/30/11

日本の首相(菅、鳩山、麻生、福田、安倍)には「指導力がない」と言われますが、「指導者」は個人の能力や性格だけで強い「指導力」を発揮するのではありません。それは「文化」です。

与野党の政治家たちは、首相の不信任を議論するより、原発事故の処理や被災地の復興を少しでも進めるために、政府を助けて自分にできることをした方が良いと思います。

「リーダーは失敗の象徴になっているに過ぎず、必ずしも失敗の原因になっているわけではない。」 J.ナイは、著書『リーダー・パワー』において、複雑で混乱に満ちた世界で、非難を特定の個人に帰属させ、心理的な慰めを得る態度を批判しています。「原始人が魔術を信じたのは、・・・残酷な事象をコントロールできるという安心感が得られたから」であると説明します。

指導者は、自分たちが属する政治共同体が状況を理解できるように説明し、問題への診断を示して彼らの決断を支援しなければなりません。指導者がビジョンを示すことで、多くの人に一致した目標を与え、私的な利益を超える行動へと駆り立てます。変革への参加によって、新しい集団的(そして歴史的)なアイデンティティを得るのです。危機を変革のチャンスにするのが優れた指導者です。

菅直人が指導者としてのセンスやスキルに欠ける点は確かにあるでしょう。しかし、誰が首相になっても、それを大きく改善できるとは思いません。選挙と言えば、日本の政治プロセスでは、党首選挙やマニフェストを材料にマスコミが政党の違いを宣伝し、各地方では、選挙資金や派閥と団体からの支援を競います。何カ月も政治が空転するだけでしょう。

首相の指導力は、個人の性格や能力の問題だけでなく、むしろ、日本の社会制度や政治文化によって損なわれています。野党はもっと政府の行動を支援し、より優れたアイデアを示すことで事態を改善すべきです。本当に秀でた能力と人間性、優れた政策を実現するアイデアや行動力を持つ個人がいるなら、政府に参加することです。多くの人が認めるほど指導者にふさわしい人物がいたら、首相は復興会議や原発事故処理の重要ポストを委ねると良いでしょう。

首相は国民の政治的意志に形を与え、現場の士気を高めるよう奮闘しなければなりません。そして、指導する強い意志を失えば、後継者を育てて、速やかに次の内閣へ移行することです。

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NHKBSプレミアム「週刊ブックレビュー」で紹介された野地秩嘉 『TOKYOオリンピック物語』が面白そうでした。日本人が時間に正確(そして、画一主義、几帳面?)というのは、東京オリンピックで始まったことだ、と野地さんは語っていたと思います。前近代的な、封建的な支配秩序や職人の気質ではなく、近代的で合理的な、技術の完全さと統一行動による効率性を重視するようになったのは、敗戦によって荒廃した国土から、世界の指導的な工業国家を目指して、一気に駆け抜けた人々が共有し、広めたエートスでした。

たまたま、同じころ、私は朝日新聞(525日)の文化面に目を留めました。そこに並んだ富田勲(作曲家)と小川洋子(小説家)の文章を読んで、このように優れた感性と熱意を持つ人たちがいることに感動しました。

「宇宙に音はないけれど、音で宇宙を表現することはできる。」

「どんな人でも、生きているだけで、亡くなった方たちに対して果たせる何かがある。」

菅首相は、野地さんに被災地の復興に関わる人々も描いてもらうべきでしょう。そして、復興を闘う人々の励ましとなるような音楽を富田さんに作曲してもらい、被災者一人ひとりの心を形にする物語を小川さんに書いてもらってはどうでしょうか? こうした人たちの作品を集めて、彼らの感性が捉えた日本人の苦悩や希望を一緒に話し合い、政治家として、あなたはそれを語らなければなりません。

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小沢派に鳩山グループも賛成すれば、不信任案が可決される、とテレビの解説者は言いました。しかし、この時期に解散はできないだろう。有権者に選挙の通知もできない、と。

震災から2カ月も経つのに、事務的な困難を理由に選挙ができない、という主張に私は不満です。非常事態だから政治は機能しない、という言い訳を認めたくないし、実現できるように工夫すればできます。もし不信任が可決されたら、いっそ、菅首相は解散してください。経済復興も、原発処理も、財政再建や、中国の台頭と向き合う姿勢も、今までとまったく違う密度で、日本の政治家は真剣に議論し、選挙を戦ってほしいです。

重要問題について、少しでも政治的な駆け引きに流れて本質を見失い、あるいは、不都合な事情や政策転換をごまかす姿勢が少しでもあれば、彼らを絶対に落とすことです。菅、小沢、鳩山、谷垣・・・日本の指導力を劣化させた旧政治家と旧政党を一掃し、新しい指導者と政党を躍進させましょう。世界のメディアやNGOに議論への参加を求め、日本人は政治家の半分以上を入れ替えた、というニュースで世界中を驚かすときです。

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