今週のReview
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ポーランドを見よ ・・・ユーロ圏の周辺債務危機 ・・・アラブ世界の革命 ・・・アメリカの軍事介入 ・・・アイスランドの返済拒否 ・・・グローバリゼーションの政治学 ・・・原子炉を廃棄できるか? ・・・ブレトンウッズU ・・・震災後の日本
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia そして、The Economist (London)
l ポーランドを見よ
The Guardian, Monday 4 April 2011
Poland: a country getting to grips with being normal at last
Timothy Garton Ash in Warsaw
ワルシャワの中心部では、アメリカン・スタイルの健康関連商品を売るお店もあって、テレビから母親たちのおしゃべりが流れる。外には、陽光の下、BMWやメルセデスが鮮やかに飾られた通りやスマートなカフェの前を一瞬で通り過ぎる。若者たちはポーランドの新語を含むメッセージを送り合う。会いたいと思う古くからの友人たちの半分は海外だ。欧州議会、パリ、カナリア諸島。
ワルシャワは、近頃、マドリッドやローマに似てきた。ただし、その普通であることが、ポーランドにとっては大いに普通ではないことだ。
人の人生よりも短い期間で、さまざまなことがあった。1944年の英雄的な抵抗の後、ヒトラーの軍隊によって蹂躙された。30年前には、連帯の憤慨する運動家たちが暴徒鎮圧警察を無視して集まるのを観た。今、新しいポーランドは、イギリスより早く、ユーロ協定 “pact for the euro”に参加し、ユーロを採用するだろう。2010年の3.8%はヨーロッパで最高の成長率に入る。今年の後半はEU議長国になる順番だ。NATOに加盟し、アフガニスタンに派兵している。表面的には、ますます西側の消費社会になっている。住宅融資、保険、テレビの有名人、企業文化。健康やフィットネスがテレビを通じてブームになり、かつての教会や民族に取って替わる。
ポーランドの新しい民族的アイデンティティを考えるコンサルタントが繰り返されてきた。諸民族の中で最も敬虔なキリスト教徒。創造につながる緊張感。認識上の不協和音。その近代史には、分割、占領、抑圧、エスニックな対立、経済停滞、愛国心とロマン主義と信仰心の混合があった。ポーランドにとっての「正常」とは「政治的敗北と経済混乱」である。
だから多くのポーランド人にとって、この新しい「正常」をそのまま受け入れることはできない。特に、テレビのコマーシャルや繁華なワルシャワ中心部と彼らの日常とは大きく異なっている。ヨーロッパの基準で見れば、ポーランドは貧しい国だ。バルバドスやセイシェルよりも貧しい、ヨーロッパ平均のちょうど半分だ。失業率は11.8%で、若者の失業率はもっと高い。学生たちはポーランドに帰りたがらない。
かつてポーランドにはインテリゲンチャ階級がいた。彼らは多くのポーランド人より豊かだった。しかし、1989年の共産主義崩壊後、移行期には苦しい時代を送った。グダニスク造船所の元労働者たちは、1980年に連帯の運動を立ち上げたが、不正義や貧困に苦しめられた。彼らは旧共産党と左派の指導者たちが裏取引をした、と非難している。そして偏執狂的な政治が横行した。特に「法と正義」党(PiS)は、双子のカチンスキー兄弟によって率いられ、ポーランド政治を支配した。
モスクワ郊外で墜落した飛行機事故で死んだレフ・カチンスキーを悼む1周年の式典がある。事故では、彼とその妻以外に軍や中央銀行を含む、94人のポーランド国家の幹部が死亡した。しかも、それはスターリンによるポーランド将校の虐殺事件から70周年を記念する追悼行事に向かうロシアの飛行機だった。今も、ロシアが「人工的な作った霧」や、「離陸前に乗客のすべてが死んでいた」という政治陰謀説がポーランドでは噂される。もちろん、多くの国民は悲しみを共有して国民が統一することを願っている。
ヨーロッパで最も勇敢に自由を求めて闘ってきたポーランドは、EUやNATOを得て、これからどこに向かうのか? 議長国として、ベラルーシの自由を支持し、ウクライナのEU加盟を強く願う。そしてEUの東の隣人に対する姿勢は、EUの南の隣人、地中海を超えてアラブ世界にも影響する、とポーランド政府は考える。Bronislaw Komorowski大統領は、連帯が政府と交渉した第テーブルを喜んで彼らに貸してあげる、と語った。
30年前にポーランドが「普通の」国になるとは、誰も信じていなかった。今のエジプトもそうだろう。ポーランドを観て、希望を持て。
The Guardian, Wednesday 6 April 2011
Poland's steady economic progress matched by growth in social inequality
Polly Toynbee
成長の結果、ポーランドは苦しみます。社会的な格差、所得や、都市と地方の格差が拡大しています。
Polly Toynbeeは、世界銀行が共産主義の福祉国家を解体し、ネオリベラルなモデルを押し付けた、と批判します。
The Guardian, Wednesday 6 April 2011
Going home: the Polish migrants who lost jobs and hope in UK
Amelia Gentleman in Warsaw
イギリスは今もポーランド人にとっての夢の国だろうか? 神話と現実とは大きく異なることを知るポーランド労働者も多い。
l ユーロ圏の周辺債務危機
(chinadaily.com.cn) 2011-04-07
Europe's subprime quagmire
By Daniel Gros
アメリカの金融危機も最初は「サブプライム危機」と呼ばれた。ヨーロッパの銀行もNINJA(no income, no job, no assets)ローンを良く知っていた。建設ブームが終わって経済が落ち込んだとき、アイルランドやスペインの銀行が見たのは、融資した客が失業し、所得を失ったことだ。そして、ギリシャやポルトガルへのローンは一種のNINJAローンになった。アメリカでもサブプライム・ローンは陽光の降り注ぐ南部の州に多かった。
この二つが良く似ていることから、ヨーロッパの債権者はアメリカの経験から多くを学ぶことができる。1.サブプライム・ローンは融資の一部でしかなかったが、最悪の金融危機に発展した。金融システムの過剰な拡大により、損失を限定することができなくなった。
2.金融危機は、緊急に、大量の流動性を注ぎ込むことで解決するしかない。そのあと、金融システムを安定化するには、債務の組み換えと資本増強が必要だ。2008年後半、7000億ドルのTARPは金融市場の崩壊を防いだ。しかし不安は収まらず、2009年初めに銀行のストレス・テストを当局が行ってから転換した。テストは市場された。アメリカの通貨当局は主要銀行に資本増強を強制した。ヨーロッパはこれに失敗している。なぜなら当局はヨーロッパ周辺部の諸国に行った融資が損失を生じるというシナリオについてテストしなかったからだ。
3.アメリカの融資はノンリコースであり、支払の義務は住宅の価値に限定される。また、アメリカの破産手続きは数カ月で債務者を自由にする。他方、ヨーロッパでは、債務の組み換えを銀行も政府も強く拒んでいる。アメリカでは危機が長期に続かないが、スペインやアイルランドの住宅債務者は、彼らが住めなくなった住宅の債務に対して、何十年間も支払い続ける。ギリシャ政府は果てしなく財政削減を求められる。経済はブラックホールに落ちていく。
アメリカの銀行はサブプライム・ローンの大部分をトリプルAの債券に組み替えてがめつい外国人に売り払っている。その多くが北ヨーロッパの銀行に保有されており、彼らがヨーロッパ周辺部への融資を厳しく審査することを拒む理由なのだ。
ヨーロッパの基本的な失敗は、債務の組み換えと厳格なストレス・テストをタブーにしたことだ。EUサミットがその間違いを正さないうちは、危機が金融システム全体に拡大していく。
April 8 (Bloomberg)
European Debt Crisis Morphs Into New Phase
Mohamed El-Erian
ポルトガル政府が赤字削減の緊縮予算案を議会で否決されて、首相は辞任しました。しかし、ただちにECBの緊急融資が行われ、銀行危機は回避されています。EU・IMFによる3番目の有志国になるでしょう。それは2013年の債務組み換えに持ちこされます。もし危機がイタリアやスペインに及べば、こうした救済はできなくなります。しかし、市場の不安は緩和され、銀行は市場で追加の資本を得ることに成功しています。このままであれば、ECB・EU・IMFは緊急融資から債務組み換えに向けて転換していけます。
ポルトガルへも同じ救済が行われただけではない。民間市場が銀行の資本増強に応じるなら、局面は転換する。
FT April 10 2011
Complacent Europe must realise Spain will be next
By Wolfgang Münchau
政治家たちは危機の解決策にともなうコストを表に出したくないだけだ。いつまでも延期しようとする。スペインも明らかに不動産バブルだった。アイルランドやアメリカよりましなだけだ。しかし、アメリカと同様に、スペインでも住宅価格は下落するだろう。
guardian.co.uk, Monday 11 April 2011
Portugal bailout: three scenarios for Europe's economic future
George Irvin
SPIEGEL ONLINE 04/11/2011
The Never-Ending Crisis
Greek Debt Restructuring Looks Inevitable
By Peter Müller, Christian Reiermann and Christoph Schult
FT April 12 2011
Ireland’s taxpayers must share the pain
By Lorenzo Bini Smaghi
「代表なくして課税なし」という原則は双方向に正しい。もし納税者が支出の意志決定に参加できるなら、彼らはその結果を受け入れるだろう。しかし、ヨーロッパではそうなっていない。
NYT April 12, 2011
Portugal’s Unnecessary Bailout
By ROBERT M. FISHMAN
ポルトガルでは債務が問題ではなく、投資家たちの短期的な投機やイデオロギーが問題だった。民主的な政府が、規制されない資本市場の圧力で税制や支出を制限され、退場させられるのは間違いだ。
WSJ APRIL 13, 2011
Athens Descends Into Anarchy
By TAKIS MICHAS
外国からの財政管理を求められるような赤字の増大を予想されているギリシャの問題は、支払不能ではなく、ガバナンス(統治能力)の低下によるものだ。
政府は、経済を無視した左派の武装活動家や、「市民的不服従」として自動車道の料金所にバリケードを築く者、観光客の利用するフェリーを阻止する共産党の組織する労働組合員、などを阻止できず、逮捕もしていない。
それはまた、ギリシャ中産階級の政党が、政治的にも、イデオロギー的にも、弱いことで、民主的な統治や経済活動を維持できないことを意味する。
WSJ APRIL 13, 2011
The Case for an Irish Default
By RICHARD PORTES
アイルランドの公的債務は明らかに持続不可能である。2013年にGDPの120%に達し、繰り返し救済融資を受けたが市場は返済を信用していない。緊縮財政を採るにしても、救済融資の条件は昨年のGDP比9%というプライマリー・バランスの赤字を2015年には2%の黒字にするよう求めている。しかし、その前提では今後4年間、成長率よりも金利が2%だけ高い、としていた。現在の金利が約10%であるから、それは不可能だ。より説得力のある前提として、もし金利が6%高いと考えれば、2015年のプライマリー・バランスの黒字は7%となる。それでも、債務の水準は減らず、GDP比120%もある。
しかも、アイルランドはどうやって成長するのか? 緊縮財政であれば輸出を伸ばすしかないが、「内的な切り下げ」は難しい。むしろ、正しい政策は債務の削減だ。市場の期待から見た合理的な目標は、GDP比30%を削減してGDP比80%の水準にすることだ。これは、ギリシャやポルトガルにも波及するという不安を呼ぶかもしれない。実際、ギリシャは避けられないと市場も見ている。ECBが削減はないと主張したとしても、連帯融資は行われる。アイルランドの教師や看護婦に支払わないとか、アイルランドがユーロを離脱するよりも、ずっと良いからだ。
それはヨーロッパ中の銀行に損失をもたらす。しかし、アイルランドの破綻した銀行の債務を政府が肩代わりしたが、ヨーロッパの銀行の損失を避けるために、アイルランドの国民が税金で返済し続けることにも問題がある。「歴史は債務負担が重すぎることを示しており、それを持続可能な水準に戻すには債務を組み替えるしかない。」
SPIEGEL ONLINE 04/14/2011
Euro Zone Should Look to Brady Plan to Solve Its Crisis
By Jacob Funk Kirkegaard
1980年代のラテンアメリカ債務危機によりアメリカの銀行は不良債権を抱えた。それを解決したブレディー・プランは今のユーロ危機にも有益な教訓を示している。
この論説は、アメリカがストレス・テストと資本増強による強制的な不良債権処理を選択するケースではなかった、ブレディー・プランがヨーロッパにふさわしい、と主張します。すなわち、市場型ではない、銀行融資中心の不良債権問題でした。また、国民は銀行に対する救済融資を嫌っています。銀行の監督当局は損失処理を促し、今はできないけれど、徐々にストレス・テストを行い、優遇策を取って処理を促す。
FT April 7 2011
Trichet must now raise rates again
By Thomas Mayer
FP APRIL 7, 2011
Original Sin
BY WOLFGANG MÜNCHAU
SPIEGEL ONLINE 04/08/2011
Combating Debt and Inflation
European Central Bank Faces Interest-Rate Dilemma
An Analysis by Henrik Müller
WP Thursday, April 7, 2011
The Financial Stability Oversight Council: A deficit killer?
By Neel Kashkari
NYT April 7, 2011
Ludicrous and Cruel
By PAUL KRUGMAN
共和党の予算案を厳しく批判しています。ばかげた大歓声に過ぎない。
第一に、減税が歳入を増やす、というインチキ経済学だ。医療保険をやめてバウチャーに変える。真面目なものではなく、愚劣で、冷酷だ。
FT April 8 2011
A bankrupt nation wakes up
By Christopher Caldwell
FT April 8 2011
Stopgap agreement avoids US shutdown
By James Politi in Washington
LAT April 8, 2011
Budget battles: The California-ization of D.C.
連邦政府はカリフォルニア州に学ぶのか? 完璧さは改善を妨げる。真剣に、妥協せよ。
NYT April 10, 2011
The President Is Missing
By PAUL KRUGMAN
共和党との再生赤字削減競争を受け入れるのではなく、オバマ大統領は彼を支持した人々の主張をもっと政策として実現するべきだ。
FT April 10 2011
A debt disaster behind a comic book budget squabble
By Clive Crook
FT April 12 2011
The radical right and the US state
By Martin Wolf
NYT April 12, 2011
Budget Battles: Tax and Spending Myths and Realities
FT April 13 2011
Obama adds fuel to confusion but no resolution
By Mohamed El-Erian
LAT April 13, 2011
Playing chicken with the budget
By Barry Goldman
WP Wednesday, April 13, 2011
Obama deficit speech reveals his core beliefs
By Fareed Zakaria
財政赤字とアメリカの将来について、共和党とオバマ大統領が真剣な提案を行った。オバマが自分の目指すアメリカ再興を予算に関して描いた演説は重要だ。
NYT April 13, 2011
Raise America’s Taxes
By NICHOLAS D. KRISTOF
ウォルター・モンデールが1984年に財政の状況を考えて増税したい、という正直な、しかしハラキリ公約を示して落選して以来、政治家たちは増税から逃げるようになった。しかし、高齢化と医療費、経済の減速による苦しい改革過程について真剣に討議するなら、私に増税してほしい。
FT April 14 2011
Can we believe Geithner’s patter on debt?
By Gillian Tett
l アラブ世界の革命
WP Thursday, April 7, 2011
Amid the Arab Spring, Obama’s dilemma over Saudi Arabia
By Martin Indyk
アラブ世界におけるアメリカ中東政策に危機をもたらしているのは、リビアへの軍事介入ではなく、その反対側にある、サウジアラビアである。
87歳のアブドラ国王は日ごとに眠れなくなっているだろう。スンニ派王制の中の最高の王、メッカ、メジナを管理し、すべての周辺国境が不安定化しつつある。イエメンの不安定化、バーレーンにおける多数派の不満、イラクのシーア派が支配する政府。ヨルダンは立憲君主制であり、エジプトのムバラク体制は崩壊した。
外的な安定性に問題があれば、歴史的に観て、サウジの王室はアメリカに依存できた。しかし、今回の危機では、アブドラ国王はオバマがサウジ国内の安定性を脅かすとみている。デモ隊を鎮圧鶴ために、パキスタンの軍隊が領土内に入る合意を与えたと伝えられる。
これはオバマにとって特に難しい問題だ。サウジアラビアは世界最大の石油供給国で、石油価格を安定化する供給余力を持つ唯一の国だ。サウジアラビアの不安定化が石油ショックをもたらせば、オバマが再選するために欠かせない景気回復が終わるだろう。オバマ政権は、サウジを普遍的な権利(民主化と自由)の「例外」と認めるだろう。
しかし、サウジ国王がアラブ世界に広がる政治的な津波に壁を築くことは長期的な解決策にならない。アラブの権威主義体制も、政治的自由や責任ある政府を求める人々の要求を免れることはできない。王室の提供する1000億ドルの助成金や6万人の雇用は、若者の不満を一時的に緩和するかもしれない。しかし、テレビやインターネットで伝えられる政治的な刺激はもっと強い。
サウジの政治システムは脆弱だ。年老いて病弱な王族に権力が集中し、その政治的正統性を原理主義的なワッハーブ教団との合意によって得ているが、彼らは女性の権利を認めないような保守的な信仰集団だ。15世紀的な社会構造の内部で、21世紀の西洋化したエリート集団がもたらす緊張関係が、石油の利権をめぐって対立を生じている。豊富な石油埋蔵量が隣接する地区にあるバーレーンでは、すでに二流の市民として扱われてきた多数を示すシーア派が政府に抗議し始めている。
サウジアラビアが壁を築いて安定性を求めても、このままではスンニ派とシーア派の対立、アラブとイスラエルの対立が激化するだろう。それは中東におけるパクス・アメリカーナの終焉だ。
従って、オバマは至急、アブドラ国王と新しい協定について交渉する必要がある。それは彼の近隣諸国において立憲君主制への移行を促すロード・マップであり、究極においてサウジ王室もそれを認めるものだ。王は、それが王制と彼の庇護者を守る唯一の効果的な方法である、と確信しなければならない。彼がそれを認めるなら、大統領は彼を非難することなく、その安定を維持する用意がある。また、彼の敵であるイランと取引することはない。これらのことを知らせることだ。
それはアブドラ国王の生き残りだけでなく、オバマの再選を左右する。
NYT April 12, 2011
Pray. Hope. Prepare.
By THOMAS L. FRIEDMAN
1989年以後、ヨーロッパには市民社会が民主制の下で安定的な秩序をもたらした。ユーゴスラビアを除いて。
ヨーロッパの国はすべて、ドイツのような、同質的な民族国家があった。ユーゴスラビアには多くのエスニックと多くの宗教があり、植民地的な権力が失われると分解してしまった。アラブ世界では、すべての国がユーゴスラビアである。エジプトと、チュニジアと、モロッコを除いて。それらは多数派によって支配されていた。それら以外の国で権力が弱まれば、市民社会civil societyではなく、内戦civil warが訪れる。
従って、ここで平和的な民主化は終わったのだ。この先は「アラブの進化」を望むしかない。モロッコとヨルダンは、こうした進化を期待できる。彼らにはすでに、自ら選択して立憲君主制への改革を進める、尊敬された王がいる。シリア、リビア、イエメン、バーレーンは、部族、エスニック、宗教で分裂しており、民主制への移行が望ましかったはずだ。しかし、支配者は宗教コミュニティーや部族の相互の不満を刺激し、反対派が権力を得ることを許さない。支配か、さもなくば、死だ。
アラブ世界の政治的自由や民主化は、もはや望めないのか?
内戦を回避する二つの方法がある。一つは、南アフリカのネルソン・マンデラやデ・クラークのような政治指導者が現れることだ。勇敢で、ビジョンのある、アラブの新しい指導者が新しい社会契約を実現する。もう一つは、東欧においてEUが行ったように、民主的な移行を監視し、指導するような外部からの支援を受けることだ。しかし、今、この仕事を引き受ける者はいない。
アラブ世界の民主化は東欧よりもはるかに難しい。ドイツであることを祈り、南アフリカになることを望むが、ユーゴスラビアに備えよ。
FT April 13 2011
How to jump-start an Arab economic miracle
By Daniel Altman
20年前の共産主義諸国のように、アラブ諸国は独裁体制を廃し、同時に、経済システムを葬った。今何をするべきか?
むしろ、経済は安定性を重視し、これまでの関係を徐々に変えていくべきだ。経済政策や人間を急激に変えることは不確実さを増し、長期的な関係を乱し、投資や輸出を損なう。前政権からの債務を拒むよりも、その契約を継承したほうが支援を受けやすい。また、その国の資産を公平に分配できる体制を確立することだ。民営化は旧エリート層の産業支配を防ぐ一つの手段であり、徐々に行うことで大量失業やロシアのような独占的富裕層の出現を防げる。
国家管理は後退し、その活動を民間企業が活発に競い合えるような規制の改革が重要だ。そして何よりも重要なことは、新しい政府が経済を能力主義によって運営することだ。
NYT April 13, 2011
Cairo’s Roundabout Revolution
By NEZAR ALSAYYAD
FT April 13 2011
A tricky transition
By Heba Saleh
l アメリカの軍事介入
FT April 7 2011
The new global geometry of power
By Philip Stephens
アメリカはリビアへの攻撃から手を引き、オバマは再選を希望するというメッセージを発した。それらは同時に行われ、二つはつながっている。
他にも、ロシアや、中国や、フランスや、イギリスで、権力を誰が握るのか? さまざまな計算が働くだろう。中国の次に指導者がいつまでパクス・アメリカーナの機関やルールを利用するのか? 世界権力の幾何学が、地域紛争や相互の外交関係に作用する。
WP Friday, April 8, 2011
Grounds for U.S. military intervention
By Henry A. Kissinger and and James A. Baker III
アメリカは理想主義的な理由で軍事力を行使するべきか? あるいは、重大な国益に関する問題で軍事力を行使するべきか? その両方とも? 我々は様々な国際的危機において4人の大統領に奉仕してきたが、「理想主義」と「現実主義」との選択は間違いだと考える。理想が具体的な状況を考慮しなければならないように、現実主義も国民の価値が重視される文脈を求めている。それらを分離することは政策を動揺させるだけだ。
多くのアメリカ人と同様、われわれはアメリカが常に民主主義や人権を政治的、経済的、外向的に支持するべきだと信じている。我々の価値は同胞の苦しみを緩和するように駆り立てる。しかし、一般原則としては、国益も危機にさらされているときのみ、軍事的に行動する。このアプローチは、「プラグマチックな理想主義」と呼ぶのが良いだろう。
リビアはこのルールの例外と言える。アメリカはリビアの重大な国益を持たない。しかし、限定的な軍事介入は人道的な見地から正当化できる。カダフィ軍は市民に重大な死傷者を出していたし、ベンガジを制圧する恐れがあった。カダフィ軍の装備は弱く、彼は内外で支持されていなかった。国連安保理とアラブ連盟が行動を求めていた。
しかし、アメリカは世界の警察官ではないし、すべての人道的問題に軍事介入することもできない。中東と北アフリカで事件が起これば、個々の事情を考慮するべきだ。その際、いくつかのガイドラインを示しておく。
1.軍事力を行使するときは、明確かつ限定的な目標を立てておかねばならない。人道的な理由で介入することは我々の価値観に一致するが、限定することが難しい。政府による弾圧や、政府そのものの崩壊によって住民たちを保護する必要が生じるため、戦略的な外交に関係してくる。それは、体制転換や軍事介入の拡大をもたらし、戦略的な失敗にもつながる。
2.各国の特殊な事情を精査し、その文化や歴史と戦略的・経済的利益とを関連させること。さまざまな大衆運動の背後の動機を知り、個々のケースに適切な対応が取れる。
3.我々が誰を、また、何を支持しているのか、知らねばならない。独裁に反対するだけでなく、体制転換後の秩序を考えておくことは重要だ。破綻国家が並ぶような事態は望まない。
4.アメリカ国内での支持、通常は議会の支持がなければならない。
5.予想外の結果を考慮しておくべきだ。反乱軍の支配下にあるカダフィ支持の市民たちが非道な扱いを受けるのを防ぐべきだ。リビアでの軍事行動がイランを核武装に駆り立てる。核拡散防止への強い意志を示すべきだ。
6.重大な国益に関する、確固とした無私の理解をアメリカは展開しなければならない。地域のすべての騒乱はその起源や改善策が同じではない。何が達成可能で、どのような時間軸で見るべきか、現実的な判断が必要だ。
われわれはアラビア・ペルシャ湾一帯の長期的安定性に重大な関心を持つ。それは世界の主要なエネルギー供給地だ。またこの地域がイスラム過激派の温床にしないことにも重大な関心を持つ。
国益と価値は、「プラグマチックな理想主義」として、ともに追求しなければならない。
WP Friday, April 8, 2011
Why humanitarian wars can go so wrong
By Gary J. Bass
人道主義的な戦争はなぜ失敗に終わるのか? 大規模な殺戮を止めるために限定された手段で介入しなければならない場合、戦争はあまりにも危険なギャンブルになる。
もし人道主義を軍事力行使の理由とするなら、世界中に介入することを求められる。なぜ他の虐殺は許すのか? またなぜ、飛行禁止空域の設定という、限定した方法に頼るのか? 逆に、軍事介入の成功が批判を招く。介入による市民への殺傷や予想外の結果があるからだ。
限定された集団で普遍的な人道主義的価値を求めるが、同時に、いかなる戦争もエスカレートしていく。介入は次第に現地の反政府勢力を頼るしかなくなり、中立的な介入などありえない。我々が支持する反乱軍が人権尊重の優等生であることは、まずない。
FT April 10 2011
French president’s military interventions are logical
guardian.co.uk, Monday 11 April 2011
Gaddafi figures prominently on the roadmap for peace
Simon Tisdall
The Guardian, Monday 11 April 2011
Few politicians say it, but most think it: our Afghan war is a disaster
Julian Glover
WP Monday, April 11
Will the Libya intervention bring the end of NATO?
By Anne Applebaum
リビア政府主催の、NATO空爆による市民の犠牲、紹介ツアーに参加した。案内する担当者も、偽物のショーであることを隠そうとしない。ジャーナリストたちは、外国の独裁者が行う愚劣な宣伝工作を楽しむ。
しかし、「NATOの軍事作戦」という宣伝はどうか?
この作戦でNATOは何も議論していないし、投票も、作戦計画もない。NATOの加盟国が攻撃を受けることでNATOは起動する。アフガニスタンではそれが考えられた。しかし、リビアは違う。攻撃もないし、共通の敵もない。何の合意もない。ドイツとトルコは明白に反対している。たとえ作戦を支持した国でも、自国の空軍の行動を制約している。
アメリカ軍の高官は、この数日、NATOの言及するのを非常に嫌がっている。大統領は、「今後、NATOが作戦を指揮する」と述べた。アメリカ軍を隠したいのだ。
事実は、この作戦の最初から、英仏の軍事行動であった。しかし、どちらも作戦の責任を取らず、相手国を信用できない。これは1956年のスエズ危機以来、初めての共同行動であるが、スエズ危機の結末はひどいものだった。ここには作戦を引き受けるヨーロッパ軍がない。外交・安全保障に関する統一もない。
イギリスとフランスの戦闘機、燃料、資金情熱が尽きれば、この作戦は終わる。リビアにおいて、NATOはフィクション、偽物だ。
FP APRIL 12, 2011
The War on Soft Power
BY JOSEPH S. NYE JR.
WSJ APRIL 13, 2011
The Facts About American 'Decline'
By CHARLES WOLF JR.
SPIEGEL ONLINE 04/13/2011
SPIEGEL Interview with NATO Head Rasmussen
'There Is No Military Solution to the Libya Conflict'
FT April 13 2011
Obama must not delay in brokering a new Mideast peace
Brent Scowcroft
アラブの春は、パレスチナ問題を避けて通れない。2国案として解決のための条件はすでに示されており、双方の指導者が実現する意志を持つかどうかだ。オバマ大統領はこの問題を避けてはならない。
領土と国境を画定し、難民の帰還と補償を行い、エルサレムを双方の首都にし、パレスチナ国家を非武装化し、同時に、イスラエルがパレスチナの主権を尊重するよう、アメリカ主導の多国籍軍を配置する。
YaleGlobal , 13 April 2011
China’s Foreign-Policy Balancing Act – Part I
Jonathan Fenby
(peopledaily.com.cn) 2011-04-13
US should stop acting like 'preacher' of human rights
By Wen Xian
アメリカ政府が「グローバルな人権の正直な見取り表」と説明した報告書はでたらめだ。実際には、冷戦思考と偽善の寄せ集めである。
FT April 14 2011
Hooray! The Yanks are going home
By Philip Stephens
アメリカ軍は帰国し、ヨーロッパは大人になるときだ。
NYT April 7, 2011
Billionaires Unleashed
By TIMOTHY EGAN
guardian.co.uk, Friday 8 April 2011
Latin America shakes off the US yoke
Mark Weisbrot
l アイスランドの返済拒否
The Guardian, Friday 8 April 2011
Iceland, fight this injustice
Eva Joly
土曜日、アイスランド国民はアイスセーブの預金支払い要求に国が応じる、という提案を拒否した。民間の預金を、銀行が破たんしたとき、国民が支払うことに疑問が生じた。預金者は、金を失うことなく、破産処理を何カ月も待つことさえなく、政府が全額支払うようにイギリスとオランダが要求した。そこにはリスクに見合った高金利も含まれていた。
アイスランドの支払義務35億ポンドは人口規模に対して巨額であり、イギリスなら7000億ポンドに匹敵する。それは法的にも、道義的にも、疑問のある要求だった。
同じように、アイルランド、ギリシャ、ポルトガルの国民も支払を要求されている。EUは金融機関や債権者には何の責任も求めていない。なぜか? それは正しい主張だろうか?
債務を免除する慣例に従わず、過去10年の金融的行き過ぎ、無思慮な融資が、いつまで続くかもわからない将来まで、納税者が支払う。その結果、ヨーロッパ中で公共サービスが削減され、増税され、失業が増えている。今まで、政府の債務危機は発展途上諸国の問題だった。
アイスセーブの預金支払いに関する国民投票は、ヨーロッパにとっても、世界にとっても重要だ。それはこの問題の処理について民主的なプロセスが欠けていることを示した。ヨーロッパの納税者も同じように不正義と不公平を感じているだろう。
金融危機は数100万人の住宅を奪い、仕事や年金を奪った。他方で、金融機関や銀行、債券保有者は全額を保証されている。彼らのボーナスや非現実的な給与、利潤はそのままだ。
現在の秩序、金融部門を無条件に救済する、はアイスランドで覆され、世界にも及ぶだろう。
FT April 10 2011
Icelanders reject Icesave debt repayment
By Andrew Ward in Stockholm
この投票結果はアイスランドの経済再建計画を破綻させるのか? EU加盟やIMF融資の行方に障害となるだろう。政府間交渉が失敗した以上、法廷による解決に向かう可能性が高い。それにはさらに時間がかかる。債券市場における評価も下がる。
これは破綻した際の預金補償をどの国が担うのか、EU法に欠陥があることを示している。交渉を通じて支払条件を緩和したにもかかわらず、大統領の署名拒否で2度目の国民投票による否決をもたらし、政権の経済再建を図る展望も失われた。貨幣・経済の国際管理は続き、外国投資家は敬遠する。
guardian.co.uk, Monday 11 April 2011
Iceland's no vote on Icesave was a public display of anger
Peter Geoghegan
WSJ APRIL 12, 2011
Iceland's Useful Rebuke
The Guardian, Tuesday 12 April 2011
Iceland broke the rules and got away with it
Aditya Chakrabortty
「アイスランドを覚えているか? 2008年の秋、金融メルトダウンで最初に破綻した国家だ。30年以上にわたって、IMFが救済した最初の裕福な国である。」
しかし、アイスランドを見れば、正統派が脅すような破綻国家の大混乱を免れる方法はあることが分かる。アイスランドの金融政策委員会委員であるAnne Sibertは、「逆立ちしたロビン・フッド」、貧しい者から奪って富者に与える、とアイルランドの政策を批判した。
「国民を銀行システムの担保に取られた」と、アイルランド首相、Stephen Donnellyは嘆く。それはアジア通貨危機の際のマレーシア首相、Mahathir Mohamadが資本規制を導入して、非難されたことを思い出させる。今ではIMFも、資本規制を正統な手段として認めた。
FT April 12 2011
Bail-out on ice
guardian.co.uk, Wednesday 13 April 2011
The Icesave referendum has been oversimplified
Jóhanna Sigurdardóttir
FT April 8 2011
From behind bars, Madoff spins his story
By David Gelles and Gillian Tett
FT April 8 2011
Grubby lessons from a life of serial fraud
By Frank Partnoy
FT April 8 2011
Global economy: An inflated outlook
By Rahul Jacob and Chris Giles
FT April 8 2011
Living in a world of rising rates
April 11 (Bloomberg)
Bernanke, Trichet Display Their Respective DNA
Caroline Baum
WP Wednesday, April 13, 2011
The curse of free money
By George F. Will
「大き過ぎて潰せない」ことの結果、連銀は「量的緩和」で金融機関を救済し、景気回復を図っています。それは余りにも多くん貨幣を供給し、物価を引き上げてしまいます。金利で暮らす老人や年金生活者の利益は重視されません。
l グローバリゼーションの政治学
YaleGlobal , 8 April 2011
The Politics of Globalization
Peter Mandelson
グローバリゼーションは国家や社会を不安にする。しかし、グローバリゼーションの逆転を求めるのはまだ早い。
グローバリゼーションは貿易や革新を刺激し、消費者物価を引き下げ、食糧や衣服から、自動車やコンピューターまで安くした。しかし、エネルギーや資源への需要は競争を激しくして、安定性を失わせている。現代の経済生活は、より多くの新しい機会と不安をもたらす。
それゆえ二つの見解が現れた。一つは「ダヴォス派」であり、10000フィート上空から見た新しい機会と成長の世界である。もう一つは「工場の入り口から見る」人々であり、発展途上世界と仕事や機会を奪い合うゼロサム・ゲームの過程で、職場や生活水準が失われる。
国による経済ルールの違いも摩擦をもたらす。グローバリゼーションは、経済が我々の管理から離れてしまう、という不安をかきたてる。人々はグローバリゼーションを祝うより、保護を求めている。しかし、国家介入に頼ることと、不安に応える政治が重要になることとは同じではない。グローバリゼーションの政治を確立することが緊急に必要だ。
公共政策によってグローバリゼーションを改善する国際機関が存在する。IMF、G20、世界銀行、特にWTOである。世界的規模の競争を前提に、グローバリゼーションに対する集合行動が必要である。この点で、グローバリゼーションにおいては、集合行動や社会的保護と、競争激化とを、トレード・オフと考えるものが要るが、それは間違いだ。社会的保護を弱まるようなグローバリゼーションは持続できない。
言いかえれば、グローバリゼーションには政治的選択が含まれている。北欧諸国の「フレクスキュリティ― “flexicurity”」 は有名だ。労働者は市場による移動を肯定し、その代わりに手厚い保護を受けている。この不況下にも失業率は抑えられている。納税者からの支援基金が、長期失業や停滞を回避するために使用される。さまざまな社会プログラムは有益だ。こうした支出を惜しめば、保護主義や世界市場からの隔離を求める政治がすぐに現れるだろう。
もちろん、再分配政策には限界がある。働く意欲を失うような公的補助は非生産的だ。教育や公的研究機関、インフラの整備は重要だ。政府は、金融危機後の債務増により、政府と市場の関係を改革するよう求められている。政府は単純な怪物ではない。企業が道徳的な行動を取らないからと言って、企業を否定することもない。市民たちがグローバリゼーションの中で沈むより、泳ぎ回る力を付けたいなら、政府は競争を抑圧したり、企業経営に干渉したり、産業育成に熱心であるよりも、新しい経済と政治の時代を拓くべきだ。
WP Friday, April 8, 2011
The World Bank and IMF are meeting in Washington — why don’t we care anymore?
By Moises Naim
桜が咲く季節にはグローバリゼーションに反対するデモも盛んになったものだ。しかし今、桜は咲いているのにデモはない。彼らはどこへ行ったのか?
IMF・世銀総会にデモが集まらなくなった理由は、こうしたグローバルな機関が無意味にする国際経済の構造変化を反映している。1.経済政策を制約する融資条件は、以前のような論争にならない。債務国自身が市場に従って政策を決めている。2.今では多くの新興国に資金があり、先進諸国は市場に資金を頼っている。3.中国、インド、ブラジル、インドネシアなどは、豊かな国に比べて、金融危機の影響をうまく回避した。4.危機を受けて、世界の指導者たちは国際金融機関を大胆に改革すると約束している。
しかし、危機を過ぎれば複雑さが目立ち、制度改革の政治的意志はすぐに消えてしまった。もっと穏健な金融システムの改善策が議論されている。すなわち、金融規制、会計基準、ヘッジファンドや格付け会社の役割、など。
バーゼル協定Vのためにデモを組織することは、貧困国の債務免除を求めるよりも、はるかに難しい。
LAT April 8, 2011
Social experiment: Know thy neighbor
By Peter Lovenheim
隣人を知ることで、私たちは変わる。近くに住む女性が40年間も近隣地区を歩いていたことから、話は始まります。
FT April 10 2011
The future of banking: is more regulation needed?
By Peter Boone and Simon Johnson
FT April 11 2011
Only radical action can break bank monopolies
By Diane Coyle and Jonathan Haskel
FT April 11 2011
Breaking up states is becoming easy to do
By Michael Crawford and Nader Mousavizadeh
FT April 12 2011
The nightmare of taking on ‘too big to fail’
By John Kay
April 13 (Bloomberg)
The Fed Rescue Program Too Bizarre to Be True
Michael Lewis
FRBは、勇敢にも、金融危機に際して何を行ってきたかに関する詳細な資料(894 PDF files containing 29,346 pages)を公表した。
FT April 14 2011
Ancient Greek lessons for bank reform
By Samuel Brittan
どうすれば金融危機を防げるか? イギリスでは、さまざまな銀行改革が議論されています。
l 原子炉を廃棄できるか?
LAT April 10, 2011
Why nuclear power is still a good choice
Mark Lynas
原子炉を廃棄すれば、必ず石炭に頼ることになる。それは環境にとって、はるかに悪い選択だ。もっと早くエネルギーを転換できていたら、温暖化は回避できただろう。スリーマイル島の原発事故で犯した過ちを繰り返してはならない。
原子力エネルギーに頼らず、再生可能なエネルギー源を開発することもできる。しかし、それには経済的にも、生態学的にも、多くのコストがかかる。
あるシンクタンク(the Breakthrough Institute)の試算では、「日本で稼働中の原子力発電所を廃棄し、それを風力に変えるとしたら、130億エーカーの土地が要る。それは日本の国土の半分以上に及ぶ。太陽発電によって代えても、同様の広さの土地と1兆ドル以上のコストがかかる。」
第4世代の原子炉が開発されれば、安全性は高まるだろう。
guardian.co.uk, Wednesday 13 April 2011
Who to trust on nuclear?
Paul Dorfman
福島原発の数字には驚嘆する。「6つの原子炉には487トンのウラニウムが収められており(230キログラムのプルトニウムが含まれる)、1838トンの使用済み燃料が保管されている。」
ドイツは、すでに原子炉で得られるエネルギと同じだけ風力発電をして、再生可能エネルギーへの移行を指導している。イギリスは再考しないのか?
FT April 11 2011
Germany: A test of strength
By Quentin Peel
(chinadaily.com.cn) 2011-04-11
China steps away from export-led growth
By Hua Xiuping
(chinadaily.com.cn) 2011-04-14
BRICS – a step towards prosperity and democracy
By John Ross
l ブレトンウッズU
FP Monday, April 11, 2011
The view from Bretton Woods
Posted By Clyde Prestowitz
ジョージ・ソロスが主催するInstitute for New Economic Thinking (INET)でニューハンプシャー州のブレトンウッズに集まったエコノミストやジャーナリストたちは、危機を再発しない将来の繁栄を話し合った。しかし、その多くは旧い思想の再発見であった。H.ミンスキー、C.P.キンドルバーガー、J.M.ケインズ。
新しい思想としては、リチャード・クーの「バランス・シート不況」、新・新貿易理論、成長を維持するために移民を呼び込む必要、だろう。
guardian.co.uk, Tuesday 12 April 2011
Some market discipline for economists
Dean Baker
(chinadaily.com.cn) 2011-04-12
The Bear of Bretton Woods
By Barry Eichengreen
ブレトンウッズ会議では英米が対立し、ケインズとホワイトが対立した。そして圧倒的な経済・金融力を背景に、アメリカが勝った。ケインズはドルに代わる新しい国際準備を発行できるIMFを作れなかったし、黒字国と赤字国、国際通貨の発行国と利用国とを、同じように政策調整させる手段を合意できなかった。
ケインズの敗北は今に至る問題を残した。中国のような恒常的黒字国や、アメリカのような国際通貨の発行国は、不均衡にあっても、他国と同様の調整圧力がかからない。南京会議はG20に不均衡の経済指標を与えて、アメリカや中国にも政策調整を促すべきだと考えた。しかし、危機の性格は変化し続けているから、こうした指標が役に立つのは過去の危機であって、次の危機ではない。また、結局、G20が調整を求めても「ピア・プレッシャー」に過ぎないから、成果は期待できない。
もう一つの主張は、ドルに代えてSDRを国際通貨にすることだった。しかし、SDRを国際取引の計算単位にする者も、SDRで債券を発行する国もないから、SDRの市場はなく、結局、利用されないだろう。危機に際してアメリカ連銀が大量のドルを供給したように、IMFがSDRを発行できるなら、つまり世界中央銀行になるなら、SDRは世界通貨になるかもしれない。しかし、アメリカ上院の銀行委員会委員長Ron Paulが自国に中央銀行が必要か疑っているとき、世界中央銀行が支持されるわけがない。
ドル中心の通貨・金融システムが置き換わるとしたら、それはドル・ユーロ・人民元の三極通貨体制であろう。ドルに代わる国際通貨があることは、アメリカの金融政策を慎重にし、これまでのように債務に依存することを許さない。その結果、金融世界は安定する。結局、2007-09年の金融危機の究極の原因は、多極化した世界経済と今なおドルが支配する通貨・金融システムとの矛盾であった。
世界の金融システムは現実に一致するだろう。それは喜ばしい。しかし、救済の前にはまだ危機が待っている。
FT April 13 2011
America must give up on the dollar
By Michael Pettis
20年から30年ごとに、アメリカの赤字が増えて、世界の準備通貨という地位からドルが没落すると予想する者がいた。この数年、また警告が強まっているが、過去と同様に、間違いであるとわかるだろう。
準備通貨の地位は、コストをともなう公共財だ。ユーロを除けば、この地位を担える通貨は存在しない。そのユーロもすすんでコストを支払う気はない。ドルが将来その地位を失うとしたら、それはアメリカ政府自身が世界をドルから切り離すからだ。
アメリカが途方もない利益を得ているという陰謀説は間違っている。逆に、ドルが国際通貨であることは、アメリカにも世界にも負担である。戦後の安定的な成長を支えるドルの役割は、アメリカにとっても利益であった。しかし、1980年代初めから、海外の通商政策がアメリカにとってのコストを増大させ、冷戦終結は利益を減らした。
アメリカのコストは失業の増大と財務の増大の選択になっている。各国は世界需要のより大きなシェアを争っており、そのために主に外貨準備として、積極的に外貨を蓄積する。外国の介入と通商政策がアメリカの対外赤字を増やした。それはアメリカの雇用を失わせるか、失われる需要を補うために債務に依存した消費や投資が増えた。連銀は常に、失業よりも、より大きな債務を選択してきた。
国際通貨としてのドルの利益は、輸入のコストと借入のコストを抑えることだ、と言われる。これはどちらも間違いだ。アメリカは過剰消費にあるから、特に国内雇用を犠牲にして、そのコストを下げることは必要ない。借入において、その信用は確かに重要だ。しかし、国際収支の不均衡は世界を不安定化している。もしドルが準備通貨であることをやめれば、世界貿易は減少し、アジアの成長も減速するだろう。それは長期的なアメリカのコストを減らし、グローバルな不均衡の危険な状態を緩和する。
アメリカはドルを複数の国際通貨の一つにするべきだ。
FP Wednesday, April 13, 2011
Bretton Woods outlook dark for America
Posted By Clyde Prestowitz
FT April 14 2011
The IMF needs to find its voice again
By Sebastian Mallaby
IMFの拡大はうわべだけの成功だ。IMFの姿勢は一貫性を欠いている。ユーロ危機では返済の見込みがない融資計画に支持を与え、グローバル・インバランスでは相互監視メカニズムを無益な仕組みと諦めている。特に、資本規制について、新興市場の要求を通して政策手段として公認したことは間違いだった。資本規制が成功した、と思われたケースでも否定的な研究が問題を示している。
FT April 14 2011
G20 gulf widens on source of fragility
By Chris Giles in Washington
l 震災後の日本
FT April 12 2011
Manufacturing: High and dry
By Peter Marsh
グローバル・サプライ・チェーンがもたらす影響について。
LAT April 12, 2011
Japan's well-built society
By Braven Smillie
SPIEGEL ONLINE 04/12/2011
Japan's Devastated Coastline
The Pompeii of the Pacific
By Walter Mayr
一瞬のうちにすべてを失った日本の南三陸町は「太平洋のポンペイ」だ。
April 14 (Bloomberg)
Where Chernobyl Outlook Is Shakier Than Ground
William Pesek
日本の成長率を1.6%から1.4%に修正する、というIMFの予測は信じられない。地震と津波の直後には、復興投資が成長を回復すると期待できた。しかし、それは停電でソニーやトヨタの工場が止まり、外国の企業幹部が放射能を恐れて次々に出国する前のことだ。
福島原発からの放射能流出は何年も続くだろう、とニュースは伝えている。その深刻さは国際基準でレベル7に達し、1986年のチェルノブイリと同じだ。消費や投資が冷え込むのは当然だ。日本の新しい成長水準が落ち込むことは三つの理由で支持される。
1.東京圏の停電が続く懸念。原発事故は何年も、不動産投資など、産業に影響する。すでに貨物船や航空機がこの地域を避けている。サプライ・チェーンの途絶は日本から工場を移転する動きにつながる。そして家計は不安を感じて貯蓄を増やそうとする。
2.世界成長の弱さ。協調介入による円安も輸出を増やさないだろう。アメリカやヨーロッパの回復は遅く、中国も減速する。1995年の阪神大震災が急速に回復できたのは、世界景気が良かったからだ。また、日本には不況を回避する政策の余地がない。金利はゼロに近く、公的債務はGDP(5兆ドル)の2倍もある。
3.精彩を欠く指導者。地震の前から、菅首相には精彩がなかった。デフレは止まらず、競争力は改善できず、高齢化に向かう債務の膨張に対処できなかった。震災後の復興には3000億ドルの投資が必要と推定される。しかも原子力の専門家の間でも、日本の原発事故がどこまで悪化するか、まったく合意がない。
これから歴史の教科書にはチェルノブイリより福島の原発事故が載るだろう。日本の投資家や企業は不安で動けなくなる。経済の回復とは大部分が心理ゲームだ。政治の麻痺状態と合わせれば、これが日本の正常な水準となってしまうだろう。
WSJ APRIL 14, 2011
Japan Learns to Accept the Military
By MICHAEL AUSLIN
震災の救援に果たした自衛隊の積極的な貢献は、日本国民が自衛隊を公認し、国際的な貢献も含む新しい安全保障の方針を展開する勇気を与えるかもしれない。
WP Tuesday, April 12
150 years later, we’re still fighting the Civil War
By Harold Meyerson
WP Tuesday, April 12
How will Mr. Obama respond to Iran’s nuclear progress?
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The Economist April 2nd 2011
Islam and the Arab revolutions
India and Pakistan: A willow branch
The euro zone’s periphery: They’re bust. Admit it.
Charlemagne: The handicapped union
Disaster in Japan: Plutonium and Mickey Mouse
Japan and the global supply chain: Broken links
(コメント) アラブの春における新しい情報手段と若者の運動が、次第に、ムスリム同胞団やアル・カイダの影響を浸透させるものになっていないか? 西側政府は心配しています。記事は、民主主義の浸透を助けるべきだ、と考えます。
インドとパキスタン。クリケット以外には共感しない核武装した憎しみを、変える方法があるはずだ。両国はもっと貿易し、もっと人的な交流を増やし、もっと地域制度を活用することで、大きな妥協による合意も交渉できるだろう。
他方、ユーロ危機も、日本の原発危機も、政治の機能マヒが深刻です。変化をもたらすもっと深い変動があります。階級や信仰に依拠した既存の大政党が支持を失い続けていること。気候変動や金融危機に政府は無力であること。グローバリゼーションや移民に不安を感じる人々が政府への失望と偏狭な政治的主張に向かうこと。その結果、政権正統は常に脆弱で、EUにおける民主主義の強化を図るしかない、と主張します。
原発事故に示された日本政治の電力業界との癒着、日本の部品に依存し過ぎたことを悔いている世界企業の動向は、日本に復興よりも革新を求めています。
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IPEの想像力 4/18/11
真相究明。復興計画。補償。さまざまな支援。それらはいずれも重要であり、区別するべきです。震災や津波と違って、原発事故は東京電力が政府の安全基準に従って運営していたことが人々の憤りを強めています。しかし、自然災害であっても、その被害は人間が決めた安全対策や建築基準、開発のあり方、災害発生直後の対応、教育や情報、個々人の判断、などによって大きく異なるでしょう。
政府は被災者に謝るより、事前の地震・津波対策や事故処理がどうであったかを究明し、被災者への補償や支援の在り方を決める、積極的かつ公平な役割を担うべきだと思います。
東電を単に国有化するのでは、ウォール街の金融機関を救済してボーナスを払い続けるのと変わらないように思います。
復興会議の増税提案は、財政再建の問題と復興とを切り離す必要を示しています。災害の問題は、長期的な貯蓄によってインフラや工場を再建するという意味で、金融のメカニズムが重要です。生産や所得が落ち込んだときに増税するよりも、債券を発行して、生産が回復することで返済できるという計画を明示することこそ重要でしょう。
たとえば、債券の一部を必ずドル建やユーロ建、人民元建で発行することにより、財政の健全化を進める強い約束にしてはどうでしょうか。そして、東北地域に積極的な輸出基地を設けて、外国企業を誘致する努力を私は歓迎します。
政府が、どうしても財源を明示するために増税を行うことが重要だ、と考えるのであれば、まず1%の消費税を追加する、という簡明な形で行うのがよいでしょう。国民は復興のために1%を追加で支払うことを受け入れるし、消費によって支援できるでしょう。東北地方が復興し、高い成長を実現すれば、当然、地域の所得から税収が返済に充てられると思います。
他方、たとえ復興のためであれ、財政再建が曖昧になったり、予想外の増税が続いたりすれば、国民も債券投資家も不満を感じるでしょう。財政再建は、震災が起きる前から必要でした。救済や復興とは問題を明確に切り離し、今こそ集中的に議論して、医療保険・年金、消費税、派遣労働・非正規雇用、子育て支援、など、重要問題に信頼できる改革案を、迅速に、与野党が合意して示すべきです。政治の質が問われるのは、むしろこの点です。たとえば、各党の政策担当者や専門家が原案を作成し、期限を決めて妥協・合意すべきです。
復興会議のメンバーは、さまざまな分野から集まっているため、経済や金融市場に関する判断がどのように行われるのか、不安を感じます。世界において大規模な地震や津波から地域を再建した例は多くあると思います。原発事故がそうであるように、国際的な諮問会議を招集し、IMFなど、国際機関からも助言を得て、より開かれた、優れた復興計画を集中的に議論するべきでしょう。
さまざまな提案を恐れることなく、斬新なアイデアを歓迎し、地域が独自に採用する余地も与えて、具体的に交渉することが望まれます。もちろん、私なら、ヘイ・オン・ワイのような書籍の街や、政治・経済論争の指導的人物をアジア中から集める自由都市を作ってほしいです。
もし復興の見通しに、日本だけでなく、アジアや世界の変化を考慮するメカニズムが組み込まれるなら、計画は大いに関心を集め、活気あるものとなるでしょう。たとえば、アメリカ、EU、中国、インド、などから、開発計画に参加する人物を各自治体が招待します。中国の自動車メーカーやインドのIT企業、インドネシアやベトナム、シンガポールやカナダの企業が進出して、オフショア生産拠点や企業村を日本に設けるよう促してください。技術者や労働者の短期・長期の滞在資格を、積極的に議論するべきです。
政府の役割は、自然と社会の間に立ち、被災者と社会との間に連帯意識を高めて、優れた公共精神を国民に喚起することです。
謝るよりも、両親を失った子供たち、住宅や職場を失った人々、何年先になれば戻れるか、分からないまま生まれた土地から去らねばならない人たちが、10年、20年たって、日本の政治や社会の在り方に感謝するような、政治的意志と対応能力を示すときです。そうすれば、震災を耐える子供たちの中から、様々な分野で、次の優れた指導者が現れるでしょう。
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