今週のReview
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国際秩序と軍事力の行使 ・・・アイルランドの債務危機 ・・・国家は滅ぶか? ・・・福島原発事故 ・・・超国家通貨、為替レート、不均衡、資本規制 ・・・先進諸国の債務危機と金融政策 ・・・中国の市場と国家 ・・・中東の秩序崩壊
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia そして、The Economist (London)
l 国際秩序と軍事力の行使
WP Thursday, March 31
How to help free Libya
By Ali Suleiman Aujali
WP Thursday, March 31 2011
In search of the Obama Doctrine
By Michael Gerson
オバマは大戦略を示さず、一貫性よりも柔軟性を強調した。しかし、オバマの支持者たちが称賛した新しい外交政策の霧が晴れれば、そこに現れたのは「ブッシュ・ドクトリン」である。オバマは写真のネガを観るように前政権の政策をひっくり返すと主張していた。しかし、大統領になってから行ったことは、レトリックを変えただけで、非常によく似ている。
ブッシュ・ドクトリンはイスラム過激派のイデオロギーに代えて、民主主義と人権を広めるものだった。クリントン国務長官は「イデオロギーをわきにどけておこう」と主張した。しかし、民衆のデモに圧倒されて、独裁者の包摂ではなく、オバマはエジプトの民主化を支持した。オバマのマルチラテラリズムがどれほどの内容をもつかは、まだ試されていない。安保理が反対すれば、アメリカは介入せず、ベンガジにおける民主勢力が滅ぶのを受け入れるのか?
もちろん、オバマは単にブッシュ・ドクトリンを採用したのではない。連続する、否定しえない脅威に戦略として応じてきたのだ。
FT April 1 2011
Philosophes sans frontières as Plato battles Nato
フランスの哲学者、Bernard Henri-Lévyは国連決議の限界を断ちきって、リベラルな哲学者的介入を支持した。進歩的知識人は保守派の好戦的なドクトリンを踏み越える。NATOではなく、プラトンPlatoに従う。
デリダの脱構築。トマス・アキナスの「正義の戦争」。平和主義者のラッセルの名言。「戦争は誰が正しいrightかではなく、誰が残るleftかを決める。」 ともかく、この哲学者的外交を実現するのは、英米の軍事力だ。そして、かつてJ.P.サルトルをCIAのスパイと非難したBernard Henri-Lévyがカダフィと交渉する。神は死んだが、カダフィは闘い続けている。
YaleGlobal , 1 April 2011
Libya Exposes Fault Lines in the Mediterranean – Part IV
Harsh V. Pant
英仏による安保理決議に対して、なぜ新興諸国は棄権したのか? 老化し、疲弊した旧勢力の西側諸国はグローバルな秩序を実現する負担に応じる姿勢を持っている。中国は「安定化」に賛成しても、決議を棄権した。ロシアは、外部勢力は不安定化をもたらす、と述べたが、拒否権は行使しなかった。ブラジルやインドも棄権した。
こうした姿勢は、アメリカへの一極集中した世界秩序よりも多極化を支持する彼らの90年代からの主張である。しかし、彼らは国家主権を熱烈に支持しており、アメリカが他国に内政干渉することを懸念する。
リビアにおける人道上の殺戮を止める義務に対して、新興諸国はこれを認めても、負担を引き受けようとしない。彼らは西側の世界秩序に代わるものを真剣に示そうとしないのだ。
WP Friday, April 1, 2011
Will Libya become Obama’s Iraq?
By Meghan O’Sullivan
リビアをオバマのイラク戦争にしないために、助言が必要です。オバマ政権は国民に、「この軍事介入は慎重かつ賢明に行われる。これは反対意見のあった、コストのかかるイラク戦争とは違う」と説得してきました。「カダフィを軍事力によって出そうすることを目指すものではない。」
ブッシュ政権で安全保障の顧問であったMeghan O’Sullivanは、オバマにいくつかの助言をしています。「明確な目標」、「バラ色のシナリオで正統化するな。」・・・「同盟」、「隣国」、「軍事力によって達成できることは多くない。」・・・「今日の些細な決定が、将来、重大な結果をもたらす。」
WP Friday, April 1, 2011
How to counter Gaddafi’s regime
By Paul Wolfowitz
フランス革命やアメリカ独立革命を「市民戦争Civil War」と呼ぶけれど、エジプトやリビアで起きていることを同じように呼ぶことはできない。
住民から真の忠誠を得ている政府が、彼らを殺すと脅す必要はないし、多くの外国人部隊によって守られる必要もない。国民の意見は体制に反対しているが、軍事的なバランスは体制に偏っている。だから軍事介入は必要だ。
WP Friday, April 1, 2011
The Libya liquidation strategy
By David Ignatius
カダフィ政権が頼る唯一の戦略的資源は「現金」であった。しかし、国連に支持された連合諸国が現金を封鎖し、枯渇し始めたので、はやくも側近集団に崩壊の兆しがある。
国連の監督下で、現地の新政府が組織されつつある。カダフィはテロを支援し、化学兵器を集めたこともある。しかし、何より資金を枯渇させることが重要だ。この2なし3カ月で、カダフィは破産した独裁者になる。
FT April 3 2011
Military action alone will not save Libya
By Mike Jackson
冷戦後の世界で、イギリスは他国への介入に加わってきた。特に、ボスニア、コソボ、東チモール、イラク、アフガニスタン、そして今や、リビアだ。これを「軍事的冒険主義」と批判する者も、「石油が目的だ」とか、「文明の衝突だ」と批判する者も、間違っている。
バルカン半島における介入は、大部分、イスラム教徒のマイノリティーを守るためであったし、重要な石油資源などなかった。
介入の目的は主に二つである。1.人道的な意味で破局を回避すること。2.世界秩序により大きな安定性をもたらすこと。そして、「国家は住民を保護する責任がある」(R2P、“responsibility to protect”)を、国連憲章が保障する国家主権よりも重視するなら、介入は正当化される。
世界秩序の安定性はより複雑な概念だ。それは軍事介入だけでなく、政治、外交、経済、法、人道の次元で多くの努力を必要とする。政治的な権威が統一された国家内ではなく、多くの国で行われるときには、より困難である。「国家再建」という概念には、道義と、実際上の意味がある。カダフィが政権にいる限り、安定性は得られない。軍事力は必要だが、政治的な解決策が要る。
FP APRIL 4, 2011
Is America Addicted to War?
BY STEPHEN M. WALT
オバマを大統領に選んだ国民は、それ以前の大統領と違って、オバマは戦争をしない、と信じたはずだ。ノーベル平和賞を受賞した大統領であり、特に軍事力の行使については熟慮を重ねるはずだった。
しかし、たった2年で新しい戦争を始めた。リビアの独裁者が何千何万もの罪のないベンガジ市民を殺戮するのを傍観してはいられない、という主張は簡単な検証にも耐えない。カダフィが冷酷な支配者であることは誰でも認めるが、彼の軍隊は支配した町で大量殺戮を行う命令など受けていない。暴力的な報復の脅しは彼の支配に逆らう人々に向けたものであり、罪のない傍観者に及ぶものではない。「世界の良心を損なう」とオバマが非難した流血の事態は起きなかった。
なぜ、異なる大統領が同じような戦争を始めたのか? なぜ予算削減をめぐってわずかな額でも激しく争っている二つの政党が、1日に100万ドルもかかる軍事介入を始めた大統領に何も言わないのか?
アメリカが愚かな戦争を続ける理由を5つ挙げよう。
1.アメリカには戦う能力がある。アメリカには強力な軍隊がある。特に、リビアのような弱小国に対しては。何100機も戦闘機を備え、スマート(精密誘導)爆弾、巡航ミサイルが世界中の目標に照準を定めている。世界のどこかで問題が起きると、「何かしろ」という声に逆らうのは難しい。「大統領。たとえ重大な国益を侵す問題ではないから、あなたが介入しないと決めても、その結果、多くの市民が死んだ場合、それはあなたが決めた結末だ。」
「アメリカの例外主義"American exceptionalism"」と言われるが、アメリカが他国と異なるのはその理想・価値ではなく、世界的に観た軍事力の集中と、アメリカ大統領がそれを行使する政治的な自由である。
2.アメリカには深刻な敵対国が存在しない。冷戦終結後の世界で、アメリカの軍事力行使は敵対国の影響を心配する必要がない。
3.志願兵として兵士を補充できる。ウォール街の銀行家たちも自分の子供が徴兵制によって戦争に行くなら、反対意見はもっと強くなる。
4.外交分野の専門家だけが関わる論争である。ワシントンは「ネオコン」と「リベラルな介入主義者」によって二分されている。彼らは比較的裕福で、高度な教育を受け、子供は戦場に行かない。たとえ戦争が暗転しても、政府から元のシンクタンクに戻って次の出番を待つだけだ。国民は、国内のプログラムに税金が無駄に使われていることと、海外の米兵が崇高な目的に従事していることを、繰り返し教育されてきた。
5.議会は大統領を止めない。憲法は議会に宣戦布告の権限を与えている。しかし、大統領は軍事力の行使に広範な自由を得ている。その外交顧問たちが決定に関わり、世論は無視される。
FP APRIL 5, 2011
Obama's 21st-Century War
BY AARON DAVID MILLER
20世紀の戦争はアメリカの大統領たちに厳しいものだった。21世紀も冷酷であろう。
オバマは21世紀の戦争を選択した。それは最初から戦う目的が明確でない。軍事力は手段であって、目的ではない。軍事介入の成功は、正統性、権威、安全、開明的な指導力が実現されることにかかっている。その結果は、オバマに支配できない。
NYT April 5, 2011
Time’s Up, Qaddafi
By CURT WELDON
WP Wednesday, April 6, 2011
The haze of humanitarian imperialism
By George F. Will
l アイルランドの債務危機
guardian.co.uk, Friday 1 April 2011
Ireland: a dead cert for default
Larry Elliott
アイルランドの銀行が政府に肩代わりさせた債務超過額は膨れ上がっている。政府は、債務超過の主要4銀行を維持するために追加で240億ユーロを必要とするだろう。
ここから4つの問題が明らかだ。1.不動産バブルに融資して被った損失を含めて政府は民間銀行を国有化したが、国民は支払いきれないほどの負債を押し付けられた。アイルランド政府が行った財政再建のための厳しい緊縮政策の上に、まだこれがある。債務の削減が要求されるのは無理もない。しかしEUは支持していない。2.アイルランド経済は返済の重みで不況を続ける。アイルランドの輸出部門は健全で、輸出を拡大してきたが、今回のショックで不況に逆戻りだ。3.通貨同盟の内部で経済を均衡させるのは非常に厳しい。失業に耐えて財政赤字を減らし、賃金を抑制してきた。他の諸国では競争力の回復がもっと難しいだろう。4.ユーロ圏の危機は終わっていない。加盟国のデフォルトはありえるし、ユーロ圏も危険な状態が続く。
FT April 3 2011
Politics will bedevil resolving the euro crisis
By Wolfgang Münchau
政治家たちの交渉や合意が喧伝されるけれど、ユーロ圏の債務危機対策は進んでいない。政治と金融・財政と経済とが相互に関係して変化する。
危機解決の政治学を検討する。ドイツやフィンランドは救済融資に強く反対する。しかし、反対方向に働く力もある。すなわち、無秩序なデフォルトを恐れる勢力だ。彼らはデフォルトを恐れ、しかも、救済融資を嫌う。
なぜ彼らは債務国のデフォルトを恐れるのか? 1.非対称的な危機嫌悪。投資家は危機を解決するために政治家が債務を帳消しにすれば政治家を憎むだろう。ヨーロッパの政治家たちはH.ポールソンのようになりたくない。2.国境を越えてデフォルトが伝染する。3.2013年以前に債務削減を行うことを、政治家は強く嫌う。それこそ、救済融資とデフォルトが同時に行われる、政治にとって最悪のケースだ。
こうした問題は金融システムにとって致命的ではない。しかし、政治システムにとっては致命的だ。有権者たちにそれを受け入れる気がなければ、政治家たちは責められる。
しかも、この問題は2013年後も続くだろう。将来の政治指導者たちが現在の指導者よりも危機の解決に優れている保証はない。ECBは膨大な政府債務を保有したまま、警告を発し続ける。ギリシャもアイルランドもポルトガルも、長期にわたってECBに保護されるしかない。返済を繰り延べ、金利を引き下げるが、債務削減は行われない。
完全な救済融資と完全なデフォルトの間で、ユーロ圏の解体とユーロ債による財政統合との間で、厳しい選択ができない。トリプルAの債券が発行できる国は有権者の反対を避けられず、ナショナル・フロントのような極右勢力が有権者の「ユーロ圏嫌い」を刺激する。
FT April 6 2011
Irish debt repayments should be linked to growth
By Patrick Honohan
アイルランドの成長率が高ければより多く返済できるが、成長率が低ければ返済も少なくてよい。そのような合意が必要だ。
FT April 6 2011
Banks1, Portugal 0
The Guardian, Thursday 7 April 2011
Portugal's crisis: Out of options
FT April 7 2011
Waiving the rules for Portugal
Desmond Lachman
WSJ APRIL 8, 2011
The Lisbon Irony
l 国家は滅ぶか?
WP Friday, April 1, 2011
Two books on the future of power and diplomacy
By Ian Morris
「国家は廃棄されるのではなく、衰滅するのだ。」と、1878年にフリードリッヒ・エンゲルスは書いた。過去5000年間、国家は地上で最も強力な組織であったが、今やさまざまな攻撃を受けている。すなわち、国連の決議、犯罪組織、債券市場や投資家、ウィキィークス。
Parag KhannaとJoseph S. Nyeの新著によって未来を考察する。Khanna によれば、21世紀は「新しい中世」であり、新興大国、多国籍企業、超資産家、人道主義者、新興宗教、大学、傭兵、などが外交に参加している。国家間の外交儀礼ではなく、大臣、企業、教会、基金、社会活動家、起業家、などが複雑に交流することで、新しい世代Generation Yは独自の外交を展開するようになる。それによって新しい中世の混沌は「新しいルネサンス」に変わる。
Joseph S. Nyeによれば、現代世界の権力は三次元のチェス盤によって構成される。一つは軍事力、もう一つは経済力であり、企業が重要なアクターに加わる。最後に、Khannaの新しい世代の地政学が加わる。
Nyeは、戦争だけが重要だ、とは考えていない。誰が勝つかだけでなく、どの物語(イデオロギー・価値観)が勝つか、が重要だ。しかし軍事力は、酸素のように、安全保障にとって欠かせないから、すべての問題に優先される。
Khannaの主張には誇張があり、アメリカはビザンチン帝国ではない。現代企業と中世のギルドを並べても曖昧な意味しかない。国家はまだ退場することを拒むという意味で、Nyeが正しい。
l 福島原発事故
FT April 1 2011
Nuclear power will find a third-world backyard
By Christopher Caldwell
LAT April 3, 2011
Unlearned lessons from Chernobyl and Fukushima
By Henry Shukman
ウクライナの主要な輸出品は買収だが、かつては放射能だった、と深刻なジョークで始まります。1986年のウクライナにおけるチェルノブイリ原発事故をふりかえり、1973年のシューマッハーSchumacherの著書 "Small Is Beautiful"を読んでおくべきだった、と言及します。
13万5000頭の牛と10万人が避難し、今では野生生物の避難所となっています。つまり、たとえ放射能が残っていても、人間がいなければ、野生生物は繁栄するのです。それは楽観主義を支える事実でしょうか? しかし、最新の生態系に関する研究はそれが健全とは程遠いことも示しています。
チェルノブイリ、スリー・マイル、そして福島の事故から学ぶべきことは、フリーランチはなく、われわれのエネルギー問題を解決するのはその供給面ではなく需要面である点だ。
guardian.co.uk, Sunday 3 April 2011
Fukushima: the future is unknown, but the present is terrible enough
Jonathan Watts
放射能が危険なために、津波の犠牲者は1000人以上も死体のまま放置されている、という共同通信のニュースに残酷な響きを感じる。津波が去っても、まだ、人々はメルトダウンの恐怖に支配されているのだ。
原発事故は日本の複合的な震災被害から回復する過程を遅らせるだろう。それは被災者たちの生活に悪い影響を与え、メディアの関心も分散してしまう。なぜ震災の犠牲者よりも、まだ一人の死亡もない原発事故の不安を騒ぎたてるのか? 日本は戦争以来、最大の2万8000人が死亡か行方不明となっている。
原発の危機は、津波に比べて身近である。特にアメリカやヨーロッパではそうだ。震災よりも原発の影響の方が東京に及んでいる。1000キロ離れた中国でも、人々は放射能に汚染されると心配して、塩の売り場にパニックが起きている。
毎日の食糧や燃料にも不足する人々の苦しい生活の方が重要だ。それが終わっていないことを知る必要がある。
April 4 (Bloomberg)
IPad-Eating Central Bankers Face Inflation Surge
William Pesek
日本の危機がiPhones やiPadsの販売に影響することに、株式相場のアナリストたちは驚いている。ひと月前までは、中国に生産拠点が集中し過ぎていることを心配していた。しかし、高度に発達した日本の工業はグローバリゼーションの思わぬ脆さを示した。グローバル・サプライ・チェーンを介して、日本の生産低下がインフレーションを刺激するかもしれない。
他方で、放射能汚染も影響を広げている。日本からの船舶や飛行機が着くと放射能が測定される。これも世界物価を押し上げる。あるいは、地震の前から豊かになったアジアの需要が増加していただけでなく、金融破たんを防ぐために日銀が追加した現金も、インフレ圧力になる。
すぐにiPad2の新製品が供給される、というけれど、iPadは食べることができない。食糧価格が上昇するのを防げるか? 日本はいろいろな輸出品で世界に貢献した。自動車、電機製品、鉄鋼、ビデオ・ゲーム、重機械、漫画、あるいは、ハロー・キティ。しかし、コストの追加、という新しい輸出品を世界は好まないだろう。
SPIEGEL ONLINE 04/04/2011
SPIEGEL Interview with Energy Commissioner Oettinger
'Fukushima Has Made Me Start to Doubt'
Energy Commissioner Günther Oettinger
欧州委員会のエネルギー担当委員がインタビューに応えています。エネルギー供給、原発閉鎖のコスト、温暖化ガスの排出抑制、再生可能なエネルギー開発、ドイツ連立政権とNATO、新型原子炉の開発、ドイツにおける緑の党。
FT April 4 2011
Rebuilding Japan after the deluge
震災、津波、原発事故に対して、日本の政治家たちは団結し、復興と原発事故の収束に向けて迅速な対応策を採り、不活実性を減らして、企業家のアニマル・スピリットを刺激しなければならない。震災に対する自衛隊の出動は早かったが、原発事故後の説明や対応は不適切で、原子力産業と政治家の癒着に問題がある。
日本が危機をチャンスに変えるには、自民党が早期解散を求める戦略を転換したように、原発や被災地の土地所有者に対して、既得権による政策決定の遅延を許さず、オープンに競争的な政策を示して合意形成を急ぐことだ。
SPIEGEL ONLINE 04/05/2011
A Hapless Fukushima Clean-Up Effort
'We Need Every Piece of Wisdom We Can Get'
By Veronika Hackenbroch, Cordula Meyer and Thilo Thielke
guardian.co.uk, Wednesday 6 April 2011
Meltdown: not just a metaphor
Joseph Stiglitz
日本の震災と原発事故、アメリカの金融危機は、どちらも技術が災害のリスクを完全に取り除くわけではないことを教えている。その災害の大きさは、それまで約束されてきた(金融あるいは原発)システムの利益がすべて吹き飛ぶようなものだった。
金融の技術革新はリスクを除去するのではなく、他者に転嫁するものだったが、そこには代理人問題と外部性があった。格付け会社もモーゲージの発行者も、リスクを転嫁できると無責任に考えていた。
将来の金融メルトダウンをもたらす「次のブラックスワンはどこにあるか?」 大き過ぎてつぶせない銀行がモラル・ハザードを生じたように、原発事故だけでなく、廃炉のコストは社会が負担するしかない。福島原発と同じ型の原発がアメリカなどではまだ稼働している。
同時に、地球には温暖化と気候変動のリスクが確実に高まっている。
われわれの社会は、金融システムでも、原子炉でも、温暖化でも、利益の出ないギャンブルに耽ってきた。
WP Friday, April 1, 2011
Reconsidering the Goldstone Report on Israel and war crimes
By Richard Goldstone
WP Monday, April 4 2011
The Goldstone Report and Israel’s moral standing
By Richard Cohen
The Guardian, Tuesday 5 April 2011
Gaza: the stain remains on Israel's war record
Kenneth Roth
FT April 5 2011
Truth without reconciliation
2008-09年にパレスチナ難民の住むガザ地区に対してイスラエルが行った軍事攻撃、ガザ戦争について、南アフリカの優れた法律家であったゴールドストーンRichard Goldstoneを委員長とした国連人権委員会が報告書をまとめた。彼は報告書を否定したわけではないが、その後の重大な発見として、イスラエルは市民を故意に標的にした政策はなかった、とWashington Postに記事を寄せた。
報告書はイスラエルに対する偏見によって書かれている、とイスラエルやその同盟国から非難された。ゴールドストーンはユーゴスラビアやルワンダで人権問題を告発していたが、この件では個人的にも攻撃された。500ページの報告書はほとんどイスラエルの軍事行動について述べているが、それは当時の軍事力のバランスを反映していた。
この認定は、必ずしも、イスラエルの市民の保護を十分に図ったと述べたわけではない。イスラエルは、もちろん自衛の権利がある。しかし、国内であれ国外であれ、比例した軍事力によって対応しなければならない。
LAT April 5, 2011
What's behind Goldstone's flip-flop?
イスラエルは故意に市民を標的にした、と非難していたゴールドストーンは、イスラエルからの新しい証拠でその見解を翻した。しかし、その説明は不十分だ。
当時、報告書は真剣に受け取られた。ゴールドストーンは尊敬されていたし、戦争の死者数はパレスチナ側が1400人に対してイスラエルは13人だったからだ。
間違いを正す、というのなら、それは良いことだろう。しかし、そんな単純な話だろうか? モスク、病院、アパート、避難所が攻撃された。3度の調査旅行で、188人に面接し、公聴会も開いている。そして、今になって、委員長は意見を変えるのか?
イスラエルは独自に400の例を調査して、市民への意図的な攻撃はなかった、と示した。だから最初から、イスラエルが調査に協力していれば誤解しなくて済んだのだ、と説明する。軍事的な理由もなく住宅を破壊したことも? 救急車が病人の輸送を止められ、医療活動が拒まれたことも?
その厳しい非難は、その後の中東和平の推進力であった。それを翻すなら、もっと詳しい説明が要る。
The Guardian, Wednesday 6 April 2011
Goldstone report: the unanswered questions
FP APRIL 6, 2011
The Debate that Changed Goldstone's Mind?
BY ABRAHAM BELL
l 超国家通貨、為替レート、不均衡、資本規制
(China Daily) 2011-04-02
Reform global monetary system
By Yu Yongding
新しい国際金融秩序の一部として、超国家通貨を創るべきだ。現在の制度の重大な欠陥は、アメリカのドルが国際的な準備通貨であるために、アメリカは国内の窮状を解決するためにドルを追加に発行するという「途方もない特権」を得ていることだ。
すでにアメリカは印刷機をフル回転させて、2度目の「量的緩和」を始めている。インフレと価値の下落を生じたなら、数10億ドルをドル建の財務省証券で外貨準備を保有している中国、日本、など東アジア諸国は莫大な損失を被る。
アメリカにドル価値の安定化という責任だけを負わせるのは正しくないだろう。アメリカにも金融政策の自由はある。しかし、今の制度ではそれらが矛盾するのだ。それゆえ独立した国際通貨があることはアメリカの利益にもなる。
最良の候補はSDRだ。SDRによる国際契約・決済を促すために、IMFと中央銀行間の取引はSDRで表示する。SDR市場の流動性を高め、貿易や金融取引に利用を広げる。各国通貨とSDRの両方で必ず表示することが容易にできる。
人民元をSDRに加えるかどうか、というのは別問題だ。変動制や資本取引の自由化も、SDRに加える条件ではない。中国は、他国の中央銀行とスワップ協定を結び、アジアではチェンマイ・イニシアティブがある。人民元の国際化はSDRに参加することに向かう。また、ドル価値の安定化のために、振替勘定の設置も支持する。
FT April 4 2011
Bretton Woods II
中国の南京で国際通貨制度改革の国際会議が開かれた。ドルに依拠した制度には問題があるが、新しい制度には合意できなかった。
ドルを国際準備通貨から外すことはまだ難しいだろう。SDRがバスケット通貨であるうちは利用も限られている。人民元はもっと自由に広く取引されるようにならないと、SDRに加えることが流動性や利用を妨げる。
むしろ、各国の競争的な切り下げをやめること、SDRの追加によってIMFが安定化のために融資し、国際流動性を増やすこと、が望ましい。各国の弾力的な為替レート、健全な金融政策、債務管理によって、市場で準備資産が選択される中で、国際通貨の自然な交代が起きる、というのが南京会議の合意である。
FT April 5 2011
IMF gives ground on capital controls
By Robin Harding in Washington
短期的(投機的)な資本移動が増え、通貨危機や通貨戦争、債務危機への不安が高まっているため、発展途上諸国と先進諸国、新興諸国の意見が一致して、IMFは資本規制を正統な政策手段として認めるための指針・条件を発表した。それは、1997-98年のアジア通貨危機まで資本自由化を掲げてきたIMFの方針を大きく転換するものだ。資本移動の利益と重大なリスクを考慮して、その利益を維持するためには多角的な考慮が必要だ。
FT April 5 2011
Waiting for the great rebalancing
By Martin Wolf
世界の国際収支不均衡は解消されるか? 新興市場では貯蓄が減るよりも増えているから、不均衡の拡大ではなく縮小に向かうには新しい力学が働く必要がある。危機によってアメリカの債務と消費は抑えられた。政府も債務を減らして景気回復を続けるには、対外需要が必要だ。
実際、外貨準備がクッションとなって、新興諸国の拡大は損なわれず、これまで抑えられていた需要が現れている。中国は国内消費を刺激する政策に転換し、アメリカなど先進諸国は貯蓄を促している。
新興諸国は先進諸国の資産を持つことがインフレによって価値を奪われる危険を意識しているから、不均衡の縮小は続くだろう。
FT April 6 2011
Global economy: In a tight spot
By Ralph Atkins and Chris Giles
(chinadaily.com.cn) 2011-04-06
Inflationary angst
By Harold James
再びインフレが懸念されているが、インフレ目標論は明確な基準を示せない。
SPIEGEL ONLINE 04/07/2011
Kissing an Era Goodbye
To Fight Inflation, Europe Ends Cheap Money Strategy
FT April 7 2011
Trichet must now raise rates again
By Thomas Mayer
l 先進諸国の債務危機と金融政策
(chinadaily.com.cn) 2011-04-02
A cure for fiscal failure?
By Kenneth Rogoff
世界の多くの政府が、通常の赤字に加えて、前例のない年金の支払、成長の減速、という致命的な組み合わせに苦しんでいる。
アメリカ政府の債務は、連邦政府と州や地方の政府を含めて、第二次世界大戦が終わったときにGDP比120%を超えた。日本はさらに悪く、外貨準備によって一部は相殺されるが、GDP比200%を超えて、さらに震災の復興が追加される。
容易な解決策はない。低金利によって危機を免れているが、債務の削減には長い時間がかかるので、(インフレ調整した)金利の上昇はずっと早くやってくる。債務危機は予想もしないときに起きるだろう。
最も早く効き目のある対策は、政府の拡大を止めて、歳入の予測を立て、歳出を削減することだ。独立した機関が政府の隠れた債務保証を示すことも重要だ。しかし、それだけではできないと分かったら、税制を効率化し、給付を削るときだ。スウェーデン、イギリス、スロヴェニア、カナダが行ったように、中央銀行をモデルにした独立の財政委員会を設けることだ。
しかし、金融政策に比べて財政政策に関する合意は難しい。扱う政策目標が複雑で、多すぎるから、財政委員会が中央銀行と同じように有効な対策とはならないだろう。
将来世代は自分たちよりもはるかに豊かだから債務は問題にならない、という政治家が常にいる。政治的な選挙循環は強く影響しており、政府は債務や長期投資をごまかして当面の支出を増やそうとする。
だから財政委員会を定期的な国際機関(IMFなど)の監査によって補強するべきだろう。
FT April 4 2011
History will rue US and European debt woes
By Kenneth Rogoff
「23世紀の歴史家が、今日の困惑と軽蔑の混じった財政の愚かさを、われわれが18世紀のフランスの王たちを観るように、振り返るのだろうか?」
金融危機の後、債務依存から抜け出すのはさらに難しい。現在の政府債務はフランス革命前の状態であり、税制の混乱ぶりはビザンチン風の迷路である。強力な利益団体が驚くほどの非効率さをもたらしている。そして南海泡沫事件のようなバブルを引き起こした。
債務の抑制は進まず、金利は早く、その前に上昇するだろう。日本の津波も、ユーロ圏の周辺における不安もあるが、アメリカはさらに、債務危機を軽視している。23世紀の歴史家にすれば、それらは愚かなことに見えるだろう。税制の簡素化、免税の廃止、限界税率の引き下げが重要だ。社会給付を抑制する。教育を改善し、新技術の導入や競争を促進する。経済成長と連動した債務や独立した財政委員会が必要だろう。
それらを実現したなら、21世紀は後世の模範となる。
WSJ APRIL 7, 2011
A Rate Hike Could Doom the Euro
By MICHAEL T. DARDA
ECBは金利を引き上げるだろう。それはユーロ圏周辺部の危機と、ユーロ解体に近付く恐れがある。名目GDPはバブル前に比べて10%程度減少している。これはECBが支援を増やす必要を示している。スペインとイタリアの経済規模は、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルの5倍もある。
バーナンキと違って、ECBのトリシェは金融を引き締める。エネルギーと食糧の価格が上昇し、消費者物価指数を年2.6%も上げているからだ。インフレ期待や賃金の上昇につながることをECBは心配する。
しかし、DARDAはそれが間違いだと主張する。2008年7月にもECBは金利を引き上げて不況を招いた。今回も、ECBの引締めは、日銀が犯した「失われた10年」という失策に従うものだ。特に財政を健全化するために緊縮策を採るなら、金融緩和が必要だ。
WSJ APRIL 7, 2011
The Fed Should Consider a 'Bad Bank'
By ALLAN H. MELTZER
バーナンキはインフレに注目しないが、それは間違いだ、と主張します。バーナンキは、失業が高い水準にあるから、という理由でインフレを過渡的と見なす。しかし、そのような関係は、フィリップス曲線に代表されたように、間違いだった。また、消費者物価指数CPIには住宅価格が含まれている。その下落がCPIを抑えている。中東の政治不安や日本の震災の影響は過渡的だが、それ以前から続く上昇傾向は過渡的ではない。
「巨額の財政赤字に、通貨供給の増大と為替レートの減価がともなう国は、インフレが起きる。」
guardian.co.uk, Monday 4 April 2011
Workers' rights are under threat across the world
Keith Ewing
FP APRIL 4, 2011
Voted Out
BY DAVID BOSCO
かつて国連は、国家主権にどのような条件も求めなかった。しかし冷戦が終わって、国連加盟国は住民に対する人権の保護を求められるようになった。安保理も、IMFや世銀も、「グッド・ガバナンス」を求めるようになっている。
しかしまた、EUが示すように、逆の意味で民主主義は問題を生じている。EUやWTO、IMF、世銀などの管理部門は、それに従う加盟国の市民から民主的に選ばれたわけではない。
The Guardian, Thursday 7 April 2011
Believe in liberty, equality, fraternity? This time, don't follow the French
Timothy Garton Ash
イスラム教徒の女性が顔や体全体を黒い布で隠す衣装を、法によって禁止するべきか? フランスの大統領はそうだと主張しますが、Timothy Garton Ashは反対します。自由な社会においては、コーランの漫画家も、ブルカを好む女性も、それが他人を害するものでなければ自由を享受できる。ブルカの女性がフランスの脅威である、という政治家の主張は受け入れがたい。
l 中国の市場と国家
FT April 4 2011
China consumer goods: Left on the shelf
By Louise Lucas
中国人は何を好むのか? 多国籍企業と現地企業が中国の消費者を奪い合っています。そのスタッフや技術、市場調査も。
LAT April 6, 2011
U.S.-China relationship: A shift in perceptions of power
By Joseph S. Nye Jr.
中国の攻撃的な姿勢は、アメリカが衰退し、中国は興隆する、というイメージによって採用されている。しかし、それは事実と違う。中国はまだ貧しく、低開発な分野も多く、ソフトパワーではアメリカに全く及ばない。攻撃的な外交は、中国にとってもコストをともなうはずだ。近い将来、中国はより現実に合わせた政策に戻るだろう。しかし国内のナショナリズムが刺激された結果、後退はなかなか進まず、長期にわたる難しい時期が続く。
YaleGlobal , 6 April 2011
China Bubble: Empty Mega Mall and Million Dollar Pooch
Vikram Mansharamani
WSJ APRIL 7, 2011
A Businessman's Guide to China's Collapse
By JOSEPH STERNBERG
FT April 7 2011
China and the US: Access denied
By Kathrin Hille, Stephanie Kirchgaessner and Paul Taylor
中国のバブル、政治不安、中国からの直接投資に対するアメリカの警戒感。
l 中東の秩序崩壊
FT April 4 2011
It’s 1989, but we are the Russians
By Gideon Rachman
「アラブの春」は、西側にとって、典型的な良いニュースと悪いニュースの両側面を持つ事件だ。それは1989年の民主化であり、同時に、ソ連崩壊である。
英仏のリビア介入もそうだ。歴史の正しい側に立つことは良いが、無秩序とアルカイダの拡大に至る危険もある。
サウジアラビアやイランの政治変化も予想がつかない。
FT April 5 2011
The Arab spring risks economic malaise
By John Sfakianakis
April 5 (Bloomberg)
Islam Blamers Ignore Real Mideast Trouble Source
Amity Shlaes
なぜリビアは暴発し、イラクやエジプトは1000年たっても民主的にならないのか? なぜ日本は、地震、津波、原発事故の3重の災難に見舞われても略奪や暴動が起きないのか?
雨のせいだ。エジプトやリビアにはほとんど雨が降らず、日本は何世紀も豊かな降水を得て、その管理法を学んできた。降水量によって、戦争や民主制の違いが説明できる。それは最近のStephen Haber and Victor Menaldoによる研究で示されている。川からの灌漑ではなく、降水量が重要だ。
なぜなら、十分な降水量のある土地では、農民が政治家の支配から逃れられる。空からの雨は、農作物を貯蔵する自立した農民を育てる。その結果、飢餓はまれにしか起きず、より多くの土地や教育に投資する。中産階級が形成され、彼らは法の支配や所有権を尊重するから、社会の安定性を維持した。
熱帯にも降水量は多いが、冷蔵庫の無い時代は腐敗も早く、貯蔵できなかった。植民地政府や富裕な外国企業のような制度的農業だけが、そのような熱帯の土地を耕作して利益を得ることができた。個人は所有者ではなく労働者であり、中産階級は育たず、彼らは体制転換で失うものが少なかった。つまり、支配者による灌漑は民主主義をもたらさない。
イスラム教が独裁の背景ではない。エジプトではイスラム教の前から独裁が支配的だった。
FP Tuesday, April 5, 2011
What Saudi's king has learned from Libya
Posted By Steve LeVine
FT April 6 2011
Beware the void under tyranny
By Robert Kaplan
アイボリーコースト(あるいは、コートジボアール)の内戦は長期に及ぶ独裁者が死んだ後の権力争いである。フランス植民地体制を間接的に継承した支配者の貴族制が、フランス語や軍隊、官僚制によって維持されていた。しかし人口が増大し、今や国民の半分はスラムに住む。
経済社会を複雑に分断した状況では、政策ではなくアイデンティティをめぐる争いが続き、選挙も解決策にならない。選挙によって支配を得るべき人物を国連が認めでも、より根本的な、ホッブス的戦争状態に陥っている。国家は善悪を決める暴力を独占しておらず、停戦合意も兵士に命令できなければ意味がない。
中央権力の崩壊が中東に広がっている。問題は民主化ではなく、アナーキーの回避だ。脱植民地の初期段階でしかなく、人工的な国境によってできた国家に社会制度や忠誠心は確立されていない。部族や宗派の社会的結束は弱く、国家を形成するには不十分だ。世界はまだ脱植民地過程のアナーキーを抜け出せない。
さまざまな社会集団に発言を許す民主主義こそ、国家のエートス、権力を確立するために必要だ、と西側は考える。しかし、それには何十年もかかるだろう。今は政治体制が何であれ、西アフリカや中東には、職のない若者たちの暴力が充満している。
YaleGlobal , 4 April 2011
In a Borderless World, Innovation Reigns Supreme
Ashok Bardhan
FT April 5 2011
A blueprint for Obama to win a second term
By Roger Altman
WSJ APRIL 7, 2011
South Asia's Looming Arms Race
By BRUCE RIEDEL
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The Economist March 26th 2011
Where will it end?
Barack Obama’s Middle East policy: From Oslo to Benghazi
Japan’s disaster: A crisis of leadership, too
China’s authorities: The faithless masses
Nuclear power: When the steam clears
The global economy: another year of living dangerously
Poland’s government collapse: The next domino
(コメント) 興味を持った記事は、リビアへの軍事介入と、日本の震災、原発事故に関するものでした。The Economistは、世界のビジネス・エリートや政治指導者たちに向けて記事を書いています。その見出しが、北アフリカの独裁者に対する飛行禁止空域の設定や、日本の東北沖で生じた地震や津波であるのは、日ごろの知識でカバーできない問題でしょう。世界経済フォーラムも、ホワイトハウスも、おそらく準備していなかったテーマです。
オバマの新しい戦争をさまざまな疑問で損なうのは偏狭であり、偽善的でもある。しかし、オバマは戦争の目的を明確に示し、その指揮を躊躇すべきではない。そして、占領が長期化することは避けるべきだ。
日本が震災に立ち向かうときも、オバマに対する励ましと同じ政治的な声援を菅首相は受けるだろう。しかし、原発事故はどうか? 日本の原子力産業と政府は癒着し、情報を隠蔽することが多かった。2000キロ離れた中国でも、中国政府の説明が信頼を欠いているせいで、原発からの放射能漏れを恐れるパニックが止まらない。
不透明さを増した世界経済には、投資や雇用を躊躇する企業が増えるでしょう。
興味深かったのは、ポルトガル政府が財政緊縮策を承認されず、政権崩壊したことでEU・IMFによる救済融資を避けられなくなったことです。政府は民主的な選挙によって支持されない債務危機対策を示し、債券市場は政府がそれを承認されないことを予想して購入せず、資金調達できない政府にEU・IMFの救済融資がさらに厳しい緊縮策を強いる。
ギリシャでも、アイルランドでも、ポルトガルでも、民主主義と債券市場に挟まれた政府とは、何なのか?
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IPEの想像力 4/18/11
「ザ・ホワイトハウス2」を観ました。久しぶりです。銃撃事件、人種や同性愛を問題にする極右、ラジオの宗教・政治番組、中間選挙。テンポの速い、アメリカの知性と才気を感じさせる対話に、畏敬の念を覚えます。複雑で強烈な、敵対する者が満ちた社会のバランスと宥和を、政治指導者たちはこうして、常に模索し、闘い取らねばなければならない! もちろん架空の物語ですが。
ドラマでは、彼らが心血を注いだにもかかわらず、選挙の結果、(大統領の)民主党が下院で多数を回復するという目標を達成できません。銃撃され、かろうじて死を免れたが絶対安静を命じられていた仲間のアパート玄関前で、ホワイトハウスのスタッフたちは建物の広い屋外階段に座り込み、瓶のままビールを飲んで敗北を噛みしめます。それでも彼らが乾杯する言葉は、「アメリカに祝福を。」
選挙や債券市場においてだけでなく、軍事力の行使、地震と津波、原子炉の破壊によっても、政府は深刻な打撃を受けることが分かります。
被災者に対する支援は、政治的なルールとして確立されているはずです。なぜなら、それは明らかに他人の所得、他人の貯蓄からの再分配であるから。私たちは同じ政治同盟の内部における再分配をどこまで許容するでしょうか? 被災者への支援という理由が、原発事故の処理や予防策をめぐる特殊な利益や言い訳と、いつまで区別されないままなのか? 震災からの復興も同様であり、ここまで国債を累積してきた政府の姿勢に同様の批判が始まるでしょう。
国際収支の大幅な不均衡を調整する各国の姿勢について、市場も政治制度も、その特性を発揮して破壊を強めることもあれば、調整を容易にもできるでしょう。もしわれわれが正しく認識できるなら。政治統合の点で、ユーロ圏とアメリカ合衆国とがよく比較されます。同様に、被災地や原発事故の避難地域、東京電力の計画停電、東日本と西日本、などで利害が対立するのは時間の問題です。ポルトガルは緊縮案を議会で否決され、アイスランドでは預金返済が再び国民投票で拒まれました。
日曜日の朝、統一地方選挙で投票しました。震災によって延期された選挙区もありますが、奈良県でも選挙への関心は薄れたと思います。ということは、団体や組織の推薦を受けた既存の候補者が有利になったわけです。奈良県知事は、現職の荒井氏と、共産党推薦の北野氏、そして医師会会長の塩見氏です。めぼしい争点はなく、このままでは荒井氏の楽勝が動かないように思います。奈良県が関西広域連合に唯一参加しなかったことで、橋下大阪府知事の支援する塩見氏が立候補し、にわかに争点となりました。県会議員の選挙は、さらに何が争点なのか分からず、せめて若い候補や女性候補に注目しよう、と思いました。
帰り道、歩きながら考えました。候補者の考え方や人柄、これまでの活動を紹介する情報がほしい。たとえば、なぜ政治家になったのか? 何を選挙の争点として重視しているか? 主要な政策課題についての判断は? 選挙までに、いつ、どこで演説や討論会を行うか? 支持母体に対する特別な利害関係が政策をゆがめていないか? その人物の能力や姿勢を示す象徴的な事件は何か? ボランティアが集まり、自分の選挙区を活性化してほしいです。
大塚耕平副大臣が被災者への雇用促進や生活支援について応えていました。また、原発の安全性について、これまでの自民党政権下でどのような議論が行われてきたかを検証したい、と発言しました。核の持ち込みについて密約を公表したように、政権交代による政策決定過程の秘密や利権を明らかにして、政府や政策に対する正統性の基盤を改め、より優れた政策の競争的な提案によって前進してほしいです。
アメリカの第5艦隊が拠点を置くバーレーンで、反政府デモや人権・民主化運動の活動家が弾圧されています。活動家の自宅を覆面の治安警察が襲撃し、床に伏せろ、と命じて、殴打しながら男たちを連行した、とBBCが伝えています。バーレーンに派兵したサウジアラビアとシーア派に影響力のあるイランは非難し合っています。
ドラマ・ホワイトハウス2を観ようと思います。「敵が勝つこともある。民主主義だから。」
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