IPEの果樹園2011

今週のReview

3/7-3/12

 

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IPEの想像力 3/7/11

せっかく来たんだから、リビアがどうなるか、なんて質問してくれないか・・・!?

そんなことを言ったものだから、質問されました。「リビアはどうなるんですか?」 ・・・「む、グ。・・・」 池波正太郎の小説なら、これで終わりです。

しかし、そうはいきません。

リビアを知るために、たとえば、外務省の記述とデータ、アメリカ国務省・CIAを見ます。すると、日本の面積の約4.6倍という国土(しかし、耕作可能な土地は1.03%)に、わずか659万人が住む(その78%は都市化)。所得水準は意外に高く(一人当たりGDPは、タイをはるかに超える、13800ドル)、宗教やエスニックの同質性も高い。失業率は30%だが、インフレ率は3%、為替レートも安定。人口爆発やエイズの蔓延は見られない。そういう意味では、リビアは破綻国家ではないのです。

CIA, The World Factbook https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/

1951年に独立、1969年のカダフィ大佐によるクーデタ。このとき、リビアの政治体制は誕生しました。カダフィの理想主義と独裁は、言うまでもなく、石油・天然ガスの富が基盤となっています(輸出の95%、歳入の80%)。リビアの石油についてインターネットで探すと、IEAthe International Energy Agency)や中東調査会、中東・エネルギー・フォーラム、などが見つかります。

さらに、図書館でリビアの歴史を調べるべきです。ここで紹介したRobert D. Kaplanなら、チュニジアと同様に、リビアについても克明なプロファイリングをするでしょう。世界のどこであれ、その土地がヨーロッパ列強(あるいは、ローマ帝国)に植民地化されたか? どのように利用され、支配されたか? それ以前の歴史も調べます。独立過程や独立後の政治体制を考えます。現在については、IMFUN、世界銀行、などで統計を見るでしょう。

あるいは、NYTBBCFTBusiness Week, The Time, 日本の新聞などでニュース記事を検索し、最近、何が起きたかを知り、The Economistのアラブ特集も探します。

しかし、リビアとは何か? 分かった気がしません。

リビアは、要するに、砂漠なのでは? 人が定住して何かを遺すことなどない、広大な砂の海でしかなかった、と思うのです。それが何物かであるとしたら、都市と都市とを結ぶ交易路や盗賊・海賊の隠れ家、海上輸送の補給地、などでしょうか? 金や奴隷を運びだす経路であったかもしれません。そして、石油や天然ガスの輸出が彼らに富を与えました。植民地主義の終わったヨーロッパは、EUの建設に追われて、資源を購入できれば、リビアに何が起きても軍事的・政治的に関与する意志を持たなかった、というわけです。

1980年代、90年代は、テロ支援国家として英米や国連安保理によって制裁を受けました。しかし、おそらく1991年のソ連崩壊や1998年の北アイルランド和平合意、特に2003年のイラク戦争を見て、カダフィも外交方針を転換したのです。大量破壊兵器の生産・備蓄やテロ支援をやめると宣言し、2006年までに制裁が解除され、特に、イタリアとの間に天然ガスのパイプラインが建設されます。リビアの改革がEUに直接連結・連動し始めた、と政治家たちは期待したはずです。

「市民社会」と「グローバル・ガバナンス」でLSEPh.Dを取った、カダフィ大佐の次男、セイフ・アルイスラム氏は、欧米と協調する国際関係をリビアの新しい理想とした、開明的な権力者になるはずでした。石油・天然ガス開発を加速し、その資金を使って経済を多様化する。国務省・CIAも、市場自由化や民営化の計画が進むことを予想しています。

しかし、「アラブの春」がすべてを変えました。リビアが東西に分裂し、内戦状態へと悪化する中、反政府派への軍事力行使を否定する会見を繰り返しつつ、セイフ氏は体制維持に従います。ロンドンでは、2億円の寄付を受けたLSEの学長が辞任しました。・・・わずか2億円の寄付ぐらい、とセイフ氏は感謝の気持ちで贈ったかもしれません。他方、イギリスの武器産業はリビア政府にいくら武器を売っているのか?

・・・「それで、リビアはどうなるんですか?」 ・・・「分からない」と沈黙するしかありません。この1週間を見ても、いい加減に答えなかったのは正解でしょう。私が指摘したのはたった二つです。石油による富を誰が抑えるか。それは、西側諸国の経済がどうしても得たいものだから、取引に応じるしかないでしょう。また、エジプト革命の行方がどうなるか。エジプトの動向次第で、リビアの次の支配者も将来の方向を決める、と思いました。

フランス革命も、東欧民主化と天安門事件も、まだ歴史的評価が問い直されるように、「アラブの春」は200年経っても議論される事件です。そうなる可能性を思いながら、答を探します。

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リビアの反政府派は支援されるべきか? ・・・アラブ革命と世界 ・・・サウジアラビアは改革できるか? ・・・アメリカの失業 ・・・アジアのインフレ ・・・政府の役割 ・・・移民の包摂・統合化 ・・・ASEANの分解 ・・・ユーロ危機後の政治

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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


l         リビアの反政府派は支援されるべきか?

FT February 24 2011

What Seif Gaddafi taught me about realpolitik

By Bruce Anderson

カダフィの息子、Seif al-Islam Gaddafiは、有能で、自分が後継者であるということに複雑な感情を持つ人物だ、と2年前の会見をふりかえります。数週間前、ダヴォスの世界経済フォーラムにおいても、多くの人が彼と話したがった。彼はリビアの体制を改革する意思を示し、今のリビアに民主主義や人権、法の支配がないことを認めていたからだ。

Seifが権力を継承しても、それを維持することは疑わしい、と見られている。すでにカダフィ体制の一部として重要な役割を果たしているけれど、父親Muammer Gaddafiの強烈な個性に匹敵するものはない。もしSeifが権力を握ったら、いつでも脱出できるように、燃料を満タンにした飛行機を準備しておかなければ命がない、と評価されていた。

Muammer Gaddafi大佐が権力を握っている間は、現実政治の原則として取引するしかない。チャーチルが述べたように、“Square or squash”「了解するか、黙らせるか」である。カダフィを黙らせることができない以上、了解するしかない。そして、リビアとの取引には利益もある。

1980年代、カダフィはイギリスと宣戦布告なしの戦争状態にあった。特にIRAに資金を与え、テロを助け、どこでも混乱を求めた。それはロカビーに墜落したパンナム航空機の爆破テロで頂点に達した。1990年代、次第に緊張関係は緩和し、テロ支援をやめて経済関係が深まった。

イギリスに利益や雇用をもたらし、リビアが世界貿易システムに包摂されることは望ましい。しかし、実際、カダフィ大佐の気分ですべてが変わる国と経済取引を続けることは難しかった。不満と挫折の連続であり、現地の取引相手が投獄されてしまうかもしれなかった。いつか、リビアが、適正な、繁栄する経済に変われば、経済関係を維持することに意味はある。

そのためにはテロ犯人を釈放することも仕方なかったし、大量破壊兵器を放棄すると約束したカダフィを歓待した人々についても責められることはない。もし今、カダフィが大量破壊兵器を手にしていたら何をするろうか。

FT February 24 2011

Time to muzzle Libya’s mad dog

NYT February 24, 2011

Stopping Qaddafi

権力を手放さないために自国民を数百人、数千人も殺害する男を、止めなければならない。

アメリカ人の国外退去がまだであること。フランス、イギリス、イタリアの指導者たちと協力した形で対策を示すこと。

国連安保理が制裁決議を承認するには時間がかかる。そこで欧米諸国はリビアの海外資産を凍結し、国際金融システムから遮断する。また、欧米諸国はリビア政府の職員などにビザを与えず、海外旅行を禁止することもできる。

リビアはヨーロッパなどから武器を買っている。これを禁止することができる。アメリカはリビア軍の無線通信を妨害することができる。アラブ連盟はリビアの参加資格を停止し、国連人権委員会はリビアを追放する。

リビアはフランスとイタリアに石油を輸出している。しかし今や、武器禁輸措置を主張している。

FP FEBRUARY 24, 2011

Act. Now.

BY HUSSEIN IBISH

FT February 25 2011

Libya: No line in the sand

By James Blitz and Lina Saigol

20043月、当時のイギリス首相、トニー・ブレアはトリポリ郊外のテントでカダフィ大佐と「友好の握手」を交わした。イギリスの側でリビアとの関係修復を促した人たちについて、今や、イギリス国民は強い不満を持っているだろう。

FT February 25 2011

A system in shock spins back from greed to fear

By John Plender

SPIEGEL ONLINE 02/25/2011

Crisis in Libya

EU Agrees on Sanctions as Evacuations Gather Pace

WP Friday, February 25, 2011;

It's time to get tough with Libya

By Eugene Robinson

オバマはカダフィに辞任を要求した。カダフィを止めるためにアメリカが実力行使するとしたら、命令に従わない兵士を保護する。NATOによる飛行禁止空域の設定,銀行ネットワークによる取引の禁止、などだ。ラジオ、テレビ、インターネット、などでカダフィ体制の正当性を否定する。

中国やロシアの政府はこうした介入を嫌う。しかし、カダフィは特別だ。

The Guardian, Saturday 26 February 2011

Libya: Limited options

アラブの部隊やベルベル人の兵士たちの先頭に立って、アメリカ海兵隊はキレナイカ(リビア北東部)の街Darnahを攻撃した。街の防壁を艦砲射撃してから、午後早く、戦闘を開始し、4時までに街は陥落した。アメリカ国旗を立て、部隊はトリポリへの進軍を準備した。・・・

これは18044月の記録であり、20113月ではない。それはアメリカ軍が異なる大陸に上陸した最初の攻撃だった。

アメリカと地球海に展開するヨーロッパの軍隊は、150年以上前と同様に、数時間でカダフィの軍隊を敗退させるだろう。しかし、当時でさえ、ことは単純でなかった。支配者たちとの紛争が起き、外交的に収められ、1804年に敵であったHassan Beyトリポリを支配し続けた。北アフリカにおける軍事力の行使は外交によって妨げられ、さまざまな民族の存在が問題を複雑にし、地元支配者の捕虜となった。予想もしない形で逆の結果をもたらした。

国外退去は完了しておらず、飛行禁止空域設定に関する国際合意も容易でない。彼らが自分たちで勝利できるかもしれない。制裁、資産凍結、などはジェチャーである。William Hagueが強調するように、民衆への重火器の使用を牽制するだけで良い。リビアの軍隊は崩壊しつつあり、傭兵たちは命と支払を心配している。

FT February 27 2011

No-fly zone will help stop Gaddafi’s carnage

By Gareth Evansformer Australian foreign minister, president emeritus of the International Crisis Group

国家主権は殺人の免許ではない。すべての国家が住民を犯罪行為から守る責任を免れない。自らそのような犯罪に関わることはもちろん許し難いことだ。もし国家がその責任を果たせないなら、国際社会がそれを供給するべきだ。平和的な手段が不十分なら、国連安保理による集団的な武力の行使が、適時、必要だ。

地上軍の介入より飛行禁止空域の設定は容易に思えるが、実際は、重大な問題を生じる。撃墜され、飛行士が捕虜になることもある。国連は彼らを保護する責任がある。

2005年、国連総会で承認されたこの原則に、リビアの事態ほど当てはまるケースは無いだろう。国連における合意形成は難しく、その結果も、ソマリア、ルワンダ、スレブレニツァ、など、失望をもたらすものだった。それゆえ、2005年の原則は権利ではなく責任を、介入ではなく住民の保護を、主張している。軍事的な介入はあくまでも最終手段である。

FT February 28 2011

Better for Libya to liberate itself

By Gideon Rachman

英米がリビアへの軍事介入を検討するとき、Gareth Evans the “responsibility to protect”R2P)に依拠した飛行禁止空域の設定が注目されている。

しかし、カダフィは地上軍を使うだろうし、中国やロシアは反対する。また、英米内にもイラク戦争の失敗が強く影響している。一方では、ルワンダのような虐殺を繰り返せないが、イラクのような失敗も繰り返したくない。今は後者が優勢だ。

中東の反政府デモが強く支持されているのは、それが国内の不満を表現した運動だからだ。独裁者や欧米列強の介入による秩序の転換ではなく、アラブ民衆自身が政治を動かしている。それを損なわないために、軍事介入は止めるべきだ。

FT February 28 2011

Arab revolutions teach lesson in realpolitik

By Philip Stephens

guardian.co.uk, Monday 28 February 2011

Libyan crisis: Britain and allies now risk over-reaction

Simon Tisdall

WP Monday, February 28, 2011

Westerners, be careful the company you keep

By Anne Applebaum

カダフィ大佐の息子、Saif Gaddafiに対するイギリスの歓迎ぶりはすごかった。Saifがロンドン大学LSEで「市民社会」と「グローバル・ガバナンス」に関して博士号を取得した際に、Nat Rothschildが呼びかけてパーティーを開いた。出席者は彼の友人たちだ。すなわちSir Howard DaviesLSEの所長であり、ブレア政権のリビア経済訪問団の一人だった。Lord Peter Mandelsonはブレアの顧問、そして閣僚であったし、欧州委員でもある。Prince Andrewは対外貿易を拡大する役目を帯び、そしてBlair 自身がパーティーに参加していた。

Saifは人気があり、裕福だった。このようなケースは彼に限られず、世界資本主義の首都であるロンドンとはこういうところである。つまり、資金と政治が出会う場所だ。お金があれば、西側の政治家に会うことができる。ただし、最近は西側の民主主義国家が衰退して、非民主的な新興市場が重要になっている。20年前なら、西側の政治指導者が引退後に国外で就職することは無かっただろう。しかし、今ではブレアがクウェートやアラブ首長国連邦などの顧問であるり、ゲルハルト・シュレーダー元ドイツ首相はロシアのガスプロムから給与をもらっている。

独裁者との関係を維持することは必要だ。しかし、西側政府が革命後のアラブ世界から一定の尊敬を得たいと思うなら、独裁者から金をもらっていた政治家たちを雇用してはならない。

The Guardian, Tuesday 1 March 2011

Arab revolutions: The limits of intervention

FT March 1 2011

Sit with dictators but sup with a long spoon

By Jeremy Greenstock

FT March 1 2011

Libyan rebels call for US bomb attacks

By Andrew England in Benghazi, Heba Saleh in Cairo, Tobias Buck on the Libya-Tunisia border and agencies

SPIEGEL ONLINE 03/01/2011

Author Hisham Matar on the Revolution in Libya

'Libyans Are Rediscovering What It Means to Be a People'

FT March 2 2011

Lying low no longer an option for Beijing

By David Pilling

中国は、その成長に伴う資源需要を満たすために世界中の開発を担うだけでなく、温暖化ガスの排出でも、軍備強化でも、国際的に重要な地位を占めています。同時に、世界中の開発や建設作業に中国人労働者を派遣し、リビアの石油、小売り、電信電話、建設部門には35000人の労働者がいます。

今回のリビア危機で、リビアの中国人労働者32000人を国外退去させるため、米英に並ぶ大規模な救出作戦を展開しています。そのため北京から5500マイル離れたリビア沖に、4000トンのミサイル・フリゲート艦を派遣しました。

中国は他国の政治に介入することを否定する外交姿勢を表明しています。しかし、世界でさまざまな開発や建設に関わる中国人を守るために、外国の政治条件についても一定の方針を示す必要を感じるはずです。2007年にはナイジェリアで労働者16人が誘拐され、9人が殺害されました。2005年のインド洋の津波災害では、アメリカに比べて、中国の救援活動が少ないと各国に批判されました。フランス人ジャーナリストSerge Michel and Michel Beuretは、中国人労働者の数を、ナイジェリアに5万人、スーダンに2万〜5万人、ザンビアに4万人、アンゴラに3万人、アルジェリアに2万人と推定しています。

中国は、リビアのカダフィ大佐を国際刑事裁判所(ICC)に訴える決議に賛成しました。アメリカと同様に、中国はICCを認めていません。中国政府自体が天安門事件でICCに訴えられる懸念があります。この支持投票は、国際社会における中国の姿勢が変化する兆候です。この問題では、国際的な発言を抑制し、関心を避けることが中国外交の原則でしたが、それも終わるでしょう。

FT March 2 2011

Even a weakened Libya can avoid civil war

By Ibrahim Sharqieh

LAT March 2, 2011

No to a no-fly zone in Libya

guardian.co.uk, Wednesday 2 March 2011

Intervention in Libya would poison the Arab revolution

Seumas Milne

WP Wednesday, March 2, 2011

A no-fly zone over Libya deserves more consideration

カダフィは退陣するべきだ。リビアが内戦の長期化から無政府状態になって、アルカイダの基地になることを許さない。そのためには、飛行禁止空域を設けることも検討する。

NYT March 2, 2011

Here’s What We Can Do to Tackle Libya

By NICHOLAS D. KRISTOF

カダフィの体制は必ず崩壊する。それは時間の問題だ、と明確なメッセージを送ること。そうすれば、命令に背くことができず、嫌々ながら国民に銃を向けている兵士たちが軍を離れるだろう。

LAT March 3, 2011

A no-fly zone in Libya is a war cry

Doyle McManus

たとえ飛行禁止空域を設けるだけでも、それは戦争行為であり、拡大することを止められないかもしれない。アメリカはすでに、イラクとアフガニスタンで戦争状態にある。

イラクやボスニア・ヘルツェゴヴィナ、コソボにおける飛行禁止空域の設定も、決して単純な行為ではなかった。それは大規模な戦争の一部であった。

オバマ大統領はノーベル平和賞の受賞に際して慎重に発言しました。


l         アラブ革命と世界

guardian.co.uk, Thursday 24 February 2011

Arabs are democracy's new pioneers

Michael Hardt and Antonio Negri

自由と民主主義を求める民衆の蜂起が、ラテンアメリカでそうであったように、アラブ世界においても新しい時代を拓くのか? それは独裁を終わらせるだけでなく、失業を解決するように求める、教育を受けた若者たちの要求だ。

guardian.co.uk, Friday 25 February 2011

The west owes it to Libyans to protect them from another massacre

Omar Ashour

FP FEBRUARY 25, 2011

Crude Questions

BY STEVE LEVINE

NYT February 26, 2011

How the Arabs Turned Shame Into Liberty

By FOUAD AJAMI

LAT February 27, 2011

Winds of change in the Middle East

By Kenneth M. Pollack

「おそらく911に対するブッシュ政権の取った最悪の政策は、テロをアメリカの主要な目標にしたことだ。テロは、この機能不全と絶望の症状でしかない。」 各国の内的対立が暴動を引き起こしている。エジプト革命は、まさに地域の構造を変える激震であった。しかし、その革命の性格はまだ定まっていない。経済自由化、教育改革、民主主義、法の支配、市民の自由、を支持する勢力と、それに反対する勢力が闘い続けるだろう。それは中東全体の未来に影響する。

「数世紀にわたって、ヨーロッパは極端に不安定な場所、戦争、革命、虐殺、抑圧、その他の社会的な疫病によって荒廃した土地だった。ヨーロッパが違うものになったのは、20世紀を通じてアメリカの大幅な支援と指導を受けたからだ。今日、ヨーロッパは世界でもっとも平和で繁栄した大陸だ。」 50年前のアジア、30年前のラテンアメリカがそうであったように、中東イスラム圏でアメリカは同じ支援を与える。

The Observer, Sunday 27 February 2011

Look at how Africa is changing

Adekeye Adebajo

FT February 28 2011

Don’t expect autocratic oil to flow smoothly

By Nick Butler

アメリカの軍事介入に対する不安が石油価格の上昇につながっている、と言われる。市場は投機的な価格上昇をもたらし、サウジアラビアが不足分を供給するという発表で安定化する。

しかし、世界石油市場で進むより根本的な条件の変化を見なければならない。それは、ますます権威主義体制や、もっと悪い政治体制の国に石油供給を依存するようになっていることだ。東アジアの新興諸侯で需要が増え、北海やアラスカの油田が産出量を減らしつつあるから、ますますこうした国からの輸入に頼るようになった。20年前、世界の石油生産量の3分の2は国内消費であった。今では半分に過ぎない。毎日、4000万バレル以上が貿易されている。

世界の石油供給はますます不安定な、非民主的な産油諸国に偏りつつある。今も生産量を増やす能力がある国で、民主主義が持続している国はカナダとブラジルしかない。サウジアラビア、湾岸諸国、ロシアに続いて、ヴェネズエラ、ナイジェリア、アンゴラ、イラン、イラクなど、石油消費国が不安を感じる国ばかりだ。こうした国に生産が集中し、貿易に依存すれば、石油価格は不安定化し、上昇する危険が高まる。

消費国としては、備蓄を増やすこと、供給国を多様化し、再生可能エネルギーへの補助や原子力発電を増やすこと、が求められる。

FT February 28 2011

Why China fears the Arab spring

YaleGlobal , 28 February 2011

Europe Confronts Mediterranean Mayhem – Part I

Jean-Pierre Lehmann

裕福な、高齢化するヨーロッパと、貧しい、多くの若者からなるイスラム圏とが、地中海を挟んで向かい合っています。安定性を重視して改革を無視してきたアラブ世界の王制や独裁者を、ヨーロッパは容認してきた。しかし、安定は停滞に変わり、若者たちは騒乱を起こし始めた。移民、エネルギー、安全保障に関して、ヨーロッパはアラブ地域を無視できない。

アラブ世界の挑戦に対して、ヨーロッパのルネサンスが必要だ。

l         トルコのEU加盟手続きを早める。

l         中東・北アフリカにおける希望として、ヨーロッパのソフト・パワーを回復する。

l         中東・北アフリカからの輸出に対してEUの境界を解放し、特に農産物と労働力を受け入れる。移民法を改正する。

l         ヨーロッパ・中東・北アフリカから構成する賢人会議を開き、21世紀における開かれた、頑健で、ダイナミックな枠組みを構想する。

l         若い世代を含めて、市民社会やビジネスの草の根の企画を進める。

l         国連安保理決議242を守るなら、イスラエルもこの新しい地中海空間に招かれる。

l         核開発を放棄する条件で、イランも招待する。

1970年代、80年代、ヨーロッパはファシスト国家・コミュニスト国家の終焉をもたらした。かつて14世紀〜17世紀にアラブ世界がヨーロッパ・ルネサンスを促したことが、21世紀に逆方向で再現される。

WP Monday, February 28, 2011

Can the Arab world leave anti-Semitism behind?

By Richard Cohen

WP Monday, February 28, 2011

The Arab revolution swells

guardian.co.uk, Tuesday 1 March 2011

Winners and losers in the Middle East chess game

Simon Tisdall

この革命の波及がもたらす世界では、誰が勝者で、誰が敗者か?

反政府派に武器を渡すという、イギリスのキャメロン首相。リビアでは騒乱が起きているけれど、決して内戦状態ではない。キャメロンの行動は内戦を促すものだ。アメリカでは、オバマが見捨てたからムバラクというアメリカの同盟者を失った、という非難もある。英米は協力してリビアに友好的な政府を樹立するつもりだろうか。

しかし、チュニジアに始まった騒乱はまだ拡大し続けており、西側の軍事介入で望むような結果が得られるとは考えられない。むしろ破滅的で、反対の勢力に加勢することになる。カダフィは、英米が石油を狙って再植民地化を望んでいる、と宣伝しているからだ。反政府運動は西側の陰謀にされるだろう。

たとえ革命が成功しても、それは親米政権にならない、とCharles KupchanRobert Kaplan予想する。革命後のアラブ諸国が採用する政治システムでは、イスラム勢力とナショナリズムが強くなる。独裁体制の後の体制が民主主義的だと考えるのも間違いだろう。

勝者はイランである、とも断定できない。アメリカの敗北がイランの勝利とはならないからだ。むしろ、より世俗的で穏健な、トルコの影響力が拡大する、と欧米は期待する。それは、一部、トルコ自身の帝国幻想から来るものでもある。

FT March 1 2011

Arab freedom is worth a short shock

By Martin Wolf

不確実さはともなっても、アラブ世界の蜂起が世界に対してもつ意味を考えなければならない。政治も、(金融危機を予測し得なかった)経済学と同様に、アラブの民衆蜂起を全く予測していなかった。

アラブの文化は自由や民主主義を求めない、という主張は間違いだった。しかし、貧しい、制度も欠いた、長期の抑圧に苦しんだ社会で、安定した民主主義を実現するのが非常に難しいことも分かっている。

裕福な産油諸国は不満を解消できる、という主張も否定された。騒乱から地理的・文化的に離れていることは一定の保護になるが、経済成長や政府の能力と同じように、民衆の自由を求める声を否定できるものではない。

続けて、経済的な影響を考察する。すなわち、石油ショックの危険性だ。エジプトは石油輸出国ではないし、経済規模も小さい。しかし、産油諸国に波及するなら、石油価格が上昇する。過去の主要な景気拡大はすべて石油価格の上昇で終わった、とGavyn Daviesは注意した

石油ショックの影響は複雑だ。所得(購買力)の移転、消費抑制と支出増大の差はデフレとなる。国際的な貧富の差、物価の上昇。実質賃金の低下、生産性の変化、過剰生産能力の発生。効果によって発生のスピードが異なり、ショックの持続性が重要な違いをもたらす。政策的な対応によっても結果が異なる。

革命後の政府は、民主化されても、収入のために石油輸出を増やすだろう。輸入国は、1970年代に借入に頼り、80年代の債務危機を招いたが、今、同じことは起きそうにない。豊かな国ではインフレ期待が抑えられており、予防的な金融引き締めは必要ない。むしろ新興市場のインフレが注意を要する。

石油ショックは短期的だ、という前提が変われば、その影響も深刻になる。こうして消費者の視点からは、石油供給の安定性が維持されるよう、アラブ世界の革命は抑えられる方が良い。しかし、それが長期的に政治的な持続性をもたらすか? 最初の問題に戻る。

 MARCH 1, 2011

Liberté! Equalité! Economy!

BY JAMES RICHARD

アラブ革命は疑いなく甚大な政治変化をもたらした。しかし、同様に重要なことは、その経済政策にも変化が起きることだ。アラブ世界に革命を波及させた若者たちは、市場を自由化することで、彼らの求める改革を守ろうとするからだ。

アラブ諸国の経済は国家によって市場や金融を統制してきた。それらは、1989年の東欧と同じように、機能しなくなっており、自由化するだろう。東欧のソ連型経済を解体したときに比べて、市場の制度を失わなかったアラブ世界には優位がある。

NYT March 1, 2011

This Is Just the Start

By THOMAS L. FRIEDMAN

食糧価格や失業など、明らかに重要な原因がある。しかし、それほど明らかでない重要な原因にも注目するべきだ。

1.オバマ効果:大統領に選ばれたオバマは、アフリカ系アメリカ人で、ミドルネームがフセイン。カイロ演説の内容よりも、オバマの若さにアラブの若者たちは感銘を受けた。2.グーグル・アース:アラブ世界における土地の不平等な分配がグーグル・アースで見える。3.イスラエル:Al Jazeeraは、イスラエルの元首相が収賄で有罪判決を受けたことをアラブ世界に広く知らせた。他方、エジプトの土地取引は収賄が当たり前だ。4.北京オリンピック:1950年代、中国はエジプトよりも貧しかった。北京オリンピックを観て、同じように、古代文明の土地であるエジプト人は目が覚めた。5.Salam Fayyad効果:パレスチナ政府も、イデオロギーではなく、能力で評価する。反イスラエルではなく、ゴミを集め、雇用をもたらす。

FT March 2 2011

Why the world needs virtuous autocrats

By Robert Kaplan

アラブ世界に反乱が広がっている中では、すべての専制支配が同じように扱われる。ネオコンは専制国家にも良いものがあり、転覆すべきではない、と主張する。しかし、民衆と独裁者との違いは、独裁者間の違いを無視させる。それでも、慈悲深い独裁者(啓蒙専制君主)、というものがある。

ビジョン(構想)、正当性の認知、社会契約、制度的な複雑さにおいて、それゆえより大きな自由を受け入れる点で、良い独裁者の特徴は識別される。リビアのカダフィは、最近デモが起きたオマーンのカブース・ビン・サイド国王Sultan Qaboos bin Sa’idと大きく異なる。エジプトのムバラクは、ヨルダンの精力的なアブドラ国王King Abdullahと比べられない。

オマーンの国王は内陸部にまで道路や学校を建設した。女性の地位を向上させ、環境を保護した。彼は東の独裁者たち、すなわち、中国のケ小平やシンガポールのリー・クァン・ユー、そして問題含みであるがマレーシアのマハティールに似たビジョンを持って統治している。彼らはその社会を貧困から引き上げ、中流階級の野心を鼓舞してダイナミズムを生み出した。ヨルダンやクウェート、アラブ首長国連邦と同じく、オマーン国王(スルタン)の正当性は伝統に基づく忠誠であり、北アフリカの警察国家を支配する、伝統もビジョンもない安全保障の責任者ではない。

その正当性は、従者ではなく市民としての社会契約に依拠している。その主要な目標は経済的・社会的な進歩である。中国の指導者たちは成長率を7%以上に維持することが社会不安を回避するために必要と認めている。それでも、社会進歩によって社会契約は弱まり、市民、特に若者たちは経済的自由に見合った政治的自由を要求する。

この点で、中国やオマーンの反攻的な若者は、北アフリカの専制国家の若者と異なる。彼らは支配者により多くのことを要求し、それを支配者が十分に満たせないと反乱をおこす。チュニジアやエジプトでは、より悪化する状況を受け入れるように求められた若者たちが反乱を起こした。

リビアは、もちろん、類まれな誇大妄想と社会破壊を示している。慈悲深い独裁者が築くような社会制度は全くない。湾岸諸国や、チュニジア、エジプトでも非効率だが、閣僚が機能していた。リビアにはほとんどいない。独裁者の仕事は、社会を階層的な複雑さに向かわせ、さまざまな経済階級や市民がそれを登れるようにすることだ。発展と個人の自由がそれをもたらす。

しかし慈悲深い独裁者の成功は、彼が独裁者であることを拒むことも、その崩壊を示唆する。政治的自由は社会の複雑さをともなう。独裁者がその優れた統治の最後に悲劇を免れるとしたら、それは住民たちが混乱を生じることなく彼の支配を終わらせることだ。独裁者は死ぬまでに評価されないだろうが、インドネシアでは独裁者スハルトによる長期支配がその後の民主主義の時代をもたらしたと認められつつある。その支配は腐敗したものだったが、住民に利益をもたらした。

オマーン国王は理解しなければならない。彼がもたらした社会の複雑さ、その統治の優秀さこそが民主化の力となったのだ。彼が民主化運動を受け入れて宥和すれば、アラブ世界のリー・クァン・ユーになれるだろう。リーはシンガポールをアフリカの水準から第一世界に引き上げた。民主的な蜂起はその考えを無視させるが、歓喜が過ぎれば、独裁者を倒すことは選挙する以上のことだとわかるだろう。

FT March 3 2011

Openness can help lift the curse of resources

By George Soros

民主主義が機能するためには、「資源の呪い」“resource curse”を克服しなければならない。2002年にソロスが設立したthe Publish What You Pay coalitionは石油・天然ガス・資源採取産業の支払が学校や病院の建設に使われるように求める市民組織を支援した。透明性を高める自発的な組織、the Extractive Industries Transparency Initiativeも成功している。


l         サウジアラビアは改革できるか?

NYT February 24, 2011

A Saudi Prince’s Plea for Reform

By ALWALEED BIN TALAL BIN ABDULAZIZ AL-SAUD

Alwaleed bin Talal bin Abdulaziz Al-Saud, a grandson of the founding king of modern Saudi Arabia, is the chairman of the Kingdom Holding Company and the Alwaleed bin Talal Foundations.

支配エリート層から改革を呼びかける提案です。大変、率直に、「無意味、非効率、少数者の利益に従う」社会・政治システムの限界、政策の失敗を認めています。当然、その責任を誰かに問うわけではありませんが。

改革が効果的であるためには、それが社会の異なる構成員たちによる、意味のある交流と対話、特に支配する側とされる側の対話から生まれたものでなければならない。それはまた、技術進歩によって世界中の若者とますますつながりを持つようになった、若者たちを包摂していなければならない。」

「排除はもはや機能しない。

社会・政治システムの改革は混乱や苦痛をもたらし、予測できないものだ。しかし、アラブ世界には石油とそれを超える富がある。それは優れた人材だ。彼らが活気あふれた社会・経済秩序をもたらして、低開発、停滞、貧困から抜け出すだろう。そのためには、改革の真剣な揺らぐことのない意志を持ち続けねばならない。

The Guardian, Friday 25 February 2011

Saudi Arabia: The need to change

石油価格は高く、国民を宥和する資金が十分にある。公務員の給与を引き上げ、学生や失業者にも融資を与え、住宅を与える。しかし、ムバラクも同様の約束をして、無駄に終わった。バーレーンの王室が崩壊するなら、サウドも危ない。

「サウド家の国家は、その初めから金(富)の問題であった。」

富を与えるだけでは鎮静化できないだろう。支配権力をシェアするしかない。

WP Friday, February 25, 2011

Amid the Mideast protests, where is Saudi Arabia?

By Jackson Diehl

WP Friday, February 25, 2011

Could the next Mideast uprising happen in Saudi Arabia?

By Rachel Bronson

FT February 27 2011

Citizens not serfs can save Saudi Arabia

By David Gardner

サウジアラビアは革命を乗り越えて生き続けてきた。ナセルの汎アラブ主義、ホメイニのイラン革命、湾岸戦争でも生き残った。今度はどうか。

潤沢な資金による国民の宥和。ワッハーブ家による宗教的な正当性。86歳のアブドラ国王による改革推進と王族内の反対派。経済は停滞し、高等教育を受けた若者は海外に逃れ、前時代の社会統制を打破する政治力はない。

立憲君主制において法の支配を確立する。サウド家が国民を奴隷ではなく市民として扱い、ワッハーブの旧支配勢力と対抗する。こうしてサウジアラビアがイスラムの遺産と和解し、近代的な王国の基礎を固めたとき、国内だけでなく地域と世界の安定が得られる。

guardian.co.uk, Sunday 27 February 2011

Why a king's ransom is not enough for Saudi Arabia's protesters

Mai Yamani

FP FEBRUARY 28, 2011

Yes, It Could Happen Here

BY MADAWI AL-RASHEED

SPIEGEL ONLINE 03/01/2011

Saudi Arabia's Billion Dollar Question

Can Oil Money Buy Political Stability?

By Bernhard Zand


WP Thursday, February 24, 2011

How not to promote democracy in Egypt

By Thomas Carothers

guardian.co.uk, Sunday 27 February 2011

Tunisians know Ben Ali was not democracy's only block

Jonathan Steele

FP FEBRUARY 28, 2011

Roil, Jordan?

BY DOMINIC DUDLEY

FP MARCH 1, 2011

Missing Before Action

BY RENEE XIA

FP MARCH 1, 2011

Wake Up and Smell the Jasmine

BY NICHOLAS BEQUELINHuman Rights Watch

中国への「ジャスミン革命」の波及が大都市で見られた。政府は、先行して、反体制派への弾圧を強めている。


l         アメリカの失業

FT February 24 2011

How we can get America working again

By Mort Zuckerman

すでに景気後退は終わったと言われてからも、アメリカは雇用不況を続けている。過去の4つの不況に比べて、より多くの雇用が失われている。880万人の雇用が失われて、2010年に回復したのは90万人だ。しかも、その多くは一時雇用である。フルタイム雇用や長期雇用は減り、平均賃金も下がっており、それは景気回復を脅かす。

企業の利潤回復と失業は矛盾しているように見えるが、二つは結び付いている。企業の収益改善はコスト削減、特に労働コストの削減によって実現しているからだ。生産性上昇や海外拠点への生産移転は、雇用を増やさない形で利潤をもたらす。1月の失業率低下は、50万人が求職活動をあきらめただけである。840万人の非自発的なパートタイム労働者や主婦など、約2500万人のアメリカ人が失業や低雇用状態にある。

高失業が慢性化する危険がある。短期的な解決策はなく、超党派でアメリカのインフラに投資することが重要だ。それは多くの雇用をもたらし、利用者から料金を徴収して、管理を民間が行えば政府債務を増やさない。

アメリカは、数100万人の男女が示す働く意欲と能力を無駄にしている。

(chinadaily.com.cn) 2011-02-28

Quantitative easing and America's economic rebound

By Martin Feldstein

FT February 28 2011

Don’t wait for the bubble to burst

By Peter Peterson

アメリカなど、先進諸国の債務依存はどのような危機をもたらすか。次の危機が起きた場合、債務を増やす力もない。


FT February 24 2011

Why we should choose the alternative vote

By Martin Wolf

選挙制度に完璧な答えは無い。しかし、Martin Wolfは次の4つの条件で、現行制度を変更することを支持します。1.有権者の意向が反映される。2.各選挙区の意向で代表が決まる。3.失敗した政府を有権者が倒せる。4.安定した政権が実現できる。


l         アジアのインフレ

WSJ FEBRUARY 24, 2011

Overstimulated India

By JAHANGIR AZIZ

FT March 1 2011

Only higher taxes can curb Asian inflation

By Frederic Neumann

明快な、すぐれた論説です。アジアのインフレに対して、金融引締め政策(資本が流入する)や物価統制(農産物が増産されず、資源の浪費が止まらない)は役に立ちません。財政政策による引き締めが必要です。

三つの方法があります。1.所得税の増税:富裕層が負担します。貧困層はインフレによるコストを多く負担しています。また、富裕層の不動産投機を冷ますことにもなります。2.付加価値税の導入・引き上げ:それは一時的に価格を引き上げるけれど、取引の抑制になり、タックス・ベースの拡大にも役立つ。3.法人税の引き上げ:好況における過剰投資を抑える。さらに、好景気の財政黒字は危機によって赤字に転換することが分かっている。金融破たん処理のためにも財政余剰を出して、過度の景気変動を抑制する方が良い。

March 1 (Bloomberg)

Inflation Above 9% Shows Bankers No Longer Gods

William Pesek

WSJ MARCH 2, 2011

India's Cautious Welcome to Foreign Banks

By T.T. RAM MOHAN

WSJ MARCH 2, 2011

India's Lingering Leviathan

シン首相は、1991年の改革をさらに進めて、貧しい地方にまで及ぶように、土地や農業、流通業界への直接投資まで、規制緩和をするべきだ。


l         政府の役割

guardian.co.uk, Friday 25 February 2011

For growth, we need smart government

Will Straw

消費も、投資も、輸出も減少しているなかで、政府支出が景気を支えている。しかし、イギリス政府は財政緊縮を目指している。また、移民に対する制限的な政策も、産業界が批判している。

成長を助ける「スマートな政府」の役割を理解しなければならない。自由市場は、雇用も、資源配分も、技術革新も最適化しない。理論家や政策担当者が書いたGoing for Growthは、戦略的な政府の介入が市場の失敗を克服し、成長をもたらす、と主張している。

金融政策も、物価だけでなく、成長や雇用に配慮するべきだ。

WP Saturday, February 26, 2011

What government is for

財政赤字を放置することはできない。何に優先順位を置くべきか? 1.防衛、そして、外交や援助も。2.国民のセーフティーネット。3.経済成長のためのインフラや研究助成。4.不平等の是正、特に教育の整備。5.食糧や医療サービスの供給。


l         移民の包摂・統合化

SPIEGEL ONLINE 02/25/2011

Debating Integration

Competing Views on Germany's Immigrants

移民論争の中で、二人Necla KelekPatrick Bahnersa Turkish-born sociologist and a German-born journalist)と意見交換しています。

イスラム教はどこまで異質か? 世俗化し、穏健化し、個人の問題として、その社会の法律に従わないのか? イスラム教は異なる社会・政治システムを持ちこみ、同化しない。それを排除・排斥するか、呑みこまれるか、というパニックを広げる。民族主義的な極右の政治運動が支持を伸ばす。

guardian.co.uk, Monday 28 February 2011

Migration is about economics, not politics

Lynsey Hanley

YaleGlobal , 2 March 2011

Europe Confronts Mediterranean Mayhem – Part II

Shada Islam

メルケル首相は、ドイツの多文化主義は失敗だった、と明言しました。キャメロンやサルコジも同様の趣旨を述べています。またリビアの民衆蜂起に対して武力弾圧を選択したカダフィを倒すため、英仏が介入を示唆しています。

「確かにヨーロッパの至るところで、異なる文化の人々が分離して生活し、主流の生活から切り離されている。しかし、移民たちだけを責めるのは正しくない。ヨーロッパの諸政府は多様化を促してこなかったし、差別を禁止してこなかったし、労働市場への包摂を果たせなかった。多文化主義を公式に否定することが過去の失敗を是正する解決策ではない。経済不安が広がる中で、ドイツやフランスの選挙では極右政党への支持が増えている。」

イスラム教徒はヨーロッパ市民になれない、という伝統的な偏見が復活しています。移民、難民、イスラム教徒、中国やインドからの輸入品、外国人投資家など、外部者に対する反発が強まっています。

「ヨーロッパの主要政党は右派のポピュリストたちと妥協してはならない。むしろマイノリティーを政治の前面に出して論争を組織するべきだ。ビジネス・リーダーたちは、高齢化し、熟練の不足に苦しむヨーロッパが、外国人労働者を必要としていることを、もっと積極的に発言するべきだ。」

イスラム圏に広がる革命運動を、多文化のヨーロッパなら新しい関係の始まりとして支持できる。

SPIEGEL ONLINE 03/02/2011

Gentrification's Victims

Berlin Fears Rise of New Slums

By Peter Wensierski

移民の増大にショックを受けるドイツ人たちが、ベルリンなど、都市の急激な変貌(21世紀型スラムの拡大)にも異常を感じているでしょう。その原因は、文化の背後にある経済変化です。


l         ASEANの分解

YaleGlobal , 25 February 2011

Could ASEAN Drift Apart?

Geoff Wade

ASEANが、中国によるメコン川流域(the Greater Mekong SubregionGMS)開発によって分裂し、解体に向かっています。GMSCambodia, Laos, Myanmar and Vietnam as well as Thailand and two Chinese provinces, Yunnan and Guangxiを含みます。過去10年間の投資額は110億ドル。アジア開発銀行から3分の1が出ています。三つの開発回廊(南北、東西、南部)がインフラ整備の目標です。しかし、中国はGMSを重視します。

特に、中国はGMSの中心として雲南省を開発する計画を進め、ASEANとの自由貿易協定(CAFTA)を結んで貿易を増やしただけでなく、インフラ整備や資源開発のための投資(水力発電、石油、天然ガス、鉱山)、経済援助も増やしました。各地の基幹産業に中国企業が進出し、中国語学校が増えています。中国人労働者の、合法、非合法の流入も増加しています。

ASEAN諸国に対して、中国に対抗するアジアの重要国、日本や韓国も援助を増やしています。南シナ海で領土紛争が起きた際、ベトナムを支持して、アメリカのクリントン国務長官がアメリカの役割の維持を明言しました。ASEAN諸国が、軍事的な紛争を回避しても、こうした経済的ビヒモスの間で引き裂かれる傾向は強まるでしょう。

FT March 1 2011

Shipping: Boarders to control

By Robert Wright

アラビア海、インド洋、ソマリア沖から拡散した海賊の出没に、重要な海上輸送路が麻痺しそうです。2010年に49隻がハイジャックされ、今も750人が捕虜になったままです。NATOEU、アメリカなどの掃討作戦にもかかわらず、海賊は増え続けています。


l         ユーロ危機後の政治

FT February 27 2011

Say no to Germany’s competitiveness pact

By Wolfgang Münchau

ユーロ危機に対してドイツが大きな枠組みで合意した、という理解“grand bargain”は間違っている。ドイツ連銀や議会、実業界、学会が、こぞってユーロ圏の公的な支援メカニズムに反対し始めた。ドイツ社会が全体として、公然と、ユーロ圏に離反しつつある。

FT February 27 2011

Greece’s struggles

WSJ FEBRUARY 28, 2011

Ireland Revolts for Stability

By OLIVER O'CONNOR

FT February 28 2011

Ireland’s winter of discontent

WSJ MARCH 1, 2011

Europe Shouldn't Let Greece Default

By HOLGER SCHMIEDING

ギリシャやアイルランドの債務を部分的に免除する措置は止めた方が良い。それは深刻なモラル・ハザード問題を引き起こし、債券市場を不安にする。ラテンアメリカの1980年代を思い出すべきだ。

March 1 (Bloomberg)

Euro Saviors Flinch at Place in History’s Dustbin

Matthew Lynn

FT March 2 2011

Europe must plan a reform, not a pact

By Guy Verhofstadt, Jacques Delors and Romano Prodi

独仏の提案した「競争録協定a competitiveness pact」を批判し、欧州委員会が新しく「共同体ガバナンス法」(a “Community Act” for economic convergence and governance)を提案した。EU政治における様々な勢力間で綱引きが起きている。

競争録協定が目標としたのは、財政移転による赤字国の債務救済をドイツが回避することだった。フランスはこの機会に「経済政府」として権限を集中したかったと思う。しかし、他の諸国は反発した。ドイツの経済モデルが押し付けられるのを嫌い、さまざまな経済モデルで成功した小国が金融(ユーロ)危機の犠牲になったことを恨む気持ちがある。

どちらにも正し言い分が含まれている以上、その交渉や妥協から優れたガバナンスが生み出せるかもしれない。

SPIEGEL ONLINE 03/02/2011

Interview With US Economist Eichengreen

'Europe's Banks Are in Far Greater Danger Than People Realize'

Barry Eichengreenはインタビューで、特に、銀行の強化を求めています。ユーロ危機を赤字国の緊縮策と融資で抑えているのは、ドイツやフランスの銀行が差圏を保有しているからです。メルケル首相は、ギリシャ救済のためよりも、ドイツの銀行を強化するために、公的資金を利用する方が支持されやすいでしょう。また、競争力協定には、共通通貨によって財政政策で国際不均衡を調整しなければならない以上、共通のルールを受け入れる必要がある、とその原則を認めます。

アメリカの財政赤字は容易に修復されず、国際通貨としてのドルの寿命は尽きています。中国は10年で人民元を自由化・国際化し、ユーロ圏は5年で秩序を回復するから、ドルは厳しい競争に直面します。


NYT February 27, 2011

Limit Pay, Not Unions

By MICHAEL R. BLOOMBERG

WP Monday, February 28, 2011

Is organized labor obsolete?

By Robert J. Samuelson

WSJ FEBRUARY 28, 2011

Unions vs. the Right to Work

By ROBERT BARRO


LAT February 28, 2011

Not a carbon copy of the U.S.

By Edward Glaeser

インドや中国が温暖化ガスの排出を規制されて発展できなくなるのではないか? そんな心配を吹き飛ばす魔法が、グリーンな都市化です。アメリカの大都市をまねることなく、民主的で、文化的な刺激に富む、環境にも優しい都市化を成功させてほしいです。


WP Monday, February 28, 2011

How teacher development could revolutionize our schools

By Bill Gates


WSJ MARCH 2, 2011

Russia Fears China, Not Japan

By MICHAEL AUSLIN


guardian.co.uk, Thursday 3 March 2011

We need an international arms trading treaty

Jeremy Browne and Nick Harvey

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The Economist February 19th 2011

The awakening

Lexington: How Obama handled Egypt

After Mubarak: The autumn of the patriarchs

(コメント) このときはまだエジプトが騒乱の中心です。同じインターネットがもたらす変化でも、アラブ世界では革命が広まり、日本では入学試験のカンニングが騒動を起こしました。

イスラム原理主義が権力を握るという悲観論に対して、記事は若者たちの生活や政治に対する要求を重視します。独裁者・王族の腐敗した政治・経済システムによって生きる人々の無力感を、若い世代は吹き飛ばします。支配体制を拒めなかった大人たちが、デモの若者を誰でも止めて、感謝の言葉をかけていた、と。これは世代間革命なのです。

オバマがエジプトを正しく扱えなかった、というさまざまな厳しい批判を、記事Lexingtonは受け入れません。オバマは歴史の正しい側に立つと訴え、ムバラクに改革を求め、早くからその退陣は避けられない、と考えていました。しかしまた、アメリカ政府が同盟者を切り捨てることは容易でない、と他の同盟者に納得させる必要もあったのです。


The Economist February 19th 2011

Ireland’s troubles: Irish mist

Ireland’s crash: After the race

Thailand’s motorbike taxis: Enter the orange shirts

Central banks: A more complicated game

Economics focus: Learning to like inflation

(コメント) アイルランドの「奇跡」「ケルトの虎」がバブルによって沈没するまで、あまりにも親しいビジネスと政治のコネクションや、選挙における候補者との身近な個人的関係が、この悲劇の背景として指摘されています。ユーロを採用したことでバブルとその後を金融政策や為替レートの無い、厳しい再建過程に縛られることで、アイルランドのEU賛美は終わるでしょう。融資条件や独仏が求める「競争力協定」には批判的です。

しかし、他にも面白い記事として、バンコクのバイクタクシーがタクシンを支持することから、赤でも黄でもない、オレンジ派を唱えている、と伝えています。また、中央銀行の仕事が難しくなった、と特集記事を組んでいます。インフレ目標は仕事のごく一部に過ぎず、マクロ・プルーデンシャルを実現するために制度や規制を理解し、新しい道具が求められます。

中国のインフレは、富の分配を十分受けてこなかった労働者が賃金を引き上げる(そして消費を増やす)過程であり、また輸出品が競争力を失うなら、人民元切り上げと同様に、グローバル・ガバナンスの解消にも役立つ、と歓迎します。中国政府がそれを内外の調整過程として学ぶでしょうか?