今週のReview
2/21-2/26
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IPEの想像力 2/21/11
神戸製鋼とサントリーの試合を観ました。社会人ラグビーです。素晴らしい。体力も、ガッツも。人間が自らを鍛えることで何ができるのか、その集中したプレーを観ながら感嘆し続けていました。
かつて目指す仕事のイメージは、「大きな、安定した会社に入って、出世する」といったものでした。しかし、今は違うでしょう。本当にやる気がある若者にとって、仕事のイメージは、「小さくても元気な会社(組織)で、面白い仕事をする。」 それは自分の能力と経験を豊かにするものだから。
バブル破裂や中国との競争で苦しむ姿を見れば、「大きくて、安定した」会社というのは、逆に、「潰れやすい(あるいは、買収される)」と思うかもしれません。財政赤字を減らすには、巨大な国営企業や官僚組織は民営化されて分離・解体されます。しかも、危機が起きたら一気に。製鉄や自動車の会社が大きいからと言って、将来も安定し、繁栄しているとは思えないでしょう。
こんなラグビー・チームがある会社なら、大きな変化にも革新するガッツを示すのでは・・・?
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週末のニュースで私が驚いたのは、エジプトからアラブ諸国に広がる抗議デモの激しさ、菅内閣と民主党内部の政治対立が末期的な様相を呈したこと、そして、週末のパリで開かれたG20に指導者たちが集まり、食糧価格高騰、投機的資本移動への懸念、国際収支不均衡やユーロ危機、国際通貨制度改革を議論したけれど、それほど関心を集めていないこと、でした。
中東に広がる反政府デモを見ると、各地の支配者が抗議デモによって権力を失うか、あるいは軍・警察が弾圧を強めて権力を維持し、貿易も情報も遮断した要塞国家に向かうか、国際秩序にとって重大な岐路が現れたと感じます。かつて、1989年の東欧民主化と天安門事件もそのような瞬間でした。あるいは、1979年のイラン・イスラム革命や2008年のイラン大統領選挙でも、指導者たちは重大な岐路に立ちました。
インターネット、衛星放送、Facebook、Twitterが革命を可能にした、と言われます。富も権力も、人々が情報を集め、互いにアイデアを共有して組織を改革する能力に依存しているという意味で、それは革命の新しい条件なのです。しかし、1789年のフランス革命や1917年のロシア革命と同じ、圧倒的な権利の蹂躙、社会的差別、富の集中、飽食と貧困、食糧価格の高騰がひとびとに旧秩序の解体を叫ぶ情念を広めたと思います。革命の声に応えるのは、オバマ大統領です。
砂漠の中に現れるドバイの高層ビル群、金融・不動産・ショッピング・ギャンブルで繁栄する都市と、その影の部分に広がる犯罪やイスラム原理主義、女性・人身売買、移民労働者、秘密警察。それらは所得水準の上昇と教育の普及が中産階級を形成してたどりついた「民主化」や「自由」と異なる、グローバリゼーションそれ自体の革命状態を示しているのではないですか?
いつの頃からか、どこにおいても、「グローバル社会の革命」という論争が始まっているように思います。タイのクーデタと反政府デモに似た状況が現れるのか? 中国や北朝鮮にも波及するか? 株式市場の衰退、バブルと破裂の循環にグローバルな対策を合意できるか? バーナンキの量的緩和、新興諸国の肥満、インフレの懸念。パイプラインや鉄道、港湾の建設を加速する中国のグローバルな投資。
・・・この週末、パリでG20が開催されました。
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世界で一番自転車の多い町、オランダのグロニンゲンは、まるで美しい田舎の町です。高層ビルなどないし、小さな個人商店が並び、その間を個性的な(旧い)自転車が走ります。新興諸国の富裕層なら、貧乏人の住む下町だな、と軽蔑するでしょうか。グロニンゲンのように、世界中の人々が自動車を捨てたら、成長よりも民主主義を尊重する都市国家型の連邦が栄えるかもしれません。
「世界ふれあい街歩き」で中国・湖南省の街、鳳凰を観ました。朝もやの中、古城の城壁と川(沱江)の両岸をつなぐ虹橋や跳び岩を渡って、映像は街の様子や暮らしを伝えています。ゆったりと朝の体操を楽しむ人たちもいれば、朝食(餃子、蒸しパン、炒飯)を買って、歩きながら楽しそうに食べる子供たちもいます。細い通りを行きかう人々や、建築のための砂を運ぶ荷車を押し上げる人、傾斜がきつくなるとそれを手伝う人たちが現れます。
南門は無く、修復中なのですが、「どうしたのか?」という問いかけに、文革で壊した、と住民は当然のように答えています。その辺りから城壁も失われていますが、上半身裸のおじさんは、愛想よく「みんなで壊して石は持って帰った」と言うのですから、これも街の生き方でしょう。
グロニンゲンも、鳳凰も、人間が作り出した景観であり、街路や家並みです。その個性の豊かさ、意味の深さに感動を覚えます。人が生きること、その思想や文化の形は無限にあり、街の姿としても、このように具体的にあらわれるのです。
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確かに、再び、日本の政権は末期症状かもしれません。そして、野党は批判を強め、国会は空転し、予算案は否決されるのでしょうか? 選挙をして、自民党が連立政権を組む? 財政再建、年金・保険などを、何年も議論ばかりするのですか?
日本を開国する、という菅首相の決意は本物かもしれない。次第に、人々がそう感じているでしょう。首相自身の政治生命と名誉を賭けているからです。首相や閣僚は、もっと国民に強く訴え続けることです。
最近の国会答弁を聴いて、面白い、と思います。それは政府の姿勢を明確にする、意味のある質疑だからです。政権を倒すことを優先する野党の姿勢は間違いです。NHKは、単に中継するだけでなく、その重要な答弁を編集し、また、政治家たちを招いて追加の論争を求めてください。重要な論点を、繰り返し、双方から意見を求めることです。
・・・石油価格高騰、財政危機の波及、中国の政治不安とナショナリズム、ABCDフィッピー!
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中国から見た世界 ・・・世界最大の証券取引所合併 ・・・エジプト革命の考察 ・・・スタグフレーションの時代 ・・・アラブ世界への革命の波及 ・・・カンボジアとドイツの通貨主権 ・・・ドルと国際通貨制度の将来
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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia
l 中国から見た世界
(chinadaily.com.cn) 2011-02-09
China's shrinking trade surplus
By Fan Gang
アメリカは人民元のレートばかりを問題にするが、為替レートが変化しなくても中国の経常収支黒字は減少している。これはもちろん、世界金融危機や中国国内の刺激策による。
二国間の貿易不均衡を人民元レートのせいにするアメリカ議会は、不均衡の理解が間違っている。中国が次の5カ年計画で国内の個人消費を増やそうとしている。また、地方政府によるインフラ投資や都市化の加速も考慮するべきだ。中国は、ソウルのG20で話し合ったGDP4%以内の目標を達成できるだろう。
他方、不均衡の反対側にあるアメリカ経済はどうなっているのか? アメリカ政府は財政赤字を減らせるのか? 極端な金融緩和によって、しかし、ユーロ危機のせいで大幅なドル安を招かずに、貿易赤字を減らしたことは喜ばしい。
米中どちらから見ても、為替レートの調整は重要でない。
YaleGlobal , 11 February 2011
Can the Internet Tame Governments? – Part II
Borje Ljunggren
インターネット利用者が急速に増大する結果、中国においても政府の検閲は難しくなり、市民の知る権利が重視されるだろう。共産党国家と市民社会の力関係が変化し、それを抑えつければ革命が起きる。
インターネットの利用者は4億人を超え、2億2000のブログ、8億の携帯電話がある。2000以上の新聞が発行され、雑誌やテレビ局も増えている。そのほとんどが商業的な運営だ。たとえ共産党がそれを監視しているとしても、その影響は事態の重要な変更をもたらしつつある。
江西省で起きたZhong 姉妹の事件が有名だ。住宅の破壊に反対した家族が、抵抗して自分たちで火を付けた。姉妹は飛行機で北京政府に抗議しようとしたが、空港で捕まりそうになり、トイレに逃げ込んで個人のブログに助けを求める。姉妹たちの様子は中国全土に映像で流された。
中国全土にある小さなブログから、政府の汚職や不正義に対する抗議の声が、1日でも、数百万人に届く。
FT February 12 2011
The message for China from Tahrir Square
By Minxin Pei
1989年、民衆の抗議によって権力を失う寸前であった共産党政府は、ムバラク政権の崩壊に深刻な恐怖を感じているはずだ。確かに、エジプトと違って、中国は生活水準が上昇し、グローバルな頂点への競争に勝利しつつある。しかし、より深く見れば、抑圧、腐敗・汚職、無責任、政治基盤の喪失、急激に悪化する不平等を抱えている。エジプト市民が街頭に集まった不満と同じものが中国にもある。
エジプトの危機が中国政府に示す教訓とは、専制政治の正当性は、状況が変化すると、一気に失われる、ということだ。もしケ小平の経済改革がなければ、共産党の支配は終わっていただろう。しかし、政治改革はまだこれからである。
(China Daily) 2011-02-12
Restore stability in Egypt
WP Sunday, February 13, 2011
How America is doing compared to the rest of the world
By William Antholis and Martin Indyk
アラブ世界だけでなく、ソ連、中国など、アメリカは専制体制と協力するべきか、競争するべきか? ある独裁者を支援する一方で、他の独裁者を辞任させるのか?
中国の胡錦濤国家主席が訪米した際にも、民主主義のアメリカと権威主義体制の中国とが世界経済と世界政治を決める、と議論された。しかし、現実はそれほど単純ではない。
アメリカの経済規模は14兆ドル(一人当たりGDPでは4万1000ドル)は世界最大だ。アメリカに並ぶのは、無視されがちだが、27カ国が加盟するEUであり、アメリカよりも2兆ドル多い。中国は経済改革に飛躍的な成果を上げたが、一人当たり所得は6000ドルでしかなく、まだメキシコやトルコの半分、アメリカの7分の1だ。他の新興経済も急速に成長している。
それゆえ、新興諸国と民主主義諸国とが世界経済と政治を決めるだろう。エジプトのような専制体制が改革を怠れば、ますます取り残される。また、各国は貿易均衡、環境への配慮、成長を軍備強化に向けない、といったことを求められる。
アメリカの課題は、権威主義国の追い上げに対抗することではなく、アメリカ自身が成長を維持して、新興諸国の成長と民主化を促すことである。そして新興の世界秩序が対立を回避し、自由を尊重するよう助けることだ。
WSJ FEBRUARY 13, 2011
China's Trade-off
By RAZEEN SALLY
FT February 14 2011
The race for El Dorado is on again
パナマ運河に代わる太平洋と大西洋とを結ぶ鉄道を、中国がコロンビアと合意して建設しようとしています。それが実現すれば、中国はより多くの資源を輸入できます。軽工業や低賃金労働者には、中国製品との競争が激化します。
しかし、それ以上に、ラテンアメリカ諸国が市場統合し、大西洋側と太平洋側で、食糧・エネルギーから通信・金融まで、民間企業が成長するでしょう。ヴェネズエラのアジア向け石油輸出、成長の波及、コロンビアの治安問題、なども解決されて、ラテンアメリカがようやく理想郷になるのです。
guardian.co.uk, Monday 14 February 2011
China looks for inner richness
Linda Yueh
Feb. 14 (Bloomberg)
Roubini’s Next Crisis Is Scary Food for Thought
William Pesek
食糧価格の上昇は次のグローバルな政治経済危機を準備するかもしれない。
日本では、あれほど議論してもデフレを退治できなかったのに、今度はインフレを心配している。中央銀行の通貨供給にできなくても、小麦やトウモロコシ、コーヒーの価格にはできる。しかも、その社会的な意味は全く異なる。1日2ドル以下で生活する貧しい国民が多くいるアジアでは、食糧価格が上昇することで騒乱が起きる心配もある。各地の政府は補助金を増やし、債務が増える。
インドネシア、フィリピン、インドにおいて、食糧の備蓄が減り、需要は増加し、世界的な低金利で資金が豊富にある。インフレに向かう危険な状態だ。他方で、中国をはじめ、アジアの中産階級は消費が西洋化して、ますます肥満の度合いを高めている。アジアの生活水準上昇は温暖化にもつながっている。
食糧価格の上昇がもたらすインフレに直面した中央銀行は、日本でも中国でも、アジア中で問題を抱えている。アジアの成長見通しも狂ってくるだろう。
FP FEBRUARY 15, 2011
How Russia and China See the Egyptian Revolution
BY FIONA HILL
エジプトにおける大衆デモとムバラク政権の扱い方は、オバマがロシアや中国との関係を維持する視点から影響を受けるだろう。
FT February 15 2011
Rising Chinese wages pose relocation risk
By Kevin Brown
(China Daily) 2011-02-16
Financial regulation essential
By Liu Chunhang
FT February 16 2011
Why the Chinese are not inspired by Egypt
By David Pilling
地球の反対側で、中国のアーティストは書き込んだ。「今日、私たちすべてがエジプト人だ。」「30年間権力を掌握してきたエジプトの軍事体制が崩壊するのにわずか18日しかかからなかった。」そして、冗談を書いている。中国共産党はその2倍も長く権力を握ってきたから、もう少しだけ長くかかるだろうな、と。
何万人もの民衆が集まるカイロのタハリール広場は、もう一つの広場の記憶をよみがえらせる。1989年の天安門広場だ。成長さえすれば、人々は他の要求をあきらめる、という見方は単純すぎる。社会はすべてを包括した全体である。最底辺の労働者から特権階級の専門家まで、さまざまな財を求め、経済成長、透明性、指導者たちの説明責任、そして、誰が社会を支配するかについての発言、を求めている。
中国のメディアはエジプトの騒乱を全く無視しているのではない。しかし、中国の民衆は、たとえ辺境の農夫でさえ、自国の将来や生活の改善を極めて楽観している。エジプトの画面から感じるのは「何という混乱だ」という憤慨だろう。中国人にとって関心があるのは、公共秩序、雇用機会、生活改善だ。ここには繁栄と政治的無関心がある。中国にも年間、8万件から9万件の争議がある。しかしその関心は民主主義ではなく、土地の権利、汚職、誤判、賃金、環境汚染、である。
北京大学のPan Wei教授は、エジプト革命を恐れているのは北京よりもワシントンだろう、と主張する。西側は民主化の勝利を本能的に祝うが、本当は、ワシントンが忠実な独裁者を失ったのだ。アフガニスタンやイラクで戦場から抜け出せなくなったアメリカ政府こそ、中東の不確実さが広がるのを最も恐れている。・・・北京は、別にそれでも構わないのだ。
l 世界最大の証券取引所合併
SPIEGEL ONLINE 02/10/2011
Celebrity Wedding
Deutsche Börse Eyes Takeover of New York Stock Exchange
By Marc Pitzke in New York
FT February 13 2011
The challenge of great exchanges
ドイツ証券取引所とニューヨーク証券取引所が合併を検討しています(16日、合意を発表)。それは投資家や企業よりも、政策担当者に問題を生じるでしょう。
かつて、すべての都市に取引所がありました。今では資本がグローバルに移動し、取引所の合併が増えています。国際的な合併も避けられません。しかし、デリバティブ取引などでは、市場の規模が重要であり、自然独占をもたらします。巨大な取引所や仲介業者が独占を悪用することに注意が必要です。
実際、アメリカは反トラスト法に従い、シカゴ・マーカンタイル取引所が他の市場の合併を禁止しました。市場統合のメリットはある。グローバル・ビヒモスの誕生を騒ぐより、政策担当者がその手段と政治的意志を高めて、権力を濫用させないことが重要だ。
NYT February 13, 2011
Wall Street’s Dead End
By FELIX SALMON
これはアメリカ経済の衰退を示すものか? 否、株式市場はますます重要でなくなりつつある。しかし、それこそが資本主義の原則を脅かす。
株式市場の繁栄はアメリカ経済の繁栄を意味しなくなった。NYSEへの上場企業数も、1997年の7000社をピークに、その後は減少して、今は約4000社で、減少し続けている。ドイツ証券取引所が買いたいのも、デリバティブ市場だ。
アップルやグーグルのような革新的企業はアメリカ経済にとって重要であり、何百億ドルもの価値があるが、その配当や雇用はアメリカ人にとって重要ではない。その株式は投機的に取引されている。株式公開は減り、資本の効率的な配分ではなく、市場は投機の場所となってしまった。他方、Facebookなど、投機の波を嫌う新しい企業や長期の機関投資家は、もっと私的な形で資本を集めている。それは超資産家にとっても煩雑な規制を回避できる。
こうして、多くの個人株主によるアメリカ資本主義と民主主義の本質が失われていく。所得格差の拡大や、企業重役のスキャンダルを経て、市民こそがアメリカの繁栄を支えている、という確信を持てなくなる。
FT February 17 2011
A market to capture
By Jeremy Grant
l エジプト革命の考察
FT February 10 2011
Egypt after the last Pharaoh
LAT February 10, 2011
Egypt's power players
By Daniel Williams
エジプトにおける軍部は、中立的な専門家集団ではなく、支配カーストだ。気まぐれに逮捕し、孤立させて、脅迫する。抗議デモの背後から発砲してきたのは彼らである。アメリカやその他の主要な政治勢力が彼らを次の権力から排除しなければ、民衆による革命は生き残れない。
FP FEBRUARY 10, 2011
10 Reasons Americans Should Care About the Egyptian Revolution
BY STEPHEN M. WALT
なぜエジプトの支配者や政治体制についてアメリカは心配するのか? STEPHEN M. WALTはその理由を示します。
1.20億ドルの援助。2.アメリカ外交の評価。3.地域の安定性。4.テロとの戦い。5.中東の他の同盟国。6.他の問題から政治的関心が薄れる。7.アメリカの価値・道義性。8.新しいメディア。9.中東民主化の(イラクと異なる)教訓。10.オバマの評価。
FP FEBRUARY 10, 2011
Now Comes the Hard Part
BY BRUCE K. RUTHERFORD | FEBRUARY 10, 2011
権力の移行は始まっている。ムバラクは政権を去り、野党を含む暫定内閣を作る。憲法や法律を改正して、大統領選挙や議会選挙を競争的に行えるようにする。そして難内に選挙がおこなわれる。しかし、誰がこれらを取り仕切るのか?
改革を実現する主体は三つを含まねばならない。1.抵抗運動の指導者たち。2.軍部。3.ムスリム同胞団。
しかし、抵抗運動はいつまで民衆を広場に集めることができるだろうか? Suleiman副大統領による暫定政府を信用できないかもしれない。軍部・官僚は、治安維持や安全保障だけでなく、あまりにも多くの企業や不動産、経済的利益を支配している。その一部は民主化を望ましいとも考えていない。そして、自由選挙によるムスリム同胞団の権力掌握を警戒する。ムスリム同胞団は、自分たちがアルカイダのような原理主義者ではないと国民に証明していない。
移行過程が平和的に実現するとは限らない。重要な条件は、治安と雇用である。アメリカ、EUは援助するとともに、国際社会がエジプトからの輸出を受け入れて民間部門の改革と雇用拡大を助けるべきだ。
エジプトの平和的な民主化が成功すれば、中東地域全体にとっての優れた先例となるだろう。
WP Thursday, February 10, 2011
From freedom agenda to freedom doctrine
By Charles Krauthammer
WP Thursday, February 10, 2011
U.S. must take the walk to democracy with Egypt
By Eugene Robinson
FT February 11 2011
Mubarak steers a crisis toward its climax
By Jon Alterman
FT February 11 2011
Egypt after the Nile Revolution
大きな不確実さを示しつつ、ナイル革命は進行している。西側、特にオバマ政権は、ムバラク大統領に安定性を求め、秩序ある民主化を期待したが、ムバラクはこれを拒んだ。政府による破壊行為が組織され、外部からの侵入や陰謀を理由に支配を続けようとしたとき、オバマはまさに立場を明確にした。「本当の民主主義に向けて、信用できる、具体的で、明白な移行過程を示さねばならない。」
西側政府は、民主主義の例外として、イスラム過激派の神権政治に代わる独裁者とファウスト的な契約を選択してきた。若者たちの反乱と民主的な価値を掲げる「新しい自由の時代」を、西側政府がもっと強く支援する必要がある。
NYT February 11, 2011
Postcard From a Free Egypt
By THOMAS L. FRIEDMAN
NYT February 11, 2011
Exit Mubarak
By ROGER COHEN
NYT February 11, 2011
Avoiding a New Pharaoh
By NICHOLAS KRISTOF
WP Friday, February 11, 2011
Essential steps to a democratic Egypt
By Amr Hamzawy
エジプト賢人委員会The Committee of Wise Menの移行に関する提案です。戒厳令の解除、憲法改正、政治的自由の制限撤廃、など、抗議以上のことが必要である、と主張します。さまざまな困難な対話を、この委員会であれば仲介できる、と考えます。若者たちは、国家機構と対決しなければなりません。それは信頼できる、結果をともなう、真剣な対話の場でなければなりません。
委員会は、財界人Naguib Sawiris と, カイロ大学の憲法学教授、サダト大統領のもとで情報大臣を務めた. Ahmed Kamal Aboul Magd が始めました。メンバーには、the League of Arab States 事務局長Amr Moussa; 国際裁判所の元判事で国連代表Nabil Elaraby,; 元エジプト行政長官、前アメリカ大使Nabil Fahmyが入っています。
民主的な政治システムが築かれて初めて、革命の成果は安全になります。
FP FEBRUARY 11, 2011
The Pharaoh Is Dead, Long Live the Pharaoh?
BY BLAKE HOUNSHELL
guardian.co.uk, Saturday 12 February 2011
The tyrant has gone. Now the real struggle begins for Egypt
Pankaj Mishra
WP Saturday, February 12, 2011
Egypt's challenge: Becoming a democracy
NYT February 12, 2011
The Ghost of Revolutions Past
By NIKOLAI GROZNI
ブルガリアの専制政治を終わらせるために街頭で闘った一人の若者として、NIKOLAI GROZNIは激越な共感と励ましの文章をエジプトの若者たちに寄せています。
GROZNIはテレビ画面にくぎ付けになって、若者たちとともに投石し、催涙ガスを吸い、モロトフ・カクテルに点火し、銃弾から逃れ、武装警察官たちと戦い続けた、と書いています。なぜなら、彼もブルガリアで同じことをしていたから。1989年、1990年の冬に東欧とソ連圏で、さらに1991年、1997年に彼らは闘って、漸くブルガリア共産党は権力を手放した。
支配体制によって社会を破壊され、家族も失った人々が、どれほどの苦しみを味わうか、説明してもGROZNIは伝えられなかった、と書いています。抑圧の何であるかは、それを味わったことのない若者にはわからない。エジプトの兄弟、姉妹の勇敢な行動を称賛し、彼らが決してあきらめないことを求めます。たとえムバラクが去っても、変化は非常に遅く、途方もない代償を支払わされるだろう、と。
専制支配を終わらせるのに2年かかり、その後も1年続いた政府は無い。今も権力の構造はほとんど共産党が作ったままで、旧エリートや秘密警察がいる。それでも、子供たちは自由に好きな音楽が聴ける。未来を選択できる。
No matter what happens next in Egypt, it will all have been worth it. After living in oppression for so long, Egyptians have already achieved what matters most: they have regained their dignity.
エジプトにこれから何が起きようとも、それはエジプトのものだ。あまりにも長い間彼らは抑圧されてきたが、彼らは最も重要なものをすでに勝ち得たのだ。それは自分たちの尊厳だ。
NYT February 12, 2011
They Did It
By THOMAS L. FRIEDMAN
FT February 13 2011
How to bend history’s arc for the better
By Martin Indyk
オバマは就任以来、アラブ世界に「民主主義」を求めようとしなかった。より穏健な、漸進的な方法で市民社会を育てようとした。しかし、エジプトでムバラクが民衆により追放されたことは、オバマの姿勢を転換するだろう。もし民衆が独裁者を追放するなら、アメリカは必ず民衆の側に立つ。その明確なメッセージを送るべきだ。
軍隊を中立化し、巨額の軍事援助によって、彼らがアメリカの意見を聴く条件を利用するべきだ。オバマはエジプトの民主主義を安定させるために、抵抗運動の若者たちが政治組織を作れるよう支援し、また、エジプト経済の復興を助けるような国際協力を組織するだろう。
FT February 13 2011
Egypt: Evolution of an uprising
By Andrew England and Michael Peel
NYT February 13, 2011
Postcard From Cairo, Part 2
By THOMAS L. FRIEDMAN
FT February 13 2011
Hopes for renewal risk colliding with reality
By Roula Khalaf in Cairo
LAT February 13, 2011
Mission not yet accomplished
Doyle McManus
NYT February 13, 2011
From 9/11 to 2/11
By ROGER COHEN
9・11の最も効果的な解毒剤は2・11であろう。すなわち、大統領を辞任したムバラクがカイロを離れ、軍に導かれて海岸の町に移動した日である。
アメリカはイスラム教徒の土地に攻め込み、新しい政府を押し付けようとした。テロとの戦いを続け、何十億ドルも費やした。そして、熟し切った下からの変革を助けて、アメリカの支える警察国家を真の民主主義に転換しようとする人々を助けてこなかった。
エジプトに新しい機会がある。アメリカのダブル・スタンダードがイスラム原理主義の勧誘に利用されてきた。しかし、もし西洋化したエジプト人と穏健なムスリム同胞団が民主的政府の下で共存できれば、エジプトの民衆は歴史の錨となるだろう。そして9・11テロ攻撃に加わった若者が再び現れることもなくなる。
エジプトの民衆蜂起が9・11の難問を解く鍵となって、アフガニスタンがオバマの関心を消耗させる前に、民主主義の橋を築くだろう。彼らは過去のエジプトを取り壊し、新しい国を作ろうとしている。「高次の音がうるさくてごめんなさい」と、ヒジャブの女性は誇り高く答えます。
FT February 14 2011
Reflections on the revolution in Egypt
By Gideon Rachman
当然、タイとの比較が重視されるでしょう。エジプト革命を起こしたタハリール広場の民衆は、単純に東欧の民主化をモデルにしていません。
Gideon Rachmanは、Googleの社員であるWael Ghonimがアメリカ・メディアによって革命の英雄にされたことを否定的に観ています。なぜならエジプト革命は、Google、Facebook、Twitterがなくても起きたからです。エジプトの社会は、フランス革命とロシア革命と共通した条件を示しています。腐敗した官僚や秘密警察への怒り、台頭する中産階級の不満、絶望した都市貧困層。
Facebookに影響されるのは一握りの若者だけです。国民の44%は文字が読めず、40%が1日2ドル以下で生活しています。低賃金、食糧価格の高騰、若者の失業こそ、彼らの苦悩です。一人当たり所得が6000ドルを超える国で民主主義は安定し、1500ドル以下の国には民主主義が見られません。エジプトは2800ドルです。
同じような所得水準、軍部の強い、トルコ、パキスタン、タイはエジプト革命後のモデルになるでしょう。これら3カ国では民主主義が何度も軍事クーデタで中断されています。しかし、エジプトではより強く民衆の力が示されたので、軍はシビリアン・コントロールを尊重するかもしれません。また、3カ国が示すように、都市中産階級は民主的な選挙結果をしばしば好みません。
機能する民主的政府と抑制された軍の政治行動、イスラム主義政党の政府と経済的繁栄を実現したトルコが望ましいけれど、所得水準はパキスタンに近いのです。エジプトは二つのモデルの中間になるでしょう。
FT February 14 2011
Europe’s down-payment on democracy
By Catherine Ashton
FT February 14 2011
The road from Tahrir Square to democracy
Mohamed El-Erian
FP FEBRUARY 14, 2011
Think Again: Egypt
BY BLAKE HOUNSHELL
FP FEBRUARY 14, 2011
Winners and Losers of the Revolution
BY STEPHEN M. WALT
FT February 15 2011
Egypt has history on its side
By Martin Wolf
国家は民主主義よりも古い。政府は民衆の利益を実現するとしても、誰が支配するべきか? アテネは例外であった。古代ローマもイタリアの都市国家も民主制を採用したが、ローマの兵士が市民と分離することで帝国を拡大した。イングランドにおいて、直接民主主義から議会制民主主義が確立され、世界に普及する。
1800年〜2009年の政治体制を分類したthe Center for Systemic Peaceの研究によれば、2009年には162カ国中の92カ国となり、半数を超えた。1977年には89カ国であった専制政治は23カ国に減少した。それは1990年代にラテンアメリカとソ連・東欧において民主化が広まったからだ。しかし、中東はその例外であった。
なぜ民主主義は広まったのか? 1900年には、女性を含む普通選挙と代表制の政府を持つ国は、例外でしかなかった。Martin Wolfは、その理由を経済活動・富の変化だ、と考えます。大多数の住民が貧しく、文字を読めない農民であれば、兵士や官僚、神官といった支配カーストが政治を動かします。暴力を独占し、詐欺行為に耽る者たちが、彼らの軽蔑する民衆と権力を分かち合う理由などありません。
しかし経済発展が社会と政治の構造を変えた。教育が普及し、富は個人の創意工夫から生じるようになった。知識が普及し、情報交換はよりダイナミックになった。人々は富とともに「発言」を求め、彼らの意見を無視する支配者から「離脱」できる。政府に責任を求めるのは、文化に関わらず、人類に共通する尊厳を求める本能である。
では、エジプトに安定した民主主義が実現するだろうか? Martin Wolfは、内戦を防ぐための条件を用意すること、イスラム主義の政治組織が民主主義と共存すること、西側の指導者たちが軍事クーデタと専制政治との悪循環と手を切ること、を求めます。それは無思慮なほどナイーブな期待ではないだろう。安定と繁栄を求める民衆に支持される中国共産党は例外である、というのも、永久には続かない。
FT February 15 2011
Cairo needs help to avoid al-Qaeda’s grip
By Ahmed Rashid
FT February 15 2011
Egypt a threat and opportunity to Iran
WP Tuesday, February 15, 2011
Channeling Egypt's energy of the crowd into positive change
By Anne Applebaum
革命の群衆に参加することは、まれにみる興奮する体験だろう。ロックコンサートでも味わえない。インターネット上の孤独な情念と、勝利する群衆を動かした興奮との大きな差を、群集心理が示している。群衆は、寛大にもなれば冷酷にもなる。英雄的でもあれば、憶病でもある。群衆は常に個人の関心を超えている。
ムバラクが辞任しても、タハリール広場に集まった群衆の指導者たちは引き上げない。より多くのことを要求する。軍は解散を命じているが、その衝突は迫っている。革命後の変革はあまりにも遅く、失望は避けられない。歴史上、革命後の数カ月が、革命そのものよりも危険である。フランス革命後の数年間、群衆(モッブ)の騒乱が政治を支配し、その伝統は現代にまで及ぶ。
エジプトが軍事クーデタやモッブ支配を避けるには、兵士たちが広場の民衆を帰宅させるだけでは十分でない。彼らの興奮は、自分たちがより大きな意味のあることに関わっている感覚に由来する。だから指導者たちは、その興奮を制度の革新に向けて、これから数カ月・数年かけてではなく、今すぐに転換することだ。
軍は、政党の結成を奨励し、市民による委員会を作って、近隣の監視と犯罪集団の摘発を助けなければならない。失業した若者たちが自宅に帰って、壁を見詰め、FacebookやAl-Jazeeraにのめり込むことを防ぐべきだ。
ウクライナのオレンジ革命に参加した女性は、革命後に仕事をやめて出版を始めた。彼女は新しいウクライナ政府に失望していたが、「われわれは、政府がわれわれのために何でもしてくれる、と期待してはいけない」と語った。「自分たちでやるべきことを学ぶ必要がある。」 エジプト革命の勝利を祝う民衆が、数年後、そう言うとしたら、そのとき革命は達成される。
WP Tuesday, February 15, 2011
Keep pushing in Egypt
NYT February 15, 2011
Pharaoh Without a Mummy
By THOMAS L. FRIEDMAN
WP Wednesday, February 16, 2011
The future of a democratic Egypt
By Condoleezza Rice
WP Thursday, February 17, 2011
In Egypt, real politics is about to begin
By David Ignatius
エジプト革命の成功の秘密は、それが誰でも参加できたことだ。貧富の差も、信仰や宗派の違いも、社会主義者も資本主義者も参加した。
しかし今、再び、人々の分裂が政治を動かし始めた。共通の目標であるムバラク大統領は辞任した。ユートピアから権力政治への回帰だ。異なった意見を持つ、異なった人々が集団を形成し、ときには暴動も起きるが、多元的な民主主義を構成する。
l スタグフレーションの時代
FT February 10 2011
A strategy for growth that dares to be radical
By Martin Wolf
イギリス政府は成長率を高めるために全力を挙げるべきだ。低成長は、長期的に、生活し準を停滞させ、既存生産力の利用度を下げ、高齢化の圧力を受けて財政再建できなくなる。
成長率は生産要素の供給と生産性上昇をもたらす技術革新による。そのすべてに政府は税制と規制を使って影響を与える。
NYT February 10, 2011
Abraham Lincoln, Inflationist
By PAUL KRUGMAN
The Observer, Sunday 13 February 2011
Don't be blinded by the web. The world is actually stagnating
Will Hutton
Tyler Cowenの著書(Tyler Cowen’s e-book, “The Great Stagnation: How America Ate All the Low-Hanging Fruit of Modern History, Got Sick, and Will (Eventually) Feel Better”)について考察します。
生産性の上昇する産業はアジアに移転され、欧米には雇用をもたらさない新産業しか残らない。そして、アメリカの雇用回復なき景気回復や中産階級の所得減少が起きている。アメリカには安価な土地が消滅し、国民の教育水準が低下している。最近の高成長は金融的なバブルの幻想であった。
しかし、Cowenの悲観論には反論もある。科学技術の進歩は単純に測れない。今後も、エネルギー、食糧生産、健康、輸送、などにおいて大幅な生産性の上昇は可能だろう。インターネットなどの新技術が雇用をもたらさなかった、と断定するのも早すぎる。それがどのような新しい生産活動をもたらすか、多くの変化はこれから生じる。グローバルな金融サービスが超富裕層を増やし、所得格差や教育水準の低下を招いたが、既存技術でもインド、中国、ブラジルの成長は欧米水準まで豊かになれる。
技術革新をもたらすのは、超富裕層が政府を脅して規制緩和を強いてきた前提であったような、単なる「市場の魔法」ではない。労働組合や規制や税金が常に悪いのではなく、革新を促す制度を常に改革できる国家が重要なのだ。
NYT February 13, 2011
Eat the Future
By PAUL KRUGMAN
NYT February 14, 2011
The Experience Economy
By DAVID BROOKS
アメリカ経済の新しいスタグフレーション(Tyler Cowen, “The Great Stagnation,”)を考えます。
1974年頃を境として、アメリカ経済は変わった。それ以前は高い成長が当たり前だった。安価な土地が利用でき、教育水準が大幅に上昇した。電気が普及し、プラスチックが普及し、自動車が普及するに連れて、技術革新が次々に起きた。
しかし、そうした時代は終わって、アメリカ経済は技術の高台にある。
DAVID BROOKSは、人々(価値観)が変わった、と考えます。1900年に生まれて1974年に亡くなったサムと、1978年に生まれたサムの孫、ジャレドという人物として想定します。サムは物質的な生活の改善を目指し、ジャレドは非物質的で知的な満足を追求します。Facebook, YouTube, Wikipedia そして iPhoneが大好きです。こうした世界のほとんどは近代世界の外で、コストをかけず、ボランティアが作っています。
ジャレドの消費は雇用をもたらしません。かつて自動車産業は数百万人の雇用をもたらしましたが、Facebookは2000人、Twitterは300人、e-Bayは1万7000人しか雇用していません。iPodの製造と販売には1万4000人が雇用されますが、その代わりに消滅したCDsの製造・販売などを考慮すれば、純雇用はマイナスです。技術革新は多くの満足をもたらしますが、雇用は増えないのです。
ジャレドは健康や環境に十分配慮し、投資しますが、生産性の上昇には役立ちません。中国など、物質的な成長を加速する諸国があると知っても、ジャレドの生活は変わらないのです。
WSJ FEBRUARY 15, 2011
Want to Boost the Economy? Lower Corporate Tax Rates
By MARTIN FELDSTEIN
FT February 16 2011
Taking a chance can be a better way to save
By Peter Orszag
FT February 10 2011
What Somali pirates reveal about the global economy
By Matthew Lynn
ソマリア沖の海賊はますます栄えています。それはニシン御殿のようなものです。
世界市場に依拠する多国籍企業は生産計画を変えることを嫌い、漁場を中国漁船などに荒らされたソマリアの漁民たちは、今では、スエズ運河を目指すコンテナ船を襲います。IT技術はタンカーの操船や航路を決め、海賊たちも襲うべき船の正確な情報を集めています。海賊組織は適切な報酬を定め、命知らずの若者をいくらでも補充できますし、投資銀行のビジネス・モデルに似た、コストとリスクに見合う利回りを得ています。こうした海賊経済の成功は、ソマリアの住民に成長の刺激を波及させるでしょう。
guardian.co.uk, Saturday 12 February 2011
Stop the global land grab
Gisele Henriques
l アラブ世界への革命の波及
WP Friday, February 11, 2011
In post-Mubarak Egypt, the rebirth of the Arab world
By Hussein Agha and Robert Malley
guardian.co.uk, Saturday 12 February 2011
Yesterday Egypt, today Algeria
Karima Bennoune
FT February 13 2011
Arab rulers confront a new world
By David Gardner
エジプトの蜂起はムバラクから権力を奪っただけでなく、アラブ世界のすべての独裁者から権力を削り取った。
確かに、体制と革命派の間に、軍部はそのまま残されている。しかし、エジプト軍は抵抗運動の「正当な要求」を認めた。それは体制と結び付いた軍部の嫌うことである。それでも、もし抵抗運動に攻撃を命じられたら、軍隊が分裂する恐れもあっただろう。
独裁者たちはインターネットや衛星放送の力を軽視していた。しかし、今や銃声はアラブ世界のすべてにおよび、自由の声が響き渡る。
もはや上からのいい加減な改革で民衆をなだめる支配者は生き残れないだろう。アラブはもはや、イラン、トルコ、イスラエルの影響力によって翻弄される、王族や将軍たちの土地ではなくなった。タハリール広場からのメッセージは全域に伝えられ、支配者たちも理解しただろう。
The Guardian, Monday 14 February 2011
Can Egypt trigger a regional change?
FT February 14 2011
Arab wave unlikely to hit former Soviet states
By Neil Buckley in London
YaleGlobal , 14 February 2011
Eighteen Days That Shook the Middle East – Part I
Dilip Hiro
Feb. 15 (Bloomberg)
Arab Rumblings May Lead to Democracy, Free Markets
David Pauly
エジプト革命は、1989年の東欧民主化と同じように、この地域に民主主義と資本主義を広める優れたモデルになるだろう。その将来の可能性は計り知れない。
宗教的に寛容になり、女性も投票し、OPECは解体されて、アメリカやヨーロッパを敵視することもなく、豊かな市場として、石油以外の民間企業が活発に輸出を増やすだろう。
guardian.co.uk, Tuesday 15 February 2011
A better way to push democracy, but the west's love-bombing has risks too
Jonathan Freedland
The Guardian, Tuesday 15 February 2011
Will revolution spread to Pakistan?
Declan Walsh
FP FEBRUARY 15, 2011
The Ripple Effect
SPIEGEL ONLINE 02/15/2011
Destination Lampedusa
European Leaders Struggle with Wave of Tunisian Migrants
FT February 16 2011
The J-curve hits the Middle East
By Ian Bremmer
Feb. 16 (Bloomberg)
Revolution Germ Will Spread in the Arab World
Joshua Muravchik
LAT February 16, 2011
Tracking the ripple effect
By Ellen Lust
NYT February 16, 2011
Tunisia. Egypt. Bahrain?
By NICHOLAS D. KRISTOF
YaleGlobal , 16 February 2011
Eighteen Days That Shook the Middle East – Part II
Rami G. Khouri
FT February 17 2011
A pact for Euro-Mediterranean stability
By Franco Frattini(イタリア外相)
リビアの騒乱は、すでにシシリーに着いた5000人に及ぶチュニジアからの難民に、新しい難民の波を追加するかもしれない。人身売買、組織犯罪、テロリストが無秩序状態を利用するはずだ。
ヨーロッパの安全は地中海地域の安全と切り離せない。それゆえ、この地域の秩序を安定化する新しい協定が必要だ。その原則は、経済支援、政治的な同盟化、そして、社会の包摂を強めることの3つである。
北アフリカ・地中海諸国に対して、マーシャル・プランを再現し、ヨーロッパ市場を開放する。特に若者の包摂を重視し、高等教育の留学生を受け入れるエラスムス計画も再現する。
FT February 17 2011
Time to speak to a bigger audience
By Philip Stephens
FT February 17 2011
Bahrain gets tough
LAT February 17, 2011
Democracy by Internet
The Guardian, Thursday 17 February 2011
Listen to this message of hope from Europe's Arabs – and the warning
Timothy Garton Ash in Madrid
NYT February 17, 2011
Brutal Crackdown in Moderate Bahrain
By NICHOLAS D. KRISTOF
l カンボジアとドイツの通貨主権
WSJ FEBRUARY 15, 2011
The Cambodian Case for Dollarization
カンボジアのクメール・ルージュは貨幣や所有権を廃止しました。その後、内戦を経て、秩序が回復しますが、カンボジア通貨よりタイ・バーツが流通し、最近の国際援助がドルの流通を増やしました。
カンボジアにおける証券取引所の開設を機会に、公式のドル化をWSJは唱えています。カンボジア経済が成長している背景には、ドルとの価値が安定し、直接投資や観光業が急速に増えてきたことがあります。ドルと人民元が衝突する空間で、カンボジア国民は流通する貨幣の90%、銀行預金の96%をドルで持ち、財布によってドルを選択した、と主張します。
しかし、記事が言うように、香港の繁栄を再現するでしょうか?
FT February 16 2011
ECB leadership and Germany
次期ECB総裁人事に最有力候補であったドイツ連銀総裁Axel Weberが辞任しました。政府債券を大規模に購入に同意できない、という理由です。FTは、複雑な国際機関のトップに立つべき人物ではなかったと書いています。ドイツ人のECB総裁を望んでいた人々は失望するだろうが、ECBはドイツ国民の利益を守ってきたし、むしろ他の候補を冷静にメルケル首相が選択するチャンスだ、と考えます。Axel Weberのように純粋な立場を取らなくても、ドイツの利益を損なうことなくユーロ圏の制度的な欠陥を解決し、ユーロ危機につながる赤字国の債務問題を処理する方法はある、と主張します。
l ドルと国際通貨制度の将来
FT February 15 2011
Why world needs three global currencies
By Fred Bergsten
「途方もない特権」であると非難されてきたドルの地位は、今や「重荷」になっている。
外国から見れば、ドルの役割は対外赤字を無制限に融資できるように見える。アメリカ国内の政治家も、対外的な規律を守らないでもよい、という近視眼的な利益に結び付ける。しかし、そのような規律は建設的な調整圧力として必要なのだ。
1970年代後半、1980年代半ば、アメリカはドル安とともに対外赤字を減らし、予算赤字を削れた。そして最近も、グローバル・インバランスは資本流入で維持されているが、極端な金融緩和をともなっており、明らかに調整が必要になる。この資本流入は、他方に、中国のような外貨準備の累積があり、ドルがその役割を免れた方がアメリカの経済状態を改善できる。
ドルに依拠した国際通貨制度は、歴史的な取引a grand bargainとして成立したものだ。他国はドルに対して為替レートを決定するが、その(外国通貨当局のドル保有の)結果として生じるアメリカの赤字は融資する、ということだ。ドイツ、日本、中国のように、対外黒字国は繰り返し「過剰な」ドルの累積に不平を述べたが、その合意された取引を守ってきた。
この制度は、アメリカが赤字の融資ではなく調整(赤字の縮小)を求めるとき、急激なドル安という形で問題を生じた。1970年代にはスミソニアン合意、1980年代にはプラザ合意が実現し、今また、それが必要になっている。
アメリカは、貿易赤字の大幅な改善と投資によってのみ、債務による消費拡大に依存するのをやめ、しかも景気回復を実現できる。それは、特に人民元など、アジア通貨に対する大幅なドル安を意味し、ドルの準備通貨としての役割を終わらせるだろう。
一般に、アメリカの地位は競争する通貨がないことで続いてきた。しかし、今ではユーロが存在する。ユーロ圏は財政再建に協力し、ユーロ危機克服のためにもユーロ債を発行するだろう。アメリカが財政赤字削減に失敗するなら、ユーロの魅力は増大する。
準備通貨としての地位を、ドルは失い、ユーロは高めてきたし、人民元が為替管理をやめれば利用される。国際通貨制度はすでに二通貨体制であり、近い将来、三通貨体制になる。アメリカはこの転換を受け入れ、さらに促進するべきだ。ドルとユーロが使用され、その後、人民元とSDRも加わる。中国は外貨準備をドルだけでなくユーロでも保有する。アメリカはドル・ユーロ・レートが不整合であれば介入し、外国通貨当局がドル保有を過剰に累積すれば相殺的な介入を行い、ドル保有による所得に課税する。IMF内に振替勘定を設けて、外国が保有するドル準備をSDRに転換できるようにする。
こうした変化によって、世界経済のバランスを回復し、次の危機を回避できるだろう。
FT February 17 2011
A monetary regime for a multipolar world
By Robert Zoellick
G20の前に、アメリカからの国際通貨制度改革案が発信されています。ドルへの非難がテーマとなる前に、先手を打った、というのは、前回、中国が人民元への非難を回避するために先手を打った発言とよく似ています。そして、Robert Zoellickのアイデアは秀逸です。
国際経済は多極化しつつある。世界の経済成長はその約半分が発展途上諸国が生じており、それがパワーの国際配置も変えつつある。アメリカ・ドルは支配的な準備通貨としての地位を保つだろうが、世界経済は次第に複数の主要通貨によるシステムを管理するようになる。マルチラテラリズム(国際協調の制度)を刷新して、新しい通貨システムを実現するべきだ。
貨幣は権力である。通貨体制の転換は新しい政治秩序の出現を意味した。王様たちがその貨幣に自分の姿を刻印したのは当然だ。変化を、支配ではなく協力によって実現するつもりなら、さまざまな主権者に対して、旧秩序の緩やかな浸食を回避する動機付けが必要だ。世界経済の新旧のアクターたち、G7、新興諸国、IMF、世銀、WTOに以下の誘因を与える。
開発された経済からなるG7諸国は、変動レート制を維持し、グループで合意した特別な状況を除いて介入しない、という規範を確立することに重大な利益を共有する。それは近年、少数の例外を除いて、明文化されない形の政策合意であった。今やG7は合意に関する声明を発表し、他者に対する基準を示すべきだ。
多くの新興経済は変動レート制と金融政策の自律に向けた改革に取り組んできたし、それによって独立した行動と健全な経済政策を採用し、「近隣窮乏化」的な戦略を控えたのだ。しかし、ホット・マネーとの闘いは続いてきた。そこでG20は、投資に開放された発展途上国が「ホット・マネー」問題を乗り越えて正しい行動をとるため、IMFや世銀が彼らを助けることを支持する。たとえば、価格シグナルを利用したチリの透明な(ホット・マネー抑制)メカニズムや、世銀による債券市場の育成がそうだ。時とともに、大きな規模の発展途上国はG7の規範に移行するだろう。小規模の国は弾力性を維持するが、調和的な形で変動するよう、行動基準ができるだろう。
SDRを構成する通貨の発行経済は、アメリカ、ユーロ圏、日本、イギリスだが、IMFと一緒にSDRフォーラムを結成し、金融と通貨の問題を評価するために集まる。中国にもフォーラムへの参加を呼び掛け、将来、資本取引が自由化されたら人民元もSDRに参加する誘因を与える。国際機関への参加は、中国もルールと義務を共有することであり、WTO加盟と同様に、人民元国際化のための国内改革を刺激するだろう。
指導的な経済がSDRを新しい世界準備通貨にするとか、IMFが世界中央銀行になることはない。しかし、主要な準備通貨を発行する諸国は協力して健全な世界経済を支持し、少なくとも、互いの違いを管理する必要がある。IMFは各国を処罰しないが、レフェリーとして適当な対外政策を示して(反則の)笛を吹く。「資本勘定」政策の多角的監視を強め、G20の政策相互評価は、金などの国際商品に関する指標とともに公表される。187人の株主(加盟国)を持つIMFが、G20の判断に正当性と資金を与える。G20はさらにIMFとWTOを促し、GATT15条の為替政策に関する強制力を行使できるようにする。
国際通貨・金融問題の処理を改善することは将来の成長につながる。王様たちの時代は過ぎ去ったが、現代の指導者たちも国際通貨制度に改革の刻印を押すチャンスを持っている。
Feb. 16 (Bloomberg)
All You Need to Know About Why Things Fell Apart
Michael Lewis
NYT February 16, 2011
How Goldman Killed A.I.G.
By WILLIAM D. COHAN
WSJ FEBRUARY 17, 2011
India: Twenty Years Later
By NIRANJAN RAJADHYAKSHA
第三世代の改革を提唱しています。それは特に、労働市場改革です。
WSJ FEBRUARY 17, 2011
Is Your Job an Endangered Species?
By ANDY KESSLER
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The Economist February 5th 2011
Egypt rises up
The upheaval in Egypt: An end or a beginning?
The American conundrum: When allies tumble
Regional reverberations: Variously vulnerable
Commodities and the Middle East: Prospects and the pump
Somali piracy: At sea
Piracy: No stopping them
(コメント) エジプト革命の考察はいずれも興味深いです。2月1日、まだ始まったばかりの民衆によるムバラク退陣要求を、平和的で、非宗教的な、民衆に支持された1989年の東欧民主化に近い、と考えています。しかし、違いも重要です。イスラム過激派への不安。アメリカの難しい対応。イスラエルの不安。たとえ民主化が成功しても、それが中東地域の平和と繁栄をもたらす時代を約束するとは限りません。長期的には、開かれた民主的社会を望みます。
革命の引き金triggerは何だったのか? 治安警察や体制側の恐怖と、都市からの戦術的な撤収、すなわち、計画された社会不安により軍事独裁支配の必要性・現状維持をアピールする(対外的な脅威やナショナリズムを煽る)という局面で、民衆の側やイスラム過激派、軍部、アメリカ、などが示す決断でした。タハリール広場は守られたのです。
アメリカの外交政策に生じた難題についても、簡潔ですが、説得的な論説があります。次はどの国に波及するか? という議論を、独裁体制の支配が長期に及ぶこと、民主化の程度、腐敗の程度、報道の自由、による国際順位を示しています。
エジプト革命が関連する問題として、誰もが石油価格の上昇を予想するでしょう。しかし、穀物価格の上昇などを挙げています。貧しい民衆が弾圧を恐れずに蜂起したのは、食糧価格が高いからです。政府は価格補助金を増やします。スエズ運河の閉鎖という不安もあります。輸入国が競って備蓄を増やし、輸出国の禁輸措置や投機的な買占めが起きています。しかも、アメリカの政策的なドル安は、産油諸国に石油の販売より温存することが好ましい、と教えています。
ソマリアの海賊は、エジプト革命と無関係です。しかし、海賊の背景や取り締まりをめぐる事情は、同様に、超国家的なガバナンスへの示唆に富みます。
The Economist February 5th 2011
Germany’s economy: Angela in Wunderland
German business: A machine running smoothly
Economics focus: Vorsprung durch exports
French competitiveness: France’s lost decade
Japanese politics: Opening Japan to the world
Shaking up Japan: Bold, or plain reckless?
(コメント) ドイツは絶好調で、アメリカは迷走し、フランスと日本は衰退しつつある。その印象はどの程度まで正しく、どのように説明できるでしょうか? ドイツ企業が優秀であるのは、賃金抑制や生産調整について労働組合と長期的な合意をし、EUに参加した東欧諸国の生産拠点も利用できるからであり、むしろ中小企業の生産技術が中国の生産拡大に多いに新しい市場を見出しているからだ、と指摘します。その問題点も見えてくるわけです。
日本に関する叙述は、常に気になります。
The Economist February 5th 2011
Inflation: Greater expectations?
Inflation around the world: Parsing prices
China’s property market: Protecting the middle class
Londonism and its adherents: The capital’s creed
(コメント) インフレの懸念を早めに抑えるべきか? 世界の景気回復、不均衡の是正が問われています。旧工業諸国と新興諸国では必要な政策が異なり、それらが矛盾しないような合意が必要でしょう。中国の都市不動産に課税することは、貧困層の不満を和らげるだけでなく、むしろ長期的に、中産階級の利益を守り、彼らが納税者として政府への監視を強める傾向を促すでしょう。
ロンドンの世界都市化は、市長が左派労働党であれ右派保守党であれ、新しいイデオロギーや政策として明確な形をとり、同時に、その矛盾も示しています。