今週のReview
2/14-2/19
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IPEの想像力 2/14/11
昼でも気温が上がらず、雪が降りしきる中で、街の景色は次第に雪国の姿に変わりました。そして、江戸時代の子供たちがよみがえるような錯覚を味わいます。
菅内閣に対する内外の評価が正反対であるのは、どうしてでしょうか? アメリカ政府やビジネス界は、日本政府が市場開放や改革に積極的になれば、称賛するのでしょう。では菅内閣を批判する小沢一郎も、自民党も、公明党も、みんなの党も、石原慎太郎も、日本の政治家たちは何をしようと国民に訴えているのでしょうか?
チュニジアの革命が民主化による成果を上げるために、Joseph Stiglitzは優れた助言を行っています。それは日本政府にとっても適切な助言だと思います。MICHAEL AUSLINやWilliam Pesekは、エジプト革命も、相撲スキャンダルも、日本政府の支持率低迷と結び付けて考えます。
佐藤さんのインド不動産バブルに関する研究報告に関するコメントを引き受けたおかげで、インドのことを読むようになりました。駅前のスターバックスで1時間余りお話を聴けたのはとても有益でした。本来の研究の要点は、マクロ統計と計量分析にあるのですが、私はIPEの視点でコメントしてよい、ということでした。
国際政治経済学とは、その核心において、国際秩序について新しい視点で考えることだろう、と思い至りました。帝国主義や国際通貨制度改革を、私は繰り返しここで論じました。
雪の降り続く一日、留守番の私はテーブルの上に何冊か本を広げて、パラグ・カンナ『「三つの帝国」の時代』を読み始めました。そこには、世界中の秩序崩壊や権力の変貌が簡潔に整理され、たとえば、ロシアについて鮮烈な姿が、次のように描き出されています。
・・・「モスクワにある元KGB本部ビルの一つには、今では中に高級ディスコができている。ハイパー資本主義者のクーデターが進むなか、恒久的に不安定なビジネス階級のお気に入りの車は、窓を薄暗い色につぶしたSUVだ。彼らは毎晩のように、ライオンやらSMプレーの女王様のようなダンサーとパーティーに明け暮れ、山盛りのキャビアで最後をしめる日々を送っている。安全なのはサウナの中だけだ。みな裸になり、武器の携行ができないからだ。全ロシア経済の4分の3を集中しているモスクワは、今やニューヨークよりたくさんの億万長者が住む世界で最も物価が高い都市の一つになっている。プーチンが指名したモスクワ市長は、さえない巨大な彫刻で街を生まれ変わらせ、交通渋滞に巻き込まれたドライバーがその目障りな光景を見つめている横を、カネで警察を雇った金持ちがパトカーのサイレンに先導されてフルスピードで走り抜けて行く。高級ショッピングモールは入場料を取り、庶民は相手にされない。」
前原外相はロシアのメドヴェージェフ大統領が北方領土において示すパフォーマンス(そして罠)に足を挟まれたのかもしれません。中国のニュースは、エジプトよりも日本とロシアの紛争に強い関心を示し、わざわざ時間を割いて報道します。
チュニジア革命を実現した民衆に対して、社会的な結束を実現したことをStiglitzは高く評価しています。そして、高成長も、国際債券市場も、民主主義も、革命後の社会が食糧を手に入れ、若者に十分な雇用を提供することに失敗するかもしれない、という限界を知っています。チュニジア革命がロシアのような経済・社会混乱と強権支配に終わらないためにも、国際的な支援が重要です。
日本政府は、世界の秩序崩壊や改革の模索から、もっと直接に学ぶ必要があります。国会から、革命や紛争、財政破綻の真ん中に、若手議員たちを派遣し、効果的な支援策を提案させ、日本への教訓も得てはどうでしょうか? そして、老いた政治家たちの政治劇に対して、パラグ・カンナに負けない鋭利な批判精神を共有してもらうことです。
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エジプト革命のこれから ・・・チャーター・シティと投資家たちの理想 ・・・スタグフレーションの再発見? ・・・中国外交のプラグマティズム ・・・緊縮と増税から逃げ出す企業 ・・・日本の企業と政府の改革圧力は切迫している ・・・ドルの特権は廃止されるか? ・・・
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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia
l エジプト革命のこれから
FT February 3 2011
The Middle East sets its own course
By Philip Stephens
中東における「自由」(あるいは、民主的選挙、法の支配)と西側の「戦略的利益」(石油、イスラエルとの和平協定)とが衝突します。アメリカは「人気」を競っているのではない、と外交戦略家は考えます。
アメリカや西側は、中東諸国で「自由」や「民主主義」を支持することもできますが、何が生まれるかを決めるのはわれわれではなく、彼らなのです。
LAT February 3, 2011
U.S. walks the line on Egypt
Doyle McManus
FP FEBRUARY 3, 2011
Hold the Applause
BY DAVID MACK
「革命というのは、たいてい、ひどい結末で終わる。」 フランス革命から王制復古まで生きたフランスの政治家、タレイランは、若い外交官に「熱狂してはいけない」と教えたそうです。ロシア革命でも、中国でも、イランでも、同じ注意を与えた老練な政治家がいたでしょう。
独裁者を倒すことは熱狂的に支持されても、そのあとには無政府状態が続き、新しい独裁者が現れるのです。少なくとも、3ヶ月後に何が起きているかは明白です。食糧が不足して、価格が高騰し、略奪が起きる。あるいは、軍が統制を強化しているのです。
観光業も、外国からの投資も、容易に回復しません。進歩的な政治改革が治安や基本物資を供給することはめったにありません。
FP FEBRUARY 3, 2011
Getting on the Right Side of History
BY PARAG KHANNA
「ドミノ効果は必ずしも悪くない。」 専制が民主主義に代わり、イデオロギーはプラグマティズムに代わる。アメリカ政府は「親米」政権が民衆によって倒される、アラブ世界の新秩序を恐れるべきではない。
1989年の東欧民主革命では、アメリカは歴史の進歩の側にいた。しかし、エジプトでは「テロとの戦い」、「イスラエルとの和平」、「石油の供給」を守りたい。アラブの春、においてアメリカは正しく行動しているか?
アメリカ政府は中東外交において、「安定」のために、腐敗した専制支配を支持してきた。底では人口過剰、経済停滞、反対派の抹殺が見られた。ドミノが倒れるとしたら、そうあるべきだ。
民主主義は複雑な過程であるが、エジプトでは多くの優れた指導者がすでに登場している。ガバナンスを改善し、大統領の過大な権力を削り、部族ごとの政治的分配システムを改めるだろう。そしてテクノクラートが支配する、世界市場と民衆に責任を負った政府だけが生き残れる。
地域全体において、反植民地やスンニー統一を掲げるアラブ主義は衰退し、それに代わってカタールのアルジャジーラ、レバノンのブロガー、ドバイの投資家が登場する。こうした若い世代が、専制体制と神権政治のジレンマを抜け出すときだ。
アメリカは彼らを歓迎する。そしてパキスタンで失敗したような、間違った安定性を追求してはならない。若い世代はアメリカからの投資で工場が経ち、改革のための助言を求め、アメリカのような株式市場や優れた大学を歓迎するだろう。
WP Thursday, February 3, 2011
Have Egypt's rulers thought about the isolation that awaits them?
By Robert Kagan
WP Thursday, February 3, 2011;
Egypt through Obama's lens
By David Ignatius
NYT February 3, 2011
We Are All Egyptians
By NICHOLAS D. KRISTOF
「戻ることができなくても、私はかまわない。」 モスクが臨時の病院となった。タハリール広場で傷ついた同胞を助けようと、125マイルを運転して参加した医師は語ります。「わたしもこの運動の一部であると決意したから。」
「もしここで死ぬとしても、それは私の国のためだ。」
彼らは恐怖に打ち勝って、民主主義と自由のために立ち上がった。最大限の支援を彼らに与えるときだ。彼らが我々を勇気付ける。「今日、われわれすべてがエジプト人だ。」
NYT February 3, 2011
Egypt’s Agonies
guardian.co.uk, Friday 4 February 2011
The EU wants 'deep democracy' to take root in Egypt and Tunisia
Catherine Ashton
guardian.co.uk, Friday 4 February 2011
It's not radical Islam that worries the US – it's independence
Noam Chomsky
1989年の民主革命とは大きな違いがある。アラブ世界の独裁者たちの中にゴルバチョフはいない。ワシントン(アメリカ政府)が支持する同盟者の原則とは、戦略的・経済的な目的が優先される、ということだ。彼らはその国内であれば何でもできた。
ワシントンは東欧で最も残酷な支配者、ルーマニアのチャウシェスクを支持してきた。しかし、過去を消し去って、チャウシェスクの追放を歓迎した。いつものことだ。マルコス、デュバリエ、チョンドハン(全斗煥)、スハルト、その他の多くのギャングがいた。ムバラクが、その秘密警察の長官であるスレイマンを指名したが、民衆はムバラク以上にこの男を嫌っている。
アメリカが民主化を恐れるのは、イスラム過激派が権力を握るのを恐れているからではない。独立を恐れているのだ。アメリカと同盟諸国は、いつも過激なイスラム主義者を支持して、世俗的なナショナリズムを妨害してきた。
FT February 4 2011
At hand, an Arab awakening
By Roula Khalaf
FT February 4 2011
Darkness before dawn for Cairo’s sans-culottes
By Simon Schama
ダヴォスではエリートたちが世界経済会議を開き、カイロでは民衆の力で独裁者を倒す。
革命の騒乱はすべて1789年のフランスに始まった。食糧の価格高騰と枯渇による危機が政治的代表の要求に変わった。投票権は食べられないが、気にするな。エジプト人もすぐに知るだろう。議会が権力者に責任を求め、民衆の要求に耳を傾け、腐敗を終わらせる。そう言われた。
エジプトと同様、危機は後進性ではなく、近代化の時代に爆発した。近代化の利益は不平等に分配され、教育を受けた若者が失業し、革命によって民族の再生が求められる。そして、恐怖時代がそれに続く。盗賊や暗殺者が無防備な市民を襲う。戦略としての崩壊が始まり、秩序が求められる。自衛の本能が武装した市民軍を生んだ。
タイミングがすべてだ。軍が鎮圧に動くか、革命派が内部対立によって崩壊するか、貴族が議会を受け入れる時期と数カ月しか違わなかった。1848年の「民衆の蜂起」は、1849年に、ベルリン、ウィーン、ブダペスト、ヴェニスで権威主義体制を復活させた。
FP FEBRUARY 4, 2011
This Week at War: The Pakistan Scenario
BY ROBERT HADDICK
WP Friday, February 4, 2011;
Mubarak must leave to save Egypt
By Saad Eddin Ibrahim
WP Friday, February 4, 2011
Egypt's two futures: Brutality and false reforms, or democracy
NYT February 4, 2011
The Kindling of Change
By CHARLES M. BLOW
革命はどこまで波及するか? 人々は酒場で予想を楽しむ。革命の醸成を測る共通の水準を、いくつか挙げることができる。年齢構成、失業率、不平等、食糧価格、民主化、政治体制、インターネットの普及。
チュニジアとエジプトと同じように革命の勃発が予想されるのは、アルジェリア、イラン、ヨルダン、モロッコ、イエメン、であろう。
WP Friday, February 4, 2011
How Egypt can build lasting democracy in a post-Mubarak world
By Larry Diamond
独裁者が去った後に、何が起きるか? 体制の移行には不確実さがともなう。しかし、1970年代半ば以降に民主化した国は60カ国以上ある。その教訓を学ぶべきだ。
1.民主的反体制勢力の統一を守れ。2.旧秩序を完全に葬り去れ。3.旧秩序の主要な団体は残る。彼らを中立化し、あるいは、協力させる。旧体制のエリートたちも自由を享受し、民主主義の新しいルールに従う。
4.ルールを変えろ。しかし、性急な変更は好ましくない。国民の合意を形成することが重要だ。自由で公平な選挙を保証することが欠かせない。
5.過激派を孤立させよ。旧秩序の関係者も受け入れるが、暴力によって権力を奪おうとする者を許してはならない。
NYT February 5, 2011
Wallflowers at the Revolution
By FRANK RICH
NYT February 5, 2011
China, Twitter and 20-Year-Olds vs. the Pyramids
By THOMAS L. FRIEDMAN
中東地域では、ベルリンの壁崩壊も、Googleも受け入れたけれど、現状維持を求める力、すなわち、石油、専制政治、イスラエルとの和平、カオスへの恐怖が強かった。しかしついに、現状維持を超えるさらに強力なエンジンが到着した。すなわち、中国、Twitter、20代の若者、である。
もちろん、中国が革命を支援しているのではない。しかし、中国を筆頭に、アジアの成長する途上諸国が、肉、トウモロコシ、砂糖、小麦、の消費を増やしたことで、価格の高騰は中東社会を不安定化した。特に、失業したままの20代の若者が正当性のない政治体制に怒りを覚えた。
THOMAS L. FRIEDMANの考察はこれで終わりません。だからどの国でも、補助金を増やし、賃金を上げた、と指摘します。
ヨルダンのアブドラ国王は兵士や官僚の月給を30ドル引き上げ、食糧やガソリンの補助金を新設した。クウェート政府は110万人の国民すべてに対する3500ドルの「ギフト」と、8億5000万ドルの食糧補助を行うと発表した。
しかし、中国は異なった形で中東の政治秩序を脅かす。たとえば、エジプトの企業家がラマダンのためのロウソクを中国から輸入した。それはマイクロチップが内蔵されていて、エジプトの民謡を奏でる。より安価で、より魅力的な、中国製のラマダン・グッズが流入することは、競争力を欠いたエジプトの低賃金労働者たちから職を奪う。
エジプト、ヨルダン、イエメン、チュニジアにあふれる「教育を受けた失業者たち」は、形だけの卒業証書を持つだけで、グローバルな競争力を持たない。シンガポール政府は優れた教育に強い関心を持つが、ムバラクは30年間をそれを無視してきた。「エジプトは自分のペースで改革する。ナイル川のように。」・・・しかし、シンガポールはインターネットの速さで進むだろう。
アラブ世界には約1億人の若者(多くは男性)が、教育を受けても仕事がなく、住宅を買えず、結婚できない。食糧価格が高騰し、Twitter, Facebookが普及して、彼らの声はようやく指導者に届き、互いに結び付くようになった。たとえば、反政府の声をスウェーデンに暮らすムハマドのブログに載せる。
ヨルダンの政治は二大勢力の均衡によって維持されている。エジプトでは軍が政治システムを維持してきた。それでも、いよいよ彼らは改革に乗り出し、競争的な選挙を行うと決めた。ムスリム同胞団はこれに参加して、競争に勝てるだろうか? その政治部門の幹部Zaki Bani Rsheidが述べた。「指導者たちが新しい思考について行けないなら、彼らを博物館へ移すべきだ。」
FRIEDMANは、あなたの政党は競争に勝てるのか? と尋ねました。それまでアラビア語で話していたRsheidがウィンクして、英語で答えます。“Yes we can.”
LAT February 5, 2011
Beware the Islamists in the wings
Tim Rutten
WP Sunday, February 6, 2011;
After Mubarak, what's next for Egypt?
LAT February 6, 2011
Cairo is not Tehran
Doyle McManus
guardian.co.uk, Sunday 6 February 2011
Steadying Tunisia's balancing act
Joseph Stiglitz
チュニジア革命への優れた助言です。他のアラブ世界でも、ラテンアメリカでも、アメリカやEUにおいてさえ、民主主義がうまく機能しているとは言えません。民主主義が有効に機能する政治経済システムを実現する教訓を、世界中で、チュニジアは多く発見できます。
高い経済成長や、金融市場の要求に従うことが、民主主義の条件ではありません。2008年の危機では、独裁体制から民主化への動きを国際債券市場は嫌いました。
教育システムが充実するだけでも、十分ではありません。世界中の国で、労働市場の新規採用に問題が起きています。高失業と縁故採用が広まり、公平や公正さの意識が損なわれます。
「仕事が少なく、政治的なコネでそれを得るなら、また富が限られ、政府の役人が金を貯めこむなら、そのようなシステムは不公平や収奪に対する怒りを生むだろう。西側における銀行への憤慨は、われわれが最初にチュニジアで見たもの、そして、地域にわたって見られるものとなった、経済的正義への基本的な要求の、よりマイルドな形態である。」
民主主義とは言え、アメリカでは国民所得の4分の1を人口の1%が支配しています。経済成長は最富裕層の富を増やし、ほとんどのアメリカ人は10年前よりも貧しくなっています。選挙資金を通じたアメリカ型の腐敗は、製薬企業への莫大な補助金や、富裕層への減税、貧困層への医療補助削減となっています。
選挙への公的支援を行い、業界のロビー活動や民間部門とのスタッフの入れ替えを禁止して、政府が民間の利益に従うことを防ぎます。透明性を確保したオークションによって民営化すれば、レント・シーキングは抑制できます。政府は市民の権利を侵すほど強すぎてはいけませんが、繁栄する、包括的な社会を育てる集団行動が取れないほど弱くてもいけません。
21世紀の民主主義がどうあるべきか、チュニジアは新しいモデルを提供できるでしょう。
FT February 7 2011
Egypt without a pharaoh portends a storm
By Shlomo Avineri
FT February 7 2011
Which revolution will Egypt choose?
By Gideon Rachman
革命は、それが成功した後、権力を維持する過程で急進化する。1789年のフランス革命も、ロシア革命や中国革命、イラン革命も急進化したし、周辺諸国と戦争になった。他方で、より平和的な革命、戦争をともなわない革命もあった。1989年の東欧革命も、1986年のフィリピンや1998年のインドネシアも、国際平和を脅かすことは無かった。
エジプト革命の影響は、西側にとって、プラスにもマイナスにもなる。そこで革命を評価するときには、国の規模と、国際秩序が重要である。ロシアや中国の規模は革命を世界情勢の変化に結びつけたし、その共産主義イデオロギーは西側の資本主義と敵対していた。逆に、1989年の東欧諸国は小さく、西側の理想を支持していた。革命はソ連を敵視していたが、アメリカ政府にとってもソ連は冷戦期の敵であった。
エジプト革命は、危険な分類に近いだろう。特に、イスラム過激派が拡大するなら。それゆえ、西側の慎重な対応はやむを得ない。すべてはムバラク後の政府の性格にかかっている。
Foreign Affairs, February 7, 2011
Egypt's Democratic Mirage
Joshua Stacher
WP Monday, February 7, 2011;
Egypt's real parallel to Iran's revolution
By Fareed Zakaria
1979年、イラン革命の亡霊が西側をさまよっている。
しかし、これまでのところ、革命が急進化して深刻な結果をもたらす懸念を強める証拠は無い。現在のエジプト国民にとってイランの体制は支持されていない。彼らはムバラクもムラー(イスラムの聖職者)も嫌っている。圧倒的多数が民主的な統治を望んでいる。
むしろ、軍事独裁体制の危険こそが重要だ。1952年の政変以来、エジプトの軍部は予算を独自に立て、社会の隅々まで浸透し、多くの土地や企業を所有している。軍部はムバラクを犠牲にしても、その支配体制を手放す気は無いだろう。
トルコでは、近代化において軍部が積極的に協力した。このことがエジプトの先例とされるが、トルコの軍部はすすんで権力を掌握したのではないし、政治介入を抑制するようにEUからの圧力もあった。エジプトは、トルコよりもパキスタンに近いだろう。民主主義は軍隊の一部になってしまう。
円滑な移行を求めるオバマの方針は正しい、新しい憲法と法による保護がなければ、「リベラルではない民主主義」ができてしまう。ムバラクが辞めただけでは不十分だ。ムバラクの政治体制が破棄されるべきだ。アメリカ政府が軍事体制と妥協することは、民衆の失望と反感を招き、イラン革命の状況に向かう危険を高める。
NYT February 7, 2011
Speakers’ Corner on the Nile
By THOMAS L. FRIEDMAN
NYT February 7, 2011
Tehran 1979 or Berlin 1989?
By ROGER COHEN
アラブ世界の1979年ではなく1989年をもたらすために、オバマはイスラエルを説得し、裕福な産油諸国はマーシャル・プランを提供するべきだ。
FT February 8 2011
The revolutionaries’ fervour is also their weakness
By Ayaan Hirsi Ali
WP Tuesday, February 8, 2011;
U.S. deeds don't follow U.S. words on Egypt
By Anne Applebaum
Feb. 8 (Bloomberg)
Egypt’s ‘Hot Wind’ Exposes U.S. Dilemma
Aaron David Miller
LAT February 9, 2011
U.S. must back democracy in Egypt regardless
By Tarek Masoud
NYT February 8, 2011
Mr. Suleiman’s Empty Promises
FP FEBRUARY 9, 2011
The Al Jazeera Effect
BY HUGH MILES
FP Tuesday, February 8, 2011
Obama's still trying for Egyptian change
Posted By Marc Lynch
guardian.co.uk, Wednesday 9 February 2011
Not 1989. Not 1789. But Egyptians can learn from other revolutions
Timothy Garton Ash
いかなる革命も、勇敢な個人と幸運がなければ成功しない。革命によって死んだのは、第一に、文化決定論である。また、第二に、技術決定論("Facebook revolution", "Twitter revolution" and "Al-Jazeera revolution")でもある。
SPIEGEL ONLINE 02/09/2011
The EU and the Arab World
'We Focused Too Much on the Rulers'
NYT February 9, 2011
What the Muslim Brothers Want
By ESSAM EL-ERRIAN
NYT February 9, 2011
Obama and Egypt’s Future
By NICHOLAS D. KRISTOF
guardian.co.uk, Thursday 10 February 2011
For Egypt, this is the miracle of Tahrir Square
Slavoj Žižek
FP FEBRUARY 10, 2011
Why the Egypt Revolution Is Good for Israel
BY KAI BIRD
l チャーター・シティと投資家たちの理想
FT February 3 2011
Future cities need to hand over the keys
By Sebastian Mallaby
Paul Romerによる「新成長理論」が、世界のいくつかの小国によって実行されるだろう。
成長を決めるのは、資本や労働ではなく、アイデア“ideas”である。しかも、それは技術(インテルの半導体)やビジネスモデル(ウォルマートのサプライ・チェーン)だけではない。「社会を統治するルールや規範」である。すなわち、報道・出版の自由、ビジネスの規制、破産法、など。
多くの貧しい国は、間違った法律や規制が成長を妨げている。世界銀行も、ガバナンスの改善を重視するようになった。しかし、世銀が行っているのは、統治の評価と市民への情報周知である。たとえば、電力価格を上限によってゆがめている、と有権者が知ることで、政治圧力が生じる。しかし、影響力のある市民たちはすでに安価な電力に慣れており、改革に反対する。
Romerの提案は、統治を丸ごと外国政府に委ねる、「新植民地主義」である。政治システムの内部で改革を進めるより、その外に出ることを可能にする。結局、ビジネスの世界がそうである。IBMはパソコンを作らず、マイクロソフトもクラウド・コンピューティングに追い越される。自由な参加と競争が、システムの既得権者による内部からの改革を圧倒する。
2008年から始まった「チャーター・シティ」“charter cities”は、既存の機能しないルールの外で、新しい都市を開発する。既得権との対立や妥協が必要ない。貧しい国が都市の開発を外国に委ね、テクノクラートの総督が任命される。都市の政治や選挙そのものが廃止される。
それでは植民地であり、世界中にイギリス統治下の香港を広めるのか、という批判が起きる。しかし、植民地化される人々がRomerに賛同するかもしれない。マダガスカルやホンデュラスがこの計画を支持している。
また、これはみかけほどショッキングではない。すべての国が部分的にこれを行っている。選挙の監視団を受け入れ、条約を結び、通貨価値をペッグする。選挙がないことに激怒するなら、どうして都市から移住しないのか? 居住者は足で投票してもよい。
政治システムに参加するか、あるいは、離脱を選択することは、民主主義の基本的な権利である。すでに2億1400万人が自国を脱出している。貧しい国が自国内でチャーター・シティへの移住の権利を認めるなら、西側の反植民地主義者も一歩先に進み、信託統治の責任を果たすほうが良い。
NYT February 3, 2011
Now Ireland
アイルランドは、ユーロ危機によって倒された最初の政府である。しかし、最後ではないだろう。有権者たちは正当にも、Fianna Fail政府が投資ブームにおいて投機的な住宅バブルを煽った規制緩和、政治家と銀行との癒着を許さなかった。2008年に仲間の銀行を救済したとき、アイルランドは沈没した。
EU/IMFからの救済融資の条件は、新しい政府によって再交渉を求められている。
「ヨーロッパの経済的健全さを回復するために、政治指導者たちはユーロ圏の金融危機に対する包括的な解決策に合意する必要がある。財政政策の協調を強化し、市場介入基金を増やし、債務組み換え交渉と、赤字削減と成長回復のタイム・テーブルに合意するのだ。これ以上の遅れは許されない。」
SPIEGEL ONLINE 02/09/2011
Nicolas Berggruen's Fight for Democracy
A Billionaire's Mission to Create a Better World
By Markus Feldenkirchen
ドイツの億万長者Nicolas Berggruenは、「世界の民主主義を救う」ために資産を使おうと決めました。それは推定で22億ドルです。Karstadtデパートのチェーン展開などで財をなしました。そして、世界を改善するために、the Committee to Save California、a "Council for Europe," followed by a "Council for the World"を始めました。
Berggruenはフランスで生まれ、ユダヤ人としてナチスの迫害を受けました。スイスの学校では左派の思想や小説を好み、ニューヨーク大学では金融を学びました。友人から2000ドル借りて株式投資を始め、ブルックリンの破棄されたビルを再生して利益を得たりしました。事務所や不動産、20以上の企業帝国を築き、Karstadtもその一つでした。
「ヨーロッパの問題、ドイツの問題とは何か?」と問うBerggruenは、ヨーロッパをカリフォルニアのようにしたい、と考えます。ヨーロッパ全体のことを考えるビジネスマンが活躍できる土地に変えるのです。Berggruenは、中国やシンガポールの権威主義体制が効率の点で優れていることを称賛し、同様に、彼らを競えるような民主主義へ改善しようと考えます。そして、有権者の選択が短期思考であることを批判します。より独立し、建設的で、正直な、ビジネスの賢人会議と、民主的に選ばれた政治家たちとの、両方で政府を動かします。
FT February 3 2011
Still they are fighting for dead men’s shoes
By Samuel Brittan
Feb. 4 (Bloomberg)
Happy Anniversary, Mr. Keynes
Victoria Chick and Ann Pettifor
75年前の今日、ケインズが『雇用、利子および貨幣の一般理論』を出版したとき、ロンドンのthe Economists’ Bookshopには行列ができた。人々は、世界経済を破滅させた政策に代わるものを求めていた。それはダーウィンが『種の起源』を出版したときの衝撃に似たものだった。
1980年からの30年間は、ケインズを裏切る自由化、規制緩和、資本移動が支持された。しかし、企業の借り入れコストは増大した。自由化により、(インフレを除いた実質)高金利と空前の信用拡大とが実現した。債務の膨張と景気拡大が続き、その後は、債務の縮小と景気悪化が起きた。世界経済の周辺から日本や東南アジアまで、不況が広まった。
黄金時代と自由化時代を比べて言えることは、金利の上昇だ。金融が制限されたときにだけ、公的・民間部門の拡大が続く。
FT February 7 2011
Obama’s Keynesian failures must never be repeated
By Darrell Issa
FT February 4 2011
The trouble with men
By Gillian Tett
Anya Schiffrin(the wife of Joseph Stiglitz)がコロンビア大学の経済学者で、ジャーナリストでもある、とは知りませんでした。女性の社会進出に関する論考です。
ダヴォスが環境に配慮するなら、女性にももっと配慮すべきではないか? 参加者は男ばかり(その妻を除けば)です。
l スタグフレーションの再発見?
WSJ FEBRUARY 5, 2011
Ben Bernanke's '70s Show
By ALLAN H. MELTZER
1979年、「インフレを抑えることが失業を減らす方法だ。」とボルカーは主張して、フィリップス・カーブの政策思想を放棄した。その後の20年間、ディスインフレーションとドル高の時代が続いた。
しかし今、1970年代型のインフレーションが再現しつつある。通貨供給を増やせば、必ずインフレーションが遅れてやってくる。金利を上げ、過剰な準備金を減らし、量的緩和をやめることだ。
NYT February 6, 2011
Droughts, Floods and Food
By PAUL KRUGMAN
3年で2度目の世界食糧危機が起きている。この価格高騰は経済学の問題を超えて影響を及ぼしている。たとえば、中東の民衆蜂起を刺激した。
小麦、トウモロコシ、砂糖、石油。・・・右派の人々は、中国人と一緒だが、バーナンキの金融緩和を非難する。あるいは、フランスのサルコジ大統領は投機を非難する。工業生産の拡大が農産物価格を引き上げた可能性もある。しかし、その場合は小麦より銅の価格に大きく示されるはずだ。中国やインドの成長、アメリカのエネルギー政策も関係あるだろう。
しかし、小麦の場合、ソ連からロシアの小麦生産が減少したときに上昇することが分かっている。ロシアではこの夏に異常な熱波と干ばつが起きた。他にも、19カ国以上で異常気象が起き、それは世界の土地の5分の1に及んだ。干ばつも洪水も、地球の温暖化によって起きる。
われわれは温暖化を目撃しているのだ。バーナンキや左派の陰謀を非難するより、温室効果ガスの排出を抑えることだ。
WP Monday, February 7, 2011
The Bernanke revolution?
食糧価格の高騰がチュニジアやエジプトの革命を引き起こした、という意味で、量的緩和QEUを採用したバーナンキはそれを刺激したでしょう。つまり、「バーナンキ革命」です。
もちろん、バーナンキは、連銀の金融緩和がインフレーションの原因である、という意見を否定します。QEUの前から、ロシアの干ばつやオーストラリアの洪水によって小麦価格は上昇していました。原油価格の上昇は中国やインドの投資と消費が高成長を続けたからです。
また、食糧の高価格は必ずしも農民の不利益ではないし、それが世界中で革命を起こすわけでもありません。民主主義のインドでは食糧暴動が起きない、と言われます。
guardian.co.uk, Wednesday 9 February 2011
Ben Bernanke's silence speaks volumes
Richard Wolff
バーナンキは下院予算員会で、以前と同じような、多くのことを語ったけれど、むしろその長い沈黙を観るほうが興味深い。たとえば、財政赤字が市場で調達できなくなることを懸念したけれど、大企業や富裕層に増税する話はまったくしなかった。都市財政や失業についても。
NYT February 5, 2011
Bankers and Their Bonuses
FP FEBRUARY 7, 2011
The Poor Are Getting … Richer
BY CHARLES KENNY
この200年間、世界の富裕層はますます豊かになったが、貧困層は貧しいままだった。Lant Pritchettによれば、1870年、世界で最も裕福な国と最も貧しい国との差は9倍であったが、1990年までに45倍に拡大した。
しかし、この20年間、貧困は減少している。国で見ても、個人で見ても、貧困は改善された。これは中国とインドの成長によるだけではない。貧困問題は、貧しい国だけに観られるものではなくなって、多くの国に拡散した。
NYT February 7, 2011
A Terrible Divide
By BOB HERBERT
Feb. 8 (Bloomberg)
Rich Get Richer When Governments Tout Austerity
Matthew Lynn
l 中国外交のプラグマティズム
FT February 6 2011
Beijing’s motives are often just pragmatic
By Yang Yao
中国が全体として西側を超える計画を進めるために攻撃的な政策(国家介入主義、重商主義)を打ち出し始めた、というアメリカ政府などの認識は間違いだ。これは、アジア通貨危機の時と同様に、不況を回避するために一時的な刺激策である。恒久的な政策転換ではない。政府は、政治的な圧力のもとで、厳しい経済条件にプラグマティックな対策を採ってきた。
確かに、国内で形成された特集利益に従って、たとえば、国際石油市場で購入するより、海外の石油資源を所有する投資を選択した場合もある。また、一部には、特に欧米の金融危機により、中国が新しい経済・社会モデルを発見した、という主張を示す者もいる。しかし、それは間違いだ。今の投資拡大は内外の不均衡を拡大するような過剰投資と労働者の貧困を悪化させる。
アメリカ政府は、中国の発展を積極的にとらえて関与する政策を続けるべきだ。中国は攻撃的になったのではなく、複雑になったのだ。
l 緊縮と増税から逃げ出す企業
FT February 6 2011
Tax: Trouble to avoid
By Vanessa Houlder
緊縮政策に苦しむイギリス国民は、公共支出をカットするよりも、もっと企業や富裕層に課税せよ、彼らの脱税を許すな、と憤慨します。
付加価値税を引き上げて、法人税を引き下げる。世界の課税をめぐる競争は、近年、ますます企業の逃避を恐れ、居住者に課税する方向を目指しています。
VATの税率改正は、メキシコは15%から16%ですが、他は、ルーマニア、スロヴェニア、イギリス、アイルランド、ラトビア、ポーランドがすべて20%台に入ります。他方、法人税率は日本が41%から36%ですが、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、韓国はすべて20%台へ、カナダは15%に引き下げます。
先進国納税者の抗議デモは、多国籍企業を不安にさせます。同時に、市場として力を付けてきた新興諸国でも、多国籍企業に課税が強化されます。しかし、政府は自国の雇用や競争力を失いたくありません。課税の国際競争はますます激しく、難しくなるでしょう。
OECDは課税をめぐる合意されたルール作成を、ブランドのような無形資産について、提唱しましたが、失敗しました。多国籍企業がどこで売り上げ、どこで納税しているか、詳細を公開せよ、と民間団体は求めていますが、強制力がありません。多国籍企業はますます本国にも受入国にも従わず、市場の評価も気にしません。欧州委員会は、ヨーロッパ規模の税制を提案しましたが、加盟国間の対立を解決できません。
企業への課税をすべて付加価値税として採るべきだ、という提案もあります。基本的に、個人や法人の所得に対する課税は無くなります。しかし、政治家たちは支持しないでしょう。むしろ、銀行ボーナスへの課税もできず、有権者は政治家たちに不満を強めています。
しかし、グローバリゼーションによる所得格差を緩和するためにも、財源が必要です。システムの効率性を損なわず、不平等を緩和することが求められています。
l 日本の企業と政府の改革圧力は切迫している
FT February 6 2011
Make or break time for Japan
By Jonathan Soble
FT February 6 2011
Japanese companies struggle to do overseas deals
By Lindsay Whipp in Tokyo
FT February 6 2011
Panasonic’s smart fridges light the way
By Jonathan Soble
日本の製造業に関するFTの特集です。中国や韓国などの企業による追い上げの結果、日本企業は多くの分野で売り上げや利益を減らしています。太陽発電パネルも、さまざまな家電製品も、日本企業は内省のときを迎えています。
製鉄においても、人口の高齢化と少子化で国内需要が減少し、国際競争は激化しており、その上、円高が加わっています。しかし、経営者の側でも、利益をもたらす革新的な分野に投資する積極性を欠いていた、という批判を免れないようです。日本企業は国内市場の高品質や新製品において競い合うばかりで、世界市場では通用しなくなった、と「ガラパゴス化」という言葉を紹介しています。しかし、日本では投資家も攻撃的な経営者の姿勢をあまり評価しません。
政府は企業を支援して、法人税を下げ、大学との協力で研究開発を促し、自由貿易や海外市場開拓における政府の役割を強化しています。
円高にもかかわらず、日本企業の海外進出や企業買収は必ずしも期待される水準ではありません。日本企業は、日本の金融危機から外国企業(今では中国企業)による買収攻勢まで、さまざまな対策に追われてきたからではないか、と記事は指摘します。また、日本市場は企業がひしめきあって利潤が少なく、積極的な海外展開ができない、と。
日本の家電企業は環境技術に投資して競争に勝つことを目指します。しかし、環境分野は補助金に頼っており、中国や韓国からも企業が参入しています。
Feb. 8 (Bloomberg)
‘Goldman Sachs With Guns’ Joins Sumo on Ropes
William Pesek
WSJ FEBRUARY 9, 2011
Tackling Corruption in Sumo
By MARK SCHILLING
相撲のスキャンダルについても、当然、日本社会のガバナンスが問題視されます。William Pesekは、与謝野と柳沢が70を超えた老人であり、社会保障(老人)の財源を消費税率(若者)の倍増によって得る、と彼らが提案するのは当然だろう、と感じます。また、相撲のいかさまは、日本資本主義の旧弊を最も厳しく批判した二人、堀江貴文と村上世彰が投獄された事情と結び付けて考えます。
WSJ FEBRUARY 9, 2011
Japan's Growing Sense of Crisis
By MICHAEL AUSLIN
あたかもエジプトの民主主義を憂慮するように、アメリカの投資家は日本政府や株式市場を観ているようです。中国との競争圧力やデフレに苦しみ、債券格付けも下げられました。
・・・日本の各層にも危機意識が高まっている。それにもかかわらず日本の民主主義が機能しなければ、政治・社会システムを間違った方向に変える議論も出るだろう。カイロほどではないが、激しい社会対立が起きるかもしれない。
FT February 9 2011
Warning to Japan on bank reserves
By Michiyo Nakamoto in Tokyo
FT February 9 2011
Steelmakers’ merger shows a way ahead for Japan Inc
By Jonathan Soble and Lindsay Whipp
FT February 9 2011
Young shun technology despite job fears
By Jonathan Soble
日本の銀行準備や、製鉄業界の巨大合併、若者の数理離れについて、不安な情報・考察が提供されています。
WSJ FEBRUARY 11, 2011
Reviving Japan
By DAVID ABRAHAM
日本の第3の開国を、アメリカは期待します。法人税の引き下げ(日本向けの直接投資も増えるでしょう)、TPP参加に向けた論争の開始、を取り上げて、菅首相が日本経済・財政の危機的状況を打開する真剣な方針を示した、と歓迎しています。
l ヨーロッパ統合に向けた政治的選択
FT February 6 2011
Europe planning to solve the wrong crisis
By Wolfgang Münchau
FP FEBRUARY 7, 2011
An Ever Closer Union
BY BARRY EICHENGREEN
2月4日のEUサミットで、ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領は合意した。ヨーロッパの経済・社会政策において一層の調和more closely harmonizingを目指す、と。
この「ユーロ・スピーク」を正しく翻訳すれば二つの主張になるだろう。1.フランスとドイツが合意形成を指導する。2.現状維持ができなければ、いつでも、後退するより一層の統合化に向かう。50年間の地域統合を、ヨーロッパの指導者たちはそのアイデンティティや世界観の一部としてしまった。危機は政治的本能により、統合化の深化や強化へ向けて、彼らを動かす。
しかし他方で、いくつかの問題が未解決のままだ。独仏政府は、税制や政府支出についての緊密な調整を求めた。ドイツの要求に沿って、67歳まで年金支給年齢を引き上げ、また、労働コストを乖離させないように、ブラッセルが各国の賃金交渉を監督するよう求めた。予想通り、ベルギーとルクセンブルグは賃金指数化の廃止に反対し、アイルランドは税率の統一に反対した。いくらかの譲歩がなされるだろうが、再び独仏がヨーロッパ統合化に向けて基準を示した。
この結果は、ユーロ解体を警告し続けた懐疑論者を撃破するものだ。税率や賃金交渉に介入することは国家主権に関わるから、決して合意できない、というのは間違いだ。地域に深く統合化したヨーロッパでは、主権に意味があるとしたら、それがプールされているときだけだ。バラバラでは意味がない。ヨーロッパの指導者たちは理解しているが、アメリカの批評家はこれを理解できない。
通貨統合の初めから、エコノミストたちは制度が必要であると知っていた。共通の財政規律を課す制度。地域内の賃金格差を生産性格差の範囲内に抑える制度。アメリカの州には財政赤字に上限が課されているし、アメリカの大規模な労働移動で賃金格差は抑制される。ヨーロッパの言語や文化の違いは、アメリカと異なる制度を必要としており、合意形成は時間の問題だろう。
もう一つ、残されたのは金融規制の統一だ。どこかの国(アイルランド)が規制を緩和し、銀行が外から資金を取り込んで住宅バブルに投機的な融資を拡大する、というようなことを避けねばならない。なぜサミットでこの問題が扱われなかったか、謎であるが、ドイツの銀行が高度なレバレッジや資本不足状態にあるとしたら、その事情が理解できるだろう。
こうした合意は、1999年のユーロ誕生時にあるべきだったが、2011年にできた。まだユーロ圏の辺境部では返済できそうにない巨額の債務を抱えた国があり、各国は財政赤字削減を急いでいる。根本問題を解決できないという意味で、EFSFの増額は合意されなかった。次に合意するのは、こうした債務国の債券を、額面通りに、ただし長期の、大幅に低い金利で新しい債券に交換する、債務の組み換えメカニズムである。
それはいつとは言えないが、ヨーロッパが新しい出発に向けて、必ず合意するはずだ。
SPIEGEL ONLINE 02/08/2011
SPIEGEL Interview with Pimco CEO El-Erian
'Germany Finds Itself in a Very Delicate Situation'
なぜアメリカは債務危機に向かわないのか? 世界最大の機関投資家PimcoのCEO、Mohamed El-Erianが答えます。なぜアメリカ国債に投資し続けることが許されるのか?
平時においてはかつてない債務依存を示しているが、アメリカには準備通貨としての特権がある。また、アメリカの金融市場は十分に流動的である。
債券発行について、スペインの財務大臣にも助言するのか? 債務の切り捨てを覚悟しているか? ・・・各国の財政金融事情について、その個別問題を評価しています。債務をEUが肩代わりしても、結局、民間から政府に債務が移るだけで、誰かが負担します。
Pimcoの影響力は強すぎる、と批判されているのでは? 民間債務の負担を納税者だけが支払うのは間違っている? ・・・公平な分担が求められるでしょう。
アメリカの金融政策は準備通貨としての特権を失わせるのではないか?
WP Tuesday, February 8, 2011
French-German bailout plan will test European unity
(chinadaily.com.cn) 2011-02-08
A tale of two currency areas
By Michael Boskin
FT February 9 2011
A spluttering Europe has its mojo back
By Gérard Errera
FT February 10 2011
All aboard for a two-speed Europe
By Philip Stephens
Philip Stephensは、EICHENGREENほど独仏合意を積極的に評価していません。独仏による機関車(the Franco-German locomotive)はヨーロッパ全体を牽引できていない、と考えます。EU27カ国中の17カ国でしかないユーロ圏の経済政府European economic governmentを目指しています。しかもイギリスから見て、彼らの主権侵害は行き過ぎなのでしょう。
LAT February 6, 2011
On to Mars -- but not back to Earth
By James C. McLane III
NASAが、帰還ではなく、生命維持装置を利用して火星への植民を開始します。
FT February 7 2011
Sterling is vulnerable to reversal of fortune
By Mansoor Mohi-uddin
FT February 10 2011
Bank wrong to hold rates
By Patrick Minford
l ドルの特権は廃止されるか?
FT February 8 2011
Currencies: Strength in reserve
By Alan Beattie
1960年代に、フランスのValéry Giscard d’Estaingはドルの「途方もない特権」を批判し、中国人民銀行総裁の周小川は同様の主張を最近も行いました。またRobert Triffinは、ドルが準備通貨であるためにアメリカの経常収支赤字が膨張し、不安定化するブレトンウッズ体制の「ジレンマ」を批判しました。フランスのサルコジ大統領も、最近、ドルに依存した国際通貨制度の見直しを求めています。
確かにドルの特権はあるでしょう。1.ドルが準備通貨として保有されていることによるシニョレッジ、2.アメリカ政府がより低利で債券を発行できる、3.アメリカ企業が為替リスク(そのヘッジに要する費用負担)を免れる。しかし、それほど大きな利益とは言えない、と記事は指摘します。
ドルに代わる準備通貨としてSDRを利用するには、世界中央銀行が必要です。Barry Eichengreenの考察では、世界政府がない以上、SDRは世界通貨になれないし、金に結びつけることはデフレを恐れるアメリカ、EU、日本の金融政策を困難にする。人民元は、まだ、国際的に使用できない。つまり、ドルの国際通貨体制はまだ支持されるでしょう。
国際通貨の交替は、発行国の経済規模や世界貿易に占める割合だけでなく、世界の投資家がその国の金融政策を信用しなければ起こりません。中国政府は次第に人民元の国際的な利用を認めるでしょう。ユーロ圏も制度的な欠陥を解消し、アメリカ・ドルに負けないユーロ債券市場を形成するでしょう。こうして、世界は複数通貨体制に移行します。アメリカも財政赤字を減らす目的として、ドルの国際的な利用を考慮しておくことです。
FT February 9 2011
India’s business titans are losing their lustre
By David Pilling
WSJ FEBRUARY 10, 2011
Nothing Inevitable About India's Rise
By SADANAND DHUME
WSJ FEBRUARY 9, 2011
Thailand's Rising Nationalism
By PAVIN CHACHAVALPONGPUN
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The Economist January 29th 2011
Protests in Egypt: The scent of jasmine spreads
France and the G20: Uncharacteristic modesty
India: Identifying a billion Indians
Mobile services in poor countries: Not just talk
The MacFlation index: Lies, flame-grilled lies and statistics
Economics focus: Dancing elephants
(コメント) エジプトの反政府デモは、この時点で、まだ、革命前のジレンマです。独裁者か、選挙によるイスラム過激派か? そして独裁者は、民衆に自由を与えても、再び弾圧しても、いずれでも支配を失う恐れが強いのです。ムバラクが国外に出ることが、平和的な移行の条件だ、と考えています。
フランス大統領の大げさな演説が、G20を利用した人気取りとして、しぼんでいくさまを描きます。インド政府が10億人に個人認識証を発行するシステムに加えて、携帯電話サービスが貧しい国でこそ急速に普及するコンピューターの端末になっていることが、密接に結びつきます。
ビッグマックの価格で為替レートの過大・過小評価を識別する考察に代わって、新興諸国から主要国に広がるインフレの脅威を測る尺度として議論します。また、インドの成長が民間部門の新興企業群によるものだ、という宣伝に反して、旧来型の財閥企業がすべて生き残り、新しい寡占体制になるかもしれません。