IPEの果樹園2011

今週のReview

2/7-2/12

 

*****************************

IPEの想像力 2/7/11

帝国の時代にも、外から秩序を再編することは不可能であったと思います。

エジプトにおけるアメリカのジレンマは、朝鮮半島でも起きるでしょう。旧ユーゴ内戦やイラクのような権力の空白を回避するため、アメリカ政府や国際機関は軍事独裁者や軍部と妥協します。情報がない新しい指導者を支援せず、それは民衆の信頼を損ないます。

アラブ世界の旧秩序崩壊のジレンマは、富と権力の癒着・不平等が拡大し、アメリカの支配と影響力を排除しつつある、新興アジアの政治秩序でも再現されるでしょう。

すでにエジプトの事態は変化を遂げています。広場へ乱入した政府支持派が、軍事体制下のタイで起きているような、政府支持派と反政府派のデモ隊が衝突する様相を再現し始めたとき、アメリカ政府の姿勢は軟化しました。オバマ大統領はムバラク政権下の平和的な体制移行を明確に支持する声明を発しています。

・・・民衆の革命を恐れるなら、シンガポールのまねはするな、とWilliam J. Dobsonアラブの独裁者たちに教訓を示します。弾圧を強めて、表面的な民主化や自由化を行い、援助の条件となっている中身のない経済改革を行う。不満をもつ若者たちは海外に出稼ぎさせればよい、と。油田であれ、核兵器であれ、グローバルな富を要求できる手段さえ押さえれば、民衆の不満を分散し、スポーツや人種差別、競争的ナショナリズムで吸収すればよい。

カイロでも、ダヴォスでも、北京でも、グローバルな政治経済秩序を再編する計画は示されていません。それは今も、グローバルな債券市場にかかっています。

莫大な富を得た若い新富裕層が、市場だけでなく、寄付や慈善活動を通して、世界を再編し続けます。そして、3000メートルを超える巨人たちが駆け巡るグローバルなネットワークからも、タハリール広場の民衆たちからも、新しい政治秩序を求める声が聞こえます。

*******

日本では、伝統的な巨人たちの大相撲が中止となりました。

かつて不良債権処理問題で、日本の主要銀行や政治家は何度も言葉だけの謝罪や解明を繰り返し、幕引きを図りました。

相撲協会の力士たちに八百長や賭博がなくならないのも、力士たちの練習や勝負の結果と報酬との関係が、正しく結び付いていないからではないでしょうか? 興行収入や放映権をめぐる相撲部屋の管理・執行体制が、また,親方株の売買など、相撲組織全体のガバナンスが、力士の意見や経済・社会の変化を反映していないと思います。行動規範や道徳観を強調するだけで、制度の変化を嫌う「国技」の制約が解決を難しくしているのかもしれません。

真実を隠蔽し、仲間内の恥を外へ漏らさない。それは、アラブ世界の独裁者が支配体制を化石化した論理と同じです。他方、名門チーム・インテルに移籍した長友選手の躍動感こそが,感動的でした。

*******

菅内閣の支持率が低下している理由はいくつかあるでしょう。財源不足でマニフェストが実現できない、小沢一郎の政治資金問題を処理できない、与謝野馨大臣を入れたことは筋が通らない、消費税率を引き上げる、TPPに参加して国内農業を破壊する、領土問題や外交において弱腰だ、さらに、失業や貧困、デフレの問題を解決できていない。

日本企業はますます悲観し、円高を利用して海外に逃げていくのではないか? 年金制度が破綻するのではないか? さまざまな不安や疑問があります。

政府の姿勢や能力が厳しく問われるのはいいことだ、と断言してください。いずれの党派であれ、これらの根本的な問題を避けては権力を握れないのですから。ガバナンスを革新して,政権が続くことを私は願います.閣僚たちは議論を自ら展開し、政府が何をしようとしているのか、何度でも国民を説得してください。

あるいは、日本政府にも、シンガポールのまねはするな、と助言するべきでしょうか? アメリカがアジアの秩序を再編してくれるまで待つのが、決して民主的とは言えない周辺地域との関係を維持する基本だ、と。

まず日本国内から、民衆の力で政府や秩序が変わる可能性を示すことです。

そして,新しい財政政策の協調によって、アメリカと同時に炭素税を導入してはどうでしょうか? 温暖化ガスの排出削減目標を達成し、自動車産業では一気に炭素節約型の投資が増えるでしょう。観光や高齢化ビジネスも重要です。しかしそれ以上に、環境とバイオが世界競争に参加する日本の新興ハイテク産業であるなら、あのシンガポールと競争しなければなりません。

******************************

ダヴォス・マンたちの世界経済会議 ・・・タハリール広場の民衆によるエジプト革命 ・・・人材育成や産業振興をめぐるアジアとアメリカの激しい競争 ・・・ユーロ危機の現在 ・・・国際商品価格の上昇とホット・マネーの流入で、誰が金利を上げるべきか? ・・・アメリカの金融危機はなぜ起きたか? ・・・炭素税の導入 ・・・不平等と新富裕層の巨人たち

******************************

主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


l         ダヴォス・マンたちの世界経済会議

WP Tuesday, January 25, 2011

Five myths about Davos

By Moises Naim

Davosthe World Economic Forum)とは何か? 1月後半に5日間、議論、ネットワーク作り、食事、スキーに集まる。1971年、ドイツ人の経営学者、Klaus Schwabが創設した。ヨーロッパの経営者たちがアメリカの仲間と話し合う、the European Management Forumであった。その後、テーマを拡大し、1990年代から、貧困、気候変動、軍事紛争、なども議論するようになった。

しかし、集まる目的は何よりネットワーク作りである。世界経済の将来や政治体制を変える相談などない。たとえ政治的に重要な瞬間に集まっても、彼らは何も決定しなかった。酔って帰るだけだ。

2004年、Samuel Huntingtonは、国家への忠誠をもたないグローバルエリートのことを「ダヴォス・マン」と呼んだ。しかし、今は違う。中国やインドからの経営者も多く参加し、彼らが国家とのかかわりを否定するはずもないし、自由市場のイデオロギーを批判するフォーラムもある。Davosはソ連崩壊を予想していなかったし、ラテンアメリカ、ロシア、アジアの通貨・金融危機を予測できなかった。世界金融危機も考えなかった。彼らの話題は常識的なものだ。エリートたちのコンセンサスを反映している。

Davosは肥大化し、有名人にあふれ、中身がない。しかし、批判にもかかわらず、世界中から30カ国の政府首相、50人の多国籍企業幹部、そして、NGOsのトップ、編集者、ジャーナリスト、学者、シンクタンク、ノーベル賞受賞者、なども多く集まる。世界最大の企業1400社から重役が参加する。

The Observer, Sunday 30 January 2011

Where are the leaders who will reform the world's economy?

Will Hutton in Davos

グローバルな貿易と金融の流れを組織するシステムの改革が必要である。誰が、どのように、協力を組織し、その成果を分配するべきか? ダヴォスに来ても、グローバルな秩序をめぐる知的・政治的空白は深刻だ。債券市場や金融機関だけが、市場やドルを通じて権力を強める。

guardian.co.uk, Monday 31 January 2011

Why global trade treaties need fixing

Kevin Gallagher


l         タハリール広場の民衆によるエジプト革命

FT January 27 2011

Be careful what you wish for in Arab world

By Anthony Cordesman

デモの群衆に多くの関心が集まるけれど、破綻した政治体制をどうして再建できるのか、西側の対応には限界がある。旧い破綻国家が新しい破綻国家に代わるだけかもしれない。

アラブ世界の反体制派には次の政治に向けた合意がない。何に対して反対するかは明確でも、何に向けて合意できるかが分からない。エジプトの反対派は分裂し、経験不足だ。ムスリム同胞団も弱体で、実際的な政策を持っていない。群衆が政治体制を倒しても、経済状態は悪化するばかりで、彼らの不満を解消できる政府はどこにもない。

「国民は真実の雇用を求め、汚職をなくし、公平な分配を求め、体制を維持するためではなく、国民を守る警察や法律を望んでいる。」

多くの若者が失業している。経済停滞、治安悪化、テロ、そして貧弱な統治に比べて治安維持に偏った予算に彼らは苦しむ。どの党派が政府を担っても、経済援助を効果的に利用し、汚職や略奪による浪費を許さず、民間部門や地域を重視した、バランスのとれた予算を立てねばならない。そのために欧米は支援する必要があり、民主化、人権、法の支配など、自分たちの価値を押しつけるのは止めるべきだ。体制転換や中央権力の支配にばかり注目するのも間違いだ。

新旧のガバナンスにおいて、国民の生活を改善できるものは何でも支持することだ。北アフリカは地中海によってEUと結びつき、アラブ世界は中東和平を通じてアメリカと結びつく。

「悲しいことに、アメリカはエジプトの真に重要な問題に取り組む用意がないし、アラブの友好諸国におけるより平和的な改革を促す予防策にも余り関心を示さない。」

WP Thursday, January 27, 2011

Warily watching the Arab revolt

By David Ignatius

指導者のいない、突発的な暴動a "flash mob"によって、専制政治は倒されつつある。彼らはインターネットが刺激した、腐敗し、暴力的な弾圧を恐れぬ若者たちだ。

アラブ世界は、10年前、20年前にも、今と同じ状態であった。しかし、彼らは暴動を起こさなかった。100年前から求められ続けたアラブ世界のルネッサンスが、なぜ今、起きつつあるのか? 過去の世代は支配体制を恐れていた。しかも今、アメリカの関与も信用されなくなった。オバマ政権は中東和平に失敗し、レバノンのヒズボラとその支援者、イランの抑制にも失敗した。アメリカはもはや、体制の不安定化を鎮める、ボトルの蓋になれない。

歴史が教えるように、自発的な革命の初期の理想は、次第に、組織された革命エリートのイデオロギーに乗っ取られる。イランの「革命防衛隊」のように。

若者が増大する国では、彼らに十分な仕事を用意する成長率が求められる。エジプトは今の5%ではなく、少なくともインドと同じ8%か、それ以上を必要としていた。それに失敗すれば、革命は避けられない。

エジプトのビジネスマンは政治体制が崩壊する不安を表現する。「それは長期的に観て望ましいが、短期的には悪化するだろう。」

LAT January 28, 2011

Cairo's restless streets

guardian.co.uk, Friday 28 January 2011

Protests signal the end of Egypt's 'Pharaoh complex'

Riham Ibrahim

かつてサダト大統領は自分をファラオとして描いた。エジプト人はいつも、支配者を無謬の王様と見なしてきたのだ。学校では王の偉業をたたえる作文を書かされた。彼のほかに権力を担える者はいない。その責任に耐える者はいない。

しかし、デモの群衆は大統領の立候補を批判した。今すぐに辞任し、国外に出ることを求める者もいた。過去30年間、そのような要求は無かった。こうしたデモは考えられなかった。

The Pharaoh complex is no more.「ファラオの固定観念がもはや失われた。」

FT January 28 2011

Man in the News: Hosni Mubarak

By Roula Khalaf

YaleGlobal , 28 January 2011

The 21st Century Arab Awakening?

Jean-Pierre Lehmann

「毛沢東の死後、グローバリゼーションを受け入れた中国が世界の指導的な地位を得た。インド、ベトナム、ブラジル、ペルー、南アフリカも同様の道を進んだ。アラブ諸国は世界化を拒み、グローバリゼーションの孤児になった。」

しかし、政府が拒んでも、情報や文化はグローバリゼーションの影響を受け、人々はますます海外に出稼ぎへ向かい、彼らの送金によって経済は維持されている。

人々は「イランのシナリオ(イスラム原理主義による新体制)」を恐れる。しかし、インドネシアやマレーシアはそうではなかった。この地域に最も関係があるのは、トルコだろう。穏健なイスラム主義、リベラルな市場経済、新興企業家たちによる経済転換によって21世紀のグローバルな成長経済を実現しつつある。

ヨーロッパはそれを助けることができる。「アラブ世界の目覚めは見果てぬ夢ではない。」

FP JANUARY 28, 2011

The New Arab World Order

BY ROBERT D. KAPLAN

アラブ世界の反体制デモが何であるか、というより、何でなくなったか、が重要だ。彼らはイスラエル占領下のパレスチナ人ではない。彼らは反西欧、反米でもない。デモ参加者が怒る対象は、失業であり、専制支配体制であり、自分たちの社会に尊厳や正義が失われたことだ。これは近代中東の歴史において大転換を示している。

1978年、79年のイラン国王に対する反体制派のデモと比較すれば、その違いがわかる。各地の反政府デモにはカリスマ的指導者がいない。宗教的なイデオロギーを掲げる、反米組織もいない。エジプトのムスリム同胞団はコミュニティーの互助団体である。イランで起きたような革命運動の乗っ取りは起きないだろう。ムバラクでさえ、イラン国王ほどアメリカと利害が一致しているとは思わないだろう。1978年のイランとは、似ている点よりも、異なっている点の方が多い。

アラブ世界の新しい指導者たちは、今後数十年間、イスラエルやアメリカに反対するより、彼らの社会が抱える問題に対応しなければならない。その意味で、政治は過激化するより、正常化するのだ。アル・カイダの主要な目標が、アメリカとイスラエルの利益に従うムバラクを追放することであった。ムバラクが去れば、アル・カイダの活動は沈静化する。

しかし、アラブ世界でアメリカの利益を守ることは非常に難しいだろう。たとえばヨルダンで、より開明的で、親米的な指導者が登場することは望めない。サウジの王族を支援するために行った軍事援助の多くが過激派に流れたようなことが起きる。

今起きていることは、1989年に東欧で起きたことに似ている。しかし、その結果は国によって異なった。政治は選挙民を反映し、政治制度や教育水準を反映する。ポーランドとハンガリーは民主主義と資本主義を比較的容易に受け入れた。ルーマニアとブルガリアは何年間も惨めな貧困に落ち込んだ。アルバニアは無政府状態に苦しみ、ユーゴスラビアは内戦に至り、数十万人が殺害された。アラブ世界はいろいろな意味で東欧よりも分散している。アメリカの政策は、その国の政治的・歴史的な特殊事情を考慮しなければならない。

民主主義とは、複雑さを扱うことである。

FP JANUARY 28, 2011

Pharaoh's End

FP JANUARY 28, 2011

Democracy is not all that different...

Posted By Michael Singh

NYT January 28, 2011

Washington and Mr. Mubarak

FT January 29 2011

Egypt approaches an endgame

By Roula Khalaf, Middle East Editor

guardian.co.uk, Saturday 29 January 2011

We've waited for this revolution for years. Other despots should quail

Mona Eltahawy

The Guardian, Saturday 29 January 2011

Egypt: A pivotal moment

WP Saturday, January 29, 2011

Egypt protests show George W. Bush was right about freedom in the Arab world

By Elliott Abrams

ジョージ・W・ブッシュは正しかった。アラブ世界の数百万の人々が自由から取り残されることは、アラブの専制支配という歴史によって避けられないのか? 

もしムバラクやその他の支配者が警察による弾圧に向かうなら、アメリカの発言は重要だ。

WP Sunday, January 30, 2011;

How should the U.S. respond to the protests in the Middle East?

guardian.co.uk, Sunday 30 January 2011

Tell everyone: Egypt's revolution is sweet and peaceful

Amr Shalakany in Tahrir Square, Cairo

guardian.co.uk, Sunday 30 January 2011

Three lessons Arab leaders can't ignore

Marwan Muasher

1.単なる物価の高騰や失業がデモの原因ではない。政府が懐柔策を採っても続かないだろう。民主的・政治的な権利を改善しなければならない。

2.アラブ世界のすべての国に革命の可能性がある。すべての指導者が責任を免れない。

3.イスラム過激派に権力を奪われないために、という弾圧の正当性は失われた。たった一人の抗議の焼身自殺から暴動が起きた。

手遅れになる前に、どの社会も長期的な政治改革のプログラムを示すことだ。アラブ世界の秩序は動揺しており、ガバナンスの貧困は誰にとっても著しい。絶対権力と特権を手放さないアラブの支配者たちは、さらに多くの革命を招くだろう。

SPIEGEL ONLINE 01/30/2011

The Arab Revolution

Nile Insurgency Creates Uncertain Future for Egypt

FT January 30 2011

Army will craft a post-Mubarak era

Bassma Kodmani

LAT January 30, 2011

A proud moment in Egypt's history

By Scott MacLeod

「私は猫といっしょにアパートで膝を抱いている。外では銃声が一晩中響いていた。近所のスーパーマーケットは略奪され、放火された。家主のTareqさんは土曜日に来て、近所の人たちと助け合って通りにバリケードを築き、われわれを武装集団の暴力から守る、と言った。

しかし私は、今なお、エジプトの将来を、これ以上ないほど楽観している。

次に何が起きるかわからない。政府が愚かなことを行う時間はまだたっぷりある。それでも若者たちの指導する暴動はナイルを渡って広がるだろう。これは中東における1989年のベルリンだ。根本的な政治的変革が進行している。それは結局、アラブ民族の大部分にとって、民衆が支持する政府をもたらすだろう。それがこの地域のモデルとなる。

私は中東を30年間、旅して、住みついたアメリカ人ジャーナリストとして、オバマ大統領が今起きていることを十分に把握していないことに驚き、狼狽している。エジプトにおける自由を求める運動を彼が全面的に支持しない理由を理解できない。」

NYT January 30, 2011

Date With a Revolution

By MANSOURA EZ-ELDIN

NYT January 30, 2011

The Devil We Know

By ROSS DOUTHAT

「もしムバラクが独裁者として30年間もエジプトを支配していなかったとしたら、ワールド・トレード・センターは今もそこに立っているだろう。」

アル・カイダの歴史を研究したLawrence Wrightは「9・11のアメリカの悲劇はエジプトの刑務所で生まれた。」と書いた。エジプトのムスリム同胞団に加えられた弾圧、投獄、拷問、国外追放は、ムバラクを国内のイスラム革命から救ったが、彼らの過激化と国際化を促した。たとえば、ビン・ラディンの右腕となったAyman Al-Zawahiriのように。

すべてのドアには悪魔が潜む。いずれの外交政策にも難民が残される。リベラルな国際介入であれ、リアル・ポリティクスであれ、ネオ・コンザーヴァティブであれ、非介入主義であれ。民主主義を支持せよ。干渉するな。国際機関が平和を維持する。いや、バランス・オブ・パワーが平和を維持する。・・・

歴史が示すのは、すべてが間違いだった、ということだ。

われわれは独裁者と取引し、テロの嵐に遭う。われわれは民主主義を育て、イスラム過激派が政権を握る。人道主義的な介入によって、ソマリアの惨劇は生じた。われわれが介入しなかったために、ルワンダのジェノサイドが生じた。アフガニスタンに介入し、体制が瓦解して、タリバンがよみがえった。われわれはアフガニスタンにとどまり、そこで罠に落ち、終わりが見えない。

いずれにせよ、すべての理論は間違っている。世界は余りにも複雑であり、悲劇に満ちている。われわれは知らないことを比較し、競い合う邪悪な者たちの間で選択する。

guardian.co.uk, Monday 31 January 2011

It's too early to judge Obama on Egypt – but advice for him is plentiful

Simon Tisdall

guardian.co.uk, Monday 31 January 2011

In Egypt and Tunisia the will of the people is not a hollow cliche

Peter Hallward

FP Monday, January 31, 2011

A realist policy for Egypt

Posted By Stephen M. Walt

WP Monday, January 31, 2011;

Egypt's uprising should be encouraged

By Anne Applebaum

1989年に、ダヴォスで人々が何を語っていたか、それは知らない。しかし、エリートたちはいつも危機を嫌う。

チュニジアの革命の影響は?と訊かれたエコノミストは、ほとんどないだろう、と応えた。かつて、ウクライナが住民投票で独立する直前に、George H.W. Bush大統領は自殺行為だと非難した。

「政治家は安定性を好む。銀行家も安定性を好む。しかし、アラブ世界で使ってきた「安定」というのは、本当の安定性ではなかった。弾圧だ。われわれが支持し、いずれにせよ我慢してきた独裁者たちは、チュニジアのベン・アリ、エジプトのムバラク、その他、多くの王様や皇太子だが、権力にとどまることで経済発展を妨げ、自由な言論を沈黙させ、教育を厳しく管理し、市民社会に近いあらゆるものを抑圧してきた。

その結果、エジプトは、他のアラブ社会と同じく、その頂点に、裕福な、十分に武装したエリートがおり、底辺には狂信的で、十分に組織されたイスラム原理主義者の運動ができた。両者の間には、膨大な、組織されない人々がおり、政治に参加したことがなく、そのビジネス活動は汚職と縁故主義に妨げられ、愚かな法律と疑い深い官僚制によって、彼らは外の世界との交流を断たれてきた。」 インターネットが遮断されても、反政府デモは19世紀的な革命を続けた。

この10年にわたって、アメリカ政府やジャーナリストたちはアラブ世界の自由や民主主義を支持してきた。しかし、大統領や国務長官は、石油、イスラエル、テロとの戦い、など、ほかのことに関心があった。その方がいつも重要に見えたのだ。だからアメリカの援助はエジプトの軍や警察に向けられた。カイロの警察がデモ隊に撃つ催涙弾には"Made in the USA"のラベルが貼ってある。

エジプトの潜在的な次の指導者たちはそれを知っている。かつて1980年代に中欧の新しいエリートたちがわれわれと協力したことがなかったように、エジプトの新しいエリートたちもアメリカ政府と協力するのは難しい。ジョージ・W・ブッシュ大統領は中東の民主化を唱えたが、イラクに侵攻した。民主化を助けるには、ジャーナリストや裁判官、教育者を支援し、独立したメディアや開かれた討論を重視するべきだ。

WSJ JANUARY 31, 2011

The Economic Roots Of the Revolt

By ZACHARY KARABELL

WP Monday, January 31, 2011

Misconceptions about the Egyptian crisis

NYT January 31, 2011

Allying Ourselves With the Next Egypt

By JOHN KERRY

NYT January 31, 2011

Exhilarated by the Hope in Cairo

By NICHOLAS D. KRISTOF

NYT January 31, 2011

The Quest for Dignity

By DAVID BROOKS

およそ50年前に、世界の論調は変化し始めたようだ。その潮流が起きる前は、民衆が自分たちの社会的地位を固定されたものと考えていた。彼らは信頼された権威者の意見を受け入れていた。しかし、新しい潮流によって、彼らは自分たちを違う視点で理解し始めた。彼らは意見を述べ、尊厳を求める。

世界各地で、尊厳を求めて、彼らは行進している。エリートたちと異なる意見をもち、それが無視されていることに侮蔑を感じる。こうした民主化は、ロシアでも、ウクライナでも、南アフリカでも起きたことだ。

「尊厳の要求は、重要な民主化の波を起こしてきた。過去数十年のうちに、100カ国以上で民主化の蜂起が行われ、85以上の専制的な政府が打倒された。広い意味で、65カ国が民主主義に転換した。」

それらを通じて得られる教訓とは、1.専制体制は、他の政治形態よりも、はるかに脆弱である。2.世界的な論調の変化はエジプトの革命に強い影響を及ぼした。3.多くの悲観論にもかかわらず、民主化のために蜂起した国の生活水準は改善された。4.専制政治から民主主義への道は困難、かつ、危険が多い。そして、外部の世界がなすべきことは、革命のあとにくる。民主主義体制が機能するように、国際的な支援が必要だ。

ところがアメリカ政府はいつも失敗する。尊厳を求める人々の蜂起を観て、驚き、権力者の仲間意識を尊重する。事態の進行について行けない。ムバラクが改革を指導するなど、愚かな提案だ。

NYT January 31, 2011

Exit the Israel Alibi

By ROGER COHEN

FT February 1 2011

Egypt can bring in the Brotherhood

By Ed Husain

FT February 1 2011

Stagflationary risks rise from the Arab street

By Nouriel Roubini

チュニジアとエジプトの政変は世界経済に重大な影響を及ぼす。世界の石油と天然ガスの推定埋蔵量は、その3分の2と半分が中東地域に集中しているからだ。

過去5回の世界的な規模の不況は、そのうちの3回が中東の政変と石油価格の上昇に続いて起きた。1973年のヨム・キッパー戦争が石油価格高騰とグローバル・スタグフレーションをもたらした。1979年のイラン革命は同様のスタグフレーションと1980年の不況をもたらした。1990年のイラクによるクウェート侵攻は、アメリカにおけるS&L危機と不況につながった。

2007年にサブプライム・ローンが破綻したときも、2008年まで世界金融危機は起きなかった。それは単にリーマン・ショックによるのではなく、2008年末の石油価格が12カ月間で約2倍にまで上昇し、1バレル148ドルに達したからだ。アメリカの交易条件や実質所得にマイナスの影響を及ぼしただけでなく、ヨーロッパの多くの国や日本、そして、中国や、石油・エネルギーを輸入する新興諸国にも同様の影響を及ぼした。

中東の権威主義体制が崩壊した後、より過激な、不安定な政治体制が誕生するリスクがある。これまで「自由な選挙」や「民主化」が中東世界にもたらしたものを見れば、そのリスクは無視できない。他にも、イスラエルとイランや、パレスチナ紛争など、地域の紛争が激化する懸念がある。

他の国際商品価格の上昇と同じく、石油価格も上昇している。もしチュニジアやエジプトの危機が長引き、石油価格の上昇がさらに加速すれば、世界不況が二番底となって、金融危機からの回復は終わってしまう。

guardian.co.uk, Tuesday 1 February 2011

When Egypt shakes, it should be no surprise that Israel trembles

Jonathan Freedland

guardian.co.uk, Tuesday 1 February 2011

Why fear the Arab revolutionary spirit?

Slavoj Žižek

guardian.co.uk, Tuesday 1 February 2011

Egypt revolt has Iran in a spin

Simon Tisdall

Feb. 1 (Bloomberg)

Egypt’s Improbable Path Traces Four Points

Mohamed A. El-Erian

LAT February 1, 2011

Hope amid the chaos in Cairo

Jonah Goldberg

LAT February 1, 2011

A second chance for democracy in Egypt

Maher Hathout

NYT February 1, 2011

B.E., Before Egypt. A.E., After Egypt.

By THOMAS L. FRIEDMAN

イスラエルの将軍は述べた。中東の歴史は、このエジプトの政変によって大きな転換となるだろう。すなわち、エジプト革命以前(B.E.)と、エジプト革命以後(A.E.)、である。

過去35年間、イスラエルの平和理論はエジプトの安定性を前提していた。エジプトの政権崩壊は、アメリカにとって、カナダとメキシコで同時に政変が起きたようなものだ。しかもそれは、地域の核武装が始まるそのときに起きた。

NYT February 1, 2011

Beyond Mubarak

NYT February 1, 2011

Israel, Alone Again?

By YOSSI KLEIN HALEVI

WP Tuesday, February 1, 2011;

A democratic Egypt or a state of hate?

By Richard Cohen

WP Tuesday, February 1, 2011;

Arabs' urge for self-government shouldn't be a surprise

By Michael Gerson

WP Tuesday, February 1, 2011;

For Egypt's Mubarak, push has come to shove

By Eugene Robinson

FP FEBRUARY 1, 2011

From Tahrir to Tiananmen

BY ABRAHAM DENMARK

エジプト、チュニジア、イエメンでも、初めてトマス・ジェファーソンの言葉が理解されるだろう。「民衆が政府を恐れるとき、それは独裁である。政府が民衆を恐れるとき、それは自由である。」 中東では、これまで民衆が体制を恐れていた。しかし、街頭が抗議デモで埋まるとき、体制もようやく民衆を恐れるようになった。・・・中東の体制が不安を感じているだけではない。北京もまた強い関心を示している。

中国のインターネット利用者は45700万人いるけれど、検索エンジンはエジプトを示さない。中国政府の重要課題は、人々の中東情勢に対する関心を消すことである。中国はエジプトの民衆が苦しんだ経済停滞を共有していない。しかし、成長による共産党の正当性は、一層の成長加速を求め、もし減速が起きれば、正当性を失う恐れがある。

今、中国の指導者たちは恐れていないだろう。成長を維持し、不満は地方に抑え込まれ、都市には波及しない。天安門もエジプトも、中国のインターネットでは消されている。それでも,ブルジョアに対する民衆の蜂起で権力を得た共産党が、今は民衆を激しく恐れる。

FP FEBRUARY 1, 2011

Mubarak's 9 biggest mistakes

Posted By Blake Hounshell

FT February 2 2011

Egypt’s army looks beyond Mubarak

By Yezid Sayigh

guardian.co.uk, Wednesday 2 February 2011

The forces unleashed in Egypt can't be turned back

Seumas Milne

guardian.co.uk, Wednesday 2 February 2011

The Egyptian regime has turned its thugs loose again ...

Ahdaf Soueif

民衆は政府よりもはるか先を進んでいる。イスラム原理主義から西側を守るという政府の言い訳はまるで間違っているということが、街頭の子供たちを観ても分かるだろう。11人の若者たちがFacebookで始めた運動は、その一つであるが、穏健な宗教的色合いしかない。広場にできた小さな診療所に集まる若い、多くは女性のボランティアの医師たちを観ても、好意によって医薬品を得て治療している。

エジプトは野蛮な体制の陰から出て、陽のあたる場所を得るにふさわしい。

guardian.co.uk, Wednesday 2 February 2011

If this is young Arabs' 1989, Europe must be ready with a bold response

Timothy Garton Ash

ヨーロッパの将来は、かつて1989年のプラハ、Wenceslas Square にかかっていたように、今や、カイロのTahrir Squareにかかっている。それは地理学と人口学において明らかだ。アラブ世界の危機は地中海を囲むヨーロッパ近隣の一部である。さらに、数十年に及ぶ移民過程を経て、カイロやチュニス、アンマンで街頭に現れた若者たちは、マドリードやパリ、ロンドンに住む多くの親類の甥たちだ。

地中海のイスラム世界が近代化のモデルとなるか、あるいは、イスラム過激派と自爆テロの源となるか、EUの将来に重大な影響を及ぼす。

社会を媒介するインターネットとメディアに加えて、組織された政治集団が決定的に重要だ。イスラエル人が心配するように、これは1989年の東欧ではなく、1979年のイランかもしれない。宗教と関係ない、左翼的な要素をもった、広範な民衆の抗議デモが、イスラム原理主義者に乗っ取られた。それは彼らが組織されていたからだ。

EUやアメリカは明確な支持を表明していない。もっと迅速で、柔軟性と想像力に富んだ、もっと大胆な発言と行動が、自分たちの未来を作る。

guardian.co.uk, Wednesday 2 February 2011

Egypt protests: Mubarak shows his dark side

Simon Tisdall

ムバラクが体制を維持するための暴力集団を投げ入れ、邪悪な工作を始めた。各地の民主化運動が襲撃された。その襲撃は時間を決めて、協力した行動だった。独裁者が抗議を静かに我慢することなどない。

旧来の反革命はエジプトの変化を反映していないが、流血が革命の将来を不確かなものにする。

WSJ FEBRUARY 2, 2011

China Isn't Immune to Nile Fever

エジプトの停滞が危機を呼んだ。高成長を続ける中国には起きないだろう。しかし、それほど単純ではない。所得水準、不平等は言われるほど大きく異なっていない.インフレーション、失業率がエジプトの若者をデモに走らせた。

さらに詳しく見れば、中国でも1980年代のインフレは社会不安と争議を頻発させた。今も成長は減速し、輸出部門や未熟練労働への過度の依存は改善されていない。実際、中国当局は危機の伝染を恐れている。インターネットのブログや検索は制限され、国営メディアが取り上げることは少なく、ニュースでは抗議デモが否定的に解説される。

1989年の東欧がそうであったように、中東の革命も北京の政治思想に深く影響するだろう。このままインフレが進めば、中国の安定性が幻想であるとわかる。

WSJ FEBRUARY 2, 2011

After the Revolution, Economic Reform

By CARL SCHRAMM

LAT February 2, 2011

America's 'Islamist dilemma'

By Shadi Hamid

NYT February 2, 2011

Egypt’s Bumbling Brotherhood

By SCOTT ATRAN

NYT February 2, 2011

Watching Thugs With Razors and Clubs at Tahrir Sq.

By NICHOLAS D. KRISTOF

WP Wednesday, February 2, 2011;

The Arab revolution grows up

By David Ignatius

アラブ世界の革命は進化した。エジプトの軍隊は政治に介入しない。むしろバランス・オブ・パワーを維持している。

アラブ世界の指導者たちは改革の必要を知っている。しかし、改革派はしばしば親米派と見なされた。ブッシュ政権はアラブ諸国の改革派を道連れにした。

エジプトの抗議デモは、旧来のスローガンを掲げていない。「アメリカに死を」。「イスラエルに死を」。それらが何世代も政治論争を支配してきた。

WP Wednesday, February 2, 2011;

How to achieve real reform in the Arab world

By Marwan Muasher

アラブ世界において現状維持は不可能になった。改革を指導するか、街頭を抗議デモが埋めるのを観るか。

アラブ世界は強固な支配体制を築いた政治エリートに苦しんできた。不労所得を組織し、特権を支配する。化石化したエリート層は下からの改革を拒み、見せかけの改革で済ませてきた。

ヨルダンの外相と副首相を務めたMarwan Muasherは、アラブ世界に必要な改革の要点を、強い議会、チェック・アンド・バランス、教育システム、に要約します。疑問を持ち、異なる思考を受け入れるような教育を行う。良い市民であるために、政府に忠誠をつくし、多様性や批判的思考を反逆と見なす、と信じた世代を終わらせる。

「政治改革はバランスのとれた成長に必要である。政治改革をともなわない自由化は成長の果実を平均的な市民から奪って、ビジネスエリートだけが勝者になる。それゆえアラブ人はグローバリゼーションや経済自由化を否定的に語る。持続的な成長は、政治改革なしに起こり得ないという状況にわれわれはいる。」

YaleGlobal , 2 February 2011

The Arab Rising – Part I

Susan Froetschel

WSJ FEBRUARY 2, 2011

Where Should Egypt Go From Here?

Francis Fukuyama, Ryan Crocker, Maajid Nawaz and Amr Bargisi

論客たちの将来像です。

たとえばFrancis Fukuyamaは、「なぜアラブ諸国の民主化は、ラテンアメリカや東欧諸国より、20年も遅れたのか?」と問い、独裁体制の対西側戦略(イスラム過激派の脅威)が成功して、リベラル派の運動が孤立し、十分に組織されなかった、と考えます。あるいは、同様の意味で、Ryan Crockerは軍組織を重視し、Maajid Nawazはイスラム過激派にカリスマ指導者がいないことを指摘します。

FP Wednesday, February 2, 2011

What a shifting Egypt means for the U.S.

Posted By Kori Schake

LAT February 3, 2011

Beirut calling

By John R. Bolton

FP Thursday, February 3, 2011

Egypt Endgame

Posted By Marc Lynch

オバマ政権はムバラクに「秩序ある体制移行」を求めた。しかし、反革命の暴力集団を動かしたことで、ムバラクはこの助言を受け入れないとわかった。エスカレーションが敵対的に加速するだろう。エジプト軍は選択を迫られる。ムバラクを今すぐに辞任させるか、国際的な孤立とアメリカとの関係を断絶するか。

ムバラクは最初から時間を稼ぐつもりだった。そしてさまざまな譲歩や同盟を形成して、権力を維持する。イスラム過激派の恐怖を煽り、外国の介入に対するナショナリストの不満を刺激する。軍指導部の権益を擁護し、国際的な指導者たちとの同盟を利用する。しかし、その戦略はそれほど効果的ではなかった。

オバマ政権は圧力を強めるだろう。アメリカ政府が辞任要求を早期に行わなかったのは正しい。アメリカは30年間もムバラクの同盟者だった。ムバラクが改革を受け入れるなら、それを支援する用意を示すべきだ。ムバラクの辞任要求には、次の政治体制を準備しなければならなかった。

ムバラクがアメリカの考える禁止行為に及んだ以上、即座に辞任せよと要求する以外の選択肢は無くなった。もはやアメリカはムバラクと取引しないだろう。軍部はムバラクから離れるように明確に求められる。それを実行しなければ、彼らは政治的・財政的なコストを支払う。

エジプトは経済支援を失い、国際政治の孤児になる。移行が始まれば、それを回避できる。

guardian.co.uk, Thursday 3 February 2011

If Egyptians want change, then they should have it

Martin Kettle

NYT February 3, 2011, 12:01 pm

A Week in Egypt’s Twilight Zone

By AMR SHALAKANY


l         人材育成や産業振興をめぐるアジアとアメリカの激しい競争

FP JANUARY 27, 2011

The Great Invention Race

BY ADAM SEGAL

NYT January 29, 2011

Serious in Singapore

By THOMAS L. FRIEDMAN

シンガポールの普通の小学校で、11歳の少年少女が理科の時間に何を学ぶか? 校舎の外は殺人現場になり、警察官が偽の黄色いテープを張って立ち入り禁止場所を作った。血まみれの死体もある。教室では指紋からDNA採取の方法を学んでいる。理科の先生は生徒たちを捜査官に任命し、現場から指紋を採取させた。

校長先生は、この授業をシンガポールの国家的なバイオ産業育成に合わせて、子供たちの歓心を養いたいから始めた、と説明する。そして、小さな捜査官たちがやって来て、THOMAS L. FRIEDMANの指紋も採取された。「私は無実だ。しかし、衝撃を受けた。」

彼女(校長)には、私たちが住む世界と、シンガポールが世界で何を目指すか、ということが結びついており、小学校5年生で何を教えるべきか、という問題に応えている。こうした原則こそ、アメリカの政策に欠けているものだ。医療保険制度でも、防衛予算でも、アメリカは若者たちの教育を軽視している。

シンガポールは小さな民主主義国家である。アメリカと同様に、多民族で、多くの労働者を抱えている。資源は無く、建設用の砂でさえ輸入している。それでもシンガポールの所得水準はアメリカのわずか下であり、高度な製造業とサービス部門、輸出によって栄えている。昨年はバイオ医薬製品の輸出が伸びて、14.7%の年成長率を実現した。

シンガポールがアメリカに教えることは一つだ。優れた統治(governing)の重要さ、である。世界で生きるためには、積極的に適応することで、繁栄する。「アメリカ人はまだセントラルヒーティング付きの煉瓦の家に住んでいるから、それほど適応する必要を感じていない。」と、シンガポールのエコノミストは考える。しかし、FRIEDMANは、これまではそうだったが、今は違う、と考える。

「シンガポールは世界で最も自由な市場を持つ。関税も、最低賃金も、失業保険もない。しかし、彼らは市場が正しく機能するためには規制が要る、と考える。シンガポールは住宅購入を援助し、教育を援助することで、誰もが自律する基礎を与える。シンガポールはドイツの制度を模倣した。高校を卒業した者は誰でも進学できるが、大学へ進むのは40%しかいない。他の者は技術専門学校や職業訓練所に進み、配管工であれ、科学者であれ、仕事のためのスキルを身につける。」

シンガポールのような、高度な政策の実施には、過激な自由市場と面倒見の良い乳母国家の融合が求められる。そして、内閣の閣僚たちは、一流のスポーツ選手や歌手と同じように、その才能によって、年間100万ドルを超える高額の報酬を約束され、ボーナスはシンガポールの年成長率によって計算される。これによって政府には高度な専門家が集まり、汚職は排除される。

FT January 30 2011

Economic growth is not a race to the moon

By Clive Crook

LAT January 31, 2011

The cosmo patriot

Gregory Rodriguez

オバマが呼びかけたa new 'Sputnik moment'は、冷戦時代の軍拡競争だ。グローバル化に対応した新しい世界秩序を指導する、というオバマに似合わない、時代遅れの発想である。


l         ユーロ危機の現在

guardian.co.uk, Saturday 29 January 2011

Spain, hostage to the eurozone

Mark Weisbrot

ドイツが優れているから、スペインはドイツのモデルに従えばよい、と考えるのは間違いだ。産業を再編し、労働組合を厳しく管理し、競争力を回復する。共通通貨によって切下げはできないから、欧州委員会は「内的な切下げ」と言われる、賃金や物価の引き下げを求めている。そのためにも、労働市場の弾力性や財政赤字の削減は重要視されている。

しかしMark Weisbrotは、これをネオ・リベラリズムと批判します。ユーロを採用してから、スペインの生産性はドイツに近付くよりも、むしろ遅れた、と指摘します。特に、ユーロがもたらした資本流入と不動産や株式、建設部門に偏った成長とバブルは、スペイン経済に一時的な繁栄をもたらし、長期的には競争力を損なったのです。

スペインの苦境を緩和する金融政策や財政政策も制約されて、競争力の高い国と共通通貨を採用することの問題点が示された、とMark Weisbrotは考えます。

FT January 30 2011

Sovereign debt: Pointers from the past

By Anousha Sakoui

ユーロ圏の財政破綻、デフォルトについて、1980年代のラテンアメリカの事例を重視しています。さらに論説は、2001年から2010年のアルゼンチン、1997年のアジア通貨危機によって債務危機に陥った諸国、など、新興諸国の債務危機から経験を学ぼうとしています。

当時、IMFは秩序ある債務処理メカニズム(“Sovereign Debt Restructuring Mechanism”)を制度化しようとして失敗しました。投資家の個人的な選択権を損なうことが問題とされたのです。それゆえヨーロッパ金融安定化ファシリティー(EFSF)では、フィリピンによる債務買い戻しが注目されています。

債務の組み換え”restructuring”では、デフォルトを避け、返済条件を調整した新しい債券(長期で低金利)と交換されます。債務額の見直しは債権者にとって受け入れがたいからです。1999年、パキスタンのケースです。

FT February 3 2011

Spain is not Greece and need not be Ireland

By Mohamed El-Erian


WP Friday, January 28, 2011;

To 'out-innovate,' we must let more immigrants in

By Edward Schumacher-Matos

FT January 31 2011

Roadblocks on the way to Schengen


l         国際商品価格の上昇とホット・マネーの流入で、誰が金利を上げるべきか?

WSJ JANUARY 28, 2011

A Two-Track Plan to Restore Growth

By JOHN B. TAYLOR

20か月連続で失業率が9%を超えている原因として、JOHN B. TAYLORは政府・連銀の景気刺激策が恣意的に繰り返されたことを指摘します。1回切りの刺激策は一時的な支出の増大をもたらすけれど、恣意的な刺激策を繰り返すと、その効果は失われるのです。財政赤字の累積と不確実性が国民を不安にするからです。

特に、金融政策は長期の物価安定だけを明確に目標とするべきだ、と主張します。

NYT January 30, 2011

A Cross of Rubber

By PAUL KRUGMAN

金融政策と為替レートの手段によるマクロ経済の均衡に関して、国際的に合意されたルールはなくなったのでしょうか? むしろ、何ら変わりない、と思います。国内ではインフレや失業を抑え、国際間では不均衡を抑える。金融ビジネスが国際不均衡を膨張させる過程が終わったことで、むしろ、そのルールは再確認されたわけです。

Davosに集まった銀行家たちは、政治家による銀行バッシングを嫌い、極端な低金利を嫌うようですが、PAUL KRUGMANは、高率の失業が続く中で金利を挙げることは間違いだ、と断言します。インフレの心配は欧米日ではなく、中国などの新興諸国にだけあるのです。そして、その解決策は世界の金利水準を挙げることではなく、為替レートを調整することです。

かつてドル安やインフレを批判したヨーロッパ諸国にアメリカが言ったように、KRUGMANも、中国のインフレーションは中国の問題だ(ドルのせいではない)、と述べます。人民元レートの変動を許せば、その増価によって解消されるのです。もしこのままインフレーションが高まって慣性を示せば、もはや容易に鎮静化できなくなります。

バーナンキは、国際商品価格の上昇を無視して、国内の失業率が高い内は金利を上げないでしょう。しかし、ECBのトリシェは違います。そこでKRUGMANは、かつて金本位制を批判したアメリカのポピュリスト政治家、William Jennings Bryanをまねて、経済をゴム(一次産品)の十字架に縛り付けるな、と主張します。

FT January 31 2011

The era of cheap capital draws to a close

By Richard Dobbs and Michael Spence

「世界経済はジレンマに直面している。先進諸国の成長を刺激する低金利が、ホット・マネーを生じて、発展途上諸国に為替レートのファンダメンタルズを超えた増価、インフレをもたらした。外貨準備の累積と資本流入規制から、関税や輸入割当のような保護主義的政策へ、政府は移行し始めた。」

しかし、この論説は事態は急速に逆転する、と予想します。資本供給の過剰より不足が、新興諸国への資本流入より流出が、問題になる、と。世界の資本需要は、戦後のヨーロッパや日本と比べても、かつてない水準に高まるだろう。他方で、それに見合う世界貯蓄の増大は期待できない。

それは、投資の活発な新興諸国だけでなく、財政赤字や公的債務を前提した旧工業諸国の債務危機、財政刺激策に依存した赤字企業の倒産にも及ぶだろう。資本移動に対する保護主義政策や黒字国の政府系信託に関する国際的なルールが、今以上に必要になる。

Jan. 31 (Bloomberg)

Pinnacle Envy Signals a New Bubble Is Inflating

William Pesek

Feb. 3 (Bloomberg)

Chili Peppers Indicate Inflation Is Heating Up

William Pesek


l         アメリカの金融危機はなぜ起きたか?

Jan. 28 (Bloomberg)

Wall Street’s Collapse to Be Mystery Forever

Jonathan Weil

金融危機調査委員会the Financial Crisis Inquiry Commissionは、その原因を特定しませんでした。ジャーナリスト的な手法でさまざまなケースを示すだけで、新しい情報は何もない。

NYT January 29, 2011

Washington’s Financial Disaster

By FRANK PARTNOY

報告書は混乱し、矛盾している。中身は三つに分裂したままだ。民主党員のまとめた410ページ(おなじみの諸原因を列挙し、ウォール街を批判)、共和党員の異論が10ページ(ぱっとしない反論)、そして、その共和党員とも違う、異論の異論がAEIの研究員による100ページ(政府による住宅購入への補助政策を批判)。

信用格付けやデリバティブの欠陥は既知の事実だが、3者が互いを全く無視したまま、目隠しして像をなでている。

LAT January 30, 2011

Roots of a recession

NYT January 31, 2011

Was the Financial Crisis Avoidable?

FT February 1 2011

How the crisis catapulted us into the future

By Martin Wolf

ダヴォスでMartin Wolfは考えます。・・・「世界金融危機で何かが大きく変わったか?」

1.金融規制緩和から規制の強化へ。2.高所得諸国の債務依存が抑制・縮小へ。3.グローバル・インバランスの逆転へ。ただし、中国はまだ不均衡を続けている。4.ユーロ圏内の不均衡と資本移動に比べて政治的合意は乏しく、バブルからユーロ危機へ。

危機によって加速した変化として。1.特に高齢化する諸国で、緊縮財政へ。2.グローバルな経済パワーの新興諸国へのシフト。3.西側、特にアメリカの姿勢に顕著な変化。4.さまざまな不確実さの増大。

・・・「中国は、グローバルな政治・経済システムについて、明確な計画を持っているのか、という議論に私は大いに興味があった。中国政府の事情にも詳しい中国人の研究者は、持っていない、という。中国がこのまま成長を続けるなら、速やかにアイデアを持つことだ。」


WP Sunday, January 30, 2011;

Five steps to take on the crackdown in Belarus

By John Kerry and Joe Lieberman


l         炭素税の導入

guardian.co.uk, Monday 31 January 2011

The high deficit, low tax trap

Jeffrey Sachs

オバマの政策(たとえな教育投資)は財政赤字削減によって制約される。

WSJ JANUARY 31, 2011

The Carbon Tax Miracle Cure

By ALAN S. BLINDER

クリーン・エネルギーへの技術転換。それは民間部門の意思決定であり、しかも多くの雇用をもたらす。それは国民の税負担を増やすのではなく、むしろ財政赤字を大幅に減らす。それに付随する効果として、貿易赤字を減らし、経済を効率的にし、地球温暖化を抑える。世界はアメリカ資本主義が優れていることを見直すだろう。

そんな奇跡的な政策があるのか? 炭素税がそれだ。重要なのはタイミングである。景気が回復し始めたときに増税することはできない。今、炭素税を税率0%で導入し、2013年以降に、緩やかに引き上げていく。そして、将来の高価格を現在の価格に固定してしまうことだ。そして、民間部門がそれを知れば、炭素節約のための技術投資が起こるだろう。

guardian.co.uk, Tuesday 1 February 2011

The Great British austerity experiment

Dean Baker


FT February 1 2011

Industrial espionage: Data out of the door

By Jamil Anderlini in Beijing, Peter Marsh and John Reed in London, Joseph Menn in San Francisco, Peggy Hollinger in Paris and Daniel Schäfer in Frankfurt.

安全保障と同じように、産業スパイ活動が重視されています。グローバルな生産システムとグローバルな市場開拓、多国籍企業間で競争が激化しています。技術も技術者もますますデジタル化されたグローバルな知識を共有していながら、それに関わる企業と国家は、技術による富とパワーを独占し、盗もうとします。企業間の情報防衛体制や諜報組織が拡大しています。

情報通信分野、自動車産業、その他の事例が紹介されます。

******************************

The Economist January 22nd 2011

The rich and the rest

The few: A special report on global leaders

(コメント) 金融危機と長期の不況は、銀行や金融ビジネスへの攻撃と、豊かな社会の新しい「不平等」論争を生じています。

世界の富裕層に何が起きているのか? 歴史を通じて、一握りのエリートが社会の富と権力・影響力の大部分を握ってきたことは変わりません。しかし、現代のエリートは、ますます貴族や地主ではなくなり、軍事的占領や政治的特権によって富を得るのではなく、個人の能力や優れたアイデアによって起業し、世界市場で爆発的に売れる商品を供給することで富を得るようになりました。彼らの富は、人々に支持された結果なのです。

面白い図解が紹介されています。オランダのエコノミストJan Penは、不平等を示すために、所得を人の大きさ・身長で表現しました。アメリカの成人人口が、その所得の順に目の前を通り過ぎる、と想像します。最初の人から最後の人まで、1時間で駆け抜けます。

最初は破産企業や巨額損失を被った人たちで、地上に現れません。頭は地中にあります。その後、失業者やワーキング・プアが続きます。30分経って、アメリカ人のちょうど真ん中の人が通りますが、その身長はまだ腰の高さです。およそ45分後に、やっと普通の人の身長で通ります。それから後は、巨人たちが現れて、地響きを立て始めます。

最後の400人が来たら、彼らの身長は2マイルを超えています。(つまり、3200メートルを超える、富士山の高さに等しい巨人たちです。) ・・・想像できましたか?

特集記事は、富が政治を支配することは民主主義のもとでなら避けられ、むしろ、インターネットの情報と生産システムのグローバルなリンクによって、アイデアこそが重要になった、と考えます。他方、中国では政治的コネが今も決定的でしょう。

記事が新しい超富裕層に期待するのは、新しいフィランソロピー(寄付・慈善活動)です。


The Economist January 22nd 2011

China’s currency: The rise of the redback

China’s currency: Stranger than fiction

The rise and fall of the dollar: Go with the flows

Tunisia and the Arab world: Let the scent of jasmine spread

Asian medical innovation: Life should be cheap

Integrating South-East Asia: China coming down the tracks

A cabinet shake-up in Japan: The pol who won’t give up

Teaching German immigrants history: The past id another country

Economics focus: The beautiful and the damned

(コメント) 中国の人民元がドルに交代する時代を準備する問題が、次第に、重視されています。ほかにも、チュニジアのサフラン革命、中国やインドが取り組む画期的な医療費の節約、中国と東南アジアを結ぶ鉄道建設、日本の内閣改造に示された民主党政権の成熟、ドイツの抱える二つの新旧問題(移民とホロコースト)が遭遇する歴史教育、そして、アメリカの金融危機を招いた金融緩和は政府の貧困層に対する支援策だった、というR. Rajanの主張をめぐるアメリカ経済学会の討論、が記事で読めます。