今週のReview
1/31-2/5
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IPEの想像力 1/31/11
インターネットが、社会革命や恋愛・結婚の意味を変え、起業や教育の姿を変え、金融や犯罪の可能性、貧困からの脱出、女性を抑圧しレイプする社会状況、を変えます。
ニュースを観て、話を聴きました。一つは、エジプトの大規模デモ。もう一つは、国民健康保険の未納者。インターネットで情報を知り、社会を変える可能性を広げるチャンスです。
チュニジアの革命がエジプトに波及しつつあります。ユーロ圏で深まる危機も、市場を介して、アメリカや日本に波及しつつあるでしょう。いずれも決定的な瞬間は、「1989年」や「スプートニク・モーメント」などで表される政治的危機です。危機は、今度こそ、イランや中国にも波及するでしょうか? 主要国の財政破綻とインフレーション、世界恐慌の発生と長期化、失業した若者たちによる民主化革命が、歴史のテキストからよみがえります。
最後のチャンスかもしれません。民主党の菅政権が、政治的な危機をチャンスに変えるために、消費税率の引き上げ、TPP交渉への参加、法人税率の引き下げ、といった、従来の政治家が決して正面から議論しなかったテーマを国民に向けて語り始めました。驚きと期待、不安を抱きます。もっと議論してほしいと思います。一体改革を託された与謝野大臣にも、民主党の政治家たちにも、自民党など、野党の政治家たちにも、論争と合意形成によって、日本の政治の力と信頼を高めることを期待します。
NHKの番組で、国民健康保険未納者に対する家宅捜索を紹介していました。およそ2割の人が支払わない、ということです。かつては自営業者・個人サービス業の保険であり、サラリーマンより税負担は軽いのではないか、と思われていました。豊かな個人が老後を心配して支払うはずでした。今は違います。多くの豊かな個人が引退し、年金を受け取る側になりました。個人業の格差も拡大しているでしょう。企業や団体で保険に入ることができない人は、ますますパートや派遣での就労が増えて、不安定な、低所得の中から支払い続けることは難しいと言います。
この国に住み、働く人なら誰でも、最低限度の所得や雇用、年金や医療サービスを享受できる。それを制度として実現することは重要だ、と多くの人が感じているでしょう。国民皆保険制度と年金・生活保護と消費税率引き上げを一体として改革し、新成長戦略で成長率を高めることが政府の課題です。ぜひ実現してください。しかし、どうやって?
インターネットで国民的な議論を組織します。社会が変化するとき、しばしば激しい暴力が起きるのは、政治集団が既得権を争うだけでなく、伝統的な秩序や規範が失われることによる恐怖がひとびとの思考を支配するからです。
議論するだけでなく、「足で投票する」こと、すなわち、政治革命ではなく、市場によるシグナルによって、暴力的な対立を回避できます。「ネットで移住する」ことを呼びかけてください。エジプトのカイロ市民たちが百万人デモを呼びかけ、大統領の辞任(そして暫定政権と選挙管理委員会、大統領の国外退去など)を求めているように、私たちも保険制度や生活保護、消費税率について、さまざまな仮想モデルの間を移住します。
異なったモデルを示して、移住者を募集します。政府・民主党の提案する国。自民党の国。公明党の国。みんなの党の国。共産党の国。社会民主党の国。インターネット以上で建国してください。そして、研究者グループやブロガー、中小零細企業、さまざまな老人グループ、過疎地域の農漁村・山村、離島、病気で苦しむ人々、派遣労働者、などが、自由に建国します。それらは自由にホームページを作成し、それを紹介・評価する民間団体も参加します。政府も加わって、インターネット日本国の情報提示方法や一覧、検索、過度な表現の抑制、事実確認、などを行います。
移住者と人口の多い国から、毎月、ランダムに数名の代表が選ばれて、1週間の「熟議」に参加します。住民代表に対して、各政党や新興国の提案者が説得を試みます。もちろん、インターネットで映像と文書資料を公開します。暴力や憎悪、威嚇や侮辱が政治を支配しないように、礼節を守った公衆への説得で代表者たちの最終投票を得ます。それを再びインターネット上の移住や国会審議に生かすのです。日本の姿が、毎月、変化するでしょう。
エジプトと国民健康保険は、この移住システムによって変化を促されると思います。
Foreign Policy がリストアップした “Top 100 Global Thinkers”について、インターネットの時代は偉大な「思想家」がいなくなる、いたるところに思想家は叢生するが「偉大さ」を示すことは無くなる、少なくとも後世の歴史家が評価するまでは、誰もが思想家になれる、とGideon Rachmanは指摘します。
あるいは、政治や思想の力は失われ、インターネットが加速した暴力と戦争、テロ、ジェノサイド、レイプの歴史が繰り返されるのでしょうか?
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米中首脳会談と外交の力 ・・・格付け引き下げ、日本は衰退するのか? ・・・チュニジア、サフラン革命の教訓 ・・・インターネットとインドの社会革命 ・・・オバマの一般教書演説 ・・・世界各地におけるガバナンスの模索 ・・・ユーロ危機の収拾策 ・・・偉大な思想家のいない時代 ・・・戦争とレイプ・強姦
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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia
l 米中首脳会談と外交の力
FT January 20 2011
Beijing and troubled nations: Signals of a shift
By Geoff Dyer
資源やエネルギーをめぐる世界的な規模の競争、パイプラインの敷設や海上輸送の安全、長期契約の維持、などが、国際的なネットワークに大国が関心を示す理由です。スーダン南部が独立することは、中国の「内政不干渉」や「分離独立派への弾圧」という政治姿勢を試すことになるでしょう。
「スーダンの石油の80%は南部にあり、海外に積み出す港は北部にある。それらはパイプラインで結ばれている。スーダンへの最大の投資国として、中国はスーダンの最重要な内政問題、南北分割に深く関わることになる。」
海外投資が増えるにつれて、資源を渇望する中国は超大国として行動することの責任を求められます。中国の戦略家たちは、中国が帝国を築く意図は無いし、アフリカで影響力を行使するつもりもない、と説明しています。しかし、大国の外交政策を形成するのは、理念というより利益なのです。資源やエネルギーと、それを輸送するインフラへの投資が、中国の国際的役割を変えます。
アメリカもそうだった、と元外交官のCharles Freemanは指摘します。中国の姿勢は1世紀前のアメリカが示した「孤立主義」と似ています。しかし、さまざまな事件に対処する結果として、アメリカは国際情勢を支配するようになり、遠い海外にまで軍事力を行使して、アメリカが望む解決策を求めるようになりました。
「中国企業はスーダン石油部門の40%を支配し、スーダンが販売する石油の60%が中国に向かい、その結果、スーダンは中国の6大石油輸入国の一つである。」
数十年に及ぶ内戦を終わらせるため2005年に合意した和平協定に従って、南部の独立を問う住民投票が行われます。しかし、独立支持が多数を占めて分離した後、両国が石油資源とその収入をどのように分割するか、まだ決まっていません。中国は南北双方に働きかけて、自国の重大な利益を維持しなければなりません。
国際的に認められた和平協定に従うことで、中国は「内政不干渉」の原則を維持し、さらに、双方に積極的に投資することで、経済的・政治的な安定と統合化を促すことができます。しかし、これまでの中国投資がスーダン政府(北部)に対する重要な支援であったことから、南部の独立政府が中国を敵視することを懐柔し、修正しなければなりません。
スーダン南部独立が今後の米中協力を促すのか、あるいは、利益分割交渉の失敗から、北部政府が敵対・妨害行動を取り、これにアメリカが石油積み出しの阻止など、制裁を課すことで米中関係が悪化する要因となるのか、中国の外交姿勢が問われてきます。
FT January 20 2011
History is on the side of democracy
By Philip Stephens
NYT January 20, 2011
China Goes to Nixon
By PAUL KRUGMAN
中国経済が急速に成長し続けて、たとえまだ貧しくても、人口規模を考慮すれば、アメリカに並ぶ超大国になることが広く認められるようになりました。しかしそれは、政府の能力が優れているからではありません。特に、為替レートやインフレに対する対応について、中国政府は歴史上繰り返されてきた多くの失敗を再現しつつあります。
中国政府は、自国民にも、世界経済やアメリカにも、不利益をもたらす政策に固執しています。人民元レートを過小評価にしたまま対外黒字を累積し続けているのです。それはアメリカで雇用を減らし、中国ではインフレを加速します。対外不均衡もインフレも通貨政策の失敗ですが、中国にとってインフレの方が政治的なリスクを強めます。
金利引き上げも、価格統制も、インフレ抑制には成功しないでしょう。高金利は投機的な資本流入を増やすかもしれません。そこで融資を直接に抑制する政策を採るのですが、これは世界経済がもっとも避けるべき(大幅黒字国の)デフレ政策です。中国は、人民元レートを増価させるだけで良いのに、輸出業者からの圧力か、アメリカの要求に屈したとみられることを嫌うからか、それを拒み続け、逆に、アメリカの金融緩和を非難しています。
こうして過去の多くの政府と同様に、中国も通貨・金融危機への道を進み続けています。
(China Daily)2011-01-21
Partnership in perspective
By Zheng Xiwen
NYT January 21, 2011
A Newly Cooperative China
インフレを許容することで、中国は人民元レートの過小評価を急速に解消することを受け入れたかもしれません。
FT January 21 2011
No casualties from US-China summit
(China Daily) 2011-01-21
Ads tell China's true story
Jan. 21 (Bloomberg)
China Can Just Say ‘No’ to One American Export
Caroline Baum
WP Friday, January 21, 2011;
Amid the wining and dining of Hu Jintao, a display of American 'smart power'
By David Ignatius
胡錦濤主席の訪米は、アメリカが衰退する超大国ではなく、大国であり続ける力を示す政治ショーでした。それは中国国民や世界に向けたアメリカの「ソフトパワー」です。双方で、新しい冷戦を懸念する者が台頭することを、米中対話の実績を重ねることで抑えるわけです。
WSJ JANUARY 22, 2011
Reframe U.S.-China Relations
By MICHAEL AUSLIN
guardian.co.uk, Sunday 23 January 2011
Hu Jintao's visit: the story the media missed
Dean Baker
FT January 24 2011
‘Made in China’ tells us little about global trade
By Pascal Lamy
貿易額を最終財の価格で合計することは間違ったイメージを与え、貿易不均衡の論争や国際対立を刺激している。「メイド・イン・チャイナ」とは、その製品が最終的に中国で組み立てられたことを意味するだけで、中国における付加価値はその一部でしかない。
「アップル社のiPhoneはこれを明確にする。この製品は中国が組み立ててアメリカに輸出している。しかし、その部品は多くの国から来る。アジア開発銀行の最近の研究によれば、アメリカの対中貿易赤字額の中の19億ドルにあたる。・・・しかし、付加価値額では、わずか7350万ドルである。」 自動車、飛行機、電機製品、さらに衣類でも、ますます多くの国で部分的に生産されている。
「貿易が雇用に与える影響も見直される。アップル社のiPodは2006年に4万1000人の雇用の内、1万4000人がアメリカ国内であった。その約6000人は専門職だ。アメリカ人労働者の給与は高く、7億5000万ドルを得たが、海外の労働者には3億2000万ドルが支払われただけだ。もしApple社がアジア企業からの部品供給を得られなかったとしたら、この製品は存在しないだろう。アジアの労働者とアジアの消費者は、この製品を生産し、消費もしている。」
Jan. 24 (Bloomberg)
Barbra Streisand Gets China Better Than Congress
William Pesek
人権、通貨、知的所有権、北朝鮮、中国に言いたいことは多くあるが、胡錦濤主席の歓迎ディナーパーティーに保守派は怒鳴り込むべきか? オバマは友好関係を深め、協力によって平和と繁栄を続けることに重点を置いた。要するに、中国経済は10.3%で成長し、アメリカの失業率は10%に近いのだから。
中国やアラブ湾岸諸国など、黒字を累積する国と、アメリカのように債務を累積する国があれば、双方は地政学的な意味を含めて結びつくだろう。指導者たちはグローバルな椅子取りゲームに忙しい。アメリカ、日本、EU諸国は債券発行に努め、中国はインフレ抑制に努める。気候変動からイランの核開発まで、すべての解決策には米中が関わっている。
超資産家や機関投資家ではなく、世界の投資を中国が支配するようになってから、ギリシャやアイルランド、ポルトガルは中国の投資を歓迎しているが、その見返りを求められるだろう。アメリカも債務を削減できず、増税を回避するたびに、中国の支配力を高めている。
WP Monday, January 24, 2011;
China's new world order demands stronger U.S. response
By Robert J. Samuelson
YaleGlobal , 24 January 2011
US-Chinese Relations Take a New Direction? – Part I
David Shambaugh
(chinadaily.com.cn) 2011-01-24
Sino-US relations at critical juncture in history
By Han Dongping
WSJ JANUARY 24, 2011
China's Next Buying Spree: Foreign Companies
By CHARLES WOLF JR.
FT January 25 2011
Why China hates loving the dollar
By Martin Wolf
米中首脳会談で、胡錦濤主席はアメリカの金融政策を批判しました。世界に過剰なドルを供給している。ドルに依存した国際通貨制度は改革しなければならない、と。
これは1960年代に、フランスのジスカール・デスタン財務大臣が述べた批判と同じです。それに対するアメリカのコナリー財務長官の答えは有名です。「ドルはわれわれの通貨だが、それはあなたたちの問題だ。」 アメリカの金融政策に注文を付けても、それを変更する力は無い。
ドルだけが世界の流動性を増やしたわけではないし、中国はその信用できないドルを大量に購入し続けている。中国の外貨準備額は、国民一人当たり2000ドル、GDPの50%に達する。ドルに代えて、金やSDR,人民元による国際通貨制度を実現する見込みは少ない。前者では赤字国に極端なデフレが起き、後者は人工の通貨バスケットでしかないSDR、為替や資本取引に規制を行っている中国の通貨が、国際金融市場を引き受けることはできない。そもそも銀行を介して経済を統制する中国政府が、その力を失いたくないから、人民元の国際化を好まない。
中国は、一方で、重商主義的政策による黒字を累積し、他方で、海外の不良資産を保有したくない、と考える。これは1960年代の「トリフィンのジレンマ」と同じである。その解決策は、中国がドルを買うのをやめて、人民元の増価を許すことだ。それは中国の調整問題をともなうだろうが、調整は中国の利益である。逆に、外貨保有の累積は、世界金融市場をゆがめ、中国の金融政策を実行できなくしている。
中国がドルの洪水から逃れるためには、それを買わなければよい。
WSJ JANUARY 25, 2011
The India-Indonesia Alignment
By HARSH V. PANT
FT January 25 2011
Asia has had enough of excusing the west
By Kishore Mahbubani
危機は、その発生地によって呼ばれている。たとえば、メキシコ・ペソ危機やアジア通貨危機のように。そうであれば、今回の世界金融危機は、ウェスターン(西側・米欧)金融危機と呼ぶべきだ。彼らがそれを避けているのは、アジアから見て納得できない。
アジアは礼儀正しすぎた。もしタイやインドネシアがこれほど礼儀正しい国でなければ、西側の金融危機に対して言っただろう。「お前たちがわれわれに求めたのと同じようにやるべきだ。自分の収入の範囲内で支出せよ。」 彼らも激しいデフレ的調整を強いられる。
アメリカは金融や財政の規律を回復すべきである。ところが、自国経済を回復するという期待によって、グローバルな金融不安定化をともなう「量的緩和策」を採用した。むしろ、支出を減らして増税すべきだ。ユーロ圏も安定化基金を拡大して、財政移転・規律を合意し直すべきだ。
米欧は中国の通貨を自分たちの失敗のスケープ・ゴートにするより、グローバルな権力を再分配し、共有することを学べ。
WSJ JANUARY 26, 2011
The Military Maneuvers of Xi Jinping
By WILLY LAM
Jan. 26 (Bloomberg)
China Is No White Knight in Europe’s Debt Crisis
Iana Dreyer
中国はどこまでユーロ圏の債務危機に際して真剣な救済者となるだろうか? 確かに中国はギリシャやスペインの債券を購入すると約束したし、EU諸国は中国の主要な輸出市場である。しかし、それはあくまでシンボリックな行動であって、ユーロ危機の救済のための大規模な投資は行わない。
ユーロ買いは中国にジレンマをもたらす。ユーロ買いはドル安をもたらし、それはドルとの固定をあきらめて人民元の増価を許すことになる。
SPIEGEL ONLINE 01/26/2011
Exchange Rates and Reserve Currencies
China Plans Path to Economic Hegemony
By Wieland Wagner
中国には人民元を世界通貨にする野心がある。胡錦濤はアメリカの真ん中でそう宣言した。そのためには、輸出を助ける人民元レートの過小評価や、ドルに対する固定化をやめて、資本取引を自由化し、アジアのウォール街を上海に築くことも考えている。
あるいは、その野心が国際的な投機の波に呑み込まれるのか。その前に、低賃金部門を改革し、国内消費を促し、成熟した市場経済になっておかねばならない。
YaleGlobal , 26 January 2011
US-Chinese Relations Take a New Direction? – Part II
Harsh V. Pant
(China Daily) 2011-01-26
For regional peace and prosperity
By Li Wen
WSJ JANUARY 27, 2011
What's Behind China's Reverse IPOs?
By JOSEPH STERNBERG
FT January 20 2011
America must brace itself for turbulence
By Peter Orszag
FT January 23 2011
Indebted America risks an age of austerity
By Roger Altman and Richard Haass
オバマ大統領は、道徳的な指導者であるとともに、優れた教育者としての役割を果たすべきだ。
アメリカの経済的福祉にとって、また、世界におけるアメリカの役割にとって、最大の脅威が何であるか、国民に教えるべきだ。すなわち、アメリカの財政状態が急速に悪化し、持続不可能になっていること、である。
連邦債務はこの10年間で、3兆5000億ドルから9兆ドル以上へ、およそ3倍に増えた。アメリカも世界金融市場からの拒否というショックから隔離されていない。1979年に何が起きたか、もっと研究するべきだ。当時は、数カ月間、ドル安が続いた後で、カーター政権は予想された以上の赤字予算案を示した。これに資本市場が反発したのだ。ドルが急落し、世界中の市場が暴落した。ドルに対する国際救済策が求められた。数日でアメリカは予算を修正して赤字額を半減させ、連銀は金利を急速に引き上げることになった。
財政危機はアメリカの世界における役割を縮小させる。その結果、世界で混乱が増し、繁栄は失われ、治安や自由も失われるだろう。
FT January 24 2011
America must cut its deficit but not in haste
By Robert Rubin
l 格付け引き下げ、日本は衰退するのか?
FT January 20 2011
Only tough reforms can save the land of the rising debt
By Takeo Hoshi and Anil Kashyap
ヨーロッパ諸国の財政危機が日本政府にも波及する、とTakeo Hoshi and Anil Kashyapは迅速な行動を求めています。
政府の債務額はGDPの114%に達しており、また、税収よりも債務による支出の方が多くなりました。支出削減にせよ、増税にせよ、成長できなければ急速な悪化を止めることは困難です。
低成長の原因はバブル後の資産価格下落であり、また、急速な高齢化による労働人口の減少や貯蓄の減少も加わっています。また、従来の技術移転と輸出に依存した成長がその限界に達し、もはや続けられなくなったことも原因です。
日本の政策は、より成熟した裕福な国の成長戦略に変わらなければなりません。しかし、この点で、日本は4つの重大な失敗を犯しました。1.日銀の金融政策はそのインフレ目標を達成できず、デフレを払拭できなかった。2.銀行は不良債権を隠したまま、低金利によって、ゾンビ企業(銀行の債務減免で生き残っている不採算企業)に融資を続けた。3.規制緩和の遅れが、内外の競争を妨げ、ゾンビ企業の生存を助けた。4.膨大な財政刺激策が、効率性の失われた公共投資によって浪費された。
それゆえ著者たちは、市場の歪みを正し、企業のリストラを加速するように求めます。効率の悪い企業や公共投資が排除され、特に、高度な熟練をもつ労働者の移民などを認め、TPPに参加して輸入を増やすことや、IDシステムの導入、などを支持しています。
FT January 21 2011
When is a Bric not a Bric? When it’s a Victim
By Alan Beattie
開発経済学を開拓した偉大な経済学者Simon Kuznetsは、1960年代、4つのケースを学生に教えていた。低開発国、開発国、日本、アルゼンチン、である。日本は低開発国から急速に開発国へと移動し、アルゼンチンは低開発国から開発国、そして再び低開発国へ移動した。
最近の開発経済学の学会では、クズネツのこうした分類が笑われる。今では、未来志向のグローバル・ガバナンス思考と、多極化した分担システムが流行だ。そして世界の諸国をさまざまな分類で性格付けし続けている。
低開発ショック、新興市場、ブリックス、成長市場。かつて新興工業諸国がNICsと呼ばれ、台湾を国家として扱うことへの不満から、NIESと呼ぶようになった。さまざまなアルファベットによる分類は今後も増え続ける。日本は何に分類されるか?
FT January 21 2011
So who’s top of the class now?
By Gillian Tett
Gillian Tettは、ニューヨークのコロンビア大学で、日本研究のHugh Patrickが議長をする会議に参加した。そこに日本人の顔が見えるのは当然だが、中国人の学生たちが示した言動に注目した。講演の後、明確な自己紹介をした中国人学生たちは、極めて流暢な英語で討論を牽引した。日本人学生は対照的に黙ったままで、全く見劣りがした。
胡錦濤主席の訪中がアジアにおけるパワーシフトを示すだけでなく、個人や企業のレベルでもアジアのパワーは日本から中国に移動した。アメリカのビジネス・スクールや大学の学生にもそれが見られる。
アメリカの高等教育機関で学ぶ学生は、中国人が印象的であり、次に韓国人だ。日本人は英語が余りにも下手で、議論について行けない。日本の若者たちは、もはや英語や外国の技術を習得することに努力しても見返りが少ないと感じているのだろうか? 新しい孤立主義かもしれない。
他方、アメリカ人は中国との関係に迷っており、中国人学生にも一層の関心を向けている。さらに20年後、中国人学生は同様の意欲と能力を示しているだろうか? 日本人はどうなるか?
(China Daily) 2011-01-25
Better to be friends than foes
By Li Wei
WSJ JANUARY 26, 2011
A Growth Solution for Japan's Debt Mess
By TAKEO HOSHI AND ANIL K. KASHYAP
FTの論説に続いて、現在の菅政権が提唱する「新成長戦略」を評価しています。
2001年から2006年に小泉内閣が掲げた6つの改革(金融システム、郵政民営化、労働市場、農業、自由貿易圏、特区による規制緩和)に対して、金融市場改革だけが成功した、と評価します。その他は、成長との関連が薄く、期限が余りにも先に設けられて、逆転が予想されたから効果は失われました。
それゆえ、菅政権は規制緩和を重視するべきだ。そして成長に頂点を絞らなければならない。ところが、政府の戦略にはこの基準を満たしていないものが多い。特に、旧弊の産業政策を復活し、あるいは、民主党が支持を期待する分野にバラマキをしている。むしろ、成長を促す改革に財政支出を集中し、そうでないものは削減する。短期的な民主党支持者への補助ではなく、長期的な成長分野の改革に支出する政治的意志をもつことだ。
FT January 27 2011
The Japanese debt disaster movie
By Peter Tasker
S&Pが日本国債の格付けを下げた。与謝野馨大臣は日本経済を「悪夢」にたとえたが、日本の財政赤字は国内民間部門の貯蓄で埋められており、ギリシャやアイルランドとは異なる。日本と同様の危機は、政治不安をともなう形で、むしろベルギーで起きている。
日本を財政危機に至らせたのは財政支出の増加ではなく、デフレである。長期に及ぶデフレによってタックス・ベースが縮小してしまった。日本の貯蓄は国債を購入することによって運用されており、金利は低いままだ。日本政府は「悪夢」に苦しむのではなく、極端な低金利で国債を発行できるために、嬉しい悲鳴をあげている。
世界のどこでも国債を「返済」することは無く、新しい国債が発行されていく。金利を支払い続けるには、財政引き締めではなく、成長戦略が重要だ。それには金融・財政の刺激策と構造改革が含まれるだろう。与謝野氏は消費税引き上げを好むが、それは1997年に起きたように、消費者を安心させるよりも購入を控えさせ、不況によって、むしろ財政赤字を増やすだろう。
高齢化し、高貯蓄率を示す日本やベルギーでは、人々が国債のような低リスクの投資を求めている。民間貯蓄と公的債務は、このゴジラ型バランス・シートの両側面であり、安定しているのだ。この均衡が破壊されれば、それは国際収支を介して赤字国にまで波及する。保護主義、グローバル化の逆転、国粋主義者の政治が現れる。
だから、日本は格付け会社の評価など無視するべきだ。格付け自体の最近の評価は最悪だった(金融危機の評価に失敗)。日本はデフレを解消することに集中すればよい。
l チュニジア、サフラン革命の教訓
SPIEGEL ONLINE 01/21/2011
Televising the Revolution
Tunisia's Sudden Press Freedom
By Ulrike Putz in Tunis
情報省は廃止されました。表現の自由が得られたチュニジアでは、一夜にして新聞やラジオ、テレビが変わりました。人々は政治のことを話したがり、焼身自殺した若者の話やアラブ世界の革命の波及、が重視されています。他方、かつての独裁者を常にトップ記事で扱ってきた新聞は、その人物の海外資産を暴き、復讐します。・・・すべてのダムが決壊した。
WP Friday, January 21, 2011
Dictatorship for Dummies, Tunisia edition
By William J. Dobson
この革命を異なる視点で見ていたのは、世界の独裁者たちだ。1989年に、ルーマニアの人々がその独裁者と妻とを即座に処刑したとき、ザイールの独裁者、モブツ・セセ・セコ大統領はその映像をCNNで観て恐怖に駆られたというし、中国の指導者たちは北京で誰一人ブカレストのことを想像することがないように治安を強化した。
ベン・アリの失敗とチュニジア革命を受けて、世界の「独裁者クラブ」会員たちは何をするだろうか?
1.弾圧する。しかし、本当に優れた独裁者は妥協を好む。独裁体制が生き残れるなら、すべては交渉次第だ。
2.シンガポールのまねはしない。成長率を高めれば、国民はそれを喜ぶが、減速すると支配者を非難する。むしろ機能しない官僚制度の中で、期待を持たせないことだ。
3.若者にパスポートを発行する。国内で反政府活動をするより、若者は海外での出稼ぎ・送金をするだろう。
4.反対派を許容する。ただし、勝利は許さない。反対派と手を組み、買収し、互いに攻撃させる。反対派をうまく操作することが、大衆の不満を吸収するコツだ。
5.新聞を利用する。独裁者を称えることだけ許すような情報統制は失敗だった。
6.反抗する群衆には一切譲歩しない。妥協的な姿勢を示したとき、独裁体制は終わる。対話は止めて、戦車を呼べ。 “More tanks and less talk.”
7.独裁者を倒すのは、外国の介入ではなく、民衆だ。独裁者であるには、民衆にとってのパンとバターの問題を常に解かねばならない。失業、停滞、汚職に、弾圧で応えたとき、革命が生じた。
guardian.co.uk, Saturday 22 January 2011
Tunisia's future hangs on electoral reform
Michael Meyer-Resende and Paul O'Grady
WP Saturday, January 22, 2011
The Middle East's growing political unrest
NYT January 22, 2011
One Small Revolution
By ROBERT D. KAPLAN
チュニジア革命はアラブ世界の民主化をもたらすのか? 東欧の1989年と単純に比較することは間違いだ。ROBERT D. KAPLANは、チュニジアの歴史と地理を紹介し、アラブ世界の政治はその地理的な個性に根ざして多様であり、アメリカの利益という点では、民主化それ自体が目標でもない、と指摘します。
チュニジアは、特にシシリーに近いことから、カルタゴやローマ人の支配下にあったし、ヴァンダル族、ビザンチン帝国、中世のアラブやトルコにも支配された。アルジェリアやリビアはヨーロッパの植民地支配を受けるまで明確な形で表されなかったが、チュニジアは古来の諸文明が累積した土地である。
チュニジアの都市化は2000年前に始まった。政治的不安定性や弱さをもたらす部族主義や遊牧を離れた、都市中産階級が存在する。ローマの遺跡が多い土地に、文明化された都市圏が存在し、それから離れるほど貧しく、低開発で、極端に高い失業率が現れる。チュニジアは北アフリカのアラブ圏と結びつくというより、ヨーロッパ的な上昇志向をもちながら、砂漠と海によって隔絶された、人口的・文化的な孤島である。
チュニジアには地理的・歴史的な正当性をもつ本物の国家があり、予算や食糧補助金についての政治的論争があった。それはアルジェリア、リビアと言った近隣諸国に広がるイスラム過激派の抗議とは異なる。そのことは過去の諸文明だけでなく、20世紀の政治家、Habib Bourguibaの遺産である。
Bourguibaは、フランスから1950年代半ばに独立してから、30年間、チュニジアを支配し、その近代化に情熱を傾けた。しかも、巨大な建造物や軍の強化ではなく、人口管理計画や女性の識字率上昇、初等教育の普及に取り組んだのだ。女性からヴェールを取り去り、ラマダンさえ止めようとしたし、イスラエルとの関係を正常化した。Bourguibaは独裁者であったが、チュニジアの政治文化を穏健で、エスニックや宗派による分断から免れていた。それも1980年代からの民主化の実験で汚れてしまった。
すなわち、イスラムの復興に直面したBourguibaが高齢のために支配を維持できなくなったとき、その元内務大臣であったZine el-Abidine Ben Aliが交替した。なんら政治的ビジョンのない治安維持のボスであったBen Aliは、秩序維持のために反対派を拷問にかけ、殺害した。
Ben Aliの失敗は、その統治がお粗末であっただけでなく、以前から進行していた経済発展により国民の期待と現実とのギャップを埋められず、独立を指導したという正当性もなかったことだ。個人的な支持者を集めたにしても、拡大家族で極端な蓄財を行ったことが知られていた。Bourguibaは軍隊を小規模に抑え、政治的に利用しなかった。チュニジア軍は善意のリヴァイアサン(絶対支配者)であり、公的秩序を保証できるし、だからこそ、民主主義の爆発を許容した。
チュニジアが持つこうした歴史、経済的繁栄、政治的安定性を、アラブ世界は共有していない。
「しばしば、独裁者が悪いほど、独裁が崩壊した後の状態も悪くなる。2011年のチュニジアと1989年のヨーロッパには多くの類似点があるけれど、中東を民主化すれば共産主義崩壊後の東欧に起きた以上の混乱は起きない、と考えるのは甘い。」
独裁者を失ったイラクでは、数万、数十万の市民が宗派やエスニックによる紛争の犠牲になった。1979年のイラン革命は、王制を倒したが、さらに悪い神権政治に終わった。
一つの希望が持てる条件としては、アラビア語で中東世界を結ぶケーブルテレビが発達していることだ。チュニジアのジャスミン革命が、同様の経済・社会的な大変動を経験しつつある人々に、無能な治安維持体制を抜け出すため、民衆による抗議行動を輸出するだろう。
しかし、アメリカの関心や地域の安定を重視すれば、民主化には慎重さが必要だ、とKAPLANは考えます。イスラエルとの和平を受け入れたのは民主国家ではなく専制支配者でした。民主的な選挙で登場する指導者や政府が、ヨルダン川西岸の不安定さとハマスを生んだのです。民衆抗議によって開明的な王が追放されることを、KAPLANは望みません。
WP Sunday, January 23, 2011;
The Egypt-Colombia dichotomy
By Robert Kagan
アメリカの外交政策は、どの国もそうであるが、偽善的で、利己的で、矛盾とダブル・スタンダードに満ちている。民主主義を大げさにたたえる大統領が、アメリカの国益に重要である国の政治的弾圧には沈黙を守る。理想を実利に合わせることは難しい。
しかし、オバマの矛盾した外交政策は理想に背くだけでなく、ときには利益をも損なっている。コロンビアとエジプトがそのよい例だ。コロンビアは長い間、ラテンアメリカの麻薬戦争とテロの前線であった。ヴェネズエラのチャベスに率いられた反米同盟にも対峙してきた。他方、エジプトはアラブ支配の重要な大国であり、イスラエルとの和平を結び、イランやイスラム過激派のテロと戦ってきた。それゆえ両国は長年にわたってアメリカからの莫大な援助を受けてきた。
しかし今や、両国の情勢は大きく異なっている。コロンビアは民主化の成功例である。開明的な民主的指導者、Alvaro Uribeの下で、反政府武装集団や麻薬組織を打倒し、人権を回復してきた。彼は憲法が禁止する三選を否定し、新たに当選したJuan Manuel Santos大統領の下で、開放的な、リベラルなガバナンスを発展させた。ゲリラ戦争の犠牲者たちに補償する法律を成立させ、地方の腐敗した政治家が奪った土地を農民に返還しようとしている。
他方、エジプトは国家的な自殺を望んでいる。82歳の高齢においても政権を握ったまま、次の大統領選挙で再選もしくは息子Gamelへの権力移行を望むHosni Mubarakは、反対勢力を弾圧し、逮捕し、拷問にかけ、ブロガーたちを殺害している。戒厳令を維持し、最近の議会選挙でも野党はボイコットを主張し、不正が行われた。
オバマ政権はどのような外交を示したか? コロンビアを助け、エジプトの姿勢を正そうとしているか? 全く違う。コロンビアに対する利益を約束する自由貿易協定が5年前に合意されたが、まだ議会で承認されていない。労働組合と民主党、以前の人権問題でNGOsが反対するけれど、共和党が多数となった議会なら通貨できる。しかし、オバマは動かない。他方、エジプトには、民主化を支持するどころか、民衆への弾圧に自制を促すことさえしていない。
SPIEGEL ONLINE 01/24/2011
Intoxicated by Freedom
Reinventing Tunisia at Record Speed
By Mathieu von Rohr and Volkhard Windfuhr in Tunis
FP Wednesday, January 26, 2011
Will the Arab revolutions spread?
Posted By Marc Lynch
多くの専門家たちが主張するように、アラブ世界に革命は輸出できない。しかし、何か新しい変化が起きていることも認めるべきだ。
懐疑派の論拠は明確だ。すなわち、国による政治体制の違いが大きい、専制支配側も学習する、独裁者は民主化の弾圧を強めることで協力する、専制国家はアメリカの支持する国際・アラブ地域秩序の一部だ、専制支配を強化する石油価格、治安警察、不正選挙システム、国際秩序は動揺していない。
しかし、それでもカイロの反政府デモは強烈な何かを伝えている。エジプトの支配体制は十分に準備して来たはずだ。治安警察を増やし、インターネットを断絶し、アル・ジャジーラを見せなかった。それでもエジプト史上最大規模の群衆が抗議に集まった。
チュニジアは人々に抗議が成功する可能性を示した。ニュース・メディアはその役割を果たし、政治の可能性や説明方法を変えた。もちろん、その機会をつかんだのは民衆だ。失業、インフレ、若者の不満、不平等、といったアラブ諸国の政治的弱点は顕著である。それゆえ抗議行動はすべての政治組織や政党の外で起きている。いかなるシナリオも排除できない。
二つの重要な点を忘れてはならない。一つは、反政府の抗議行動をイスラム過激派に乗っ取られてはならない。もう一つは、アメリカのオバマ政権は今こそアラブ世界の民主化に向けた決定的な役割を果たすことができる。
これまで、アメリカが専制国家に民主化を求めることはできなかったし、チュニジア革命で裏工作をしたとも思えない。オバマ政権は民衆デモが「メイド・イン・アメリカ」という印象を与えないように努めたし、国務省とホワイトハウスは民衆デモを支持する一連の声明を出してきた。昨夜のエジプトに向けた声明も巧みなバランスを示し、「民主主義」よりも「市民社会」を支持し、経済の機会や様々な自由(言論、集会、透明性と説明責任)を強調している。
今や情勢は決定に変化し、急激な転換が始まる可能性がある。アメリカ政府は、アラブ世界の権威主義体制が平和的に移行する、この決定的な瞬間をとらえるべきだ。
guardian.co.uk, Thursday 27 January 2011
Arab protesters tire of the men who would be king
Simon Tisdall
l インターネットとインドの社会革命
YaleGlobal , 21 January 2011
We Have Your Number
Nandan Nilekani
Infosysの元CEOで、現在はthe Unique Identification Authority of India (UIDAI)の会長を務めるNandan Nilekaniが、グローバリゼーションによるインドの成長から切り離されている多くの人口を成長の過程に参加させ、さらには、インドのIT産業から世界に向けて、成長の機会を拡大する枠組みを提示しようとします。
インドには成長の障害として、物的なインフラや教育・医療のような社会的インフラが不足しています。政府はこれに投資していますが、もし認証システムがなければ、人口の大部分が社会サービスを受けられません。貧困層にこうした社会的なパワーを付与するために、政府はthe Unique Identification effortもしくは‘Aadhaar’の導入を進めています。
‘Aadhaar’(foundation)とは、インドが国民規模(12億人)で、しかも個人が直接に携帯電話でもアクセスできる、個人情報管理・認証システムです。Nilekaniは、私的所有権が投資や成長の源泉であるのと同じくらい、個人認証システムは重要だ、と考えます。貧困層がグローバリゼーションの利益から排除されている理由は、非正規労働者、移民・出稼ぎ労働者、後進社会集団、女性、子供、など、その社会・経済過程において独立した契約の主体として認証されていません。認証権identity rightsを拒まれているのです。
この新しい個人認証システムは、遺伝子情報にも依拠していますから、どこでも完全に確認できます。それゆえ、カーストのような差別制度と切り離されます。移民労働者のように決まった住所がなくても、彼らは住宅を借りたり、銀行口座を開設して融資を受けたり、携帯電話の契約を交わしたりできます。また、政府の支援プログラムや教育・医療・保険のような給付の対象となります。
信頼できる個人認証があれば、移動や契約は社会全体に及び、グローバルなリンクも容易になって革新と発展が促される、とNilekaniは主張します。すべての人々が競争し、リスクを取って投資し、グローバル市場に参加できます。
FT January 25 2011
Financial services: Shuttered too long
By James Lamont in New Delhi
貧困層の社会的な包摂を進めるために、インド準備銀行RBIや国民会議派のSonia Gandhi党首は、銀行システムを貧困層が利用できるように拡大しようとしています。それは経済成長のすそ野を広げ、長期的に維持するためにも必要です。
l オバマの一般教書演説
NYT January 22, 2011
The President’s Speech
By ELLIOTT ABRAMS, TOM DASCHLE , ANDREW C. REVKIN, ALICE M. RIVLIN, MICHELLE RHEE, JON COWAN, JIM KESSLER, ROBERT B. REICH and DAN SAVAGE
NYT January 23, 2011
The Competition Myth
By PAUL KRUGMAN
アメリカはどの国にも負けない「競争力」がある、とオバマ大統領が述べたけれど、PAUL KRUGMANはこれを訂正します。オバマの話は、直接に、アメリカ政府が公共投資を増やすことに支持を訴えているのです。
しかし、「競争力」は政策の目的ではない。企業にとっての利益は、アメリカ国民の利益と同じではない。もっと輸出すればもっと雇用を増やせる、というわけだが、それは他の国も同じことだ。アメリカの経済的な苦境は、金融危機がもたらしたもので、対中貿易赤字が原因ではない。
輸出企業を政府が助けても、その利益はアメリカの労働者に分配されていない。アメリカでは雇用や賃金を引き下げ、企業は国外で、特に中国で投資する。たとえばGEはアメリカの雇用や景気に関係するよりも、国外の販売で利益を上げている。
オバマは左派であり、ビジネスに敵対するから、アメリカの景気はなかなか回復しない、規制緩和が重要だ、といった考えの勢力が強まって、「競争力」を改善する演説を求めているのだろう。
FT January 23 2011
Obama must woo business to win
By Clive Crook
NYT January 24, 2011
The Talent Magnet
By DAVID BROOKS
WP Monday, January 24, 2011;
Can Obama get it right on the economy?
By Fareed Zakaria
一般教書演説the State of the Unionでオバマは、アメリカの超党派的な長期の成長戦略を示しました。短期的に両党が妥協するだけでは、双方が得たもので財政赤字が増えます。それを繰り返すより、長期の成長戦略を示すべきです。すなわち、特に研究開発のための投資です。
NYT January 25, 2011
The State of the Union
FT January 26 2011
A good speech for another day
By Clive Crook
FT January 26 2011
Nice speech, but now Obama must act
By Mohamed El-Erian
FT January 26 2011
Why our Sputnik moment will fall short
By Robert Reich
オバマは財政赤字削減を求める共和党支配の議会と妥協するために、長期投資や中国との競争を取り上げました。
中国の技術開発に驚くアメリカは、1950年代、60年代にソ連と宇宙開発を競ったイメージで、教育や研究・開発への公共投資、「競争力」の向上を呼びかけます。しかし、中国との競争に励むことが、現在、失業に苦しむ多くのアメリカ国民、中産階級の利益になるでしょうか? 彼らの不幸はアメリカ政府が中産階級よりも大企業や富裕層に有利な政策を選択し続けたからです。
「政府は平均的な労働者家族の利益を守り、実現するために存在する。政府がなければ、アメリカ人はますます世界企業に頼らなければならない。そして世界企業の利益とは、それが可能な場所ならどこででも、金を稼ぐことである。」
LAT January 26, 2011
That old familiar SOTU
Doyle McManus
LAT January 26, 2011
State of the Union: Austerity and innovation
guardian.co.uk, Wednesday 26 January 2011
Obama's state of the union address: panel verdict
Gary Younge, Paul Harris, Katha Pollitt, James Antle, DD Guttenplan, Suzanne Goldenberg and Simon Tisdall
WP Wednesday, January 26, 2011;
Obama's economic proposals: Okay, as far as they go
By Harold Meyerson
オバマはアメリカがもっとビジネスに適した環境になるように提案した。しかし、どうすれば大企業がアメリカ国民にもっと有益な存在になるか、も語るべきだった。
NYT January 26, 2011
Too Moderate or Too Modest?
By DAVID BROOKS AND GAIL COLLINS
WSJ JANUARY 26, 2011
Comparative Advantage and American Jobs
By MATTHEW J. SLAUGHTER
l 世界各地におけるガバナンスの模索
The Observer, Sunday 23 January 2011
Ten ideas for a better Britain
Will Hutton
野党となった労働党は何を要求するべきか? 1.銀行の分割。シティの大銀行は中小企業に融資していない。都市間のネットワークで株式のヴァーチャル取引所を設け、零細企業は優遇した条件で資本を調達できるようにすべきだ。2.企業の買収を再考する。優れた企業は外資に買収され、イギリスはますます、意志決定や富の生産を導く中心地でなくなり、空洞化が進んでいる。3.独占を廃止する。マスメディアの買収合戦のように。4.知識に基づいた経済活動を拡大し、余分な支払や雇用を減らす。しかし、中小企業に公的な契約の多くを振り向けて、民間部門の革新、雇用、投資を促進する。5.生活保護。6.21歳以上の成人に5万ポンドを支払い、新分野での教育や訓練に支出を限定してもよい。7.ベビーブーマー世代に減税する。8.教育費を国家が負担する。9.メディアを誹謗中傷に使わせない。10.比例代表制、地方分権を含む憲法を制定する。
guardian.co.uk, Sunday 23 January 2011
Britain must learn to decline gracefully
Madeleine Bunting
さまざまな衰退論が紹介されています。そして、上昇する国があれば、イギリスやヨーロッパのように、平和的な衰退も認めるべきだ。
WSJ JANUARY 26, 2011
Divorce, Belgian-Style
ベルギーにおけるidentity politicsの実験は、国家の死に至った。数年に及ぶ総選挙の結果が統一政権の誕生をもたらさず、すでに今も選挙から227日が経って、政府を組織できていない。
かつてベルギー政府はフレミッシュの中道右派とワロンの社会主義者によって連立政府が組まれ、さまざまなイデオロギーと言語を含む内閣が定期的に編成されていた。それは、最大の言語集団であるフランス語とオランダ語の双方から政府に加わるという伝統があったからであり、フレミッシュのナショナリストを排除できたからだ。
ベルギー政府には、経済的にも政治的にも破綻が生じた。債券市場が政府の返済能力を疑い、またフレミッシュ系の政党NVAが、最大議席の正当による組閣をもたらす選挙制度の改正を提唱したことにワロン系住民が反発した。それは経済発展の格差拡大や財政的再分配にも不満を生じてしまった。
WSJ JANUARY 26, 2011
The Swedish Model
By JOHNNY MUNKHAMMAR
ヨーロッパの財政危機が広まる中でも、スウェーデンは健全な財政と経済成長を維持している。Moderate Partyの党員である著者は、それが「スウェーデン・モデル」としての市場改革である、と主張します。
スウェーデンでは、高度な個人主義の中でも、優れた機能を果たす社会制度と強い社会的な連帯感(結束力)によって、経済的な自由と改革を両立させるような「信頼」を築けたのだ。他方、社会主義モデルは1980年代と90年代に採用されたが、経済成果として失敗に終わった、と紹介します。
guardian.co.uk, Thursday 27 January 2011
Why land reform makes sense for Dilma Rousseff
Benjamin Dangl
新大統領の就任式に土地なし農民の団体the Landless Farmers Movement (MST)が集まって抗議した。Dilma Rousseffは改革を急ぐ必要がある。MSTは土地選挙という直接行動によって改革を要求してきた。その面積は3500万エーカー、37万家族が参加した。それでもまだ、ブラジルの耕作可能な土地は、その約半分を人口の1%が所有している。ブラジルの法律では、利用されていない土地を政府が農民に分配できる。
l ユーロ危機の収拾策
FT January 23 2011
The eurozone’s best solution is the least likely
By Wolfgang Münchau
The EFSF (the European financial stability facility)を拡大してギリシャ国債を買い取らせる、という収拾策が、ドイツ国内の反対で実現しません。ドイツ政府はEFSFの拡大を嫌うのです。
SPIEGEL ONLINE 01/24/2011
The Manila Model
Plan Would Place Burden for Euro Rescue on Creditors
By Peter Müller and Christian Reiermann
EFSF総裁のKlaus Reglingは、ギリシャに対する(EU諸国による)自発的な債務免除、を提案しています。この場合、ギリシャの負担は軽減され、しかも、投資家の不安は生じません。しかも、免除は流通市場で債券を買い戻す形で行います。EFSFがギリシャに融資して、ギリシャ政府は自国の債券を流通価格で、額面の約70%で買い戻します。
EFSFが融資を増やすには、EU諸国が保証額を増やさなければなりません。しかし、この形なら政治家たちは同意するかもしれません。Klaus Reglingは、マニラでこのような処理を行ったことがあるのです。また、1989年のブレディー・ボンドも、債券に転換して債務負担の一部を免除しました。融資した銀行は、融資額を下回っても、アメリカ政府の保証が付いた債券に交換しました。
ギリシャが債務を全額返済できない以上、債権国が免除するか、銀行が損失を負担するしかありません。その場合、銀行危機が生じるのを避けるために、各国政府が公的資金で銀行の資本を補うことになるでしょう。納税者の負担をめぐる政治問題は深刻です。むしろ、会計基準を変更してギリシャ国債の保有に対する評価を厳しくし、銀行がギリシャ債権を証券化するように促すことで買い戻しを進める方が望ましいのです。
SPIEGEL ONLINE 01/24/2011
Jean-Claude Juncker on Saving the Euro
'It Would Be Wrong to Create Taboos'
ドイツ政府が拒否するユーロ債発行を唱えたルクセンブルグ首相Jean-Claude Junckerに対するインタビューです。
「納税者が将来に支払を求められるリスクは毎月増大している。共通通貨が最初に導入されたとき、政治家たちはドイツ市民に、ドイツが他国の債務を支払う責任はあり得ないことだ、言った。しかし今、われわれが保証している債務額は増え続けている。」
「あなたはドイツ人が特別な存在であるかのように話している。救済基金はヨーロッパの制度であって、ドイツだけがそれに出資している国ではない。」
FT January 27 2011
Sudden shift in euro catches traders off guard
By Peter Garnham and Richard Milne
WSJ JANUARY 28, 2011
A New Hanseatic League
EUでも後進諸国の景気刺激に貿易自由化の促進(新ハンザ同盟)を提唱しています。特に、サービス分野、金融、専門職、出稼ぎ労働者が注目されます。
guardian.co.uk, Monday 24 January 2011
Only Palestinian refugees can give up their right of return
Ghada Karmi
FT January 24 2011
Middle East peace hits a dead end
FP JANUARY 24, 2011
NastyLeaks
BY ROBERT M. DANIN
The Guardian, Tuesday 25 January 2011
The Palestine Papers: Despair. But we still need a deal
NYT January 25, 2011
Good News From the Middle East (Really)
By JEFFREY GOLDBERG and HUSSEIN IBISH
guardian.co.uk, Wednesday 26 January 2011
Only authentic leaders can deliver a Middle East peace
Seumas Milne
l 偉大な思想家のいない時代
FT January 24 2011
Where have all the thinkers gone?
By Gideon Rachman
Foreign Policyの特集記事the “Top 100 Global Thinkers”について、偉大な思想家の時代は終わったかもしれない、と考えます。
まず特集記事の挙げた「思想家」たちは、どうも思想家らしくない。ビル・ゲイツ、バフェット、周小川(中国人民銀行総裁)、バーナンキ、ブラジルやトルコの外相、などと続きます。はっきり言って、巨大組織のトップではあっても、思想家ではありません。ようやく12位のルービニは、まさに組織ではなく、思想によって、時代に影響を与えたと言えそうです。
比較として、150年前の1861年に生きた思想家たちと言えばだれか? ともに1859年に時代を変える本を出版したCharles Darwin(『種の起源』) and John Stuart Mill(『自由論』)、ともにロンドン近辺に住んだKarl Marx and Charles Dickens、ロシアにはTolstoy and Dostoevsky、を挙げています。
その時代は特に恵まれていたのか? そこで、第二次世界大戦が始まった1939年を取り上げて、その頃の思想家を挙げます。Einstein, Keynes, TS Eliot, Picasso, Freud, Gandhi, Orwell, Churchill, Hayek, Sartre。偉大な思想家は、いつの時代にも生きていたはずです。
なぜ現代は思想家がいなくなったのか? Gideon Rachmanは理由を想像します。1.「偉大さ」は後になって評価できるものだ。2.偉大な思想家は多くいるが、以前よりも親しみやすくなった。3.知識が民主的に普及した現代では、思想家が時代を変えることもない。中国やインド、アフリカに現われているかもしれない。4.人々は容易に知識を得られるし、出版できる。インターネットが人々の協力と知識人の特化を加速した。
大英図書館で学ぶ偉大な思想家が、荒野にそびえたつ巨人のように時代を動かすことはない。
FP JANUARY 25, 2011
The New Reality
FP Tuesday, January 25, 2011
How Davos got its mojo back
Posted By Ian Bremmer
WP Tuesday, January 25, 2011
Missing poverty's new reality: There's a lot less of it
By Laurence Chandy and Geoffrey Gertz
FT January 26 2011
The world will regret its neglect of Doha
By Peter Sutherland
Jan. 26 (Bloomberg)
Davos Moguls Adjust to Fast, Slow, Reverse
Mohamed A. El-Erian
guardian.co.uk, Wednesday 26 January 2011
Will Davos heed the warning signs?
Larry Elliott
guardian.co.uk, Wednesday 26 January 2011
The optimists of Davos past now face a world whose script has gone awry
Timothy Garton Ash in Davos
リベラルな、民主的な資本主義が金融崩壊によって破壊される、という恐怖は薄らぎました。他方、西側資本主義の抜本的な改革が実現する、という話題も消えてしまいました。西側資本主義は生き残りましたが、半身不随で、傷だらけで、巨額の債務負担を続け、不平等、人口減少、社会インフラの破壊、非現実的な期待を持ち越しています。
一極世界でなく、単一のモデル、すなわち、リベラル・デモクラティック資本主義もなく、世界は無極になり、リベラルではない、国家ごとに多様な資本主義を採用している。かつてのようなリベラル派の国際主義者は弱気になって、国際的な関与を嫌うようになった。ダヴォスが示した課題であるthe "new reality"とはこうした世界であり、さまざまな規範が併存している。
しかし、それがSamuel Huntingtonの予想した"clash of civilisations"にならないとしたら、それは特に大国が目標を引き下げてthe "shared norms"に合意するからだ。各国は国内とその影響圏ではそれぞれの規範を実現し、それ以外ではthe "shared norms"を実現する。さもないと、大国間の平和を失い、温暖化や開かれた市場、基本的人権のすべてを失うだけである。
FT January 25 2011
The big test of Africa’s brave new world
By John Githongo
民主的な手続きによる国境線の変更を地域協力機関African Unionによって平和的に実現することが、アフリカにとってもつ意味は計り知れない。
WSJ JANUARY 27, 2011
Central Asia's Energy Bazaar
By JEFF M. SMITH AND ILAN BERMAN
政治不安や経済的機会に恵まれない貧しい内陸部で、エネルギー開発と輸送のための長期的投資が持つ意味は、やはり、一国にとっても地域組織にとっても計りしれません。ここでの焦点は、アフガニスタンやトルクメニスタンの開発です。
WP Wednesday, January 26, 2011;
Will Egypt's protests go the way of Tunisia's revolution?
By Mona Eltahawy
NYT January 26, 2011
Mr. Mubarak Is Put on Notice
FT January 26 2011
After Tunisia – the Egyptian challenge
guardian.co.uk, Thursday 27 January 2011
Egypt's Day of Rage goes on. Is the world watching?
Amira Nowaira
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The Economist January 15th 2011
Violence against women: War’s overlooked victims
(コメント) 深く、消えない痛みが走る、恐怖を残す、特集記事です。戦争・内戦においてレイプ・強姦が手段として組織的に行われることを取り上げています。
テロ攻撃やジェノサイドを止めるために軍事介入するのと同じように、あるいは、それ以上に重要な意味で、私たちは戦争の道具として、また、国家や地域の支配者が住民を土地から排除し、絶望させて、無抵抗にするために、レイプ・強姦を手段として組織的に利用することを止めなければなりません。あなたが若い女性だからではなく、スーダンにおける調査(Harvard Humanitarian Initiative & Oxfam)では、3歳から80歳まで、男女を問わず、誘拐され、強姦され、殺害されています。それどころか、兵士たちが集団で、公衆や家族の前で強姦し、母親や娘を強姦するように命令し、拒む者を殺害していきます。
「戦争における無秩序と免責が、暴力の利用を説明する。戦争状態が、しばしば、レイプを助長するのだ。若く、十分な訓練を受けていない男たちが、故郷を離れて戦闘に参加し、社会的・宗教的な抑制を失う。彼らにとってレイプのコストは低く、その潜在的な報酬は高い。食事も不足し、給料ももらえない兵士たちにとって、レイプは支払の一部である。」
記事は、レイプが採用されるケースと、回避されるケースを比較しています。また関係者たちは、レイプの蔓延を抑えるために、戦争地域への国際的な関与や国際世論の形成を求めています。他方で、国連の関与が何も成果を上げていない、という批判も紹介します。
The Economistが示した紛争地帯のレイプ犠牲者を示す表には、最初に1937年の「南京大虐殺」が挙げられます。犠牲者は2万人。さらに約20万人が第二次大戦中に軍隊のセックス奴隷(従軍慰安婦)にされた、という説明が加えてあります。
日本が果たすべき、大きな、避けられない役割があると感じました。
The Economist January 15th 2011
Time for Plan B
Car industry: Danger ahead
A crowded car industry: From Big Three to Magnificent Seven
Iran’s struggle: The regime tightens its belt and its fist
Urban decline in Japan: The alarm bells of Nagasaki
Japanese business: Over here!
Latin America’s economies: Waging the currency war
Charlemagne: Mr China goes shopping
Economics focus: The great unknown
(コメント) The Economistは、救済融資による危機対策を、必要であった、と評価しています。金融市場の突然死を回避し、処理に向けた合意を形成するため、一定の時間を稼ぐことができました。経済状態の回復、銀行の資本調達、ECBによる不良債権の買い取り、赤字国は緊縮策を示しました。EUによる救済融資と秩序ある処理のメカニズムも合意されつつあるのです。
しかし、市場に先行して、ここで次の根本的な改革案を示す時期です。赤字国の債務額と緊縮策は、将来の破綻を避けられません。今スグに処理することをめぐって合意するため、「費用対効果分析」が必要です。
他にも、興味を持った記事として、1.自動車産業(トヨタの問題を含む)の過剰生産力、2.イラン革命政府へのチュニジア革命の波及、3.日本の衰退(長崎)と「新成長戦略」をめぐる民主党変身への期待感、4.国際商品価格と資本流入、為替レートをめぐるラテンアメリカ諸国の模索、5.中国のドル準備を使ったヨーロッパへの影響力拡大(ヨーロッパの衰退)、6.金融市場に支配された政策担当者が目指す「マクロ・プルーデンシャル」の測定論争。