IPEの果樹園2011

今週のReview

1/24-1/29

 

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IPEの想像力 1/24/11

「朝日新聞グローブ」第56号(2011124日)には、バーリンホウ(80后)の特集が載っていました。

1980年代生まれの、中国における新人類。世代が重要な社会的階層化を意味することはあるでしょう。たとえば、戦争があったとか、外国に占領されたとか、独裁者が国民を弾圧して、多くの若者が殺され、沈黙を強いられたとか。開国や高度成長・都市化も、特別な社会的経験と意識を形成したはずです。最近も、アメリカがベビー・ブーム世代の引退によってどう変わるか、という記事をThe Economistで読みました。

バーリンホウ世代は、1978年の改革開放政策と79年の一人っ子政策によって始まり、中国経済の拡大、急成長とともに生き、両親の強い期待を受けながらも「わがまま」に育ち、高等教育の機会と所得や社会的地位の上昇を享受しました。1989年の天安門事件は記憶になく、そもそも情報が制限されているため、国内では知らなかった、と応えています。

記事は、ハーヴァード大学に進んだ若者たちと、就職がないまま「蟻族」として暮らす若者たちを取り上げています。若者たちの力が中国を改革する資源なるのか、あるいは、就職や住宅の問題が悪化して動乱に至るのか、政府の対応が求められる、と『蟻族』の著者は指摘します。

絶えず転職を考え、絶えず自分より高所得の友人や、両親の期待を考えなければならない。そんな彼らは、以前よりはるかに恵まれているとしても、なかなか幸せを感じられないようです。

20年後に、バーリンホウが社会の中枢を担い、権力にとっても重要な地位を占めるとき、自由な発想や民主主義を実現するのか、あるいは絶望感を深め、逆に保守化するのか、日中の研究者はともに、両側への大きな振幅を予感しています。「真実」を知りたい、という発言や、「社会的責任」が欠けている、という指摘は、バーリンホウの本質に関わる点だと思いました。

・・・「腐敗していなければ、住宅価格もガソリン代もここまで高くはならないはず。社会保険を含め、我々が払っているのは今の高齢者を養うため。われわれが年をとったら、もっと大変になる世代が生まれる。」・・・「その頃は白菜も2万元くらいするかもね。」・・・

日中関係の悪化と異なり、若者たちの悩みや苦しみには共通した面も多くありそうです。

ハーヴァード大学の修士課程で教育学を学ぶ女性は、上海から少し離れた農村に生まれ、両親は農民だった。母は読み書きができない。父親は彼女が16歳のときに病死した。それでも彼女は奨学金を得て南京大学へ入り、パソコンを手に入れた。ネットで得た政治、歴史の話には衝撃を受けた、と言います。彼女はこの世代が経験した社会的な上昇のシンボルであり、ハーヴァードで学んだ教育学によって中国の教育を立て直す、という彼女の夢は、世界を作り変えつつある中国に現れた、若者たちが抱くグローバルな理想主義だ、と思いました。

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日本の若者はどうでしょうか? 「バブル」、「失われた10年」、「就職氷河期」、などが世代を形成している共通のショックです。・・・大学生なんだから、もっと勉強しろよ、とアジアから来ている留学生たちに注意されるでしょう。

大学の数を、せめて半分に減らしてはどうでしょうか? 各大学の定員も減らして、世代の20%程度が大学で学びます。大学で過ごす20歳前後の多産な年月を、学ぶ目的もないまま、無駄にしてしまう若者が多すぎると思います。18歳になれば、もはや大人として考え、行動するべきです。彼らが自分で職場を転々として、住みたい町、就きたい仕事、学びたい知識を見つけるために、日本や世界の各地を遍歴・放浪する期間を義務として課してほしい、と思います。

そして目的を見つけたら、およそ20歳から24歳の間に、入試ではなく、企業や大学の方から彼らを採用します。

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中国、胡錦濤主席のアメリカ訪問 ・・・21世紀の国際規制・監視システム ・・・スーダン南部独立など、民族自決権の再興 ・・・チュニジアの革命とアラブ世界への拡大 ・・・アメリカの不況 ・・・ユーロ圏の生き残り ・・・公務員組合と納税者との闘い

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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


l         中国、胡錦濤主席のアメリカ訪問

FT January 13 2011

The perils of mutual miscalculation

By Philip Stephens

米中関係は悪化し、中国の台頭に伴って、アメリカはアジアへの関与を強めることになった。アメリカは中国を封じ込める意図は無いが、しかし、貿易摩擦や通貨摩擦において双方の意見は対立したままだ。オバマは自国内の失業者に、胡錦濤も自国の輸出業者に、政策への圧力を受けています。

長期的に見れば、アジアにおけるパワー・シフトが顕著に情勢を変え、相互の不信と誤解をもたらしました。北朝鮮の核実験をきっかけに、事実上、東アジアで軍拡競争が始まっています。ロバート・ゲイツ国防長官の訪中に合わせて、中国はステルス機を公開した。また、経済の拡大とアメリカの金融破たんは中国人のナショナリズムや攻撃的な外交姿勢を強めている。人民解放軍の近代的な軍備が拡大を続け、政治的影響力も強めている。

他方、中国の台頭は近隣諸国の不安を高め、アメリカがアジアにとどまることを求めている。その結果、米中関係はさまざまなリスクを抱えることになる。互いの違いを理解したうえで、それを管理するためのルール、メカニズム、構造を共有することである。

Jan. 14 (Bloomberg)

Americans Are Figuring Out Who Is World’s No. 1

William Pesek

日本を世界一の経済大国と見なすのはアメリカ人の9%です。世界の年生産額は現在の62兆ドルから2030年までに308兆ドルに増加する、という推定があります。アジアがその主要理由です。中国とインドだけで33%を説明し、アメリカは12%、日本はわずか3%です。

アメリカ人の4分の1近くが中国を敵と見なすけれど、約58%が中国との強い関係を築くことが重要だ、と考えます。少なくとも、中国はアメリカの銀行であり、アメリカ財務省証券を9070億ドル保有しています。

米中関係が円滑に進むというのは夢想に過ぎません。通貨、貿易、知的所有権、気候変動、軍備拡大、北朝鮮、希少資源、人権などで、双方は激しく衝突する可能性があります。市場は地政学的な衝撃に耐えられません。リーマン・ショックの後、アメリカではなく中国を世界一の経済大国をみなす人が増えました。1989年には、日本がそうなるだろう、と多くの人が考えたのです。

経済学が主張するように、中国の台頭は好ましいことです。しかし、アメリカの対中債務累積は問題でしょう。中国はアメリカの要求に応えません。他方、アメリカの政治家たちはますます中国を敵視して利用します。

SPIEGEL ONLINE 01/14/2011

China Goes Shopping

How Beijing Plans to Turn the Chinese into Consumers

By Wieland Wagner

WP Friday, January 14, 2011;

Avoiding a U.S.-China cold war

By Henry A. Kissinger

グローバルな解決が必要な問題を多く抱える中で、アメリカと中国が互いを疑い、形成して、世界を新しい冷戦に導くことは間違いだ、と多くの者は認めている。しかし、他方で、アメリカは中国を封じ込めようとしている、と中国人の多くは信じ、中国の軍備増強や世界市場制覇を警戒するアメリカ人も多い。

新興国が現れることは必ずしも国際対立を意味しない。アメリカの台頭やドイツの台頭は、対立を不可避のものとしていなかった。それがヨーロッパの外交をゼロサムにしたのは、当時の無思慮で挑発的な政策が原因であった。

米中関係が転換点にあるとき、両国にその関係を理解する概念が共有されていないことが問題である。冷戦期には共通の敵があった。政治、経済、技術において、グローバル化した世界が直面する激変に対応する、世界秩序の概念が必要だ。しかし、いずれも自分たちの価値を確信し、それを実現することしか考えていない。中国にとっては、西側に対する200年に及ぶ劣勢を逆転し、それ以前の優位を回復する「正常への回帰」、と理解されている。

米中の理解は根本的に異なる。アメリカは問題の解決を望むが、中国は解決できない問題として矛盾を管理することで満足する。アメリカ外交は単一の意思決定と明確な結果を求めるが、中国の交渉は事態を政治・経済・戦略的側面の総合過程と見なし、より大きな変化の過程に結果を求める。アメリカの交渉担当者は自国が侵略される可能性を考慮しないが、中国の側は外国の侵略と屈服状態にあった100年間を忘れない。アメリカの要求が少しでも中国への敬意を欠いているなら、中国はそれに対して過敏に反発する。

北朝鮮に関する米中の交渉姿勢にそれが示されている。アメリカは中国に問題解決に向けた「国際的責任」を果たすよう求める。アメリカはプラグマチックな政策と考えるが、中国はそれらを一般的な構想の一部と見なす。そして、国内的な理由による、中国抑止戦略の意図を見出す。

米中は互いを理解し、認め合う必要がある。一方が他方を支配することはできないし、両者の対立はどちらの社会も荒廃させる。「太平洋コミュニティー」という概念が、21世紀におけるブロック化を回避する組織原理になるだろう。共通の長期的な目標を掲げ、協力メカニズム構築に向けた国際諮問会議を設けて、両国が重要な地位を占める。

FT January 14 2011

China and Europe: Bear gifts for friends

By James Kynge, Geoff Dyer and James Blitz

パンダを追え。それは今も中国外交“panda diplomacy”の道標だ。

1957年、59年にモスクワへパンダが贈られ、1972年のニクソン訪中後にアメリカへ渡った。中国は国際的孤立を脱したのだ。2年前、パンダは台北に贈られたが、それは台湾の平和的統一という北京政府の願いを示している。

では、先週、エジンバラ動物園にパンダが来たことは何を意味するか? それはイギリスやスコットランドの重要性を示すより、中国が目指す超大国のイメージに関わる。特に、Li Keqiang副首相の訪欧が重要である。2013年に温家宝首相が辞任する。

Li Keqiangは、ダヴォスの世界経済フォーラムで講演し、聴衆からの質問に答えた。ロンドン訪問では集まった聴衆にも応えた。政策の原則をよく理解しており、彼の対応は人を惹き付け、合理的で、ユーモアのセンスもある。

中国はパンダを贈るだけでなく、ヨーロッパに投資する。額は示さないが、ギリシャやスペインの債券を購入する意図を表明している。北京の社会科学院に属するYu Yongdingも指摘するように、中国はアメリカ財務省証券に投資するよりユーロ債券に分散投資する方が利益を得られるのだ。それは金利が示している。他方で、それはヨーロッパが人民元の増価を求めるアメリカに加担しないよう、また、ヨーロッパで保護主義的な政策が採用されないように、促す効果もある。

Li Keqiangの訪欧は、胡錦濤主席の訪米と重ねて行われることで、世界の関心を集めないことに成功し、しかも、こうしたソフト・パワーを示した。中国に対抗して、日本もスペイン政府債の購入を表明した。日中関係は悪化したままだが、中国はこうしてノーベル賞の対立を払しょくし、朝鮮半島の平和的な解決に果たす役割を印象付けた。

他方、人民解放軍(PLA)の軍備拡大は続いており、中国はパンダだけでなくPLAである。

 (China Daily) 2011-01-15

Yuan for the road

guardian.co.uk, Saturday 15 January 2011

China's neo-imperial swagger need not mean a new cold war

Yuriko Koike

NYT January 15, 2011

China’s Winning Schools?

By NICHOLAS D. KRISTOF

65カ国が参加した数学、科学、読解の国際チャンピオンが示すのは、儒教の勝利である。儒教国ではないフィンランドを除けば、上海の三つの学校を代表に、香港、シンガポール、韓国の学生が上位を占める。

アメリカは、15位、23位、31位である。

しかし、中国の教師や教育システムに対する称賛よりも、不満を聴く。教育を重視することは中国人の文化である。それはアメリカにとって21世紀の「スプートニク・ショック」である。

WP Sunday, January 16, 2011

What the U.S. and other democracies must make clear to China

By Michael J. Green and Daniel M. Kliman

オバマ大統領は、共通の利益に基づき、協調できる分野を重視するだけでなく、米中が対立する分野、政治的価値についても明確に主張しなければならない。

中国はアメリカの対中政策に「冷戦のメンタリティー」を見て批判するが、相互依存をもっと理解しなければならないのは中国の指導者であり、「和平演変」のスローガンにもかかわらず近隣諸国の不安が高まっている。

世界市場への中国の包摂は明らかに地域の安定化に役立ったが、中国はその経済的成功を政治改革に向けて利用してこなかった。むしろ、チベット問題やノーベル賞受賞における政治的価値の対立を明確にした。

アメリカは考え方が似通った諸国とともに、地域の制度やインフォーマルなネットワークを育て、透明性と参加を重視した政府の間で信頼を築くことに努める。それは中国が唱える時代錯誤の「内政不干渉」ではない。市民社会の制度を強化し、参加を促すことが、韓国やインドネシアで示されたように、国家を強くするのだ。

それは中国との緊張をもたらすかもしれないが、中国の指導者たちに期待し、米中関係の積極的な展開、経済統合を支持する意図と矛盾しない。

FT January 16 2011

Hu questions future role of US dollar

By Richard McGregor in Washington

Jan. 17 (Bloomberg)

Death of 3.5 Million Chinese Is Dismal Economics

William Pesek

LAT January 17, 2011

The U.S. and China -- mending fences

By Kenneth Lieberthal

米中間で不信が膨張している理由を正しく理解するべきだ。

中国人の多くはアメリカが衰退する世界1位国であり、2位の中国が台頭するのを妨げている、と考える。しかし、アメリカはブッシュ政権の下で軽視されていたアジア地域に、オバマ政権が関与を再強化しているのである。しかし、中国から見れば、それはアメリカがアジア地域の諸国を集めて反中国の運動を促しているように見える。

アジア諸国は中国の経済力と緊密に結びつくことを目指しつつ、同時に、中国がその経済力を外交的・軍事的な優位に転換するのを防ぐように、アメリカが介入することを望んでいる。しかし、アメリカは注意しなければならない。もしアメリカが、こうした意味で、中国に軍事的に対抗する力でしかないなら、アジアは中国との関係から利益を得て、アメリカは中国との関係をコストを負う。アメリカは、もっとバランスのとれた、効果的な、米中関係を築くべきだ。

そのためには、高次の軍事官僚による限定された交流ではなく、もっと中下級の官僚による、相互に軍事施設を利用した真剣な交流を増やすべきだ。また、これまで米中関係の改善を促してきたアメリカの企業家たちに、最近、中国におけるビジネスを悲観する傾向が見られる。米中双方の利益になる、エネルギー技術の開発や協力において、またグローバルな成長を回復させるために双方が行うべき構造調整について目標を確認し、その達成を促すために、協調することが望ましい。そうすることで、中国は他国の保護主義を回避し、アメリカは失業問題を緩和できる。

米中首脳会談は、協力のためのメカニズムを築き、それに必要な相手国の経済改革を進める経済政策について、詳しい情報交換が行われる。

FT January 17 2011

China: A strategy to straddle the planet

By Geoff Dyer, David Pilling and Henny Sender

(China Daily) 2011-01-17

Sino-US relations

WSJ JANUARY 17, 2011

Dealing With an Assertive China

中国の急速な成長がもたらしたナショナリズムの高揚により、一方では軍備拡大が他国の不安を無視した主張や行動を刺激し、他方ではアメリカのドルを中心とした国際通貨制度の改革を求める発言につながっている。それは、ドイツのヴィルヘルム2世がイギリスに挑戦して国際秩序を破壊した行為や、アメリカの台頭がポンドの支配する国際通貨制度を改革したことに類比できる。

アメリカは中国との経済関係から多くの利益を得ており、軍事的な挑戦には譲歩しないが、経済関係を深めて相互の調整を促す点では大いに対等の話し合いを重ねるべきだ。

FP JANUARY 17, 2011

Rise of the Hans

BY JOEL KOTKIN

中国の台頭より、これは漢民族の台頭、ニーチェの言う「権力への意志」である。「フラット・ワールド」や「ボーダーレス・エコノミー」を世界の主要都市から管理するのではなく、人々は家族や信仰、言語、文化、エスニシティの共同体に帰属している。今や、欧米の支配的モデルは分裂し、アングロ・サクソンの部族支配Tribalismも終わり、漢民族が台頭し始めた。「部族」による秩序が変化するとき、その主要な考え方や言語、支配的ポストも入れ替わる。

FP Tuesday, JANUARY 18, 2011

What Obama should NOT say to Hu Jintao

Posted By Stephen M. Walt

FP JANUARY/FEBRUARY 2011

What Hu Jintao Wants to Know

BY THOMAS FINGAR

NYT January 17, 2011

President Hu Comes to Washington

NYT January 17, 2011

China’s Currency Isn’t Our Problem

By MARK WU

人民元の増価は重要ではない。それは、2005-2008年に中国人の消費を増やさず、また、アメリカからの主要な輸出品が資本財であるから、もっぱら価格だけで決まらない。また、競争相手は中国企業ではなく、ヨーロッパや日本の企業である。米中間では競争よりも補完的な取引を行う企業が多く、為替レートは影響が少ない。最後に、人民元の増価がアメリカ企業に国内雇用を増やすよう促すか、と言えば、それは中国以外の海外生産拠点(ベトナム、インドネシア、など)に投資するだけだろう。

だから、人民元レートを主要な政策論争にするべきではない。

FT January 17 2011

An embarrassment of riches, albeit ‘unreal’

By Jamil Anderlini in Beijing and Henny Sender in Hong Kong

FT January 17 2011

Hong Kong used as lab in currency experiment

By Rahul Jacob, Robert Cookson and Robin Kwong

FT January 17 2011

US democracy has little to teach China

By Francis Fukuyama

21世紀の初めに、政治経済モデルの盛衰、逆転、があった。イラク戦争と民主主義の失敗が示され、世界金融危機とウォール街の破綻が示されたからだ。

多くの中国人は、自分たちの政治経済モデルが優れている、と考えた。アメリカ型のリベラル思想が支配的な時代は終わったのだ。国営企業は威信を回復し、国家管理経済は世界不況を回避する巨額の刺激策を実行した。アメリカの弱点は中国の長所となり、世界は対照的な大国のバランスで維持されている。

しかし、中国の政治経済モデルとは何か? 「権威主義的資本主義」には、ロシアも、イランも、シンガポールも分類される。その中身も、成果も、大きく異なる。

最も重要な強みは、大規模かつ複雑な決定を迅速に行い、実行できることだ。インドに比べて、中国のインフラの質は急速に改善された。空港、ダム、高速鉄道、ハイウェー。

中国の支配層がロシアやイランよりも優れていたのは、民衆の不満に敏感であったからだ。政府は、特に都市中産階級とビジネス利害に対して敏感であった。日本との紛争では、国内の反日感情に敏感すぎることもあった。

中国が成長すれば民衆は政治改革を求め、民主主義に移行する、とアメリカ人は期待した。しかし、中国の支配層は民衆のポピュリズムを強く恐れている。複数政党が他の民主主義が、たとえばタイのような、選挙によるポピュリスト的指導者の誕生、その支持者と既得権層との暴力的衝突になることを望まない。

中国は今も共産主義を掲げているが、その不平等は急速に悪化してきた。多くの農民や労働者は成長から取り残され、あるいは、無慈悲な搾取にあっている。腐敗が蔓延し、地方政府は開発業者と共謀して農民から土地を奪っている。民衆の不満は鬱積し、暴力的な抗議行動が頻発している。

共産党は中央政府に権力を集中し、統治の質を改善できると考えている。内陸部への投資を増やし、民衆の消費を重視している。しかし、これは成功しないだろう。トップ・ダウンのやり方には監視の問題がともない、末端まで責任ある政策を行うには何らかのボトム・アップによる作業が不可欠だ。それをわれわれは民主主義と呼ぶ。経済が不況になれば、中国の政治システムは正当性を問われるだろう。

しかし、他方で、民主的で市場を重視したアメリカの政治経済モデルも困難に直面している。外交における軍事力の偏重やユニラテラリズム、レーガノミクスの負の遺産である財政赤字、減税、金融緩和が修正を求められる。ところが、中国のような迅速な意思決定や効果的な政策遂行がアメリカにはできない。憲法が保障するチェック・アンド・バランス、集権的な中央政府に対する不信を煽る政治文化が、政府を麻痺させ、硬直したイデオロギーによって修正を拒んでいるからだ。アメリカの民主主義が中国よりも正当性を示すとしても、分裂して、機能しない政府を誰も喜ばない。

天安門事件で自由の女神を称えた北京の民衆も、今のアメリカ政府が彼らの問題を解決できるとは思わないだろう。

FT January 17 2011

Beijing feels that time is on its side

By Gideon Rachman

リベラル・グローバリストは敗北しつつある。

「われわれは中国が世界政治の舞台に復帰したことを歓迎する。パワーがゼロサム・ゲームである必要はないし、諸国は他国の成功を恐れる必要もない。」と、オバマは胡錦濤主席にあいさつするだろう。しかし、パワー・シフトは急速に現実を変えつつある。台湾、人権、人民元、貿易不均衡、南シナ海、人民解放軍の軍備増強、・・・

新興勢力が旧勢力と衝突する歴史観は、ツキディデス以来、存在する。しかし、ベルリンの壁が崩壊してからリーマン・ショックまで、アメリカの歴代大統領やリベラル・グローバリストたちは、相互利益を重視して、中国の台頭を歓迎する言葉を繰り返した。利益をもたらすウェブに包まれて、両国はともに繁栄を享受する。世界経済は拡大し続け、豊かになった中国民衆は民主化を求め始め、アメリカとの友好関係を重視する。

しかし、緊密な貿易拡大の末に、米中の方針は対立したままだ。双方の軍事戦略部門は核戦争の準備さえ始めている。

FT January 17 2011

China and US add up to positive sum

FTの社説は、相互利益を増やす政策を採用するよう、米中指導者を励ましています。

WSJ JANUARY 17, 2011

The New Era of U.S.-China Rivalry

By AARON FRIEDBERG

FT January 18 2011

The west needs to stand up to Beijing

By John Bolton

毛沢東が述べたように、「すべての政治権力は銃口から生まれる。」 人民解放軍はそれを信じるだけでなく、それを実践する。

胡錦濤と人民解放軍は明らかに、この訪米において、アメリカ史上最も左派寄りの、安全保障に関心の薄い、強硬姿勢とは縁のない、大統領と合意することを望んだ。オバマが望むのは、平和という名目で防衛予算を、そして財政赤字を削ることだ。

中国はさらに主張を強め、外国投資家に差別的な扱いを始めるだろう。周辺のアジア諸国や海域において、さらに拡大した領土を要求するだろう。

中国が均衡のとれた協力姿勢を示すのは、アメリカが今すぐ、軍事力を強化するときだけだ。中国はアメリカが長期的には対抗することを知っており、オバマの姿勢を利用している。

FT January 18 2011

East and west are in it together

By Martin Wolf

規模は重要だ。誰もタイが隣国であるからというのを心配しない。しかし、タイと同じ生活水準でも、中国が隣国であれば心配する。中国の規模が、GDPを世界第2位にし、輸出入を世界第1位と2位、外貨保有額を世界第1位にしている。

その他の世界では、中国がその力を何に使うのか、心配している。中国の世界市場への包摂と台頭は、これまでのところ、非常にうまく行った。大恐慌の後、アメリカが極端な保護主義を採用したことに比べて、世界経済は開放性を保ち、中国もケインズ主義的な不況対策に成功した。

しかし、貿易黒字は調整されず、人民元の為替レートや外貨準備は、中国の愚かな政策による間違った過剰投資と消費削減を示している。激しインフレーションによって黒字を失うより、為替レートの調整や国内消費の拡大を通じて内外の不均衡を解消する方が、中国にとっても世界にとっても好ましい。

米中両国は十分に自覚しておくべきだろう。関係悪化は世界に破局的な結末をもたらす。グローバル・ガバナンスを強化し、その正当性を高めることが重要だ。単独で調整するには限界がある。すなわち、世界貿易の開放、対外不均衡の調整、国際通貨制度の改革、世界公共財(the global commons)の管理、資源争奪戦争の回避、である。

中国はインフレとバブルを恐れ、アメリカは失業を恐れている。「米中両国は相手の意図を疑い、自国の自由を犠牲にしたくないと考えている。相手の行動がある点で受け入れられないと考えている。両国とも、長期の、緊張した関係が続くことを意識している。」

米中両国の指導者が下す選択は、世界経済への責任も負うのだ。東と西は、協力して栄えるか、あるいは、対立して滅ぶのか。

FT January 18 2011

China’s best way forward

By Yu Yongding a former member of the monetary policy committee of the Chinese central bank

中国は今も覇権を目指していない。中国は世界経済成長の重要なエンジンであり続けるつもりだ。インフレはその重要なリスクである。中国国内で、インフレ抑制を目指す中央銀行と、それを嫌う不動産開発業者との対立が起きている。日本のようなバブルの破裂を避けねばならない。

中央銀行が勝利した場合、為替介入を減らし、人民元レートの増価を許容するだろう。それはアメリカにとっても利益だが、中国自信の利益であるから。同時に中国は、G20でガイトナー財務長官による経常収支目標の提案を好意的に受け止めたし、他の新興諸国とともに、投機的な資本流入に対する管理を強めるべきだ、と考える。

中国は政府債券市場を不安定化するような行動に全く関心がない。しかしアメリカもユーロ圏も、債権者に対する責任ある行動を取らねばならない。中国はユーロ圏の危機対策を支持しているが、周辺赤字国の債券保有はその改革・債務組み換えを前提しなければならない。アメリカも、量的緩和策に頼るだけで、財政再建の合意形成には失敗している。アメリカの財政再建こそ世界経済の利益になることを政治家たちは無視している。

中国は責任を果たすし、その他の世界もそれに応じるべきだ。

FT January 18 2011

China and Germany: Reflected glory

By Daniel Schäfer in Frankfurt

ドイツの製造業においても、中国の企業によって市場から駆逐されるケースが現れています。価格が圧倒的に安いだけでなく、品質や技術においてもドイツ企業を脅かし始めている、とドイツ側の幹部が認めます。

中国で、今、関心が高いのはビスマルク時代のドイツです。中国の学者たちは、ドイツが工業化とともに、それをどのような形で外交的なバランスに反映させたか、を研究しています。中国は、「プロシアの瞬間」を迎えている。1960年代、70年代に日本企業が登場したときのような挑戦に、ヨーロッパは直面しているのか?

中国企業は技術水準を上げるために西側企業の買収を活発化し、多国籍化し始めています。産業技術の深刻な盗難・スパイ事件も起きています。

LAT January 18, 2011

America's China syndrome

Jonah Goldberg

 (China Daily) 2011-01-18

Sino-US ties at a crossroads

By Yuan Peng

guardian.co.uk, Wednesday 19 January 2011

China's tentative steps towards democracy

Steven Hill

FT January 19 2011

Beijing’s foreign policy

By David Pilling

「自信を深め、東南アジアからアフリカやラテンアメリカまで、中国が経済的利害を反映した形で行動するとき、どのような外交を展開するのか? 昨年まで世界第2位の経済大国であった日本と違って、中国はアメリカの陰に隠れていない。オーストラリアのPaul Keating元首相が述べたように、世界第2位の重要な大国が第1位の国の「属国」ではない、という意味で、国際秩序はより正常な状態になる。」

中国は、その輸出と技術力、軍事的な優位を確立し、古代の貢納システムを復活させるかもしれない。他国は中国のイデオロギーを受け入れるのではなく、譲歩を願う国に対して、中国へのより大きな敬意を求めるようになる。

SPIEGEL ONLINE 01/19/2011

The World from Berlin

'Obama Can Not Afford a Rift with China'

WP Wednesday, January 19, 2011;

Mr. Obama, speak up for human rights in China

By Yang Jianli

 (China Daily) 2011-01-19

Seize the strategic moment

By Wang Lili

 (China Daily) 2011-01-19

Bury outdated mentality

FP JANUARY 19, 2011

The China Paradox

BY CHRISTINA LARSON

矛盾したイメージを使い分ける中国政府の主張や行動を正しく理解しなければならない。

NYT January 19, 2011

The Rise of Chinese Cheneys

By NICHOLAS D. KRISTOF

中国を抱きしめることも、中国を罵倒することも、間違いだ。文化大革命を称賛した学者にあった、という話を聞いたケ小平は、そいつは嘘をついたのだ、と怒なった。同じような大胆さこそ、米中会談には求められる。

真理は陰陽の中間にある。貿易不均衡こそ問題の中心だ。しかし、中国企業が競争しているのは韓国やメキシコの企業であり、雇用を奪っているのもアメリカよりそうした国からが多いだろう。アメリカ企業は中国の生産拠点から輸出しており、中国が輸出するiPhoneの価値は、日本、ドイツ、韓国、アメリカの付加価値の方が、中国の付加価値よりも大きい。

領土問題や人権問題など、中国の姿勢は硬直的だ。政治指導部の移行期に、中国では強硬派(中国のチェイニーたち)の影響力が強まるかもしれない。アメリカも覚悟せよ。

WSJ JANUARY 20, 2011

Don't Bank on China Rebalancing

By JOSEPH STERNBERG

LAT January 20, 2011

Buy Chinese

By Robert F. Kennedy Jr.

FT January 20 2011

Wen and Hu must tame the growth dragon

Jonathan Fenby

中国は成長のドラゴンを再び檻に戻すことができない。金利を上げても小さすぎたし、政府が配分する融資や投資は減らないだろう。預金準備率も2010年初めから7回も引き上げたが、効果はなかった。賃金引き上げに苦しむ中小企業の倒産を政府が覚悟しなければ、融資の削減はできない。しかし温家宝はそれを避けてきた。

もしインフレを初期に抑えられなければ、政府の恐れるハード・ランディングがやってくる。

FT January 20 2011

Fears grow that China is overheating

By Jamil Anderlini and Leslie Hook in Beijing, and Rahul Jacob in Hong Kong

 (China Daily) 2011-01-20

Making more people wealthy

By Chi Fulin

WSJ JANUARY 21, 2011

What Lies Beneath 10.3% Growth

By STEPHEN GREEN

10.3%の成長率を実現した北京政府がインフレを熱病のように恐れるのはなぜか? 消費者物価指数が5.1%上昇したという背後で、北京や上海の住宅価格は1年で50%も上昇しただろう。貧しい家族に影響の大きい食料価格は10%以上上昇した。

しかし、インフレのデータはばらばらであり、金融政策が難しい。政府は様々な市場統制をおこなっている。穀物価格の上昇、輸入エネルギーの価格上昇、海外からのホット・マネー流入。もし規制がなければ、本当はインフレ率が何%なのか? 中国は何%で成長する力があるのか?

インドやブラジルに比べて中国経済の拡大にボトルネックは少ない。しかし、労働力供給は減速し、高齢化するし、技術ギャップの解消は生産性上昇を抑えるだろう。サービス分野は独占され、増税が予想される。こうしたすべての事情が成長の減速を意味している。

もし7%を切るような成長力しかなくなれば、労働者たちの生活改善を実現するため、政府はますますインフレ的な刺激と資産バブルに頼ることになる。

WSJ JANUARY 21, 2011

Hu's Real Agenda

By JOHN LEE


guardian.co.uk, Thursday 13 January 2011

Free speech can't exist unchained. US politics needs the tonic of order

Simon Jenkins

NYT January 13, 2011

Tree of Failure

By DAVID BROOKS

WP Sunday, January 16, 2011;

After the shootings, Obama reminds the nation of the golden rule

By John McCain

LAT January 17, 2011

Politics' dark passions

Gregory Rodriguez


l         21世紀の国際規制・監視システム

FT January 13 2011

Capital controllers need a clear exit plan

By Howard Davies

資本規制にも広く合意された「ゲームのルール」が要る。資本移動が金融危機を波及させることに注意がむけられるのは当然だが、短期の変動を回避するだけでなく、長期の効果についても、何が正当な手段であるか、生産担当者たちが合意していることが重要だ。

資本規制は根本的な改革を行うための時間を稼ぐ手段である。資本規制の効果は時間とともに失われる。市場に逆らって、たとえば、維持できない水準に為替レートを固定するために、資本規制を導入するのは間違いだ。1997年のアジア通貨危機がそれを示している。現在、ブラジルはレアルの増価を抑えるために資本規制を行っているが、それと同時に、政府支出を削り、インフレ圧力を抑えるべきだ。そのような詳しい計画を示せば金利は下がり、資本流入も減るだろう。

資本規制をどのような条件で廃止するか、合意することが望ましい。資本規制を長期に維持した場合の効果も監視するべきだ。すべての状況に当てはまる規則は無いが、市場に依拠した、アナログ型の、大きな枠で括る規制が望ましいだろう。その方が恣意的でない管理、明確な、市場参加者にも当局にもわかりやすい規制ができる。そして、規制の効果を体系的にIMFが監視することだ。

極端に技術的な議論も、情緒的・政治的な議論も止めて、プラグマチックな工夫でプラスの効果を目指すことだ。

WSJ JANUARY 18, 2011

Toward a 21st-Century Regulatory System

By BARACK OBAMA

政府は公益を守り、同時に、民間企業の活動を支援しなければならない。それには正しいバランスが必要だ。EPAが企業を有毒物質のように扱うのは間違っていた。

「歴史が教えるように、経済はゼロサム・ゲームではない。確かに、規制にはコストがともなう。われわれは、国全体として、そのコストが必要かどうか、しばしば難しい選択をする必要がある。しかし、正しいバランスを見つけることが重要だ。われわれは経済を強く、競争的にすると同時に、相互の基本的な責任を果たすことができる。」

NYT January 18, 2011

Sharing the Burden of Peace

By ROBERT WRIGHT

ゲイツ国防長官の防衛予算削減に対して議会の委員長が反論した。「アメリカは二つの戦争を戦っている最中だ。そして、中国がおり、イランもいる。こんなときに防衛予算の削減を提案するのか?」

ここには費用と便益を比較するだけでは解けない問題がある。「集合行為問題」、「フリー・ライダー」、商店街をうろつきまわる暴漢を排除したいが、誰もその費用を支払わない、という問題だ。安全保障も同じだし、その上、アメリカは世界の経済つ間の役割を自任し、期待されている。それは他にこの役割を自ら担いたい国がなかなか出てこないし、アメリカへの反感を強める、という悪循環をもたらす。

この悪循環を解消する答えが「グローバル・ガバナンス」だ。環境でも金融でも議論されているが、安全保障でもっと必要だ。たとえば、もしアジアの国境紛争をもっと法的に処理できるなら、戦争のリスクは減り、関係諸国にもアメリカにも大きな利益となるだろう。そのことを、アメリカの指導力が失われる、と見なすかどうかは、その人が何を「指導力」として目指すのかによる。

YaleGlobal , 19 January 2011

How to Keep the Nuclear Genie in the Bottle

Richard Weitz

アメリカとロシアは1987年以来、核弾頭の数を7万から22000に削減してきた。しかし、両国が保有する高濃縮ウランは2000トンもある。イスラム原理主義者のテロ組織が核物質や隔壁を利用したテロに及ぶ可能性は否定できない。すべての核保有国、核物質の生産・流通・利用に関わる諸国が参加する、国際的な監視体制が必要だ。


FT January 13 2011

America: Paydown problems

By James Politi

FT January 16 2011

A daft way to tackle America’s debt

By Clive Crook

YaleGlobal , 17 January 2011

The Markets Prey on Debt-Laden Nations

Joergen Oerstroem Moeller


l         スーダン南部独立など、民族自決権の再興

FP JANUARY 13, 2011

Breaking Up Is Good to Do

BY PARAG KHANNA

新しく小さな独立国家が誕生しつつある。南スーダン、パレスチナ、クルディスタン、南オセチア、ソマリランド、ダルフール。

民族自決によって国家主権を求める波の結果、現在の世界には、1000年前の中世以来、最も多くの自律的な政治単位が存在している。次の10年で、300を超えることも容易に考えられるのだ。われわれは、何千ものコミュニティーが重なりう合う、中世的な世界を再現しつつある。そこには超国家的なEUもあれば、ペルシャ湾岸の強力な磁力を発する都市国家もあり、カナダやグリーンランドの原住者であるイヌイットたちの社会もある。

アフリカ、中東、アジアの世界地図が不安定性を示す背後には、脱植民地化のエントロピーが働いている。多くの植民地は、半世紀前に独立して以来、管理されない人口爆発を経験し、掠奪者の独裁政治や政治腐敗を経て、インフラや制度は砕け散り、エスニックや部族による分裂が進んだ。

イエメン、イラク、パキスタン、コンゴなどは、「破綻国家」に分類できるかどうかは別にして、植民地の遺産に縛られている。その国境線が、しばしば紛争の原因である。世界はその調整をもっと弾力的に進めなければならない。ヨーロッパは最初にこの混乱をもたらしたが、今では新しい境界の決定を支持している。

その意味では、イラクやアフガニスタンの紛争状態も、「アメリカの戦争」であるだけでなく、旧ヨーロッパの戦争が破壊されずに残ったものであり、ゆっくりと溶解してきたのだ。ヨーロッパの旧帝国が合意した直線的な境界線を持ち、過大な領域に及ぶ、スーダンのような人工国家には、アラブ系、アフリカ系、キリスト教徒、イスラム教徒が含まれている。アメリカの4分の1の領土に、共通の国民意識もなければ、統一を守るために資源を配分する仕組みもない。

これはアメリカだけの任務ではなく、世界の影響力ある大国と外交官たちが、ウッドロー・ウィルソンが唱えたように、民衆の自決権を支持して解決すべき問題だ。その方が、信頼できない政治体制を同盟国として支援したり、役に立たない同盟関係を拡大したり、整然と消滅することを期待するより、はるかに事態は改善される。自決権を承認することが、現代世界に賭けている真の「政治家」を生むだろう。

スーダン南部の独立は、国際的制裁とかかわった住民投票によるが、アメリカの陰謀ではないし、中国のスーダン政府支援も独立承認の過程を受け入れている。むしろ、こうした内陸部に誕生する小国が外部市場に結びつくインフラを持たなければ、その生存は非常に困難であることが重要だ。資源を輸出するパイプラインや、物資を供給するトラックや鉄道の輸送システムが確保されるべきだ。

独立してもエントロピーの拡散はすぐに止まらない。コンゴ、ナイジェリア、パキスタンのような国家は、内部の分散化や政策による不均等な開発を経て、自分たちで統治する能力を失っている。公平な近代国家を形成する能力、資源、意志が無い。むしろ中央政府の失敗に対する抵抗を続けるだろう。

国家の分離には解剖用のメスも斧も使うし、ソフト・パワーもハード・パワーも必要だ。何よりも、世界はこうした分離が必要であると認めることだ。地図を変更することへの恐怖がわれわれにはあるが、いかなる集団も暴力的な抵抗手段(さまざまな近代兵器)を入手できる時代に、自決権を認めなければ永久に紛争が続くだろう。サダム・フセインがクルド人に行ったような、セルビア人がコソボ住民に行ったような、残酷な弾圧を経験した人々が、再び一つの政府の下で平和的に共存することは不可能だ。遅らせるよりも外交的な処理を急ぎ、迅速な分離によって平和を得ることができる。チェコスロヴァキアは「ビロート式の離婚」によって1993年に分離し、ともにEU加盟国として、境界線など重要で亡くなったけれど、互いの境界線を尊重している。

現状維持を利害関係から求めるロシアや中国の分離反対論は、一種の帝国論であり、彼らが国内の分離派を刺激するという理由は見当違いだ。

「平和で、国境のない世界を築く道は、皮肉なことに、より多くの民族が国境を定める。その後で、それを前提としてのみ、われわれは開放性を求め、その他の世界と統合するだろう。分割は、ときに、友情に至るより優れた道である。」

WP Friday, January 14, 2011

Mideast threats that can't be ignored

By Jackson Diehl


FP JANUARY 14, 2011

Getting Real on Japan

BY DANIEL SNEIDER

日米関係は一時期の悪化をそれぞれが学習しながら、より戦略的な重要性を見直す結果となった。普天間基地問題の解決はまだ見えないが、日米間の同盟関係は強化される。

guardian.co.uk, Monday 17 January 2011

The myth of Japan's lost decade

Daniel Gros

日本の「失われた10年」を避けるために、アメリカやその他の富裕諸国は景気刺激策に走った。しかし、日本の教訓は間違っている。「失われた10年」は見かけほどアメリカやヨーロッパに劣るわけではなかったし、その原則の理由は人口の減少であった。

WSJ JANUARY 19, 2011

Japanese for 'Plus Ça Change . . .'

与謝野は伝統的な財政再建のタカ派で消費増の引き上げを目指し、菅はTPPによる自由化により競争と革新を刺激する。しかし、これは政治的反対にあって失敗するだろう。日本の政治は古い考えと古い顔ばかりだ。


l         チュニジアの革命とアラブ世界への拡大

FT January 14 2011

Arab leaders should watch TV

By Roula Khalaf

アラブ社会の支配的秩序の下で、若者や人口の大部分が支配者を嫌っているが、変化が起きると信じるには余りにも無気力に落ち込んでいることに、われわれは慣れてしまっていた。彼らは仕事もなく、結婚の望みもなく、家族も持てないまま、良い時代が来ることをただ待っている。選挙が不正であると知っているから、投票にも期待しない。

しかし、彼らの間にチュニジアは爆弾を落とした。人々はぶつんと切れて、暴動が抗議の波に拡大し、町から町に移動した。仕事を求める声は即座に支配者の退陣要求に変わり、国外脱出につながった。憤慨した若者たちは発砲する警官にも立ち向かい、他の者は自分の小さな店を強制的に奪った警察に抗議して焼身自殺した。

アラブ世界のすべてで、その光景は中継された。専制的な支配者たちは旧権力が速やかに回復されることを願ったが、それは間違いだった。警察国家は自由を奪い、民主主義を許さなかった。民衆が首都の中心部を占拠し、恐怖の壁が倒れたとき、体制は崩壊した。若者の増加が目立ち、経済は衰退し、支配体制は権威主義的で疲弊している。社会不安と革命をもたらす同じような複合物がアラブ世界に蔓延している。

チュニジア革命は地域全体への警告だ。

WP Saturday, January 15, 2011;

Tunisia's Jasmine Revolution

By Mona Eltahawy

FT January 15 2011

Protesters make the case for peaceful change

By Eileen Byrne in Sidi Bouzid, central Tunisia

WP Saturday, January 15, 2011

Tunisia's revolution should be a wake-up call to Mideast autocrats

NYT January 15, 2011

Nigeria’s Promise, Africa’s Hope

By CHINUA ACHEBE

FT January 16 2011

Tunisia heralds a long battle for Arab reform

By Rami Khouri

チュニジアにおける先週の劇的な体制崩壊は、ただちにアラブ世界を革命の波で満たすことにはならないだろう。もちろん、アラブの多くの分野で変化を求める煽動が行われるだろうが、他方、既得権層から先制攻撃的な封じ込めが行われるからだ。将来、チュニジアの革命はポーランドの連帯のように解雇されると思う。連帯はソ連の衛星諸国における緩やかな長期の転換過程に火を付けた。それは東欧に革命を輸出したベルリンの壁崩壊とは異なる。

アラブ世界は二つに分割される。一つは石油を産出し、人口の少ない、裕福な諸国。支配エリートたちは父権主義的で、部独的な福祉体制を取っている。国民は物質的に満足し、政治的には従順だ。その他のアラブ世界は、35000万人中の32000万人を占めるが、チュニジアと同じような経済の衰退、持つ者と持たざる者との格差拡大、人口の対部分を占める若者の不満が専制体制下に蓄積されている。

支配層は弾圧や懐柔策を採用するだろう。公的部門の雇用や賃金を改善する。物価を統制する。しかし、不満は選挙制度の不正に向かいつつある。そして議会を強化して、特権層による財政支出を暴くだろう。こうして、アメリカ、ヨーロッパ、ロシアがそうであったように、アラブ世界でも安全保障国家security stateは終わる。

WP Monday, January 17, 2011

Tunisia's Jasmine Revolution might not install a democracy

By Anne Applebaum

チュニジアの「ジャスミン革命」は、権威主義社会に民主主義をもたらす最善の方法が街頭選挙や独裁者の追放ではないことを学ぶべきだろう。なぜなら、同じ情景は1979年のイランでも、2004年のウクライナでも、1989年の中国、天安門広場でも見られたからだ。むしろ安定した民主主義体制を実現した、スペイン、チリ、ポーランド、を見れば、衝撃的な映像は乏しい。

FT January 19 2011

The Jasmine Revolution

LAT January 19, 2011

Tunisia as a tipping point

guardian.co.uk, Wednesday 19 January 2011

Tunisia's revolution isn't a product of Twitter or WikiLeaks. But they do help

Timothy Garton Ash

ウェブサイト、ソーシャル・ネットワーク、携帯電話、などが大衆の抗議活動にどのような影響を与えるのか? 情報が境界を超える。変化とその波及を加速する。

FT January 19 2011

Democracy in Tunisia is just the start

By Zalmay Khalilzad


l         アメリカの不況

guardian.co.uk, Saturday 15 January 2011

The 'new normal' of unemployment

Dean Baker

 (chinadaily.com.cn) 2011-01-15

Five steps forward in 2011

By Michael Spence

新興諸国の成長も、先進諸国が不況を脱することが前提である。国際的な政策協調が必要な分野は5つある。

1.EUとアメリカは財政収支を均衡させる。時間はかかるだろうが、ユーロ圏は財政の統一が避けられない。2.アメリカは連銀による量的緩和に大きく依存している状態を脱する。3.慢性的な黒字国、特に中国は国内改革を進める。4.アメリカは輸出部門を拡大し、雇用を増やす。5.世界金融の安定性を高め、為替レートや資本移動の浮動性を取り除く。財政赤字の削減と外貨準備累積国の協力が必要だ。

WP Sunday, January 16, 2011;

The shadow of the '60s

By Robert J. Samuelson

現在は1960年代と似ている。もちろん、1960年代は素晴らしい景気拡大があって、若者は職を探すより、職場が若者を探していた。しかし、心理的・政治的な類似性が強くある。制度や指導者への不信感がそれだ。

アメリカはかつてないほど分裂した。公民権運動も最初は社会を前進される動きとして法制化された。しかし、196311月にジョン・F・ケネディーが暗殺されてから、19748月にリチャード・ニクソンが辞任するまで、想像を超える出来事によってアメリカは熱病に苦しんだ。

マーチン・ルーサー・キングJr.とローバーと・ケネディの暗殺が続き、ロサンジェルスから暑い夏にアメリカ中へ広がる都市暴動があった。ベトナム反戦は空前の政治運動に成長した。誰も、ジョンソンが再選を諦めるとか、ニクソンが辞任するとは、予想もしなかった。経済ブームはインフレの高進につながった。

アメリカの自我が崩壊し続けた。人種差別、政治の分極化、反社会的な生活スタイルが流行した。今と同じような苦しみを、私たちは見たことがある。

WSJ JANUARY 18, 2011

The Latest American Export: Inflation

By RONALD MCKINNON

1971年、2003年、2010年、その共通点は何か? それぞれの年に、アメリカは低金利とドル安予想により、大規模な「ホット・マネー」の流出と世界的なインフレが起きた。そして三つの場合ですべて、外国の中央銀行は急激な通貨の増価を防ぐために激しいドル買い介入をした。」

現在のドル流出を「バーナンキ・ショック」とRONALD MCKINNONは呼びます。それはアメリカの内外で不安定化をもたらすでしょう。

NYT January 18, 2011

Poverty and Recovery


The Observer, Sunday 16 January 2011

Bringing the bankers to heel must start right here, right now

Will Hutton


l         ユーロ圏の生き残り

FT January 16 2011

A German-led eurozone rescue

By Wolfgang Münchau

ユーロ危機はどのようにすれば終わるのか? EFSFは「衝撃と恐怖」であることを期待されていた。しかし、危機はそれを超えてしまった。Barry Eichengreenによれば、混乱したデフォルトか、秩序正しいドイツによる救済融資で終わる。それはWillem Buiterによれば、EFSFthe European financial stability facility)の縮小、赤字国政府の債務不履行とEU規模の銀行破綻、資本注入に至るか、もしくは、EFSFの拡大(裏口からのEU財政統合)、によって終わる。

どちらの方がコストは少ないのか? EFSFの費用を嫌うドイツの選択は、むしろ大きなコストを国民に強いることになる。

WP Sunday, January 16, 2011

Riding to the euro's rescue

FT January 17 2011

Europe is running fast to stand still

By Mohamed El-Erian

WSJ JANUARY 18, 2011

No More Monopoly Money for Europe

By PHILIP BOOTH AND ALBERTO MINGARDI

ユーロ圏の危機に簡単な答えは無い。複雑な答と、単純な答がある。すなわち、ショックに弾力的な調整を行えるような自由化、特に労働市場の自由化を進めるか、あるいは、ユーロ圏を解体するか、である。

ユーロ圏を解体する混乱を招くことなく、事実上、ユーロを残したまま解体と同じ効果を得る方法がある。それは各国通貨を復活させて、ユーロも含めた競争市場を築くことだ。EU諸国にとって、かつてイギリス政府が提案したように、ユーロは独占的な単一通貨でなくなる。さらに言えば、地域通貨や民間の発行する通貨も、その国の政府が認めるなら通貨として(たとえば決済や納税のために)許されるだろう。どの国もユーロではなく自国通貨だけを認める時期があってよい。

通貨間競争と共通通貨は、競争を促し、通貨価値の安定化とEU経済の分散化を促すだろう。

Jan. 18 (Bloomberg)

Portuguese Bailout Will Make Euro Crisis Worse

Matthew Lynn

Jan. 19 (Bloomberg)

Euro’s Spanish Showdown Needs Some ‘Shock and Awe’

Eric Chaney

FT January 19 2011

Conduit for crisis

WSJ JANUARY 21, 2011

Why Europe Matters

By DESMOND LACHMAN

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The Economist January 8th 2011

The battle ahead

Public-sector workers: (Government) workers of the world unite!

Banyan: The indispensable incarnation

Price rises in China: Inflated fears

A more hopeful continent: The lion kings?

(コメント) 公務員の労働組合に関する強い批判が宣言されています。新興諸国の登場やインフレ問題は、旧富裕諸国の金融危機、不況、失業(デフレ傾向)などと重なっています。このグローバルな地殻変動の圧力から、公務員の労働組合はいつまで隔離されていることを願うのでしょうか? 国境を越えた次の闘争を、「Tax Payers Tax Eaters との闘い」と表現します。

公務員たちは、民間部門で労働組合の組織率が急速に低下してきたこの30年間も、高い組合組織率を維持してきました。彼らは民間よりも雇用の安定性を保証され、その分、賃金が低かったはずですが、今では民間よりも高い賃金を得ている、と記事は指摘します。財政赤字が納税者に増税を求める中でも、公務員たちは給与や雇用を守る力をもっています。

民間部門の生産性が上昇する中でも公的部門の生産性は低く、自由化や弾力化、革新的な試みに反対することがしばしばである公的部門の労働組合が、民間部門の労働者から共感を得られることは無い、と記事は厳しく批判しています。

ほかにも、ダライラマの引退発言をめぐるチベット難民たちの不安、中国のインフレ、そして、中国などからの需要増で上昇した国際価格が原因となって、アフリカにも高成長諸国が現れた記事に関心を持ちました。