今週のReview
1/10-1/15
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IPEの想像力 1/10/11
日本は衰退の国。・・・政治的混迷の中、インターネットによる欲望・犯罪の蔓延を続けて、ますます、イタリアやロシアに似てくる。中国の経済規模がアメリカを抜くまでの、あと10年で、日本は中国市場に大きく依存するだけでなく、政治的対話による信頼関係を築けるでしょうか?
日本は死者の国。・・・13年連続で、年間3万人以上の自殺者があったというニュースは、日本が自殺者だけでなる大きな都市を建設する計画を想像させます。40万人が死者の巨大都市へ移住したのです。失業や貧困のために子供を産むことができなかった女性たちがいるとしたら、生まれてこなかった子供たちもこの都市の住民に加えるべきでしょう。
失業した労働者の質は急速に劣化するでしょう。若者の失業や、介助・保護を必要とする高齢者、そして乳幼児は社会的なコストです。彼らを抱える個々の家族がそのコストを支えきれず、主要な働き手も生産から離脱してしまうなら、貧困層の拡大する悪循環が生まれます。ブラジルのBolsa FamiliaやメキシコのOportunidadesが成功したという記事を読んで、日本にも、独自の貧困対策が必要だ、と思いました。
生者の新しい開拓都市を認めて、彼らの雇用を生み出す職場は保護します。雇用を求めて若者や貧しい家族が開拓都市に集まり、そこで結婚する若者や子供が増えるでしょう。「保護」は国際的ではなく、局地的・一時的な政策として導入し、雇用の拡大とともに、高い生産性と所得水準、市場を形成するように「監督」します。
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日本は漫画の国。・・・ヨーロッパの街を歩く日本人を、外国の若者が見て思うのは「漫画」だそうです。『ワン・ピース』や『NARUTO』などの翻訳版を、どの駅の売店でも見かける。外国に行くときは『少年ジャンプ』を持っていく。すると、最新の話を見て外国の若者たちが大いに感激してくれる。そんな話を聞きました。
日本は職人の国。・・・日本で売られる衣服の84%は中国製品だ、と「ガイアの夜明け」は伝えています。では、その代わりに日本が輸出できる商品とは何か? 番組が紹介したのは、@台湾に進出した日本の老舗旅館が輸出する「おもてなし」というサービス、Aシンガポールに進出した「10分1000円の散髪屋」が輸出する信頼と高い技術、B日本から中国に輸出される「日本人職人が作る衣服」の優れた縫製技術。など。
花火やおもちゃ、ビニール傘や衣類だけでなく、韓国、台湾に続いて、次第に中国、インドが、鉄鋼、家電、自動車、半導体、でも生産性を高めてくる。他方、漫画・アニメ(その関連グッズ)、サービス産業と職人芸、洗浄式のトイレ、など、新興諸国の若者が感心する財・サービスが、日本の主要な輸出産業になるのです。
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日本は老人の国。・・・老人たちの、老人たちによる、老人たちのためのビジネスを起こしてください。高齢者(50歳以上)の観点から、投資や、社会保障、健康・医療、雇用、詐欺・犯罪からの防衛・対抗措置、状況に応じた生活保障のオプションを評価し、利用できるように整理・助言するビジネスです。被雇用者や責任者も高齢者が中心です。その労働条件や報酬体系を、独自に提案します。
こうしたビジネスが成功した場合、グローバル展開も実現するでしょう。一方では、ヨーロッパやアメリカなど、高齢化する社会に進出し、提携します。他方、インドやフィリピンの病院・介護施設と、スタッフや患者・高齢者の交換を合意します。海外の施設で暮らす日本人は、雇用や財政移転の重要な拠点となるでしょう。
中国人、インド人、メキシコ人の勤勉な労働者たちも参加した、自殺するより新しい職場で生きることを願う若者たちと、投資や仕事の楽しみを分かち合う元気な老人たちのパワーで、利己的に争うより静かに譲り合う「日本文化」が世界各地で繁栄する時代が来るのです。
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インドの汚職 ・・・貧困対策 ・・・ドイツの景気 ・・・中国との共存 ・・・日本の経済運営 ・・・アメリカの衰退 ・・・グローバリゼーションをめぐる考察 ・・・アメリカ議会 ・・・ポピュリストの支配 ・・・EU債務危機
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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia
l インドの汚職
Project Syndicate, 2010-12-29
Getting Corruption Right
Jagdish Bhagwati
「腐敗corruption」について、Bhagwatiは安易に国際評価してはいけない、と考えます。世界銀行が提供する「透明度ランキング」は、文化の違いを考慮していません。
たとえば、オバマ大統領はインド議会で雄弁をふるったけれど、インドではそれがアメリカほど高く評価されない、むしろ、非難されるものと見られています。なぜなら政治家はすべて腐敗しているからです。雄弁であることは、欺瞞や無能の証拠かもしれません。
たとえば、アジア通貨危機に対して、IMFの融資条件やアメリカ財務省、金融市場ではなく、アジア諸国の「クローニズム」が非難されました。しかし、どこにも汚職はあります。自由貿易と資本自由化を同一視した政策の方こそ間違いであり、危機の原因でした。
汚職は「文化」であると同時に、「政策」の結果です。インドでは「ライセンス・ラジ」と呼ばれた許可制度があったために、輸入、生産、投資のすべてが政治家や官僚の賄賂につながったのです。賄賂がなければ許可は下りず、申請書類も処理されません。他方、中国の「腐敗」は政治エリートたちの富につながっていますが、それは「利潤を分け合っている」のです。だから、経済活動を拡大することに積極的です。
いずれのケースも、信頼されるガバナンスをもたらすことは無く、長期的には成長を損なう、と考えます。腐敗と文化の違いを正しく理解しなければなりません。
guardian.co.uk, Wednesday 5 January 2011
India starts to turn on its elite
Sanjeev Sanyal
「人口12億人の国にしては、インドは驚くほど少ないエリートによって支配されている。政府から大企業、スポーツの団体まで、彼らがすべてを動かしている。しかし、何10億ドルも関係する、一連のスキャンダルで、庶民から見てエリートの立場は大きく損なわれた。」
全体主義的な国家でなければ、政治家には大衆の支持が求められ、それゆえ、エリートたちは「公平さ」を期待されている。しかし、歴史的に観て、多くの国で腐敗が深刻であった。イギリス、フランス、アメリカが例に挙げられる。イギリスの地主階級や、アメリカの工業化による「泥棒資本家robber-baron」たちは、下層民の暴動や知識人の批判により、改革を迫られた。特に、エリート層が政治改革を拒んだ場合、フランスやロシアのように暴力革命が起きた。ドイツでは、工業化に成功したエリートが第一次世界大戦の敗北で信用を失い、政治的な均衡が失われた。その空白をナチスが埋めた。
日本、韓国、中国と同様、インドも所得が増大するにつれて、まだ7000万人しかいないけれど、今後、中産階級が増えるだろう。エリート層は、スラムや農村から集まってくる新しい労働者たちに取り囲まれ、社会的な移動性を実現する改革を受け入れるか、それを阻んで彼らの怨嗟と怒りを招き、暴力革命やナチズムのような政治的混乱に至る可能性がある。
FT January 6 2011
Food price inflation spirals in India
By Anjli Raval in Mumbai
WSJ JANUARY 7, 2011
India's Balanced Growth
インドは、東アジア諸国と異なって、より自由化された経済発展を実現してきた。経済学のテキストが教えるように、貧しい国が急速な成長を遂げるには資本財の輸入が増え、また、所得の増大は消費財の輸入を増やす。これに対して、成長する国への資本流入が貿易赤字を埋めるだろう。
ところが、東アジア諸国はそうしなかった。貿易黒字を急速に増大させたのだ。インドはこれに対する例外であり、均衡成長を目指した。輸出に偏った成長ではなく、貿易を自由化し、国内市場における競争と投資を加速してきた。
今、経常赤字が増えたことに対して、資本流入が「浮動的」であると考えて資本規制するのではなく、国内のさまざまな規制を緩和して、「安定的」な直接投資を増やすべきだ。現状では、多くの分野で、多国籍企業がインド市場に参加できない。
WSJ JANUARY 7, 2011
How India Can Cope With Plenty
By ESWAR PRASAD
上記の論説と並んでインドへの投資を検討しています。成長が加速し、経常収支赤字が増えたとき、成長を抑制するべきか、あるいは、成長を続けるために資本流入を自由化するべきか?
政府は、赤字を何が埋めるべきか、に焦点を当てるほうが良い。すなわち、インド国内で生産的な投資が増えるような資本流入を促すことだ。特に、地元企業との合弁など、長期の直接投資を増やすのが良い。
ところが、左派政党はウォルマートの直接投資を阻んでいる。直接投資を増やすには、単に国内向けの外国投資に対してだけでなく、国内市場の規制や腐敗をなくすことが必要だ。非効率な補助金ではなく、貧困層への直接の支給や、セーフティーネットを充実することも必要だ。それがインド企業に外国企業との競争を受け入れる条件でもある。
l 貧困対策
LAT December 30, 2010
Solving California's jobs crisis
By Darrell Steinberg
LAT December 30, 2010
A Giving Pledge for the common citizen
By Jacob S. Hacker and Daniel Markovits
「不況が終わっても、高い失業率と系座くぃの不安定さは残ったまま、何百万人もの労働者と家族を苦しめている。一方で、ウォール街は再び利益を上げ、富裕層は繁栄し続けている。われわれの政治制度が故障したままであるから、政治は十分に対応できていない。」
失業を減らずために財政刺激策が求められた。しかし、それは失業者への給付を延長するだけでなく、同時に、共和党の求める富裕層への不公平な成長の利益を拡大し、貧困層への職業訓練や住宅支援、教育への投資を拒み、それらをバフェットやゲイツのような社会慈善活動に転換するものだ。
「階級戦争のためではなく、社会的公平さのために、アメリカの中産階級を再生するために」と、クリントンは訴えた。
LAT January 3, 2011
Awaiting the other recovery
Gregory Rodriguez
「不況は気持ちをふさぐだけでなく、刺激を失わせる。」 職がなく、金がない、というのは、さらに楽観的な感覚、希望や行動を失わせる。
NYT January 3, 2011
To Beat Back Poverty, Pay the Poor
By TINA ROSENBERG
なぜブラジルの貧困は減ったのか? たとえば、リオデジャネイロのスラム(ファベーラ)は斜面を埋め尽くし、富裕層の高級住宅からも見えます。不平等な世界の代表でした。
しかし、2003年から2009年に、ブラジルの貧困層は富裕層よりも7倍の速さで所得を増やしました。貧困人口は国民の22%から7%に減少したのです。
アメリカでは逆に、最上層への富の集中が進みました。低中所得のアメリカ人は、生産性を改善したのに所得を減らしました。このままでは、アメリカの方がブラジルよりも不平等になるかもしれません。
ブラジルの貧困を減らしたのは、特に一つの社会プログラムが重要でした。「家族給付Bolsa Familia」と呼ばれる仕組み(各地で異なった仕組みがあり、メキシコではOportunidadesという)は、貧困家庭に一定の基準を満たせば、毎月、直接に現金が給付されるのです。その基準は、国によって異なります。たとえば、子供を学校に通わせ、定期的に医者に診せる。母親が子供の栄養や病気の予防に関する話を聴きに行く。そして給付が家族のために使われるよう、女性だけに直接支払われる。
何と小さなアイデアが、重大な改善をもたらしたことか。この考えは今や世界の40カ国に及ぶ。
「社会改良事業が貧しい国で機能することに懐疑的な者は、そのような給付は盗まれるだけだと考え、条件付き給付は強い反対を受ける。しかし、ここに支援を必要とする人々に与えられる事業があり、無駄や汚職、政治的な干渉に侵されない仕組みがあるのだ。たとえ小さな村の事業でも、その成功は素晴らしい。ブラジルやメキシコが達成したことは驚異的だ。」
WP Wednesday, January 5, 2011
Restarting the economic machine
By David Ignatius
しかし、富裕な諸国では投資のエンジンが止まってしまったら、もっと別の刺激が必要です。バーナンキは「量的緩和」によって、ケインズが指摘した景気回復への心理的な壁を乗り越えようとしています。
NYT January 5, 2011
Ladders for the Poor
By NICHOLAS D. KRISTOF
ハイチ地震から1年近く経っても、まだ100万人がテント生活を続けています。民間の寄付やボランティアには限界があるのです。
政府はインフラ整備や公共事業を迅速に進める必要があります。しかし、民間でできることも多くあります。慈善団体は子供たちに食事を与え、民間企業はハイチに工場を経てます。コカコーラがオレンジジュースの工場を経て、韓国の衣類企業が工場を経てます。
世界の貧困を減らすために私たちは道徳的な責務を負っている、と信じる人には、まだ多くのことができるのです。
FT December 30 2010
2010: The year of the unconventional
By Lionel Barber
既存の考え方が疑われ、翻された一年だった。特に、7つのテーマを掲げる。
1.銀行の危機から政府債務危機へ。2.アメリカの衰退と中国の台頭。3.イギリスにおける保守党と自民党の連立政権誕生。4.チリとハイチの地震、BP海底油田、など。リスクの再評価。5.銀行をめぐる批判。6.ウィキリークス。7.新聞の死滅は間違いだ。
FT December 30 2010
The five most important events of 2010
Gideon Rachman
重大事件は5つある。1.アメリカ議会が社会保障に合意した。2.ヨーロッパの債務危機が続いた。3.中国の経済規模がナンバー2になった。4.中国とロシアの獄中にある二人の政治犯Liu Xiaobo and Mikhail Khodorkovskyが世界の注目を集めた。5.南アフリカのワールドカップ。
FP Friday, December 31, 2010
Top ten global events of the past decade
By Stephen M. Walt
過去10年における重大事件を挙げます(重要さの順位ではない)。
1.2001年1月に、ゴアではなくブッシュが就任式を行った。そして、チェイニーとネオコン思想をホワイトハウスに迎え入れた。2.9・11.真珠湾攻撃と同じく、アメリカの外交政策が転換した。3.北京オリンピック。中国は世界政治の舞台に立った。4.2007年に始まった世界金融危機・メルトダウン。5.ルーラ大統領の下でブラジルが変身した。6.トルコでAKPが勝利した。7.中東和平は最も低調な時期に向かう。8.北極の氷が溶ける。地球温暖化の証拠であり、北極の海が重要な地政学上の意味を持つ。9.地震やハリケーンのような自然災害の重要性が見直される。10.インターネットは新しい世界(政治空間)を開いた。
FP DECEMBER 30, 2010
The Stories to Watch in 2011
BY CAMERON ABADI
2011年に注目する問題は、石油価格上昇が世界景気を挫くか? メルケルはユーロ危機を抑え込めるか? 新興経済が発言力を詰めるIMFはどうなるか? キューバは鉄のカーテンを開けるか? イランとイスラエルは戦争に至るか?
FT December 30 2010
Cuts, leaks and atom smashing
guardian.co.uk, Saturday 1 January 2011
2011: calling time on capitalism
Richard Wolff
NYT January 1, 2011
The Economy in 2011
景気回復は社会の広い層に影響を与えるか? 財政破綻と国際資本市場への依存。資本流出への逆転。しかし、議会における共和党の反対がオバマを制約します。
LAT January 1, 2011
Our list of wishes for 2011
LATの描く2011年の抱負。 ・・・失業率が1ケタに下がる。 ・・・アフガニスタンから軍の撤退が進む。 ・・・中国が北朝鮮を抑え込む。 ・・・グァンタナモ収容所の閉鎖が実行される。 ・・・犯罪率が低下する。 ・・・新しいモスクの建設が住民を刺激しない。 ・・・ハイブリッド・カーが普及し、大型車によるガソリンの浪費が減る。 ・・・ガソリン税を引き上げ、インフラを再生させる。 ・・・2012年の大統領選挙は遅く始まる。 ・・・メキシコの麻薬戦争が政府の勝利に終わる。 ・・・
guardian.co.uk, Monday 3 January 2011
Let's ignore the 'financial wizards' in 2011
Joseph Stiglitz
景気回復がまだ弱いのに、インフレや財政破たんを避けるために急激な緊縮政策を求めるような政策論が終わるように。そして、住宅債務や政府債務の組み換えメカニズムが公的に合意されるように。
中国ではインフラや教育への投資が増えているのに、アメリカやヨーロッパでは債務を抑えるために公共支出が削られている。それは競争力に影響するだろう。才能ある労働者たちが失業することで、社会は富を失い続けている。銀行は決して債務の減免を望まない。しかし、債務を免除した後で、生活は回復し、経済も成長している。アルゼンチンは債務不履行と切り下げで急速な成長を回復した。
l ドイツの景気
SPIEGEL ONLINE 12/31/2010
Germany's New Wirtschaftswunder
Does Euro Crisis Threaten Berlin's Economic Miracle?
By Katrin Elger and Christian Reiermann
ユーロ危機に関係なく、ドイツの好況は続く、という予想が支配的です。ドイツ経済が、アメリカやフランス、イギリスに比べて優れている、と考えるからです。ユーロ圏の成長のエンジンとして、長期的にその役割は変わりません。
この成功は、主に、シュレーダー首相に助言したフォルクスワーゲンの当時の重役Peter Hartzが進めた労働市場や社会福祉の改革に始まる。ドイツは、不動産バブルや金融ビジネスへの過度の依存を避けてきました。世界のどこかで成長する経済があれば、それはドイツの輸出を伸ばす、というわけです。また、ECBの低金利政策もドイツが成長を続ける条件です。10年前は逆に、成長する地中海諸国に比べて、ドイツは高金利で苦しみました。
将来の見通し、ユーロ危機の影響については意見が分かれます。
SPIEGEL ONLINE 01/03/2011
Competing Visions
France and Germany Split over Plans for European Economic Government
By Peter Müller and Michael Sauga
ヨーロッパの経済政府(ガバナンス)を構築する点で独仏の関心は一致している。しかし、ガバナンスの中身は異なる。各国の財政赤字を欧州全体で処理する融資とその条件、調整政策を誰が決めるのか。
ドイツは、既存の緊急事態に対応して作られた一時的な安定化基金を、恒久的な組織に変えることだけで、それ以上の制度は必要ないと考える。他方、フランスは、欧州理事会European Councilを経済政府にすることを考える。
guardian.co.uk, Friday 31 December 2010
Democracy's failures, 2010
Priyamvada Gopal
民主主義が抑えられ、その成果が奪われ、世界中で民主的な行動を牽制し、弾圧する傾向が強まりました。
イラク、アイボリー・コースト、ビルマ。アメリカの中間選挙では富裕層のキャンペーンが成功し、インドではRadiaスキャンダルが政治と経済を動かすエリート層の腐敗を示しました。イギリスの連立政権は選挙公約を破り、緊縮に伴う公的部門の解雇や政府顧問への憤慨は激しいデモとなって議会を取り囲みました。イギリスを本拠としながら、Vodafoneのような多国籍企業は課税を逃れ、民主主義の基礎を侵食します。
WP Tuesday, January 4, 2011;
When oil prices rise, Russia has freedom over a barrel
By Anne Applebaum
わずか2年前には、メドヴェージェフ大統領が法律の厳格な実行を求めたはずです。しかし、明らかに政治的な理由で、ホドルコフスキーMikhail Khodorkovskyの刑期をさらに7年間追加しました。
ロシアの政治改革を決めるのは石油価格だ、とAnne Applebaumはソ連時代にさかのぼって改革と反動の循環を示します。
l 中国との共存
NYT January 1, 2011
China’s Naval Ambitions
中国は、アメリカの同盟諸国が中国の海軍増強による脅威や領土紛争を心配する海域において、アメリカ航空母艦を攻撃できる弾道ミサイルの配備を行った。アメリカはミサイルそのものよりも、こうした中国の行動の背後にある海軍の新しい方針に関心がある。
アメリカは、中国が沿海部における安全保障に強い関心を持つことに一定の理解を示す。しかし、西太平洋におけるアメリカ海軍の優位を奪おうとする意図には、慎重に、しかし断固として対抗するべきだ、と論説は主張しています。すなわち、対抗できる軍事力を維持することと、大国間の競争ではなく協力を求める外交努力の強化です。
(China Daily) 2011-01-01
The rise of yuan
WP Sunday, January 2, 2011
Why China's missiles should be our focus
By Mark Stokes and Dan Blumenthal
この論説を読めば、お正月の楽しい(楽しすぎる)テレビ番組を消して、正気になるでしょう。
ロシアとのSTARTがたとえ成立しても、中国の弾道ミサイルがINF(中距離核兵器)条約に組み込めなければ、世界核戦争は脅威は高まります。なぜなら、中国は太平洋におけるアメリカ軍の基地と船舶を(もうすぐ)攻撃できる弾道ミサイルを配備したからです。
中国の核兵器はアメリカとロシアの核兵器と違って報復の標的となっておらず、たとえ少なくても、世界の核戦力のバランスを決定的に崩してしまいます。中国のミサイル技術は世界でも先端的な技術を含んでおり、動く複数の標的を大陸間弾道ミサイルで狙えるものです。そのミサイルを防ぐには、アメリカ軍は中国の本土におけるミサイル基地を攻撃しなければなりません。
中国の核ミサイルに対抗して、インドや台湾もミサイルを増やすでしょうし、日本もその脅威に対抗しなければならないと考えるでしょう。このままでは、アメリカ、ロシア、中国、インドの核大国が軍拡競争に向かいます。
オバマ政権は米中戦略会議で、中国も核兵器削減交渉に参加し、国際的な核の監視体制に参加するよう、強く求めなければなりません。
WSJ JANUARY 2, 2011
China Expands Easing of Capital Controls on Exporters
By AARON BACK
NYT January 2, 2011
How to Stay Friends With China
By ZBIGNIEW BRZEZINSKI
胡錦濤主席のアメリカ訪問は、ケ小平の訪米以来、米中関係の30年ぶりの重要なトップ会談となる。30年前の米中会談は、ソ連の拡大主義に対抗する明確な合意と、その後の30年間に及ぶ中国経済の成長を支持する枠組みを決めた。
しかし今、アメリカは中国の長期的な地政学的野心を疑っている。米中双方が互いの意図を「利己的」と非難し、悪意と見なし、敵対する相手をますます悪者にしている。アメリカは国内の経済システムを刷新しなければならない。中国も、政治システムの硬直さの中で経済改革を進めている。そんな中で、30年間の協調に代わって、互いの異なるシステムや価値観を非難し、協調の失敗に結び付けようとしている。
それゆえ胡錦濤主席の訪米は、米中協力が歴史的な生産的役割を果たすことを確認する重要な機会である。それは双方の国益を超える、より大きな使命、すなわち、21世紀のグローバルな相互依存を導く、道義的な責任を認め合う協力関係なのである。
「米中宣言は共通の政治的・経済的・社会的目標を実現するものである。宣言は両国の合意とともに、対立する分野もあるが、それらを抑える方策について協力することも率直に認めるものだ。宣言はまた、安全保障に対する潜在的な脅威を相互の関心事として注目し、それに対処する上で意見交換や協力が双方で高められることを約束する。」
敵対することを避けるためだけでなく、リアリスティックな協力を拡大するための枠組みを示すものだ。こうして、大きく異なる歴史、アイデンティティー、文化をもつ二つの国が、歴史的に重要な、グローバルな役割を認め合う。
SPIEGEL ONLINE 01/05/2011
Charm Offensive
China Promises Support for Euro Zone
中国は、国内のインフレを抑え、増大する外貨準備のリスクを回避するために、世界の主要投資家になろうとしています。それは、ギリシャ政府のユーロ債に対する投資ともなるのです。ノーベル平和賞では激しい非難と妨害を試みた中国ですが、貿易や投資を拡大し、世界政治に占める役割を強化する姿勢は変わりません。また、ユーロ危機に動揺するEUには、それを拒む余裕などないのです。
YaleGlobal , 5 January 2011
China’s Green Ambition, US Sees Red
FP JANUARY/FEBRUARY 2011
5 Myths About the Chinese Communist Party
BY RICHARD MCGREGOR
1.中国は名ばかりの共産主義だ。・・・間違い。「もしレーニンが21世紀の北京によみがえって、これを見たら、中国共産党に1世紀前のボルシェビキ革命の勝者を見るだろう。」 確かに共産主義の経済システムは放棄され、硬直的な計画経済よりも、商業的な利益を追求する国営企業と民間部門が拡大している。しかし、指導者たちは「管制高地」を握っている。3つのP:人脈、プロパガンダ、人民解放軍、である。人民解放軍は、国家の軍隊ではなく、共産党の軍隊だ。
2.共産党は生活のすべてを管理する。・・・もはやそうではない。
3.インターネットが共産党を倒す。・・・全く違う。中国はインターネットにも万里の長城を築いた。しかし、同時にグローバルなネット市民たちが育っている。プロパガンダやナショナリズムの言論が過熱する。
4.他の諸国が中国モデルを採用する。・・・幸運が必要だろう。発展途上国の中で、次の中国になる条件をもつ国は少ない。
5.共産党の支配は永久に続かない。・・・そのはずだ。台湾や韓国と違って、中国で増大しつつある中産階級は西側の民主主義を求めていない。しかも、日本や韓国が民主化を進めたとき、アメリカの支援と強制力をともなった。中国の政治改革にはそれが働かない。中国の市民もより大きな自由を求めるだろうが、政治体制に逆らうことは多くの物を失うという不安がある。それでも抵抗したのは成長のための投資が及んでいない辺境だけだった。
中国が民主化する、というのは西側の理論が主張するだけだ。中国はこれまで、西側の政治理論が間違っていることを示した。
guardian.co.uk, Thursday 6 January 2011
US should exercise green power
Kevin Gallagher
WSJ JANUARY 7, 2011
Realism on China Is More Realistic
By MICHAEL AUSLIN
l 日本の経済運営
WSJ JANUARY 1, 2011
Kan Vows to Push Free-Trade Deal
By YOREE KOH
FT January 5 2011
Japan finds there is more to life than growth
By David Pilling
GDP成長率で比べるなら、日本は世界中から悲観される国だ。その衰退のスピードは驚くほどだ。1994年、日本は世界GDPの17.9%を占めた。昨年、それはわずか8.76%に落ちた。日本は道に迷い、投資の対象から外されてしまった。・・・しかし、その見方は正しくない。
日本の成長は、人口の減少とデフレによって過小評価されている。一人当たりの実質成長率では、時期の取り方によるが、アメリカに比べて優っているし、20年間で見ても、それほど大きく劣っていない。また、国民の福祉をGDP以外の指標で見れば、治安が良く、清潔で、おいしい料理や社会的な平穏が保たれている。日本は、もはや成長を目指さない社会になった、という意見もある。日本ほど急速に成長したにもかかわらず、文化的なアイデンティティーを残した国は無い。
自殺や女性の社会進出、などについて、日本が21世紀のモデルになる、とは言えないだろう。しかし、もし雇用や安全、快適さ、長寿などを保てるなら、成長しないことは悲観することではない。
FT January 5 2011
Tax man Kan
FTも、菅政権が増税を議論する姿勢を支持しています。税収よりも借金が大きい状態は続けられません。「日本は、政府の債務は多いが、家計や企業の債務は少ない。税金を賭けることで彼らが貯蓄するより支出するなら、それこそ必要なことだ。」
WSJ JANUARY 5, 2011
Tokyo's Fiscal Reckoning
日本の政治は混乱したままだが、財政赤字を早く管理しなければならない。TPP参加による自由貿易の推進と、財政赤字を減らすための消費税率引き上げを明確に議論し始めた点で、菅政権はこれまでの日本政府と違うかもしれない。・・・WSJはそんな悲観と期待を示します。
社会保障を削るか、増税しなければ、日本政府はますますギリシャと同じ財政破綻への道をたどります。1年で、公的債務はGDPの200%に達するでしょう。税収よりも国債発行額の方が多くなりました。急速に高齢化する社会で、2012年には戦後のベビーブーム世代が引退し、さらに社会保障費を増やします。
中央政府と地方政府の債務は11兆ドルを超えており、金利が1%上昇すれば1100億ドルも負担増になります。もはや支出削減や増税でも破綻を避けられない局面に入る情勢です。議会が大幅な社会保障の削減を決めなければ、その時の首相がだれであるかに関係なく、金融市場によって債券発行は拒まれ、金利の上昇と劇的な増税、支出の削減を強いられます。
政治が混乱し、国民は政府を支持しない。重要な課題は置き去りにされたまま、政治家は内紛で忙しい。その様子はアジアのイタリアだと見られている。社会保障を削り、成長を促す減税をしなければ、ギリシャの混乱が待っている。
l アメリカの衰退
FP JANUARY/FEBRUARY 2011
Think Again: American Decline
This time it's for real.
BY GIDEON RACHMAN
「アメリカの衰退がいよいよ現実に起きている。」という主張を、GIDEON RACHMANは批判します。アメリカ衰退論は周期的に注目されてきました。ソ連や日本の成功が誇張されたからです。今は中国の成功です。ソ連は崩壊し、日本はアメリカの人口の半分しかなかったけれど、中国は人口規模のせいで20年以内にアメリカの経済規模を抜く可能性があります。
「どうせ中国はそのうち崩壊する。」とは考えません。西側の専門化は、天安門事件や、銀行の破たんなど、さまざまな崩壊を予測してきたけれど、中国は成長を続けました。いったん工業化に成功した国が、国際政治の舞台から消滅することはないのです。19世紀のドイツの台頭を考えるべきです。2度の軍事的な破滅、ハイパーインフレーション、大恐慌、戦争中の連合軍による主要都市の破壊を経て、それでもドイツは1950年代末から、主要工業国の一つとして重要な役割を果たしています。
「アメリカは世界を指導できる。」しかし、世界最高の大学、企業、軍隊を維持しても、それが続く保証は無いでしょう。中国は大学でも企業でも急速に追い上げており、アメリカ企業やその雇用も中国市場での拡大に依存しています。イラクやアフガニスタンの戦争はアメリカの軍隊に重大な限界があることを示しました。
「グローバリゼーションは西側の価値を実現する。」それは正しくない。成長は必ずしも民主化をもたらさず、さらに、民主主義国がアメリカの友好国になるとは言えない。
「グローバリゼーションはゼロサム・ゲームではない。」と言われますが、GIDEON RACHMANは、アメリカの指導者たちが中国の台頭によってその地位を失うことを恐れている、と断言します。そして、中国の台頭は相互利益に基づく国際秩序を歪曲するものだ、と非難しています。世界的不均衡が問題となり、人民元レートが責められます。そうすることで相互利益を実現できる、と主張しますが、中国との意見対立は深まっています。G20を通じて黒字国である中国を制裁するような調整政策は実現していません。
NYT January 2, 2011
Deep Hole Economics
By PAUL KRUGMAN
不況が終わっても経済はまだ雇用を増やせない。穴を掘るのをやめただけだ。人口増加と生産性上昇を考慮すれば、アメリカの成長率が2.5%を超える必要がある。
理想的な政府であれば、成長が回復するまで、失業者の社会的コストを軽減する21世紀の雇用促進局Works Progress Administrationを設置するだろう。それが無理であるとしても、政府は景気の回復を挫くような政策を取ってはならない。
しかし、共和党が支配する議会は財政再建を唱えており、連銀が金利を引き上げる恐れもある。
WP Monday, January 3, 2011;
Judging Obama's economics
By Robert J. Samuelson
キューバ危機と同様に、金融危機でも、アメリカの終末を議論することが続きました。サマーズの辞任会見を基に、オバマ政権の成果を検討しています。
大統領に就任したときの激しい市場崩壊を、オバマは止めることに成功しました。しかし、景気回復を妨げたのではないか、と。社会保障に対する企業の負担は雇用を妨げ、環境規制など、企業の意思決定と左派の理想の間で、オバマは難しい決断を避けてきた。
FT January 5 2011
Now Obama needs to talk up America
By David Rothkopf and Bernard Schwartz
FT January 3 2011
Battles loom between creditors and borrowers
By Richard Milne
「ヨーロッパを襲った債務危機がアメリカに及ぶのは何年くらい先か?」 と、アメリカの投資銀行が顧客に質問しました。永久に起きない、と答えたのは全体の10%以下でした。
銀行危機の波が起きた所はどこでも、その数年後に、政府債務危機の波が来る、とKenneth Rogoffは言います。この10年で家計、銀行、民間、そして、最後に政府が債務を切り詰める、とMohamed El-Erianは指摘します。
日本のように国内の貯蓄で債務を賄った国は危機を回避していますが、スペインは民間部門が海外に多くの債務を負っています。銀行システムと政府債務との合計を見なければならない、とアイルランド危機を経験したDeutsche BankのJim Reidは考えます。すると、債務のGDP比率は、アメリカ、イギリス、EU中枢、EU周辺、いずれも150-200%に達します。
もしEUの債務処理が混乱すれば、その他の債務比率の高い諸国にも波及し、新興経済でも破綻する可能性があります。世界的な規模で債務者と債権者の関係が悪化すれば、債務に依存した成長のパターンは大きく後退するでしょう。たとえば、アメリカと中国の関係が悪化し、債務の打開策は「囚人のジレンマ」に陥ります。
量的緩和策は、危機を先送りしているだけです。
l グローバリゼーションをめぐる考察
FT January 3 2011
The big question
2011年のグローバル・イシューは何か?
Is globalisation on the retreat in 2011?
By Gideon Rachman
西側諸国がパワーを失うことに不安を感じるほど、グローバリゼーションの逆転に向かう圧力が強まる。あるいは、新興市場諸国でも、通貨戦争に対する反発は資本規制への圧力を生じた。しかし、逆転の最も深刻なサインは保護主義である。各国がFTAを結んだけれど、世界貿易は米中関係に最も深く影響されるだろう。アメリカの議会下院は中国の人民元レートが過少に操作されていると非難し、関税で報復できる法案を通過させた。
もし協調して景気回復をもたらすことに失敗すれば、グローバリゼーションの逆転はいつでも準備されている。
Politics: A good genie, already out of its bottle
By Peter Mandelson
過去30年間、経済活動にとって国境は重要でなくなり、かつてないグローバルな繁栄を享受するようになった。三つの理由で、1930年代のような保護主義による逆転は起こらない。
1.通信技術の進歩は人々を結びつけている。Facebookの人口はEUを超え、もうすぐ中国を超えるだろう。2.国境を開放する政策は世界の指導者たちに支持されている。WTOを中心に、ルールに依拠した貿易システムはその真価を示した。3.多国間のガバナンスが存在する。G20は危機の回避に努めたし、グローバルな自己資本規制や流動性供給に圧力をかけている。過去30年間の収斂傾向は続くだろう。
われわれは中国の消費者を必要としている。それは中国政府がセーフティーネットを整備することで実現する。貧しい諸国は次々に中国やインド、ブラジルの例に続こうとしている。彼らは保護主義に繁栄を見ていない。
Economics: Facing a marked global reversal
By Joseph Stiglitz
中国が示したように、ケインズ主義政策は有効だ。しかし、ヨーロッパのような財政再建を急ぐ諸国が政策協調を破壊する。1930年代の近隣窮乏化政策が為替レートをめぐってよみがえった。新興諸国は資本流入を嫌い、彼らの成長で外貨準備が累積するとき、他の地域では失業が増える。グローバリゼーションを支持する指導者たちは減っていくだろう。貿易自由化は金融自由化をもたらし、危機とその波及を強めた。
資本規制、キャピタル・ゲイン課税、為替市場介入、低金利。その結果、資本市場は不確実さを増し、分割され、逆転が始まる。グローバルな準備通貨、グローバルな金融規制、G20よりも世界が参加できるガバナンスへの道は希望であるが、実現する見込みは無い。
Technology: Only closed systems can hit us
By Eric Schmidt
情報世界の開放は繁栄の条件である。それはゼロサム・ゲームではない。グローバルな時代の敵は、非弾力性であり、特権的所有制であり、「壁で囲まれた世界」である。
Asia: Eastern billions can still join the world
By Nandan Nilekani
グローバリゼーションは逆転しない。インドと中国がサービスと製造における世界の成長極になった。これらと結びつくことで繁栄は生じる。世界市場に参加する若い労働人口は急速に増え、彼らの生産性は急速に上昇する。高齢化する西側の富が資本市場を介して結びつくことは、双方に大きな利益をもたらす。しかもアジアの中産階級は消費を爆発させるだろう。それは世界にとって雇用の源泉である。技術革新とアイデアの普及を助けることだ。
FT January 4 2011
In the grip of a great convergence
By Martin Wolf
世界の乖離は終わり、収斂が始まっている。世界の所得格差は小さくなり、成長の極は各地に分散している。
Kenneth Pomeranzの研究によれば、18世紀後半から19世紀にかけて、世界の経済水準は大きく乖離・分散してきた。成長は西欧とアメリカなど彼らの入植地に偏ってきたのだ。20世紀の半ばに、中国やインドの一人当たり実質所得は、アメリカの水準の5%と7%にまで下がり、それは1980年頃まで変わらなかった。
この乖離は逆転し始めた。西側世界から大きく遅れていた技術変化が、その他の世界に波及し始めたのだ。Angus Maddisonによれば、1980年から2008年において、中国の一人当たり生産量はアメリカの6%から22%に上昇し、インドは5%から10%に上昇した。
生産性の急速な追い上げは初めてではなく、すでに日本や東アジアの小国がそれを示した。日本は第二次世界大戦後、アメリカに比べて大まかに現在の中国と同じ水準であったが、1970年代の前半に70%まで上昇した(1990年に90%でピークになった)。中国やインドに同じことができないとは言えない。
世界経済にとって重大な差は、日本や韓国に比べて、中国やインドはスケールが違うことだ。もし2030年に70%まで追い付けば、購買力平価で見て、中国の経済規模はアメリカの3倍近くに達し、アメリカと西欧の合計を超えるだろう。
Ben Bernankeの講演が指摘したように、2010年第二・四半期に、新興経済の実質総生産は2005年より41%高くなった(中国は70%、インドは55%)。他方、先進経済は5%しか伸びなかった。たとえ危機が生じても、収斂は続くし、望ましいことだ。かつて世界の周辺であったヨーロッパやアメリカが工業化に成功し、世界の中枢となった。今や新興経済が次の中枢となる。
FT January 4 2011
Asia: the rise of the middle class
By David Pilling, Kathrin Hille and Amy Kazmin
アジア各国に登場する新興中産階級の人々と彼らの消費を紹介しています。
FT January 5 2011
Free markets can still feed the world
By Robert Zoellick
世界の食糧価格が再び上昇し、国際商品の価格は2008年のピークを超えている。価格上昇はグローバルな成長や安定性を破壊する。世界の最貧困層が栄養不良に苦しみ、将来の成長を失わないためには、G20のグローバルな行動が必要だ。
しかし、Robert Zoellickは食糧の輸出規制や市場への介入に反対します。G20は不安定な市場に対する現実的な改善策を取るべきだ、と主張します。すなわち、
l 穀物備蓄などの情報を国際機関が集めて公開する。
l 気象予想を、特にアフリカについて改善する。
l 国際価格と各地の現地価格との関係を解明する。
l 災害に陥りやすい、基礎的なインフラを欠いた地域で、小規模な食糧備蓄を支援する。大規模な備蓄は生産者を害する恐れがある。
l むしろ輸送システムを改善する。
l 人道的な食糧援助や食糧の禁輸について、国際的な行動基準を確立する。
l 社会の最も弱い人々、2歳以下の子供や妊婦、授乳期の女性、を助けるセーフティーネットを築く。世銀はそのための融資制度を設けた。
l 小規模農家を支援する。貧しい地域の基礎食糧の86%は地元で供給されている。
guardian.co.uk, Monday 3 January 2011
There is an alternative to the VAT rise
Philippe Legrain
鉄道運賃、エネルギー価格、ガソリン税が引き上げられ、さらにイギリス政府は貧困層を苦しめるVAT増税を準備しています。長期的にはイギリスが成長を回復しなければ、財政再建には成功しません。財政再建は必要だが、その時期やスピードは政府の選択であり、間違っている。
「政府は、今年、VATや国民保険料を引き上げるのではなく、来年、炭素税や金融取引税を引き上げるほうが良いだろう。土地の所有にも課税する。イギリスの土地の価値は約5兆ポンドであり、1%の課税でも年間500億ポンドが得られる。土地の供給は変わらないから、それは経済活動を妨げない。」
The Guardian, Wednesday 5 January 2011
VAT at 20%: A very deliberate choice
l アメリカ議会
NYT January 3, 2011
Get Ready for a G.O.P. Rerun
By BOB HERBERT
「大恐慌以来、最悪の経済状態にわれわれを導いた政党、イラク戦争とアメリカ史上最悪の外交政策をもたらした政党、社会保障制度を破壊することに意欲的で、メディケア制度を削り取ることに熱心な政党が、オバマの成し遂げたすべてのことを掘り崩すという使命を掲げて、下院を支配するためにやってきた。」
サダム・フセインが大量破壊兵器をもっているとわれわれに保証し、財政赤字は重要でないと主張した。エンロンをひいきにし、2008年でも株価の上昇を説いた。しかし、人々の記憶は短い。
「2011年と2012年にかけて、われわれは共和党員からポピュリストの愚かさを多く聞かされるだろう。しかし、彼らの本心はいつも同じだ。裕福な者がさらに裕福になること。」
FT January 4 2011
New Congress, new approach
まるで日本の国会のようです。
「政府は、法案の成立が難しいことを回避して、政策を実現する巧妙さを自制するべきだろう。重要な決断が必要なときに、もし共和党が政府を阻むだけなら、彼らが責められるだろう。しかし、もし政府が中間選挙の結果を無視するなら、それも責められるだろう。双方が闘って政治をこう着させるなら、それは最も起こりそうな結果だが、ワシントンの政治に対する国民の不満が新しい過激な党派に支持を与えるだろう。」
l ポピュリストの支配
FT January 4 2011
The strange death of the technocracy
金融・経済危機の重要な局面とは、経済官僚たちがポピュリストに政策決定の力を奪われることだ。それは一時的であればよいが、不況とともに長引く。特に、建国以来の政治をすべて否定するティー・パーティ―が、議会で勢力を拡大したアメリカの状況は懸念される。それは官僚制度とエリート支配への反革命であり、大銀行や連銀が標的になるだろう。
ヨーロッパや日本、中国にも、その心配はある。
特に、エリートたちが民衆の不安を無視して行った共通通貨ユーロと移民自由化政策に、激しい反動が起きている。ドイツ国民はユーロを生き延びさせるために何であれ融資を与えることに不満であり、オランダは統合と寛容を支持してきたが、移民自由化に反発した。
日本で自民党が政権を失ったのは、大企業や自民党と癒着した官僚支配に対する反発があるだろう。ヨーロッパと同様に、戦後の政治構造が溶解し、定まることなく流動化を続けている。
民主主義は大衆の不満を回避できず、失敗したエリートたちは退場するしかない。最近の経済状態が失政であるのは明白であり、人々の不満は爆発している。エリートたちはその声を聴き、応じなければならない。
中国は成長を続け、エリートたちは大衆の政治的支持を得ることによって正当性を確立している。しかし、豊かになった大衆は、その意見を無視することが難しくなるだろう。
l EU債務危機
FT January 4 2011
Greeks need a Latin lesson in tax farming
By John Plender
ギリシャは効率的な徴税システムを築く必要がある。しかし、徴税人は嫌われており、歴史的な理由で、人々は納税を義務と考えない。
guardian.co.uk, Wednesday 5 January 2011
The EU needs to stand up to the nationalists
Fernando Savater
FT January 5 2011
Europe must start putting its house in order
By George Osborne
WSJ JANUARY 5, 2011
Cut the Deficits—Now
By YVES MERSCH (the governor of the Central Bank of Luxembourg and a member of the Governing Council of the European Central Bank)
危機に対して世界恐慌の再現を回避する政策を、いつまでも続けてはいけない。J.M.ケインズもそれを認めていた。政府は事後的な介入から手を引き、ルールを明確にした中長期のマクロ政策に戻るべきだ。そして、市場の参加者の自由に委ねる。
その目標は財政再建と一致する。財政黒字によって債務を減らし、金融市場の信頼を取り戻す。それを先送りにする国は、突然の資本流出と債務危機に直面するだろう。
WSJ JANUARY 6, 2011
Why the Euro Will Survive
By MICHAEL HEISE
WSJ JANUARY 6, 2011
What Europe Can Learn From Latin America
By ROBERT KOENIGSBERGER
EUは、1980年代、90年代の新興市場における危機から何も学んでいないことが分かった。すなわち、流動性危機を前提とした、緊縮財政と、2国間もしくは多国間の、短期融資を組み合わせた支援策だ。それは以前に取られたが、富の破壊、社会的混乱、成長の低下をもたらした。
それを変えたのは1980年代のベイカー・プランであった。債務削減とIMF融資を組み合わせ、銀行は新規融資を行った。その後、支払不能危機であることが認められ、より包括的なブレディー・プランが登場した。民間投資家は誤解していたが、IMF融資は削減されなかったから負担を増すことになった。
成功の鍵は、債務の満期延長や市場による売買を利用して、債務国の負担を軽減したことだ。その債権が市場ですでに大きく割り引いて売買されているなら、EUやIMFが保証する額を減らし、しかも支払負担を減らすことができる。
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The Economist December 18th 2010
Immigration in Canada: A smaller welcome mat
Hungarian politics: Hungry for power
Extremism in Luton: What went wrong?
(コメント) カナダの移民政策。ハンガリーの権力者。イギリスのイスラム過激派。
これらは同じように移民排斥の右派政治が議論されているのではなく、むしろ複雑な現実に対する施策を求めています。カナダはその開放型の移民政策を守ること、ハンガリーはEU政治の中で東欧圏がまだ不安を抱えていること、そして、イギリスの多文化主義や社会統合政策がイスラム過激派に対して十分な備えをしていなかったこと、を示唆しています。
The Economist December 18th 2010
You choose: the Tyranny of Choice
Rise of the image men: Public Relations
Another green world: Ascension Island
(コメント) 特集号の記事から、選択に苦しめられる現代人、広報活動の魔術、そして、人間が改善したエコロジー、です。
スーパーマーケットに並ぶ食品や、衣服、音楽の選択、住宅や様々な投資、など、選択に悩むことは多いでしょう。もはや、選択肢が増えることが望ましい、とは言えなくなってしまいます。宣伝・広報活動が今のように肥大化したのは、ロックフェラーやルーズベルト、そして多くの大企業が世論を意図的に変化させる可能性を重視したからです。そして、イースター島では失敗例として人間の自然との関係が批判されますが、アセンション島では人間が豊かな自然を創造した、という話です。
The Economist December 18th 2010
Schumpeter: Why do firms exist?
Lessons from Iceland: Coming in from the cold
The world’s biggest economy: Dating game
Economics focus: Exploding misconceptions
(コメント) なぜ企業は存在しているのか? 取引費用に関する「コースの定理」です。しかし、起業の積極的な優位を分析する議論も追加し、ブラック・ボックスを開けよ、と奨励しています。アイスランドがアイルランドよりも改善を示していることから、何を学ぶべきでしょうか? まず、(預金や決済は別として)投資銀行を救済してはいけない。次に、小国が通貨同盟(ユーロ)に参加する利益を誇張してはいけない。
私はこの点(投資銀行)で、アイスランドの政策に批判的でした。バブルで得た投資銀行の利益を放任して、海外の貯蓄を失ったことは仕方がない、という姿勢は、まさにヘッジ・ファンド国家だからです。他方、IMF融資と資本規制で為替レートを安定化し、切り下げたことで輸出を増やした政策は正しかったでしょう。IMFが融資と同時に資本規制を容認した最初のケースであったと思います。ユーロ加盟が望ましい、という小国の気分が、ユーロの設計ミスで失われてしまったのも理解できます。
中国がいつアメリカを抜くか? 世界中で予測ゲームが続いています。The Economistの予測では2019年。中国の成長率が現在の半分、5%に落ちても、2022年です。また、経済成長がテロリストを減らす、という多くの政治家の期待を、データは支持しない、と論じています。テロリストは最も貧しい国や貧しい階層ではなく、高等教育を受けた、不満を抱いた人々から補充されるのです。