IPEの果樹園2010

今週のReview

12/13-12/18

 

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IPEの想像力 12/13/10

もしそれがジョージ・オーウェルの『1984』やカート・ヴォネガットJr.の『プレーヤー・ピアノ』、フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』に匹敵するような現代のディストピア小説なら、読んでみたいな、と思いました。

朝日新聞の書評で、村上龍『歌うクジラ』(上・下)が紹介されていたからです。

・・・『歌うクジラ』は人間が不老不死を手に入れた2117年の日本を舞台とし、流刑地「新出島」から来た少年「タナカアキラ」の壮絶な旅を追うことで、「理想的な」管理社会の暗黒部を徹底して描く。2022年、クジラから不老不死の遺伝子が発見される。移民内乱の鎮圧後、日本は「文化経済効率化運動」と、「最適生態」の理念による上・中・下層の棲(す)み分け政策を推進。遺伝子操作による医学的賞罰(功労者は不老不死に、犯罪者は「生命時計(テロメア)」を切断されて死ぬ)や、精神薬による人心統制、性と記憶のコントロールが行われる。・・・

移民暴動、不老不死、効率化、最適化、生態系、洗脳と投薬、感情と欲望の抹殺、間違った日本語と移民たちによる強烈な新文化の創造。 ・・・「暴力と絶望と虚無」を饒舌に描く。日本の閉塞感を未来に拡大、投影すれば、そこに見えるディストピアは富裕な管理社会と破綻国家のまじりあったイメージです。しかし、オーウェルやヴォネガット、ディックが描いたのは、暴力、絶望、虚無ではなかったと思います。

戦争ではなく国家の解体、愛国心や国民「文化」の喪失、がディストピアとして描かれ、他方で、戦争における国家の再建、愛国心と国民文化の再興が希求されます。それは、日本のアニメや中国のナショナリズム、アメリカ・EUの移民排斥などで繰り返されているイメージです。

同じ書評欄が示す『無縁社会』、『策謀家チェイニー』、『蜜姫村』は、まるで一つのディストピア物語のようです。しかし小説以上に、ニュースとその背景を考える方が、冷酷な破壊力を秘めた現実を饒舌に語っている、と思うことがあります。

The Economistを開けると、グルジアの政府広告が目に入りました。GEORG1A・・・grow with Georgia と世界に呼び掛けています。グルジアは、北京オリンピックと同時にロシア軍の侵攻を受けた、黒海とカスピ海との間にある小国です。その直後、サルコジが仲裁し、今では米ロがミサイル防衛や核兵器削減で和解を進める中、国連軍とロシア軍による治安維持?で地域の均衡が保たれています。

2005-2010年に最も改革を進めたNo.1国家である」と自信を示します。・・・東中欧地域そしてポスト・ソ連圏で最もビジネスに適した土地である。政治・経済システムを根本的に改革し、将来もさらに急速に改革するつもりだ。この成功物語にあなたも参加してください。どうか、いますぐ、georgia.gov.geを見てほしい。・・・

自由貿易協定、輸出加工区、民営化、投資減税、補助金、などが、旧ソ連圏をターゲットとする多国籍企業のために用意されています。グルジアは、アゼルバイジャンと並んでカスピ海からの輸送パイプラインが通る国であり、チェチェン紛争のコーカサス地域にあり、北のロシア、南のトルコに挟まれています。ソ連崩壊とともに独立し、そのソ連外相であったシュワルナゼが大統領でしたが、その後、サーカシビリ大統領が当選し、反ロシアと欧米への傾斜を強めました。EUNATOへの加盟を主張し、他方、国内では独裁と分離独立派への弾圧を批判されていたようです。

グルジアは旧ソ連圏の香港でしょうか? あるいは、EUにとってのアイスランドや、アイルランドであるかもしれません。トルコとギリシャが争うキプロスに似ており、アメリカとNATO軍がタリバンとの和解を模索し、中国が資源投資を活発化するアフガニスタン、ブレアが描いたイスラエルとパレスチナ国家、さらにレバノンや中東全域にまで広がる自由貿易圏・経済統合にも共鳴し、あるいは、北朝鮮のケソン(開城)工業地区、尖閣諸島の仮想的日中共同開発計画につながります。

夕張市や阿久根市、名古屋市、大阪府の首長がサーカシビリをまねるとしても、不思議ではありません。

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北朝鮮と周辺諸国の望まざる末路 ・・・ユーロ危機の終わりを描く ・・・秘密をめぐるWikiLeaksUS国務省の戦争 ・・・帝国の不在 ・・・人口と資源・環境の分割されたガバナンス ・・・中国と国際秩序

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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


l         北朝鮮と周辺諸国の望まざる末路

NYT December 2, 2010

China, the Enabler

LAT December 3, 2010

Send the North a message

By Michael Mazza

北朝鮮の軍事的挑発が増す中でも、その唯一の支援者である中国政府が当たり前の外交儀礼を続けていることに、NYTは不満を強めます。ウラン濃縮工場を公開し、韓国の島を砲撃しても、非難することもせず、冷静な対応を求め、安保理での話し合いを拒み、アメリカの「過剰な反応」を批判する、という中国の外交は、どうなっているのか? その姿勢が「中立だ」というのか?

中国だけが北朝鮮との交渉手段をもっている。北朝鮮のエリートたちが豊かに暮らせるのは中国のおかげだ。北朝鮮との貿易や石油援助を止めればよい。核保有した隣国が脅威を誇示するのは、地域の安定性を損ない、中国の願うアメリカ軍の撤退も遠ざける。

米軍は、北朝鮮に対して、日本や韓国と連携し、完全に戦闘準備するだろう。朝鮮戦争を避けたいなら、中国が北朝鮮の軍事行動を明確に抑えることだ。

WP Friday, December 3, 2010;

Another option for undermining North Korea

By Michael Gerson

関係するほとんどの国が北朝鮮の現状維持を望んでいることは、醜い秘密である。WikiLeaksが公開した国務省秘密電報にも多くの証言がある。リー・クァン・ユーは、中国政府は北朝鮮の崩壊よりも、核武装した北の政府が生き残ることを望むだろう、と述べた。韓国政府もその経済的な成果を失いかねない北朝鮮との衝突を避けるため、ひたすら宥和に努めてきた。核を放棄させるために、制裁も交渉も無駄だった。3回目の核実験や弾道ミサイルの開発が続くだろう。

このまま北朝鮮が挑発と援助を求めることが続けば、どうなるだろうか? 1.最後に、挑発行為が行き過ぎて戦争を招くだろう。韓国のナショナリズムを刺激し、その誇りを傷つけ過ぎている。2.深刻なエスカレーションを避けながら、干渉国家として、朝鮮半島の分断状態に生き残る。それは、ある時点で、アメリカ軍の限界を超えるだろう。挑発行為に軍事的な報復をしなければ、米韓の安全保障は信頼を失う。韓国の米軍はミサイルを呼び込むだけの標的だ、と嫌われるだろう。

しかし、もうひとつ、十分検討されていない可能性を取り上げる。3.北朝鮮の情報封鎖を解くことだ。より攻撃的な宣伝キャンペーンを始めて、北朝鮮国民に政府の間違いを知らせる。反体制派を支援し、エリート層の忠誠心を失わせる。

 (China Daily) 2010-12-03

US key to peace on Korean Peninsula

By Sun Ru

guardian.co.uk, Monday 6 December 2010

Obama should stop blaming China over North Korea and start talking

Simon Tisdall

北朝鮮はアメリカと中国の関係を悪化させることで利益を得る。

オバマ政権は、北朝鮮が以前に示した条件を守らない限り交渉しない、と主張している。そして、中国が北朝鮮に圧力をかけることだ、と。しかし、中国は北朝鮮を従わせることができない。ある点を超えると、北朝鮮の行動は止められない。だから、アメリカや韓国に抑制を求めている。

アメリカは、中国が核武装した北朝鮮を交渉の道具に使って利益を受ける、と考える。それは正しくないだろう。むしろ、中国を非難することも、北朝鮮に軍事的圧力をかけることも、望ましい結果をもたらさない。交渉を始めるべきだ。

LAT December 7, 2010

Save the North Koreans!

Jonah Goldberg

人類を超えて生命の尊厳を称えることができるなら、パンダでもなく、バンドウイルカや熱帯雨林や、その他の希少生物ではなく、北朝鮮の民衆を救え!

かつて、大量虐殺に苦しむ人々を助けるために、NATOはバルカン半島に介入した。なぜできたのか? そこはヨーロッパの裏庭であり、誰もホロコーストの悪夢を無視できなかった。虐殺のニュースはメディアにあふれ、政治家たちは「知らなかった」という言い訳ができなくなった。何よりも、軍事介入は安価で、暴力を終わらせるのが容易だった。アメリカ軍は地上戦を行わず、一人の犠牲者も出さなかった。

北朝鮮では、すべての条件が満たせない。ヤドカリ国家の強制収容所や飢餓は情報が限られている。それはニュースにならない。すでに2世代も続けてきたことだ。西側の歴史的な良心を傷つけることもない。北朝鮮が核を放棄すると信じることができたら、外交交渉を始める、というのは、ありえない「リアリズム」だ。

アメリカの軍事力は、何度も、何度も、過剰に拡張していると批判されてきた。その民衆を苦境から救い出すため、北朝鮮に軍事介入する、そして、「体制転換」する、というのは、たとえ現実には唯一の解決策であっても、誰も賛成しないだろう。

要するに、抑止は有効なのだ。北朝鮮の指導者は、その支配が脅かされるなら、朝鮮半島を血の海にすると明言している。彼らが核兵器を保有するのを阻止することは、アメリカとその同盟諸国の優先順位の最上位にある。その体制は、まだ半世紀、存続するかもしれないのだから。

北朝鮮の民衆も、いつか、その悲惨な王朝支配が終わり、飢餓や虐待から抜け出す。そして彼らの歴史を見つめたとき、われわれが何も知らなかった、彼らを助けるために何でもした、というのを聞き入れるだろうか?

WSJ DECEMBER 7, 2010

The West's North Korean Delusion

By B.R. MYERS

WP Wednesday, December 8, 2010;

In China, confidence clouded by apprehension

By David Ignatius

北京大学で、また、共産党で開かれた、最高レベルの米中対話を紹介しています。北朝鮮や人民元レートに関して、アメリカは中国に行動を求めます。しかし、中国の主張は「対話、対話、対話」。もはや聴衆ではない、という声が高まっているとしても、中国政府は国内政治を優先しており、経済の繁栄を持続することが重要なのです。


l         ユーロ危機の終わりを描く

FT December 2 2010

Europe’s leaders recoil from unity

By Philip Stephens

ヨーロッパは新しいナショナリズムに落ち込みつつある。

「欧州連合が依拠した相互利益の意識が失われてしまった。主権を共有することで、パワーと影響力を高めると考えたのはそれほど以前のことではない。今や、欧州連合はゼロサム・ゲームと見なされている。グローバリゼーションに従い、アジアの台頭に従うことを、政治家たちはブラッセルからの要求のように見なす。」

ドイツのメルケル首相は有権者の気分に従い、救済融資を嫌っている。メルケルがユーロの経済問題をEUの政治問題に結びつけるとき、市場は不安を感じる。ギリシャ、アイルランドに続いて、ポルトガル、スペイン、イタリアが市場の圧力を受ける。ドイツはEUへの負担を重視するより、「普通の国家」として経済問題を重視し、外交の優先順位を決める。

ユーロは守られるだろう。財政不安がある国の債務は、要するに、すべてECBが買うだろう。スペイン、ポルトガル、アイルランドなど、財政再建は必要である。しかし、デフレに従う理由は無い。ドイツの国内政治が求めるようなEUは存続しないが、EUの政治はその将来を決める。

ヨーロッパ諸国が戦争に訴える時代は過去のものとなった。現代の脅威は、グローバリゼーションについて行けないことだ。新しいナショナリズムに傾くほど、遅れるだろう。

FT December 2 2010

Public investment for the public good

guardian.co.uk, Friday 3 December 2010

The euro's future is reliant on states sharing resources

Peter A Hall

その成立時において、ユーロは「最適通貨圏」ではない、とわかっていた。労働移動は少なく、参加国は異なった経済的ショックを受ける。財政政策の協調は行えない。小国がユーロに「ただ乗り」するリスクがあった。現状では、ECBがそれを処罰できない。

財政再策の協調を欠いたまま、金融破綻から財政赤字を生じた国にはデフレ政策を続けるか、ユーロ圏内の財政移転を合意するしかない。それによってユーロ圏全体の景気回復が実現できる。しかし、財政移転への政治的反発は強い。

アメリカ連銀が示すように、政治的な意志が不足するとき、中央銀行がこれを融資によって緩和する。しかし、ECBは同様の金融緩和を拒んでいる。たとえ金融が緩和されても、危機のコストをだれが支払うのか、政治的な決定は先送りされるだけだ。

ヨーロッパの大銀行が赤字国の債券を保有して利益を上げ続けるために、救済融資を返済する国民は失業や増税に苦しみ続けるのか? 金融危機に関する明確な財政負担の協力が合意されていないユーロは、最適通貨圏ではない。

The Guardian, Friday 3 December 2010

Eurozone crisis: New panic, old thinking

FT December 3 2010

Sovereign debt: In a monstrous grasp

By Richard Milne

政府債券市場は、次の犠牲者を求めるFrankenstein’s monsterである。市場には非合理的な不安があふれている。「市場の信頼」は欠かせない。しかし、政治家たちの発言はそれを失った。言葉は投資家たちの予想を変化させ、瞬く間に逃避を呼ぶ。政府の健全な財政を監視するはずの市場が、投資家個人の恐怖によって暴落を生じる。クリントン政権が財政赤字削減を強いられたときのように。

FP DECEMBER 3, 2010

Spain on the Verge of a Nervous Breakdown

BY EDWARD HUGH

(chinadaily.com.cn) 2010-12-03

The euro at mid-crisis

By Kenneth Rogoff

675億ユーロのアイルランド救済融資は危機を終わらせることができなかった。危機の終わりは、デフォルトが続いた1980年代のラテンアメリカに似たものであろう。いわゆる“PIGS”にも「失われた10年」が来る。ラテンアメリカでは1987年にブレディー・プランが債務削減と証券化を行い、漸く投資が再開された。

ユーロ圏を離脱すればよい、と主張するのは間違っている。膨大なユーロ建民間債務、住宅価格の下落、GDP10倍に及ぶ対外債務があるアイルランドで、ユーロを離脱することは無駄話に過ぎない。

The Guardian, Saturday 4 December 2010

Unthinkable? Ireland defaulting on its debts

The Observer, Sunday 5 December 2010

Europe shouldn't pick at Ireland's bones

Nick Cohen

FT December 5 2010

Ireland’s politics

FT December 5 2010

E-bonds would end the crisis

By Jean-Claude Juncker and Giulio Tremonti prime minister and treasury minister of Luxembourg and Italy’s minister of economy and finance

危機を解決するためには、European Debt Agency (EDA)がユーロ債を発行することだ。その50%は発行国が保証する。既存の債券とも交換できるが、その場合、ディスカウント・オプションを付ける。それゆえ各国は財政赤字を減らすことに努めるだろう。

EUユーロ債券市場は、アメリカの財務省証券と並ぶ規模と流動性をもつようになる。それは赤字国の利益であり、ヨーロッパの利益でもある。

NYT December 5, 2010

Europe’s Piecemeal Failure

By ALISTAIR DARLINGthe chancellor of the Exchequer from 2007 to 2010

ユーロ圏で起きていることは、2008年に自分(元イギリス蔵相)が経験した危機に似ている。ヨーロッパの政策担当者たちは、まだ、問題を個々の国や銀行のせいにしているが、それでは危機は終わらない。危機が広がるのを止めるために、私は何10億ポンドも銀行システムに投入し、根本問題である銀行の資本不足を是正した。ヨーロッパもそうしなければならない。

しかし、それだけでも十分ではない。危機が終わるには債務を支払って減らす見通しがなければならない。金融危機によって企業も消費者も買わないから、輸出を伸ばすしかない。しかし、ECBは金融緩和を拒み、ユーロ圏には赤字国の輸出を伸ばす手段がない。

Dec. 6 (Bloomberg)

U.K. Takes Medicine, Greece Turns Doctor Away

Kevin Hassett

SPIEGEL ONLINE 12/06/2010

Row Over ECB Handling of Euro Crisis

The Lonely Fight of Monetary Dogmatist Axel Weber

By Michael Sauga

FT December 6 2010

In bonds we trust

FT December 6 2010

No escape from Europe’s debt crisis

By Gideon Rachman

ヨーロッパの夢は破れたのか? アジアや中東の投資家・金融機関から見て、ヨーロッパの救済策は役に立たない。ドルに代わってユーロがあることにより、資産の価値を保全してほしいと願うが、ユーロ危機に解決の見通しは無い。ヨーロッパを覆うデフォルトとブラック・ホールだ。

ヨーロッパはまだ問題の解決策に合意していない。銀行を救済しつつ、モラル・ハザードを防ぐ。ユーロ圏を離脱する。弱い国から強い国への資本逃避に対処する。

中国は、ギリシャ債券を買い、ポルトガルも訪問した。そして、次に多くの資金を保有するのは産油諸国だ。ヨーロッパ各国の巡礼がまだ続くのか?

FT December 6 2010

A growing crisis puts the euro in danger

By Jean Pisani-Ferry

もはやユーロ圏の危機ではなく、ユーロそのものの危機だ。ヨーロッパ諸国は、大胆で、根本的な解決策を示すべきだ。

ユーロ自体が崩壊するなら、投資家にとって、政府のユーロ建債券も外貨建債券と同じリスクに直面するようになる。各国のユーロ債金利がスプレッドを拡大するのは、このリスクを示しており、ユーロ離脱の可能性が議論されれば、さらに金利差が開き、自己実現的な金融危機になる。

三つの問題がある。意志決定をめぐるガバナンスの問題。財政の統合化を欠いている問題。政府が受け入れることのできない、厳しい調整政策の問題。必要なのはヨーロッパ連邦財政ではない。ヨーロッパ規模のマクロ管理を行うことに合意した、各国の財政政策である。国家間の財政移転は既に存在する。しかしそれは、東西ドイツでも貧しい地域のキャッチアップを実現できていない。ポルトガルやスペインが必要とするのは競争力と成長の回復であって、救命装置ではない。

その最初の打開策としては、低開発地域に限定されているEUの構造調整基金を成長回復のためにも利用することだろう。

 (chinadaily.com.cn) 2010-12-06

Europe's time to learn

By Harold James

危機は新しいことを学ぶチャンスである。これまでの危機は、大恐慌を除いて、不安定な貧しい国で起きた。しかし、今のユーロ危機は裕福な諸国である。これまでのところ、危機は1980年代のラテンアメリカ債務危機と似ている。

累積債務危機は、そのデフォルトによって銀行が損失を被るのを防ぐために、介入した政府の債務危機になった。政府は破産しないと信じて融資を増やしたアメリカの主要銀行が、ラテンアメリカ政府債務の90%を債権として保有していた。それゆえ、債務国はIMFなどから国際融資を受けて支払いを続け、IMF融資条件に従って緊縮政策を続け、銀行が損失を受け入れることができる状況になってから、債務の一部を切り捨てた。その間、債務国は「失われた10年」と呼ばれる停滞を経験し、他方、融資を行った銀行の責任は問われなかった。

同様に、ユーロ圏の融資を行っている主要銀行は債務免除を行わず、債務国が救済融資を得て、厳しい引き締めを条件として支払を継続している。独仏政府が2013年以降は民間投資家の負担を求めると合意しただけで、市場は拒否反応を示した。しかし、政府債務の秩序ある削減を含む再編メカニズム(Sovereign Debt Restructuring Mechanism)は必要である。2000年にその提案を行ったA.クルーガーIMF副専務理事は、集合行為問題によって阻まれた。

ヨーロッパ諸国は次々に政府債務のデフォルトを救済し続けるより、そのような債務削減メカニズムを制度化することに成功するだろう。それが不確実性を払しょくして債券市場でも機能すれば、世界金融システムに対する画期的な改善となる。

SPIEGEL ONLINE 12/07/2010

Common Currency in Trouble

What Europe Should Do about the Euro Crisis

FT December 7 2010

Is there the will to save the eurozone?

By Martin Wolf

政府債務のデフォルトが連続し、それを解決する制度は生まれない。しかし、ユーロは解体しないだろう。・・・これがMartin Wolfの予想です。・・・本当に?

債券市場からの資本流入が突然止まる。新興市場では良く知られたa “sudden stop”がユーロ圏でも起きるでしょう。政府への融資には担保がない。それは債券市場で資金調達ができることを前提に行われている。もし市場の信頼を失えば、流動性は失われ、返済もできない。何が信頼を決めるのか? それは持続可能性sustainabilityと考えられている。成長率が実質金利よりも高い、という関係だ。成長率が低く、金利が上昇すれば、より大きな財政黒字が必要になる。すなわち緊縮財政が求められ、政治的なコストが増大する。そのコストが余りに大きいと思えば、投資家は政府を信用できず、金利が上昇して、さらにコストが増大する、という悪循環が働く。

ユーロ圏の辺境では、すでにこの悪循環が始まっている。問題は、それによってユーロ圏の政府債券がデフォルトの連鎖になるのを制度の変更で防ぐだろうか、である。債権者が、特にドイツが制度変更を望まないから、デフォルトは止まらないだろう。ドイツは債務返済に必要な赤字国の成長より、デフレ政策を求めている。高金利が続き、為替レートも動かせないのであれば、債券市場の信頼を回復できず、赤字国のデフォルトは避けられない。

それでもユーロ圏は生き残ることができる。政府債務のデフォルトと、それによる銀行システムの危機は巨額の資本注入を必要とするだろう。その過程で、ユーロ圏が生き残るには、政治的意志が必要だ。市場の信頼を得られる国から、そうでない国への財政的な移転が必要である。それには厳しい財政再建策が要求される。債券市場が正常に戻れば、これは短期に終わるだろうが、そうでなければ長期に及ぶ。そのコストに比べて、独自通貨の再導入コストが小さく見えるだろう。それが投資家にも分かるので、弱い国の資産は投げ売りされていく。

ユーロ圏内の協力がどこまで維持されるのか、危機が来なければわからなかった。その危機が来たのだ。

guardian.co.uk, Wednesday 8 December 2010

Dublin's great reckoning

Julian Glover

SPIEGEL ONLINE 12/08/2010

Drastic Cuts and Punitive Interest Rates

The EU Is Pushing Ireland to the Brink of Ruin

By Carsten Volkery

ドイツ、イギリス、フランスの銀行を守るために、アイルランドは融資を受け入れ、その返済を納税者が続けるのか? 「EUはアイルランド人が首をつるのに十分なロープを与えた。それはEUを絞首刑にするには足りないと信じて。」

第一次世界大戦後の賠償金で苦しんだドイツ人にはよくわかっているはずだ。1ユーロに対して20セントを支払うほうが良いだろう、とBarry Eichengreenは述べた。EUが求めた景気循環を強める調整策は、沈みつつある船に重荷を加える、とKevin O'Rourkeも批判する。

アイルランドの銀行が再建できなければ、保証した政府もいっしょに破綻する。それをEUIMFの融資で救済するとしたら、負担はイルランド国民に重すぎる。

SPIEGEL ONLINE 12/08/2010

The Battle over the Euro-Bond

Juncker Calls German Thinking 'Simple'

FT December 8 2010

Ireland should leave the euro

ByMegan Greene

アイルランドはユーロを離脱するべきだ。他の国と違って、アイルランドはユーロ離脱の方がコストを抑えることができる。

ユーロ圏からの離脱を恐れるコストとは、政府債務のデフォルト、銀行システムへの資本注入、実質賃金の引き下げ、である。しかし、これらはアイルランドにおいてすでに始まっているし、融資を受けても続くだろう。むしろ、離脱した方が通貨価値を切り下げて、速やかに輸出を伸ばせるだけの弾力性を持っている。

WSJ DECEMBER 8, 2010

A Growth Agenda for Europe

By ALBERTO MINGARDI

WSJ DECEMBER 8, 2010

Ireland's Low-Tax Path to Fiscal Health

By BRIAN COWENprime minister of Ireland

成長しなければ債務は支払えない。二人とも、経済成長をもたらすのは自由化と競争の促進、企業への減税である、と主張します。


WP Thursday, December 2, 2010; 8:23 PM

How the Fed preserved financial stability

WP Monday, December 6, 2010; 8:00 PM

Ben Bernanke, a one-man fire brigade

By Eugene Robinson


l         秘密をめぐるWikiLeaksUS国務省の戦争

NYT December 2, 2010

American Diplomacy Revealed — as Good

By ROGER COHEN

NYT December 2, 2010

The Secret Lives of Nations

By PAUL W. SCHROEDER

アメリカ外交政策にWikiLeaksが与えた影響を評価するのは早すぎるが、外交について公衆がどのように理解するようになったかは考察できるだろう。

「秘密はいかなる交渉においても不可欠の要素である。」・・・企業合併、紛争の法的合意、離婚、政治的妥協、なんであれ、秘密が守られることが信用できなければ進まない。

しかし、外交では特に秘密が重要だ。たとえば、冷戦終結とドイツ統一についての交渉を、指導者たちの意見対立、不十分な提案、内輪の興隆における不適切な発言、など、秘密に行わなければ、実現しなかっただろう。

第一次大戦後、秘密の暴露が続いたが、戦勝国であるイギリス、フランス、イタリア、アメリカは、秘密外交に戻った。そうすることでヴェルサイユ条約をまとめ、短いながら平和を実現できた。

暴露が政府に責任ある行動を取らせ、アメリカ外交を改善する、と信じる人々がWikiLeaksを支えた。しかし逆に、漏洩は権力者たちを保身のためにさらに影の部分へ向かわせる。戦略的な漏洩というのは外交の一部としてあり得るだろう。しかし、WikiLeaksはアメリカ外交の機関、仮定、評価を著しく傷つけた。

外交文書や交渉を永久に秘密にすべきだ、というのではない。しかし、例外はあっても、秘密の意見交換は、熱狂が収まった後で、研究者たちがすべての状況を考慮して検証するべきだ。

選出された代表が条約の承認もしくは拒否を後から決める民主主義において、交渉は特に必要だ。平和の盟約は秘密に達成される。

NYT December 2, 2010

Dangerous Liaisons

By DAVID KAHN

NYT December 3, 2010

The Hunt for Julian Assange

By TOBIN HARSHAW

FT December 3 2010

Right to publish the Wiki cables

By Harold Evans

FT December 3 2010

Cyber guerrillas can help US

By Evgeny Morozov

FT December 3 2010

Transparency can go too far

By Rodric Braithwaite

NYT December 4, 2010

The Big American Leak

By THOMAS L. FRIEDMAN

NYT December 4, 2010

What if the Secrets Stayed Secret?

By ARTHUR S. BRISBANE

guardian.co.uk, Sunday 5 December 2010

WikiLeaks cables: Barack Obama is a bigger danger

John Bolton

SPIEGEL ONLINE 12/06/2010

Ex-National Security Advisor Zbigniew Brzezinski

Spokespersons of US Right 'In Most Cases Stunningly Ignorant'

情報漏えいが起きてもアメリカ外交は変わらない。

「ハプスブルグ帝国が繁栄していた時代のウィーンで、事態が悪化したとき、コメントを求められた人々は応えた。『そうだな。崩壊するかもしれないが、深刻なものじゃないだろう。』 それと同じだ。」

秘密電信の内容は、アメリカの公の発言とおおむね一致しているし、各国の大使が本国に送っているものも同様だろう。「もしあなたが今も大統領顧問であれば、オバマに何と進言しますか?」

「落ち着いて、仕事を続けよ。外交政策の重要問題に関するあなたの基本的な直感は正しいし、歴史の流れに沿っている。」

WP Tuesday, December 7, 2010;

Why the WikiLeaks cables aren't as threatening as advertised

By Anne Applebaum

Julian AssangeWikiLeaksを創ることで、政府を解体しようとした。公衆から政府の行動を秘密にすることは、ジョージ・ワシントンの理想に反する、と。しかし、漏洩された秘密電報は、アメリカの外交官たちが公私において同じ目的を追及していることを示している。

しかし、公私において異なった目的をもつ政治家には漏洩は問題であろう。たとえば、プーチンやベルルスコーニはどうか?

イタリア国民は、漏洩された内容にショックを受けない。政治家がそのような連中であることを知っている。イタリアの政治文化は汚職を蔓延させ、それを告発する検察官は少ない。スキャンダルの波は多すぎて、ベルルスコーニだけじゃない。今は連立政権の崩壊が重要な問題であって、WikiLeaksの漏洩ではない。

プーチンの国家はメディアを政府が統制している。ロシアに関する電報が公開された日も、ロシアのテレビ・ニュースは全く違うことを伝えていた。・・・モスクワの川が凍結した。エジプトのロシア人観光客がサメに襲われた。アメリカでは酔ったトラック運転手が核兵器を運んでいた。・・・アメリカの外交官など、関係ない。

こうして、WikiLeaksが望む変化は、どの国でも起きないだろう。それが汚職を取り締まる法や検察を動かし、有権者が憤慨する、というのでない限り、単なる宴会のゴシップだ。

情報の解説や、それを重視する政治システムがない限り、WikiLeaksは重要視されない。

WP Tuesday, December 7, 2010;

You're either with us, or you're with WikiLeaks

By Marc A. Thiessen

guardian.co.uk, Thursday 9 December 2010

No one gains from this 'rape-rape' defence of Julian Assange

Libby Brooks

FT December 9 2010

State secrets in the age of the internet


guardian.co.uk, Friday 3 December 2010

2018: a Russian odyssey

Luke Harding

guardian.co.uk, Friday 3 December 2010

Qatar is more boring than backward

Brian Whitaker


WP Friday, December 3, 2010; 8:52 PM

U.S., South Korea complete free-trade deal

By Howard Schneider

WSJ DECEMBER 6, 2010

A Korea-U.S. Trade Deal, At Last

NYT December 8, 2010

A Sound Trade Deal With South Korea

アメリカ自動車産業の回復が確認されたこと、しかし、今も高い失業率が続くことと無関係ではないでしょう。また、アメリカからの牛肉に対する韓国政府・国民の不安に比べて、北朝鮮の軍事攻撃・対立激化が関心を高めたことと無関係ではないでしょう。アメリカは金融・情報サービス分野で利益を期待し、同時に、韓国経済をより深く統合できるのです。また、韓国がEUFTAを結び、特にドイツの製造業と自由取引を進めたことは、アメリカ政府の交渉を急がせたはずです。


l         帝国の不在

WP Friday, December 3, 2010; 8:00 PM

Where's the American empire when we need it?

By Robert D. Kaplan

「通貨戦争、テロ攻撃、軍事衝突。無法国家が核兵器を手に入れる。崩壊する諸国。そして、大量の秘密情報漏えい事件。このドタバタの原因は何か? それは帝国の不在である。」

冷戦という二つの帝国支配が解体したとき、世界には何が起きるか? アメリカが帝国の野心を持たない国であるとしても、その国際的な関与を後退させつつある世界には多くの混乱が生じています。

「冷戦の間、北朝鮮はソ連によって抑え込まれていたし、アメリカ海軍は太平洋をアメリカの湖のように支配した。しかし今や、中国が地域の経済的な支配を強め、アメリカは中東で地上戦に苦しむ中、太平洋の西部を安定した非政治的な環境から不確実で複雑な環境に変えつつある。」

「台湾についていえば、中国は1500発の短距離弾道ミサイルを台湾に向けて配備しており、その一方で毎週、数百の民間航空機が台湾と中国本土とを平和的に往復している。数年かけて中国が台湾を平和的に吸収すれば、それこそが東アジアを真に多極化した、予測できない軍事環境に変えるだろう。」


 

NYT December 4, 2010

Cleopatra’s Guide to Good Governance

By STACY SCHIFF

FT December 5 2010

Obama must force the parties to co-operate

By Clive Crook

FT December 5 2010

A hopeless Europe, unable to cope

By Wolfgang Münchau

王室の支配は硬直的であり、クレオパトラは親族を殺害し、追放して、漸く、安定した権力を得ました。

アメリカもヨーロッパも、クレオパトラの時代と大きく変化していない? アメリカ国内でも、EUでも、政治は行き詰まりを示している。


l         人口と資源・環境の分割されたガバナンス

guardian.co.uk, Sunday 5 December 2010

The curse of the Nile

Khaled Diab

石油であれ、河川であれ、国際管理は重要ですが、同時に、非常に困難です。国家の利益やパワー、理念、そして選挙に向けた国内政治情勢がシフトすることで、その管理形態(たとえば、現代のthe Nile Basin Initiative)も変化します。そして人口増加、気候変動、周辺諸国の産業振興(発電のためのダムや工業化)も含めて、既存の水利用(エジプトとスーダンが圧倒的に支配)の変更をめぐる紛争は、ときに、戦争を引き起こす。

エジプトはナイルのたまもの。ナイルの源流はエチオピアにある。ナイルの水を支配することは、エジプトの安全保障であり、戦争の理由になる。水源を握るエチオピア政府のダム建設と、エジプトの侵攻を恐れる発言は、歴史だけでなく、現実のものです。

平和のためには、慎重な外交交渉、新しい水源(海水の淡水化も含む)、そして、なにより人口管理です。それらを実行できる政府を、人々は得られるでしょうか?

FT December 5 2010

How law may come to Russia

By Anatol Lieven

ソ連崩壊後の犯罪組織が暴力を使って富を奪った時代に、ロシアの国家機構は崩壊し、それを再建するためにプーチンが秘密警察を利用したことに理解を示しています。しかし、経済発展は、民主主義以上に、法の支配を必要としており、新しい中産階級がそれを強く求めるようになれば、今の秘密警察と犯罪者による無法の時代を終わる可能性がある、と指摘します。

FP DECEMBER 6, 2010

What Resource Curse?

BY CHARLES KENNY

資源は社会を滅ぼすのか? モザンビークで天然ガスの採取がはじまる。パプアニューギニアも、アフガニスタンも、資源採取への投資が増えるだろう。

資源がある国の方が、成長が遅く、しかも、内戦に陥るリスクが高いと考えられた。それは1970年代、「オランダ病」として知られた石油・天然ガスの輸出を始めた国が示す問題でもあった。資源輸出による通貨の増価が、その国の製造業を衰退させたのだ。1990年代半ばに、Jeffrey Sachs and Andrew Warnerが、農産物、鉱物、燃料を輸出する国は、成長率が低い、ということを発見した。

しかし、資源採取がガバナンスを破壊する、というのは、因果関係として間違っている。資源が豊富な国には、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、ノルウェーなど、豊かな国もある。また、資源がないことが豊かになる近道だ、とは決して言えない。

石油やダイヤモンドがあると、貿易パターンは決まってしまう。それが貧しい国であれば、資源を採取する以外に重要な産業はできない。他のサービスや製造業の分野で経済が発展できないことが、呪いの中身である。資源から得られる富をめぐって、支配者たちが内戦に及ぶのも当然だ。

しかし、因果関係は逆転している。資源採取産業がサービス業や製造業を繁栄させるより、死滅させてしまったのは、その政府や制度の質に問題である。資源の呪いからの救いを求めた、三種産業透明性構想、がある。資源採取ビジネスが政府に支払ったロイヤリティーや税金を公開する仕組みだ。モザンビークやアフガニスタンはこの構想に参加し、政治が腐敗するのを抑えようとしている。

FT December 8 2010

How west can reverse a decade of decline

By Gordon Brown former UK prime minister

欧米が世界の生産、投資、輸出、消費の半分以上を占めた時代は終わった。世界のパワーは移動していく。この先、欧米には低成長と高失業の時代が待っている。

しかし、衰退は避けることができる。アジアの成長する中産階級は、この10年で、アメリカ二つ分の消費力を示すだろう。それは世界の成長のメイン・エンジンになる。この変化こそがわれわれを危機から脱出させ、世界経済の均衡回復に役立つのだ。ただし、革新や輸出、中産階級の再生に、欧米が正しく再投資するなら。科学技術や教育システムに投資し、通貨戦争や貿易戦争を回避しなければならない。国際的な企業買収や熟練労働者の移動を制限することは生産的な変化を妨げるものである。1930年代のように間違った確実性を求めるのではなく、新しい世界市場へのアクセスを開放しなければならない。

国際協調から離脱することは失業率を高くするだろう。次のフランスにおけるG20は、1.金融制度の改革について国際協調を実現し、2.アジアの消費革命と欧米の目標を絞った再生のための投資を合意し、同時に、多年度にわたる財政再建を進めることだ。


The Observer, Sunday 5 December 2010

Rein in the fat cat salaries or see public services suffer even more

Will Hutton


The Observer, Sunday 5 December 2010

China must release Liu Xiaobo – or lose its credibility

Václav Havel and Desmond Tutu

guardian.co.uk, Monday 6 December 2010

Why Obama and Liu Xioabo both embody our Nobel vision

Thorbjørn Jagland

NYT December 8, 2010

Words a Cell Can’t Hold

By LIU XIAOBO


l         中国と国際秩序

Dec. 6 (Bloomberg)

China’s ‘Treadmill to Hell’ Is Worth Mind Game

William Pesek

温家宝首相は、中国の経済が減速したら、世界はどうなるか? と警告しました。格付け会社Fitchが、中国の成長率が5%以下にまで下落する、という可能性を指摘しています。このような予測を考えておくべきか?

もし2005年に、ベアスターンズが倒産する、アメリカ連銀が日銀の政策をまねる、アイルランドが救済融資を受ける、インドネシアが模範国家になる、北朝鮮が韓国の民間人を殺害する、と予測したら、笑い話であっただろう。

成長率が8%を切るという予測は、市場の売りに火をつけるだろう。アメリカは成長のエンジンを停止し、ヨーロッパは債務危機、日本はデフレにさ迷っている。中国は世界経済の2%から12%に増大し、その役割を期待されている。

中国経済の減速は、そのショックがオーストラリア、香港、マレーシア、シンガポール、韓国、台湾へ波及する。自動車、化学、機械、鉄鋼などの産業が停止する。市場の不安は他国の金融市場に伝染する。中国に進出している多国籍企業の業績が悪化する。

アメリカ財務省証券も例外ではない。成長の減速は中国に社会的混乱や政治的危機を生じるかもしれない。それは劇的な刺激策を求め、公共投資を行うために26000億ドルの外貨準備を売り始める。

中国国内にも、それに関連する諸国にも、銀行は不良債権の中で窒息する。アメリカ連銀の流動性供給は、アメリカの銀行だけでなく、日本やアジアの金融機関を救済している。それは世界中央銀行the Central Bank of the Worldと呼ぶべきだ。中国の都市や空港の建設、住宅建設に投下された資本の多くは、ブームが終われば無駄になる。

不動産価格の上昇は、すでに破滅を待つバブルである。「中国は地獄の踏み車だ。・・・不動産開発というヘロインで成長を高めている。」 しかし、一直線に成長する経済は無い。中国も例外ではない。

Dec. 7 (Bloomberg)

China Needs a U.S. Lesson

Alberto Alesina and Luigi Zingales

かつてロナルド・レーガンがソ連のミハイル・ゴルバチョフに呼びかけました。「この壁を倒しなさい。“Tear down this wall.”」・・・同じ要求を、今や、中国にするときです。

それは、ベルリンの壁や万里の長城ではなく、国内の消費を抑える壁です。中国の貿易黒字の原因は、単に人民元の過小評価ではなく、輸出企業の黒字を政府が吸収して貯蓄してしまうことにあるのです。もし中国人が自由に消費し、輸入できるなら、世界のバランス回復に大いに役立つでしょう。「壁を倒す」とは、労働者の組織化と要求を認めて賃金を引き上げ、世界の情報へアクセスすることを国民に認めて商品やサービスを購入させることです。

(China Daily) 2010-12-07

Buying of bonds not political

(China Daily) 2010-12-08

Stumbling stone at Cancun

By Feng Zhaokui

WSJ DECEMBER 8, 2010

Yuan for You and Yuan for Me?

By JOSEPH STERNBERG

世界貿易に占める中国の地位が上昇した結果、人民元の国際化が急速に進む、という予想は間違いです。

実際、中国政府は香港でオフショア人民元債を発行し始め、人民元取引を行える中国の金融機関を365から67000以上に増やしました。HSBCは、中国と発展途上諸国との貿易の半分以上が、今後3年から5年で、ドル建から人民元建に替わるだろう、と予想します。

しかし、人民元が為替規制されているために、そのオフショア取引は薄く、時間がかかり、企業はドル建の為替市場に頼り続ける、とJOSEPH STERNBERGは考えます。

FT December 9 2010

Boost for US-China military relations

By Kathrin Hille in Beijing and Daniel Dombey in Washington

WSJ DECEMBER 9, 2010

A Coming Sino-Turkish Axis?

By MICHAEL AUSLIN

WSJ DECEMBER 10, 2010

Asia's Changing Balance of Power

ミサイル、空母、潜水艦。中国の軍備拡大は続いています。ロシアが最新鋭戦闘機を中国に売ることで、東アジアの勢力均衡はさらに大きく変化します。

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The Economist November 27th 2010

The euro crisis: Spreading from Ireland to Iberia

The euro crisis: A contagious Irish disease?

Bagehot: They told you so

Schumpeter: Mittel-management

(コメント) アイルランドに関する記事は、概ね、これまでに知られていることです。アイルランドの開発・成長は素晴らしい自由化と市場統合の成果でしたが、やはり、小国のバブルを許しました。金融政策が失われたことに対して、政治家たちの自覚は無く、ショックの財政的な吸収メカニズムを欠いているのです。それは、ドイツの側にもあります。

ユーロの悲劇を免れた、と笑いを抑えきれないイギリスの反対派は、EUの悲観主義者とともに、軽薄なユーロ離脱論やアイルランドがいっそポンドに統合するとか、ユーロ崩壊を議論しています。記事は、ブラジル、ロシア、中国、インドを合わせたよりも多く、ユーロ圏がイギリス商品を買っている、と指摘します。ドイツの中小企業が成功した理由は、日本が学ぶべき点です。


The Economist November 27th 2010

How to live with climate change

Immigration reform: Let them have a DREAM

Coping with North Korea: How do you solve a problem like Korea?

Lexington: One nation, with Aunt Susan

Siera Leone’s minerals: Digging for trouble

International justice: In the dock, but for what?

(コメント) 温暖化の中で、たとえば、食糧生産をどうやって確保するか? 共和党の躍進を受けて、移民法改革は進められるか? 中国は北朝鮮を支持することがむしろリスクを高めていることを認めるか?

不思議な記事としては、スーザンおばさんです。アメリカが社会的な統合を維持できているのは、強い信仰心があるからだ、というのです。さまざまな異なる宗教ですが、アメリカ人の多くが敬虔な信者です。しかも、彼らは異なった信仰をもつ親族をよく知っているために、天国は彼らにも開かれている、と考えるのです。そうでないケースも増えていますが。

シエラレオネがダイヤモンド鉱山の開発で再び汚職や内戦に向かうかどうか、指導者たちへの不信があります。他方、国際介入や国際刑事裁判所の評価は分かれています。