IPEの果樹園2010

今週のReview

12/6-12/11

 

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IPEの想像力 12/6/10

アイルランドの危機は、私たち日本人にとって、バブル破綻した銀行の処理(その前の住専処理)を思い出させます。また、アジア諸国にとって、アジア通貨危機とその際の欧米の批判を思い出させるでしょう。

「債務危機を回避するために、もし債務削減交渉や債務支払いの一時停止、資本規制の導入、公的債務の破産処理などについて、合意された国際ルールや国際制度があれば、アルゼンチン危機は同じ形で起きなかっただろう。」と、私は数年前に論説で書きました。そこには、アジア通貨危機の悔恨、それ以上に、日本のバブル破産と政治的な処理過程への強い疑念、不満がありました。アメリカのサブプライム・ローン問題、リーマン・ショックに代表される金融危機の衝撃、アイスランドであれ、アイルランドであれ、世界各地で同様の怨嗟が生じています。

私は続けて、次のように書きました。「アメリカ政府・財務省のイデオロギーが異なり、もっと柔軟な姿勢で国際制度の改革を指導し、国際金融取引から債務処理のための費用を徴収するメカニズムや、投資家の過度の楽観と悲観を抑制する仕組みなどがあれば、社会的な弱者へのコストは抑えられたはずだ。」

資本流出を止めるべきだ、と私は思いました。パニックを放置することで、投機によって利益を得たわけでもない企業や労働者が大きな不利益を受けるからです。通貨価値の急激な減少は抑制するべきだし、その後の資本流入も、敵対的な企業買収ではなく、その国の経済再建を促す形に限定するべきだ、と思いました。特に、銀行は融資に対する責任を取り、債権を一部放棄するか、株式化するなど、長期の返済条件を変更する交渉に参加させるのが良い、と思いました。

アジアのバブルに日本の銀行が関わっていたことは、宮沢首相の支援策に影響したはずです。しかし、ドイツが責められているような論争は、当時の日本で、起きていなかったと思います。

日本でも、住宅ローンが返済できない人は、その住宅を放棄することで返済を免れ、あるいは、住宅価格の変化に見合った返済条件を合意すれば良かった、と思います。銀行が不良債権の処理で倒産するなら、一気に整理統合し、公的資金で救済した後、利益が出る状態にして株式を売却する、というのが良かったでしょう。なにより、金融部門の再編・整理と、速やかな景気回復に結びつける景気刺激策が必要でした。

為替レートの(一時的、危機回避の)安定化を目指して、主要国が協調介入しなければなりません。それは(より長期に及ぶなら)、各国が国債を共同で保有することを意味するでしょう。さらに、どのような条件で資本規制を導入するか、あるいは、金融政策を統一して、その代わり、財政移転を制度化するか、合意することが必要です。それは、難しいことではなく、金融市場がますます地域の事情だけで決まらなくなれば、当然、起きてくることです。政治的介入ではなく、財政政策に示される政府の有能さが、為替レートを安定化し、バブルを避け、長期的な成長を持続するのです。

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リコールが成立した鹿児島県阿久根市のニュースを観ました。竹原市長は、特権を得た者たち(議員)が地位を独占し、何も新しいことをしない、と批判します。年間22日しか議会を開かず、税収を超える給与を受け取る、という指摘に驚きました。主要産業は失われ、悪化する経済情勢に必死の挽回策を模索するのが、政治の使命だと思います。

バブルが破裂し、若い人々には職がなく、大学を卒業してもフリーターになる人が増えました。日本が長い不況に入るころ、派遣やワーキング・プアといった言葉が次第に広まっていたのです。民主党政権は、こうした問題に根本的な転換をもたらすため、国民から政権を任されたことを忘れてはなりません。ABCDフィッピーと正面から格闘してほしい、と思います。

指導者の気迫と優れた言葉や行為がなければ、苦境を抜け出す人々の意志は固まりません。竹原市長に、それはあったのでしょうか? アイルランドの首相も、アメリカの大統領も、谷垣自民党総裁も、それを厳しく問われています。

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アイルランド危機が意味するもの ・・・中国のイメージ ・・・北朝鮮 ・・・階級戦争ではなく、公平さを ・・・ウィキリークスによる秘密情報公開の功罪 ・・・マクロ政策の限界 ・・・日本特集

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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


l         アイルランド危機が意味するもの

NYT November 25, 2010

Eating the Irish

By PAUL KRUGMAN

貧しいアイルランド人に、風刺作家のスウィフトは「食糧として子供を売る」ことを勧めました。1729年の“A Modest Proposal”というエッセーです。なぜなら、地主たちは、その両親をすでにがつがつ喰ってしまったのだから。後は、子供でも売るしかないのだ・・・。

現代では、それが銀行家になるわけです。アイルランド人を食べているわけではないが、極端に貧しくしました。アイルランドの窮状は、スウィフトのような風刺作家にしか描けないでしょう。

アイルランドの現在の不幸は、まれにみる成功物語として始まりました。それは不動産投資の熱狂をもたらし、銀行家、開発業者、政治家の癒着をもたらしたのです。熱狂はアイルランドの銀行融資で膨張し、ヨーロッパ中からも融資を受けて続きました。

バブルが破裂したとき、銀行は破綻しますが、その融資はどうなったのか? もちろん、自分たち利益や報酬のために、銀行が行った融資が失敗したのであり、資産を超えて借入は返却できないはずです。ところが、普通の人がそう思うとしても、政治家たちはそれを阻んだのです。政府が民間銀行の破たんを阻止するために債務を肩代わりしました。そして、納税者が税金で負担しています。

おまけに、財政負担がユーロ危機を招くと、EUECBも一緒になって救済融資をアイルランドに押し付け、その条件として厳しい緊縮予算や公務員の解雇を要求しました。アイルランドは、銀行家たちの報酬を維持するために税収を奪われ、さらに、銀行の返済を続けるための融資を受けて、不況と一層の財政赤字を強いられています。

EUはそれによって市場の信頼が回復する、と主張しましたが、間違いでした。アイルランドは厳しい不況になって財政赤字が続く中、投資家も債券を買わなくなったのです。

他方、2007年に破たんしたアイスランドでは、財政負担も不況も、アイルランドより抑えられました。なぜならIMFから融資を受けつつ、一時的に資本流出を禁止し、為替レートを管理して、債券も返済しなかったからです。それは民間投資家の失敗だ、と見なされました。アイルランドもそうすべきでした。また、アイスランドには独自通貨があるために、切下げによる輸出の増加が返済や国内景気を支えることもできました。

こうしたアイスランドの非正統的な政策は、国民を苦しめ、銀行家たちのギャンブルを補償するアイルランドより、正しい選択だ、とKRUGMANは考えます。

FT November 25 2010

Ireland’s culture of cosy cronyism must end

By Peter Cunningham

FT November 25 2010

Assets matter just as much as debt

By Martin Wolf

「金融危機では国家の役割が問題になる。しかし、危機を回避する短期の問題が過ぎると、長期の意味が問題になる。このとき、債務ではない、資産が問われるのだ。」

金融危機によって財政赤字が増え、政府の債務が増えました。Martin Wolfは、二つの論点を示します。一つは、財政赤字でも、インフラのような生産的投資は続けるべきだ、ということ。もう一つは、遊休資源を利用するケインズ主義的な投資も正しい、ということ。

その意味で、イギリス政府(そして、アイルランド政府)が財政赤字削減を目標に、大学への支出を削ったり、失業者が増大する中で政府支出を削ることは間違っています。

政府債務は(生産的な投資であれば)、社会全体として見て、重要ではないのです。債務者が誰か、という問題が重要だ、とPaul Krugmanに賛同します。「たとえば、もし債務者が予想外の富の減少に直面した、あるいは、突然の返済を強いられた場合、経済に激しい収縮をもたらすだろう。国家が債務を増やすことで、この影響を緩和できるなら、そうするべきだ。それは社会全体にとって負担とならない。なぜなら純債務を増やさないから。もしそれによって、政府がそうしなかったよりも、GDPを引き上げたなら、もちろん、それは非常に良いことだ。」

FT November 26 2010

Writing on the wall

By David Gardner

ある意味で、アイルランドの自民党と見ることができるFianna Fáil partyの将来について、です。その政治基盤は社会に深く浸透しており、政権交代だけで何かが解決するわけではないとしても、彼らが権力を失うことは当然です。

SPIEGEL ONLINE 11/26/2010

Bracing for Bailouts

Which EU Problem Child Will Be Next?

By Ferry Batzoglou, Michael Braun, Yasmin El-Sharif, Michael Kröger, Ole Reissmann and Stefan Schultz

guardian.co.uk, Friday 26 November 2010

Who's being bailed out?

Michael Burke

アイルランドのIMF代表、Ajai Chopraが財政を管理するが、その支出削減案に労働組合はストライキで抗議する。

ギリシャでは政府債の購入を保証しなくなったとき、アイルランドでは銀行への短期融資を続けないと決めたとき、政府はECBの圧力に従った。なぜなら、投資家たちが市場でストライキを起こしたからだ。政府が救済案を受け入れるしかなかったとき、誰を救済したのか、はっきりさせておくべきだ。

ギリシャへの110億ユーロ、アイルランドへの1000億ユーロは、債務の支払いに足りないが、債権者を守るために行われた。学校や病院を守るためでもなければ、たった一つの雇用を守るわけでもなかった。それはむしろ不況を深刻化したのだ。アイルランド政府は、公務員の給与と雇用を減らし、最低賃金を12%も引き下げた。中産階級や貧困層が負担を強いられた。

「こんなことイギリスでは起こらない、という誤解が広まっている。しかし、アイルランドは一人当たりGDPがイギリスより高く、しかもイギリス政府は「緊縮計画」を開始するところだ。それはダブリンのサッチャー主義者と似ていなくもない。」

FT November 28 2010

Germany sets out roadmap to default

FT November 28 2010

Europe is edging towards the unthinkable

By Wolfgang Münchau

ユーロ圏の政府を批判するのは簡単だ。しかし、建設的な提案は無いのか? それに応えて提案します。

1.債務の組み換え。支払可能な額に減らす。2.政府債を民間の金融市場から切り離す。3.銀行部門を統一・縮小して、再編・整理する。4.共通のユーロ債を発行し、EUを財政統合する。

つまり、ユーロ圏の条約を作りなおして体制を転換します。それはユーロ危機を終わらせるでしょう。しかし、実現しません。メルケル首相は憲法裁判所や有権者がそれを受け入れないことを知っています。また、加盟国の国民投票で否定されるでしょう。

EUは、実行可能なことをやるだけでした。金融市場が安定しているときには何もせず、危機になれば、加盟国が安定化基金を積み増す。そのために最大規模の危機を予測し、それに見合った額を拠出させる。しかし、それでは危機は終わりません。予想外の危機は今後も起きるでしょう。

ユーロ圏を解体するか、財政統合するか、選択するときが来たのです。

FT November 28 2010

Government bonds: A coinage debased

David Oakley and Richard Milne

NYT November 28, 2010

The Spanish Prisoner

By PAUL KRUGMAN

ギリシャやアイルランドの危機は前菜に過ぎない。メイン・コースはスペインだ。ドミノが起きて、ユーロを崩壊させる。

スペインは、ギリシャのように財政赤字を出さず、アイルランドのように銀行を野放しにしなかったが、アメリカと同じように、不動産バブルと民間債務が膨張していた。不況になって債務が支払えず、失業と財政赤字が膨張している。スペインはユーロを最も熱狂的に支持し、金利の低下と資本流入で成長を加速した国だった。

問題は、ブームの間に物価と賃金が上昇し続け、他のユーロ圏諸国に比べて競争力を失ったことだった。対外貿易赤字が増大していた。バブルが破裂したとき、スペイン産業は輸出もできなくなっていた。ユーロ圏内であるため、為替レートの減価による輸出の促進もできない。

スペインは、アイルランドと同様に、「内的な切下げ」を行った。それは物価と賃金を下げることだ。しかし、問題は、それが長い時間を必要とし、その間、大規模な失業と不況が続くことだ。それを逃れるために、スペインはユーロ圏を離脱するべきか? PAUL KRUGMANは、ユーロによってスペインは成長したのだから、大規模な銀行危機がない限り、それは選択しないだろう、と考えます。

こうして、スペインは「ユーロの囚人」となっています。だから、アメリカは喜ぶべきでしょう。連銀は金融緩和し、ドル安を進めることができます。それを批判する共和党員の批判などに、耳を貸すべきではない。

guardian.co.uk, Monday 29 November 2010

Argentina's hard lesson for Ireland

Jose Luis Machinea and Pablo Schiaffino

2010年のアイルランドは1999年のアルゼンチンと経済的に同じ位置にある。為替レートの実質的増価、不況、財政赤字、通貨制度の将来に不安を感じた投資家が債券購入を拒否し始めた。

端的な解決策は、通貨を安くすることだ。しかし、アイルランドにはそれができないし、アルゼンチンもできないと思われていた。USドルとの11交換を保証した法律により、人々はドルで契約し、預金し、債券を発行できた。切下げは、これらをすべて破壊することだった。

アイルランドはどうか? あるゼンリンの経験した破壊的な効果は、ユーロ圏やEUも離脱するというように、アイルランドで余りに強い。債務の組み換え、ユーロ離脱よりも、IMFとEUの組んだ融資プログラム(返済条件に一定のEUが交渉して緩和された条件)による経済再建が選択されるだろう。しかし、回復には時間がかかる。

guardian.co.uk, Monday 29 November 2010

Ireland is lost for words on economic crisis

Elaine Byrne

SPIEGEL ONLINE 11/29/2010

Fears of a Euro Demise

The Disastrous Consequences of a Return to the Deutsche Mark

By Jens Witte

危機が繰り返されるなら、アイルランドでも、スペインでもなく、ドイツがユーロ圏を離脱して、ドイツ・マルクを復活させるでしょう。ユーロのコインや紙幣が導入されて9年近くたっても、ドイツ人はまだ推定で130億マルクを(秘密の場所やマットの下に)保有しています。

しかし、ユーロ圏解体がドイツにもたらすコストを考えれば、単独であれ、数カ国であれ、ユーロ圏をドイツが再編する可能性は否定されます。すなわち、新しい紙幣を用意する、など、取引費用だけでも膨大です。商人やレストラン、銀行のすべての取引が変更されねばなりません。

さらに、ドイツの輸出市場であるユーロ圏が解体されるショックは、周辺諸国の不況と輸出の急激な減少をもたらします。また各国通貨による資産は信用されず、安全な逃避地としてドイツに投資を集中させ、マルクを大幅に増価させるでしょう。その結果、ドイツでも失業者が急増します。金融市場の混乱や銀行の破たんが同様の結果をもたらします。

EUとして発揮する外交の影響力は消滅し、アメリカや中国はドイツを無視するでしょう。ヨーロッパは政治的にも弱体化するのです。

SPIEGEL ONLINE 11/29/2010

'Are You Still Loyal to Europe?'

Euro Crisis Damages Germany's Reputation

By Ralf Neukirch

FT November 29 2010

Ireland rescue is not a game changer

By Mohamed El-Erian

安定化危機は流動性危機を回避し、危機の波及を抑えようとするだけだ。中長期の回復にいたる条件は実現できない。債務を減額し、民間投資家や銀行にも負担させる枠組みが必要だ。支払不能危機の政府や銀行を処理・回復する解決策を示すときだ。

FT November 29 2010

Spain braces itself for a crisis made in Germany

By José-Ignacio Torreblanca

ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペインに至る危機の末に、その挫折を最も強く感じている国は、そのいずれでもないドイツである。

救済パッケージにはあらゆるものが詰まっている。政府支出削減、労働市場改革、公務員給与の削減、年金凍結と支払年齢の引き上げ、付加価値税の引き上げ。中央銀行の支援を得て、地方政府の財政再建も行う。地方の貯蓄銀行は資産テストの結果を公表し、整理統合する。こうした問題は、すべて国内で起きたというより、ドイツから起きた。

なぜなら過去においてドイツはスペインのモデルであり、パートナーであったから。スペインは民主化し、連邦制や社会市場モデルなど、ドイツの制度を取り入れた。外交においても、大西洋とEU統合を重視するドイツに従った。1980年代、ゴンザレスはクルーズ・ミサイルやパーシングの配備を支持し、コースはスペインのEC加盟を支持した。サッチャー、ミッテラン、アンドレオッティが強く反対していたときも、スペインのゴンザレスは東西ドイツ再統一を支持し、戦略的関係を築いた。

しかし今、ザパテロとメルケルはその関係を冷却化し、ついに敵対するようになった。ドイツの主張は正しいが、その結果は受け入れがたいものだ。そのドイツの無分別は南欧を改革するドイツの思考にも表れている。

1980年代、90年代、EU統合は成長の好循環を示していた。周辺は中枢よりも急速に成長し、一人当たりの富でキャッチアップしていた。しかし、ドイツなども利益を受けた。彼らの成長は輸出や直接投資を増やしたからだ。この関係が破壊された。ドイツは輸出先としてロシアを見、中国を見ている。EU全体としてモスクワや北京にや移行するのではなく、ドイツの利益を単独で求めている。

スペインから見て、それはドイツが世界で利益を実現するために、南欧の彼らが負担でしかなくなった、という意味である。しかし、確かにスペインはヨーロッパの辺境だが、ヨーロッパもますますアジアの辺境になるだろう。それゆえ、ドイツの単独外交は決して成功しない。アジアの世紀に、ヨーロッパの国は重視されず、弱体化したヨーロッパは、特にユーロ圏を失えば、ドイツも弱体化する。危機は、スペインや南欧の生き残りだけでなく、ヨーロッパの生き残りを脅かす。

FT November 29 2010

Europe’s risky rescue for Ireland

WP Monday, November 29, 2010;

In Ireland's debt crisis, an ominous reckoning for Europe

By Robert J. Samuelson

民主的福祉国家の建設とヨーロッパの統一。ユーロ危機はこの二つの目標を破壊しつつあります。アイルランドの危機も、2007年から始まった金融危機のつながりを示しており、もしユーロ圏が崩壊すれば、アメリカと同じ規模である、世界市場の25%を示すEUが、不況や保護主義に陥り、世界が経済ナショナリズムになだれ込む、とRobert J. Samuelsonは危惧します。

素晴らしい成長を遂げたアイルランドが、住宅バブルや金融・財政政策の失敗で危機に陥りました。そのアイルランドに融資しているイギリスやヨーロッパ主要国の銀行も連鎖的に危機を生じる瀬戸際にあります。

NYT November 29, 2010

The Euro Has No Clothes

By ROGER COHEN

21世紀におけるユーロ圏は、20世紀の国際連盟に匹敵する、とROGER COHENは考えます。素晴らしいアイデアも、政治的に支持されず、危機の原因として責められる。

1919年に創設された国際連盟も、第一次世界大戦の反省に立って、戦争を繰り返さないために誕生しました。しかし、その高い理想はヒトラーの野蛮なナショナリズムに圧倒されます。

1989年初め、ジャック・ドロールが描いた経済通貨統合の報告書は、ヨーロッパの政治全体が大きく変化する直前に現れました。その後、ベルリンの壁は崩壊し、東西ドイツが統一し、ソ連とヤルタ体制は解体されてしまいます。報告書は、金融政策とマクロ経済管理をEUに集中させるよう求めていました。単一通貨はヨーロッパの完全な統合を求めていたのです。

ところが、冷戦崩壊はEU拡大(12カ国から27カ国へ)をもたらし、政治・経済格差が拡大して、統一は難しくなりました。統一されたドイツはヒトラーの負の遺産を忘れ、ヨーロッパ統一よりも国益が重要になりました。かつてモスクワの駒でしかなかった東欧諸国は、ブラッセルの駒にされるのを嫌いました。超国家通貨の誕生は、それと並行して、連邦主義を次第に失わせたのです。

グリーンスパンと同じ新時代思考と金融緩和の波は住宅バブルを刺激しましたし、メルケル首相の銀行救済への慎重かつ賢明な態度は投資家のパニックを刺激しました。ユーロは経済に関する政治的意思決定を各国が失うことを意味していたにもかかわらず、それを理解しても、実際は、誰も容易に認めなかったのです。

ドイツが受け入れた、再統一とマルクの放棄、というファウスト的契約は、今や実行を迫られています。統一ドイツがユーロ圏を守るために、もっと投資し、ヨーロッパ各地を救済しなければなりません。

確かに、国際連盟の理想は国際連合に引き継がれました。しかし、その間には戦争と破滅の時代があったのです。

WSJ NOVEMBER 30, 2010

Europe's Single Debt Zone

FT November 30 2010

Why the Irish crisis is such a huge test for the eurozone

By Martin Wolf

たとえ単一通貨になっても、通貨危機は終わらない。つまり、通貨危機に代わって信用危機が起きる、とMartin Wolfは以前から警告していたそうです。

なぜ通貨危機が信用危機になるのか? まず、単一通貨では、構造的な条件で競争力のない国が貿易収支の赤字になる。為替レートも金融政策も使えないので、政府は雇用を維持するために財政支出を増やす。こうして財政赤字が累積し、外国からも融資を受けて、それが信用危機になる。あるいは、単一の金融政策になって、国によっては金利が低すぎる。それは信用膨張とバブル(さらに金融犯罪)を生じる。

変動レートでは、ブームが通貨の増価で抑えられ、破綻による不況は減価で緩和される。固定レートでは、アジアで起きたように、破綻が急激な通貨価値の下落を生じて回復を促す。通貨同盟ではそれらが働かない。不況地域は長期的なデフレを経験する。その意味では、通貨危機の方が信用危機よりもましである。しかし、通貨危機は政府のデフォルトにつながる。そして国家の法的・政治的な基礎を破壊する。

危機のダイナミズムはほぼ同じである。金利や為替レートが過剰な融資や投資と、その膨張、破綻への不安から(通貨や債券の)市場圧力を自己実現的にもたらす。一つの答えは、アイルランドの失敗にある。民間の債務が政府を肩代わりしてはいけない。民間債務の処理コストは、納税者ではなく、民間が負担するべきだった。

しかし、その場合、債権者であるヨーロッパの主要銀行に損失を受け入れさせ、動揺する銀行システム全体を再編しなければならない。それを行うには財政的な支援が要る。それには、ECBが政府の赤字を融資するか、政府間で財政移転するしかない。もしユーロ圏がそれを決断すれば、危機は終わる。

赤字国も、黒字国も、ユーロの枠組みを利益とみなすなら、ユーロ圏は生き延びる。しかし黒字国のドイツが、赤字国の成長回復を重視していないとしたら、ユーロ圏の枠組みは相互不信から解体する道に進む。

SPIEGEL ONLINE 11/30/2010

Masterplan Fails to Calm Markets

Europe's New Debt Mechanism Has Come too Late for Euro Crisis

By Stefan Schultz

FT December 1 2010

Euro crisis calls for a fresh approach

FT December 1 2010

Germany is right: bondholders must pay

By Otmar Issing

危機がまだ続いているなかで、2013年からの救済制度に言及し、それ以前の債券については不透明な印象を与えたメルケル首相の発言は、ギリシャやアイルランドの債券価格を下落させ、危機を招いた、と責められている。しかし、私は反対だ。

あらかじめ、政府債のデフォルトに関して、その処理を決めておくべきだ。政府間で合意はできていたし、それをいま議論しても、政治的な救済を期待している間違った投資家の判断を抑制するだけであって、必要なことである。発言を遅らせることは問題を拡大しただろう。批判は間違いだ。

WSJ DECEMBER 2, 2010

'Contagion' and Other Euro Myths

By JOHN H. COCHRANE


FT November 25 2010

Capitalism can save the planet

By Philip Stephens

NYT November 27, 2010

To Fight Climate Change, Clear the Air

By VEERABHADRAN RAMANATHAN and DAVID G. VICTOR

FT November 28 2010

Stop talking and start taxing carbon

By Clive Crook

FP NOVEMBER 30, 2010

The Expectations Game

BY CHRISTINA LARSON

(China Daily) 2010-12-01

Will change come to Cancun?

By Amitendu Palit


l         中国のイメージ

FT November 25 2010

Why the west should not demonise China

By Minxin Pei

中国の言動を攻撃的・好戦的と見なす西側の報道が増えています。しかし、中国ではむしろ、中国政府の主張が余りにも意気地がない、と批判されています。そして、西側の中国批判は不公平であり、偽善的だ、と見なされています。

たとえば、アメリカは勝手な金融緩和策を行って世界に迷惑をかけているのに、中国の利益にならない人民元の為替レート切り上げを求めている、と批判します。また、西側の報道は、日本との領土問題について、日本側の主張に偏っている、と考えます。

中国の教育システムと共産党の宣伝は、国民のナショナリズムを強めています。また政府は、中国が国際政治で重要な役割を占めていると宣伝し、同時に、より柔軟な外交政策を行う、と考えます。北朝鮮の扱い方についても、西側と中国の報道は大きく異なっています。

認識のギャップは双方で狭める努力が必要だ、と。

guardian.co.uk, Saturday 27 November 2010

China's growing intolerance of peaceful dissent must be challenged

Phelim Kine

FP DECEMBER 2010

The End of the 'Peaceful Rise'?

BY ELIZABETH ECONOMY

中国国内で、将来の外交のイメージ、中国が果たす役割について、合意が存在しない。ドルに代わって人民元が国際通貨となり、国際金融センターを築くのか? 中国も海外に軍事基地を建設するべきか? あるいは、現在の国際政治に占めるアメリカのような役割を、将来、中国が担うことは無い、と考えるのか? 論争が続きます。

中国は、成長する結果として、外部からの批判を容易に受け入れなくなるでしょう。中国内部の政治文化が変化しつつあります。その国際的役割について国民の前で議論し、国際社会にも示すべきでしょう。

FT November 28 2010

Obama has to tell Beijing some hard truths

By Fred Bergsten

FT November 29 2010

China reaps a vintage European crop

By Gideon Rachman

「チャイナ・プライス」と言えば、圧倒的な競争力を示す中国製品の安さを意味していました。しかし、もう一つの意味ができた、とGideon Rachmanは紹介します。

1869年のヴィンテージ物ワイン、Château Lafiteが、香港のオークションで437900ポンドの値を付けたからです。グローバルな奢侈財に世界市場で最高の価格を与える、中国富裕層の購買力を示す言葉になったのです。1980年代後半に、日本人が印象派の絵画を購入したように。

ヨーロッパの有名ブランド商品が、一斉に、中国市場を目標にしたデザインや宣伝を強化しています。

 (chinadaily.com.cn) 2010-11-29

Quantitative easing and the Renminbi

By Martin Feldstein

YaleGlobal , 30 November 2010

Can China Afford to Confront the World? – Part II

Pichamon Yeophantong

 (chinadaily.com.cn) 2010-11-30

China's monetary sterilization

By Fan Gang

WSJ DECEMBER 2, 2010

A Changing China Resets World Trade

By VICTOR K. FUNG


FT November 25 2010

Ratify US-Russia nuclear accord

WP Thursday, December 2, 2010;

The Republican case for ratifying New START

By Henry A. Kissinger, George P. Shultz, James A. Baker III, Lawrence S. Eagleburger and Colin L. Powell


l         北朝鮮

FP NOVEMBER 26, 2010

China Help with North Korea? Fuggedaboutit!

BY AIDAN FOSTER-CARTER

guardian.co.uk, Saturday 27 November 2010

Washington's message to Pyongyang

Tom Rogan

アメリカ政府が、北朝鮮の軍事力に対して圧倒的な優位を示す原子力空母を、米韓軍事演習に派遣したのは、不必要なエスカレーションを回避し、北朝鮮に明確なメッセージを伝えるためであった。すなわち、アメリカは北朝鮮を宥和しない。アメリカを試すな。合意されたルールを破れば、報復する。約束を守るときだけ、話し合う。中国もそれを理解し、影響力を行使するべきだ。

guardian.co.uk, Monday 29 November 2010

US embassy cables: Beijing's lost patience leaves Pyongyang with little to lose

Isabel Hilton

WikiLeaksが暴露した秘密情報では、現状維持をベストとしつつも、中国政府が北朝鮮崩壊後の韓国主導による朝鮮半島統一を受け入れた、ということです。中国の経済紙も、中国人の税金を北朝鮮支援に使うことに疑問を示しています。中国の対外援助の40%、毎月5万トンの原油を、北朝鮮が得ている、という情報もあります。

2006年の原爆実験は、アメリカや日本だけでなく、中国を驚かせました。中国は原爆開発を明確に否定してきたのです。北朝鮮と違って、中国政府は冷戦イデオロギーから離れようとしています。国内の成長を維持する条件を安定的に保つこと、アメリカへの輸出を続けることは、北朝鮮を守る以上に重要です。しかし、その危機を望むことはありません。

 (China Daily) 2010-11-29

Easing of tension possible

By Shi Yuanhua

中国政府が国民に説明することは、南北朝鮮の敵対の歴史、その軍事的なエスカレーションを緩和する責任ある態度を中国は示しているが、米韓軍事演習のような圧力では北朝鮮も話し合いに応じられない、というものです。アメリカが態度を改めて6カ国協議に参加するべきだ、と。

LAT November 30, 2010

Hitting the North

By Sung-Yoon Lee

The Guardian, Tuesday 30 November 2010

US embassy cables: hanging North Korea out to dry

FT December 1 2010

Global manufacturing powers ahead

By Daniel Pimlott in London and Kevin Brown in Singapore


l         階級戦争ではなく、公平さを

NYT November 26, 2010

Winning the Class War

By BOB HERBERT

階級戦争は終わらない。

100万人が失業し、アメリカ人は祝日にも節約するために苦しんでいるが、その一方で、エリート層はダンスシューズの靴ひもを結び、何100万ドル、何十億ドルを転がせてパーティーに耽っている。不況は無名の人々が味わうだけで、アメリカの貴族層の中核をなす、企業重役やウォール街の富豪たちには関係ない。

億万長者のニューヨーク市長、Michael Bloombergが、教育とは無縁の大金持ちCathleen Blackを市の学校長に任命しました。彼女が貧しい親たちとどのように理解し合えるのか?

FT November 30 2010

A fairer pay gap between top and bottom

By Will Hutton

経済が下降過程で、緊縮政策が求められるとき、人々が富の分配や負担の公平さについて議論するのは当然です。高所得を得ている者たちは、それにふさわしい貢献をしているのか?

Will Huttonは、連立政権が成立した際に、キャメロン首相とオズボーン蔵相から、公的部門の報酬の格差に関する諮問を受けたそうです。公平をめぐる概念を、平等主義とリベラル派とを和解させる形で取り入れた、その報告書(The Hutton Fair Pay Review)を紹介しています。

「人々はその貢献が大きい者ほど多くの報酬を受けるべきだ。ただし、比例的に多く。またそこには上限があるべきだ。なぜなら、たとえどれほど優れた才能がある者でも、その組織の改善を自分個人の能力だけで説明することはできないから。知識を基礎にした経済になるほど、改善のための技量や決断はより分散したものになる。」

それと並行して、この10年に進んだ企業重役たちの高額報酬、特に株式を介したアメリカ的な報酬に対して、Huttonは見直しを求めています。資本主義が富をもたらす最も優れたシステムであるとしても、その報酬システムが長期的に正当な社会貢献に裏付けられたものであるか、検証が求められるべきです。


LAT November 27, 2010

Talks are the only route in Afghanistan

By Ahmed Rashid

WSJ NOVEMBER 29, 2010

The Emperor's Nuclear Clothes

By STEPHEN PETER ROSEN

アメリカの外交はどうなっているのか? 核のない世界、を求めても、核兵器がなくなれば、通常兵器で圧倒的なアメリカに逆らうことはできなくなる。だから、アメリカに従わない国は必ず核兵器がほしくなる。

アメリカが北朝鮮への空爆を意図しても、韓国と日本は強く反対するだろう。彼らに臨む武器は何でも売って、自分たちで北朝鮮と戦え、と教えるべきだ。戦争を望まない諸国と、軍事的に強制されることなく平和に生きる。それはユートピアの実現と関係ない。

FP DECEMBER 2010

How's That New World Order Working Out?

BY PARAG KHANNA

アメリカによる一極支配が終わって、現実の多極化した世界秩序とはどのようなものだろうか? G20はそのガバナンスを築けるのか? 新興諸国、国連、中国、NGOs、ダヴォス、など。


l         ウィキリークスによる秘密情報公開の功罪

guardian.co.uk, Sunday 28 November 2010

US embassy cables: A banquet of secrets

Timothy Garton Ash

「外交官たちにとっては悪夢であるが、歴史家にとっての夢が実現した。」

Timothy Garton Ashは、これを大いに歓迎しているようです。そして、概ね、外交官たちの活動はアメリカの国益を実現するために行われた正当なものだ、と考えます。外交や国際政治がどうなっているかを理解するために大いに役立つでしょう。しかし、こうした条件(秘密の情報交換やメモが、すぐに新聞に載るかもしれない)では、外交官や対外政策の立案が非常に難しくなった、とも言えます。

それが現代の国際政治なのだ、とTimothy Garton Ashは考えているでしょう。

guardian.co.uk, Sunday 28 November 2010

WikiLeaks: Open secrets

広く知られた、当然のことであっても、具体的に、誰が、何を、私的な会話として述べていたか、それが分かれば歴史家に非常に重要な情報となります。

SPIEGEL ONLINE 11/28/2010

Foreign Policy Meltdown

Leaked Cables Reveal True US Worldview

guardian.co.uk, Monday 29 November 2010

US embassy cables: Verdict on the leaks about the Middle East

Gary Younge, Seumas Milne, Craig Murray, Richard Norton-Taylor, Juan Cole, Abbas Edalat, Phil Wilayto

FP Monday, November 29, 2010

WikiLeaked: How to handle a walk-in

Posted By Elizabeth Dickinson

NYT November 29, 2010

The Fragile Community

By DAVID BROOKS

創設者、Julian Assangeについて、いくつかの話が載っています。紹介される彼の生い立ちから見ても、権威や権力への反感は、かつてのアナーキズムに近いということです。その情報に関する感覚は、普通のジャーナリストや新聞編集者にも受け入れがたい、と。

その結果、アメリカの国益を侵さず、世界秩序の安定性を脅かさないように、NYTはWikileaks25万件の情報を選別して公開しているのです。そのようなthe World Order filterが正しいのかどうか、論争が起きるでしょう。しかし、インターネット上にも秩序が必要です。

外交も会話によって成立しており、会話の中身は互いの信頼関係によって変わるのです。こうしたWikileaksによる暴露は、情報におけるグレシャムの法則を強めるでしょう。壊れやすい信頼関係に依拠した社会や外交交渉は失われるでしょう。もっとも悪質な情報提供者や裏切り者が大きな利益を得て、生き残るのです。

NYT November 29, 2010

WikiLeaks and the Diplomats

FT November 29 2010

WikiLeaks opens the diplomatic bag

guardian.co.uk, Tuesday 30 November 2010

WikiLeaks: China's break with North Korea is overblown

Chun Lin

WP Tuesday, November 30, 2010;

In seeking 'free speech,' Wikileaks strikes a blow against honest speech

By Anne Applebaum

メドヴェージェフが、バットマンのプーチンに対するロビンだ、などと言われたら、ロシア人たちが驚くだろう・・・て? そうかな? イタリア人が、その指導者であるベルルスコーニのことを、軽薄で、悪党で、無能だ、と知れば怯えるだろうか? ・・・いや、そうでもないだろう。サルコジも、激しやすい、権威主義者だ、と見られて、まあ、何の不思議もない。カルザイは、事実を見ようとしない、とんでもない弱虫だ。・・・その通り。

こうした外交官たちの秘密の情報交換は、読む者にとってある種の楽しみだ。また、アメリカが制裁決議を得るために、外国の代表に対してどのようなロビー活動をしたか、というのも面白い。

ドイツ紙Der Spiegelが、アメリカは世界中でその影響力を維持しようとしている、と憤慨したけれど、私はその逆である方が恐ろしい、とAnne Applebaumは述べています。また、こうした「自由な会話」が暴露されることで、彼らが率直に語り合えなくなる方が問題だ、と。外交官・政治家たちは、単に偽善的な交流を重ねる。

しかも、このことは容易にハッカーたちが入り込む世界では、もはや避けられないだろう。その結果、世界は権威主義的な支配者たちが率直に語り合うだけになるだろう。ロシアも、中国も、イランも、暴露やジャーナリストを恐れない。彼らが支配者を恐れているから。彼らはその家族も抹殺されることを知っている。

創設者のジュリアン・アサンジは、もちろん、次の目標を狙っているはずだ。そうでなければならない。ロシア軍の情報交換、中国政府の外交文書、イランや北朝鮮の核開発情報、・・・

WP Tuesday, November 30, 2010;

Tough times for a superpower

By Eugene Robinson

FP Tuesday, November 30, 2010

No secrets

Posted By Stephen M. Walt

NYT November 30, 2010

From WikiChina

By THOMAS L. FRIEDMAN

FP NOVEMBER 30, 2010

How Disastrous Is WikiLeaks for the State Department?

BY EDWARD P. DJEREJIAN, CHRISTOPHER BRONK

guardian.co.uk, Wednesday 1 December 2010

WikiLeaks is holding US global power to account

Seumas Milne

guardian.co.uk, Thursday 2 December 2010

WikiLeaks: Openness against secrecy has a rich history of struggle

Martin Kettle

これは情報環境の変化だけでなく、政治と歴史の問題だ。ニクソンがNYTと争ったように。それどころか、200年前のジョン・アダムズも外交と情報公開の問題を指摘しました。

もし外交交渉を完全に公開し、秘密を残さないなら、この問題は解消できます。しかし、政府も、外交も、個人も、あるときは公開し、あるときは秘密にすることを選択します。


WSJ NOVEMBER 28, 2010

Trans-Pacific Potential, and Pitfalls

By ERIC EMERSON

日本も参加を検討するthe Trans-Pacific Strategic Economic Partnership (TPP)について。


l         マクロ政策の限界

WP Monday, November 29, 2010;

Economic policy needs common sense, not Fed magic, for long-term growth

By Fareed Zakaria

量的緩和策によっても、なかなか消費や投資は増えません。ここに、マクロ経済政策には限界がある、という共通認識を得ます。危機を回避したけれど、長期的な成長を実現するのは金融政策や財政政策ではない、というのです。政府が債務を増やすことで、長期の成長を取り戻せるはずがありません。

成長はもっと実質的な要因、教育システム、勤労精神、国民の技量、工場・機械の質、企業組織、指導力や規制、などによって決まります。それこそ、オバマが繰り返し主張してきたことです。

 (chinadaily.com.cn) 2010-11-29

Why 4 percent is controversial

By Shi Jiaqi

なぜ経常収支の不均衡をGDP4%に抑えるべきなのか? アメリカは量的緩和策を採用したが、それと関係ないのか? 経常収支の赤字や黒字にはどのような意味があるか? ドイツや日本の黒字は、競争力が強いことを意味します。しかし中国の場合、経常黒字は直接投資を受け入れたことで生じている、と主張します。

WSJ NOVEMBER 29, 2010

How China Can Avoid the Japan Trap

By MICHAEL PETTIS

中国は人民元の増価を嫌いますが、日本の失敗を免れることができます。それは民間需要の落ち込みを政府債務で肩代わりすることや、非効率な公共投資で需要を維持することを続けず、デフレや増価で企業部門が苦しむことも避けるのです。

The Guardian, Tuesday 30 November 2010

Japan's banking crisis led to 20 years of stagnation. Is there a lesson there for us?

Aditya Chakrabortty

イギリス経済は日本から何を学ぶべきか? 銀行危機から回復できないのはなぜか? デフレが続いたこと。貧しい状態から、急速に豊かになったこと。もう買いたいものがないし、投資機会もない。・・・?

NYT December 1, 2010

Too Big to Succeed

By THOMAS M. HOENIG

FT December 2 2010

Wall Street owes its survival to the Fed

By Sebastian Mallaby


FT November 30 2010

India’s reform and growth have lifted all boats

By Jagdish Bhagwati

1990年代の改革が成長をもたらした。それは不平等を拡大している、という批判も起きた。特に、国民会議派の中の社会主義者は、それを理由にして成長率を下げるよう主張している。しかし、Jagdish Bhagwatiは、新しい改革によって、不平等は解消される、と考えます。

差別された集団が貧困から抜け出すには、成長が加速するだけでなく、彼らに対する教育や医療を改善しなければなりません。Jagdish Bhagwati1950年代にインドに望んだそのような改革は、財源を欠いていました。しかし今、成長が人々の希望に革命をもたらした、と指摘します。より高い成長をもたらす政治家が選挙において票を集めます。それは、より一層の自由化や改革を推進する政治圧力となります。さらに多くの分野で、貿易も、労働市場も、民営化も、外国からの直接投資も、自由化されるでしょう。


FT November 30 2010

Carmaking: A drive to Lego land

By John Reed

自動車産業の変化を描いています。それは、ウォルマート化した世界で、レゴのおもちゃのように、共通した部品に依拠して世界中の異なった需要に応えます。ただし、標準化がもたらすリコールの大規模化にも耐えなければなりません。

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The Economist November 20th 2010

The Japan syndrome

Into the unknown: A special report on Japan

Japanese manufacturers: Leaving home

(コメント) 日本の高齢化・衰退に関する特集記事と、製造業の海外移転を伝える記事を読みました。どちらも深刻かつ刺激的な内容です。すでにこの記事が出てから1カ月近く経ちますが、日本の政財界がこれによって奮起した、という話を聞かないのはなぜでしょうか?

日本が、その成長モデルをアジア諸国に伝授したように、キャッチアップ型成長には秘訣がありました。それは貧しい水準からの人口転換であり、さらに、戦後のベビー・ブームが重なった、労働人口の大きな波が生じたのです。また、儒教社会の同質的な企業文化も、人事や給与、官僚主導の産業育成、輸出市場の開拓に追加の優位を与えました。

同じような小国の優位は、アイルランドの特集記事でも指摘されています。そして、同じように貿易摩擦や不均衡、経済の歪みを生じています。

日本はその負の局面に入り、脱出するための社会・政治的革新を模索してきました。女性や若者、そして外国人・移民・外国企業が、もっと活躍できる社会や企業の文化を創り出さねばなりません。規制緩和や市場開放によって生産性を高め、アジア諸国との市場統合も進めなければなりません。少子化も、近隣諸国との領土紛争や教科書問題も、デフレも企業流出も、「日本病」の症例に過ぎません。

人口変動と開放型の国際秩序に依存した成長モデルから、自律的な社会・政治システムの革新によって経済の調整過程を支援できるモデルへ、政府は目標を掲げることです。


The Economist November 20th 2010

The euro-zone crisis: Saving the euro

Charlemagne: Gang can’t shoot straight

Ireland’s economy: Threadbare

Germany, central Europe and Russia: Frau fix-it

Banyan: Freedom from fear

(コメント) まるで発展途上国の輸出加工区EPZsだな、と思いました。中国が香港から始めた直接投資の誘致政策によって成長を加速したように、アイルランドはEUの周辺でIntelなどの世界企業を誘致しました。

アイルランドには、成長モデルをバブル融資と金融危機に変えた責任があります。しかも、政府は銀行救済に保証を与え過ぎて、政府自身の破綻を招きました。それにもかかわらず、ユーロ圏の問題は危機を生じた背景として無視できません。金融危機の悪化には、ドイツの国内政治やアイルランドの小国に特有の政治文化、EUの緩慢な制度改革、などがありました。

最後の二つの記事は、ロシアに代わって、ドイツが中欧における改革を担う、また、自宅軟禁を解かれたアウン・サン・スーチー女史が軍事政権の脅しに屈せず、柔軟な妥協と民主化へ向かう、という展望を示しています。