今週のReview
11/29-12/4
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IPEの想像力 11/29/10
西に銀行危機と財政破綻のパニックが生じ、東には朝鮮戦争再発の危機が醸成しつつあります。将来世代が、世界恐慌Uと世界大戦Vの歴史を学ばないためには、再びアメリカの関与が必要なのでしょうか? その能力がたとえまだあるとしても(・・・ないかもしれませんが)、アメリカでは、大統領選挙に向けた政治的党派争いが強まっています。
ドイツとECBが救済を拒むなら、むしろ中国がIMFと協力して、その外貨準備でアイルランドやスペインを救済するのではないか、という思惑が生じています。
日本は、何もしなくてよいのでしょうか? 日本政府は、経常収支の黒字を減らして、グローバルな不均衡の調整を進める新しい提案をするべきです。アジアの「ブレトン・ウッズU」として批判される現状について、日本が改革を提案してはどうでしょうか。輸出主導型(そして政府介入型)成長モデルを成功させ、広めたのが日本であったこと、また、バブルとその処理の歴史を先駆的に示したのが日本であったことは、次の時代に向けて、アジアや世界に開かれた成長モデルの開拓を託された国だ、と思います。
アメリカと日本が拒むなら、むしろ中国が韓国と協力して、北朝鮮を非核化し、その開発モデルを輸出するのではないか、と思いました。
日本は、何もしないのでしょうか? 日本政府は、核廃絶や地域安全保障の枠組みを求め、それを実現するために、もっと生産的なテーマにアジアの関心を向けるべきです。貿易や投資、企業買収だけでなく、環境や医療をめぐる技術開発やその利益の共有、労働者の移動や送金の円滑化と、地域社会における摩擦解消、なども含めて、国際収支不均衡から地域統合に及ぶ調整メカニズムを合意し、積極的に構築するべきでしょう。そのような共通認識があれば、戦争よりも共通の利益によって、エネルギーや輸送・情報通信から資本市場まで、成長を支えるインフラの共有を提唱できるのです。
ヨーロッパには、アフリカの太陽エネルギーや、アイスランドの地熱エネルギー、アルプスの水力エネルギーを循環させるEUの構想があるように、アジア地域がその地域全体を結ぶ制度を築いて、技術や労働力の移転による大きな繁栄を共有する可能性は、現実に、存在しています。
北朝鮮が核を放棄するでしょうか? ロシアがEUと安全保障や自由貿易圏を共有し、本当に、繁栄を分かち合うでしょうか? 戦争や核兵器の非人間性、愚かさを説くだけでは、確かに、現実は変わらず、理想は実現しません。理想主義と現実主義を統一する機会を、危機の中だからこそ、見いだすことができる政治的勇気と構想力を、日本の指導者たちにも求めます。
金融危機の話を読むたびに、「裏庭で油田を掘り当てた(D.グロス)みたいなものだな」と思います。バブルと不動産への融資失敗は、中東地域の「石油の呪い」と似た、ユーロ圏の辺境地帯における「グローバル金融市場の呪い」です。だから、「オランダ病」を克服する過程の金融版が必要であり、ノルウェーにおける優れた民主主義による富と移行過程の公的管理や、スウェーデンが銀行システムの処理を迅速に進めたケースから、各国がさまざまに学ぶことが重要ではないでしょうか。
イラクやアフガニスタンでの関与政策に疲れ、「核のない世界」という理想を北朝鮮の独裁者に愚弄されたアメリカ政府が、今は国内の失業問題を解決するために全力を傾ける、というのは当然です。では、国際政策協調の合意形成には誰が指導力を示すのか? それは、中国でも、EUでも、ロシアでもなく、各分野で最も優れたガバナンスを示す諸国なのです。
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時代小説ばかり読み過ぎました。古本市場の棚で、そう、現代のミステリーも読みたいな、と思いました。そして、池井戸潤の『果つる底なき』を買って、読み始めたとき、これでしばらくミステリーを読むぞ、と思いました。ゆっくり読みたい秀作です。
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アイルランド危機は何を意味するか? ・・・中国の時代、アジアの時代とは何か? ・・・貿易自由化と農業 ・・・北朝鮮のウラン濃縮工場公開と韓国領砲撃
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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia
l アイルランド危機は何を意味するか?
NYT November 18, 2010
The Debtor of the Western World
By JOHN BANVILLE
1960年代から90年代まで、北アイルランドにおけるプロテスタントと英国軍に対する30年戦争では、爆発物が国境を越えて密輸された。2000年になってから10年間は、ケルトのトラと呼ばれた高成長で生まれた新興中産階級が、ユーロ高・ポンド安を利用して、ショッピングのために海を渡った。
しかし今や、トラは死に、莫大な債務の山に埋葬された。沈黙が大地を覆う。諸聖人の祭日の前夜、祝することなど何もない。黙示録の4騎士(戦い・飢え・病気・死)が、われわれの時代にもやって来た。IMF、欧州委員会、ブラッセル、そして、鉄の宰相アンジェラ・メルケル。
物々交換の時代に戻ったように、ヨットが携帯電話になり、ハーレー・ダヴィッドソンは自転車と交換された。眩惑と息つく暇もないパニックの瞬間。ワイマール共和国の最後の日々は、きっとこんな風に感じたはずだ。突然の苦しみについて、だれを責めるべきか? 銀行家。政治家。市場。われわれ自身。ドイツ人や日本人の戦争屋どもが文明を脅かすというなら、戦争に立ちあがる勇気を示した。しかし今、敵は誰なのか? われわれの財源を奪った者たちが自滅していく。
この国が負う銀行債務は1000億ユーロもあるという。国民は460万人しかいない。2008年9月の危機のとき、アイルランド政府は銀行の破たんを防ぐために4000億ユーロを保証した。それはわれわれの子供に及ぶ債務だと考えたが、今や、その子供の子供、何世代にも及ぶ、国際的な債権者に対する債務である。
「イギリス支配のくびき」に苦しんだアイルランド国民が、今また債務奴隷となる。祭日が来ても、花火や爆竹の音はしない。
Nov. 19 (Bloomberg)
Ireland Crisis Might Give China Break It Seeks
Simon Johnson
救いはアジアにある。無責任な時代が続いた後、社会保障を大幅に削って、増税しても、まだ債務はなくならない。富裕層から庶民へ負担が移され、それでもまだ、権力者や富裕層は救済資金を求めている。アイルランド国民の問題ではなく、ヨーロッパのすべての銀行が問題なのである。ドイツはアイルランドの債務と銀行を吸収するのか? アイルランドがデフォルトになれば、ドイツやフランスの銀行は政府によって救済されるのか?
ユーロ圏が崩壊すれば、ECBにも、ドイツ政府にも、IMFにも債務を支払えない。世界準備通貨を事実上発行できるアメリカなら救済できるだろうが、ワシントンにそんな雰囲気はない。
だからヨーロッパは北京に電話する。そしてその2兆6000億ドルの外貨準備で、ヨーロッパの債務を保証してもらうのだ。これは中国が世界的な責任を果たす良い機会になるだろう。中国銀行の幹部をIMFの上級職に迎えることだ。
guardian.co.uk, Friday 19 November 2010
There is another way for bullied Ireland
Mark Weisbrot
PIIGSが屠殺場に引かれていくとき、本当にこの大虐殺は必要なのか、と問うべきだろう。「すでに不況は3年目であり、2007年から一人当たり所得は20%以上も減少し、失業率が2006年末の4.3%から現在の13.9%へと3倍以上になっている。」
ほかに方法はないのか? いや、あるだろう。アイルランドは小さな国である。その債務が投資家たちの不安で「自己実現的な予言」となって不況と債務を膨張させる過程を止めるべきだ。市場で金利が急上昇したとしても、EUは安定化基金で融資を肩代わりできる。そして、余りにも大きなコストを支払って、効果の疑わしい「内的な切り下げ」(国内経済を引き締めて物価や賃金を下げる)を続けるのではなく、一時的な景気刺激策を採用するのだ。
EUの引締め策を受け入れても、輸出が伸びて景気を回復できなければ、PIIGSは屠殺場に向かわず、EUから逃げ出すだろう。
SPIEGEL ONLINE 11/19/2010
Rescue Team in Dublin
Ireland Admits It Needs Help With Its Banks
By Siobhán Dowling
FT November 19 2010
Ireland: A punt too far
By David Gardner, Tony Barber and Peter Spiegel
メルケルの主張に、サルコジが折れ、トリシェ総裁の批判も抑え込まれて、アイルランドへの厳しい融資条件や債権者へのコスト分担が求められました。
懸念されたような資本市場の逃避が始まり、アイルランドもIMF・ECB・欧州委員会のトロイカ体制による金融管理国家になりました。
FT November 19 2010
European unity under strain
EUの大統領であるHerman Van Rompuyと、財政負担の再大部分を引き受けるドイツのメルケル首相は、危機への団結を訴えました。しかし、救済融資を受けるアイルランドの低税率と企業誘致を批判しています。
FT November 21 2010
How to stop Ireland’s financial contagion
By Wolfgang Münchau
ユーロ圏にはガバナンスがない。欧州理事会は不協和音と無能さを代表している。この「ガバナンス・パラドックス」がユーロ危機の重要な背景だ。銀行システムが危機にあるとき、各国首脳たちはアイルランドの法人税率が低いことで論争している。
危機の伝染を防ぐには、アイルランドに融資しているドイツやイギリスの銀行が信用不安を生じた場合、アイルランドの債券が市場で拒否される場合、その対処を考えなければならない。ESFSはそのために創設されたはずだが、アイルランドからポルトガル、スペインと危機が広がれば不十分になる。また、その融資条件をめぐってアイルランド政府が交渉を長引かせ、ドイツやフランスが法人税の引き上げを求めるのは間違いだった。
アイルランドが支払不能から抜け出すには、成長を回復しなければならない。もし財政引き締めや構造調整を求めるなら、それに見合った金融緩和が必要だ。あるいは、このような時期に、輸出の増加が期待できるか? それはユーロ圏内の大幅な不均衡という問題に戻ってくる。
The Observer, Sunday 21 November 2010
Don't blame the euro for the ills besetting Ireland's economy
Will Hutton
アイルランドの財務大臣、Brian Lenihanは、救済融資をめぐるブラッセルでの閣僚会合に75分も遅刻した。確かに交通渋滞など、その理由はあっただろうが、法人税率を半分にしてイギリスなどから投資と税収を奪ってきた上に、それらの国から巨額の融資を受ける話し合いに遅れるというのは、あまりにも愚かだ。
アイルランドの公共部門では賃金が高騰していたし、銀行は不動産価格が上昇し続けると考えてGDPの4倍も融資していた。政治エリートたちはふんだんに賄賂を得ていたのだ。だから、アイルランドの銀行や経済が破たんしても不思議ではない。ところが、アイルランドの世論は、問題がEUとユーロにあった、という点で一致している。つまり、もしアイルランドが、ユーロに参加していないイギリスにように、独自の金利を高くすることができたら、不動産バブルや好況の過熱は抑えられただろう。
さらに彼らは提唱する。ベルリンやブラッセル、パリに屈服するより、むしろアイルランドはユーロを離脱し、イギリスの独自通貨を採用しよう。通貨を切り下げて、必要なだけ通貨を印刷する。経済は回復し、完璧な経済主権を取り戻す。予算削減や救済融資など、一発で解決だ。
こうした勝手気ままな、近隣窮乏化政策は、自由市場や政治主権の名のもとに、絶望的なほど安易に唱えられている。ダブリンは、エディンバラ、レイキャビク、ドバイに続いて、規制のない世界金融市場を活用し、国際金融センターになった。その実験は爆発に終わった。変動レート制がアイスランドを救うことは無かった。ユーロはアイルランドの問題でも大失敗でもなく、解決の一部である。
もちろん、ユーロにも改革が必要だ。ヨーロッパの通貨システムは金本位制が崩壊してからずっと問題であった。すなわち、ヨーロッパ諸国はドイツ経済とそのダイナミックな輸出部門とどのようにして共存できるか、ということだ。変動レート制では、1970年代から80年代半ばまで、ドイツ・マルクがヨーロッパの主要通貨になった。どの国もドイツの経済政策に従うか、それに逆らって市場の攻撃に遭った。あるいは、ヨーロッパの固定制と変動制の混ざったシステムでも、ドイツが経済の太陽であり、他の国はその周りの軌道を動いていた。
あるいは、われわれが手にしたヨーロッパ単一通貨においては、多くの制約を受けるが、ヨーロッパ全体で通貨的安定性は保たれた。ひとびとは合理的な論争を無視している。来年、ユーロ圏はイギリスよりも成長するだろうが、だれがユーロ支持者だ、だれがEU支持派だと、魔女狩りをして喜んでいる。
IMFのDominique Strauss-Kahn専務理事は、世界金融危機後の銀行や金融秩序の整理が不十分なままであり、改革を怠れば第二の金融危機が発生する、と述べた。しかも人々は金融救済を嫌っており、2度目の危機では救済を拒むだろう。それは民主主義の危機となる。多くの銀行家は改革を軽視しており、そのような要求にはオフショア・センターに脱出すると脅迫している。
Dominique Strauss-Kahnは、将来の世界金融システムを、為替レートが銀行業の規制と結びついている、と考える。ユーロは、ドル、円、人民元と一緒に世界通貨を構成するが、国際収支の過度の赤字・黒字は事前に合意された秩序に従って発生しない。銀行はより多くの資本を準備し、より透明なビジネスを行う。
こうした健全な世界を阻むような、各国の利己的主張が強ければ、次の金融危機は避けられない。
(参照: “Interview with Dominique Strauss-Kahn” in Stern Magazine on November 18, 2010 なお、IMFのHPに転載されています。)
guardian.co.uk, Sunday 21 November 2010
So Ireland's back to exporting its best known natural resource – emigrants
Peter Geoghegan
4万人のアイルランド人が、昨年、国を離れた。失業率は13%を超えており、さらに10万人が来年の末までに国を去るだろう。
数10億ユーロを失ったことより、数百万人を失うことの方が重要だ。アイルランドの移民流出は昔話ではない。
The Observer, Sunday 21 November 2010
Ireland has been betrayed by its leaders
WSJ NOVEMBER 21, 2010
Ireland Applies for Bailout
By CHARLES FORELLE and MARCUS WALKER
guardian.co.uk, Monday 22 November 2010
Ireland shouldn't get a penny until it gives up its tax piracy
Polly Toynbee
George Osborne蔵相はアイルランド危機から何を学ぶのか? 「アイルランドは、経済政策が長期的に何を実現可能か、についての素晴らしい成功例である。・・・資本は最も魅力的なところに移動するのであり、アイルランドの法人税はわずか12.5%である。イギリスは世界最高の部類に入る。」と、2006年に書いた。
その彼が、不公平な競争で利益を得てきたアイルランドの法人税に言及することなく、70億ポンドを支援する。アイルランドは、合法的に、Google, Facebook, Microsoft Corp など、多くの企業がその子会社を通じて低率の法人税を利用できるようにしている。たとえば、Googleは、アメリカ以外の莫大な利潤の92%をアイルランドで申告し、わずかに1800万ポンドの税金を支払った。
IMFは政府支出の削減を求めるが、その低税率や無税で利潤を得ている企業は放置されている。彼らのイデオロギーは何も変わらない。海賊行為を止めて、市民の行動を学ぶよう求めることなしに、支援するべきではない。
guardian.co.uk, Monday 22 November 2010
Ireland bailout: who really benefits?
Phillip Inman
救済融資の利益とは何か? デフォルトを避ける。債権者である銀行、債務を保証している各国政府を助ける。危機の伝染を防ぐ。他のケースを市場の関心から隠す。銀行の救済が納税者の負担になることを民間銀行の分担に向けて是正する。
この点で、1990年代の日本が言及されています。・・・日本政府は巨大なバブルが破裂しても、債務による倒産を認めなかった。そのままで社会福祉と融資を続けた。日本の裁判所は西側債権者からの破産申請を受けなかった。こうした問題を隠し続けるアプローチは、成長を損ない、企業と銀行の活力を奪ったが、他方で、雇用と社会的結束を維持した、と指摘します。
EUも同じような目標をもつが、バラバラな国家の集まりでは、日本のアプローチを実行できない。
guardian.co.uk, Monday 22 November 2010
Ireland should 'do an Argentina'
Dean Baker
銀行を救済するために国民が緊縮生活を強いられるのか? 異なる選択肢を取るべきだ。IMFもECBも拒んで、ユーロを離脱し、アルゼンチンの道を進む。
14.1%の失業率がある国に、政府支出の削減や増税を条件として融資することが正しいのか? それは間違っている。ECBはその権限として、アイルランドに低利で融資できる。その場合、政府の財政赤字はもっと少なくて済む。
今回の経済崩壊に先立って、アイルランドは健全財政の手本を示していた。その問題は政府ではなく、住宅バブルに融資し続けた銀行部門にある。そして、それを監督できなかったECBやIMFにも責任がある。
ECBやIMFは政治的に独立し、政治的な問題に関わらないと信じられている。しかし、この決定によってアイルランドの労働者たちは、スペイン、ポルトガル、ラトビアなどと同様、銀行家たちの無思慮の結果に対して支払わされる。これこそ政治的な決定だ。その条件はアイルランドの民主的な政府が受け入れがたいものだった。
他方、たとえアイルランドのような小国でも選択肢があることに注意せよ。すなわち、ユーロを離脱し、債務不履行を選択する。最善の選択肢とは言えないが、二桁の失業率を続けるより良い。IMFはこれを破滅だと言うが、2001年にアルゼンチンにもそう言った。その直後に経済は悪化したが、2002年後半には成長を回復した。
銀行家のルールに従うなら、われわれは皆、敗北する。
SPIEGEL ONLINE 11/22/2010
Massive Bailout
EU Agrees on Multi-Billion Rescue Package for Ireland
SPIEGEL ONLINE 11/22/2010
Europe's Neverending Crisis
Can the Euro Still Be Saved?
最後に、恒常的な危機処理メカニズム案を紹介しています。ユーロ圏の財務大臣が監督します。そして、債務国政府と債権者との利益を偏らないようにバランスさせる、と主張します。このシステムが機能すれば、個々の金融・財政危機が処理されても、システムは安定しているはずだ、と。
また、ルクセンブルグ首相、Jean-Claude Junckerの提案が言及されています。それはEUがユーロ債を発行して金融・財政危機の国を救済する資金を得ること、です。その場合、このユーロ債は特定の国ではなく、ユーロ圏全体が返済を保証します。
南部ユーロ圏は喜ぶだろうが、ドイツ=オーストリアは反対だ。
NYT November 22, 2010
Ireland’s Paradise Lost
By ROSS DOUTHAT
資本主義のユートピアは滅び、世俗主義のユートピアも滅んだ。しかし、最も強烈な教訓は、ヨーロッパ統合のユートピアを信じた者に与えられた。アイルランドの銀行危機がユーロ圏に及ぼした波紋は、EU拡大を急ぎ過ぎたし、これほど多様な国々を単一通貨にするべきではなかった、という疑念を強めた。また、アイルランド政府がブラッセルから救済金をもらう姿は、各地のナショナリストを経済統合から離反させた。
世界資本主義の魔法が解けて、夢のように何でも得られると信じたアイルランド人は、その支払を求められる。
FT November 22 2010
Irish rescue is expensive sticking plaster
By Gerald Holtham
救済融資の資金を供給しても、モラル・ハザードは避けられず、根本問題は解決されないままで、ヨーロッパ諸国の納税者を苦しめる。
アイルランドは財政破たんではなく、不動産バブルに融資し続けた銀行の失敗だ。しかし、銀行の破たん処理がGDPの何倍にも及ぶために財政破綻を生じた「アイスランド・ジレンマ」である。このまま放置すれば危機はドイツやイギリスの銀行にも波及し、ヨーロッパのリーマン・ブラザーズになる。
解決のためには、ヨーロッパ規模の金融監督が必要であり、同時に、システム危機に対するECBの融資が保証されることだ。支払不能の銀行を破たん処理し、それ以外の銀行はEUの金融危機処理メカニズムに従う。金融機関に逃げ道は無い。
救済融資と債務処理に必要な条件は、銀行への厳格な資産テストであり、同時に、EUの政治(ガバナンス)テストである。健全な銀行が多い国や金融監督の甘かった国が、救済基金にどのように出資するのか。各国政府は負担と補償を奪い合うだろう。合理的分析と政治協力を、市場がパニックに向かう時間を与えず、準備されねばならない。
FT November 22 2010
An Irish bail-out and a British nightmare
By Philip Stephens
FT November 22 2010
IMF faces questions over Irish bail-out
By Alan Beattie in Washington
FT November 22 2010
How Germany could kill the euro
By Gideon Rachman
イラク戦争についてDavid Petraeus将軍に向けられたのと同じ質問を、ヨーロッパの指導者たちは金融危機について受けている。「どのように終わらせるのか?」
ギリシャ危機からの波及は回避できず、アイルランド危機は抑えられず、ポルトガル、スペインに広がりつつある。この問題の答えが難しいのは、三つの次元でチェス・ゲームが進むからだ。金融(危機、パニック)、経済(不況、失業)、政治(政権崩壊、国際対立)のレベル。
Gideon Rachmanの予測によれば、危機はユーロ解体にまで至るだろう。ドイツがそれを決める。ドイツの政策が頑迷であると非難する者もいる。しかし、ドイツ人には正当な不満がある。ドイツは賃金抑制と政府支出削減の苦しい期間を耐えてきた。ところが、ギリシャの放漫財政と年金支給、アイルランドの極端に低い法人税率、などを含めて、自分たちの税金で救済するからだ。
ドイツ国民は、ユーロがドイツ・マルクと同じ価値を持ち、国家を越えた救済融資を禁じているから、採用したのである。それはドイツの憲法裁判所によって政府の決定を覆すリスクを生じている。ギリシャ救済が遅いと非難されたが、政府はそれが条約を違反する行為だと懸念した。アイルランド危機の始まりも、将来の危機救済に関して、裁判所を意識したメルケル首相の発言だった。
こうしたドイツの行動は救済融資を受ける国で反発を強めた。ギリシャでは暴動が起き、ある大臣は1940年代のナチス・ドイツによるギリシャ占領に言及した。アイルランドでも主権喪失に不満が強まった。ナショナリストや反資本主義の声は高まってくる。もしユーロ離脱が起きれば、明確な離脱のルールは無く、ポルトガルやスペインへの金融不安が高まるし、彼らは隣国の切下げによって市場を奪われる。銀行に取り付けが起きるだろう。
ドイツのヨーロッパ統合に対する関与は半世紀に及ぶ外交政策の柱だった。それを否定することは容易でない。しかし、ユーロ圏の仲間ともはや合意できないと確信すれば、ドイツも決断する。
Gideon Rachmanは、二つの最終局面を予想する。すなわち、危機の連続で救済融資は返済されないとドイツ国民が不安になること。または、ドイツの憲法裁判所を納得させるような厳しい条約改正に他の諸国が従わないこと。
FT November 22 2010
Ireland is paying the price of three follies
By Garret FitzGerald (アイルランド元首相)
アイルランドの指導者の一人が示す、明確な、自信に満ちた説明です。すなわち、救済融資を受けるにいたった現状を、Garret FitzGeraldは、三つの政策失敗と二つの外的要因で説明します。
第一の失敗は、アイルランド政府がユーロ圏に参加し、完全雇用を達成後も、数年にわたって政府支出の伸びを倍増させたことです。それは物価や賃金の上昇率を他のユーロ加盟諸国よりも2倍高くしました。競争力を奪って、輸出に支えられた「ケルトの虎」成長モデルを終わらせたのです。
第二の失敗は、それに続く住宅バブルです。しかも、政府はこれを抑制するよりも増幅しました。バブルは国内の悪徳銀行、Anglo Irishなどと、国際銀行によって融資競争をもたらしました。住宅建設の増大率はイギリスの6倍に達したのです。
最後に、バブルの最終局面で、政府は税収の増価を基に、所得税を極端に下げました。歳入の増加は不動産取引による税収でした。その結果、救済融資のコストを考慮しなくても、予算赤字は160億ユーロ、GDPの11.5%に達するはずでした。
ただし、赤字は迅速に修正されていました。支出削減と増税によって、4年間でGDPの4%までに赤字を抑えるとすべての政党が合意していた。また、最初の危機後に行ったコスト削減や賃金引き下げで、アイルランドの競争力は回復し、南欧の財政危機諸国と異なり、輸出を回復して貿易黒字に向かっていた。
そうであれば、救済融資は必要なかったはずだ。しかし、ここに二つの外的要因が加わった。一つは、ドイツのメルケル首相が、悪い時期に、不用意な発言をしたことだ。将来の金融危機のコストを債券保有者と納税者が分担するべきだ、という発言だった。2013年以前に発行された債券にも負担が及ぶのか、その点で市場に不安が生じた。
同じ時期に、ECBのジャン・クロード・トリシェ総裁が金融支援について警告を発した。それは、ECBが金融支援の5分の1を、ユーロ圏の全人口の1%に満たない小国アイルランドに与えることへの他国からの批判を意識したものだった。この警告はポルトガルやスペインへの不安に波及し、ECBを恐怖に陥らせた。ECBはアイルランド政府に、IMFも加わった形で、EUの安定化基金から支援を受けるよう強く要請した。
政府は支援が必要だと考えなかった。しかし、議論の余地は無いと有権者を説得した。それは内外の信用を失ったのだ。
幸い、野党は同じ目標を合意していたし、国民の多数が支持しており、財政とガバナンスの改革を実行する能力がある。この危機と不況を乗り越えて、全く異なる、有能なガバナンスを得たアイルランドが登場する。
WP Monday, November 22, 2010; 6:55 PM
Germany isn't blameless in Europe's bailout mess
「救済融資は短期的に必要である。過剰な債務を負った諸国が財政再建することも必要だ。しかし、それには成長を回復することで、ヨーロッパの周辺諸国がユーロ圏にとどまることを彼らの長期的な利益と見なすような、真剣なプランがなければならない。」
FT November 23 2010
Ireland refutes the German perspective
By Martin Wolf
アイルランド危機はドイツの間違いを鮮明に示した。「もちろん、多様な経済が通貨同盟を結成することはリスクのある冒険である。しかし、その機能について間違った考えをもつことで、それが破滅に至るのだ。」
ドイツは、ユーロ圏の問題とは放漫財政であり、硬直した経済だと考えている。だから、その解決策は財政規律、経済の構造改革、債務削減、となる。しかし、アイルランドに財政赤字はなかったし、驚くほど弾力的な経済であった。さらに、債務の再編を議論したことが危機を生じたのだ。
アイルランドの危機は民間部門の不動産バブルと過剰融資であった。民間部門の金融破たんを安定化するためにアイルランドが財政黒字を出しておくことは、役に立たない。また、ドイツが望むように条約を改正しても、民間部門の破綻に関係ない。
債務削減や財政緊縮の圧力をかけて、アイルランドがますます競争力を強め、輸出によって黒字を増やすことが、ユーロ圏の田の諸国や現在の世界景気に対して好ましいとは思えません。Paul de Grauweは、政府の債務を(市場を介して)組み替える提案を、投機を煽る、として強く批判しました。むしろ、債務調整のための基金を大規模なヨーロッパ基金を支持します。
ドイツの考え方に従う政策は、景気変動を強めるだけで、ユーロ圏の規模を考えれば輸出がそれを緩和することも期待してはならないし、今の世界不況に対する間違った対応です。
WSJ NOVEMBER 23, 2010
Brussels Takes Out the Bazooka
Nov. 23 (Bloomberg)
Bust Is Better Than a Bailout for Irish Patient
Matthew Lynn
SPIEGEL ONLINE 11/23/2010
Merkel's Dilemma
Chancellor Faces Tough Sell on Irish Bailout
By Severin Weiland
guardian.co.uk, Wednesday 24 November 2010
Calling Germany, calling Germany: you alone can keep this eurozone show on the road
Timothy Garton Ash
ドイツの歴史的な決断まで、あと数週間は残されている。
ユーロの解体は考えられない、と多くのドイツ人が言う。そうであれば、ユーロ圏は財政統合に進むしかない。ドイツの政治家たちは、半世紀前、ヨーロッパ的なドイツを実現するのであって、ドイツ的なヨーロッパではない、と繰り返した。しかし通貨統合は、事実上、ドイツ的なヨーロッパの統一をもたらした。それは多くの点で良いヨーロッパに近付いた。
しかし、すべてのヨーロッパ諸国がドイツの成長モデルや輸出を実現できない以上、ドイツは妥協しなければならない。たとえば、ドイツも30%は他のヨーロッパに近付き、ヨーロッパは70%がドイツ的になる。この妥協をドイツが指導する。
歴史は一度しかチャンスをくれない。
SPIEGEL ONLINE 11/24/2010
Irish Welcome Foreign Helpers
Dubliners Angry at Government Rather than IMF
By Carsten Volkery in Dublin, Ireland
FT November 24 2010
EU must act fast to save next Irish generation
By Mohamed El-Erian
FT November 24 2010
Dublin acts to save debt-laden economy
By John Murray Brown
FT November 24 2010
Ireland’s plan will drive it out of the crisis
By Brian Lenihan (アイルランド財務大臣)
アイルランドは回復しつつある。しかし、債券市場の不安を抑えるために、外からの金融支援が必要だった。アイルランドの評価はこれによっても傷つかないだろう。アイルランドは世界でも有数の高い生産性と調整への弾力性を持っている。EUの支援とロードマップに感謝する。
NYT November 24, 2010
Greece, Ireland, and Then?
ギリシャ救済を実現した安定化基金は根本的な問題を解決していなかった。債務が大き過ぎることだ。経済成長が債務を減らすためには必要だが、融資条件は景気を悪化させる。
債務の再編は債権者である銀行の資産を悪化させ、投資家を政府債務からも逃避させる。しかし、こうしたリスクを一斉に処理する方法がある。債務を株式と交換することだ。また、IMFとEUの救済基金は銀行に資本注入するべきだ。
The Guardian, Thursday 25 November 2010
Irish austerity plan: The last gamble
guardian.co.uk, Thursday 18 November 2010
For 60 years, Nato kept the peace in Europe. What now?
Martin Kettle
FT November 18 2010
New model army
WP Tuesday, November 23, 2010;
A NATO for the 21st century
By Anne Applebaum
アフガニスタンの戦場を訪れたことがある。さまざまな国の兵士たちが任務についていた。彼らは2014年に作戦が終われば帰国するが、西側の軍事同盟は存在することを証明した。
ヨーロッパにおける軍事演習は1993年を最後に行われていない。それはロシアを不安にするから。NATOの同盟の強さは、その強さ、信頼、統合のイメージにある。将来のいつの時点かに、ロシアもNATOに参加し、中露国境で防衛の任務に就くかもしれない。
NATO拡大は、冷戦後の世界で最も成功した外交の一つだ。旧敵国を安全保障の傘の下に加えることで、最小限のコストにより、大陸の広大な面積が政治・経済・イデオロギーの「西側化」に従った。
WP Thursday, November 25, 2010; 2:44 PM
For NATO alliance, progress in Lisbon
SPIEGEL ONLINE 11/25/2010
'From Lisbon to Vladivostok'
Putin Envisions a Russia-EU Free Trade Zone
ロシアがEUとの自由貿易圏を提案しました。ヴィザも税関も要らない、自由な大陸市場を開く。
NYT November 18, 2010
Axis of Depression
By PAUL KRUGMAN
中国政府、ドイツ政府、共和党議会が共有する特徴とは何か? 雇用を守ろうとする連銀の政策に反対することだ。彼らは「デフレ悪の枢軸」the axis of depressionだ。
中国とドイツはアメリカの競争力が低い状態を望んでいる。共和党員は、ホワイトハウスに民主党の大統領がいる限り、経済状態が悪化することを望んでいる。
l 中国の時代、アジアの時代とは何か?
FT November 18 2010
An assertive China stirs an anxious conversation
By Philip Stephens
日本を訪れて政治家や官僚と話し合うと、いつも中国が話題になり、その後アメリカにも話が向かうけれど、やはり中国の脅威が問題になる。アメリカはなぜ無関心か、と。
19世紀のヨーロッパのように、アジアは各地に国境紛争を抱えている。アメリカは相対的に地位を低下させているが、それでもアジア諸国は関係を強化しようとする。中国を封じ込めることは不可能だが、それでもその影響を緩和するバランサーを求めている。
FT November 18 2010
The uneven impact of increasing prices
WSJ NOVEMBER 18, 2010
In China's Orbit
By NIALL FERGUSON
「われわれの時代が来た」と、中国人たちは自信を持っている。上海は世界最大の都市であり、ムンバイがこれに続く。アメリカの諸都市は及ばない。・・・西から東への支配権の移行について、NIALL FERGUSONは歴史を整理します。
アメリカと中国の一人当たりGDPの水準を比較すれば、1820年に2倍、1870年に5倍、1913年には10倍であった。1968年、購買力平価で見て、平均的なアメリカ人は平均的な中国人の33倍豊かであった。もし現在の為替レートで見れば、70倍の差があっただろう。
なぜ西側が世界を約500年間も支配してきたのか? 6つの点で、西側はその他の世界と違う適応力があった。1.競争、2.科学革命、3.法の支配と代表制政治、4.近代的な医学、5.消費社会、6.勤労倫理、である。
1867年の日本で起きた明治維新後の改革は、アジアで初めて、それらを導入する試みが成功した例であった。1950年代から、アジア諸国に日本の例が広まった。しかし、中国こそは、最大にして最速の、工業化革命を実現してきた。
アメリカ連銀の「量的緩和策」や、それに関わって「通貨戦争」が騒がれるが、その実態は米中対立ではない。人民元とドルが固定されている限り、「チャイメリカ」とその他の世界が対立している。チャイメリカに対して、市場を奪われ、為替レートを増価させられ、金融市場が混乱している諸国が苦しんでいる。
しかし、米中G2の同盟関係は衝突をはらむ。危機後の生産水準の回復は、危機前に比べて中国でプラス20%だが、アメリカではマイナス2%だ。アメリカ議会は人民元切り上げを求めて制裁を叫ぶ。サマーズの見た「金融的相互確証破壊」は続いているが、中国はドル依存を離脱する準備に入った。
中国の戦略は、4つの「拡大」だ。消費拡大によって他国に市場を提供して関係を強化し、投資拡大によって資源やエネルギーを購入し、さらに、ドルからの資産分散で金融力を拡大し、空母建造などによる軍備の近代化も進める。最後に、技術革新を拡大する。すでにアジア諸国は西側を越える特許申請件数を示している。
中国を封じ込めることはできない。これはソ連との冷戦と違う。500年にわたる西側支配が終わるのだ。経済的にも、政治的にも、移行は本物だ。
FT November 22 2010
Potholes on China’s road to global dominance
By Geoff Dyer and David Pilling
中国の台頭を必然と見なすのは間違いだ。その過程には多くの障害がある。資産バブル、エネルギー供給、環境破壊、貧しいままで進む高齢化、成長にともなう格差の拡大と共産党の一党支配体制。将来においても、政治システムは最大の障害だろう。
FT November 24 2010
The road ahead for Asia need not run west
By David Pilling
「アジア諸国は豊かになるにつれて、必ず、西側のようになるのか? 言い換えれば、繁栄し、『モダン』になるには、成功した西側諸国の特徴を取り入れるしかないのか?」
現在、中国で最もよく議論されるテーマだ、と言います。特に、Chalmers Johnson、Patrick Smithの二人です。Chalmers Johnsonは、日本の成長を通産省と結び付け、「開発国家」と呼びました。アメリカのような自由市場を採用せず、日本は官僚が資源配分を支持し、産業を育成した。ソ連や中国の特徴だ。Patrick Smithは、中国が経済的な理由だけでは説明できない、と考えます。日本、中国、インドのような、アジアの近代化は、物質面で近代化の特徴(高層ビル、鉄道、情報網、議会、司法、投票)を示すけれど、新しい方法で近代化します。
それは、オリエンタリズムではなく、現実をあるがままに理解しようとすることです。「1億2500万人が自由に投票して、50年間も、同一の政党が選択され続ける、などということがあり得るか?」
YaleGlobal , 25 November 2010
Can China Afford to Confront the World? – Part I
Jonathan Fenby
SPIEGEL ONLINE 11/19/2010
Scrambling for Raw Materials
EU Plans Measures to Tackle Resource Crunch
By Axel Bojanowski
WP Saturday, November 20, 2010; 6:33 PM
Kicking the Fed
guardian.co.uk, Sunday 21 November 2010
Currency war: the stakes for Africa
Sanou Mbaye
FT November 21 2010
Time to end the myth of currency wars
By Jim O’Neill
「通貨戦争」という誇張された表現をやめるべきだ、と事実を示しています。人民元は増価してきたし、貿易収支や経常収支の不均衡はGDP比でピークの半分に減り、転換しつつあります。外貨準備が膨張したことも、一部は資本流入、一部はアジア通貨危機のような資本移動の逆転に備える事情があるでしょう。
国によっては、正当な理由があれば、大幅な増価や資本流入に市場介入や規制で対抗しています。アメリカの量的緩和策や、中国の数百万人を貧困から抜け出すのに貢献した成長モデルは、その過程で不均衡を生じつつも、変動為替レート制によって維持され、次第に調整を促されてきた、と考えます。
NYT November 20, 2010
Russia’s Dictatorship of Law
FT November 21 2010
Yakuza crackdown signals change
FT November 21 2010
New pressure can oust Burma’s generals
By Amartya Sen
ロシアの政治的弾圧も、日本のヤクザも、ビルマの軍事独裁政権も、終わるときが来るでしょう。それを目指す人々の運動が、さまざまな支持を広げて、国際的にも認められる中で、暴力や不正義の執行者が終わりを知るからです。Amartya Senの明晰な主張は、それを教えています。
guardian.co.uk, Sunday 21 November 2010
If we falter, we will lose the wild tiger
Robert Zoellick
l 貿易自由化と農業
NYT November 21, 2010
Do Farm Subsidies Protect National Security?
農業と言って一つの分野だと考えるのは間違いだ、とわかります。アメリカの農業補助金は、大部分が、わずか5つの農産物に与えられます。小麦、綿花、トウモロコシ、大豆、コメ、です。他方、フルーツや野菜、家禽、養豚などは補助金なしに生産できます。
農業は、アメリカ最大の福祉活動(農民の雇用や生活水準を維持する)であり、防衛活動(食糧自給率を維持する)、と主張されます。
補助金の支給は極端に偏っています。およそ3分の2が上位10%の農家に与えられます。農産物価格は不安定であるが、その規制を緩和した1996年以降、むしろ安定化した、と指摘されています。
他方、価格を維持する仕組みは過剰生産をもたらします。価格安定化のためには備蓄と生産管理が必要です。あるいは、補助金は農業部門のロビー活動によるもので、むしろ自由な輸出拡大の方が有益だ、と考えます。
WSJ NOVEMBER 22, 2010
Japan at a Trade Crossroads
By CLAYTON YEUTTER AND WARREN MARUYAMA
自由貿易に参加することは、日本が先進的な工業国として生きるために不可欠です。農業を保護し続ければ、中国や韓国のような工業化を進める国との競争にも負けるでしょう。TPPに参加することで、日本は経済を開放し、農業部門を改革し、貿易障壁を取り除き、直接投資を増やし、規制緩和するのです。
自由化は、国内の障壁を取り除き、競争と成長を高める手段として重要です。そのためには、政治的な指導力が欠かせません。カナダのマルルーニ、メキシコのサリナス、中国の朱鎔基、はそうしたビジョンを持った指導者であり、困難な決断を恐れませんでした。
日本政府がアジアのFTA熱に乗り遅れることを心配して、防戦的な意味でTPPに参加することは間違いです。ドーハ・ラウンドが失敗したように、それではセーフガードや高率の保護関税、例外品目を増やすばかりです。
単位伝統的な輸出品である自動車や電機製品にとってアジア市場が重要であると言うだけでなく、TPPは直接投資を増やし、国内消費を刺激します。国内の市場障壁を除去し、革新を促し、ハイテク分野の新規投資や企業設立を刺激し、新分野の財やサービスを拡大し、雇用創出と成長の力を高めるのです。
自由化には勝者と敗者がありますが、移行メカニズムがあるので、そうした分野では段階的に自由化されます。また、農家への所得補償や調整支援を禁止することはありません。
WSJ NOVEMBER 26, 2010
South Korea's Prosperity Defense
北朝鮮との軍事衝突を懸念される韓国について、貿易自由化や法人税の引き下げ、国際主義が強調されています。
l 北朝鮮のウラン濃縮工場公開と韓国領砲撃
WP Monday, November 22, 2010;
Review U.S. policy toward North Korea
By Robert Carlin and John W. Lewis
北朝鮮のウラン濃縮工場を示されたアメリカの専門家たちが、その能力を伝え、アメリカが北朝鮮の体制崩壊を期待するのは現実的でない、と指摘しています。
・・・果てしない交渉を続けても、北朝鮮はソ連崩壊後も20年以上を生き延びた。中国との関係を深めることにも成功し、権力の移行過程を安定的に維持するよう、中国政府は配慮するだろう。
北朝鮮はアメリカにとって、全く説得不可能な、交渉できない独裁体制に見える。しかし、中国や北ベトナムもある時期まではそうだった。外交の基本にもどって、独自の利益を主張する主権国家として、北朝鮮を認めることだ。
LAT November 23, 2010
Nuclear blinders
By John R. Bolton
北朝鮮が約束を守らず、核施設を増強していたことは、何も驚くことではない。これは彼らの15年に及ぶ核武装計画である。これで、1994年のクリントン政権が結んだ合意は完全に破られた。
われわれは失敗を繰り返してはならない。2002年半ばにアメリカの情報部が核処理施設を見つけたとき、ブッシュ政権は対決姿勢を決めた。しかし、北は6カ国協議を使って時間を稼ぎ、核兵器の開発に成功したのだ。
アメリカは中国と協力して、朝鮮半島の再統一を実現するしかない。
guardian.co.uk, Tuesday 23 November 2010
The keys to Pyongyang
Simon Tisdall
オバマ大統領は、北朝鮮との対話にだけは消極的だった。今は、「戦略的に待つ」姿勢を利用されて、北が軍事力を行使している。オバマは次に、制裁も効果がない、と知るだろう。
アメリカ政府は中国と協力して北を説得しようとしている。しかし、中国はその影響力に限界がある、と主張する。中国の利益とは、安定性であり、アジア市場の拡大が維持できることだ。冷静な姿勢で、6カ国の交渉を主張する。韓国も、日本も、ロシアも、役に立たない。
しかし、北朝鮮の指導者にはほしいものがある。すなわち、1.国家としての正当性を認めて、敬意を払うこと。2.平和条約を結んで朝鮮戦争を終わらせること。3.制裁を止めて外交的な孤立を終わらせること。4.食糧援助、電力、金融、投資、貿易。5.若い息子に権力を継承させること。
その見返りに北朝鮮が何をわれわれに与えられると言うのか? それは、その軍事的威嚇外交の終わり。一国軍拡競争の終わり。国際関係の正常化。そして、もしかしたら、東ドイツ型の市場開放と中国企業と韓国企業の進出である。
それは、「間違った行いに褒美を与えることになる」とアメリカ政府は批判するだろう。しかし、現実にはしばしば起きることだ。不安定な核兵器保有者と生きるほうが問題だ。北朝鮮の問題の核心とは、イデオロギーではないし、信念や、民族、核拡散でもない。それは金と力をめぐる家族の争いだ。
WP Tuesday, November 23, 2010
North Korea's latest horror show
FT November 23 2010
Kim Jong-il plays his aces
By David Pilling
金正日は病気で、孤独で、その生涯で最も危険な事業に関わっている。まだ27歳の、経験のない息子に、権力を継承させることだ。彼の手にするカードは少ないが、その中でも最強の2枚を使った。
一つは、アメリカの核専門家を招いて、驚くほど近代的なウラン濃縮工場を世界に公開したことだ。これを知らなかったのは、アメリカ情報部の失敗であり、「悪夢」だ。そして、もう一つは、韓国の小さな島を砲撃して、民間人を含む犠牲者を出したことだ。これは哨戒艇の撃沈と違って、北の攻撃であることは明白だ。
北朝鮮がこうした行動に出た理由は、「ブラック・ボックス」となった国家であるから、十分に説明できない。軍部は金正日と若い後継者への連帯を示すことに加えて、大きな賭けに出て、大きな勝利を得ることが目的ではないか。さらに、ワシントンを交渉の場に引き出すことだろう。しかし、支援を与える約束だけの交渉に急いで参加したい国は無い。
韓国のイミュンバク大統領が、これ以上の攻撃に対しては反撃すると決断すれば、事態はエスカレートする。しかし北朝鮮は、ミサイル、百万人の兵士、ケソン工業団地に残る多数の人質を利用できる。また、韓国は中国の助けを期待できない。
西側には有力な手がない。
FT November 23 2010
America and China’s first big test
By Zbigniew Brzezinski
北朝鮮の行動は精神錯乱の領域に入ったかもしれない。それは体制内部の混乱が生じているからだろう。権力の中枢で協力が失われるとすれば、一層深刻な事態である。
問題は、世界がこれにどう対処するかである。ここにもう一つの不確実性が加わる。間接的に巻き込まれ、また、直接に関与している、異なる歴史観を持った二つの大国がここで衝突するからだ。すなわち、アメリカと中国である。
中国が事態を静観し、十分な対応を取らないことで、北朝鮮に一層の挑発を許す。その結果として、アメリカはより強硬な行動に向かう。それを中国が危険なほどの過剰反応だと見なす、という形で進むだろう。
それを避けるには、オバマ大統領が事態の収拾に指導力を発揮しなければならない。冷静で、断固とした、世界に目を向けた指導者としての個性を示し、中国や他の主要国と協力して北朝鮮に制裁を加える。ハイテク製品やエネルギーの禁輸を行う。
特に重要なことは、中国を敵対視しないことだ。国家間の問題は政治的に処理できるが、国民が感情的な敵対を示せば、管理できない危険な展開へと向かう。
FT November 23 2010
US has no good options over Korean clash
By Aidan Foster-Carter
メッセージは明らかだ。「われわれには問題を起こす力がある。それがわかったら、真剣な話し合いに応じろ。」
アメリカの空爆は有効な選択肢に入らない。体面を失ったまま交渉したくないだろうが、ほかに選択肢がない。
FT November 23 2010
Stopping a rogue state
韓国も、アメリカも、中国も、戦争を望まない。中国は今こそ、北朝鮮への支援を止めて、韓国とアメリカの主張を支持し、北の敗北を許すことだ。
FT November 23 2010
Bombardment increases Korea tension
By Gideon Rachman
FT November 23 2010
Attacks that may signal a Pyongyang implosion
By Robert Kaplan
アメリカのオバマ大統領がアジア歴訪で示した外交政策は破壊するような形で、北朝鮮は韓国の島を砲撃しました。アメリカはアフガニスタンやイラクの後も、東アジアを重視する姿勢を示しました。しかし、中国と北朝鮮はそれを嫌ったはずです。
北朝鮮は経済自由化を嫌い、アメリカは核拡散を嫌います。もしサダム・フセインが2003年に核武装していたら、アメリカは侵攻しなかった、と北朝鮮は考えています。金正日親子は核武装にすべてを賭けてきました。
北の指導体制が複数支配の体制になったことが、深刻な対立を生じているかもしれません。彼らはそれぞれに人脈を作っているでしょう。中国との国境に難民があふれ、飢饉が生じるかもしれません。しかも、イラクが示したように、政府がないよりも独裁体制の方がましかもしれません。
アメリカ海軍の支配と北朝鮮の静けさに代表された、アジアの相対的平和と成長の時代が終わりつつあります。
WSJ NOVEMBER 23, 2010
An Act of Extortion
WSJ NOVEMBER 23, 2010
What Is Kim Jong Il Up to Now?
By PETER M. BECK
FP Tuesday, November 23, 2010
Why Kim Jong Il continues to make lunacy his principal export
Posted By David Rothkopf
哨戒艇の撃沈で46人の兵士を死亡させた後でも、こうした軍事攻撃を起こした。たとえ戦争が自滅であっても、脅迫は彼らに負担とならない。韓国との貿易も続いているし、中国との貿易は増えている。北朝鮮は内部の支配体制を強化し、軍事力を強化するために事件を起こす。
それを外の世界はどう扱うべきか? 北朝鮮を取り込むことも、対決することも、成果を上げなかった。数百万人の戦死者、数兆ドルの戦費を覚悟して軍事行動に及ぶか、制裁が効果を持たないまま、交渉を続けるしかない。オバマ政権の北朝鮮政策は煮え切らないものだった。
非核化の目標は現実的ではない。核の生産を停止させ、その拡散を防ぐ方が交渉できるだろう。そして、その体制が変わるまでは、こうした事態が繰り返されることに備えることだ。
NYT November 23, 2010
A Very Risky Game
中国政府は、北朝鮮を温存することが地域の安定性につながらないことを確認するべきだ。ところが中国は、6カ国協議の再開を求めるだけで、核処理施設については何も発言しない。
Nov. 24 (Bloomberg)
Black Swans Abound as North Korea Lobs Shells
William Pesek
この小戦闘は、ただちに三つの懸念を生じた。1.韓国債券の格付けが低下する。2.微妙な時期に、中国の立場が苦しくなる。3.アジアの地政学的なリスクが関心を集める。
北朝鮮の体制崩壊は多くの人を喜ばせるが、ヨーロッパ債券市場がパニックを生じ、アメリカのドルが動揺し、東京に向けたミサイルが発射されるなら、日本も巻き込まれる。
LAT November 24, 2010
Shellshocked by N. Korea
guardian.co.uk, Wednesday 24 November 2010
Guessing North Korea's dangerous game
Lionel Beehner and Nuno Monteiro
これは、「瀬戸際外交」という、計算された狂気である。危険な断崖のそばで踊ることが、リスクを共有する相手側に譲歩を受け入れさせる。韓国が反撃することは北の強硬派を刺激するだけだ。
できることは何か。韓国の指導者は、北朝鮮の指導者が狂気のふりをやめて、「人民の英雄」として振る舞うことを待つしかない。そして、北朝鮮の経済を繁栄させるために、中国と協力する。あるいは、なんとかして戦争を避け続ける。
WP Wednesday, November 24, 2010;
North Korea's consistent message to the U.S.
By Jimmy Carter
朝鮮戦争を終わらせて、核兵器と開発施設をIAEAに委ねる。北朝鮮はその意図を示してきた。アメリカは応えるべきだ。
NYT November 24, 2010
How to Respond to North Korea
Victor Cha:これは指導部の権力移行にともなう軍事行動だ。体制が動揺しているとき、彼らは強硬策に出る。アメリカは外交のチャンスだ。アジアに特使を派遣し、中国に決断を促す時期だ。国連安保理や同盟諸国も動かせる。平和条約と経済援助を求めても、アメリカ政府がそれを呑むのは難しい。彼らは何度も交渉で得た末に、合意を破った。アメリカの政策によってではなく、国内の要因で北朝鮮は行動している。
Bruce Klingner:アメリカの選択肢は限られている。非常に限定した報復攻撃でも、韓国は強く否定した。エスカレーションを恐れているのだ。北朝鮮は以前の自制を破った。強硬策で米韓関係を弱める意図だろうが、それは逆効果になる。
L. Gordon Flake:中国が北朝鮮の体制を支持し、その権力移行を認めたことで、過激な行動を抑制できると考えたのだろうが、失敗だった。
Bradley Babson:2009年後半から2010年初めにかけて、経済・通貨改革が失敗した。その後、軍事的脅威による支援の獲得に戻ったのだ。貿易も拡大して経済的利益を得たいと考えている。繁栄する国家になりたいというシグナルは以前からある。経済の将来像と金正日のポケットに入る利益を教えてやることだ。
FT November 24 2010
US show of force to deter North Korea
By Christian Oliver in Seoul and Daniel Dombey in Washington
WSJ NOVEMBER 24, 2010
Why We're Always Fooled by North Korea
By MICHAEL J. GREEN AND WILLIAM TOBEY
北朝鮮はアメリカとの交渉を求めている。核拡散を避けるために、北朝鮮も核保有国として話し合うべきだ、というのだ。その交渉を続ける間も、核兵器を増産できる。そのようなことを認めたら、北は独自に核拡散を図り、アメリカの信用は失墜する。
北の核施設を爆撃することは破滅を意味しない。北との交渉に戻ることは完全な失敗だ。封じ込めて、圧力をかけるべきだ。
FP Wednesday, November 24, 2010
Déjà vu all over again with North Korea
Posted By Michael J. Green
FP Wednesday, November 24, 2010
What to Do About North Korea
Posted By Stephen M. Walt
韓国に北朝鮮との戦争における指導力を発揮してほしい。地域の安全保障は、アメリカに頼るべきではない。また、中国と北朝鮮の金正日体制が崩壊した後について話し合いたい。それは中国が責任ある国家として自分たちの存在を示す良い機会である。
SPIEGEL ONLINE 11/24/2010
The World from Berlin
'No One Wants a Total Collapse' of North Korea
NYT November 24, 2010
North Korea Will Never Play Nice
By B. R. MYERS
挑発行為は無視するべきだ。そう教えられてきた。しかし、北の軍事行動はエスカレートする。これを無視する「挑発行為」イデオロギーを捨てて、明確に軍事的に対抗し、戦争は彼らを破滅させると知らせることだ。
WSJ NOVEMBER 25, 2010
North Korea Demands Attention
By MICHAEL AUSLIN
YaleGlobal , 23 November 2010
The World Is Adrift as Nations Skirmish
Kishore Mahbubani
WSJ NOVEMBER 24, 2010
Thankful for Private Property
感謝祭の記念論説でしょう。・・・「私的所有に神の祝福を!」
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The Economist November 13th 2010
China buys up the world
Chinese takeovers: Being eaten by the dragon
Charlemagne: Power to the European market
(コメント) 中国企業は、すでに多くの分野で世界最大の企業になっている。しかし、直接投資に占める割合はあまりに低い。すなわち、これから世界中で、中国からの直接投資・企業買収が増えるだろう。歴史上、イギリスやアメリカがそうしたように。日本がそうしたけれど、多くの失敗もしたように。
また、中国はその莫大な貯蓄を、今は政府系投資信託や外貨準備として外国の政府債券に投資している。利回りの低い証券投資から、次第に、高い利回りとリスク分散をめざす直接投資が増えるのは当然だ。
それには政治的な動機もある。資源を確保し、技術や人材を確保し、外国市場へのアクセスを確保する。中国企業がこれからも拡大する重要な条件です。
政府系の銀行が潤沢に融資し、中国政府が強力に支援する。そのことが買収を拒まれる理由になる場合もある。では、西側の政府や企業は、中国企業による買収を拒むべきなのか?
The Economistは、この場合も、自由貿易と同じ立場をとります。中国企業が市場を支配するほど大規模であることはめったにないし、政府の関与が病業的な利益を無視することもないなら、むしろ相互に直接投資が増えることで、この開放型の世界市場は安定するはずだ、と。その結果、中国企業や政府の考え方も変化するだろう、と考えます。
実際に、中国企業と買収交渉を行った(そして買収された)西側企業の重役たちにインタビューして、彼らの興味ある経験と感想を載せています。
この中国のスケールに負けない記事は、EUのエネルギー開発・輸送システムでしょう。エネルギー問題がEUの起源でした。今や、将来の環境保護・温暖化防止、安全保障問題を解決するカギになる、全欧電力ハイウェイ構想です。その計画を制約している財政負担、外交、各国の既存のエネルギー利害、など、雄大かつ鋭利な考察です。
The Economist November 13th 2010
Japan and its unfree trade: Paddies vs Prius
Taiwan and Japan: X not V
Trade and foreign policy: Go east, young men
Buttonwood: South Sea QE
The G20 meetings: What you going to do about it?
(コメント) それぞれに面白い記事です。
日本の菅首相が、ブルネイ、シンガポール、ニュージーランド、チリの提唱するTPPに参加する意思を示したことを、The Economistは、APECサミットの主催国として政治的なイニシアティブを取りたかった、と理解します。特に、消費税引き上げで挫折し、ダム建設中止でも後退して、さらに、中国との領有権紛争をめぐる対応でも支持率を下げていました。製造業のために、あるいは、都市の消費者のために、自由貿易を主張することは新しい政治的決断です。そして、農家は高齢化しており、個別所得補償で彼らの反対を抑えられると考えます。
「日本の農民は保護された階級である。ヨーロッパよりも2倍、アメリカよりも5倍、保護されている。コメにかかる関税率は778%、バターは482%に達する。・・・日本人は本来払うべき価格の2倍も多く食糧に支払っている、とOECDは考えている。」
なぜ自由化は進まないのか? The Economistは、農家のさまざまな事務処理を引き受けているJA(農協)と関係団体から仕事を失わせるという不安を呼ぶからだ、と考えます。
日本が先頭を飛ぶ「雁行形態」の時代は終わって、今では台湾や韓国の方が先を行くのかもしれません。50人のビジネス界の指導者たちと中国を訪問したキャメロン首相が、イギリスには売るものがない、という心配を打ち消して、真っ先に訪れたのはTescoだったとか。イギリスの流通大手として中国にも進出し、すでに10店舗を経営し、急速に拡大しています。
バブルとして有名な1720年頃の「南海泡沫事件」を現代の「量的緩和策QE」の先駆者として考察します。G20では、いつのまにかアメリカ連銀の「量的緩和策」と、それに不満・反対する新興諸国、という構図ができています。IMFは、資本流入を抑える各国の試みを容認する姿勢です。できれば、正常な為替レートの調整を許容することを条件にして。資本移動が浮動性を高めるなら、こうした資本規制を非難できません。それはIMFなどの銀行規制と並行する作業なのです。たとえば、韓国は銀行の大口債務契約に課税しました。これは海外から資金を取り込み、バブルや通貨危機を生じるからです。
The Economist November 13th 2010
United Nations: Thinking the UNthinkable
The future of NATO: Fewer dragons, more snakes
Lexington: Ressessing George Bush
Immigration in Germany: Multikulturell? Wir?
Trusting charities: Faith, hope and charities
(コメント) 「考えられないこと」をもじって国連改革を考えています。オバマのアジア歴訪が、瓢箪から駒、となるのか。NATOの将来構想をM.オルブライトが中心になってまとめた報告書を紹介しています。核や軍備の解体も、貿易自由化とパラレルな考察を含んでいる点が興味深いです。ドイツの多文化主義見直し、チャリティー批判、も考えさせる内容です。