IPEの果樹園2010

今週のReview

11/22-/27

 

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IPEの想像力 11/22/10

日本の衰退モデルについてSPIEGEL ONLINEが載せた特集記事は、何度もどこかで読んだような内容です。

市場統合の過程で内外不均衡の影響を吸収するために為替レートが大きく変動すれば、それを嫌って介入や摩擦、そして金融緩和が多用される。それはまるで、不動産バブルで金融破綻したアイスランドやアイルランド、政治腐敗や非効率で財政破綻したギリシャ、それらを先取りした物語です。

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しかし、だからこそ、「日本の衰退」「日本病」を解決する社会的革新に成功すれば、それはアメリカやヨーロッパに負けない世界への貢献となるでしょう。

日本が苦しむ問題は多くあります。目立つ問題だけでも、A高齢化、B官僚制、C中国、Dデフレ、F財政赤字、I不平等の拡大、P政治的混迷、Y若者、があるでしょう。

一つ一つの問題を切り離して解決しようとすれば、いくつもの困難な改革に注意を奪われて、その一つでさえ容易に実現しないでしょう。しかし、高齢者の生活を安定させ、官僚制がさまざまな課題に有効に機能し、中国の成長を地域・国際秩序の中で日本企業や地域経済が積極的に受け入れることもできるでしょう。債務に依存した財政や、デフレに向かう企業・金融市場・消費の条件を変えること、そのために貧しい世帯や若者が政治や経済の意思決定に自ら参加し、改善する力を見いだせるような改革メカニズムを設計するなら、個々の難しい問題を、全体として解決できると思います。そう、・・・たとえば

一。 優れた能力や精神的な強さをもつ若者たちは、社会に役立つ企画を立てて、政府の支援プログラムに応募します。そして彼らが、新しい企業や新しい官僚のダイナミックな中核を形成するよう、選抜システムと研修・留学システムを創設して鍛えます。

一。 日本の社会的理想として、平等主義を深く考察し、制度や理念として担保します。貧困を減らす社会的包摂・支援を工夫します。富裕層には、特権を廃して競争を促し、社会事業への積極的な参加を求めます。

一。 若者が旧制度によって雇用や昇進を阻まれないように、産業や金融、政治、教育において、新興企業の設立を保証します。若い人材を優先的に育てるプログラムを奨励します。

一。 失業や病気、災害、新技術の導入や国際競争における産業転換、などを、新しい包括的な社会保障プログラムを作ります。グローバルな成長の機会を活かすために、先進的な理念と明確な基準を定めて、いくつかの公的制度を立ち上げ、社会の革新を競います。

一。 社会的給付の透明性を高め、人々を犯罪・詐欺から守り、支給の過誤をなくします。貧困世帯や高齢者の社会的な支援(医療・資産管理・住宅・食事・交流・雇用)を行う、各地のセンターを整備し、新しい基準(ICカード)で、一括して対処します。

一。 企業、銀行、学校、役所、団体など、既存組織内部で、地位に見合う資格や業績の再審査と、それによる組織内外の移動を促します。労働契約のフォーマットを統一し、全労働者が同時に複数の仕事・職場に関与することで、移動しやすくします。

一。 与党と野党、政治家と官僚の関係を見直し、批判や対案がどのように示され、新しい政策や制度につながったか、市民の眼で検証する委員会を設け、報告書・改善勧告を定期的に作成・公表します。

財政赤字が金融破たんに至るとき、東アジアにおける軍事衝突が起きるとき、日本の企業や銀行が大規模に倒産し、アジア企業に買収されるとき、失業した若者や生活に困窮した老人たちを煽る国粋主義政党が政権に参加して、それを嫌う優秀な企業や投資家、若者が国外に流出するとき、私たちはパニックを起こすだけでしょうか? 

危機や社会対立を柔軟に吸収し、社会的革新を導くような、「日本病」(ABCDフィッピー)の具体的な治療薬を開発してください。

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中性脂肪が多い、という健康診断の血液検査結果を見て、長い間、散歩していないな、と思いました。そして、生駒のブックオフまで往復したとき、偶然、井上靖の『孔子』に出会えたのです。

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日本病:長期的衰退の原因 ・・・ソウルG20の成果をめぐって ・・・オバマのアジア外交:インド ・・・オバマのアジア外交:中国 ・・・アイルランド危機と緊急融資 ・・・スマート・システム ・・・世界経済管理の制度改革

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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


l         日本病:長期的衰退の原因

(chinadaily.com.cn) 2010-11-10

Project Syndicateより転載)

Is America catching the "British disease"?

By Barry Eichengreen

「アメリカには衰退の気配が満ちている。帝国の過剰拡大、政治的分極化、金融危機の処理コストが経済を押しつぶす。アメリカも『イギリス病』にかかって死ぬ、という専門家がいる。」

第二次世界大戦後、イギリスが衰退したように、アメリカも衰退する中で、中国などが急速に台頭するのだろうか? 「イギリス病」とは何であったか? その原因を理解しなければならない。

問題は、アメリカとドイツがイギリスよりも急速に成長したことではない。後発諸国の成長率が高いのは当然だ。むしろ、19世紀後半のイギリスが、その経済を次の段階に進められなかったことが問題であった。

なぜイギリスは対応できなかったのか? 1.企業家精神が失われた。2.教育システムの失敗。3.金融システムが資本を供給しなかった。4.経済政策の失敗。内向きの、変化を阻む政策に偏っていた。

Eichengreenは、1.2.3.の理由を否定し、特に現在のアメリカにも当てはまらない、と考えます。しかし、4.政治的な対応の失敗は、「イギリス病」の本質であり、アメリカにも無視できないのです。保護された市場の中だけで、産業は安易な利潤を上げ続けることが、その国の国際的な地位を下げる。

 (chinadaily.com.cn) 2010-11-11

Project Syndicateより転載)

Japan's options

By Joseph Nye

1980年代の栄光から、日本がいかに大きく衰退してきたか。そのような感覚が強い。

1990年の資産バブルが破裂してから、政策の失敗が続き、日本は20年間の低成長を苦しんだ。2010年には経済規模で中国に抜かれた。1988年に、時価総額による世界の企業ランクで10位中の8社が日本企業であった。今は一つもない。

当時は、日本を1870年のプロイセンにたとえるHerman Kahnのような未来学者もいた。今では、日本のような新興大国を評価する場合、その成長トレンドを単純に未来に延長するだけでは間違う、という警告である。

第二次世界大戦前に世界の工業生産の5%を占めたが、1950年から74年まで、年平均10%の成長を続けて、1980年代初め、世界GDP15%を占めた。しかも、日本が台頭したのは2度目だった。最初は明治維新の後である。わずか50年で、ヨーロッパの大国の一つであったロシアと戦争して勝利した。

日本は復活できるか? 経済は停滞し、政治システムは弱体化し、人口の高齢化が進むが、移民を拒んでいる。根本的な変化は難しい。その強みはあるものの、カリフォルニアの人口・経済規模と同じで、閉鎖的な政策を好むから、大国になることは無いだろう。

日本が憲法9条を改正して軍事大国化することは無いだろうし、望ましくもない。中国との同盟化は経済的な繁栄をもたらす条件となるが、双方の政治がそれを受け入れない。それゆえ、アメリカは日本を同盟国として扱い、東アジアにおける影響を維持するべきだ。

日本は、グローバルな非軍事的大国として、公共財を供給できるだろう。むしろ、国内政治が内向きになると危険である。

WP Monday, November 15, 2010;

How to avoid Japan's economic mistakes

By Robert J. Samuelson

1980年代に日本が世界で最も称賛された経済であったことを思い出すことは困難だ。日本は財政刺激策も金融緩和も出し惜しみして、デフレを放置し、消費が先送りされるのを許したから停滞し続けたのか?

Robert J. Samuelsonは、これは逆だ、と考えます。デフレを恐れたあまり、財政赤字に頼って回復が遅れたのです。むしろ、民間部門の雇用増大は、財政刺激策によって代わることができないものだ、という教訓を導きます。

日本が成長できなくなった理由は二つです。一つは、輸出部門に比べて国内部門が弱く、起業も少ないこと。もう一つは、首相率が低下し、人口が減少してきたこと。その結果、経済は輸出に依存し、円安による成長と円高による不況を繰り返した。

アメリカ政府は、財政刺激策に頼って、日本の失敗を繰り返してはならない。

SPIEGEL ONLINE 11/18/2010

Land of the Setting Sun

Can Japan Reverse Its Long Decline?

By Wieland Wagner

すでに亡くなった親の年金で、その子供たちが老後を生きる姿には、ドイツの新聞記者も驚いたのでしょう。世界を震撼させた経済大国ニッポンは、一体、どうなってしまったのか? もはやここには、伝統的な価値も、終身雇用や社会調和も、安定性や平等もない。

1980年代半ばに、日本の衰退は始まった。日米摩擦、円高と金融緩和、信用膨張による不動産ブームが起きて、バブルは終わった。開発業者は海上や月面にも住宅を建設する計画を示していたが。

仕事が失われ、年金が失われ、バブルが破裂してから14人も首相が交替した。つまり、政治家は問題を解決できなかったのだ。絶望した人びとは、日本人の美徳として、静かに自殺する。トヨタでさえ、スキャンダルで自動車が欧米市場で売れなくなり、雇用を削減した。日本は生産基地として望ましいところではない。

自動車産業が無くなったら、豊田市には何も残らない。日本には、何かあるか?


l         ソウルG20の成果をめぐって

(chinadaily.com.cn) 2010-11-10

Project Syndicateより転載)

Don't count on global governance

By Dani Rodrik

ワシントンでは中国を責め、ソウルやブラジリアではアメリカの金融緩和を責め、ベルリンではドイツ以外のヨーロッパやアメリカの財政赤字を責めている。誰でも責める誰かがあり、グローバリゼーションは誰もが責める。

問題がグローバルであるから、解決策もグローバルなのか? 国際機関やグローバル・ガバナンスを期待するべきか? それがないとすれば、グローバリゼーションを制限した方が良い。各国はばらばらにグローバリゼーションを規制し、介入する。しかし、その資本規制や外貨準備の蓄積が、他国に悪影響を及ぼす。

単に自由化を急げば、それは介入を増やすかもしれない。もっと慎重な、長持ちするグローバリゼーションが必要だ。各国は自国の政策がグローバルな影響を及ぼすことを自覚し、ルールに従わなければならない。中国がWTOのルールによってグローバリゼーションを受け入れたのであれば、WTOは産業補助金を制限するルールや、IMFが為替介入や不均衡に及ぼす影響を監視することも要請しなければならない。そのような厳しいルールがないまま金融自由化を急いだ結果、各国ははるかに困難の状況に陥った。

国際的なルールと国内の政治秩序とは市場によってバランスできない。その答えは、グローバル・ガバナンスでもない。

guardian.co.uk, Friday 12 November 2010

G20 summit distracted by 'currency wars'

Mark Weisbrot

「通貨に関する多角的な合意ができるまでには、まだ、何十年とまで言わないが、何年もかかるだろう。ブレトンウッズで固定レートに合意するまでには、大恐慌と第二次世界大戦があった。」

世界経済にとって、最大の問題は高所得国の景気回復が遅いことだ。ところが、EU諸国のように、財政緊縮を唱えてデフレを悪化させる動きがある。スペイン、アイルランド、ギリシャ、ポルトガルへの融資条件は大幅な需要削減を意味する内容だ。失業率は20%に達する。

アメリカの連銀が量的緩和によって債務を貨幣化しているが、それをヨーロッパ諸国が非難するのは皮肉なことだ。それはオバマと議会が財政刺激策を合意するための余地を広げるものだ。もしそれを非難するなら、中国が大規模な低炭素エネルギーへの投資を行う一方で、アメリカには1400万人の失業者が生じていることをどう考えるべきか?

アメリカからの資本流出を嫌う諸国には、資本規制や海外からの投資に課税する手段があり、「通貨戦争」の呼び名は誇張されている。むしろ問題は、過度に保守的な財政政策であり、金融緩和を嫌う、ドグマに忠誠を誓う者たちだ。

SPIEGEL ONLINE 11/12/2010

Merkel's Summit Success

G-20 Offers Slight Tweak to Global Finances

By Philipp Wittrock in Seoul, South Korea

FP NOVEMBER 12, 2010

The Long Currency War

BY KATI SUOMINEN

通貨戦争を抑える答は無い。アメリカの受容に代わる新興市場はまだないから、アメリカだけがデフレ世界における「白馬の騎士」である。アメリカは、長期の財政再建計画を示し、優遇税制、自由貿易協定を通過させて、投資家を励ますべきだ。

世界の通貨制度改革は進まず、近隣窮乏下的な保護主義に向かう危険がある。ルールに依拠したグローバル・ガバナンスが実現するまでは、通貨戦争が終わらず、アメリカの成長に頼るしかない。

YaleGlobal , 13 November 2010

The G20: Captive in the Prison of Mercantilism

Ernesto Zedillo

G20が通貨戦争を抑えられないのは、彼らが国際収支不均衡に対する「仲間内の圧力」による調整メカニズムを支持して、IMFに強い権限を与えなかったからだ。結局、仲間内の圧力は明確な調整政策の基準を示さず、それゆえ不均衡は是正できない。そのことが分かれば、今後も、不均衡はますます他国の需要を奪う破壊的な政策をもたらして、貿易や成長を損なう形で、むしろ拡大するだろう。

G20が失敗した原因は、不均衡を米中摩擦、G2として考え、それが自国の責任に及ぶとはどの国も考えたくなかったからだ。しかし、輸出を伸ばすことなくアメリカが不均衡を解消することは不可能であり、中国だけでなく、大幅な黒字国として、ドイツや日本の責任は明白である。ドイツは、ユーロ圏内の均衡回復と成長加速に重要な責任を負っている。日本は、外需に頼らずに、自国の景気を回復できるような改革を進めなければならない。中国は、構造改革や国内投資、為替レートの弾力化、などを組み合わせるべきだ。

もしG20が明確な協調による解決策を示さず、アメリカが議会の中国制裁法案や量的緩和策に頼り続け、新興諸国も一層の介入政策に頼るなら、合理的な原則は実現されないだろう。それは、IMFによる調整政策を求める統一した原則が支持されなかったからだ。

各国はドーハ・ラウンドの貿易自由化を実施しなければならない。

guardian.co.uk, Monday 15 November 2010

G20: Seoul searching on trade and currency

Dean Baker

G19がアメリカの量的緩和策を批判するのは間違いだ。彼らはアメリカがドル安を進めて、輸出を伸ばすことで雇用を増やそうとしている、あるいは、インフレで財政赤字を減らそうとしている、と批判する。しかし、ではアメリカが輸入を減らせばどうなるのか? アメリカが財政赤字を削れば、G19は満足か? そんなはずはない。彼らの輸出が減り、世界不況が深まり、失業者が急増するだけだ。

他方で、問題はアジアの輸出促進策が金融危機の際にIMF融資条件を押し付けたことから強められた点だ。それは、ルービンとサマーズのアメリカ財務省が求めたことだ。こうした変動レート制と貿易不均衡との関係を、アメリカのドル安が必要だと認めても、新興諸国は、受け入れがたい、と思うだろう。

Nov. 17 (Bloomberg)

Three Reasons Global Talks Hit Dead End

Mohamed A. El-Erian

G20は失望を生むだろう。世界経済の回復を阻むものについての共通の認識が得られるように、経済外交がもっと重視されるべきだ。協調による解決以外に、解決策は無い。


l         オバマのアジア外交:インド

NYT November 11, 2010

Obama Takes Asia by Sea

By ROBERT D. KAPLAN

アメリカはアジア諸国に海軍力を提供する用意がある。それがアジアのバランス・オブ・パワーを決定する力をアメリカに与える。

WP Friday, November 12, 2010;

Why President Obama is right about India

By Charles Krauthammer

20世紀前半のヨーロッパがドイツの台頭によって決まったように、21世紀はアジアにおける中国の台頭が決定する。かつて貧しかった中国が、領土紛争における漁船とその船長の開放を要求して、日本を屈服させたことは、その象徴であった。

インドは、中国と国境紛争を戦ってきた国であり、アメリカがアジアにおけるバランサーとして中国の台頭に備える同盟国にふさわしい。オバマは、インドを安保理常任理事国として支持する、と述べた。インドは民主主義体制であり、第三世界の指導国だ。

YaleGlobal , 12 November 2010

US in Asia: Seeking Partners at a Troubled Time – Part II

Bruce Stokes

WP Friday, November 12, 2010; 8:37 PM

Robert Kaplan's 'Monsoon,' reviewed by Shashi Tharoor

By Shashi Tharoor

(China Daily) 2010-11-15 07:53

APEC faces TPP challenge

By Yang Danzhi

アメリカはドーハ開発アジェンダを理由にAPECTPPを推進しているが、それがアジアにおけるアメリカの役割を増大させる。APECにおいてアメリカと日本を含む8カ国がTPP参加を表明した。地域経済と政治の問題だ。

FT November 15 2010

Currency warriors should consider India

By Sebastian Mallaby

インドは中国と異なるオープン経済モデルを追求している。中国は人民元の為替レートを介入によって低く維持してきた。インドは為替市場への介入を止めた。また、ブラジルやタイのように資本規制に頼ることもしなかった。というのも、インドは他のアジア諸国と違って貿易黒字を出しておらず、過剰貯蓄を求めない。インドは8%で成長し、貧困を減らし、貿易赤字を出して豊かな国の回復を助けている。

インドは貿易や投資において自由化を進めており、資本規制によって成長を維持する、というモデルではない。インドにもバブルの危険はあるが、指導者たちは株式発行を増やすことで対応しようとしている。韓国と違って、インドのオープン経済モデルは資本についても維持されるだろう。

FP NOVEMBER 16, 2010

Triumph in New Delhi

BY ASHLEY J. TELLIS

LAT November 18, 2010

Step up, India

By Timothy Garton Ash

ミャンマー(かつてのビルマ)でAung San Suu Kyiが再び自由を得たことは、民主主義的な政治をもたらす機会になるでしょうか? それはインドにかかっている、とTimothy Garton Ashは考えます。ビルマの将軍たちは、戦略的・経済的な利益を基礎に、中国の支持を得てきました。タイやASEAN諸国もエネルギーと貿易を求めてそれに従っています。インドだけが、この均衡を変える力をもつのです。

しかし、インドの外交は理想主義から現実主義への転換を進めてきました。2007年、反政府の抗議デモ「サフラン革命」が高まったとき、インド・石油相がビルマを訪問して軍事政府と合意しています。先月、経済学者Amartya Senは発言しました。インド首相が、ミャンマーの殺戮者と会談したことは、世界の民主主義と人道的な秩序を指導する国として恥ずべきだ。「インドの狭い国益によって国民の忠誠を求め、世界に道義性を求める過去の傾向をネルー的なナイーブさとして否定する」、これこそ問題だ、と述べました。

それはビルマの将来に関係するだけでなく、西側の秩序を終える世界において、中国ではない、もう一つの政治的な将来を示すだろう。


l         オバマのアジア外交:中国

LAT November 12, 2010

China needs to lengthen its short fuse

By Rajan Menon

もし中国が世界最強の国家になったとき、中国の重視する目標に反対する者があれば、中国は何をするだろうか? 今まで「和平演変」として「平和的な台頭」を唱えてきた中国が、最近になって態度を変えた。日本との尖閣諸島問題、ノーベル平和賞が反体制派のLiu Xiaoboに与えられたことで、それに反対するだけでなく、さまざまな威嚇や国際関係の妨害を行った。それを見た周辺諸国は、一斉に、中国に対する認識を変えたはずだ。

アメリカはインドと冷戦時代からの対立を解き、「戦略的パートナー」と認めて、インドの要求する安全保障理事会の席を支持すると語った。日本との同盟関係を強化し、ベトナムやインドネシアとの軍事協力も強める。中国を潜在的な敵と見なして包囲する戦略は、双方の軍事対立を強める結果、自己実現的な予言となる。その最悪のケースを避けるには、単に、包囲を解くだけでなく、中国が平和的な台頭の方針を明確にしなければならない。アメリカの台頭を、国際秩序の調整において、イギリスが平和的に受け入れたように、双方の姿勢が重要だ。

かつてドイツが台頭した際、ビスマルクはこのことをよく理解していた。しかし、1890年にヴィルヘルム2世がビスマルクを解任したことで、第一次世界大戦は始まっていたのだ。

NYT November 13, 2010

Now, Will China Get It?

WP Monday, November 15, 2010;

A 'hedge' strategy toward China

By Fareed Zakaria

オバマは、おそらく顧問たちの助言によって、アジア市場開拓に焦点を定めた。しかし、ちぐはぐな外交だ。アメリカとの主要貿易相手国は日本だけであり、カナダとメキシコに向かう方が燃料を節約できて良かっただろう。むしろ、この訪問は、アジアの「グレート・ゲーム」を開始する号令になった。

しかし、中国の台頭を、ソ連との冷戦と重ねて、「封じ込め」の対象にしてはならない。それは異なる経済体制を目指していた。ソ連は西側の不安定化を企て、その経済規模は小さかったが、数万発の核兵器を保有して、アメリカを軍事的に脅かしていた。

中国はそうではない。中国の台頭は西側の国際秩序を受け入れ、それに協力して成功した。アメリカと中国は緊密な市場統合化を進めてきた。通貨や貿易の問題で摩擦を生じているが、それは1980年代の日米摩擦ほどではないし、冷戦をもたらすものではない。

アジア諸国がアメリカの望むのも、冷戦時代の反中国軍事同盟、「封じ込め」ではない。アジア諸国は中国が最大の貿易相手国であり、中国から経済援助や投資を受け取っている。たとえ中国の台頭が彼らを不安にし、地域に不安定化をもたらしても、アメリカは、インドや日本と同じように、増大する中国の影響力を抑制するバランサーなのである。

アメリカは、中国の主張や行動を穏健なものに変え、建設的で、協調的な、国際的役割を担う国家に変えるよう、関与し続ける姿勢を堅持するべきだ。そして、そうでない場合、中国に対する「封じ込め」も可能な戦略として保有しておく、投資銀行家たちの言う「ヘッジ戦略」を採用する。

WSJ NOVEMBER 16, 2010

Goldilocks and the China Bears

ゴルディロック経済goldilocks economyが恐れるのはインフレだ。低所得層の困窮を深め、社会対立を激化させる。国内の高貯蓄、アメリカの量的緩和策、ホット・マネーの流入、貿易黒字、為替市場への介入は、中国におけるインフレ抑制策を難しくしている。中国人民銀行のドル資産保有は、米中の金利差によって、大きなコストを意味するだろう。

Nov. 16 (Bloomberg)

China Offers No Way to Revaluation Before 2012

Gordon G. Chang

FT November 17 2010

China: The big screening

By Kathrin Hille in Beijing

すでに中国の人口の3分の1以上がインターネットを利用している。世界最大の人口をもつ、共産党の支配する国が、インターネット世界に参加することは、何を意味するのか?

情報の独占を破って民主化を促す、と期待されました。しかし、インターネットは政府によっても利用され、厳しい検閲や自己規制が進んでいます。個人によるブログはほとんどが日常的な話題であり、官僚の腐敗や横暴を攻撃することはあっても、政治的な発言はありません。ベオグラードの中国大使館が空爆されて以来、ナショナリズムは強まっており、反日デモを組織しました。それは政府によって利用されている面もあるが、中国の政治を大きくゆがめる危険がある。

FT November 18 2010

Inflation scare will hurt China’s economy

By Minxin Pei

消費者物価が4.4%上昇した、という数字が世界の株価や商品価格を動揺させている。中国の成長が大きく減速すれば、その影響は世界に及ぶから。

インフレの原因は社会政治構造に深く根ざしたものだ。まず、長期に及ぶ金融拡大策が採用された。マイナス金利と信用膨張が過剰投資と不動産価格の上昇をもたらし、富裕層や地方政府の利益になった。それは人口変動の背景から、いよいよ賃金上昇に結びつき、商品価格を引き上げるにいたった。

単なる物価統制は効果を失い、金融引き締めと不動産価格の下落がはじまるだろう。バブルの膨張は社会的な不が実を生じており、それにもかかわらず、共産党指導部の交替は、今後2年間、政府に内外の不安定化を強く回避する行動を取らせる。その結果、本当の調整を始めるときには、より大きな社会的コストを支払うだろう。


NYT November 12, 2010

Throwing Free Trade Overboard

By ROBERT E. LIGHTHIZER

オバマが共和党の議会と協力できる重要な分野、自由貿易の推進について、ティー・パーティ―は反対します。貿易よりも国内の産業復興を唱えます。そして政府部門の縮小も目指します。

 (chinadaily.com.cn) 2010-11-15

America's employment and growth challenges

By Michael Spence

NYT November 16, 2010

Pretty Good for Government Work

By WARREN E. BUFFETT

NYT November 17, 2010

A Hedge Fund Republic?

By NICHOLAS D. KRISTOF

アメリカの所得分配は、ニカラグア、ヴェネズエラ、ギアナに比べても、歴史的に観ても、大きく不平等化している。ヨーロッパの階級社会やカリブ海のバナナ共和国よりひどい、「ヘッジファンド共和国」だ。


l         アイルランド危機と緊急融資

FT November 12 2010

Irish crisis demands new EU response

By Mohamed El-Erian

G20が関心を集めているときに、まさかヨーロッパで金融危機が再発するとは。

危機は三つのレベルで高まった。1.ギリシャだけでなく、アイルランド、スペイン、ポルトガルに破綻の恐れがあった。2.不安がヨーロッパ内部の投資家に広まった。3.危機は、ECBが債券を購入し続けているときに起きた。

こうした危機は、1980年代、90年代に、新興市場で起きた通貨危機と同じだった。市場金利が上昇し、それが長引いて不況と失業が増し、さらに不安が高まった。社会不安が激化し、税収も失われて財政破綻につながった。銀行や機関投資家も、保有する債券の価値が失われ、破綻する危険があった。信用不安は預金流出を招いた。こうして、新興市場の危機は不安を高め続け、自己実現的であった。

危機の拡大を、先に抑え込むしかない。しかし、EUの対応は緊縮による財政再建策や、ECBあるいは安定化基金からの融資だけであった。根本的な問題は解決しない。すなわち、債務の超過と、競争力の喪失、である。

しかも、その救済策は本質的に逆累進的である。債券の保有者は金融機関や富裕層であり、苦しむのは政府、国民、高金利で返済する納税者である。もっと効果的な解決策が必要だ。ヨーロッパの不調は、世界景気やアメリカの苦境を悪化させる。

The Observer, Sunday 14 November 2010

Ireland still has the power to make itse

Fintan O'Toole

FT November 14 2010

Fiscal union is crucial to the euro’s survival

By Wolfgang Münchau

ユーロはその他異常時から矛盾していた。たとえば、「救済しない。離脱しない。デフォルトしない。」“no bail-out, no exit and no default”という原則である。金融危機になれば、それは不可能だ。危機処理の恒久機関ができて、デフォルトが可能になる。しかし、まだ矛盾は残っていた。通貨圏内で不均衡が続いても、財源は共有されず、財政同盟ではない。

メルケル首相はデフォルトを語っても、財政的な国家間移転を否定した。それはユーロ圏の法的な基礎がそう定めているからだ。そうであれば、ドイツは異なった形で移転するべきだろう。ドイツに向けた輸出を増やす(そして資金を得る)ことだ。

しかも、ドイツの憲法裁判所が政府の財政移転を禁じている。三つの矛盾した状態は、ドイツが動かなければ解決できないにもかかわらず、ドイツは動かない。切下げも金融緩和も、財政移転もないまま、失業者を増やす緊縮政策と金利上昇が続く。ユーロからの離脱も考えられない。

恐るべきことに、ユーロ圏の指導者たちは十分な財政規律があれば問題は起きない、と考えている。財政同盟の無い通貨同盟は生き延びられない。10年前から、わかっていたことだ。

guardian.co.uk, Monday 15 November 2010

Ireland's crisis puts Germany in the eurozone driving seat

Larry Elliott

FT November 15 2010

Irish woes should speed Europe’s default plan

By Nouriel Roubini

EUは政府債務のデフォルトと債務削減を法的に整備するより、伝統的な債務処理方法の一つ、異なる資産との交換、を債権者にオファーする方が良い。

FT November 15 2010

Europe must heed Ireland’s lesson

FT November 16 2010

The price of German leadership

By Charles Grant

ドイツのメルケル首相が改革の指導権を握ったことは良いニュースだが、その解決策が間違っているのは悪いニュースだ。

FT November 16 2010

Europe’s fiscal laggards must pay a premium

By Anders Borg Sweden’s finance minister

経済ガバナンスの明確な原則を示すべきだ。経済の長期的な安定性を確保できる政策でなければならない。各国の財政・金融危機がユーロ圏やEUの他国に及ぼす外部性は深刻だ。

その原則とは、環境汚染の「汚染者負担原則」であり、保険におけるリスクに応じた掛金の原則、である。

Nov. 16 (Bloomberg)

Euro Dominos Will Fall Until Currency Is Split

Matthew Lynn

アイルランド、そして、ポルトガル、スペイン、さらに、イタリア、フランスへ向かうのか? ドミノ効果は止められず、ユーロ解体に至るのか?

アイルランドはこの20年間、好調な経済を示し、放漫財政ではなかった。危機に対して緊縮策を示し、外部の金融支援に頼らず、解決しようと努めてきた。そうであれば、問題はアイルランドではなく、ユーロにある。

「単一の中央銀行が管理するには、その経済が余りに異なっているということだ。金利は常にどこにも適当でなかった。その表現は異なる。ギリシャの財政破綻。アイルランドの銀行破綻。スペインの住宅破綻。ドイツの貿易黒字。」 「唯一の永続的解決策はユーロを解体して、管理可能な通貨圏に分割することだ。」

SPIEGEL ONLINE 11/16/2010

'In a Survival Crisis'

WP Tuesday, November 16, 2010;

A model for scrimping - in Europe?

By Anne Applebaum

ヨーロッパの有権者が、たとえ一部でも、緊縮政策を示す政府に投票したことは明らかだ。最近の不況や債券市場の混乱が政府の債務依存によって生じており、財政赤字を削減するしかないこと、それが大学授業料の値上げや、年金支給年齢の引き上げになるのも仕方ないこと、を認めた。政府の財政規模は大き過ぎるし、年金は永久に保障されたのではなく、市場によって決まるものだ。アメリカ人はそれを支持するわけだが、実際はヨーロッパ同様、企業・雇用者への補助金が使われている。

FT November 17 2010

Don’t blame the euro for Ireland’s mess

ByPhilippe Legrain

アイルランドの危機をユーロの責任と主張することは間違いだ。

単一通貨がドイツなどの黒字をスペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルランドに流したのは間違いだった、と言われている。しかし為替変動のリスクをなくせば、資本は国家間を移動するのであり、それこそユーロ圏の重要な利点であった。もし世界全体がそうであれば、新興経済は通貨危機を恐れて外貨準備を積む必要もなく、生産的な投資に励めるだろう。統合された金融市場がうまく機能すれば、投資家はより大きな利益、企業家はより安価な融資を得て、資本は効率的に配分されるはずだ。

つまり、問題はドイツからヨーロッパの周辺に資本が流れたことではない。それが生産的な投資ではなく、不動産バブルに使われたことだ。その責任はユーロにではなく、群集行動に走る投資家、いい加減な銀行、愚かな政府にある。

ユーロによって融資が急に安価になれば、ブームが起きる。しかしアイルランド政府は財政を引き締めて黒字を続けていたし、銀行の不動産融資を制限した。それでもアイルランドの不動産バブルは余りにも大きかった。住宅価格は2006年までの10年間で4倍になり、建設部門は経済の8分の1を占めた。ダブリンの住宅価格は5倍以上に高騰し、その後半減した。

しかし、それが政府を破綻させる理由は無い。アイルランドの政府債務はGDPの25%であり、ユーロ圏内でも低いものだった。政府の致命的な失敗は、不動産に融資した銀行の、預金だけでなく、債券のすべてを保証したことだった。銀行は破たんして、政府を呑みこんだ。イギリスで不況が深まれば、同じことが起きる。

ECBからの融資がアイルランドの銀行を維持している。もしユーロ圏でなければ、アイスランドと同じ運命だった。通貨価値が急落し、中央銀行は融資を続けられず、銀行が破たんする。

ユーロ圏の外に出て、通貨を減価させた方が輸出によって回復できる、というのは間違いだ。アイルランドは小規模の開放経済であり、切下げの効果はインフレですぐに失われる。ユーロ建の債務を返済しなければならない。EUやIMFからの融資は高い金利を支払わねばならず、将来世代に負担を強いる。

すでにアイルランドは賃金と物価を切り下げ、事実上、内部で切り下げを実行したのであり、競争力は回復した。ところが、納税者たちはヨーロッパの銀行やアメリカのヘッジファンドに支払続けている。彼らはアイルランドの銀行でギャンブルしたのだ。むしろ、EUやIMFがアイルランドにつなぎ融資して、債権者との債務削減交渉を支援し、負担を減らすべきだ。危機の引き金となった、債務の組み換えに関するドイツの発言は、債権者でもあるドイツを含めて、こうした解決策を支持するものだ。

FT November 17 2010

Europe heads back into the storm

NYT November 17, 2010

What It Will Take to Save Ireland

WSJ NOVEMBER 17, 2010

The Real Euro Danger

Nov. 18 (Bloomberg)

Euro’s Recipe for Redemption Needs Two Ingredients

Andre Sapir

SPIEGEL ONLINE 11/18/2010

Leading German Economist Peter Bofinger

'Germany Has a Vital Interest in Ensuring Irish Solvency'

ドイツの銀行はアイルランドの最大の債権者であり、1660億ユーロの、大部分が短期の融資を行っている。ドイツにとって、この危機はどの程度重要か? だからドイツ政府は、アイルランド政府や銀行の支払を維持したいと願っています。アイルランドへの救済融資は、ドイツの金融システムに対するものでもある。その場合の金利は、懲罰的な高金利よりも、危機回避のための低金利が望ましい。

それは投機家に利益を与えて、さらなる危機を生むのではないか? 債権者が負担することは望ましい。しかし、今の、危機回避の局面で長期の曖昧な見通しは意味がない。危機回避と融資、調整策、それは極端な緊縮策を回避させ、雇用を守っているのだ。しかし、その逆(・・・緊縮策を強いられて失業が増えた。ユーロ離脱と切下げで救われる。・・・)を主張する政治家が増えることが心配だ。

NYT November 18, 2010

The Costs of Rescuing Ireland

Jeffrey A. Mironは、アイルランドが自分で再建した方が長期的にコストを減らすだろうが、EU諸国の財政赤字国は救済融資の先例を歓迎した、と考えます。結局、救済融資は高くつく。

Yves Smithは、ユーロから離脱して通貨価値を切下げ、銀行を再建するのが最も望ましい、と考えます。銀行の株主や債権者がコストを負担するべきです。救済融資はその道をふさぐ。

Jeffry A. Friedenは、誰が支払うべきか? と問います。危機を回避するために政府・納税者が債務を肩代わりするだけでなく、住宅価格の上昇を見込んで外国から借り過ぎた銀行の債務削減が必要であり、内外の債権者がコストを分担するべきだ、と主張します。

Jacob F. Kirkegaardhaは、アイルランドが主権を譲歩せず、交渉を引き延ばして有利な条件を求めた、と考えます。不確実さが残ればEUの危機は拡大するから、交渉は拒否されました。

Vanessa Rossiは、アイルランドがギリシャと違って、政府は賢明であったが、民間投資家が愚かなバブルを煽った、と考えます。民間債務の救済プログラムは可能です。

FT November 18 2010

Irish showdown over corporate tax

By Peter Spiegel in Brussels, Gerrit Wiesmann in Berlin and Ben Hall in Paris

FT November 18 2010

Irish rescue deal must not repeat errors

By Patrick Jenkins in London

WSJ NOVEMBER 18, 2010

Ireland Opens Door to Massive EU Bailout

By DAVID ENRICH And CHARLES FORELLE

IMFやEU官僚が集まって会議を開いているアイルランド財務省の周りに抗議デモが向かう。

"Ireland's new absentee landlords—ECB and IMF. Famine next!!!" アイルランドの新しい不在地主だ。ECB・IMF飢饉!


WSJ NOVEMBER 12, 2010

The High Price of Journalism in Putin's Russia

By ELENA MILASHINA

プーチンの支配するtロシアでは、今もジャーナリストが殺されています。チェチェン、北カフカスで起きる事件を追うNovaya Gazetaの記者は、Anna PolitkovskayaNatasha Estemirovaなど、5人が殺害され、犯人は捕まりません。


WP Friday, November 12, 2010;

Five myths about the Federal Reserve

By Greg Ip

量的緩和策はインフレをもたらさない。その関係は単純ではない。なぜなら、連銀が購入した債券は銀行の預金を増やすだろうが、銀行が融資を増やすとは限らないから。長期金利が低下すれば、資産価格が上がって、消費を刺激するかもしれない。しかし、多くの失業者や遊休設備がある現状では、まだ何年も先の心配だ。

連銀はドル安によって世界の景気回復を損なう、というのも間違いだ。連銀はドル安を促すような為替市場におけるドル売りを200年以降行っていない。金利低下がドル安をもたらすことは分かっているし、それは景気回復にプラスである。為替レートがゼロサム・ゲームであることも分かっているが、アメリカは過剰消費を是正するしかない。

もちろん、これは危険な政策である。新興市場のバブルや商品市場で投機が強まるだろう。保護主義も生じる。

NYT November 13, 2010

How to Make the Dollar Sound Again

By JAMES GRANT

量的緩和策が金価格の上昇を刺激し、ゼーリックの発言がそれを支持した。世界は金本位制の時代へ回帰するのか?

WSJ NOVEMBER 15, 2010

In Defense of Ben Bernanke

By ALAN S. BLINDER

FT November 17 2010

Fed keeps its focus amid the criticism

By Karen Dynan and Donald Kohn

Nov. 17 (Bloomberg)

QE2 Pits Bernanke Against Obama Export Plan

Caroline Baum


WP Sunday, November 14, 2010;

Top analysts on the global economic outlook

By Topic A

ソウルG20後の世界経済をどう見るか? Mark Zandi, Douglas Holtz-Eakin, Eswar Prasad, C. Fred Bergsten and Karen Johnsonが考察します。

たとえば、ESWAR PRASADは、世界経済の回復過程が、先進諸国と新興諸国で異なる、二重構造をもつと考えます。前者は刺激策を、後者は引き締め策を求めています。これらを矛盾なく組み合わせる政策が重要です。すなわち、前者の中期的財政再建を示した金融緩和策、後者の通貨の増価を含んだ資本市場の整備、です。

C. FRED BERGSTENは、東アジアがヨーロッパや日本の4倍の速さで成長する、と指摘します。ドイツのような時期尚早の引き締め策、中国のような人民元レートの増価不足が引き起こす通貨・貿易摩擦が、この速度の違う成長を衝突に向かわせる。

LAT November 14, 2010

Experts weigh in: Can the economy be saved?

Los Angeles Times Staff Writer

Nov. 15 (Bloomberg)

Gold Mocks World Spooked By Fed’s $600 Billion

William Pesek


guardian.co.uk, Sunday 14 November 2010

Travails of migration: the Gulf story

Hussain Ahmad

FT November 15 2010

Immigration: Tensions unveiled

By Tony Barber

おそよ2000万人。湾岸諸国に出稼ぎに来る労働者たちにとって、地域の繁栄は「金Gold」でした。それは今、「石炭Coal」に変わりました。インフレも加わって、実質賃金は大きく下落しました。家族と離れて暮らし、ますます帰国は延期されます。移民政策は時代遅れで、低賃金労働者の経験する世界は、ビジネスマン、専門技術者と全く異なります。

欧米諸国の移民政策と保守派、ポピュリストの増大は、Tony Barberの記事で読むことができます。スイス、スウェーデン、オランダ、オーストリアで、移民やイスラム教徒への差別的な政策を求める政治家が支持を得ています。

不況の深刻化と金融危機による福祉国家解体が、政治家への不信を強め、ポピュリストたちの主張を主流派の一部も取り入れる背景となっています。グローバリゼーションによる敗者や衰退地域において、たとえ選挙では勝たなくても、その傾向はなくなりません。


guardian.co.uk, Monday 15 November 2010

Lisbon: the most exciting post-cold war Nato summit?

Simon Tisdall

NYT November 18, 2010

Europe and America, Aligned for the Future

By BARACK OBAMA

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The Economist November 6th 2010

Smart systems: Living in a see-through world

It’s a smart world: A special report on a smart systems

(コメント) 「スマート・システム」・・・何? スマート・システムとは、現実の世界がそっくりヴァーチャルな世界に反映されてしまうようなシステムです。それは、センサーの高度化と小型化、廉価で軽量のセンサーとその情報のワイヤレスによる集積、情報処理の高速化、などが重なって、一気に出現してきた可能性だ、というのです。

私たちの住む街にはビデオカメラが数多く設置され、グーグルのワールド・ビューが監視しています。私たち自身が携帯電話の文字や映像によって世界中から情報を集積し、また、さまざまな取引や決済をクレジット・カードやコンピューターの端末で行います。鉄道、有料道路、公共料金の徴収や身分証明証、e-mailとさまざまな情報交換がインターネット世界で飛び交っており、それらは各地のコンピューターに痕跡を残します。

新しい技術やリベラルな世界秩序を信奉するThe Economistは、ジョージ・オーウェルや「マトリックス」のディストピアよりも、この新しいスマート・システムのもたらす豊かさを歓迎します。情報が集まれば集まるほど、グローバルな市場は効率性や競争的な革新を実現する、というアダム・スミス主義です。

単に食品の安全管理だけでなく、エネルギー利用の効率化やゴミ処理問題、水利用の管理、交通渋滞の解消、都市のインフラ整備、・・・経済システムそのものがデジタル化されて、その資本蓄積をヴァーチャルな世界へ向けて拡大し始めます。新興ビジネスがフロンティアを見出すのは、こうした情報ソフトやシステムの迅速な融合と組み換えを前提に、恒久的更新作業に適する都市インフラを備えた「スマート・シティ」である、と考えます。

もちろん、あなたはラピュタやナウシカを想うでしょう。


The Economist November 6th 2010

Greece’s economic troubles: Pasok and its discontents

Latvia’s new government: And for my next trick

The Fed’s announcement: Down the slipway

Economics focus: Fail safe

The global monetary system: Beyond Bretton Woods 2

(コメント) ギリシャ、ラトビア、アメリカ、ユーロ圏の金融危機回避策を考えさせられます。同じ世界金融危機においても、その対応は非常に異なります。

他方、国際通貨制度は根本的な改革に着手するでしょうか? アメリカは中国の人民元レートや黒字諸国を批判し、中国はアメリカのドル安や量的緩和策を批判し、為替レートの変動を許す新興諸国は米中の身勝手な政策対立と不安定な国際資本移動が自分たちを苦しめている、と考えます。

サルコジが次回のG20で議論すべき改革の論点としては、SDR(ただし、IMFの改革・強化ができるとして)、新興諸国の外貨準備累積(ただし、通貨危機の予防・回避策が充実するとして)、黒字国への抑制策(なぜなら、かつて反対したアメリカは赤字国だから)、が挙げられます。そして、為替レートとマクロ政策を組み合わせたプラザ合意の再生が議論されるでしょう。

将来的には、新興諸国もすでに先進諸国が採用しているような弾力的な変動レート制を取り入れ、このニュー・プラザ合意に合流するのです。アメリカと中国が互いのマクロ政策を調整することに理解を示し、不均衡が新しい成長に向けた資源の再配分として解消される姿を見せ始め、世界各地の企業や投資家たちが市場への信頼を回復するとき、安定性と拡大という世界経済管理のガバナンスは誕生します。

あるいは、その過程は対立や不況、戦争によって中断される。


The Economist November 6th 2010

Myanmar’s elections: The junta takes one small step back

Nordic politics: Love in a cold climate

The Anglo-French defence pact: Divided we fall

(コメント) 各地におけるガバナンスの改革に興味があります。ミャンマーの選挙、北欧連邦、英仏軍事協力体制。いずれも時代を転換する可能性を秘めている、と思います。

日本はどうか? 東アジア共同体や、環太平洋経済連携協定の中に、日本が積極的に関わる政治的変化の兆候を見いだせるでしょうか? 国会や政治家の卑小さを、システムとして排除したいです。