IPEの果樹園2010

今週のReview

11/15-11/20

 

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IPE研究ノート 11/15/10

NHK特集・灼熱アジアの「インドネシア」と「緑色戦争」を観ました。

人口2億人。もうすぐ、ジャカルタでは自動車の占有面積が道路の面積を超える、というナレーションが流れます。庶民にとってはバイクが成功の目標です。金融、という考え方が許されなかったイスラム教徒たち。しかし金融が未発達だったから、欧米で生じた世界金融危機を免れることができました。彼らの暮らしを、次第に、近代的な取引が変化させています。

日本から派遣された、たった二人の社員が、インドネシアでバイク金融のトップを走ります。インドネシア語をマスターした支店長は、他行の追い上げにあって、紛争の頻発する多民族地域にも銀行の事務所を構えます。また、日本の銀行は日本企業と現地企業の取引や提携を拡大して、融資を増やそうとしています。厳しい暑さと、輸送インフラの不足で、これまで扱えなかったバターやヨーグルトなどを製造・販売するため、そのための技術をもつ日本企業と現地の物流企業との合弁企業設立を進めます。

日本企業にとって、成長するアジア市場が大きな機会であるのは明白です。しかし、高齢化し、停滞する日本市場から、たとえ技術力があっても、急速に成長するアジア市場に打って出る日本企業は少ないようです。最初の産業革命を成功させたイギリスが、国内の高級財市場や、植民地市場における高い利潤に満足し、技術革新に後れて、ドイツやアメリカの拡大する市場、特に、第3国市場での競争に消極的であったため、衰退していった、と説明したことを思い出します。

「緑色戦争」とは、環境ビジネスの獲得競争を意味します。特に中国の環境汚染は激しく、政府の信用を揺るがすほどの問題となっています。汚染物質を取り除く装置や処理に関して、日本は優れた技術があると言われました。しかし、今ではわかりません。この特集でも、韓国企業の猛烈な売り込みと低コストの技術力が、韓国政府の支援とともに、強調されています。

番組は、高技術でも高コストの日本企業に比べて、低コストの韓国企業と中国政府と間で、利益を無視した提携が拡大し、他方、汚染処理の効果は疑わしい、と示唆しています。

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投資家を動かす熱気、若者たちの挑戦、競争や成功への情熱、そして、栄光がなければ、日本経済の衰退は逆転できないように思います。

環境ビジネスも、新エネルギーも、都市インフラ整備、データ集積・分析システム、高齢化社会、アニメやアイドルも、次の産業フロンティア、新しいリーディング・セクターかもしれません。技術革新と投資の爆発的な波が、今も、旧産業地帯やアジア、アフリカなどの新興工業地帯・都市群で起きているのかもしれません。それに呼応する技術や投資のパワーを、活気ある社会なら、必ず発揮するはずです。

電車の中で読み始めたThe Economistの特集記事が、Smart Systemを考察しています。それは超小型センサーやワイヤレスによってデータを集積・制御する結果、現実の向こうに広がる新しい情報世界基盤です。・・・ロンドンの配水管が、今、どこで漏れているか、即座に把握・予測する。この牛肉が、どんな飼料を食べ、どこで育てられた牛の肉かを追跡できる。都市の交通渋滞解消のため、走行する自動車から通行料金を徴収し、しかも、それを随時変更できる。都市の水利用を効率化し、浄化処理を進化させて、水の再利用・自給化を進める。さまざまなゴミにセンサーを付けて、それらが最後はどこに行くのかを追跡する。・・・など。

またForeign Policyは、世界の急速な都市化と急速な高齢化を特集しています。NHKクローズアップ現代では、韓国の美少女アイドルたちを紹介しています。ソフトパワー戦略において、日本はアニメやゲーム、Jポップ・ミュージックなどをもっていながら、国家戦略がないと批判します。

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G20で国際通貨制度の改革が議論されることは、ある程度、予想していました。しかし、R.ゼーリックの提案に「金Gold」が含まれることで、論争の関心が人民元レートや経常収支不均衡から、金へ(あるいは、中国人民銀行総裁の示唆したSDRsから金へ)向かったことに驚きました。

為替レートの変動・調整や安定化が意味するのは、それを支える各国の政治同盟・財政構造であり、不均衡を解消する見通しが主要国で得られることでした。ゼーリックはプラザ合意の背後にあった当時のアメリカを紹介します。

国内の改革に目標を掲げて、アメリカや中国、EU、日本が相互にそれを認めること、金のような独立した基準を設けて検証すること、が話し合われそうです。ただし、調整を促すシグナルとして利用できる市場価格は、金よりも、石油や穀物など、さまざまな国際商品を合成した指標が良いと思います。

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人口と新興諸国の成長がもたらす限界は、石油依存や環境破壊、水不足、温暖化の問題となって、文明システム全体の転換を求めています。

同時に、子供たちをゆがんだ競争システムの犠牲にし、その後は、競争システムの道徳的な破綻によって、技術革新と投資の喜びを失ってしまった日本社会に、どうすれば自分たちを躍動させる、自分たちが望む「資本主義システム」を再生できるのか? 社会が受け入れる、「健全な競争」の意味を問い直してほしいです。

世界の支配者がいるとしたら、どのような姿を想像するでしょうか? 王様、将軍、エコノミスト、政治家、・・・孤独な哲学者、砂漠の兵士、歯医者、大工や広告業者、です。どのような分野であれ、天才的に優れた人たちが集まって、危機を打開する制度を設計します。彼らは、Smart Systemによるデザイナーです。

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失業に苦しむアメリカの提案を聞くべきだ ・・・量的緩和策QE2 ・・・世界の住宅・資産価格はまだ高い ・・・失業に苦しむオバマのアジア訪問 ・・・ソウルG20が示すもの ・・・グローバル・ハブ国家の将来 ・・・国際通貨制度に関するゼーリックの提案 ・・・再発するユーロ危機

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


l         失業に苦しむアメリカの提案を聞くべきだ

 (chinadaily.com.cn) 2010-11-03

Beware of wounded lions

By Kenneth Rogoff

G20の指導者たちは、アメリカが提案した貿易収支の数値目標を笑うだろうが、それは危険な火遊びになると知るべきだ。」

2007年以来、世界の失業者は25%増え、3000万人に達すると推定されています。こうした状態が続けば、世界中で貿易戦争が起きるでしょう。怒りに駆られた有権者たちはアメリカの中間選挙でそれを示しました。これは氷山に一角にすぎません。

アメリカが中国からの輸入品に関税を課すことは、その報復を考えないときでも、深刻な自己破壊的行為です。しかし、そうなったときに、人民の不満を動かす政治家たちの力がそれほどまでに高まっていたと気づくのです。

新たに選出された議会は不況の責任をどこかに求め、大統領もいつの日か自由貿易へのイデオロギー的な信奉に疑問を付す日が来るでしょう。2012年の大統領選挙に向けて、何でも起きうる情勢です。

アメリカの国内政策が限界に達し、それでも深刻な状況が続いていることを考えれば、人民元のドル・ペッグを問題にするより、貿易不均衡の上限になる数値を議論することは生産的な振る舞いなのです。アメリカはここに救いを求めています。

もちろん、もっと長期の構造的な要因で決まる貿易黒字に上限を設けることは、不確実であり、その効果的な是正手段もなく、実現は困難です。しかし、アメリカは自由貿易を守ることに非常に苦しんでいることを世界は知るべきです。新興市場が自由化を計画以上に行ったり、ドイツが規制緩和や市場の弾力化を進めたりして、アメリカからの輸出を助けることは可能なはずです。

アメリカの提案をG20が無視すれば、グローバリゼーションの急激な逆転を招くでしょう。

NYT November 4, 2010

Midwest at Dusk

By DAVID BROOKS

「もしバルザックが生きていたら、ニューヨークの真ん中に始まって、ペンシルベニア、さらにオハイオ、インディアナまで行って、ウィスコンシン、アーカンソーにも立つだろう。この地域の労働者階級の家族を描くだろう。」

「なぜなら、ここがアメリカ人の生活の中心だから。こうした場所でアメリカ政治の変遷は決まってきたのだから。もしアメリカがこうした地域の労働者階級にまともな暮らしを再建する方策を見出せたなら、アメリカは将来も支配的な大国であるだろう。それができなければ、アメリカは衰退する。」

中西部は製造業の帝国を失った後、新しい役割を見出していません。オバマを当選させた後、労働者階級は民主党の政策に失望したのです。循環的な不況と失業ではなく、こうした構造的な困難に直面する中西部こそが、政党間の支持を交代させ、アメリカ政治を決定する震源地でした。

「政府に対する強い疑念を持ち、それにもかかわらず彼らは、誰であれ、彼らの町や近隣地区を再生できる者を望む。巨額の政府支出や債務に幻滅し、政府が少なくとも規律や秩序、責任について、彼ら自身の価値観を反映するように求める。こうしてアメリカだけでなく、ドイツ、スウェーデン、フランス、イギリス、ヨーロッパのいたるところで、労働者階級が中道右派の政権誕生に手を貸した。」

FT November 4 2010

Angry America raises the barricades

By Philip Stephens

「アメリカは今や、大統領に背を向け、グローバリゼーションにも背を向けようとしている。」

「アメリカ人は銀行から借りて、中国からの安価な輸入品を消費していた。しかし、そのパーティーは世界金融危機で終わった。」・・・しかも、その富の多くは企業の利潤や重役たちの途方もない高所得になり、中産階級の手に残らなかった。グローバリゼーションとは、この少数の富裕層が称賛したものだった。

もちろん、事実はもっと複雑だ。技術革新や中国・インドの台頭は、中産階級の職場を奪っただろう。有権者たちにとっては、ワシントンも、グローバリゼーションも、非合法移民も、彼らを陥れた陰謀の仲間である。そのような宣伝を繰り返す政治家が確実にアメリカで増えてきた。温暖化ガスの抑制も、彼らの見るところ、国連が企てた世界政府への権力奪取計画だった。

「アメリカこそがグローバリゼーションの設計者だった。矛盾したことに、アメリカの地理的条件、資源、技術優位は、バリケードの中に引きこもるとき、他の誰よりも良い状態を保てるのだ。そうなれば、アメリカ以外の世界すべてが損失を受ける。」

「世界におけるアメリカの役割を縮小させる話が流行している。その友好諸国でさえアメリカの縮小に満足しているようだ。しかし、それが何をもたらすのか、慎重に考えた方が良い。」


l         量的緩和策QE2

FP NOVEMBER 4, 2010

The Goldilocks Number?

BY PHIL LEVY

アメリカ連銀が6000億ドルの政府証券を購入して資金を供給する。それに対する各国の反応はさまざまだ。

「正しい、賢明なこと」(バーナンキ)、「予想通り」(市場関係者)、「不十分」(ゴールドマンサックス)、「過剰だ、インフレだ」(カンサスシティ連銀総裁)、「ユーロを上げる気だ」(フランス財務大臣)、「さらなるドル安だ」(中国)

輸出を伸ばして需要を奪い合うより、バーナンキの量的拡大策の方が好ましい。

SPIEGEL ONLINE 11/05/2010

Germany Blasts Bernanke

Results of Fed Stimulus Could Be 'Horrendous'

ドイツのWolfgang Schäuble財務大臣がアメリカの量的緩和策を厳しく批判しました。中国のZhou Xiaochuan人民銀行総裁も、ドルの流出による新興諸国への悪影響を批判します。

guardian.co.uk, Saturday 6 November 2010

Ben Bernanke's QE2 is misguided

Chris Payne

量的緩和策は、金融危機を引き起こした最初の状態に戻ることだ。しかし、家計は債務を減らすことに執着し、さらに貯蓄するだろう。つまり、QE2は成功しないだろう。

ケインズが示唆したような、公共工事で穴を掘り、次の公共工事でそれを埋めるような、過激な対策が検討されるかもしれない。

FT November 7 2010

Germany attacks US economic policy

By Ralph Atkins in Frankfurt

NYT November 7, 2010

Doing It Again

By PAUL KRUGMAN

大恐慌の再現を防いだ、と自負したはずのバーナンキが、フリードマンの連銀批判に再び応えなければならない状況です。

財政政策も金融政策も反対派に対して臆病すぎた、とPAUL KRUGMANはオバマやバーナンキを批判し、同時に、激励します。その結果、アメリカの過去数年は、デフレに苦しんだ日本経済のデータと一致してしまっている。

「量的緩和策」は、バーナンキも言うように、通常の金融政策の延長であり、正常に機能するだろう。今度の反対派は外国政府だ。彼らは自国の通貨の増価を嫌っている。しかし、PAUL KRUGMANから見れば、彼らこそトンデモナイ偽善者です。

「要するに、中国を見よ。世界史上かつてないほどの通貨操作を行っている。それは世界中に害悪を及ぼしているのだ。その中国が『自国の規律を回復せよ』と言ってアメリカ政府を攻撃する。あるいはドイツだ。その経済水準は莫大な貿易黒字の上に浮かんでいる。それでも、アメリカの貿易赤字を批判する。他方で、アメリカが貿易赤字を減らすのに役立つドル安については痛罵する。」

しかし、本当に深刻な攻撃は国内のインフレ警戒論です。日本型デフレに確実に向かっているアメリカ経済の中で、彼らは、インフレがすぐそこまで来ているぞ、と警鐘を鳴らす。

つまり、「量的伊緩和策」の問題とは、それが大き過ぎるのではなく、小さ過ぎるということです。もしバーナンキもオバマのように反対派と妥協すれば、21週間を超える失業者1500万人がさらに苦しむだろう。その代償を誰が支払うのか?

FT November 9 2010

The Federal Reserve is right to turn on the tap

By Martin Wolf

アメリカ連銀が開放したドルの洪水によって世界は呑みこまれてしまう、という絶叫が上がりました。しかし、日本がそうであったように、量的緩和策は致死的というより、無効であるという結果の方がありそうなのです。「これは所詮、水漏れであって、ノアの大洪水ではない。」

では、なぜ連銀はこれを行うのか? 大量失業が示すように、アメリカはデフレ状態にあるからです。しかし、中央銀行が政府債務を融資することは、ワイマール共和国とハイパーインフレを準備するのではないか? ドイツや中国はアメリカを批判し、アメリカはまるでギリシャのように財政破綻する、ドル安は世界の通貨戦争を加熱する、「近隣窮乏化策」だ、と言われています。

Martin Wolfは、どれも的外れだ、と考えます。ただし、連銀はもっと良い政策を取るべきなのです。たとえば、長期のインフレ目標を示して人々のインフレ期待を高める。あるいは、追加の財政支出を貨幣化する方が効果的です。同様に、企業や家計の過剰債務を軽減する方策に資金を供給するべきでしょう。

しかし、新しく選出された下院では、「ノアの大洪水」や、空が落ちてくるのを心配する政治家たちが大きな力を得ています。だからアメリカは、連銀の「量的緩和策」しか利用できないのです。

 (China Daily) 2010-11-09

Unknown consequences


l         世界の住宅・資産価格はまだ高い

FT November 4 2010

Time to end the denial over mortgage debt

By Carmen Reinhart and Vincent Reinhart

住宅債務を救済することが重要です。しかし、それだけでは景気回復に不十分です。消費税を減税すること。財政規律の回復を義務付けること。連銀は、長期的に信頼される形で、量的緩和策を実施すること。

guardian.co.uk, Friday 5 November 2010

Foreclosures and banks' debt to society

Joseph Stiglitz

アメリカ経済の急速な回復には、「住宅所有者の破産法」が必要だ。

WP Friday, November 5, 2010;

The problem with the economy? Confidence.

By David M. Smick

数兆ドルを財政資金と金融緩和で注いだ揚げ句、GDPはほとんど成長しない。なぜ刺激策は思ったほどの効果を生まないのか? Krugmanの説では、その規模が小さすぎたから、と言うが、それはトートロジーだ。もしもっと大規模な刺激にも効果がなければ、また規模が小さすぎたと言うだろう。

David M. Smickは、世界の金融資産市場がまだ過大評価されている、という仮説を取り上げる。銀行の資産として不動産や国債が保有されているけれど、バブル崩壊にもかかわらず、政府の対策はそれらの価格を十分に下げないまま維持している。アメリカの不動産価値は、歴史的に観てまだ高すぎる。不動産と住宅モーゲージの価値はGDPに対して56%であり、それは1960年代、70年代に29%、1990年代後半でも38%だった。

この議論は、財政赤字の膨張が増税やインフレをもたらす、と投資家や消費者が不安になり、景気の回復を阻んでいるという仮説に結びつく。オバマの当選が楽観的な見方を広めたことは、逆に、今の悲観を深めている。刺激策には時間がかかるからだ。

中間選挙で、共和党は安直な対策を売り込んだ。それはアメリカ経済の苦境を簡単に理解し過ぎている。アメリカには解決に時間のかかる構造的問題がある。たとえば、融資プロセスには障害があり、人的資本は不足し、税制が国際的な競争力を殺ぎ、生産するより金融証券の売買にふける傾向を強めている。ブッシュ時代、住宅ローンの借り換えがもたらした消費は成長率を1%高くしていた。それが失われたことが今の失業をもたらしている。

アメリカ政治は、国民に楽観を回復させる方法を見いだせるか?


l         失業に苦しむオバマのアジア訪問

WP Thursday, November 4, 2010; 9:09 PM

Goals for Mr. Obama's trip to Asia

FT November 5 2010

Partners in Delhi

FP NOVEMBER 5, 2010

A New 'New Beginning'

BY JAMES TRAUB

NYT November 5, 2010

Exporting Our Way to Stability

By BARACK OBAMA

もちろん、これはアメリカ国民に向けたオバマの呼び掛けでしょう。しかし、アメリカ大統領の言動には、常に世界が注目しています。アメリカが輸出を増やして雇用を増やす、と唱えることは、世界にとって深刻なメッセージかもしれません。

だから急速に成長するアジアを訪問することが重要だ、というのも、微妙な齟齬(アメリカ製品のセールスマン)を感じます。アジアがアメリカに期待しているのは、市場としての開放性であり、ドルの安定した価値であり、国際安全保障における貢献だ、と思うからです。

インド、インドネシア、韓国、日本。・・・中国は含まない。人口と経済規模、そして、民主化の使命で選択したようなアジア外交です。あるいは、G20ではG2の論争になることを予想して、その後の交渉に備えたのでしょうか?

・・・インドは素晴らしい。中国に対抗できる。・・・インドネシアは素晴らしい。近代化し、民主化した、2億人のイスラム国家だ。・・・韓国は素晴らしい。その企業の活力、グローバルな躍進。・・・そう言えば、日本にも行くのか? 何のために?

とにかく、アメリカは雇用を増やすためなら何でもするつもりだ。

YaleGlobal , 5 November 2010

Obama in India: Taking the Partnership Global

Teresita C. Schaffer

NYT November 5, 2010

Working With India

FT November 6 2010

Rancour pursues Obama on Asian journey

By Edward Luce

guardian.co.uk, Sunday 7 November 2010

What is driving China's recent thuggish approach to foreign relations?

Ian Buruma

中国政府の予想外の対応をどう考えるべきか? ノーベル平和賞の授与に対する政府を挙げての反論と関係者の拘束、中国漁船をだ捕して船長を逮捕した日本の措置に対する執拗な嫌がらせ。それはまるで、中国の平和的な台頭を受け入れていたアジア諸国を不安に陥れ、アメリカや日本との関係をもっと重視させるために、中国が威嚇したようなものでした。

それは、マルクス主義の衰退以後、中国共産党による政治的支配の正統性が経済成長とナショナリズムに依拠するようになったからです。Liu Xiaoboは複数政党による選挙を唱えました。幼稚園から教え込まれた西洋の陰謀や弱腰の日本は、ナショナリストにとっての攻撃の的です。

FP NOVEMBER 8, 2010

Talking to Main Street, China

BY YASHENG HUANG

guardian.co.uk, Tuesday 9 November 2010

Japan's dangerous deglobalised dream

Guy Sorman

日本と韓国の対比で、アジアにおける、グローバリゼーションからの退行と飛躍を論じます。

The Guardian, Tuesday 9 November 2010

Is China really the new superpower on the block?

Aditya Chakrabortty

LAT November 9, 2010

Will India step up?

NYT November 9, 2010

Containment-Lite

By THOMAS L. FRIEDMAN

アメリカがインドに接近する政策を、「軽い封じ込めContainment-Lite」と呼びます。すなわち、オバマは、1.中国の最近の行動がアジア諸国に「中国封じ込め」を準備する条件になった、2.しかし、インドは非同盟諸国の外交を長く追求してきた、3.しかもインドは、アメリカが衰退し、中国が台頭し続けることを予想している。これらを考慮して、「軽い封じ込め」を準備しなければならない。

YaleGlobal , 10 November 2010

US in Asia: Seeking Partners at a Troubled Time – Part I

Ashok Malik

guardian.co.uk, Wednesday 10 November 2010

The view from Beijing tells you why we need a European foreign policy

Timothy Garton Ash

FT November 10 2010

Beijing’s elevated aspirations

By Geoff Dyer in Beijing

WSJ NOVEMBER 11, 2010

Spooked by China's Hawks? So Are the Chinese

By DAVID ZWEIG


l         ソウルG20が示すもの

FT November 5 2010

Protect against the lure of protection

金融危機にもかかわらず世界貿易はすでに2008年半ばの水準を回復しました。世界経済は回復しつつあります。大恐慌の記憶やG20の協調姿勢が保護主義を阻んだと言えるでしょう。ただし、見えにくい形で、国内産業を保護する試みは現われています。

FT November 7 2010

Steering the world’s economy

Nov. 8 (Bloomberg)

G-20 Needs More Than Luck to Avoid Lost Decade

William Pesek

13年前、韓国は今のスペインであり、タイはギリシャ、つまり、「炭鉱のカナリア」だった。G20は日本に注目する。なぜなら、アメリカやヨーロッパを日本のように10年間も停滞させてはならないから。

そこで、韓国が重要になる。韓国のたどった道こそ、世界経済を「日本化Japanifaction」しないための指針である。なぜなら、2年前は韓国が次のアイスランドになると思われたから。起業は短期債務に頼り、国全体がヘッジ・ファンドのようだった。しかし、その後の措置は疑念を払しょくし、今も4.5%で成長している。

1990年代、韓国は弱い企業・銀行を、その規模に関わらず、整理した。長期金利は維持された。国民に犠牲を求めたのだった。日本の失敗は、その対策が臆病な政府によって回避され続けたことだ。企業や銀行の整理は進まず、潤沢に資金供給された。20年後も、日本は工業諸国中で最大の国債残高を示し、デフレが続き、中央銀行は尊敬されていない。

アメリカは、議会が認めなくても、すでに「日本病」にかかっている。日本が今も莫大な貯蓄をしている点で、日本病はアメリカにとって幸せなことかもしれない。結局、日本では、大量のホームレスが発生せず、犯罪率も大幅に上昇せず、国債市場も崩壊していない。

アメリカは韓国の教訓を無視し、連銀がゼロ金利で資金供給を増やして、日本の道に従いつつある。それはアジア諸国でバブルをもたらすことで、世界経済に景気回復の間違った印象を与えるかもしれない。

WP Monday, November 8, 2010;

As G-20 summit nears, China is unlikely to budge on currency

By Robert J. Samuelson

世界経済の均衡回復に向けた調整策は明らかだ。世界の富裕諸国、特にアメリカは過剰に支出し、より貧しいが工業化した諸国、特に中国が過剰に貯蓄してきた。金融危機でアメリカの支出は減り、このままでは、減少した世界需要を各国が奪い合うことになる。為替レートの操作や保護措置の要請が強まっている。

しかし、中国は人民元レートを変えない。国内需要を増やす方法があるのに、それをしない。GDPに比べて50%の貯蓄率は高すぎる。たとえば、社会保障を整備すれば、病気や老後を心配せずに消費を増やすだろう。銀行は預金金利を引き上げ、企業は投資するより配当を増やすべきだ。

温家宝首相は、人民元レートについて圧力をかけるな、と警告した。輸出企業が倒産して失業が増えるからだ。中国に経済的・社会的混乱が起きれば、世界が苦しむぞ、と。このような主張を、すでに失業に苦しんでいる諸国は受け入れ難い。

FT November 8 2010

The G20’s seven pillars of friction

By Gideon Rachman

2021世紀の国際政治に向けた対立の構図を示しつつある。それはアメリカ派と中国派に二分されるのではなく、7つの対立軸をもっている。

1.黒字国と赤字国。2.為替と金融の市場操作、3.財政拡大と緊縮、4.民主主義と官僚主義、5.西側と新興諸国・反対派、6.法的強制と自発的同意、7.大国と小国。

WSJ NOVEMBER 8, 2010

Laying a Foundation for the Next Era of Growth

By JULIA GILLARD

WSJ NOVEMBER 8, 2010

Obama Versus the Dollar

FT November 8 2010

Keep the faith: the G20 can stop the war

By Kemal Dervis vice-president of the Brookings Institution and former minister of economic affairs and the Treasury of Turkey

20のコミュニケを見て、期待はずれだった、と結論するのは間違いだ。確かに、通貨戦争を止めようとした前回の合意は、アメリカの量的緩和策に対する反発の声に流された。経常収支の不均衡に上限を設ける提案も、実際の中身は合意できず、議論を先送りした。G20が世界経済を管理する新しい集団として信用を得る機会は失われたように見える。

しかし、Kemal Dervisは国際経済協力の進展があった、と考えます。第一に、協力の焦点は個々の政策より「結果・実績」に移された。為替レートがどうなるかより、経常収支不均衡の大きさが問題だ。かつて日本がそうであったように、急激な円高が進んでも黒字は解消しなかった。

第二に、問題を米中対立にとどめず、ドイツや日本の黒字、アメリカの赤字も含めて議論し、より多角的、対称的に処理する枠組みを求めた。また、多くの新興諸国が心配する資本流入も、先進諸国の低金利がもたらした問題の一部である。

第三に、IMFの強化・改善につながった。かつてG7はIMFを無視し、新興諸国はIMFを嫌っていた。今では彼らもIMFの監視機能を重視している。IMFのガバナンスも、クォータや理事の配分を変えて改善された。

最後に、定期的な会合を持つことで指導者たちの間の個人的親密さ、信頼感が高められた。それは危機の時代に協調を維持する重要な条件である。

FT November 8 2010

Don’t be too à la carte at Seoul’s high table

By Yvette Cooper

FT November 9 2010

Imbalances cloud 20/20 vision

By Alan Beattie

FT November 9 2010

Group of Twenty leading squabblers

SPIEGEL ONLINE 11/09/2010

A Distorted Global Economy

By Christian Reiermann

世界金融危機の後、各国は内外の歪みを調整する必要があるでしょう。

しかしドイツから見れば、自国の輸出産業で雇用を維持するために人民元の増価を抑える中国も、自国の失業率を下げるためにドルの供給を増やし続けるアメリカも、どちらも競争的に通貨を安くする間違った政策なのです。

二人の巨人がぶつかる世界は、破滅的な将来を予見させます。世界第二の輸出国であるドイツにとって、今はまるで世界不況の前夜です。保護主義と通貨価値の切下げに圧倒された1930年代が再現した、と感じる者が増えています。

guardian.co.uk, Tuesday 9 November 2010

It's time to reject the Washington consensus

Ha-Joon Chang

20はどのような発展を目指すのか? 韓国の歴史は、発展モデルの異なる未来を刺激する。半世紀前には、韓国の一人当たりGDPは50ポンドに過ぎず、それは当時のガーナの半分以下だった。しかし今では、1万2000ポンド、ポルトガルやスロベニアに等しい。

韓国の発展は、インフラや健康、教育への投資が重要であることを示している。しかし、それ以上に、保護と輸出補助金とを組み合わせた選別的な産業政策、直接投資の規制、国営企業の積極的な利用、特許や知的所有権の緩やかな実施、内外の金融に対する厳しい規制、が行われた。

G7は常に、こうした「異端的な」開発政策を支持しなかった。彼らは「ワシントン・コンセンサス」の政策パッケージ、すなわち、規制緩和や民営化を誰にでも適用した。韓国を例外と見なしたのだ。しかし歴史を見れば、イギリスも、アメリカも、ドイツ、フランス、日本も、発展の初期には、韓国の開発モデルと非常に似ている。

すべての国に当てはまるモデルは無い。成功した例を自国に適応させることだ。自由貿易や規制緩和を求めるより、「幼稚産業」の保護や産業政策も必要だ。そして、経済援助はその量とともに質を重視しなければならない。

NYT November 9, 2010

The Fed vs. the G-20

FT November 9 2010

China can afford to stand firm in Seoul

By Yao Yang

中国はG20でアメリカの求めるプラザ合意Uを断固として拒否する。むしろアメリカは、その量的緩和策が及ぼす破壊的影響を認めるべきだ。

中国の政策を、あたかも世界とのゼロサム・ゲームとして非難するのも間違っている。中国は世界に安価な財と信用を供給している。また、中国の輸出の55%は外国企業によるものだ。

QE2は、中国の受動的な切上げを狙ったものだろうが、それは日本型のバブルを生じて、日本と同じような停滞した中国をもたらす。

FT November 9 2010

Group of Twenty leading squabblers

FT November 10 2010

The eurozone’s stark lessons for the G20

By Alan Greenspan

開放型の世界貿易システムと、それを支える国際金融システムとを、G20は支持しなければならない。

Alan Greenspanは、こうした開放型の経済システムと対比して、ユーロ圏の国家間財政・金融管理システムがあり、その実効性は疑わしい、と主張します。

また、中国など新興諸国が成長を実現できたのも世界貿易の拡大が続いたからであり、彼らが一方的に為替レートを固定し、外貨準備を増やしたことは、国際金融システムの機能を妨げた、と批判します。それゆえ、アメリカの量的緩和策も、新興諸国の外貨準備累積も、ともにIMFやG20が監視し、制限するべきなのです。

ユーロ圏の政府管理体制より、また、新興諸国の資本管理体制より、開放型世界貿易の維持が何より重要だ。

guardian.co.uk, Wednesday 10 November 2010

The G20 summit dodges real reform

Martin Khor

20もIMFも、最も重要な問題を避けている。たとえば、為替レートの効果的な調整、秩序ある(民間・政府)債務処理、国際準備の改革、である。それらが見いだせなければ、次の通貨危機は防げず、各国は競争的な切下げや外貨準備の蓄積を止めないだろう。

SPIEGEL ONLINE 11/10/2010

Merkel Prepares for G-20

ドイツのWolfgang Schäuble蔵相は、「アメリカには多くの問題がある。しかし、ドイツの貿易黒字はそれに含まれない。」と批判しました。ドイツの黒字は、中国のように為替レートを操作した結果ではなく、ドイツが競争力を改善してきた結果なのです。

WP Wednesday, November 10, 2010;

G-20 summit shouldn't overlook the poorest countries

By Lee Myung-bak

韓国のLee Myung-bak大統領が参加者に訴えます。裕福な大国ではなく、世界の最も貧しい人々の問題がわれわれの問題の解決策になる、と。

20の写真撮影会が終わった後で、われわれは最貧国のインフラ整備や人的資本、生産力拡大に向けた開発基金を設けるべきだ。それは世界の成長とG20の正統性を高めるだろう。

Nov. 10 (Bloomberg)

U.S. Should Cut China Slack on Valuing Yuan

Laurence Kotlikoff

WSJ NOVEMBER 10, 2010

G-20 Nears Pact but Tensions Still Fester

By DAMIAN PALETTA, JOHN LYONS And JONATHAN WEISMAN

guardian.co.uk, Thursday 11 November 2010

China is hoping for spirit of co-operation at G20 summit

Liu Xiaoming

SPIEGEL ONLINE 11/11/2010

The World from Berlin

'G-20 Solidarity Is Crumbling'

FT November 11 2010

How the G20 glasshouse is under attack

By Mark Malloch-Brown

20が韓国で開催されることは喜ばしい。これによって従来の西側の認識を是正する機会が得られるだろう。西側の政策が世界に及ぼしている影響についても反省できる。しかし、実際に集まる前から、合意よりも対立が刺激されている。

20は最初の意図に反して、世界経済管理にとって有効な解決策を示せず、国際制度改革のための政治的な代表権限も疑われている。G8でも、国連総会でもない、世界経済の代表と改革の正統性を与える制度が必要である。

FT November 11 2010

G20

(China Daily) 2010-11-11

No need to revalue yuan to help US

WSJ NOVEMBER 11, 2010

China's Hu Rebuffs Weakened Obama at Summit

By JONATHAN WEISMAN and DAMIAN PALETTA


l         グローバル・ハブ国家の将来

WP Sunday, November 7, 2010;

Can Obama win in 2012 if the economy is still down? Ask FDR.

By H.W. Brands

LAT November 8, 2010

Spreading the wealth

By Michael I. Norton and Dan Ariely

NYT November 8, 2010

The Crossroads Nation

By DAVID BROOKS

アメリカは、中国やインドがますます工業力や情報産業まで含めて新しい中心地となる過程で、何を自分たちの核に据えたらよいのか、分からなくなっています。

もし創造的な人が国内であれ、世界の辺境であれ、どこかにいて、2010年、2025年、2050年に、彼・彼女が自分の能力や希望を満たすために仲間を見つける旅に出たとすれば、どこにたどりつくだろうか? ファッションならパリ、工業技術ならドイツ。しかし、多くの分野で、人材はアメリカに集まる、とDAVID BROOKSは考えます。

アメリカには、世界言語としての英語があり、素晴らしい大学があり、腐敗を免れた政治システム、知識への保護、ヴェンチャー・ビジネスを助ける資金があります。アメリカは普遍的国家であり、世界のいたるところにコネクションを持ち、移民を受け入れています。親族や部族によらない、さまざまな社会ネットワークが発達し、大規模で効率的な組織が構築できます。アメリカ人は親や職場のボスに挑戦し、権威に服従しようとしません。

21世紀の経済権力は20世紀と異なるでしょう。情報ネットワークに依拠した世界では、創造力はネットワークの集中するハブに集まります。政治・経済のグローバル・ハブを集約したアメリカこそ、圧倒的な政治経済権力を発揮するのです。


l         国際通貨制度に関するゼーリックの提案

FT November 7 2010

The G20 must look beyond Bretton Woods II

By Robert Zoellick

何のために国際協調するのか?

1980年代にG7が国際協調を試みたとき、プラザ=ルーブル合意は為替レートに注目した。しかし、その政策の基礎はさらに深かった。ベイカー財務長官に率いられたアメリカ政府は、議会における保護主義の要求に抵抗するため、通貨に関する協調を、ウルグアイ・ラウンドの推進や、カナダ、メキシコとの自由貿易圏と組み合わせたのだ。国際的な指導力は、アメリカの競争力を高める国内政策と一緒に機能した。

こうした「パッケージ・アプローチ」は、成長の基礎的条件を改善することに向けられた。それは、現在の構造改革に匹敵する。たとえば、1986年の税制改革は、タックス・ベースを拡大し、限界所得税率を下げた。ベイカー財務長官は、G7の財務大臣や中央銀行総裁たちと協力して、民間部門の信頼を回復した。

20も、成長のための国内改革、開かれた貿易体制、為替レートの協力、という「パッケージ・アプローチ」を継承するべきだ。

第一に、経済の基礎的条件を改善する。G20は、単に需要のバランスを回復するだけでなく、成長を加速するために構造改革の課題を合意する。たとえば、中国は5カ年計画で輸出よりも国内消費・サービスを重視する。アメリカは支出と債務の関係を見直し、将来の成長を損なわないようにする。米中は成長回復の計画に合意し、中国の為替レート調整(増価、あるいは、ワイダー・バンド)と、アメリカの市場開放を約束する。

第二に、G20、特にG7諸国は、率先して為替介入を止め、成長のための構造改革を実行する。第三に、変動レートと次の国際通貨制度に依拠して成長できる(ホット・マネー対策での協力などを含む)ように新興市場を改革する。第四に、発展途上国におけるボトルネック(インフラ、教育、健康、熟練)を解消して、世界市場における需要を倍増させる、第五に、新しい条件を反映した国際通貨制度を考える。それはドル、ユーロ、円、ポンドを併用した国際制度であり、国際化・資本自由化を受け入れた人民元を加える。

また、インフレやデフレ、通貨価値に関する国際的参照基準として、金が利用できるだろう。市場は今も金を国際通貨の一つとして使っている。

こうしてできる国際通貨制度が、1971年以来のブレトン・ウッズUを継承することが、今後の通貨不安を抑え、市場の信頼を高める上で重要だ。

FT November 8 2010

Gold digging at the World Bank

世界銀行のRobert Zoellick総裁は、ケインズが「野蛮な遺物」と呼んだ金本位制に回帰することを提案した。

世界経済に金が重要な役割を果たしているとは言えないし、金の価格が安定しているとも言えない。金を通貨価値(為替レート)の安定化に結びつけるのは神話である。

金本位制を採用すれば各国の政策協調は実現するだろうか? もし各国が金融政策の決定を放棄できれば、それは実現する。経常収支の不均衡は金本位制が調整するだろう。しかし、それほどの政治的意志があるなら、もっとよいアンカーがあるだろう。

おそらくゼーリックは、G20に参加していない他の世銀加盟国、167カ国の関心を引きたかったのだろう。また、グローバルな通貨制度改革の議論を喚起したかったのかもしれない。どちらも正しい目標だが、金がその答えではない。

FT November 9 2010

A golden opportunity for monetary reform

By Robert Skidelsky

世界の通貨制度は、かつてアメリカが反対したケインズに由来するアイデアで、つまり、ガイトナーの経常収支不均衡に対する抑制、プラス、ゼーリックの通貨価値に対する金の目盛、プラス、韓国・アジアの国際資本移動に対する規制と為替レートの円滑な調整、が実現する方向に進むかもしれない。

ケインズ案は、清算同盟における各国の勘定で不均衡を決済し、その幅によって、赤字国と黒字国に圧力をかけようとした。ケインズ案は、資本規制と、さらに資本流出に対抗する国際通貨・準備資産「バンコール」を創設した。金は、立憲君主にもなれるが、暴君としては「野蛮な遺物」だ、と考えた。

しかし、ケインズ案は1944年にアメリカによって拒まれた。今、アメリカの提案は、中国によって拒まれる。中国は節約のためにSDRを資産として求めるが、米中どちらも通貨主権を失うつもりはない。しかし、より多極的な世界の秩序にはふさわしいだろう。

WSJ NOVEMBER 9, 2010

Palin's Dollar, Zoellick's Gold

ペイリンとゼーリックはイデオロギーが全く異なるけれど、同じように、金本位制への復帰を支持したように見える。しかし、金1オンスの価格は、35ドルから1400ドルに上昇している。

NYT November 10, 2010

Back to a Gold Standard?

ゼーリック提案に対する専門家たちのコメントです。

Douglas Irwin: 金に固定すれば通貨の価値は安定するのか? 全く違う。金本位制を採用していたから、世界大恐慌はあれほど悪化したのだ。為替レートを固定化することで金融政策を妨げる試みはすべて失敗する。たとえ他国がアメリカの金融政策に不満を持っても、「ドルはわれわれの通貨だが、その問題はあなたたちのものだ。」と、J.コナリーのように答えよう。

Jeffrey Frankel: ゼーリックは金本位制なんて考えていないだろう。ドルの支配的な地位は失われたのであり、今後は、ユーロ、円、スイス・フラン、ポンド、将来の人民元。という複数の準備資産が利用される。その一つに金も入るだろう。

Simon Johnson: どれほど偉大な錬金術師の手にかかっても、金に魔力は無い。問題は、アメリカの高失業率、金融システム不安、財政赤字である。金本位制はそれらを解決できない。それは大恐慌と結び付いた「安定性」であり、現在のような人民元レートの調整にも役立たない。

Russell Roberts: 金本位制に戻ることは間違いだ。しかし、連銀の政策を縛ることは正しいだろう。金融救済を繰り返して、利益を得たのは最富裕層だ。極端な低金利で生産的な投資も無視された。連銀は、資本主義も民主主義も破壊した。

FP NOVEMBER 10, 2010

Fool's Gold

BY MARK T. WILLIAMS


l         再発するユーロ危機

Nov. 9 (Bloomberg)

Euro Crisis Enters New Phase With Credit Squeeze

Daniel Gros

「ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペインに施された生命維持装置が、今また、危機に瀕している。ユーロ圏の高債務諸国は、中央銀行からの融資を得られなければ、財政赤字の危機を生き延びることはできない。」

ドイツの銀行システムが崩壊するのを防ぐために金融安定化取極に参加しましたが、その条件として、救済融資に民間資本の参加 “bail-in” を求めています。もし救済融資からECBが外れるなら、生命維持装置は外された、と見て、危機が起きるでしょう。ECBが参加すれば、債務の削減を必要とした場合、ECBと民間資本の負担はどうなるのか?

SPIEGEL ONLINE 11/11/2010

Dublin's Merkel Problem

Irish Debt Causing New Jitters Across Europe

FT November 11 2010

Irish contagion hits wider eurozone

By Peter Spiegel in Brussels and David Oakley in London

FT November 11 2010

Privatise Irish woes

WSJ NOVEMBER 12, 2010

Europe Needs a California Dream

By URI DADUSH AND MOISéS NAíM

同じ世界不況に直面しながら、ヨーロッパの赤字諸国とカリフォルニアは異なった対応と回復過程をたどっている。なぜか?

カリフォルニアの失業率は12%であり、アメリカでもっとも高く、EU平均より3%も高い。カリフォルニアの住宅価格は2007年以来、37%も下落した。ヨーロッパでは下落がもっと穏やかだ。税収の落ち込みと財政赤字の増大も、カリフォルニアの方がヨーロッパの赤字国より2倍もひどい。政治の紛糾で新しい都市が始まって100日も経つのに予算が成立しない。

それでも、カリフォルニアはEUよりも財政・金融制度が優れており、金利の上昇や財政赤字の累積がはるかに小さかった。優れた債券を発行する州と財源を共有しており、財政赤字の均衡化や債務の発行制限に法的な強制力があるからだ。債券市場は、破綻した場合、州が法に従って処理されることも知っている。

EUの赤字国は、ドイツに比べて競争力が大幅に低下してしまった。カリフォルニアでは、そんなことは起きていない。ヨーロッパよりも競争が激しく、危機後の労働者の移動や産業再編も迅速に行われている。GDPの落ち込みはカリフォルニアの方が小さかった。

つまり、EUは学ぶべきだろう。労働市場、金融・財政支援、財政規律、債務削減、などを明確に制度化するべきなのだ。


NYT November 9, 2010

Why Rush to Cut Nukes?

By JOHN R. BOLTON and JOHN YOO

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The Economist October 30th 2010

Angry America

Obama and the mid-terms: How did it come to this?

America’s economy: Not by monetary policy alone

Talking to the Taliban: The end of the beginning

Mexico’s economy: Bringing NAFTA back home

Britain’s banking supremo: King plays God

(コメント) 中間選挙の敗北について、記事は不況・失業に対する不満を投票で示した、と理解します。その原因は、オバマが重要法案を議会の民主党多数派に委ねたことでした。財政刺激策も、医療保険制度改革も、金融改革法も、安物の内容に終わった。マクロ経済で正しい方針も、民主党議員や労働組合のミクロな分捕り合戦で無意味になった。

2008年にオバマを熱狂的に支持した進歩的な有権者は、その理想が失われたと感じた。医療保険制度も移民法も、正しい改革を行っていない。温暖化対策も、イラクやアフガニスタンからの撤退も、オバマは約束を破った。グァンタナモの閉鎖は進まない。だから、彼らは投票しませんでした。彼らが2012年にどう動くかはわかりません。

財政政策が機能しないから、金融当局にはマクロ経済を回復させる圧力が増します。財政赤字は長期的に深刻だが、短期的には景気回復が重要だ。それを合わせて示すような中期の計画を示すべきだ、と主張しています。

むしろ、面白かったのは、タリバンとの和平交渉や、メキシコ経済がNAFTAを生かせない理由、イングランド銀行のキング総裁がメガ・バンクの解体を支持した発言、でした。戦争は必ず終わらねばならないし、自由貿易圏もそれが発展をもたらす保証はなく、銀行の規模を拡大しても金融秩序が安定するわけではないのです。