IPEの果樹園2010

今週のReview

11/1-11/6

 

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IPE研究ノート 11/1/10

IPEとして貿易論を説明しながら、それが自給自足と世界市場統合との間にある、複数国家体制のことだ、と思いました。国民国家と資本主義システムとは、国際秩序の二つのエンジンです。

自由貿易論は、しばしば、肝心なことを述べていません。国内価格よりも輸出価格は高い。輸入価格は低い。だから輸出には利益があり、輸入にも利益がある。・・・そうでしょうか? しかし、輸出を増やせば、その国が本当に成功するのかどうか? 輸入を増やせば、その国が望ましい経済構造や政治秩序、満足する社会に至るのかどうか? 自由化が本当に何を実現するかはさまざまであり、必ずしも支持できないのです。

だから自由化の成否は歴史を見なければわからない、という意味で、2003年のFinancial Timesに載った記事(Timothy Guinnane, “Bavaria and the case for free trade,” FT February 13 2003)を私はいつも紹介します。1834年、ドイツ関税同盟に参加するべきかどうか、バヴァリアは難しい選択に直面していたのです。170年余を経て、20倍になった所得水準で、漸く、バヴァリアはその答えを得たでしょうか? しかし、この答えに当時の破産した農民たちが満足するとは思えません。

CP.キンドルバーガーは、1870年からの穀物価格の下落に対して、ヨーロッパ各国が異なった対応を取った、と指摘します(C. P. Kindleberger, “Group Behavior and International Trade,” in Comparative Political Economy: A Retrospective)。イギリスは安価な小麦を輸入し、国内の農家が破産するのを放置しました。他方、ドイツは東部のユンカー階級が新興の製鉄産業資本家と政治的な同盟関係を結び、国内農業を保護した、というA.ガーシェンクロンの分析を支持します。さらに、フランスでは様々な事情から農場を支持する意見が強く、農業全般が保護されました。そして、イタリアは国土統一の熱気とは別に、社会が分断されたままであり、農民層への保護は弱く、彼らが外国へ移民として流出することを放置しました。

キンドルバーガーが特に注目しているのは、デンマークの対応です。デンマークは社会的な結束の強い、中規模農家が支配的な国でした。この程度の小国で世界市場の変化に対抗する道は無く、その意味で、保護を選択することはできませんでした。しかし、彼らは農家が単に市場圧力によって消滅することを好まなかったのです。安価な小麦を輸入しつつ、農家の酪農への転換を支援します。戦争によって領土を奪われたことが、逆に、デンマークの国民意識を高め、農民を支援する制度(農業学校や協同組合)が広まった、と考えます。

これは、経済学が説明しない、しかし重要な経済外的要因なのだ、とキンドルバーガーは主張します。社会学や心理学を知るべきだ、と。以下のReviewにも、緊縮財政をめぐるフランス、イギリス、アメリカの政治的葛藤と「文化」の違いが指摘されています。あるいは、中国の台頭が国際秩序にもたらす意味は、ドイツやアメリカ、日本の台頭と比べて、さまざまな要因で理解しなければならない、非常に異なった、おそらく、鋭い政治的軋轢を生じるのです。

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チママンダ・ンゴズィ・アディーチェというナイジェリア出身の作家を、私は全く知りませんでした。たまたま、彼女が書いた『半分のぼった黄色い太陽』という本の書評(斎藤環)を読みました。ナイジェリアのビアフラ戦争を描いた、しかも、ラブ・ストーリーだ、という小説を、ぜひ読んでみたいと思いました。

書評は、アディーチェの興味深い警告を紹介しています。

・・・アディーチェは講演で「シングルストーリー」の危険性を説いている。それは重大な偏見をもたらす。「アフリカという国」と発言したどこかの州知事のように。「物語は人の尊厳を砕く」が、「打ち砕かれた尊厳を修復する力」も持つ。「いかなる場所にもシングルストーリーなどないと気づいたとき、ひとつの理想郷を取り戻すでしょう」。これは小説の存在意義すらも肯定する、力強い宣言にほかならない。

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世界貿易の自由化は、一方的に進むのではなく、覇権の盛衰とともに変化したと思います。自由貿易や「ワシントン・コンセンサス」が覇権国の提示した復興と統合のルールであり、また、覇権衰退の新しい条件であった、という説明を私は繰り返します。

EUやユーロ圏がこうした循環を完全に離脱しえたのかどうか、その答も、100年以上経ってみなければわかりません。

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不況の中の緊縮財政 ・・・緊縮予算に向けたフランス、イギリス、アメリカの国内政治過程 ・・・中国の行動が世界を変える。 ・・・通貨戦争の停戦協議 ・・・オバマ政権は何をしくじったか? ・・・自由貿易に反対する理由 ・・・ケインズとハイエクを超えて

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


l         不況の中の緊縮財政

NYT October 21, 2010

British Fashion Victims

By PAUL KRUGMAN

財政緊縮策は流行・気紛れだ、と批判します。まともな分析に基づいていない。失業者が増大し、インフレ率が低下しているとき、財政均衡を目指すような行動がとんでもない愚行であることは広く知られている。それはまるで、フーバー大統領の下で大恐慌に対処したアンドリュー・メロン財務長官を想起させるが、今度、その犠牲になるのはイギリス国民だ。

イギリスの財政赤字が膨張したのは、アメリカと同じような事情であり、特に金融部門のバブルに歳入を大きく依存していたからである。予算赤字はGDPの11%に達する。当然、アメリカでもイギリスでも、将来、政府は財政を均衡させねばならないだろう。しかし、不況の中で機能を目指せば、それは金融緩和で相殺されない限り、経済をさらに悪化させる。すでに金利は非常に低いから、政府支出を削るのは景気回復を待たねばならない。

ところがイギリス政府は全く間違った方向に舵を切った。政府は公務員を49万人解雇する。それはアメリカ経済の規模で見れば300万人のレイオフだ。民間部門がそれに代わる雇用を提供できないときに。民間需要が供給の過剰を払しょくできないときに、彼らは支出を削るだろう。

「なぜイギリス政府はこんなことをするのか? その最も重要な理由はイデオロギーである。保守党は、財政赤字を使って、福祉国家を削減したいのだ。」

オズボーン蔵相は、緊縮策が雇用と成長を促す、と主張する。そうしなければ財政破綻の地獄が待っている、と。しかし事実は、財政赤字が国民所得に占める割合は歴史的に見て低水準であり、イギリスの金利も上昇しそうにない。

この予算案によって、イギリスは1931年のイギリス、1937年のアメリカ、1997年の日本を再現するだろう。

NYT October 22, 2010

Britain’s Austerity Overdose

LAT October 22, 2010

The U.S. and Europe are divided on the economy. But politically, both strategies appear to be losers.

guardian.co.uk, Friday 22 October 2010

Margaret Thatcher's austerity programme was far less of a gamble than George Osborne's cuts

John Gray

The Observer, Sunday 24 October 2010

The coalition is taking a huge gamble with the economy

Will Hutton

イギリスは今や現代史において最も衝撃的な実験室となった。イギリスの規模がある経済を持ちながら、これほど大きな財政赤字を抱えた国は無いし、それを急激に削減した国もない。「これはギャンブルだ。」 巨額の支出削減は決して「避けられない」ものではない。

政府は、ケインジアンたちがいくら憤慨してもサイコロを振る。たとえ公共部門で50万人が失業しても、今後5年間で250万人の雇用が門館部門で生まれる、と予想する。確かにイギリスは@993-99年の回復期に民間部門で120万人を雇用したが、それは主に金融部門であった。バブルに乗って雇用を増やし、破綻したのだ。

Will Huttonは、連立政権が雇用創出の必要に迫られて、イギリスの政府・制度・組織の大改革に挑むと考えます。金融街の組織も危機によって一新するチャンスです。大学や研究機関がもっと実業界と密接に関心を共有し、拡大すること。起業家がもっと容易に資金を調達でき、融資を受けられる仕組みが必要だ。税制や支出、労働市場の規制緩和などを繰り返すだけでなく、伝統的な政策が見落としてきた分野に制度を構築し、組織を促す。特に、長期的な成長力を引き上げるインフラ投資やイノベーションが重要だ。

しかし改革には時間がかかる。政府の決めた緊縮策により、すぐに数100万人の雇用が不足するだろう。失業と貧困は、不安定な政治の季節をもたらす。

guardian.co.uk, Monday 25 October 2010

Britain's economic policy deficit

Dean Baker

かつてトニー・ブレアがイラク侵攻に明確な支援を与えたように、今や、ベトナム型のアフガニスタン占領を同盟国として支えるのもイギリスだ。そして、連立政権は繁栄をもたらすために緊縮政策を採用する先頭に立つ。・・・アメリカで政府の緊縮策に反対するDean Bakerは、イギリスの跳躍を歓迎します。

これは完全に間違った政策であり、間違ったタイミングです。金融緩和はすでに限界に近く、国内の不況と貿易相手国の不況が深まっています。ポンドの下落で輸出を伸ばすという可能性もないのです。巨大な住宅バブルが破裂した後で、家計は債務を負っており、再び消費や住宅購入に活気がよみがえるとも思えない。すでに減少している投資が、政府支出の削減を受けて増大することはない。

「アメリカの弟であるイギリスが、すべてのアメリカ人に、急激な下落の中で緊縮政策を実行することの愚かさを思い出させるだろう、と願うだけだ。イギリス人はわれわれの感謝と同情を得るだろう。」

WSJ OCTOBER 25, 2010

Our Fiscal Policy Paradox

By ALAN S. BLINDER

マクロ政策の原則は単純だ。失業が増えれば経済を刺激し、インフレが高まれば経済を抑制する。この原則は75年間続いている。

2008-09年、アメリカ政府は大恐慌の再現を抑えた。減税と財政支出を増やし、連銀は金利をゼロまで下げた。それは成功した。

しかし、今日、なお経済は刺激を求めている。ところがマクロ経済政策のパラドックスが起きた。成功する見込みのある政策は選択されず、選択される政策は成功しないだろう。財政赤字を増やしても、現状では、何の問題もない。民潭投資を妨げることは無く、金利も上昇しないだろう。ドル暴落やインフレを心配する者はそんな考えを捨てるべきだ。ドル安は望ましいし、インフレではなくデフレが心配なのだから。他方、連銀が量的緩和策を再び取るかもしれないが、その効果は期待できない。

もしわれわれの世界が合理的であれば、財政政策で景気を回復できるだろう。新規雇用に対する税の払い戻し、公的部門の雇用拡大、消費税の引き下げ、など、減税と支出増を提案し、将来の均衡化を約束するのが望ましい。金融政策は低金利を続けるだけで、前面に立たない。

しかし、この世界は合理的ではない。財政政策は使えず、連銀が駆り出される。

FT October 28 2010

A presidency heading for a fiscal train wreck

By Nouriel Roubini

オバマ政権の下で、金融救済や減税策の連続で、財政赤字が1兆ドルに近付いている。財政刺激策や銀行救済、低金利で不況を食い止め、ヨーロッパと違って緊縮財政にはこだわらず、成長の回復を支持している。

しかし、中間選挙の結果はオバマから追加の財政刺激策を実現する力を奪うだろう。連銀の量的緩和政策が再開されても効果は期待できない。

理想的には、オバマが社会的給付の改革や削減を実行することである。給付を数年で漸進的に廃止するとか、付加価値税や炭素税のような市場に歪みを与えない増税を今後数年で導入し、投資家を安心させるべきだ。

しかし現実には、逆に財政刺激策が嫌われ、赤字と増税への不安が高まっている。そして、中間選挙の敗北が予想され、2012年の再選を不可能にする共和党の反撃が強まっている。もしオバマが再選されないなら、共和党の方針はオバマの政策を議会で拒否し続けることになる。超党派の財政赤字と給付削減の検討委員会は機能しないだろう。

その行き詰まりは、債券市場が赤字を吸収している限り、放置される。成長やインフレはますます遠のき、投資家はリスクを取りそうにないから、低金利が長引く。中国は人民元の増価を受け入れず、ギリシャ危機のような事件で世界の投資家がドルに逃げ込むことも続くのだ。

しかし、財政の面で何かが起きたとき、債券市場の関心が突如として目覚めるだろう。それは、州の財政破綻かもしれないし、超党派の財政赤字対策が中期的にも破綻を避けられないと気づくときかもしれない。そのときになって、政治家たちも気づくのだ。社会保障も医療保険も、州政府や地方政府の赤字も、年金の支払いにも財源が不足し、GDPの数倍に及ぶ債務が加わる、と。

こうして債券市場のショックだけが行き詰まりを打開する。政府は連銀が金融緩和してくれることを期待する。しかし、その先はインフレと言うより、むしろ日本型の停滞であろう。成長はわずかで、デフレ圧力と失業がいつまでも残る。

共和党のまやかし経済学や天地創造の信仰に、オバマの政策は阻まれる。民主党は、そうなっても給付を削ることに向かわない。まだ2年間は、アメリカの財政赤字が膨張し続ける。つまり、最悪の世界に落ち込むのだ。短期の景気刺激策は成立せず、中期の財政再建も議論されない。

トンネルの出口には財政危機が待っている。次の大統領が誰であれ、その混乱を処理することが仕事になる。


l         緊縮予算に向けたフランス、イギリス、アメリカの国内政治過程

FP OCTOBER 21, 2010

French History Strikes Back

BY ROBERT ZARETSKY

フランスの人民戦線内閣が成立して、来年で75周年である。パリの街頭で騒乱に及んだ反政府行動は映像としてショックを与え、緊縮を唱えるヨーロッパや裕福な世界に衝撃を与えた。

1936年の夏、戦間期の保守政権が取ったデフレ政策に反対する、前例のない、ほとんど無計画に集まった抗議運動が続き、フランスを難破させた。フランスの工業労働者たちは、長い間、仕事がない恐怖と、職場の醜い現実を受け入れることとの間で引き裂かれてきた。シモーヌ・ヴェイユが1930年代の工場で働いたとき、仕事を失いたくなかったら2倍の成果を示せ、と命じられたことを伝えている。「雇用主は寛大にもわれわれを自滅させることを許し、われわれはそれに感謝するのだ。」

社会党のレオン・ブルムが率いた人民戦線内閣は、1934年初め、パリ警察が抗議デモに流血の弾圧をおこなったことに反対して、第3共和政を救うために組織された。それはファシズムやナチズム、スターリンのロシアに対抗する政治モデルを示すものと期待された。ブルムは速やかに労働組合と雇用者の合意を仲介し、労働者たちに、組合へ参加する権利、集団交渉の権利を認め、労働者たちは週40時間労働と2週間のバカンスを勝ち取る。そして労働者たちは初めてフランスの山や海岸を知った。

しかし、パリの社会運動がもたらした大きな期待と負担は、どのような政府にも耐えられなかった。人民戦線内閣は、スペイン内戦の勃発にともなうイデオロギー対立が強まり、フランの破滅的な切下げが続く中、1年足らずで瓦解した。

サルコジが年金制度改革を迫ったことは、フランスの左派にとって強い感情的な反発を呼び起こした。それは人民戦線が作った基本法を破棄するものだからだ。サルコジがロマの国外追放を始めたのは、極右のナショナル・フロントを支持する有権者を喜ばせるためだった。戦間期に起源をもつ右派に近付く大統領に対して、共和国の価値が否定されたという怒りが生まれた。

サルコジは、この法案通過によって過去の政治スタイルを切り捨てる。労働者たちの未来は、確かなものでなくなるだろう。

SPIEGEL ONLINE 10/22/2010

Protests in France

The President Versus the People

By Stefan Simons in Paris

WP Friday, October 22, 2010; A27

France goes on strike while Britain remains silent

By Anne Applebaum

オズボーン蔵相の恐るべき緊縮策が告げられても、イギリスは石のような静けさを続けている。しかし、海峡を渡れば、フランスではストライキの喧騒が続いている。1週間以上も、空港・列車・製油所が閉鎖され、ガソリンスタンドから学校まで、あらゆるものが止まっている。

これは国民性の説明にぴったりだ。グローバリゼーションの時代には、われわれが次第に似てくるはずだった。同じアメリカ音楽を聞き、同じ中国製品を買う。しかし、イギリスが余りにイギリス的で、フランスがあまりにフランス的である様子は、驚くほどである。両国とも経済危機に対応して、政府の支出を組み替え、赤字を削らねばならない。同じ挑戦を受けて、イギリス人は口を閉ざし、フランス人は街頭を占拠する。

国民性はDNAが決めるのではない。それは、部分的であるが、歴史的経験によって説明できる。イギリス人は、アメリカ人と違って、戦時下の耐乏生活、配給制でさえ、プラスの意味で記憶している。マーガレット・サッチャーの1981年緊縮予算はその後のイギリス改革の出発点であり、結局、成長と繁栄の時代につながった。削減策が同じことを意味すると考えるのは理由の無いことではない。他方、フランス人がストライキを好むのにも経験が作用している。ストライキや暴動、街頭占拠は、1789年だけで得なく、1871年、1958年、そのほかにも政治的な変革をもたらした。些細なことから始まったとしても、1968年のゆうめいなストライキはフランスの大改革と、その後の成長や繁栄をもたらした。

この数年の経験も、フランスでは政治家・官僚たちの汚職やスキャンダルが続いてきた。余りにも多くのマリー・アントワネットがいることを知れば、もっと働けと政治家に言われた有権者がこれに反発するのも当然だ。他方、イギリスでは、金融スキャンダルで退陣した長期政権に代わって、選挙で権力を得たばかりの連立政府を多くの国民は支持している。たとえ、保守党と自由民主党のそれぞれが政策に強い不満を感じていても、現在の連立政権は広く支持されているのだ。

彼らの態度が変わることもあるだろう。しかし、いずれの国も、それぞれのやり方で不幸になる。

FT October 22 2010

France ve nts its fury as Britain takes a chilly dip

By John Thornhill

FP OCTOBER 22, 2010

The Spectacle of the Society

BY JAMES TRAUB

WP Sunday, October 24, 2010; B03

Think this economy is bad? Wait for 2012.

By Greg Ip

次の金融危機がどこから始まるのか、地方債券、ヘッジ・ファンド、デリバティブ、あるいは、連邦債券、いろいろな予想がなされている。しかし、どこからであれ、それは2012年に始まるだろう。

それはアメリカ大統領選挙があるからだ。経済危機は政治家たちが有権者に直面するとき起きる。その理由は簡単だ。いい加減な融資や、過大な赤字、強すぎる通貨など、問題は長期に生じたものである。しかし、政治家はそれを見ず、隠し、あるいは、次の政府に押し付ける。こうしたことは不均衡を悪化させ、経済的なコスト(所得と雇用の減少)を強める。

選挙に際してアメリカの政治家たちが言い逃れした歴史はそれを示す。1971年夏、ニクソン大統領はインフレを1972年の選挙まで抑えるために、賃金と物価を統制した。それは成功したが、1973年にインフレがさらに悪化し、それは不況とドル暴落につながった。

1988年の選挙期間中、副大統領ジョージ・HW・ブッシュと民主党候補のデュカキスは、支払不能の貯蓄機関を清算することが納税者の負担になることをほとんど無視した。処理の遅れがコストを膨らませて、1990年代の前半、不良債権処理の負担が経済を不況に落ち込ませた。

1932年に、もっと深刻な例がある。フーバー大統領が敗北してから4カ月も、F.D.ルーズベルトは政権移行の協力を拒んだ。それによって銀行倒産とドルの下落は進み、大恐慌を深刻にしたのだ。

選挙の年に起きる感動的な近視眼の例は、2008年に起きた。事後的なベア・スターンズの救済後、ポールソン財務長官はもっと強い権限と大きな財源が必要なことを知っていた。しかし、大統領選挙まで数カ月しかないときに、議会はそのような論争的な問題を決められないと考えた。リーマン・ブラザーズの倒産に対して、資金もなく、秩序ある処理を行えないまま、それを放置した。その後も、選挙の年に金融救済を嫌う政治家たちにより、金融救済法案は下院で否決された。市場はさらに急降下し、議会が変心して通過させたときには、経済的苦痛は増幅されていたのだ。

選挙がもたらす金融危機は、国際的にも波及し、ギリシャ、メキシコ、アジア通貨危機、ブラジルにも例がある。そして、危機のもたらすダメージが解決策への支持を生むのだ。痛みの伴う改革を受け入れるしかない、と。

「今のところ、アメリカには日本型の停滞とデフレへ向かうリスクがある。まだしばらくは金利が非常に低いだろう。しかし、もしそのリスクが消滅したら、財務省証券の投資家たちはアメリカの財政赤字や債務を処理する方法を知りたいと思うだろう。それが不確実であるほど金利は高くなる。しかし、そのころには2012年の選挙が近付いており、共和党候補はオバマの財政破綻を攻撃し、債務の厳しい削減を約束する。オバマも対抗してジョージ・W・ブッシュを責め、再選に向けた再建策を示す。どちらも増税や給付の削減を具体的に示して政治的に自殺するようなことは無い。」

「投資家たちは彼らを信用するだろうか? それとも、他国がそうであったように、インフレ化デフォルトになると思うだろうか? もし後者であると思えば、金利は急騰し、財政赤字削減との悪循環が始まり、経済が収縮して、急激な、苦痛に満ちた緊縮策を強制されるだろう。」

guardian.co.uk, Wednesday 27 October 2010

To judge Britain's experiment, hold your breath and ignore the slogans

Timothy Garton Ash

「アメリカに3カ月住んだ後でイギリスに帰った。民主的に選ばれた政府があり、彼らは最新の選挙で多数を得た人々からなる。政府はやると約束したことを始められるわけだ。そんな国に戻れるのは素晴らしいことだ。しかし、間違ったことをやろうとしているのだとしたら、どうだろうか?」

イギリス人は、ちょっと独裁国家に似た大統領制よりも議院内閣制を好むのでしょう。選挙で指導者や政策を決めるというのは、確かに、戦争や革命を繰り返すより、はるかに住民にとって好ましいことです。しかし、イギリス政府がやろうとしている歳出の急激な削減は国民を苦しめる、と考えます。

その政策を「イギリスの実験」と呼びます。すなわち、5年にわたって政府支出を20%カットし、公的部門で50万人も解雇する。ギリシャやアイルランドと違って、イギリスがこの緊縮財政をやらねばならない理由は無い。

われわれの時代を支配する神々、すなわち、債券市場がこの政策にどう反応するかは、当面の満足を示したとしても、誰にもわかりません。民間投資がどうなるか、最も苦しい時期を過ごす貧しい者の将来がどうなるか、わかりません。イギリスの国家は少し小さくなり、その姿は大きく変化するでしょう。

つまりTimothy Garton Ashも財政赤字を批判するのか、と言えば、この論説は違います。それはマクロ経済管理の問題である、と切り離し、そのイデオロギーを問題にします。

OECD諸国がやっていることは、どこもよく似ています。この一族OECDaniaは、対抗する諸政党が叫ぶスローガンや、誇張するイデオロギーの違いを選択の基準にしてはならない、と考えます。労働党のブレアと、保守党キャメロンの主張(「大きな社会」)が、どれもさまざまな「良いこと」を約束する点では同じように聞こえますが、その一つ一つを実現すれば、未来の政府は全く違う姿になるのです。

たとえば連立政府が雇用を大幅に削りつつ、他方で10億ポンドもする潜水艦を維持するのは支持できない、とAshは考えます。アメリカ政府にイギリスを第一級の軍事力であると認めてほしいのだろうか。しかし、21世紀のイギリスが国際的な影響力を高めるには、BBC、大学、英国文化センター、あるいは、シェイクスピア劇団を擁することの方が重要だ、とAshは思うのです。

他方、連立政府の方針でも、政府援助を「累進的に」することを支持し、年金を固定額にするというアイデアは素晴らしいと称賛します。教育の機会や平等を実現するなら「フリー・スクール」も支持できるし、そうでないなら反対だ、と。つまり、政府をスローガンではなく、その雑多な正貨によって判断するべきなのです。OECDaniaに点在する雑多な政策とその成果を評価することが、その住民たちに求められる選挙です。


l         中国の行動が世界を変える。

FT October 21 2010

The challenge facing China

WP Friday, October 22, 2010; A27

If China frees Nobel winner, it will show its strength

By Václav Havel and Desmond M. Tutu

「弾圧は成功しない。経済改革で貧困から人々を救ったように、自由も与えるべきだ。」 チェコスロバキアと南アフリカ共和国で人々が自由を得た歴史を基礎に、中国政府にも行動を促します。

guardian.co.uk, Saturday 23 October 2010

The west must stand up to China

Kapil Komireddi

FT October 25 2010

China can no longer plead poverty

By Gideon Rachman

中国政府は、自分たちがまだ発展途上国である、という理由で外国の要求や議論を拒む。しかし、25000億ドル以上の外貨準備だけでなく、中国はすでに世界最大の輸出額、世界最大の工業生産力、世界第二の経済規模に達している。中国の規模があるから、その資本規制は世界の通貨システムに緊張をもたらしている。

しかし、先週、中国の研究者のグループと議論した際に、顕著に冷淡な反応を得た。・・・もし中国が人民元の為替レートを市場で決めることを許せば、アメリカはその金融機関を巧妙に利用して中国を混乱させるだろう、と。また、もしそれほどアメリカが自分たちの競争力を気にするなら、なぜアメリカの労働者たちに中国と同じ水準で賃金を支払わないのか?

こうして、人民元の為替レートを議論することは、民主化を求めるのと同じか、それ以上に難しくなっていた。問題は高度に政治化され、感情的になっている。

中国政府は、自分たちを発展途上国として、例外的なケースを正当化している。しかし、本当に例外的であるのは、激動した、悲劇的な中国の歴史であり、その桁外れの大きさであり、政治システムをより開放的にすれば、チベットやウィグルで分離独立主義が強まることへの不安である。

15年たてば、中国の経済規模がアメリカを抜くだろう。その時世界は、この1世紀半以上もなかったことだが、世界最強の経済国家が民主主義国家ではなくなるのだ。

Oct. 25 (Bloomberg)

Greenspan’s Bubbles to Lose Air in Frothy China

William Pesek

中国全体が10%なら、上海の成長は20%か、もっと高いかもしれません。バブルを抑えるために中央銀行は金利を引き揚げました。「グリーンスパン・プット」に代わって、「温プット」の終わりが世界の市場を危機に直面させるでしょうか?

guardian.co.uk, Monday 25 October 2010

What the west can learn from China

Zhang Xiaoying

WP Monday, October 25, 2010; A19

Will China keep rising or succumb to its paranoia?

By David Ignatius

「ようこそ、中国の世紀へ。」 上海の投資会社にはそう書いてある。この100年間、アメリカが世界でやってきたように、次の100年間は中国が支配する。・・・それは、何を意味するのか? 中国はアメリカと衝突するのか?

しかし、同時に中国の壊れやすさも目につく。政治システムも、人民元も、将来の不確実さがぬぐえない。中国のエリートたちも海外に投資し、パスポートを取得している。

中国政府の姿勢は矛盾し、分裂している。自分たちは貧しい国だ、敵を作りたくない、と言いながら、他国に対する要求がますます強硬になる。上海万博の中国館には、儒教の教えが書いてある。そのメッセージは明白だ。節度を守りながら、自分の心を満たすように。・・・共産党に従え。

ますます魂ではなく、金が支配する現実において、政府は愛国心を煽っている。それは、日本への反感にもなる。南京虐殺の記念館。漁船の拿捕に対する強硬な抗議。中国は強力な海軍をもつべきだ、と若者は主張する。海だけでなく、空も、宇宙も。アメリカが持ついかなる船舶や戦車も、中国は大気圏外からレーザー攻撃で破壊することができる。

皮肉なことに、アメリカは中国が成功することに賭けている。それは中国の政治システムがもっと民主的になり、偏執的でなくなる、という意味だ。そうでないとしたら、誰もが恐れる未来が来る。

WSJ OCTOBER 24, 2010

China Embarks on Structural Reform

By ARTHUR KROEBER

中国の政策関心は、経済成長を維持することに代わって、いよいよ構造改革に向かい始めた。すなわち、エネルギーの効率や所得分配である。特に、中央銀行は金利引き上げを決定した。

WSJ OCTOBER 26, 2010

Prosperity Is More Than Just Money

By PETER MANDELSON

繁栄をもたらすものは何か? その国の条件を評価したthe 2010 Legatum Prosperity Indexによれば、1位はノルウェイです。そして、デンマーク、フィンランド、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデン、カナダ、スイス、オランダと続きます。アメリカは10位、イギリスは13位、日本は18位、しかし、中国は58位、インドは88位です。

PETER MANDELSONは、ブレアのライバルとしてイギリス産業相、あるいは、EUの通商委員でした。その国の繁栄を、個人の自由や民主主義、起業の機会と結び付けて考えるからです。破壊的な力でもたらした富ではなく、繁栄する社会をもたらす条件とは何か?

FT October 27 2010

China is key to next rally in gold prices

By David Hale

金価格の高騰は間違いない。それは中国の購入額が増えるからだ。

中国の外貨準備は、そのわずか1.7%しか金で保有されていない。アメリカが金融緩和を続け、ドル安が続くなら、しかも、中国が人民元レートの急激な増加を嫌い、為替介入を続けるなら、金の購入を増やすことは間違いない。

アメリカは人民元を批判してきたが、中国が不胎化しない為替介入を行って金融緩和を受け入れたことで、その批判を止めた。それはすなわち、中国のインフレ率が上昇し、実質為替レートの増価が進むからだ。中国のインフレが進めば、金の民間需要が急増するだろう。すでに中国は金市場の規制を緩和している。

100年前のアメリカがそうであったように、中国はおそらく莫大な金準備の保有を金融的パワーとして目指すだろう。1913年、ドルが世界通貨として登場する前に、アメリカの金保有量は2293トンであった。それに対して、イギリスは248トン、ドイツ439トン、フランス1030トン、ロシア1233トンであった。アメリカの巨額の金準備は、第一次世界大戦でイギリスの金融的地位が損なわれたとき、ドルがポンドに代わることを当然のことにした。アメリカは今や戦時期のイギリスと同じような財政政策になり、ある時点に至れば、ドルの世界的役割を損なうだろう。」

中国政府は、すでにそれを主張しつつある。

FT October 27 2010

China has every right to cheat, but shouldn’t

By David Pilling

中国は開放された貿易システムを用いて利益をだまし取っている。ルー・ドブも、クルーグマンも、中国バッシングは続きます。イギリスが航海条例などで始めたように、貿易による富の蓄積と工業化は、アメリカも日本も成長の初期において成功したことです。

日本は、結局、アメリカとの貿易摩擦により政策を転換しました。今や中国にそれを強制する時期かもしれません。しかし問題は、当時の日本に比べて中国はまだ貧しく、また、中国の経済規模はすでに巨大なことです。

将来に向けて、中国は開放型の貿易システムを破壊する恐れが強いことを認めたのかもしれません。アメリカの示した数値目標に対して、驚いたことに、中国が反対しなかったのはそれを示唆します。

 (chinadaily.com.cn) 2010-10-27

America's China syndrome

By Patrick Mattimore

FT October 28 2010

Seoul urges N Korea to emulate China

By Christian Oliver and David Pilling in Seoul

WSJ OCTOBER 28, 2010

The Japan Roadblock to Nuclear Cooperation

By HARSH V. PANT

中国の軍備増強と経済に関する攻撃的姿勢は、予期せぬ形で、民主主義国家の間の連携を促す結果となった。地域の2大国、インドと日本は、この機会を逸してはならない。インドと日本の内政が関係しています。


l         通貨戦争の停戦協議

FT October 22 2010

US attacked over exchange rate plan

By Christian Oliver and Song Jung-a in Gyeongju and Chris Giles in London

FT October 22 2010

A walk in the old Bretton Woods

為替レートだけでなく、議論の焦点を広げよう、とガイトナーは書簡を送りました。貿易黒字を攻撃されるかもしれない、ということで、アメリカの提案にドイツや日本は反対する姿勢を示しました。しかし、中国は少なくとも意見を聞いて検討する姿勢だったとか。

経常収支の不均衡に論点を移すことは正しい。政治的に、中国は人民元レートの変更を拒んでいるから受け入れやすいし、経済的にも、さまざまな方法で各国が不均衡を解消することは望ましい。G20の合意は容易でないが、優れたアイデアが国際協調をもたらすのは明らかだ。

1944年、ケインズが経常収支不均衡に上限を設ける提案を行い、アメリカはそれを拒んだ。

FT October 22 2010

US pushes plan on exchange rates

By Christian Oliver and Song Jung-a in Gyeongju, Alan Beattie in Washington and Chris Giles in London

FT October 22, 2010

A novel G20 proposal from Tim Geithner

Gavyn Davies

ガイトナーの提案は米中対立よりも優れているが、困難な点もある。すなわち、問題となる不均衡の幅だ。ガイトナーは4%を考えた。すると、それを越えている国が、サウジアラビア、ドイツ、中国、ロシア、になる。興味深いことに、日本は3.1%で含まれない。さらに、サウジアラビアとロシアは除かれる。なぜなら、ガイトナーは一次産品輸出部門の大きな黒字による不均衡を例外として認めるからだ。

こうして、問題はドイツと中国に絞られる。しかし、さらにドイツは問題から外されるだろう。IMF2015年までに現在の政策でドイツの黒字が減ると予測している。また、明らかに、ドイツは為替レートを過小評価する操作をしていない。つまり、「異常な黒字国のクラブ」には、2015年のIMF予測でGDP8%という経常黒字を出す、中国しか入らないのだ。

赤字国としては、サウジアラビアとトルコが入る。アメリカは3.2%で入らない。つまり、不均衡が赤字国にも調整責任を求めるとき、4%という数字がアメリカ政府の慎重な決定として意味することを、中国人は(アメリカは免除されると)十分に予想しただろう。

また、為替レートを意図的に安くすることを非難するガイトナーの主張は、アメリカが量的緩和政策の後にドル安を進めていることを問題視されるだろう。

 (chinadaily.com.cn) 2010-10-22

The future of the dollar

By Martin Feldstein

アメリカ政府はいつも、国内には強いドルを望み、国外では競争力のあるドルを望んだ。前者が連銀によってインフレ抑制として実現された。他方、競争力について財務省は、外国が巨額の貿易黒字を実現するほど為替レートを人為的に安くしないよう求めてきた。

しかし、中国や韓国、台湾、シンガポール、インド、産油諸国は、ドルの資産を求めており、ドルは投資のための通貨である。彼らがドル資産を保有するのは、アメリカの金融市場が十分に深く、アメリカの政策を信頼しているからだ。その意味で、ドル資産の保有は投資銀行の坑道と同じであり、貿易の差額を支払うバッファーなのではない。

時間とともにこうした政府が投資を分散させること、が指摘できる。それゆえ将来は、ドル資産と対抗することが可能なユーロ資産市場で問題が生じていること、アメリカの政府債務が次第にその過半数を外国の投資家に頼り、そのことが、アメリカ政府にインフレや債務不履行、そしてその他の方法で投資家の側に負担を転嫁する誘惑が生じること、が問題となる。

ゆえに、ドルの将来は、アメリカ政府が財政赤字を管理できるかどうか、にかかっている。

WSJ OCTOBER 22, 2010

Emerging Nations Gain in G-20 Deal

By EVAN RAMSTAD

WSJ OCTOBER 22, 2010

G-20 Proposal on Curbing Trade Imbalances Faces Opposition

By TAKASHI NAKAMICHI, NATASHA BRERETON And IN-SOO NAM

FT October 23 2010

G20 reaches deal on reform of IMF

By Song Jung-a in Gyeongju

IMFの改革と言えば、ヨーロッパ諸国の過剰な代表権が指摘されてきましたが、ここでは、中国の経済規模は日本を越えたのに、その投票権は日本6.01%に対して、中国は3.65%でしかない、と指摘しています。

FT October 22 2010

International economy: A display of disunity

By Alan Beattie

WSJ OCTOBER 24, 2010

G-20 Pursues New Measures on Currencies

By BOB DAVIS in Washington and EVAN RAMSTAD in Gyeongju, South Korea

WSJ OCTOBER 24, 2010

The G-20's 'Rebalancing' Act

ガイトナーは世界の経済計画局ではない。各国の経常収支を決めることはできない。かつて、1970年代にはアメリカ政府も貿易赤字や黒字を問題にしていた。しかし、それは間違いだ、と認めたのだ。

FT October 25 2010

Why capital controls are not all bad

By Ilene Grabel and Ha-Joon Chang

アイスランドが先駆けとなり、中国、インドネシア、台湾、ペルー、アルゼンチン、エクアドル、ウクライナ、ロシア、ヴェネズエラ、ブラジル、タイ、韓国、・・・

かつてアジア通貨危機の際に資本規制したマレーシア政府が非難されたことは、まるで、遠い昔話です。今ではIMFも資本規制している政府を救済するため次々に融資を増やしています。国際金融市場の基本的枠組みが変化しつつあるのです。

IMFは、資本規制が安定性をもたらし、高い成長を維持したことを認めるべきだ。資本規制の許容度について国際的に合意し、それによって、新しい国際金融アーキテクチュアの中に発展途上諸国もさまざまな発展モデルで参加することができる。

FT October 25 2010

Japan looks to life with strong yen

By Mure Dickie

 (China Daily) 2010-10-26

Rebalancing via reform

(chinadaily.com.cn) 2010-10-26

Currency war: Overflowing dollar against other currencies

By Shi Jiaqi

WSJ OCTOBER 26, 2010

Geithner's Global Central Planning

By JOHN H. COCHRANE

FT October 27 2010

IMF must do its duty on currency wars

By Terrence Keeley

世界の金融アーキテクチャーに何が起きているのか? G20ではなく、IMFが明確な基準を示し、監視と処罰を行うべきだ、とTerrence Keeleyは主張します。

国際通貨協定の第4条は、明確に、加盟国の政策を監視し、為替管理の明確な基準を示すように求めています。それが行われなかったことで、G20がそのギャップを埋めているのです。しかし、G20の権限は不十分であり、不均衡の基準も曖昧です。

もっと明確な原則があります。為替介入は長期的に持続可能な成長と両立する水準でなければ成功しません。外貨準備の累積は、世界経済にとっても、個々の国にとっても不安定化を招きます。それゆえ、抑制されるべきでしょう。IMFは中期の均衡レンジを市場為替レートについて定めます。同時に、世界銀行が各国の望ましい(最適)外貨準備水準を定めます。世界経済の成長に反するような外貨準備の累積に対しては、IMFが注意し、IMFの分析を無視し続ければその批判を公開し、さらには金融的な罰を与えます。この罰金を積み立てられ、為替レート安定化基金とします。

現状では、中国、スイス、日本などのケースについて、その対策の水準を示しています。


FP OCTOBER 22, 2010

Germany's Age of Anxiety

BY ROGER BOYES

WSJ OCTOBER 25, 2010

'Multiculturalism Has Failed'

By JOSEF JOFFE


WSJ OCTOBER 23, 2010

Why Easier Money Won't Work

By JOSEPH STIGLITZ

量的緩和は効果がない。大企業には遊休資金があふれており、中小企業には融資が行われない。金利の低下による刺激よりも、バブルを醸成している。

FT October 24 2010

The Fed must adopt an inflation target

By Frederic Mishkin

Frederic Mishkinはインフレ目標を支持します。そうすることで、インフレ抑制と雇用という二つの目標を追うことに対する不確実さが減り、インフレ期待を安定化するからです。

NYT October 27, 2010, 12:32 pm

Sailing the Wrong Way with QE2?

By PETE R ORSZAG

FT October 28 2010

World economy: Some enchanted easing

By Robin Harding

WSJ OCTOBER 28, 2010

Gold vs. the Fed: The Record Is Clear

By CHARLES W. KADLEC


LAT October 24, 2010

Eastern Islam and the 'clash of civilizations'

By Robert D. Kaplan

FP OCTOBER 27, 2010

Robert Kaplan's New Global Geography

BY BLAKE HOUNSHELL

FP OCTOBER 27, 2010

Robert Kaplan's Journey to the New Center of the Universe

INTERVIEW BY BENJAMIN PAUKER | OCTOBER 27, 2010

中国の台頭による市場経済の浸透は、東アジアにおけるイスラム教の拡大をもたらすだろう。


FT October 24 2010

Wikileaks: Lifting the fog of battle

FP Monday, October 25, 2010

In defense of Wikileaks

Posted By Stephen M. Walt


l         オバマ政権は何をしくじったか?

FT October 26 2010

Why US voters are suing Dr Obama

By Martin Wolf

「心臓麻痺で倒れた男を救急車が病院へ担ぎ込み、手術を受けさせて何とか回復した。ところが2年後、男は感謝するどころか、医者を告訴する。手術のせいで体が不調になった。構わないでくれた方が良かった。心臓麻痺なんて、大したことじゃなかった。」

つまり、これがオバマ大統領とアメリカ有権者の現状だ、とMartin Wolfは考えます。オバマは、正しい原則を実行した点で非難されることはなく、むしろ、その政策が弱かった(小さすぎた)点で責められる、というのです。共和党は間違った宣伝を繰り返し、レトリックによるクーデタを図っています。

しかも、大きな金融危機の後には、1.資産市場崩壊の影響が長引き、2.生産や雇用が低迷し、3.政府債務の実質額が急増する。それらは、長期にわたる好況とバブルの時代に蓄積されてきたリスクや債務なのです。Reinhart and Reinhartによれば、その規模で見て、第二次世界大戦後、最大規模の金融破壊でした。

その前提を知れば、アメリカ政府は崩壊を見事に緩和した、と言えるでしょう。107日のFT主催の“View from the Top” conferenceLawrence Summersはオバマ政権の採った対応策を整理しました。それは「安定性と信頼感を取り戻して、民間融資が力強い回復を支持すること」に焦点を絞っていた、と。すなわち、前政権から引き継いだ金融システム支援策(不良債権処理、政府保証、銀行の「ストレス・テスト」)、そして、財政刺激策、連銀の金融緩和継続です。

しかし、政策は間違っていなかったが、余りに臆病であったから成功しなかった。労働市場を直接に回復する支援策を打つべきだったし、消費税を引き下げるべきだった。過大な債務を負った住宅購入者に対する負担軽減策が弱すぎた。

共和党はアメリカ国民を間違った宣伝によって変心させました。国民は、望む者と現実との違いを、共和党の描く寓話によって埋めたのです。オバマの勇壮な演説は、逆に、国民の失望を強めました。

「大統領が自ら進んで小さな要求にとどめたことは、今になって、余りに重大な戦略的失敗であったとわかる。そのせいで、反対派たちが、民主党は望むものを手に入れたが、その結果は失敗だった、と主張するのを許した。もし大統領が要求した政策を得られなかったら、その結果は自分の責任ではない、と主張できただろう。政治は今後も混迷し、さらなる政策は阻まれるだろう。失われた10年がアメリカにも来る。それはアメリカにとっての災難であるだけでなく、世界にも及ぶ。」

FT October 27 2010

Obama must learn to love business

By John Gapper


l         自由貿易に反対する理由

NYT October 25, 2010

Filling the Gap Between Farm and Fair Trade

By DAVID BORNSTEIN

Oct. 26 (Bloomberg)

Six Reasons for U.S. to Abandon Free-Trade Myth

Ian Fletcher an adjunct fellow at the U.S. Business and Industry Council

自由貿易経済学を信じることのコストがアメリカにとって上昇し続けている。アメリカの受容や雇用が失われ、アメリカの重要産業や将来の産業、安全保障も失われる。

リカードの比較生産費説には欠陥があった。その前提が現実に合わないことだ。

1.貿易は必ずしも持続可能ではない。貿易赤字が続けば、その国は資産を売るか、債務を増やす。それは円滑に維持されることもあれば、そうでないこともある。金融危機の条件にさえなる。

2.財やサービスを生産する資産を、衰退産業から新興産業に円滑に移動できない。レイオフされた自動車の組み立て労働者は、ヘリコプターを生産できない。移動を促す支援策は問題を緩和するが、その結果、自由貿易論者は大きな政府を求める。

3.自由貿易は所得分配を不平等にする。世界の労働供給が実質的に増えたことで、アメリカの普通の労働者たちは賃金が低下した。発展途上諸国の農業から工場へ、一晩で、労働者は移動できるが、資本は蓄積できない。結局、自由貿易は労働者に対して資本の交渉力を強めるのだ。また、アメリカの普通の国民が、低賃金によるコストを上回るほど、低価格の輸入品で大きな利益を得る保証はない。

4.資本は国際的に移動する。もし資本が移動できないなら、自由貿易は(その支持論が予想するように)各国内で資源を生産的に再配置する。しかし、資本は国家間を移動するから、生産的な利用がほかの国で起きる。それは資本流入国や世界全体の利益になるが、必ずしもわれわれの利益にならない。

5.自由貿易は相手国を危険な貿易相手に育ててしまう。中国がそうだ。中国の成長は大幅に輸出に依存している。この問題は、貿易相手国が為替レートの操作や隠れた貿易障壁を用いる重商主義国であれば、特に強められる。

6.短期的な効率性は長期的な成長につながらない。成長は、短期的な効率よりも、創造的破壊、技術革新、資本蓄積によって起きる。すべての開発された諸国は、アメリカも含めて、短期的には効率の悪い、保護政策によって工業化した。

こうした欠陥を認めるなら、アメリカは自由貿易ではない、もっと適切な政策を採用するべきだ。すなわち、為替介入や輸出に対する戻し税に対する相殺関税を課す。国内の重要産業や新興企業を守る。こうした政策は、1971年にニクソンが一方的に関税を課して日独などの黒字国に為替レートの調整を求めたように、貿易戦争ではなく、世界経済の成長に向けた国際協力を促すだろう。


FT October 25 2010

US pushes India to take bigger Asian role

By James Lamont and Anjli Raval in New Delhi and Michiyo Nakamoto in Tokyo

WSJ OCTOBER 27, 2010

Japan Needs a Defense Plan

By MICHAEL AUSLIN


l         アルゼンチン、キルチネル前大統領死去

FT October 27 2010

Kirchner death sparks market reaction

By Jude Webber in Buenos Aires and John Paul Rathbone in London

FT October 27 2010

Death leaves Argentina’s future wide open

By Jude Webber in Buenos Aires

ネストル・キルチネル前大統領が、27日、心臓発作で亡くなった。キルチネルはアルゼンチンが金融危機後の不況にある中で当選し、IMF融資を拒んで債務の不履行を選択した。まだ60歳で、2011年の大統領選挙に立候補する予定であったが、キルチネルの死去は世界の投資家にアルゼンチン市場を見直す機会を与えた。

guardian.co.uk, Wednesday 27 October 2010

Néstor Kirchner: Argentina's independence hero

Mark Weisbrot

キルチネルは、大恐慌に立ち向かったF.D.ルーズベルトと同様に、金融利害や経済学に対抗して不況を克服した。1998-2002年の不況では、失業率が21%にまで達し、GDP20%減少した。200212月と20031月に通貨価値を大幅に切り下げ、950億ドルの対外債務がデフォルトになって、金融システムは崩壊していた。

当時、IMFは不適当な水準でアルゼンチン通貨の為替レートを安定化する融資を続け、資本逃避を防ぐための高金利を主張した。金融危機によってアルゼンチン経済が崩壊しても、救済に向けた支援は無く、債権者の利益を守るだけだった。キルチネル大統領は、20039月、IMF融資の返済を拒むという選択を行って、民間債務の返済条件を大幅に改定させた。中所得以上の国でIMF融資の返済を拒んだ例はかつて無かった。

その後、IMFは融資を継続し、2008年にかけて8%の成長を遂げた。それは1100万人以上の国民を貧困から抜け出させた。為替レートを競争力のある水準に固定し、対外債務を不履行にした。当時、それはワシントンやすべてのビジネス誌によって批判された。しかしキルチネルは英雄になり、逆に、その後、IMFは影響力を失った。キルチネルは、地域協力を通じて、ラテンアメリカにおけるアメリカの影響を抑える外交・人権政策も強めた。

ワシントンや国際ビジネス界が不満を持ったとしても、これはアルゼンチン国民とラテンアメリカ地域にとって大きな前進であった。

FT October 2 2010

Life after Kirchner

キルチネルの死が、アルゼンチンを正統的な経済政策に戻すだろうという期待を強め、株価を引き上げた。FTは、危機後の景気回復をキルチネルの政策が成功したから、とは考えていません。むしろ、好調な世界景気に助けられて輸出が伸びたから、間違った政策によってでも成長できたのだ、と主張します。突然の輸出管理、年金基金や中央銀行の外貨準備を政府が勝手に流用するといった姿勢は、決して優れた経済政策などと言えない、と。


WSJ OCTOBER 27, 2010

How Not to Prevent Another Greece

WSJ OCTOBER 28, 2010

Is Germany the Euro's Big Winner?

By HANS-WERNER SINN

SPIEGEL ONLINE 10/28/2010

Brussels Showdown

Merkel and Sarkozy Risk Embarrassing Defeat


l         ケインズとハイエクを超えて

guardian.co.uk, Thursday 28 October 2010

Beyond Keynes and Hayek

Meghnad Desai and Robert Skidelsky

不況について、ケインズは需要が不足していると考え、ハイエクは信用が膨張して投資が非効率になった、と考えた。ハイエクにとって、不況は自然な諸力に委ねることで、時間が解決する。

ケインズ主義者が求める追加の景気刺激策は得られないだろう。なぜなら現在のイギリス政府はそれが有効と信じていないから。むしろ財政赤字を削って、民間投資を「クラウド・イン」するという。ケインズも現在の状況では乗数が働かないと思うだろう。人々は支出する前に債務を減らそうとしている。金融政策も働かない。

世界全体を見れば、ケインズの説明とハイエクの説明は矛盾しない。中国は、ケインズが問題にしたように、過剰な貯蓄を行った。そして、その貯蓄を受けたアメリカなど西側諸国は、ハイエクが問題にしたように、過剰な融資を受けて効率的な投資を行えなくなった。

そこで、ケインズでも、ハイエクでもなく、今すぐ、景気を回復させる二つの政策が必要だ。それは、現在の消費を促すS.ゲゼルのスタンプ・マネー(時間とともに購買力を失う貨幣)と、過剰な資金を吸収するインフラ投資局(債券を発行して、高速鉄道や太陽発電に投資する)だ。

かつてライオネル・ロビンズは、大恐慌の原因に関するケインズの説明に反対した。しかし、その回復策には賛成した。「酔っ払いが凍った池に落ちて救出されたとき、地上で毛布や体温を上げる酒を拒むのは間違いだ。たとえ事故の原因が、飲み過ぎで体温を過度に高くしたことであっても。」 イギリス政府はそれを見習うべきだ。

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The Economist October 16th 2010

How to stop a currency war

Currency wars: Fumbling towards a truce

China’s reserves: In need of a bigger boat

The Big Mac index: An indigestible problem

Buttonwood: Old-age tension

Drug and security in North America: Mexican waves, Californian cool

Organised crime in Mexico: Under the volcano

(コメント) ノーベル経済学賞の紹介もありましたが、ピンと来ないのでやめました。アメリカの公的部門で年金支払い問題が起きる、と言うのは、日本を思わせます。先に日本で解決策を示してくれないか、と思います。

米中間で人民元の為替レートを問題にするより、多国間で国際収支の不均衡とその適当な調整政策を合意する方が良い、と関係者の多くが考え始めました。記事は、「通貨戦争」などの表現は誇張であり、3つの問題を区別するべきだ、と指摘します。1.均衡回復の規模をどうするか、2.豊かな国の政策が新興市場に及ぼす影響をどう見るか、3.開放型小国への資本流入が永続するか、一時的なものか。

ビッグ・マック指数は、為替レートの変化を予測するものではありません。しかし、通貨投機や危機の警告としては重要です。年金改革も、出生率が上昇するか、移民を大規模に受け入れない限り、その給付年齢を引き上げるのが適当な解決策として有望です。

しかし、何より、「破綻国家」寸前の様相を呈する、アメリカ・メキシコ国境地帯の麻薬戦争に驚くでしょう。