IPEの果樹園2010

今週のReview

10/11-10/16

 

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IPE研究ノート 10/11/10

この週末、中国の民主化運動で指導的な人物である劉暁波Liu Xiaobo氏のノーベル平和賞受賞と、ワシントンでG7が開催された後、82円から81円台へさらに円高が進んだ、というニュースが流れました。

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G7のニュースを聞きながら、この春に出版されたテキストの一部(「国際通貨体制」)を執筆したことを、あれでよかったのかな、と思い出していました。私は、J.ウィリアムソンの為替レート制度に関する「中間的選択肢」を思い出しつつ、各国の国内政治秩序が受け入れ可能であることを「制度」の条件に追加しました。

アメリカは中国に人民元の変動幅拡大を要求し、中国は着実に金融改革を進める、と答えます。数年前、人民元の為替レートに関して、International Economyの調査に答えた専門家たちの中で、切上げを支持しなかったのは少数でした。しかし、リチャード・N・クーパーはこの少数派に属していたと思います。中国の黒字を為替レートで調整できるかどうか、それを当然視するよりも、中国は成長して、輸入を増やすことで世界経済にもっと貢献するのがよい、と考えていたと思います。

以前、B.アイケングリーンにインタビューしたとき、彼は変動相場制を民主主義的な政策決定と結び付けて答えていました。私が、アメリカ人は「なぜ市場による為替レートの決定をそれほど信用するのか?」 と尋ねると、彼はむしろ、「なぜ政府による為替レートの決定をそれほど信用するのか?」 と反問しました。

日本には、何ができるのでしょうか? 国内の改革を進め、円高を生かして成長できる企業や経済構造を指導すること、そのためにもアジア諸国との分業や市場統合を準備することではないでしょうか?

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日本やアジアにふさわしい国際通貨制度・体制とは、一体、どのようなものでしょうか? ゼミで質問されて、私は中国の「ゆるやかに人民元高を進める」という姿勢を受け入れ可能にする工夫が必要だろう、と思いました。たとえば、中国だけでなく、輸出市場を競うアジアの生産拠点が緩やかに増価することは、欧米へのデフレ圧力を減らすでしょう。「クローリング・ペッグ」と「プラザ合意U・アジア版」という体制を、国際合意して、金融市場の不安定化には協調して介入し、景気回復を維持するシグナルを送り続けてはどうでしょうか?

国際通貨制度は、決して為替レートだけを意味しているわけではなく、資産の管理や融資・決済に至るプロセスを、投資や消費のパターンまで含めて問題にします。為替レートの水準や調整過程をめぐって、政策目標や選択可能な手段を合意し、国際機関の監視や融資の仕組みを充実させねばなりません。それが国内の政治秩序や外交・安全保障における信頼関係を必要とするのは当然です。

まるでバブル再来を祈っているかのように、日本政府や日銀は円高に対して反応しています。世界的なリフレ政策が必要だとしても、その結果、日本で雇用を増やす生産的な投資が増えるように、積極的な方策や制度を政府が提供しなければなりません。かつて企業がそうであったように、日本政府による支援機関が雇用を保障してはどうでしょうか? 海外の企業に日本での投資を促してはどうでしょうか? 中国・韓国・台湾企業のためには工業団地を整備し、欧米・インド企業のためには英語通訳のサービスを提供します。

その企業の国籍が何であれ、同じ条件で国内立地産業の競争力を改善するにはどうすればよいか? 長期的に雇用を増やす企業をどうすれば受け入れられるか? 各地で議論するときだと思います。

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オバマ大統領が中国政府に人民元の為替レートを調整するように、そして変動レート制にして市場で決めるように求めても、中国政府はまだ国内秩序に照らして不利益だと考えるでしょう。激しいインフレが起きるまで、あるいは、政府がインフレを抑制できる限り、為替レートも操作したいと考えます。

中国政府が主張するように、中国の成長が急停止し、大規模な倒産と失業が生じて、政治体制にも亀裂が走るようことになれば、世界はさらに困難な状況を迎えるはずです。中国は、アメリカとの共棲関係によって、成長と国際的影響力を高めてきました。米中関係は、国際秩序の重要な一部であり、世界金融危機や中国の黒字、軍備拡大によって、調整を必要としています。

SDR本位制を積極的に進めてはどうでしょうか。すなわち、これまでの不均衡を長期的に国際管理する。今後の不均衡に対して調整のルールを決める。それによって国内改革における主要国の競争を促すようにします。追加された不均衡のSDR資産を管理する委員会は第二のIMFとなる。ケインズの清算同盟を実現し、赤字国に融資されると同時に、黒字国にも調整が求められます。それは、温暖化ガスの排出規制に関して、発展途上諸国が先進工業諸国の過去の累積した温暖化ガスに対する責任を求めることと同じです。

他方、中国の政治システムが民主化した場合、為替レートを固定することは激しい政治紛争を巻き起こし、市場に従って調整する方が合意を得やすいでしょう。ノーベル平和賞は、人民元レートの変動を促す点で、アメリカ議会の制裁決議よりも効果的かもしれません。

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北朝鮮を非核化し、国際安全保障や世界貿易に包摂するように、米中が協力して説得する時期が来るでしょう。その前に、通貨や貿易に関する協力関係があれば、説得は成功する見込みが高くなります。

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東西ドイツの統一、20周年 ・・・世界通貨戦争というガバナンス ・・・日本病? ・・・オバマ外交 ・・・経済管理の国際対立か、戦争か? ・・・超国家体制

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


l         東西ドイツの統一、20周年

FT September 30 2010

Germany: An unequal union

By Quentin Peel

1990103日に東ドイツは西ドイツに併合された、とMatthias Platzeckは憤慨します。そのan Anschluss併合という言葉は、1938年、ナチス・ドイツがオーストリアを奪取したときにヒトラーが与えた表現です。現在、Platzeckは社会民主党員で、ブランデンブルグ市長ですが、その苦痛を忘れはしません。統合には、そのスピードと、イギリスやフランスの強い懸念が影響しました。

同じ東ドイツ出身者(オッシー)のAngela Merkelは、現在、ドイツの首相となっていますが、統一を東ドイツ人がまさに望んだものだった、と称賛します。しかし、東ドイツ出身の大臣や知事はほかに誰もいません。メルケルが例外なのです。エリート層の「社会的な隔離」と呼ぶ研究者もいます。

新聞Frankfurter Allgemeine Zeitungの調査では、東西とも半数以上の人が統一を支持していますが、それでもかなり高い比率で支持できないと思う人がいます。20周年を祝う行事も、それを反映して、静かなものでした。

東ドイツは国家再建モデルの実験室でした。町は再編され、安価なアパート群は廃棄されました。東側の人口が急激に減少し、高齢化していったからです。「しかし、それは困難な再編であった。たとえば下水システムも、十分な量の水が流されなければ汚物が詰まってしまうのだ。かつては成長のためにインフラを建てた。今は減少(衰退)に合わせて改造している。」

政府は統合後の東西を区別した統計を発表しなくなりました。肥田氏ドイツに多かった小規模な国営企業は、その多くが閉鎖され、あるいは、安価に西側が買収して、劇的に縮小しました。東側から430万人が西側へ流出し、西から260万人が流入しただけです。1990年代は「総体として東側の脱工業化が進められた」、とPlatzeckは考えます。

「統合の大まかなコストは1兆5000億ユーロだった」と、経済研究所のUlrich Blumは考えます。しかし、有能な若者の多くが東から西に流出したことをコスト(あるいは、西側への援助)と考えるべきです。さらに、経済不安は若者たちの結婚や出産を大幅に減らしました。出生率は半分になって、その後も緩やかにしか回復しませんでした。まだ1990年の62%であり、西側よりも低いのです。東ドイツは、その人口が急減しただけでなく、「年金生活者と長期失業者の地域に変わりつつあります。」

西ドイツは、多くの中小企業を抱えた東ドイツ経済を、輸出に強い大企業型の経済モデルに適応させました。また、労働組合も東側の労働賃金を急激に上昇させました。彼らは西ドイツの雇用を犠牲にしたくなかったからです。その結果は、東ドイツの大規模な倒産と長期失業です。

Ulrich Blumは、「ドイツの共産主義崩壊は南北戦争後のアメリカ南部における奴隷制経済の崩壊と似ている」と考えます。「労働は、突然、高価になって、合理化と失業が広まり、エリートたちは脱出した。よそ者たちに乗っ取られていく姿は、『風と共に去りぬ』の話である。」

東側の労働者も企業家も、仕事を失い、企業を失って、その自信を失いました。20年を経て、西側は何を学ぶのか?

NYT October 3, 2010

Don’t Reunify Germany

By GUNTER GRASS

政治家たちの愚かな併合ではなく、東西の連邦制にすればもっと良かった、と振り返ります。


l         世界通貨戦争というガバナンス

NYT September 30, 2010

Taking On China

By PAUL KRUGMAN

アメリカ議会下院が中国の通貨政策に対する制裁法案を可決したことに、エコノミストたちは批判の声を上げています。外交交渉を進めるより、貿易戦争と世界不況を選択した、というわけです。

PAUL KRUGMANは、中国と世界経済の現状を考えます。主要先進諸国が住宅バブルの破裂や金融危機の後遺症に苦しみ、デフレの回避に奔走している一方で、新興諸国の経済はむしろインフレを抑制しなければならないほど活発に投資している。ブラジルがそうであるように、貿易黒字も資本流入も新興諸国の通貨が強くなることを意味している中で、特に、中国は莫大な外貨準備を蓄積するばかりで、人民元レートをわずかしか増価させない。

アメリカ政府は中国の姿勢を転換させるために外交交渉を繰り返すだろう。そのために貿易戦争を望むわけではないが、議会が通過させた法案は、アメリカ政府が貿易による制裁を行えることを前提に、この交渉を強める方針を示した。正しい選択だ。

NYT September 30, 2010

A Message for China

LAT October 1, 2010

Challenging China on trade

20年前、アメリカ人は日本企業がアメリカの重要な資産を購入しているという報告に警戒を強めた。今、われわれは中国が多くの安価な消費財をアメリカに売っているということを心配している。後者の方がアメリカ経済に与える影響は深刻だ。中国に対する巨額の貿易赤字は、過去10年間に、わが国の製造業で雇用を失わせてきた。」

WP Friday, October 1, 2010; A19

Beyond brinkmanship: A better economic path for the U.S. and China

By Mohamed A. El-Erian

アメリカは中国政府に人民元を変動させるように要求します。中国はアメリカ政府が金融秩序を再建せよと要求します。お互いに相手の欠点を指摘し、強い敵対姿勢を取ることが国内政治において政府に有利に働く、ということを知っています。

しかしMohamed A. El-Erianは、将来も含めて、世界経済にとって中国経済とその中産階級の消費が、成長のメイン・エンジンであることは明白だ、と指摘します。中国政府は貧困を減らし、資源輸出国に刺激を与え、裕福な諸国には安価な消費財で生活水準の改善を可能にしました。世界経済は、ブラジルやドイツも経由して、その乗数的な成長促進効果を得ています。

主要工業諸国が金融危機後のバランス・シート不況に落ち込む中で、世界経済を維持するためには、中国のメイン・エンジンを止める余裕などない、と知るべきです。アメリカは「中国叩き」をやめ、中国はアメリカ国内の問題にすり替えることをやめるべきです。米中が戦略的な共同行動を取ることを合意できるでしょう。

世界史上初めて、貧しい発展途上国のまま世界経済に大きな影響力を及ぼし始めた中国を、アメリカは一層の国際秩序に参加させ、もっと大きな発言力を与えることによって包摂するべきだ、とMohamed A. El-Erianは主張します。他方、中国は将来を見通して、アメリカの再生を助けることが中国自身にとっての戦略的な利益である、と知るべきです。それゆえ、両国間の貿易、資本移動、資産管理について、より透明なルールに合意することが重要なのです。

FT October 2 2010

China offers to work with EU on financial reform

By Dimitris Kontogiannis in Athens

「国際金融システムの改革、監督体制の強化のために」、EUのギリシャ財政再建は重要であり、だから中国はこれに参加する、と温家宝首相は明確に語っています。世界経済を回復させるために中国は国際協調に貢献するのだ、と。

同時にこれは、中国がアメリカに保有する債権を管理し、財政赤字や金融秩序再生を外から監督するための準備・試験なのではないか、と想像します。そして、中国は貿易保護主義に反対し、中国が認めるような債券評価システムをEUにならって目指す、と主張するのでしょう。

FT October 3 2010

We can fight fire with fire on the renminbi

By Fred Bergsten

自国通貨の為替レートを他通貨に比べて安く設定することで輸出を伸ばし、成長を確保したい、という為替市場介入が増えている。これは現在の国際通貨制度に顕著な欠陥があることを示している。すなわち、黒字国の行動に対する効果的な規律がないことだ。すべての調整圧力は赤字国に生じ、それはデフレを強めて世界経済を不況に向かわせる。

アメリカは、特に、他国による介入によってドルの為替レートが決められてしまう。中国は、過去5年間、毎日平均10億ドルをドル買い介入した。これは次第にユーロや円にも及ぶだろう。

こうしたギャップは相殺介入によって抑えられる。中国や日本がドルを買うとき、人民元や円が不当に安くされているなら、アメリカは同じだけドルを売る。IMFは、これを必要な手段として認める条件を示すことだ。

この仕組みには、貿易体制について、不当な保護を行う国に対して相殺関税をWTOが認める、という模範がすでにある。アメリカ議会は中国に対する制裁関税を認める法案を通したが、中国の過小評価された人民元は特定の分野に利益を与える保護主義ではないから、制裁関税で対処するのは適当でない。

アメリカが相殺介入を行った重要な先例は、1985-87年のプラザ合意による介入である。中国は人民元の資本取引を認めていないから、介入には派生的な金融手段が用いられるだろう。しかし、そのメッセージは明確であるから、市場圧力が強まる。

世界金融システムにとって、金融的な安定性と貿易の開放とは欠かせないものである。

FT October 4 2010

Call for new global currencies deal

By Alan Beattie and Tom Braithwaite in Washington and Joshua Chaffin in Brussels

Charles Dallara(世界の主要金融機関が420以上参加するIIFの代表)やRobert Zoellick(世界銀行総裁)が、通貨戦争を警告し、主要国は通貨に関する合意されたルールを見出すべきだ、と要請しました。

Oct. 5 (Bloomberg)

Buffett’s China-Gushing Optimism Sells Like Sex

William Pesek

SPIEGEL ONLINE  10/05/2010

The Specter of Protectionism

World Faces New Wave of Currency Wars

しかし、ここには大きな偽善がある。過去においてアメリカほど通貨市場を大きく管理してきた国は無いのだ。アメリカの連銀は爆発的に増えている連邦政府の財政赤字を融資するために、今もドルを印刷し続けている。このことがドルの価値を低下させている事実を、アメリカは全く無視している。」・・・「世界はすでに悲惨なデフレ・スパイラルを一度経験したことがある。それは両大戦間期の激動する時代だった。」

世界不況の回避はまだ危うい状態であり、国際収支不均衡は各国の政策を縛っている。デフレ・スパイラルを阻止するために新しいブレトン・ウッズ会議を開き、IMFを再建する役割がG20に期待された。しかし、中国の役割は不明である。中国が参加しなければ、国際通貨制度は機能しない。

他方、中国から見れば、アメリカからの圧力には日本という先例がある。円高を強いられた後、日本の経済は衰退したし、アメリカ産業の復活もできなかった。アメリカは輸入超過や失業のスケープゴートを求めているだけではないか?

世界には新しい明確なルールがないまま、アメリカで制裁法案が可決された。ますます不安定化する通貨市場が世界景気を悪化させる。

FT October 5 2010

IMF girds itself for exchange rate battle

By Alan Beattie

FT October 5 2010

How to fight the currency wars with stubborn China

By Martin Wolf

中国との通貨戦争以外に、もはや選択肢は無くなった。

4つの問題に考えるべきだ。中国は為替レート操作をしているか? それは我々にとって重要か? 中国に何を求めるべきか? 紛争のダメージを抑えて、それを中国に受け入れさせる手段はあるか?

自国のGDPの半分にも及ぶ外貨準備を保有してしまった中国は、為替レートを介入によって安く維持している。しかも、それに伴うはずの国内のインフレは不胎化政策で抑えている。これは自国の貿易黒字を増やすための保護主義政策である。その政策は、貧しい発展途上国から豊かな国への貯蓄の流出を意味しており、投資として好ましくない。さらに、豊かな国の放漫財政やバブルの条件ともなった。

ドイツや日本のような高所得国の黒字を含めれば、世界経済のバランスに向けて、高所得国全体の黒字は巨額になるだろう。それを放置すれば世界金融危機が再来する。だから、大幅な黒字を出している中国が政策を転換することで吸収するよう、主要国は要求を強めるのだ。

ただし、人民元が強くなるのは必要な調整過程を促すための部品でしかない。それだけですべてが解決するわけではない。中国は為替介入を止め、不胎化を止め、国内需要を、特に消費を増やす。他方、中国もアメリカに対して要求するだろう。ただし中国は、日本の1990年代を理由にしてはならない。日本は円高の影響に金融緩和で応じた。当時の日本は中国の現在の条件と全く異なる。中国は日本よりも貧しく、まだ成長を持続して消費を伸ばす余地が大きい。それに必要な国内の改革は、中国自身の利益になるのだ。

われわれは中国がそのような改革を進めるように促すべきだ。そのため、Fred Bergstenの相殺為替介入やDaniel Grosの互恵的な資本自由化という強制手段をも、Martin Wolfは支持している。貿易における制裁より、資本市場における圧力をかけるほうが良い。その場合、中国が外貨準備を使ってドルに混乱をもたらすのではないか、という警告もあるが、Martin Wolfはその可能性を否定する。世界は金融緩和をしており、たとえドル安が起きても歓迎できる程度だ、と。

中国が大幅な貿易黒字であるより、急速に成長しながら貿易赤字と資本流入を受け入れるほうが、中国にとっても、世界にとっても望ましい。もはや議論ではなく、行動するときだ。

FT October 5 2010

IMF chief warns on exchange rate wars

By Alan Beattie in Washington

FT October 5 2010

IMF: the “last resort” of capital controls

LAT October 6, 2010

China's giant economic sway

By Eric J. Weiner

中国との貿易戦争に勝てるか? アメリカでさえ中国に要求できなくなった。

FT October 6 2010

Wen warns against renminbi pressure

By Alan Beattie in Washington, Joshua Chaffin in Brussels and Kevin Brown in Singapore

FT October 6 2010

How being big helps and hinders China

By David Pilling

中国の人口が13億人もいるために、標準的な輸出による成長の初期段階にあっても、日本や韓国と違って、世界的摩擦と注目の的になる。同時に、その規模があるから、日本よりも容易に輸出依存を離脱するだろう。

FT October 6 2010

Currency skirmish

FT October 6 2010

Not all quiet on the currency front

FT October 7 2010

China must fix the global currency crisis

By George Soros

為替レートの不整合が各地に表れている。「異なる経済政策を、異なる経済・政治システムが相互に採用し、衝突するところが通貨市場である。」

金融危機によって、「中国は運転席についた。」 ・・・「中国だけが、人民元の増価を許すことで、国際協調の交渉過程を開始する位置にある。中国には国内の合意を形成する力がある。そこでもう一歩進めて、国際的な合意を形成するべきだ。それによって、世界は中国の台頭を受け入れるだろう。」

WSJ OCTOBER 7, 2010

Geithner's 'Cooperation'


l         日本病?

FP SEPTEMBER 30, 2010

The Japan Syndrome

BY ETHAN DEVINE

中国が日本を抜いて世界第2位になったことより、日本がまだ世界第3位でいることの方が驚きだ、とETHAN DEVINEは考えます。

これは、もちろん、アメリカに広まってきた日本の政策失敗論です。バブルに関する「アメリカの陰謀」論と「日本の政策失敗」論とを、どのように評価するべきでしょうか? 日本人は倒産するべき企業を「和」の精神で生存させ続けたのでしょうか? 大規模な効率的輸出部門に比べて、非効率な国内産業が温存され、二重構造と低賃金が続いたのでしょうか? それゆえ、輸出依存の経済運営を抜け出せず、国内消費ではなく、政府は円安による輸出支援と財政赤字に頼り続けるのでしょうか? 日本で新しい産業と言えば、新日鉄釜石の消えた「廃墟ツァー」だけだ・・・!

これが、中国にとっての反面教師として、米中合作を促す政治的触媒になる・・・?

WSJ OCTOBER 4, 2010

More Money Won't Defeat Deflation

By TADASHI NAKAMAE

金融緩和で経済は回復しない。アメリカは日本の失敗を繰り返している。超低金利や量的緩和政策は、民間銀行の融資機能を麻痺させ、社会の資本配分を非効率にする。

FT October 5 2010

Bank of Japan puts a toe in the water

FT October 5 2010

BoJ praised for ‘decisive’ economic plan

By Mure Dickie in Tokyo

WSJ OCTOBER 6, 2010

Governing Japan's Corporate Savings

By NICHOLAS BENES

デフレは企業が利潤を投資や配当に回さないことで悪化している。その対策は?


guardian.co.uk, Friday 1 October 2010

Trapped in the eurozone

Costas Lapavitsas

ユーロ危機は、財政赤字を削減することで、長期の成長や競争力の回復に不安を生じています。社会対立や政治不安が増すだけです。

ユーロ圏の周辺国にとって、財政破綻、ユーロ圏離脱もあり得る状況です。銀行家は政治圧力を用いて債権を維持し、緊縮財政を強いていますが、街頭で抗議する市民が増えるにつれて、政府は成長と雇用を回復する政策の余地を得るために、緊縮策を続けることができなくなります。

The Guardian, Friday 1 October 2010

Ireland: Busted

FT October 3 2010

Ireland: The long hangover

By David Gardner and John Murray Brown

FT October 3 2010

Ireland’s taxpayers have shouldered too much

By Wolfgang Münchau

納税者の負担で返済を引き受けることは間違いだった。債務の削減を求めるべきだ。


l         オバマ外交

WP Friday, October 1, 2010; A19

America: Once engaged, now ready to lead

By Robert Kagan

オバマ外交は転換する。最初の2年間は、アメリカのイメージ回復を図り、敵対する主要国、ロシア、中国、との関係を改善した。それは主要国間の協調を重視し、「G20による世界管理」を支持した。ブッシュのアメリカ一極支配を否定するものだった。

これからの2年間は違うだろう。アメリカの影響力回復を狙って、アメリカと敵対する国や失望する国が増える。国際関係の再編には限界があると認め、合意できないときは強硬姿勢も示すだろう。民主主義諸国との同盟関係を重視し、アメリカの国益や原則を追求する。

ロシア、中国、日本、韓国、ヨーロッパ、・・・第二局面がスタートした。

WP Monday, October 4, 2010; A17

Will Obama's foreign policy follow his new democracy rhetoric?

By Fred Hiatt

WP Monday, October 4, 2010; A17

Even 'winning' in Afghanistan would include some failures

By Fareed Zakaria


LAT October 1, 2010

What Confucius says is useful to China's rulers

By Daniel K. Gardner

WSJ OCTOBER 1, 2010

China's Aggressive New Diplomacy


l         経済管理の国際対立か、戦争か?

WSJ OCTOBER 1, 2010

Echoes of the Great Depression

By PHIL GRAMM

WSJ OCTOBER 1, 2010

Beggar the World

FT October 3 2010

How an unloved bail-out saved America

By Steven Rattner

FT October 4 2010

The global implications of QE2

By Gavyn Davies

アメリカの中央銀行が量的緩和政策に踏み切った。ドル価値は下落し、金価格は上昇し、株価も上昇した。しかし、その世界経済への影響は何か?

日銀とイングランド銀行はこれに追随した。ECBはその意図を示さない。新興市場も影響を受ける。アジアやラテンアメリカに向けて資本は流入している。アジア諸国はドル安を恐れている。それに対する介入政策が金融緩和の流れになる。

この政策の効果は長期的に望ましくないかもしれないが、短期的に必要だろう。新興国によっては通貨の増価を受け入れるだろう。

FT October 4 2010

America needs stimulus not virtue

By George Soros

guardian.co.uk, Thursday 7 October 2010

The wrong way for the Fed to go about regaining face

Joseph Stiglitz

ケインズが指摘したように、流動性の罠によって、金融政策は働かないだろう。金融政策はバブルを防ぐことに注意を向けるべきで、それに失敗した後で対策を探しても、むしろその費用の方が大き過ぎる。

FT October 5 2010

Global economy: That elusive spark

By Chris Giles

G7に集まる政府・中央銀行には何ができるのか? 金融政策、財政政策、為替レート政策、そして、市場介入しないこと、を整理しています。

NYT October 5, 2010

Credit for the Recovery

By DANIEL GROSS

金融危機によって人々の貯蓄が促され、倹約が尊重されるようになった。そのような議論は繰り返されてきましたが、景気回復に必要なことではありません。

guardian.co.uk, Wednesday 6 October 2010

Economics 101 for deficit hawks

Dean Baker

国内貯蓄の過不足と貿易収支は、統計上、一致します。民間と政府の貯蓄が減れば、貿易赤字が増えます。住宅バブルが破裂するまで、アメリカ人は貯蓄を減らしてきました。その後、資産を失い、債務の重圧を減らすために貯蓄を増やしていますが、逆に政府は財政赤字を急増させています。

アメリカの政治家たちは中国の人民元が安すぎる、あるいは、ドルが強すぎる、と非難しています。しかし、それは財政赤字が増えているからです。アメリカは国内貯蓄が不足し、資本を流入させて政府に融資してもらいますが、そのことがドル高を招くのです。

アメリカの政治家は、中国を非難し、同時に、財政赤字を続けています。

FT October 6 2010

Fear undermines America’s recovery

By Alan Greenspan

共和党や保守派はオバマ政権が投資家を恐れさせ、それが景気回復を妨げている、と批判します。Alan Greenspanは、金融救済措置Tarpは必要だったけれど、4800億ドルの財政支出は将来への不安を強めた、と考えます。金融秩序再編や税負担に関する将来の不確実性を、固定投資をする際に心配する、と。

FP OCTOBER 6, 2010

Financial Shock and Awe

BY BARRY EICHENGREEN

第一次世界大戦は、誤解と、敵対関係の悪化、報復によって始まった。

今また、通貨戦争が始まった。これはゼロサム・ゲームだ、という表現が多くみられる。しかし、こうした見方は一連の、危険な、誤解である。BARRY EICHENGREENは、世界的な規模の量的緩和策、そして、それと切り離すために、中国の変動レート制移行、を主張している。

第一の誤解は、中央銀行の政策が対立している、という発想だ。日銀は、円高を抑えるために介入し、それを拡大して量的緩和を始めた。アメリカの連銀も始める。そして、世界経済にとってインフレではなくデフレが問題である以上、それは主要国の中央銀行にとって正しい選択だ。近隣窮乏化やレース・トゥ・ボトムではない。

第二の誤解は、中央銀行によっては、現実ではなく過去の問題に対処することを優先していることだ。すなわち、ECBは過去のインフレを恐れ、今や財政緊縮を政府が始めたにもかかわらず、金利を上げようとしている。BARRY EICHENGREENは、ヨーロッパ経済がユーロ高によって停滞し、ギリシャなどの財政再建計画も失敗して、再び危機に向かうことを警告します。

他方、中国は成長を維持するために輸出を続ける為替レートの水準が必要だ、と主張する。しかし、このまま中国だけが輸出を増やし続けることはできない。それを認めるなら、世界経済の均衡を回復するために役立つ、もっとも採用しやすい政策は、人民元為替レートの調整だ。また、中国の輸出超過と人民元レートは、本来なら輸出を伸ばす条件(低賃金など)にある他の新興諸国に、通貨の増価と成長減速を強いている。

世界経済の成長回復を目指すことで、各国は対立や非難合戦を避けられる。必要なことは、三大中央銀行が金融緩和で協力することだ。この金融政策における「衝撃と恐怖」作戦をアメリカ連銀が採用するかどうか、それが不確実であることはドルの乱高下を生じている。

中国は、デフレよりもインフレに苦しんだ過去の経験から、この作戦に参加しないだろう。そうであれば、ドルとの固定為替レートを放棄し、連銀の金融政策から自国を切り離すことである。そして、たとえそれが変動レート制の採用であり、人民元の増価を意味するとわかっていても、中国はメンツを重んじる政治であるから、他国の政治家がそれを要求することが、むしろ障害となる。ガイトナーは中国人の政治文化をよく理解している。

FT October 7 2010

Farewell to Tarp, a despised policy


FT October 1 2010

Iceland’s tribal prosecution

By Christopher Caldwell

FT October 2 2010

Haarde hits back at ‘vendetta’ charges

By Andrew Ward in Stockholm


guardian.co.uk, Saturday 2 October 2010

The fragile bit of Bric

Kevin Gallagher

ラテンアメリカの新興諸国も、中国向けの輸出で成長してきたが、むしろ、中国の工業化をまねるべきだ。なぜなら、中国市場に依存した成長は、ラテンアメリカの経済を多様化することに失敗し、安価な中国製品の輸入が工業化を逆転させているからだ。資源輸出は、長期的な影響や環境破壊を無視している。むしろ中国がやったように、ラテンアメリカも「ワシントン・コンセンサス」や「ショック・セラピー」という急激な市場自由化をやめて、国内産業の育成を並行して進めるべきだ。


l         超国家体制

guardian.co.uk, Sunday 3 October 2010

Why has the price of gold risen 300%?

Kenneth Rogoff

Martin FeldsteinNouriel Roubiniも金価格の上昇に言及した。この10年で金価格が300%も上昇したのはなぜか? これはドル価値が暴落したことを意味する。金はインフレのヘッジである。Kenneth Rogoffは、アジア、ラテンアメリカ、中東の新興諸国に注目する。それらの中央銀行はまだ金を準備として保有している。さらに、やはり低金利が金価格の投機的な上昇を容易にし、バブルを生じている。

FT October 3 2010

A fresh approach

SPIEGEL ONLINE 10/04/2010

Money Is Power

A Inside View of the IMF's Massive Global Influence

By Klaus Brinkbäumer and Ullrich Fichtner

新しい世界秩序について、IMFDominique Strauss-Kahn専務理事にインタビューし、各地をめぐってIMFの影響力を発見しています。ヨーロッパの過去は消えて、現在のG20IMFに新しいパワーを与えた。・・・IMFは、世界政府なのか? 赤字国の医者? 資本家のいやしい機械? シンク・タンク? 会員制クラブ? ILOと連携して、マクロ経済管理から社会問題にも及ぶ? ユーロやアジアから何を学び、彼らをどのように助けるか?

FP Tuesday, October 5, 2010

An interview with James Wolfensohn

Posted By David Bosco

guardian.co.uk, Tuesday 5 October 2010

Eurozone must stand as one in the IMF

Daniel Gros

IMFにはヨーロッパの代表が多すぎる。理事20人の40%をEU諸国から来る。ユーロ圏の代表というのはいない。ヨーロッパの影響力が長期的に減少する中でも、EFSFができて、IMF融資が重視されるだろう。

SPIEGEL ONLINE  10/05/2010

SPIEGEL Interview with Argentina's President

'We Are Slowly Starting To Enjoy Greater Trust'

Argentine President Cristina Fernández de Kirchner

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The Economist September 25th 2010

Europe’s single-currency woes: Euro follies

How to run the euro: Fixing Europe’s single currency

A Keynesian prototype: Standard solution

The yuan global: A Mao in every pocket

Currencies: Trial of strength

(コメント) ドル、ユーロ、人民元、そして一段下で、円、ポンド、スイス・フラン、もう少し下には、ブラジルや韓国、シンガポール、マレーシア、などの通貨が闘っています。

そのイメージは正しいけれど、部分的です。いずれの通貨も国内経済を管理する重要な手段であり、政治権力の道具です。国際取引に参加した以上、他の通貨との関係で、その能力は制約されます。ときには、協力してその効果を高めます。どのような形で競合し、破壊し合うのか? どのような条件があれば、効果的に協力できるのか? 競争的切り下げと世界恐慌なのか、量的緩和と為替介入による世界的リフレ政策なのか、その両方が進みます。

ケインズの国際清算同盟が再考されるのは、そのような問題意識が強まったからです。


The Economist September 25th 2010

The world’s lungs

Nuclear weapons: Just do it

The North Korean succession: Thanks Dad

Brazil’s mining giant: Valuable Vale

The wine boom in Hong Kong: Days of wine and tulips

(コメント) 世界の肺であるブラジル、アマゾンの熱帯雨林が消滅するスピードが遅くなった、と紹介しています。しかし、経済成長やグローバリゼーションが発展途上国の環境保護を刺激する力は弱く、その変化は遅くて間に合いません。この変化を促し、刺激する組織・制度を模索します。

米ソの核兵器削減や北朝鮮の権力継承問題も、世界の肝臓や腎臓を損なっていると思います。国家の治療法に期待するより、巨大資源産業や規制撤廃による投機家の熱狂によって、超国家的な変化が促されるでしょうか? ブラジルの鉄鉱石採掘企業や、香港のワインブームの話が面白いです。