IPEの果樹園2010

今週のReview

10/4-10/9

 

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IPE研究ノート 10/4/10

今週のReviewで世界情勢を読めば、通貨戦争があり、貿易戦争があり、領土紛争、戦争が明日にも起きそうです。金融危機後の不況が終わっても雇用は容易に回復せず、富裕層は増税を嫌い、進歩的な政府が憎まれます。企業は利潤を上げても、ますます海外拠点へ投資します。

今すぐ、与野党の指導者たちが、対立ではなく、国内・世界の制度改革を進めるために競争し、協力することです。

「自国のすぐ隣に、人口でも面積でも10倍に及ぶ帝国が現れたら、政府はどのように対処するべきですか?」 ・・・ 「それがもし、歴史的に関係の深い、文化や制度を輸入してきた相手であるだけでなく、何度も戦争し、領土を奪い合った国であったとしたら、政府は次の戦争を準備するべきでしょうか?」

こうした厳しい(白熱教室!みたいな)質問が次々と出たら、教室にとどまっているのも大変です。何か、深い洞察を示して、困難な状況を打開するヒントを・・・そんなものがあるとすれば・・・教師として示さなければなりません。

思うに、・・・アメリカにはアメリカの問題が多くあり、人民元レートや貿易不均衡はその原因ではないのです。・・・中国にも中国の深刻な問題がまだまだあり、尖閣諸島やグーグルはその原因ではありません。それぞれの国が重要な国内問題を解決し、さまざまな改革に成功する方が、国際紛争をエスカレートさせるよりも優れた対応です。

しかし、残念ながら、そうはいかない、とも思います。誰よりも、大国こそが世界の秩序を決めるから。そして、他国が成功・成長することは、たとえ自分が失敗・衰退していなくても、相対的には服従することを予感させます。この世界順位競争には終わりがありません。中国は牽制をエスカレートし、日本はこれを傍観しています。

「もし私が中国(のような国の指導者)なら」・・・と、私は考えました。「労働者の消費を増やして貿易黒字を減らすより、外貨準備を使って外国の資源や先端技術を買い込み、財政危機に苦しむ政府や、ユーロ危機に苦しむEUで、債券を大量に購入してやるだろう。なぜなら、その方が外国に対する影響力(交渉力)を強め、自国の繁栄を持続させる条件を有利にできるから。」

他方、世界中の国々が、もし、いずれも小さく、開放的で、高度に発展した(協調型の)民主主義と複雑な産業構造を持っているとしたら、各国の指導者は自国の問題を解決することに全力を注ぐでしょう。そして、国際的な調整や支援・補償のルールを充実させたいと願います。あるいは、本当に調整のルールを合意できるなら、安定化基金や補償メカニズムを提供し、安全保障や経済管理についても主権を共有し、次第に統合化してもよい、と思うのです。

あるいは、こう考えてはどうでしょう。隣の大国は非常に友好的で、自分たちと社会的な価値観を広く共有しており、政治システムは安定し、国際秩序に対する考え方に共鳴する部分が多くある。私たちはその隣国の成長を素直に歓迎できる、と。実際、アメリカは日本と戦争し、日本を占領し、今も世界最大の軍事大国・核兵器保有国であるけれど、今、それを大きな脅威と感じることはありません。

「日本には冷戦後の構想力がない。日本から世界に向けたメッセージがない。」 

私はいつも、国際通貨制度(IMS)を思います。金本位制も、金為替本位制も、ドル本位制も、プラザ合意も、EMUも、その時代の貿易戦争や領土紛争、戦争を防ぐ安全保障の仕組みと結びついていました。日本も、自分たちにふさわしい仕組みを提案し、実現することです。

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ダニエル・パトリック・モイニハンは4人の大統領に仕えた優れた顧問、スピーチライター、大使でした。彼の書簡や日記、報告書、演説などを編集した本を、The Economistが紹介しています。著名人も含めて、アメリカ社会の様々な階層、異なる考え方の人々と交際し、手紙を書いたそうです。そしてアメリカ社会の全体を見渡し、アメリカを素晴らしい国にするために、真摯な提言を繰り返した、と。

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・・・アジアのパワー・ポリティクス ・・・中国の成長の行方 ・・・アイルランドとユーロ危機 ・・・北朝鮮の権力移行 ・・・通貨戦争か、調整か ・・・アメリカ再建と政治的麻痺

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


l         アジアのパワー・ポリティクス

FP Friday, September 24, 2010

Washington take note: The era of great power politics is far from over in Asia

Posted By Daniel Blumenthal

アジアでは、パワー・ポリティクスの時代が終わっていない。利益や意見の対立は、大国間の貿易や投資、軍事力を使った脅迫と戦争をもたらす。中国は、日本を威圧するために、結果を顧みずに、その経済力を強制の手段とし、国際市場にも介入した。この問題は、尖閣諸島の漁船だけでなく、資源探査や潜水艦の航行など、この数年間に高まってきた一連のものである。

アジアで大国間の紛争が強まったのは、それまで支配してきた大国=日本の力が弱まった、と意識されたからだ。アジアの不安定化は、アメリカに対する中国の台頭が意識されたというよりも、中国に比べた日本の衰退が注目された結果であろう。日本は停滞から抜け出せない、と思われている。

アジアでは今も、戦争と平和の問題が、気候変動や通貨の論争よりも重要である。アメリカは、日本が経済改革を推進し、より一貫した、強力な戦略的主体として、アメリカとの同盟をアジアの安定性に結びつける役割を担えるよう、支援しなければならない。また、中国に対しては、アメリカと競合する安全保障についての異なった考え方を、それが衝突しないように、管理・調整しなければならない。

中国は、ますます、かつての日本帝国主義に似てきた。

FP Friday, September 24, 2010

What China learned from Vladimir Putin

Posted By Steve LeVine

FT September 23 2010

Elite groups can drown out Chinese voices

By Geoff Dyer in Beijing

2008年にロシアがグルジアとの間に戦争を起こして、その影響圏を示しました。今、中国が日本に対して、同様の行動を準備しています。中国の指導者たちの中でも、中国が世界の舞台で行動するときだ、と考える集団が現れている、とGeoff Dyerは見ます。

5年前には反日デモが巻き起こり、その中に、「わたしたちは日本人が大嫌いなだけだ。」と答えた高校生もいました。政府は、国民の反日感情を意識して行動するしかないのでしょうか。2008年には、ダライラマと会ったフランスのサルコジ大統領に対する反発が、フランス商品ボイコットに至りました。プリウスの生産もやめさせるのか?

インターネットで外国政府や製品を憎むデモの呼び掛けだけでなく、ビジネス界や軍の指導者にも、外交への関心と影響力が強まっています。

guardian.co.uk, Saturday 25 September 2010

China and India: the great game's new players

Jaswant Singh

NYT September 24, 2010

China, Japan and the Sea

中国も、日本も、賢明な対応を採った。

「今回の衝突はさらに深刻であった。中国の軍艦が日本の領海をますます頻繁に通過したことも重要だった。日本が長期かつ野蛮な形で占領したことによる中国人の傷は癒されていない。しかし、両国は協力して北朝鮮の核開発を阻止しようとしてきた。日本政府の同盟者として、アメリカもまた、中国が地域の責任ある国家として行動することを強く奨励している。」

FT September 23 2010

China spat with Japan grows with detentions

By Kathrin Hille in Beijing and Mure Dickie in Tokyo

WSJ SEPTEMBER 24, 2010

Japan Caves In on China; Looks to U.S.

By REBECCA BLUMENSTEIN and GORDON FAIRCLOUGH in New York and YUKA HAYASHI in Tokyo

中国の台頭に対して、日本はアメリカとの戦略的な同盟関係を強化するでしょう。さらに、韓国との歴史的な紛争問題を積極的に解決し、ベトナムやインドとの貿易、投資、友好関係も深めるだろう、と日本政府は方針を示しています。

他方、中国との貿易、日本企業の生産拠点、中国からの観光客は、ますます日本にとって重要になっています。

LAT September 26, 2010

China's growing military clout and East Asia's future

Doyle McManus

中国の軍事大国化は周辺諸国を不安にさせる。なぜなら、中国は東シナ海の何百もの島を領有していると主張し、その周辺海域の資源を開発しようとしているからです。

「かつてわれわれのものであったが、中国が弱体化していた間に、外国勢力によって盗まれた島々や海域に対する主権を回復する、と中国政府は言う。(中国の近隣諸国はその主張に異議を唱えている。) 中国は、第二次世界大戦以来、アジアのバランス・オブ・パワーを規制する遠くの大国であったアメリカが干渉しないことを望んでいる。」

中国政府の高官や学者たちは、アメリカの軍事力がアジアに存在することは冷戦の復活をもたらすといった調子で非難します。あるいは、19世紀の軍備拡大競争です。他方、ベトナムやシンガポールの指導者は、中国の軍事力を牽制する形で、アメリカがアジアに軍事力を維持することを願っています。アメリカの役割を中国が代わることはできない、とシンガポールの首相も述べました。

これは中国国内の軍の利権拡大が影響しているでしょう。また、アフガニスタンに多くの軍事力を投入するオバマ政権が、良好とはいえない、日本や韓国、ベトナムのためにどの程度介入するのか、中国は試しているのかもしれません。中国経済の拡大、資源の渇望、(欧米や日本の)帝国主義介入への歴史的な遺恨、ナショナリズム、など、紛争の条件は今後もなくならず、事件は繰り返されるでしょう。

19世紀に、アジアで軍事大国(すなわち、日本)が登場したとき、その結末は酷いものだったことを誰もが知っている。中国の台頭を、太平洋におけるアメリカの軍事的な独占的地位を失う一方で、平和的に受け入れることが、21世紀のアメリカの課題である。

WP Sunday, September 26, 2010; A25

While U.S. is distracted, China develops sea power

By Robert D. Kaplan

アメリカが中東地域に関わっている間に、中国が海軍力を増強した。オバマ政権は東シナ海の日中紛争の意味をもっと重視しなければならない。

「イギリスのような島国は、当然、海洋に向けて拡大するが、中国のように大陸国家で、長い、紛争を招く(大陸の)国境線を持つ場合、海洋への進出は贅沢品である。」 中国が海洋に進出したのは明朝の鄭和による遠征でしたが、その後、モンゴルに対する防衛に集中して、海洋をあきらめました。しかし中国の人口や企業は、今また、ロシア、モンゴル、中央アジアに拡大しています。

中国が海軍を拡大すれば、いつか、アメリカ海軍は東アジア海域を自由に航行できなくなるでしょう。アメリカ経済が停滞し、中国経済が拡大し続ければ、海洋の支配は逆転します。世界の商品貿易の90%が海運によって行われていることを思えば、その重要性は明らかです。

アメリカと中国の競争が最も重要となる海洋は南シナ海です。世界の商業航行の3分の1が集中し、日本、韓国、中国北東部への原油供給の半分がここを通過します。中国はこの海域の支配を「欠かせない国益」と主張します。パナマ運河ができてから、アメリカにとってカリブ海域を支配することが西半球における優位を確保する上で欠かせないものであったように、中国にとって南シナ海を支配することが、東半球の優位に欠かせないものなのです。そして、南シナ海を支配すれば、中国海軍は太平洋やインド洋へも拡大するでしょう。ビルマ、スリランカ、バングラデシュ、パキスタンで、中国は港湾建設などを支援しています。

かつて大英帝国がそうしたように、21世紀のグローバリゼーションに対しても、中国は世界交易を自国の海軍によって護りたいのです。アメリカが中東や中央アジアで軍事力を行使し、安全を確保しているとき、中国は輸送網やパイプラインを建設し、銅などの地下資源を開発・購入してきました。

「中国はアメリカの敵と見なすべきではないが、同時に、ユーラシア全体に中国が経済帝国を建設することもアメリカの利益ではない。」

WP Monday, September 27, 2010; A14

Rising power

リチャード・ニクソンが中国に対するエンゲイジメント(包容)政策を始めてから40年が経つ。今や米中貿易は4000億ドルに達する。アメリカの姿勢は、おおむね、次の前提に基づいてきた。通常の条件で米中間の貿易が増えるほど、すなわち、中国が繁栄して、WTOなどの国際機関にも参加するほど、中国は平和と安定を求める国になるだろう、ということだ。

これまで中国の台頭は平和的に行われたため、日本や韓国などの伝統的な敵対国でさえも、アメリカに代わって中国の成長が地域の繁栄に役立つと期待したし、アメリカと中国が「G2」として世界を指導する、と期待する学者も現れた。

こうしたことは幻想だ、というのが、尖閣諸島をめぐる中国の発言であった。その姿は、国際システムの規制に従う穏健な国家ではない。・・・「権威主義的政治システム」が支配する「19世紀的な重商主義国家」。

YaleGlobal , 27 September 2010

Asia’s Clouded Horizon – Part I

Marvin Ott

東南アジア諸国は、アメリカと中国との間で選択することを望まない。しかし、どうしても選択しなければならないとしたら、中国を選ぶだろう。

(Xinhua) 2010-09-27

Why does US deny entry of Chinese credit rating agency?

WSJ SEPTEMBER 27, 2010

The Next Nuclear Arms Race

By TIM SULLIVAN AND MICHAEL MAZZA

中国とインドの間で、核軍拡競争が始まっているかもしれない。

Sept. 28 (Bloomberg)

Pop Stars, Pandas Get Caught in Asian Crossfire

William Pesek

ポップ・スターからパンダまで、日中摩擦の影響を受けています。

「中国と日本は全体の構図を観なければならない。軍事的な緊張を緩和することは中国の一人当たり所得を引き揚げるだろう。それはまだ日本の10分の1である。日本は中国が将来の成長のエンジンであることを思い出すべきだ。自分の最大の顧客に嫌われることが好ましいとは決して思えない。」

WP Tuesday, September 28, 2010; A25

China's quiet power grab

By Anne Applebaum

なぜ中国は大声で脅迫したのか? 中国が静かであったから、多くの利益を得ることができた。覇権国ではなく、多国籍企業のようにふるまっていたから、中国の政治的影響力は高まってきた。

アフガニスタンでも、アメリカは戦争し、中国はビジネスをする。中国人の方がアメリカ人よりも好かれている、と言われたりする。欧米は温暖化ガスを減らすために政府や民間が莫大な資金を費やしている。しかし、中国では10日ごとに新しい火力発電所が建つ。しかも、欧米の温暖化ガス削減に向けた制度を利用して、中国の風力発電タービン生産企業が売上を伸ばす。中国は静かにレアアースの世界市場で支配的な地位を得た。それは携帯電話やレーザー、コンピューターの生産に必要だ。

しかし、中国がナショナリストに変わり、机を叩いて大声で自分の主張を通すとき、こうした市場で政府がそれを道具として脅迫するとき、それを観た人びとは恐れ、反応するだろう。

FT September 27 2010

China’s muscle-flexing is a sign of weakness

By Jonathan Holslag

中国の強硬姿勢はその「弱さ」を示している。トロール漁の海域を広げたり、海底資源を求めたり、ヒマラヤの水源をダムで取り込んだりするのは、中国の切迫した需要増大と供給不安が作用している。

それはまた、外国企業の投資や外国市場に依拠した成長に頼る中国の経済モデルが行き詰まること、自国の脆弱さに関する歴史的な記憶が、強い経済ナショナリズムの主張を招くことも示している。それゆえ、国内改革の難しさに直面し、中国の立場は弱くなる。

中国への不信は、その反発を強め、自己実現的な予言となる。破滅的な愛国主義が中国の政治を圧倒するリスクを高めている。

(China Daily) 2010-09-28

Strong ties

中国とロシアが領土問題で連携する動きを示しました。

(People's Daily Online) 2010-09-28

Japan needs to draw lesson on seizure of Chinese trawler, fishermen

By Wu Huaizhong

FP SEPTEMBER 28, 2010

Is China Afraid of Its Own People?

BY WILLY LAM

日本の中国侵略79周年を記念する中国の活動家たちが各地に集まっていました。そのせいで、中国政府は「主権を棚上げにして共同開発する」という2008年の胡錦濤・福田康夫の日中合意を国民に示せなくなりました。

中国国内の反日運動や不買運動が広まれば、対外的な圧力として利用できるのではなく、むしろ政府の選択肢を制限してしまうのです。中国政府は、交渉や合意の利益を国民に説明していません。

YaleGlobal , 29 September 2010

As new threats emerge, Japan should play a bigger role

Yoichi Funabashi

朝鮮半島の安定化、海洋の安全保障、エネルギーと水の供給、に関して、平和的な解決策を積極的に示し、アジアで実現することに日本政府が貢献することで、領土問題でも、日中間の衝突を回避できる。しかも、日米同盟と日米の役割分担を正しく理解して。

(China Daily) 2010-09-30

Japan must look beyond its internal problems

By Wang Ping

(People's Daily Online) 2010-09-30

'Dragon,' 'elephant' cooperation most rational choice

中国とインドとの協力関係を唱えています。

WSJ OCTOBER 1, 2010

China's Aggressive New Diplomacy

WSJ SEPTEMBER 29, 2010

Woken Up by a Stirring Dragon

By MICHAEL AUSLIN

ケ小平がマルクス・レーニン主義を30年前に放逐して以来、中国の政治体制は経済成長とナショナリズムに正当性の根拠を求めてきた。しかし、日本との尖閣諸島に関する紛争に限らず、中国のナショナリズムは、アメリカと韓国との合同軍事演習、南シナ海における諸外国との領有権問題など、多くの衝突を引き起こしてきた。

それは経済力や軍事力の拡大がもたらした自信、挑発行為、不機嫌さであり、国民意識の変化を示している。"China is a big country and other countries are small countries, and that's just a fact." これが中国外務省高官の感覚です。

次の紛争では、日本が要求を引き下げないかもしれない、アメリカが中立を保たないかもしれない、そして、中国は引き下がるか、国内のナショナリストに煽動されて軍事的衝突を選ぶかもしれない。今後10年の安定性を決める、ということを、中国の行政と軍事の指導者たちは意識してほしい。


l         中国の成長の行方

Sept. 24 (Bloomberg)

Buffett, Gates Check Out China’s Gasmask Future

William Pesek

中国はますますアメリカに似てくる。もちろん、民主主義を輸入することや、インターネットを自由化すること、人民元の為替レートを変動させることではない。環境を汚染し、急速に消費を増やす点で似てくるのである。

世界経済のバランスを回復させて、持続的な成長パターンを実現するために、中国の工場が労働者の賃金を引き上げることは望ましい、と思える。中国はもっと消費し、もっと輸入するだろう。しかし、貧困を減らす中国の成長が、世界中にますます多くのアメリカ人消費者を増やすとしたら、その環境破壊のコストは甚大である。ある推定では、毎年、GDPの2〜4%のコストを経済に負荷するだろう。

それでも、バフェットとビル・ゲイツは、富裕層が増える中国経済を訪問する。彼らが追加した投資により、次に中国を訪問するときにはガス・マスクが必要になるだろう。

NYT September 25, 2010

Their Moon Shot and Ours

By THOMAS L. FRIEDMAN

中国が「ロケット花火 “Moon shots”」(巨大な、何十億ドルも費やす、25年先の、ゲームを変えてしまうような投資)を打ち上げた。しかも、少なくとも4連発だ。超モダンな空港のネットワークを建設し、都市を結ぶ超高速鉄道のネットワークを建設し、DNA解読など、生命科学・産業を興し、さらに、電気自動車産業に投資した。

アメリカの「ロケット花火」は、・・・アフガニスタン再建だ。「われわれはバランスを見失っている。安全保障と繁栄とのバランスだ。アルカイダとだけでなく、中国とも競争するべきだ。電気自動車から始めよう。」

米中両国が消費者に電気自動車を購入するような市場の誘因を与え、また、どこでも充電できるようなインフラを整備するなら、両国の「打ち上げ花火」はウィン・ウィンとなるだろう。他方、中国だけが成功するなら、アメリカはサウジアラビアから原油を輸入するのに代えて、中国から電気自動車を輸入するようになる。

NYT September 26, 2010

Blaming China Won’t Help the Economy

By ANATOLE KALETSKY

菅直人の代表選出に続けて行われた為替介入を、ANATOLE KALETSKYは世界資本主義の転換に一致するものと見なします。

リーマン・ショックと世界金融危機は、「ワシントン・コンセンサス」や市場型資本主義のファンダメンタリストたちを放逐しました。アメリカにはまだ、「ティー・パーティ」運動が選挙を左右する状況で、分裂状態が続いています。

日本の円高阻止介入は、アメリカとの関係を意識したのではなく、中国、韓国、シンガポール、台湾、など、アジア諸国の輸出競争に対して、日本の企業が日本もそれに従うよう要望したことで行われました。中国の経済モデルがアジアに広まり、アメリカの求める市場改革を日本も拒んだことを示す介入だった、というわけです。

雇用や、世界経済の均衡回復、地球環境について、市場が正しい答えを示すでしょうか? その答えは、市場と政府の関係に拠ります。新しい資本主義は、アジアでもヨーロッパでも、より小さく、より効果的な、市場介入を目指します。彼らはアメリカのように富裕層への所得税増税に頼らず、中産階級から公共料金やエネルギー税を徴収しています。そして、その方が税収は安定し、積極的に長期的な成長モデル、インフラ、教育・再訓練に投資できるのです。

それは、ある意味で中国が成功したことです。新しい資本主義のモデルも、他の多くの商品がそうなっているように、中国製である、と。

Sept. 27 (Bloomberg)

Chinese Real-Estate Bust Is Morphing Into a Slow Leak

Andy Xie

WP Monday, September 27, 2010; A15

The makings of a trade war with China

By Robert J. Samuelson

中国は人民元の増価を受け入れず、輸出への補助金を止めない。アメリカは世界貿易のルールを守る指導的な国として、貿易戦争のリスクを冒してでも、中国に制裁を科すべきだ。それは世界景気の弱さを考えれば1930年のグラス=スティーガル法を想起させ、世界恐慌に向かう愚かな政策だろうか? そうした意見にRobert J. Samuelsonは反対します。

「問題は中国が世界経済を支配する基本的ルールを本気で受け入れないことだ。」 「中国は自分たちの利益になるときだけ従い、利益に反するときは無視する。アメリカも含めて、すべての国がそのように行動したいと思うだろうが、彼らはルールの正統性を認めている。だから、しばしば自国の当面の利益に反することでも、ルールを受け入れるのだ。」

グラス=スティーガル法は保護主義の政策であった。中国の過小評価された人民元に対する報復は、保護主義を放棄させ、自由な世界貿易体制を守るための措置である、と。

NYT September 28, 2010

Cultivating the Chinese Consumer

By STEPHEN S. ROACH

人民元を批判し、中国の輸出超過に制裁を科すべきだ、というアメリカ議会の主張をStephen S. Roachは退けます。

米中間の不均衡と論争の政治化の背景は、両国に共通した課題です。すなわち、ともに失業者の増大を深刻なものとして心配しており、国内の貯蓄・消費・投資のバランスが失われています。米中間の貿易摩擦(そして、世界経済の不均衡)を解消するには、二つの方法が提案されています。一つは、人民元を強くする(ドルを弱くする)こと。もう一つは、中国人の消費を増やすこと。アメリカは為替レートを重視し、中国は構造改革を重視します。

Stephen S. Roachは、為替レートによる調整は失敗する、と考えます。1980年代の日本でも、ここ数年のアメリカでも、為替レートの調整が不均衡を解消する役に立っていない。ドル安にもかかわらず、失業と低賃金を残したまま、世界の90カ国と貿易赤字を続けている、と。結局、アメリカの貯蓄が少なすぎたのです。

人民元の増価を強制しても、貿易戦争が拡大し、財政赤字の補てんには他国からの資本を必要とし、それは一層のドル安と高金利を招くだろう。たとえ中国製品を拒んでも、アメリカの消費者は中国製に劣る、より高価な外国製品を買うしかないだろう。中国政府が目指す人民元の改革は、長期的に、世界の準備通貨としてドルに代わることを目指す合理的な政策である。アメリカは中国を非難することで責任回避を図っている。それは政治的には魅力的だろうが、多角的問題に二国間の解決を強いるのは間違いだ。

むしろ、中国の消費拡大を促す国内政策に期待するべきだ。社会保障、年金、医療保険、失業保険。税制によって地方の貧困を緩和する、土地所有権の改革や地方と都市との間の移民を支援する、サービス分野の雇用を増やす。

中国の消費を伸ばすことは、世界のバランスを回復させ、成長を助けるだろう。他方、不均衡を理由にドル安を促すアメリカは、通貨を安くすることで繁栄した国などない、と知るべきだ。

WSJ SEPTEMBER 29, 2010

China's Next Leap Forward

By GARY S. BECKER

通貨を安く維持して、優れた技術を導入し、特定の分野で輸出を伸ばすことは容易である。しかし、経済全体が豊かになるのは難しい。

中国には、競争と民間経済への強い信頼があるから、次の「大躍進」が続くだろう。

LAT September 30, 2010

China's prosperity anxiety

Doyle McManus

中国の大衆は新しい繁栄に強い不安を抱いている。大卒の失業問題、住宅価格の高騰、不動産バブル、新興富裕層の浪費、不平等、世代間の不一致、文化の欧米化、など。

新世代の若者が権力の中枢に入るとき、中国は変わらざるを得ない、と感じる。しかし他方で、これほど激しい変化を経験しながら政治体制はそれを吸収し、権力を維持してきた。


l         アイルランドとユーロ危機

guardian.co.uk, Friday 24 September 2010

Dublin's brave slashers have sent Ireland back into recession

Michael Burke

SPIEGEL ONLINE  09/27/2010 12:57 PM

Ireland's Problems Have Euro Zone Worried

By Christoph Pauly

FT September 27 2010

Markets fear Ireland is another Greece

By Desmond Lachman

guardian.co.uk, Thursday 30 September 2010

Ireland's apathy

Mary Fitzgerald

FT September 30 2010

Ireland will recover quickly from bank crisis

By Danny McCoy

FT September 30 2010

Ireland attempts to settle its losses

アイルランドは財政赤字と通貨不安に対する健全化を先導した優等生のはずでした。ところが、危機が再現しています。ユーロ圏であるために金融政策は使えず、金利や為替レートは固定され、財政赤字の制限を強いられています。通貨危機、緊縮財政、不況、通貨危機、・・・ これは、ギリシャであり、アルゼンチンがたどった危機の過程です。

ヨーロッパの安定化基金は、早期に、利用されるでしょうか? 「様子を見る」政治家たちの議論は遅く、危機が起きるまで動かない? IMFとの協調融資には厳しい条件が付きます。

FT September 27 2010

Eurozone needs a permanent bail-out fund

By Peter Bofinger, Henrik Enderlein, Tommaso Padoa-Schioppa and André Sapir

ヨーロッパの代表的な金融専門家・政治家たちが金融危機に対する救済基金を求めています。個々の赤字国に緊縮を強いるのではなく、ヨーロッパ全体の解決策が必要です。

財政規律を求めることは不況を悪化させ、ユーロ圏の政治不安を高めて、EMUの崩壊さえ予想させる、と警告します。むしろ、財政赤字の抑制を長期的な条件として、EFSFが債券を発行して低金利で調達した資金を融資してやれば、危機を緩和できます。

FT September 26 2010

Could any country risk a eurozone bail-out?

By Wolfgang Münchau

WSJ SEPTEMBER 28, 2010

The Euro's Instability Pact

By Mojmír Hampl


FT September 24 2010

Bernanke ponders QE2 to keep America afloat

By Robin Harding

FT September 24 2010

Central banks plot their plan B

Sept. 29 (Bloomberg)

Obama as Comeback Kid Just Needs Weaker Dollar

Simon Johnson


guardian.co.uk, Saturday 25 September 2010

Ed Miliband is a radical leader for a radical new era

Roy Hattersley

guardian.co.uk, Saturday 25 September 2010

Ed Miliband elected new Labour leader

Toby Helm and Anushka Asthana

FT September 25 2010

Ed Miliband wins Labour leadership by wafer-thin margin

By George Parker and Jim Pickard

FT September 26 2010

Miliband must kill the ‘red Ed’ tag

guardian.co.uk, Monday 27 September 2010

Ed must stick to his ideology if he's to beat Cameron

Polly Toynbee

FT September 27 2010

Miliband falls into the European statist trap

By Philip Stephens


WSJ SEPTEMBER 25, 2010

In Defense of the West—and the Third Way

By BRET STEPHENS

ブレアの目指した進歩的な国家や国際秩序とは何であったのか? 彼の回顧録を読みたいです。


The Observer, Sunday 26 September 2010

City reform has got off to a good start. Now for some real action

Will Hutton

「今、必要とされているのは、均衡のとれた、多様な経済を創造するために、経済の後背地を支える金融システムである。イギリスにはそのようなシステムがない。」


FT September 26 2010

Japan looks at $55bn stimulus package

By Michiyo Nakamoto in Tokyo

FT September 27 2010

Japanese stimulus

Sept. 30 (Bloomberg)

How I Learned to Stop Worrying and Love the Yen

William Pesek

円安誘導よりも財政刺激策を、世界は日本に求めています。しかし、財政赤字を無限に増やすことはできず、それに依存した成長も転換する必要があります。それゆえ、刺激策が何をもたらすのか? に注意が向けられます。


l         北朝鮮の権力移行

WSJ SEPTEMBER 26, 2010

It's Time for a Political War on Pyongyang

By CHRISTIAN WHITON

FT September 28 2010

Harsh realities for North Korea’s unseen heir

By Aidan Foster-Carter

北朝鮮における権力移行には、大きな疑問とリスクが指摘されています。むしろ、体制の転換を促してはどうか? 日米韓は情報交換を緊密に行い、合同軍事演習も有効である。

他方、もし中国が北朝鮮の権力移行が失敗すると感じて静かに体制を掌握した場合、韓国政府にとっては苛立たしいだろうが、この獰猛なミニ恐竜から牙が抜かれることに、関係者の多くが安堵するだろう。

FT September 28 2010

Next Dear Leader is heir unapparent

guardian.co.uk, Wednesday 29 September 2010

China's wealth will bring most change to North Korea

Matthew Poulter

1953年に朝鮮半島の分断を決めたとき、アメリカ帝国主義を食い止めて北朝鮮の生存を保証したのは中国だった。今も、その構図は全く変わっていないように見えるが、実際は、その中国が大きく変わった。現在の北朝鮮と中国との差は、余りにも大きい。その差を知りたければ、両国を結ぶ橋を夜間に渡ればよい。一方ではネオンが輝き、他方は闇の世界だ。

誰が北朝鮮を支配するにせよ、川の向こうに広がる中国のネオン街こそ、北朝鮮に変化を強いる力である。


FT September 26 2010

We can only cut debt by borrowing

Martin Wolf

FT September 30 2010

The IMF’s foolish praise for austerity

By Martin Wolf

バブル崩壊後に政府が財政赤字を増やすことは、民間部門の需要が減少することに見合って、正当な是正策である。支払能力を越えた莫大な債務を処理するには、破産、金融緩和、財政赤字による需要の維持、の三つを組み合わせることを主張します。一国であれ、国際間であれ、財政赤字が増大することだけを批判するのは間違いです。


WP Monday, September 27, 2010; A15

Rising powers need to rise up

By Fareed Zakaria

「新興勢力は、正しく、世界の権力構造や意思決定に中心的な役割を果たすことを主張している。しかし、その機会があれば、彼らは大国として、より広い利益のために、行動するのだろうか? 貿易に関して? エネルギー供給に関して? 気候変動に関して?」

地域の平和や安定性のためにも、彼らはなかなか行動しない。他方、その国益を追求することは非常に熱心だ。


l         通貨戦争か、調整か

FT September 27 2010

Brazil in ‘currency war’ alert

By Jonathan Wheatley in São Paulo and Peter Garnham in London

Published: 16:30 | Last updated: September 27 2010 19:18

FT September 28 2010

Currencies clash in new age of beggar-my-neighbour

By Martin Wolf

FT September 28 2010

Currency war

「国際的な通貨戦争がはじまった。」 と、ブラジルのGuido Mantega財務大臣は言います。日本、韓国、台湾の為替介入を批判した発言です。それは国際協調を難しくするでしょう。次のG20を準備する韓国は、通貨・為替レート問題の議論を避けようとします。Martin Wolfが示した実質為替レートのグラフで、人民元、ユーロ、円、ポンドに比べて、ブラジル・レアルの為替レートだけ大きく増価しているとわかります。(オーストラリア・ドル、南アフリカ・ランド、など、資源輸出国の通貨も増価しています。)

Martin Wolfはこの問題を、ニクソン・ショック後のドル安や、プラザ合意によるドル安の時代と同じである、と考えます。いずれもアメリカがドル安を望んだからです。ただし、今回のドル安を安定的に維持できるカギは、従順な同盟国である日本ではなく、次の覇権を目指す中国の協力を得ることにあるのです。

三つの事実を重視するべきだ、とMartin Wolfは主張します。現在の「通貨戦争」によって、1.既開発諸国は継続的なデフレ圧力にさらされています。2.民間部門は、この需要不足に対応して、新興市場への投資を増やしています。公的な為替介入がなければ、新興市場の為替レートは増価して、高所得国からの輸入が増え、新興市場は経常収支赤字を出すはずです。3.この調整過程は、外貨準備の累積によって阻止されたままです。20092月から201010月までに、世界の外貨準備は1兆3240億ドルも増加しました。・・・「重商主義がよみがえった。」

中国は追加された外貨準備の40%を占めています。それは世界の外貨準備の30%、中国のGDPの50%に及びます。Martin Wolfは、これを莫大な輸出補助金と見なします。そして、一つの超大国から他の超大国へ、これほど巨額の融資を行ったことは歴史上なかった、と。

中国はインフレや国内需要を刺激することで調整を進めているから、こうした批判は当たらない、という主張は、中国の金融政策が引き締められ、インフレ抑制に成功したことと矛盾します。そして、民間資本流入を受けて、為替市場に介入しない、ブラジルのような国にとって、増価の圧力は耐えがたいものとなっています。それは新興市場における次の通貨危機を準備しているのです。

「アメリカは中国のインフレを求め、中国はアメリカにデフレを求める。どちらも側も自分が正しいと確信しているが、どちらも成功しないだろう。そして他の世界が苦しむ。」

日本がプラザ合意後に経験した経済停滞を中国が何としても避けようとするのは当然だが、その原因は日本が改革するより金融緩和を選択したことにあった。・・・「為替レートの問題を超えて、内外の改革を進める、より大きな想像力を求められる。」 楽天家でないMartin Wolfは、近隣窮乏化政策の結末を悲観します。


SPIEGEL ONLINE  09/28/2010 12:37 PM

Continent of Fear

The Rise of Europe's Right-Wing Populists


SPIEGEL ONLINE  09/28/2010 07:00 PM

Legacy of Versailles

Germany Closes Book on World War I With Final Reparations Payment

By David Crossland

SPIEGEL ONLINE  09/29/2010 04:35 PM

Germany's Unlikely Diplomatic Triumph

An Inside Look at the Reunification Negotiations

By Klaus Wiegrefe

guardian.co.uk, Thursday 30 September 2010

East Germans are still different

Sabine Rennefanz

SPIEGEL ONLINE  09/29/2010 07:02 PM

Condoleezza Rice on German Reunification

'I Preferred To See It as an Acquisition'

SPIEGEL ONLINE  09/30/2010 06:46 PM

The Price of Unity

Was the Deutsche Mark Sacrificed for Reunification?

By Michael Sauga, Stefan Simons and Klaus Wiegrefe

FT September 30 2010

Germany: An unequal union

By Quentin Peel

20周年を機会に、東西ドイツの再統一をめぐる政治過程、再統一後の東ドイツ経済再建、などが一斉に取り上げられています。


l         アメリカ再建と政治的麻痺

guardian.co.uk, Wednesday 29 September 2010

US politics is angry, polarised, and gridlocked. Can it be reformed?

Timothy Garton Ash

「アメリカが9・11以後、1兆ドルを海外の戦争に費やし、国内でもエベレストのような債務の山を積み上げている間に、中国はこの10年間、静かに成長し、貯蓄し、投資し、地位を上昇させてきた。もしイラク戦争の勝者がイランであるなら、イスラム過激派との10年に及ぶアメリカの戦争の勝者は中国だろう。」

しかし、アメリカはようやく目覚めた。インフラ投資、高速鉄道、教育システムを議論し、外国の戦争よりも、アメリカの再建を唱える。アメリカに対する安全保障上の脅威で最大のものは何か? ・・・債務の累積。

テロの脅威や、中東の核軍拡競争など、危機は今も存在するが、この10年間の地政学的テーマは明らかだ。・・・「台頭する中国と、苦悩するアメリカ。」

アメリカ再生のチャンスを見たければ、シリコン・ヴァレーに行くことだ。そこにはアメリカ社会の輝きがある。科学と知的な自由に根差す技術革新。リスクを恐れないヴェンチャー資本家。インド、中国、ヨーロッパ、世界中から最良の人材が集まる、開かれた、ダイナミックな社会。

アメリカ再生を否定する者はワシントンを観る。アメリカ政治の機能不全にはいくつもの側面がある。一つは、文化的な対立。膨大な放映時間を、ゲイ・マリッジ、堕胎、ホモセクシャル、その他の議論に費やす。党派に偏ったケーブル・テレビ。政治家が必要とする選挙資金は増え続けて、企業からの資金が政治を決める。恥知らずなほど選挙区を変える。政党間の協力を唱えるコメディアンが最高のジョークになる。

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The Economist September 18th 2010

Europe’s Romanies: Hot meals for hard cases

Romanies: A long road

Swedish politics: The strange death of social-democratic Sweden

Pakistan’s flood: A ruined country

Japanese politics: Now for the Biotic Kan

China and Japan: Getting their goat

Nepal, China and India: Rivals on the roof of the world

(コメント) ヨーロッパはロマ問題についてEUの原則を書き換えてしまうのでしょうか? 貧困、差別、隔離・・・ 日本にも、イギリスにも、同様の問題はあるでしょう。そして、社会問題の多くの答えは、「教育」と「雇用」です。

スウェーデンの社会民主主義が死んだ、という記事の評価は間違っていると思いますが、右派の刺激を受けた社会民主主義が支持されました。パキスタンは水害、日本は円高。いずれも繰り返し問題にされ、そのたびに、政治の貧困が叫ばれます。尖閣諸島問題の記事は平均的です。他方、ネパールにおける毛派のゲリラ指導者が政権を執る力量次第では、この小国がインドと中国の政治介入・内戦へ向かう悪夢を、記事は伝えています。


The Economist September 18th 2010

Balkan railways: From Berlin to Beijing?

The American economy: The great debt drag

Buttonwood: Another paradox of thrift

(コメント) ベルリンから北京まで、鉄道が直通で走る時代が来る! 他方、アメリカ経済は高水準の失業が続き、大きな孤島になるのでしょうか? 超低金利が続くことで経済決定が変質してしまう日本病の可能性。