今週のReview
9/20-9/25
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IPE研究ノート 9/20/10
民主党の代表選挙を観ていたころ、プレゼミの説明会がありました。ブースに来た学生が質問してくれました。菅直人や民主党の人事に、期待よりも不安を持つべきではないか? 小沢の実行力が必要ではないか?
しかし、小沢の指導力・実行力、とは何でしょうか? もしそんな魔法が使えるのであれば、これまでの経歴においても多くの改革や法案を実行したはずです。小沢の別名は「壊し屋」であって、「金権政治」や「闇将軍」の政治スタイルを継承した、と考える方が正しいと思います。
たとえば、法案を潰したり、候補者を決めたり、政治家の再選を阻止する力、業界の政治資金を集め、派閥の候補に配分する力があるとしても、それは日本の改革を進める意味で<マイナス>になりました。
他方、菅政権が熟議民主主義を唱えても、もしそれを政治家たちの間だけで行うなら、成果は期待できません。むしろ、一般有権者から重要なグループ(社会集団)を決め、そのさまざまなグループを代表するように、無作為に選んだ市民代表に対して政治家たちが政策を説得するべきです。必要なら官僚や参考人を招き、説明や資料を追加します。そして最後に、彼らの投票と感想を得て、有権者の判断材料にしてください。
審議過程や投票結果は公開します。事業仕分けのように、重要なテーマについては<熟議>過程を一部公開すればよいし、日本各地で開催してほしいです。それは、政治家同士が意味不明な答弁で有権者の歓心を買い、裏で取引する余地を減らすでしょう。
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政府は円高対策を求められていましたが、民主党代表選挙の直後、菅内閣は為替介入を行い、予想外の効果を得ました。投資家たちに、円高を前提に資産保有することは安心できない、という条件をつくりだしたのです。
菅内閣の支持率を上げるのに、脱小沢よりも、効果があったかもしれません。
しかし、日本単独の為替介入は、ロシアの小麦輸出規制や、中国の人民元レートと同じ様に、非難されています。国際通貨制度や国際協調という意味で、日本政府の行動は主要国の責任を放棄したに等しい、と判断されたのです。世界経済が金融危機後の不況に苦しむ中でも、開放型の景気回復を目指してG20やIMFによる協調姿勢が合意されたはずではなかったか?
保護主義や通貨の競争的切り下げは封じられ、金融破たん処理や需要刺激策が強調されています。もし日本国内が好景気で、企業の海外投資も国内の労働力不足や賃金上昇を理由にしたものであれば、円高は容認されたでしょう。
あるいは、円高を介入によって抑える十分な理由があれば、主要国に事前に打診して、協調介入を行えたでしょう。異常事態や政治的動機で、資本の突然の流入(還流)が起きたとか、実質実効為替レートが明らかに異常な水準にとどまっているとか、為替レートの乱高下によって貿易や投資が妨げられているとか。
欧米の金融当局は、日本について、そのような事情があったと認めていません。あえて言えば、円高が日本の景気回復を挫く、投資や雇用を妨げる、ということでしょう。
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日本企業は、円高が続けば、ますます東南アジアにおける工業団地を利用するようになるでしょう。それと並行して、地域的な為替レート調整メカニズムも発達します。円圏が形成される見込みは無いでしょうが、互いに為替レートを一定の幅に抑制する試みは始まるでしょう。それは、東南アジア工業団地や自由貿易圏の発展傾向と一致します。
また、日本政府は円高を歓迎する国内の政治集団を意識的に取り込む必要があるでしょう。たとえば、イギリスのコラムが指摘したような、大規模スーパーや消費者の円高歓迎論、中国やノルウェーがやっているような政府系投資信託(SWF)による海外資源や農地への投資です。政府は、新しい製品開発や技術革新を助けるだけでなく、海外企業による日本での雇用を促進する開発地区を設けることも考えてはどうでしょうか。
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尖閣諸島問題は日に日にエスカレートしています。前原外務大臣の任命は、菅内閣の死命を決するかもしれません。
前原外相が、ある意味で、リチャード・ニクソン(!)のように、日米関係や安全保障を重視する姿勢を示すことが、他方で、北方領土や竹島の問題を解決し、中国とも尖閣諸島を含めた開発領域の線引きに合意する可能性を開くなら、日本は内政と外交を新しい段階に引き上げるかもしれません。朝鮮半島の非核化や南北統一をも動かすはずです。
安全保障とは何か? 日本だけでなく、中国も、ロシアも、いずれの国も、安全保障を重視しています。しかし、その意味する内容は大きく異なるわけです。一方的な為替介入と同じように、私たちは国際秩序をめぐって争わなければなりません。しかも軍事力の強化ではなく、安全保障を実現する優れたアイデアを示すことで。
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アジア諸国が為替介入によってドルの外貨準備を増やすとすれば、自国通貨の増価とドル価値の急激な減少を嫌うでしょう。その意味では、中国やアジア諸国と、通貨戦略を共有する余地があると思います。
安全保障と外貨準備を共有することは、地域協力の制度化に向けた、重要で、しかも現実的な、出発点だと思います。
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「お布施はシステム化になじまない。遺族それぞれに寄り添う変動相場制であるべきだ。」という発言が記事に紹介されています。こんなところにまで『変動相場制』が使われるとは、宗教行為を説明する(正当化する)イデオロギーが変動相場制になるほど、その社会的受容(と超越的・神秘的な要素)が広まったことを感じます。
NHK時代劇「桂ちづる 診察日録」が面白かったです。始まったのも知りませんでした。どうして最初の2回を観なかったのか! おそらく時代劇を、現代劇やドタバタ喜劇のように演出した、若者に媚びる最近の傾向に失望していたからでしょう。しかし、これはなるほど、若い女性の『赤ひげ』です。
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バーゼル合意V ・・・食糧危機 ・・・中国とブラジルとの経済同盟 ・・・尖閣諸島、為替介入、日本から世界を震撼させるもの? ・・・世界経済の不均衡と国際対立、あるいは協力 ・・・労働移民ビザのオークション ・・・ミュンヘン会談Uと国際協調の試み
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主要な出典 Bloomberg, China Daily, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia
l バーゼル合意V
FT September 11 2010
Basel III faces repeat of old problems
By Sharon Bowles
NYT September 11, 2010
A Capital Mistake
By RICHARD X. BOVE
FT September 12 2010
Basel sets banks new capital rules
By Brooke Masters, Chief Regulation Correspondent
FT September 12 2010
We have failed to muffle the banks
By Clive Crook
guardian.co.uk, Monday 13 September 2010
The bankers' victory dance
John Lanchester
FT September 13 2010
Basel needs a firm hand and fewer delays
By David Scharfstein and Jeremy Stein
バーゼル合意Vは、自己資本比率を高めるために、増資するより、融資を減らすような効果があるだろう。それは景気回復を目指す現状では望ましくない。むしろ、資産が不十分な銀行には、「ストレス・テスト」により、直接に金融当局が増資を要求する方が良い。
NYT September 13, 2010
The New Bank Rules
WSJ SEPTEMBER 14, 2010
Basel's Capital Illusions
By GEORGE MELLOAN
FT September 14 2010
Financial regulation: The money moves on
By Patrick Jenkins and Brooke Masters
FT September 14 2010
Basel: the mouse that did not roar
By Martin Wolf
バーゼル合意は小さなネズミでしかなく、とてもグローバルな金融ビジネスを健全な状態に維持する威力は無いでしょう。関係者たちは、既存の金融秩序を温存したまま、少しずつ危険な度合いを下げようとしている。バーゼル協定の発想は、全く無駄ではないが、こうした危機を繰り返す恐れを残している点で、間違っている。
FT September 15 2010
Now we must build on Basel’s good work
By Emilio Botín
l 食糧危機
The Observer, Sunday 12 September 2010
Big agriculture is the only option to stop the world going hungry
Jay Rayner
「1816年を調べれば、イギリスで深刻な食糧暴動があったとわかる。その年、インドネシアの火山が爆発し、冷夏によって、世界中の穀物をだめにした。現代でも、食糧暴動はタイやメキシコで起きたし、先週はモザンビークで起きた。パンの値段が30%上昇したことに抗議して、7人が死亡した。」
イギリスは、日本と同じく、輸入食糧の価格や安定性に不安を抱えます。ロシアはドイツに天然ガスの供給を止めることができ、イギリスには小麦禁輸で国際価格を引き上げることができます。もちろん、日本には両方です。
どうするべきか? イギリスや日本のように裕福な国は、スーパーマーケットがあればよい、という自由化論を受け入れません。Jay Raynerは、リンゴの価格が下落して、イギリス国内のリンゴ農家が栽培を止めた、と指摘します。今では、イギリスのリンゴはチリ、南アフリカ、ニュージーランド、中国から輸入されています。自給することはできませんが、もし国内栽培を増やすという政策を選択すれば、国内の消費者はより高い価格を払い、農家は品種改良や大規模農法を受け入れることだ、と考えます。小規模の有機農法でなくても、持続可能な農業を実現できます。
NYT September 12, 2010
Not a Food Crisis
「ロシアは、カザフスタンとベラルーシにも輸出禁止を求めて、その効果を強めた。もし他の農産物輸出国がロシアの例に従えば、市場の不安定化は増し、飢餓が増大する。」
l アメリカの不況
WP Sunday, September 12, 2010; A25
Americans have good reason not to believe in Obamanomics
By George F. Will
guardian.co.uk, Monday 13 September 2010
The US economy: why it matters what sort of crisis we're in
Dean Baker
WSJ SEPTEMBER 14, 2010
Obamanomics Meets Incentives
By ROBERT J. BARRO
NYT September 13, 2010
A Recovery’s Long Odds
By BOB HERBERT
WSJ SEPTEMBER 15, 2010
Tax Cuts vs. 'Stimulus': The Evidence Is In
By ALBERTO ALESINA
WSJ SEPTEMBER 15, 2010
The Case for an Infrastructure Bank
By FELIX G. ROHATYN
FP SEPTEMBER 15, 2010
Taxing American Competitiveness
BY JACOB F. KIRKEGAARD, ARVIND SUBRAMANIAN
l 中国とブラジルの経済同盟
FT September 12 2010
World economy: The China cycle
By Geoff Dyer
中国と中東を結ぶ、新しいシルク・ロード。中国とブラジルによる、新しい世界秩序の誕生。
「アマゾン奥地のジャングルで、赤土の巨大な塊が、世界最大の鉄鉱石鉱山Carajásで大地から取り出される。それは地球を半周して、中国東海岸の港に輸送されるのだ。そしてそこで、ブームに沸く中国の諸都市にそびえる何百万ものタワー建設に必要な鉄骨となる。」
昨年は、中国は静かにブラジルの最大の貿易相手国になった。この地球の反対側にある両国は、世界経済が変化したことを示すシンボルだ。中国はブラジルの、鉱山、鉄鋼、建設機械、電力輸送、インフラや産業に直接投資する。また、中欧・東南アジアへも投資を増やしている。
中国の影響は世界中の発展途上諸国に及んでいる。中国企業の海外直接投資額は、2004年の55億ドルから、昨年は565億ドルになった。中国政府は、2013年までに1000億ドルに達する、と予想する。これらは、アメリカへの経済的・政治的な依存を減らす、という中国の長期的な戦略だ、とIan Bremmerは主張する。
中国の消費財だけでなく資本財も、急速に国際的な競争力を付けてきた。また、ドルに依存している対外決済や融資も、中国は人民元によるシステムを導入しつつある。その使用を拡大する準備を進めている。
l 日本から世界を震撼させるもの?
FT September 12 2010
The shadow shogun is the man for Japan
By Peter Tasker
WSJ SEPTEMBER 12, 2010
Big Expectations for Japan's Little Parties
By JESPER KOLL
WSJ SEPTEMBER 13, 2010
The Other China Sea Flashpoint
尖閣諸島ではなく、中国のナショナリズムが問題である。日本は意見対立を緩和できず、台湾、香港の政治家も中国の姿勢を支持している。中国を敵にしても、アメリカは日本を守ってくれるか? WSJは、むしろ、日本が中国側のナショナリズムを刺激し過ぎている、と心配します。
日中間において決められた漁業に関する合意に従えば、日本側が漁船を拘束したことは理由がない。むしろ、中国側のこれまでの紛争経過や、最近のヘリコプターや潜水艦による偵察や侵犯行為を、日本側が今回の漁船と結びつけて拘束したのではないか、と疑っています。
WSJによれば、日本が尖閣諸島を領土にしたのは台湾を併合していた時代であり、それゆえ、台湾が独立を回復したときに、この島も返還するべきだった、と紹介します。尖閣諸島でナショナリズムを刺激すれば、それは台湾や香港でも連携して日本非難が強まるのです。双方がナショナリズムをエスカレートさせる危険があります。
FT September 14 2010
Mending fences in Beijing and Tokyo
菅内閣は、円高、デフレ、財政赤字など、多くの重要問題を解決しなければならない。しかも今、中国との領土問題を刺激して日中関係を悪化させるのか?
最近の数週間、日本企業の中国における労働争議や、中国による日本国債の購入について、摩擦が生じていた。日本政府は、日中関係を改善し、民主党内部の分裂は紛争を避けようとするはずだったが、中国側と領土問題で国益を主張するのは「間違いではない。」
ただし、日本政府がコロコロと変わって、中国との長期的な利益を交渉で解決する姿勢を示さないことこそ問題だろう、とFTは考えます。
(China Daily) 2010-09-14
Price Japan could pay
(China Daily) 2010-09-14
Disputes over Diaoyu Islands do Japan no good
By Dongping Han
中国の内戦、アメリカの対日・対中姿勢の変化、沖縄返還、などが歴史的に大きく変わった以上、領土の合意も異なった解釈を生む余地がありそうだ。
WSJ SEPTEMBER 14, 2010
A Defense Agenda for Mr. Kan
By PATRICK M. CRONIN AND DANIEL M. KLIMAN
日米関係の再構築に何が必要か? 秘密情報の共有や監視協力体制、さらに、次期戦闘機、核の防衛保障。中国に対する共通のアプローチ。尖閣諸島に限らず、法によって恣意的な軍事圧力を排除すること。グローバル・コモンズの共通管理。宇宙空間における衛星への攻撃を禁止。科学技術協力。たとえば、沖縄の環境開発構想。
安保条約締結50周年を生かし、変化する世界情勢を反映した形で、同盟関係を強化するべきだ。
FT September 15 2010
Japan intervenes to weaken yen
By Lindsay Whipp and Mure Dickie in Tokyo and Alan Beattie in Washington
FT September 15 2010
A very political intervention
「政治的な介入」。もちろん、そうでしょう。政府はときに為替市場に介入します。基本は変動レート制なのですから、何か事情があるわけです。
民主党の代表選が終わった。小沢に勝利した菅が、小沢の主張した為替い介入を行った。それは市場に予想外の行動であり、明確な効果がありました。しかし、為替レートは本当に介入するほどファンダメンタルズから乖離していたのか? すくなくとも、実質為替レートで見て、極端な円高ではない、とFTは主張します。
アメリカ議会は中国の人民元に対して、もっと増価するべきだ、黒字を減らすべきだ、と不満を述べています。日本が同じような為替介入を行ったことに、彼らは不満を持ち、憤慨します。主要国が協調介入しない場合、それがどこまで有効か、と記事は指摘します。
G20が保護主義を拒み、内需拡大を訴えてきたのに、日本は一方的な介入で大幅な黒字を維持したいのか? そんな不満が聞こえてきます。
FTの記事は、日本政府が積極的な政策を打ち出したことに加えて、もし日銀が不腿化介入に協力したことで、デフレに強い対策を打ち出すようになったのであれば、それは歓迎だ、と考えます。
FT September 15 2010
Kan buys time to find long-term growth
By Mure Dickie in Tokyo
日本は大幅な貿易黒字を出しています。日本は他の主要国に比べてデフレもしくは低インフレを続けており、実質では為替レートによる輸出競争力を強めています。それゆえ、他国から見れば、円高を理由に国際的な不況脱出の約束を無視するような為替介入を行った日本は、決して歓迎されていません。
日本は何をするとよい、と期待されているのか? もちろん、成長率をあげて、もっと輸入することでしょう。政府は、そのための時間を買っただけで、長期的な成長の見通しを示すことが求められます。
FT September 15 2010
Yen intervention
FT September 15 2010
Japan draws fire for acting alone
By Chris Giles in London and Alan Beattie in Washington
円安は、ドル高やユーロ高を求めます。彼らが喜ぶはずもありません。ユーロ圏の財務大臣であるドイツのJean-Claude Junckerは、不快感を示しました。
イングランド銀行のメルヴィン・キング総裁は、アジアの輸出による成長は西側の豊かさと消費を頼っており、その為替介入による外貨準備を西側に投資して過度の金融緩和とバブル、金融危機を招いた、と述べています。問題は、協力して解決するしかない、と。
FT September 15 2010
Speculation that neighbours will take yen lead
By Kevin Brown in Singapore
WSJ SEPTEMBER 15, 2010
Japan's Ticking Pension Time Bomb
By KENGO NISHIYAMA AND HIROSHI NAKANISHI
円高、長期金利の低下、株価下落、会計規則の変更、などは、日本の年金基金を損ないます。年金制度の見直しが必要になるでしょう。
WSJ SEPTEMBER 15, 2010
Tokyo's Relationship Anxiety
By MICHAEL AUSLIN
FT September 16 2010
Japan needs to look beyond the low yen
By Richard Katz
Richard Katzは、以前から、市場による国内制度改革を主張しています。そして、日本政府はまたしても国内の改革をしないまま、円安に頼って景気を刺激している、と批判します。
日本の製品は、円安にもかかわらず、OECD諸国の市場でシェアを低下させました。企業に優位をつくりだす力がないのです。円安は自由に維持できるものではなく、むしろ予想外の変動に苦しむでしょう。
(People's Daily Online) 2010-09-16
Where will Japan's defense policy head for?
By Wu Huaizhong
Sept. 17 (Bloomberg)
China Get-Out-Of-Jail-Free Card Vexes Geithner
William Pesek
「ガイトナーにとって日本の為替介入は非常にまずい時期に行われた。オバマ政権は11月(中間選挙)に向けて人民元に関する得点を上げることを熱望している。そんなとき、ワシントンから7000マイル離れた東京から、なんとも感謝しがたい挨拶が届いた。」
中国に為替レートの調整を求めるなら、なぜ日本に先に求めないのか? と反論されるだろう。一人当たり所得で見れば、日本は中国の10倍も豊かだ。それくらいのことはできるだろう、と。日本は中国の輸出に依存した成長政策に青信号を出した。
中国はいつまで人民元のレートを抑えておくのか? 外貨準備が2兆ドルを超え、3兆ドル、4兆ドルでも、為替レートを過小評価し続けるのか? それは金融政策を誤らせ、中国国民自身の消費を損ない、インフレを促す。日本が何をしようと、人民元レートの調整は中国の利益だ。
他方、日本経済は今も円の乱高下とともに浮沈する。そのことが問題だ。日本企業はもっと革新と生産性上昇に注意を向けるべきだ。中国の需要に刺激される日本は、円安よりも人民元高によって、長期的に、大きな利益を受けるだろう。逆に、アジア諸国に輸出維持のための為替介入を宣伝したことは大きな間違いだ。
l 世界経済の不均衡と国際対立、あるいは協力
NYT September 12, 2010
China, Japan, America
By PAUL KRUGMAN
FT September 13 2010
New inequality stunts global recovery
By Kemal Dervis
金融緩和や財政刺激策によって景気が回復しない理由は、たんに需要が不足しているのではないからだ。アメリカでも、中国でも、所得分配が悪化している。
世界経済は以前に比べて技術革新が衰えたわけではないし、金融緩和により投資の財源にも困らない。しかし、需要は所得分配の不平等化によって妨げられている。人口の所得上位1%の人々が1970年代には、全所得の8%を得ていた。しかし、今や、24%を得ている。他方、所得の中間地は30年ほとんど変わっていない。中国でも、全所得に占める賃金の割合は40%以下に低下した。
こうした所得の上位層への集中が起きたときに、バブルが膨張し、金利が低下し、需要を支え続けてきたが、それらが失われたのだ。だから、容易に以前の需要水準には戻れないだろう。
むしろ、もっと構造的なマクロ経済問題の解決、すなわち、極端に不平等化した所得分配を改善する方が有効だ。それは道徳的にも支持される。それは、アメリカでも中国でも、景気回復を支え、脆弱な成長や国際不均衡を根本から是正する。
SPIEGEL ONLINE 09/14/2010 11:49 AM
Former German Finance Minister Peer Steinbrück
The Global Economy 'Still Has Deep-Seated Structural Problems'
リーマン・ブラザーズだけでなく、AIGも破綻していたら、世界は金融危機に陥っただろう。・・・深刻な構造的問題が解決されないままだ。
NYT September 14, 2010
Power to the (Blogging) People
By THOMAS L. FRIEDMAN
WP Wednesday, September 15, 2010; A23
Time to stand up to China on trade
By Harold Meyerson
FT September 16 2010
Steep path to a modern-day Plaza Accord
By Alan Beattie in Washington
プラザ合意は国際政策協調の頂点であった。主要5カ国が協力してドル安を促し、世界経済の不均衡を是正した。現在、為替レート、国際収支不均衡、財政赤字が再び問題になっている。
Fred Bergstenは、国際協調に楽観的だ。プラザ合意とルーブル合意は、ドル安によってアメリカ経済を刺激し、政府が財政赤字を減らす自由を得た。当時、ベイカー財務長官は、その効果を10-20%と推定した。もし中国との不均衡是正に同様の効果を得られたら、議会における財政赤字の論争を鎮静化できるだろう。
しかし、David Rothkopfは、当時との違いを強調する。日本は先進諸国のクラブに属し、その行動のルールに従った。中国はそうではない。日本よりももっと経済は未発達で、多様性を欠き、輸出部門は労働集約型の産業だ。為替レートの変化を受け入れる力がない。
また、中国の関係者は日本がプラザ合意後に不動産や株式市場でバブルを生じ、その崩壊後に停滞したことを指摘する。Bergstenは、その議論が間違いだということを中国のエコノミストも知っている、という。為替レートではなく、日本の銀行規制が問題だった。しかし、為替レートの調整に反対するために、この議論を持ち出す。
確かに、世界経済を均衡化するために、中国は人民元の為替レートを調整するべきだと考えている。ヨーロッパだけでなく、インドもブラジルも賛同する。しかし、G20でオバマは中国にそれを要請できなかった。今、日本が円安を求めて介入しているように、各国は国際協調による解決策を支持しない。
また、世界経済の均衡を回復するには、為替レートや国際収支、財政赤字だけでなく、ヨーロッパ諸国の国債処理、ドイツの貿易黒字、ヨーロッパ労働市場の硬直性を解決しなければならない。
G20に解決できると考えるのは、非現実的だ。
FT September 16 2010
US considering ways to push up renminbi
By Alan Beattie in Washington
WSJ SEPTEMBER 16, 2010
Geithner Takes Middle Ground on China
By BOB DAVIS
WSJ SEPTEMBER 17, 2010
China's Real Monetary Problem
人民元の為替レートではなく、不胎化を止めて、中国は金融緩和を認めるべきだ。その方が、為替レートによる投機的な変動を回避できる。
l リーマン・ショック2周年
WP Monday, September 13, 2010; A15
Was the Great Panic of 2008 preventable?
By Robert J. Samuelson
リーマン・ブラザーズを倒産させたことは正しかったのか? 救済するべきだったのか? あれから2年たちました。結局、バーナンキもガイトナーも、リーマン・ブラザーズを救済する権限がなかったのか? バークレー銀行が買収することをイギリス政府が止めたことを、どう考えるか?
FT September 13 2010
It is time to dance to a new long-term tune
By Glenn Hubbard
リーマン・ブラザーズを救済しても、それは短期的に対処するだけで、その問題を生じた長期的な政策や制度の歪みを解決するわけではない。世界的な貯蓄と投資の不均衡は続いていた。
レバレッジが危機の核心であり、「健全な銀行」と「不健全な銀行」とを分けて処理する明確な手続きが必要だった。
FT September 14 2010
Lessons of a banking collapse, in Lehman’s terms
By Peter Chapman
FT September 15 2010
Paulson made the right sacrifice
By John Gapper
SPIEGEL ONLINE 09/13/2010 10:35 AM
More Power to Brussels
Crisis Forces Europe to Unite on Financial Reform
By Hans-Jürgen Schlamp in Brussels
Sept. 14 (Bloomberg)
Nokia’s Downfall Holds Three Lessons for Europe
Matthew Lynn
ヨーロッパでもっとも成功した企業であるフィンランドの携帯電話会社、ノキアは、急速に市場シェアを失った。ノキアを賛美していたヨーロッパの政治家たちは、その衰退から学ぶべきだ。
急速に変化する産業において、慢心することなく、技術革新によって消費者の心をつかむ企業だけが生き残る。ノキアは、シリコン・ヴァレーに学ぶことなく慢心し、アップルのi-Phoneに市場を奪われ、韓国のサムソン電機に携帯電話の価格競争で負けた。
guardian.co.uk, Tuesday 14 September 2010
Neoliberalism is destroying Europe
Christian Marazzi
あるいは、ヨーロッパ経済を破壊したのはネオリベラリズムでしょうか?
不況対策と言いながら、金融資本主義のために賃金を削るのではなく、このネオリベラルなヨーロッパ秩序を破壊するべきだ。
FT September 16 2010
Next steps on the road to financial stability
By Mario Draghi
危機によって加速した改革をどう見るか? 1.主要金融機関は危機の影響を吸収するより高い能力を求められる。2.金融機関の破たんを迅速に処理する効果的なメカニズムをつくる。3.国境を越えた破産処理を効果的に行う。4.より包括的で、効果的な、監視体制を築く。5.金融市場のインフラを強化して、危機の伝染とシステミック・リスクを回避する。6.世界全体を監視する体制を築く。
l 安全保障と金融制度改革
WP Monday, September 13, 2010; A15
Post-9/11, we're safer than we think
By Fareed Zakaria
アメリカの安全保障は高まったか? アメリカはテロの脅威に有効に対抗してきたが、右派のキャンペーンはテロリストが国内にいる、と主張する。それは危険な主張だ。アメリカ国内のイスラム教徒は他国でよりも同化しているが、右派はその不安と怒りを煽っている。
FT September 13 2010
Why 9/15 changed more than 9/11
By Gideon Rachman
21世紀はアジアの世紀だ。9・15は、西側支配を終わらせたという意味で、9・11よりも重要だ。
guardian.co.uk, Wednesday 15 September 2010
In the wake of the financial crisis ... a baffling anti-statism
Stephanie Blankenburg
guardian.co.uk, Thursday 16 September 2010
Getting capitalism right
Ha-Joon Chang
破産法や中央銀行のように、リスクを社会化するシステムは、その正当性を疑う必要がある。自由市場型の資本主義そのものを政治的に支持できない人びとが増えている。
FP SEPTEMBER 13, 2010
Six Mysteries of North Korea’s Succession Drama
BY ROBERT CARLIN , JOEL WIT
NYT September 15, 2010
North Korea Wants to Make a Deal
By JIMMY CARTER
北朝鮮は朝鮮半島の非核化と関係改善を願っている、とカーター元大統領は伝えます。
l 労働移民ビザのオークション
NYT September 13, 2010
Foreign Stimulus
By PIA ORRENIUS and MADELINE ZAVODNY
ダラス連銀の研究員Pia Orreniusは、移民のビザをオークションにするよう提案します。ただし、それに応募するのは移民希望者ではなく、移民たちの雇用を希望する企業です。
現在の移民政策では、労働ビザが少なく、それゆえ非合法移民が増えています。むしろ、一時的な労働ビザを雇用主が取得して、労働者たちを合法的に雇用できるほうが良い、というわけです。このビザは雇用を前提にしており、他の労働者に交替することもできます。また、高度技術者と低技術労働者とは、ビザを別々に発行します。
ビザの入札で価格が上昇すれば発行枠を増やし、下落すれば減らします。こうして移民労働者の数が景気変動や失業率と同時化する方が望ましいでしょう。
しかも、とPIA ORRENIUSは追加します。ビザの発行で得られた財源は国境警備のフェンス建設などに利用すればよい、と。
l ミュンヘン会談Uと国際協調の試み
WSJ SEPTEMBER 14, 2010
Australia's Munich Moment
By MICHAEL DANBY AND CARL UNGERER
民主主義諸国は、歴史上、繰り返し権威主義・全体主義的な帝国の挑戦を受け、これを退けてきた。オーストラリア政府は、かつてヒトラーの支配拡大を受け入れることで、独仏がヨーロッパ秩序の安定化を図ったミュンヘン会談と同じような、決定的な選択をしてしまった。
中国の成長は続き、その人口と領土から見て、軍事的拡大がアメリカやその同盟諸国を合わせた水準を超えることは避けられない。中国に、反体制派やチベット、信仰の自由などに関して説教するより、繁栄を共有し、平和を維持することが優先されるべきだ。・・・オーストラリア政府はそう決断した。
こうした決断は正しいか? アジアは「フィンランド化」するのか? それは民主化をあきらめ、独裁体制を宥和する政策である。
FT September 16 2010
National interests collide in the new world disorder
By Philip Stephens
冷戦後のアメリカ一極時代が終わって、世界の風景はより複雑なものになりました。それは19世紀型のバランス・オブ・パワーに向かうのか? ナポレオンの敗北とウィーン会議後の大国の協調体制に似てくるのか? 小国は大国に追随するのか、それとも、大国の駆け引きを利用するのか?
今後の国際的な安定性は、大国間の競争が強まるか、協力を促せるのか、にかかっており、特に、核拡散防止体制の再生にかかっている、とPhilip Stephensは考えます。
もし世界中に核兵器が拡散してしまえば、それは国際的なゲームのルールを大幅に危険な形で変えるでしょう。アメリカは最も優位にありながらも、他国に協調を強制する力は持ちません。その協調を組織するカギは、互いの利益が共有されていること(その意識)です。しかし、新興諸国は多角主義的な国際協調を信用しておらず、むしろ複雑な問題に直面してナショナリズムを強めます。
欧米は、IMFなどの国際機関で、新興諸国にもっと大きな役割を期待し、発言権を与える必要があります。新興諸国も、その国内政治で国益を超える世界の利益を意識する論争を始めています。協調が実現するためには、各国が利益を共有するだけでなく、相互の信頼と、それを構築する旧支配秩序からの創造的な指導力が発揮されなければなりません。
SPIEGEL ONLINE 09/16/2010
Dream of Influence
Germany Renews Campaign for UN Security Council Seat
By Ralf Neukirch
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The Economist September 4th 2010
The web’s new walls
E-communication and society: A cyber-house divided
The future of the internet: A virtual counter-revolution
(コメント) インターネットの世界に理想郷を築く話は消え去り、仮想現実界も次第に現実政治の世界に似てきた、という記事です。すなわち、社会ネットワークでは人びとが人種や宗教を同じくする人々だけで集まり、障壁を築く傾向があります。中国だけでなく、すべての国家はインターネットの重要性を無視できず、ますます情報に介入し、選別する技術を獲得しています。メディア産業や企業は、利益を確保するために顧客を囲い込むことを目指します。
The Economist September 4th 2010
Global economic policy: Monetary illusions
The world economy: The odd decouple
Economics focus: War footing
Japan: Self-destruction
Energy in the developing world: Power to the people
Bagehot: Lessons from 35,000 feet
(コメント) 金融危機や不況は国境を越えています。世界経済に対する経済政策がグローバルに実現する時代が来るでしょうか?
アメリカの金融政策が量的緩和(QE)がドル安を促し、逆に、増価する自国通貨のデフレ効果を恐れる各国が金融緩和を加速する形で、世界経済政策(リフレ政策)は実現しつつあるのかもしれません。こうした異常な条件では、金融政策が独立性を失い、財政赤字の管理と一体化してしまいます。しかも、有権者は財政赤字を嫌っており、ドル安や財政引き締めを嫌う国は国際協調からも離脱する傾向を示します。政策によって回復を促すことの限界を認めて、政治家たちは自国の改革に取り組むべきだ、と指摘します。
アメリカがくしゃみをしたら、日本は肺炎になる、といった世界景気の波及パターンが、今では大きく変わっただけでなく、今回の危機に対して、むしろアメリカの回復の遅れが何らかの説明を求めています。アメリカよりもドイツやイギリスの回復が早いのはなぜか? エコノミストたちは、財政規律、為替レート、労働市場、を取り上げているという記事です。
携帯電話が通信や情報の革命を貧しい人々に直接もたらしたように、太陽電池や太陽による発電で動かせるミシンの開発は、貧しい人々を世界市場に参加する手段を提供するでしょう。