IPEの果樹園2010

今週のReview

9/13-9/18

 

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IPE研究ノート 9/13/10

再開します。・・・何か新しいことを、と考えましたが、良い案もないまま、ともかく止めないで、面白いことを紹介しよう、という基本に戻ることにしました。この紹介を続ける目的は、IPEの関心を伝え、その領域を発見することです。

ゼミ紹介の機会に質問してくれた学生がいました。

IPEの関心は、The Economist によく示されていると思います。Foreign Affairs, Foreign Policy, Financial Times, などの論説にも感心します。こうした関心・内容と一致するメディアは(これまで)日本に少なかったのです。私が気付いたのはJBpress、クーリエ・ジャポン、日本語版ニューズ・ウィーク、BSきょうのニュース、海外ドキュメンタリー、などです。定期的に触れることで、世界の姿は急速に変化し続けている、と実感できます。各地の政治的危機と市場圧力が、予想もしない形で互いに影響し合い、結びついていることに私は驚きます。

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では、IPEは、何を、どのように分析するのでしょうか? 秋学期の始まる今、学生たちが質問してくれたとき、よく話すテーマはこんなことです。

l         B. Eichengreen ・・・通貨・金融・貿易政策と歴史の視点とが重要な洞察を導く。それは豊かな想像力を、現実への批判と結び付ける。

l         J. A. Frieden ・・・特別な利益集団と政治制度によって、同じショックに対する政策対応(その効果)の違いを説明する。

l         D. Rodrik ・・・政策論争を、閉じられた抽象的なモデルから解放する。さまざまな現実が示す異なった可能性を発見する。

l         竹島、尖閣諸島・釣魚島、領土問題 ・・・安全保障、国境というシステムは、その意味を、国際協定・軍事的占領・歴史(特に、関係諸国のパワーの配置、可能な・正当な選択肢についての認識)が決める。

l         為替介入 ・・・国際的ルールはあるのか、と問うべきだ。共通通貨、金融政策、国際対立・介入、資本市場統合、などについて、何を目指して介入するのか、説明しなければならない。

l         ドミニク・リーベン 『帝国の興亡』 ・・・帝国というシステムを再発見した。そして、グローバリゼーションもまた、帝国の終わりというより、再現である。

l         均衡論の現実容認主義 ・・・市場のイデオロギー、リベラルな政治経済秩序の問題とは何か? 均衡によって、何が説明できるのか?

l         全く異なるシナリオ ・・・現実は、必ずしも、過去の単純な延長ではない。過去の条件を不均衡にしたショックが吸収されたから、現在があるのではない。まったく異なるいくつかのシナリオから、権力に関わる闘争の一部として、選択されたものだけが現れた。

l         全く異なる世界を想像できること ・・・しかし、私たちは世界をさまざまに想像できる。

l         パワー(合意形成・集合行為・強制力・規範)の問題 ・・・パワーを形成するものは、市場価格の変化や利益ではない。

l         市場圧力の変容 ・・・市場は、パワーが依拠する現実の変化を増幅し、拡大・普及する。

l         ガバナンスを描き、ガバナンスを築く ・・・核戦争も、金融危機も、環境破壊も、洪水・伝染病も、貧困も、不平等も、ガバナンスの領域に固有の意味を理解し、新しいパワーを組織して解決するべきだ。

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帰省していた前田さんと梅田で昼ご飯を食べ、そのあと、お茶を飲みながら話し合いました。山川さんとも、数年ぶりということでしたが、突然、思いついて都丸書店に呼び出してしまいました。

そして、エセックスから帰った中川さんとは、熱海に近い民宿で、移民に関する勉強会を行いました。料理もおいしかったし、また、勉強会をしましょう。

萌書房の白石さんとは近所の喫茶店で話し合い、『グローバリゼーションを生きる』の改訂版を出すようにお願いをしました。

こうした皆さんの話を聞けて良かったです。手術の後、沈みがちな気分に少しは風通ししながら、私の夏休みが終わりました。

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それでも気分が重いときは、時代小説にずいぶん助けられました。池波正太郎、『鬼平犯科帳』、『仕掛け人梅按』、『剣客商売』のシリーズを読みました。そして購入した、乙川優三郎、『露の玉垣』と、平岩弓枝、『新・御宿かわせみ』は、少しずつ、ゆっくり読みます。

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日本とアジアの安全保障、・・・食糧暴動、・・・ヨーロッパとユーロ改革、・・・オバマの苦境、・・・移民論争、・・・日本のガバナンス崩壊、・・・北朝鮮の権力移行、・・・コーランを燃やすより

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


l         日本とアジアの安全保障

FP Friday, September 3, 2010

Detecting subtle shifts in the balance of power

Posted By Daniel Blumenthal

安定性と自国の利益を求めて、アメリカは勢力均衡を回復するべきだ。

わずか14年前、台湾の総統選挙において独立を主張した候補を牽制するために、中国の人民解放軍は台湾近海にミサイル攻撃を続けました。これに対してクリントン大統領は、台湾海峡の近くまで艦隊を派遣し、中国はミサイル攻撃を止めた。

Daniel Blumenthalは、今、同じことをできるか? と問います。なぜなら、中国は周辺地域で通常兵力における優位を確立したからです。中国の短距離ミサイルは、恐らく1500発に達するでしょう。戦艦は近代化され、台湾艦隊を破壊するだけでなく、日本の米軍にも破壊的な攻撃を行いえるだろう、と。さらに、増強され続ける中国の潜水艦が、この海域に入るアメリカの輸送船に深刻な被害をもたらす。

アメリカは、中国との平和的な協力関係を維持するためにも、さまざまな制約がある中で、中国に対する軍事上の明確な優位を再建しなければならない、と主張します。幸い、アメリカと中国との経済力には、まだ、十分な差があり、アメリカは太平洋で軍備を再建する力がある。その安定性を確立することで、中国に生じる軍事力行使の誘惑を拒むよう説得できるのだ、と。

軍事的な優位が絶対的なものだということにアメリカ人は慣れてしまったかもしれない。しかし、中国はアメリカを軍事的にも打倒する方法を研究しており、軍備増強を続けている。たとえ米中戦争をありえないことと考えても、人民解放軍がそれを検討する以上、アメリカも真剣に準備することだ。

NYT September 4, 2010

Superbroke, Superfrugal, Superpower?

By THOMAS L. FRIEDMAN

THOMAS L. FRIEDMANは、ヨーロッパの友人たちに言います。なるほど、あなたたちはアメリカの軍事力が世界には多すぎる、それは好ましくない、というわけですか? では、アメリカの軍事力が少なすぎる場所を考えてみてはどうですか? もうすぐ、そうなるはずです。

・・・アメリカは、世界に軍事力も富も分かち与えるほど、第二次世界大戦の抜きんでた勝者として現れ、冷戦中は超大国の一つとなり、今や「貧弱な超大国」になった、と言われる。世界はそれに慣れるしかない。アメリカの平和主義者は安心してよい。もう「選択された戦争」は起こらない。(中米の小国)グレナダに侵攻することもないだろう。

2008年の不況はアメリカを変えた。アメリカ人は、遠くの戦争よりも、自分たちの町の不況が心配なのだ。不況は、さまざまな歳出を削り、遅れるけれども確実に、アメリカの軍事費や外交政策にも及ぶ。そして「貧弱な超大国」アメリカの波紋は、地球の全体に及ぶ。・・・これは、Michael Mandelbaumの新著が予想する世界です。

年金、医療保険などのコストは、アメリカの経済規模の約4%ですが、ベビーブーマー世代の高齢化によって、2050年までに、その比率が18%を超えるまでに達するでしょう。21世紀のアメリカ外交の基本は、「より小さく」ということです。それは、アメリカ政府が供給してきた世界的な公共財の減少を意味する、とFRIEDMANは考えます。

かつては、イギリスの衰退を補うアメリカがあったから、世界の公共財は極端に不足しなかった。今はそうではない。「世界はより無秩序で、危険なものになるだろう」と、Mandelbaumは警告します。

そして、三つの論点を示します。1.持続的な経済成長と再工業化への道を選択すること。それに必要な犠牲や重労働、困難な政治的合意を避けてはならない。2.優先順位を決めること。死活的に必要な目標と、望ましい目標とを区別する。たとえば、アフガニスタンに兵員や財源を割くことは必要か? 3.アメリカの財政を再建し、敵の財源を枯渇させる最善の方策とは、高いガソリン税の導入である。

経済再建と外交政策を切り離して議論する余裕は、もうないのです。

NYT September 6, 2010

Europe and Benign Neglect

By ROGER COHEN

世界の重要地点を示す、アメリカの国家安全保障会議の時計。20世紀なら、ロンドン、パリ、ベルリン、モスクワ、北京、東京、そして、地域の中核として、カイロやニュー・デリーもあったかもしれない。しかし、現在の議長であるDenis McDonoughが見る時計は、そういう時計ではない。

大統領が注意すべき危険は、カブール、バグダッド, the Yemeni capital of Sana、エルサレム、テヘランにある。Yenamiは、アルカイダ掃討作戦の焦点となっている村です。

冷戦終結から20年たって、ヨーロッパの諸都市は歴史の分野で重要なだけであり、アメリカ大統領の戦略的関心からは失われました。もちろん、日本もありません。オバマが当選以来、その影響を拡大しようと努めてきたのは、イスラム世界であり、中国やトルコ、イランに対してでした。彼は脱大西洋時代の最初の大統領です。ヨーロッパの特定の国にも、ヨーロッパ全体にも、オバマは特別な関心を持ちません。

キャメロンはアメリカとの「特別な関係」を示したいし、サルコジはアメリカを称賛し、NATOにフランスを復帰させました。しかし、世界でイスラム過激派と戦い、国内の経済崩壊を食い止めようと奮闘するオバマにとって、イギリスもフランスも小さ過ぎて、役に立たないのです。

しかし、それでもROGER COHENは警告します。アメリカはヨーロッパの旧センターと同盟するしかない、と。膨大な債務を抱えながら、アメリカがその影響力を維持するために、また、大量破壊兵器の拡散に対抗して、主要な価値観を共有した長期的な同盟を組む相手を探すとき、NATOとヨーロッパが重要である、と。

WP Friday, September 10, 2010; A25

It's time for the Senate to vote on New START

By George P. Shultz, Madeleine K. Albright, Gary Hart and Chuck Hagel


NYT September 4, 2010

The Poodle Speaks

By MAUREEN DOWD

SPIEGEL ONLINE  09/06/2010

SPIEGEL Interview with Tony Blair

'I Never Thought God Could Substitute for Political Judgment'


l         食糧暴動

The Observer, Sunday 5 September 2010

Mozambique's food riots – the true face of global warming

Raj Patel

日本は「記録的な猛暑」として真っ先に挙げられています。実際、真夏日、熱帯夜、ゲリラ豪雨、など、居住できない惑星に不時着してしまった宇宙人になったようで、心配です。

フロリダ、ニューヨークも猛暑、パキスタン、ナイジェリアの洪水、アメリカ東部はハリケーンに襲われた。テロへの警戒だけで国を守れるとは言えません。地球温暖化に人類の回答を待つ時間は限られているようです。

その最悪の、緊急の事例が、モザンビークの首都、マプトにおける食糧「暴動」です。パンの価格が30%も上昇したことで、人びとは暴動を起こしました。水や燃料も、最近、二桁の率で上昇してきたのです。家計の4分の3が食費に消える国です。

パンの価格が上昇した原因は、大陸を超えたロシアにありました。世界第3位の小麦輸出国ですが、今年の山火事で重要な穀倉地帯が焼失してしまったのです。さらに、その原因は防火体制が崩壊していたことと、記録的な熱波です。プーチンは新しい火事の広がりに対して小麦の輸出禁止を延長し、それは市場を動揺させ、食糧の60%を輸入しているモザンビークのような国に厳しい結果をもたらしたのです。

この連鎖する事態は、2008年の金融危機が起きる前に起きていたことです。石油、小麦、トウモロコシ、コメ、などの価格が上昇しました。それは禁輸措置や、輸入国の食糧暴動、アメリカなどでのバイオ・エタノール生産をもたらしたのです。

当時の1億人を超える飢餓人口は、世界不況によっても解消されたはずはなく、2009年の栄養不良人口は10億人を超えている、と紹介します。インド、エジプト、セルビア、パキスタンで、食糧暴動が起きています。さらに、価格高騰を狙った買占めや投機が起きます。

FT September 5 2010

The importance of global food security

金融危機に劣らず、各地の食糧暴動は「グローバルな食糧安全保障」に向けたウェークアップ・コールになるでしょうか? 自国の食糧安全保障を優先する政策が、市場を不安にし、一層の価格高騰と食糧暴動を招く。・・・G8諸国が、食糧危機を緩和する国際協調に乗り出すときです。


WP Sunday, September 5, 2010; B04

The true cost of the Iraq war: $3 trillion and beyond

By Joseph E. Stiglitz and Linda J. Bilmes

「イラク戦争は、単に金融危機を悪化させただけではなく、それに効果的に対処する力を損なった。」 今も失業者は高水準であり、追加の刺激策を必要としているが、増大する政府債務が刺激策への支持を失わせています。


l         ヨーロッパとユーロ改革

FT September 5 2010

Do not fall for talk of European solvency

By Wolfgang Münchau

ヨーロッパに不均等に分布する、債券市場が示すリスクの予想。

WP Tuesday, September 7, 2010; A15

In Europe, it's no longer East vs. West

By Anne Applebaum

ヨーロッパを分断する新しい境界線は、「東西」ではなく、「南北」に走っています。

「数人のエストニア人やポーランド人が、ギリシャの料理店に集まって話し合っている。そしてジョークが語られる。ギリシャ人の素晴らしい暮らし、についてだ。夏期休暇をギリシャ人は楽しむことができる。ドイツ人の支払いで。」 「ギリシャの不動産市場について。住宅には二つの価格があった。「公式の」価格と「実質の」価格だ。住宅を買うとき、税金は(安い)公式価格にしたがって払うが、持ち主には実質価格を支払う。誰でも知っていることだ。役所でも。」

ヨーロッパの「北部」は、ドイツを中心に、ポーランド、エストニア、スカンジナヴィア、チェコ、スロヴァキア、が属する。イギリスの新政権は南から北へ移り、フランスは中間に位置する。「南部」は、ギリシャ、スペイン、イタリア、ポルトガル、ハンガリー、ブルガリア、そして、現時点ではアイルランドが属する。「南北」の違いは、政治家階級が予算を均衡できるかどうか、国民が緊縮政策を受け入れるかどうか、にかかっている。・・・日本は、「南部」でしょう。あるいは、南から北へ、そして南へ、また北へ?

Anne Applebaumは、通貨圏を心配します。南部も共通の通貨を使用する。その赤字を、今回は北部が「ヨーロッパの連帯」という名目で救済しました。北部の銀行は不本意ながら南部の債券を大量に購入し、保有しています。再び財政が破たんしたら、2度と救済を繰り返してはくれないでしょう。

そして、南北は別の通貨圏を目指す・・・?

FT September 7 2010

Germans are wrong: the eurozone is good for them

By Martin Wolf

しかし、Martin Wolfの考えは違います。「ユーロ圏を建設したことで最も大きな利益を得た国はどこか? それはドイツだろう。」

その理由は、もしユーロ圏がなかったら、今頃は通貨危機が生じて、赤字国の通貨価値が暴落し、同時に、ドイツ通貨の価値が暴騰したはずだから。ドイツの成長の3分の2は輸出に依存しています。将来も、通貨危機は起きない、という予想によって、ドイツからの投資や輸出は大きな恩恵を被っているのです。

しかし、反対する意見も強いでしょう。そこで、ドイツの重要なシンクタンクthe Ifo Institute for Economic Research の所長、Hans-Werner Sinnが述べた反対意見を取り上げます。

Sinnは、金融を重視します。共通通貨は資本市場に投資のリスクを軽視させ、スペインの金利を低下させ、ギリシャの財政赤字を膨張させました。このことはまた、ドイツからの資本流出を刺激し、ドイツ国内の投資を枯渇させた、と考えます。それは赤字国の財政危機やドイツの低成長をもたらした、というのです。

Martin Wolfは、ドイツの投資が少なかったのは、資本が不足したのではないだろう、と考えます。世界的な資本過剰の時代に、ドイツ国内で投資が増えないのは、硬直性やグローバリゼーションの影響が重要だ、と。他方、資本流入を受けた国の利益は「一時的」でした。ブーム・バスト・サイクルによって、こうした諸国の不況は長引き、「失われた10年」を経験する恐れが強いのです。

もしドイツが最大の受益者であるなら、ドイツはユーロ圏を改革するために行動することです。

まず、ECBの金融政策は、ドイツ連銀の伝統的な基準で見ても引き締めに偏っています。それはドイツの低成長にも関係します。EU諸国が財政再建を目指すなら、金融緩和でデフレを緩和しなければなりません。

さらに、赤字国への融資に伴うリスクを見直し、資本市場のブーム・バスト・サイクルを是正するべきです。ドイツの貯蓄は、今や、もっと資源やアジアの成長に向けて投資されています。そして、ドイツ国内の住宅ブームを起こすでしょう。ドイツの好況は、ユーロ圏が回復するためにも重要です。

ユーロ圏の危機は終わったのではなく、必ず、再発します。ドイツ経済を守ることに向かうのではなく、ユーロ圏を改革することにドイツは取り組むべきです。

SPIEGEL ONLINE  09/08/2010

Managing Borrowed Time

The Man Responsible for Saving the Euro

By Christian Reiermann

ギリシャの財政危機に始まったユーロ危機を抑えるために、ドイツを中心とした諸国は4400億ユーロの安定化基金European Financial Stability Facility (EFSF)を用意しました。これをどのように使うのか? ユーロ救済のために、それを決める人物がKlaus Reglingです。当然、ドイツ政府が信用できる者でなければなりません。

前日の電話に応じてルクセンブルクに飛び、EFSFのトップにふさわしい人物か、3人の財務相たちから質問を受け、その日の午後には決定された、ということです。

Reglingは、1990年代にドイツ財務省の国際金融局長として成長安定協定の草案作成に関与し、欧州委員会でも経済金融問題担当総局長として委員を助けました。ヘッジファンドで働き、シンガポール大学で教え、IMFでも二つのポストに就きました。最近は「金融コンサルタント」でした。

そして、この機関が債券発行して介入資金を得る、と知っただけで、すでに金融市場は安定化しつつあるのです。

SPIEGEL ONLINE  09/08/2010

Not Enough Immigration?

Leading German Economist Demands More Workers from Abroad

財政危機やユーロ危機には国際介入や金融の制度化が模索されますが、移民に関しては、まだほとんど何もありません。

ドイツ連銀の金融政策委員であるThilo Sarrazinの新著が、ドイツの過剰な移民を減らすべきだと主張したことに対して、ドイツの指導的なシンクタンク、German Institute for Economic Research (DIW Berlin)の所長、Klaus Zimmermannは少なくとも50万人の労働者をドイツ経済は毎年必要としており、その一部として移民労働者が必要であると主張しました。

指導者や国民の意見は分裂しています。

FT September 9 2010

Europe heads for Japanese irrelevance

By Philip Stephens

アメリカの主要シンクタンクが中国の専門家を増やすだけで、次第にヨーロッパへの関心を失っていくことに対して、Philip Stephensは「日本のようになる」と警告します。

「ヨーロッパは傍観者になってしまう。世界の舞台から日本が消えてしまったように。日本はまだ経済的な大国かもしれないが、経済規模でも世界ランキングで中国に抜かれた。しかも、もっと以前から、日本は世界情勢に何も発言してこなかった。日本は変化の主導者ではなく、従僕の地位を受け入れただけだった。」 ヨーロッパも、日本のようになってしまう。

FT September 9 2010

Trenchant on trouble

By Ralph Atkins and Lionel Barber in London

ECBの「独立した金融政策」や危機管理(リーマン・ブラザーズ、失業、財政危機、など)が、難しい立場を示すことを、その判断から知ることはなかなかありません。トリシェ総裁の人物紹介とともに。


FT September 5 2010

A carbon border tax can curb climate change

By Dieter Helm

取引権市場よりも、炭素税が必要だ、と考えています。


FT September 5 2010

Only a regional approach can bring Middle East peace

By Marwan Muasher

中東和平には、イスラエルとパレスチナの交渉による2国家案だけでなく、地域的な解決策が必要だ、と考えます。


l         オバマの苦境

NYT September 5, 2010

1938 in 2010

By PAUL KRUGMAN

FT September 6 2010

Obama unveils infrastructure plan

By Anna Fifield in Washington

オバマの苦境は明白です。新しい刺激策は議会に支持されません。政府は失業問題に十分な対策を示していない、と批判されています。他方、どのような追加支出も財政赤字を悪化させるとして拒否されます。

レイバー・デイの祝日に、オバマは15万マイルの道路、4000マイルの鉄道、150マイルの滑走路や航空管制システム、などの建設を提唱しました。しかし、選挙前に、議会を通過することは無いでしょう。刺激策の効果は疑われています。

LAT September 6, 2010

Making the economy work

By Thomas A. Kochan

WP Wednesday, September 8, 2010; A18

Smart policy: Mr. Obama's plan for an infrastructure bank

政治的な介入で無駄な公共投資にならぬよう、独立性を持った「インフラ投資銀行」を設置する、という興味深い提案があります。競争を取り入れ、長期の融資を組み合わせます。

FT September 8 2010

Ignore the hyperbole: America is not bust

By Mark T. Williams

NYT September 8, 2010

Debating the Economy

guardian.co.uk, Thursday 9 September 2010

A better way to fix the US housing crisis

Joseph Stiglitz

住宅市場の再生には、政府が市場介入を止め、銀行は市場価格に沿って処理を進めるべきだ、と主張します。

NYT September 9, 2010

Things Could Be Worse

By PAUL KRUGMAN

LAT September 10, 2010

Obama should follow in FDR's footsteps

By Nick Taylor


l         移民論争

LAT September 5, 2010

The 'Great Wall of America' and the threat from within

By Richard Rodriguez

アメリカとメキシコの間の境界線に建設された壁が呼び起こす驚嘆や呪詛を詠った散文詩?です。

2000マイルのアメリカ・メキシコ国境を挟んで、冷笑と偽善が住む。アメリカは砂漠に壁を築くことで、メキシコの麻薬輸出業者とアメリカの麻薬消費者を切り離し、低賃金で働くラテンアメリカの農民たちをアメリカ人の雇用主から切り離そうとする。」

メキシコ側には非常に貧しい居住区が壁の間際まで広がっています。そこは国際的な麻薬戦争に支配され、壁をよじ登るよりも恐ろしい無法地帯です。

自然や動物たちは壁を無視して移動し続けます。他方、アメリカ経済が不況になってから、金もうけのための熱狂的な愛国者がラジオやテレビで非合法移民の犯罪を糾弾し続けます。非合法移民がアメリカン・ドリームを盗んだ、というのです。しかし、Richard Rodriguezは憤慨します。夢は貧しい者の絶望から生まれるし、実際、そうであった、と。ニューヨークの自由の女神が迎えるために掲げる火は、アメリカン・ドリームを求めて世界中からやってくる、疲れた、貧しい、哀れな人たちを励ますためです。それにもかかわらず、今日も、ジョージアで鶏の羽をむしり、ネヴァダの老人ホームでおむつを替える仕事を求めただけの不幸な男が、Sonoran砂漠で死にました。

「帝国は国境を越えて拡大する。衰退する帝国が壁を築くのだ。」

アメリカの壁は、中国の万里の長城に及びません。中国の竜がうごめく防壁は、かつて孤立のシンボルであった壁が、今では観光名所です。そして、中国は今や国境を越えて中国の時代を建設するために世界へ向かいます。中国人はアフリカにも、ラテンアメリカにも広がり、カブールで中国企業が資源の採掘権を交渉する間も、アメリカ兵士はアフガニスタンで命を落と続けます。

イスラエルも壁を築き、ベルリンの壁をまねました。9・11の狂乱は、アメリカ人に、メキシコからの農民や労働者とテロリストとの区別を失わせたのです。ユダヤ人ではない、という理由で、イスラエルは非情報移民の子供を400人も国外追放しました。彼らはイスラエルで生まれ、ヘブライ語しか話せません。アメリカ議会でも、同様に、ある共和党議員は憲法を修正し、「子供を産み落とすためだけにやってくる外国の女たち」を阻もうとしています。

自由の土地はその内側から脅かされている、というわけです。しかし、アメリカの誕生を否定する壁を築くことから、アメリカの滅亡は始まっている。

FT September 6 2010

Business should speak up for immigration

By Michael Skapinker

移民に反対する人びとは叫び続けているのに、移民を支持するはずの人びとは沈黙したままです。

輸送技術や情報伝達技術が発達し、移民の形態や文化、ネットワークは大きく変わりました。貧しい土地から裕福な土地へ移動するのは当たり前だ、と、その労働サービスを契約するだけの富裕層は考えます。しかし、建設労働者だけでなく、投資銀行家や最良の科学・技術者も移動しています。

移民は職を求めて競い合うだけでなく、新しい雇用をもたらします。新しいアイデア、新しい技量を持っています。高齢化する裕福な国は彼らなしには福祉が成り立ちません。移民は医療保険制度を支えます。アメリカでは、移民の雇用者たちとニューヨーク市長のブルームバーグたちが、“Partnership for a New American Economy”という運動を始めました。国境の治安を維持しつつ、外国からの労働者や技術者、起業家の入国を支持するためです。

「なぜイギリスの企業家も行動しないのか?」とMichael Skapinkerが尋ねたとき、「顧客の感情からあまりに離れてはいけない」と企業家は応えました。しかし、それはあまりに臆病だ、と批判します。民主主義の意思決定は双方の意見を聞くことで有権者が判断しなければならない。移民たちを非難することで失われる多くのものについても、もっと意見を聞くべきだ、と。


l         日本のガバナンス崩壊

Sept. 6 (Bloomberg)

Shadow Shoguns Will Trash $5 Trillion Economy

William Pesek

民主党代表選挙は、海外の日本観察者や投資家に何を示したのでしょうか?

WSJ SEPTEMBER 6, 2010

Who's Afraid of a Stronger Yen?

By NAOMI FINK

円高は輸出企業の利益を失わせる。日本の景気や株価が悪影響を受ける。為替レートの水準は受け入れ難い。・・・そんな話を何十年も聞いているだけでよいのか?

ところが、円高を心配しているのは、輸出企業よりも、むしろ国内市場向けの企業であり、官僚や政治家なのです。なぜなら、輸出企業は大幅な円高が起きるたびに生産拠点を海外に移し、その利益を海外投資によって得ているからです。むしろ、企業の海外生産拠点はドル建で輸入し、日本向けに円建で輸出することが多いため、利益は円高で増大します。

企業は、海外市場を失うことより、国内市場で輸入品が浸透することを心配しています。他方、従来の生産構造を維持したまま、競争力のある製造業が海外投資を増やし、雇用を失い続けることに、官僚や政治家、メディアは不安を強めます。円高を阻止するべきだ、輸出を支援し、輸入を阻止するべきだ、と考えがちです。

NAOMI FINKは、こうした円高騒ぎを、むしろ、輸出を大企業に依存し、国内消費者を外国の製品やサービスから切り離してきた、日本の政策による失敗だ、と考えます。では、どうするべきか?

「円高を外国のせいにばかりしているより、日本の財・サービスにおける国内市場を包括的かつ根本的に見直す必要があるのに、長い間、それを怠ってきた。これこそ日本企業と政策担当者が挑戦すべき課題だ。日本の戦後成長は輸出に慢性的に依存し、それが政治的無為と効果のない政策決定につながった。日本の政治家が円とドルの為替レートに余りにも執着する理由はそこにある。なぜなら、輸出が損なわれるとき、日本が強いられる国内改革の選択は、彼らにとって耐えられない苦痛を意味するからだ。」

NAOMI FINKは、日本企業が海外拠点で行ったように、国内経済においても流通やマーケティング、加工を根本的に改善できる、と主張します。そのために障害となるような規制を撤廃し、税制を効率化するべきだ、と。そうすれば生産性の高い中小企業にもっと投資が行われる。企業部門には200兆円の貯蓄があり、それを活用することで競争に勝てる。

NYT September 6, 2010

Japan’s Leadership Merry-Go-Round

日本で指導者が頻繁に交代することは、アメリカ政府や関係者を当惑させ、著しい無駄な交渉を双方に強いています。20年で14人の首相が交替し、最近の12カ月だけで3人の首相がいます。新しい政策を実行する時間などありません。

「日本にはガバナンスがない」という印象を与えるのは当然です。

日本は、アメリカと協力して世界の景気回復や東アジア地域の安定化に向けて行動しなければならない。国債や輸出への依存を減らし、長期的な戦略によって家計の支出を増やすべきである。日本政治のメリー・ゴー・ランドは、日本国民だけでなく、世界にとって無益だ。

WSJ SEPTEMBER 7, 2010

Japan's Future Is in Its Provinces

By KEN HIJINO

Sept. 10 (Bloomberg)

Prada Wears Devil in Eyes of This ‘Ugly’ Woman

William Pesek

出生率も、株価も、日本は女性がもっと活躍できる社会に変えることで上昇させることができる。

WP Saturday, September 11, 2010; A16

'Simple-minded' Americans might want to pay attention to Japan's election


FT September 6 2010

Sweep economists off their throne

By Gideon Rachman

FT September 10 2010

Models tell us more than hindsight

By Tim Harford

ノーベル賞を得た経済学者Paul Krugmanと、歴史家Niall Fergusonとの対立を取り上げます。経済危機を克服するには何が必要か? 経済学が占めている優位を崩すべきときだ、とGideon Rachmanは考えます。


(China Daily) 2010-09-06

Mapping out next economic steps

By Fu Jing

(China Daily) 2010-09-06

If only China were more like Japan

著しい類似性があり、中国は日本の「失われた10年」を避けることができない。むしろ、日本よりも輸出と投資に偏った成長モデルを拡大し、しかも、日本のような民間部門がないから、そのち込みは急速で激しいものになる。

WSJ SEPTEMBER 7, 2010

The Summers China Mission

Larry Summersが北京を訪問しました。

(China Daily) 2010-09-10

Japan's action off Diaoyu raises concern

By Hu Feiyue

日中の領土問題が過熱します。


NYT September 6, 2010

The Gospel of Wealth

By DAVID BROOKS

NYT September 9, 2010

The Genteel Nation

By DAVID BROOKS


l         北朝鮮の権力移行

FT September 7 2010

Power transfer will shake North Korea

By Robert Kaplan and Abraham Denmark

北朝鮮の権力移行は体制崩壊の危機を含んでいる。金正日の後継者は、もはや権力を独占する体制を実現できないし、多くの将軍や官僚たちの間で指導体制が混乱するかもしれない。

たとえ政治権力の移行が成功しても、それを支える経済は破たんしたままであり、経済崩壊と市場開放の選択を迫られる。体制が崩壊すれば、難民や核兵器をめぐって、ただちに国際的な介入が始まるだろうが、その再建と安定化には、ドイツの東西統一よりもコストがかかるだろう。

体制転換に失敗すれば、成長に沸くアジア地域の条件にも深刻な影響がおよぶ。


guardian.co.uk, Wednesday 8 September 2010

The wholly fallible Ben Bernanke

Dean Baker


WSJ SEPTEMBER 8, 2010

The German Miracle: Another Look

By LAWRENCE H. WHITE


l         コーランを燃やすより

NYT September 8, 2010

The Healers of 9/11

By NICHOLAS D. KRISTOF

9・11の記念にコーランを燃やす計画を宣伝する牧師もいれば、モスクを訪れてアフガニスタンで雇用を増やすための計画に参加してほしいと訴えるユダヤ人女性もいます。

911のテロで夫を失った二人の女性が、50万人以上もアフガニスタンにいる寡婦たちの生活を助けるために、Beyond the 11th、という運動を起こしました。9・11に、爆弾やミサイルではなく、教育や貧困緩和の計画で応えたい、と願う人々がいます。

そうした努力は平和を回復するわけではないけれど、社会状態を改善し、戦争するよりも、ずっと安いのです。

NYT September 10, 2010

Sept. 11, 2010: The Right Way to Remember


FP SEPTEMBER 9, 2010

How to Ruin OPEC's Birthday

BY GAL LUFT


FT September 9 2010

Basel should stand firm on capital

WSJ SEPTEMBER 9, 2010

We'll Always Have Basel

FT September 10 2010

Banks and politics: Commanding heights

By Patrick Jenkins, Edward Luce, George Parker and Francesco Guerrera

銀行の自己資本規制に関するバーゼル合意Vが金融バブルを予防する見込みはあるでしょうか? あまりにも抽象的で、一般化されたルールは、実際に融資を抑制するというより、それに合わせて新しい融資方法が開発される面もあるでしょう。他方、アメリカでもイギリスでも、ウォール街とシティが行ったマネー・ゲームによるボーナス文化と経済危機のコストに対して政治的な不満が払しょくされたとは決して言えません。

金融ビジネスの富裕層こそが、「資本主義の基礎を掘り崩した」と懸念されるゆえんです。

FT September 11 2010

Basel III faces repeat of old problems

By Sharon Bowles

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The Economist August 28th 2010

Brazil’s agricultural miracle: How to feed the world

Brazilian agriculture: The miracle of the cerrado

(コメント) ブラジルの農業革命に驚いた。輸入国であったブラジルが、世界の主要農産物輸出国に仲間入りをしたのはなぜか? 記事は市場に従った自由化と、不毛と言われた土地の改良、品種の改良、農法の改良、など、ブラジル政府と研究機関の画期的な成果を指摘します。もしこれがアフリカに輸出できたら、世界の食糧不足に大きな転換をもたらします。

ただし、記事が称えるほど市場型の改革が正しいのか? この大規模農場・土地改良・遺伝子組み換え・二毛作が、長期的に何をもたらすのか? 楽観し過ぎているようにも思います。

The Economist August 28th 2010

After Iraq

Iraq’s uncertain future: The reckoning

The cost of weapons: Defence spending in a time of austerity

Japan’s dysfunctional politics

Talking about reform in China: Change you can believe in?

(コメント) アメリカ軍のイラク撤退が何を意味するのか? イラク国民は今になって米軍の役割を重視するようになった、と考えます。その米軍では、不況や財政赤字の削減が、膨張し続ける戦闘機開発コストを減らす方法を模索させます。他方では、無人偵察機・爆撃機の開発が始まり、軍の再編とも関係します。