IPEの果樹園2010

今週のReview

7/12-7/17

 

*****************************

IPEの想像力 7/12/10

政権は選挙で試されます。有権者は民主党に両院の安定多数を許しませんでした。

・・・幹事長・枝野幸男、幹事長代理・細野豪志、政調会長・玄葉光一郎。

これほど清新で、明快に語ることのできる、気概ある政治家たちが前面に立つ今の民主党政権が、日本の政治や経済のあり方を根底から改革するために行動する機会を得たことを、私は大きなチャンスだと思います。選挙前も、そんな感覚でいたせいか、私は民主党が圧勝するのではないか、と思っていました。しかし参議院選挙の結果は、民主党のかなり深刻な敗北、自民党とみんなの党の勝利でした。

・・・なるほど、鳩山首相・小沢幹事長の政権運営は、宇宙人+自民党封じ込め、という、見事であっても、どこか日本新党のような、自民党と民主党の過渡期の政治体制、理想主義と現実主義(権力政治)の折衷に見えて、必ずしも信じられませんでした。

何よりも、普天間基地問題と二酸化炭素の排出削減で目立った外交パフォーマンスは、アメリカ政府や国内産業界から無視されました。反対されるとわかっていたはずなのに、十分な反論や説得、交渉の準備をしていなかったのか? と不思議に思うほど、空っぽな号令に終わって、政権交代のエネルギーを消尽させたのです。

・・・私は鳩山氏の理想主義や、穏やかで分かりやすい言説が好きでした。超資産家、閨閥の一員でありながら、アメリカで学位を取り、小沢氏と組んできた経歴も、不思議と説得的に感じました。だからこそ、日本の保守派や資産家たちが不要な反感を抱かず、産業界の指導層も説得できる可能性がある、と思ったのです。もし沖縄の米軍基地問題を打開し、日米の相互依存・信頼関係を深め、同時に、中国や東アジア諸国とも共同体構想を進めるとしたら、すなわち、それだけの具体策や、論争を牽引する戦略(そしてスタッフ)を持っていたなら、素晴らしい、と大いに称賛されたでしょう。

ところが、子供手当や高校無料化、高速道路無料化は、政策としての効果に十分な説明がないまま、ポピュリズムやバラマキという批判を受け、財源不足と増税を予感させる「リカードの等価原理」に似た、怪しい政策に見えました。政治献金問題に対する対応も、余りに自民党的な、政治家は何も変わらないな、という不信感を強めさせるものでした。

鳩山首相が辞任したのは、選挙を考えた決断であったかもしれません。しかし、民主党や官僚層の有能なスタッフが、この指導者を支えて大きな構想を実現するぞ、という信頼関係を築けなかったのではないか。本当の政治運動、政治的な意志形成にまで高める手腕を欠いていたように思うのです。最後まで、鳩山氏の演説は宇宙人的であり、それはそれで、不思議とわかりやすく、興味深いものでしたが、論戦を避けました。そして、小沢幹事長との同時辞任が、もし移行期の体制を終わらせたのであれば、重要な節目でしょう。

・・・管直人氏の清新な党人事は、その成果を発揮する時間がありませんでした。首相と政策幹部は、公約を実現する財源が足りない、と考えたのでしょう。高福祉・高負担でもよいのではないか? もっと社会的な給付を手厚くし、そのことが同時に消費や投資を促し、成長をもたらすような発想もできるはずだ、と考えたかもしれません。

内部に多くの複雑なねじれを抱えた民主党政権にとって、政治的転換は三つのショックで誘発されたように見えます。すなわち、朝鮮半島情勢、ギリシャ危機とG20、そして、自民党のマニフェスト、です。北朝鮮による韓国哨戒艇の撃沈は、日米同盟や東アジアの米韓日結束を重視しなければならない、と合意する機会でした。また、ヨーロッパのギリシャ財政危機と、G20における財政刺激・再建論の米欧対立は、所信表明で「強い経済、強い財政、強い社会保障」を描いた菅総理の外交デビューでした。さらに、何よりも、自民党がマニフェストで消費税10%を示したことは、これを選挙の争点にせず、民主党の望む協議に持ちこむチャンスでした。

・・・私は、菅氏がそんなふうに見たのではないか、と思います。アメリカ政府やEUG20、自民党が流した苦い薬を、好機と信じて呑みこんだ首相が愚かであったかもしれません。与野党とも近視眼的な選挙前のイメージ作戦に終始し、小沢氏は大きなダメージを与え、首相の危機的政策転換が庶民感覚で拒否されました。他の政党やマスコミが一斉に非難する中で、説得の機会もないまま、選挙は終わったのです。

そうであれば、この敗北を国会の審議に反映させることです。今や、誰も多数決で反対論を封じることはないのです。正しい政策を国民のために示すことが、最も重要な国会となります。だからこそ、民主党の清新で、有能な幹部たちが、次々に答弁と質問に立つときです。徹底した討議の準備をしてください。

・・・国会が、政治の舞台として再生し、国民を鼓舞する姿を観たいです。

*********

こう書いたのは、この選挙は何だったのか、と思いながら、イメージを形にしようとしたとき、『現代の理論10夏号』 vol24 が届いたからです。

二つの論考を読みました。早野透・橘川俊忠 「巻頭対談 菅政権は“最後の希望政権”か」、山口二郎 「政権交代をなぜ生かせなかったのか」。ともに非常に興味深い、説得的な内容でした。選挙前に書かれていながら、問題の整理や課題の展望は的確で、大いに考えさせられます。

こうした論者や論考があり、それを載せる雑誌があることに感謝し、多くの人に読んでほしいと思いました。

*********

ローマーの「チャーター・シティ」構想や、ベッカーの「移民市場メカニズム」案は、市場と帝国を考える興味深いアイデアです。

「チャーター・シティ」は、すでに、輸出加工区や直接投資の誘致によって実現しています。政治の世界でも、「足による投票」が議論されます。東ドイツが崩壊し、北朝鮮が維持されたのは、ある意味で、隣国が「足による投票」を許すかどうか、です。

中国の改革が成功したことで、世界の貧しい地域においても開発思想が大きく変化しました。また、アイルランドが(金融危機前まで)急速に成長したことは、イラクやアフガニスタン、ガザ地区、チェチェン、ルワンダ、などでも、廃墟の中から平和と繁栄をもたらす新しい可能性を刺激しました。

「チャーター・シティ」(香港)や「契約(債務)移民」は、歴史上、大英帝国の一部でした。ワシントン・コンセンサスの第二段階にも関係あるでしょう。ギリシャの財政破たんを国連が信託統治してはどうか、という提案もあります。すでに発展途上諸国や通貨危機のアイスランドで、IMF融資条件が同様の機能を果たしています。国際融資と政治介入(軍事介入)は、各地で密接な関係を持ってきたと思います。

もちろん、「チャーター・シティ」や「移民市場」が成功しても、その周りが一層の荒廃や戦乱に陥るとしたら、それは成功と呼べません。しかし、成功する条件が本当に具体化されたときには、歴史上の大きな転換になるでしょう。

******************************

1.チャーター・シティ

2.アメリカと世界の不況対策

3.中国の参加した世界市場

4.東西ドイツ再統一

5.アフリカはなぜ貧しいか?

6.移民を支援する

7.グローバル・ガバナンスの消滅

・・・ストレス・テスト ・・・自由貿易 ・・・民主主義 ・・・中台FTA

The Economist 債務時代の特集

******************************

主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


1.チャーター・シティ

NYT September 29, 2009

Can “Charter Cities” Change the World? A Q&A With Paul Romer

By DWYER GUNN

発展途上国における成長にとって重要な障害となっているのは、その制度が弱いこと、ルールが間違っていることである。Paul Romerは、市場が機能する優れた政治や社会制度を作ることは、エコノミストたちが思うほど簡単ではなかった、と批判します。そして、この限界を克服するために、「チャーター・シティ」、あるいは、香港のような「特区」を提案します。

スタンフォード大学の教授職を棄てて「チャーター・シティ」の企画のために独立した、というのは驚きです。その要点は、都市規模の無人の土地を用意して、そこの憲章もしくは憲法を定め、その土地に適用される優れたルールを示すのです。そして、賛同する人々が新都市の建設に数百万人ほど移住する、と考えます。人びとはともに働き、交易をおこなって、利益を得るのです。その利益は都市の規模が拡大するほど大きくなる、と。(つまり、アダム・スミスです。)

発展途上諸国では、まだ、ほとんどの人が良好な、優れたルールのある都市に住むこともできていません。そのような場所があれば、人々が移住して、そこで教育を受け、職を得るでしょう。健康で、清潔な生活、インフラやその他のサービスを提供して、その土地のビジネスが繁栄します。それゆえ、税収は費用を超える十分な額に達するわけです。それは寄付や援助によって都市を建設する計画ではありません。

どんなルールが必要か? Paul Romerは、衛生や暴力・犯罪、輸送システム、を挙げています。そうした問題が発展途上諸国の都市では深刻であり、それにもかかわらず人は都市を逃げ出さず、今も、基本的なルールが守られていない。つまり、もっと効果的な強制メカニズムがあれば、基本ルールを守らせ、都市の暮らしをもっと豊かにできる、と考えます。

悪いルールでも、その社会が粘着的であれば、容易に変化しません。しかし、キューバのグァンタナモ基地はアメリカとの契約で軍事基地として使用しています。もしこれをカナダ政府が契約して、カナダ企業のためにカナダの法律で支配すれば、香港と同じように(アメリカ向け輸出加工業が)成長するでしょう。これはケ小平が市場改革を導入するときに、香港から学んで「特区」としてやったことです。起業家や技術者、熟練労働者、移民やその子孫たちが集まるでしょう。

スタンフォードの同僚たちはどう考えたか? Paul Romerは、エコノミストの間違いを批判します。彼らは経済学で見て正しい開発過程は分かっているが、政治が悪いから実現できない、というのです。ナショナリズムは克服できないし、各国が良いルールを求めて団結することはない、と。

しかしPaul Romerは、自分がアマチュア政治家になる必要はなく、何が正しいかを実際に示すだけでよい、と考えます。かつて発展途上諸国の政府が直接投資に反対していたにもかかわらず、それが成功するとわかったら、今ではほとんどの政府が誘致を競っている。それが優れたアイデアであれば、やってみることだ。

Newsweek, August 12, 2009

The Best Development Plan in the World Originated With...the British Empire?

by Barrett Sheridan

「つまり・・・貧しい土地を開発するには、大英帝国が最善だ、というわけですか?」

HP http://www.chartercities.org/concept

Charter Cities


2.アメリカと世界の不況対策

NYT July 1, 2010

Myths of Austerity

By PAUL KRUGMAN

アメリカは債券市場で投資家による監視を受けており、赤字を削らなければ攻撃されるのだろうか? アメリカ政府が財政赤字を減らせば、攻撃を受けないのだろうか? PAUL KRUGMANは、こうした主張を根拠のない思い込みである、と批判します。

労働者が大量に失業し、工場が操業できないような状態であれば、政府が支出を増やして、将来、完全雇用状態に近づいてから財政赤字を減らすのが当然です。

ところが、ECBのトリシェ総裁は「財政引き締め策が経済停滞を招くという考えは正しくない」と述べました。なぜなら、「(投資家の)信頼を高める政策は景気回復を助けるのであって、それを損なうものではない。」・・・これは、1932年にフーバー大統領も唱えた原則です。

PAUL KRUGMANは、緊縮策の後に景気が回復したケースを詳しく見れば、その他の理由が緊縮策の効果を打ち消したからだ、と主張します。たとえば、1980年代にアイルランドが回復したのは、貿易収支が赤字から黒字に大きく変化したのです。今や、厳しい緊縮策を取ったアイルランド、ラトビア、エストニアは、より穏やかな緊縮策を取ったアイスランドよりも、激しい景気悪化を経験しています。

NYT July 2, 2010

Help Needed for the Economy

NYT July 4, 2010

Punishing the Jobless

By PAUL KRUGMAN

失業手当の給付期間を延長しないまま上院が週末に閉じられたことをPAUL KRUGMANは憤慨します。彼らが「無慈悲で、冷酷で、混乱した」頭だから。

共和党員たちは、失業手当が労働者の働く意欲を損なう、と反対します。確かに手当てを得た労働者たちは絶望的なほど仕事を得ようとしなくなるでしょう。新しい仕事を少し選ぼうとするはずです。しかし、現在のように消費が不足して景気が悪化しているときには、失業者のポケットに日々の必要な支出を行えるわずかなお金を入れてやることは、公共工事よりも、即座に効果的な景気刺激策となるのです。

FT July 5 2010

America needs to make its bad jobs better

By Richard Florida

不況で、ますます良い職場は亡くなり、低賃金・低技能の、ひどい職場ばかりになる。・・・景気が回復するには、こうした職場が家族を養える十分な賃金を支払えるようになる必要があります。

少なくとも、低賃金の職場がすべてオフショア・センターに流出する、ということはないのです。問題は、高賃金の、安定した、ブルーカラーの職場が急速に減って、彼らの行くような良い条件の職場がないことです。かつてもそうであったように、職場の条件が改善されるときです。

LAT July 6, 2010

The economic power of Obama's pen

By Christopher Edley Jr.

「ペンの力でオバマ大統領は、容易に進まない追加の刺激策に関する審議より、経済を刺激することができる。」 労働基準を改善し、賃金契約を厳しく監督することは、新しい立法を必要としません。

「リンドン・ジョンソンは行政命令で人種や性別による差別を禁止し、リチャード・ニクソンは人種差別の積極的是正策とその実施計画を求め、ジミー・カーターはインフレ抑制を命じました。大統領たちは連邦政府にビジネスに対する模範を示すことで国民を指導するよう求めたのです。」

guardian.co.uk, Tuesday 6 July 2010

Republicans: a party of unemployment

Dean Baker

失業が増えれば、中間選挙で共和党の利益になる。だから、共和党は失業を求めるのだ。

FT July 6 2010

Demand shortfall casts doubt on early austerity

By Martin Wolf

世界の債券市場は何を伝えているか? もっとも取引の盛んな先進諸国の債券市場は、いずれも利回りが低い。その意味は、投資家が心配しているのは不況やデフレであって、財政赤字やインフレではない、ということだ。

なぜ、中央銀行が購入するのを止めても、債券市場は利回りを上げないのか? それは民間部門で約3兆ドルの所得と支出とのギャップが発生したからだ。民間需要は不足している。金融危機が民間の支出を大幅に抑制した。

この資金を先進諸国は新興諸国に投資し、巨大なドイツになって、輸出を伸ばすことで需要を補うこともできる。しかし、新興諸国は輸出によって成長する政策を変えていない。むしろ、民間投資の7000億ドルに匹敵する6000億ドルが外貨準備の増加となって戻ってくる。

巨額の資金が先進諸国の国債購入に向かっている。それはリスクを避けたいからだ。投資家の動機が何であれ、資本市場でクラウディング・アウトは起きていない。もし政府が支出して財政赤字を増やさなければ、経済のバランスは大きく需要不足に向かっただろう。

財政の長期的な持続可能性を改善することが景気回復に役立つだろうか?

FT July 7 2010

Austerity is not the only option

By Michael Hudson

異なる文脈ですが、ラトビアなど、バルチック諸国の経済から、緊縮策の回避を考えます。

バルチック諸国は厳しい緊縮策を取りました。欧米の金融危機が波及して、彼らの赤字を融資できなくなったからです。選択肢は二つでした。国内消費を抑制しつつ通貨価値を切り下げて輸出価格下げ、あるいは、緊縮策で賃金を引き下げて、貿易黒字を増やすことです。

ラトビアとリトアニアの場合、2年間でGDP20%以上の減り、ラトビアは公務員賃金を30%も下げました。それでもユーロ加盟のために、切下げを避けたかったのです。それでも、世界経済が不況であれば輸出は容易に伸びず、また、国内の激しい不況は優れた労働者や企業ほど海外に流出させてしまいます。

そこで、Michael Hudsonは第3の選択肢を提案します。それは税制の改革です。東欧、旧社会主義圏の経済では、税負担が労働者に集中し、きわめて逆累進的です。そこで、労働者への課税を減らし、土地に課税するのです。それは労働者の生活水準を低下させず、土地や住宅の価格上昇から得た利益に課税します。実際、激しいインフレの結果、土地への課税は1%に過ぎません。

香港やシンガポールがそうであったように、土地に課税して開発を行うほうが、その競争力を改善できる、と考えます。

FT July 8 2010

America needs a growth strategy

By Michael Spence

アメリカ経済は雇用を転換しなければなりません。これまでのような、債務による消費の膨張を続けることはできません。長期投資のために、消費や社会保障が抑えられるでしょう。しかし、それとともに、貿易部門を減らし、国内消費に依拠したサービス部門を膨張してきたことの反動が表れてきます。

国際競争に負けない製造業を回復しなければなりません。アメリカの社会契約として、経済の弾力性を保ち、同時に、高い所得を約束しなければなりません。ところが、安価で、規律のある、勤勉な労働力が利用できる多国籍企業は、アメリカ国内の労働力に投資することを怠るようになりました。それがますます、アメリカ産業の競争力を失わせ、国際競争と関係のない分野へ過度の特化を促したのです。

容易な解決策はないが、政府は企業と組んで貿易部門の技術改善を促すべきだ、とMichael Spenceは主張します。そして、資本集約的で労働生産性の高い分野を開拓し、労働者に十分な所得を実現できる機会を提供しなければなりません。

WSJ JULY 8, 2010

Unemployment Benefits Aren't Stimulus

By ARTHUR B. LAFFER

失業手当を長期間給付することへの反対論は、その結果、ますます失業が長引き、失業率も高くなる、というものだ。これには証拠がある。

また、刺激策としての効果にも疑問がある。なぜなら、すべてを支出することはないから。インフラ投資のように生産性を高めるわけでもない。


3.中国の参加した世界市場

LAT July 2, 2010

Is China good for the Americas?

By Eric Farnsworth

中国の登場は、資源や食糧の市場として、アメリカに代わる急速に拡大する影響力を持ち始めています。中国からの投資は、アメリカと違って、さまざまな政治や人権に関する要求をともないません。ラテンアメリカの指導者にとって、その方が受け入れやすく、長期的には中国の影響力が増すことで不安はありますが、歓迎しています。

FT July 4 2010

China builds bridges to fuel its engine room

Hongyi Lai

中国の成長は、資源、特に、石油の輸入に依存しています。中東からアフリカ、ロシアや中央アジアに主な輸入先を変更しつつあります。アメリカはその影響に注意します。

FT July 5 2010

Global economy: Trading blows

By Alan Beattie

「しかしたとえホワイトハウスが求めるように(中国の)通貨価値が大幅に上昇しても、アメリカはなお北京との貿易・投資摩擦について多くの問題を抱えるだろう。」

中国の市場が急速に拡大する中で、欧米企業の参入も増えていますが、製品の偽物、技術の無断利用、中国独自の技術、国内業者の優先、などについて外国企業は不満を感じています。

WSJ JULY 5, 2010

Labor Leads China's Virtuous Cycle

By J.C. DE SWAAN

沿海部における中国企業の労働争議と賃金上昇は、低賃金に依存した段階を終えて、経済発展を進めるでしょう。低賃金地域への工場の移転を進める必要を受け入れ、中国経済の変化を加速する過程です。

NYT July 5, 2010

China, the Sweatshop

July 6 (Bloomberg)

China Bashing Over Yuan Needs a Long Rest

Ronald I. McKinnon

今や、アメリカは貿易不均衡の原因を、人民元ではなく、アメリカ国内に求めるときである。

「徐々に増価することが、あるいは、増価の脅威が、ホット・マネーの流入を再開させるだろう。さらに、いかなる急速な増価も情勢を鎮静化しないだろう。なぜなら、主に中国の高い貯蓄率がもたらす中国の貿易黒字は減りそうにないから。」

これは間違った信念に基づいている。すなわち、貿易摩擦を為替レートで決める、という考え方である。実際は、貯蓄と投資の差であり、それは、アメリカの財政赤字や極めて低い貯蓄率、そして、中国の高い貯蓄率の結果だ。こうした基礎条件を変化させる政策が取られない限り、為替レートだけで貿易不均衡は変わらない。

なぜ30年間も、アメリカの貿易赤字や貯蓄不足が、金融と貿易のグローバルなシステムを不安定化しなかったのか? それは1980年代、90年代は日本、2000年以降は中国が、工業製品の形で、貿易黒字となった貯蓄超過をアメリカに移転し続けたからである。その結果、アメリカの貿易赤字は国内製造業を衰退させた。

しかし、為替レートが外国政府によって操作された結果である、というアメリカ国内の保護主義の主張は、しばしば間違っていた。それは資本がグローバルに移動する世界では成立しないのだ。貿易収支は、資本移動に比べて、全体の中の小さな不均衡でしかない。

貿易収支が減価によって改善するためには、国内の総支出が総生産に対して減少しなければならない。それは、国内貯蓄が投資に比べて増加する、というのと同じことである。すなわち、そういう意味で、ドルが安くなればアメリカの国内貯蓄が増える、と仮定するのは正しくないのである。

むしろ、(多国籍企業によって一部は決まる)国内投資が為替レートに対して反応しやすい場合、事態は逆に変化するだろう。

人民元がドルに対して急速に増価する、と仮定してみよう。それは、内外の潜在的な投資家にとって、中国への投資が高価になる、他方、アメリカに投資することは安価になる、ことを意味する。その結果、アメリカではミニ投資ブームが起き、わずかな国内貯蓄に対して投資が増える、他方、中国では、国内生産の45%に達する膨大な投資部門が、投資スランプを引き起こす。・・・投資に牽引された中国経済は減速し、その輸入も減少する。

日本が貿易黒字を理由に円高を受け入れたとき、何が起きたかを見ればよい。1990年代半ばには円高がさらに進んだ。日本は投資するには高価な場所となった。日本の大企業はより安価な生産コストを求めてアジア諸国に投資し、また、アメリカにも投資した。しかし、円高が日本の輸出増加を抑制したものの、日本経済が減速し、輸入が減ったために、対米貿易黒字はまだ増えたのだ。

だから、中国が増価を嫌うのは当然だ。日本と同じように、中国の貯蓄率は為替レートに反応しない。アメリカやヨーロッパの批判が、中国の人民元はもっと増価するべきだ、というのは間違っている。人民元の増価が持続すれば、それはホット・マネーをもたらす。増価のスパイラルを避けるために、中国人民銀行は介入し続けなければならない。

人民元批判はやめるべきだ。そして、アメリカは長期的な財政赤字の抑制計画と個人貯蓄の促進策を示し、中国は労働市場の自由化と賃金上昇を促して、起業が過剰に貯蓄することを改めるべきだ。

FT July 7 2010

China rules out ‘nuclear option’ on T-bills

By Geoff Dyer in Beijing and Peter Garnham in London

FT July 8 2010

China in record Japan sovereign debt buy

By Michiyo Nakamoto in Tokyo and Robert Cookson in Hong Kong

ドル安を嫌って、中国がドル建の外貨準備を嫌い、財務省証券を売るのではないか、と恐れられてきました。しかし、アメリカの債券市場は、その規模や流動性について、今も中国にとって有益な市場なのです。確かに、中国は介入による外貨準備をドルだけでなく分散して保有したいと考えています。そのためには、ユーロや円、金、SDRを増やします。つまり、日本国債の購入が増えるでしょう。他方、日本政府はそれを嫌い、恐れます。

FP JULY 7, 2010

Did China Just Win the Caspian Gas War?

BY ALEXANDROS PETERSEN

「天然ガスの世界市場で最も重要なプレーヤーは、最大の供給国ロシアでも、祭壇の消費国アメリカでもなく、中国である。」 その理由は主に、国内エネルギー消費の急増と、それを維持するための国外資源・エネルギーを求める地政学に依ります。

中国の西域開発、さらに西側とのイラン制裁をめぐる対立、中央アジア諸国やロシアとのパイプライン敷設、カスピ海沿岸への関与、など。天然ガスのあるところ、中国企業が現れます。

FT July 7 2010

China’s little emperors demand their due

By Geoff Dyer

中国の一人っ子世代、「小皇帝たち」、「自分世代」が牙をむき始めた・・・?

若い世代は、その両親が望んだ以上の生活を求め、都市に住みたいと思っている。そのために住宅を買いたいが、最近の住宅価格高騰に、その意味で強い不満がある。1980年代、90年代に育った彼らが、過去2週間、賃金上昇に対してストライキを行ったことは、以前にはなかった彼らの傾向を示すものだ。

エコノミストのAndy Xieは、10年前の工場労働者を思い出す。その多くは18歳の女子労働者で、「素早い指先」を工場主は称賛した。彼女たちはトイレ休憩もほとんどなく、休憩時間もベンチで過ごした。対称的に、最近のストライキで見る労働者たちは「苦汁を飲む」気はない。彼女たちは親と比べると異星人のようだ。大都市に住んで、楽しく暮らしたい、と願い、いつも報酬の良い仕事を探している。

中国政府は住宅バブルを鎮静化したいが、それは景気減速の危険を冒すことになる。住宅価格に対する大規模なデモはないが、彼らの不満は非常に強く、社会・政治対立の焦点になっている。

以前より豊かになっても、若者たちは共産党のイデオロギーや政治支配に逆らう気配を示さない。はっきり見られるのは、ナショナリズムが強まったことだ。しかし、近代化は彼らの生活に対する期待を一気に高めた。その不満が何を目指すのか、中国の政治の将来に不安定性をもたらす。

guardian.co.uk, Thursday 8 July 2010

China's migrant workers want rights, not handshakes

Hsiao-Hung Pai

中国の若い出稼ぎ労働者たちが強く不満を感じるのは、都市に移住することを禁止した制度があって、差別されているからです。彼らは都市の最低賃金保証や、住宅、学校の利用を拒まれています。ストライキは彼らの不満を政府に伝えるでしょう。

WSJ JULY 8, 2010

The Sun Rises on Chinese Competition

By THOMAS HOUT

中国、アメリカ、ヨーロッパの企業が工業製品のように世界市場を奪い合うのではなく、環境保護や新エネルギーの開発では、急速に拡大する市場を開拓し、技術開発など、最初からグローバルに協力することができる。


4.東西ドイツ再統一

SPIEGEL ONLINE 07/01/2010

Germany's Disappointing Reunification

How the East Was Lost

By Alexander Neubacher and Michael Sauga

東西ドイツの再統一過程に関する整理、紹介です。東ドイツの国民は何を失ったのか?

71日は、完全な統合化に向けて、東ドイツにドイツ・マルクが導入された20周年に当たる。しかし、西ドイツの政治家たちが約束した経済的利益は実現しなかった。何が間違っていたのか?

彼らは強い政治圧力のかかる中、短時間で決断しなければならなかった。Helmut Kohl首相は、文ですバンクが反対しても、通貨統合を一人で決めた。ベルリンの壁が崩壊し、毎日、多くの人々が西に向かっていた。それを止めるために、財政的な移転でもある通貨統合を保証した。

通貨統合は東ドイツ市民にとって大きな財政移転だったが、東ドイツ企業にとっては受け入れがたい競争条件だった。20年間で13000億ユーロが財政移転されたが、それにもかかわらず東ドイツの経済状態は不満足だ。

しかも、東ドイツは過剰に都市インフラに投資していた。今や、都市も人口も縮小しつつある。住宅投資に多大の補助金が与えられたが、その結果は「二重の破滅」だった。住民をとどめ、移民を引き戻すために行われた都市再開発やインフラ整備、大量の住宅建設は、今では誰も利用しない廃墟となり、整理対象になっている。

ベルリンの壁崩壊は、市場自由化、という言葉に完璧な答えであるかのような、勝利者の響きを与えた。しかし、彼らは何も分かっていなかった。多くの失敗が、今ではわかっている。


5.アフリカはなぜ貧しいか?

FP JULY/AUGUST 2010

Actually, It's Mountains

BY ROBERT D. KAPLAN

地理は世界政治の将来を考える上で最も重要な条件だ。プロシアやロシアの支配者の個性よりも、その地理的な特徴("LAND POWER”)の方が、守るべき国境が少ないイギリスやアメリカ、ヴェニス(”SEA POWER”)は自由主義のチャンピオンになれる、ということを説明する。

アフリカ、サハラ以南に、「破綻国家指数」のトップ60カ国の中で、半分以上があることも、その地理的な特徴が説明するだろう。すなわち、アフリカの面積はヨーロッパの3倍もあるのに、海岸には良い港がない。また、内陸との輸送を担える河川も少ない。台地から滝や急流になっている。また、サハラ砂漠が豊かな地中海文明との交流をその南部に対して断ってきた。アフリカは地理的な孤立によって苦しめられたのだ。

ケニア、エチオピア、ソマリアは、インド洋に近く、古くから中東やアジアとの交易があった。しかし、各国に固有の地理的な問題があった。ケニアは部族主義、エチオピアは山岳と干ばつ、ソマリアは長い海岸線を持っていたが、海賊に苦しんだ。・・・イエメン ・・・イラク ・・・アフガニスタン、パキスタン ・・・ビルマ ・・・そして、多くの国で河川や海岸線が重要である以上に、そこに資源があれば支配者たちは内戦を繰り返した。・・・石油 ・・・天然ガス ・・・レアメタル

これらの国が土地に宿命の苦しみを負っているのではない。人類の機関がそのような宿命論を打ち破れる。しかし、このことに無知な者は、地理からの攻撃を繰り返し浴びる。


6.移民を支援する

WP Saturday, July 3, 2010; A19

A better welcome for our nation's immigrants

By Jeb Bush and Robert D. Putnam

移民の同化には時間がかかる。アメリカ建国の時代にも移民の同化に関する同じ議論はあった。今と違うのは、当時の人びとが移民たちの同化を積極的に助けたことだ。

移民の賛成派も反対派も、英語を学ぶことが重要だ、という点で一致する。移民たちはしばしば第2世代や第3世代になって英語を習得し、それまで隔離されたコムにティー内で言語や文化の同一性を保った。しかし、アメリカで成功した移民たちが示しているのは、アメリカにおける成功は、決して移民たちのアイデンティティーを失うことで達成されるのではなく、むしろ正しく保持し続けるものである、ということだ。

1世紀前のアメリカでは、教会や市民団体、企業が、移民のための英語クラスと市民教育を提供した。移民はグローバリゼーションにおける社会や企業の大きなメリットである。その意味で、現代でも積極的に統合を支援するべきだ。


7.グローバル・ガバナンスの消滅

FT July 1 2010

Splintered solidarity has put global governance in a spin

By Philip Stephens

「豊かな諸国と新興諸国とは、相互依存した世界でどのように競争しつつ、調和した関心を維持できるか?」 G20に表された「グローバル・ガバナンス」の成功は、どこに消えたのか?

グローバルな課題は明らかです。金融システム、景気回復、気候変動、貿易自由化。・・・世界金融危機は回避された、と思ったら、政治もナショナリズムに戻った。誰もが自由放任の資本主義を批判するけれど、今も、政府が従うのは合意より市場圧力であり、市場だけが唯一の支配者である。EUグローバル・ガバナンスの手本ではなく、危機に際しても救済を拒み、近隣憎悪の手本を示した。

ドイツは財政再建を重視し、アメリカと中国も成長と債務削減の見通しについて意見が対立する。大国にも解決できない問題が多くあると皆がわかっているけれど、大国ほど国際合意に従うのを嫌う。

ここには、重要な二つの要素が欠けている。1.実効性のある、政治的に正当性を得た国際制度。2.共通の利益について彼らを説得できるような、相互の信頼。

G8の実効性は失われ、戦後の国際機関、IMFや世界銀行も十分に政治的な正当性を主張できない。それは、国連安保理も同様である。こうした制度が根本的な改革を必要としているが、問題は、新興諸国がそれ(既存の機関やその改革)を信頼していないことだ。旧秩序の改革は、所詮、旧支配を押し付けるだけではないか?

強力な国際機関は、安定した新しいパワーの配分を反映しなければならない、と言われる。改革は必要であるが、もしパワーの移動が急激で(信頼を確立できず)制度が調整できないというのであれば、この不安定な世界に個別に向き合って争い、奪い合うしかない。


FT July 1 2010

Japan has to address the ‘precariat’

By Machiko Osawa and Jeff Kingston

日本の「プレカリアート」(不安定で低賃金の雇用)問題を解決したとしても、財政赤字やデフレが解消することはないだろう。しかし、この問題を放置すれば、企業は消費や生産性を犠牲にし、日本経済の成長を損ない、財政赤字やデフレを悪化させるだろう。


WP Saturday, July 3, 2010; A19

How to prevent another war in the Southern Caucasus

By Ronald D. Asmus

WP Wednesday, July 7, 2010; A14

Hillary Clinton mends fences in Central Europe and the Caucasus


guardian.co.uk, Sunday 4 July 2010

The facts behind G8 aid promises

Jeffrey Sachs


WP Sunday, July 4, 2010; B03

Five myths about diamonds

By Tom Zoellner


July 6 (Bloomberg)

Banking Tests Do Nothing But Stress Out Markets

Matthew Lynn

ストレス・テストで市場のストレスが増すだけだろう。アメリカとヨーロッパに同じことを主張するのは間違いだ。「透明性」を最大限高めることが重要だ、とメルケル首相は述べました。しかし、それで投資家が安心するのか? ・・・いや、全然。

SPIEGEL ONLINE 07/06/2010

Europe and the Euro

'The Crisis of Confidence Has Yet to Be Overcome'

Thomas Mirowthe head of the European Bank of Reconstruction and Development

WSJ JULY 9, 2010

Europe's Stressed Banks

By Daniel Gros

銀行によってはギリシャやアイルランドの国債を大量に保有しているだろう。しかし、透明性を高めることに反対する中央銀行もあるだろう。ECB自身のストレス・テストが問題になる。


LAT July 5, 2010

One man's one-Korea dreams

Gregory Rodriguez

FT July 6 2010

North Korea: Drastic dynastics

By Christian Oliver

北朝鮮に関する最新の考察です。なぜ韓国の哨戒艦を攻撃したのか? なぜ、それでも、北朝鮮の崩壊を近隣諸国は望まないのか?


guardian.co.uk, Monday 5 July 2010

How to demolish protectionist myths

Jagdish Bhagwati

「アメリカ製品購入・アメリカ人雇用政策ディベート」で、55%と45%で負けると予想した、自由貿易を支持するJagdish Bhagwatiたち反対派が、結果は、80%に支持されて勝利しました。なぜなら論争では、「論述と証拠」の方が、「断定と罵声」よりも優れているからです。

自由貿易を悲観するのは間違っています。それを否定する新旧の議論は、いずれもいくつかの神話(現実に支持されない)に依拠するからです。たとえば、

「1.保護の費用も、自由貿易の利益も、小さい。」(間違い) ・・・「2.自由貿易は繁栄をもたらすが、労働者階級には不利益だ。」(技術変化の方が大きい) ・・・「3.自由貿易は他国も自由化している必要がある。」(間違い) ・・・「4.ポール・サミュエルソンも自由貿易を否定した。」(間違い) ・・・「5.仕事がオフショアに逃げてしまうことは豊かな国にとって破滅的だ。」(間違い)

いずれも自由貿易を支持することに対して問題にならない。

NYT July 5, 2010

Waiting for a Trade Policy


WP Monday, July 5, 2010; A13

Financial 'reform' or revenge?

By Robert J. Samuelson

WP Monday, July 5, 2010; A12

The political price of backing invaluable TARP


SPIEGEL ONLINE 07/06/2010

Interview with Rwandan President Paul Kagame

'We Are Far from Exhausting Our Potential'

そのアフリカで、しかも守るべき国境が多い内陸の小国であるルワンダが、政治体制を転換して繁栄できたか、どうか? (独裁的)指導者、ポール・カガメへのインタビューです。彼の理想のモデルが、韓国やシンガポールという小国であるのは当然です。


WP Tuesday, July 6, 2010; A13

Democracy in trouble

By Anne Applebaum

クリントン国務長官が民主主義の拡大を擁護して演説したことを支持しています。それはネオコンやブッシュのイラク侵攻が唱えたものではなく、ロシアやヴェネズエラやイランまで唱える民主主義でもありません。クリントンは「市民社会」を称えたのです。たとえ、市民社会を擁護する活動家を投獄する、エジプト、中国、ビルマ、ジンバブエも、民主主義を主張しても。


FT July 5 2010

South Africa’s trial by World Cup

By Gideon Rachman

FT July 8 2010

After the final


WSJ JULY 7, 2010

Reglobalizing Taiwan

By IANA DREYER AND RAZEEN SALLY

中国との経済協力枠組み協定は、台湾に新しい発展の機会を与えます。中国経済と一層緊密に一体化しつつ、世界市場における競争力を高める、という「再世界化"reglobalize"」戦略です。

台湾はすでに情報通信技術のグローバルな生産チェーンに重要な役割を占める、高度な経済発展を遂げた国です。人口は2300万人でも、この分野で、OECDのトップ企業250に入る19社が台湾企業です。特に、中国本土に生産拠点を置き、ラップトップ・コンピューターの世界生産の80%を占めています。

自由主義的な通商政策を採用していますが、前政権が北京政府と対立し、中国の結ぶ地域的な自由貿易協定から台湾は締め出されています。その結果、国内産業の構造改革が遅れてしまいました。金融、通信など、ビジネス・サービス分野では規制があります。

台湾経済を多様化し、開放型の競争力を高めるために、中国も含めて多くの国とFTA交渉を急ぐことです。そして、台湾を通じて中国経済との関係を世界の主要企業が利用するような、優れた条件を提供することで再世界化するのです。

******************************

The Economist June 26th 2010

The age of easy credit and its aftermath: Is there life after debt?

Repent at leisure: A special report on debt

(コメント) かつてインフレがそうであったように、今は債務が雇用や成長、簡単に富を得る方法を保証する政府の常備薬となりました。紙幣を印刷するより、将来(や国外)から移転する方が、合理的に説明できると信じたのです。しかし、実際には、ますます短期的な市場で売買する業者と、追加に貨幣を提供し、債務を引き受ける人びとを引き込むゲームの世界になったようです。

特集記事は、債務に対する法律や政府の態度、企業の経営姿勢、何より人びとの意識が変わったことを指摘します。

債務を増やすことは、金鉱を掘り当てたら自動的に豊かになる、と信じるようなものです。たとえ金Goldを食べなくても。問題はどうやって金Goldや債務を富に変えるのか? あるいは、無くすのか? です。いくら紙幣に交換しても意味はありません。

コツコツ貯蓄して返済する(つまり現在の消費を減らす)か、政府によって課税される(強制される)か、知らぬ間に倹約させられる(インフレで)か? 海外の富を奪うために、債務を無効にする国もあるわけです。誰が、いつ、どこで負担するのか? 政治(強制、暴力、戦争)が決めるしかありません。最も望ましい返済は、将来の富が増えることです。各国は成長を促し、生産性を高めるために投資し、成長率の高い国や若者に(生産的な形で)投資します。

その意味では、肥大化した金融機関や雇用者数、ボーナスが減少し、巨額の黒字をこうした機関を介して投資してきた新興諸国の貿易黒字が解消されるのはよいことです。高齢化しながら安全保障に悩むより、貿易や海外投資や国際移民を通じて豊かになる仕組みを築く方が良いのです。

特集記事でも、日本は重要な失敗例として、日本病とも言える問題(そして、リチャード・クーの整理)に何度か言及されています。フロリダも、アイスランドも、ギリシャも、債務や不動産・株投機による富裕化の末路として共通点があります。日本と違って、海外・域外から大規模に借り入れた場合、輸出を増やさねばなりません。あるいは、移民(難民)が流出します。自殺者が増えるのも、一種の難民です。

アメリカの昔の映画を観ると、全く違う世界がそこにあります。アングロ・サクソン諸国でも、かつては貯蓄が美徳でした。クレジットカードや債務は恥ずべき習慣であったとわかります。1945年、アメリカの消費者金融は総額でも57億ドルでした。10年後に430億ドル、1966年に1000億ドルを超え、1984年に5000億ドル、1994年に1兆ドル、つまり老若男女を合わせて国民一人当たり4000ドルの債務を負ったわけです。それは20087月に26000億ドルで、その頂点に達しました。家計の負った債務は2007年にGDPと同額におよび、かつて、あの1929年にだけ、そのような状態があった、と述べています。

企業や銀行(そして、金融の天才を自称した国家や個人)がやっていたことも、「キャリー・トレード」に過ぎません。金利の低い国で大規模に借りて、金利の高い国で投資する。長期の成長傾向や金利低下が前提できた時代には、極端に借金する者ほど急激に富を増やすことができました。

国で言えば、・・・アイスランド。金利は高く、通貨も増価し、銀行が民営化されました。大胆に借金する個人が集まり、外国の低金利で調達した資金を他国の企業買収などに使いました。国家全体がヘッジ・ファンドになり、リーマンブラザーズを奨励したわけです。彼らが破たんしても、少なくとも、アイスランドには輸出する海産物や地熱発電が残っています。

戦争の時や、金融危機のときは、資金が逃げることもないので、政府はいくらでも債務を増大させます。しかし、債務が増えると、次第に、深刻な問題が起きます。すなわち、政府の信用が低下する、財政緊縮策が不況を悪化させる、肥大化した政府部門で資源が浪費される、国民や企業が増税やインフレを警戒し、財政刺激策が効果を失う。そして、金利が上昇すると悪循環になって債務爆発へ向かい、あるいは、政府による救済策が頻発して財政破たんへ向かい、同時に、高齢化や労働者の教育に必要な財源も失われます。

アメリカは、明らかに有利です。ドルは準備通貨であり、金融危機や他国の財政破綻によっても保有され続けます。また、金融市場の規模・開放性・効率性、革新的な姿勢によって国際投資を集め、金利は抑制されます。移民を引き寄せて高齢化の負担も軽減できます。

インフレも債務も、それが増えることを誰も止めようとしません。この問題で、政治は機能しないのです。最後はどうなるのか?

一つは、日本です。長期の経済停滞を受け入れ、国内貯蓄が続く限り債務を累積し、破綻を回避し続けます。しかし、通常は次に海外の貯蓄に頼りますから、その部分がデフォルトに向かいます。今後、世界中でデフォルの連鎖が起きます。あるいは、それを避けようとしてドイツがかつて行ったように、債務を貨幣化し、紙幣を印刷します。そして、インフレが加速します。もしこうした事態を回避できるとしたら、それは成長すること(しかも、それを海外の投資家たちが信頼すること)です。

・・・何だ、そうか、当たり前だな? しかし、マッキンゼー社の調査を紹介します。金融危機後の債務が成長によって解決できたのは、32例中の1例に過ぎません。


The Economist June 26th 2010

The yuan and global imbalance: The long march

The yuan unpegged: Learning to crawl

Exchange-traded funds: Explosive

(コメント) 貿易不均衡の解消は、人民元が増加するだけでよい、という単純なものではありません。もし中国の輸出部門から労働者が流出するとしたら、どこに向かうのか? もし大量失業をもたらせば、国内消費に依拠した成長は不可能です。

為替レートや国際商品価格によって投機的利益を期待する人びとが、ETFなど、ファンドに資本を集積しつつある、というのも不安です。


The Economist June 26th 2010

Trade with Mexico: Signs of life

Tackling homelessness: Getting strategic

Immigration law: Our town

Economics focus: The price of entry

(コメント) アメリカとメキシコの関係、特に、トラック輸送の規制。アメリカ国内のホームレスがいかに深刻化を伝えています。企業の移転に伴って、移民が国境周辺から、内陸部の州にも増えています。移民排斥の政治運動も広がります。

どうすれば良いのか? Gary Beckerに言わせれば、移民にも価格を付けろ、です。エコノミストが示すのは、貿易や資本がそうであるように、価格メカニズムを機能させることで、高い効率性、双方の利益、が実現します。各国がほしい労働者の数を示して、入国ビザを世界オークションに出すわけです。

移民に必要な費用を政府や企業が肩代わりして、それを賃金から差し引くことは、歴史的に行われていました。債務移民です。また、市場の外部性があるので、望ましい均衡に達するとは限りません。移民が賃金を抑制されているなら、ただちに解雇されて、他の職を探すでしょう。それを避けるように受け入れ企業(や政府)は移民労働者の移動を抑制し、弾圧します。・・・

市場化が解決策でないとしても、現在の移民は全く望ましくない状態にあります。


The Economist June 26th 2010

Japan’s new government: Enter the prudent Mr Kan

Nigeria’s troubled Delta: Can a local man make good?

Uniqlo: Uniquely positioned

Charlemagne: Help them to help themselves

(コメント) 日本の選挙前に、管内閣の紹介記事があります。ギリシャを理由に財政再建を唱えたことが有権者に受け入れられると計算した理由は何か? むしろ、規制緩和を進めて成長戦略を示すべきだ、と考えます。

ナイジェリアの紛争地帯やユニクロの世界戦略に関する記事も興味深いですが、ヨーロッパ政治に関するコラムで中国の姿勢が取り上げられています。EUは中国を、責任ある利益共有者として行動するように求めてきました。しかし、余計な御世話だ、と中国人なら思うでしょう。EU内部は政治的なバラバラで、市民に十分な雇用や成長も実現できない。むしろ、少しは中国を見習うべきだ。他方、EUは過去の貴族や圧政の歴史を基に、法の支配、という考え方を輸出できる。