IPEの果樹園2010

今週のReview

7/5-7/10

 

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IPEの想像力 7/5/10

政権交代で始まった日本の革新を、まだ諦めてほしくない。もっと真実を公表し、もっと改革を唱えて、新しい機会を多くの人に開くため、行動してほしい。・・・そう、世界各地に若手議員を派遣して、<革新の種>を集めさせてはどうですか?

週末、『冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界バイク紀行』を古本屋で買って、パラパラ読みながら、すごいな、と感心しました。

ロジャーズはジョージ・ソロスと組んでヘッジファンドを動かし、億万長者になって、1980年、37歳で引退した。その後、コロンビア大学でビジネス・ファイナンス論を教え、1990年、教え子の女子学生とともに、アイルランドから日本まで、ユーラシア大陸を往復バイク旅行する。崩壊寸前のソ連も、道路のないシベリアも、天安門事件後の北京も、二人で完走する。さらに、アフリカのサハラ砂漠を縦走し、オーストラリアも、南米も走破する。

これじゃ、日本人が100人くらい束になっても勝てないな、と私は思いました。その行動力、生命力、冒険心。・・・中国は三つに分裂するだろう。・・・ロシアは50から100の対立する勢力に分裂する。・・・日本の資本、中国の労働力、シベリアの広大な資源が、途方もない富を生み出す。

弱い政府、機能しない国家、互いが殺し合うのを止めているだけの帝国。そんな土地の支配者たちが市場を嫌います。世界には、貿易が阻止され、通貨や為替レートが統制され、投資が利益を生まず、人びとが貧困や犯罪の闇に落ち込んでいる土地がまだまだ広がっています。ジム・ロジャーズのような冒険(あるいは、戦略)投資家たちは、こうした政府や国家や帝国が崩壊するとき、確かに、世界の大掃除と大改造を指揮している面があるでしょう。

・・・遠隔地貿易や冒険商人の時代、新大陸の発見、を世界は再生し続けているわけです。

私も同じ場所に立ったことを思うと、恥かしい気分です。アイスランド、ロンドン、ヨーロッパの諸都市、崩壊前の東ベルリンやモスクワ、タシケントなど、中央アジアの諸都市、香港や上海、北京、韓国のソウルや板門店、そして、バブルと衰退の東京。まだ、アフリカには行ったことがないし、インドやアラブ世界も知りませんが、アルゼンチンやアメリカ、オーストラリアには行きました。

何がわかったのか? 旅行中は雑多なことをノートに書きました。不思議に思うことや、意外な印象、ショックを受け、驚き、いつも、無理解の連続でした。その土地について自分が何も知らないのだ、ということを痛感していましたが、帰ってしばらくするとその痛みも忘れて、病人が薬に頼るように、多くの本を買い込み、怠惰な勉強を続けたように思います。

その無数の問題群に、知的な解釈、具体的な打開策を示すことが、こうして旅をした目的であり、その自由を許された者の使命であったはずです。

世界一周旅行は、ゼミの元気な学生諸君にお願いして、自分はせめて一つでも、これまで積み重ねた<怠惰な無理解>を克服したいです。そして、冒険商人だけでなく、もっと多くの人が機会をつかめるような、世界の仕組みを提案したいと思うのです。

たとえば、“Charter City” が面白いですね。7億人が自由に移民できるような国際移民体制について、夏休み、中川さんと合宿して、楽しく話し合いたいです。

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1.G20とグローバルな財政再建論

2.中国の賃金引き上げ

3.繁栄のモデルは移植できるか?

4.ユーロ危機の結末

5.アフガニスタンにおける、オバマの戦争

・・・イギリス新政権の財政再建論 ・・・キルギスタンの虐殺

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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


1.G20とグローバルな財政再建論

FT June 24 2010

Beyond the false growth vs austerity debate

By Mohamed El-Erian

「今こそ成長派」と「今すぐ財政再建派」とが対立しています。Mohamed El-Erianは、どちらも正しいが、肝心な点で間違っている、と考えます。

すなわち、新興市場について「第2世代の構造改革」と言われている問題です。比較優位が失われ、高齢化が進むというように、西側経済も長期的な反応速度を高めるために構造改革が必要なのです。それによって成長が実現し、財政再建も可能になります。

「成長と財政的安定性との循環でカギになるのは、長期的な生産性を高める政策と、変化に取り残される人びとへの緊急支援策とを組み合わせることです。第一に、労働力を再訓練し、労働移動性を高めて、人的資本を強化します。次に、生産性の向上をもたらす科学研究を支援し、インフラや技術への投資を増やします。最後に、この数年で起きそうな社会的な摩擦を正直に調査して、たとえばアメリカでは、社会的セーフティー・ネットを拡大します。」

より深く、構造的な問題を解決する姿勢によって、「今こそ成長派」と「今すぐ財政再建派」とは和解できるでしょう。

guardian.co.uk, Friday 25 June 2010

G8 and G20 are deeply divided over European devotion to austerity

Adrian Pabst

国際協調によって世界経済危機の打開を図る、という利用からは程遠く、G20は競争的な財政緊縮論の「お化け屋敷(肝試し)」になったようです。

ギリシャ危機を避けるために財政赤字の削減が必要だ、とヨーロッパ(そして日本)の政府は主張します。80億ユーロの財政緊縮プランを示したドイツのメルケル首相、ネオ・サッチャー型の緊縮予算を目指すイギリス新政権。

これに反対するのが、アメリカ、中国、ロシア、ブラジル。彼らは財政赤字削減を急ぎ過ぎると、景気回復を挫き、長期の経済停滞や危機の再現にもつながる、と警告します。財政赤字は金融逼迫による不況がもたらしたのであって、生産力や雇用の十分な水準を実現する投資や消費が不足していることが問題だ、と考えます。

「中央銀行が最後の貸手であるように、政府は最後の支出手段である」と、Adrian Pabstは表現します。

ヨーロッパの緊縮計画は経済的にも政治的にも支持されません。経済的に、緊縮財政という「衝撃と恐怖」作戦のデフレ効果は、すでに金利ゼロに近い金融政策にある状況では、緩和できません。また、政治的にも、自由で民主的な政治体制を維持するために欠かせない、社会的な紐帯や相互扶助まで破壊してしまいます。

赤字削減のタカ派が指摘するギリシャとスペインは、むしろ例外です。長期の債券を国民が保有する限り、同様の危機は起きません。むしろ銀行危機(とその債権購入が止まる、また破たんすれば財政負担が急増する)を防ぐべきです。

彼らは財政緊縮政策のもたらした歴史上の悪夢を知らないのでしょう。1936-37年のアメリカ、1990年の日本、1931年のイギリス、1930年のドイツ。むしろ、G20はトービン税を含む金融改革に合意するべきです。そして、戦略的な投資を増やして成長と雇用をもたらすべきです。「国家財政危機」は、世界経済の余興でしかありません。

SPIEGEL ONLINE 06/25/2010

The G-20 Debate

Germany Warns US Not to Become 'Addicted to Borrowing'

最近、アメリカは激しくドイツの緊縮策を批判してきた。今度は、ドイツの財務大臣が反撃した。赤字支出に頼る中毒が進めば、歴史が示すように、その国の財政破綻とインフレーションを用心しなければならない、と警告したのだ。」

WP Friday, June 25, 2010; A17

For the G-20, order is restored with America's leadership

By David Ignatius

米中枢軸体制は成功し、安定化に向かうのか? ・・・1年前、「アメリカは再び世界経済政策の運転席に座り、中国がその潜在的な協力者として登場した。」

「世界経済の健全さを取り戻すことに、特に中国の指導者たちに対して、オバマは最大の試練にさらされていた。それは原油流出やタリバン掃討よりも重要だった。」 今回のG20で、救出作戦は成功だった、とアメリカは宣言した。その返礼が、中国政府による人民元の弾力性強化、である。

中国は、アメリカの説得を受け入れて、輸出による成長の脆弱さを解消するため、グローバル・リバランスにも貢献するでしょう。イランに対する安保理の経済制裁に中国が参加したように、グローバル・パートナーとして、米中による世界管理が実現しつつあるのです。

「オバマが北京と話す重要なチャンネルはヘンリー・キッシンジャーである。」 キッシンジャーは中国の指導者たちと親しく、信用されています。オバマ政権では、かつてキッシンジャーの下で働いたガイトナー財務長官が関係を維持しています。だから、キッシンジャーは中国政府にアメリカ政府の考えを伝える権威があるわけです。

「アメリカは次の10年間について、中国をパートナーとして、グローバルな経済・安全保障の枠組みを構築したいと考えている。」

アメリカの時代は終わった。自由市場やグローバリゼーションに関する「ワシントン・コンセンサス」も破綻した。1年前にはそんな話ばかりでした。しかし、トロントのG20では違います。世界は、アメリカ金融機関の復活、アメリカ式の経済管理によって回復した、と自信を示すでしょう。中国の指導者たちが安堵のため息を漏らすのも、成功の徴です。

FT June 25 2010

Hawks hovering over G20 summit

WSJ JUNE 25, 2010

A Weakened U.S. Goes to the G-20

By GEORGE MELLOAN

ヨーロッパの債券市場は怯え、中国の住宅バブルは沸騰し、日本経済は麻痺したままだ。G20を前に、世界経済の8割を支配するドル経済を前提に、オバマ政権の幹部二人、ガイトナーとサマーズは強気に語った。ケインズ主義的な財政支出と金融緩和は成功した。高い失業率も、景気回復の遅さも、余り心配していない。

問題は、アメリカ政府が毎年何千億ドルも海外から引き出す、という、クレジット・カード依存症になったことだ。アメリカが発行した、市場で売買可能な財務省証券の残高は、約55000億ドルで、そのうち約3兆ドルが外国に保有され、投資家のムードで大きな変動を生じるかもしれない。アメリカ政府の担当者によれば、深刻な不況を起こすことなく、このメリーゴーランドから抜け出す方法はない、ということだ。支出削減はアメリカ政府の選択肢にない。

Francis E. Warnockの報告によれば、危機に対応して連銀が財務省証券を購入した際、その金利は50ベーシス・ポイント跳ね上がった。そしてドルは外国為替市場で売られた。しかし、ギリシャの財政危機でユーロ危機が注目を集め、外国石斧、特に中国はユーロの将来を悲観して、比較的安全なドルに逃げ込んだ。ドルの価値は上昇し、金利も安定した。

アメリカはユーロ危機の救済に協力し、IMF3170億ドルを加えて、1兆ドルの安定化基金を設けた。しかし、それが市場に強い影響を与えなかったのは、アメリカ財務省が500億ドルを自由に支払えないからだ。それは国際金融市場の問題であり、アメリカより中国がユーロを救った。トロントで皆が歓迎したのは、アメリカではなく、中国の代表だ。彼らがドルで融資してくれるから。

アメリカの国際的な地位は浸食されつつある。

WSJ JUNE 25, 2010

Why Europe Is Cutting Spending

By OLLI REHN

guardian.co.uk, Friday 25 June 2010

G20 summit: Rifts in Toronto as US warns EU of double-dip recession risk

Patrick Wintour and Larry Elliott in Toronto

WSJ JUNE 26, 2010

The Keynesian Dead End

guardian.co.uk, Sunday 27 June 2010

May Toronto's G20 be the last

John Hilary

トロントG20は、カナダ政府が警備に10億ドルもかけるというだけでなく、金融制度改革と温暖化防止のために行動しないことで、世界の信用を失っている。

The Observer, Sunday 27 June 2010

Beware politicians moralising on the sin of indebtedness

Will Hutton

G20では、どの政府も景気回復を持続させる、という祈りの唱和を忘れません。問題は、国によってその意味が違うこと、しかし、彼らは世界経済の改善のために自分が犠牲を払う、とは考えていないことです。

債務危機は各国だけの問題、という理解は間違っています。

FT June 27 2010

Fiscal disarray is the least of the G20’s sins

By Clive Crook

200811月の最初のG20は<グローバルな問題にグローバルな解決策>を示す新しい時代の始まりとみなされた。その2年足らず後に、経済危機はほとんど解消できないまま、パートナー間の違いが目立つ。」

2008年と09年には、財政刺激策と金融緩和が必要なことはどこでも明白だった。誰もが望んでいることで協力することは容易である。協力がなくても、単独でやっただろう。つまり昨年、協調のコストは何もなく、成果も特になかった。2010年の状況は違う。国によって、財政刺激策を採る余裕がある国と無い国、少しだけある国に分かれている。ヨーロッパの諸政府は財政引き締めを唱え、黒字なのに緊縮を好むドイツは悪者になっている。他方、アメリカ政府は議会の反対で刺激策を追加できそうにないが、他国には強く求めている。

それゆえ、世界には需要が不足している以上、財政政策の協調が望ましい。しかし、金融規制や貿易自由化のように国際協調が不可欠なものもあるが、政治的に微妙な財政政策の協調をG20が唱えるのは難しい。

The Times Sunday, June 27

After the smiles, it’s beggar your neighbour

Bill Emmott

NYT June 27, 2010

The Third Depression

By PAUL KRUGMAN

これは歴史上3度目のデプレッションになるだろう。最初は1873年のパニックに続く物価下落と不安定な時期、2番目は1929-31年の大恐慌に続く大量失業の時期だ。

3度目のデプレッションは、政策の失敗で起きる。2008-09年、政府は過去の経験から学んで正しい政策を採った。危機を回避したように見えたが、週末のG20はデフレではなくインフレに関心が集まり、不十分な支出が問題なのに、緊縮財政を唱えた。

1933年に景気が持ち直しても大恐慌が終わらなかったように、世界経済危機は終わっていない。アメリカもヨーロッパも、日本型のデフレの罠に陥りつつある。ところが、ヨーロッパでは、まるでハーバート・フーヴァーの演説集から取ったみたいに、同じような財政健全化の称賛が並ぶ。アメリカでも、共和党や保守派の抵抗で連銀やオバマ政権は何もできないまま、地方政府の財政支出がカットされている。

赤字削減の強硬派が指摘するのはギリシャ危機とヨーロッパの混乱だ。しかし、「債権投資家が政府のひつこい財政赤字を心配しているのは正しいが、不況に直面した経済において、短期的な緊縮財政で投資家の信頼を取り戻せる保証はない。逆に、ギリシャが厳しい引き締めを受け入れたら、危機はさらに拡大した。アイルランドが残酷なほど公的支出を削ったのに、市場はアイルランドをスペインより悪いと評価した。スペインは強硬派の緊縮策をなかなか受け入れないのに。」

「まるで金融市場は、政策担当者が知らないことを知っているかのように主張している。しかし、たとえ長期の財政再建が重要であっても、不況期に支出を削るのは景気をさらに悪化させてデフレに向かう道である。自己破壊的だ。」

「これはギリシャ危機ではないし、財政赤字と雇用とのトレード・オフの重視でもない。合理的な分析とは何も関係のない正統派が勝利しただけである。その主張とは、他者に苦しみを与える者が、困難なときの指導者にふさわしい、ということだ。」

この間違った政策によって代償を支払うのは、大量の長期失業者たちである。

SPIEGEL ONLINE 06/28/2010

G-20 Differences

Half-Hearted Promises and Mutual Blame

By Gregor Peter Schmitz and Philipp Wittrock in Toronto

FT June 29 2010

This global game of ‘pass the parcel’ cannot end well

By Martin Wolf

G20は一層の協調合意であり、同時に、意見対立でもあった。世界は子供たちの好きなゲーム「小包ごっこ」 “pass the parcel” をしている。

大人たちのゲームは複雑で、いくつものゲームを同時に進めている。金融部門の内部で赤字(あるいは、劣悪な資産)を押し付け合う。金融部門が民間部門の非金融部門に赤字を押し付ける。金融部門が国家に赤字を押し付ける。国家間で赤字を押し付ける。ヨーロッパでこのゲームがうまいのはドイツだ。

財政赤字の削減を唱える者は、赤字が政府に発生していることを孤立させたまま非難する。しかし、問題は政府債務だけではない。すべての債務だ。そして、Martin Wolfはアメリカ、イギリス、スペインの家計と政府の債務を示します。二つは鏡を見るように対称的に変化します。これはリチャード・クーが日本の政府債務について強調し、Martin Wolfがそれを認めたことです。

金融危機の後、民間部門が黒字を出す(債務を減らす)には、それが一気に不況を実現しないとしたら、政府部門が赤字を出す(債務を増やす)しかなかったのです。

今や、G20は財政赤字を削減するべきだ、というわけです。危機の前に大幅な黒字を出していたのは、ドイツと日本、中国、そして、いくつかの資源輸出国でした。世界需要を維持する赤字国は、危機に直面した新興市場と、アメリカ、中東欧諸国でした。

財政再建が民間支出を増やすから問題ない、というのは信用できず、むしろ民間債務の削減は続くでしょう。「小包ごっこ」の結末は、財政再建のための支出減少を、1.新興市場が吸収する。2.アメリカの財政赤字が吸収する、3.中国などが黒字を減らして相殺する。いずれでもないなら、4.世界が長期不況に入る。

孤立した議論では意味がない。

guardian.co.uk, Tuesday 29 June 2010

Let's take no orders to slash and burn from this G20 club

Naomi Klein

「わたしの街は犯罪の現場だ。犯罪者たちは夜の闇に消える。窓ガラスをたたき割り、警察の自動車に放火した、土曜日の少年たちについて話しているのではない。」

「わたしが話しているのは、日曜日の夜、国家の指導者たちが社会のセーフティー・ネットをたたき壊し、不況のさなかに職場を焼き払ったことだ。世界の最富裕層と特権者たちのせいで生じた金融危機の影響に対して、指導者たちはその国の最も貧しい者たち、最も傷つきやすい者たちに支払を求めた。」

その理由は簡単だ。指導者たちは金融制度の改革や規制に合意できず、その結果、将来の危機を恐れるしかなかったのだ。

WSJ JUNE 30, 2010

Why Obamanomics Has Failed

By ALLAN H. MELTZER

過度の財政刺激策は逆効果になる。成長が阻まれる最重要な理由は、現在の財政赤字が将来の増税やインフレにつながり、また金融バッシングが過度の規制に至る、という投資家や企業の不安である。

オバマ政権の景気刺激策は失敗した。レーガン政権の政策と対照的だ。

July 1 (Bloomberg)

Stimulus Might Avert Error of Optimism

David G. Blanchflower

WP Thursday, July 1, 2010; A15

In recession battle, Germany and China are winners

By Harold Meyerson

経済危機が終わるためには、中国とドイツが、生産を減らし、消費を増やすことだ。

中国には安い労働力と急速に改善される設備がある。ドイツには経済全体のために奉仕する銀行部門がある。アメリカは製造業を失い、雇用を失った。アメリカにも新しい産業政策が必要だ。


2.中国の賃金引き上げ

NYT June 24, 2010

The Renminbi Runaround

By PAUL KRUGMAN

過小評価された人民元の為替レートを変えなければ、何も解決されない。中国は人為的な人民元安で、輸出を補助し、輸入を妨げている。外貨準備は膨張し、国内の住宅バブルを起こしている。弾力性の増大は、アメリカの忍耐力を試しているだけだ。

guardian.co.uk, Saturday 26 June 2010

Why China has reason to worry

Jonathan Fenby

SPIEGEL ONLINE 06/26/2010

US-China Currency Dispute

'No-One Is Going to Be Bought Off by a Tiny Revaluation'

Andrew Small

FT June 27 2010

China builds a bridge across the Danube

By Jonathan Holslag

「中国がダニューブ川を渡っている。それは戦車でも、共産主義のプロパガンダでもなく、資金や魅力ある企業である。」 それは商業的な動機ですが、金融危機で弱った中東欧諸国にとって、中国からの投資をめぐる関心、その影響力は急速に増大しています。ドイツ政府とコンテナ・ターミナルや空港の建設契約が結ばれ、ソフィアの経済特区に進出し、ルーマニアの風力発電を助けます。上海万博も各国の展示と投資の誘因になります。

中国の影響圏になるとは考えないけれど、EUの合意形成に重大な制約が追加されるかもしれない、と懸念します。

WSJ JUNE 27, 2010

Managing Rising Wages in China

By JACK PERKOWSKI

「中国でビジネスを行うルールが変化しつつある。最近まで、政府と企業は静かな労働者に頼ることができた。しかし今、経営者は高賃金や工場の労働条件改善をもとめる労働者に直面する。これは困難を増やすだろが、中国が製造業の拠点として魅力をなくすことはないだろう。」

ストライキは最後の手段であったが、中国で貧富の格差がますにつれて、人びとの不満は高まってきた。政府の仲裁委員会や裁判所が解決できなければ、ますます多くのストライキが発生するだろう。その意味では、こうしたストライキに対処することが外国企業の成功条件に加わるのだ。労働法の成立に応じて、JACK PERKOWSKIの自動車部品工場は労働者との交渉に力を入れた。「(労働者たちを含めて)すべてのステークホルダーが増大する繁栄の果実を分かち合い、公平に扱われていると感じることが、この国が持続的に成長するために必要なのです。」 中国がグローバルな競争で不利になる、と非難するより、健全な移行の一部として考えるべきだ。将来の成長は、もっと消費に依拠し、世界がほしがるものを生産する頭脳にかかっているのだから。

June 28 (Bloomberg)

China’s ‘Henry Ford Moment’ Is Both Good and Bad

William Pesek

頻発する激しいストライキによって、中国は一体どこに向かうのか? 輸出産業を守るために、この連帯型の労働運動を弾圧するのか?Googleが大嫌いな共産主義ではない、本当の共産主義に目覚めるのか?

これは、フォード社が労働者の平均賃金を1日5ドルに倍増した1914年にあたるのかもしれない。つまり、世界の工場で起きた新しい“Henry Ford moment”だ、と。

今後20年間、自動車の世界市場は中国が支配する。自動車会社が苦しいのは、そのことを中国人も知っていることだ。自動車会社は中国を出ていけない。労働者の反乱は北京を目指さない。中国政府がワレサを許さないことを、彼らも知っている。

賃金上昇は、企業の利潤を脅かし、世界インフレに影響するだろう。「誰もがこの瞬間の訪れるのを知っていた。しかし、皆が思うより早かった。」

その悪い面は、大規模な消費資本主義に火をつけることで、世界の環境破壊を加速するだろう、ということだ。中国の環境保護や温暖化防止は遅れている。電気自動車を推進することはあるが、その電力の多くは石炭を燃やして得ている、という具合に。13億人の中国が、5億台の自動車に乗る時代が来る。

FT June 29 2010

China’s factories spread the wealth

マルクスなら、中国で起きているストライキを観ても驚かないだろう。彼の分析では、資本主義の賃金は「産業予備軍」an “industrial reserve army”によって抑えられる。しかし、中国でも安価な労働力は枯渇し始めた。農村からの出稼ぎ労働者の物質的・社会的な生活条件は悪く、法的な保護もない。

賃金が2倍になっても製品は売れるだろう。労働は生産コストの3%でしかない。しかし、企業の利潤は影響を受ける。企業は生産拠点を賃金の安い地域に移動し始めている。こうして「アジアの虎たち」は日本の成長モデルを追い続けるのだ。それはグローバルな貧困減少の第2幕である。

WSJ JUNE 29, 2010

Popping China's Debt Myth

By ARTHUR KROEBER

June 30 (Bloomberg)

Chinese Yuan Is Sideshow to Looming Wage Inflation

Andy Xie

人民元が変動するとしても、せいぜい1年で5%だろう。しかし、中国ではその分インフレが起きている。不動産価格は3倍になった。不動産への支出が平均的な生活費の3分の1を占めるなら、それだけで人民元の実質価値は倍増したに等しい。5年前に比べて、人民元の過小評価はなくなった。

アメリカの政治家は人民元を上げることばかりに関心がある。それで中国人はアメリカからもっと輸入する、と思うからだ。しかし、人民元が上がればアメリカ人は中国からもっと高く買うことになる。人民元高で、アメリカの対中貿易赤字が増えることも十分に起きうるのだ。

人民元の増価がわずかであっても、中国の工場で賃金が急速に上昇している。こうして、アメリカ人はいずれにしても中国人に多くを支払うようになるのだ。もはや中国の労働供給は20年前のように無制限ではなく、生産性の上昇は賃金を引き上げる。中国が完全雇用になれば、生産性の上昇を超えて賃金が上昇するだろう。それはインフレーションを意味する。

中国と言えば、高成長、不動産価格の急上昇、低賃金、低インフレ、低金利だった。次の10年は逆だろう。成長率は低下し、賃金は上昇し、インフレ率も高くなる。インフレ抑制のために金利を引き上げ、不動産価格は下落する。

インフレが続けば、特に今後2年間は、人民元が減価するかもしれない。中国は人民元の急激な下落を抑えるために、その外貨準備を使い果たす。しかし、その間に構造改革を成し遂げ、生産性を高めるのだ。人民元レートは、賃金インフレーションのわき役に過ぎない。

guardian.co.uk, Wednesday 30 June 2010

These strikes are good for China – and for the world

Seumas Milne

FT June 30 2010

The Asian century calls for a rethink on growth

By Kevin Brown

WSJ JULY 1, 2010

China Has a Yuan Asset to Sell You

中国経済の構造変化に伴い、人民元の国際通貨としての役割も前進するでしょうか?

アジア通貨危機を目撃して、資本規制の撤廃を延期した中国政府は、資本自由化の時期を考えます。なぜなら、今回の金融危機は逆の効果を及ぼしたから。アメリカの金融システムによって中国人の貯蓄を運用することは危険である、と中国指導部は理解しました。オバマ政権の金融救済や財政赤字は一層のドル安を目指しています。ドルに固定し続けて、アメリカの金融政策を輸入することは中国の利益になりません。

だから今や、中国は人民元で貿易を行い、国際投資することを望むのです。人民元の資本規制が撤廃され、為替レートの変動が信頼され、資本取引に関する法的な枠組みが確立されるのは、まだ時間を要するでしょうが。


3.繁栄のモデルは移植できるか?

The Times Monday, June 28

Stop poverty: plant a city in a failing one

Ben Macintyre

豊かな国と発展途上の国とが、経済特区を利用して急速に発展する。それが香港モデルです。

大西洋からthe Tapajós River 500マイルを遡上した、アマゾンの奥地に、フォード社の徴が付いた15万ガロンの貯水タンクがあるそうです。もちろん放置されたまま、空っぽで、錆びています。それはヘンリー・フォードが築こうとしたユートピア・理想郷、Fordlandiaの名残です。

フォード社はそこで、安価な地元の労働力により得たゴムで工場を経営し、労働者たちは高賃金と社会福祉、道徳的な改善指導を受けるはずでした。しかし、フォード社による都市建設、もしくは、西側の経済ルールを発展途上国に移植する計画は、見事に失敗します。

他方、その85年前に、アヘン戦争の結果として中国政府がイギリスに貸した土地、香港は素晴らしい繁栄をもたらしました。その住民や労働者の多くは中国人でしたが、その商業や法律はイギリスの飛び地でした。アジアの大部分がナショナリストや共産主義によって支配されていた時代に、香港の税率は低く、規制は少なく、所有や特許、契約は法律によって保護されていました。

Paul Romer“Charter Cities”は、相互の利益に依りながら、しかし、支配を受け入れるという合意を憲章にした、この香港モデルが世界中で実現可能だ、唱えています。受け入れ国は沿岸の一部を豊かな国の管理に委ね、飛び地として法律の制定や企業による自由な経営を認めます。住民は去ることもできますが、その土地に資本や労働力を持ちこんで、香港がそうであったように、経済的な利益を実現することもできます。本国政府は政治的な主権を維持し、その利益を分かち合います。

「ギャラップ社の調査によれば、世界で7億人の人びとが、もっと安定した、経済的機会の大きな国に移住したい、と考えている。要するに、ローマーの計画は、国内における経済移民の可能性に焦点を当て、利用するものである。」 富を奪う混沌と汚職の「悪いルール」から、経済的な安定をもたらす「良いルール」に変えるのです。それこそ北京の支配者が香港から学んだことではないか?

フォードは、アメリカのメインストリートをアマゾンに築こうとしました。彼は近代的な下水を引き、暴飲や姦淫を禁止しました。彼の労働者たちは近代的な資本主義を歓迎する、と考えたのです。しかし、ゴムの木は育たず、労働者たちは富を得れば働かなくなりました。計画は労働者たちの反乱で終わります。

「ゴムの木のように、どこにでも資本主義を植えることはできるが、育つとは限らない。」

WSJ JUNE 29, 2010

Taiwan's Trade Harvest

guardian.co.uk, Tuesday 29 June 2010

China trade deal has a sting its tail for Taiwan

Simon Tisdall

中国と結ぶ台湾の経済協力協定・・・? 香港モデルが北京に採用されたのか、あるいは、北京が台湾を占領するのか?

WSJ JUNE 29, 2010

The Seoul Stumbling Blocks on Trade

By ANTHONY B. KIM

アメリカと結ぶ韓国の自由貿易協定・・・? 拡大版NAFTAを、アメリカはアジアに築くのか? しかし、遅すぎた。・・・韓国はすでに中国のものだ?

FT June 30 2010

The Asian century calls for a rethink on growth

By Kevin Brown

確かに経済成長は著しい。貧困から抜け出す人も増えている。しかし、アジアには安全保障の不安が残り、人口増加と環境破壊が加速している。都市化が進むとき、十分な社会資本が整備されなければ、社会対立や政治不安が生じるのだ。

アジアの世紀を喜ぶ前に、アジアの急速な都市化が引き起こす問題に対処する用意をしておくべきだ。

guardian.co.uk, Thursday 1 July 2010

Obama must ditch Bush-era trade deals

Kevin Gallagher


4.ユーロ危機の結末

FT June 27 2010

Only a closer union can save the eurozone

By Wolfgang Münchau

準備不足で的外れな「空売り規制」や、資本増強策のないまま発表される銀行の「ストレス・テスト」(すなわち、市場統治能力の不足)こそが、ヨーロッパの金融危機を強めている、と批判します。

June 29 (Bloomberg)

Euro Meltdown Won’t Be Avoided by German Makeover

Matthew Lynn

そんなにドイツが悪いのか? 世界が不況になるのも、ユーロが危機になるのも、ドイツが悪い、と責められます。しかし、それは逆さまだ。

ドイツの貿易黒字がギリシャやスペインの赤字を作ったのではない。ギリシャやスペインは自分たちの政策(住宅投資や消費ブーム)によって赤字を作ったのだ。ドイツの政策によってそれをなくせたわけではない。だから、ドイツの黒字を減らすことが、その答えではない。

ドイツの財政赤字による刺激策を増やすことで、ユーロ圏内の不均衡を減らすことはできない。ドイツ人は、財政赤字が増えるほど増税やインフレを恐れる。その結果、貯蓄を増やす。フランス人がチーズを食べるように、ドイツ人は貯蓄し、健全な通貨を求める。

FT June 29 2010

Radical reforms can save the euro

By Peter Sutherland

FT June 28 2010

Greece’s best option is an orderly default

By Nouriel Roubini

ギリシャを「秩序ある債務組み換え・破産処理」(an orderly restructuring)にするべき理由を説明しています。

2001年のアルゼンチンにおけるデフォルトや、1990年代のベルギー、アイルランド、スウェーデン、1998年のロシア、と比較しています。秩序ある破産処理が行われた、1999年のパキスタン、ウクライナ、2002年のウルグアイとも比較します。

支払不能であるにもかかわらず融資を続けても、結局、債務は返済できないのであり、もっと大きな公的資金投入と債権者の混乱・損失が生じます。

WSJ JUNE 30, 2010

A Big Bang for Greece

By STEVE H. HANKE

STEVE H. HANKEは、社会主義のギリシャ政府と、スティグリッツを含むその顧問たちが行った非難合戦を止めるべきだ、と考えます。そんなことをしても問題は悪化するばかりです。むしろ、ニュージーランド型のBig Bangが必要だ、と主張します。

1984年、国民党から政権を奪った労働党政府は、それまでの社会主義型の経済を、規制緩和と競争力改善を目指した構造改革で再建しました。ギリシャも、債務を組み替え、企業の社会保障負担を減らして付加価値税に転化すれば、競争力を改善できる、と。

WSJ JULY 1, 2010

Europe Remakes a Pact


5.アフガニスタンにおける、オバマの戦争

FT June 24 2010

It is time to rethink the west’s Afghan strategy

By Ahmed Rashid

WP Friday, June 25, 2010; A19

Nation building in Afghanistan? That's Afghans' job.

By Eugene Robinson

guardian.co.uk, Monday 28 June 2010

David Petraeus is the loneliest man in America

Simon Tisdall

FT June 28 2010

Afghanistan: Into the dust

By Matthew Green, Daniel Dombey and James Blitz

FT June 30 2010

Countdown starts in Afghanistan

SPIEGEL ONLINE 07/01/2010

Why Debate the War?

The Real Reason We Are in Afghanistan

A Guest Commentary by Rory Stewart

司令官が暴言を吐いてオバマに解任されたことを、私は重視しませんでした。アメリカのリベラル派とともに、銃弾よりも学校で、イスラム原理主義の支配を変えてほしい、と望んだからです。

テレビのニュースを観ていると、米軍がアフガニスタンでも劣化ウラン弾を使用している、それが多くの障害児(奇形)を生んでいるということを伝えていました。これでは、悪魔の戦争だ、と強く非難していた記者の憤懣に、米軍と安全保障を分かち合う日本政府は答えられるのでしょうか。オバマの戦争の何かが間違っている、というアメリカ世論ともかかわらせて読みたいと思いました。

アフガニスタン戦争は、アメリカの政府・軍内部で一貫した方針を見失っているようです。まるでベトナム戦争のように? アメリカ政府は、タリバンと交渉する前に、軍事的な勝利を得ておくべきだと主張しました。米兵の犠牲者を減らすことだけが作戦の成功ではない、と記事は司令官の解任を理解します。アフガニスタン撤退を約束したオバマは、その方針を示さなければなりません。


WSJ JUNE 28, 2010

Mr. Kan's Tax Gambit

By GEORGE MELLOAN

FP JUNE 28, 2010

Unfinished Business

BY CHRISTIAN CARYL

July 1 (Bloomberg)

Bond Bulls Find Shelter in Upside-Down ‘Haven’

William Pesek

WSJ JULY 1, 2010

Can Mr. Kan Save Japan?

By MICHAEL AUSLIN

WSJ JULY 1, 2010

The Business Case for Reforming Japan Post

By NAOMI FINK

日本に関しては、なかなか面白いとは思う論説に出会えません。


NYT June 25, 2010

Financial Regulation

金融危機を繰り返さず、特に、巨大金融機関の救済を必要としないような、新しい手段が政府に与えられました。金融サービスの消費者や株主が金融機関を監視する力も強められるでしょう。

銀行から投資銀行を切り離す「ボルカー・ルール」や、デリバティブの規制は、まだこれからの実施が重要です。

WP Sunday, June 27, 2010; A16

After the crash

FT June 27 2010

The US arms its financial regulators

guardian.co.uk, Monday 28 June 2010

Why should we trust the IMF?

Dean Baker

FT June 28 2010

Shock therapy is best cure for banks

銀行の自己資本充実を急ぐべきだ。たとえ、「ショック・セラピー」と言われても、「餓死」よりはましである。

WP Monday, June 28, 2010; A15

Economics: The shaky science

By Robert J. Samuelson

SPIEGEL ONLINE 07/01/2010

Goodbye Fat Cats?

Europe Moves to Regulate Bankers' Bonuses

WSJ JULY 1, 2010

The Dodd-Frank Financial Fiasco

By JOHN B. TAYLOR

2000ページを超す金融改革法案が登場した。この法案は、金融危機の原因に関する間違った理解によって書かれている。議会の金融危機調査委員会がそのような処方箋を否定したのに。

最大の間違いは、政府に危機を防ぐ十分な権限がなかった、という理解だ。すでにある手段を正しく使おうとせず、法案は政府の強化を目指している。金融機関の破産処理や、金融サービスの消費者保護、システミック・リスクの監視、は分かりにくい、複雑な制度の追加だ。

ファニメーやフレディーマックの強化は、最悪の処方箋だ。


FP JUNE 24, 2010

What Really Happened in Urumqi?

BY KATHLEEN E. MCLAUGHLIN

SPIEGEL ONLINE 06/28/2010

'Leading the Country into a Dead End'

Former President Slams Kyrgyzstan's Democracy Plans

By Benjamin Bidder in Minsk

WSJ JUNE 29, 2010

Back on Track in Bishkek

By BAKTYBEK ABDRISAEV AND ALEXEY SEMYONOV

中央アジアの変化が大きな地殻変動をもたらすのか、関心を持つべきでしょう。


WP Sunday, June 27, 2010; B02

5 myths about getting rid of the bomb

By Barry Blechman and Alex Bollfrass


guardian.co.uk, Monday 28 June 2010

This immigration cap makes no sense

Philippe Legrain


WP Tuesday, June 29, 2010; A19

Obama's 5 foreign-policy victories

By Robert Kagan


FT June 28 2010

A new approach to low carbon finance

By Bob Wigley


SPIEGEL ONLINE 06/30/2010

Prospering at the Expense of Others?

Germany's Export Boom Has Trade Partners Stewing

By Armin Mahler, Christian Reiermann, Wolfgang Reuter and Janko Tietz


guardian.co.uk, Wednesday 30 June 2010

Why we need the Liberals in British politics – and by their proper name

Timothy Garton Ash


SPIEGEL ONLINE 07/01/2010

Germany's Disappointing Reunification

How the East Was Lost

By Alexander Neubacher and Michael Sauga


WP Thursday, July 1, 2010; A15

Up to their old spy tricks again

By Anne Applebaum

FT June 30 2010

Spies aside, Moscow has come in from the cold

By Anatol Lieven

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The Economist June 19th 2010

Britain’s budget: This won’t hurt (much)

Britain’s emergency budget: Pick your poison

(コメント) イギリスの緊縮策、財政再建。こんな記事が面白いか…? と思いましたが、面白かったです。日本でも、選挙前に消費税を取り上げただけで野党が一斉に噛みついて、政府や民主党の支持率が下がる、ということに選挙政治の歪みを感じます。

The Economistの記事は、オズボーン蔵相に三つの原則を示します。1.成功した財政再建は歳出削減によって達成された。2.新規課税は企業ではなく、消費に対して行われる。3.歳出削減と増税とは、政府の再編と同時に行う。

イギリスの場合、金融ビジネスの膨張に歳入を依存してきたことが問題でした。また、企業に対する課税はその国外流出を促してしまいます。どちらの問題も日本には当てはまらない、と言えそうですが、すでにある程度はあてはまり、今後は一層そうなるでしょう。

医療や年金など、社会保障は削らない、という公約を、The Economistは批判します。歳出を削減するうえで避けられないだけでなく、もっと仕組みを変えて、新しい方法を取り入れれば、無駄をなくし、効果的に医療サービスや老後の生活を改善できる、と考えるからです。

そして、温暖化の防止や技術開発を促すという意味で、炭素税を導入せよ、と提案します。

もし民主党が肝心な点で間違ったとしたら、それは国民に、財政状態が危機的であることを意識するときの姿勢、問題意識の共有に失敗したことです。ギリシャ危機を例に挙げても、G20や国際的規範を示しても、国民の意識は野党の合唱に流れています。

子供手当や、高速道路無料化ではなく、もっと根本的な議論を、大胆でわかりやすい改革を。


The Economist June 19th 2010

Kyrgyzstan: Stalin’s latest victims

Kyrgyzstan: Stalin’s harvest

(コメント) 私はキルギスタンを訪問したことがあります。その後も、この国のニュースに関心を持ちました。しかし、The Economistが特集記事を組むほどの重要な事件が起きるとは思っていませんでした。

ルワンダで起きたような虐殺が中央アジアで始まったのに、誰もそれを止める気がなく、放置されているのかもしれません。

帝国の辺境として、また、山岳地帯や砂漠地帯を縫うように連なる交易路として、中央アジアやコーカサスは長い歴史を持つ一方で、征服や入植・強制移住、虐殺の歴史を持つわけです。豊かな土地を、わざわざ分裂させるように、民族の境界線を無視して分割した、というスターリンの遺産が、紛争や虐殺を近隣諸国に波及させ、支配者たちは人為的な国家の支配体制強化と分断化にしがみつきます。

中央アジアは、成長する大国間の交易を促す優れた位置にあります。国境をなくして互いに繁栄を享受することが、彼らの正しい選択なのです。


The Economist June 19th 2010

Charlemagne: If only it were that easy

Philanthropy: Keeping up with the Gateses

Global rebalancing: The clock ticks

Capital controls in South Korea: The won that got away

(コメント) アメリカは自国の歴史や戦略上の理由を上げて、トルコをEUに参加させるべきだ、とヨーロッパの指導者たちに助言、あるいは、強要してきました。それは正しいことかもしれませんが、やはり、アメリカはヨーロッパと違います。ヨーロッパの人びとは南北戦争や言語の統一を望まず、異なる宗教や歴史について、アメリカほど容易に一体化することはないでしょう。

アメリカの超資産家たちが示す社会慈善活動、グローバル・リバランス、資本規制、についても取り上げています。