IPEの果樹園2010

今週のReview

6/28-7/3

 

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IPEの想像力 6/28/10

20の成果が何であったのか、首脳宣言は基本合意を示す一方で、難しい問題は踏み込んだ議論をしなかった、と感じます。

一方では、裕福な諸国が金融危機後の金融緩和と財政赤字に関する政治論争で迷走し、国によっては早期の財政再建を主張し始めており、他方、活発に成長してきた新興諸国が内外の不均衡を意識し、為替レートによる調整や国内の金融引き締めに関心を向けています。それは、双方の貿易や投資のパターンを変化させるでしょう。しかし、金融市場が過度の調整圧力を生じ、債務危機や資本規制も競争的に強められる懸念が生じます。

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私の講義では、≪ガバナンスの革新≫を考えます。

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NHK海外ドキュメンタリー「アパルトヘイト廃絶への道:スポーツ・ボイコット」を観ました。

南アフリカ共和国のアパルトヘイトを終わらせるために、ニュージーランドの人権活動家たちは南アフリカから来たラグビー・チームの試合を妨害しました。警官隊が出て彼らの行動を阻止しましたが、テレビ中継される中で、デモ隊を強制排除できないまま、試合は中止になります。数万の観衆が試合を望み、険悪な情勢になりました。しかも、ニュージーランドの首相はデモ隊を激しく非難します。

その後、アパルトヘイト反対と国際試合のボイコットを求める運動は弾圧されました。アパルトヘイトをめぐって、「ニュージーランドは最も内戦に近付いた」、と運動の指導者は当時の恐怖を振り返ります。他方、南アフリカのエリートたちは、自分たちの素晴らしいラグビー・チームを拒まれたことに怒り、不満と不安を感じたそうです。何か間違っているかもしれない、と気づく雰囲気が生じる要因になったのです。

番組はさらに伝えます。釈放されたマンデラ大統領は、南アフリカの白人たちが誇りとするラグビー・チーム、スプリング・ボックスを、国民統一の象徴にしたのです。いままで観ることもなかったラグビーの試合を、黒人たちは熱狂的に歓迎しました。そして、ラグビーの世界大会でスプリング・ボックスが優勝したとき、黒人も白人も一緒に喜びを分かち合ったのです。

その南アフリカが敗退したとはいえ、今、フットボールのワールド・カップに人びとは熱狂し、ブブゼラが100万台も中国から輸出された(そして、売り切れ!)というのに呆れました。南アフリカ国民の高揚感や国際社会の関心を、犯罪やHIV感染、失業、など、深刻な社会・経済問題の解決に向ける政治的な統治能力の改善に役立ててほしい、と私は期待します。

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丹波橋駅の待合室にThe Economistを置き忘れたのは、外国人の女性二人(母娘)が時刻表を見上げて長く話し合っていたのを、さて、なんて話しかけたらよいかな、などと考えたからです。結局、取りに戻りました。

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基礎ゼミのディベートのテーマが「強い社会保障は雇用を増やすか?」であったのは、もちろん、管総理の所信表明を学生たちに紹介したからです。各チームで準備する時間がなかったため、せっかく調べてくれた人の話も聴衆には伝わらず、判定は常識的な印象(?)に流れました。つまり、それはないだろう(雇用は増えない)、というのが多数を占めたのです。≪熟慮民主主義≫の重要性を感じた次第です。

その際、きっと北欧の話が出るな、と思ったので、資料を用意しました。「北欧式ビジネスモデルは世界経済を救えるか?」クーリエ・ジャポン、20107月(Richard Milne and Andrew Ward, “Illuminating outline,” FT July 29 2009)です。

国内市場は小さすぎるので、北欧企業は最初からグローバルな展開を意識します。それと同時に、北欧の平等主義、特に、教育における平等、を重視している、と指摘してあります。社会的格差がなく、企業幹部の報酬は国際的基準から見てはるかに低い。学歴も、階級もなく、「社員はアポなしでやってきてドアをノックして重役室に入り、話をつけたらさっさと帰っていきます。」

「需要が30%落ち込んだら、それだけの割合の労働力を削減するか、それとも60%の人びとの勤務時間を半分に減らすかを労使で話し合う。経営者と労働者は、成熟した話し合いの場を持っており、一致団結して問題解決にあたるのだ。」 ・・・そんな企業ばかりであれば、確かに柔軟で、革新的なガバナンスも可能でしょう。

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20の共同宣言なのに、日本がわざわざ別扱いになるのは、事情が異なるというより、一貫した合意から外れた国だ、と思いました。

政府も、企業も、個人も、≪日本≫が積極的に革新に取り組めるように、平等で、柔軟な社会構造や制度を実現してください。そして社会改良に献身する人たちを、ブブゼラ吹いて応援するような、まっすぐな若者たちが増えてほしいです。

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1.人民元為替レートの弾力化と中国の成長

2.金融危機後、G20は世界経済の何を議論しているのか?

3.ユーロ危機を超えて

4.ワールド・カップのブブゼラ

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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


1.人民元為替レートの弾力化と中国の成長

FT June 18 2010

Study to stir dollar-renminbi debate

By Geoff Dyer in Beijing

中国の為替レートは、均衡為替レートに比べて、以前ほど過小評価されていない。中国の成長率は、投資や人口増加が減速するので、以前ほど高率ではなくなる。賃金引き上げが行われても、生産性の上昇によってカバーできている。人民元の為替レートが増価することは、内外の不均衡を調整するのに有益だ、とIIEWilliam Cline and John Williamsonは考えます。

FT June 19 2010

China vows increased currency flexibility

By Geoff Dyer in Beijing and Alan Beattie in Washington

WSJ JUNE 19, 2010

China Says It Will Increase Yuan's Flexibility

By ANDREW BATSON

FT June 20 2010

New renminbi regime looks like deft political move

By Geoff Dyer in Beijing

IMF主任エコノミストのEswar Prasadは、中国がサミット前に人民元の為替レートを議題から外そうとした、と指摘します。これは前にもやったことです。G20の前に、人民銀行総裁がドルを国際準備通貨にふさわしくない、と批判し、ドルよりSDRで決済や融資をするように求めたわけです。今度も、この声明だけでは影響が予測できません。

「弾力性を強化する」と言う場合、中国政府は二つのことは起きない、と排除しました。一つは、大幅な人民元の切り上げ。もう一つは、変動幅の拡大です。ドルに対するクローリング・ペッグに戻った、と記事は指摘します。

しかし、バスケット通貨に対して安定化する、という理由で、ユーロ安に合わせて、逆に人民元が安くなることもあるでしょう。こうして「弾力性」は、おそらく意図的な「一方的投機」を処罰する通貨当局の介入を選択肢として残し、増価に向けた投機を好む市場参加者を威嚇しているのです。

中国政府から見れば、問題は中国ではなく、アメリカです。アメリカは自国の都合のよいような金融政策を採ることで、ドルによる国際金融や国際決済を混乱させています。新興市場、特に、中国に向けてホット・マネーが流入することなど、その罪の典型です。

FT June 20 2010

China’s renminbi regime

FT June 20 2010

Chinese wisdom

WSJ JUNE 21, 2010

Beijing Steers New Course on Yuan

By ANDREW BATSON

人民元レートの増価は、中国の消費者の購買力を強め、その意味で、貿易不均衡を減らしながら、中国市場の規模を維持できる。

UBSの北京支店でエコノミストとして働くWang Taoは指摘します。「中国は真剣に強力的な姿勢を示している。・・・たとえ多くのものが望むほど迅速に行動しないとしても、その行動は正しい方向を示している。」 「中国は経済再編成と成長モデルの転換を加速しているが、それは国際金融危機によって、より重要で緊急の課題になった。」

中国国内には、従来の輸出部門に依拠した成長が増価によって損なわれることに、強く反対する声があります。G20は、それゆえ、中国政府の改革推進を支持する公式の声明を出したのです。

中国国内の消費者を犠牲にして輸出産業を支援してきた政策が、アメリカの消費者の債務返済や貿易摩擦に怒りを放つ議会の情勢を受けて、変化し始めています。「中国の通貨が強くなればこのバランスは変化する。」 それが消費や投資のパターンを変化させる。

中国政府の決定の背後には、1985年に円高を受け入れた日本政府とその後の輸出不振からバブルの経験がある。中国は日本の失敗を繰り返さない、と決意している。バブルの原因については論争があるにしても、中国人の多くは、為替レートの急激な変動が企業に悪影響を与えた、と考えている。だから人民銀行は、為替レートが緩やかに変化し、輸出競争力を損なわないようにする、という条件を示した。問題は、それがアメリカの政治家たちに受け入れがたいことだ。

中国の指導者たちは、急速に成長する経済が為替レートを固定し続けることは好ましくない、ということを明確に理解した。

WSJ JUNE 20, 2010

Pragmatism Drove Beijing's Decision to Drop Peg

By AARON BACK And ANDREW BROWNE

WSJ JUNE 20, 2010

Yuan Plan Could Aid Some Multinationals

By JASON DEAN

人民元の増価にも良いことはある。中国の国内市場はますます魅力的になって、外国企業が投資を増やすだろう。中国企業は海外でさらに積極的に資源や技術を買収できるだろう。資本市場における重要性や、投資家、中国政府の行動も変化する。

WSJ JUNE 20, 2010

The China Currency Syndrome

「これで世界経済の均衡が回復し、一斉に、アメリカの雇用が戻ってくる、と期待する者は誰もいない。」 ・・・資本流入が続けば、為替レートの安定化と国内のインフレ抑制とを同時に追求できなくなる。アメリカの金融政策が引き締めに転じるのはまだ先だ。また、すでに日本が行ったことだが、円高を受け入れても貿易不均衡は解消しなかった。

さらにWSJは、ニュー・ケインズ主義が雇用を増やすことに失敗したことを隠すため、オバマ政権が中国の為替レートをスケープ・ゴートにしている(財政刺激策の効果は中国に奪われた!)、と考えます。

WSJ JUNE 20, 2010

The Fallacy of the Beijing Consensus

By YASHENG HUANG

中国の債務依存型成長は1960年代後半のブラジルに似ている。

次の特徴は、どの国の話でしょうか? ・・・「年11%の成長率が約10年も続いた。権威主義的単一政党の国家が、労働者を沿岸部の都市に移住させて、急速な工業化を促した。政府は直接投資を歓迎し、免税や補助金を与えた。国内の100大企業の内、75%は国有部門に属した。政府の貯蓄率は10年足らずで倍増し、同じ時期、農業部門の雇用は3分の1以上も減った。」

まるで中国のようですが、違います。1965年から74年のブラジルです。軍事政権下で「奇跡」の成長が10年近く続きました。しかし、その後、成長は止まりました。失敗の理由を考えることが、中国の今後にも役立つでしょう。

ブラジルの成長モデルは単純です。政府は賃金に重く課税し、社会政策には支出しない。投資は、国が管理する銀行部門から融資されて、インフラや工業地区に集中する。投資は膨張し、乗数倍に、成長を高めた。

「しかし、ブラジルの経済規模があっても、国内経済構造は非常に脆弱で、1973年に始まった石油価格上昇と、その後の西側の不況で砕け散った。それらの問題に適応できなかったブラジル経済は1970年代の残りを成長なしに終わり、1980年代全体をハイパーインフレーションと債務危機との間でさ迷った。ようやく1995年から、強力な民主主義とより優れた政治的指導者を得て、状態を改善できたのだ。長期的に見て、ブラジルの歴史はその潜在能力を大幅に浪費した物語である。1950年に、ブラジルは韓国よりもはるかに豊かであった。現在、ブラジルの一人当たりGDPは韓国のわずか3分の1である。」

現在の「北京コンセンサス」は、ブラジルの黄金時代と同じ経過をたどっている。単一政党の支配する国家、資本の効率的配分を無視、債務依存型の成長加速。1960年代のブラジルと同じように、中国も家計の消費ではなく国家の投資増大によって成長している。成長は国家と企業によって蓄積され、さらに投資される。中国だけでなく、各地の国家資本主義は成長を加速するが、家計部門の所得を増やすことはない。

2009年の成長率が8.7%であったことを「北京コンセンサス」の奇跡的なパワーと称賛するが、それには、債務を爆発的に増やした、という単純な理由がある。その公的債務はGDP22%IMF)ではなく、100%に近いだろう。

「問題は、資本が異常に安価な条件で中国が成長を続けていることではなく、金融事情が正常化されたときに成長し続けるかどうか、である。」 インドはすでに金融を引き締め始めたのに、中国はそれを拒んでいる。それほど北京政府が投資主導の成長に中毒になっているからだ。低金利やゼロ以下の金利で不良債務が増加しているだろう。

最後にもう一つの国の話。「大恐慌の深みにおいても他の世界を拒んで、その国は高率の投資と成長を続けた。当時は、アメリカが25%の失業率に苦しんでいた。多くの貧しい諸国に称賛され、中にはその国の経済・政治システムを模倣する国もあった。その国の名は、ソビエト連邦である。物語の結末は、皆が知っている。」

WSJ JUNE 20, 2010

A Well-Timed Currency Kowtow

By JOHN LEE

これは政治的な叩頭(おべんちゃら)にすぎない。為替レートによる調整を受け入れたのではなく、G20における論争を避けたのだ。

中国政府は人民元の増価を受け入れないだろう。・・・彼らの多くは人民元の切り上げをアメリカの陰謀(中国経済の成長を止める)と考えている。北京政府はマクロ的な均衡回復よりも国内の雇用創出を重視している(労働争議が増発している)。危機に対する刺激策は民間部門より政府部門を肥大化した。

June 21 (Bloomberg)

China Turns Tables on AAA Debt Time-Bomb Nations

William Pesek

中国の言いたいことは、こうだ。・・・「お前の番だ。」

変動レート制を受け入れたのだから、不均衡の責任はアメリカにあるのだ。不況を回避するために債務を膨張させておいて、中国がドル資産を買い続けていることを責めるというのか?

世界的なリフレ政策にとって、中国の人民元高や賃金上昇は重要だ。中国の安価で従順な労働力は枯渇するだろう。中国の転換は、アメリカの政治家が脅迫するからではない。

「大恐慌の時の銀行規制を捨て、デリバティブの規制をあきらめたのは、クリントン政権だ。あらゆる金融規制を放棄して、兆富裕層への減税や、ポイントの外れたイラク戦争にクレジット・カードで支払ったのは、ジョージ・W・ブッシュ大統領だ。」

「中国は、アメリカ人が支払う力もない家を買えと命令しなかった。ウォール街の競争に勝つため銀行にレバレッジを求めなかった。アメリカに世界中の市場を財務省証券で満たすように頼まなかった。アメリカ人を金融危機から守る改革に反対していない。」

ところが、アメリカの政治家は中国を政治のカモにする。しかし、2年前の危機は世界経済の周辺から起きたのではない。その中心部で起きたのだ。アメリカ、ユーロ圏、日本、イギリスが市場を脅かした。そして、次の日本になることを恐れている。そして、新興市場が浮上すれば、自分たちも含めて世界は回復する、と言う。

FT June 21 2010

We need more from China than a flexible renminbi

By George Magnus

人民元の弾力性を増すことで、問題がなくなるわけではない。1.債権国として、中国は世界の不均衡を解消する責任がある。1920年代のアメリカ、1980年代の日本と同じように。2.中国が(人口・都市・社会保障などの政策で)貯蓄過剰を続けている限り、不均衡は解消しない。3.余りにも安価な資本、過剰融資、低金利、は人民元の為替レートを過小評価させているが、インフレの種をまいている。

WSJ JUNE 21, 2010

Yuan Day Later

中国の人民元で投機できなくても、それにつれて増価しそうなアジアの小国が狙われる。中国の不透明な「弾力性」は、アジアを「ドル圏」から離脱させるけれど、もっと不安定な、投機的資本移動の時代へ向かわせる。

WSJ JUNE 21, 2010

Chinomics: The Hidden Cost of China's Moral Hazard

By VICTOR SHIH

中国には西側のような金融危機が起きていないから、その金融システムは優れている、と思うかもしれない。しかし、中国もモラル・ハザードに関しては同じである。銀行や企業は、いざとなれば政府が救済するという前提で、他人のカネを使って博打に励んでいる。政府が早急にこの問題を解決しなければ、深刻な金融困難に直面する。

FP Monday, June 21, 2010

To gloat or not to gloat?

Posted By Phil Levy

FT June 22 2010

Destabilisation fears back to haunt China

By Robert Cookson in Hong Kong and Peter Garnham in London

中国政府は、流入する投機的な資本を警戒しなければならないでしょうか? これは20055月から20087月に人民元が増加した際に起きたことです。中国の外貨準備が急増しました。その反省から、今回は変動幅を両方向に動かし、投機家に損失が生じることを警告します。

今はレバレッジが使えないことや、中国経済自身が過熱する時期を終わった、という事情も、資本流入を抑えます。ある意味では、上海の株価下落を資本流入で回復させたいのです。

他方、世界景気が回復に失敗すれば、人民元はむしろ減価するかもしれません。それは、資本流出の不安にもつながります。資本移動を抑制する方が、インフレよりも困難です。

FT June 22 2010

Lessons from the 1930s for a rising renminbi

By Benn Steil

「銀生産業者と銀行バッシング派、インフレ推進派が同盟して、激しい政治圧力をかけた結果、1934年の銀購入法は成立した。それはアメリカ財務省に、銀を購入して銀価格を引き上げる義務を課した。それは、銀に固定した通貨と、国内に銀生産がなくても、長く国庫を銀で賄ってきた中国にとって、大きな災難であった。中国の銀備蓄は密輸によって流出し、海外で売られた。そして中国の通貨供給は減少し、デフレが生じ、信用の圧縮と不況が起きた。

蒋介石政府はアメリカに政策変更を訴えた。銀購入法に頭を痛めていたH・モーデンソー財務長官は同情したが、(議会と)政治的な交渉をする力はなかった。

193510月、中国のAlfred Sze大使は、中国が銀本位を放棄し、世界市場で銀価格を下げるため、銀の準備をアメリカに売ると提案した。財務長官の主任経済顧問であったハリー・デクスター・ホワイトはこの考えを支持したが、中国とアメリカが元・ドル固定レート制を約束する、という条件を加えた。

これは、もちろん、現在、米中間で起きている金融状況を逆にしたものだ。しかし、その目的は同じ、ドル安、である。1930年代、中国は貿易の多くをポンド・スターリングで行っていた。ポンドがドルに対して下落するにつれ、元も下落した。元をドルに固定することは、強い元を意味し、アメリカの輸出に競争力を与えた。」

Benn Steilは、当時の米中協議がポンドからドルを中心とした国際通貨秩序への転換を意味していた、と紹介します。各国は、安定した、しかも競争力を維持できる水準の、為替レートを交渉します。変動レート制ではなく。現在のアメリカ議会は、変動レートになれば十分な人民元レートの調整を実現できる、と思うようです。

WSJ JUNE 22, 2010

Chinomics: China Adopts Hong Kong's Land Model

By CATHY HOLCOMBE

香港とシンガポールの土地政策について。明らかに希少な土地(そして、そこで成長を維持する条件)をバブルによって破壊しないように、その住民の多くは公共住宅に住んでいます。

WSJ JUNE 23, 2010

Chinomics: Yes, China Does Need That Infrastructure

By NICHOLAS LARDY

中国の内需刺激策として銀行融資が倍増したことを批判する論者は、それが不良債権となって銀行システムの資産を損ない、多額の公的資金を投入することになる、と主張します。NICHOLAS LARDYは、その証拠はない、と反対意見です。

融資は製鉄などの旧生産設備に過剰投資されたのではなく、輸送など、必要なインフラ投資(たとえば、高速鉄道の建設)に向けられた。また、その投資は成長を実現して税収をもたらし、あるいは、使用料を徴収できるだろう。それゆえ、世界不況対策として効率的・合理的であったし、将来の負担になるわけでもない、と考えます。

NYT June 23, 2010

As the Renminbi Goes ...

WSJ JUNE 24, 2010

Chinomics: China Can Urbanize Its Way to Prosperity

By STEPHEN GREEN

将来の中国の成長は、輸出ではなく、国内消費によって実現しなければならない。しかし、その移行には、都市化を進めることが重要である。

中国の人口のまだ半分しか都市に住んでいない。しかし、都市化には多くのメリットがある。教育や医療などのサービスを受けやすい。より多くの若い労働者が、農場より事務所で、創造的かつ生産的に働ける。所得が上昇し、娯楽やショッピング、旅行に多く支出する。たとえば、エアコンと冷蔵庫の普及率は、都市ならどちらも100%であるが、農村では8%30%でしかない。

中国政府は都市への移住を抑制している。その結果、約2億人が故郷を離れて暮らしていながら、十分な住宅もなく、公共サービスも受けられない。

今後10年間で、人間的かつ生産的な形の都市化を進める戦略が重要だ。そのためには、1.移住者の住める賃貸の公共住宅を提供する。2.都市の公共サービスを移住者にも開放する。3.地方政府の官僚に、インフラや産業投資ではなく、もっと医療や教育のサービスを提供するようなインセンティブを与える。

現在は、その費用を得るために地方政府の住宅開発と販売が富裕層に対して行われるばかりで、出稼ぎ労働者のためには住宅が供給されていない。用地の利用が難しいなら、都市周辺部を合法的に開発すればよい。また、出稼ぎ労働者が都市部に定住しても、その子供たちに教育の機会が奪われている。それはより高度な経済発展に向けて問題を生じる。

そのような都市化に費用がかかるなら、不動産の価値に対して課税するべきだ。地方政府が、出稼ぎ労働者も含む、住民に対する公共サービスを改善するために税収を使用するのであれば、住民たちは富を奪われたと反発しないだろう。そのため、地方政府は財政についての情報を公開し、無駄をなくし、過剰なスタッフを削減しなければならない。


2.金融危機後、G20は世界経済の何を議論しているのか?

NYT June 17, 2010

That ’30s Feeling

By PAUL KRUGMAN

財政刺激策から緊縮策への転換は間違っている。現在の論調は、1937年のF.D.ルーズベルトによる時期尚早の財政再建、1930-32年のブリューニング首相による健全財政主義とワイマール共和国の崩壊、を思い出させる。

EUが800億ユーロの財政引き締めを行う合理的な理由は何もない。経済は今もその生産能力を下回った水準でしか機能していない。ドイツの赤字削減強硬派と話すとき、まるで2002年のイラク戦争強硬派と話しているような気がする。

アメリカの赤字削減論は富裕層への減税を止めることだ。しかし、ドイツの赤字削減論は、もっと道徳的で気持ちの問題だ。その代価は、ドイツ人に限らず、ユーロ圏が負うことになる。そして、ユーロ安によって、アメリカを含む世界が負わされる。

しかし、ドイツの政治家たちは苦しい引き締め策を求めることで強さを示そうとする。

SPIEGEL ONLINE 06/18/2010

Reforming the Markets

Setbacks for Merkel at the European Union Summit

By Carsten Volkery

EUの金融市場改革案を合意して、G20のアメリカや中国に対する要求を明確にしたいわけですが、メルケル首相はEUの合意を形成できません。

財政規律を重視し、安定化協定を強化することにほぼ合意しました。しかし、細部はファン・ロン・パイ大統領の委員会が秋までに提案します。これはEUをよりドイツ国民が受け入れやすくなるように改革することであり、「ドイツ化」と呼ばれています。財政の透明性を高めて、監視を強めます。

しかし、メルケルが独仏で求めた銀行課税や世界金融取引税への合意形成には失敗しました。イギリスが、チェコやスウェーデンと組んで反対したのです。ただし、双方とも対立・分裂を示したくないので、実施のための「調査」を行う、という形で合意を強調しています。差rに、この問題ではG20 でも、カナダ、日本、オーストラリア、ブラジル、中国が反対しています。

他方、メルケルにとっては、ドイツが財政規律を回復するために提案した再建策に増税として予定されています。EUの「経済政府」を構築するという目標からは遠いようですが、G20ですから、メルケル首相は疲れた顔もしておれないのでしょう。

WP Friday, June 18, 2010; A28

How both the U.S. and European economic models fell short

アメリカ型の「自由市場資本主義」は失敗し、ヨーロッパ的な「社会市場」が優れている、という意見はどうなったのか? 債務危機を抑え、景気回復を進めているのはアメリカであって、ヨーロッパではない。ヨーロッパの財政危機はユーロ不安まで強めている。むしろ今では、ヨーロッパの経済モデルは死んだ、と聞くのも当たり前です。

どちらもそれほど異なるわけではない。一方には、成長や効率性を求めるインセンティブが与えられねばならず、他方で資本主義の弊害を緩和する手段も必要だ。アメリカは緩やかな金融規制でヨーロッパよりも高い成長を実現してきたが、それが金融危機を準備したかもしれない。ヨーロッパは成長を犠牲にしても、安定した雇用と国民保険、長期の休暇を守っている。

オバマが就任演説で述べたように、政府の大小ではなく、その賢明な、効果的な、政策が求められる。フランス人の退職年齢も、スペイン人の雇用保護も、アメリカ人の偏った個人資産も、長期的に見て、政府が改善しなければならない。

NYT June 20, 2010

Now and Later

By PAUL KRUGMAN

長期的に見て、アメリカは財政再建が必要になる。しかし、今は赤字を減らしてはいけない。アメリカ経済をデフレと不況に陥らせるだけだ。

アメリカの財政赤字が増えたのは、不況で金融機関の救済が必要になったうえに、歳入が大きく減ったせいだ。経済危機を脱すれば状況は改善する。しかし、特に医療保険制度のコストがかさみ、予算局の推定では2014年から赤字が増えるだろう。だから、長期的に見て、健康保険のコストを抑制し、増税と政府支出の削減が必要だ。

しかし、今はすべきではない。アメリカ経済は不況にあり、高水準の失業が続いている。このまま放置すれば彼らは長期の失業によって職場に戻れず、社会の恒久的な下層になるだろう。また、多くの若者が卒業しても仕事がない。次第に、日本型のデフレの罠に向かっている。だから政府は赤字を増やして支出を続け、景気が回復してから貯蓄するのだ。

財政引き締めに転換する時期は、金融政策の効果が回復して、その効果を相殺できるほどになったときだ。今は、金利がゼロに近く、金融政策がこれ以上緩和できない。その時期は2年以上先である。

億万長者に減税して、何の刺激にもならないまま財政赤字を増やしている政治家たちが、熱心に財政再建を主張する。

SPIEGEL ONLINE 06/21/2010

Trans-Atlantic Turbulence

Nobel Economist Krugman Slams German Austerity

ドイツの財政引き締めにも、ECBの新総裁にAxel Weberが就くことにも、反対します。ユーロ圏にドミノ効果が生じる危険がある、と。ギリシャは引き締め政策と救済融資で良かったが、スペインはだめだ。

June 22 (Bloomberg)

Krugman Says Prices Subdued, Labor Market Struggling

By Timothy R. Homan

SPIEGEL ONLINE 06/22/2010

G-20 Summit

Five Ways to Tame the Financial Market Monster

By Dietmar Hawranek, Alexander Jung, Christoph Pauly, Christian Reiermann and Thomas Schulz

カナダのトロントで開催されるG20は金融市場の支配権を取り戻す最後のチャンスだろう。しかし、改革への合意は達成されそうにない。銀行家たちは、将来の雇用を失うと言って、金融の規制強化を牽制する。

サルコジ大統領は述べた。「多くの金が生産ではなく投機によって得られるようなシステムに、われわれは生きたいと思わない。」 またメルケル首相も述べました。「すべての金融商品、市場参加者、金融センターが、将来は規制されなければならない、と、難局においてわれわれは決断した。・・・それはわれわれが国民に対して約束したことだ。守らねばならない約束だ。」

事態は危機前に戻りつつある。投機による儲けは銀行が得て、リスクは政府(国民)が負う。金融モンスターを買いならず5つの戒律がある。

1.銀行を支配せよ。・・・通常の商業銀行と、それ以外の証券を扱う投資銀行を区別する。

2.自己資本を増やせ。3.金融商品の質を支配せよ。4.ヘッジファンドを監視せよ。5.格付け会社を支配せよ。

しかし、主要国の利害は一致せず、G20で合意が成立する見込みはありません。改革のために合意が成立するとしたら、その前に、もっと大きな危機が必要です。

FT June 22 2010

Why it is right for central banks to keep printing

By Martin Wolf

財政再建のためには、ローマの警句を忘れないように。「ゆっくりと急げ。」

Alberto Alesina and Silvia Ardagnaの研究は、財政引き締めが景気回復に役立つ可能性を示したそうです。財政赤字が減るという期待で、消費や債権投資が増え、金利が低下するからです。財政再建は、労働力や資本の供給を増やし、企業家精神を刺激します。特に増税よりも支出削減による場合、不況をもたらすより景気回復を可能にする、とイギリスの新政権は励まされたわけです。

しかし、財政政策の効果は条件次第だ、とMartin Wolfは批判します。たとえば、小国が刺激策をよるのか、大国か? 金融部門は健全か、あるいは資産が傷ついているか? 民間部門の債務依存は少ないか? 金利水準は高いか、あるいはゼロに近いか? 外国からの需要は活発か、あるいは弱まっているか? 実質為替レートが急速に減価するか、あるいは固定されているか? こうした条件の違いによって結果は異なる。

現在、世界経済の半分から60%が金融部門の弱さによって損なわれている。世界で最も成長している中国経済は重商主義的な政策を採っている。金利はゼロに近く、家計や企業は融資を受けるより債務圧縮に苦しんでいる。つまり、財政引き締めが景気を刺激するとは思えない。外需や為替レートもそれを支持しない。

財政再建論者は不満だろう。赤字を増やすだけでよいのか? そのうち金利が上昇して、債務が累積し始める!

これに対するMartin Wolfの返答は二つです。1.民間部門の債務圧縮による金融機関の資金が国債購入に向かう。2.民間部門が傷ついているなら、政府は中央銀行から借りてもよい。不換紙幣で変動レート制を採る国なら、金融市場を乱すことなく、実物経済を安定化できる、と。

紙幣を増刷して政府の赤字を埋める、ロバート・ムガベの経済学ではないか? 景気が回復すれば、金融緩和は逆転し、財政も黒字化する。銀行に溜まる資金は、短期間、準備率を変更して吸収すればよい。通貨供給は民間需要によって決まるようになる。

June 23 (Bloomberg)

Free-Money Tsunami Provokes Rush to Control Cash

William Pesek

韓国が注目を集めたのは、北朝鮮の軍事挑発でも、ワールド・カップの結果でもなく、資本規制を発表したからです。国際金融市場の不安定性を強める、と非難するなら、韓国ではなく、バーナンキや白川、トリシェを責めるべきです。

国際金融センターが空前の金融緩和を続けるなら、韓国のように、開放型の成長経済を実現した独自通貨に資金が大規模に流入する懸念が当然に強まるのです。インドネシア、インド、パキスタン、・・・台湾、ブラジル、コロンビア、ロシアだけでなく、中国も考えるでしょう。

「中央銀行の独立性という時代は過ぎ去った。アメリカ連銀が金利を上げるなどと考えられるだろうか? そんなことをすれば、議会のSWATチームにバーナンキを狙撃させる。ギリシャの国債がジャンクになり、スペインもその瀬戸際であるとき、トリシェが金融引き締めを行えるだろうか? そんなことをすれば、国連がユーロ圏救済に乗り出すだろう。」

guardian.co.uk, Wednesday 23 June 2010

Listen to these financial Wizards of Oz and prepare for another disaster

Timothy Garton Ash

債券市場であっても、言われるほど、全知全能ではない。かつては、説明するより、誰もが市場にひざまずいたものだ。

市場関係者と話してみると、オズの魔法使いたちが示す傲慢さは印象的だった。彼らは投機家であり、役者である。ソロスが述べたように、市場は現実を反映しているだけでなく、現実に反映されるのだ。市場の不安が、むしろ現実を怯えさせる。

債券市場の関係者が感じているのは、彼らが雪崩が起きるのを待つスキーヤーたちだ、ということだ。一つでも政府のデフォルトが起きれば、それは連鎖反応を引き起こし、さらに多くのデフォルトと、国債を大量に保有する銀行の破綻につながるだろう。

雪崩を恐れるということは、その前に雪が積もったことを意味する。政府も企業も大量に債券を発行したし、私もあなたもそれを買った。私たちは消費者や有権者でもある。債券の山は余りにも高くなって、私たちは不安を抱えて、不況や政治不安を強めている。

ところが、市場アナリストにその原因を聞けば、答えは余りにも明白だ。二つのD ・・・債務と人口の高齢化。それなのに、最近まで債券市場は平気で債務を引き受けてきた。政府はほとんどリスクなしに債務を増やせたのだ。市場は致命的な近視眼である、と言えるだろう。

逆に、政府はそれを規制によって解決できるのか? 雪崩を待つスキーヤーたちの集団行動を促し、債券市場参加者の近視を矯正できるのか? 市場は大国の行動を待っている。・・・しかし、ユーロ危機をEUが解決できないように、G20が何かできるだろうか?

WSJ JUNE 23, 2010

Our Agenda for the G-20

By TIMOTHY GEITHNER And LAWRENCE SUMMERS

ガイトナーとサマーズがアメリカ政府のG20に臨む姿勢を示しました。EUや中国との協調を何によって示すか、ということです。

危機を回避し、景気回復を導いた、と成果を示した上で、内外の均衡を重視します。すなわち、財政赤字と国際収支不均衡です。

第一に、EUやアメリカ国内の財政赤字削減論について、債務のGDP比率を安定化する信頼できる計画を示すこと、財政再建のペースを各国にふさわしいものとして景気回復を妨げないこと、を求めています。また、新興経済は成長を持続し、変動レート制を採るように求めます。

第二に、金融規制に関する世界的な合意についてです。アメリカはレバレッジを減らし、自己資本を増やすような、国際合意を求めています。EUの中でも対立のある銀行家税などは、全く言及していません。

第三に、エネルギー問題です。原油流出事故に対するアメリカ国内の不満を受けて、他のもろもろの関心を重ねる分野です。発展途上諸国の生活水準を引き上げ、化石燃料への依存から脱する、という目標を掲げます。

June 25 (Bloomberg)

Ten Signs There’s No Adult in This Economic Room

William Pesek

オーストラリアのケヴィン・ラッド首相の辞任は突然であり、指導力の問題を再認識させました。G20が直面する問題もそれに似ています。William Pesekはリスト・アップしています。

1.大胆に長期の計画を示し、有権者を説得する。2.債務累積。3.ブームと破綻の循環。4.救済融資。5.ゼロ金利の終わり。6.所得ギャップ。7.高齢化。8.石油依存。9.中国。10.近視眼。


3.ユーロ危機を超えて

FT June 21 2010

Europe is having a midlife crisis

By Gideon Rachman

FT June 22 2010

Towards a system to secure the euro

By Jean Pisani-Ferry

ユーロ圏のガバナンスを完全しなければなりません。財政危機からユーロ危機をめぐって、三つの主要な問題が提起されました。1.財政規律、2.競争力、3.危機管理。

財政危機は、黒字から赤字への変化とともに、一気に生じました。ストレス・テストと各国の財政制度に応じた定義が必要です。不均衡や競争力の評価も、機械的に行うのは問題があります。危機管理がそうであったように、EUIMFによる安定化基金の設立を超えて、ユーロ圏のガバナンスを確立する必要があるでしょう。

ユーロ圏の住民に対して、道義的な権威を確立することで、真実を報告し、彼らが真実に耳を傾けるガバナンスが得られるのです。

FT June 23 2010

Maligned Germany is right to cut spending

By Wolfgang Schäuble

ドイツの蔵相が自国の姿勢と政策を正当化しています。

ヨーロッパにとって、多くの国の財政赤字が問題だ、ということだ。だから、ドイツの財政再建が間違っているとか、近隣諸国を損なう、とは全く考えない。

2008-09年の経済危機に際しても、ドイツは完全に正しい政策対応を示した。それは自動的な財政的安定化が働く制度をもっている上に、十分な刺激策を採ったからだ。財政的な安定化の制度をもたない国(アメリカ!)がドイツを非難する声に同調しても、全く愚かなことである。

政府が財政刺激策に永久に頼るのは間違っており、出口戦略が必要だ。ドイツの示した計画は穏健で、慎重なものだ。

アメリカの関係者は短期的な刺激を重視する。しかし、ドイツでは、政府も消費者も長期的な政策を重視し、インフレを心配する。これは前世紀において双方の歴史が、ドイツはインフレに苦しんだが、アメリカはデフレに苦しんだからである。ドイツでは、政府が財政赤字を削る能力を示すことが、均衡のとれた持続的な成長の条件なのである。また、ドイツはアメリカと違って、国民が高齢化し、減少している。将来世代が債務を負担することは困難だ。

たとえ財政を引き締めねばならないときでも、われわれは賢明な方法で長期的な成長を促すだろう。すなわち、増税を避け、政府支出を削りつつ、教育や研究開発などに投資を集中させる。

ドイツがユーロ圏や世界経済の回復に果たす役割は、財政赤字を増やすことではなく、安定性のアンカーとなることだ。

SPIEGEL ONLINE 06/24/2010

The Party's Over

Zapatero Tries to Cure Spain's Economic Hangover

FT June 24 2010

Germany must reflect on the unthinkable

By George Soros

同様に、George Sorosはドイツがユーロ圏のガバナンスを引き受けなかったことを強調します。ドイツの主導的な役割を前提に設計されたユーロ圏は、もはや、機能しません。

「ドイツは次の思考実験をしてみるべきだ。・・・ドイツがユーロ圏を離脱する。(その結果)再生したドイツ・マルクは急速に増価し、ユーロは急落するだろう。他のヨーロッパは競争力を改善し、苦境を脱して成長するのに比べて、ドイツは過大評価された通貨を維持することの激しい痛みに気づく。ドイツの貿易収支は赤字に転じ、大量の失業が発生する。銀行(の資産)は為替で巨額の損失を出し、公的資金を投入することになる。しかし、ドイツ政府はギリシャやスペインを救済するより、ドイツの銀行を救済する方が、政治的にはるかに受け入れやすいだろう。もう一つの慰めは、ドイツの引退した年金生活者がスペインに引っ越して、王族のような暮らしができることだ。それはスペインの不動産価格を回復するのにも役立つだろう。」


4.ワールド・カップのブブゼラ

NYT June 17, 2010

Freedom’s Blaring Horn

By ROGER COHEN

「この国で、水洗トイレのある家は60%にすぎない。推定600万人がH.I.V.に感染している。失業率は25%に達し、殺人事件の多さを示す高い壁があり、30万人の私設警備員がいる。」

ROGER COHENの遠い親戚であるエコノミストは語りました。・・・「私は断じて恐れていない。それは南アフリカの奇跡である。私は通りで、黒人にあいさつする。彼も親しく私に挨拶する。私は強盗に遭って殺されるかもしれない。しかし、それは私が白人だからではなく、彼らが私を憎んでいるからでもない。彼らが貧しいからだ。私は愛国者なのだ。私はこの国の美しさを愛する。ワールド・カップがもたらした統一と善意を信じる。われわれは成功すると確信している。」

guardian.co.uk, Monday 21 June 2010

Football isn't just about capitalism

Dave Zirin

フットボールが社会に及ぼす積極的な側面をT.イーグルトンは無視している、と批判します。「スポーツは、要するに、ハンマーのようなものだ。誰かの頭を割ることもできるし、素晴らしいものを作ることもできる。使い方次第だ。野蛮で、醜いものになる。しかし、われわれを仲間にし、健康、喜び、楽しみ、もちろん、衝撃的な興奮をもたらす、信じがたいほどの力がある。」

WP Tuesday, June 22, 2010; A19

Nations are abuzz over what to do about vuvuzelas

By Anne Applebaum

ブブゼラを観て、世界を理解する。・・・あの騒音を非難するべきか? アメリカ人は外国の神秘的な文化を実際的に理解し、ドイツ人は法律で禁止するべきだと考える。フランス人は美学を論じ、韓国人はエチケットを求める。南アフリカにも自制を求める文化はないのだろうか? 他方、北朝鮮は国民に何も伝えない。イギリスのタブロイド紙は聞こえないし話せない、喉が裂けたと非難する。他方、スーパーマーケットでは売り切れで、ブブゼラの追加注文を急ぐ。イギリスのフットボールに登場するのは確実だ。・・・

ブブゼラの侵略は南アフリカから起きるのではない。もちろん。国によっては、ブブゼラが問題なのではなく、機会である。騒音に不平を並べるより、あるいは、アルゼンチンのように敗因に挙げるより、中国人は狂ったように騒音製造機を生産してきた。すでに100万台のブブゼラが中国南部から南アフリカに船積みされたが、それ以上のブブゼラが世界中に送り出された。


WP Sunday, June 20, 2010; B03

In Britain's exhausting Boer War, a parallel for Afghanistan

FT June 20 2010

Why the Afghan end-game is so hard to play

By Richard Barrett

WP Thursday, June 24, 2010; A21

America needs an Afghan strategy, not an alibi

By Henry A. Kissinger


FP JUNE 18, 2010

Strike Out

BY JEFFREY WASSERSTROM


WP Monday, June 21, 2010; A17

The fantasy of an Iranian revolution

By Fareed Zakaria


WSJ JUNE 23, 2010

Holding Iceland Hostage


SPIEGEL ONLINE 06/24/2010

Interview with Former German Defense Minister

Germany Should 'Put in Motion' European Armed Forces

Rudolf Scharping


NYT June 23, 2010

The Derivatives Endgame

WSJ JUNE 24, 2010

A Missed Opportunity on Financial Reform

By ARTHUR LEVITT

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The Economist June 12th 2010

Myths about fiscal austerity: A cut too far?

Charlemagne: A model of mistrust

Budget cuts in the euro area: Nip and tuck

Buttonwood: When markets go wrong

(コメント) 富裕諸国・先進工業諸国・第一世界・西側・自由主義諸国の政策転換が議論されています。不況期に財政赤字削減は必要なのか? 不況を悪化させるだけか? 公共投資を削るのか? 社会福祉にメスを入れるのか? 公務員を解雇するのか?

ユーロ圏が大き過ぎるから改革できないのか? しかし、ベルギーでも財政赤字は国家を分裂させます。他方で、債券市場の判断が正しいとは限りません。


The Economist June 12th 2010

Asian security co-operation: Lost horizon

Rethinking the “third world”: Seeing the world differently

Agricultural Bank of China: Listing or capsizing

Economics focus: Socialist workers

(コメント) アジアや新興市場についての考察です。いよいよ「第三世界」という呼び名は消すべきか? まだまだ多くの貧困・飢餓がある。共通の安全保障と、投資の保証・所有権があれば、どこでも労働力が枯渇するまで急速に成長できるはずです。

中国の巨大銀行が株式を上場します。それを市場はどのように評価するのでしょうか?


The Economist June 12th 2010

What’s wrong with America’s right

Security in Brazil: A magic moment for the city of God

Europe’s tech entrepreneurs: Blooming

Banking on the mobile phones: Out of thin air

(コメント) アメリカの保守派は多数派を形成する政策の核心を見失っています。極端な右派の主張に流されてはいけません。他方、ブラジルでは、いよいよ所得の上昇と治安回復が好循環を動かして、一層の投資や安定性、貧困地区の解消をもたらすかもしれません。

携帯電話で決済や融資を行えることがアフリカのビジネスを爆発させる可能性があります。