IPEの果樹園2010

今週のReview

6/21-/26

 

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IPEの想像力 6/21/10

ワールド・カップのニュースがやたらに多くて、ファンは嬉しいのでしょうが、私はうんざりです。

ご飯かパンか、という食糧の世界分割のように、野球かサッカー(フットボール)か、というスポーツ資本の世界再分割が始まった? ・・・相撲かボクシングか? テニスかゴルフか? 柔道か太極拳か? 富と権力をめぐる争いです。

有権者の関心が、普天間基地や郵政民営化、消費税引き上げより、ワールド・カップに向かっている今は、ヨーロッパが安定化基金で債務危機の猶予を得たような、政治的空白期間です。この間に次の政策(そして戦略をもったチーム)を準備しなければなりません。

人民元レートの変動を容認するという発表は、ワールド・カップや上海万博(さらに、BPの原油流出)に世界の関心が分散することを期待した? ・・・のではないでしょう。しかしG20での外交交渉は計算したはずです。いくつかの論説から背景を考えてみます。

l         20の前に、人民元レートの切り上げを求める外国からの圧力に屈するのではない形で、中国の姿勢を示した。

l         アメリカだけでなく、インドやブラジルも、人民元の増価を求めた。G20で孤立する恐れがあった。

l         世界経済のバランス回復のためには、黒字諸国の通貨の増価が望ましい。アメリカの赤字を世界が融資する形で成長を続けた過去のパターンには戻れない。

l         中国のインフレ率が、目標とした3%を超えて3.1%に達した、という発表の後だった。ドル・ペッグのまま効果的な金融引き締め策は取れない。

l         ギリシャ財政危機から、ユーロ安が進んだ。アメリカの考える調整過程(輸出を促すドル安)がますます困難になった。

l         アメリカ議会に強い不満(米中間の貿易不均衡と、それを許すオバマ政権に対して)がある。ユーロ安も加わって、事実上の「競争的切り下げ」が始まっている、と懸念された。

l         ユーロ安は、バスケット通貨による安定化(そして資産分散)の好機である。人民元レートの増価は緩和されるだろう。

l         中国内部の政策論争。人民銀行はインフレの加速(さらに、住宅バブル)を懸念していた。他方、通商部(そして、中央や地方のエリート)は輸出企業の収益悪化(さらに、株価下落)につながる増価を嫌っていた。

l         中国国内には、外貨(おもにドル)準備の目減り、ドル安(そして、金融危機を引き起こしたドル体制)への批判がある。

為替レートの変動を受け入れた、ということは、市場の圧力に応じた国内経済の調整過程を進める、という政治的な関与を中国が示したわけです。国際収支不均衡は、当然、さまざまな撹乱要因と、それに反応する各国の政治経済構造を反映しています。しかし何より、国際的な相互依存が強まる中で各国の政治目標や経済政策がぶつかった、意図しない結果でしょう。

今回、中国が示した制度は、ただちに、「調整が不十分だ」という批判を浴びるはずです。さらに、漸進的な調整では「一方的な投機」に弱い、という欠陥を避けられないと思います。論争の過程で、中国が「変動レート制への円滑な移行」を目指して資本流出を促し、資本取引のタイプによって一定の条件で自由化していくことが考えられます。

為替レートは、不均衡に影響する一つのルートであり、市場のシグナルですが、それが変化するだけで調整が円滑に進むことはないでしょう。どのような為替レート制度が望ましいか、為替レートの水準も含めて各国は選択します。しかし、それが影響する貿易や投資は、多くの要因によって変動し、目標とする水準から隔たります。

中国からの海外投資(そして、中国への投資)に関する摩擦、中国企業・投資機関が他国で企業や鉱山、技術、農耕地の利用権、住宅・不動産や国民的なシンボル、などを買収することへの政治的反発は、すでに起きています。それを制度的に調整する過程として、貿易摩擦や通貨摩擦のせまい論争を抜け出し、政治経済の構造を築くことも可能なはずです。・・・それは、日米間でも試みてきたことです。

優れた選手たちが試合で見せる奇跡的なパスと、その連続した、何重にも走りこむ攻撃パターンに、私は感銘を受けます。中国が参加した変動レート制の国際通貨交渉の決勝トーナメントに、日本チームも積極的な関与を示せるでしょうか?

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1.人民元の為替レートと中国人労働者の賃金をめぐる調整問題

2.原油流出事故のもたらす新しい政治対話

3.ヨーロッパ財政危機下の政治情勢

4.ワールド・カップは何をもたらすのか?

5.金融システム改革の論争

6.日本の債務危機は回避できる。

・・・アフガニスタン ・・・オーストラリア ・・・韓国 ・・・デフレ対策 ・・・タスマニア

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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


1.人民元の為替レートと中国人労働者の賃金をめぐる調整問題

FT June 10 2010

China can let the renminbi depreciate

By Yukon Huang

人民元の切り上げ要求を受け入れる必要はない。ユーロの価値が急落して、すでに人民元は増価している。中国にとって重要なのは変動レートへの移行を円滑に行うことで、切上げではない。そして、ユーロ急落は、むしろ、人民元の減価をしながら変動レートへの移行を実現するチャンスなのである。

人民元を徐々に増価させることは、資本流入を激しくして、住宅バブルをさらに強める危険がある。中国が2005年から2008年の世界金融危機前まで実行した変動レート制は、年間6〜7%の変動幅内で増価を続けた。主要国間の金利差を考慮して、それ以上の変動幅は好ましくない資本移動を促すだろう。

将来の人民元レートを予想するとき、大幅な増価がなくても、すでに中国のインフレ率や不動産価格上昇によるコスト増、中国南部における賃上げ要求が示すように、競争力は失われていく。特に、農村からの出稼ぎ労働者が少なくなる傾向が重要だ。

変動レートに移行して資本移動が自由化されると、企業は中国からの海外投資を増やし、また、貯蓄は海外資産に慎重な分散投資を目指すだろう。それは「市場に依拠した」人民元の減価を促す。

FT June 10 2010

China: Strike force

By Tom Mitchell

2008-09年に、世界金融危機の影響で抑制されてきた賃金が、その後の景気刺激策で回復を目指しています。

ホンダの自動車部品工場を含む、広東省南部の向上に広がる労働争議について、考察しています。それは労働コストの上昇が最終価格の数%でしかないために価格上昇を意味しませんが、中国国内の供給体制に過度に依存しない注意を喚起するでしょう。企業からの賃金引き上げは、労働争議を終わらせるより、本格的な労働組合の誕生を促すでしょう。そしてインターネットのチャットなどで情報を得て、争議の連帯も可能です。ホンダは、中国のプロレタリアートが世界生産に与える最初の本格的な影響力を示した事件かもしれません。

FT June 11 2010

Why China’s pay unrest is healthy

世界中の消費者は、中国の賃金上昇によって、家電、衣類、おもちゃ、など、製品価格の引き上げを迫られるのか? それは不況を苦しむ消費者にとって受け入れがたいか? 中国における賃金引き上げは、むしろ、市場が機能する自然な結果である。企業や政府が労働争議を弾圧して、生産ラインが止まる方が、影響は深刻だろう。中国における生産性上昇やインフレを考慮すれば、賃金引き上げは必要だ。日本や韓国を追って、中国の労働者も上昇し始めた。

WSJ JUNE 14, 2010

The Yuan Thing That Matters

By IRWIN STELZER

WSJ JUNE 14, 2010

Shaking Up China's Labor Movement

By WILLY LAM

為替レートに弾力性を与えるより、賃金交渉に弾力性を与える決定の方が、中国政府の重大な決断であるでしょう。あるいは、このまま労働者の代表が集団交渉によって賃金や労働条件を改善できるかどうか、労働者の要求が限度を超えて社会的な騒乱に至るのではないか、また、政府の許容する範囲がどこまでか、懸念されています。

LAT June 16, 2010

China worker protests only natural

アメリカや日本と同様に、成長の分配を中国の労働者が求めるのは当然です。

WP Wednesday, June 16, 2010; A17

China's workers learn to speak up -- but carefully

By Harold Meyerson

労働者の国で労働者が争議に立ちあがった。何百、何千の工場が操業を停止するのか誰にも分からない。

中国の世界市場における売上増大は、労働者たちの「人為的な低賃金」によって実現されてきた。国家の支配する「組合」は労働者の自主的な組織化を許さず、輸出を伸ばすための低賃金を守ったのだ。

しかし、労働者たちは政治的な要求を掲げない。彼らは賃金を引き上げることで満足だ。政府も集団交渉を許している。アメリカにおいては、組合参加者は減り続けた。「中国の共産主義とアメリカの資本主義とは二つの異なるシステムである。しかし、どちらにおいても労働者の権利は危機にひんしている。」

FT June 17 2010

China warns G20 currency critics

By Geoff Dyer in Beijing

WSJ JUNE 17, 2010

No More Silver Bullets for Beijing

By BEN SIMPFENDORFER

2009年、96000億元の新規融資など、中国政府の需要刺激策は限界を超えている。不動産融資や公共投資を抑制する政策に転換した。輸出の伸びも続かない。しかも、インフレの高進は容易に収まりそうにない。中国経済を世界不況から切り離せた時期は終わっただろう。


2.原油流出事故のもたらす新しい政治対話

FT June 10 2010

Some home truths on oil for president

By Philip Stephens

「オバマはメキシコ湾の水底1マイルにおける原油流出を止めることはできない。しかし、選挙運動で彼が振りまいた文句を少しでも思い出すなら、彼にはできることがある。すなわち、原油流出と、気候変動と、持続可能な成長との、避けられない関係について新しい対話を始めるために、この大災害を利用することだ。」

FT June 11 2010

US must hit reset button with BP

BPを公衆の前で責めることが政府の最善の対策なのか? そのポピュリスト的で排外主義的な態度は事態の悪化をますます深刻な政治ショーにしている。犯罪者の名は“British Petroleum”・・・! 被害の推定額はますます増大し、BPの負担と株価下落は、石油・金融市場にも影響する。原因を究明し、BPを糾弾する時間はいくらでもあるはずだ。むしろ今は、沿岸における被害を抑え、その浄化に全力を尽くすべきである。

BPの資産の3分の1はアメリカにあり、何万人もがアメリカで雇用されている。アメリカでその地位を失えば、BPは破滅するだろう。政府に協力しない選択肢はないのだ。

The Observer, Sunday 13 June 2010

We must abandon oil before it's too late

David King

深海や極地まで石油採掘が及んでいる。たとえそのような油田が環境や社会に悪影響を及ぼさない技術を確立できても、石油が枯渇するよりも前に、石油供給は石油需要に追い付かなくなるだろう。特に輸送システムが止まる。

今後20年間で、IEAの予測では、中国やインドからの液体燃料(すなわち、石油)需要が増えるのに、石油供給は急減する。石油価格は急騰し、2015年までに、1バレルが100ドル、あるいは130ドルに達するだろう。

もちろん、産油諸国はますます豊かになるが、発展途上諸国は製造業や輸送に石油依存を高めているほど、その影響は破滅的だ。たとえばルワンダの野心的な成長政策は、GDP30%を石油代金に支払う結果になる。成長を石油から切り離さなければ、成果は残らない。

魔法の解決策はない。エネルギー効率を改善し、新しい燃料を探す。消費や居住のパターン、輸送システムや都市を改造する。それは炭素排出量を減らし、温暖化を抑えるだろう。

産油国に流れる無駄な投資を止め、もっと身近なエネルギーに転換することだ。

NYT June 11, 2010

The President’s Moment

NYT June 11, 2010

This Time Is Different

By THOMAS L. FRIEDMAN

ペンタゴンで働いていたころから友人であったMark Myklebyの記事にFRIEDMANは(以前からの自分の意見を重ねて)賛同します。

「・・・非難合戦になっている。・・・しかし、原油流出の責任は、BPや政府にあるのではなく、私にある。・・・なぜなら世界は私に対応を取るように示していたのだから。私はもっと将来のことを考えて、自分の生活を変えるべきだったのだ。1990年代に起きた地政学的、経済的、技術的変化がそれに失敗し、9・11のテロ攻撃もそれに失敗し、現在の経済危機もそれに失敗したが、多分、原油流出事故が私に、市民として、石油に依存した生活スタイルを改めさせるきっかけとなるだろう。」

左派は政府に規制を求め、右派は政府や税金を嫌う。・・・石油依存を止めるために、私たちが小型車に乗り、自転車で通勤し、庭に木を植える。われわれ市民が、問題を引き起こしたし、その解決をもたらす力も持っている。自分たちで管理できないものから、管理できるものへ転換することだ。

しかし、次のテロがいつ起きるかも、イスラエルやイランの行動も、北朝鮮の核も、EUの金融・財政危機も、私たちには管理できない。その影響から切り離されることもない。インターネットが広まったときから、この世界には壁も超大国も消滅してしまった。封じ込めることはできない。私たちの生活を問題の起きる世界に依存させない、という選択から逃げないことだ。

WP Tuesday, June 15, 2010; A15

The oil spill isn't Obama's Katrina

By Anne Applebaum

メキシコ湾の深海で吹き出す原油が、環境の大災害であり、経済的な大損害である。しかし、それについて大統領にできることは何もない。アメリカ政府には、原油流出を止める秘策など何もない。

この破局はハリケーン・カトリーナと何の関係もない。カトリーナは自然災害であった。そして、政府の対応のまずさにより、深刻な人災にしてしまった。原油流出は政府にとって災厄である。それだけだ。そのほかに何も言う必要はない。

では、なぜオバマ大統領は、まるで政府に何かできるかのように振る舞うのか? なぜ彼は「ケツを蹴り飛ばす」といった激しい言葉を吐くのか? 彼は、大統領には何かできるし、しなければならない、と考えている。

その理由の多くは(アメリカ政治の)「文化」である。オバマは、自分に管理できない危機についても、その指揮監督を強いられる。メディアも、超党派的な議会も、それを求めるからだ。アメリカ政治は、侵攻であれ、大規模な規制であれ、危機における政治家の強い対策を好む。党派の例外はない。至急、専門家を集めた会議で対策を示し、実行しなければならない、と主張する。

それはBPがやっていることだ。株主に迫られ、政府に責められて、BPは誰よりも解決を急ぐはずだ。逆に、BPを非難し、自分たちには優れた対策もないのに、「強い言葉を吐く」のは、政治的な弱さを示すことになる。

WP Tuesday, June 15, 2010; A15

We're losing the gulf war

By Eugene Robinson

NYT June 14, 2010

The Larger Struggle

By DAVID BROOKS

ここに示されているのは、民主的資本主義と国家資本主義との対立である。資本主義は経済システムとしての優秀さを示したが、この新しい対抗は必ずしも民主的資本主義の勝利に向かっていない。ロシア、中国、サウジアラビア、イラン、ヴェネズエラ、である。

国家資本主義の目的は、経済的利益や成長ではなく、政治体制や権力の維持である。その違いは、両者のエネルギー部門に明らかだ。前者のエクソン・モービル、BP、ロイヤルダッチシェルは、株主の利益を優先する。後者のガスプロム、ペトロブラス、サウジ・アラムコ、CNPCなどは特定の政治集団に利益をもたらす。彼らは政治的な支援を受けて、各地で民主的資本主義のエネルギー企業を打ち負かしている。

異なる資本主義システムは市場や投資を介して結びついているが、同時に競い合っている。どちらのシステムが成長や安全保障をもたらす上で優れているのか? どちらが優勢になるか、それによって世界秩序の性格も変化するだろう。

民主的資本主義に住む者は、国家資本主義の繁栄は続かない、と考える。革新的企業は自由な意見交換を必要とする。クローニズムが効率性を犠牲にすることは避けられない。

しかし、信頼の欠けた社会では国家資本主義だけが生存可能だろう。また、民主的資本主義にも弱さがある。高齢者や政治的特権層を脅かすことはできない。重大な破局に直面しても政治が両極分解している。国家資本主義は、ナショナリズムや安全への心理的訴えに優れている。

オバマは、BPとともに、この対抗関係を見なければならない。

FT June 14 2010

Love and loathing across the ocean

By Gideon Rachman

NYT June 15, 2010

From the Oval Office

FT June 15 2010

To save the gulf, free the Mississippi

By Douglas Brinkley

FT June 16 2010

Obama’s address fails to give a lead

guardian.co.uk, Thursday 17 June 2010

Lessons from 9/11 for the Gulf oil spill

Lila Nordstrom

The Guardian, Thursday 17 June 2010

BP and Barack Obama: Knee-deep in oil


3.ヨーロッパ財政危機下の政治情勢

guardian.co.uk, Friday 11 June 2010

Germany's mindset has become solipsistic

Jürgen Habermas

日々の政治に振り回されてヨーロッパの統一を見失ったドイツの政治家たちがナチスへの怨嗟を受け止める力をもつことはない。平和的な東西統一ですべて終わったかのような感覚は間違いだ。

SPIEGEL ONLINE 06/11/2010

New Face of the Netherlands

Mark Rutte Emerges as Likely Dutch Leader

By Emilie van Outeren

ワールド・カップの対戦相手として見るだけでなく、オランダで誕生する政府の性格にも関心をもつべきです。

150議席中の31議席を占めて第1党になったVVDの党首Mark Rutteは、選挙戦において一切姿を現さなかった、と言います。それは選挙の焦点をヒトではなく、政策に絞るためでした。まじめに働く労働者たちにとって、社会保障や道路建設、増税にどんな意味があるのか? 膨張する財政赤字をどうするのか? VVDのスローガンは、「侵略者たちに支払わせろ!」 「VVDとともに経済復興を!」 Mark Rutteは、増税なしに財政再建する、と約束しました。政府支出を大幅に削減する、と。

Times Online June 14, 2010

Where now for the crisis-hit European Left?

Bill Emmott

金融危機、失業者の増大、資本主義への批判、こうしたことは左派を強める、と考える者もいた。しかし、マルクスの時代と違って、大衆の多くは左派を「保守的」と見なしている。ヨーロッパの多くの国で、左派は選挙に敗北した。

実際、危機の救済に走った政府は、今や財政赤字に苦しみ、債務危機が起きている。中央銀行の影響は弱まらず、レーガン=サッチャーの時代が終わったとしても、財政赤字を放置する余裕はないだろう。組織された労働者はむしろ特権のために労働市場改革を拒み、失業者や移民労働者たちの敵である。国家主導の資本主義モデルがロシアや中国で成長を示しても、ヨーロッパの左派はソ連を嫌ったように、そのモデルに親しみを感じない。

もし左派がよみがえるとしたら、それは現代の発展した経済において敗者を助けるものでなければならない。資本主義システムの中で競争に敗れた者を助けるというのは、単に生存を許すだけでなく、その社会的移動や機会を高めることである。そのためには、左派がイデオロギー的に拒んできた二つのもの、市場と競争、を受け入れることだ。もちろん、それは全く規制のない市場や無際限な競争ではない。

既存の左派はそれを受け入れないかもしれないが、イタリアの南部(かかと)ですでに革新は起きている。Nichi Vendolaは、Pugliaの知事に2度当選したが、政府部門を縮小し、この土地から出て学ぶ若者たちへの奨学金を充実させ、環境保護へと転換した。

新しい左派は、市場、社会的移動性、環境保護、で戦うべきだろう。

WSJ JUNE 14, 2010

Deconstructing Belgium

guardian.co.uk, Monday 14 June 2010

Belgium will not fall apart because of separatist success

John Palmer

ベルギーの分裂、緩やかな解体が迫っています。連帯よりも、財源と赤字についての対立が深まることで、世界中の国にも広まるでしょうか。

SPIEGEL ONLINE 06/14/2010

Is Belgium Heading for a Breakup?

Separatists Win Big in Election

フランダースの失業率はわずか7%ですが、ワラニアとブラッセルは1721%に達しています。そして、フランダースの所得は25%も高いのです。その結果、この数年、彼らは同じ社会保障制度を維持することに不満でした。言語や選挙の分割も対立を強めました。

guardian.co.uk, Wednesday 16 June 2010

De Gaulle and Churchill have a message for Sarkozy and Cameron

Timothy Garton Ash

フランスのサルコジ大統領とイギリスのキャメロン首相が、かつてド・ゴールとチャーチルがナチス・ドイツへの抵抗運動を宣言した70周年の記念日に集まりました。現代の英仏関係を考えるとき、その偉大な二人の遺産(そして神話)は何を意味するのか?

二人の指導者は、不都合な事実を、勇気の沸き起こる神話によって脚色することが得意でした。二人は常に自分たちが神話を作っていることを意識していました。

他方で、問題は二つの国民が描いた神話の方向が異なっていることです。フランスがナチスに占領されたとき、チャーチルはイギリスの生存がフランンスではなく、アメリカとの関係に依存していると知りました。他方、ド・ゴールは、フランスの偉大さを取り戻すには、イギリスだけでなく、アメリカからも独立しなければならないし、そのためにはヨーロッパ大陸で同盟を見出すべきだ、と理解しました。

Dデイの直前、チャーチルはド・ゴールに述べました。イギリスは何度も、大陸と開かれた海との間で選択を迫られたが、常に海を選択した。ド・ゴールとルーズベルトとの間で選択を迫られたとき、常にルーズベルトを選択した、と。

ド・ゴールはこの言葉を決して忘れませんでした。彼はドイツと同盟を組み、イギリスのEEC加盟に反対したのです。こうした対立は、イラク戦争をめぐるブレアとシラクの間でも繰り返されました。キャメロンはどうするのか?

英仏の防衛協力を実現することから始めるべきだ。チャーチルとド・ゴール、二人が何をしたかではなく、今、何をするか、と尋ねるべきだ。

guardian.co.uk, Wednesday 16 June 2010

Europe is getting interesting again

John Hooper


4.ワールド・カップは何をもたらすのか?

guardian.co.uk, Friday 11 June 2010

Yes, the World Cup is about politics

Michael P Jeffries

ワールド・カップはもちろん政治問題です。政治家たちは国威高揚を歓迎します。あるいは、支配者や富裕層の「虚栄心」を満たします。国民の福祉など無視して。

政治・経済のパワーをもたない少数派にとって、スポーツは公共の分野において成功する限られた機会の一つです。バルセロナやシドニーなど、国家や都市にとって経済的な利益も主張されます。

非政治的なファンは、破滅でもユートピアでもない、ワールド・カップの中道の道を見ます。不正義や不平等が続いていることについて、私たちはゲームを楽しみつつも意識するでしょう。フットボールが終わっても、その眼を閉じてしまわないことです。

Times Online June 11, 2010

It’s a myth that big sporting events boost the economy

Stefan Szymanski

FIFAは大金を稼いでいる。試合から資金、33億ドルを集めて、それにかかる費用を支払わない。選手は政府やクラブから給与を得ており、FIFAは支払わない。スタジアムなどのインフラ建設は開催国が支払う。ほかにも多くの金がかかり、また観光客は推定で483000人(楽観的すぎるが)来る。

NYT June 14, 2010

When Kissinger Calls, It’s World Cup Time

By ROGER COHEN

Henry Kissingerはサッカー・ファンだ、と知りました。おそらく開催期間中、世界で最も多くの富と影響力を独占するゲームです。

そうであるからこそ、意外なことです。なぜアメリカ・チームは活躍していないのか? キッシンジャーは、「われわれは前進しつつある。ちょうど、世界的規模で国際情勢を管理しているように」と答えます。

J.P.サルトルがかつて述べたように、「フットボールでは相手チームの存在が複雑さをもたらす。」・・・外交や戦争と同じように、最も良くできた計画が、敵との最初の出会いで、生き残ることもまれである。

キッシンジャーは述べました。互いの政治的主張を考慮すれば驚くことだが、キッシンジャーとネルソン・マンデラは親しい。マンデラは獄中で彼のシャトル外交を研究し、それに魅了された。1990年に釈放された後、マンデラはアメリカに来たが、そのとき、キッシンジャーとの面会を求めた。

guardian.co.uk, Tuesday 15 June 2010

Football: a dear friend to capitalism

Terry Eagleton

かつては宗教がそうだった。今ではフットボールが民衆のアヘンである。

もし保守派のシンクタンクが集まって政治的な不正義や、激しい労働に従事する者への報酬の不公平に向けられた関心を吹き消そうと思うなら、その答えは一つであろう。フットボール、だ。・・・資本主義の問題を解決するとか、社会主義を禁止することより、もっと良い方法は、フットボールで歓声を上げることだ。

現代社会は人びとの連帯を否定するが、フットボールはそれを回復する。盲目的な忠誠心と共倒れの対抗意識は強烈な進化の本能だ。フットボールには、政治の愛する英雄崇拝と同一視、強者の美学がある。

生き生きとした伝統の意識と、ポストモダンな文化が示す歴史忘却癖が混在する。・・・美、ドラマ、闘争、礼拝、祝祭を求め、悲劇を目撃する場所だ。アフリカへの旅行は言うまでもなく。

何世紀にもわたって、ヨーロッパにはカーニヴァルがあった。体制の転覆に代わるセーフティー・バブルを民衆に提供した。宗教をはぎ取り、国王や領主をばかにして、本質的にアナーキーな行事であり、階級なき社会への前触れだった。

フットボールは、それに比べて、憤慨するポピュリズムの爆発だ。しかし、その大部分が、彼らのコカインだと言わないが、現代の「民衆のアヘン」である。そのシンボルは、奴隷的なまでに体制に順応するベッカムだ。


5.金融システム改革の論争

FT June 10 2010

Europe’s antipathy to stress tests is well founded

By Gillian Tett

ヨーロッパもストレス・テストを行うべきか? 銀行株価の下落が銀行システムの不安を表して、政治指導者たちは議論しています。それは、準備や資産内容など、銀行に対する信頼が失われている状態です。

アメリカでは2009年の春にガイトナーが「ストレス・テスト」を行いました。そして銀行は一斉に準備を積み増したのです。日本でも同様の状態が起きましたが、アメリカの要求を拒み続け、1990年代に金融システムの不安が続きました。投資家は慎重になって、資産価格の下落から回復しませんでした。

ヨーロッパの政治家たちが「ストレス・テスト」を嫌うのは、それがアメリカ人の発明したものだから、むしろ危機を引き起こすから、あるいは、ヨーロッパの政治が障害になっているから(ドイツが危機の救済に責任を負うのを嫌う)、と記事は考えます。

The Observer, Sunday 13 June 2010

The banks have refused to mend their ways. Beware the next crash

Will Hutton

FT June 13 2010

The euro zone’s tragic small-country mindset

By Wolfgang Münchau

FT June 14 2010

How to implement a systemic risk policy

By Andrew Large

イギリスには、システミック・リスクに対応する政策委員会が設けられました。何をするのか? たとえば、金利はインフレに対応しますが、金融のレバレッジが増大することを抑える手段も必要です。しかし、金融政策に一体化することには反対しています。

FT June 14 2010

Easing Europe’s sovereign jitters

FT June 15 2010

Solving Spain’s other debt problem

FT June 15 2010

Why plans for early fiscal tightening carry global risks

By Martin Wolf

金融緩和だけで危機後の不況を回避することはできず、財政刺激策も必要です。また、今も民間需要を無視して単純な財政再建に従うことに反対しています。

FT June 16 2010

Two more twists in the Greek tale

WSJ JUNE 16, 2010

Is Spain Next?

FT June 16 2010

Europe: A tent to attend to

By Tony Barber

スペインの財政危機を救済する問題がEUサミットで議論されました。その主要な論点が整理されています。

EUはユーロの成立で楽観的な姿勢が広まり、ガバナンスの改善を見過ごしてきました。ユーロに関する欠陥は次第に共有されてきましたが、その治療(たとえば、財政のEUによる監視)を受ける合意は難しいでしょう。

FT June 16 2010

Once again we must ask: ‘Who governs?’

Robert Skidelsky

1974年、エドワード・ヒースは問うた。「誰が支配するのか? 政府か、労働組合か?」 5年後、イギリスの有権者は最後の判定を下した。マーガレット・サッチャーを首相に選んだのだ。同じことが今日起きている。「誰が支配するのか? 政府か、金融市場か?」 明確な答えはまだ出ていない。しかし、この問題への答えが次の5年間の政治闘争を決定するだろう。」

財政再建を進める主張には、1929年の「大蔵省見解」が再現されている。市場は常に均衡を保ち、完全雇用が成立しているから、金融や財政で改善できることは何もない。これに対してケインズは、需要が供給を下回ることはある、と反論した。そのような不況において、政府の浪費は悪徳ではなく、美徳になる。逆に、財政再建は不況を悪化させるだけだ。

財政再建を主張する政治家たちは、さらにシカゴ学派をもちだす。市場の信頼を回復することが重要だ。財政赤字は、増税の恐怖、デフォルトの恐怖、インフレの恐怖をもたらす。それが景気の回復を妨げている。1931年との類似性は明らかだ。

クレディット・アンシュタルトの倒産した1931年に、政府は財政再建を急ぐべきだという強い圧力を金融界や政界から受けた。ケインズは、数少ない反対者の一人だった。そのような支出削減は、25万人から40万人の失業者を追加するだろう、と。給与の削減はスコットランドの軍港、Invergordonにおける海軍の「反乱」を引き起こし、大英帝国が震撼した。それは金本位制の離脱につながったのだ。

財政再建が回復への王道だ、という保守党の主張は、ケインズを再び葬ることになる。逆に、政界や金融界の石頭を直すため、政府はまさしく戦うべきだ。


6.日本の債務危機は回避できる。

FT June 13, 2010

Does Japan really have a public debt problem?

Martin Wolf

日本が債務危機を避けられない、と言うのは信じられない。3%のインフレを続ければ財政赤字は消えてしまう。日本の問題はデフレを続けたことだ。それゆえ、

1.国債の満期を長期化する。2.日銀が国債を購入してインフレをもたらす。3.その後、金利を5%に引き上げ、国債の価格は大幅に下落し、それを買い戻して発行残高をGDP比40%程度に減らす。4.その後、増税や支出削減で財政を黒字化する。

中央銀行をもつ国家は、債務不履行をすることなどない。インフレを起こすだけだ。債務超過を免れるために必要なインフレ率はそれほど高くない。

FT June 13, 2010

What women want

WSJ JUNE 14, 2010

Mr. Kan Can Fix U.S.-Japan Ties

By MICHAEL J. GREEN

WSJ JUNE 16, 2010

The Real Futenma Fallout

By MICHAEL AUSLIN

WSJ JUNE 15, 2010

A Japanese 'Third Way'

必要なのは、普天間か、日米の信頼か。北東アジアの安定化に、日本は何を目指すのか?

必要なのは、需要刺激策か、投資家のアニマル・スピリッツか?


NYT June 11, 2010

The Courage to Leave

By BOB HERBERT

月曜日、7人の米兵がアフガニスタンで殺された。誰も関心を示さないが。メキシコ湾の原油流出ばかりを伝えている。すでに1000人以上が犠牲となった。

FP Monday, June 14, 2010

Is Afghanistan really the next El Dorado?

Posted By Stephen M. Walt

アフガニスタンは資源の宝庫・・・? それはどういう意味をもつのでしょうか? 米兵やNATOの苦境が伝えられていたアフガニスタンに、資源開発が有望というニュースが流れています。しかも、ハイテクや軍事といった分野で戦略的に重要な鉱物資源です。

Jack Snyder, Myths of Empireは、帝国の拡大(軍事介入)を正当化するために、こうした「エル・ドラド(黄金郷)」神話が伴った例を多く伝えています。

guardian.co.uk, Tuesday 15 June 2010

Will Obama's Afghan surge run into the sand?

Simon Tisdall

WP Tuesday, June 15, 2010; A15

Fighting the Viet Cong in Afghanistan

By Richard Cohen

WP Wednesday, June 16, 2010; A17

The power of education is the real gold in Afghanistan

By Kathleen Parker

いくら鉱物資源が豊かであっても、どうやって採掘するのか? アフガニスタンには、腐敗や汚職も豊富なのです。

そのためには、新しい世代に正しく教育することです。経済の可能性を実現するために必要なのは技術や知識です。アフガニスタンで勝つのは、武器より、学校でしょうか? ・・・アフガニスタンの真の金塊は若者の世代に秘められている。


FT June 13 2010

South Korea restricts currency forwards

By Song Jung-a in Seoul

ヨーロッパの通貨危機、北朝鮮との軍事的危機、こうした危機に応じて外部から投機的な市場のかく乱が起きることを恐れて、韓国政府は規制を強化しました。台湾、ブラジル、ロシアに続いて、資本移動を規制する流れに加わったわけです。

WSJ JUNE 14, 2010

Seoul's Capital Confusion

WSJ JUNE 17, 2010

Capital-Control Comeback?


FT June 14, 2010

Kyrgyz dilemma

FP Monday, June 14, 2010

Has the U.S. given up on Central Asia?

Posted By Steve LeVine

WSJ JUNE 15, 2010

The Chaos in Central Asia

By ARIEL COHEN

FP JUNE 15, 2010

The Chechen Model

BY MIRIAM ELDER

キルギスタンの政権転覆と地域・民族対立による内戦の危機、その過程で、さまざまな大国の介入が恐れられています。


Foreign Affairs May/June 2010

Overpowered?

Michael Mandelbaum

Foreign Affairs May/June 2010

Bigger Is Better

Richard Rosecrance

超大国アメリカにも、その外交や軍事戦略に財政危機の影響が及ぶ。・・・

歴史上、国家は戦争によって領土を拡大し、大国化を望んだが、1970年代、80年代のドイツや日本、「アジアの虎」たちは小国のまま国際的な地位を高めた。それは軍事力ではなく、貿易国家として繁栄する道があったからだ。

1990年代に、そうした繁栄には限界が生じた。・・・


FT June 16 2010

It is time for Asia to rewrite the rules of capitalism

By Chandran Nair

20世紀の消費に依拠した資本主義は21世紀の危機を生じた。気候変動の破局は迫り、環境破壊のダメージ、自然資源の枯渇。アジアはそのど真ん中にいる。」・・・欧米社会は市場を重視し、技術革新を答えだと主張してきた。

2050年までに、アジアの40億から50億人が、今のアメリカ人と同じ消費生活を享受するとしたら、世界はどうなるだろうか?」

「だからアジア諸政府は介入しなければならない。」・・・一人っ子政策が廃止される前に、新しい消費抑制策が、しかもアジア諸国の国際協調やアジア的制度によって提唱されるかもしれません。

FP Wednesday, June 16, 2010

The reality of the 'China Fantasy'

Posted By Will Inboden

FP Wednesday, June 16, 2010

Ignore North Korea, offer Beijing a choice

Posted By William Tobey

FT June 16 2010

China and America still march out of step

By David Pilling

guardian.co.uk, Thursday 17 June 2010

The Chinese behemoth awakes

Simon Tisdall

破産しかけているギリシャ政府に対して、造船、観光、電気通信において中国は多額の商談をまとめ、EUの緊急融資にも負けない、その経済的影響力を証明しました。バルカン半島やヨーロッパに輸出する際のギリシャの重要性を買ったわけです。そして、イランに対する国連安保理の制裁を薄め、懸念がある中でも、パキスタンへの原子炉輸出を実行し、韓国の哨戒艇を沈没させた事件の責任を北朝鮮に問うこともない。

リーマンブラザーズ倒産後、中国の外交的立場は強化されてきた、と理解しているのです。コペンハーゲンの地球温暖化に関するサミットでも、国際的責任を果たすより、発展途上諸国を集めて要求を通す、という対抗策に終始しました。責任ある国際的役割を担うとは思えません。

まだ、ギリシャが中国に支配されることはない、としても。


FT June 14 2010

A carbon giveaway Europe cannot afford

By Michael Grubb and Susanne Droege

金融危機や世界不況は温暖化ガスの抑制に役立つでしょう。その意味では、メキシコ湾の原油流出だけでなく、ギリシャの財政危機も、温暖化問題に結びつきます。

財政再建やユーロの安定化に温暖化ガスの削減を組み合わせることができるでしょうか? EU内の排出権はオークションによって有料化され、EU ETSによって、製品やサービスの市場価格に追加されるかもしれません。しかし、この時期に企業が何100億ユーロも支払うのは困難でしょう。


June 17 (Bloomberg)

Billionaires Dig In to Kill Good Economic Idea

William Pesek

オーストラリアの資源産業に利潤への特別課税を政府は主張しています。もちろん企業は激しく反対しています。これは、金の卵を産むガチョウを殺してしまうことでしょうか?

1.資源は枯渇していく。その採取から得た資金は、国民のために利用しなければならない。億万長者たちが利益を独占することが最も望ましいとは思えない。

2.資源採取産業や立地する州が、物価や金利、為替レートを介して、他の産業や州から必要な人材などを奪ってしまう。オランダ病や資源バブルは、経済全体にとって害悪である。中国のための資源採取場になることがオーストラリア国民の理想ではないだろう。

3.資源大企業の利益に政府が服従すれば、オーストラリアの政治システムは分裂し、その未来は資源とともに失われる。

FT June 17 2010

Super profit tax needs superpolitics

ケヴィン・ラッド首相の「資源超過利潤税」は、激しい反発にあって、政府は支持率を大きく失いました。「準備不足だ」とFTは批判します。

資源地代に対する「公平な分配」やポピュリズムの波に乗れば支持される、と考えた政府に対して、業界は「金の卵を産むガチョウを殺す」と政府の野蛮な課税に対する国民の不安を煽りました。政府は国民に向けて課税の目的と効果を示すことです。


guardian.co.uk, Thursday 17 June 2010

Refugees: a problem that won't go away

Gary Younge

人権を守るために難民を受け入れるよう求めた国際法の維持が難しくなっています。政治難民と経済難民を区別することは、外見や資格において難しいだけでなく、政治体制や政策思想によって大衆の貧困を悪化させているからです。

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The Economist June 5th 2010

Leaderless Japan

Monetary policy in Japan: Deep hibernation

(コメント) 日本がThe Economistの表紙になることはほとんどないのですが、表紙になるとしても、その絵は悲観や不安、危機の予兆です。

その理由は、政府が指導力を示さず、誰がやっても頼りにならない、そんな中で債務を累積し続ける姿が、不安定な、混乱した将来を予感させるからです。また、中央銀行がデフレを解決できず、長期の経済停滞から積極的に抜け出す方策が尽きている印象を与えるからです。

菅直人の新政府は、日銀の新政策とともに、彼らが積極的に協力すれば、その意味で期待をもつに値するはずです。


The Economist June 5th 2010

Global economic policy: The deflation dilemma

Unions in China: Strike breakers

Asian currencies: Chips off the block

Buttonwood: Time for a rent cut

Economics focus: A winding path to inflation

(コメント) デフレとインフレが共存する世界は、以前から中国にありましたが、世界の景気回復を担う新興市場がインフレ抑制に舵を切るとしたら、デフレに苦しむ開発地域との政策調整はどうなるのでしょうか? G20の使命はますます重要かつ困難な局面を迎えます。

アジア諸国はドル圏か、人民元圏か? 人民元の為替レートが論争になる一方で、アジア諸国の通貨もそれと連動した調整を覚悟しなければなりません。それは、中国国内で続く労働争議や賃金引き上げの容認とも結びついているわけです。ブレトン・ウッズUの次には、人民元による協調体制について協議する体制の模索です。

日本もそうですが、デフレを回避するのは中央銀行にとっても未知の世界であり、効果的な手段を欠いています。それが、莫大な報酬を振りまいて金融危機を醸成したグローバル・メガバンクや金融機関にだぶついた資金であるとか、アニマル・スピリッツの消滅、投資家たちの冬眠であるとか、インフレ抑制というマネタリストの教条に政治家や中央銀行家がすがりつく姿とか、議論は尽きません。


The Economist June 5th 2010

Israel and the world: Israel’s siege mentality

The spill and the president: On the beach

Lexington: The open society and its discontents

Charlemagne: The pain in Spain

A row over mining taxes in Australia: Digging in the minefield

(コメント) ほかにも記事は多くの興味深い事象や考察、空想を伝えています。

人権団体による輸送は、イスラエルの実力行使におよび、トルコとの関係悪化やガザ地区占領政策見直しにつながりました。オバマも、浜辺で原油の汚泥を見つめているときではありません。開かれた国家と世界秩序を守る、と宣言する指導者は、オバマしかいないのです。その理由を、寓話的なケースで示しています。

「はるか昔、海面の上昇がタスマニアを島に変えました。数千の住民がオーストラリアの本土から切り離され、その技術は退化したのです。」 なぜなら、特別な技能を要する道具を作っても、買い手が少なすぎたから。孤立した社会では交換する機会が失われ、生産者も競争も減りました。それとともに技術も失われたのです。・・・「アメリカはタスマニアと逆だった。」 財やアイデアや移民が、自由に流入し続けました。

国民のために、スペインは公務員への保護を削って、また、オーストラリアは鉱山会社への特別税を課して、その地代を吐き出させます。