IPEの果樹園2010

今週のReview

6/14-/19

 

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IPEの想像力 6/14/10

「強い経済、強い財政、強い社会保障」を実現する。菅直人新首相の所信表明演説を読みました。心情が伝わる、良い演説だと思いました。

今も、新興市場の拡大や発展途上諸国の企業による追い上げ、食糧・資源をめぐる争奪戦など、グローバリゼーションは市場を介した構造変化をめぐる国家や制度の改革競争を続けています。グローバルな革新の波及や市場変化の過程に参加し、そこから利益を得るために、私たちの経済構造や社会関係も積極的に変化しなければなりません。国家機構の再編、ガバナンスの革新が、たとえば、社会保障の分野で議論されるのでしょう。

卒業研究のテーマを考えるゼミ生の報告を聞いて、私は社会保障が「生産的な労働」を増やす積極的な役割を担うかもしれない、と指摘しました。少子化や急速な高齢化、あるいは、女性の労働力率の低さ、派遣労働者の増加、自殺者の増大、その他、菅総理が「社会の閉塞感」として述べていた問題も、新しい社会保障制度によって解決できれば、「生産的な労働」が増えるでしょう。

A.スミスとW.A.ルイスの考えた成長は、中国やアメリカだけでなく、日本にも再生できます。

「社会保障」は、教育とともに、現代の日本において積極的な役割を担う重要な制度だと思います。それは、市場メカニズムに対応した「セーフティー・ネット」(「夜警国家」を思わせます)と異なるでしょう。私の記憶では、労働者の移動性や、高度な教育・技能修得を促すことで生産性を高める「社会保障」という考え方は、「積極的調整政策」が掲げた目標です。A.ションフィールドがスウェーデンの労働市場政策を紹介していました。(あるいは、オランダや北欧諸国です。)

しかし、不安もあります。

菅首相が励ましても、若者たちの心は動かないかもしれません。イギリスでは、フットボールの試合に集まって騒ぐフーリガンが社会問題となり、国際試合に応じて騒ぎが外国にまで広がり、外交問題になりました。若者文化の変容(大学、麻薬、失業、自殺、など)は、世界各地で社会学の重要なテーマです。他方、老人たちの心や孤独死もそうです。社会の閉塞感やデフレからの脱却を唱えるなら、若者が自ら積極的に働き、老人たちは安心して長期投資や消費ができる、豊かな社会関係を再生してほしいです。

社会保障の目的や仕組みには、根源的な問いかけと見直しが必要です。普天間基地問題で喚起された安全保障もそうです。「事業仕分け」と同じように、秘匿された部分を政治家(すなわち、国民の代表)が追究すべきです。そのうえで、国民による新しい合意を形成してください。

こうした不安や難問に、従来の政治システムが応えることはないでしょう。鳩山首相辞任について書かれた批判的記事をいくつか読む中で、私は、首相(とその交代)の政治的条件・規範を与野党とも改めることを望みました。すなわち、

1.長期に、国際会議に責任のある指導者として出席できるよう、必ず2年以上は在任する。そして、政策決定の過程とその成果に責任をもつ意味で、5年以内の交代を例外とし、要求する側に十分な説明を求める。2.人物や人脈ではなく、政策を重視して論争する。3.現実の変化に応じて、政府は柔軟かつ積極的に対処する。4.競争する指導者の世代交代を行う。すなわち、同一世代内では交替しない。5.難問に取り組む指導者を助ける。逃げる者を許さない。6.制度構築や方針転換を準備する超党派委員会、重要政策の決定過程や成果に関する調査・検証委員会を活用し、国民に論争の中身を迅速に提示する。

首相は、こうした規範に照らして内閣を組織し、委員会を設置して報告書を作成・公表します。そして、もっとも重要で困難な選択に対しては、議論を尽くして、衆議院を解散するのです。

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山本周五郎の短編、「裏の木戸はあいている」(『ひとごろし』新潮文庫、所収)を読みました。これは時代小説ですが、「モラル・ハザード」、「マイクロ・ファイナンス」、「ベーシック・インカム」、などが語られている、と思います。そして、投資や融資、財政、貧困、救恤策、の意味も。

「家に出入りの吉兵衛という桶屋がいたが、貧窮のあまり、妻子三人を殺して自分も自殺した、ということがあった」

・・・その家の差配をしていた老人も、勘定奉行であった父とその同輩も、心中した男の愚かさを憐れみました。

「そのくらいの金なら誰に頼んでも都合できたであろうに、馬鹿な事をする人間があったものだ、・・・二人はそう云った」

・・・一家が死んだあとだから言うのであって、生きているうちに金を貸すことなどなかっただろう、と喜兵衛は考えます。そして、裏木戸をあけたまま、困った者がそこから入って、少額の金を利用できるように木箱をかけました。

「(やめようと)思ったこともある、ずいぶん苦しいときがあったからね、しかし、そういうときには、いつも吉兵衛の小さな娘のことを思い出した、あのなおという娘のことを、・・・あのなおがどんな気持ちで死んだかということをね」

・・・さて、古本屋さんへ散歩です。あなたにとって、何が楽しみや休息でしょうか?

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1.世界経済の危機:デフレ危機と債務危機

2.菅直人の新政府に何を望めるか?

3.中国は世界の災厄か? 救世主か?

4.ドイツは、日本と同様に、戦後の枠を壊すときか?

5.海底油田に汚染されるオバマ評価

・・・イスラエル ・・・ネパール ・・・アイスランド ・・・イラン ・・・北朝鮮 ・・・失業 ・・・金融改革

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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


1.世界経済の危機:デフレ危機と債務危機

Times Online June 5, 2010

Debt is the spectre that haunts the G20 feast

George Osborne

イギリスは、不況を回避しつつ、財政再建をどのように実現するか? これは矛盾した要求でしょうか?

新政権の大蔵大臣は、中国など、新興市場に需要があるのだから、輸出すればよい、と考えます。EUが通貨危機を一国の問題として考えられないように、イギリスの財政再建も単独では解決できません。しかし、中国と組めば解決できます。公的部門を縮小しながら、輸出向けの民間部門を拡大できるからです。

20の第一の課題は、政府の債務危機です。市場の不安が去らなければ、金利は高いままで、景気も回復できません。それは、再び財政赤字と債務を増やすのです。ギリシャ危機はその悪循環を警告しています。

しかし、第二の課題は成長です。それは、世界経済が均衡を回復する過程で、中国の黒字が減って、輸入が増えることを意味します。イギリスにとって、世界貿易の拡大は主要な景気刺激策です。中国、インド、ベトナム、ブラジル、インドネシアなどが、増大する中産階級の消費市場を開放するでしょう。

ソウルのG20が示す課題に対する答えは、上海万博にあるのです。

FT June 5 2010

G20 drops support for fiscal stimulus

By Chris Giles and Christian Oliver in Busan

重要な合意は、G20がもはや財政赤字を有効な刺激策とは考えなくなったことです。というより、金融市場がそれを嫌っているからです。イギリスのように保守政権の誕生した国は、こうした国際合意の転換を自分たちの政策に対する支持として歓迎します。

財政刺激策のチャンピオンであったストラス・カーンIMF専務理事も、正しい財政政策、を主張します。しかし、ガイトナー財務長官は、ヨーロッパが成長に対する関心を全く失うことを懸念します。中国は人民元を切り上げ、ドイツは内需を拡大するべきなのです。

国際金融制度改革については、銀行に対する課徴金に合意が成立しませんでした。「世界課税」ができない以上、それをG20だけで採用できないのです。それは、外国銀行に対する金融センターの課税にもなるからでしょう。

SPIEGEL ONLINE 06/07/2010

Radical Cutbacks

German Government Agrees on Historic Austerity Program

FT June 7 2010

Time to plan for post-Keynesian era

By Jeffrey Sachs

金融危機がケインズ主義の積極的な財政刺激策を新しい正統の地位に就けたのも束の間、債務危機の広がりで、その怪しい前提が揺らいでいる、とJeffrey Sachsは痛烈に批判します。

20に必要なものは、持続的な回復を支える長期投資であって、財政赤字による刺激策ではない。刺激策を支持する主張には、4つの(疑わしい)前提があった。1.世界不況を回避しなければならない。2.短期の財政刺激策が急速な回復をもたらす。3.短期的循環と長期的構造を合成した必要に応じる公共事業がある。4.刺激策によって急速に増える公的債務は無視できる。

その確信に任せて、イギリス、アイルランド、スペイン、ギリシャ、などとともに、オバマ政権は10年ぶりの過剰債務を背負いこんだ。定率減税や自動車の買い替え補助金などでは貴重な時間と資金が浪費される。それは持続不可能な融資に依拠した消費や住宅の高水準で成長する経済に戻すだけだ。

「グリーン・リカバリー」が唱えられた。しかし、長期的な課題である持続可能なエネルギーへの転換を図るより、政治家たちは公共事業を奪い合っただけだ。エネルギーの転換は短期的な雇用創出にならない。中国にはできても、アメリカには向かない。

オバマ政権は財政赤字や公的債務の急増を無視したが、その将来の見通しは明らかでない。財政再建のやり方に何の合意も存在しないからだ。連邦政府は景気回復には不十分な支出しかできず、しかも、財政再建に必要な増税は全く支持されない、というジレンマに陥る。

世界経済は、アメリカやヨーロッパなど、需要が不足している。消費者は借金を拒まれ、政府も債券市場の信用を得るために財政赤字を削減し始めている。これもまた間違ったアプローチだ。昨年の単純な財政刺激策が、今は単純な緊縮財政に代わって、どちらも景気回復を損なっている。政府が守るべきガイドラインを示せば、

1.10年間の経済構造転換を目指しつつも、5年間の中期見通しで財政を考える。2.政府が短期的に高度な質の雇用を増やすことはできない。良質の雇用は、良い教育、競争力のある技術、信頼できるインフラ、民間投資によって生まれる。3.政府の仕事とは、セーフティー・ネット、抵所得者の支援、国民全般への医療と教育、職業訓練と高等教育の促進、である。4.長期の構造転換に向けて経済を操縦すること。5.富裕層のもっと課税し、資産に課税すること。

短期的に回復するという幻想はバブルを再現するしかない。経済を再建するのは、刺激策ではなく、投資である。

FT June 7 2010

Cameron pitches an age of austerity

FT June 8 2010

Fear must not blind us to deflation’s dangers

By Martin Wolf

政府が支出を減らして緊縮財政を示せば、民間部門がどう反応するだろうか? ますます売れ行きが悪くなる、と考えて、投資が減り、雇用が減り、消費を減らし、倒産が増え、失業者が増加する。不況が再発し、デフレにもなるだろう。債務の負担が増して、悪循環となる。

「世界が直面している問題は二つあって、一つではない。第一に、開発諸国の経済はギリシャになりつつある。第二に、将来、日本になるだろう。」・・・「緊縮財政に、継続する銀行の(不良債権)問題と不十分な金融緩和が結び付いて、1997年にマイナスのショックが襲い、日本は長期のデフレに落ち込んだ。」

世界経済はそれを繰り返しつつあるのか? ドイツはユーロ圏全体に影響するほどの財政緊縮を行うつもりだ。イギリスの新政権も同様の計画を示している。アメリカは、今のところそうではないが、変わるかもしれない。実際、日本はデフレに落ち込み、ドイツもアメリカもインフレ率が1%を割っている。金融システムに問題があるため、米・ユーロ圏の通貨供給量はなかなか伸びない。

この状況で財政引き締め政策を採用することは、十分な金融緩和で是正されるのでなければ、非常に危険である。

ギリシャ危機はアメリカにも及ぶのか? 長期金利は低く、デフォルト・リスクは市場に感じられず、インフレ期待もない。問題は市場が政府債務に信認を与え続けるかどうか、である。アメリカは、日本と同様に、長期にわたって市場の圧力を排除できるだろう。アメリカはドルが準備通貨であるから。日本は国内貯蓄で債務を賄えたから。

リスクは両側にある。財政引き締めを一斉に行えば、世界経済は不況に向かい、デフレさえ起きる。他方、財政赤字を放置すれば金融市場が政府債務を拒否するに至る。日本やカナダ、スウェーデンが財政引き締めの際に、世界市場向けの輸出を伸ばしたケースを、アメリカとユーロ圏の需要落ち込みに当てはめてはならない。世界はますますアメリカを財政再建という「近隣窮乏化政策」に巻き込みつつある。

財政健全化の痛みを道徳的に賛美する者だけが、早すぎる緊縮財政のデフレ・リスクを恐れる理由を理解しない。

guardian.co.uk, Wednesday 9 June 2010

That global recovery? It's each state for itself

Jonathan Fenby

新興市場は開発諸国の病気の面倒をみるつもりはない。彼らは自分たちの向かう方向を知っている。私たちはそうではない。

NYT June 9, 2010

The Wrong Message on Deficits

雇用を増やすことが重要だ。しかし、長期的jには財政を責任あるものにしなければならない。バーナンキの指摘を、政治家たちは一部しか効かないだろう。ガイトナー財務長官はドイツに注意したが、ソウルにおけるG20がオバマ政権に財政引き締めの圧力となるかもしれない。

アメリカ、中国、ユーロ圏が減速しつつある。問題への対応は、国によって異なった答えを示す。


2.菅直人の新政府に何を望めるか?

FP JUNE 3, 2010

The Wrath of Kan

BY ABRAHAM M. DENMARK, DANIEL M. KLIMAN

「菅の怒り」・・・「イラ菅」を翻訳したようです。世襲ではない、国民に近い政治感覚の持ち主として、スキャンダルや辞任の後にも、その誠実さと真剣な態度を失わなかったとして復活した政治家として、民主党政権の日本に、多くの課題で成果を残せる長期政権の時代が来ることを期待します。

guardian.co.uk, Friday 4 June 2010

Japan: just another political scandal

Jenny Holt

"Shoganai"・・・当たり前のように首相が辞任する姿には、日本人の政治に対する虚脱や絶望が示されている。

「せめてもう少し不満を示してくれたらよいのに。」と、Jenny Holtは思います。もっと強く非難するとか、もっと投票に行けばよい。しかし、有権者の半分も行かない。

人びとが無力感を強めたのは、鳩山の超資産家としての態度であり、沖縄県民が不満を示しても無駄だというアメリカ(政府・軍)の態度であった。明治維新も、アメリカ軍の占領も、保守的エリートや資産家層は乗り越えてきた。メディアや教育界、公務員、産業界で繰り返された「赤狩り」は自民党の長期に及ぶ権力独占と結びついていた。鳩山もその流れの中にいる。

汚職や世襲制が日本の政治を損なったのではない。現状維持のために首相が辞任してしまう国では、役人も子供たちも市民の権利について学ぶことがない。彼らが学ぶのは、階層的な秩序の中で自分を抑えて合わせることだ。押しの強い若者はスポーツクラブに入る。そして、まず、年長者のしつけに我慢して従う。そして、そのまま年を取り、次に、若年者をしつける。押しの強くない若者は、教室で眠る。そして、そのまま忘れられる。

“gaman”・・・日本人は問題を解決するより、我慢する。子供たちは、責められたり、からかわれたりすることを恐れる。そして、目立つことをしなくなる。日本の教育システムは、校歌、制服、こまごまとした規則、集団活動、など、受身の市民を作るための典型的なフーコーの監獄モデルである。

しかし、わずかでも、希望はある。大衆的な市民権運動の貴重な伝統だ。その多くは厳しく弾圧されているが、地域によっては残っている。最近の沖縄がそうだ。地域の問題が国政を動かすこともある。

新しい首相の政治が何であるか、見ようではないか。

FT June 4 2010

Fear of split in DPJ as Kan elected PM

By Jonathan Soble in Tokyo

FT June 4 2010

And Naoto work

日本人は短命な美を好む。・・・首相もそうか? 1990年のバブル崩壊から、15人もの最高指導者がその職を去った。

経済停滞と債務累積、イタリアよりも不安定な政治でありながら、日本はよく管理されている。政治家と違って継続する官僚制の力だろう。皮肉なことに、管は官僚から政治家に権力を取り戻すつもりである。前任者たちよりも地位に長くとどまるつもりなら、優れたプランが必要だ。

FT June 4 2010

Japan’s new PM breaks mould

By Mure Dickie in Tokyo

FT June 4 2010

Naoto Kan: An atypical Japanese politician

By Michiyo Nakamoto in Tokyo

WSJ JUNE 9, 2010

Mr. Kan's Political Calculus

By RICHARD KATZ

投票が民主党の議席を増やすかどうかは、自民党支持層が分裂することにかかっている。民主党政権は、よりよい成長を実現し、国債発行を減らし、有権者の生活を楽にしなければならない。構造改革しなければ経済は繁栄せず、繁栄した経済がなければ政治は安定しない。

FT June 9 2010

‘Just do it’ is no mantra for Japan

By David Pilling

これまで日本政府は次々に交替して問題を解決しようとしてきたが、それに失敗した。それは彼らが弱く、愚かであったからではない(弱い、愚かな指導者や閣僚もいたが)。二つの理由が絡み合っていたからだ。

一つは、真剣さが足りなかった。日本のような成熟経済では、デフレを脱するのに時間がかかり、しかも正常な成長率も低い。日本人はバブル崩壊後も、低失業率、平和憲法、同質的で平等な社会、何一つ失いたくなかった。だから新しい発想は受け入れなかった。1990年代の成果は、それほど悪いものではなかった。

もう一つは、問題を解決するのは言われているほど簡単でなかったことだ。魔法のような解決策はないまま、政治家たちは異なる政策の間を揺れ動いた。国民も何が間違っており、どうやって解決するべきか、全くわからず、矛盾した感情をもっていた。

いかに、広く認められる問題と提案されている解決策を示す。

1.国債の累積。すぐにGDPの200%にまでなる。歳出削減と増税。小泉首相は国債発行を減らそうとしたが、不況との悪循環になることを恐れ、失敗した。

2.名目成長率の低さ。その主要な理由はデフレだ。積極的な金融緩和政策、インフレ目標、郵政民営化、規制緩和、外国投資の促進。インフレ目標以外、すべて試みられてきた。

3.デフレ。日銀は責められてきたが、早くから量的緩和を採用するなど、よくやってきた。4.消費税引き上げ。菅首相は10%への引き上げを考える。しかし、1997年に3%から5%に引き上げた際、不況を招いた。5.市場資本主義。小泉改革はそれを支持したが、今では逆転している。6.外交・安全保障。日本の国際的な役割をアメリカは期待するが、国民は平和憲法を守りたい。中国に接近することも考えている。

つまり、主要問題について、菅政権になっても容易な解決策はない。

June 10 (Bloomberg)

Former Model Gives Economic Change New Meaning

William Pesek

蓮舫は、日本で最も恐れられる女性になった。彼女を含む菅内閣が日本を再建するには、三つのプラス・シナリオを考えることだ。

1.財政再建。歳出削減はデフレを恐れる日本で好ましいことではない。むしろ、無駄な支出を削って、もっと雇用や競争力を改善する政府支出に転換する必要がある。2.若手の起用。菅は、連法のほかにも、野田を財務大臣、枝野を民主党幹事長に起用した。年功序列や密室・料亭政治の文化を破壊するべきだ。3.官僚制の打破。

つまり、温存した天下り団体の事業や報酬をバシバシ叩いて仕分けした彼女を強く支持した国民を、官僚たちがもっと恐れて、本来の仕事に取り組むことだ。厳しい決断と実行を伴う政治家たちを国民が支持するシステムが必要だ。


3.中国は世界の災厄か? 救世主か?

FP JUNE 4, 2010

The Breach

BY MARK HIBBS

世界で建設中の原子炉は、その60%が中国にあります。核兵器や濃縮ウランなどの国際管理体制を築く上で、アメリカなど主要国とともに、中国の参加が欠かせません。中国政府がパキスタンへの原子炉輸出を認めるなら、強い警告が必要です。

guardian.co.uk, Saturday 5 June 2010

China crashes Cafta's party

Kevin Gallagher

一人っ子政策によって労働力人口が急速に転換し、高齢化や労働力不足を予想される中国に代わって、中米など、その他の発展途上諸国が注目されるでしょう。中国政府は、当然、国内の農村人口をもっと工業化に利用することを考えます

中米諸国は中国の成功を複雑な気持ちで見ています。アメリカとの貿易自由化や輸出加工区の設置で、繊維産業を誘致していたとき、まさに中国がWTO加盟によって、この分野の直接投資と世界市場を奪ってしまったのです。

しかし、Kevin Gallagherは、中米諸国が中国を非難するより、むしろ学ぶべきだ、と考えます。ワシントン・コンセンサスに従うより、中国政府の支援する工業製品輸出は大きな成果を上げています。中国で労働力不足が問題になっている今こそ、他の発展途上諸国も工業化を遂げるチャンスです。

WP Monday, June 7, 2010; A17

What does China want?

By Fareed Zakaria

大国の傲慢について不満があふれるのは、アメリカについてであったが、今では多くが中国に向けられる。

中国は、成功とともに、傲慢になった。それは当然だ。しかし、賃金上昇を肯定する論説が政府系の新聞に出るのは新しいことだ。低賃金の依拠した「世界の工場」という成長モデルを転換することも認めている。しかし、企業は不安を感じている。

中国は、その地位や影響力に見合った国に代わろうとしている。アメリカがかつてそうであったように。

FT June 7 2010

Liberty endures in two-system China

By Gideon Rachman

香港は、、天安門事件を記念する集会を禁止されませんでした。チェチェンやモスクワと違い、バンコクでも、ガザ地区でもありません。中国政府は、予想外に、「一国二制度」の約束を守ったのです。

もちろん、香港市民の強い抵抗があったから、北京はそれを変えることができなかった、と言えるでしょう。しかし、中国における民主政治の可能性に一定の許容度を与えたわけです。

FT June 8 2010

The new lesson for resilient Asia

By Stephen Roach

2008-09年の世界金融危機を通じてアジアがどのように対処したか、その現場を多く見聞した後に、Stephen Roachは三つの教訓を示します。

1.1997-98年の危機の教訓を学んだ。外国資本に依存することの弱さを、特に、外貨準備の不足、短期債務への依存、為替レートの硬直性、は危険であった。その後、外貨準備を蓄積して、リーマン・ショックを抑え込んだ。

2.中国が中心の経済成長を実現している。輸出市場はアメリカではなく中国であり、チャイナ・ドリームを目指している。中国は今人消費を刺激し、内需主導の成長を実現できる。中国がこの移行に失敗すれば、アジアの繁栄も消滅する。

3.アジアは「繁栄の聖杯」を発見したわけではない。経済は複雑で、常に変化している。予想しない形の危機が待っているだろう。

しかし、アジアは成長し続けると考えてよい。中国には13億人の消費者がおり、内的な成長モデルは達成可能だ。むしろ心配はアメリカ議会の保護主義である。アメリカ自身が再教育される必要がある。

FP Wednesday, June 9, 2010

How China's hybrid cars could change the world

Posted By Steve LeVine

FT June 10 2010

China export surge stirs US anger

By Alan Beattie in Washington and Geoff Dyer in Beijing

5月のデータによれば、中国の輸出額は48.5%も増加しました。アメリカ議会の反発は必至です。

FT June 10 2010

New imbalances will threaten global recovery

By Fred Bergsten

ヨーロッパは意図せざるユーロ安を進め、結果として世界を競争的切り下げの「近隣窮乏化政策」に導きつつあります。中国をはじめ、アジア諸国は今も重商主義的な割安の為替レートを維持するために介入することをやめません。その結果として、アメリカの経常赤字は倍増する恐れがあります。

アメリカは赤字を増やし、それを融資されるから、問題ない、という見解を否定します。世界経済が不均衡の拡大を放置するとき、1.ドル暴落やアメリカ金融市場からの資本流出のリスク、2.不安定な資本移動と次の国際通貨危機のリスク、3.アメリカ議会における保護主義の要求、が強まるからです。

20は世界の均衡回復を掲げなければなりません。ドイツ、中国、日本、などの黒字諸国は内需を拡大すること。中国は同時に人民元を切り上げる。協調介入によってユーロ安を食い止める。SDRsを増発して貿易赤字国に融資すること。

何よりも、アメリカは世界消費や融資の最後の手段ではない、と明確に告げることです。

WSJ JUNE 10, 2010

The Rise of Chinese Labor


4.ドイツは、日本と同様に、戦後の枠を壊すときか?

WP Tuesday, June 8, 2010; A17

Germany's dangerous code of silence

By Anne Applebaum

これはドイツの話です。・・・念のため。

ドイツのケーラー大統領が辞任した原因は、アフガニスタンでの発言でした。「(ドイツの)経済規模と貿易依存を考えれば、・・・自国の利益を守るために軍事的な展開も意識しなければならない。」

イギリスやフランス、アメリカでは何にも問題にならない発言ですが、ドイツにとってはタブーを侵したものでした。まず、ドイツ国民は彼らの兵士が社会・救援活動に従事していると思っています。ケーラーは、軍事活動であることを認めたのです。ドイツ国民は、彼らの兵士がしばしばアメリカ軍に助けを求め、アメリカの戦争の一部になってしまうことを嫌います。

第二に、より重要な問題は、経済規模や輸出によってドイツが世界中で軍事的な介入に参加する、ということをケーラーが認めたことです。ドイツ国民の平和主義は憲法にも明記され、その経済規模に関わらず、ドイツが経済的利益のために軍事力を行使することは決して考えられないのです。

こうしたドイツの主張はますます現実から遊離してしまいました。ドイツは紛れもなく大国、ヨーロッパ最大の国です。ギリシャ救済を決めたのはドイツであり、避けられないような形で厳しい経済改革を要求したのもドイツです。もし救済が失敗すれば、責められるのはドイツでしょう。

「ドイツの経済的利害はヨーロッパを超えて広がっています。その一つは西側に挑戦するイランであり、ドイツは海外投資の最有力国の一つです。中国やロシアについてもそうです。イランとイスラエルが戦闘を始めたら、あるいは、中国が台湾を攻撃したり、ロシアとウクライナが戦争を始めたら、ドイツは中立でいられるでしょうか?」

「わたしは、こうした紛争が起きるだろうとか、起きるはずだと示唆しているのではない。ドイツがこうした紛争に巻き込まれるとか、関与するべきだと示唆しているのでもない。ドイツの再軍備を望まないし、戦争もしてほしくない。誰とも紛争を起こしてほしくない。しかし、その経済が輸出に依存し、貿易相手国には権威主義体制や軍事独裁国家が含まれるのに、その国が経済政策の帰結として軍事的な衝突の可能性を大っぴらに話すことも許されない、という現状は、異様なものに見える。アメリカ人は、ときに、すべての紛争を軍事的に解決できる、と考える点で間違っている。しかし、いかなる紛争も軍事的に解決されることはない、と言い張るのは同様に近視眼的であり、それを語ることもできない、というのは危険である。」

これは、日本の話ではありません。・・・ドイツの話です。


5.海底油田に汚染されるオバマ評価

NYT June 4, 2010

Don’t Get Mad, Mr. President. Get Even

By FRANK RICH

LAT June 6, 2010

Mr. President, lead now on fossil fuels

Bill McKibben

成長、雇用、競争力のためには海底油田の開発を認めるべきだ、と述べ、また、将来もずっと石油に依存した経済は持続できない、とも述べる。どちらのオバマが正しいのか?

The Observer, Sunday 6 June 2010

The BP oil spill demands we move beyond petroleum

WP Sunday, June 6, 2010; B01

From the oil spill to the financial crisis, why we don't plan for the worst

By Richard A. Posner

FT June 6 2010

If mud sticks, unfairly, so can oil

By Clive Crook

WP Monday, June 7, 2010; A17

Oil spill reveals the dangers of success

By Robert J. Samuelson

1000フィートを超す深海の油田を、どうやって採取しているのか? なるほど、油井は海上を漂っているthe "mobile offshore drilling unit" (MODU)である、と知りました。GPSで採掘地の真上に制止できるよう、海上の油井をエンジンで常に移動させているのです。さまざまな技術が革新された成果です。

事故の起きた油田は5000フィートの深海ですが、水面下1万フィートに達する油田もあるそうです。これまでに起きた事故の記録も優れていました。そのような成功が、金融危機をもたらしたCDOなどの技術革新や、世界一の自動車会社となったトヨタと同様に、大きな失敗の原因であった、と考えます。


FP JUNE 2, 2010

What’s the Right Way to Board a Hostile Ship?

BY JOSHUA E. KEATING

NYT June 2, 2010

Saving Israel From Itself

By NICHOLAS D. KRISTOF

NYT June 2, 2010

An Assault, Cloaked in Peace

By MICHAEL B. OREN

NYT June 2, 2010

A Botched Raid, a Vital Embargo

By DANIEL GORDIS

guardian.co.uk, Thursday 3 June 2010

Gaza flotilla: What should Obama do?

Michael Tomasky

FT June 3 2010

The Palestinians cannot be hammered into submission

By Philip Stephens

NYT June 3, 2010

A Credible Investigation

FP Thursday, June 3, 2010

What exactly is the blockade of Gaza?

By Yousef Munayyer

FT June 4 2010

Israel had no other choice

By Christopher Caldwell

NYT June 4, 2010

Turkey’s Fury

WP Friday, June 4, 2010; A19

Those troublesome Jews

Charles Krauthammer

FT June 6 2010

Turkey is making a play for regional power

By Josef Joffe

FT June 6 2010

The siege of Gaza must be end

LAT June 7, 2010

The Cairo Obama, one year later

Nabil Fahmy

The Guardian, Monday 7 June 2010

Israel and the aid convoy: How to make enemies

SPIEGEL ONLINE 06/07/2010

US-Israeli Relations after the Raid

'Obama Must Change the Subject from Gaza to Peacemaking'

Martin Indyk

SPIEGEL ONLINE 06/07/2010

Rage after the Raid

Israel's Voyage into Isolation

LAT June 8, 2010

Israel's Gaza blockade: It works

Jonah Goldberg

WP Tuesday, June 8, 2010; A16

Managing the Gaza blockade

NYT June 9, 2010

Israel Without Clichés

By TONY JUDT


guardian.co.uk, Thursday 3 June 2010

Nepal on a knife-edge

Jagannath Lamichhane


guardian.co.uk, Friday 4 June 2010

Iceland's summer of discontent

Alda Sigmundsdóttir

金融危機からの回復に前進を示したアイスランドでしたが、この重要な転換期に、火山による航空便の停止は外貨収入を得るための観光業に打撃を与えました。しかも、EU加盟をめぐる政府の政策について国民の意見は分裂し、従来の政党や政治家たちに対する不満を深めています。


FT June 4 2010

Outside Edge: New rules for nations in hock

By Alan Beattie

「ギリシャは新しいリーマンブラザーズだ」・・・と言われます。それは、2001年のアルゼンチンや、1931年のクレディット・アンシュタルト、あるいは、1890年のアルゼンチンとベアリング・ブラザーズ、1720年の南海泡沫事件、16世紀に債務不履行を繰り返したフェリペ2世、などの例を繰り返したものでしょうか?

Alan Beattieは、規制によって解決できる、という意見に、慎重です。政府は、銀行業界には厳しくとも、自分たちには甘いでしょう。

政府規制の要点は、1.大き過ぎて潰せない状態を避ける、2.どの国でも金融サービスと製造業を兼業させない、3.資産の裏付けがない債務の増大を制限する、4.IMFが政府から債務処理のための基金を徴収する。


The Observer, Sunday 6 June 2010

We were wrong to allow so many eastern Europeans into Britain

Ed Balls

guardian.co.uk, Tuesday 8 June 2010

Tackling global poverty requires an ethical immigration policy

Hina Majid

グローバリゼーションの研究によれば、移民を禁止した法律が移民の送り出し国に赤字を融資する送金の減少をもたらし、彼らの輸入を制限するという悪循環を招いた、ということです。移民は開発諸国の刺激策から(国民への)雇用創出効果を奪うのか、あるいは、世界の貧困を減らすことに役立つのか?

Ed Ballsは、移民政策にとどまらないEU政策合意の模索を始めるように求めます。

たった1日で、出産により死亡する妊婦が1400人、貧困の中で死亡する子どもが25000人もいます。イギリスの移民政策は彼らを救う手段になるはずです。未熟練労働力こそ、貧しい国の主要な輸出品であり、条件さえ整えば、双方の利益になるわけです。


NYT June 4, 2010

Downgrade the Ratings Agencies

By KATHLEEN CASEY and FRANK PARTNOY

FT June 9 2010

Derivatives: A tricky pick

By Jonathan Ford and Sam Jones


FT June 6 2010

America’s jobless picture is alarmingly bleak

By Mort Zuckerman

guardian.co.uk, Monday 7 June 2010

Robbed of jobs by the deficit cultists

Dean Baker

NYT June 7, 2010

‘A Very Deep Hole’

By BOB HERBERT


WSJ JUNE 6, 2010(日本版)

Take Advantage of Kim's Bad Timing

By SUNG-YOON LEE

FP JUNE 7, 2010

China's Cheonan Dilemma

BY DREW THOMPSON

WSJ JUNE 10, 2010

Keeping Burma Out of the Nuclear Silo

By KELLEY CURRIE


June 10 (Bloomberg)

In Case of Euro Crisis, Break Deutsche Mark Glass

Mark Gilbert


LAT June 10, 2010

Don't forget the Iranians who have gone up against the regime

Timothy Garton Ash

テヘランの民主化デモを覚えているか? その中で死んだ少女ネダと、同じように虐待された者たちのことを思い出してほしい。イランの革命防衛隊や秘密警察、民兵集団の残酷な弾圧によって、多くの犠牲者が出た。

イランが核武装するのを止める良い方法はない。それは、イラン国内の政治弾圧や圧政とどのように関係しているか?

さらなる制裁や、トルコとブラジルが示した仲裁、核施設への空爆、核武装したイランを封じ込めて共存する外交、そのいずれも望ましい結果をもたらしそうにない。むしろ、イランがもっと民主的で、国民の多くに責任をもった政府を成立させたらどうなるだろうか? 民主化デモの指導者たちも核武装の点では異ならないかもしれない。しかし、世界との関係を改善し、交渉にも成果が見られるだろう。

いつ、イラン国民は政府を選択できるようになるのか? それは、民主化運動の成長、優れた戦略、同盟化、そして、成長の減速に対する体制側の動揺、などにかかっているだろう。それを決めるのはイラン国民だけである。同時に、外からできることもある。1.邪魔しない。2.情報通信を開放する。3.イラン国内の弾圧に対する反対を、われわれの指導者たちが明確に語る。4.最も重要なことは、犠牲者たちの果たした役割、優れた貢献を忘れないこと。彼らに起きたことを思い出すことだ。・・・「権力に抗する闘いとは、忘却に対する闘いである。」

これも、イランについての話です。もちろん、北朝鮮ではありません。ピョンヤンでも民主化デモは起きるでしょうか?


FT June 9 2010

Prairie wisdom for Britain’s age of austerity

By David Herle and John Springford

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The Economist May 29th 2010

Fear returns

Financial markets: Rescuing the rescuers

(コメント) 金融危機を世界恐慌に向かわせないために、政府や中央銀行は積極的に民間の支出を補いました。恐慌回避は国際協調の歴史的な成功例になると思われたにもかかわらず、それは形を変えて次の危機を準備したにすぎない、と恐れられています。すなわち、政府債務危機や、中央銀行への不信、通貨危機、そしてハイパー・インフレーションです。

もし逆に、政府が緊縮財政に向かい、中央銀行は早期に金融緩和を逆転させるなら、今度は不況が悪化し、競争的切り下げ、保護主義(さらに、移民排斥、ナショナリズム)という1930年代が再現します。

新興市場の成長持続は、ヨーロッパやアメリカ、日本の苦痛を緩和するかもしれません。しかし、国際協調の原則は正しく、どの国も、同じように金融緩和、財政刺激策、保護貿易反対、を唱える時期が過ぎた、と考えるべきです。国際通貨制度の問題と、各国の安全保障など、さまざまな外交問題が、強調の妨げになることも、歴史が繰り返してきたことです。

政府と銀行とが異常な共棲関係を深める、という指摘は、日本のバブル処理を思い出させます。政府や中央銀行の対策は期待されたほど効果的ではなく、その長期的な結果は、デフレと、資産市場の圧縮が続く「氷河期」に至る、という警告は日本の経験を語るものです。


The Economist May 29th 2010

Dealing with North Korea: The nightmare scenario

North Korea: Not waving. Perhaps drowning

China and America: Not exactly eye to eye

China and the Middle East: Walking between the raindrops

IT in Taiwan and China: Hybrid vigour

China’s property market: Home truths

Qatar and its emir: He’ll do it his way

(コメント) 北朝鮮の特集記事には、いつもながら、気持ちがふさぎます。北朝鮮、中国、カタール。何か共通点があるでしょうか?

北朝鮮をどうするか、ではなく、北朝鮮が崩壊するときに誰が何をするか、という問題を議論するときが来たと思います。経済状態の悪化、難民流出、後継者問題、軍事強硬派の暴走。・・・南北統合への慎重論が強いようですが、これほどの経済格差があるからこそ、制度構築や補償メカニズムがあれば、北の経済再建は地域の平和や成長に貢献できると思います。

中国指導部は、北朝鮮との現状維持を続け、中東からの石油輸入を増やし、台湾企業による中国からの世界ハイテク市場制覇を目指し、あるいは、国内の住宅バブルを鎮静化する政策に取り組んでいます。・・・それでよいのでしょうか? 現状において中国政府の利益を支持しているように見えても、本当に中国が必要とする国際秩序の改革には反するものではないか、と思います。

カタールに関する記事が、これほど面白いとは、予想しませんでした。その経済規模は、中国も青ざめるような、23%の拡大です。一人当たりGDPは購買力平価で84000ドルです。アメリカ46000ドルをはるかに抜き、最底辺のコンゴやザイールは332ドル、355ドルの200倍以上です。人口は30万足らずですが、170万人が居住します。つまり、外国からの高等技術者と底辺労働者です。

繁栄の条件は、世界最大の液化天然ガス輸出国であること。非常に活動的な指導者Hamad bin Khalifa al-Thaniを得たこと。独自な外交政策を築いていること。アラブ圏からの国際放送、アル・ジャジーラが成功したこと。また、その政府投資信託は世界の優良企業・銀行の大株主です。

これほどの資金があれば、容易に、パレスチナとイスラエルの交渉を呼びかけたり、世界のフットボールチームや大学を誘致したりすることもできます。気温40度のカタールにワールド・カップ開催の名乗りを上げ、そのコストは無視して、空調設備で完璧に調整されたサッカー・ドームを建設する、と提案します。・・・これは、理想の国でしょうか?