IPEの果樹園2010

今週のReview

5/24-/29

 

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IPEの想像力 5/24/10

イギリスでは2001年と2007年に口蹄疫の感染が拡大しました。

空を覆うほどの黒煙を上げて、家畜の山が焼かれ、それを埋まるために巨大な溝が掘られていました。家畜を失って怒り狂う人よりも、悲しみをこらえて黙り込む人が多かったように思います。対策について、ブレア首相は強い調子で国民にその必要性を説明し、ヨーロッパの諸政府にも理解を求めました。そして、農民たちを慰めようとしたのです。

感染力が非常に強いため、家畜や人の移動どころか、加工品や自動車の移動も規制し、何度も消毒しました。渡り鳥や風向きまで心配していました。そして、サダム・フセインが細菌攻撃を行ったのではないか? といった「陰謀説」が流れたそうです(今の日本なら、北朝鮮、でしょうか)。スケープゴートが求められ、イギリスのマイノリティー、特に、中国人コミュニティー(非合法な家畜の輸入・売買、移民労働者を雇うレストラン)が疑われました。だからこそ、政府の明確な説明と迅速な対応が重要です。

日本でも、過去の例や対策の検証が行われているはずです。諸外国の事例がどうであったか、担当の部局は調査して、日本で発生した際の対応手順を(発見されてからの時間に従い)決めているのが当然だと思います。殺処分の範囲、補償費用、などは原則を示し、事後に委員会を設けて、関係者が参加・発言する機会を設けることで、対策の正当性を示すべきです。

しかし、The Economist, BBC, Guardian, Times, ・・・ イギリスの口蹄疫(FMD)に関する記事や論説を見れば、日本の対応は遅く、甘いと思います。政治家たちは、このウィルスの感染力を知らずに対応しているのではないか、と思います。

特に、発生から殺処分までの時間が重要だ、と強調されます。1982年のデンマークでは、この時間差が15時間にまで短縮され、22例の発症に抑制されました。他方、イギリスでは700件以上が報告され、処分までに2-3日を要した、と言います。さらに日本の方針は、発生後、20日を経過して、まだ混乱しています。

2001年の口蹄疫は、イギリス、からヨーロッパ大陸(フランス、オランダ)やアイルランドにも及びました。韓国や中国、アメリカなどが、日本からの感染を恐れて防疫体制を強化するのは当然でしょう。上海万博に来た日本人が感染ルートだった、となれば、「毒入り餃子」とは逆に、防疫体制の検証を求められるかもしれません。

エリック・L・ジョーンズ著『ヨーロッパの奇跡』は、近代国家の統治が良質の公共財として、災害管理に優れていたことを、産業革命や、ヨーロッパの世界支配の起源として述べています。

「人びとの間に疫病がこれ以上蔓延しないように隔離措置を講じ、疫病にかかった家畜の移動を阻止する防疫線を設け、農民が所有する疫病に冒された家畜の処分に対して補償金を支払うこと、そして、穀物価格の高騰が飢饉を発生させる恐れのある地域に余剰穀物を振り向ける措置を講ずることである。」

世界のどこであれ、政府機能が低下している地域が病原菌の繁殖地となる可能性があります。インフルエンザのパンデミックを恐れたように、口蹄疫や、その他の家畜、鳥類や魚類の感染について、私たちの社会は準備があるのでしょうか?

クリントン国務長官はアジア諸国を訪問して北朝鮮への警告を発し、メルケル首相はドイツ国民にギリシャ救済を含むヨーロッパ安定化基金への負担(そして、投機的な資本移動やヘッジファンド、空売りの規制)を求めました。

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「炎上するタイ」(“Bangkok Burning,” Foreign Policy, MAY 17, 2010)という記事と写真を観て、私はギリシャ危機よりもタイを重要事件の最初に挙げました。

PASUK PHONGPAICHIT AND CHRIS BAKERが示したような、双方の自己犠牲が示される政治的可能性を、どの程度期待できるのか、まったくわかりません。しかし、タイ社会の強い願いと信仰心、貧困問題が解決を迫っているという危機感、あるいは、政治支配層の不安・恐怖心が、和解のための政治改革を実現するかもしれません。

バンコクからの共同通信(2010521日)の記事です。

・・・タイ治安当局は21日までに、タクシン元首相の支持団体「反独裁民主戦線(UDD)」幹部で、貧困層の支援に尽力し、「スラムの天使」と呼ばれるプラティープ・ウンソンタム・秦さんの逮捕状を取った。非常事態令違反で逮捕状が出ているUDD幹部65人のうちの1人。

プラティープさんは1978年、アジアのノーベル賞といわれるマグサイサイ賞を受賞。バンコク最大のスラム、クロントイ地区で活動する「ドゥアン・プラティープ財団」の理事長で、夫は福岡県出身の日本人。タクシン元首相の麻薬撲滅や貧困救済の政策を支持し、繁華街を占拠するUDDのデモに参加。軍など治安部隊がデモ拠点を封鎖すると、封鎖地域の外にあるクロントイ地区に特設ステージを設置するなどしてUDDの支援集会を開いた。・・・

梁石日の小説、『闇の子供たち』を読んだ人は、その結末を思い出すでしょう。・・・難民と貧しい農村を背景に、幼児売買や売買春、幼児の臓器売買で利益を上げる闇の社会があります。20万人を集めた全国統一大行進も、マフィアや軍・警察など、体制側の煽動と挑発で暴徒化し、指導的な活動家たちは狙撃されて、殺害されます。

それは小説でしたが、炎上するバンコクの街に、闘う彼らを観ました。

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1.バンコクの抗議・暴動・革命

2.救済融資でギリシャ危機は鎮静化したか?

3.中国の諸問題

4.北朝鮮の目指す戦争国家

・・・財政赤字削減 ・・・金融課税・規制強化 ・・・イラン外交 ・・・キルギスタン ・・・ソマリア ・・・戦争のロボット化

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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


1.バンコクの抗議・暴動・革命

(コメント) タイの政治混乱が続くことに、私たちは無神経です。日本人の観光地が一つ減った、と感じるだけかもしれません。しかし、金融市場の不安や恐怖だけでなく、虐待される幼児たちも、私たちと同じ世界に生きています。他国で権力が腐敗し、その犯罪性や残虐さを増すなら、国境を越えて自国も感染するのではないでしょうか? 何より、余りにも大きな貧富の差や教育・情報の欠如は、私たちの無神経さが許し、共棲しているものだと気づきます。

guardian.co.uk, Friday 14 May 2010

Thailand's unrest may unsettle region

Simon Tisdall

「もしこれがバンコクでなく、パリの中心で起きていたら、批評家たちは革命、階級闘争、社会契約の危機、経済崩壊、民主主義の終わりを論じただろう。 鎮静化を求める国外からの圧力は異常なほど強まったはずだ。」

議院内閣制と立憲君主制、という、日本と同じ政治体制で、軍部の介入がしばしば起きましたが、安定していると信じられていました。その政治状況は、2006年のクーデタによるタクシン首相の追放によって、全く変わったわけです。

タイの政治情勢は、マレーシアやビルマの情勢に影響するでしょうし、同じ制度を取るイギリスや日本など、西側諸国や、共産党の支配を維持する中国、アジア地域最大のイスラム国家であるインドネシア、などにも影響する、とSimon Tisdallは指摘します。

タクシンを支持する都市・農村の貧困層と、政治・軍事エリート、王室支持者などとの対立、と見られますが、その支持基盤はさらに複雑です。Simon Tisdallは、貧困層の政治的発言を弾圧してきたエリートたちだけでなく、タクシン支持者の側にも、麻薬戦争、汚職撲滅運動、南部イスラム教徒弾圧、などを挙げて、双方の責任を問います。

賢明なエリートたちは、タクシンを免罪にして帰国させ、双方が妥協する道を示唆します。しかし、政治混乱の影響で景気が悪化すれば最貧困層が苦しみ、また、イスラム武装勢力がバンコクを戦場とするかもしれません。そうなってから国際介入を議論しても遅いのです。

FT May 14 2010

Thais need talks, not posturing

和解と政治対話を進めるには、双方が早期の選挙に合意し、三番所の判決に従うことである。

WSJ MAY 17, 2010

The Killing in Bangkok

guardian.co.uk, Monday 17 May 2010

Thai leaders planned this crackdown

Pokpong Lawansiri

guardian.co.uk, Monday 17 May 2010

Thailand protests: The valiant dead

guardian.co.uk, Monday 17 May 2010

What kind of democracy does Thailand want to be?

Jonathan Steele

北部の貧しい農村には、アグリビジネスなどにより、土地を奪われることへの不安が高まっているようです。ルンピニ公園に集まっている、農村から流入した多くの貧困層が、このデモを支えています。沈黙を強いられてきた最貧困者たちに政治参加の道を開くことで、タイ民主主義を転換するときです。

FP MAY 19, 2010

What the Heck Is Going on in Thailand?

BY JOSHUA KURLANTZICK

タイの内部で起きていた1980年代、90年代の急激な社会変化は、貧しい農村部の国民に、彼らが政治システムから排除されている、という不満を与えました。貧困層の声を吸収したタクシンは、ベルルスコーニのような権力者タイプであり、チャベスのように間違いを犯したけれど、ルーラ・ダ・シルバのような貧困解消と旧エリートとの合意を得た政策を展開しなければなりません。

FT May 19 2010

Thailand’s crisis goes beyond red and yellow

By David Pilling

これは「微笑の国」ではありえない。クーデタで権力を握った支配層が、選挙の早期実施を求めるデモ隊を排除するために60人以上の死者を出すようなことが許されるのか?

1989年の天安門事件とまで言わなくても、昨年のテヘランにおける民主化を要求するデモの弾圧も、その後の国際的な非難は少なかった。もしギリシャで、緊縮政策に反対するデモ隊に発砲して弾圧したら、どれほどの抗議の声が上がるか?」

タクシンは、タイの歴史上、最も高い率で民主的に支持された指導者であった。また、タクシンとその派閥を追放してからも、社会的な不満を吸収して赤シャツのデモ隊は勢力を維持してきた。一部のテロリストを非難して、これを弾圧した政府の行動は間違いだ。

WSJ MAY 20, 2010

Thailand's Farmers Have Stood Up

By ANDREW WALKER

guardian.co.uk, Thursday 20 May 2010

Thailand's only hope lies in political compromise

Thitinan Pongsudhirak

The Guardian, Thursday 20 May 2010

Thailand: fanning the flames

WSJ MAY 21, 2010

Sacrifices in Bangkok

By PASUK PHONGPAICHIT AND CHRIS BAKER

「タイの近代史における最悪の瞬間だった」とPHONGPAICHIT AND BAKERは断言します。

赤シャツのデモや街頭選挙を非難する人びとは、次のような疑問に答えるべきだ。・・・「なぜこれほど多くの人が集まったのか?」 「なぜ長い間、これほど暴力を抑えてきたのか?」 「なぜ兵士たちが近付く間も、5000人もの人が立てこもり、自分たちは死ぬつもりだ、と宣言したのか?」

簡単に答えを見つける者もいる。赤シャツたちは愚かで、教育もなく、タクシンに買収されている、と。しかし、この答えは、過去1世代に対社会で起きたことを無視している。

1.タイ経済は世界経済と緊密に統合された。混乱は世界に伝えられ、タイ経済に悪影響が及ぶ。2.普通の、まともな人びとが、タイの政治システムに憤慨している。それゆえ、タイの政治は、その経済に一致しなければならない、と。

仏教国であるタイが新しい政治システムに向けて和解を組織できるか? 政治的解決策のカギは、アビシットAbhisit Vejjajiva首相と、タクシンThaksin Shinawatra元首相が、国民のために自ら犠牲を示すことにかかっている。アビシットは無条件で選挙を早期に実施する。これは農民たちがタクシン派を支持するとわかっているから、彼らの犠牲を意味する。またタクシン派は、彼が帰国しても没収された資産を取り戻すことはせず、禁固2年の判決に従う。

この国の最悪の時期を乗り切るために、二人は政治家として犠牲を受け入れることだ。


2.救済融資でギリシャ危機は鎮静化したか?

(コメント) 財政危機や通貨危機は、その本質に、政治的危機と社会不安をともないます。

ギリシャの緊縮策は実行できないかもしれません。ドイツの右派はユーロを政治的な材料とみなすでしょうか? スペインの社会主義政権はどのような改革を描くのか? フランスのサルコジ、イタリアのベルルスコーニ、といった政治指導者が危機を利用する結果として、予想もしない不安が広まるかもしれません。イギリスの連立政権を試す市場の動きも、まだ、始まったばかりです。バルト海や黒海、カスピ海、バルカン半島の小さな紛争が、ヨーロッパからアメリカやアジアに波及します。

LAT May 13, 2010

Greece's troubling gift

NYT May 13, 2010

We’re Not Greece

By PAUL KRUGMAN

「ギリシャは明日のアメリカだ」という警告にPAUL KRUGMANは憤慨します。アメリカの債務はGDPに比べて小さく、何よりも、正しい政策によって景気回復を実現できる。独自の通貨をもつことの重要性は、イギリスを見ても明らかで、ギリシャにはそれがない。

そして、それにもかかわらず、ギリシャ危機の幻想を唱える者たちの政治戦略は分かっている。民主党の社会保障制度を嫌う保守派・富裕層・共和党の主張である、と。

FT May 13 2010

Estonia shows euro is not doomed project

May 14 (Bloomberg)

Euro Has No Future Without a Political Union

Paul De Grauwe

欧州委員会のバローゾ委員長に助言するPaul De Grauweは、明確な政治同盟への前進を求めています。そうでなければ市場はユーロ圏内の不均等な財政状態を持続可能と見ないからです。

実際、ユーロ圏は全体として見ればアメリカやイギリスよりも健全です。ところが、ギリシャのようにごく小さな国で生じた顕著な赤字に注目が集まっています。しかし、アメリカ国内における各地の財政赤字は、自動的に、誰も気づかぬまま、連邦財政によって補填されるのです。ユーロ圏ではこうした財政移転に激しい反対の声と政治論争が起きます。これこそが、政治同盟を欠いた通貨同盟の致命的な欠陥なのだ、と市場は理解し、その崩壊を恐れるのです。

guardian.co.uk, Friday 14 May 2010

More than a euro crisis

Dan Roberts

噂では、フランスはユーロからの離脱を示唆して脅し、ドイツは金の備蓄を増やしている。ドイツ連銀はマルクの復活計画を準備している。・・・ 1兆ドルの救済策もユーロ解体の恐怖が膨れ上がるのを変えませんでした。

ポール・ヴォルカーは、ユーロの不安とアメリカの住宅金融における破綻とを同様に心配しています。Fannie Mae and Freddie Macは住宅債務の返済を、支払えなくなった所有者に代わって、ますます政府金融で引き受けます。どちらについても、イギリスの方が回復は容易だ、と。

唯一の理想的な解決策は、これらの国が協力して成長を回復し、税収が増えて財政赤字を解消することです。しかし、政府の規制や課税策は資本市場との軋轢を高めています。

SPIEGEL ONLINE 05/14/2010

Slide Continues

Doubts Remain Despite Efforts to Shore Up Euro

FT May 14 2010

Man in the News: Jean-Claude Trichet

By Ralph Atkins

FT May 14 2010

Small is beautiful

SPIEGEL ONLINE 05/15/2010

European Central Bank President Jean-Claude Trichet

A 'Quantum Leap' in Governance of the Euro Zone Is Needed

ECBのJean-Claude Trichet総裁に対するインタビューです。

「ぐっすり眠れますか?」・・・ 「悪夢を見たことはないですか?」・・・

トリシェ総裁へのインタビューは、こんな皮肉な質問に始まって、ドイツ人のインフレ嫌いを刺激します。「あなたが・・・国債を購入してもよいのですか?」 ・・・金融秩序の維持はインフレ抑制の減速と矛盾しない、と答えます。つまり、リーマンブラザーズが破綻した後に国際協力で金融パニックを抑えた状況と同じなのです。

「財政危機にある国の国債を購入することに、ドイツ連銀総裁、オランダ中銀総裁、ECBの主任エコノミストが反対投票しました。ユーロに関する最高の意志決定会議でこれほど分裂することは珍しいのでは?」 これに対しては、通貨供給は増やすことはない、と答えます。・・・「市場の一部がより正常な働きをするように助けるだけだ。」

「ECBは独立性を失い、信認を失うのではないか?」 ・・・「ばかな!」

「ギリシャは離脱した方が良いのではないかですか?」 ・・・いや、それも違う。ユーロ圏はガバナンスを改革する。加盟した国は改革を目指して飛躍する。 ・・・「ヨーロッパの政治家たちはECBを貨幣増刷の機械として利用したいだけではないか?」 ・・・個人の意見は述べられない。

LAT May 16, 2010

Will the 'PIIGS' trash Europe?

Doyle McManus

WP Sunday, May 16, 2010; A17

European Union: A coalition of irresponsibility

By George F. Will

「ドイツのメルケル首相がギリシャ政府の赤字の支払いを認めた結果、ノルトライン・ウェストファーレンの選挙で敗北した。当然だ。」

1648年、ウェストファリア条約が、30年戦争を終わらせ、ヨーロッパの国民国家システムが登場するのを公認した。31年戦争(1914-45年)が終わってから、ヨーロッパのエリートたちはさまざまなナショナリティーをなくすことに励んできた。ギリシャの債務危機はこの試みがもち手に負えない矛盾を暴露し、西欧の戦後社会モデルが壊れやすいことを示した。すなわち、制限を欠いた福祉国家の蔓延である。」

ギリシャはその典型を示しました。政府は得るものより多くを支出し、あとは国家が何とかする。ユーロ圏に参加して以来、モラル・ハザードはさらに悪化し、他方、ユーロを導く国家の力はどこにもないのです。

「誰も敬礼しないEUの旗。誰も歌わないEUの歌。誰も名前を知らないEUの大統領。代議員以外は誰も権限を与えたがらないEUの議会。誰の称賛せず、誰も管理していない官僚制が凝固したEUの首都。そして、通貨はヨーロッパ政府がないこと、今後もすぐには誕生しないことを認めている。財政のルールが参加国が違反しても誰も罰することがない。」

2002年に導入されたユーロ紙幣のデザインはこのユートピア的な願望を示している。国家や文化、芸術の国民的英雄を示し、その国に独自な物語を描く絵を含む、各国の多彩な通貨は廃棄された。ユーロにより、16の国家はそれらに別れを告げた。そしてユーロ紙幣には、どこのも存在しない窓、門、橋が描かれている。それらは、どこから来たものでもない。その意味で、『ユートピア』なのである。」

ユーロは文化の絶望を示し、同時に、民主主義の基礎となる「ヨーロッパの民衆」も欠いている。

FT May 16 2010

Europe must reset the clock on stability and growth

By José María Aznar

「過去160年間、経済危機からスペインを救った左派政権はない。」・・・ José María Aznarが要求する改革は、労働市場、原子力発電所、銀行改革、地方政府の規模削減、年金改革、競争促進、に及びます。そして、逆に、政府が受け入れた増税策を批判します。

FT May 16 2010

To save the eurozone, reform its governance

By Wolfgang Münchau

救済融資の何が間違っているのか? ・・・フランスは投機家を非難する。ドイツは放漫財政を許せない。両者の意見は対立している。しかし、どちらも間違っている。

ヨーロッパは投機的な攻撃にさらされていない。「問題は、投資家たちが、そこにはヨーロッパの年金基金も含まれるが、システムへの信頼を失っていることだ。」 ポルトガルやスペインの財政赤字の原因はギリシャと違う。「労働市場の機能不全と民間部門の膨大な債務とが、結びついている。」

こうした構造的問題に、緊縮財政で対応するのは間違いだ。債務削減と競争力の改善を実現するために、耐久財でドイツと同じ水準の競争力がある価格をデフレで達成する、というのは不可能だ。「それではデフレと不況の悪循環が続くだけで、構造改革に失敗する。」

「ブラッセルは、そしてベルリンでは一層、事態の緊急性を理解できていない。・・・スペインを悪循環から抜け出せる方法、ユーロ圏の南北に生じた競争力の格差を埋める方法が求められている。」 すなわち、北部、特にドイツの国内消費を増やし、南部、特にスペインの財・労働市場の改革を進める必要がある。

「逆に、ドイツは膨大な経常収支黒字を抑制する行動を取ろうとしないし、(スペインの)ザパテロ首相は緊縮政策を選択した。なぜなら、労働市場改革は選挙でより強く反対されるからだ。」

FT May 16 2010

Europe: Danger zone

By Tony Barber

欧州委員会のプロディ委員長やファン・ロンパイ大統領は、メルケル首相が救済融資に対する憲法裁判所の反対を心配していることに理解を示します。しかし、メルケルがEUの条約を改正して「繰り返しユーロ圏の財政ルールに違反する国を除名する」という考えには反対です。

「もしある国が、たとえ一時的であっても、ユーロ圏から排除されるなら、金融市場に対して、ユーロ圏が真の通貨同盟ではなく、単なる固定レート制と同じ仕組みである、というシグナルを送ることになるだろう。諸国が経済状態に応じて参加したり離脱したりする、と。それは、長期的に見て、ユーロ圏にとって致命的な失敗になる。」

May 17 (Bloomberg)

Greece’s Bailout Heroes Arrive in Leaking Boats

Kevin Hassett

guardian.co.uk, Monday 17 May 2010

Greece's debt must be restructured

Jayati Ghosh

「アフリカの最貧重債務諸国(HIPCs)の経験からギリシャ国民は学ぶことがある。」 緊縮策で債務諸国が救済されることはない。成長は失われ、債務がさらに累積するだけだ。債務の組み換えだけが解決策である。それを避けている限り、不況を苦しむギリシャ国民にも、債務を免除する銀行にも、債務組み換えによって失うものが大きくなる。

債務組み換えだ政治課題として話し合いに登場することもないのは、金融危機にもかかわらず、金融ビジネスの権力が今も支配的であることを示している、とJayati Ghoshは批判します。

SPIEGEL ONLINE 05/17/2010

'We Only Have One Shot'

How the Euro Rescue Package Came Together

SPIEGEL ONLINE 05/17/2010

The Hollow Euro

Specter of Inflation Haunts Europe

ユーロ救済のために、ECBはインフレを引き起こすのか? ドイツから見れば、今までもフランスはECBの独立性を嫌ってきたのであり、ユーロ危機がECBの金融政策を政治主導で変えさせるチャンスなのです。しかも、来年任期を終えるまで、ECB総裁はフランス人です。

ヨーロッパの至る所に債務が累積しており、政府はそれをインフレによって軽減することで維持してきたのです。そのためには中央銀行に債務を購入する十分な貨幣を供給させることです。ますます多くの人が「ハイパーインフレの再現」を恐れています。

ユーロ圏が「インフレ同盟」になる、という不安が高まれば、ドイツの金融市場が最初に崩壊するでしょう。ドイツ連銀のAxel Weber総裁がECBの決定に反対投票したことは無視できません。メルケルは彼をECBの次期総裁に支持したいと考えます。

財政安定・成長協定を強化し、各国の財政状態を透明にして直接に管理しなければならない、とドイツ政府は考えます。

FT May 17, 2010

Does Argentina have lessons for Greece on exiting a crisis?

Jude Webber

FT May 17 2010

The death of the European dream

By Gideon Rachman

アメリカ、中国と並ぶ、世界の指導者として、EUが新しい世界秩序を担う、という夢は潰えました。

EUはむしろ、ユーロ崩壊のリスクを世界に及ぼす形で注目を集めています。EUの目指したパワーは、アメリカや中国と違って、軍事力や工業力だけでなく、アイデアや理想のパワーでした。国家は協力して秩序を築き、人びとは国家を超えて繁栄できる、という新しいモデルをヨーロッパは体現していたのです。EUが衰退すれば、それと異なるモデル、すなわち、法律よりも軍事力が、国民国家の優位が、権威主義的な支配が、世界の新しい秩序にとっても重要になります。

それは、東アジア共同体を支持した日本の首相や、EUと協力して外交政策を進めようとしたオバマ政権の基盤も失われることを意味するでしょう。気候変動や核拡散を止めるには、単独で行動しても効果がなく、国際協力が不可欠だ、というのは、EUや彼らに共通した主張でした。デリーでも、北京でも、ワシントンでも、ヨーロッパへの失望は顕著です。

FT May 17 2010

The sad end of Greece’s better tomorrow

By Michael Skapinker

WSJ MAY 17, 2010

Europe Needs an Independent Debt Commission

By DENNIS J. SNOWER

たとえば、誰でも家が買えるようにする政策は多くの人に支持されます。しかし、長期的に見れば、それは公的債務を増やすでしょう。これが7500億ユーロの救済計画を認めたEUが学ぶべきことです。救済基金は症状を一時的に和らげただけで、解決するわけではないのです。

中央銀行に独立性を認めたように、わたしたちは国債に関しても独立の機関(国債管理委員会)に監督させるべきだ、とDENNIS J. SNOWERは主張します。政府は長期的な「財政ルール」(公的債務のGDP比率)を決めますが、そのルールの範囲以内で政府は税制刺激策を行います。

政府は、不況によって、有権者や支持基盤からルールを無視するように圧力を受けるはずです。それゆえ、独立した機関が監督することが必要です。

国債管理委員会がないから、ギリシャ政府は減税して不況を緩和しようとすると、資本市場が財政赤字拡大を嫌って金利を上昇させ、刺激策は失敗します。国債管理委員会があれば、債務が増えても(ルールを守っているから)金利を上昇させることなく、景気を刺激できるのです。

May 18 (Bloomberg)

Euro Dies Slow Death Without Common Fiscal Policy

Matthew Lynn

財政同盟でユーロ圏は救えない。1.ユーロを採用した国も、単一国家への参加を認めたくはない。国民投票で否決される。2.政府が今後の5年間に行うことは財政再建であり、有権者から嫌われることだ。3.財政同盟に参加した国を強制するメカニズムがない。

残された選択肢は、ユーロ圏を解体することだ。

SPIEGEL ONLINE 05/18/2010

Former Central Bank Head Karl Otto Pöhl

Bailout Plan Is All About 'Rescuing Banks and Rich Greeks'

ドイツ連銀の元総裁、Karl Otto Pöhlにインタビューしています。ペールはまだユーロをもっているそうですが、その価値は失われていく、と怒ります。各国が自国の債務に責任を負うだけで、ECBはこれを購入してはならない、と決めたEUやドイツ連銀の法的枠組みを、今回の救済計画が破壊したからです。

「ほかに選択肢はない?」 ・・・そんあことはない。まず、ギリシャはユーロを採用できなかったはずだ。また、欧州委員会やECBは、もっと早期に、ギリシャの財政を健全化するために介入するべきだった。もっと早期に、債務免除し、組み替えるべきだった。

「ドミノが起きる?」 ・・・そうは思わない。それは政治家の脅しであって、真の目的は別のところにあった。「救済合意が成立した日、フランスの銀行の株価は24%も跳ね上がった。それを見れば救済がだれのために行われたかわかるだろう。銀行と、ギリシャの富裕層を救ったのだ。」

「債務組み換えは投資家を債券から遠ざける?」 ・・・逆だと思う。債務の3分の1を免除して、ギリシャは債務問題を回復できただろう。そして市場では債券への信頼が回復されたはずだ。しかし、今では遅すぎる。混乱が支配している。

「一晩でユーロは解体できる?」 ・・・ペンでユーロはできたのだから、もちろん、できる。・・・EUは反対しているが、ギリシャはドラクマに戻るべきだ。

WP Tuesday, May 18, 2010; A19

For a solution to the euro crisis, look to the states

By Martin Feldstein

アメリカは50州からなっているが、その債務比率は非常に低い。カリフォルニアでも、予算赤字は州GDPの1%、債務は4%でしかない。その理由は、給与やサービスなど、行政目的の支払いに州が借り入れることを、憲法で禁止しているからだ。

EMUもそうすればよい。ドイツ政府は財政赤字の上限を含むように憲法を修正した。他の諸国も続くべきだ。

FT May 18 2010

Europe has been damaged by internal wrangling

By Charles Grant

危機に対する遅れた対応が問題だ。独仏の対立が悪化し、ドイツは孤立し、欧州委員会は弱まり、EUは内向的になる。

FT May 18 2010

Eurozone plays ‘beggar my neighbour’

By Martin Wolf

EMUの設計は、ユーロ圏に参加したことで起きた資本流入、バブルと、その破裂がもたらした財政赤字によって崩壊しました。ユーロ圏の政治家たちが投機家を批判したり、債務組み換えを拒んだり、財政規律の強化を唱えるのはわかっていたことです。しかし、周辺部では成長が回復せず、返済できないでしょう。

今後、ユーロ圏全体が緊縮財政に向かうのは、世界景気の回復を妨げます。

WSJ MAY 18, 2010

Greek Myths and the Euro Tragedy

By JOHN H. COCHRANE

guardian.co.uk, Wednesday 19 May 2010

Europe is sleepwalking to decline. We need a Churchill to wake it up

Timothy Garton Ash

コペンハーゲンの地球環境サミットはEUが世界政治の中で無視される存在であることを示し、覚せいを促す出来事だった。そして、今も、ギリシャ危機を抑える力がないことは明らかだ。悲観主義が支配するのは当然である。

ヨーロッパの計画を進める力は、これまで5つあった。1.コールやミッテランの世代が共有したヨーロッパの経験。2.ソ連の脅威。3.冷戦下におけるアメリカの支援。4.ナチ後のヨーロッパで近隣諸国との友好関係を築こうとしたドイツ連邦共和国。5.二重の意味でヨーロッパの指導権を得ようとしたフランス。

新興諸国の影響力が増大する中で、新しい挑戦が時始まっている。しかし、ヨーロッパ市民たちは世界情勢の変化を気にせず、生活の質を改善するだけで十分だと感じている。新たにウィンストン・チャーチルが現れて、ヨーロッパ市民に告げなければならない。・・・ Europe, wake up!

SPIEGEL ONLINE 05/19/2010

'New Culture of Stability'

Germany Forges Ahead on Reforming the Euro

FT May 19 2010

Schäuble interview: Berlin’s strictures

By Quentin Peel

ユーロ危機を避けるためには、金融規制の強化と、連邦主義への前進。

FT May 19 2010

A perverse European fund strategy

By John Gapper

SPIEGEL ONLINE 05/20/2010

How Much Euro Decline Will Obama Tolerate?

A guest commentary by Melvyn Krauss

EUとアメリカは協力してユーロ安の阻止に向かうか?

Times Online May 20, 2010

The Thatcherite road is all Europe has left

Bill Emmott

債務免除はしない。厳格な財政規律を求める。それでも景気回復を図れるだろうか? 特に為替レートのないユーロ圏内の赤字諸国では? 財政赤字削減のための不況が長引くだけではないか? ドイツが支持する唯一の合理的な選択肢は、赤字国が財・サービス市場、そして、労働市場の自由化を進めて成長を刺激する、ということだ。

すなわち、ラテンアメリカ型の債務組み換えはない。政治・財政同盟に向かわない通貨同盟と、完全な市場改革・自由化促進、要するに、EUはサッチャー主義の普及機関になる。しかし、ドイツ政府はそれを受け入れられるのか? 

WSJ MAY 20, 2010

The Big Fat Greek Debt Crowd-Out

By SWAMINATHAN S. ANKLESARIA AIYAR

新興諸国がIMFの融資枠を増やした成果は、EU諸国向けの融資拡大によって占められるのか? これまで発展途上諸国の放漫財政を批判してきたはずのヨーロッパ諸国が、救済融資の対象です。


3.中国の諸問題

FP MAY 13, 2010

Bubble, Bubble, China's in Trouble

BY CHRISTINA LARSON

「アメリカン・ドリームと同じように、チャイニーズ・ドリームがある。前の世代よりも生活が改善される。雇用、物質的な水準、そして、住宅。」

住宅価格の上昇とバブルの懸念は強まっています。政府はバブルが崩壊するのを恐れつつも、急速な都市化や資産市場の規制、金融サービスの限界を前提すれば、効果的な規制を見つけることはできそうにありません。

投資のために何軒も住宅を所有し、急速に資産を増やす都市居住者がいたり、地方政府も安易な景気刺激策に頼ります。住宅価格の上昇によって強まる社会的不満と政治対立について、アメリカとは違う形であっても、大きな経済条件の崩壊や政治介入、政治的不安定化が迫っていると言う者もいます。しかし、誰にもその時期を予告できません。

WSJ MAY 13, 2010

Shanghai Expo Snub

By LISA MOVIUS

WSJ MAY 17, 2010

Farewell to America's China Station

By MARK HELPRIN

上海万博で地域の労働者たちは生活を改善できたのか? 地域の文化を否定した企画です。

FP MAY 18, 2010

Naval Gazing in Asia

BY CHRISTIAN CARYL

FT May 18 2010

China’s century is not yet upon us

By Joseph Nye

中国はアメリカに代わって世界を指導する地位に就くのか? より大きな発言力、国際秩序の転換を求めるべきか? Joseph Nyeは、まだしばらく、中国の時代は来ない、と主張します。そして、それが中国の利益であるし、アメリカの懸念を払しょくすべきなのです。

1900年にドイツが工業力でイギリスを抜いたことを例に挙げます。その後のドイツが覇権を約束されたわけではなかった、ということより、中国はまだまだその水準に達することもない、と言うためです。GDPでも、地域の差は大きく、金融市場も未発達で、人民元が国際取引を担うことはありません。また、今後の成長率は落ちるでしょう。一人当たりGDPでは、もっと大きく遅れています。

何よりも、中産階級の政治参加を許容し、地域間の不平等を解消し、民族対立を回避しなければなりません。そのような政治システムがどうすれば実現できるのか、むしろ、現在のシステムにおける腐敗、汚職に関する批判が高まっています。

中国はアメリカと協力することで多くの利益を得られるでしょう。そして、軍事的な朝鮮や国際秩序に関する逸脱は、周辺地域や既存秩序との摩擦を強めるだけでしょう。

WSJ MAY 19, 2010

Hoarding Resources Threatens Free Trade

By JAMES BACCHUS

WP Wednesday, May 19, 2010; A19

Time to rethink U.S.-China trade relations

By James McGregor

WSJ MAY 20, 2010

Asia's Troubled Waters

By MICHAEL AUSLIN

FT May 20 2010

Strategic resources: a richer seam

By Tom Burgis


4.北朝鮮の目指す戦争国家

LAT May 19, 2010

Talking won't work with North Korea

Donald Kirk

guardian.co.uk, Thursday 20 May 2010

Acts of war in North Korea

Jim Hoare

FT May 20 2010

America must show resolve over North Korea

By Victor Cha

核兵器を保有した国が通常兵器で攻撃してきた場合、それをどう扱うべきか? 北朝鮮の金正日は、息子に権力を継承させるため、韓国やアメリカなどから物資や資金をほしがっている。それが遅れたら、艦艇を沈没させて46人の犠牲者を出すことも可能だと考える。オバマと韓国大統領の連携がそれを許さない。安保理決議を採択し、中国や日本とも協力して、そのことを示せ。

FT May 20 2010

Pyongyang takes a backward step

Times Online May 21, 2010

Rogue State

WSJ MAY 21, 2010

Lessons From a Sinking


guardian.co.uk, Monday 17 May 2010

Politicians ignore Keynes at their peril

Dean Baker

WP Monday, May 17, 2010; A13

Wake up, America

By Robert J. Samuelson

guardian.co.uk, Tuesday 18 May 2010

A coalition for cuts? Canada, not Thatcher, is the model

Simon Jenkins

The Times May 19, 2010

The City got its way but might yet regret it

Anatole Kaletsky


SPIEGEL ONLINE 05/18/2010

Tackling the Euro Crisis

EU Finance Ministers Take On Hedge Funds

FT May 18 2010

EU ministers back new hedge fund rules

By Nikki Tait in Brussels and George Parker in London

SPIEGEL ONLINE 05/19/2010

Europe vs. the Financial Markets

How Serious Is the EU about Regulation?

By Veit Medick, Severin Weiland and Philipp Wittrock

FT May 19 2010

Investors must take care when playing in the Street

By Tom Brakke

FT May 19 2010

Final touches for sensible regulatory reform

By Howard Davies and David Green

WSJ MAY 20, 2010

Germany Shoots the Messengers


guardian.co.uk, Monday 17 May 2010

Iran's nuclear deal

Stephen Kinzer

FT May 17 2010

Tehran promises exit from labyrinth

NYT May 18, 2010

Iran, the Deal and the Council

guardian.co.uk, Wednesday 19 May 2010

The Iran nuclear deal and the new premier league of global powers

Simon Tisdall

WP Thursday, May 20, 2010; A21

A diplomatic game of chicken with Iran

By David Ignatius


FP Thursday, May 13, 2010

The end of the world as we know it?

Posted By Stephen M. Walt


FP MAY 14, 2010

The Land of Perpetual Revolution

BY PHILIP SHISHKIN

FP MAY 14, 2010

Land Grab

BY PHILIP SHISHKIN

キルギスタンで繰り返された「革命」について。


SPIEGEL ONLINE 05/18/2010

Inside the World's Worst Hellhole

Somalia, the Perfect Failed State

By Clemens Höges in Mogadishu


WP Monday, May 17, 2010

David Cameron's declaration of independence

By Marc A. Thiessen


SLATE Wednesday, May 19, 2010

The Cyborg Insects Are Coming!

By Brad Allenby

SLATE May 19, 2010

Wonder Weapons Don't Win Wars

By Fred Kaplan

戦争の自動機械化はどこまで進むのか?

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The Economist May 8th 2010

The chance after Greece’s rescue: Coming to a city near you?

The Greek crisis: The sad end of the party

Charlemagne: The euro’s existential worries

Buttonwood: Greek chorus of boos

(コメント) ギリシャからユーロの危機は続いています。市場心理を逆転させる政府の決断は、アメリカよりユーロ圏の方が難しいのです。The Economistは、ギリシャの債務組み換えが避けられないことに加えて、並行した三つの決断を求めます。まず他の赤字諸国(特に、ポルトガルとスペイン)は、ギリシャと違って、財政再建と市場改革を決断することで成長を回復できます。また、ECBは調整過程でデフレが悪化しないように協力するべきです。そして、黒字国のドイツは減税と国内需要の刺激を決断すべきです。

経済改革を阻むだけでなく社会を蝕む、ギリシャ政治の内部に広まってきた深刻な不安定要因を、記事は紹介しています。他方、ヨーロッパの政治家たちが、ユーロを劇的に改革することもないでしょう。ユーロの危機では、各地の社会契約と民主主義のプロセスが対立しています。ギリシャ政府を管理・吸収することも、その赤字を肩代わりすることも、ヨーロッパ市民は望みません。

Buttonwoodの記事は、緊縮政策で景気回復にも成功した1981年のサッチャー政権と、現在のギリシャ危機とを比べています。


The Economist May 8th 2010

The least-bad rich world economy: The charms of Canada

Migration in China: Invisible and heavy shackles

Nepal: Himalayan precipice

Banyan: Wheel of misfortune

Deliberative democracy: Ancient Athens online

(コメント) 1995年、ウォール・ストリート・ジャーナルが第三世界の一員とみなしたカナダが、今では先進諸国の模範です。しかし、記事は金融規制・政策より、中国からの需要をその理由と見ています。他方、その中国では国内の人口移動が、住宅や学校に関する都市・社会問題、所得格差の拡大を強めています。どのように戸籍制度を改めるべきか、政府の内部でも意見が対立しています。

中国、モンゴル、ネパール、台湾、タイ、キルギスタン、・・・世界中で、“people-power”が強調されました。しかし、東欧でもアジアでも、その結果は民主化ではありません。旧支配エリートたちは民主化を嫌い、旧体制を倒した人民を無視して、新しい政治体制を築きました。1.支配層は権力を維持し続ける。2.革命を模倣し、人民を操る独裁者が容易に現れる。3.軍が介入を決断すれば、いつでも人民は抑圧できる。

しかし、1989年の天安門でこれを示した中国の権力者は、その後、二度と“people-power”を再生しないように、特に、経済成長の維持に努めました。

Deliberative democracy”という記事が面白いです。「討議(あるいは熟慮)民主主義」と訳すようですが、民主主義の実験が続いていることに驚きました。豊かな社会でも、中国でも、インターネット社会でも、人種差別やイデオロギーの支配する社会でも、討議や熟慮を基礎にした民主主義の可能性はあるのかもしれません。