IPEの果樹園2010

今週のReview

5/17-/22

 

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IPEの想像力 5/17/10

NHK・BS「世界一番紀行」を観ました。世界最北の町、北緯7813分のロングイヤービエン。人口は約2000人です。

この町があるスヴァールバル諸島は、オランダ人、ウィリアム・バレンツが、北極航路を探す過程で発見したそうです。しかし町ができた理由は、町名にもなっているロングイヤー(アメリカの企業家)が炭鉱に投資したからです。

帝国の時代、列強の対立は、1920年、スヴァールバル条約に至ります。主権はノルウェーにあることを認め、加盟国は自由に石炭を採掘できる、と決めました。また非武装化され、軍隊は置けません。現在、ノルウェー資本とロシア資本の三つの炭鉱があります。

炭鉱では、労働ビザなしに世界中から来た人たちが働けます。住むところと仕事があれば暮らせる。・・・ここは自由な移民の町であり、難民や貧しい国から働きに出て差別された人びとにとって「夢の国」である、と番組は解説します。・・・ある意味では、そうでしょう。

ロングイヤービエンの生活を支えるのはコープです。この唯一の大型スーパーには生活物資が充実しています。セルビア、フィリピン、ロシア、イラン、など、15カ国?から来た人が働いています。経営者はスベインさん。彼女の夫は空港管制官で、夫婦に子供ができなかったため韓国から二人の養子を迎え、育てました。しかし、二人とも今は町を離れました。

セルビアからの女性ミツァさん。夫は炭鉱で働きます。坑道は15キロ。彼の仕事は鉄パイプと凝固剤で崩落を防ぐことです。高度な掘削機など、機械化が進み、労働者は少ないようです。世界最高の品質だ、と自慢します。1週間働き、1週間休む。スベア炭鉱とロングイヤービエンは、北極の大地に浮かぶ軍艦島のようです。

ミツァの一家は、1991年からのユーゴ内戦ですべてを失い、祖国を捨てるしかなかった、と言います。10年前、ここに来て、差別されないで働くことができるのを知った、と。彼らはクロアチア国籍ですが、セルビアに住んでいて、ノルウェーに逃れました。しかしノルウェー本土では働けない。夫婦は、いつか家族みんなでセルビアに帰りたい、と考えます。

ロングイヤービエンには学校が一つだけあります。小学校から高校まで、250人が学びます。高校を卒業すれば外国人でもノルウェー本土の大学へ進めます。そして大学を出れば本土でも働けます。子供たちはこの町に残りません。ここは永住の地ではない。子供はすぐに大きくなって出ていく、とわかっています。

谷あいにある町に、4か月間、太陽は出ません。・・・太陽の祭り。子供たちが呼びかけます。「太陽よ、戻ってきてください。この町へ。」

フィリピンから来たレルマはコープで働き、実家に仕送りします。夫はノルウェー人で、配管工事の会社を経営しています。アジア人とノルウェー人の夫婦が多い、と言います。ロングイヤービエンに来た者は、まず学校へ通います。外国人のための無料のノルウェー語教室があるからです。彼女もそうでした。

水道完備、火力発電があり、生活物資、特に食糧はノルウェー(あるいは、ロシア)から空輸されます。関税はかかりません。コープの巨大な倉庫に住民の消費する数週間分を保管しています。ロングイヤービエンは運命共同体です。コープの労働者たちは誕生日を祝って歌い、新生児はお店で仲間に見てもらい、祝福されます。

これほど厳しい自然と、高度な文明に結びついた資源、社会的な受容力があるから、移民を自由に受け入れる町は存在します。

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「面影」と「冬の華」を読んで、完成した美しい小説が示す言葉の重さ、尊さを感じました。

幕末の「桜田門外の変」を日本の歴史で学んだことがあると思います。しかし、乙川優三郎の「面影」という作品は、その歴史に関わる一人の若者と釣舟宿の娘との間に、一人の男の子が残された話です。

歴史の大きな変転と、それに関わる政治家や運動家たちの動きが渦をなしていたとき、水戸と薩摩、幕府の開国派、それを強く否定した朝廷や尊攘派、などの対抗と思惑が交錯します。物語の主要な人物は佐倉藩の諜報である半蔵と、彼が見張っていた一人の男、水戸から江戸へ兵を送り込んでいた酒泉という若者です。

「国策としての開国に動いた大老とことごとく対立して永蟄居になった水戸の老公にも冷静に時代を見る目があったとは言えない。開国は誰が為政者になっても実現しなければならない時期にきていたし、攘夷ほど危険で感情的なものもなかった。けれども有志の情熱を掴むのは尊攘論で、水戸の急進派をとめることは誰にもできなかったのである。」

「そこからはじまった混乱がとうとう幕府を倒し、多難な国事を無視して暴れてきた攘夷派が、未来への舵を握ろうとしている。・・・実現性のない暴論で幕府を翻弄し、国を滅ぼしかねない暴挙を繰り返した揚げ句、武力で実権を手に入れようとしている。」

半蔵は酒泉に、彼らの信じる尊攘を冷静に考え直すよう、説得を試みます。朝廷も、薩摩も、水戸の旧藩主も、彼らが唱える理想とは別のもので動いているはずだ、と。

「半蔵は細い吐息をして静かな海へ目をやった。この平穏な眺めを異国の侵略から守るために彼らは闘っているはずであったが、今は別のものを見ているとしか思えなかった。彼らが勝てば勅命を奉じて排撃がはじまる。その先にあるのは膨大な苦しみと死の泥沼だろう。青年は国を守ることと、家臣の忠節を混同していると思った。」

彼の説得は成功しませんでした。井伊直弼は暗殺され、酒泉も襲撃に加わり、その後、死罪となります。

「時代が違えば酒泉にも別の人生があったはずだと思うのは無事に生きている者の感傷だろう。あれからそういう人間が大勢出て、大勢死んでゆき、それでも薄らぐことのない不安の中で、人びとは生きるために国家とは無縁の小さな希望を握りしめていた。」

「あれから何が起きたのだったか、漠然と信じてきたものが滅んで、偏頗な志を貫くための暴力が蔓延る世の中になってしまった。」

しかし、小説の主題はそうではありません。この背景によって立ち上がる少年の姿を、最後に半蔵が認めることへと向かって、繊細な言葉は綴られます。

「引き潮を追うように沖へ歩いてゆく子供に志士の勇姿は重ならないが、清々しい営みの力を感じる。実父とは無縁の人生を掴んだ子を見ると、半蔵はむしろほっとして、あの子こそが時代の形見なのだと思った。」

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「冬の華」は、政治ではなく、医術の話です。

三年の長崎遊学で西洋医学を学び、江戸の藩邸で漢方医の娘を妻に迎えて国元に帰った文礼と、彼の医術では治せない二人の患者が主人公です。

文礼が医者としての絶望に責め苛まれるのは、転落して下半身が動かなくなった大工の芳蔵と、末期の肺病で全身を侵された一六歳の娘、芙美を診るときです。芳蔵の下半身は動かず、動こうともしません。芙美は、裏庭の、窓もない小屋で死を待っています。

「わたし、死んだら雪になります、父や母にそっと触れられるから」・・・「初雪には間に合いませんでしたが、もうじきそうできるでしょう、母の髪や父の肩に舞い降りて、暖まったら解けてゆきます」

・・・大きく目を開けて見送る娘に必死の願いを見ながら、生半可な知情意では変えようのない運命の惨さを思わずにいられなかった。この病を人間が克服する日が来るのだろうかと思う。・・・

短編の最後には、しかし、わずかであれ陽が射します。文礼は新しい麻酔薬に関する文献が手に入ることを喜び、また、雪華文と呼ばれる雪の意匠で飾られた櫛を手にして、芳蔵を励ましてやろうと思います。

「気難しい芳蔵の痩せた顔が見え、娘の声にならない笑いが聞こえる。・・・若い娘が死後の生を夢見て一生の終わりに手にする櫛は、その気になればどのようにも生きられる男の気持ちを動かすはずであった。」   (乙川優三郎 著 『闇の華たち』 文芸春秋)

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1.ギリシャは返済できるか? ユーロとEUは?

2.イギリス政権交代

3.母の日

・・・普天間 ・・・ドル ・・・アジアの景気回復

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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


1.ギリシャは返済できるか? ユーロとEUは?

guardian.co.uk, Friday 7 May 2010

Debt crisis: It's time the EU had a new economic philosophy

John Palmer

通貨同盟はできたが、それに必要なものは何もできていなかった、と不満を述べます。・・・政府は政策協力をせず、ルールを破っても罰金を支払わない。

「経済統合の避けがたい効果として競争力のない地域や国家が(衰退することへの)補償するために資源を移転するシステムがない。他のすべての経済通貨同盟(たとえば、アメリカ合衆国)にはあるのに。ユーロ圏諸国には、最強国(黒字国)が消費や成長を刺激し、過度の予算赤字や政府債務のせいで消費や雇用を削るしかない弱い国(赤字国)が取る政策を相殺する、対称的な義務さえない。」

ヨーロッパ規模の政策決定、金融市場規制、牙のあるヨーロッパ通貨基金を設置して、アングロサクソン型の金融市場拡大に代わる経済モデルを示すべきときだ、と。

SPIEGEL ONLINE 05/07/2010

Hoping for Stability

Germany Approves Greek Deal Ahead of Euro Summit

NYT May 7, 2010

A Money Too Far

By PAUL KRUGMAN

ギリシャはリーマンにならない。その規模も、市場に張り巡らせた緊密な関係も、リーマンには及ばない。平均株価が1000ドルも下げた理由はギリシャではない。政府債務の累積を警告し、政府への取り付けだとするアナリストにも耳を貸す必要はない。

しかし、ギリシャの問題は深刻で、デフォルトとユーロ離脱しかない、という声はもっともだ、と。

通貨圏が成功するためには、特に、統一した政府が欠かせません。カリフォルニアの財政赤字や政府の機能麻痺はギリシャに劣るものではないでしょう。しかし、財政危機が国際金融市場で話題になることはありません。その理由は、カリフォルニアの使う通貨はアメリカ全体で管理されているからです。州政府が(赤字を埋めるために)勝手に発行することはありません。また、カリフォルニアの予算削減はアメリカ全体の景気回復から受ける影響を失わせるほどでもないのです。

ギリシャの財政赤字は違います。緊縮予算は不況をさらに悪化させ、ギリシャ政府の赤字が回復することもありません。つまり、デフォルトするしかない? それも、すでにある赤字予算を解決することはありません。景気と雇用を回復させて、ギリシャの財政を好転させるには、その通貨を切り下げることですが、ユーロ圏の中ではそれもできません。

PAUL KRUGMANは、ギリシャがユーロ圏にとどまるための三つの方法を示します。1.賃金水準を全般的に切り下げる。2.ECBが政府債を大量に購入してインフレ政策を取る。3.アメリカ国内がそうであるように、ギリシャ政府はドイツ政府によって財政赤字を補填される。・・・しかし、いずれも政治的に受け入れられないでしょう。

すべての選択肢が失われた時、今は考えられないことを起こすしかないでしょう。アルゼンチンが2001年にやったことです。アルゼンチン政府はドルとの完全な固定レート制を放棄しました。それは銀行への取り付けを招きますが、PAUL KRUGMANは、いずれにせよ取り付けは避けられない、と考えます。そして、預金を封鎖し、通貨を大きく切り下げました。

ヨーロッパの政治指導者たちがもっと迅速に大胆な行動を取れなければ、同じことが始まります。

FT May 7 2010

Breakfast with the FT: Nouriel Roubini

By Gillian Tett

“Doctor Doom”(破滅博士)と呼ばれるNouriel RoubiniFT記者であるTettが対談しています。ホテルのレストランで朝食付きのインタビューです。

彼の履歴は容易にまねできません。1959年、イランのイスタンブールで、ユダヤ人の両親の下に生まれる。イタリアに移住して学ぶ。さらに、ハーヴァードで学び、Ph.Dを取得する。イェールとニューヨーク大学で教える。イタリア語、ヘブライ語、ペルシャ語、英語を話す。IMF、アメリカ連銀、世界銀行、ホワイトハウス、財務省で協力する。コンサルタント会社を創設する。

危機が続いて、彼の予言を求める人がRoubini Global Economics(コンサルタント会社)に集まります。Roubiniが世界の著名人にランキングされたのは、危機の直前に警告を発していたからです。しかし、IMFやダヴォスです。

2006年秋のIMFで、「アメリカは一生に一度の住宅価格暴落、石油ショック、消費低迷、そして、不況に直面するだろう」と述べたのです。「住宅担保債券は支払われず、それを元にした何兆ドルもの証券類は世界中に拡散しているから、世界的な規模で金融システムが停止する」と予言しました。多くの政策担当者やエコノミストは、彼が狂っている、と思ったわけです。

なぜ予測できたのか? 彼は、10年間、新興市場の研究をしてきたからだ、と言います。同じことが何度も何度も繰り返されたのです。「バブルは火のように、燃え続けるには酸素が必要だ。」 2006年に住宅バブルは終わった。もはや住宅債務は多過ぎたから。

今やセレブとなって、楽しみと苦しみを満喫している、ということです。これからカンヌ映画祭に行って、自分も出ている2本の映画を観るそうです。

FT May 7 2010

Understanding the Greek aftershocks

By Mohamed El-Erian

FT May 7 2010

Germany: Merkel’s moment

By Quentin Peel in Berlin

ヨーロッパの悪夢であった週を示すイメージとしてふさわしいのは、コール元首相が80歳の誕生日を祝う、故郷の町Ludwigshafenの式場において、話の途中でよろめいたことでした。隣に座るメルケル首相は、コール政権で1991年に始めて閣僚に加わったけれど、明らかに居心地が悪かっただろう、と記事は伝えます。

コール元首相が導入した共通通貨ユーロは、今や、最悪の状態にあります。ギリシャ財政危機に対する支援融資について、ドイツの不満が実施を遅らせ、ヨーロッパ全体の危機に拡大してしまった、とメルケルは責められています。North Rhine-Westphaliaの地方選挙で、メルケルのキリスト教民主同盟と連立政権を組む自由民主党は、減税策を主張していますが、支持を得られないことに怒ってギリシャへの支援を攻撃したわけです。

長い目で見れば、ユーロ危機はメルケル政権への打撃にならない、という意見も示されています。有権者が財政赤字を心配し、また危機よりも政治的安定を重視するからです。

FT May 6 2010

Trichet is right to ignore the sirens

ECBは政府の債券を購入することで、金融緩和と金融機関の資産を守ることができます。ギリシャなどにかかる市場圧力を抑えられるでしょう。しかし、金融緩和をする必要はあるが、まだほかに購入できる資産がある、とも。

WSJ MAY 7, 2010

The Greek Economy Explained

WSJ MAY 7, 2010

Greece and Contagion

guardian.co.uk, Saturday 8 May 2010

Debt crisis: The eurozone will collapse without reform

Adrian Pabst

ギリシャへの融資はそのデフレと債務との悪循環を終わらせません。デフォルトとユーロ離脱を止めるには、新しい政策が必要です。すなわち、債務の削減、長期債への転換です。またECBは、インフレが抑制できているときには、もっと成長を重視することです。

WP Sunday, May 9, 2010; B03

5 Myths about the European debt crisis

By Carmen M. Reinhart and Vincent R. Reinhart

二人の専門家が疑問に答えています。

1.新しいタイプの危機か? ・・・政府はいつも債務を増やして危機を招いた。14世紀から19世紀まで、君主たちは通貨を悪鋳し、民間資産を徴用し、政府債務をデフォルトにした。最近でも債務不履行は何度もあり、ギリシャはこの180年間で半分はデフォルト状態だった。2001年、財政危機に陥ったアルゼンチンは、緊縮政策を続けて暴動が起き、IMF融資にもかかわらず、1320億ドルがデフォルトになった。

2.小国なのに? ・・・タイもそうだった。アジア通貨危機で経済規模は13%も減少した。同じ投資家や、リスク感覚の変化で、危機は波及した。

3.緊縮財政で解決できるか? ・・・当面は不況を悪化させ、たとえ融資を受けても投資家は容易に戻らないだろう。

4.ユーロに責任がある? ・・・ユーロ採用で政府債務が増えたという意味では。しかし、政府は借り過ぎる傾向がある中で、投資家の方がなぜこんなに貸したのか、責められるだろう。

5.アメリカでも起きるか? ・・・いますぐギリシャの危機が現れることはないが、アメリカも財政赤字を膨張させており、市場の限界を超える危険がある。

FT May 9 2010

America has good reason to worry about Greece

By Clive Crook

FT May 9 2010

Time for Athens to join Europe

FT May 9 2010

European stabilisation

壁はアテネで崩壊し、マドリード、リスボン、ダブリンでも大きく揺れた。ブラッセルから緊急の足場は届いたが、伝染を防ぐことができるとは限らない。

「最もひどい失敗は、期待を扱い損ねたことだ。メルケルやバローゾが金融市場を嫌うのは勝手だ。しかもドイツにはギリシャ融資への憲法違反という疑いがある。けれど、彼らは無理解という責めを負わねばならない。彼らの言い逃れは投機家の餌食になった。市場は不確実を嫌うだって? 投機家たちはそれが大好きなのだ。」

WSJ MAY 10, 2010

Greek Tragedies

By VICTOR DAVIS HANSON

ギリシャの歴史は、財政赤字や、緊縮策に反対する暴徒について、何を教えるか?

「ギリシャは千年に渡ってビザンチン帝国の世俗と信仰における官僚制度の頂点にあったという伝統を持つ。しかし、オスマン・トルコによる400年間の支配は、ギリシャ人に政府を蔑む風潮を与え、国家を敵にしてしまった。イスタンブールにおける西側の、キリスト教徒の、ヨーロッパのコロニーが独自の言葉やナショナリズムの感覚を維持し、部族の連帯感による信仰が維持された。また、イスラム教徒の課税や徴兵を逃れるために、しばしば、近寄りがたい山岳地にまで移住した。」

May 10 (Bloomberg)

Greece’s No-Pain Bailout Fails Confucian Ethics

William Pesek

ギリシャ危機を見ると、1998年の韓国を思い出す、とWilliam Pesekは書きます。

「私が見た最も感動的な事件の一つは、1998年、ソウルの金Gold募集だった。『韓国を愛するなら金を集めよ』というキャンペーンは、経済危機にある政府を助けるため、何百万もの人びとが家族の宝石を自ら差し出したのだ。」

ギリシャ政府は韓国の経験から学ぶべきです。・・・1.犠牲は避けられない。韓国政府は国民に債務危機の負担を求めた。2.債権者にも犠牲を求めるべきだ。債務を削減し、銀行が将来の融資にはもっと慎重になるとしたら、それは良いことだ。3.ショック・セラピーの勧め。改革は遅らせるよりも早めるほうが良い。韓国経済や金融システムは根本的に近代化した。政府はそれを強いる役割を担った。その結果、韓国は発展途上国ではなく、日本や中国と同じ課題に挑戦している。

まねるべき経済モデルが失われた時代に、ギリシャは韓国を見習うべきだ。

May 10 (Bloomberg)

Greek Contagion Myth Masks Real Europe Crisis

Caroline Baum

「感染」理論がもてはやされているが、健全な国はギリシャ病に感染しない、とCaroline Baumは主張します。それはAnna Schwartzの議論です。

危機に感染する国は、内部で危機の条件を準備していたのです。また、単一通貨、ユーロは危機を解決できませんでした。ユーロはR.マンデルが考えたような最適通貨圏ではなく、危機が起きてもそれを扱うメカニズムがなかったのです。ユーロは政治同盟に支えられるべきでした。政治同盟には、あらかじめ財政を移転する合意がなければなりません。

SPIEGEL ONLINE 05/10/2010

SPIEGEL Interview with Economist Nouriel Roubini

'We Will Have Even More Crises in the Future'

不動産市場が崩壊し、金融システムが溶け落ちた。今度は、政府債務の膨張が国家を呑みこもうとしている。指導者たちが改革に合意しなければ、危機は繰り返す。巨大銀行の分割は、その出発点だ、と考えるNouriel Roubiniへのインタビューです。

危機はなくならない。「危機は資本主義のDNAの一部である。(I show that crises are part of capitalism's DNA.)」 不可避とは言わないけれど、それに備えるべきだ。

先制的な債務の組み換えによって、ギリシャに限らず、ユーロ圏内の債務諸国を危機から切り離す。また、ドイツがそれを支払うことも明らかである。なぜなら、債務諸国に貸しているのは、ドイツを含む諸国の銀行だから。

銀行は大き過ぎる。「野獣を弱らせるべきだ。(We have to starve the beast.)」 銀行の規模が大き過ぎることを示すパラメーターを測定できるし、何でも扱う百貨店のような銀行は必要ない。

金融改革は難しいが、それを怠れば危機は頻発し、さらにその被害も増大する。資本主義の逆転を要求する声が強まるだけだ。

SPIEGEL ONLINE 05/10/2010

Euro Rescue Bid

Punish the Markets for their Mistakes!

A Guest Commentary by Michael Hüther

WP Monday, May 10, 2010; A17

The welfare state's death spiral

By Robert J. Samuelson

ギリシャ危機とは、福祉国家の死滅過程なのでしょうか? ギリシャに限らず、アメリカも含めて、裕福な諸国は高齢化が進みつつある。彼らの医療保険や年金の負担は莫大であり、次第に財政破たんへと向かっている。「福祉国家」ではなく、最近は、社会保障の拡大された「権利"entitlements"」と呼ぶことが多いが。

ユーロの導入は、競争によって生産性が高まり、投資や労働移動が活発に行われて、成長率を高めるはずでした。人びとはヨーロッパ市民としてのアイデンティティーを強め、政治統合も次第に達成されると期待されました。しかし、いずれも失敗しています。

財政赤字の増大に資本市場が不安を感じると、不況と債務の負担が増して、公的な給付が削られ、社会保障は縮小していくでしょう。

NYT May 10, 2010

A Show of Force in Europe, but Worries Linger

By JACK EWING and LANDON THOMAS Jr.

NYT May 10, 2010

Europe’s Debt Crisis: Your Questions Answered

By ECONOMIX EDITORSSimon Johnson, Carmen M. Reinhart, and Yves Smith

なぜギリシャの危機がこれほど大きな影響を及ぼすのか? 債務の組み換えは行われるか? どうやって?

NYT May 10, 2010

Europe’s Bailout

FT May 10 2010

EU buys itself time

By Wolfgang Münchau

FT May 10 2010

Germany pays for Merkel’s miscalculations

By Wolfgang Münchau

メルケル首相が予想していたのは、財政赤字を厳しく処罰してユーロ圏を強化することでした。しかし、数日の間に、それは財政危機がユーロ圏の将来と切り離せるように、安定化基金を積み上げることに変わりました。

FT May 10 2010

Deal neuters threat, but EU must restore its vigour

By Tony Barber in Brussels

FT May 10 2010

How the eurozone set off a race to the bottom

By Peter Boone and Simon Johnson

ユーロ圏は、過去10年間、最悪のモラル・ハザード装置になっていた。

銀行の債務はすべてECBが短期借入の担保として受け入れた。だから住宅バブルは止まらなかった。財政赤字も止まらなかった。

このシステムは、脆弱な銀行や放漫財政の政府にとってモラル・ハザードを強めるものだった。財政赤字の政府に対して、十分な監視もなく融資することは間違いだ。

FT May 10 2010

Europe is unprepared for austerity

By Gideon Rachman

7500億ユーロの救済資金を用意しても、長期の問題は残されたままだ。

ヨーロッパは財政問題を解決したと思っていた。アメリカは軍事的超大国、中国は経済的超大国、しかし、ヨーロッパはライフスタイルの超大国になるだろう。ヨーロッパの諸帝国が世界を支配する時代は去った。それは良いことだ。ヨーロッパには今でも美しい都市があり、最高のワインと最高の食事があり、豊富な文化史、最長の休暇、最高のフットボール・チーム、がある。普通のヨーロッパ市民の生活がこれ以上に快適であったことはない。

「しかし、一つ問題がある。」 ・・・快適な老後の生活を送れないことです。ギリシャの財政危機はそれを示しました。

FT May 10 2010

EU’s bold step into treacherous waters

WSJ MAY 10, 2010

The Real Euro Crisis

WSJ MAY 10, 2010

The Euro's Tribulations

12年前、ロバート・マンデルはWSJに「ユーロ支持論」を書きました。健全な通貨と自由な交易を実現し、繁栄と安定をもたらす(アメリカに次ぐ)世界第二の成功した経済圏になる、と。

しかし、ギリシャ財政危機はユーロ圏への信頼を砕き、EUとIMFに融資を受けても、ユーロは14カ月ぶりの安値を付けました。

ユーロ圏の成果は史上かつてないものであるが、ユーロは政治家たちが無能であることのスケープゴートにされている、と批判します。ユーロ圏に強制された引き締め政策に対して、クルーグマンなどからの批判は絶えません。しかし、反ユーロ論者が見れば、ギリシャ危機はネオ・ケインズ主義の典型的な失敗なのです。

他方、危機によって、ソロスやイッシングのように、ユーロ財政政策を要求する声が強まっています。ユーロ圏に参加することは、財政規律を守ることを意味し、「靴下を上げろ」というわけです。また、アイスランドがEU加盟とユーロ採用に向かっているように、小規模の通貨・金融市場が生き残れないことも示しました。

マンデルは、この危機を12年前に予想していました。

May 11 (Bloomberg)

ECB May Kiss Credibility Goodbye

Daniel Gros and Thomas Mayer

「何年もかかって苦しい思いで築かれた信認も、たった一晩で失われる」というのは中央銀行家たちの古くからの警句です。

「今回の緊急融資決定で最大の犠牲者はECBである。政府債の破綻を避けるために、ECBは財政政策の一部に格下げされてしまった。債券購入を不腿化することの意味は、事実上、民間の貸手が政府の危機を救うために課税されるということだ。このことは長期的に見てECBとユーロへの信認を損なうだろう。」

緊急融資はギリシャの支払不能を予感させ、債務の免除や組み換えを予想させます。そして、他の財政赤字諸国へも適用される、ということから、危機の感染が起きました。一時的な危機回避ではなく、長期的な解決を目指すなら、EMFに危機の安定化プログラムと融資制度を明確に示し、調整プログラムを実行するか、秩序正しくデフォルトさせるか、どちらも実行可能にすることです。Daniel Gros and Thomas Mayerはすでに、こうした基金をユーロ債の発行で得る、という提案を行っています。

しかし、もし各国の財務大臣が従わなければ、危機のためだけの緊急融資に過ぎず、それは財政赤字の国のモラル・ハザードを強めてしまうでしょう。政府救済の禁止とECBの独立性を保障したマーストリヒト条約の原則は崩され、ECBの堕落は甚だしい、と批判します。

ECBは政府債券を現金化する程度に応じて、民間融資に課税する財政の代理人になるのです。

May 11 (Bloomberg)

Euro Package Leaves Governments Out of Ammunition

Matthew Lynn

「沈没する船を安定化することはできない。」 緊急融資は危機の兆候を抑えるだけで、その原因を解消することはできないのです。

「ギリシャはユーロ圏の深刻な構造的問題を示した。財政規律を破る国を止められない。政府間の財政移転は有権者に支持されない。ユーロ圏のルールは信用できない。債務負担の重くなった国の成長を刺激する方法もない。」

自分たちで赤字を解消しないのか? それを強いる唯一の抑止力はデフォルトさせることです。しかし、政治家たちにはその胆力がない。EUの弾は撃ち尽くしたのです。

「スティックで叩いても経済は走らない。そんなことは民主主義でやれるはずもない。ニンジンが必要である。」 しかし、もう資金がない。切り下げるという手もない。

May 11 (Bloomberg)

Greece Crisis Has Roots in Indulgent U.S. Policy

Amity Shlaes

ユーロ危機は、ある意味で、アメリカが創り出した。第二次大戦後のヨーロッパ復興は、スターリンの影響を排除するためであれば、何でも許した。西ヨーロッパ、特にギリシャは、共産主義を振り払うために、ふんだんにアメリカから援助を得た。その後のギリシャの逸脱は途方もない。・・・

アメリカが冷戦下で許した社会民主主義の指導者たちが、ヨーロッパ財政危機の源である。

guardian.co.uk, Tuesday 11 May 2010

Euro crisis: Finally, some (expensive) realism

Ilana Bet-El

政治家は有権者を愚昧化し、非難合戦で済まそうとした。金融市場も、有権者も、こうした政治家の争いに拒否を明確に示しました。

guardian.co.uk, Tuesday 11 May 2010

Has the whole European project peaked?

Simon Tisdall

guardian.co.uk, Tuesday 11 May 2010

Eurozone 'economic government' will affect Britain too

John Palmer

SPIEGEL ONLINE 05/11/2010

Welcome to the Inflation Zone

The Dangers of the Euro Bailout

A Commentary by Armin Mahler

政治家たちは一時的に危機救済を成功させるかもしれないが、長期的には、何十億ユーロの流動性が洪水となって、インフレーションに至るだろう。これまではユーロ高とECBによって避けられたが、もう、そうではなくなる。ユーロ安と債券価格の下落が始まった。

SPIEGEL ONLINE 05/11/2010

The Biggest Poker Game Ever

Will the European Debt Package Really Work?

By Bahador Saberi and Christian Teevs

赤字国はこれで市場金利の上昇を恐れることもなくなった。救済融資はユーロ圏を、「通貨同盟」ではなく、「財政移転同盟」にしてしまった。ECBは、こうした資金供給が政府の他の分野での支出削減をともなうよう、監視しなければならない。

株価の上昇にユーフォリアが広まっている。しかし、マーストリヒト的なモデルが崩壊したことは、EUの政治的・社会的な基礎を、長期的に損なうだろう。

SPIEGEL ONLINE 05/11/2010

Herculean Task Ahead

Is It Already Too Late to Save Greece?

ギリシャの財政再建とは何を意味するのか? ギリシャの救世主と期待されるLeandros Rakintzisの話が詳しく紹介されています。財政赤字の背後にあるもの、ギリシャの政治システムについて、融資や救済を考えるときに知っておくべきことです。

・・・観光に行くように病院を利用する老人たち。・・・湖が消滅しても人を雇い続ける湖の浄化局。・・・ギリシャ第二の都市、テッサロニキの13年たっても解明できない雇用者数。・・・ギリシャの公務員は、イギリスに比べて、人口当たりの割合が約5倍です。ユーロ参加によるバブルが債務を膨張させましたが、それも終わりました。

ギリシャに融資して、返済できるのか? 多くのエコノミストは否定的です。ギリシャには産業がない。研究開発も行われていない。観光でさえ競争力がありません。救済融資で競争力が改善されることはないのです。むしろ、不況を深刻にし、長引かせるでしょう。

汚職、ストライキ・・・ IMF融資の条件で、ギリシャは初めて包括的な改革の目標を得ました。規制緩和で新しい成長を促します。あるいは、それに失敗すれば、石器時代に逆戻りだ、と。

SPIEGEL ONLINE 05/11/2010

Complicit in Corruption

How German Companies Bribed Their Way to Greek Deals

By Jörg Schmitt

WP Tuesday, May 11, 2010; A15

Time for Greece to play by the E.U.'s rules

By Anne Applebaum

「わたしの目の前には、EU閣僚理事会のギリシャに関する決議案がある。これは秘密文書ではない。・・・しかし、誰もその政治的な意味を解説しない。・・・これは血みどろの戦争の末に、森の中を走る鉄道車両内で書かれた、占領軍の指令書のようなものだ。

・・・イースター、夏期、クリスマスのボーナスを減らすこと。・・・ガソリン、たばこ、酒に対する税金を増やすこと。・・・年金給付年齢を引き上げること。・・・ジェネリック薬品を使用すること。・・・

EUはいつも加盟国政府の主権を部分的に放棄するよう求めるが、ギリシャにはもう主権がほとんどない。IMFの融資条件は異なる表現をとっている。債務国の要請に応じて、IMFが対応する、と。EUは、ギリシャがすることを決定した、という。約束は守られるのか?

近代ギリシャは外国によって占領されたことがある。オスマン・トルコとナチス・ドイツだ。EUとIMFが行う新しい占領政策に対して、抵抗を主張するギリシャ人もいる。それは暴動というより、狡猾なものになるだろう。「アテネには、スイミング・プールを持っていると税務署に申告した人が364人いる。しかし衛星写真によれば、1万6974のプールがあるのだ。」

ルールに従うなら、あなたは、世界最大の、繁栄する経済圏であるヨーロッパの一部である。しかしルールに従えないなら、あなたは、外国から財政的に占領される危険を冒す。その光輝に満ちたユーロ新植民地主義は、今、ここに誕生した。

WP Tuesday, May 11, 2010; A14

Happy Europe Day

NYT May 11, 2010

Europa! Europa!

By ROGER COHEN

誕生日おめでとう。1950年にシューマン宣言が石炭鉄鋼共同体を実現してから、この日曜日で60周年である。

アメリカから見れば、ギリシャとユーロの救済基金合意があり、イギリスの選挙がありました。53歳で年金を受け取れるような国(ギリシャ)にドイツは救済融資を望まず、イギリスの保守党と自民党は基本的に対立した政策の上に連立政権を始めます。

笑うべきか、嘆くべきか、わかりません。アメリカ人も401Kの資産がギリシャ危機に感染して消滅するのを恐れます。ユーロという20世紀後半で最大の実験が失敗すれば、誰も無傷ではいられません。

ヨーロッパは、アメリカでガイトナー財務長官が1年前に直面した選択に苦しむのです。多額の資金を使って封じ込めるか、あるいは、崩壊を許すのか? ドイツが戦後の代償としてEUに投資し続ける意欲を失うとしたら、ヨーロッパも消滅します。

“Without solidarity, how do you convince Poles that Germans are prepared to die for them?”

イギリスが自国の財政赤字で、ユーロの危機に感染するかどうか、まだ分かりません。イギリスの新首相キャメロンはユーロ救済基金に参加しないでしょう。それがメルケルの不満をさらに強めるはずです。そして、誰もがさらに不安になります。

NYT May 11, 2010

Greece’s Newest Odyssey

By THOMAS L. FRIEDMAN

単なる経済の救済ではない。ギリシャの革命を救済する融資である。ギリシャの政治・経済システムを根本的に改革するしか、危機は免れない。

パパンドレウ首相はそれを覚悟している、と言います。国民は変化が必要であると理解しており、この機会を逃したくない、と。

この厳しい改革を続けるには、ギリシャ人自身が改革に参加しなければならない。それが『正義』であると確信しなければ、人びとは参加しない。巨額の脱税をする者、汚職にまみれた役人が告発されることを人びとは望んでいる。また、指導者がビジョンを示さなければならない。『われわれが進むべき夢を与える必要がある。』 そうすれば犠牲には意味がある。

ギリシャに革命は起きるか? IMFの分析を読まなくても、若者たちを見ればわかる。彼らがギリシャを出て行かず、とどまる価値があると思うとき、ギリシャ債券を買おう。

FT May 11 2010

Strauss-Kahn calls for eurozone reform

By Chris Giles in Zurich, Tony Barber in Brussels and David Oakley in London

Times Online May 11, 2010

The True Costs of the Euro

FT May 11 2010

Central banks are losing credibility

By John Taylor

EUの救済合意には二つの問題がある。モラル・ハザードと、ECBによる債券購入、である。特に、後者が深刻だ。しかも、アメリカ連銀がこれに加わっている。むしろ、ECBの独立性と信認を高めることこそがユーロ存続の道である。

FT May 11 2010

Governments up the stakes in their fight with markets

By Martin Wolf

週末、EU諸政府は勝負を降りるか、賭け金を倍に積み増すか、どちらかしかなかった。しかし、長期の見通しは、負けである。ユーロ圏には根本的な改革が必要だ。

こうした巨額の安定化融資に合意するしかなかったのは、ユーロ創設において前提された条件が無効になったからだ。すなわち、1.参加国の財政に上限を課す。2.救済禁止条項が参加国の自制を促す。3.通貨統合で各国経済は収斂に向かう。・・・いずれも間違いでした。

救済融資の条件は、金融部門を守るためにギリシャ国民の返済を求める、無理な内容になっています。これでは成長するはずもなく、返済は不可能です。重要な問題は、次の点です。

1.ユーロ圏を維持せよ。2.分散化を抑制せよ。3.競争力を回復せよ。4.連帯を強めよ。5.債務を組み替えよ。

そこには、分散監視・調整緩和基金の設立、労働市場の活用と名目賃金を調整する法的手段の導入、各国GDPの60%までをユーロ債に転換、といった興味深いアイデアが結び付いています。

ドイツは、赤字国に財政規律を厳しくすれば十分で、ドイツは何も間違っていない、と考えています。戦後のヨーロッパ統合がドイツの利益であるだけでなく、ユーロ圏は赤字国の無思慮な切下げを抑え、ドイツの競争力を維持しているのです。ユーロ圏を維持するために、分散化を抑制し、債務を組み替え、調整を助ける政策を、ドイツが推進しなければなりません。

FP MAY 11, 2010

Europe Bought Time and Not Much Else

BY URI DADUSH, MOISÉS NAÍM

May 12 (Bloomberg)

Saving Euro Trashes Trichet, Dooms Germany’s AAA

Mark Gilbert

guardian.co.uk, Wednesday 12 May 2010

Britain and Europe are living separate crises. Underneath, it's the same one

Timothy Garton Ash in Brussels

ユーロ圏が歴史的な危機を迎えたとき、イギリスでは戦後最大の政治ドラマが進行していた。ウィンブルドンの決勝戦を観るように、Garton Ashはアテネとロンドンを交互に観続けた、と言います。そして、「二つは異なる試合だが、共通する者も多い」と考えます。

どちらでも問われていたのは「経済と社会を組織する方法を、将来、どうするか」ということでした。そして月曜日の朝、バローゾとファン・ロンパイは勝利を宣言しました。「衝撃と恐怖」のパッケージで市場を制圧した、というわけです。しかし、債券トレーダーたちは信じません。成功した、と言うためには、三つの条件が必要でした。1.ギリシャが苦しい改革を行う。2.ドイツが資金を出す。3.ユーロ圏の財政再建とガバナンス改善が進展する。・・・どれも難しい。

ファン・ロンパイは、ギリシャ人が変心し、文化を変えるときだ、と述べましたが、ドイツ人のように貯蓄し、働き、輸出するようになるものでしょうか? そして、ドイツ人はギリシャ人のように消費し、輸入を増やす?

・・・イギリス保守党のスローガン、「大きな社会」も、ドイツ社会民主党の「(福祉国家)解体反対」も、ギリシャ共産党の「資本家たちと一緒に滅べ」も、いずれも役に立たない。挑戦はユーロ圏にとって集団的な作業である。イギリスはそれに参加していない。また同時に、個々の政府が直面している課題である。

SPIEGEL ONLINE 05/12/2010

EU in Crisis

A Nightmare for the European Dream

A commentary by Christoph Schwennicke

政治統合、共通通貨、国境のない旅行、永遠の平和。EUはある種のユートピアになるはずでした。・・・それが、今や、死に瀕しています。

SPIEGEL ONLINE 05/12/2010

Avoiding the Harsh Reality

Many Greeks Blame Foreigners for Their Crisis

By Manfred Ertel in Athens

SPIEGEL ONLINE 05/12/2010

The World from Berlin

'Europe Must Lay a New Foundation for the Euro'

Times Online May 12, 2010

Stop making sacrifices to the market gods

Anatole Kaletsky

「ナショナリズムは悪党たちの最後の避難所である」と、18世紀の政治家たちについてジョンソン博士が述べたように、「信認confidenceという言葉は、金融ぺてん師たちの最後の避難所」になっている。

「オリンポスの神々の声を聞けというギリシャの神官たちのように、金融アナリストたちはテレビに出て、市場の信認を唱え、この新しい神の怒りを鎮めるためなら、どれほどの大きく、苦しい犠牲も受け入れるべきだ、と主張した。」

「もっと政治家が冷静に振る舞い、メディアが政治事件に反応する金融市場の短期的変動にこれほどの注意を払わない方が、世界はずっと良くなるだろう。」 彼らこそ、懐疑的な意見を広めることで利益を得る連中だ。幸いなことに、イギリスの政治家たちは連立政権の決定を延期し、大陸の政治家たちより、金融市場の圧力に対して堅固な姿勢を示した。

「ブラッセルでは対照的に、ヨーロッパ諸国の財務大臣たちが、欧州委員会とサルコジ大統領からの圧力によりパニックを生じていた。その結果は、歴史上いかなる諸国が行ったこともない、単独の公的融資額になった。」 ドイツ政府は、これまでのメルケルの約束を全部破ることになった。

「なぜヨーロッパの指導者たちはこのような喜劇を演じたのか? その理由の一部は、マキャベリズムである。パリ(フランス政府)、ブラッセル(EU官僚)、地中海諸国(イタリア、スペイン)にとって、週末のイギリスとドイツにおける選挙がもたらす精神錯乱は理想的な機会であった。この好機をとらえて、両国政府が嫌っている救済融資とヨーロッパの財政に連邦主義を導入する決定が大きく前進した。」 ・・・月曜日の朝、アジアの金融市場が開く前に決定せよ、という圧力の下で。

さて、結果はどうだったか? ユーロは市場開始とともに反騰したが、その後、下落した。他方、ポンドは安定して始まり、次第に上昇した。ポンド市場の暴落を懸念する声は間違いだった。

政治家たちは、金融市場やビジネスの「信認」ということに注意を払い過ぎてはいけない。もっとその背後にある経済条件、ビジネスの関心を重視するべきだ。過度の増税、高金利、過剰な規制により利潤を失えば、投資も雇用も逃げてしまう。・・・「信認」ばかり気にするな。

FT May 12 2010

Goodbye to Europe as a high-ranking power

By Richard Haass

ヨーロッパは世界の政治舞台から消えるだろう。ヨーロッパは、もはや二つの戦争や冷戦期と違い、平和になった。また、ヨーロッパの戦後政治プロジェクトは、ギリシャ危機に観られるように、その力を失った。すでにその前から政治対立によって統一性を欠いていた。ナショナリズムが復活し、安保理でヨーロッパの意見が重要な役割を果たすこともないだろう。

特に軍事的な弱体化は目立っている。わずかGDPの2%という防衛予算を出す国もほとんどない。国内政治は政府支出にばかり注目し、長期投資にも関心がない。EUはアフガニスタンに3万人以上を派遣しているが、その負担は国によりばらばらだ。人口減少、高齢化も、こうした傾向を強めるだろう。

「経済的欠陥(ユーロ)、政治的偏狭さ、軍事的限界が合わさって、大西洋間の同盟は漂流する。弱くなったヨーロッパの発言力も役割も失われるだろう。アメリカは特別な挑戦に応じて有志との同盟を結成する。・・・ヨーロッパが主役となる21世紀は、始まる前に、終わりそうだ。」

FT May 12 2010

Zapatero finally wields the axe

WSJ MAY 12, 2010

The End of the Beginning for the Euro

By MARC DE VOS

ユーロ危機とサブプライム・ローンに始まる世界金融危機との類似性はあまりにも顕著である。危機の原因も、その救済策も、よく似ている。その後の長期的な処理もはかどらない。

ギリシャ危機を拡大した原因は、マーストリヒト条約ではなく、リスボン条約である。ヨーロッパ諸国の国内政治は、一層の統合化やEUの機能改善を嫌った。

WSJ MAY 12, 2010

The Ugly 'Euroskeptic'

By DANIEL SCHWAMMENTHAL

guardian.co.uk, Thursday 13 May 2010

Greek debt crisis: Let's not return to the status quo

Alexandros Stavrakas

アテネの反対デモに対する多くの非難や新聞の風刺漫画は、自分たちの価値を奪われる者の構造的な赤字を見ずに、自由市場の合理的な処方箋に従うことで解決できる一時的なかく乱を見ている。

実行可能な、信頼できる対案を示さない左派に対する批判が広まっている。

SPIEGEL ONLINE 05/13/2010

Existential Crisis for the Euro

The Last Opportunity for a Strong Currency

An Analysis by Henrik Müller

WP Thursday, May 13, 2010; A17

European bailout only postpones day of reckoning

By David Ignatius

ヨーロッパでも、アメリカでも、社会保障の権利を現実の経済過程に合わせるのは難しい。グローバルな不均衡を放置すれば、再び、資産バブルやパニックが生じる。

「中国政府がうらやましいとは思わない。」 アテネの暴動を見たら、経済政策の失敗がどれほど大きなコストを生じるか、中国人も考えることだ。また、余りに多くの資本移動が自由化されるリスクについても。

WP Thursday, May 13, 2010; A17

Greece and GM: Too weak to fail

By George F. Will

ギリシャを破綻させないのは、ヨーロッパの大銀行を救済するためだ。ヨーロッパ諸国は互いに融資を供与し合っている。アクロポリスに翻る左派のスローガンは、「ヨーロッパの人民よ、立ち上げれ!」である。反政府のデモ隊には多くの公務員がおり、ギリシャ空軍までいる。誰が誰と戦うのか?

なぜギリシャが緊縮策を受け入れるのか? 救済融資を受けたらデフォルトにしよう。これこそ弱者のもつ武器だ。

FT May 13 2010

The euro remains on the right side of history

By Tommaso Padoa-Schioppa

「イデオロギーと文化は重要である。ユーロをめぐる戦いでは、決定的である。」

ヨーロッパ通貨の城壁を強力な軍隊が行進している。「これは機能しない!」 ・・・彼らの叫びは余りにも単純だ。すなわち、ユーロ圏は政治同盟ではないし、ヨーロッパは一つにならない。ヨーロッパ人はそれを嫌っているし、国民国家は消滅しないから。だから城壁は崩壊するだろう。それに固執することは、抜け目ない投機家たちの利潤機会にしかならない、と。

同じように単純なユーロ支持派はこう考える。国家をともなわない関税や各国通貨の廃止はヨーロッパの指導者たちが発明した素晴らしい成果だ。国家主権はこれ以上移転されないし、この構造は永久に維持できる、と。

両者とも国民国家を前提しており、国境内の主権の絶対性を信じている。1648年のウェストファリア体制がモデルとした内的な均質性と対外的な独立とを国際関係の基礎にしている。しかし、われわれの住む世界は変わってしまった。政治権力はもはや国家に独占されていない。権力は、地方政府、国民国家、大陸、世界へと、垂直的に分配されている。

危機はディーリングルームから生じる資本の大群とともに来る。24時間でネットワークを駆け巡り、史上こそが正解だ、と主張する。しかし、彼らは分かっていない。歴史のダイナミズムは権力の最適な配分を求める、無謀で、苦痛に満ちた、容赦ない運動から生じる。その分配は、部族のアイデンティティーよりも大きく、共通利益で結び付いた集団によって行われる。政府の領域は、共通財の供給を委ねられるところに生じる。都市の公共ガーデン。法の権限。地球の気候変動。ユーロも、脱ウェストファリア体制を目指す逸話の一つである。

ユーロ批判派の求める正義は間違っている。すなわち、(各国が独自に)変動レートの旧世界に復帰することだ。競争的な切り下げや、場当たり的な債務に頼る。それは経済的失敗と紛争、グローバルな安全保障の破壊に至る。

ユーロの城壁を守る者は、国民国家のイデオロギーを捨てるときだ。


2.イギリス政権交代

guardian.co.uk, Saturday 8 May 2010

Forget the niceties, Nick, shun the Tories and join with Labour

Will Hutton

WP Saturday, May 8, 2010; A12

The perils of Britain's inconclusive election

guardian.co.uk, Sunday 9 May 2010

A done deal? No, Tory-Lib is a marriage made in hell

Polly Toynbee

guardian.co.uk, Sunday 9 May 2010

Nick Clegg must deal with Gordon Brown

Ken Livingstone

FT May 9 2010

The unappealing choices after an inconclusive election

By Niall Ferguson

保守党のキャメロンが取る選択肢をいくつか示します。もちろん、自由民主党と組む、労働党と組む、そして、それ以外です。スコットランド。少数与党政権。挙国一致内閣。解散、再選挙。

FP MAY 13, 2010

How Did the Brits Kick Gordon Brown Out So Fast?

By having a powerful civil service.

BY DAVID KENNER


3.母の日

NYT May 9, 2010

Celebrate: Save a Mother

By NICHOLAS D. KRISTOF

母の日だ。あ母さん、ありがとう! ・・・多くの人がそう思っている証拠に、アメリカだけで母の日のために140億ドルが支出される。29億ドルの食事。25億ドルの宝飾品。19億ドルの花束。

他にも使い道がある。学校に通えない6000万人の少女たちに初等教育をプレゼントしても、その額で十分間に合うだろう。女性の識字率を高めることは重要だ。

子供たちの死亡率を、多分、4分の3は減らせるだろう。数千万人が苦しむフィスチュラ(fistula:膀胱と膣および直腸の間に生じる異常な通路)を治療することもできるだろう。

また、アメリカは妊婦の死亡率が高い。アムネスティーは世界の41位、ランセットは37位にランクしている。ヨーロッパの2倍は高い死亡率に苦しんでいる。

フィスチュラの病害が広まっていることに驚いたコネチカット州の女性、Eva Hausmanは、友人たちにe-mailを送って20ドルの募金を集め始めた。そして、9000ドルを寄付した。


NYT May 7, 2010

Red China, Green China

By BRUCE USHER

WP Monday, May 10, 2010; A17

China's troubling friendship with N. Korea

By Fred Hiatt

FT May 11 2010

Business: A change in gear

By Stefan Wagstyl


NYT May 9, 2010

Fixing the Treaty


LAT May 10, 2010

Climate change is the true crisis


WSJ MAY 10, 2010

Don't Go Wobbly On North Korea

By MICHAEL J. GREEN


WSJ MAY 11, 2010

Moving Forward From Futenma

By CAROLYN LEDDY

1.日本は防衛力を高めていない。2.日米安保と憲法第9条との関係を解決していない。3.日米関係がどうなっても、米軍は東アジアの軍拡競争を防ぐフタとして機能する。

日本が望まないなら、韓国やオーストラリアなど、他の国がそれに代わるだろう。沖縄の重要性は変わらない以上、日本政府は方針を転換する方が良い。


WSJ MAY 11, 2010

The World's Dollar Drug

By ZACHARY KARABELL

ドルは、ユーロに負けない問題を抱えている。ブレトン・ウッズ協定においてドルは他の通貨と為替レートを固定された。今も中国は固定している。各国は、その場合、アメリカ資産に投資するほかない。ニクソンが金との交換を否定してからも、ドルに固定する通貨が多くある。それはアメリカ市場(そして世界市場)に接近する良い方法だからだ。

しかし、ドルの支配的な地位をアメリカ経済の優位と解釈してはいけない。インドが、イギリス帝国を離脱してからも、今なお英語を使用しているのは、彼らの共通言語として英語しかないからで、イギリス帝国が優れていたからではない。ドルが世界金融に果たす役割も同じようなものだ。

ギリシャは通貨危機によって緊縮政策を強いられ、経済改革に挑むしかなくなった。アメリカにはそのような改革を強いるものがない。ドルで債務を増やすことが容易だから。


WP Monday, May 10, 2010; A17

How to manage Karzai

By Stephen Biddle

FP MAY 10, 2010

Betrayed

BY VALERIE M. HUDSON, PATRICIA LEIDL


FT May 12 2010

Unruffled Asia resumes its economic ascent

By David Pilling

アジアは財政刺激策によって内需型の成長に転換しました。バブルの懸念もありましたが、ヨーロッパの危機は熱を冷ますかもしれません。

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The Economist May 1st 2010

Acropolis now

The euro zone’s debt crisis: The cracks spread and widen

Germany and Greece: Neither a borrower nor a lender be

(コメント) ギリシャ危機に関する記事です。表紙の合成写真が面白いです。落日のアクロポリスに、IMFやEUの戦闘ヘリコプターが続々と接近しています。それを指揮するのは迷彩服を着た不機嫌そうなメルケル首相でしょうか?

こうした印象が正しいか、間違っているか、検討する必要があるわけです。ギリシャ危機がこれほど拡大した理由は、1.経済的に見て、世界の政府債務問題を意識するシンボルになったから。2.政治的な意味で、改革のための時間稼ぎに過ぎない融資案を、遅れた形で、まとめたことです。ドイツの地方選挙に利用する、というメルケルの打算がありました。3.危機の感染が起きると恐れられたからです。

「メルケルはテレビに出て、ドイツ国民に説明するべきだ。何が危機にさらされているのか? すなわち、ドイツはユーロからどれほど利益を受けているか。政府債務のデフォルトが滝のように落下すれば、どれほどの損失を被るか。」 これはギリシャの救済ではなく、自分たちの利益に従うことである、と。

そして、EUやユーロをめぐる多くの改革が必要だ、と指摘されています。


The Economist May 1st 2010

Ukraine and Russia: A normal day’s debate in Kiev

The future of non-proliferation: An awkward guest-list

Chinese firms buy Japanese ones: Scaring the salarymen

America’s labour market: Something’s not working

(コメント) ウクライナの議会でも卵が飛びました。

「傘で防ごうとする発言者をめがけて、卵は飛んだ。悪臭を放つ炎が議場を包んだ。議席を覆う巨大な国旗の横では殴り合いがはじまった。電子投票システムが機能しない。同日、ロシア議会はこの取引を粛々と承認した。何の議論もなく。」

ウクライナとロシアとの合意とは、セバストポールをロシアの黒海艦隊が利用する権利を2042年まで認め、その代わりに、ウクライナは市場価格の30%割引で天然ガスを得る、という内容です。それは今後10年で400億ドルに値します。ウクライナ政府は財政赤字を削減しなければならず、ロシア政府は、軍事的理由より、国家の威信として、(ウクライナの独立も嫌っているでしょうが)セバストポールの黒海艦隊を譲りません。

核拡散防止条約が捕鯨禁止と並んで載っています。あたかも国際協定の無力さを誇示したように。他方、日本企業はますます中国からの買収を恐れていますが、記事は、かつてアメリカ企業が日本からの買収を恐れたようなものだ、と考えます。アメリカの労働市場がかつてのように機能しなくなっている、という議論に注目します。