IPEの果樹園2010

今週のReview

5/3-5/8

 

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IPEの想像力 5/3/10

ゴールデンウィークの初日。NHK双方向解説「そこが知りたい! 普天間基地、そして日米同盟の行方は」を最後の30分だけ観ました。とても面白かったです。

その再放送を探そうとしたのですが、NHKには予定がなく、それでは、と思って探しましたが、YouTubeにも載っていません。NHKをさがすと、さまざまなNHKを攻撃する録画が見つかります。NHKがYouTubeを遮断しているからでしょうか? ・・・まるで、メディアの戦争です。

以前から読み始め、この数日はまとめて、チャールズ・カプチャン著『アメリカ時代の終わり(上・下)』(NHKブックス)を読んでいました。大国のバランスが必ず将来も変わること、産業社会の構造が変わること、この二つが重なって、アメリカの時代が終わる、と考えます。アメリカの一極支配や金融ビジネスの好調さを前提にした議論を否定し、ブッシュ時代のユニラテラリズムを批判し、むしろアメリカは国際的な関与を減らして、多角的な国際協力の制度化に投資するよう提案しています。(原著は2002年出版です。)

9・11を受けて将来のアメリカ外交を検討した、素晴らしい洞察だな、と思いました。

・・・「産業社会は、デジタル技術と情報に基づいた産業が工場生産ラインにとって代わるにしたがって崩壊し始めている。」

どうすればよいのか? 特に、統治のスタイルにも、根本的な革新が求められています。

「情報時代は・・・市民参加に利用できる時間を削る・・・社会関与というものの失と性格を劣化させている・・・」 「・・・関心のあるホーム・ページのみにアクセスし・・・広範な意見や事実に触れる機会が少なくなる・・・より分極化し、よく考えもしない有権者を生み出す・・・」

「・・・そこには政治対話に活力を与える感情や手振り身振りが欠けている。」(ジョエル・コトキン) 「インターネットは孤独と社会的孤立を促進し・・・」 「匿名性は根本的に熟慮と相入れない」(ロバート・パットナム)・・・「公共精神に個人主義と自己中心性の精神がとって代わる」・・・

「国民国家の全盛期には、文化的、経済的そして政治的境界線はすべて一致していた。」・・・「未来はどうなるだろうか。国家共同体の分裂、アパルトヘイト、バルカン化、部族化だろうか。」(アーサー・シュレジンジャー、Jr.)

5月末、という普天間基地移転の期限に向けて、鳩山政権の末路を予想する報道が増える中、私はこれらの叙述を読んでいました。日本の安全保障やグランド・ストラテジーの確立に向けて、掘り下げた議論をもっと取り上げる必要があるはずです。カプチャンは書いています。

「徴兵プログラムは異なる民族的、社会的背景のアメリカ人を混合させ、社会的資本を形成し、より広い国家共同体への忠誠心という共通意識を促進する助けとなろう。」

私も、普天間基地問題について、政府は国民皆兵制を提案してほしい、と思います。すべての人が兵役に就くことは・・・

日本が社会・政治共同体としての力を得る。・・・安全保障の議論を、偏狭な右翼ナショナリズムではなく、国民・市民がそれぞれの立場で深める。・・・米軍基地の意義や、日本がそれに賛成・反対する理由を明確にする。・・・中国の軍備拡大や朝鮮半島の再統一について、日本から積極的な話し合いを呼び掛けることができる。・・・社会を見失った若者たちに、自分が歴史的な共同体に帰属していることを教えられる。・・・失業し、あるいは、さまざまな事情で孤立した者に、社会に貢献し、再生する機会と喜びを与える。・・・世代や所得、国籍、政治的党派、などによる違いを乗り越える。・・・アジア諸国の非核化や軍縮、共通の安全保障に向けて関係者の交流を支えることができる。・・・日本政府が東アジア共同体の議論を積極的に担う。・・・

同じテーマとして、英書講読で、Michael Mandelbaum, The Ideas That Conquered The World: Peace, Democracy, and Free Markets in the Twenty-first Century, 2002. を読み、またゼミでは、ハロルド・ジェイムズ著『アメリカ<帝国>の苦境』(人文書院)(Harold James, The Roman Predicament: How the Rules of International Order Create the Politics of Empire, 2006.)をテキストにして話し合っています。これらはアメリカの国際的関与と、帝国の秩序について考え、冷戦と9・11後の世界認識を示しています。

講義のために、1848年を知りたくて、本を探しました。自宅の書棚で、河野健二著『現代史の幕あけ:ヨーロッパ1848年』(岩波新書)を見つけ、読み始めました。とても面白いです。1848年、2月革命の様子は、まるで、タイのデモや街頭バリケード、ギリシャ危機の収拾策を議論するヨーロッパ首脳会議、アメリカの差別的な移民取り締まりに反対するデモ、日本の派遣村で給食を配る支援の人びと、中国で進む急激な都市化と格差拡大、世界各地の軍事的占領に抗議する群衆の姿、などと重なります。

もしあなたが学生なら、どうぞ、一冊ずつ手にとって、ぜひ読んでみてください。

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1.ギリシャとドイツ。急進化するユーロ危機

2.オバマの金融制度改革

3.中国と国際調整について

4.アリゾナの移民規制

5.NATOの役割

・・・ベルギー ・・・朝鮮半島 ・・・アフリカ ・・・アメリカ ・・・タイ ・・・新興市場の企業

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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


1.ギリシャとドイツ。急進化するユーロ危機

(コメント) 1992年のEMS危機の後、激しい論争を経て、共通通貨ユーロはできました。マーストリヒト条約に関わる各国指導者たちとさまざまな社会集団の主張について、詳しく検討した研究を読んでみたいです。

ギリシャ危機を経て、この先、ユーロ圏が同じ性格であり続けることは考えられません。EU拡大とユーロ圏とが分離していることは優れた知恵であったでしょう。そして、通貨圏と財政規律もそうでしょうか? 金融市場が国境を越えたときから、こうした問題はユーロ圏に限らず各地で起きています。

ある国は生産した以上に消費し続けると、国内貯蓄の不足を資本流入で補うことになります。同じ通貨でありながら、政府の債券に異なる金利が付くから、財政赤字に市場の規律が働くはずでしたが、暗黙の救済に対する期待から、ギリシャ政府も金融市場も赤字を拡大し続けました。アメリカや日本がそうではないと言えるでしょうか? だれが、どのようにして負担するべきか、政治家や国民投票が答えを出すには、もっと制度や条件の革新を必要とするでしょう。

ユーロ圏の危機は、財政赤字を放置している日本に「感染」します。

あるいは、グローバル・インバランスの解消や、アメリカと中国の間の不均衡にも、辺境における、貧困や内戦に苦しむ国、独裁者や災害に苦しむ国の復興にも、共通通貨の問題が現れます。すなわち、貿易や投資、技術移転、移民に加えて、共通の財政、共通の分担メカニズム、共通の政治的意志決定です。

 

guardian.co.uk, Friday 23 April 2010

Blame and the Greek bailout

Matina Stevis

・・・市場は激しく、速く、ギリシャを叩いてきた。そして昨日、棒が折れた。ムーディーズがギリシャ国債をA3にまで格下げし、ジャンクの手前だ。市場金利は急騰し、2年で10%に達した。ドイツ国債との差は600ベーシス・ポイントだ。ギリシャ債の保険コスト(CDS)は565ベーシス・ポイントにジャンプし、イラク債より200ベーシス・ポイントも高い。

ギリシャ政府はただちにEUとIMFが提供した400億ユーロを活用すると発表した。

・・・私が主張しているのは、過去10年以上に渡って、一度もEUが介入しなかったことだ。ギリシャの政治家も間違いを正さなかった。ギリシャの市民社会も、同じ名、同じ者、同じ家族が、政治を支配するのを許してきた。ギリシャの新聞は、ゴールドマンサックスとの2001年の取引(ユーロ参加のための財務状態の誤魔化し行為)を、それが完了し、支払いが終わるまで、調査しなかった。

これはギリシャ悲劇ではない。次は、ポルトガルやスペインの番だ。ヨーロッパレベルで、また、世界レベルで、規制と透明性を強化するべきだ。「われわれは市場から棒を取り上げ、自分で踊らなければならない。黙っていることは許されない。」

SPIEGEL ONLINE 04/23/2010

Multi-Billion Euro Bailout Becomes Reality

Greece Asks for Loans from the EU and IMF

FT April 23 2010

Outside Edge: It’s all Greek to the bond markets

By Peter Aspden

FT April 23 2010

Papandreou grasps lifeline for Greece

NYT April 23, 2010

Greece Calls for Activation of Financial Rescue

By NIKI KITSANTONIS and MATTHEW SALTMARSH

WSJ APRIL 24, 2010

Europe's Bear Stearns

NYT April 24, 2010

Greece and Who’s Next?

ギリシャのパパンドレウ首相は基金を使いたいと述べましたが、ドイツのメルケル首相はギリシャの財政赤字削減計画を不十分だと批判しました。しかし、ギリシャ危機が、ポルトガル、スペイン、アイルランドへ拡大し、ユーロ危機に転化するのを止める必要があります。

「スピードが命だ。Speed is essential.

NYT April 25, 2010

For Greece’s Economy, Geography Was Destiny

By ROBERT D. KAPLAN

「・・・債務危機には多くの原因があるとされてきた。すべて経済的な理由だ。財政赤字、透明性の不足、汚職、封筒に入った賄賂、政治家のコネ。しかし、誰も言及しないが、もっと深い原因がある。それは宿命を受け入れることだから。その理由とは、地理だ。」

『バルカンの亡霊たち』を書いたROBERT D. KAPLANは、ギリシャ危機の背景に、その地理的関係がもたらした歴史の暗部を指摘します。

・・・ギリシャは地中海の歴史的な低開発地域に属し、バルカン半島と繋がっている。そのようなギリシャをユーロ圏に加えたことは、余りにも野心的過ぎた、と今では考えているだろう。PIGSがすべて南の地中海にあるのは偶然ではない。地中海的な社会を、歴史家のブローデルも、「伝統主義と硬直性」によって特徴づけた。

地中海のやせた土地は、富裕層の大土地所有により支配された。それは社会秩序を非弾力的にしたし、中産階級の成長は北欧に比べて遅かった。それはまた、国家介入や官僚支配という、経済的・政治的な病理につながった。

アテネの成否は、ヨーロッパの超空間を築く政治プロジェクトの成否を予言する。

NYT April 25, 2010

A Family Portrait of a Greek Tragedy

By PHILOMILA TSOUKALA

財政赤字の削減、公務員の給与削減、年金削減、労働者を保護する法律を緩和して「弾力化」を勧める。・・・しかし、ギリシャに緊縮政策を求めても無駄である。ギリシャの政府部門は大きく、クローニズムも明らかだ。しかし問題は民間部門にある。ギリシャの民間部門は家族規模の経営がほとんどで、競争や革新を妨げ、賃金を抑えている。最低賃金や労働時間の規制も意味がない。政府部門や家族企業に職を得た若者は、それ以外の恵まれない家族を養う。多くの若者がまともに雇用されず、結婚もできない。希望を失った才能ある者は、ヨーロッパやアメリカに向かう民族離散の波に加わる。

EUやIMFは、ギリシャの福祉国家解体や労働市場の弾力化など、忘れるべきだ。それは失業を増やし、家族の支配を強める。むしろ、まともなセーフティー・ネットを築くことだ。

FT April 25 2010

Greece is Europe’s very own subprime crisis

By Wolfgang Münchau

SPIEGEL ONLINE 04/26/2010

The World from Berlin

'Nothing Justifies Kicking Greece out of the Euro Zone'

FT April 26 2010

Merkel struggles to sell a Greek rescue

ドイツの有権者は憤慨している。ドイツがユーロを採用したことは重大な決定であった。ハイパーインフレーションとワイマール共和国の崩壊は彼らにとって恐怖の記憶となっている。戦後のドイツ・マルクと連銀の信頼感こそ奇跡の経済復興、政治的復活の主要な支柱であった。

ドイツ人は、マルクを放棄することがインフレを招くことではないと確認した。むしろ、チュートン的な(厳しい)規律をヨーロッパ大陸に広めるつもりだった。厳格な財政赤字の制限と、国家間の救済融資の禁止。

ドイツ政府も、今では、ギリシャに流動性を供給する必要があると認めている。しかし、IMFがユーロ圏の経済を勝手に再編するのは我慢ならない。ドイツの有権者は、ギリシャがルールを破り、会計をごまかし、その後にドイツに支援を求めたことを許せない。ベルリンのエリートたちは、国民感情との差を埋めるため、政府はギリシャに容易に救済しないし、銀行もギリシャの債券を買わない。特に、ギリシャの年金と労働市場に、もっと議論する必要があると考える。

アイルランドやラトビアに比べて、ギリシャ政府の取り組みは不十分だ。構造改革の機会を逃すことは許されない。

WSJ APRIL 26, 2010

The Failure of the Greek Economic Model

By TAKIS MICHAS

物質的な利益と交換に政治的支持を与える、「政治的顧客の関係political clientelism」がギリシャを動かしてきた、と批判します。・・・日本の政治もそうではないか?

・・・ギリシャの基本的な構造は、市民社会ではなく、国家である。19世紀半ば以来、国家機構を介さずには何もなしえなかった。

SPIEGEL ONLINE 04/26/2010

'We're on a Slippery Slope'

Will the Greek Bailout Destroy the Euro Zone?

April 27 (Bloomberg)

Greece Bondholders Shouldn’t Escape a ‘Haircut’

Matthew Lynn

guardian.co.uk, Tuesday 27 April 2010

Greece can fight back against neoliberals

Costas Douzinas

先週の金曜、パパンドレウ首相がEUとIMFの命令にしたがったのはギリシャの死を確認したものだった。EUの指示に基づくギリシャ政府の緊縮政策は三度に及ぶが、それでも市場の致死的な高金利は抑えられなかった。EUとIMFの代表は、ポストモダンな植民地総督のように、融資に伴う追加の緊縮策をアテネで命じている。政府支出の大幅削減、公務員給与と年金の30%削減。付加価値税の引き上げ、その他を、政府はすでに受け入れている。新たに、公共部門の撲滅、国民医療サービスの引き下げ、公共事業の民営化、賃金削減の民間部門への拡大、などが要求される。議論も、議会投票も、国民投票もなく、戦後の支配的な社会契約が全体として解体される。

政治はネオリベラリズムの独裁を受け入れるか、まったく限定的なものになったが、現実は崩壊の中でその不道徳さを示している。・・・産業資本主義の終わり ・・・戦後ヨーロッパの社会契約は社会正義と連帯に依拠しており、共通の利益、を掲げてきた。・・・今や、治療は病気よりも悪いことが分かった。その適用は過激な政治化を再生する。

SPIEGEL ONLINE 04/27/2010

Hesitation and Patronizing Advice

How Germany Made the Greek Crisis Worse

A Guest Commentary by Gustav A. Horn

FT April 27 2010

Stocks slump on Greece and Portugal downgrades

By Telis Demos in New York

FT April 27 2010

Greek crisis begets a German backlash

By David Marsh

ドイツの有権者は税金でギリシャを救済しなければならなくなる。ドイツの銀行は融資や債券の組み換えでギリシャの債務を負担しなければならなくなる。これが通貨同盟の意味だ。

guardian.co.uk, Wednesday 28 April 2010

A Baltic future for Greece?

Mark Weisbrot

ラトビアやエストニアがどうなったかを見れば、ギリシャの将来が分かる。最悪の不況を2年間も経験したラトビアは、GDPの4分の1を失った。しかし、ユーロに対する固定レートを守ったエストニアも、厳しい「内的な切り下げ」を行った。

EUやIMFには資金があるのだから、反循環的な政策によって景気回復を助け、債務の組み換えや削減を行うべきだ。

guardian.co.uk, Wednesday 28 April 2010

Crisis-hit Greece may be the first domino

Larry Elliott

guardian.co.uk, Wednesday 28 April 2010

Angela Merkel is riding Germans' anger at Greece

Benjamin Dierks

SPIEGEL ONLINE 04/28/2010

Aid Package Talks in Berlin

Greece Will Need up to 135 Billion Euros

SPIEGEL ONLINE 04/28/2010

The World From Berlin

German Government 'Must Stop Using Greek Crisis for Campaign Fodder'

FT April 28 2010

Greek fire turns to Spanish fever

By Victor Mallet in Madrid, David Oakley in London, Kerin Hope in Athens, Nikki Tait in Brussels, and Quentin Peel and Gerrit Wiesmann in Berlin

FT April 28 2010

Greek crisis endangers private sector

By Mohamed El-Erian

FT April 28 2010

Europe needs a framework for debt crises

By Jean Pisani-Ferry and André Sapir

「債務の水準は高く、財政のプライマリー・バランスも大赤字、さらに、高金利とマイナスの成長予測、これらの組み合わせはギリシャの支払い不能を真剣に考えさせる。」

ギリシャ政府が財政の現在の調整策を実行し、競争力を回復しても、その債務を返済できるとは思えません。それゆえユーロ圏は、その一国が債務を支払えない場合の債務組み換えを準備しなければなりません。

危機が波及するリスクを考慮すれば、今のギリシャ危機に対しては安定化融資を続けるしかないでしょう。国家債務の組み換えは、すでに10年前から、特にアルゼンチンのケースで問題になっていました。その主要な問題は、国際的に分散した債権者がどのように協調して行動するか、ということです。

一つの解決策は、債務の契約内容を修正し、債務組み換えの集団的な代表を置くことです。もう一つは、当時のIMF副専務理事Anne Kruegerが唱えた、さらに野心的な案で、国家債務組み換えメカニズム(SDRM)を国際協定によって立ち上げることです。その提案によれば、SDRMはすべての国を拘束し、民間のさまざまな対立する債務合意にとって代わる。メカニズムが起動すれば、債務の支払いは一時的に停止し、債務者と債権者とが話し合って、条件付き多数決で新しい返済方法を決める。

しかし、SDRMは実現しなかった。ウォール街が強く反対し、IMF加盟国間でも共通利益が認められず、超国家的解決策への恐れがあった。ここからEUは学ぶことができる。

1.秩序ある債務組み換えのメカニズムがないことは、債務を組み替えないことを意味しない。むしろ、アルゼンチンが示したように、銀行による完全返済の要求の背後で、混乱した過程が続けられる。ユーロ圏の誰もが、それを避けたがっている。

2.EUは法を共有している。経済的利害において異なっても、EU加盟国は、グローバルなレベルで拒んだ超国家機関を、EU内でなら受け入れるだろう。単一市場、単一通貨、という利益が共有されるなら、EDRMは現実的である。

難しい点は、誰が、どのように意思決定するか、という制度の中身である。蔵相理事会、ECB,欧州委員会、そして、IMFが役割を果たすべきだ。

FT April 29 2010

Double or quits for the eurozone

Times Online April 29, 2010

Greece is the Word

April 29 (Bloomberg)

Junking Greece May Be Beginning of End for Euro

Mark Gilbert

そもそもユーロに参加するべきではなかった。破綻することが最も望ましい。・・・ギリシャ危機はますます悪化し、ユーロ圏にとってのリーマンブラザーズ倒産となるか? ECBは危機の連鎖を止めるためにギリシャを救済する?

FP APRIL 29, 2010

Interview: Raghuram Rajan

Interview by DAVID KENNER

Raghuram Rajanは、最年少でIMFの主席エコノミストになり、早くから金融革新の危険性を指摘しました。その解説は正統的です。

ギリシャの財政規律は、歴史的に見て弱かったが、ユーロ参加によってさらに失われた。当面、ユーロ圏を離脱しない以上、時間をかけて賃金を下げるしかない。巨額の救済融資は、当然、外部からの監視をその代償とする。ユーロ圏は財政移転できる仕組みを欠いたまま通貨統合した。財政移転で合意するのは、自分たちと彼らの行動が同じではなく、信頼できないなら、非常に難しい。ユーロ圏のコア諸国間にはそのような一体感があるけれど、周辺部に対してはない。

危機の感染contagionを心配するのは、一つには、それらの違いを超えてセーフティー・ネットを作ったからだ。個々の国が評価されるだけなら、そのような感染は起きない。救済融資によってギリシャの危機が先送りされ、金融市場が安定したときに再び議論するなら、危機は回避できるかもしれない。しかし、その間も、ギリシャは緊縮政策に苦しむ。もしギリシャ政府が債務を支払わないと決めるなら、そのもたらす結果は、たとえばフランスの銀行が持つギリシャ債の価値は失われる。IMFがこの問題にかかわって政治的に行動するのは間違いだ。ギリシャ債務の規模が支払い不能に及んでいるかどうか、経済的に、判断することである。

FP APRIL 29, 2010

Jean-Claude Trichet, Call Your Office

BY TRISTAN ABBEY, SCOTT PALTER

FP APRIL 29, 2010

The transatlantic democracy deficit

Posted By Phil Levy

ヨーロッパにおいても、アメリカにおいても、財政赤字に対する民主的な意思決定が欠けている、と批判します。ドイツの有権者がわずか16%しか賛成せず、65%が反対している救済を、メルケル首相が望まないのは当然です。オバマも、財政赤字の削減を、支出削減と増税の組み合わせで、中間選挙の後に、考えます。

財政のバランスをどのように回復するか、その答えは有権者に選挙で問うしかないのです。

guardian.co.uk, Thursday 29 April 2010

Germany is kicking away props of global recovery

Phillip Inman

The Guardian, Thursday 29 April 2010

The euro: On the brink of crisis

SPIEGEL ONLINE 04/29/2010

First Subprime, Now Europe

Revenge of the Rating Agencies

By Marc Pitzke in New York

SPIEGEL ONLINE 04/29/2010

The Debt Crisis

Europe Shudders Over Greece Disaster

SPIEGEL ONLINE 04/29/2010

The Euro Zone Needs New Rules

By Peter Bofinger

「何カ月間も、EU加盟諸国の政府は、個別の国が陥った深刻な債務問題に対しても、通貨同盟の内部で生じる不均衡を減らすことについてと同様、確固とした解決策を示すことができなかった。」 こうした政治不安は一層の投機を招きます。

Peter Bofinger は、解決策の核心を「融資」a common financing mechanismや「制裁」an additional sanction mechanism、そして「成長」an improved balance of growthと考えます。ユーロ圏内で、赤字国の財政規律を回復・強制し、黒字国の拡大策を求める仕組みを、合わせて明確なルールにし、政治的に合意しようと考えます。

FT April 29 2010

Europe unravels in a tangle of national interests

By Philip Stephens

ギリシャ危機はEUのより根本的な問題を示す「兆候」にすぎない、とPhilip Stephensは考えます。政治的信頼、相互の補償メカニズム、が崩れつつあるのです。

ベルリン(ドイツ政府)が学んだように、非難合戦は自己破壊的になっている。正しいことを主張する代償として、カオスが生じている。カオスは無差別であって、ギリシャ国債を大量に保有するドイツの銀行はそれをよく知っている。モラル・ハザードとともに生きることも現実である。

冷戦が終わって、中国などの新興勢力が台頭する世界では、ヨーロッパは強調して行動しなければ影響力を失ってしまいます。しかし、メルケルの主張はドイツの利害を合理的に計算したものでした。ドイツは東西統一に成功し、統一市場を得た。ユーロ圏の指導原理は譲れない、と。ヨーロッパ各国の主張は、戦争の脅威を失えば、こうしたゼロサム・ゲームに変わります。

EUはグローバリゼーションのやっかいな矛盾が生んだ犠牲者である。グローバリゼーションは国民国家の権力を奪いながら、同時に、国境なき世界の不確実さから有権者を保護せよ、というグローバルな相互依存がもたらす圧力を、政治家に対して強めている。

しかし、ヨーロッパとして、それを実現するよう主張できる政治家はいない。

FT April 29 2010

The crisis will spread without a Plan B

By Nouriel Roubini and Arnab Das

金融市場の不安に対して赤字国が厳しい緊縮政策を示しても信頼回復に成功しなかった以上、新興市場の債務危機と国際収支不均衡の調整に関するコンセンサスから学んで、EUは速やかに次の収拾策を実行することです。すなわち、赤字国ギリシャの債務削減と競争力の回復、黒字国ドイツの財政刺激策、ECBの金融緩和と危機回避策、ユーロ安、より高い成長です。

プランBは、「予防的なギリシャ債務の組み換え、ユーロ圏周辺部における財政調整策の強化、構造改革の強化、IMF・EUのギリシャ支援および感染予防の追加的な融資プログラム、ECBの金融緩和、ドイツの財政支出による内需刺激策、EMUの制度的欠陥を解決するための協力、を含むものだ。

ベルギーが緊縮策で危機を回避した1990年代の例ではなく、パキスタン、ウクライナ、ウルグアイ、ドミニカ共和国のような、新興市場の危機回避策に学ぶべきだ。すなわち、十分な融資と政治的関与をともなう、予防的な債務の組み換え、である。

民間債権者には選択肢のメニューが示されるだろう。ギリシャは債務組み換えによって得た時間を、包括的な構造改革による競争力の改善に使わなければならない。ECBは金融緩和し、ギリシャの銀行に対する取り付けに「最後の貸手」としての姿勢を明確にするべきだ。

FT April 29 2010

EU governments must show mettle

WSJ APRIL 29, 2010

The Euro Can Survive a Greek Default

By DANIEL GROS

「EUの政策担当者たちは、1200億ユーロの救済案がギリシャ悲劇をハッピー・エンドにできないとしたら、何が起きるのか、という根本的な疑問に直面している。ギリシャのデフォルトはユーロの終末なのか?」

しかし、デフォルトは返済期限を守らないすべてのケースを指しており、実際には、政府が債務を組み替えることで全額返済するなら、市場はそれを許しています。そこでDANIEL GROS は、a "soft default"a messy (and massive) defaultとを区別します。ソフト・デフォルトならユーロは安全です。

しかし、メッシー・デフォルトの場合、確実に、ユーロ圏のクラブとしての性格は終わります。共通通貨を安定させるという目標は、ギリシャによって損なわれたのです。ギリシャはクラブから除外されるでしょう。それでもギリシャがメッシー・デフォルトを避けるなら、ユーロ圏のクラブは残ります。

デフォルト後もギリシャはユーロを使用し、ECBの担保適格を失うけれど、自らユーロを法定通貨としている(ユーロ化した)モンテネグロと同じになります。ギリシャの銀行はユーロ預金を持ちますが、デフォルト時にすべて破綻しています。

ギリシャの経済規模はユーロ圏全体のわずか2%であり、たとえメッシー・デフォルトでもユーロを終わりにすることはないでしょう。しかし、その場合には感染contagionが問題になります。もしスペインやイタリアが感染すれば、ユーロ圏は解体します。

Times Online April 30, 2010

Europe’s economy is the sick man of the world

Bill Emmott

感染contagionについて、メキシコの元蔵相は「生き延びるために片足を切断する」ことだと指摘します。EU・IMFの救済案が市場の不安を取り除けないなら、もはやギリシャをユーロから切断するしかない、というわけです。

かつてアメリカのリーマン・ショックやアングロサクソン資本主義を非難していたヨーロッパが、今ではアメリカ経済が回復する中で、自分たちが世界経済の病人であると認めなければなりません。

さて、この問題に関する三つの(苦い)真実について、Bill Emmottは考えます。

1.ヨーロッパの政治統合は、ギリシャの財政を管理することも、ギリシャの政治的安定を確保することも、今はまだ、できないのです。そうであれば、ギリシャ自身が政治的安定を維持し、その政府が経済を回復させるしかないでしょう。EUはそれを金融的に支援し、経済調整を支援するために(通常なら)「切下げ」を認めるのです。

2.こうしてEUやIMFがギリシャに対して非常に寛容であるなら、ポルトガルやスペインもそれを期待して行動するはずだ。特に、ギリシャの債務は組み替えられ、減額されるのであれば、投資家たちは今すぐに、ポルトガルやスペインの債券も売り始めます。それは債務国にも債権者にもコストが大きく、それゆえ、ギリシャへの対応は十分に厳しいものでなければならない、と考えるでしょう。ユーロ圏からの追放は、そのような条件として最適です。

ギリシャにとっては、ユーロ離脱が政治的に痛手でも、経済的には利益である、とみなせます。他方、ポルトガルには少し言えますが、スペインやイタリアにとって、その債券の保有者がほとんど自国民であるから、デフォルトや債務組み換えによる目立った利益は無いのです。

3.この問題は南ヨーロッパの弱さから生じているだけでなく、ドイツの間違った強さ、あるいは、ヨーロッパ経済の弱さから生じているのです。ギリシャへの融資の60%はドイツやフランスなど、他のユーロ圏諸国から来ています。金融緩和にもかかわらず、彼らには融資先が十分にないのです。それゆえ、債務の組み換えは、直接的な、切下げとは違う形で、間接的に銀行の損失として、こうした黒字諸国にコストを支払わせます。

ギリシャをユーロ圏から追放する以上に、黒字諸国が見出すべきことは、ユーロ圏の成長です。「輸出の多さはその国の経済や社会を強くしない。輸出企業が強くなるだけで、そのほかの経済は所得も生産性も上昇しない。1990年以後の日本を見ればわかることだ。」

April 30 (Bloomberg)

We’ll All Be Dead When Greek Woes Are Forgotten

William Pesek

「面白いことに、アジアの単一通貨という話題が、突如としてタブーになった。」

日本は民主党や政権内の混乱、アジアでは刺激策に代わって、インフレの抑制が話題になっています。単一通貨など、反対でしょう。

ギリシャ危機から、アジア通貨論は4つの教訓を学ぶべきです。1.もっと、もっと、慎重に。ギリシャはユーロ圏内で問題を解決するより悪化させた。ヨーロッパ市場よりも、アジアは大きな弾力性を要する。2.政治的信頼関係を欠いてはならない。ヨーロッパに比べて、アジアの諸国は経済状態も政治体制も、全く異なっている。3.単一の通貨(金利、為替レート)はすべての問題に答えられない。巨額の財政支援が必要になる。そのために、統計は透明で正しく、経済主権は大きく譲歩しなければならない。4.経済状態が整っても、ヨーロッパに負けない、政治的な制度化が必要だ。そして、単一通貨を吹聴するより、その前に、自由貿易圏を成功させることだ。もしそれを行動で示すなら、鳩山のデザインに投資家は注目する。

ギリシャ危機のおかげで、少なくともわれわれが死ぬまで、アジア単一通貨など試みる者はいないだろう。


2.オバマの金融制度改革

(コメント) アメリカが国際協調や交渉の制度化に向けて積極的に行動するには、国内の改革が必要です。金融危機がアメリカで起きたことは、内外の金融改革を一気に加速する機会でもあります。ギリシャ危機とゴールドマンサックス告発の行方を、日本が座視することはできません。

guardian.co.uk, Friday 23 April 2010

Barack Obama's message to Wall Street

Thomas Noyes

オバマは金融改革法案について講演するためにウォール街を訪れました。金融世界の中心です。

「金融改革法がなぜ必要かを思い出すことは有益だ。ウォール街は顧客たちの口座を複雑なデリバティブでかき混ぜて、金融システム全体に毒を流し、不動産価格が下落すると世界経済は動けなくなった。現代の経済が近代的で複雑な金融システムを必要としているとしても、こうした策謀がデリバティブを売った会社の利益になる以外に、どのような社会的・経済的な目的を遂げたのか、理解するのは困難だ。」

「もし金融市場が真に効率的であれば、ウォール街はそれが経済全体に創り出す価値に比例して利益を得ることが期待される。しかし、この危機に至るまで、ウォール街の利益(とボーナス)は経済全体の成長を大きく超えていた。金融市場は崩壊し、銀行は政府の支援を受けるように強いられたが、それでもこの混乱を創り出した金融魔術師たちは桁外れの報酬を保証するように求めた。」

WP Friday, April 23, 2010; A21

How Obama found his mojo on Wall Street

By Eugene Robinson

WP Friday, April 23, 2010; A19

The best financial reform? Let the bankers fail

By James Grant

NYT April 23, 2010

Don’t Cry for Wall Street

By PAUL KRUGMAN

オバマはウォール街に乗り込んで金融改革への支持を要請しました。「改革は、我が国にとっての最善の利益であるだけでなく、金融部門にとっても最善の利益である。」 ・・・そうでもない。

改革は金融部門の利益を損なうものでなければならない、とPAUL KRUGMANは主張します。肥大化した金融ビジネスは実体経済を苦しめています。だから、経済を回復するには金融部門を縮小するべきです。

(金融ビジネスの莫大な利益)は正当なものだ、とわれわれは説明された。なぜなら金融部門は経済にとって重要な仕事をしてくれるからだ。資本を生産的な用途に向ける。リスクを分散する。金融の安定性を高める。そのいずれもが正しくなかった。資本は雇用を生み出すような革新に向かわず、持続不可能な住宅バブルに向かった。リスクは分散されずに集中した。住宅バブルが破裂すれば、安定的なはずの金融システムも内部崩壊した。そして担保価値が損なわれ、世界経済は大恐慌以来の世界不況に陥った。

彼らの利益は、顧客の金を使ったギャンブルで得たものだった。金融革新の多くは安全の幻想を創り出し、預金のような旧来の資産ではなく、「まやかしの代替物」を投資家たちに配った。

IMFが金融ビジネスへの課税(Financial Activity Tax:FAT)を提案したように、金融ビジネスの規模を引き下げるべきだ。「われわれは富のあまりにも多くを、また、この国の才能の余りにも多くを、経済を破滅させる傾向のある複雑な金融的仕組みの開発と販売に費やしてきたのだから。」

FT April 23 2010

Banking: Going for Goldman

By Francesco Guerrera

WSJ APRIL 23, 2010

The New Master of Wall Street

WSJ APRIL 23, 2010

Back to Basics on Financial Reform

By NIALL FERGUSON AND TED FORSTMANN

金融改革を考える際、われわれは「トリレンマ」に直面している。1.効率的な資本市場、2.巨大銀行を救済しない、3.不況の回避。

1980年代から2007年まで、われわれは選択肢の1と2を採った。巨大銀行を公的資金で救済するのを拒んだとき、われわれは不況に直面した。その後、民主党は三つとも採用できると主張している。効率的な金融市場を保ったまま、税金を使う銀行救済もせずに、金融規制を改革・強化すれば、不況も来ない、と。

しかし、そのような広範な金融規制は金融市場を損なうだろう。・・・重要な点は、CDOの取引が明らかに膨張していたことだ。・・・クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を商品先物市場の規制から除外する理由はない。「歴史が示すように、商品を標準化し、手数料を低くした効率的な市場は、自生的に現れない。それらは創り出す必要がある。」

金融危機が規制緩和によって起きた、と言うのは間違いだ。1970年代の管理された金融市場では、競争が少なく、借り手はより多くを支払った。その後の金融革新は、1980年代、90年代のアメリカ経済に真の利益をもたらした。危機の原因は、むしろ金融政策の失敗であり、危機の発生源は、高度に規制され、政府介入があった住宅モーゲージ市場である。

焦点を絞った改革が望ましい。

April 23 (Bloomberg)

Big Bank Breakup Time Gets Boost From Goldman

Simon Johnson

セオドア・ルーズベルトがJ.P.モルガンを告発し、巨大金融機関はアメリカ経済と民主主義を滅ぼす、と主張して、勝利したように、世論と政治の流れが変わりました。その後、独占禁止法は、スタンダード・オイルやAT&Tを解体したのです。

WP Saturday, April 24, 2010; A13

Will Congress hold the big banks responsible for the economic crisis?

By Harold Meyerson

LAT April 25, 2010

Obama and Wall St. — it’s not 1936

Doyle McManus

NYT April 25, 2010

Fight On, Goldman Sachs!

By FRANK RICH

FT April 25 2010

Time to take Wall Street out of Washington

By Robert Reich

アメリカの金融業界は、医療業界に次いで、政治献金が多いのです。中間選挙を前に、民主党も共和党も、金融機関からの献金がほしくてたまりません。そんな中で金融改革法案を審議して、本当に金融業界が嫌うような厳しい改革を議論できるでしょうか?

ブッシュ政権下のハンク・ポールソンも、クリントン政権下のロバート・ルービンも、ゴールドマンサックスの出身でした。ワシントンとウォール街との緊密な関係は明白です。政治家はこの点を偽ることはできません。それが政府への信頼を蝕んでいます。

LAT April 26, 2010

Time to get real on financial reform

WP Monday, April 26, 2010; A15

Financial reform's big unknowns

By Robert J. Samuelson

WP Monday, April 26, 2010; A15

Cool the Goldman rage

By Fareed Zakaria

NYT April 26, 2010

Berating the Raters

By PAUL KRUGMAN

本当に重要なeメールは、格付け会社が企業からの求めに応じて甘い評価を繰り返したことを示すものだ。「2006年に発行された、サブプライム・モーゲージによる資産で発行されたトリプルAの債券は、今や、その93%がジャンク債になっている。なんと、93%だ!」

これは、腐敗が根深いところまで進んだシステムだ。格付け会社は、市場調査を行い、購入者の側に社債の評価を売る会社だった。しかし、情報がすべてインターネットにより無料で手に入るようになって、社債を発行する企業からもっぱら報酬を得るようになった。それゆえ、企業の依頼を得るために、競って、甘い評価を出すようになったのだ。そこには、債券購入者との間の、ひどい利益相反関係がある。

April 27 (Bloomberg)

Hedge-Fund Bust Will Bear Goldman’s Fingerprints

William Pesek

NYT April 27, 2010

The Goldman Drama

By DAVID BROOKS

NYT April 27, 2010

Meet the Real Villain of the Financial Crisis

By BETHANY McLEAN

FT April 27 2010

Why cautious reform of finance is the risky option

By Martin Wolf

ゴールドマンサックスが告訴された。これでようやく悪者が罰せられるのか? ・・・しかし問題は、禁じられていたことではなく、何が許されていたか、である。カナダのように、少数の銀行による寡占体制をより厳しく管理するか?

あるいは、金融危機を招かないシステムを創るのが良い。そのために、自己資本を増やし、十分な返済義務を負っているべきだ。その方が、最後の貸し手も動きやすい。また、自己資本の水準は、循環的な景気変動と逆に連動するべきだ。銀行は十分な資産を持っているべきだ。金融機関内部のインセンティブを変えるべきだ。デリバティブを扱う場合は自己資本規制を厳しくする。情報の質を高めるべきだ。

しかし、自己資本の十分な水準はどこか、わからない。リスク評価を行う人間に失敗が起きる。さまざまな規制の間で裁定が起きる。

そこで、同時に、金融市場の構造を変えるべきだ。預金の支払いを公的に保証された金融機関のデリバティブ取引を規制する。「ナローバンク」が投資できる対象を国債に限定する。投資家の責任が明確な、投資信託の形式に限る。

April 28 (Bloomberg)

No Time Like the Present to Overhaul Wall Street

David Pauly

WP Wednesday, April 28, 2010; A20

Goldman and the blame game

NYT April 28, 2010

Wall Street Casino

WSJ APRIL 28, 2010

Europe's Financial Reform Road Map

By CHRISTINE LAGARDE AND WOLFGANG SCHäUBLE

フランスとドイツの財務大臣が共同で書いています。1年前のロンドン金融サミットの成果を称え、アメリカ政府による金融改革とも協力して、デリバティブ取引やオフショア市場、ヘッジ・ファンドを含む、グローバルな金融規制を求めています。

WP Thursday, April 29, 2010; A17

Want to save capitalism? Regulate it.

By E.J. Dionne Jr.

WP Thursday, April 29, 2010

How Goldman might seek redemption

By Matt Miller

FT April 29 2010

Currencies: Carried away

「キャリー・トレード」が為替市場を不安定化し、金融システムを危険にさらしている、という批判があります。すなわち、低金利で借りた資金を、他通貨の、より高い利回りの資産で運用することです。(Sophisticated hedge funds, for example, hop across borders with ease, using cheap yen and other currencies to buy higher-yielding assets. Even retail investors have been in on the act, with many in eastern Europe having borrowed heavily in currencies with low interest rates, such as the Swiss franc, to buy houses.) 外為市場で、約1兆ドルの残高がある、と推定されています。

ブレトンウッズ体制が崩壊してから40年近くが経ちましたが、自由な為替取引が望ましい、という政策関係者の合意が翻されるかもしれません。

これは通貨市場の投機が、世界的な不均衡を埋めるために必要な役割を果たしている、と言うことでしょうか? 低金利の黒字国で、投資家たちがリスクを取って他国の高利回りの機会を利用するのは、常に、歓迎すべきことなのでしょうか? しかし、その規模を考慮すれば、このまま放置できません。黒字国が金融引き締めに転換するとき、新ショックが世界に波及するかもしれません。

記事は、その例として、1990年代のバブル崩壊後の日本が採用した低金利政策と円安を挙げています。日本からオーストラリアなど、キャリー・トレードが世界中に生じ、その後、1997年のアジア通貨危機やロシアのデフォルト、LTCM危機を導いた、と指摘します。

また、アメリカ国内でも、低金利を利用した「ドル・ドル」のキャリー・トレード(低金利を利用して、地方の銀行が優良債券を大量に購入する)が起き、新興市場では通貨の増価と低金利によるバブル、という危険な状態が生じています。彼らの中には、ブラジルやインドなど、資本流入規制を検討している国もあります。

ロンドンの銀行間市場で、昨年の夏、円よりドルの3カ月金利が上昇し、ドルによるキャリー・トレードが急増しています。しかも投資家たちは、アメリカ金融政策の転換を予想しており、資本移動の逆転が起きるのは確実です。金融危機で安全資産への逃避傾向がドル高を生じており、金利引き上げの時期を早めたかもしれません。

為替レートの調整が円滑に進むか、という問題は、市場が静かな中でも、金融関係者や主要国金融政策当局の関心事となっています。


3.中国と国際調整について

guardian.co.uk, Friday 23 April 2010

The key to economic recovery is boosting global demand

Martin Khor

FT April 25 2010

Iran is China’s problem too

April 26 (Bloomberg)

I’ll Tell You When Chinese Bubble Is About to Burst

Andy Xie

1929年の大恐慌の前にジョセフ・ケネディーが株式を売ったのは靴磨きのチップを支払った時だったが、アジアでは、中国の家政婦がそれを教えてくれそうだ。」

「住宅を2軒買うべきよ。」 と、販売店員は言います。「3年で価格は2倍になるでしょう。あなたは1軒を買って、もう1軒をただで手に入れるのですよ。」

中国には、住宅ブーム、住宅狂い、が蔓延しています。ただし、Andy Xieによれば、住宅バブルが生じているとしても、経済成長が止まるわけではありません。また、明日にも価格が下落する、というわけでもないのです。

特に、人民元の増価は確実だ、という期待がバブルを育てています。人民元を保有していれば、必ず利益を得られるのです。しかも、ドルで保有していた資産が、今や、一斉に中国に向かい、中国国内に溜まっています。ウォール街が金融商品を合成したように、中国では地方政府の汚職が住宅市場を膨張させていきます。

土地の価格と開発業者の利益、地方政府の税収は、そのまま成功のサイクルをなしています。「政府は腰までバブルに浸かっている。」 少し前まで農業経済であった中国では、土地所有こそ資産であり、真の富なのです。

即座に豊かになる魔法は、中国の不動産市場です。靴磨きの少年が、売れ、と教えているけれど、13億人の流れは止まりません。

FP Monday, April 26, 2010

China's new strategy

Posted By Stephen M. Walt

WSJ APRIL 28, 2010

China Goes Bubble Popping

WSJ APRIL 28, 2010

A New Sinology

By KEVIN RUDD

WSJ APRIL 28, 2010

India Ahoy

By RORY MEDCALF

FT April 29 2010

Hong Kong and Shanghai can rise together

By Edgar Cheng

FT April 29 2010

China: Futuristic yet fruitful

上海万博は、世界最大最速の都市化に対する解決策です。その投資額は550億ドル(約5兆円)。北京オリンピックの2倍以上です。「上海の過ごした15年はロンドンの150年にも値する。」

“Better city, better life” ・・・ “Bubble City, Bubble Life”


4.アリゾナの移民規制

LAT April 26, 2010

Look, it's an illegal, right?

Gregory Rodriguez

NYT April 26, 2010

Breathing While Undocumented

By LINDA GREENHOUSE

guardian.co.uk, Tuesday 27 April 2010

Arizona law inflames immigration row

Sahil Kapur

WP Tuesday, April 27, 2010; A17

In Arizona, immigration creates another Tea Party moment

By Richard Cohen

WP Tuesday, April 27, 2010; A17

Arizona's new immigration law is an act of vengeance

By Eugene Robinson

WSJ APRIL 27, 2010

Arizona's Immigration Frustration

SPIEGEL ONLINE 04/28/2010

Dispelling the Myth of 'Parallel Societies'

Are Berlin's Muslims a Model for Integration?

By Siobhán Dowling in Berlin

WP Wednesday, April 28, 2010; A21

A law Arizona can live with

By George F. Will

WP Wednesday, April 28, 2010; A21

A test of Arizona's political character

By Michael Gerson

FP APRIL 29, 2010

The World’s Worst Immigration Laws

BY PETER WILLIAMS

世界最悪の移民政策は・・・? 最近の話題として、イタリア(推定移民人口390万人)、スイス(170万人)、オーストラリア(550万人)、日本(170万人)、アラブ首長国連邦(375万人、全人口の83.5%)、の移民政策を挙げています。

WP Thursday, April 29, 2010; A16

Arizona's immigration law twists the Constitution in the pursuit of illegal immigrants

NYT April 29, 2010

Why Arizona Drew a Line

By KRIS W. KOBACH

The Times April 30, 2010

Borderline Politics


5.NATOの役割

FP MARCH/APRIL 2010

Let Europe Be Europe

BY ANDREW J. BACEVICH

FP MAY/JUNE 2010

Who Needs NATO?

Dmitry Rogozin and Ronald Asmus

FT April 27 2010

Russia’s rethink

FP APRIL 29, 2010

Why Bosnia Needs NATO (Again)

BY LOUISE ARBOUR, GEN. WESLEY CLARK


WSJ APRIL 26, 2010

The Trouble With Belgium

By MARC DE VOS

英仏の干渉国家として誕生し、言語と文化において分裂したまま、連邦制の下、自律性を主張し合う地域に、政治的な党派争いが加わり、最近は民族主義的な過激派が増大しています。地域の経済発展や政策、イデオロギーは全く異質で、互いの失敗を非難し合い、他方、ブラッセルはコスモポリタンな世界都市です。民主的な意志決定は機能せず、さまざまな時代とヨーロッパ各地の政治システムが混在する「バスケット・ケース」となっています。2007年の7月に行われた選挙以来、首相は5回目の辞任となりました。


guardian.co.uk, Monday 26 April 2010

Kim Jong-il's weakening grip

Simon Tisdall

WSJ APRIL 29, 2010

Stand Up to Kim Jong Il

By CHRISTIAN WHITON

WP Thursday, April 29, 2010; A16

Korean torpedo


WSJ APRIL 24, 2010

A Supply-Sider in East Africa

By ANNE JOLIS

NYT April 25, 2010

School for Hope

By NICHOLAS D. KRISTOF


WP Friday, April 23, 2010; A19

Energy sector poised for innovation -- with the right spark

By Bill Gates and Chad Holliday

NYT April 25, 2010

Tea Party With a Difference

By THOMAS L. FRIEDMAN


guardian.co.uk, Thursday 29 April 2010

Compromise only answer to Thai crisis

Thitinan Pongsudhirak

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The Economist April 17th 2010

The new masters of management

The world turned upside down: A special report on innovation in emerging markets

The BRICs: The trillion-dollar club

Schumpeter: An emerging challenge

(コメント) 興味深い特集記事です。新興市場emerging marketsも、BICsも、最初は、世界銀行や証券会社が国際投資を促すために作ったセールスのためのキャッチ・コピーでしたが、現実の変化を理解する概念に育ってきました。

新興市場から現れた新興企業が世界に向けて供給する商品の破壊力はすさまじいものです。3000ドルの自動車、300ドルのラップトップ・パソコン・・・ あり得ない世界の出現です。その前提は彼らが企業経営の姿を根本的に変えてしまったこと、ちょうど、トヨタなどの日本企業が、世界市場で旧世界の自動車など、工業製品を圧倒し始めたときのように。新興市場では、これまで旧工業諸国の世界企業が無視してきた貧しい大衆を市場として発見し、これまで旧世界のしら受けにとどまっていた企業が無数のネットワークと「安価な革新」を集積しつつあります。それは医療など、高度サービスの分野にも限界を超えて適用されます。

旧世界の停滞、高齢化、財政赤字と倹約を置き去りにして、新興市場の中産階級は、かつての歴史的な工業化や都市化のスピードを超えて、急激に膨張し続けます。新興企業は人材を奪い合い、高い報酬と教育への投資を続けます。新興世界に新製品だけでなく、ますます機能しなくなる旧秩序に変わる、新しい国際秩序の設計を担う人々、その野心を持った制自動車や国家が集まるのも当然です。

現代の国際政治でBRICsが重視されるのは、投資戦略アナリストたちが注目した、その経済規模と成長力だけでなく、アメリカ自身の受容的な対応、米中G2による秩序転換を嫌う主要諸国の雰囲気、莫大な外貨準備量(BRICsだけで、もう一つIMFを作れる)、そして、個々の国が歴史的に抱いてきた不満や野心を満たす装置として利用できるからです。しかしまた、BRICsは、一種の言い訳やカモフラージュであり、新しい軍事・政治同盟ではありません。

少なくとも、旧世界の指導者たちが改革を急ぐ強い圧力となるでしょう。


The Economist April 17th 2010

Greece’s debt crisis: Three years to save the euro

Greece’s sovereign-debt crisis: Still in a spin

(コメント) 緊急融資・支援と交換に財政引き締めを求めるだけでは解決しません。ギリシャ危機は、むしろデフォルトした方が良いのではないか、という疑いを生じるでしょう。ユーロ圏が危機を脱するかどうかは、そうではない、ということを市場に確信させる転換を(ギリシャだけでなく、ユーロ圏が)遂げることにかかっています。

ギリシャは国内改革によって競争力を高め、ドイツは内需を刺激してユーロ圏の成長を高め、ECBは財政赤字を支えて、ユーロ安を促すことになるでしょう。


The Economist April 17th 2010

Poland’s loss: A president dies, a country lives

Thailand’s deadly Saturday: Angels with bloody hands

Portland and “elite cities”: The new model

Rebuilding Haiti: Dreaming beyond the rubble

(コメント) ポーランドの政府要人・各層の指導者が亡くなった飛行機の事故は、ポーランドの強さとプーチン政権の和解を求める姿勢に対して、高い評価を与えたようです。他にも、タイの政治対立と収拾策、ハイチのNGOによる国家統治。

ポートランドの自転車社会を紹介する記事が魅力的です。フライブルグ、チューリッヒ、など、環境に配慮した新しい都市社会の姿が求められています。市電、直接民主主義、自殺の合法化。・・・しかし、アメリカには珍しい風景でしょう。その起源は、1973年、オレゴン経済の主要産業であった農業を守るために、市街地の拡大を抑制する法律ができたことだ、と指摘します。その後、ポートランドをハイウェイの繁殖するロサンジェルスのようにしたくない、という政治合意が形成されます。この街で最大の政治党派は、民主党でも、共和党でもなく、サイクリスト(自転車乗り)である、と。

他方、ジョエル・コトキンの批判的コメントも載せています。高所得の、若い、子供のいない、インターネット世代の人びとは、旧都市を嫌って移動し始め、各地に新しい「エリート・シティ」を創って、コミュニティーの感覚を楽しんでいる、と。