今週のReview
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IPEの想像力
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IPEの想像力 4/5/10
・・・ドイツ、中国、イギリス、日本、ロシア。
グローバリゼーションが進展する一方で、全く異なったガバナンスとその転換が模索されていることは、驚きと興味の尽きない領域です。そして、国際摩擦や論争が増加し、それがますます重要になることを予感させます。
1980年代に日本がアジア通貨間の協力を制度化していた場合、あるいは、1990年代にバブル処理を迅速に実行していた場合、日本の姿は今とどれほど違っていたでしょうか? 2013年に朝鮮半島の再統一を支援したり、あるいは、中国を含む国際通貨危機が起きて、IMFを介した国際協調の枠組みを合意したりするとしたら、日本政府にその用意があるでしょうか?
多面的に変化する国際秩序においては、たとえば、以下のような問題が互いに深く結び付いているでしょう。すなわち、
1.アジアの次の通貨危機を予想し、安定化のための制度を構想すること。
2.中国との国境紛争・資源争奪を回避し、移民論争を指導して、それらにふさわしい枠組みを合意すること。
3.インターネットの自由と安全保障、犯罪撲滅に共通の基準を設け、協力すること。
4.日本のガバナンスを、新しい条件に合わせて革新すること。すなわち、社会保障制度や雇用創出、企業設立、女性の社会進出、財政赤字削減、金融市場改革、国際競争力、農業の再生、自然保護・景観回復、などを革新してほしいです。
こうした様々な分野で議論を積み重ねる中で、東アジア共同体と安全保障についても、具体的な前進が勢いを得てくるのではないか、と思います。
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4月1日。入学式に行って、新入生に学生証を配りました。入学して早々に、首にギブスを付けた、変な爺さんに説教された・・・ と思った学生たちには同情します。
彼らに言いたかったことは、たった一つでした。「今すぐに始めなさい。」 何でもよいから。本気で取り組んでほしい、と思いました。
人生は短いし、人間のピークは35歳である。竜馬や信長のように、人生30年、と断言するつもりはないけれど。今すぐに、大学のすべての機会や条件を活用して、自分の可能性を試し、能力を高めてほしい。
・・・それが嫌なら、・・・いつまでも漫画を読んで、寝転んでテレビを観たり、酒の味を覚えたり、ただなんとなく楽しければよい、と言うのであれば、(病気はともかく、年齢を)私と代わってほしい。・・・さすがに、そうは言いませんでしたが。せめて、あなたが過ごすこの時間は、二度と帰らないよ、と教えたかったです。
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その翌日はブックオフまで散歩しました。足のリハビリです。しかし、ちょっと遠過ぎる。帰りは迎えに来てもらう約束をしたので、ゆっくり歩きました。
翻訳小説から現代、時代小説まで、時間をかけてすべての棚を見ましたが、なかなか読みたい本が見つかりません。ようやく、北原亜以子の『深川澪通り木戸番小屋』を買いました。
第一話。火傷で纏持ちを辞めなければならなくなった男の話です。
男は火消しの親方から賄い屋で働くことを勧められる。しかし、自分の目標が見いだせない。家族もなく、あまりにも貧しかった少年時代。纏持ちとして生きることが尊厳や誇りだった。
男は酒を飲み、火の用心を見回る木戸番と歩いたとき、偶然、火事を消しとめる。人びとが感謝し、称賛した。男の誇りがよみがえり、その感覚が忘れられない。・・・火消しに執着する。
男が火付けによって、大きな過ちを犯すとき、そばにいた少女がそれを見る。少女がそれをネタに男を強請り、男は磔(ハリツケ)にされる恐怖で狂いそうになる。・・・その妄想には人間の暗さがあります。
しかし、少女は男に感謝したい、と願い、貧しくて、お礼もできないから、と部屋の掃除や炊事に通う。男は自分の弱さから、疑いと怒りに翻弄され、少女の感謝を受け入れない。
男が少女の身の上を知り、その心情を理解したとき、自分が犯した罪も知る。・・・何としても彼女を救いたい。自分の生きる意味はそれしかない。少女が奈落に転落するのを防ぐこと。
賄い屋に走って、働きたい、と願う。自分には彼女を助けられるかもしれない、と想うことに、男は感動します。・・・二つの希望が再生する話です。
同じく『深川澪通り燈ともし頃』も買いました。そして、もう1冊、と探しあぐねて、手嶋龍一の『ウルトラ・ダラー』にしようか、と思いましたが、その会話部分を読んで、やはり棚に戻した後、漸く決めました。立花隆の『政治と情念:権力・カネ・女』です。
・・・冷たい風が吹き荒れ、駅前でバスを待つ間、小さな雹が渦を巻いていました。私の後ろでは、電車から降りて帰宅する人たちに、「朝から奈良トーク」を宣伝する若者がいました。民主党・馬淵議員の事務所に1カ月間のインターンシップに来ている、と聞いたように思います。誰一人、聞いているかどうかわからない街頭で、彼は声を嗄らして参加を呼びかけ続けました。
政治とは何でしょうか? 小沢一郎は、新人候補たちに、1000回の街頭演説(辻説法)を命じたとか。情熱をこめて演説する政治家に、私は期待します。情念と正義感に駆られて走る優れた人びとを、政治に集める新しい仕組みが、日本にその後(田中角栄の後)育ったのでしょうか?
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1.ドイツとユーロ政治
2.中国との論争
3.イギリスのガバナンス
4.日本の改革は終わった?
5.移民政策の改革へ、6.核軍縮・管理、7.新しい安全保障、8.ロシア国内政治とテロ、9.北朝鮮の冒険
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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia
1.ドイツとユーロ政治
(コメント) 独自の通貨がなくなれば、金利も為替レートも自分で勝手に変えられない、というのはその通りです。しかし、変えられると何もかも解決できる、というわけではないはずです。
なぜ日本は単一通貨なのでしょうか? 東京と京都、あるいは、沖縄や知床が、同じ金利や為替レートを採用することは、同様に、経済学的に見て、全く間違った話です。
また、たとえギリシャがユーロを採用したままでも、必ずしも緊縮政策と長期にわたる不況と大量失業を強いられるわけでもありません。当然、優れた人びとは職を求めて移動し、ギリシャの産業も再編されるわけです。世界中の優れた企業がギリシャの企業や店舗、ブランドを買収し、あるいは、観光産業やIT産業で栄える新しい都市が誕生するはずです。
あるいは、軍事基地が集まり、犯罪集団が集まり、廃棄物が集まり、・・・ それでも、人びとが生きる活力を失わない限り、さまざまな場所で機会をつかむでしょう。
ドイツは、なぜそう思わないのか? ドイツは、ハイパーインフレーションとナチスを恐れるとともに、東西ドイツ再統一の苦しみと財政支出による経済再編が不毛であったことを後悔しており、移民流入やEU拡大によって生じた社会不安(旧秩序の解体)を嫌うからではないでしょうか。あるいは、ヨーロッパ統一の過程で、繰り返し求められる財政負担が、それを拒むたびにナチスの記憶に言及され、ドイツへの怨嗟(そして人種差別や好戦的ナショナリズム)に転化することを恐れるからではないでしょうか。
EMUが(ゆるやかに)崩壊するとしたら、それは経済条件の違いにもかかわらず、ではなく、その違いがあるからこそ、統合化に必要な仕組みを模索してきた政治的意志が弱まり、亀裂を生じたことを意味します。その結果がなんであるかは、まだわかりません。
FT March 25 2010
Merkel’s myopia reopens Europe’s German question
By Philip Stephens
「ヨーロッパが、再び『ドイツ問題』でさまよっている。」・・・「かつてベルリンの隣人たちは、大陸の中央に、余りにも強力で膨張主義的な国家があることを恐れた。」 ところが今では逆である、と。
メルケル首相がギリシャの救済案で示したドイツという国は、ヨーロッパに対する負担をできるだけ小さくして、自分たちのことだけに関心を限定する、内向きの国家でした。
Philip Stephensは、救済融資にIMFを関与させるメルケル首相の姿勢を、そのように評価します。
あるいは、ユーロ圏の不均衡についても、赤字国を代表するフランスのサルコジ大統領が「グローバル・アクター」を強調するのに対して、メルケルは「静かな生活」を望みます。ロシアとの緊密な二国間関係でも、東欧諸国などの不安をドイツは無視し続けています。他方、核、アフガニスタン、など、アメリカとの関係は希薄です。
「むしろ、20世紀の後半が例外であった。ドイツは今や『普通の国』である。大きなスイスになりたい、とドイツが選択するなら、ヨーロッパの隣人たちは不満を言えるだろうか?」
「ドイツ問題」は、ドイツの分割とアメリカ軍の駐留で抑えられ、その解決策はヨーロッパ統合に向けられました。ヨーロッパの赤字国と黒字国が論争したとき、フランスに対してドイツが勝利し、フランスは切り下げとデフレを強いられました。こうした屈辱を避けるために、フランスはユーロを築いたにもかかわらず、同じ論争が起きています。フランスは政治指導力、ドイツは経済拡大、という「機関車」が脱線したのです。
ベルリンの壁が崩壊したとき、イギリスとフランスは東西ドイツの再統一に反対でした。しかし、ドイツが経済のエンジンでなくなり、内向的な姿勢を「国益」として主張し始めるなら、EUはどうなるのか?
WSJ MARCH 25, 2010
Save the Single Market
By MALCOLM HARBOUR AND ANDREA RENDA
FT March 25 2010
A euro exit is the only way out for Greece
By Wilhelm Hankel, Wilhelm Nölling, Karl Albrecht Schachtschneider and Joachim Starbatty
1993年にマーストリヒト条約はドイツ憲法に違反している、と訴えた4人のエコノミストたちが、ユーロ圏内の個別政府を救済しない、という約束の下では、ギリシャはユーロを離脱するしかない、と主張しています。そして、ドラクマを再導入します。
あるいは、もしギリシャを救済するなら、ドイツが離脱しなければ憲法違反になります。EMFは役に立たず、ギリシャが緊縮政策を繰り返しても解決に向かわないのです。
guardian.co.uk, Friday 26 March 2010
Germany must help, not punish, Greece
George Irvin
逆に、ドイツやEU(ECB)が赤字国救済を拒んで、各国がユーロを離脱することこそ1930年代を再現させる、と考えます。なぜなら、脆弱な各国通貨を守るために、政府は資本規制や保護貿易を採用するしかないからです。それは某r機や投資を激減させ、大量失業を生じます。
しかも、金融救済には何の費用も要らない、と。他方、緊密に結びついたユーロ圏内で赤字国にデフレ調整を強いることは、輸出に依存するドイツ経済を最も傷つけます。フランスが理解したように、ヨーロッパ経済統治を実現し、拡大策を採るべきだ、と。
FT March 26 2010
Europe manages a wise compromise
The Guardian, Saturday 27 March 2010
The eurozone: A club in crisis
FT March 28 2010
Europe has resolved nothing over Greece
By Wolfgang Münchau
ヨーロッパはいつものように、危機の最後になって、徹夜の会議を続け、「緊急支援協定」により問題を解決したのでしょうか? Wolfgang Münchauは、そうではない、と考えます。
融資を受けて利子を支払う? そんなバカな! ギリシャは資本市場から拒否されたから救済されるのです。こうした支援の枠組みは、「市場に向けた心理的な助け」となるより、むしろ「信認という危険な手品」でしかない、と批判します。「それは、今すぐではないが、いつか逆噴射する。」
「ギリシャ政府は、最近、GDP比4%の財政赤字を削減するという厳しい緊縮案を受け入れた。これは深刻な、そして長期に及ぶ不況をもたらすだろう。これほど大規模な緊縮策を実施する国には、何らかの緩和策がともなう。それは、切り下げやIMFの短期融資、理想的には、その両方である。ギリシャにはどちらもない。」
ギリシャの債務の70%を外国人が保有しているのであるから、次第に、ギリシャ政府はデフォルトの方がましだと考えるだろう。つまり、まず救済資金を得てから、次にデフォルトする。債券市場はすでにそれを予想している、と。
「救済しない、デフォルトしない、債務の貨幣化もしない」という考え方は矛盾しています(実行できない)。16カ国が拒否権を持つような融資の形式は、問題を解決する枠組みになりません。メルケル首相は、救済融資や緊急援助を拒否するでしょう。
WSJ MARCH 28, 2010
Who Will Rescue Greece's Rescuers?
欧州委員会、ECB、そしてユーロ圏を構成する国すべての合意がなければ、ギリシャは救済されません。すべてに拒否権が与えられました。・・・誰も望まない合意、というべきか? この緊急融資保証で、市場は安心してギリシャ国債を購入できるでしょうか? しかも、マーストリヒト条約は「救済」を禁止しています。・・・この合意は「合法」か?
NYT March 29, 2010
Euro Trashed
By JOACHIM STARBATTY
「ユーロの基礎たるEMUは大きな幻想で始まった。」 一方にはその通貨が絶えず増価する諸国(オーストリア、フィンランド、ドイツ、オランダ)。他方には通貨が絶えず減価する諸国(ベルギー、フランス、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペイン)があった。「ところが通貨同盟は『すべてに同じ一つの通貨』を創った。」 ギリシャはもともと誤魔化しの統計で加盟した国だった、と。
「ユーロ楽観論者」は、共通通貨を導入すれば、それがグローバルな経済競争力を高め、同盟の全体に経済・社会の近代化を実現する、と考えた。実際は、その反対のことが起きたのだ。ECBの低金利に目がくらみ、特に(減価する通貨を持っていた)南のユーロ圏で、政府も家計も赤字にふけった。
こうした『ユーロの原罪』を免れるには、「世界経済に悪影響を及ぼさぬため、ドイツが仲間の国をともなってユーロを離脱し、新しい、強い通貨圏に移ることだ。」
JOACHIM STARBATTYによれば、それはドイツにも、ギリシャにも、好ましいことであるし、世界経済にも好ましい。そして、強い新通貨圏、あるいは再生ユーロが、ドルに代わって世界の投資家に必要な通貨を供給する、と主張します。
FT March 29 2010
The euro’s big fat failed wedding
By Gideon Rachman
ヨーロッパ統合は、経済的、政治的に進み、国民が支持するはずでした。しかし、その熱狂は冷めて、今や、ますます離婚するカップルに似ています。この危機が政治同盟への転機にならない限り、博物館に行ったはずの各国通貨のデザインが関心を集めるでしょう。
guardian.co.uk, Tuesday 30 March 2010
Greece rescue is just a sticking plaster
Charles Grant
ギリシャ危機は悪循環を抜け出せません。その背景には、ドイツのデフレ政策があります。赤字国の賃金上昇を、黒字国のドイツが輸入を増やすのではなく、デフレ政策によって調整しなければならない、というのです。
これまで、ドイツ政府はその要求を拒んできました。ドイツの輸出品が競争力を奪われることに反対し、需要を刺激しても追加の貯蓄になるだけだ、というのです。しかし、輸入国が破たんすれば輸出国も不況に呑みこまれることを、ドイツは忘れたのでしょうか?
ドイツが赤字国の構造改革を強調する姿勢には、ユーロの維持だけでなく、三つの問題を感じる、とCharles Grantは指摘します。1.独仏関係の崩壊。2.EUにおけるドイツの孤立。3.EUの内向化。そのいずれも、グローバルな課題に立ち向かう、ヨーロッパの可能性を閉ざすものです。
FT March 30 2010
Why Germany cannot be a model for the eurozone
By Martin Wolf
これは解決策ではない、とMartin Wolfは結論します。誰も他国の政府の赤字を埋め合わせないし、赤字国が他国に財政再建を委ねることもない。ユーロ加盟国のバブルと赤字が悪い、と言うが、その背後にはECBがいました。
「周辺で起きた資産市場のバブルと民間部門の信用膨張は、また、中枢において実質需要が成長しなかったことの反映であった。」・・・「その財政破綻は、中枢、特にドイツが、その実質需要をわずかしか成長させないことを相殺するために」、それを補って金融政策を緩和してきたことの結果である、と理解しなければならない。
ドイツのようにすれば、EU各国も成長できるのか? そんなことはない、とMartin Wolfは批判します。EU全体がデフレ政策を採って、ユーロ圏内の弱い諸国に不況を強いたまま、新興市場に向けた輸出を増やすことを「安定」と呼ぶのは間違っている。
WSJ MARCH 31, 2010
Preventing the Next Euro-Zone Debt Crisis
By MICHAEL HEISE
結局、「最後の貸手」が登場して赤字国を救済するとすれば、ユーロ圏全体が統一した金融秩序(金融規制・監督)と財政秩序(政府の財政再建)を確立できるかどうか、を問わねばなりません。
「ユーロ圏は新しい、強力な『財政委員会』を必要としている。この委員会は政府の赤字が増大する前に中期の予算を修正する権限を持たねばならない。」 言いかえれば、赤字国の予算をEUが管理するのです。
LAT April 1, 2010
Old King Kohl
By Timothy Garton Ash
東西ドイツを再統一したときの首相、ヘルムート・コールが80歳になりました。コールが繰り返し主張したことは、ドイツ統一とヨーロッパ統一は「同じコインの裏表である」というものでした。そのコインとは、すなわち、ユーロです。
「ドイツが変わった、ドイツ人はヨーロッパの中に溶け込むように徹する、と、ドイツの隣人たちに確信してもらうことで、ドイツは平和と自由の内に国民の悲願である再統一を実現できる」と、彼は信じました。そして、ユーロを導入したけれど、コールが願ったほど、ヨーロッパの財政規律や政府間の財政的移転は実現していません。
ユーロは、政治的な統合をもたらすのではなく、ドイツのための輸出市場をもたらしただけでした。コールであれば、そして、Timothy Garton Ashにとっても、ギリシャ危機の解決策とは、「短期的な財政的負担を受け入れて、長期的なヨーロッパ統一の政治を優先する」ということにほかなりません。
しかし、再統一後のドイツは変わってしまいました。もはやヨーロッパ統一の理想や戦争の個人的記憶は重要でなくなりました。それはかつてドイツ人の歴史的な責務と信じられたし、ドイツの国益でした。今は、ドイツの内側に強まる欠乏感に支配されています。
Timothy Garton Ashは、ドイツが、イギリスやフランスと同じように、ヨーロッパ統一より国内政治を優先する姿勢に変わったことを非難できない、と考えます。ただし、もう一つの意外な結果を指摘します。こうしてEUはイギリスに近付いた、と。かつて、ドイツ再統一やユーロを非難し、「第4帝国」を攻撃したイギリス保守党が、政権を獲っても、今やEUに近い立場を採れるでしょう。
FT April 1 2010
Reform and recovery must go together in the eurozone
By Christopher Potts
2.中国と<西側>との論争
WP Friday, March 26, 2010; A25
For rising China, an identity crisis
By Sebastian Mallaby
「1990年代前半、私が日本に住んでいたころ、日本人はアイデンティティーを探していた。日本は経済大国になったが、政治はそれに追いつかなかった。日本は、世界に占めるその重要性を何に使うべきか、知らなかった。」
そして、現在の中国と比較します。中国の経済的奇跡もその国家の成熟を超えています。しかし、イラク戦争や金融危機、カトリーナなどを経て、1980年代のように、アメリカの民主主義を理想とする若者はいません。・・・北京で流行っているジョークはこんな感じです。「われわれはソ連に学んだが、ソ連は崩壊した。われわれは日本に学んだが、日本は崩壊した。われわれはアメリカに学んだが、アメリカも崩壊した。」
アイデンティティーと外交の基本を求めて、日本が西南の役の西郷隆盛を再発見するように、中国でも歴史をさかのぼることが流行っています。それは、かつて共産党が隠した歴史です。人民元であれ、インターネットであれ、Sebastian Mallabyは、中国のことは中国に委ねるべきだ、と考えます。西側の外交は、それに合わせて変化すべきである、と。
The Observer, Sunday 28 March 2010
If the US declares economic war on China, we should all tremble
Will Hutton
ドイツと並べて、中国のデフレ政策が批判されています。米中通貨・貿易戦争は避けて、中国経済の変化を促しながら、それには時間を要することも認めます。Michael Pettisが指摘するように、中国政府が労働組合や所有権を明確に認め、賃金上昇や融資の担保を広く認め、人民元の増価を許すなら、アメリカ政府も財政刺激策を続け、中国製品への市場開放を続ける、という「取引」が必要です。
Will Huttonにとって、問題はドイツや中国のデフレ政策ではなく、それを是正するためにアメリカが選択しようとする剛腕外交、市場圧力の行使です。かつて日本に対してそうであったように。
FT March 28 2010
China knows the time for lying low has ended
By Ian Bremmer
FT March 29 2010
Blaming China will not solve America’s problem
By Stephen Roach
アメリカの最悪の組み合わせ、「政治的に犠牲を強要する姿勢と、間違った経済理解」が米中対立を急激に加熱します。
WSJ MARCH 29, 2010
The Return on Beijing's Building Boom
By JING ULRICH
WSJ MARCH 30, 2010
The Moral Hazard of Foreign-Exchange Reserves
By CATHY HOLCOMBE
WSJ MARCH 31, 2010
China Convicts Itself Beijing needs to commit to the global economy
By HOLMAN W. JENKINS, JR.
WP Wednesday, March 31, 2010; A17
A flawed American political model aids China
By Harold Meyerson
NYT April 1, 2010
China, Concubines and Google
By NICHOLAS D. KRISTOF
チベットの人権問題や人民元の為替レート問題と違って、グーグルでは中国人もインターネットの自由を望んでいる。経済成長の結果、かつて1980年代に、台湾、韓国、インドネシアで、教育を受けた中産階級が増え、最終的には、一党支配体制を終わらせた。
FT March 31 2010
When Beijing and New Delhi pull together
By James Lamont
FT March 31 2010
Tough talk on China ignores economic reality
By Jim O’Neill
中国の輸入を促すべきであって、人民元レートは大きく乖離していない。
3.イギリスのガバナンス
FT March 25 2010
‘Back to the future’ imperils Britain
By Martin Wolf
guardian.co.uk, Monday 29 March 2010
Gordon's great idea: EU peace corps
Michael Williams
「21世紀のもっとも顕著な問題の一つは破綻国家もしくはそれに向かう諸国の存在だ。ラテンアメリカからアジアまで、地球上には開発援助を必要とする国があふれている。そうした国は以前も問題であったが、グローバリゼーションの過程で彼らの破綻が世界中に派生する。この状況は気付かれぬまま進展し、ある日、突然、国際社会は『かつて見たこともない』重大な問題に目覚める。しかしその時にはすでに軍事力が普通に必要とされ、作戦は信じられないほど複雑なものになっている。こうした問題に対処するより、それを未然に防ぐ方がはるかに優れている。」
The Times March 30, 2010
Winston Churchill: an unlikely adviser in the Afghan conflict
Ben Macintyre
米軍とNATO軍の司令官、スタンリー・A・マカリスター将軍は、タリバンとの戦いに一人の顧問を得た。「この軍事顧問はイギリス人で、元ジャーナリスト・兵士・文筆家・画家・政治家である。しかしまた、彼はすでに死者であり、彼が最後にアフガニスタン周辺に来たのは1897年であった。」
イギリスにとってどれほどの価値があるかわからないような辺境の砂漠で若い兵士たちが死んで行くのを、若い、23歳の従軍記者であったチャーチルは見ていました。・・・法の支配が及ぶのは銃口の下だけであり、部族の争いからは手を引き、部族たちに委ねよ。彼らの石器時代の流血であれ、部族システムの解決策であれ。・・・
マカリスター将軍が、最近、雑誌The Atlanticで語った記事(“the third choice — Churchill’s choice — is really the only one we have”)も、賢明な死者の判断に学ぶものです。
guardian.co.uk, Wednesday 31 March 2010
David Cameron bigs up society
Madeleine Bunting
4.日本の改革は終わった?
FT March 28 2010
Japan’s false dawn
WSJ MARCH 29, 2010
Post-Post-Reform Japan
WSJ MARCH 29, 2010
Killing Postal Reform Won't Help Japan
By GEORGE MELLOAN
WSJ APRIL 1, 2010
Japan's Carbon Hara-Kiri
自民党の衰退・分裂、イデオロギーの対立軸がない「同意社会」、3兆3000億ドルの資産を持つ郵政民営化の逆転、産業の競争力を無視した温暖化ガスの削減、GDP比200%に向かう国債残高、財政再建を議論できない政治家たち。
WSJ APRIL 1, 2010
Don't Bet Against Japan Yet
By ALICIA OGAWA
「銀行危機が予想された通り銀行融資を縮小し、多くの資産と職業が失われた。切迫する危機の分析は正しかった。しかし崩壊を利益とみなした者たちには残念なことに、監督当局は銀行が短期的な問題を回避するのを許し、危機は10年間も噴出しなかった。」
現状維持の選択肢がすべて尽き果て、コストが増大するばかりだと確信するまで、解決は延期されるだろう。日本の債券市場が脆弱であるのは知っているけれど、政府がそれをどれくらい重力に逆らって支えられるか、その最終的なコストがどうなるか、分からない。
April 1 (Bloomberg)
Japan’s $15 Trillion Not Enough to Make It a Buy
William Pesek
「中国が台頭し、インドが台頭し、韓国が台頭するとき、日本がそのガタガタのモデルを思案している時間を世界は待てない。日本がすべての関心を向けるべき方針は、競争力の改善、セーフティーネットの強化、生産性の上昇、高齢化対策、出生率引き上げ、移民受け入れ、である。」
5.移民政策の改革へ
guardian.co.uk, Friday 26 March 2010
After healthcare, immigration reform
Michael Paarlberg
SPIEGEL ONLINE 03/26/2010 06:35 PM
Following in Switzerland's Footsteps
International Right-Wingers Gather for EU-Wide Minaret Ban
By Charles Hawley in Berlin
WSJ MARCH 27, 2010
ObamaCare and Immigration Reform
By JASON L. RILEY
LAT March 27, 2010
California must stem the flow of illegal immigrants
By Steve Poizner
guardian.co.uk, Monday 29 March 2010
Immigration is a real problem
Andrew Green
6.核軍縮・管理
NYT March 28, 2010
Arms Control’s New Era
FT March 28 2010
Obama makes the world a safer place
FP MARCH 30, 2010
Nuclear Options
BY JAMES TRAUB
7.新しい安全保障
WP Sunday, March 28, 2010; B04
Why Google should stay in China
By Yasheng Huang
FT March 28 2010
The internet: Closing the frontier
By Richard Waters and Joseph Menn
March 29 (Bloomberg)
Roubini’s Collision Course Is Warning for Google
William Pesek
WP Tuesday, March 30, 2010; A25
Google's lonely stand for human rights in China
By Richard Cohen
8.ロシア国内政治とテロ
FT March 29 2010
Russia’s bloody backyard battles
The Times March 30, 2010
Terror Returns to Moscow
NYT March 30, 2010
Moscow Under Attack
By SERGEY KUZNETSOV
FP MARCH 30, 2010
The Moscow Bombings Don't Matter
BY JULIA IOFFE
NYT March 31, 2010
The Moscow Bombings
NYT March 31, 2010
What Makes Chechen Women So Dangerous?
By ROBERT A. PAPE, LINDSEY O'ROURKE and JENNA McDERMIT
ロシアを支配しチェチェンに軍を送るのはプーチンです。チャーチルの声も聞こえません。
「体に爆弾を巻き付けて、多くの人を日常から奪い去り、殺害するために、自分も一緒に殺してしまう若い男女が何に駆られてそうするのか、われわれは本当に理解しているか?」・・・「自爆テロは、ほとんどいつも、外国の軍隊に占領されたことへの最後の手段である。」
助成の自爆テロは「効果的」でした。彼女たちは検問を容易に通過し、標的に近付けるからです。彼女たちはロシア軍の占領による犠牲者の身内でした。彼女たちは攻撃が男の仕事であることを訴え、兵士を募りました。彼女たちはイスラム世界の復活ではなく、チェチェン独立を求めました。
「これほど多くの自爆テロがある以上、誰も持続的な和平を望めないのではないか? しかし、歴史をよく見れば、双方が受け入れ可能な解決策が示されている。」
2004年11月から2007年10月まで、自爆テロはなかった。その理由は、ベスランの学校占拠事件と子供たちを虐殺に巻き込んだテロが公衆の支持を失ったことです。また、同時にロシアの軍隊が大規模に展開し、分離独立派を抹殺しました。
しかし、2007年後半から、ロシア政府はチェンチェンをRamzan Kadyrovとその民兵軍の支配に委ねました。この傀儡政権はテロ掃討を継承し、さらに、誘拐、投獄、民家への放火におよび、自白を強要し、判決を歪めました。
解決策とは何か? テロはロシア政府と軍隊による占領・間接支配に反対するものです。穏健な政策ですべてのテロはなくせませんが、共存を模索するレベルにまで減るでしょう。Kadyrov大統領を分離独立派はモスクワの手先としてしか見ない以上、自由で公正な選挙が必要です。治安活動には国際的に認められる人道的な基準が必要であり、地域の石油資源がイスラム教徒も含めて住民たちに公平に分配されるべきです。チェチェン自身の社会制度が再建されることが重要だ、と。
9.北朝鮮の冒険
FT March 30 2010
Hermit economics hobbles Pyongyang
By Aidan Foster-Carter
FP MARCH 30, 2010
They’re Not Brainwashed, They’re Just Miserable
BY MARCUS NOLAND
guardian.co.uk, Wednesday 31 March 2010
North Korea: a dangerous anachronism
Isabel Hilton
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The Economist March 20th 2010
The battle for Thailand
Eastern Europe’s economies: What went right
Banyan: The right approach
Middle-income and developing countries: Crumbs from the BRICs–man’s table
Hiring practice in Japan: A new ice age
Private equity in Japan: The waiting game
Economics focus: It wasn’t us
(コメント) タイの王制と民主主義、東欧の危機回避能力、インドの権利改革運動、中国などBRICsによる「南々協力」、日本の「就職氷河期」と投資ファンド抑圧、アメリカの金融政策論争。
タイでは、亡命中のタクシン元首相と老衰のプミポン国王をめぐる抗議デモが衝突したまま、民主主義は迷走して数年に及びます。1年前は世界恐慌の引き金を引くと恐れられた東欧経済から、今はすっかり関心が薄れ、投資家の不安材料はギリシャ危機に変わりました。インドで起きていることが何か、私に十分理解できていると思いませんが、カースト制を超えて法的な権利を実行させる運動が、インドの社会・政治システムを変える可能性はあるでしょう。
中国やインドが、金融危機と世界不況により、これまでの裕福な援助供与国に代わって、貧しい諸国への援助や融資を競争して増やすことは、理想的な「南々協力」がようやく実現したのか? そうでもないようです。援助が実は市場金利による融資でしかなく、空港建設もひも付きで、中国企業が受注するだけでなく、さらに建設労働者もすべて中国から連れてくるとしたら、貧しい諸国が得るものは限られています。他方、豊かな国との貿易に比べて、援助を与えてくれる中国との貿易や投資が増えることは、産業構造を低水準に押しとどめる効果があるかもしれない。援助の元になった中国の輸出が人民元レートの安さによる分だけ、世界貿易から貧しい諸国は締め出されています。
日本の記事に、英米圏の悲観論を読みます。派遣労働者の待遇は、A.ハクスリーの小説、『素晴らしき新世界』が描く「アルファ」と「イプシロン」に似ている、と批判します。同じ労働でも、賃金は40%しかもらえず、さまざまな待遇や給付の差別があります。
日本こそ投資ファンド(private equity fund)が一番必要な国だ、と記事は述べています。「(日本には)世界的な水準の技術を持つ中小企業があり、成長のための基礎とグローバル化を必要としている。日本企業の利益率は英米企業の約半分である。戦後に企業を興した世代は引退するのに、後継者がいない。」 ・・・ところが投資ファンドに来るのは完全に手遅れになってからだ。
日本で投資ファンドが機能しない理由は、文化的要因、大企業や銀行との関係、低金利、最後に、日本政府の間違った政策、返済期限の延長、を挙げています。