IPEの果樹園2010

今週のReview

2/1-/6

IPEの風

*****************************

世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

アメリカの金融改革、 ボルカー・ルール批判、 日本:RICHARD J. SAMUELS Bill Emmott、 中国:非難称賛、 ギリシャ:Charles Goodhart、 ガバナンス:専門家ダヴォス

******************************

ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


FT January 20 2010

Technology: A world to scale

By Peter Marsh

(コメント) 世界がフラットだ、とは思えませんが、市場競争が激化して、国内の巨大市場を背景に短期で世界企業が市場を席巻する分野が増えているのは新しい現実でしょう。かつて、産業政策やキャッチ・アップ過程の輸出戦略によって、その国の成長を企業のレベルまで政府が助成し、国家戦略を立てた時代があったように、再び、産業・技術政策が国家の盛衰を左右するようになるのでしょうか?

イギリスには100人を超えるノーベル化学賞を出した優れた教育機関がありますが、その新しい知識を利用した世界企業はほとんどアメリカにあります。イギリス政府は、かつての産業政策に戻る印象を与えないように注意しつつ、自国で革新的な世界企業を増やしたい、と願っています。コンピューターのソフトや医薬品、化学分野など、イギリスが企業を育てたい分野に技術の助成や企業設立の支援を行います。

世界企業が生まれない理由を二つ挙げています。一つは、同じ企業を育てるなら、イギリスよりもアメリカが良い、という事情。もう一つは、イギリスの起業家が大きな野心を持たない、という点です。ある意味では、そのような企業や野心家は、アメリカに渡って成功するのでしょう。

論説が引用した図では、日本の発明も大きな役割を果たしていますが、革新や雇用の見通しは最近ますます悪化していると感じます。


WSJ JANUARY 21, 2010 Banks Need Clear Capital Rules By JUDAH S. KRAUSHAAR

WSJ JANUARY 22, 2010 Obama v. Wall Street

(コメント) リスクのある売買で利益を上げている以上、金融機関が自己資本を要求されるのは正しい。しかし、それが何に対して、どの程度必要か、それによって金融部門がどれほどの利益を上げられるか、はっきりしない限り、融資や金融市場は回復しない、とJUDAH S. KRAUSHAARはポピュリスト政治(巨大銀行を分割せよ!)を批判します。

Jan. 22 (Bloomberg) Obama’s Plan to Be Judged by a Goldman Breakup Simon Johnson

WP Friday, January 22, 2010 Obama's bank solution goes too far -- and not far enough By Sebastian Mallaby

(コメント) アメリカが金融制度改革に踏み出します。オバマ政権は、巨大銀行の規模と範囲を制限する方針を示しました。特に、大銀行の解体です。

ポール・ボルカー前連銀議長が、今回の大規模な金融救済が次の危機を準備してしまう、とホワイトは椅子を説得したのです。しかし、1990年代半ば以降の銀行の膨張が金融救済と大恐慌以来の財政赤字、大量失業をもたらした、という社会的コストに結び付ける証拠はない、とSimon Johnsonは批判します。もっとほかの金融機関や活動を無視する理由もありません。

これはオバマ政権は中間選挙を意識して、ウォール街に政治戦争を挑発した戦略的な選択に過ぎないのでしょうか? 政治家に向けて莫大な政治献金が動き始めるのは間違いありません。そして、その結果を判定するリトマス試験紙は、ゴールドマンサックスの解体です。少なくとも4社か5社に分解し、GDPの1%程度に縮小することができるでしょうか?

Sebastian Mallabyは、「大き過ぎて潰せない」問題を、オバマは解けないだろう、と考えます。敵を選ぶ点で臆病であり、解決策において行き過ぎたからです。

オバマは、巨大銀行が危機を拡大したことを攻撃します。彼らは、失敗すれば政府によって救済されることを予想して、銀行融資によるギャンブルにふけり、その利益を分け合ってきたからです。しかし、解決策において、自己勘定売買を禁止し、ヘッジファンドなどに参加することを禁止したことは、後者は正しくとも前者が間違いである、と主張します。自己勘定売買は正常なビジネスの一部であり、区別は曖昧です。特に、外国銀行がそれを禁止されていない以上、好景気において彼らはアメリカにおける売買を増やし、バブルが破裂したらコストを負担しない、という結果になるでしょう。アイスランドがやったように(そのコストは、今のところ、イギリスやオランダの国民が支払っているのです)。

Sebastian Mallabyは、正しい解決策を銀行への課税“a too-big-to-fail tax”であると考えます。銀行は、その市場取引に応じて、救済のための資金を準備しておくわけです。しかし、オバマはこの問題を今回の救済資金を回収するという意味で提案しており、Sebastian Mallabyにはそれが不満です。

FT January 22 2010 Mission to trim bank giants’ girth By Francesco Guerrera and Justin Baer in New York

FT January 22 2010 Man in the News: Paul Volcker By Krishna Guha and Gillian Tett

FT January 22 2010 Obama erects a Maginot line

(コメント) その長身やヘビー・スモーカーだけでなく、公僕として国家のために尽くし、自分の利益にしようなどとは考えなかった(10セントのタバコを吸い、ファーストクラスには乗らない)人物として、ポール・ボルカーは尊敬されてきました。 “financial statesmanship” on Wall Streetとみなされたわけです。

ボルカーは、経験不足のオバマが選挙戦を勝つための守り神でしたが、政権成立後の政策には関与していませんでした。ボルカーが過剰なリスクとボーナス支給を嫌い、銀行業務を簡素化するべきだと発言しても、誰も注目していなかったのです。21世紀の、サイバー空間で発達した金融ビジネスを、ボルカーは理解できないのだ、と批判する銀行家もいる、と記事は伝えています。

ボルカーが正しい攻撃対象を選べるのか、銀行の自己勘定売買と正常な金融サービス(マーケット・メイク、証券化、デリバティブ)との区別は容易にできない、と批判されます。そんなことをしてもリスクは減らせないし、金融サービスが海外に移転されるだけだ、と。

しかし、銀行を基本に戻すという考えは、金融錬金術の若者たちが理解できない真実を含んでいる、と支持者たちは考えます。何よりも、マサチューセッツ州の上院議員選挙で敗北した民主党とオバマ政権が、中間選挙に向けた挽回作戦の旗印として、ボルカーの長身と清廉さはオバマの貴重な資源です。6フィート7インチの公僕は、大き過ぎて倒せない、と。

FTは「ボルカー・ルール」をマジノ線にたとえます。マジノ線を築いても、これで戦争は防げなかったのです。自己勘定の売買を禁じても、「シャドー・バンキング・システム」は拡大したままであり、銀行と同じようにレバレッジを利用してリスクを取り、その破たんは放置できません。世界会議を開いて銀行監督のルールを合意するしかありませんが、その見込みはありません。

FT January 22 2010 Obama’s bank plan is a start By Viral Acharya and Matthew Richardson

LAT January 23, 2010 Managing Wall Street meltdowns

WP Saturday, January 23, 2010 The "Volcker Rule' could clarify roles and risks in the financial system

BG January 23, 2010 Obama’s vital new bank rules

The Sunday Times January 24, 2010 Barack Obama's banking plan could split the West

(コメント) 二つの深刻な欠陥がある、とこの論説は主張します。・・・まず、この規制があってもリーマンブラザーズもノーザンロックも倒産しただろう。今回の危機は防げなかった。AIGが金融サービスを取引したような、シャドー・バンキング・システムがある限り、こうした規制には意味がない。絶対倒産しない銀行を考えることはできても、実際に定義することは難しい。

だから政府は、銀行を厳しく規制し、破綻処理の準備金を積ませるしかない。銀行家の報酬の一部に課徴金を設けることも考えられている。

・・・第二に、各国政府がバラバラな規制をしても、その効果は期待できない。1930年代には保護主義によって失業が輸出されたように、現代では金融危機とその処理コストが輸出される。しかし、G20の合意は容易に成立しないだろう。

NYT January 24, 2010 Bankers’ Sense of Entitlement

FT January 24 2010 Banking: Tripped up By Francesco Guerrera and Megan Murphy

(コメント) 金融緩和と不況対策(財政赤字)により、銀行の収益は急速に回復し、政府による株式取得や債務を急速に返済して、むしろ巨額のボーナスを支払える状態に復帰しました。その結果、国有化と分割といった制度改革の機会は失われ、むしろボーナス規制や救済コストの回収、リスク回避を強いるような規制改革に関心が向かうわけです。

イギリス、フランス、スウェーデン、などの対応が指摘されています。銀行規制を強める政治的な風潮が強まっている以上、銀行も受け入れるしかありません。その一方では、「忍び寄る社会主義“creeping socialism”」、「代表なくして課税ない」、といった不満の声がささやかれています。ウォール街の幹部たちは、銀行を非難すれば経済が脱線する、と警告します。

政府の攻撃的な姿勢は金融危機を防ぐのか? 多くの規制や課徴金は、その背後に、政治的な短期思考がある、と記事は批判しています。リスクは減らないし、国際規制も掛けているから、次の危機は別の形で起きるのです。

The Japan Times: Sunday, Jan. 24, 2010 'Fat cats' roaring back at Obama By KEVIN RAFFERTY

NYT January 25, 2010 Restarting Financial Reform

(コメント) オバマ金融改革の輪郭は明確になりました。銀行の規模に上限を課すこと。より大きく、より支配的な銀行が、莫大な利益を独占し、破綻すれば国民がコストを負担する、という傾向を逆転させます。

銀行の規模とリスクを抑えるために、自己資本規制、デリバティブ規制、金融サービス消費者保護庁、さらに、金融破たんのコストを銀行自身が負担することを強制する機関が設けられるでしょう。

BBC, Tuesday, 26 January 2010 Bank of England backs "spirit of Obama's reforms" Robert Peston

FT January 25 2010 How to bypass populism and tackle banking By Arthur Levitt

(コメント) 証券取引委員会SECの前議長Arthur Levittは、オバマ政権の金融改革を唱える政治的意志とボルカーの関与を歓迎します。しかし、銀行の規模を制限することも、自己勘定売買を禁止することも、効果がない、と批判します。むしろ、今後の改革論争が政治的なポピュリズムに流されないことが成功のカギだ、と主張しています。

そのために必要なことは、1.規制の違いを解消する。2.監督機関の責任分野を明確にし、強い権限を与える。3.金融機関が破たんした場合に、それを処理する機関を設ける。4.主要分野(プルーデンシャル、市場、消費者・投資家保護、リスク)に関して監督権限を分割する。5.議会は微調整に関与せず、細かい点は基準設定と監督を行う機関に委ねる。

FT January 25 2010 A better way to reduce financial sector risk By Raghuram Rajan

(コメント) 大衆の憤慨に合わせて規制するのは容易だが、それで金融危機は防げるのか? とRaghuram Rajanは批判します。

規模を何で測るのか? 資本、資産額、利潤、何で測っても、銀行はそれを抑えるから、意味はない。どれくらい大きいとシステムにとってリスクとみなすのか? 規模が大きいことでメリットもある。また、サービス分野を制限するのも難しい。

Raghuram Rajanは、こうした試みは、結局、時代遅れの預金保険制度による弊害を除去することに等しいだろう、と指摘します。家計が安全な預金を利用できることには意味がありました。しかし今や、金融資産市場が利用できる大規模な銀行に預金保険は不要です。小規模な銀行にも市場の規律を求め、大銀行には保険が必要ない、と主張します。「ボルカー・ルール」も同じように時代遅れで、弊害をもたらすのでしょうか?

FT January 26 2010 Volcker’s axe is not enough to cut banks to size By Martin Wolf

FT January 27 2010 Volcker has the measure of the banks By John Gapper

(コメント) 恐慌を回避したものの、金融機関の救済は、実体経済で多くの失業と住宅の差し押さえを残したまま、金融部門の莫大な利益とボーナス支給を可能にしています。政治家たちが銀行を非難するのは避けられない情勢です。これを利用して金融改革を行うことも重要です。しかし、提案された改革案が本当に望ましい、機能する、妥当なものであるか? Martin Wolfは問います。

「ボルカー・ルール」は、1933年のグラス=スティーガル法のように、銀行を商業銀行と投資銀行に分割することで金融危機を防ぐ、という発想です。商業銀行は、今後、ヘッジファンドやプライヴェート・エクイティ・ファンド、自己勘定売買に関与することを禁止され、その規模にも制限が課される、というわけです。

Martin Wolfは、危機に対してさまざまな新しいアイデアが示され、異なった解決策が試みられるものの、結果的に、金融ビジネスの不確実性が増し、経済全体に大きなコストをもたらすのではないか? と批判します。また、国際的にみても、アメリカとヨーロッパは異なった伝統(ユニヴァーサル・バンキング)に依拠しており、ヨーロッパ諸国は投資銀行業務を分離することもないし、銀行の規模を制限することもないだろう、と懸念します。その場合、グローバルな金融サービスの市場において、アメリカだけの規制では機能しえません。

Martin Wolfは、ボルカーのアイデアが望ましいものだ、と同意します。金融機関が政府の保証の下で投機にふけることは禁止するべきです。金融機関は、その規模や複雑さによって、救済され続ける事態を回避するべきです。

しかし、どうやって分離するのか? さらに、どうやって分離を守らせるのか? その基準や監視の手続きは不明瞭で、余計なコストを要します。融資を増やすには証券化するべきではないか? リスクをヘッジするべきではないか? それが投機的であると言えるのか? グローバルな銀行業の規模をどのように測るのか? 世界市場における規模か? 各国の市場における規模か? アメリカで活動する銀行に対しても規制できるのか?

また、銀行だけを規制することに意味はありません。預金を取らない金融機関が、まさに自己資本規制を回避するために銀行によって多く創り出され、その取り付けや破たんも銀行と同じように金融市場をグローバルに破壊するでしょう。金融救済は巨大銀行だけに限らないのです。

ボルカーの改革要求は正しいけれど、その実現方法には一層の改善が求められます。

他方、John Gapperは、Wolfの意見に対して、この機会を逃すべきではない、とボルカー・ルールを強く支持しています。金融改革が、医療保険制度改革と同じように、政治的な抗争の中で潰されてしまうことを危惧します。

John Gapperは、ヘッジファンドやプライヴェート・エクイティ・ファンドを、連銀から融資を受けられる銀行と分離することは重要であり容易です。自己勘定売買の定義も、カジノ型の売買を止めるように銀行幹部と規制当局が合意できる、と考えます。ヨーロッパが規制に同調しなくても、アメリカは改革を進めるべきです。

一つ、John Gapperが批判する点は、ボルカー・ルールが預金を扱う銀行に限定していることです。金融危機はシステムに重要な影響を与えるすべての金融機関から生じます。投資銀行が預金を扱わないという選択肢で規制を回避することを許してはいけない、と主張します。

WSJ JANUARY 27, 2010 The Never-Ending Goldman-AIG Saga By HOLMAN W. JENKINS, JR.


FP JANUARY 21, 2010

Tokyo and Washington Celebrate their Alliance -- Too Soon

BY RICHARD J. SAMUELS

(コメント) 日米安保条約の大きな成果を認め、内外の情勢変化に応じたその改革を目指すべきだ、と主張します。

岸伸介首相が1960年、国内の反対闘争を抑えて、条約改定に成功したこと。その後の経済成長(アメリカの市場と技術にアクセスできた)やアジアの平和(日本の帝国主義・軍備拡大を抑え、アジア諸国を融和させた)の点で、今では反対する声がほとんど聞かれないこと。しかし、日米安保条約には、左右からの反対(特に、日本の主権を侵している)と沖縄への過度の負担が問題として残されたままであること。

RICHARD J. SAMUELSは、自民党の単独支配から二大政党制に移行した後、日米安保条約の次の段階を目指す日本の課題をa "Goldilocks" strategyと呼びます。すなわち、中国の攻勢とアメリカの衰退に対応すること、アメリカの冒険主義に加担せずアジアへの関与を持続させること、経済問題における略奪や保護主義を防ぐこと。

アメリカとの安全保障体制を維持したまま、経済的な利益がアジアに向かうのを促すために、日本の政治家やビジネス界が「東アジア共同体」に向かうのは当然でしょう。しかし、その姿勢は日米間で、ますます安全保障と同盟関係が向かう目標を不確かなものとし、根本的な疑問を生じます。日米安保闘争が再発する前に、日米両政府(そして両国民)は話し合いを重ねるべきです。

The Times January 25, 2010

Don’t write Japan off. The giant is stirring

Bill Emmott

(コメント) 若者たちの車に抜かされたポンコツ車のように、日本を無視し、馬鹿にするのは間違いだ、とBill Emmottは書いています。

日本は、1980年代、そのすべてが称賛され(今の中国のように)、1990年代、そのすべてが非難されました。日本が失敗の見本として公認されたのは、2007年半ばに金融危機を生じたときです。金融バブルが破裂した後、日本がやったことを失敗の手本にして、その後の金融危機は対策を講じられました(迅速なリフレ政策、全力で通貨供給、銀行を速やかに処罰し、整理する、しかし、景気が完全に回復するまで増税を避ける)。

日本を新しい4つ視点で再考するときだ、とBill Emmottは主張します。すなわち、1.中国が日本をGDPで追い越しても特別な意味はない。2.中国の経済発展は日本の利益だ。3.製造業に執着し、サービス業を軽視していることが日本の弱点である。4.あまりに遅く、停滞しているようだが、日本は政治革命によって経済力を回復する可能性がある。

日本の政治家たちは、Bill Emmottの意見に大いに励まされるでしょう。要するに、日本は中国の増大する消費者需要(そして人民元の増価)に対して、それを満たす絶好の位置にあるわけです。問題は、日本政府や経済構造が旧来の製造業に頼り過ぎていることです。日本の製造業は、たとえパナソニック、ソニー、トヨタ、などが以前ほどぬきんでていないとしても、世界有数の優れた製品を中国市場に供給できます。

Bill Emmottは、それでも日本が成長を回復するには、製造業よりもサービス業を拡大することだ、と考えます。実際、製造業は正規雇用を減らし、派遣労働者など、短期低賃金の労働者を利用できる二重労働市場を拡大してきました。これは個別企業の利益や盛衰と、日本が国家として繁栄するための針路とが、短期的には深く対立し、矛盾する局面なのです。このまま中国の製造業と競争するために工場の海外移転や低賃金に依存するのでしょうか? 日本の介護・医療ビジネスも生産性が低い、とBill Emmottは指摘します。それはワーキング・プアが利用でき、さまざまな規制があるからだ、と。

日本が成長を回復するには、中国に輸出し、サービス部門の生産性を高め、労働者たちの賃金を上昇させる条件が実現させることです。それは旧来の政治を破壊する政治革命を要するでしょう。鳩山政権にそれができるのか? Bill Emmottは、その可能性を支持しています。鳩山首相にインタビューして、ヘッドライトに驚いて立ちすくんだウサギのように言われているけれど(!)、彼は驚くほど真剣で、まっすぐに語り、自分が言ったことを守る人物であると感じた、と書いています。

確かに、オバマの医療保険制度改革と同様、鳩山の年金・福祉改革も財源が必要であり、不況の時期に財政負担を増やすことを有権者に説得するのは難しいだろう。しかし、日本の動きにもっと世界が注目すべきである、と。

WSJ JANUARY 25, 2010

Okinawa Upset

By TOBIAS HARRIS

Jan. 26 (Bloomberg)

Obama Ready to Short U.S. With Japan Inc. Talk

Amity Shlaes

(コメント) 一般教書演説に現れた、オバマ政権によるアメリカの「日本化Japanification」を警告しています。つぶれない銀行、さまざまな保護、産業政策、・・・それは日本的な伝統(調和)に従う経済停滞の道である、と批判します。

IHT January 27, 2010 Japan’s High Debt Prompts Credit Rating Warning BY HIROKO TABUCHI AND BETTINA WASSENER

WSJ JANUARY 27, 2010 The Stimulus Japan Really Needs By NICHOLAS BENES

NYT January 28, 2010 Japan and the American Bases

WSJ JANUARY 28, 2010 The Hatoyama Drift


IHT January 22, 2010

Single-Party Democracy

By ROGER COHEN

(コメント) 中国の経済発展は、なぜ持続できるのか? これほど急激な経済変化に対して、中国が社会的な安定性を維持しているのは、家族、が求心力を保っているからだ、とROGER COHENは考えます。近代化にもかかわらず、アメリカのような家族の解体、個人主義は支配的になっていません。

沿海部の都市において出稼ぎで働く若い女性たちが、故郷の家族のためにせっせと仕送りする。年老いた両親のために同居できる住宅を建てる。子供のための教育費や留学を心配する。家族が彼らの心の支えであり、保険なのです。

中国にはバブルもあるけれど、だからと言って経済崩壊に終わるものではないだろう、とROGER COHENは考えます。なぜならその規模です。毎年、1000万から1500万人が都市に流入し、その住宅とインフラが必要になります。しかも、一党支配体制です。

もはや、「調和ある社会」を目指す中国指導部の方針を笑う者はいません。

WSJ JANUARY 24, 2010

China Can Reduce Its Surplus Savings

By STEPHEN GREEN

WP Monday, January 25, 2010

China's $2.4 trillion grip on the global economy

By Robert J. Samuelson

(コメント) 中国の過剰貯蓄について、それは解消できるのか? 1兆ドルを超える、と驚いたのもわずかの間で、それは2兆4000億ドルに達するということです。それは国際金融においても、国際経済においても、また、地政学上も、深刻な影響を他国に及ぼすわけです。

ドルの暴落を促して国際通貨の地位を奪う、という心配は、中国自信の利益にもならないので、起きる可能性は低いでしょう。しかし、ドルに代わる通貨が何になるかは分からないし、ドル暴落とアメリカの高金利、そして不況は、中国の黒字に対する反発と保護主義を爆発させるからです。

では、中国は人民元の増価を拒み、その重商主義的政策によって得た外貨準備を何に使うのか? ・・・海外における食糧・資源・エネルギーの購入、欧米企業やその先端技術・ブランドの買収、対外赤字や財政赤字に苦しむ国への投資・融資や援助、こうして中国の成長を持続させるための政治・経済条件を整備するのです。しかし、その条件は同時に、アメリカやドイツ、日本の成長を損ないます。中国は自国(の成長や国内支配)にとって有利な条件を世界に創り出す力を高めるだけでなく、それによって他国の繁栄を損なうのです。そのような外貨準備の大きさだけでなく使用方法に対して、世界は抗議しなければなりません。

(China Daily) 2010-01-25

Regional integration en route

By Li Qingsi

(コメント) 旧工業諸国や旧国際秩序の受益者・既得権層が、中国の急速な台頭を許せないと考えるなら、中国はその周辺地域に経済統合から政治的影響圏を構築する計画を進めそうです。朝鮮半島、台湾海峡、東シナ海など、中国の考える秩序は、まだ、紛争の過程にあります。アメリカを次第にこの地域(の支配的地位)から排除し、東南アジアとの自由貿易圏が実質的な経済統合を加速するでしょう。

FT January 25 2010

Too early to write off democracy in China

By Michael Skapinker

CSM January 27, 2010

China vs. America: Which government model will triumph?

By Nathan Gardels

FT January 27 2010

China will not be the world’s deputy sheriff

By David Pilling

(コメント) 中国が民主的な国内秩序と国際秩序の安定化を担うために「警察官」と世界景気の機関車」という役割を引き受ける。そんな未来が実現する余地もあるはずです。

Nathan Gardelsによれば、20世紀は民主主義と全体主義との戦いであった。21世紀は、過剰な消費者民主主義(欧米)と、民主的な責任を負わない有能なガバナンス(中国・アジア)との戦いである。」

David Pillingは、世界が中国に多くの行動を期待しても、中国は世界をそのように見ていない、と注意します。「中国は巨大だが、貧しい。中国の関心は国内問題である。」というダヴォスにおける中国人研究者の発言を引用します。


NYT January 22, 2010 To Heal Haiti, Look to History, Not Nature By MARK DANNER

FT January 22 2010 Haiti: A shaken state By David Blair in Port-au-Prince

LAT January 24, 2010 What to do about Haiti

FT January 24 2010 Disasters are not rare, so prepare By Phillip Ellis

FT January 24 2010 How to put Haiti on the road to recovery By Paul Collier and Jean-Louis Warnholz

FP JANUARY 27, 2010 Let Them Leave BY MICHAEL A. CLEMENS

(コメント) Paul Collier and Jean-Louis Warnholzが求めるハイチの復興は、開発政策の基本と同じです。現実に合致した経済戦略、十分な資金、そして行き届いた管理。何よりも、さまざまな援助資金を集めて「ハイチ復興基金」を立ち上げ、管理しなければなりません。

港湾、道路、電力、病院、学校などが政府によって提供されるなら、民間企業が積極的に投資することで、ハイチの経済や雇用も復興します。

The Guardian, Sunday 24 January 2010

The key to Yemen and Afghanistan

Hendrik Woods

(コメント) ハイチと比べて、イエメンとアフガニスタンに対して、アメリカは何をできるでしょうか? 論説は、反テロ政策だけでなく、ケシ栽培の撲滅と農業・食糧生産の再生を主張しています。


FT January 22 2010 Spartan solutions from Brussels will be fought by Athens By Wolfgang Münchau

(コメント) ギリシャの経済危機は、BC404年に終わったペロポンネソス戦争の後とよく似ている、とWolfgang Münchauは書きます。・・・どういう意味か?

アテネに勝ったスパルタは30人の僭主によってアテネを支配した、と論説は指摘します。市民の権利や民主主義は失われ、1年後に叛乱によって僭主体制は終わったものの、数銃10年でギリシャの都市国家は国際政治から消滅してしまいます。

同じように、ユーロ圏がギリシャに厳しい緊縮財政を敷いても、その結果は、ギリシャの民主主義を破壊し、その数年後に、ユーロ圏も崩壊の運命をたどるのではないか?

ギリシャの財政赤字を解決する道は、1.デフォルトとユーロ圏による救済融資。2.救済なしのデフォルト。3.ギリシャ政府への説得による緊縮策の実施、4.もっともらしい統計を並べた偽りの解決にEUが協力する。

最も起きそうな事態は、1.です。しかし、その場合、ユーロ圏によるギリシャ財政の支配(僭主体制)が国民から嫌われます。2.は、ただちにポルトガルなどへ危機が波及します。3.は、通貨同盟によって為替レートを失ったギリシャにとって唯一可能な道ですが、選挙で支持されることはないでしょう。4.は現在の危機を統計でだますだけで、将来、危機が再発します。

最後のシナリオは、政治統合を伴わない通貨同盟が、内部の管理システムを欠いているとき、その崩壊に向かうシナリオです。

FT January 24 2010 The Californian solution for the Club Med By Charles Goodhart and Dimitrios Tsomocos

(コメント) Charles Goodhartの論説も見逃せません。ギリシャはどうなるのか? ユーロ圏はどうすべきか? ・・・学生たちがこんな質問をするかもしれません。

財政赤字、国債の発行残高、そして、競争力が失われた国内産業。ギリシャやポルトガルの不況は深刻です。今まで景気が良かったから、見えなかったわけです。財政赤字を減らし、不況によって物価や賃金を下げ、為替レートが大きく減価して輸出を伸ばす、という解決策を、ユーロ圏に参加した両国は失いました。

では、ユーロ圏を離脱すればよいのか? Charles Goodhartはそれを否定します。ギリシャはユーロ建の債務を負っているので、金利の上昇や独自通貨の減価(暴落)は返済負担を増やします。債権者はギリシャの海外資産を差し押さえ、EUからも追放されて、財政的な移転も失うでしょう。その意味で、アルゼンチンがドルとの固定レートから離脱し、デフォルト・債務不履行になった以上の深刻なショックを覚悟しなければなりません。

デフォルトは国際的な借り入れを不可能にしますが、その場合、政府は財政赤字を維持できません。つまり、緊縮財政(あるいは、ハイパーインフレーション)しかないのです。ユーロ圏内の豊かな諸国から救済融資を受ける可能性があります。しかし、その場合のモラル・ハザードを防ぐ仕組みがありません。

アイルランドとラトビアは自分で解決する道を選びました。財政赤字を削り、公務員の賃金を引き下げ、物価を下落させたのです。このような選択肢は、政治的な支持を得られず、ギリシャ(あるいは地中海諸国)政府が取ることはありえません。

連邦政府内で地方政府が赤字を出したらどうなるか? たとえば、カリフォルニアや、アルゼンチンの州政府です。彼らはIOUs借用書・債券を発行したわけです。そこで、ポルトガルもエスクード単位の債券を発行する、とCharles Goodhartは考えます。この政府債券はポルトガルの居住者間で支払い手段として流通します。しかし、税金はユーロでしか支払えず、海外居住者にもエスクードで支払えません。公的部門も民間部門もエスクード債券で賃金を支払い、預金や融資、金利もエスクード建で行われます。

これは何を意味するのか? 国内取引ではエスクードを復活させ、ただし、政府はユーロ建債務を支払うためにも税金をユーロで徴収します。国民はエスクードで経済活動を行えますが、納税や対外取引にユーロを必要としており、輸出によって手に入れることになるでしょう。中央銀行がユーロとエスクードとの交換レートを管理して、輸出できるような競争力を民間部門に与えます(同時に、インフレを抑えます)。この粗末な代用政府貨幣制度は、4年を期限として消滅させます。

何が重要なのか? それは、国内居住者が、エスクードとユーロの取引を交換レートによって、調国内取引と対外取引を調整できる点です。緊縮財政や不況によって、賃金と物価を調整する必要はありません。

これは、戦後経済において広く見られた、二重通貨(複数為替レート)制度です。そして、この制度によって、ドイツの銀行システムやユーロ圏の解体、デフォルトの危機を避けられるだろう、と主張します。

SPIEGEL ONLINE 01/25/2010 Common Currency Woes: European Union Sees Threats to the Euro

The Guardian, Wednesday 27 January 2010 Greek crisis shows euro is too big to fail Larry Elliott

(コメント) 政治同盟・財政統合を欠いた通貨同盟は、深刻な欠陥を抱えています。Larry Elliottは、デフォルトに関する損得計算が時間的な視野とともに変化する、と指摘します。短期的には、デフォルトは返済負担を増やすだけで、新規融資も受けられません。しかし、緊縮財政や賃金引き下げばかりを続けることで、長期の経済停滞しかないと思うなら、短期の負担はデフォルトを避ける理由として重視されなくなります。政治統合が、通貨同盟を維持する条件なのです。

FT January 28 2010 EU signals last-resort backing for Greece By Tony Barber in Brussels and David Oakley in London

IHT January 29, 2010 Europe Lays Plans for How to Bail Out Greece By STEPHEN CASTLE and MATTHEW SALTMARSH

FT January 28 2010 Greek burdens ensure some Pigs won’t fly By Daniel Gros

FT January 28 2010 Greek tragedy is not yet inevitable

(コメント) 「豚は空を飛ばない。Pigs won’t fly」という皮肉は、Daniel Gros4カ国が全く異なる条件を示している点に注意する意味です。ギリシャとポルトガルは国内貯蓄が少なく、資本流入に大きく依存しています。それゆえ、財政刺激策は効果がなく、ユーロ圏による救済融資も大きなコストを生じます。他方、国内貯蓄が可能なスペインとアイルランドには救済融資が可能です。


chinadaily.com.cn, 2010-01-22 Internet - New shot in the arm for US hegemony

WP Monday, January 25, 2010 The Internet war

Jan. 27 (Bloomberg) Billionaires Make More From Ideas Than Bubbles William Pesek

CSM January 26, 2010 Google and China: the new era of cybercrime

The Japan Times: Tuesday, Jan. 26, 2010 Google walkout will expand the possibilities By ESTHER DYSON

FP JANUARY 26, 2010 The Chinese Internet Century BY ADAM SEGAL

(コメント) インターネットの世界にどのような秩序が築かれるのか? クリントン国務長官は、だれでも情報に自由にアクセスできる権利を強調し、情報の隔離や捜査、政治的弾圧(そして知的所有権の破壊、産業技術の窃盗)に利用する中国のインターネットを批判しています。

The Guardian, Wednesday 27 January 2010

We Googlistas want a global debate on information freedom. Why are others so coy?

Timothy Garton Ash

(コメント) レーガンがゴルバチョフに「ベルリンの壁を倒せ」と呼びかけたように、ヒラリー・クリントンは胡錦濤に呼びかけます。「インターネットにおける万里の長城を倒しなさい。」

しかし、巨人を倒す人間ではなく、ゴリアテ企業とゴリアテ国家の対戦です。グーグルと中国の対決は、何を意味するのか? 中国政府は、アメリカの「情報帝国主義」を非難します。一方には、普遍的な自由主義思想。他方は、「文明の衝突」論。情報の自由の限界は支配者が決める、という文明を、他の文明は受け入れるしかない、という主張です。


Asia Times Online, Jan 23, 2010

Looking ahead to North Korea's demise

By Donald Kirk

(コメント) 世界各地で、財政赤字による与党候補の落選や、資本市場による株価下落が話題になっていますが、北朝鮮など一部の国では、体制そのものへの不安や離脱が噂になります。アメリカ政府がそれに手を貸す、というような。

この論説は、Bruce Bennett Rand Corporation analyst and Jennifer Lind Dartmouth College scholar)の研究を紹介しています。それは、読む者によっては、体制崩壊の混乱を予防するために軍を派遣する(特に核管理)、という「先制攻撃」論にもなるでしょう。第二次朝鮮戦争です。


FT January 24 2010

Democrats need to learn the blame game

By James Carville

(コメント) マサチューセッツ州の上院議員補欠選挙は、誰も予想しなかった結果に終わりました。そして、オバマ政権と民主党の苦境はこれからだ、とJames Carvilleは考えます。

非難合戦Point fingersの優劣が選挙や法案の成否につながります。民主党は、医療保険制度やアフガン戦争で互いに支持基盤を非難し合うのではなく、もっと現在の苦境に至らせた張本人を非難することに集中しなければなりません。それは、ジョージ・W・ブッシュです。

「ブッシュの任期中に、医療保険料がアメリカ人の平均所得の2倍を超え、無保険者が急激に増加した。ブッシュの任期中に、不必要な、終わりのない、3兆ドルを要するイラク戦争が始まり、財源もないまま、史上初のことであるが、医療保険の支払い対象に処方箋薬を含め、財政赤字は制御不能となった。そしてブッシュの経済チームこそが、規制緩和の神殿で祈りをささげ、銀行や保険会社が大きくなりすぎて潰せなくなる中でも、線路を枕に昼寝していた。」

ところが、オバマと彼のチームは、選挙が終われば勇敢に、そして雄弁に、過去を振り返らず団結しよう、と唱えたのです。それは、政治の素人がすることだ、とJames Carvilleは批判します。オバマは自分の演説に酔って現実政治を見失いました。変化を願う有権者が選択したとはいえ、オバマはワシントンを変えることができません。何があっても、ワシントン(アメリカの政治システム)は変わらないでしょう。

人びとがオバマの演説に飽きたころ、反対派は各地で小さな集会を開き、必要だとしても金のかかるオバマの決断(金融救済、財政刺激策、医療保険制度改革)を非難し始めます。・・・増税に反対。・・・大きな政府に反対。・・・

そして民主党員は、不況や10%の失業率に対して責められます。他方、ブッシュは大統領記念図書館のために何100万ドルも寄付を集めています。

WP Monday, January 25, 2010 Obama should act more like a president than a prime minister By Fareed Zakaria

The Guardian, Tuesday 26 January 2010 The change we need now is a rougher, more radical Barack Obama Jonathan Freedland

(コメント) オバマはもっと政治党派を超越し、大統領として、国民の利益を代表する立場を示す必要がある、とFareed Zakariaは助言します。

Jonathan Freedlandは、オバマが積極的に行動し、医療保険制度改革や金融改革を成立させるべきだ、と考えます。


Foreign Affairs, January 25, 2010

The Rise and Fall of the Guardians

Alasdair Roberts

(コメント) 人民が政府を支配するべきか、あるいは、専門技術者が政策委員会によって政府を分割するべきか? 特に金融政策と、金融危機に対する公的資金投入において、世界中どこでも、この論争は激化します。

中央銀行家たちは、本当に、プラトン的な「哲人王」なのか? それは既得権者や既存の権威、イデオロギーに奉仕するだけではないか? 民主的な基礎を欠く専門官僚制度は、ポピュリズムの強まる政治の暴風雨に直面したとき、その最大の標的にされるでしょう。そして、どれほど専門的な知識やデータで正当化できても、政策決定は失敗を免れません。


The Times January 25, 2010

Capitalism’s Conservator

(コメント) バーナンキは世界恐慌を防ぐために優れた指導力を発揮しました。それにもかかわらず、議会上院には彼の再指名を批判する声が高まります。金融政策や金融危機を材料にしたワシントンの政治ゲームが続くのです。

マサチューセッツ州の選挙結果を受けて、民主党はポピュリズムに頼った金融改革を宣伝し、共和党はバーナンキ再指名を材料に混乱を醸成します。

1930年代にはアメリカの銀行システムが崩壊し、それはヨーロッパにおけるファシズムの興隆に結びつきます。当時、アメリカはドルを高すぎる金価格に固定し、工業諸国には金保有を守るための高金利が続きました。バーナンキは今の危機で、失敗を繰り返さず、金利を急激に下げて、安価なドルを供給しました。オバマ政権の財政政策(金融救済と景気刺激)も重要ですが、バーナンキこそ(オープンな)資本主義体制の救済者です。

The Guardian, Monday 25 January 2010

Don't be stupid with the economy

Dean Baker

(コメント) Dean Bakerは、バーナンキの失策を批判します。バーナンキの再指名を拒めば金融市場がパニックに陥る、という議論は、金融再生法案(Tarp:不良資産再生プログラム)を通過させた時と同じです。

バーナンキの重大な過失は三つです。1.金融危機の条件を創った(グリーンスパンと一緒に)。2.無条件に金融機関を救済した(金融改革を避けた)。3.金融安定化法案を通過させるために連銀の融資を知らせなかった(遅らせた)。

FT January 25 2010 Bernanke’s battle

WSJ JANUARY 25, 2010 The Bernanke Nomination

NYT January 25, 2010 The Bernanke Conundrum By PAUL KRUGMAN

NYT January 28, 2010 The Fed’s Best Man By ALAN S. BLINDER, Princeton, N.J.

(コメント) PAUL KRUGMANは、バーナンキの金融危機対策を称賛しつつも、批判があることを認め、それでも再指名を拒むことは金融政策を改善しない、という理由で支持しています。特に、銀行家を守るために働くだけで、失業を減らすためには何もしなかった、と批判します。・・・それでも上院の政治抗争によって酷い候補者が指名される危険は冒したくない、と。

ALAN S. BLINDERは再指名を強く支持します。バーナンキは失策にも関わったが、その後の危機処理において優れた手腕を示した。連銀の政治的独立性は重要である、と。


FT January 25 2010 An ambitious agenda By Martin Wolf

FT January 25 2010 Consensus in crisis? By Gideon Rachman

(コメント) スイスのダヴォスで開催される世界経済フォーラムthe World Economic ForumWEF)は、民間が勝手に招待し、組織したグローバル・ガバナンスです。・・・6つの領域(価値観、福祉、リスク、安全保障、資源、制度)、70の会議で世界を再考し、設計し、再構築する? 彼らに何ができるのか? なぜ彼らにそんな権利があるのか? 彼らがすることは正しいことなのか? ・・・中国でも、発展途上諸国でも、日本でも、同様のフォーラムが組織されます。

Martin Wolfは考えます。「他に誰がいるか? 個々の政府はこれらの問題を一国では解決できない。政府、企業、NGOsの代表が毎年集会を開いて世界を変える相談をするのは、たとえ失敗があるとしても、彼らにかかっている。」西側のエリートたちが自信を失っているときこそ、世界フォーラムが必要です。

彼らは、共通の問題に対して、迅速な変化に向けた指導力を発揮できる人々であり、彼らがその理解や解決法を共有するためには非公式な場が必要です。しかし、WEFの発想が既存の特権的なエリートと共有できる旧式なものだけかもしれない、という疑念も当然あります。

Martin Wolfが重視する課題は、「オープンでダイナミックな世界経済を維持する、金融システムの安定化、国際通貨制度の改革(世界経済の均衡回復)、成長を損なわない形で、気候変動とエネルギー・資源の枯渇を解消する、核兵器の拡散防止、新興勢力、特に中国を、世界の経済政策協議に参加させる、国際政治の変化を国際機関に反映させる。」

しかし、Gideon Rachmanは、WEFがそのような問題を避けたから、ロシアや中国の指導者たちにも歓迎され、20年間も成功し続けたのだ、と考えます。どれほど相互に政治的な対立があっても、グローバリゼーションを認める指導者たちは、貿易や投資の利益を称賛し、銀行家や企業重役たちとの懇談を歓迎するからです。

政治問題や環境問題も議論されますが、経済的な利益、ビジネスの共通の基礎を合意しているから、難しい問題も穏健な形で議論できる。これが「ダヴォスの精神」です。

もしアメリカと中国が、グーグルや台湾など、失業率の上昇を背景にダヴォスでも激しい論戦を繰り返すなら、WEFの継続は難しくなります。

WP Tuesday, January 26, 2010 Davos: What's the point?

BBC 2010/01/27 Soros calls for big bank break-up By Tim Weber

FT January 28 2010 Calls for a new Bretton Woods not so mad By Gillian Tett in Davos

(コメント) ブレトンウッズを再建する、とフランスのサルコジ大統領が主張するのはわかります。多くの人々は、彼やフランス人を狂っている(あるいは愚か者)とみなします。しかし、二つの理由でGillian Tettは支持します。1.フランスはG20の次の議長国である。2.旧時代のアイデアが一斉に注目を集めている。

とはいえ、Gillian Tettは、為替レートが次の波乱をもたらす気配を感じています。中国人民銀行副総裁のZhu Minも、ドルによるキャリー・トレードは15000億ドルに達しており、アメリカの金利が上昇する影響を懸念します。

NYT January 28, 2010 At Davos, Sarkozy Calls for Global Finance Rules By KATRIN BENNHOLD

IHT January 28, 2010 G-20 Nations Struggle With Consensus By KATRIN BENNHOLD and ALISON SMALE

BBC, Thursday, 28 January 2010 'China Syndrome' at Davos Stephanie Flanders

(コメント) ダヴォスで皆が理解したことは、世界経済のエンジンが東に移った、特に、中国が成長のエンジンだ、ということです。「チャイナ・シンドローム」がすでに始まっています。ただし、それは過剰な期待に対して批判的に付けられた名称です。中国の経済規模はアメリカの5分の1であり、たとえ人民元を増価させても不均衡が速やかに消滅することはないでしょう。

The Guardian, Thursday 28 January 2010 Lamy's lament on trade liberalization Larry Elliott

The Japan Times: Thursday, Jan. 28, 2010 Rebuilding Haiti from Davos By KANAYO F. NWANZE

(コメント) WTO事務総長のPascal Lamyは、世界が根本的に変わったにもかかわらず、政治的なウェストファリア体制が続いていることを批判します。この体制で「ある国に何かをさせるとしたら、唯一の方法は戦争である。」 WTOはそれを変えるために国際合意によってつくられました。しかし、その成果は示されていません。中国やアメリカに調整を求めるメカニズムや強制力を、WTOは持ち得ていないのです。パワーは今も、ほとんど、国家が独占しています。


The Guardian, Tuesday 26 January 2010 State of the union needs more than rhetoric

NYT January 26, 2010 Obama’s Credibility Gap By BOB HERBERT

FT January 26 2010 Barack Obama’s State of the Union

WP Wednesday, January 27, 2010 It's no time for Democrats to think small By Harold Meyerson

NYT January 27, 2010 State of the Union, in Dutch

BBC 2010/01/28 Analysis: Sober note in the face of frustration By Richard Lister

LAT January 28, 2010 Obama: Rhetoric and reality

FP Thursday, January 28, 2010 Official Obama Decoder: State of the Union Edition By David Rothkopf

WP Thursday, January 28, 2010 The State of the Union

NYT January 28, 2010 The Second Year

FT January 28 2010 Obama sticks firmly to his guns

(コメント) 一般教書演説については、当然、多くの論説が書かれています。そして批判は、鳩山首相への批判と同じようです。理念よりも成果を求める、と。


IHT January 27, 2010

Let's Build a Stairway to Mars

By MICHAEL BENSON

(コメント) オバマ政権の起死回生策は、火星への飛行である。しかも国際的な共同事業として立ち上げます。そのためにも、地球外の実験・訓練・建設基地が必要です。欧米に、中国、ロシア、日本も参加した、宇宙開拓における国際協力は、地球上にも好ましい影響を及ぼすでしょう。

そして、いつか、人類の火星移住も始まります。


WP Wednesday, January 27, 2010

How Obama can reverse Iran's dangerous course

By Robert Kagan

The Japan Times: Thursday, Jan. 28, 2010

It's better to help arm Taiwan than defend it

By DOUG BANDOW

The Japan Times: Thursday, Jan. 28, 2010

It doesn't pay to appease China

By MA JIAN

(コメント) イランと台湾。アメリカの外交課題は多様です。イランの非核化は、ますますテヘランの民主化デモに期待するようになりました。ニクソンの中国訪問より、ベルリンの壁崩壊が、イランの体制転換を支持する話題となっています。

他方、台湾民主化・独立運動は支持を失い、むしろ現状維持と武器売却が注目を集めます。アメリカは核を保有する中国との軍事衝突を避けたいと考えますが、同時に、民主的な友好国を守りたいとも考えています。

チェコのハヴェル大統領(Charter 77の指導者)は、プラハの中国大使館を訪れ、民主化のための憲章(Charter 08)を掲げて投獄されている作家Liu Xiaoboの解放を求めました。東欧と中国の民主化運動が結び付く姿も、世界史において、象徴的です。

******************************

The Economist January 16th 2010

Time to get tough

Barack Obama’s first year: Reality bites

The earthquake in Haiti: Hell on earth

Venezuela’s devaluation: The weakening of the “strong bolivar”

Immigration in Italy: Southern misery

Charlemagne: Allons, citoyens de l’Europe

Buttonwood: Floating all boats

Central banks under fire: Policy punchbags

(コメント) オバマの1年が評価され、現在の苦境と2年目に向けた政治スタイルが議論されます。グーグルの中国撤退や、テヘランの民主化デモだけでなく、ハイチの地震も異なるガバナンスを考える転換点です。瓦礫の中、小さな子供を布で巻いて運ぶ父親が苦しそうです。

ヴェネズエラの通貨ヴォリバルが切り下げられ、二重為替レートが導入されました。支配者が経済を管理する仕掛けである、と記事は見ています。イタリア南部の町では(長靴の踵)、政府がブルドーザーによる「民族浄化」を行いました。しかし、この土地の農業は、EUからの補助金とアフリカからの安価な移民労働力で、グローバリゼーションを生き延びているに過ぎません。彼らは「非合法ではなく、消耗品だ。」

リスボン条約には、EUを揺るがす変化の種が混じっています。それは住民投票です。スイスのモスク制限や、カリフォルニアの財源不足、アイスランドの債務返済拒否など、住民投票は民主主義を助けるより、民主的政府を脅かす要因になるようです。金本位制や固定レート制が変動レート制に代わったことで、各国の金融緩和は容易になり、バブルと救済が増えました。変動とリスク、投機とヘッジ、金融市場は大儲けです。

再び、中央銀行の住みにくい世界が、銀行家への政治的非難とともに再現しつつあります。


The Economist January 16th 2010

China’s battered image: Bears in China shop

China’s economy: Not just another fake

(コメント) この中国バブル悲観論を批判する特集記事が面白いです。日本が1980年代に称賛され、その後のバブル破裂で経済停滞に苦しむようになった経路を、今の中国もたどるのでしょうか? The Economistは否定します。

中国経済の株価・住宅価格はバブルを生じていないし、またたとえバブルが破裂しても、日本と違って、成長を持続する条件が維持される、と。中国は、まだまだ、インフラ整備の公共投資を必要としています。

なぜ日本は成長できなくなったのか? The Economistは、プラザ合意による円高よりも、むしろ円高による調整を拒み過ぎたこと、円高が生じた際に金融緩和で対処したこと、が間違っていたのだ、と主張します。同じ失敗を中国も繰り返せば、中国だけでなく世界の不況を強めます。