今週のReview
11/23-28
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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コペンハーゲン地球環境サミット、 オバマ訪中をめぐって、 チャイメリカの終焉、 ゴルバチョフ、 普遍的な世界市民主義、 失業問題と異なる政策、 1989年世代、 ゴルバチョフ、 日米関係の見直し、 円高容認政策、 中国の景気刺激策
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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia
FT November 12 2009
How to make a successful failure out of Copenhagen
By Philip Stephens
(コメント) 洪水、飢饉、干ばつ、種の絶滅、・・・こうした警告にもかかわらず、何もせずに環境が破壊されるのを放置する人々がいるほど、それを守ろうとする人々の負担は増し、絶叫と悲鳴に変わります。・・・自動車を廃止し、空港も閉鎖、エアコンは切って、部屋の照明も落とす。
2007年、バリ島の国連環境会議で合意された、京都議定書に代わる地球規模の体制を決める2年という期限は、三つの合意を必要としています。1.豊かな諸国が大幅なCO2削減を行い、新興諸国も炭素に強く依存した成長パターンを是正する。2.貧しい諸国が低炭素経済に移行するための資金を調達する。3.国際条約として各国の削減目標を決める。
アメリカ政府が具体的な方針を示さないことが、コペンハーゲン・サミットの交渉を阻む重要な障害です。グリーンピースは、アメリカ政府が「ビッグ・カーボン」と呼ばれる大量排出業界の圧力に屈した、と非難します。しかし、オバマ政権がその政治資本を医療制度改革に向けていることは、気候変動を防ぐために炭素排出量の削減を支持する姿勢と矛盾しません。問題はその時期です。
オバマは排出量の削減と排出権取引の仕組みを法律として整備することを考えています。CO2排出量を減らすには、経済的な動機付けと世界的な合意の制度化が必要だろう、とPhilip Stephensも指摘します。その意味では、ドーハ・ラウンドの決裂は良くない前兆です。
気候変動・温暖化の防止にとって、政治的意思の有無以上に、各国が合意できないこと(国際政治)は大きな障害です。しかし、ヨーロッパのスタッフたちは、アメリカ政府が合意時期の問題で食い違うとしても、積極的な参加に向かうのは確実であるし、裕福な諸国が200年間も排出し続けた気候変動のコストを分担しない、という発展途上諸国の主張にも解決の道はある、と考えます。
このままでは、温暖化のコストが不当に大きく途上世界に負わされます。世界的な環境保護体制を実現しなければ、ヒマラヤの氷河が溶けて、中国やインドの環境破壊が進み、飲料水も枯渇する、と分かっているのです。たとえアメリカを強く非難しても、その見返りにはなりません。米中の合意が、ここでも重要です。
WP Friday, November 13, 2009
Cooling the planet without chilling trade
By C. Fred Bergsten and Lori Wallach
(コメント) 地球環境の破壊を防ぐ市場メカニズムは起動できるでしょうか? ドルの地位交代を提唱したバーグステンが、ここでは、炭素排出規制に関する世界貿易の制限を牽制します。
成長を抑えることなく、貿易を妨げることなく、地球環境を守ることができるでしょうか? 特に、環境問題と保護主義との融合が起きないように。それらは、新重商主義的な保護主義や通貨価値の切下げ競争に対して、国際的な合意で自由化を守るために重要です。
アメリカ議会上院は、国内の排出削減と排出権取引が、国内企業を不利にして、明確な排出抑制の義務を負わない諸国に生産拠点が移転されることを許さないために、国境における調整が必要である、と考えます。
オバマは新しい多角貿易交渉を指導して、世界的に見た温暖化ガス排出の条件を均等にしなければならない、というわけです。
ただし、バグワッティは、各国の異なる環境規制を、その他の政策の違いと同様に、比較優位が反映する点で「調整」(保護・補助金)を支持しなかったと思います。
FP NOVEMBER 13, 2009
Think Again: Green China
BY CHRISTINA LARSON
FP NOVEMBER 16, 2009
Who Killed Copenhagen? An FP Whodunnit.
BY CHRISTINA LARSON, ANNIE LOWREY
FT November 16 2009
Copenhagen is only the beginning
(コメント) 中国は環境破壊で滅ぶのか、あるいは、代替エネルギーの開発や環境規制でも権威主義体制が有効な強制力を行使し、急速に技術革新を遂げて「グリーン・スプートニク・ショック」をもたらすのか? CHRISTINA LARSONは、最近のT.フリードマンによる後者の見解は間違っている、と批判しています。
では、コペンハーゲン・サミットを破壊するのはだれなのか? オバマ、胡錦濤、その他、罪状と評価が述べてあります。
コペンハーゲンは、交渉の終わりではなく、開始なのです。オバマがシンガポールで表明したように、サミット参加諸国は気候変動の防止に向けた政治的意志を示すでしょう。それは、今後の枠組み作りに参加して国際条約を実現すると約束するだけです。参加諸国の様々な障害が、それを必要としています。
FT November 17 2009
Forget emissions, focus on research
By Nancy Birdsall and Arvind Subramanian
(コメント) 気候変動や温暖化ガスの排出をめぐって、富裕諸国と新興国、貧困国の対立、非難合戦が過熱しています。このような議論が新しい世界的枠組みをもたらすことはないだろう、とNancy Birdsall and Arvind Subramanianは考えます。議論の向きを変えるときです。
国際的な合意が形成できないのは、「何が公平なのか」について、誤解が解消できないからです。誰が、いつまでに、どれだけ削減するのか? その責任を認めて、強制力のある国際条約を結ぶ、というのは容易ではありません。
アメリカ人は、中国やインドがとんでもない老朽化した工場で石炭を使用し、大量の二酸化炭素を排出している、と非難します。中国やインドは、アメリカの一人当たり排出量を問題にします。それは中国の4倍、インドの10倍も多いのです。また、アメリカは温暖化ガスの排出規制を保護主義に利用する、と批判します。
新興諸国や貧困国は、豊かな諸国が過去に排出したグローバル「バッズ」(世界公共害悪)に対して、その補償を求めます。逆に、富裕諸国は発展途上諸国に、人口増加を抑制し、技術の改善などでグローバル・グッズ(世界公共財)を供給することに責任を求めます。
この論争には、容易に決着がつきません。むしろ、途上諸国が求める目標を示すべきです。人びとは、温暖化ガスの排出を求めているのではなく、エネルギー利用を求めているからです。
発展途上の世界では、何十億もの人々が、電気やガスの供給もないまま、スラムで木を燃やし、畑では背中を曲げて土地を耕し、職場には歩いて、もしくは、自転車で移動します。彼らが排出量を減らすには、生存水準を下回り、文字通り、暗黒時代に逆戻りしなければならないでしょう。
そこで、この論説は「公平さ」の基準を再定義します。それは、世界中どこでも、エネルギーに関する基礎的なサービスを受けられる、ということです。自宅で食糧を調理し、室内で快適な温度を保ち、輸送システムが利用できる。
それは、裕福な諸国が発展した水準で現在利用しているエネルギーと同じものを、発展途上諸国でも、最新のクリーンな技術で利用できることが目標になる、という意味です。
既存の技術では、裕福な諸国の削減目標も達成できないでしょう。技術革新が、新しい世界的な枠組みの中心でなければなりません。だから、アメリカや裕福な諸国は、発展途上諸国に対して削減目標を決めることを止め、むしろ、彼らが同様にエネルギーを利用する権利を認めます。そして、それが最新の技術で利用できるように支援します。その代わりに、中国、インド、発展途上諸国は、排出量当たりのエネルギー利用効率を改善する目標を掲げます。
・・・すべての国が、この排出量当たりのエネルギー利用度を高める国際目標に合意し、富裕国も新興国も、排出量の多い諸国は新エネルギーの開発基金に出資する。そして、新技術の開発と世界的な移転を促すために、グローバルな知的所有権の監視体制を確立する。これこそが、エネルギー利用の不平等を解消する、世界的な気候変動防止体制なのである、と。
FT November 18 2009
Time for the greening of global trade
By Chandran Nair
(コメント) Chandran Nairは、エネルギー利用の平等ではなく、自由貿易による自然の乱獲として、人口増加が環境保護の負荷を耐えられない規模にする、と主張します。それゆえ、世界貿易を利用して、この乱獲を防ぐ国際協定を結び、WTOが実施することを目指しています。
象牙やサイの角の国際取引を禁止しているように、温暖化に関わる世界貿易は規制されるべきであり、これは保護主義ではない、と主張します。90億の人類が及ぼす破壊的な効果を放置してはいけない、と。
Nov. 19 (Bloomberg)
Obama Needs China to Help Him Run Great Green Race
Eric Pooley
The Japan Times: Thursday, Nov. 19, 2009
Wrong way to halt warming
By DAVID HOWELL
(コメント) DAVID HOWELLは、コペンハーゲン・サミットの目標を法律で強制するのは、二重の意味で愚かな仕組みだ、と批判します。気候変動を防ぐには、消費行動や工場が変わらなければなりません。それは政治家の合意とは別問題です。2020年や2050年までの目標を立てても、それまでに政治家は交代し、忘れてしまいます。
日本の新政権も、そのアイデアリズムと政権公約に縛られて、削減を民間に強制する見本として批判されます。他方、もし本当に、人びとがグリーンな世界を望むなら、排出目標など重要ではありません。
FP NOVEMBER 12, 2009 Beijing, Global Free-Rider BY STEPHANIE T. KLEINE-AHLBRANDT
China Daily 2009-11-13 What more can China do to boost ties By David Shaumburg
(コメント) オバマは北京で、中国政府はもっと北朝鮮やイラン、アフガニスタン、パキスタンについて、アメリカに協力して行動せよ、と求めるべきでしょう。しかし同時に、中国自身の利益が協力を必要とするように、国際環境を変えることが重要です。
David Shaumburgは、米中間でさらに深い再解釈が行われると考えます。結局、北京はアメリカと、安全保障を共有できるでしょうか?
FT November 13 2009 Mr Obama goes to visit his creditors
(コメント) むしろ、オバマの訪中は、最大の債権国に資産を保有し続けてくれるよう説得する機会なのです。もし中国がアメリカの政府に不信を抱けば、ユーロ債へ投資するでしょう。
しかし、それは問題を解決しません。そうなれば、EUはユーロ高による輸出の悪化を好まず、また、ドル価値はますます失われるでしょう。ドル価値の維持にもっと注意せよ、と中国やアジア諸国がオバマに求めるとしたら、それはアメリカの財政赤字を抑制するには景気回復が必要であり、現状ではアメリカが内需を刺激できない以上、そのために輸出を伸ばす必要がある、と反論するべきです。すなわち、アジアが内需を刺激し、アメリカはドル安を必要とするのです。
こうして、金融危機とアメリカ経済の不調が、「変動レート制度」の予定調和を称えるエコノミストではなく、政策協調や国際通貨制度の改革を唱える政治家たちへと、世界の命運を握る交渉を委ねたのです。
Asia Times Online, Nov 14, 2009 China: A need for strategic reassurance By Jing-dong Yuan
(コメント) 鳩山首相は「東アジア共同体」を提起し、韓国政府はアメリカとの自由貿易協定を推進しましたが失敗し、アメリカ側では、アジアの急速な変化にアメリカの役割が低下している、という不安があります。オバマ政権が示した「戦略的保証(strategic reassurance)」政策について、中国政府はどう評価するでしょうか?
Jing-dong Yuanの論説は的確だと思います。1972年以来、成熟した米中関係は、これから、どうなるのか? それは米中双方の外交姿勢に関わるが、同時に、アジア地域や世界全体にも影響を及ぼす。1.アメリカの覇権に中国が挑戦する。.中国はGDPで日本を抜くだろうし、金融危機からの回復も早い。歴史的に見て、台頭する大国の存在は国際秩序を不安定化し、戦争を引き起こしてきた。
2.オバマ先見が取る具体的な対中国政策の中身が重要である。両国の協力はどの分野で進むのか? 意見が異なる分野ではどのようにそれを処理するのか? 1970年代、80年代では、中国の力はまだ弱く、ソ連の拡大という共通の脅威があった。意見の相違を棚上げにして、共通の利益に注目できた。しかし冷戦が終わって、アメリカの対中政策は封じ込めと関与の間で大きく振れ動いてきた。中国の台頭を回避することもあれば、中国をステークホルダーと呼んで、より大きな責任を持つべきだと主張した。
3.オバマは二国関係を、協力的・包括的で、率直なものにしてきた。中国との関係を積極的にとらえたのだ。両国の共通利益や相互依存が、まだそれほど多くないし、深くないとしても、新たに「戦略的保証(strategic reassurance)」と呼ぶ姿勢を採用した。アメリカは中国の台頭を妨げないし、中国もアメリカの関心を容認する、という関係である。しかし、それが意味することは、今後、具体的な政策によって示されねばならない。
パワーの移転と巨大な変化が生じる時代に、両大国が相互に適応し、調整するうえで、4つの原理が重要である。
1) 米中関係は複雑さを増し、単純にレッテルを張ることはできない。それは同時に、敵対し、競争し、協働する。極端な期待や不合理な要求ではなく、プラグマティズムと冷めた計算が必要だ。
2) この複雑な関係を処理するには、ビジョンとステートマンシップ(優れた政治手腕)、そして共通利益を拡大し、常に協力を深める姿勢が必要だ。意見の相違や論争がどこで起きるのか、それを予想し、準備し、処理しなければならない。
3) さまざまな相互作用のレベルで、米中関係を制度化することが重要である。定期的に首脳会談を開き、戦略的な問題について対話する。軍と軍が危機管理メカニズムについての意見交換をしておくことは、特に重要である。
4) 米中関係は、もはや二国間の問題にとどまらず、地域的にも、世界的にも、重要な意味を持っていることを理解しておくことだ。金融安定化、気候変動、朝鮮半島、イランの核問題、これらについては多角的な制度化が求められる。
オバマは、中国指導部の第5世代が登場する時期にあたって、中国指導部との関係を確認する重要な機会を得た。オバマの訪中は、単にレッテルを貼るのではなく、アメリカと中国とのプラグマティックで協力的な関係を築き、ビジョンを交換するだろう。
The Guardian, Saturday 14 November 2009 US and China, locked in equal embrace John Gittings
FT November 14 2009 Obama says China not a threat By Edward Luce and Mure Dickie in Tokyo, and Kevin Brown in Singapore
(コメント) 金融の「相互確証破壊(MAD)」よりも外交の「戦略的保証(strategic reassurance)」へ。John Gittingsは、米中関係を歴史的な転換の中で振り返ります。
毛沢東は、蒋介石がアメリカ政府の支持を得る1年前に、ルーズベルトに訪米を打診しました。アメリカはそれを受け入れませんでしたが。1949年に毛沢東が勝利し、1972年になって、漸くニクソンが訪中します。ソ連に対する同盟を組むためでした。今や、オバマは、中国と同じくらい互いの協力を望んでいます。その意味で、オバマ訪中の最大の意義は、米中の「対等な関係」、「包括的なパートナーシップ"comprehensive partnership"」の始まりです。
すでに1998年、クリントンが訪中して、モニカ・ルインスキー事件後の人気回復を図りましたが、人権や民主主義の訴えは江沢民の民主化弾圧を変えませんでした。その半年後、ベオグラードの中国大使館が米軍機によって誤爆され、中国人の反米感情は過熱します。また、ジョージ・W・ブッシュの選挙運動では、中国がパートナーではなく脅威でした。
2001年の9・11こそ、米中関係を転換するチャンスでした。テロとの戦争で米中は協力し、WTO加盟も相まって、中国経済は躍進します。いまや、米中G2時代や、チャイナ・アズ・ナンバー・ワンがしばしば話題にされます。
オバマ政権は、中国側にある不平等な米中関係、という不満に配慮し、「戦略的保証(strategic reassurance)」という呼び方をして、もはや米中が争う時代ではない、と宣伝します。中国は8%成長を示し、アメリカ財務省証券を8000億ドルも保有していることもそれを支持します。
オバマは、ドル安批判に対して、人民元の切り上げ・増価を求めるかもしれません。しかし、中国側は、アメリカ自身が財政赤字を抑えれば良いのだ、という姿勢でしょう。この点で、アメリカは中国側の認識を転換させたいのです。中国の黒字が続けば、アメリカは財政赤字を増やし、ドル安も止まらない。そのうち、中国も気づくはずです。彼らの成長は環境を破壊し、貧富の格差を増幅してしまった、と。
しかしオバマ訪中によって、中国でもオバマ・フィーバーが起きる、と思うのは間違いです。中国のメディアは、アメリカを同格の国として扱い、米中関係(やオバマ)に特別な関心も期待も持たない、という姿勢を取っています。
BG November 14, 2009 China trip is Obama’s chance to forge a new partnership
BBC, Saturday, 14 November 2009 US welcomes strong China - Obama
(コメント) オバマの発言は、まさに、中国指導部が望み、外交の成果を示すために、その注文に応じたもののようです。
WP Sunday, November 15, 2009 Let's Go: Asia, the presidential edition
FP NOVEMBER 16, 2009 Five Things Obama Should Do in China BY JOHN WATKINS, JR.
(コメント) オバマ訪中をめぐるアメリカの論調を三つの課題に集約します。1.アメリカはアジアで今も重要だ。2.オバマ政権は自由貿易を支持する。3.中国式の国家資本主義に対して、アメリカはより優れた資本主義であることを示す。
他方、G2論は双方にとって無益な論調です。
JOHN WATKINS, JR.が示すのは5つのテーマです。1.市場開放、2.エネルギーと気候変動、3.軍相互の情報交換、4.通貨価値と貿易不均衡、5.チベット、台湾など、従来の対立、です。
WSJ NOVEMBER 15, 2009 How Obama Can Shape Asia's Rise By CHUNG MIN LEE
CSM November 16, 2009 Obama's 'nuclear option' on China's yuan By Dean Baker
(コメント) アジアの台頭を、アメリカ政府はどのように(阻むのではなく)助けるか? それによって国際秩序に影響を与えることがオバマ政権の課題です。実際、アメリカが戦後秩序を築き、ドイツと日本の復興を成功させたのです。CHUNG MIN LEEは、中国の力が強まることにアジアの多くの国は不安を感じている、と指摘します。それゆえ、三つの大陸が世界経済に併存する秩序を、中国の台頭するアジアが、ヨーロッパのようにEUやNATOを介して繁栄する姿として描きます。その時、重要になるのは、日韓関係、日米関係、これら3カ国の協力です。
Dean Bakerは考えます。もし中国が人民元の調整を受け入れないとき、アメリカには何ができるのか? 中国が人民元の価値を低く維持しているように、アメリカは人民元に対するドルの価値を、中国よりも低く維持することができる。その場合、中国企業は中国ではなくアメリカで、ドルから人民元に交換したいと思うだろう。たとえ中国が為替管理をしても、違法な取引が増える。
アメリカ側で貿易部門や金融部門の不満、インフレ懸念を抑えられるなら、こうした為替戦争をテコに、米中の為替レート調整について交渉が始まる、と。
The Times November 16, 2009 The Global Resent Button Recommend?
Nov. 16 (Bloomberg) Obama Gets Earful on 5-City Economic Road Show William Pesek
(コメント) 世界で、日本政府だけがアメリカの政策と矛盾した政策を追求している、とWilliam Pesekは憂慮します。鳩山政権は、まともに考えたら決してやらないような、日米関係を軽視を主張します。しかし、アメリカではなく、日本こそ、ますますアメリカとの緊密な協力関係を必要としているはずです。
中国の台頭と、アメリカにとってのアジア問題は、ますます深刻さを増します。中国は通貨価値を抑え、輸出を伸ばし、成長を加速してきました。他方で日本はアジアの牽引力を失い、デフレに苦しんでいます。もはや、日本のことは国際会議で誰も関心を示さなくなりました。まるで存在しないかのように。
日本が成長するとしたら、アジアが必要であり、中国の成長と組み合わせることによって実現するだろう。日本の最大の貿易相手国は、アメリカではなく、中国になった。しかし、アジアが北朝鮮の核や中国の軍事力によって再編されることは受け入れられません。
日本は、アメリカと中国の間で、現実に対応した変化を続ける中で、アジアの繁栄と安全保障を組み変えるしかありません。
FP Mon, 11/16/2009 Why the U.S. should keep an eye on China's military By Thomas G. Mahnken
SPIEGEL ONLINE 11/16/2009 Beijing's Trade Dominance By Dexter Roberts and Pete Engardio
(コメント) アジアにおける貿易自由化の中心には、アメリカでなく、中国が位置するようになってしまう、とアメリカ政府は懸念しています。アメリカと中国の自由化交渉の相手国や姿勢は異なっており、差別的な優遇や自由化免除も認める中国側が有利な交渉を進めるかもしれません。あるいは、東南アジア諸国からの工業製品に関して、アメリカがまだ平均で9%の関税を求めています。それはNAFTA内のメキシコに比べて不利になるのです。
日本や韓国がアジアにおけるアメリカの影響力低下を考慮して政策を転換しつつあることについても、アメリカ政府は焦るわけです。
NYT November 16, 2009 President Obama in China Economy, Security and, Yes, Human Rights
NYT November 16, 2009 The Great Wallop By NIALL FERGUSON and MORITZ SCHULARICK
(コメント) NIALL FERGUSON and MORITZ SCHULARICKは、「チャイメリカ“Chimerica”」というキメラ(ライオンとヤギと蛇の混じり合った伝説上の怪物)が安楽死すべきことを示します。
「チャイメリカ」とは、中国の安価な輸出品と、アメリカの過剰な消費、それらが組み合わされて、中国の貿易黒字とドルの外貨準備、その投資を受けて低金利を享受するアメリカ、という、ドル=人民元の為替レート固定化に依拠した高成長の混合物を意味します。
チャイメリカは至福の婚姻でしたが、貯蓄家と浪費家の組み合わせがうまく行かないように、この結婚生活も永久には続きません。2007年の金融危機がそのことを示してから、中国とアメリカの間の不均衡を解消しなければグローバル・バランスも回復しないことが分かりました。特に、ドル安によってアメリカが対外赤字を減らそうとしても、ドルに固定された人民元が同様に減価したのでは、中国の輸出がますます増えることになります。
中国の外貨準備は2兆3000億ドルに達し、その70%はドル建です。ドイツや日本も1950年代、60年代に外貨準備を増やしましたが、当時はアメリカのGDPも増加しており、その比率は約1%で安定していました。他方、中国は比率を急速に上昇させています。2000年の1%から2005年に5%、2008年に10%、今年の終わりには12%に達する、とこの論説は指摘します。
中国政府は輸出競争力を維持するため、また、金融市場統合化による不安定化のリスクを回避するため、外貨準備を増やしてきました。その結果、ドル安で外貨準備が減価するリスクを嫌うとしても、FERGUSONらはアメリカが実現してきた成長の条件を利用したことで十分に大きな利益を得てきたのであり、また、人民元の増価は中国側の資産を(ドルで測って)より大きく増やす、と指摘します。
もし中国がチャイメリカを放棄しなければ、その影響は世界の市場統合を逆転させる衝動に向かいます。アメリカの、財政赤字が持続可能ではなく、金融緩和もインフレの危険を高めています。資本が流入するブラジルは資本規制を表明し、東南アジア諸国も人民元に対抗して自国通貨を競争的に減価させる介入を始めました。貿易不均衡に対して、不況とドル安に苦しむヨーロッパや日本は為替レートの増価を嫌い、中国を批判するでしょう。
オバマは中国を訪問して、チャイメリカがキメラでしかなく、永久に維持できないことを告げます。そして、世界市場の開放体制を維持すること(そして、米中間の関税・通貨戦争を回避すること)と交換に、中国の人民元が20%〜30%は増価しなければならない、と合意するべきです。
かつて、ドイツも日本も、生産性の上昇による為替レートの50%〜60%の増価を受け入れてきました。中国の成長と生産性上昇はまだ続くのであり、その成果として増価を引き受けるのも同じことです。
FT November 16 2009 China’s on-off American romance By Simon Schama
FT November 16 2009 US fumbling for a new China tone
(コメント) 中国の外貨準備やアメリカ財務証券の保有は、中国がアメリカの債権者として優位に立つことを意味せず、むしろ、中国の成長がアメリカの回復に依存していることを示している、とFTは主張します。その意味で、チベットも、ウィグルも、台湾も、インドも、人権問題も語らず、オバマが中国のご機嫌を損ねないような姿勢を取ったことは、過剰な適応でした。
YaleGlobal , 16 November 2009 Obama in Asia – Part I François Godement
(コメント) François Godementの分析も興味深いです。アメリカと中国がG2として国際秩序を動かすとは考えられません。それにもかかわらずG2を装う理由がある、と。
戦略的な政治目標について全く一致していない米中が、G2を言及する論調を許している理由は、たとえば、G20において米中2国が特別な注目を集めることは、それぞれの政治的な利益を意味しているからです。EUやインド、ブラジル、日本は、国際政治の舞台中央から追い出されます。それはまた、両国がその弱さによって助けを必要としていることを隠します。米中は協力しなければ、それぞれの国内金融や景気回復を、政治的に指導することもできないでしょう。
中国の強硬派リアリストは外交を変えるつもりなどなく、アメリカもそれを知っています。多角的な国際協調や、調和の取れた社会から国際秩序を展望する演説は、彼らの不信感と矛盾するわけではありません。米中は、互いの戦略目標を妨げる力を維持しつつ、当面、それを助けることに同意します。
こうしたG2ではなく、私たちが必要とするのは新しいグローバル・ガバナンスです。
WSJ NOVEMBER 16, 2009 China and the American Jobs Machine By ROBERT B. REICH
(コメント) アメリカはクレジットカードに頼って中国製品を購入し続けることをやめるべきだ、もっとアメリカの雇用を増やそう、とオバマは考えます。
しかし、それは幻想です。なぜなら、中国はますます消費よりも投資によって成長しているからです。中国政府はあらゆる分野で世界一の生産力を望んでおり、先端分野の技術開発にも投資し続けるでしょう。中国国民は不十分な社会保障制度を心配しており、特に、人口の急速な高齢化を恐れています。中国政府は農村部から都市へ出稼ぎに来る労働者たちに十分な雇用を提供できなければ社会不安が高まることを心配しています。
だから、中国はますます生産力を蓄積し、その過剰な生産物をアメリカやヨーロッパに輸出しなければなりません。莫大な外貨準備やドル安のコストは、彼らの政治目標に見合ったものです。
他方、アメリカも中産階級の労働者が貧しくなり、不況からの回復を妨げています。それは不平等を悪化させ、政治不安を招くでしょう。
IHT November 17, 2009 China Curbs Its Appetite By PHILIP BOWRING
CSM November 17, 2009 Obama in China: Why not more US export jobs?
CSM November 17, 2009 Obama's mission impossible with China By Julian Baum
(コメント) 中国からの直接投資が世界の資源や欧米企業を襲うのでしょうか? 市場が安定して競争が激しくなれば、まだ中国投資が主要なプレイヤーにはなれないでしょう。あるいは、アメリカはもっと多くの直接投資によって、工場と雇用を中国に輸出するのでしょうか?
オバマはどちらも望みません。むしろ、人民元を増価させて、アメリカの輸出と雇用が増えること、資本流入への依存を減らすことを望んでいます。また、そのためには、中国国内の法律やWTOの合意を守らせる必要があります。
LAT November 17, 2009 Obama is right to acknowledge China's might
The Guardian, Tuesday 17 November 2009 Obama on the back foot in China Jonathan Fenby
SPIEGEL ONLINE 11/17/2009 The World from Berlin: 'Obama's Soft Approach on China Won't Succeed'
(コメント) 貿易、通貨、安全保障で、米中間の共通利益を強調し、唯一、インターネットの検閲や制限を強く批判したのは、オバマ政権の中国に対する長期的な戦略だと思います。また中国は、金融危機後の回復を担う最良の時期に、アメリカ大統領との会談を準備できたことを喜んでいるでしょう。米中ともに、その弱点や不均衡を指摘せず、互いの対等・公平な交渉姿勢を内外にアピールする点で外交の利益を共有しました。世界にとって良いことであったか、それは別です。
WP Tuesday, November 17, 2009 Welcome, China?
NYT November 17, 2009 The Nation of Futurity By DAVID BROOKS
(コメント) 民主主義的でない中国をアメリカが同盟国として認めることは、将来、正しい選択であったと言えるのか? "...we welcome China as a strong and prosperous and successful member of the community of nations."
しかし、アメリカは中国の台頭を「歓迎」するだけでよいのか? とWPは問います。アメリカが協力する新たな大国が「民主的でない」とすれば、それこそが最も重大な問題です。アメリカは、スターリンのロシアや、ヒトラーのドイツとも、同盟国になり得たのか? 唯一の例外は、ヒトラーを倒すためにスターリンと手を組んだことです。
実際、中国の行動は世界の他の民主主義諸国とは大きく異なります。アフリカやラテンアメリカで制裁を無視して資源に投資し、台湾を戦争によって威嚇しています。イランが制裁を受ける中で、それを無視する中国との貿易は急増しました。
アメリカは中国が台頭するのを拒めないし、それを封じ込める選択肢は好ましくない。しかし、非民主的国家の世界的な影響力を「歓迎」し、同盟を組むのは間違いだ、と。
DAVID BROOKSは、逆にアメリカの現状を批判します。かつては、最も優れた社会モデルを建設する死命を革新していたアメリカが、今では、その自信を失ってしまいました。金融危機や中国の台頭というよりも、この信念の危機が、アメリカを弱くしています。
アメリカに広がる悲観論に比べて、たとえ失業者でも、中国には楽観と希望が満ちています自分たちの国は正しい方向に進んでいる、と感じる中国人は86%、アメリカ人は37%です。中国人の多数は、中国が未来の社会改良を担っている、と信じています。
「もしケ小平がいなければ、私は今でも牛の後から歩いて畑を耕しているだろう。・・・」 中国人はその素晴らしい変化を誇り、未来に自信を持っています。
アメリカ経済は余りにも消費に頼り、債務や輸入を増やしてきました。そして、生産や技術革新、輸出を軽視してきたのです。今や連邦政府の債務は累積し、現世代の放埓は将来世代に大きな負担となっています。アメリカが世界で最も生産的な、ますます熟練を磨く国民であると、かつては自信を持っていました。財政の引き締めを叫ぶだけでは、アメリカは再生しません。
DAVID BROOKSは、未来に向けてアメリカが社会を革新するために、慎重な政策の実現を求めます。教育、技術革新、基礎技術の研究に投資するために、アメリカ国民の歴史的な使命や具体的な技術・地域戦略を示すことのできる政治指導者が必要です。
そのより手本は、Michael Porter’s essay in the Oct. 30, 2008, Business Weekである、と。
FT November 17 2009 Grim truths Obama should have told Hu By Martin Wolf
WP Wednesday, November 18, 2009 A marriage made in China By Harold Meyerson
(コメント) 世界経済、気候変動、核拡散防止、など。米中が話し合うべき重要課題は多くあります。しかし、米中が世界経済の回復に貢献することがなければ、すべての分野で協力は困難となるでしょう。経済を回復させるには、特にドルと人民元の関係について、話し合わねばなりません。
この難しい課題について、Martin Wolfは(想像される)会話を示しています。・・・
「中国政府はアメリカの財政赤字や金融緩和、そしてドル安を心配している。・・・しかし、これは昨年の金融危機が引き起こした不況を回避するために必要である。人びとは債務を減らし、貯蓄を増やした。もし金融を引き締め、ドル高と財政赤字削減を進めれば、不況は再来し、さらに大きな財政赤字をもたらすだろう。」
「IMFのストラス・カーン専務理事も述べたように、アメリカの貯蓄増と中国の国内需要増が世界の均衡を回復させる。・・・中国の経常黒字は大きく減少したが、それは一時的なものだろう。・・・なによりも、人民元のレートをドルに固定する政策をやめるべきだ。」
「中国はアメリカの保護主義を批判するが、中国の為替レート政策はもっと大きな被害を及ぼす『近隣窮乏化政策』であり、為替レートによる保護主義である。・・・むしろ中国とアジア諸国の通貨が強くなれば、家計は購買力を得て、所得分配を労働者に有利にし、投資の方向を変える。それは各国に必要な改革と一致する。」
「もしこのままの政策を続ければ、中国の経常収支黒字、もしくは、アメリカの経常収支赤字は、耐えがたい規模に達するだろう。それは議会に『何かしなければならない』という政治圧力を強める。1971年に、ニクソン大統領が行動を起こしたことを考えてほしい。10%の輸入課徴金で、ドイツと日本に切り上げを求めたのだ。」
「中国が為替レートの調整を拒むなら、私にはそのような重商主義から自国の経済を守る権限がある。それは貿易システムをひどく傷つけるだろうが、そうしなければならないのだ。」
Harold Meyersonも、中国の通貨・為替政策は、現在の不況において、スムート=ホーレイ関税に等しい、と批判します。
FT November 17 2009 America must start treating China as a friend By Bill Owens
The Japan Times: Tuesday, Nov. 17, 2009 Obama, Dalai Lama figure in Indo-China rift By GAUTAMAN BHASKARAN
The Guardian, Wednesday 18 November 2009 Obama's Beijing balancing act points to the new challenge for the west Timothy Garton Ash
(コメント) グローバル・パワーが東に移動する過程で、「関与政策のジレンマ」にオバマも陥っている、とGarton Ashは考えます。
ダライ・ラマにも、人民元にも言及せず、中国を「戦略的パートナー」と呼ぶことで、米中関係は安泰だろうか? アメリカ大使館のホームページにアクセスできないことについて、オバマは明確に抗議したけれど、その後で、「国によって異なる伝統があることは認めるが」と付け加えました。この意味をAshは注意します。
中国に関与する二つの異なったアプローチがある、と。一つは、中国が好む、オバマも近寄ったアプローチです。・・・異なる伝統、異なる文明、異なる文化、異なる価値。だからわれわれは互いを尊重しよう。そうすることでのみ、われわれはハンチントンの予言した「文明の衝突」を回避できる。・・・しかし、中国の指導部は、毛沢東の時代と違って、世界に文明や政治スタイルを広める意図はないでしょう。むしろ、アメリカやEUがそれを望んでいます。
逆に、中国もアメリカも、他国の主権をそれほど尊重していません。他国の主権とは、それが自分たちの国益を損なわない限り尊重されるけれど、自分たちの利益を損なうと思えば、その影響力を行使するのは当然なのです。そのため、常に、世界的な影響力の拡大を目指しています。
Ashが支持するもう一つのアプローチは、中国や、その他の新興諸国との対話において、真にユニヴァーサルなユニヴァーサリズム(普遍的な普遍主義、・・・世界市民主義)を追求することです。異なる価値を唱えることが、対話を妨げることにはならず、互いに多くの共有できる価値があり、その生活を組織することなったあり方についてオープンに議論できる、と。
西側の文明では、それを「啓蒙the Enlightenment」と呼んできた。誰でも最も優れた知識から学ぶことができます。儒教や仏教の伝統から、われわれは学ぶでしょう。・・・私は啓蒙の普遍的な価値をあなた方に対して説くが、それは我々にも当てはまることだ。そして、あなた方がそれをどう思うのか、その返答を必ず注意深く聞くと約束する。
そのためにも、私たちは互いにその情報や意見を十分に知る必要があるのです。関与政策は、人民と人民の関係にまで拡大しなければならず、たとえば米中間の学生交流はもっと拡大されるべきでしょう。そして、メディアを通じて、特にインターネットで、普遍的な対話による世界市民主義が育つように。
FT November 18 2009 Obama seeks change Beijing can believe in By David Pilling
(コメント) 中国は、自国の国益に従ってしか行動しない。それはどの国についても言えることだが、中国は、自国の国際的な地位が不当に低く扱われてきた、という感覚を持っている。外から要求されるものは、これを拒むことによって自国の威信が示される、と思いがちだ。
オバマの訪問は中国国内のニュースを抑えられ、国民との対話も好まれない。中国と、人民元の為替レートや温暖化ガスの排出量を議論しても、彼らが自国の利益以外の理由で受け入れることはないだろう。中国が協力するとしたら、それは、国際機関のメンバーとして、それが自国の利益であると主張できるからだ。すなわち、IMFやWTOである。
中国に対しては、説得も威嚇も、平身低頭も礼節も、余り有効ではない。人民元であれ、チベットであれ、彼らがそれを信じたときのみ、それを変更する余地がある。
YaleGlobal , 18 November 2009 Obama in Asia – Part II Kavi Chongkittavorn
WSJ NOVEMBER 18, 2009 The China Obama Didn't See By LESLIE HOOK
IHT November 19, 2009 Equals at Last, for Better or for Worse By WILLY LAM
Asia Times Online, Nov 19, 2009 Hu and Obama seal real deals By Francesco Sisci
FT November 19 2009 China blurs bipolar view of the world By James Kynge
(コメント) 一人当たりGDPではイラクより少しだけ多い中国が、アメリカと対等な関係で世界経済や国際政治に強い影響力を認められる、という国際秩序を何と呼ぶべきか?
アメリカの最大の債権国となり、日本の経済規模を抜き、ドイツの輸出額を抜く、という話だけでなく、中国の銀行ICBCが格好済み株式の時価総額で世界最大の企業になったこと、中国のA株式市場の規模が東京市場を抜いて、NYSEに次ぐ、世界第2位になったこと、温暖化ガスの排出量で世界最大、研究開発投資で世界2位、中国企業Huaweiは特許申請件数で世界最大、・・・中国は、BRICと協力し、アフリカとの貿易や投資でもアメリカを抜くでしょう。
Asia Times Online, Nov 20, 2009 Subtle changes in US's China policy By Jian Junbo
WP Friday, November 13, 2009
No more 'too big to fail'
By Jamie Dimon
(コメント) 「大き過ぎて潰せない'too big to fail'」と言いますが、実際、どれくらい大きいのか? JPモルガン・チェイスは、二十二万人以上を雇用し、一億人以上の顧客があり、世界の100カ国近くで、一日に1億ドルもの融資を行っている、ということです。
かつて、アルゼンチンの債務に対しても、国家も破産できるようにしよう、という提案がありました。それは成功しませんでしたが、ウォール街にはメガバンクの破産処理メカニズムができるでしょうか? もしできるのであれば、国家の破産も検討されると思います。なぜなら処理の基本は同じだからです。
破産によって健全な企業の資金が枯渇してはなりません。過大なリスクを取って利益を得たものが救済されてはならず、むしろ、彼らが処理コストを負うべきです。
他方、この論説は、銀行は競争し、潰せるような規模でなければならない、という理由で、銀行の規模に画一的な上限を設ける提案に反対します。
NYT November 13, 2009
Free to Lose
By PAUL KRUGMAN
NYT November 16, 2009
World Out of Balance
By PAUL KRUGMAN
(コメント) 二つの論説で、一つはアメリカの失業増について、もうひとつは世界経済の均衡回復について、PAUL KRUGMANが考察しています。
アメリカでは雇用が急速に落ち込み、失業者が増え続けています。他方、ドイツは雇用の落ち込みがほとんどなく、失業の増加も抑えられています。その違いから、アメリカの財政刺激策による(不十分な)景気・雇用対策よりも、ドイツの雇用維持と就業促進のための補助金政策が優れている、と考えます。
また、世界的な不均衡、すなわち、中国の大幅な貿易黒字は、金融危機の影響で一時的に抑制されましたが、その後の人民元レートの対ドル固定化は、事実上、ドル安に伴う人民元安を維持し、他国に比べて中国の輸出競争力を増しています。このような競争的な切り下げ、近隣窮乏化政策を中国が続ければ、赤字国からの激しい反発や制裁が起きるだろう、と。
Asia Times Online, Nov 17, 2009
Korean model triumphs over West
By Ian Williams
(コメント) 韓国モデルの成功についても言及がありました。韓国の成長モデルとチェボル(コングロマリット)は、アングロサクソン型の「ワシントン・コンセンサス」よりも投資を重視し、所得分配を平等に保っている。高度な技術水準と合理的な価格で、中国市場でも、世界でも、高い競争力を示している。
ウォール街やシティーの金融アナリストたちは、OECD加盟後も、韓国を先進国とみなさなかったが、彼らの方が間違っていたことを認めつつある。
・・・この論説は、韓国モデルについて称揚し過ぎではないか、と私は思いますが。
FT November 13 2009
Man in the News: Mikhail Gorbachev
By John Lloyd
(コメント) ベルリンの壁崩壊に果たしたゴルバチョフの役割とその評価に関する興味深い記事です。ゴルバチョフは、もちろん、社会主義体制やソ連が崩壊することを予想していたわけではありません。その重大さを見ず、社会変化や経済過程を中央から管理できる、という共産党のイデオロギーに支配されていました。
ソビエト連邦は、さまざまな点で過大評価されていましたが、それを支えてきたのはレーニン主義の世界改造を支持する信念と理想の構造でした。「選択の自由」を公認したゴルバチョフは、ソ連圏のエリートや庶民を動かしていた、この使命感を破壊したのです。
エリツィンは、ロシアの大統領になる前、訪米した際にヒューストンのスーパーマーケットを訪れ、その光景に幻惑されたことを書き遺しています。何千何百という商品が棚に並び、あらゆる種類の缶、箱、ソ連の市民たちが渇望している商品の並ぶ様子に、彼は激しく動揺し、憤慨したのです。本当はこれほど豊かになれるはずの自国が、これほどまでに貧しいという現状に対して!
まさにその貧困が、ゴルバチョフの最後の数年において指導力を奪いました。賃金も年金も支払われず、雌鶏は餌がもらえずに死にました。乞食が、しばしば年老いた婦人たちが、都市の通りにも現れました。彼女たちは恥を意識しながら、しかし、どうしようもなくなって、凍える地下鉄の入口で施しを願ったのです。
メルケル首相は、ベルリンの壁を平和的に消滅させた点で、ゴルバチョフの決定を称えました。彼の容認、もしくは無知によって、その後の転換は、はるかに恐るべき流血や戦闘を免れたのです。ゴルバチョフは、移行経済への大規模経済支援も断りました。彼らは自ら市場を開放し、新しい秩序を指導する機会を失った、とアメリカの研究者たちは考えます。
その後のロシアの支配者たちは、ゴルバチョフを嫌っています。ロシアにおけるゴルバチョフの評価は極めて低く、プーチンはソ連崩壊を20世紀最大の悲劇、と惜しみました。ロシアは、まだその傷ついたプシケーを癒されることなく、ゴルバチョフの偉業など受け入れるつもりはないのです。
The Japan Times: Sunday, Nov. 15, 2009
Climatic challenge demands fall of new walls
By MIKHAIL GORBACHEV
(コメント) ゴルバチョフは、1980年代の人類の分岐点を振り返ることで、今人類が著億面しているグローバルな環境問題への解決を支持しています。しかし、彼が共産党やソ連大統領として発言したことに比べて、今が説得的であるとは決して思えません。
NYT November 14, 2009 No Tears for a Weak Greenback By MELVYN KRAUSS
WP Sunday, November 15, 2009 The Fed in the cross hairs By David Ignatius
WSJ NOVEMBER 17, 2009 A Dollar Warning From Asia
Nov. 18 (Bloomberg) Dollar Woes Are Good News for Europe’s Markets Matthew Lynn
CSM November 18, 2009 The Fed is foolishly weakening the dollar By Peter Navarro
(コメント) ECBはドル安をかつてほど騒ぎません。その理由は、ECBにとってユーロ圏内の銀行が健全な状態を回復することこそ最重要な目標であるからです。もしインフレが再現すれば、ECBは金利を引き上げ、不健全な銀行の整理をしなければならないことを恐れています。むしろユーロ高がインフレを抑制してくれる、と考えます。
また、ユーロ圏の貿易は、圏外よりも圏内が重要です。ドル安による競争力の低下を心配する声は、以前に比べて少数です。また、諸通貨が入り乱れた頃と、通貨危機のリスクは全く異なります。むしろ、ドル不安はユーロによる取引を増やすでしょう。国際通貨になれば、ユーロ圏の政府債務コストは減るでしょう。
アジアは為替レートをドルに固定した、事実上のドル圏を形成しています。彼らはオバマに対して、過剰なドル供給がアジア各地にバブルを爆発させる、という正当な理由があるでしょう。あるいは、国際通貨ドルを放棄するか?
Peter Navarroも、「強いドル」と言いながら金融緩和を続けるアメリカの政策に、大恐慌時の競争的切り下げが始まることを心配します。
WSJ NOVEMBER 14, 2009
Korea's Berlin Wall
(コメント) ベルリンの壁が崩壊したきっかけは、ハンガリーとの国境が開放されて、東ドイツから市民が流出したことでした。彼らはそれからオーストリアを経て、西ドイツに入りました。同じことが、南北朝鮮でも起きるでしょうか?
オバマ大統領が北朝鮮からの中国への難民を受け入れるように説得するべきだ、とWSJは主張します。政治犯や食糧難による脱北者が中国に30万人いるとも推定されます。
ボズワース特使がピョンヤンに行ったことを思えば、ニクソン訪中のような転換点が米朝間で準備されているのかもしれません。
The Observer, Sunday 15 November 2009
The great debate: Will Hutton vs George Osborne
Will Hutton and George Osborne
(コメント) 金融危機と不況に応じて急増した財政赤字や政府債務について、公開書簡という形で、保守党の考え方を質しています。日本では初めて活用されましたが、革新的な議論にも積極的に応じて、政権交代を政策実現の機会として示す政治家の姿勢が鮮明です。
The Observer, Sunday 15 November 2009
The 1989 generation has the power – but can it handle it?
Matthew Ryder
The Japan Times: Tuesday, Nov. 17, 2009
Asia benefited most from fall of Berlin Wall
By BRAHMA CHELLANEY
WSJ NOVEMBER 17, 2009
Eastern Europe's Lesson for the West
By NIMA SANANDAJI AND JOHNNY MUNKHAMMAR
(コメント) 1989年についての考察です。Matthew Ryderは、戦後のベビーブーマーと異なる、1989年世代を考えます。1989年の無血革命を見た世代が、今や指導的な地位に就き、新興企業や政府を組織しています。彼らが得た感覚や知識、発想を、現実の世界において実現しつつあるのです。
ベビーブーム世代が1968年(プラハの春とソ連侵攻)を見たように、また将来、21世紀世代が9・11を思い出すように、その中間には1989年を見た世代がいます。彼らはヤッピーであったかもしれませんが、それ以上に1989年の革命によって意識を形成したでしょう。彼らの特徴は、政治的党派や集団に属さず、あらゆる政治的なドグマを信用しないことです。
個人の力や利己心を強調し、グーグルを起こしたブリンがいたり、労働党のデイヴィッド・ミリバンド、保守党のデイヴィッド・キャメロンのように、金融ビジネスで儲けるより政治家になった人たちもいます。AK−47で革命を起こすより、TV画面から人びとの意識を変えます。オバマもそうです。
1989年から、アジアは大きな利益を得た一方で、ヨーロッパの高負担福祉国家は資本が、インド、中国、東欧、バルチック諸国など、海外へ逃げることを恐れます。
FT November 15 2009
A Franco-German marriage of convenience
By Wolfgang Münchau
(コメント) 今なお、独仏の政治的な協力が、EUの方向感覚を決定します。
NYT November 15, 2009
Lost There, Felt Here
By THOMAS L. FRIEDMAN
(コメント) 中国よりもブラジルが、オバマの求めるパートナーではないか?
アメリカがアフガニスタンに兵士を駐留させる費用が、兵士一人当たり約100万ドルです。世界最大の自然公園があるアマゾンのAmapá州知事、ダ・シルヴァAntonio Waldez Góes da Silvaに、100万ドルあったら何をするか? とTHOMAS L. FRIEDMANは訊きました。3人の兵士を呼び戻して1400人の学生が学ぶAmapáが運営できるから、持続可能な発展モデルを研究してもらう、と。
これは軍事予算を見直す一つの異なる選択肢です。戦争は、単純に支出の選択ではありませんが、同時に、真空の中で行われているわけでもありません。
もしアメリカがアフガニスタンの治安を引き受けるなら、中国にはアマゾンの環境を守ってもらう、という分担を提案してはどうか?
ブラジル、インドネシア、コンゴで、熱帯雨林が2015年までに25%も失われると予測されます。熱帯雨林を回復する費用は300億ドルと推定されます。中国が保有する2兆2000億ドルの外貨準備を利用して、グローバルな公共財を供給することは、中国だけでなく世界の利益となります。
自然の回復を資本とみなす、「自然資本主義」の誕生です。
IHT November 16, 2009
Japan-U.S. Relations: Let There Be Discord
By NASSRINE AZIMI
WSJ NOVEMBER 17, 2009
The Real Tokyo Bow
(コメント) 日米関係についての興味深い考察です。・・・1960年2月、ワシントンDCでの署名から1カ月後に、日米安保条約が批准のため国会に提出されたが、日本中にかつてない激しい抗議が巻き起こった、とNASSRINE AZIMIは書き出します。
日米安保条約の成立50周年が近付く中で、この条約への疑問や、特に沖縄の米軍基地に関する日本での論争に、アメリカの政策関係者と批評家は不満を述べています。しかし、それはこの条約の歴史的意味や、日本が選挙によって変わったことを十分に理解していないからです。
1.この条約は、アメリカにとって他の多くの2国間条約の一つでしかない。しかし日本にとって、それは心理的、道義的な、深い影響をもたらす問題であり、民族の誇りや自尊心、沖縄に対する集団的な罪悪感に及ぶ、多くの問題につながっている。
アメリカの核の傘に守られた、「従属的な独立」という日本の地位は、経済面での地位向上や、歴史上唯一の被爆国として、平和を保証する国際的地位を得たことでも、決して補えるものではなかった。その決定(日米安保条約)は日本の戦略的な利益に従い、将来も長く変わらないだろう。それでも新政権は、日米同盟の意味を国民的な議論で十分に明らかにしたい、と望んでおり、それは正しいだろう。しかし、アメリカの国内政治が日本の長い議論には耐えられない、ということも日本政府は理解している。
2.アメリカはまだ、日本で起きた政治変化の意味を十分に理解していない。数十年を経て初めて、一般の日本人が政府の指導力に誇りを感じている。密室で取引するような政治家たちの後に、ようやく鳩山政権は登場した。不安定な足取りであるだろうが、政府は新しい時代を感じさせる、若く、有能な政治家に恵まれている。彼らは、この国が直面する真の問題に取り組む意志を持っている。変化を求める国民の強い支持によって登場した新政権に、日米安保の問題には口を出すな、ということはできない。
最も重要なことは、世界で最も古い国の一つである日本と最も若い国の一つであるアメリカとの間にある友好関係(その貴重さ)を、アメリカの不満が過小評価しがちなことである。悲惨な長い戦争と、広島、長崎における原爆による大虐殺の後、占領を終えて、かつての敵国と戦勝国との間に真の絆が残るということは非常に珍しい。そのことは広島において、アメリカを憎む声がなく、同時に、原爆のことを決して忘れない、という言葉に示されている。
3.この問題は日本側だけで起きており、一方通行だ、と考えるのは軽率だ。アメリカ側もまた、安全保障の点で、もっと捉え難い形であるが日本に依存している。イラクやアフガニスタンの戦争があっても、アラブ諸国民は日本に親近感を持っている。アフガニスタンの若い専門家は、戦争の惨禍から再生し、グローバリゼーションの中でも自国の伝統や文化を守っている日本を、宗教的な態度や押しつけを伴わない国と見ている。アメリカ政府はこうした点をまるで評価していない。
日米の友好関係が、弾力性のある、多面的なものであるなら、ときには意見が食い違っても、それを克服できるだろう。日本はこの64年間、平和と民主主義を守ってきたし、そのことはアメリカの介入による成果でもある。それゆえ最善の道は、日本人が21世紀を自分たちの言葉で考えることを、今は、礼儀正しく待つべきである。
他方、たとえば、WSJの論説は苛立っています。
Asia Times Online, Nov 18, 2009
Japan doomsday fears premature
By R Taggart Murphy
(コメント) いくつかの欧米コラムが言及しているけれど、年金、国債、銀行破綻、あるいは、そのすべてによって、日本政府が破綻するのは、まだ先だろう、とR Taggart Murphyは考えます。
郵貯銀行の後退も国債が投げ売りされることにはならない。国債の発行額も、GDP比率も、増加しているし、デフレは悪化し、人口の高齢化も進んでいる。・・・なぜMurphyは悲観(破局)論に加わらないか?
ネオリベラル風に、効率的市場仮説を使って考えれば、市場で破局が起きていないことには十分な理由があるのだ。しかし、そのような説明を信じなくても、パニックの歴史を見ても、無知な投資家たちから儲けを得られる限り、破局が来るまで、プロの投資家たちも群集心理の波を利用する。
Murphyは、市場が操作されている、という主張を否定します。むしろ、悲観論者は以下の点を考慮するべきだ、と。
1.自国内の貯蓄で国債を吸収している。2.円高は輸出に不利だが、日本の交易条件を改善する。3.高金利は必ずしも悪くない。むしろ今の金利は低すぎる。利子収入は失われ、生産的な投資も行われない。4.民主党政権は日本経済の構造転換を目指している。それは、公共投資の転換だけでなく、円高と高金利によって非効率な分野を一掃することを含む。
・・・北欧諸国が通貨価値の増大にもかかわらず、高福祉と弾力的労働市場によって、雇用の喪失を破局に結びつけなかったこと、1990年代の高金利とドル高の中で、アメリカのハイテク・情報産業が興隆したこと、を思い出すべきだ。さらに、上海やタイへの直接投資を考えるなら、円高の推進は強力な支援策である。
日本の多くの貯蓄が浪費され、女性たちは出産を拒否し、成長を輸出に頼ってきた。しかし、それは変化しつつある。経済が悪いのではなく、その管理者が悪かったのだ、と言うべきだろう。
WSJ NOVEMBER 19, 2009
The Rising Yen is Sinking Japan
By JESPER KOLL
(コメント) 日本政府による円高放置を、JESPER KOLLは強く批判します。リーマン・ショック以後、20%も進んだ円高は、民主党政権の主張とは逆に、日本経済を破壊しつつある、と。
通貨の増価が経済にとって好ましいのは、その国が成長している場合だけである。1960年代、70年代の日本は、円高に対して設備投資を行った。今は、資金の流れも、企業も、銀行も、全く異なり、デフレ・スパイラルが起きている。ニッサンでも、ソニーでも、輸出における利益の減少が雇用削減に結びつく。成長市場を求めて海外投資が行われ、国内の小売店やインターネット業界など、サービス部門と同様である。
デフレ経済における円高に対しては、財政・金融の刺激策と規制緩和で対抗しなければならない。しかし、鳩山政権がやっていることは逆である。日本経済は、急速に、本格的な不況に落ち込むだろう。日本に円高は必要ない。労働市場・資本市場の規制緩和、民営化、実際的な国内産業の支援策、が求められる。
鳩山政権の場違いなユーモアは、経済政策の無能さを示すものであり、日本が支払うその代償はあまりにも大きい。
The Guardian, Monday 16 November 2009
The people of Iceland have spoken
Alda Sigmundsdóttir
(コメント) アイスランドが開いた国民会議(議会や国会ではない)を伝えています。さまざまな団体が集まり、多くの国会議員も加わって、1200人、国民の約5%が参加しました。アイスランド社会の特徴や、最も尊重する価値とは何か? 金融危機後、何に基づいて社会を再建するか? 彼らは話し合った、と言います。
参加者たちは162のテーブルに分かれて9名で座り、一人が司会者となって、誰の意見にも耳を傾けるように配慮しました。危機の原因よりも解決策が議論され、人びとは未来に向けて希望や夢を語った、と。
その多くのテーマは特別なものではありません。しかし、このような会議を組織し、実現する国民の政治的意志と協力の姿勢は、私たちの想像を超える高い水準にあるのでしょう。
WSJ NOVEMBER 17, 2009 An Alternative Stimulus Plan By MICHAEL J. BOSKIN
Nov. 18 (Bloomberg) Obama Bows to Japan’s Emperor, Snubs Adam Smith Caroline Baum
The Guardian, Wednesday 18 November 2009 Conventional wisdom won't save the economy Will Hutton
The Japan Times: Wednesday, Nov. 18, 2009 Ghost in the recovery machine By ROBERT J. SHILLER
(コメント) 英米の景気対策に関する論争(これまでの政策の評価と、失業や公的債務の急増を受けて、今後の対策)が高まっています。
FT November 18 2009 How to reinvent China’s growth By John Gapper
CSM November 19, 2009 How China and the US can boost the global economy By Dominique Strauss-Kahn
China Daily 2009-11-19 China offers new growth pattern By He Wenping
(コメント) 中国の景気刺激策が大成功であった、と言う一方で、中国の成長モデルが転換する必要も強調されます。対外的にも、国内的にも。地方都市に空港と片側何車線もある高速道路を次々に建設することは、いつまでも続けられません。子供の数を政策的に減らした後、労働力人口の比率が上昇し、さらに高齢化が進むことは分かっています。今は、輸出にお居した成長から資本市場自由化と効率化を目指す時だ、とJohn Gapperは考えます。
IMFのStrauss-Kahn専務理事はグローバル・リバランスを強調しますが、それは米中の政策協調を意味するように思います。しかし、興味深く、また懸念されるのは、中国の関心は異なっており、He Wenpingが紹介するような、アフリカへのインフラ投資(空港、港湾、鉄道、・・・高速道路?)に向かうかもしれない、という点です。そこには、開発モデルや政治的影響力の問題も含まれます。
FT November 18 2009
Modesty would become Europe’s new duo
By Jacques Delors
FT November 19 2009
Van Rompuy takes EU presidency
By George Parker and Tony Barber in Brussels
(コメント) 元欧州委員会委員長であるJacques Delorsは、ヨーロッパ大統領や外交代表の役割を正しく理解するように求めています。
EUの統治メカニズムは、欧州委員会the European Commission、欧州(閣僚)理事会the European Council、欧州議会the European parliament、この三つの機関のバランスによって加盟諸国の政策を制度を動かすことにあります。大統領も外交代表も、ヨーロッパ政府の代表ではありません。
IHT November 19, 2009
America's Conflicting Destinies
By KISHORE MAHBUBANI
NYT November 19, 2009
Mr. Obama’s Task
(コメント) アメリカはアジアを世界市場に取り込んで、その成長を加速することに成功しました。他方、13億のイスラム諸国とは良好な関係を築いていません。オバマはAPECの首脳会議出席やインドネシア訪問を軽視した、とKISHORE MAHBUBANIは批判します。
他方、オバマは、アメリカの利害関心、戦争目的・軍事的な関与、人命及び財政面での戦争の予想されるコスト、作戦成功の定義、を明確に説明しなければなりません。ブッシュ大統領は、アフガニスタンでもイラクでも、その説明に失敗しました。
アメリカの利害関心について、オバマ政権内部で意見対立があります。対ゲリラ戦を想定したStanley McChrystal将軍の方向に従って増派する問題も、オバマがこの戦争をどう考えているか、に依ります。決定を遅らせるほど、オバマの決断力や指導力が疑われ、選択肢も減る、と。
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The Economist November 7th 2009
So much gained, so much to loose
The world after 1989: Walls in the mind
Mikhail Gorbachev and the fall of the wall: The man who trusted his eyes
China’s reaction to the Communism’s collapse: Keep calm and carry on
Eastern Europe’s economic woes: Down in the dumps
(コメント) 20万人の東ドイツ市民がハンガリーとの国境を越えてから、東西冷戦は消滅に向かいました。記事は、経済的自由が、また、グローバリゼーションが、若くて野心的な能力の高い者に大きな富をもたらした、と考えます。逆に、旧制度に依拠した、能力に欠ける老いた人びとは力を失いました。しかし、支配層はその影響力を駆使して、さまざまな富を支配し続けたようです。
金融危機が示したように、マルクスよりもマーケットの方が賢明だとか、人びとに優しいとは言えませんでした。豊かなものはさらに豊かになり、貧しいものは非常に貧しくなって、資本市場はブームと破綻を繰り返しています。貧しい国では市場を自由化して貧困層を減らしたし、人種差別や外国人排斥を唱える政治運動が権力に近付くこともなかったわけですが、雇用や生活の改善を願った人々の多くが絶望を味わったことも確かです。
FTの記事とともに、The Economistが描くゴルバチョフの考え方が興味深いです。彼はプラハの春を継承し、社会主義と民主主義の補完性、ソ連の再生を信じて、改革を進めたのです。その東欧は、自由化と金融統合によって危機に脆弱となっていたため、今は深刻な不況を耐えています。EU・EBRDとIMFから金融支援を受けつつも、改革の逆転ではなく加速を求められます。
The Economist November 7th 2009
Battling joblessness: Has Europe got the answer?
Buttonwood: Exit, followed by a bear
Rural job guarantees: Faring well
(コメント) アメリカでもイギリスでも、ドイツでも、インドでも、失業問題や雇用保証に関する政策が問われています。また金融緩和策からの出口戦略も議論となります。