IPEの果樹園2009

今週のReview

8/10-8/15

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

国際投資による農地獲得、 投資銀行の利益、 北欧モデル、 東欧・バルチック・アイスランドの金融危機、 クリントン元大統領の北朝鮮訪問、 自民党権力の終わり、 R2P、 権力の新しい調理法、 広島の記憶、 金融危機から学んだか? チェチェン、 金本位制離脱

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


BBC 2009/07/28

If markets don't work, what will?

Robert Peston

NYT July 31, 2009

Wise Muddling Through

By DAVID BROOKS

(コメント) 連銀は民主的な組織ではないが優れている、とバーナンキを讃美する論説です。明確な方針を示して失敗したポールソンに比べて、バーナンキ=ガイトナーは、ケースごとの対策を十分に取って、危機の収拾に成功してきた。次々に起きる深刻な問題を何とか回避し続けるしかなかった、と考えます。

FT August 2 2009

Trichet should convene a trip to the beach

By Ralph Atkins

The Guardian, Monday 3 August 2009

As the legacy of crisis bites, stronger democracy is vital

John Keane

(コメント) 失業者は増加し続けており、政府は金融機関を救済したり、景気刺激策のため、巨額の財政赤字を出して苦しんでいます。ところが、早くも金融ビジネスは利益を回復し、高額ボーナスを受け取る者が現れています。これは政治経済問題を喚起する、とJohn Keaneは考えます。

金融危機の過程は、こうして、政治的な民主主義システムの基礎を脅かすのです。

社会の異なる職業や所得階層の間で、財政を介した再分配が行われます。金融ビジネスが、救済に対して何も負担せずに、その他の経済で失業や増税、あるいはインフレが起きるでしょう。中央銀行や金融監督、債券格付け、そして金融機関によって増幅され、全世界的に起きた金融危機の結末として、社会不安や政府への不信任が強められて当然です。

この社会的・経済的コストに見合った市場メカニズムがないとしたら、政治的な介入が求められて当然です。金融システムの新しい構造を求め、金融システムのリスクを回避させる、より民主的な責任を負った機関や情報の公開が求められています。

CSM August 03, 2009

End the Fed? A not-so-crazy idea.

By George Selgin

The Guardian, Monday 3 August 2009

Ben Bernanke's failure at the Fed

Dean Baker

(コメント) 再指名を望むバーナンキは、ジム・レーラーの番組the News Hourで長いインタビューを放映されました。Dean Bakerは、再任が適当でない、と主張します。

グリーンスパンの下で行われた金融規制の緩和と金融政策は、その後の危機をもたらしました。また、危機における救済融資の中身やコマーシャル・ペーパーの取引消滅を促しました。莫大な流動性を供給したこと以上に、それが正当な形で、正当な規模だけ、誰に行われたのか、公開し、説明しなければなりません。

NYT August 3, 2009

Leave Swiss Banks Alone

By PIERRE BESSARD

(コメント) スイスは多国籍企業や資産か、あるいは政治家や発展途上諸国の独裁者に、資産の隠し場所、脱税の逃げ道を提供しています。EUの重税や金融システム管理、アメリカの多国籍企業に対する徴税に対して、情報を与えません。

しかし、PIERRE BESSARDは、この伝統を擁護します。個人の自由に対する政府の管理を拒むことは、ナチスからユダヤ人の資産を守ったように、自由の重要な基礎だ、と。そして、明らかに違法なケースについては、個別の取引に応じるべきだ、と考えます。

WSJ AUGUST 4, 2009

Bernanke’s Exit Dilemma

By GEORGE MELLOAN

(コメント) 金融緩和に比べて、金融引き締めには政治的な反対が強くなるはずです。政府の財政刺激策を支えていますが、今度は、財務省証券を大量に売却するのでしょうか? 大規模な金融緩和がインフレを招かないような金融引き締めを十分に行うことは、バーナンキ再任のもう一つの欠陥です。

FT August 4 2009

Markets can be wrong and the price is not always right

By Richard Thaler

(コメント) 「効率的市場仮説(EMH)」に関する批判的研究書『合理的市場という神話Justin Fox, The Myth of the Rational Market』の紹介です。

経済学が数学化する過程で、すべての取引は「合理的である」と仮定しました。その方が処理しやすいからです。それは初期の物理学がすべての運動に「摩擦はない」と仮定するようなものでした。EMHは二つの命題を含んでいます。“The Price is Right” “No Free Lunch”です。言い換えれば、すべての情報は価格に反映されており、市場の利回りを超える投資家はいない、ということです。

その後の説明を、私が要約するのは良くないでしょう。間違いそうです。LTCMや日本の不動産バブルなど、市場の価格が正しくない場合もあることを考えるわけです。

資本を配分するのに、今も市場しか考えられないとしたら、バブルをどうやって防ぐか、経済学は問い続けます。


FT July 29 2009

Get ready for lower Chinese growth

By Michael Pettis

(コメント) 金融危機の結果、アメリカの消費が減り、輸入が減り、中国では成長を持続するために消費を増やさなければなりません。しかし、実際には、輸出以上に輸入が減って、消費の少なさを補っています。さらに、政府は銀行融資を増やし続けており、成長率を維持しますが、今後、不良債権が増えるでしょう。

インフレによる混乱を招くより、金融引き締めと成長率低下を受け入れるのでしょうか?

WSJ JULY 30, 2009

Now China Has a Credit Boom

By PAUL CAVEY

FT August 2 2009

Emerging Asia must heed the risks of bubbles

By Frederic Neumann

(コメント) 輸出による利益から、国内の過剰投資と金融・不動産市場のバブルによる成長維持へ、中国の成長率は危険な延命措置に頼っています。

アジア諸国の景気刺激策も、中国と同様に通貨価値の水準を調整せず、ドルの外貨準備を増やし続け、輸出依存を続けています。むしろ、為替レートを弾力化して、金融政策のデカップリングが必要だ、とFrederic Neumannは主張します。

Asia Times Online, Aug 6, 2009

Even China faces meltdown

By Martin Hutchinson

NYT August 7, 2009

China Faces Delicate Task Reining In Bank Lending

By DAVID BARBOZA

(コメント) 同様の政府による刺激策はT997-98年のアジア通貨危機の後にも行われました。政府系銀行の融資が不良債権化したのち、2004年末に至って、ようやく処理ができました。景気も株式市場の好調だったからです。

今度はさらに規模が大きく、今後の成長率も低下する恐れがあります。処理に失敗すれば、長期にわたる成長の減速につながるのです。北京政府が成長率の目標を達成しようとすれば、融資の抑制やバランスのとれた成長は難しくなります。このままでは、史上空前の過剰投資とバブルに至るでしょう。

世界の成長は、今後、アメリカではなく中国が主導します。しかし、中国の成長はますます不安定化に向かいます。

China Daily 2009-08-06

Trouble with money as a reserve currency

By Andrew Sheng

(コメント) なぜユーロや円はドルに代わって国際通貨の地位に就かないのか? 人民元は、本当に、それを求めるのか? その国の経済が十分に強くなければ、国際通貨への需要は経済を弱めるのであって、歓迎することではない、と。


BBC, Wednesday, 29 July 2009

A large sucking sound

Stephanie Flanders

FT August 2 2009

How debt could turn into a runaway ghoul

By Tim Congdon

(コメント) 世界経済の落ち込みが心配で、政策担当者たちは真夜中に目が覚める、という緊張した状態がまだまだ続きます。危機が回避できたら、すみやかに財政赤字から抜け出したい、といずれの政府も願っています。危機回避以上に、「出口戦略」の国際協調は難しいでしょう。

もし主要諸国が一斉に財政支出を減らしたらどうなるか? 金融の量的緩和をやめ、金利を上昇させたらどうなるか? 通貨が増価し、イギリスや日本のような国では景気が悪化するでしょう。他方、もし財政赤字を減らせば、金融緩和を長期的に維持しやすいのです。

Tim Congdonは、イギリスの財政赤字を過去のケースと比較します。プライマリー・バランスにおける赤字と、累積債務、その金利。


FP Thu, 07/30/2009

Obama's China street-cred is Nixonian (but not what you think)

By Phil Levy

(コメント) 人民元の切り上げを議論もしなかったオバマは、アメリカの労働者を裏切ったのか? もしニクソンのように、オバマが根っからの保守派で、反共産主義の闘士であったら、たとえ米中戦略経済会議を開いて、中国の指導者たちをたたえても、アメリカの政治家はそれが外交的な駆け引きであることを理解しただろうし、つまらない非難をすることもなかっただろう、とPhil Levyは考えます。人民元の問題は、中国国内の失業率にかかわる重大な決定事項であって、アメリカが意見するべきではないのです。

他方、中国指導部にとって、オバマ政権が医療保険の拡大を目指して、そのせいで財政赤字が増大することは、ドル安を嫌う彼らの重大な関心事です。とはいえ、この問題がオバマ政権にとっての死活的な目標であることを認める政治的センスはあるのです。

YaleGlobal, 6 August 2009

US-China Duopoly Is a Pipedream

Christopher M. Clarke

(コメント) もし時代のあり方が、国家を分割し支配する力で決まるなら、中国とアメリカは協力して世界を支配できるでしょう。しかし、クリントン国務長官が述べたように、世界的な問題を解決する能力こそが重要なのです。それは単独でも、米中二国でも、容易なことではありません。むしろ、多くの国が参加した、多角的な協力関係の中で解決できるのです。


SPIEGEL ONLINE 07/30/2009

THE NEW COLONIALISM

Foreign Investors Snap Up African Farmland

By Horand Knaup and Juliane von Mittelstaedt

BBC 2009/08/05

Africa investment sparks land grab fear

By Katie Hunt

(コメント) 人々が豊かになって、肉食を増やし、自動車になり、バイオ燃料を利用し、都市化するために農地を潰し、地球環境を破壊し、他方で、貧困を増やしているとき、農地を獲得するための国際投資が「開放」され、「自由化」されつつあります。金融危機にもかかわらず、農地への投資は高収益を上げています。

もし外国人投資家や外国企業に耕地の一部を売却し、貸与してしまった国で、大規模な飢饉が起きた時、人々は暴動を起こさないのか? そのとき、農地の周りには高圧電流を流した防御フェンスが建てられるのでしょうか? ・・・非合法移民の流入を阻止するために軍事化したアメリカ・メキシコ国境やEUの地中海沿岸と似ています。

肥沃な耕地は、その供給が制限された投資対象として理想的です(そのように保守的な富裕層を説得できます)。「人間は食べなければ生きて行けない。」 たとえ今は貧しい農民が占拠し、あるいは政府がインフラを整備していなくても、十分な投資があれば、豊かな農産物を世界市場向けに輸出できるのです。国際的な投資ファンドが形成されます。

ロシアの投資会社がウクライナの耕地に投資し、ドイチェ・バンクとゴールドマンサックスは中国の養豚場と養鶏場、そして農地に投資します。農地は油田になりました。「食糧は新しい石油だ。Food is becoming the new oil.」 中国、日本、韓国、湾岸諸国のように、政府も積極的に海外の農地獲得に投資しています。

こうして最近の食糧危機は、第二の植民地獲得運動colonialismに火を付けました。ただし、前回と違って、農地を開発できない貧しい諸国が積極的に投資を求めていることです。エチオピアの首相は農地の荒廃を食い止める投資を渇望し、トルコの農業大臣は望むだけ取ってほしいと訴え、パキスタン政府はタリバンと戦うために、肥沃な土地で農耕を回復する投資をドバイで産油諸国に求めます。

国際投資は、農業の近代化や飢餓の解消に役立つでしょうか? あるいは、隔離と差別、さらなる貧困や排除が進むのでしょうか? たとえば、世界市場向けの農産物に特化する諸国は、自給ではなく、ますます食糧の輸入に依存します。あるいは、農地の急速な疲弊や環境基準の欠如が悪影響を広げます。

土地を売るべきではなく、契約耕作させるべきだ、と多くの専門家は考えます。技術と資本を提供し、労働力と食糧は現地の小農から購入するのです。これは伝統的な契約モデルであり、最近の国際投資が嫌うモデルです。今では、完全な支配、所有権、高収益、何より、治安と収穫の安全を望みます。すなわち、「国際投資家たちは弱い国家を望む」。

人口増加と国際的な無政府状態が続く限り、農地を獲得するための投資は問題を生じ続けるでしょう。


WP Thursday, July 30, 2009

Profits We Should Cheer

By Stephen L. Carter

NYT August 3, 2009

Rewarding Bad Actors

By PAUL KRUGMAN

(コメント) 利益を上げるのは良いことだ。・・・いや、悪いことだ。Stephen L. Carterは、皮肉をこめて『共産党宣言』を利用します。「アメリカを幽霊がさまよっている。利潤という幽霊が。・・・」

邪悪な企業が莫大な利潤をあげている、という妄想によって、アメリカ政治をゆがめている者たちを糾弾します。2006年にはエクソン・モービルが責められました。人々がほしがるものを売って利潤を上げるのだから、企業の利潤は祝福されるべきだ。企業は利潤から税金を支払うのだから、国家にとっても利潤は良いことだ。利潤は投資を促す誘因である。

利潤を非難するオバマ政権は間違っている。それは投資を損なうだろう。環境にやさしい自動車をつくらせるために利潤を犠牲にしたり、国民全体に医療保険を利用させるために適用できる病気を選択する公的機関を設けて利潤追求を妨げることに、この論説は反対します。

PAUL KRUGMANは、アメリカ国民の怒りを説明します。金融ビジネスは我々を不況に陥らせ、それにもかかわらず公的資金で救済され、さらに巨額の利潤を上げると自分たちの利益にしてしまったからです。怒らない方がどうかしている。

しかし、たとえバブル崩壊や不況がない時でも、金融ビジネスの高額報酬は、社会的に見て、価値のないものだった、とKRUGMANは考えます。たとえば、超高速の処理が可能なコンピューターを利用して、ゴールドマンサックスは1秒間に何回も取引します。一般の投資家にはできない速さで、利益を確実に得るのです。また、シティグループの石油など商品取引部門も巨額の利益をあげました。取引を指示するAndrew J. Hallは特別な情報を得ているようです。

どちらの金融機関も公的資金で救済されています。それ以上に、彼らの利益はアメリカにとって悪いことです。

投機には有益な目的があります。たとえば、一時的な需給の不一致によって価格が大幅に変動するのを防ぎます。しかし、一般に利用できない情報によって投機で利益を上げることは、「社会的な不利益」と「私的利益」とを結びつける行為です。超高速処理の取引による利益もそうです。金融資産はますます経済規模に対して増大しており、それが所得分配をますます不平等にします。

オバマ政権はウォール街の利益はアメリカにとって良いことだ、という前提で金融規制の法案に反対しました。しかし、それは間違いです。われわれは悪者に大儲けができる社会に住んでいます。彼らの途方もない利益は、我々を貧しくしているのです。

NYT August 3, 2009

Troubled Banks, Huge Bonuses

Aug. 4 (Bloomberg)

Banking Bonuses Are Bubble That Is Yet to Burst

Matthew Lynn

(コメント) ほとんどすべてのバブルが破裂しました。不動産、株式、商品、美術品。しかし、ひとつだけ破裂していないバブルが残っています。それが銀行部門の高報酬です。

少し前には議論が盛んでした。しかし、銀行改革の一環として制限する機会を逸したようです。


FT July 30 2009

Nordic lessons for rest of the world

SPIEGEL ONLINE 08/04/2009

A SHARE OF FUTURE PROFITS

German Employees Exchange Wage Cuts for Equity

By Markus Dettmer

(コメント) 平等な賃金。潤沢な福祉政策。高い生産性。北欧諸国(特に、ノルウェーやデンマーク)は経済危機を回避する高い能力を示してきました。諸外国はその経験から何を学ぶべきでしょうか?

逆説的なことに、平等な賃金と高率の課税による社会福祉政策は、競争力のない生産性の低い企業を撤退させる強い圧力になっている、とFTは考えます。そして、世界市場に依拠した高い生産性の輸出部門だけが生き残って行けるのです。同時に、労使双方の集団的な賃金決定が守られています。その場合、輸出部門の競争力を重視して、労働組合は賃金上昇を自制した、ということです。

このような北欧諸国の特徴は、他国が容易にまねできることではありません。また、北欧諸国でも、維持することが難しくなっています。むしろ南欧からもっと学ぶことがあるだろう、と。

Markus Dettmerは、ドイツにおける賃金抑制の労働協約を取り上げて考察しています。賃金抑制を受け入れて、それを将来の利潤として得るのです。金融危機からの倒産を回避し、競争力を得て、雇用を維持したいと願います。


FT July 30 2009

Ireland’s bad banks

FT July 31 2009

Iceland angry at IMF aid delay

(コメント) 金融危機後、アイルランドやアイスランド、ラトビア、などの銀行再建はどうなっているでしょうか? 危機の波及を防ぐ以上に、回復の条件は、銀行を内外で分割し、IMFの融資を受け、EUや近隣の大国による政治が影響します。

FT August 3 2009

Europe prepares for a Baltic blast

By Gideon Rachman

(コメント) 金融危機は不況と失業、さらに国際的な波及をもたらし、国際政治上の影響圏や領土分割にも及びます。リトアニアは2009年の第二四半期に年率でマイナス22.4%も経済が縮小しました。ラトビア、エストニアも同様と言います。

住宅価格は暴落し、銀行は融資を行わず、雇用は失われ、政府は支出を切り詰めています。IMF融資を受けて、それが緩和されるなら歓迎されるでしょうが、融資の条件は財政支出の削減であり、失業手当や年金の減額です。デフレの悪循環は止まりません。

EUがバルチック諸国のような経済危機の地域に財政支援できるなら、問題は解決できるでしょう。しかし、そのような財源はありません。安定化基金を設けて、債券を発行し、ECBが現金化する、という提案をドイツなどの加盟諸国が受け入れません。

そこで、IMFは切り下げも考えます。ラトビアが通貨価値を切り下げて、ドイツやロシアに輸出できれば、不況や失業を緩和できるでしょう。しかし、EUもラトビア政府も、切り下げに反対します。なぜなら、通貨危機が波及する。ユーロ建で借り入れている国民や企業・銀行が破産する。EUの中の二流国家になってしまう。・・・

そのような反対論は間違っているでしょう。このまま失業や不況を続けて、IMFやEUからの融資条件として緊縮や生活水準の悪化を国民に強いるなら、政治的な反動が起きるからです。それはまだ現れていませんが、政府は恐れています。

ユーロへの固定レート制が経済的安定や成長の条件であった時代は過ぎ去り、回復を阻む桎梏となっています。

SPIEGEL ONLINE 08/06/2009

TURBULENCE IN EASTERN EUROPE

'East' Doesn't Automatically Mean Crisis

By Reinhold Vetter

(コメント) 東欧やバルチック諸国を安定の砦にすることはできなかったが、それが危機の増幅器になる危険もない、とドイツのジャーナリストは考えます。実際、スロヴァキアやポーランドは緩やかな成長を遂げるでしょう。

問題は、東欧諸国が十分な財政基盤もないのに、融資に頼った拡大路線を続けたことです。危機の原因は国によって異なります。さらに、苦痛を伴う構造調整過程と、不安定な国内政治事情が、危機からの回復策を難しくしています。

ラトビア、ハンガリー、チェコ共和国、スロヴァキア、ポーランド、を比較します。ポピュリズムは真の解決を実現できない、と次第に理解されるだろう。国内に信頼される政党がない場合、政治不安と排外主義、攻撃的なナショナリズム、民族差別が高まります。しかし、Reinhold Vetterは、それが政治システムを変える力はない、と考えます。今のところ。


YaleGlobal, 30 July 2009

US Immigration Policy Likely to Boost Population

Joseph Chamie

The Guardian, Monday 3 August 2009

We must cap British citizenship

Frank Field

(コメント) 移民政策をめぐって、その政治的な、戦略的な分析が重視されるようになりました。

最適通貨圏は地理的な境界を問題にしますが、移民という形で、異なる政治経済システムが人口を制限するだけでなく、奪い合うことが起きるかもしれません。それは戦争による領土の分割や、共通通貨の利用よりも、もっと柔軟で、真実に近いでしょう。


WSJ JULY 30, 2009

The EU Steels Itself

China Daily 2009-08-03

Trade barriers no solution to crisis

By Wen Jia

The Guardian, Saturday 1 August 2009

Red China versus red states

Tim Fernholz

(コメント) 共和党は、貿易を文化の問題と考えます。中国やキューバ、イランとの貿易によって、アメリカはその文化を(相互に)変化させるからです。オバマは、国際社会の一員として、強い、繁栄する中国を歓迎します。そして、中国政府の新聞が保護主義を非難する論説を掲げています。


WP Friday, July 31, 2009 Pressing Pyongyang On Rights By Roberta Cohen

Asia Times Online, Aug 1, 2009 Pyongyang purges for a new era By Donald Kirk

BG August 2, 2009 Held hostage in North Korea By Jeff Jacoby, Globe Columnist

(コメント) クリントン元大統領の劇的なピョンヤン訪問の前に、変化の兆しはあったのか?

Roberta Cohenは、北朝鮮が指導者の健康問題と権力継承について困難な局面に入った今こそ、核に限定された6カ国協議の外交交渉を再考する機会である、と指摘していました。人権を加えた交渉で、しかも、北朝鮮の政治体制そのものが内部から崩壊し、難民が急増するリスクを抑えるのです。

たとえば、南北分断の結果、離散した家族を再開させ、経済的に支援し、政治犯を解放させ、亡命を認めることです。高等難民弁務官や民間団体が加わることで、支援をより確実に行えます。安そして、全保障と経済協力のための地域機関も設置できるでしょう。

二人の女性ジャーナリストを解放する、という要求は強くありました。

BBC 2009/08/04 North Korea pardons US reporters

BBC 2009/08/04 Clinton visits but will Pyongyang change? By Paul Reynolds

Bill Clinton rejoins the merry-go-round The Guardian, Tuesday 4 August 2009

(コメント) オバマがクリントン元大統領の北朝鮮訪問を認めたことは、支持者にとっても批判派にとっても、大きなギャンブルになるだろう。人質となっていたジャーナリストたちを連れ帰って、笑顔で手を振るクリントン氏は、数年前の小泉首相とそっくりです。

アメリカ外交の「メリー・ゴー・ラウンド」がまた始まった、というわけです。核施設を爆撃し、体制転換するか、あるいは、人道援助や経済援助を約束して懐柔し、国交回復するか?

Bill Clinton's new role Robert Farley The Guardian, Tuesday 4 August 2009

WSJ AUGUST 4, 2009 Mr. Clinton Goes to Pyongyang By GORDON C. CHANG

(コメント) ビル・クリントンは、いよいよ、オバマの外交政策に勝手な解釈を持ち込むのか? あるいは、オバマ外交の支持者に変わったのか?  1994年に、カーター元大統領が北朝鮮を訪問して、米朝交渉を開始した事情を再現しています。オバマ政権は、一定の成果を得たクリントン政権の経験と知識、人脈を、北朝鮮との交渉に利用できます。民主党の外交政策に一貫する「関与(包摂)政策」の流れが現れます。

GORDON C. CHANGは、核と記者の解放が同時に交渉されただろう、と考えます。そして、今回の成果は、これまでの6カ国協議の体制を否定するものです。たとえば、拉致問題に関する日本政府の強い要請は後回しにされました。

金正日は、一層多くの人質を取り、核兵器を増産する動機を得たわけです。

BBC 2009/08/06 Clinton's high drama Korean mission By Kim Ghattas

CSM August 05, 2009 Clinton 'rescue' in North Korea leaves Obama on the spot

LAT August 5, 2009 Bill Clinton's multi-pronged mission of mercy

Clinton's Unwise Trip to North Korea By John R. Bolton WP Tuesday, August 4, 2009

(コメント) クリントン元大統領とオバマ政権の外交政策を強く批判するJohn R. Boltonは、このジャーナリスト解放劇を最悪の外交政策と考えます。なぜなら、北朝鮮にとって二人のジャーナリストは将棋の駒にすぎないからです。北朝鮮の体制維持と核保有、それらを前提に、アメリカから安全保障の約束を得ることこそ、彼らの外交交渉の目的です。

クリントンの訪朝は、北朝鮮による国家テロリズムが勝利したことを示しています。アメリカ政府が、テロリストとは交渉しない、と繰り返し表明してきた原則を破って、アメリカ人が世界中で人質に取られる将来の可能性を高めました。そのたびに、クリントン氏は世界中の独裁者に哀願するのか?

1994年にカーター元大統領が訪朝し、外交政策としての根拠がなく、経済的にも利益にならない、交渉の枠組みを決めて帰国しました。それが北朝鮮の核開発を促したのです。強者としてのアメリカが、その利益を実現するために交渉することと、交渉それ自体を賛美して交渉することとは、まったく異なる、と。

FT August 5 2009 When Bill went to Pyongyang

The Times August 5, 2009 Reporters to be set free after Bill Clinton strikes deal with 'Dear Leader'

WSJ AUGUST 5, 2009 Paying Kim’s Price

The Times August 6, 2009 Mission to Pyongyang

Pressure Point WP Thursday, August 6, 2009

NYT August 6, 2009 Next Steps With North Korea

NYT August 6, 2009 Rethinking North Korea, With Sticks By NICHOLAS D. KRISTOF

(コメント) 北朝鮮は、オバマ政権が登場した機会をとらえることに失敗しました。オバマからの対話要求に積極的に呼応しなかったのです。その失敗を取り返すためにも、交渉姿勢を受け入れる口実、独裁者の方針転換を正当化する事件が必要だった、とアメリカ側は考えました。ジャーナリストたちの逮捕、裁判、投獄、解放はその条件として利用されました。

もしそうであれば、クリントン氏との話し合いは、将来の積極的な交渉と北の対応に示されるでしょう。今も、制裁を含む、核施設の解体と燃料の供給、について北朝鮮と明確に合意することだけが平和的な解決策なのです。

NICHOLAS D. KRISTOFは、このままでは北朝鮮がミャンマーやシリアに核兵器製造の技術を提供する、という核拡散に注目します。我々はもっと強力な警棒を持つ必要があります。あるいは、イラン政府が時間短縮のために、北朝鮮から核兵器をいくつか購入することもあり得ます。

FEER August 2009 Clinton’s Mission to Pyongyang by John Delury


July 31 (Bloomberg)

Debt at 200% of GDP Means Throw Those Bums Out

William Pesek

(コメント) 自民党が権力を失うのは喜ばしいことです。しかし、民主党に代わっても何が変わるのか、William Pesekにとって違いがわかりません。しかし、それでも世界第二の経済国家である日本の権力が、自民党から離れることを支持する理由が5つある、と指摘します。

1.国債の累積がGDPの200%に達する中で、自民党が同じような公共支出の奪い合いを演じ続けるのは不可能だ。自民党では、国際競争力も雇用も生み出さない。もちろん、麻生は景気対策を行い、成果を上げました。それこそ世界一の借金依存工業国家をつくった姿勢なのです。このまま続けることはできません。

2.日本銀行を政府から解放します。日銀は金利を引き上げ、円高になるでしょう。それは大幅に輸出に依存している経済にとって好ましくないことです。しかし、条件次第では、円高が日本経済への魅力を増し、輸出に依存せずに、外国からの投資を集めるでしょう。

3.官僚制による支配を抑制します。「天下り」を禁止します。それは政策についての国民に対する説明責任を強めるでしょう。投資の効率性を高め、腐敗・汚職を減らします。業界の利益を重視して、その救済にばかり公的資金を使う官僚の姿勢が変わります。

4.地球温暖化に対する取り組みを強めて、新しい環境ビジネスを誕生させます。日本にはすでに環境関連の技術や科学者、すぐれた蓄電池、などがあります。これらが結び付いて新しいビジネスを起こすでしょう。

5.日本の将来に向けた投資が増えます。自民党は、農民のような既得権を維持する政党、競争の中でトップを維持する大企業をもっぱら支援する政党です。民主党は、子育てや教育への補助金を増やします。中小企業に減税します。失業者の再教育・再訓練を助成します。それは日本を国際的に競争できる、生産性の高い、出生率の高い国にし、貧富の格差を小さくし、雇用を増やし、内需主導の景気回復を促します。

もしそれを実現するなら、多くの財源が必要です。無駄をなくして、既存の支出を転換することで、どこまでやれるのか? 日本政府は富をより効率的に、積極的に、利用しなければなりません。そのような政府に近付くには、まず自民党から権力を奪い去ることです。

The Japan Times: Saturday, Aug. 1, 2009

Tough times for politicians

By DAVID HOWELL

FT August 3 2009

A fiscal frailty

By Mure Dickie

(コメント) 日本の財政赤字を取り上げた論説です。日本は急速に高齢化し、しかも、人口が減少しています。すでに巨額の債務を負っている国が、このままでは、金融的な危機に至るでしょう。それは、アジアの指導的大国としても、世界の金融市場における役割としても、大きな影響を及ぼします。不況対策として財政赤字が増え、成長率は低く、平和時における債務として史上空前のGDP比200%に達するでしょう。

日本では、もはやどこでも子供の声を聞けなくなっています。老人の暮らしを担う若者や労働者の数が、1950年には10人で一人でしたが、2000年には3.6人で一人を扶養しなければならず、予測によれば、2025年に1.9人、2050年には1.2人にまで減ってしまいます。

The Guardian, Wednesday 5 August 2009

Courting controversy in Japan

David Murakami Wood

(コメント) 日本の陪審員裁判が取り上げられています。日本の裁判所は、自白に基づく告訴に対してハンコを押すだけだった、と批判しています。あるいは、その折衷的なスタイルや保守派の希望についても?


The Guardian, Friday 31 July 2009

A wind farm is not the answer

Paul Kingsnorth

WP Sunday, August 2, 2009

A Crude Reality About Energy Independence

By Kathleen Parker

(コメント) 風力発電はエネルギー危機や温暖化を解決するでしょうか? 中東地域への石油依存、軍事介入や安全保障の負担を解決するでしょうか? 環境保護論は目標を見失っている、とPaul Kingsnorthは批判します。それは石油を使わない産業社会であり、自然破壊である、と。

「どのような社会に住みたいのか? The question we should be asking is what kind of society we should live in.」 ・・・問題は技術でもなければ、炭素でもない。自然を資源とみなし、バブルを引き起こす社会。永久に成長し続けねばならないと信じる社会。このような社会を望む限り、問題はなくならない。

技術が問題ではないとしたら、社会の動き方を決める法律や制度でしょうか? アメリカ議会はthe American Clean Energy and Security Actを創りました。どうでしょうか?

The Observer, Sunday 2 August 2009

Do we want to shop or to be free? We'd better choose fast

Neal Lawson

WP Monday, August 3, 2009

Falling Behind On Green Tech

By John Doerr and Jeff Immelt

NYT August 3, 2009

Green Inc.Governments Can Promote Energy Efficiency

By KATE GALBRAITH

(コメント) アメリカは三重、そして四重の危機に苦しんでいる、とJohn Doerr and Jeff Immeltは考えます。すなわち、経済危機、気候変動危機、エネルギー安全保障危機、さらに、国際競争力危機です。これらを解決する答えとして、グリーン・テクノロジーの研究開発とエネルギー効率の改善、新興エコビジネスの形成を主張します。中国や日本も含めて、その競争は始まっています。

WSJ AUGUST 4, 2009

Global Warming and the Poor

By BRET STEPHENS

SPIEGEL ONLINE 08/06/2009

ETHICAL PROFITS

Green Investing Is Paying Off

By Mark Scott

China Daily 2009-08-06

Smart cities needed to save our planet

By Dennis Pamlin

(コメント) インドや中国は、国ごとではなく、一人当たりの温暖化ガスを規制するように求めています。そして、もし温暖化ガスの排出に関して規制国がインド製品に関税を課すなら、それは大規模な貧困層の生活破壊である、と批判しました。

中国は、スマートシティーに意欲的です。


The Guardian, Friday 31 July 2009

Truth and reconciliation for Iran

WP Tuesday, August 4, 2009

The Spectacle in Tehran

FT August 6 2009

Iran’s regime prevails – at the cost of its legitimacy

By David Gardner

(コメント) イランの政治的自由と民主化を求める欧米在住の知識人・反戦運動家たちが声明を出しました。しかも、イランの権利(特に、核の平和利用)を支持し、アメリカの中東地域への介入に反対する人々です。

かつてスターリニストのソ連がそうであったように、アフマディネジャドのイランも、正義を失った。


NYT July 31, 2009

Health Care Realities

By PAUL KRUGMAN

(コメント) 日本の裁判員制度もそうですが、アメリカの医療保険制度も、それが何であるか、現在どのような形で機能しており、改革によって何になるのか、国民は正しく理解できないのです。オバマの改革案は容易に支持されません。

PAUL KRUGMANは、医療サービスが保険によってしか供給できない、と主張します。そしてアメリカの保険会社が、保険をいかに運用しているか、すなわち、いかに保険請求する可能性のある人々を排除するか、説明します。その足りない部分を補っているのは、メディケアのような財政負担による支出なのです。しかし、これも雇用主によって間接的に支払われます。企業がそれを支払うのは、税金を免除される部分となるからです。

今の制度で満足している人と、若くて健康で職場に不自由していない人は、改革に関心がないでしょう。ただし、医療サービスがすでに多くの財政負担によって成り立っており、しかも不満足な形でしか国民に提供されていない、と説得します。

右派は、オバマが自由市場を社会主義的な破壊に導こうとしている、と批判します。しかし、政府の介入しない保険市場は機能しないのです。

NYT August 2, 2009 Curbing Runaway Health Inflation

FT August 2 2009 The Republican healthcare paradox By Clive Crook

FT August 2 2009 Prospects for US healthcare reform

CSM August 05, 2009 Why can't health insurance be more like auto insurance? By Zach Krajacic

(コメント) 医療保険制度の改革を求めるオバマの支持率が低下しています。国民は財政負担の増加を恐れています。


The Japan Times: Friday, July 31, 2009

Next word on intervention

By RAMESH THAKUR

(コメント) ルワンダ、バルカン、東チモール。1990年代の危機は国連による軍事介入に関する不満を強めてきました。国家主権を超えて、どのように人びとの生命を守るのか?  それは国連でthe "responsibility to protect"(R2P)と呼ばれる報告書となり、2005年に全会一致で承認されました。しかし、それに反対する声も多くあります。

国連総会の議長であったニカラグアのMiguel D'Escoto Brockmannは、「再偽装された植民地主義」と呼びました。他方、Ed Luckは「ユニラテラリズム、軍事的冒険主義、人道的介入を軍事的に行う偏向、を抑える」ためにR2Pを支持しました。問題は、いつ介入するか? なぜ介入するか? どのように介入するか? 誰によって介入を実行するか? です。

国連による軍事介入は、多角的な合意によって、介入の目的や方法についてのルールを事前に示し、国際秩序の一部として、貧しい、弱い人びと、脆弱な諸国が守られる。


WP Sunday, August 2, 2009

Nouvelle Regimes In a Few Easy Steps

By Moisés Naím

(コメント) グローバルな権力の変容について、Naimの鋭利で皮肉な考察。

世界には以前のようなクーデタが少なくなった。しかし、独裁者をもたらす新しい権力掌握術が開発されている。

新しい権力術は、軍の中佐たちより弁護士たちを利用する。大統領府への戦車や軍事攻撃より、国民投票や憲法改正に訴える。その結果は同じだ。独裁者は権力を掌握し、見せかけの民主主義で飾って、長期にわたり権力を独占する。

世界でありふれた料理だが、地方によって香辛料が異なる。ジンバブエ、ロシア、イラン、ラテンアメリカにも。・・・では、権力の新しい調理法を紹介しよう。

材料。

・・・貧しい民を数百万人。不平等はたっぷり。想像を絶する貧困と計り知れない富裕が並置されているのがポイントです。

・・・不正義、社会的排除、人種差別。腐敗・汚職の蔓延。政治・経済エリートたちの慢心。「われわれは秩序を築いている。ここでは何も起きない。」

・・・信用されていない諸政党。無気力な中産階級。民主主義や政治、政治家への幻滅。

・・・議会、裁判所、軍隊は、長年の怠慢、非効率、腐敗によって弱体化している。新聞社・放送局は経済的利益や選挙のために利用されている。

・・・外国の超大国は、他の優先課題によって中立化され、あるいは関心を持たない。あるいは、あまりにも多くの国際緊急事態に忙殺されている。

・・・国際社会は、他国の政治支配がどうなっているか、関心を持たない。

・・・外部の敵が国家の脅威として強調される。たとえば、CIAの介入だ、と。隣国、肌の色が異なる移民、ユダヤ人、モサド。

・・・体制に逆らう人々の頭を吹き飛ばす、あまりにも武装し、訓練された「民兵」の集団。それほど多くなくてもよい。殴打し、暗殺し、誘拐する。暴力行為はなんでもやる。

調理方法。・・・

1.社会の最貧困層をよくかきまぜます。・・・容赦ない分解促進運動。怨嗟や憎悪、経済的おポピュリズムを泡立たせる。調和のための潤滑油を除去して、社会対立が沸騰させる。

2.民主的な選挙で権力を握ります。・・・このとき、汚職や、対立候補の信用失墜、有権者を買収するチームが役立つ。そして、自分は腐敗追放を叫び、富裕層が奪われた富を回復する、と主張する。

3.最初に選挙で勝てば、後は必要ありません。・・・いずれにせよ、選挙で負けることはない。民主主義など、権力者の皿に付いた飾りだ。

4.大統領への忠誠を求めて、軍隊のトップは交代させます。・・・忠誠には物質的な利益を与え、熱心でない者は処罰する。すべての者が、いかなるときも、スパイによって監視される。

5.裁判官と判事にも、同じようにします。

6.国民投票によって憲法を改正する運動を始めます。・・・公務員には支持を強制し、反対派には棄権を呼びかける。彼らの反対は無意味である、と思わせる。

7.新しい憲法では、すべての市民に、特に最貧困層に、何でも多くの権利を与えます。・・・他方、職責や義務は最小化する。貧困や不平等はなくすと約束する。しかし、条文は複雑で、権力の分割はあいまいだ。大統領に権限が集中し、何度でも再選される。

8.反対派を誹謗し、最小化し、協力させて、買収し、弾圧します。

9.メディアを支配します。・・・些細なことで政府を批判することは許す。言論の自由がない、と批判されないように。

10.第3段階へ戻って、繰り返します。

・・・さあ、召し上がれ!


FT August 2 2009 A harder power By Stefan Wagstyl and Isabel Gorst

CSM August 03, 2009 Georgia's best defense against Russia: democracy

The Guardian, Thursday 6 August 2009 Stormy outlook over the Black Sea Simon Tisdall

WP Thursday, August 6, 2009 Georgia, On the Rebound By Mikheil Saakashvili

IHT August 6, 2009 Georgia, One Year Later By MARK LENZI and LINCOLN MITCHELL

FT August 6 2009

The west must not abandon Georgia again

By Ronald Asmus

FT August 6 2009

Smelt down

By Stefan Wagstyl

The Times August 7, 2009

Aftermath of War

(コメント) ロシアの独裁者プーチンが権力調理法を応用した実例は、領土の分割、隣国への政治介入として、グルジアで示されました。

1年前の金曜日に、ロシアとグルジアは戦争になった、とRonald Asmusは書き出します。それは5日間続いただけで、死傷者もわずかな、小さな戦争でした。しかし、それはミロシェビッチがバルカン半島で民族洗浄を行った1990年代以来、最初の、ヨーロッパにおける安全保障の危機でした。また、ソ連がアフガニスタンに侵攻して以来、最初のモスクワによる隣国への侵攻でした。

その戦争は、武力によって国境を変えることはできないというヨーロッパの希望を破壊し、過去のものとなったはずの新帝国政策が再生することを示したのです。

この戦争は、西側に加わろうとしたグルジアの指導者、サーカシビリを懲罰するための戦争でした。他方、サーカシビリは自らの政治生命を維持するために、西側の警告を無視して戦争を始めました。また西側も、政策の不統一と失敗によって戦争を防げませんでした。すなわち、コソボの独立を承認する過程や、ウクライナとグルジアのNATO加盟を扱う過程で混乱が生じたことです。われわれは、掠奪的な大国の行動から小国を守る、というヨーロッパの安全保障、その原則と規範を支持しなかった。そのシステムは昨年の8月に崩壊した、と。

われわれは原則を放棄したのか? ロシアの望む影響圏を認めるのか? ヨーロッパのデモクラティック・ピースを新しい解釈で再建するのか? サーカシビリもプーチンも主張を変えておらず、小さな戦争は終わっていません。

Ronald Asmusは、二つの原則を示します。1.西側は団結すること。ロシアのこれ以上のいかなる侵攻も、西側全体とロシアの関係を破壊すると合意する。2.グルジアは二つの領土回復にだけでなく、国内の民主化と改革に取り組むこと。グルジアが政治的にも道義的にも優れた姿勢を示し、外国からの資本を引き付けることで、西側はグルジアを擁護する姿勢を固め、二つの領土が平和的に回復できる道を開く。


FT August 4 2009

Who will answer the EU phone?

(コメント) リスボン条約の修正が承認されても、キッシンジャーの問いに答えるのは、EUで3人いることになる。


The Japan Times: Tuesday, Aug. 4, 2009

Drawing down the nuclear stock

By MICHAEL RICHARDSON

The Japan Times: Thursday, Aug. 6, 2009

My plan to achieve nuclear disarmament

By BAN KI MOON

The Japan Times: Thursday, Aug. 6, 2009

Purpose of remembering

By ERIC FREED

LAT August 6, 2009

Iran's nuclear aspirations threaten the world

By Dore Gold

(コメント) 86日、広島原爆の日に、核廃絶のアイデアが国際社会を飛び交う、という情勢ではありません。冷戦が終わっても、大国の軍事力と核の支配は変わりません。もちろん、わずかなものでも前進があるでしょう。

たとえばグルジアでどれほど激しく対立しようとも、アメリカとロシアは核兵器の保有を減らすために合意したことを守り、核兵器から原発燃料へと転換するメカニズムを維持しなければなりません。テロへの警戒、原発の普及とともに、核物質の国際供給監視体制が整備されています。

播基文国連事務総長は、"WMD — We Must Disarm!" campaign, the International Day of Peace (Sept. 21), "Global Zero"を唱えています。NPT(核拡散防止条約)を基礎に、安全保障理事会は非核国の防衛を強化し、非核地域の国際協定を拡大し、核物質の管理を強化し、核保有国の非核化に向けた取り組みについて情報を公開させ、国際監視する。大量破壊兵器やミサイル、人工衛星など、核兵器を補い、それに代わる軍事力にも注意する。

しかし、ERIC FREEDは、何のために思い出すのか? を考え、広島の原爆記念館、平和ミュージアムについて書いています。多くのアメリカ兵の命を救った原爆投下は正しかった、と信じていた母親が、平和ミュージアムを訪れて一緒に展示物を見て歩いた後、「犠牲者が安らかに眠れるように。この失敗を繰り返さないように。」という意味の言葉を彼に述べたそうです。

イスラエルの国連大使を務めたDore Goldが、イランの核武装について書いています。もちろん、核兵器は国際政治の条件として必要とされ、非難されます。


FT August 5 2009

How to rebuild a shamed subject

By Robert Skidelsky

(コメント) エリザベス女王は尋ねたそうです。“Why did no one see the crisis coming?”

一つの答えは、経済学は自然科学と同じような科学である、という間違った宣伝を信じてしまったから、女王が間違った質問をした、というわけです。株価はいつも正しい、と主張する、効率的市場仮説は、多くのすぐれた人々を間違った判断や行動に導きました。マクロ経済学は信用を失いました。シカゴ学派が主張してきたように、政府は経済から取り除かれました。景気刺激策は必ず失敗する、むしろ事態を悪化させる。不況は、結局、最も優れた調整過程である、と。

こうした新しい古典派は、人間の行動を合理的であると仮定して、経済学の厳密な数学化を可能にしました。ロボットたちが関係する機械的な世界を想像することによって、経済学は完全な、予測可能な、科学となったのです。・・・しかし、ニュートン力学が人間の行動を説明できる、などと誰が考えるでしょうか?

経済学はもっと他の社会科学と協力するべきでした。大学では、基礎課程で、ミクロ経済学とマクロ経済学を教えるだけでなく、経済史、政治史、経済思想史、道徳・政治哲学、社会学をもっと学ぶべきです。数学の要素は大幅に減るでしょう。

経済学教育が社会にもたらす有益さとは、その数学的な能力だけでなく、哲学的・政治的な素養を反映できることに多くあるのです。

The Japan Times: Thursday, Aug. 6, 2009

Finance lessons still not learned one year on

By KENNETH ROGOFF

(コメント) リーマンブラザーズの倒産以後、数兆ドルの公的資金が失われた。世界の政策関係者は、正しい教訓を学び取っただろうか?

リーマンブラザーズを倒産させたのは間違いだった、この緊密に結びついた金融市場においては金融機関を倒産させてはならない、というのが合意でしょうか?  KENNETH ROGOFFはそれを批判します。救済しても不均衡は残り、その拡大はいずれ終わる。救済だけでは解決できない、と。

むしろ問題は、倒産させたことによる影響を吸収できなかったことです。住宅市場は崩壊し、信用膨張も逆転しました。それは予想できたことですが、金融システムには準備がなかったのです。米中の不均衡も手がつけられていません。デリバティブの処理について、会計原則や法律の解釈を変える必要があったでしょう。金融システムの規制やガバナンスの全体を見直すべきです。

危機の処理策は不十分です。セーフティー・ネットがあっても、それは短期的に効果があるだけで、結局、欧米で見られるように、政府の債務が急増しています。アジアの回復は自国の信用市場を拡大・深化に依存します。いずれにせよ、欧米諸国は増税か、インフレか、債務不履行を選択するしかありません。そして、新しいガバナンスを築くのです。

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The Economist July 25th 2009

War and peace through the bravest eyes

(コメント) チェチェンの首都、グロズヌイにとどまって、人権を無視した破壊行為を糾弾し、伝えてきたNatalia Estemirovaが誘拐され、暗殺された、という冒頭の記事を読んでください。彼女は、1959年、チェチェン人の父とロシア人の母の間に生まれました。独立派に共感せず、ロシア軍と政府の暴力にも反対しました。

「外国の空の下でなく

 外国の保護に守られてでもなく

 私はこうしたすべてのことを民衆とともに分かち合った。

 不幸が私たちを打ちのめした、この場所で。」

2004年の4月、彼女は山間の小さな村、Rigakhoiにたどりつき、ロシア軍に爆撃された農家を見ます。・・・「彼らはそれが家族の住宅でしかないと知っていました。物干しには子どもたちのオムツが並んでぶら下げてありました。羊がさまよっていました。家の中には、ひとりの女性と5人の子供がいました。爆撃が始まったとき、彼女は子供たちを自分の周りに集めたのです。そのような状態で発見されたのです。彼女の両手は、子供たちを守るように広げられたまま。」

先週も、仲間たちと一緒に彼女がアパートに戻ると、その時の写真を見ました。・・・「この戦争において真の英雄とは、民族を救う重荷を引き受けた女性たち、断頭台から男たちを引き取った女性たち、彼女たちを強姦したり殺そうとしたりしないロシア兵に対して、パンとミルクを与えた女性たちである。」


The Economist July 25th 2009

Waking from its sleep

Responsibility to protect: An idea whose time has come – and gone?

Radio propaganda: Crackles of hatred

(コメント) イスラム圏において、民主主義や選挙、市民権、市場や資本主義は、歴史的になじまないのでしょうか? 宗教や文化によって阻まれるのでしょうか?  The Economistは、そうではない、と考えます。それは独裁者や特権層が言っているだけで、機会さえあれば、人びとは敬虔なイスラム教徒であっても、投票によって政府を交代させ、市場において利潤を追求するでしょう。トルコやインドネシアがそうであるように。いずれにせよ、急速な人口増加が、伝統的な支配構造を掘り崩す、と。

国連は虐殺を止める責務を認めないのか? 虐殺宣伝ラジオ。


The Economist July 25th 2009

Rebalancing global growth: A long way to go

Rebalancing the world economy: America – Dropping the shopping

Iceland and the European Union: All things to Althingi

Iceland’s banking crisis: Pelt tightening

World trade: Unpredictable tides

Economics focus: Great barrier grief

(コメント) 成長を回復するまでにしなければならないことは多くあります。世界の不均衡と、アメリカの不均衡。どちらも簡単には是正されません。また、アイスランドのEU加盟問題と、銀行部門の再建問題。後者の説明は、私がインタビューしたBaldurssonの意見です。

世界貿易の急激な縮小は、世界的な供給ラインにおける予防的な在庫調整によるものか、あるいは、通商政策の保護主義化を示すものか? さらに、1930年代の世界不況を悪化させたのは、アメリカのスムート=ホーレイ関税法か、イギリスの金本位制離脱と切下げであるか? Eichengreen Irwinの論説は、イギリスの金本位制離脱をより重視します。なぜなら、これに対してイギリスの貿易相手国は一斉に金本位制を離脱し、通貨価値を切り下げました。ところが、ハイパーインフレーションの記憶が強かったドイツとオーストリア、また、金融センターの地位にこだわったフランスやスイスなどの「金ブロック」諸国は、金本位制を維持し、そのデフレ的な影響と輸入の急増に対して、保護主義に訴えたからです。