IPEの果樹園2008

今週のReview

8/11-8/16

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

ディーン・アチソン、 コーデル・ハル、 自由化交渉、 ダグラス・マッカーサー、 北京オリンピック、 中国の改革、 所得政策の復活、 日本1、2、3、 欧米の地政学、 ポールソンとスティグリッツ

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor, WSJWall Street Journal Asia


Aug. 1 (Bloomberg)

Big Mac Index Shows Asian Economies Out of Whack

William Pesek

(コメント) ビッグ・マックによる購買力平価でみると、アジアの諸通貨は過小に評価されています。そのせいで、世界の原油や食糧価格が上昇し始めると、もっともインフレの被害を被る地域になりそうです。それでは、通貨を増価させればよいのでしょうか?

アジア通貨危機のような、通貨価値の過大評価が資本逃避をもたらす心配はないのです。しかし、この論説は、為替市場における慢性的なアジア通貨の過小評価が、容易に逆転できないような市場心理を形成してしまった、と警告しているようです。


NYT August 1, 2008

Missing Dean Acheson

By DAVID BROOKS

(コメント) ベルリンの壁が崩壊して18年がたつのに、今も、テロリズムを抑える国際的な制度は存在しません。かつて、第二次世界大戦が終わるころに国際制度が設立できたのは、少数の者に権力が集中していたからだ、とBROOKS考えます。国際政治においても、アメリカ国内政治においても、ディーン・アチソンがその代表です。しかし、権力が分散し、多極化した世界では、誰も有効に問題を処理できないでしょう。グローバルな硬化症です。IMFも、国連安保理も、ドーハ・ラウンドも、機能しないように。

この説は、サミットについて、ピー子が述べたものでした。BROOKSは、それに代わるものとしては、民主主義の同盟しかない、と考えます。これは、The Economistが明確に反対したものです。ロシアがグルジアと戦争をはじめ、中国のオリンピック競技場では、アメリカ国歌や日本国家(君が代?)を流すとき、どれも納得できません。


NYT August 1, 2008

Harvesting Money in a Hungry World

By VICTOR DAVIS HANSON

(コメント) 豊かな国は食糧を射自給するために莫大な補助金を支払うことができます。しかし、貧しい国にはできません。自由貿易は貧しい国の農業の多くを消滅させ、価格高騰になれば、多くの人間から食べ物を消滅させるだろう、とわかったとき、ドーハ・ラウンドは終わったのです。

FT August 5 2008

Only free trade can guarantee food security

By Christopher Haskins

(コメント) Uボートによる海上封鎖による食糧不足ではなく、世界価格の高騰に対して「食糧安全保障」を主張するのは間違いだ、とHaskins考えます。

今回の危機には、価格を上昇させて、技術革新や農地の拡大を促す方が良いのです。イギリスの穀物法撤廃、EUの農業保護を指摘し、安全保障のためには自由な価格を求めます。


WSJ August 1, 2008

Hank Paulson's Fannie Gamble

By LAWRENCE B. LINDSEY

(コメント) ファニーメイとフレディーマックを救済する法案は、将来、住宅危機を繰り返すだけである。この法案は、政府期英金融機関に関係する人々が利益を確保し続けるために、また、それによって地位を温存できる政治家のために、成立した。

もしこれがほかの国であれば、国債価格は暴落し、資本逃避と通貨危機に見舞われたでしょう。アメリカだからできることです。今は、まだ。


NYT August 3, 2008

Shipping Costs Start to Crimp Globalization

By LARRY ROHTER

(コメント) 輸送コストが上昇すれば、グローバリゼーション、特に、グローバル・サプライ・チェーンは崩壊します。政治イデオロギーや関税はなくなっても、距離を消滅させることはできません。だから、輸送やエネルギーのインフラに投資するわけです。安価な石油が失われれば、それらの多くが無駄になるでしょう。

ようやく、メイド・イン・チャイナやインドへのアウトソーシングという呪縛から逃れられるのでしょうか? あるいは、彼らを中心に地域貿易圏が形成され、欧米や日本の高コスト地域を完全に衰退させる?


NYT August 2, 2008

The Next Step for World Trade

WSJ August 2, 2008

Democrats Once Did Free Trade

By DOUGLAS A. IRWIN and AMITY SHLAES

CSM August 4, 2008

Can America still lead?

By the Monitor Editorial Board

SPIEGEL ONLINE 08/05/2008

The Fragmented Future of World Trade

By Alexander Neubacher

(コメント) WTOが単なる自由貿易の交渉機関ではなく、世界秩序の核心を担っていることは予感されています。NYTは、国家に規律を与えるようにWTOを強化するべきだ、と考えます。強化されたWTOは、グローバリゼーションを管理する国際ルールを形成し、地球温暖化を抑制する仕組みを実行し、世界権力の配分に登場した新興諸国の位置を調整します。

あるいは、蘇ってほしいのは、アチソンではなくコーデル・ハルCordell Hullでしょうか? 第一次大戦が繰り返されることを防ぐために、春は世界貿易の自由化によって利益の共有と繁栄とを実現しようとしました。議会は反対していましたが、大統領に貿易の交渉権を認める、互恵貿易法を制定しました。

ハルの考えが正しかったことは、ドイツや日本の例が示しています。DOUGLAS A. IRWINらは、歴史的に見て、自由貿易の実現はいつも政治的に難しいものであったし、20年を要したこともあるから、ドーハ・ラウンドの失敗は一時的な後退に過ぎない、と考えます。

いくらオバマがヨーロッパで世界市民を主張しても、そのころドーハ・ラウンドは、世界の経済管理や政治秩序をめぐって分裂し、解体してしまいました。特に、食糧の貿易に関して、欧米やWTOと中国・インドの考え方が違うのです。問題は、アメリカ市場に参加することが圧倒的な意味を持たなくなってしまったことです。


CSM August 4, 2008

The U.N. can end these wars

By Helena Cobban

(コメント) あるいはマッカーサー将軍Gen. Douglas MacArthurでしょうか? 正当性を示して、武器を所持し、自国を守るため戦闘する気概を有し、イラクとアフガニスタンで任務を完了できるのは砂漠の天使たちうだ。

・・・あるいは、・・・原子爆弾?


The Guardian, Sunday August 3 2008

Behind the scenes in Beijing

Catherine Sampson

The Observer, Sunday August 3 2008

Time to stop criticising China - we've already come so far

Lijia Zhang

WP Sunday, August 3, 2008

Calling China's Human Rights Bluff

By Jim Hoagland

NYT August 3, 2008

The XY Games

By JENNIFER FINNEY BOYLAN

FT August 3 2008

A highly political Olympic games

(コメント) たとえば、中国に世界最大の貧富の格差があるとしても、それを責められるでしょうか? より豊かになる者がふえたことによって貧富の差は強められたはずです。もちろん、汚職や腐敗、環境破壊によって生じる格差は、積極的に批判を受けて改善するべきですが、豊かさを享受し始めた中国の都市に、農村部の責任をすべて負わせることは難しいでしょう。

他方、個人の自由や民主主義、表現や報道の自由が抑圧されていることは、豊かさを独り占めする危険を高めるでしょう。

オリンピックでは、世界記録の争いや、金メダルのために、薬物や性転換が繰り返されてきました。しかし、論説は、男や女を分けることの難しさを指摘します。

LAT August 4, 2008

Great expectations

(コメント) 7年前、2008年のオリンピックを北京で開催することを決めた際には、希望があった。オリンピックによって中国の社会が開放され、人権を尊重するようになるだろう、という希望である。それは1970年代末の改革開放に続く、次の重要なステップだった。・・・

しかし、宗教結社the Falun Gongへの弾圧など、中国における反体制派への激しい攻撃は終わりませんでした。さらに中国政府はインターネットを規制し、ダルフールの紛争を非難されているスーダン政府を支援し、チベットの弾圧にも踏み込んだのです。

1936年のベルリン・オリンピックはヒトラーのプロパガンダになり、1980年のモスクワ・オリンピックはアメリカによるボイコットで損なわれ、1988年のソウル・オリンピックは民主化を促したと言われます。北京・オリンピックはどの先例に従うのか?

WP Monday, August 4, 2008

What Bush Should Ask for in Beijing

By Sasha Gong

NYT August 4, 2008

Beijing Under Wraps

By JEN LIN-LIU

CSM August 5, 2008 edition

An Olympic lift to U.S.-China relations

By Cheng Li and Frank Wu

NYT August 6, 2008

China Gold Rush

By MATTHEW FORNEY

The Japan Times: Wednesday, Aug. 6, 2008

Triumph of the totalitarian will in Beijing

By NINA L. KHRUSHCHEVA

(コメント) 中国がインターネットやメディアの世界に築く21世紀の万里の長城は、極端な愛国心と排外主義の温床になるかもしれません。インターネット、ケーブル・テレビ、携帯電話の創り出す孤立した群衆をSasha Gongは心配します。

近代的な建物の群れに、近代的なホテルが建ち、その一室でインターネットに自由に接続できる国際オリンピック委員会のメンバーにとっては、クレージーなタクシー運転手以外、北京はニュージーランドやカナダの都市と何も変わりません。

しかし、現実の北京はそうではないし、現実の中国は全く異なります。政府にとって望ましくないものは、思想であれ、乞食であれ、すべて掃除してしまいました。外国人へのビザも規制して、どんどん北京から追い出しました。オリンピックの北京は、ラップして、電子レンジで解凍しただけの、近代風都市景観です。

あるいは、中国の変化を強調する論説もあります。オリンピック競技を通じて、中国は近代世界に仲間入りするのでしょうか? ニクソン大統領が万里の長城を訪問してから30年がたったのです。イデオロギーで対抗したソ連と違って、中国は市場競争に参加して対抗しました。オリンピックは、アメリカと中国との心理的な距離を急速に縮めるかもしれません。

アメリカと金メダルの数を競うのは、かつてのソ連と同じです。しかし、ソ連と違って、中国は至る所を資本主義化しました。その結果、中国は市場においてはアダム・スミスを信奉し、競技場においてはレーニンを信奉するのです。スポーツを介して、社会・政治システムが競争します。

Asia Times Online, Aug 7, 2008

Olympics mark China's second coming

By Muhammad Cohen

NYT August 7, 2008

China Communists, Resilient in Face of Change

By JIM YARDLEY

(コメント) 中国が国際舞台に登場したのは、1989年の天安門事件であり、1997年の香港返還よりもアジア通貨危機でした。そして、北京オリンピックは、こうしたマイナスの事件ではなく、プラスのイメージを高揚させます。かつて香港を訪問した際、オルブライト国務長官は述べたそうです。香港住民に対して、北京政府は約束を守らなければならない。"The world will be watching."

中国社会が香港の水準に追い付くまで、香港の住民には自由が守られるはずでした。The Basic Law hammered out between Britain and China promised 50 years with Hong Kong's "way of life" unchanged; at the end of those 50 years, we believed China would have become much more like Hong Kong.

同時に、中国の新しい富裕層が享受する経済的な自由は、次第に、政治的な自由を拡大するはずだ、と考えたのです。Muhammad Cohenは、その後のアメリカと中国の関係を描きます。いつでも互いに自国の利益を中心に国際的な舞台を動かしました。違うのは、1997年に比べて、2008年の中国が世界の供給ラインを動かしていることです。

JIM YARDLEYが描く中国共産党の権力維持を読むと、自民党のことを考えてしまいます。いずれの国にもあるのでしょうか? 権力を維持・操作するための装置でしかない政党です。富裕層、起業家、学者、学生などを、共産党に取り込みました。彼らは改革であれ、愛国であれ、自分たちが権力を維持できるためなら、何でも利用します。

問題は、急激な経済構造の変化、社会制度の改革を進める上で、彼らの対応が十分に効果的か、ということです。民間部門の成長にもかかわらず、重要な分野は共産党が支配したままです。既得権や権力に依拠する者の傲慢さ、過去の隠蔽、汚職・腐敗、イデオロギー的なゆがみを、彼ら自身が本当に改めるのか? もちろん、そうとは限りません。だから、中国であれ、メキシコであれ、日本であれ、民主的・競争的な政党システムが求められるのです。

記事は、共産党に代わる政党が現れるより、社会の変化を促す要因としてインターネットが登場したことに注目します。オリンピックの間、民衆の意思は愛国的であり、中国と政府と共産党とは同じものです。その後は、まったく違うでしょう。

The Guardian, Thursday August 7 2008

Games without the politics

Khaled Diab

SPIEGEL ONLINE 08/07/2008

'The Olympics Have Destroyed Our Lives'

By Annette Langer

BG August 7, 2008

China's political Games

WSJ August 7, 2008

Don't Forget About China's Dissidents

By ELLEN BORK

FEER Aug. 7, 2008

Will the Olympics Change China?

by Daniel C. Lynch

(コメント) 北京大会の開幕式や施設を見れば、オリンピックは一国が開催する行事として、もはや行き詰まったように思います。商業的にも、政治的にも、利用されない真のオリンピックを望むなら、それは中立的な土地に恒久的な施設として運営されるべきでしょう。あるいは、大国の合意に依拠して、安定した小国が、国際基金で開催することになるでしょう。あるいは、地域の近隣諸国が連合を組んで企画、入札するわけです。

Annette Langerにとって、オリンピックは急激な、時には破壊的な、中国社会の変貌を示しています。しかし北京オリンピックのスローガンは、"One World, One Dream"です。この複雑で、抑圧に満ちた現実を前に、あまりにも空疎なスローガンだ、と多くの人は感じるでしょう。・・・他方、本当のこのスローガンを信じるなら、どれほどの改革や急激な社会変化を要求しなければならないか。


FT August 3 2008

Only luck can save America’s economy

By Clive Crook

WP Monday, August 4, 2008

Housing Collapse Ahead?

By Charles W. Calomiris, Stanley D. Longhofer and William Miles

NYT August 4, 2008

A Slow-Mo Meltdown

By PAUL KRUGMAN

Asia Times Online, Aug 6, 2008

Henry Paulson has lost control

By F William Engdahl

(コメント) アメリカ経済は、金融緩和と景気刺激策によって不況を回避するでしょうか? あるいは、住宅市場の下落が続き、金融機関の倒産が繰り返されて、本格的な不況に入るのでしょうか? そのとき、アメリカの対外債務や金利、国際資本移動は、どのような影響を受けるでしょうか? 新興市場は、アメリカや日本、ヨーロッパの不況から独立した景気回復を遂げるでしょうか? 概ね、このようなことが論争になっています。

そして経済学者は、不況は来るだろうが、政府としては何もできない、ということを説明するだけなのです。


FT August 3 2008

China needs proof of democracy’s advantage

By Arthur Kroeber

Aug. 4 (Bloomberg)

China's Inflation Is Harder to Control Than Web

William Pesek

WP Monday, August 4, 2008

Beyond China-Bashing

Fareed Zakaria

FT August 4 2008

China’s repression of civil society will haunt it

By Minxin Pei

(コメント) 中国の改革は、権力者が直接的な介入より社会秩序を安定化するより、民主主義の方が望ましい、と中産階級が確信しなければ実現しません。中国には、すでに中産階級が登場しつつあります。そして、歴史上、民主主義が求められたのは、それにより、権力が安定的に継承され、公共財の配分が公平に行われ、対立する利益集団の妥協が形成され、しかも、徴収された税金の使い道について説明する責任がある、という声が強まったときでした。

民主主義を中国に要求する必要はないのです。中国自身が、国内の社会変化の結果として、民主主義を必要とするでしょう。

William Pesekは、むしろ、中国が市場改革よりも警察国家の古い性格を強めていることを心配します。人民元の漸進的な増価も逆転しました。中国に流入する資本移動が人民元の増価を利用していることに対抗したのかもしれませんが、逆に、金利を下げるという本来の対応策が利用できない方が問題です。

人民元が増価せず、金利が下がり、融資が増えれば、中国の成長が加速します。しかし、それではインフレも加速します。むしろBrad Setserは、人民元の増価により石油価格の上昇圧力を和らげ、輸出増や、貿易黒字による金融緩和を抑える方が望ましい、と考えます。中国は、石油輸入国の中で、唯一、黒字を維持している国です。

産油諸国のように、油田に依拠して経済運営するような姿勢ではなく、中国政府は人民元をさらに増価させて、経済政策の自律性や企業の競争力を世界市場において試されるような条件に向かうべきだ、と主張しています。

アメリカ政治では、いつでも、左右からの中国叩きが起きる情勢です。しかし、Fareed Zakariaは、新興諸国を本格的に世界秩序へ包摂するよう求めています。貿易でも、エネルギーでも、環境規制でも、新興諸国に新しいルールを押し付けるのではなく、彼らにルールを作らせるべきです。そうすれば、彼ら自身が「ただ乗り」したいとは言えないのです。

経済的なグローバリゼーション、政治的なナショナリズム、という組み合わせが、アメリカでも、中国でも、EUでも、ロシアでも、日本でも進みます。それは19世紀において世界戦争をもたらした道です。

Minxin Peiは、北京オリンピックに示された美しさは中国国家のパワーを示すものである、と主張します。政府はそのパワーによって、街を清掃し、建物を塗り替え、街路を花で埋め尽くしました。しかし、市民たちの生活は見えません。

活発な経済的繁栄が市民の積極的な社会・政治参加やNGOsをもたらすはずですが、中国の権力システムはそれを認めません。しかし、あまりにも市民社会の声を抑圧した結果、政府は自分たちが社会不満の唯一の標的であることを恐れるにいたるはずです。

WSJ August 5, 2008

Downshifting China's Economy

By SAM BAKER

FT August 5 2008

The lost cause of China’s Uighurs

WSJ August 6, 2008

China's Democratic Acceleration

By BRUCE GILLEY

FT August 7 2008

Privatisation would enrich China

By Zhiwu Chen

FT August 7 2008

Brittle euphoria: A suspicious China prepares to welcome the world

By Geoff Dyer

The Japan Times: Thursday, Aug. 7, 2008

Stop criticizing China, it has come so far

By LIJIA ZHANG

(コメント) 中国の自動車産業に在庫が累積している、という報告は、いよいよ中国経済にも景気後退の兆候が現れたことを示す、とSAM BAKERは書きます。

オリンピックによって高まるナショナリズムは、決して現在の指導層に利用されているだけではありません。ナショナリズムの力が強くなるにつれて、政治家たちがナショナリストたちによって動かされるでしょう。

外国からの訪問者を案内する引退した北京市民Hou Yuanxiangの挨拶は、その複雑な感情を示しています。

“This is really a good chance for us to welcome you foreigners to come to China to praise our advantages and help mend our disadvantages. We have a lot of defects and really hope to listen to your opinions,” he said. “But we have to admit the fact that China has been invaded and bullied by you too much. Much of our wealth was robbed by Americans and Japanese.” He paused for a moment before continuing: “We Chinese are very friendly. Please come and visit my apartment.”

第二次世界大戦後、中国の変化は大きく、現在の中国を世界は正しく知っているとは言えません。中国の子供たちが外の世界について学んでいるほどの知識も、世界の子供たちは中国について知っているだろうか? と思いながら、ZHANGはオリンピックに期待します。互いをもっとよく知って、恐れないことです。


FT August 3 2008

Time for fresh thinking on incomes policy

By John Grieve Smith

(コメント) 石油・食糧の価格高騰とアメリカの不況によってイギリス経済は脅かされています。政府は、イングランド銀行がインフレ目標だけに従って金利を引き上げるのを放置してはならない、とJohn Grieve Smithは主張します。

賃金と物価のスパイラルを防ぐもう一つの方法が必要です。すなわち、政府が経営者と労働組合の間を仲介して、三者で物価の抑制と賃金の抑制に合意するのです。しかし、1970年代の所得政策は崩壊したし、その後のサッチャー政権は労働組合を破壊しました。ニュー・レイバーもその流れを変えていません。

イングランド銀行の「インフレ目標」は、しばしば矛盾した目標を追求しなければならない中央銀行の仕事に極端な単純化と硬直性をもたらしています。ゴードン・ブラウンが大蔵大臣のときに示した「黄金律」は、景気変動を通して財政規律を求めるものですが、財政赤字による刺激策を制約しています。

1980年代に捨てられたはずの所得政策と財政刺激策が、この新しい状況では必要だと理解しなければなりません。


FT August 4 2008

Repel the calls to contain competitive markets

By Alan Greenspan

WSJ August 6, 2008

The Tax Rebate Was a Flop

By MARTIN FELDSTEIN

(コメント) グリーンスパンは、流動性危機ではなく、支払い不能危機であるから、住宅市場が価格水準を調整するのを待つしかない、と考えます。それは住宅建設が減れば、時間を経て、新しい世帯の住宅需要によって必ず達成されるでしょう。

その間は、資産市場とビジネス心理の変化が不況の過程を左右します。グリーンスパンは、市場におけるリスク評価の失敗などを指摘しながらも、特に論説の後半において、グローバリゼーションの弾力的な市場システムを称賛し、政府の介入を強く排除しています。

しかし、グローバリゼーションをアダム・スミスの世界とみなすのは正しいでしょうか?

FELDSTEINは、オバマの1000ドル還付税提案を批判します。還付税の効果は小さく、その資産市場価格の調整緩和には役立ちません。

国際的な相互依存が高まった世界では、住宅市場や株価が大きな調整を経験しても、不況に対して様々な介入を主張する政治家の言うことを無視しなければならない、と主張します。


FT August 4 2008

Japan’s recession is not a recession

WSJ August 5, 2008

Flailing Fukuda

By TOBIAS HARRIS

WSJ August 8, 2008

Japan, Unstimulated

(コメント) 日本に関する言及は、経済と政治における失速について、です。日本には、住宅バブルも、金融危機もなく、アジア向け輸出は好調であるのに、定義上、「不況」に入りました。人口は減少し、日銀はインフレを心配し、財政再建は刺激策を阻み、必要な改革を進める余裕もない。

WSJの福田内閣に関するHARRISの解説は、新味がなく、日本の論説に似ています。

新内閣は価格上昇と不況対策を個別に示しますが、持続的な成長を実現することが最も重要な対策である、というのは正しいです。日本の成長率が高まるには、構造改革、が必要だ、と言われてきました。OECDは競争力のない日本の企業を40%と推定しています(香港165%、シンガポール18%)。

例えば政府は、農業への補助金を削り、消費者金融による中小企業への融資規制を廃し、建築基準によって滞った建設計画を実行させること、をWSJは指摘します。


The Japan Times: Monday, Aug. 4, 2008

Trans-Atlantic stalemate

By DAVID P. CALLEO

(コメント) アメリカとヨーロッパの地政学的な境界線や視点が異なる以上、たとえオバマが新大統領になっても、両者の対立はなくなりません。

「地政学的」とは、その地理的な位置・制約がその視野を性格付けることを意味します。かつて、ド・ゴールとチャーチルが合意したように、"When all is said and done, Great Britain is an island, France the cape of a continent; America another world."

大西洋同盟は、アメリカとヨーロッパが共通の敵を持つときに可能でした。しかし、イラク戦争では、ヨーロッパが明確に、アメリカのヘゲモニーを否定したのです。ロシアの帝国主義や、イスラム原理主義との文明間戦争は、米欧の同盟を再建するかもしれません。しかし、ヨーロッパが統一され、政治的にも、軍事的にも、国際秩序を担うようになれば、それは大西洋同盟ではなく、かつてのヨーロッパ古典外交を世界規模で再現するシステムに向かう、と予想します。

すなわち、勢力均衡、チェック・アンド・バランスによる秩序の調整と平和維持です。


LAT August 5, 2008

Forgetting the evils of communism

Jonah Goldberg

NYT August 5, 2008

Solzhenitsyn in Search of the Russia That Always Eluded Him

By SERGE SCHMEMANN

(コメント) ソルジェニーツィンの死去について、多くの論説が現れましたが、読みませんでした。たまたま関心を持ったのは、この二つだけです。


Foreign Affairs , September/October 2008

The Right Way to Engage China

By Henry M. Paulson Jr.

(コメント) 中国経済の台頭は他国が介入できる問題ではありません。アメリカのポールソン財務長官は、中国を世界市場にさらに深く統合することで、国際秩序の責任ある参加者にすることができる、と考えます。

アメリカと中国には共有する利益も多いが、異なる点もある、とポールソンが書くとき、それは両国がthe U.S.-China Strategic Economic Dialogue (SED)を重ねているだけに意味のある言葉です。それゆえ、米中の相互理解、共通の理解を拡大することを、ポールソンは最も重視しています。対等な関係で、しかも、信頼できる行動を取ることが重要だ、と。

しかし、中国に対してだけ、なぜこんなに気を使うのか? と感じます。アメリカは傲慢だった、と対中関係で反省するくらいなら、これまでの外交において傲慢であった多くの国に対して、もっと反省することがあるはずです。中国は外国の侵略によって苦しめられ、ようやく国益を主張し始めたのだ、とむやみに同情するのも疑問です。

友好的な米中関係を維持するために、ポールソンは問題を解決するためアメリカが利用する三つの枠組みを示します。1.より強い関与・包摂、2.二国間・多国間交渉による紛争解決、3.懲罰的な立法措置。しかし、最後の選択は決して生産的な結果をもたらさないでしょう。

中国に対してだけ、ようやくアメリカは正しい方針を見出すわけです。


FT August 5 2008

The principles of sound regulation

Henry Kaufman

(コメント) アメリカ政府は金融システムを改革する前に、8つの原則を確認しなければならない、とKaufmanは主張しています。

1.規制緩和は幻想だ。金融市場は巨大金融機関が支配している。彼らは大き過ぎて潰せない。2.包括的な規制緩和は現実的でなく、政治的にも社会的にも堪えがたい。金融当局は支払・決済メカニズムの安定性を維持しなければならない。規制が緩和されるほど、金融市場の監視は強化されなければならない。3.金融機関そのものの改革を促す誘因を与えなければならない。4.金融市場の参加者には、規制されない限り、市場の新しい分野を開拓するリスクを取らせるべきだ。そこにこそ豊かな利潤がある。5.規制というものは市場や技術変化に必ず遅れる。金融革新が持つ複雑さやシステムへの影響を理解しなければならない。6.規制緩和するほど、連銀(中央銀行)の仕事は難しくなる。既存の金融手段で市場を安定化することは難しい。7.新しい金融規制は、細かい問題ではなく、より広範な、システムの欠陥を扱うべきだ。アメリカの金融システムはバラバラである。8.アメリカの金融機関と金融市場は国際的な影響を及ぼすから、会計基準や情報開示、取引慣行を調和させなければならない。

そして、連銀がこうした金融監督の領域を拡大するのであるから、その行動様式・優先順位を変えるべきだ。


FT August 4 2008

Cost of a wrong turn: The Big Freeze part 2 – the future of banking

By John Gapper

FT August 5 2008

The Big Freeze part 3: The economy

By Chris Giles

FT August 6 2008

The Big Freeze part 4: How to build a US recovery

(コメント) 金融市場の混乱は世界経済にどれほどの損失をもたらすのか? それに対応して何ができるのか? 金融市場の制度や監督を改善する? 企業はバランス・シート問題を迅速に処理できるか? アメリカの景気回復を促すマクロ政策とは何か? 実施できるか? といった問題に答えることができたら、素晴らしいのですが。

FT August 7 2008

Credit crunch in a century’s context

(コメント) 1987年のブラック・マンデーの後、ある銀行家は彼らの共通認識を示しました。「私たちは二つの特殊な領域で時代の終わりを目撃しつつある。」・・・「ひとつは、管理されない形で進む世界金融市場の規制緩和。そして第二の点とは、人的・金融的な資源を証券化のために無思慮に注ぎ込む行為が頂点に達し、将来は、縮小するということだ。」

しかし、この考え方は間違っていたことが分かったわけです。過ちはもっと大規模に繰り返されました。そして、同じような認識が広まっています。金融市場は歴史から学びません。その前に、中国やインドが急速に成長してくるからであり、新しい金融市場の自由化や信用拡大の機会が利用されるでしょう。


Asia Times Online, Aug 7, 2008

Vietnam at reform crossroads

By Long S Le

(コメント) 政治の自由化と経済の民営化を進めなければ、共産党の権力は脅かされる、という10年前の予想をめぐって、論説は展開します。


Aug. 6 (Bloomberg)

Nazis, Debt Cloud Japanese Stagflation Debate

William Pesek

(コメント) 福田首相の内閣改造が、麻生幹事長を重要なアピールだと考えるようなら、日本政府はスタグフレーションの不安を増幅するでしょう。麻生氏の失言癖と同じように、福田首相の不決断と融和癖は、日本政治の不透明性を深めただけです。そして選挙に向けた財政のバラマキと、国債の増発、財政再建の放棄、格付けの悪化が待っています。

麻生氏の失言は、ナチスの条件を醸成する準備であった、と言われるでしょう。


The Guardian, Wednesday August 6 2008

Turn left for growth

Joseph Stiglitz

(コメント) アメリカの経済運営も、言ってみれば、幸運の問題です。1990年代、石油価格は安く、中国の安価で良質な製品は流入し続けました。インフレなき高成長の基礎は、クリントン政権やグリーンスパンの政策というより、幸運だったのです。

しかし、Stiglitzは、悪い政策が問題をもたらす、と考えます。成長は持続可能で、その成果がより多くの国民に分かち持たれる方が良いでしょう。社会保障は保護主義よりも国民生活の安定性を守ります。ブッシュ政権はそれを損ないました。

もうすぐアメリカでは、教育に従事する人々より、警備ビジネスに従事する人の方が多くなる、と指摘します。政府の役割について、左派と右派の見解は全く異なります。そして、アメリカでは、左派の方が市場の役割を正しく理解しています。ブッシュ政権のような右派は、利益関係者のコーポラティズムだ、と批判します。

市場は自らを統治せず、政府による正しい指導があって、初めて、円滑に機能すると左派は考えます。同じように成長を叫んでも、右派と左派は全く違うのです。


WSJ August 6, 2008; Page A15

No Crisis Is Immune

By HILLARY RODHAM CLINTON

(コメント) ブッシュ政権下の政府と巨大企業の癒着、詐欺的支出を解明するために、「新トルーマン委員会」を設置するよう求めています。

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The Economist July 26th 2008

The Balkans: Karadzic caught

Zimbabwe: Only talk tough

Zimbabwe: They agree to talk, but nobody knows where it will lead

Charlemagne: Defensive gestures

Britain and America (1): The ties that bind

Britain and America (2): Point of Contention

Cyber-nationalism: The brave new world of e-hatred

(コメント) バルカン半島、ジンバブエ、そして全欧安保政策とヨーロッパ軍について、考えてみてください。次に、朝鮮半島、ミャンマー、そしてアジア安全保障会議と、軍事力のプールを考えましょう。日本とその自衛隊も、イギリスと同じような国際的役割を担えるでしょうか? 英米の特別な関係を示す経済関係や文化、人的交流に比べて、圧倒的に浅薄な日米関係は、将来、どのような評価がふさわしいのでしょうか?

サイバー・ナショナリズムの時代になれば、日本は存在を目立たなくするだけでは生きていけません。ねつ造された歴史や虚偽に基づく主張が蔓延し、子供たちには、イスラム過激派を追う「自爆テロ」ゲームや、非合法移民を撃ち倒す「国境警備」ゲームが人気を博しています。


The Economist July 26th 2008

Unhappy America

The economy: the problem, Workingman’s blues

The economy: the solution, It’s the economy again, stupid

Japan’s pension pot: Capital thinking

The Big Mac Index: Sandwiched

(コメント) アメリカ人がこれほど悲観的なことは珍しいのです。それを中国やアジアのせいにしてはいけません。アメリカは自己を改革する力を持っているから。

アメリカの景気後退やインフレについて何ができるのか? オバマの政策は画期的か? 他方、日本は世界最長の寿命によって、世界最大の年金を運営しています。その運用実績を改善することが年金問題の緩和に役立ちます。そこで、一部を民間に運用させる改革が議論されています。しかし、一方では、国債価格が下落するのではないか、と不安が強い。他方では、日本の株式市場やリスク・キャピタルが増え、企業経営の改革が進むのではないか、と期待される。

ビッグ・マック・インデックスについての考察です。金融逼迫を起こし、アメリカから資本流出が起きても、ドルはその中期的な基礎的条件を反映する水準に近付いた、と評価されています。