IPEの果樹園2008

今週のReview

1/28-2/2

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

グローバリゼーションと労働組合, ロシアの外交, 国際金融不安, ガザの壁崩壊, スウェーデン,マルメの人種対立, 資本主義と所得格差1, 新興市場の多国籍企業, グルジア

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


The Korea Times, 17 January 2008

Workers’ Paradise?

By Kenneth Rogoff

労働組合の政治的復活はグローバリゼーションの車輪にレンチを投げ込むものか? あるいは,その力が増大することで,より大きな平等と公平性をもたらし,グローバリゼーションを持続可能にするか? どちらにせよ,労働組合は2008年とそれ以後の経済システムを発展させる際のワイルド・カードである.

組合の重要性が増していることは最近の多くの出来事が示している.ドイツのメルケル首相は郵便事業の日雇用に最低賃金引き上げを認めて論争を引き起こした.何人かのアメリカ大統領候補は貿易や移民に危惧を示している.中国の指導部は労働基準に顕著な関心を示す.

その政治力に加えて,組合の知的な権威もまた復活しつつある.エコノミストたちが,組合は失業を増やし,成長を窒息させる,と卑しめ続けた数十年を経て,今や思想界の指導者,ポール・クルーグマンなどが支持するようになって,グローバリゼーションの最悪の行き過ぎを抑えるために,労働組合が強くなる必要がある,と主張している.

組合が政治勢力として突如復活するのは,特にアメリカの場合,驚きである.アメリカの民間部門では,組合の加入率が1975年の25%から今では8%にまで低下している.グーグルからウォルマートまで,企業は職場から組合を消すさまざまな方法を見つけた.唯一,公共部門だけは,組合加入率が35%である.

今日,アメリカの政治指導者たちが組合の再建を求めても,それを疑う十分な理由がある.中国のように比較的貧しい国では,本当の労働組合があれば,雇用者のパワーとバランスを取ることができる.そして,成長のコストを超える生活の質の改善を重視させる.中国には工場の労働条件が,20世紀初めの,労働組合のないアメリカと同じようなところもある.基本的な予防措置もない炭鉱で,毎年,多くの労働者たちが死んでいる.

しかし,アメリカやヨーロッパの裕福な諸国では,強い労働者がコストよりも利益をもたらすという議論ははるかに疑わしい.現代では,1世紀前からそもそも組合が闘い続けたような基本的保障を含めて,ほとんどの労働者たちが法的な権利を持っている.

その代わりに,労働組合はあまりにもしばしば非弾力的な労働慣行を広め,労働の努力や技能に対して十分な報酬を与えられないような均一の賃金構造を守ろうとする.公共部門は生産性が低く,予算制約がソフトであるから,こうしたことが続くのも不思議ではない.教員組合は,特に破滅的であり,あらゆる合理化や教育システムの改善に,多くの国で反対している.

現代のグローバリゼーションの時代までは,労働組合は国家規模で組織を広げて繁栄できた.それによって労働組合は雇用者や消費者と対抗するパワーを得たのだ.しかし今や,戦後の世界貿易の拡大を経て,ほとんどの労働組合が労働力の独占力は,粉砕された,とまでは言えないが崩壊した.それゆえ労働組合は発展した世界のどこでも,その地位をさらに掘り崩す自由貿易協定に激しく反対するのである.

組合が推進する課題は,たとえば人権や,環境の質のように,争う余地がない.しかし彼らがこうした問題を貿易と結びつけるなら,その動機には疑問がある.

アメリカとコロンビアとの自由貿易協定に組合が反対したケースはこれに当たるが,批准すればアメリカとラテンアメリカとの関係を大いに前進させるものだった.コロンビア政府が麻薬を資金源とした反乱軍と戦う方法について正しい疑問を示しても,それでより広い範囲の問題を主張できるわけではない.反FTAの活動家たちが,コロンビア政府は組合員を反乱軍の暴力から守っていないとして,政府は反組合的だと主張してきた.しかし,コロンビア国民はすべて暴力に苦しんでいる.組合員の方が他の国民よりましであろう.

不幸にして,こうした主張は貿易の諸問題にわたって行われ,それには多くの中国に関する問題もある.

裕福な諸国にとって,所得の再分配は,政府が労働組合を強化しなくても,課税や給付のシステムを通じてはるかにうまく扱える.富裕層は今や多くの国で非常に少ししか税金を支払っていないから,フラット・タックスに移行することだけでも大幅に改善するだろう.課税免除の水準を高くすれば,低所得の家族は何も支払わなくてよい.

中所得の国にとって,所得の再分配は一層難しい.しかしここでもまた,労働者の法的な権利を増やして,他方,ほとんどの組合を緩やかに消滅させる方が正しいであろう.残念ながら,労働組合の増大する政治的影響力が貿易や成長を妨げる主要な勢力になり,あまりにも不確かな結果をもたらすことの方が,はるかにありそうである.裕福な諸国の政治指導者たちが労働組合にこびて,互いに自由貿易や移民を攻撃することは,将来の問題を憂慮する十分な理由を示している.

だから労働組合は2008年の経済を予見する重要なワイルド・カードなのだ.


Jan. 18 (Bloomberg)

Greenspan Put Takes New Shape as Sovereign Funds

William Pesek

(コメント) 国際金融市場を守る,もしくは投資家たちの資産が急減するのを阻止してくれる守護神として,世界はこれまで,円(大蔵省)や,グリーンスパン(グリーンスパン・プット),バーナンキ(急落を防ぐ迅速な金利下げ),を頼りにしてきました.今度は,政府系投資ファンド(SWFs)です.SWFsプットが世界を救い,それは反サッチャー=レーガン革命を示唆します.

しかし,本当に政府はリスクを取る投資家なのか? 彼らの行動原理は何か? 今は,まったく分りません.少なくとも毛沢東は,共産党史の指導者たちが中国人民の資産をウォール街で投資して,その主要な資本家たちの救済に使うことなど予想していなかったはずだ,とPesekは指摘します.


The Guardian Friday January 18, 2008

Britain and Russia: Seeing red

The Guardian Friday January 18, 2008

Russia's assault on the British Council reveals the true nature of diplomacy

Simon Jenkins

BG January 19, 2008

Russia beyond the pale

NYT January 19, 2008

More Kremlin Harassment

WP Monday, January 21, 2008

'Missing No Blows' In Moscow

By Masha Lipman

(コメント) ロシアの諜報機関が,元KGBの亡命者リトビネンコAlexander Litvinenkoを,イギリス国内で放射性物質ポロニウム210を使って毒殺した事件の後遺症は,大使館スタッフの国外退去処分から,ついにイギリスとロシアの外交・諜報機関,一般の国家行政機関まで巻き込んだ紛争に拡大しています.

セント・ペテルスブルクやエカテリンブルクにおける英国文化センター(ブリティッシュ・カウンシル)に対する直接の嫌がらせが,イギリス大使へのロシア政府寄り民間団体Nashiによる行動から,イギリスを敵国としたテレビ番組の放映,職員個人に対してFSB(KGBを継承した組織)が深夜に訪れて尋問すること,税務署からの攻撃,などに及んだ,ということにイギリス人は憤慨しています.

イギリス政府はロシアの脅迫や威嚇に耐えられるのか? 対抗措置を取るのか? イギリス外務次官は,冷戦期にもこれと同じようなことがあった,と指摘しました.ロシアがその周辺諸国を石油や天然ガス,国内社会対立・軍事紛争への干渉によって脅迫した(している)場合と違って,イギリス政府には積極的な対抗策があります.

イギリスへのあからさまな脅迫は,ロシアとの貿易やロシアへの直接投資を冷え込ませるでしょう.投資家たちはイギリスだけでなく,フランスやドイツからもこの事件に注目しています.イギリスは,ますますEUと協力して,ロシアへの対抗策を検討するでしょう.ロシアによる文化交流などの事業は続けられるとしても将来への期待は失われ,国際政治でも孤立し,さまざまな問題で発言力を低下させるでしょう.

紛争を拡大することがロシアの戦略的な目標を達成する助けにはならない,と理解させる多くのルートをイギリス政府は持っています.

BG,NYT,WP,などの論説が明確な反響を示しています.ワシントンでも,1976年にチリの独裁者ピノチェトによる同様の暗殺事件があった,とBGは指摘します.プーチンは独裁者の汚名を受け,イギリス政府には民主的な国際社会の連帯を示す時だ,と.またMasha Lipmanはこれを,ロシアの孤立主義,と呼んでいます.


Larry Elliott Bubble economics The Guardian Friday January 18, 2008

「封じ込めは伝染に変わった.住宅市場の不調から世界最大の市場が不況になるというだけでなく,それは1990年代の日本とそっくり同じことなのだ,という不安が広がった.日本は1980年代後半の投機マニアから回復するのに10年以上かかった.しかも,ある意味ではいまだに回復していないのだ.」

「もし経済政策を誰かが動かしているとしたら,それはウォール街の大銀行や投資会社である.彼らは乏しい記録しかない借り手に対する軽率な貸し付けの結果,損失をこうむって資金が足りなくなっている.」

「大恐慌を研究した学者であり,10年前に早くもアメリカが新しい日本型不況を免れる方法について論文を書いたバーナンキは,急速に堅苦しいアプローチを投げ捨てた.昨日,彼は「実質的な行動」を約束して,1990年代初めに日本が犯した誤りを繰り返さない決意を示した.今や,ウォール街の蔭口はこうだ.十分に強く引っぱたけば,連銀は結局1%にまで金利を下げるだろう.ドル暴落の危険や,インフレ圧力,バブルの再燃なんて無視するさ.」

PAUL KRUGMAN Don Cry for Me, America NYT January 18, 2008

「メキシコ,ブラジル,アルゼンチン,再びメキシコ,タイ,インドネシア,再びアルゼンチン,そして,今やアメリカの番だ.」

・・・投資家はより大きな利回りを求めて投資先を変える.ある国に資金が流入し,期待外れに終わって資金が流出する.そのあとには酷い結果が残る.それはラテンアメリカやアジアで繰り返されてきたが,今ではアメリカの株式から住宅を経て,信用バブルが破裂した.われわれが演じているのは,通常,第三世界の経済が引き受けていた役回りだ.

・・・バーナンキはFRB議長に任命される前に有名な講演をした.なぜ世界一裕福なアメリカは投資国ではなく,世界最大の借り入れ国なのか? 彼はその答えがアメリカではなく海外の貯蓄過剰にある,と答えた.「世界的貯蓄過剰“global saving glut”」説である.通貨危機を怖れた諸国が通貨を過小評価した水準で維持し,外貨準備を増やし続けた.しかも,それを運用するのは,世界でもっとも透明で,効率的な,アメリカの金融市場であったのだ,という.・・・

クルーグマンは,不況を回避するには遅すぎるとする一方で,住宅バブルをもたらしたと批判されるバーナンキの低金利政策を支持します(かれも日本型不況を警戒していたから).他方,グリーンスパン以来のアメリカ金融市場の規制不足,その未整備を厳しく批判しています.

Paul A. Samuelson Parlaying deregulation into panic IHT January 18, 2008

クルーグマンは,アメリカがアルゼンチンになることはない,ドルで借りているから,と考えます.サミュエルソンも,大恐慌以後,少なくとも中央銀行が最後の貸し手としてなすべきことを学んでいる,と考えます.問題は,市場賛美の陰で,ブッシュ政権が富裕層に対して行った政治的な減税策です.

Chan Akya Drunk in a bankrupt world Asia Times Online, Jan 19, 2008

危機の背景には何があるのでしょうか?

「ミット・ロムニーはミシガンの自動車産業を救うと約束して,共和党候補の指名を得た.」

「増大する損失に対して,アメリカの銀行は追加の資本を調達する.」

「世界銀行のプロジェクトにはほとんどに不正が見出されるが,最新の例はインドのヘルスケア部門だった.」

「中国は商業銀行に対するさらなる貸出条件の引き締めを進めているが,重要な食糧やその他の生産物において顕著に価格が上昇している.」

「世界で最も安価な自動車,ナノ,をインド企業が発表した.」

これらのニュースは一連の世界経済における変化を示している,と述べています.アメリカには資金が溢れて製造業が衰退し,人々はバブルに依存しました.他方,中国は巨大な貯蓄を政府が運用して,インドへの世銀融資と同じく,非効率と不正の温床になっているでしょう.その間に,インドから世界で最も安価なアジア市場のための自動車が発表されました.アメリカ(金融),中国(安価な工業製品),インド(ハイテク,サービス)の間に形成されていたこれまでの分業関係は終わったのです.

How to end a crisis The Guardian Saturday January 19, 2008

George Soros The worst market crisis in 60 years FT January 22 2008

・・・数年おきの不況ではなく,これは60年程で起きるブーム・バスト・サイクルである.新興経済は逆に成長を加速しており,世界経済全体が深刻な不況になるとは思えない.しかし,もしアメリカなど旧開発諸国がバランス・オブ・パワーの変化を反映することに反対して市場を妨げるなら,不況は深刻になるだろう.・・・

Martin Wolf The financial turmoil is like an elephant in a dark room FT January 22 2008

Hyman Minskyの唱えたa “Minsky moment”を紹介しています.それは資産価格の見直しで銀行の資産が大きく損なわれ,融資ができなくなって,中央銀行の介入,救済融資を必要とするときです.その原因が,投資家や銀行の心理的な要因であるのか(それゆえ完全には是正できない),あるいは,金融緩和の行き過ぎが形成したものか(それゆえ責任を問い,修正しなければならない),意見が分かれます.

さらに,三つ目の意見では,心理的要因でも,アメリカの金融政策でもなく,世界的なマクロ不均衡が原因に挙げられます.しかし,真実にはすべての要素が含まれており,実際には,危機の変化に対策を日々変更するしかない,と考えます.

Panic stalks Wall Street The Guardian Wednesday January 23, 2008

Mark Gilbert Market Bloodbath Highlights Cracks in Capitalism Jan. 24 (Bloomberg)

John Authers and Gillian Tett Ins and outs of ups and downs: shaken markets face up to ‘recoupling’ FT January 24 2008

(コメント) アメリカ,イギリス,ヨーロッパに拡大した金融不安を理解する試みが続いています.危機は資本移動の連鎖,景気悪化への不安,各国の消費や投資にまで及び,株価の連鎖安や通貨危機,政情不安も生じます.もちろん,中国でも,日本でも.

John Authers and Gillian Tettは,結局,世界的な規模で金融構造の見直しが始まっている,と考えます.ダヴォスの世界経済フォーラムでも,ジョージ・ソロすが「これは普通の危機ではない.一つの時代が終わるのだ.」と述べました.

金融緩和や市場介入政策の限界も指摘されていますが,マクロのデータは好悪がばらばらであり,市場に悲観と楽観とを交錯させています.古の教訓,すなわち,通りが血に染まる時こそ買いの好機である,が試されているのだ.それに従う勇気が投資家たちにあるだろうか,と論説は問いかけます.

Stimulating debate FT January 18 2008

STEVEN R. WEISMAN and EDMUND L. ANDREWS Economists Debate the Quickest Cure NYT January 19, 2008

Calculating the Stimulus WP Saturday, January 19, 2008

Pump-Priming the Economy NYT January 20, 2008

David Ignatius Too Late To the Downturn WP Sunday, January 20, 2008

Clive Crook A fiscal stimulus offers limited help FT January 20 2008

Wolfgang Munchau America’s recession will be hard to shift FT January 20 2008

Sharp Fed rate cuts are justified FT January 22 2008

Martin Hutchinson The snare of stimulus Asia Times Online, Jan 23, 2008

John M. Berry Markets Force Fed to Make a Big, Risky Rate Cut Jan. 23 (Bloomberg)

Amity Shlaes Bernanke Battles Wrong Ghost in Deflation Specter Jan. 23 (Bloomberg)

A parachute for the markets BG January 23, 2008

Jeff Jacoby Remember, there's no free lunch BG January 23, 2008

ROBERT J. SHILLER Build that nest egg with government help The Japan Times: Wednesday, Jan. 23, 2008

A fix for the economy? LAT January 23, 2008

The Fed Weighs In NYT January 23, 2008

LEN BURMAN Make the Tax Cuts Work NYT January 23, 2008

JOSEPH E. STIGLITZ How to Stop the Downturn NYT January 23, 2008

優れた財政刺激策とは,とスティグリッツは主張します.即座に効き目のある支出と,経済が本当に大きな後退を示したときに発動する大規模な刺激策とを,ともに含んでいなければならない,と.前者は,まず,失業保険に財源を増やしておくことです.次に,地方政府を財政支援することです.もし不況による財政赤字によって支出を減らせば変造を増幅します.逆に,不況になれば,この財源でインフラの再建などに支出させます.教育の補助や温暖化ガスの排出量削減のために支出するのもよいでしょう.他方,ブッシュ政権の好む富裕層への減税(その恒久化)は間違いです.

Ruth Marcus Whose Stimulus Makes the Grade? WP Wednesday, January 23, 2008

George Magnus More is needed to unblock arteries of credit FT January 23 2008

Stephen Cecchetti Bernanke’s Fed shows that it can be nimble FT January 23 2008

バーナンキの積極的な金融緩和には,ショックを受けた,というCecchettiの言葉が飛び出します.それは伝統的な手法を打ち破ったサインだからです.警告しているのか,と思えば,そうではなく,歓迎しているのです.アメリカ連銀も,株式や住宅など,資産市場に対する関心と安定化介入を明確にした,・・・というわけでしょうか? しかも金利を漸進的ではなく,一気に変化させる手法を受け入れた.さらに大幅な金利引き下げもある,と.

Following the Fed FT January 23 2008

Robert Kuttner It's time to save the housing sector BG January 24, 2008

EDMUND L. ANDREWS A Fear That the Cure Could Be Poison NYT January 24, 2008

(コメント) 金融緩和だけでなく,財政刺激策も必要か? それはどのような刺激策か? 戻し税のような減税政策では,税金を多く払っている富裕層が有利であり,本当は支出する貧困層にも減税の刺激効果が働かない.もっと州政府の財源を与えて,子どものある家族への手当や教育費への助成,貧困層への給付などが効果的です.

しかし,政府の行動はいつも大きく遅れており,効果的ではないどころか,しばしば,景気が回復してからその効果を発揮して変動を強めるという傾向を示しています.ブッシュ政権は1450億ドルの景気刺激策を示し,バーナンキ連銀議長は金利を0.75%も一気に引き下げました.しかし,それはインフレを招く危険があるだけでなく,市場の要請に連銀が応えるという誤解を与えました.政府と連銀は協力しなければなりませんが,その政治基盤の違いから行動は一致しません.

FTは,資本移動が自由である世界ではアメリカ連銀が世界の金利に影響を与えており,1987年のブラック・マンデー後の動きにたとえています.しかし,今度はどうでしょうか? こうした連銀の危機管理型行動主義に,世界の主要中央銀行が追随するかどうか,FTや投資家たちは注目しています.・・・そして,いつ,どのように金利を引き上げるのか?


The Guardian Friday January 18, 2008

West Bank bantustan

Ben White

BG January 22, 2008

A Mideast lesson for Bush

By H.D.S. Greenway

(コメント) イスラエル政府は入植者の立ち退きを強制している映像を使って同情を買いました.そして,実際にはより多くの入植者を認める植民地化を拡大するつもりだ,とBen Whiteは批判します.すなわち,ガザ地区は他からの通路を立って完全に切り離し,ヨルダン川西岸を勝手にイスラエルに併合して,イスラエルの介入と監視下に置いた「バンツースタン」型国家にすることです.

これは中東和平ではありません.ブッシュの中東諸国訪問は,スンニー派諸国にシーア派のイランが強くなることを抑え込むための同盟を呼び掛けたものです.しかし彼らはブッシュを信用できません.イラク戦争でスンニー派のイラク人を大量に難民とし,イランへの支持を集めてしまった男だからです.

タカ派の政治家たちは,イスラエルでも,アメリカでも,軍事侵攻を“short and sweet”だと主張しました.まるで効果的な金融政策を支持するような議論です.しかし,軍事力の行使や占領だけで複雑な政治問題を解決することはできませんでした.イランはセルビアではない,とGreenwayは指摘します.

BG January 20, 2008

Defusing the Gaza time bomb

By Robert Malley

ガザ地区は苦しんでいる.急増した失業と貧困,医薬品・燃料・電力・食糧・その他の必需品の不足.そこは事実上切り離された土地だ.そして次のイスラエル・アラブ戦争が起きるとしたら,ここである.

この数週間,パレスチナの武装集団がロケットや迫撃砲をイスラエルに向けて発射した.イスラエルは侵攻し,空爆して,パレスチナ人の犠牲者を出した.ハマスの上級指揮官の息子も殺された.状況は容認できないものであると,双方が知っている.イスラエルはハマスの武器庫が充実し,攻撃が続くことを我慢できない.ハマスは疑いなく死者に対する報復をする.どちらも後退する余地はない.

最近の数週間,ガザにおけるハマスの幹部たちは,相互の停戦を受け入れる用意があると明確にしていた.ロケット攻撃を止めて,イスラエルも軍事攻撃を止め,ガザへの通行を再開する.昨年6月にハマスがガザを支配し,イスラム主義者のアッバス大統領に対する内戦が激化してから,彼らの主要な目的は,領土を確保し,法と秩序を回復し,地区を統治できることを証明することであった.しかし,イスラエルとの激しい対立が最初の二つの目標を脅かす.また境界の封鎖は三つ目の目標を破壊する.

イスラエルの幹部たちは分裂している.彼らは最近撤退した領域に再侵攻することに熱心ではない.地上戦にはリスクがある.たとえ拡大した軍事作戦を行ってもロケットを止めることは出来ないだろう.しかし反面,ハマスと停戦し,包囲を緩めると,彼らが弱めると決めた反対派を逆に勢いづかせるかもしれない.イスラム主義者を叩くことはアッバスの力を削ぎ,ハマスとの和解に圧力をかけて,最近,アナポリスで再開した脆弱な和平プロセスを犠牲にする.ガザにおける作戦を止めれば,ハマスが軍事力を改善する自由を得てしまう.

停戦は現在の支配的な仮説を否定する.しかし,その仮説こそ論理的ではない.ガザの住民たちは,彼らの安全を改善してくれたハマスに感謝しているが,そのうち,経済的な苦境に不満を覚え,イスラム主義者の野蛮な行為に憤慨するだろう,という.そして彼らが支持を失うにつれて,ガザを締め付けてハマスを弱める計画であった.しかし,そんな成功には意味がない.ハマスが支持を失っても,ファタハが支持されるわけではない.ガザの住民たちは包囲を解けないイスラム主義者に憤慨するが,イスラエル(包囲を押し付けた),西側(それを支持した),ファタハ(それを黙認した)も責めている.

ハマスの権力掌握が動揺している証拠もない.逆に,どこでもそうだが,経済制裁は指導者たちよりも住民を苦しめる.民間部門は崩壊し,ふつうの市民たちもますます支配者たちに依存している.ハマスは支配に対して資金を見出し,自分たちを正当化するイスラエルの包囲を利用する.状況は破滅的だが,維持可能である.はるかに支持を失っても,はるかに苦しい状況でも,体制は生き延びてきた.

アッバスやアナポリスの和平プロセスに及ぼす影響も,通常の理解は間違っている.包囲が続いてもイスラエルへの攻撃は行われており,イスラエルは交渉を続けられない.アッバスも,イスラエルの報復でガザにおける犠牲者や破壊が増える中で,交渉に参加できない.もし失うものは何もないとハマスが確信し,パレスチナ人を分裂させるなら,アッバスも力を失う.

ハマスは和平プロセスを利用して武器庫を強化している,という意見がある.包囲はそのために行われた.しかし事態は改善されていない.むしろ境界線を,多分,第三国も入れて,カイロともっと協力し,効果的に管理すべきだ.イスラエルもハマスも軍事衝突を最優先していない.しかし事態が急速にそちらへ向かっている.それは人命に多大の犠牲をもたらし,ガザを傷つけ,和平を再び終わらせる.人道的な観点だけでも,停戦合意と包囲の解除はガザ住民に対する正しい決断である.人道的な配慮がなくても,共通の意識があるはずだ.

The Guardian Wednesday January 23, 2008

This brutal siege of Gaza can only breed violence

Karen Koning AbuZayd in Gaza City

NYT January 24, 2008

Palestinians Topple Gaza Wall and Cross to Egypt

By STEVEN ERLANGER and GRAHAM BOWLEY

Gaza: A broken society The Guardian Thursday January 24, 2008

Trapped in Gaza NYT January 24, 2008

Breach in Gaza WP Thursday, January 24, 2008

Gaza’s misery has to be stopped FT January 24 2008

(コメント) 水曜日の夜明け前に,ガザとエジプトの境界をふさぐフェンスが爆破され,人々はエジプト側に殺到しました.爆破後,ハマスの戦闘員がブルドーザーでフェンスを倒した,と言われます.イスラエルによる包囲は強化され,150万人のガザ住民はその生活条件を急激に悪化させていました.エジプト側の警察や警備兵は阻止しようとしましたが,その後,あきらめます.

イスラエルは武器の搬入やテロリストンの移動を阻止する,と主張します.しかし,フェンスを超えてエジプトに入ったガザの住民たちは,ロバや荷車を引いて,ヤギ,マットレス,鶏,電話,セメント,テレビ,など,さまざまな必需品や日用品を買いました.エジプトの商人たちは物資を境界線へ集めて,大いに商いに励んだようです.ガザの若者は住宅を建てられず結婚を延ばしていましたが,ガザで一袋75ドルもするセメントを,一袋5ドルで買って帰りました.

The Guardianは,イスラエルによる包囲はカッサム・ロケットを止められない,と指摘します.しかし,この爆破事件がパレスチナ国家の樹立をあいまいにしてしまった,と嘆きます.

FTも,ガザの包囲は間違いであったし,逆効果であった,と認めています.ハマスとファタハは住民たちに対する政府機能を統一し,イスラエルも含めて,住民たちを犠牲にした政治ゲームを終わらせるべきだ,と多くのメディアは主張します.


LAT January 18, 2008

Tiny Tata Nano, big threat

Jan. 23 (Bloomberg)

China Should Be Afraid of India's New $2,500 Car

William Pesek

(コメント) 「もしナノが環境問題にもたらす暗雲にも一条の光が射しているとすれば,それは自由な市場が排出量の抑制にも機能することである.安価な自動車にアジアの数百万人が乗るとすれば,ガソリン価格は上昇するだろう.それは代替燃料の開発や,燃費の低い自動車を買わなくさせる.インドのガソリン価格が十分に上がれば,ナノは変えるがガソリンが高いから買わない,という人が増えるだろう.」

昇龍ならぬ昇象``Rising Elephant''です.インドはハイテク・サービスに限らず,工業大国になるでしょう.ちょうど日本がそうであったような.そして,インドのシン首相が中国を訪問して唱えたように,インドと中国が競争し,補い合って,新しい世界の工場になるのです.


NYT January 18, 2008

Facing Deportation but Clinging to Life in U.S.

By JULIA PRESTON

(コメント) アメリカで働き,結婚したけれど,非合法移民としてますます厳しく監視・排除され,生活する人々の不安を紹介しています.


FT January 18 2008

The new face of Sweden

By Matthew Engel

イスラミック・センターが深夜に爆破された.モスクは大きく破損し,付属の学校や集会所は破壊された.

それは2年かけて再建された.しかし再開されると,ひと月で二度の襲撃にあった.ひとびとは恐怖を感じ,社会の崩壊を語る.

これは,バクダッドでも,カイロでも,カラチの話でもない.スウェーデン第三の都市,マルメMalmöである.何十年もの間,ここは世界の紛争地域から逃れた人々の聖地・避難所であった.しかし,それが問題になっている.

世界が知らない間に,スウェーデンは変わった.マルメは急激に,ヨーロッパでもっとも民族的に分裂した町になった.人口の37%は,どちらかの親,もしくは両親が外国生まれである.

例えば不動産価格が安いので,多くのデンマーク人が移住してきた.人口278000人の4分の1はイスラム教徒である.移民や出生率により,その割合は増え続ける.予想では,10年以内の非スウェーデン人が多数派になり,それに続いて,イスラム教徒が多数派になる.バーミンガム,ロッテルダムと同様,マルメも「マジョリティー・マイノリティ」都市になるだろう.中東の政治混乱が深まれば,一気に新しい難民が増える.

次第に人々は認めつつある.スウェーデン・モデルは持続できない.それは例外的に寛大な福祉政策と移民政策を組み合わせてきた.海外におけるスウェーデンのイメージであったが,それは静かに,きわめてスウェーデン的に崩壊して,人々の心を傷つけている.

一見,マルメはスカンジナヴィアの都市そのものだ.清潔で,美しく,自転車が多く,静かで,物価が高く,退屈だ.しかし,ヨーロッパでもっとも分離した都市である.移民たちは一つの地区,ロゼンガルドRosengårdに集中している.男性の失業率は82%に達する.

この地区はすぐにわかる.すべてのアパートの窓に衛星用のアンテナがある.ごく稀に例外もある.バルコニーに夏の花が残っている.それはまだ越していないスウェーデン家族だ.

Herrgardenではさまざまな出自の子供が学校に来る.しかし,社会には溶け込めない.スウェーデン人に対する憤慨から,週末の夜には町に出る.社会保障がクッションになるが,言葉の壁によって阻まれ,多くの若者は失業している.

社会民主党の指導者は,多民族の移民が町に増えたことを歓迎する.「20年前,マルメはとても退屈な町だった.レストランも,バーも,劇場も,大学もなかった.若者もおらず,何もなかった.今ではダイナミックな多文化都市になっている.」

この100年間,イギリスとスウェーデンだけが外国の軍隊による占領や自国の独裁者による支配を経験しなかった.ノルウェーとデンマークもナチに支配された.スウェーデンは門戸を開放し,世界の最もひどい苦境から逃れる難民たちを受け入れてきた.世界における「道義性の超大国」である.彼らのために財布も心も開いてきた.マルメの出身地は世界ニュースの見出しに似ている.イラク,ボスニア,レバノン,イラン,アフガニスタン,ベトナム.ソマリア,クロアチア.

その高い目標は,世界でもっとも成功した社会なのだろうか? この国の下水や電力のように,政策も機能しているのか? しかし,スウェーデンの政策は人民の「家」を理想とし,人民の「共同体」を重視するドイツ文化にも似ている.それゆえ.一部の者は,スウェーデンが移民に門戸を開放することと,こうした文化や政策を維持することとの間の対立を問い始めている.スウェーデンも,初めて,イギリスが長年苦しんできた問題,エスニック的なマイノリティーが永久に下層市民となる社会と取り組みつつある.移民を排斥する政党が現れた.スウェーデン民主党は北欧の他の国々で成功している右翼政党を真似ようとしている.

移民たちもスウェーデンの素晴らしさを認めつつ,しかし,アメリカ型の同化論ではない,スウェーデンらしさを押し付けられていると考える.政治家たちは移民を選別するために,イギリスやEUが進める「ブルー・カード」システムを考えている.しかし,スウェーデンの利他主義には深い同情があり,移民や難民を排除することは彼らの国際的な名声だけでなく,彼ら自身の心を傷つける.

スウェーデン・モデルは失敗したのか? 移民に対してリベラルであり過ぎた? と問われて,社会民主党の地域の指導者は,「No」と答える.ただし,われわれは与えたいと望むような生活を彼らに与えられない,と,長い沈黙を経てやっと答えた.


The Japan Times: Saturday, Jan. 19, 2008

China's currency peg is a gift to Europe

By MELVYN KRAUSS

(コメント) ユーロ高はEUの利益である,と主張します.消費者はより大きな購買力を得て,インフレが抑えられます.ユーロは,ドルに代って,さまざまな国際的役割を担うでしょう.外貨準備はますますドルからユーロに代り,中国はヨーロッパ企業に投資しています.

輸出面でユーロ高は不利益をもたらします.しかし,その他の面での利益は,輸出不振への対応に利用できます.中国の為替制度はしばらく変わりそうにありません.ユーロ高はEUへのギフトである,と.


The Observer Sunday January 20, 2008

Only science can save us from climate catastrophe

John Gray

(コメント) ブッシュも,環境保護派も,技術を振興し,人口増加を歓迎する点で,同じです.しかし,石油に依存したことはマルサスの危惧を失わせたように見えて,結局,原発やGMフーズ,バイオ燃料として再現しつつあるのです.原発を並べるより,人類がもっと少ない地球の実現が,環境に優しいでしょう.


NYT January 20, 2008

The Construction Site Called Saudi Arabia

By JAD MOUAWAD

(コメント) などと要約していると,実際は,石油の富で沸くサウジアラビアに,石油化学コンビナートとその都市が建設されています.クレーンが林立し,中国やインドなど,世界中から労働者たちをかき集めて,記録的な速さで建設作業が進行中なのです.

完成すれば,ここから世界中に工業製品の原料となるプラスチックが輸出されます.紅海沿岸で展開する,史上空前の建設プロジェクト,Petro Rabighは,サウジアラビア政府と住友化学の合弁事業です.

石油価格の高騰で歳入が増加しています.しかし,いつまで続くか分りません.サウジアラビアは,石油を掘り尽くす前に,その後の発展を支える基盤を何としても建設しなければなりません.都市は,人口増加の吸収政策でもあります.総人口2750万人,そのうち,700万人が外国人です.増え続ける外国人は時限爆弾と言われます.

また,歳入を政府系投資ファンドにして,先進諸国の主要銀行や企業に投資しています.あるいは,観光,金融サービスなど,新しい産業を誘致しますサウジアラビアは,Exxon Mobilと競争して,その生き残りを図っているわけです.


WP Sunday, January 20, 2008

An Establishment Teeters, in Kenya and Beyond

By Jim Hoagland

WP Tuesday, January 22, 2008

The Rot In Kenya's Politics

By Anne Applebaum


FT January 21 2008

A crash is China’s chance for reforms

By Minxin Pei and Wayne Chen

FT January 23 2008

Intransigent face of the Chinese superpower

By Victor Mallet

NYT January 24, 2008

China Genocide Olympics

By NICHOLAS D. KRISTOF

(コメント) 中国の株式市場は典型的なバブルであり,それは1989年の日本の水準に達している,とMinxin Pei and Wayne Chenは考えます.すでに15%の調整が起きているが,まだもっと大きな下落が必要だ,と.

その影響をどう見るべきか? 実体経済や世界経済に及ぼす影響も重要ですが,中国国内の政治システムに及ぼす影響も重大です.共産党の政治的な正当性を掘り崩すかもしれません.あるいは,経済危機に対する政治的不満を吸収して,政治的代表制や金融部門の改革に取り組むでしょうか? それは次のブームのための基礎を据える好機です.

Victor Malletは,西側が中国をどう見ているかについて,その安易な好感を戒めます.たとえ北朝鮮の非核化に協力しても,アメリカの銀行を破たんから救っても,中国の好況やオリンピックに向けた見栄えの良さは決して続かない,と考えます.だから,南シナ海における中国の行動に注意しておくべきです.

北京オリンピックを,超近代的な繁栄する超大国として,中国のお披露目パーティーにしてはならない,とNICHOLAS D. KRISTOFも主張します.北京はダルフールの虐殺に手を貸す「虐殺オリンピック」だという批判キャンペーンが始まっています.中国政府は石油を得るためにスーダン政府に武器を輸出し,スーダン政府への制裁が安保理で決まることを阻止しています.

中国の経済成長は著しく,それを非難して保護主義に訴える声には反対してきた,とKRISTOFは強調します.しかし,ジェノサイドを助長する姿勢を許すことはできない.


FT January 21 2008

Japanese equities

The Japan Times: Wednesday, Jan. 23, 2008

False choices for Tokyo

By BRAD GLOSSERMAN

Jan. 24 (Bloomberg)

Fed's Panicked Rate Cut Puts Spotlight on BOJ

William Pesek

(コメント) 日本の株式市場が資本流出に苦しんでいます.それはBRAD GLOSSERMANの論説見指摘されたように,日本政府や行政機関の政策決定や選択肢が硬直的で,あまりにも限定されているからでしょう.

GLOSSERMAN4つの改善策に,私も賛成です.1.日本政府は,アジアであると同時に西側である,という選択肢を持つこと.2.日中関係を重視し,改善すること.3.米中関係の深まりを敵対しせず,協力すること.4.アメリカの民主党に対する敵視を止めて,関係を強化すること.

日本は金利が高すぎるのか,低すぎるのか? バーナンキ議長は日銀の福井総裁が直面しているジレンマをもっと学んでおくべきだ,とWilliam Pesekは考えます.日本の投資家や政治家は,日銀を現金支払機として利用し続けました.


The Guardian Tuesday January 22, 2008

Poor management

Victor Keegan

NYT January 22, 2008

Mayor Bloomberg Tackles Poverty

The Guardian Wednesday January 23, 2008

Socialism in one city

Lindsey German

(コメント) 資本主義はその社会や文化を効率的なものに変える,と多くの人が信じています.なぜなら,中国を大きな例外として,ドイツや朝鮮半島の分割は,その実験室となったからです.ただし,それだけで資本主義が優れているとは言い切れません.富をもたらすとしても,大きな所得格差を生み出したからです.

Victor Keeganは,こう考えて,イギリスのブラウン首相が提案した富裕層への増税案を検討します.資本主義の下で,ますます富を増やす富裕層に対しても,彼らを説得する経済的な理由が一つだけあります.それは景気対策です.不況になれば,あまりにも貧しいがゆえに,追加の所得をただちに消費する人々が重要な景気刺激の担い手になるでしょう.財政赤字やインフレを好まないなら,富裕層は景気刺激策に増税で協力するべきなのです.

景気刺激策や貧困緩和策を唱える世界都市の市長が二人紹介されていました.億万長者でもあるブルームバーグMichael Bloomberg,ニューヨーク市長と,労働党左派であったリヴィングストンKen Livingstone,ロンドン市長です.

ブルームバーグの貧困解消案が具体的にどのような内容か,短い記事だけで分りません.しかし,貧困層の支出内容を調べて,子どもの健康や教育に対する関与を重視した支援策を採るようです.さらに,いくつかの小さな地区を選んで,貧困層の解消に役立つイニシアティブを実験させ,それらは民間のファンドから資金調達させる,というもののようです.公共支出に関して議論される,競争やモニタリングの不足を解決することが,教育改革などと同様に,ブルームバーグ流なのです.

他方,リヴィングストンの貧困対策は,一都市社会主義,でしょうか? それはかつてトロツキーが否定した一国社会主義よりも,さらに実現困難です.しかし,市長の対立候補であるLindsey Germanは,リヴィングストンが労働者の利益を無視している,と批判しています.ロンドンは,政権に就いた社会主義者が政策的には行き詰まる(資本家のストライキを恐れて),という例なのでしょうか? 好況期に投資が増え,富裕層が集まってくるだけでは,ロンドンの貧困を解消できませんでした.


NYT January 22, 2008

China Wonders if Its Stock Boom Is Over

By DAVID BARBOZA

Chinese stocks FT January 23 2008

Chinese economy FT January 24 2008

YaleGlobal, 24 January 2008

Globalization and the Markets – Part II

Steven Xu

(コメント) 膨れ上がっていた中国の株式売買が急速に減少しています.しかし,長期的な成長の見通しを失わないなら,急速な回復も期待できます.その原因は内外に多くあるでしょう.新興市場の制度や政府には,こうした乱高下を耐える用意が必要です.

北京オリンピックの成功に政治的な威信をかけている政府が,株式市場の下落によってオリンピックへの興奮を妨げられないように,積極的な介入を準備している,という話は常にあります.介入の成否は分りません.


IHT Tuesday, January 22, 2008

The failure of neo-liberalism

By Phillip Blond

21世紀はますます19世紀に似てきた.ますます少数の者に富が集中し,抜け目ない投機家たちが社会を支配する.

右派も左派も,増大する富や経済の安定性を人々が享受できると保障できない.自由な市場が社会のすべての部門を豊かにするというのは嘘であったし,ヨーロッパの福祉国家も破たんした.多くの人々が,制度化された貧困と熟練不足に閉じ込められている.福祉は減り,賃金は少なく,中産階級の借金は増え,仕事は不安定で,年金も頼りにならず,超富裕層が課税を免れ,コミュニティーを荒廃させる.

1979年のサッチャー,1981年のレーガンが権力を掌握して始まったフリー・マーケット自由主義は,ついに中国にまで達して世界を席巻した.その利益を得るかどうかは,あなたが誰で,どこにいたのか,どのくらいの金や資産を,自由化の始まるときに持っていたか,で決まる.フリー・マーケット型の経済発展とは,エリツィン時代のロシアや,ラテンアメリカ,アフリカが示したように,社会的な破滅であった.1980年代にIMFが進めたこうした自由化はようやく停止した.

新自由主義の富は,すべての者に約束されたが,実際は,一部の者にだけ集中している.そして社会はますます移動性を失った.それでも,スカンジナヴィアを除いて,旧来の左派はなす術がなかった.その国家管理経済は低成長と高失業に苦しんでいたからだ.

1997年に,ブレアとブラウンのニュー・レイバーがイギリスで政権に就いた.彼らは公共部門や教育を改革し,貧しい者にも社会的な上昇が可能な社会を目指した.しかし,10年を経て,その成果は見られない.サッチャーのもたらした不平等は,労働党政権下でも変わらなかった.階級の分裂はむしろ固まった.

彼らは問題の核心に手をつけない.右派も左派も独占資本主義を放置している.福祉も国家も,貧しい人びとの生活を変えることが出来ない.たった一つ,シェアード・エコノミーだけがこれを変えることができる.

富は誰のものでもない.資産,信用,資本の所有権を広く分配することだ.


FT January 22 2008

Europe will be able to bounce back

By Holger Schmieding


Asia Times Online, Jan 23, 2008

Bombs in Bhutan stir refugee crisis

By Mohan Balaji

(コメント) ブータンは世界でも最も高い難民流出率を示す国の一つです.そうであれば,王制から民主制への移行を理想化することには大きな留保がともないます.ネパールからの移民が国民の一部を占めており,エスニック紛争も懸念されます.


The Guardian Thursday January 24, 2008

One practical way to improve the state of the world: turn G8 into G14

Timothy Garton Ash in Davos

The Guardian Thursday January 24, 2008

Davos 08: The shifting global balance

Larry Elliott

(コメント) ダヴォス世界経済フォーラムのモットーとは,"Committed to improving the state of the world."  Timothy Garton Ashは,そのためにビジネス・エリートたちが世界中の政治指導者とパーティーを開くより,G8G14に改革する方がよい,と考えます.すなわち,中国,インド,ブラジル,メキシコ,南アフリカ,インドネシア,が世界経済の政策調整に加わります.それは困難ですが,国連安保理の改革より実現可能性が高いでしょう.

それは,19世紀の国際政治を安定させた"Concert of Europe"に似ています.

株価の下落を議論するより,もっと長期の課題を議論してはどうか? とLarry Elliottも考えます.それは,地球環境の維持と,世界のバランス・オブ・パワーの変化,です.オーウェルは,3大陸(アメリカ,ユーラシア,ヨーロッパ)の抗争と勢力均衡を考えました.しかし,必ずしも彼らは統一しないし,対立する関係でもないのです.

ヨーロッパが内部を統一して,ソフト・パワーによる国際秩序を築くように求めています.


Future shocks FT January 24 2008

Société Générale FT January 24 2008

Rogue traders FT January 24 2008

(コメント) フランス人の詐欺トレーダー,Jérôme Kervielが与えた損失は,49億ユーロと言われます.イギリス人トレーダー,Nick Leeson1995年にベアリング・ブラザーズを倒産させた以上の破壊力です.

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The Economist January 12th 2008

Emerging-market multinationals: Wind of change

Emerging-market multinationals: The challengers

(コメント) 非常に興味深かったのは,新興経済から勃興する多国籍企業の紹介です.かつて,ドイツや日本が世界市場を急速に席巻したように,今度は彼らが世界市場を支配する番です.フォードが買収したイギリスのジャガーやランドローヴァーを,今度は,インドのタタ・モーターズが買収したように.

新興市場の急速な成長とコストの安さは,その企業を急速に国際展開させる,と言います.なぜなら,彼らはそれまで欧米企業の進出に対して国内市場で競争してきたからです.国内市場を奪われる以上に,政府の市場自由化方針により,新興市場の企業は世界市場に挑戦し,その最良の戦略を試す機会を得ました.

その戦略とは,1.ブランドの世界化,2.エンジニアリングとイノベーション,3.限定された領域で世界市場を指導する,4.資源の優位,5.新しい優れたモデル.それぞれについて中国やインド,ブラジル,メキシコの企業が紹介されています.


The Economist January 12th 2008

Georgia: Misha bounces back

Charles Taylor in the dock: Bringing bigwigs to justice

The Chinese yuan: Revaluation by stealth

Economics focus: Same as it ever was

(コメント) ミーシャと呼ばれるミカエル・サーカシヴィリ大統領の採った急進自由化路線は,グルジアの旧支配秩序を徹底的に破壊し,国家権力を使って反対派を弾圧することでした.彼は,元来,シュワルナゼ大統領など,旧共産党の支配層を糾弾した民主化運動の指導者で,西側の支援を受けてきた人物です.経済は外国からの投資なども増えて成長を続けています.しかし,選挙で再選されたにもかかわらず,社会的混乱は終わりません.いまや,新しい専制君主となりました.

リベリアの独裁者,チャールズ・テーラーの裁判が紹介されています.人民元は,誰も予想しなかったほど,急速に増価しました.また,アメリカが過去のバブル崩壊と同様に不況に進むのか,むしろ例外的な回復を遂げるのか,エコノミストたちは議論しています.