IPEの果樹園2007

今週のReview

8/13-8/18

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

為替レート医療保険とイデオロギー, 安倍首相, 中国の社会契約, 交通事故とテロ, アメリカの国際的関与, コーエン氏の祖父の亡霊, 金融政策と市場の関係

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


FT August 2 2007

A rock or a hard place

Asia Times Online, Aug 7, 2007

Unconventional wisdom on exchange rates

By Joergen Oerstroem Moeller

(コメント) アジア諸通貨の緊張・対抗関係が解決できれば,IMFの機能や国際収支不均衡の円滑な調整,グローバリゼーションに対する不満のいくつか,が解決されるかもしれません.

人民元の為替レート調整と円安の修正は,重なり合いつつも異なった問題です.しかし,韓国のように,競合する輸出部門を持つ国にとっては納得いかない現実です.経常収支の黒字があれば為替レートが増価する(それを政府や通貨当局は許す)というのが国際的な合意ではないのか?

日本の場合,問題は為替レートではなく,金利です.他国に比べて金利が低いために,資本が流出して円安を続けるのではないか,と議論されます.日本がデフレを再燃し,実質的な金融引き締めによって不況になれば,アジア経済にも深刻な影響が出ます.それゆえ,円高や金利引き上げを強く主張できない,というわけです.

もちろん,問題は日本の景気回復がいつまでも不安感を払しょくできないことです.あるいは,輸出部門に利潤や景気回復,それゆえ政治的な支持率を依存していること,かもしれません.この点では,急速な生産性上昇や成長にもかかわらず人民元の増価を抑制し続けている中国と似ています.

FTは韓国やタイ,インドネシアに,彼ら自身にとってだけでなく,世界にとっても正しい選択を求めます.「彼らは選択に直面する.自分たちの通貨も(日本や中国と同じように)介入によって安くし,世界市場に安価な生産物を輸出するべきか? あるいは,競争力を維持するために生産性の改善を図るべきか? 前者は停滞をもたらすだろう.後者は難しいが,将来の繁栄をもたらす本物のチャンスである.」

Moellerは,為替レートの変化や成長率の格差は,経常収支の赤字や黒字を説明しない,と主張します.その意味では,為替レートの調整政策やIMFによる政策協調の促進は重要ではない,というわけです.たとえば,ドルとユーロの為替レートが50%も変化したのに,不均衡の調整は進んでいません.

そのような調整政策を捨てて,この論説が支持するのは,中国への労働集約部門の生産移転,そして,他の国はそれぞれが競争力のある分野を発見し,それを発展させ,維持する.国際分業の段階を登ることは考えられない,と.このイメージは,通貨統合したヨーロッパです.

Aug. 3 (Bloomberg)

Will the Real U.S. Trade Balance Please Rise

Michael R. Sesit

(コメント) 貿易不均衡について,多国籍企業の海外子会社による取引を見ること,また,雇用への影響を見るとき,企業内取引を見ること,が重要です.なぜなら,アメリカの多国籍企業が海外で行った生産によってアメリカに売る財を輸入から引き,アメリカ以外の国に売る財を輸出に加えるなら,アメリカの貿易収支は全く異なるからです.また,企業内取引としておこなわれるアメリカ国内における外国多国籍企業の雇用創出を考慮し,アメリカ以外の地域でも製造業の雇用は減少していることを考えれば,議会の保護主義法案はまったくのナンセンスだ,と.未熟練の低賃金職を残すために保護し,そのせいで外国から報復を受けるわけです.

FT August 6 2007

Refocus the Fund

By Mohamed El-Erian and Michael Spence

(コメント) 為替レートの調整や介入に関しては,IMFが国際合意の形成やその実行に重要な役割を担うはずです.しかし,専務理事の後継問題に関してだけでなく,RatoからDSKが継承することを望んでいる国際機関は,現実の変化に見合った制度の転換を必要としています.Mohamed El-Erian and Michael Spenceは,その課題を「新興経済の世界市場統合」と考えます.

為替レート,保護主義,成長戦略,などが変化したのは,新興経済が世界経済の循環や市場の影響を変えてしまったからです.IMFはこのことを正しく理解し,各国に正しい政策を助言し,不均衡や対立を回避するような合意を形成するように助けなければなりません.

雇用を増やし,貧困を減らし,インフレを抑制しなければなりません.また,すべての国に当てはまる政策は存在せず,各国は政策の決定を譲歩しないし,国内の既得権を持つ集団に制限されます.IMF自身が巨額の融資を行って,各国の政策変更を要求する時代には戻れないでしょう.


BG August 3, 2007

A free-market cure for US healthcare system

By Rudolph W. Giuliani

(コメント) 日本では年金と社会保険庁が政権を交代させかねない問題になっています.アメリカでは,医療を保険をめぐって,民主党と共和党の候補がイデオロギー論争を展開します.共和党の大統領候補で,前ニューヨーク市長のジュリアーニは,次のように主張します.

平等で,手ごろな価格の,職場を移っても利用できる,医療保険をアメリカ人は求めています.これについて民主党の候補たちは,「政府による強制保険」モデル,すなわち,ヨーロッパ,カナダ,キューバを求めます.他方,共和党候補たちは,「個人の選択と意思決定を拡大する」モデル,競争を促進してコストを下げるモデルを考えます.そのために,民主党は税金を増やし,共和党は減税します.民主党は,患者や医者ではなく,国家の官僚に権力を与えます.それはヨーロッパのやり方であり,アメリカではなじみません.

自営業や低所得労働者に不利な税制が医療保険を歪めてきました.共和党は医療保険にかかる費用を課税所得から控除します.こうして多くの者が自分に必要な保険を求めて民間の保険商品を市場で競い合わせるのです.また,連邦制を重視し,各州の異なった社会福祉制度を競わせます.強制加入の,コストの高い制度を要求する州では,市民に州外の保険制度を購入することも認めます.そして,医療保険制度を破たんさせる理由の一つになっている,医療事故に対する訴訟を制限します.

「アメリカの医療保険制度の未来は,自由市場型の解決策にある.社会主義モデルではない.」


BRAD GLOSSERMAN Wanted: creative leadership The Japan Times: Friday, Aug. 3, 2007

David Pilling A shogun in the shadows FT August 3 2007

Richard J. Samuels The more muscular Japan BG August 7, 2007

(コメント) もし安倍首相が権力を掌握し,国民の信頼を回復したいなら,日本経済の改革と国際関係の改善に取り組むべきでしょう.内閣改造までに,まだ二つや三つは重要な事件が起きるはずです.たとえば,株価の連鎖安です.具体的な問題への対応や,他の勢力との協力関係を,適切な言葉によって示すことで,政治的能力を示さなければなりません.年金問題,貧困家庭,老人介護,非正規労働者の問題を取り上げ,積極的な対話と解決策を具体化するよう関係者を励ますでしょう.財政再建や金融制度・政策の改善,また,中国政府との環境や品質・安全基準,その検査体制への協力,朝鮮半島の南北会談,東アジアの非核化,円安,市場統合,移民・難民問題を取り上げ,日本政府としての姿勢を示すことでしょう.

他方,もし民主党が政権に就きたいなら,こうした具体的な問題で,安倍内閣に代わる優れた改革案を示すことです.安倍政権が,民主党の失敗によって延命されることを懸念します.私は,もう一つの自民党である,という小沢氏の戦略を,全く支持できません.

そして,さらにねじれた自信を深めた安倍政権の支持者たちは,ナショナリズムと軍備拡張,国際摩擦を自分たちの主張の正しさを証明する変化として,喧伝するのではないでしょうか? その発端は,少なくとも一部は,北朝鮮の挑発でした.ヒロシマ・ナガサキ,を核兵器廃絶の人類史的なメッセージとして担うことなく,核武装論まで議論し始めた日本の自主外交・軍事強硬派は,アメリカにも警戒され始めています.原爆の日には,自分の信条を偽って,選挙のために甘言を呈す,無表情な安倍首相を信じる被爆者がいるでしょうか?

WP Sunday, August 5, 2007

Ouster By the People

By Robert Dallek

(コメント) アメリカ国民は,まだ17カ月も任期を残したブッシュ大統領と政府に対して信頼を持てない,という問題を抱えています.ブッシュ大統領の不人気は自業自得であり,彼が大統領であり続けることはアメリカにとって不生産的,あるいは破壊的ですが,憲法を無視することもできません.ニクソンのように辞任するのが理想的ですが,ブッシュ=チェーニーが自ら辞任することはありえない,というわけです.憲法の修正を求めるべきか?


WP Friday, August 3, 2007

Young Russia's Enemy No. 1

By Sarah E. Mendelson and Theodore P. Gerber

FT August 5 2007

Russias best behaviour

The Guardian Wednesday August 8, 2007

South Ossetia

IHT Thursday, August 9, 2007

Don't rule out Putin's initiative

By Henry A. Kissinger

(コメント) プーチンの時代に,ロシアはソ連崩壊後の混乱と自信喪失から立ち直りました.プーチンは国内の権力を集中し,石油・天然ガスによる富の形成と独占を維持して,対外的にも強硬姿勢を誇示します.アメリカやその同盟諸国に対して「新冷戦」を指摘し,ソ連時代の影響力を取り戻そうとしています.

その強い対外交渉姿勢に対応して,ロシア国内でもプーチン政権に批判的なメディアや反体制の民主化運動が弾圧され,コーカサス地方への政治・軍事介入も誇示するようになりました.アメリカに敵対し,ソ連時代に至る強いロシアの復活を支持する言論や政治勢力が若者たちの間に形成されています.

ブッシュ政権の反テロ同盟は,こうしたプーチンへの民主化要求を弱め,その国際的な影響力拡大を容認してきました.多くのロシア人にとって,スターリンは英雄であり,ブッシュはこの無秩序な世界を作り出している指導者の一人に過ぎません.

プーチンは,それが周辺国であろうが,北極海であろうが,資源確保に妥協することないし,また,領土や民族主義においても強硬姿勢を和らげることはありません.

しかし,キッシンジャーによれば,ロシアがイランからの核攻撃に対して共通の防衛システムを提案したことも,画期的な面がある,ということになります.リアリストの国際政治においては,プーチンのレトリックなど重要ではありません.ニクソン政権のミサイル防衛システムを拒んだ議会よりも,1972年の弾道ミサイル制限(ABM)協定を合意したソ連の方が,好ましい相手であったわけです.

ソ連崩壊後に,ミサイルや核兵器の拡散を抑制するには,アメリカとロシアが合意しなければなりません.アメリカ大統領は,国民がたとえほんのわずかでも核攻撃にさらされる危険を残すような状態を受け入れることはないのだ,と自信いっぱいに主張します.・・・アメリカ人以外ならよいのか?

アメリカとロシアは世界の覇権を争っている時代をすでに終えました.もっと大きな危険や敵を抑えるために,プーチンと組むことは正しい選択だ,と指摘します.


CSM August 03, 2007

Lessons of China's product-safety scandals

By Robert Kapp

アメリカ人は再び中国に仰天した.製品の安全性を無視し,食品には毒物が混じっている.中国北部の地方では子供たちを奴隷にしたレンガ工場が見つかった.そして,国民の健康を脅かしながら賄賂を得ていた国家食品薬品局の長官は処刑された.

アメリカ人の評価はすでにおなじみだ.「西部開拓時代の資本主義」,「精神的な真空状態」,法の支配が欠如,一党支配の弊害.

しかし,現時点の事態が示す深刻な問題は,近代中国の社会契約が動揺していることだ.すべての社会と同じように,現代中国は過去を引き継いでおり,現代の問題はこの1世紀に種がまかれた.

1920年代までに,中華民国は無残な形で崩壊し,各地域の軍閥が国を分割支配した.外国の軍隊が80年間も無防備な中国人から特権を得てきた.弱い者を搾取することは禁じられなかった.飢餓,伝染病,そして社会的な暴力がその土地を支配したのだ.

中国の惨状こそ,1911年に革命を指導し,2000年に及ぶ王朝支配を終わらせた孫文が深く心を動かされた現実だった.1924年,その死の前年に,孫博士は中国の病気を治し,国民を救う処方箋を書いた.

「われわれはヨーロッパやアメリカの諸国民とともに最前列に出るべきだ.しかし,中国人にはただ家族だけが,一門の繁栄だけが重要である.彼らには国民という精神がない.だからたとえ4億という人口を擁しても,バラバラの砂の頂点でしかない.今日,われわれは世界で最も貧しい,もっとも弱小な国民であり,国際情勢の最下層に位置する.・・・もしこの破局を抜け出したいなら,ナショナリズムを信奉して,この国を救う国民精神にしなければならない.」

孫の警告は近代中国の中心課題であった.膨大な貧しい民を一つにまとめ,バラバラな人口を組織された政治体制に変え,国民中心のアイデンティティーを確立する.

25年を経て,孫の中国国民党は毛沢東の共産党によって本土から追放される.共産党は冷酷な,しかし効果的な組織された規律,神話となった強固なイデオロギー,暴力の独占を用いて,ついに,社会・政治的な基盤を固める.新しい中国の社会契約が形成される可能性が開かれたのだ.

外国の軍艦,暴漢,布教団体は去って,各地の軍閥や武装勢力も一掃された.アヘンが蔓延する中国の惨状には終止符が打たれた.農村の収奪者たちはその権力を奪い取られた.

何千年も王朝が独占してきた権力は,すべて毛沢東が握った.民族の強さはその大衆的な価値とい切り離せない.中国の大衆に新しい国民的な信仰体系を行き渡らせるために,共産党の宣伝部隊は政治の教条化と社会的な動員を駆使した.

レトリック,イメージ,中国の発作的な政治キャンペーンでさえ(「大躍進」のように)国民に尽くすための自己犠牲を強調した.「人民を救え!」 共有された道徳と政治の規範に個人は服従せよ.

1970年代の後半,文化大革命の大混乱の後,それに生き残った政治指導部は「改革」を目指した.ケ小平の体制が国内で市場経済へのダムを開き,世界経済の主潮流に中国が向かい始めた.

その全過程において,共産党は組織的な挑戦を油断なく退け,至上の権力を維持した.1949年以降の国民的統合をもたらす基盤となったレーニン主義的組織が,まだ,機能している.7000万の党員たちは,もし共産党の経済的・社会的な指導力がなかったら,中国の驚異的な経済進歩は起こらなかった,と確信している.

現在の中国の経済発展と世界的な影響力を,孫文は明らかに喜ぶだろう.しかし,社会契約の難問は今も残っている.子どもが飢えている家族に偽物の,栄養もない「粉ミルク」を売りつけることを,中国の現代のイデオロギーは決して認めていない.公式に表明される大衆的な価値は,役立たずの致命的な偽造薬品の生産を決して是認しない.

悪質な薬を承認してわいろを受け取った役人は死刑になったが,彼は「人民に奉仕する」などと考えなかった.それは孫がいったように,バラバラの砂の塊だ.レンガ工場の所有者も人民のことなど考えなかった.中国の至る所に現れる地方役人や共産党幹部も,不動産開発で得られる利益のために農民を追い出して土地を奪う.

21世紀におけるこうした啓示の背後には,旧来のジレンマが存在する.社会的な略奪行為が蔓延するのを抑えるために必要な,合意された社会規範を,中国はどうすれば形成できるのか?

何千年も,中国の伝統的秩序は,個人・社会・政府の行動を行動規範により,緩やかに,しかし継続的に結びつけていた.19世紀,20世紀の混乱が,それらを破壊してしまった.現在,この永遠のジレンマに対して,中国の指導者たちは「調和ある社会」を求め,官僚の汚職を糾弾する.

皮肉なことだが,孫文は中国が世界で尊敬されるという理想を掲げ,それは「国民精神」よりも,むしろ才能ある,エネルギッシュな中国人に,経済活動をイデオロギー的に正当化することで達成された.中国の国威は経済進歩によって高まった.しかし,精神の反対の側面,すなわち市民精神のジレンマは続いている.この夏,生産物の安全性や社会的災厄の知らせの中に,その深いメッセージを読む.


The Guardian Saturday August 4, 2007

The shame of farm subsidies

Tim Watkin

(コメント) アメリカ政府は農業に補助金を支払っています.それが世界の農産物価格を低下させ,アフリカなど貧しい国にまで輸入農産物で貧困や失業をもたらしており,しかもそれは,イラク戦争によって与えた苦難をはるかに超えています.欧米の農業補助金は,ドーハ・ラウンドを破壊し,裕福な諸国の農産物市場を貧しい国から隔離します.それはブッシュ政権ではなく,むしろ議会を支配する民主党の選択です.


LAT August 4, 2007

Homer away from home

(コメント) 「シンプソン」は,言ってみれば,「サザエさん」や「ドラえもん」,「クレヨンしんちゃん」のように,国境を越えて愛されるアニメ・ドラマ・シリーズです.

架空の町の,架空の家族.ただし,アメリカのどこかです.世界でたった一つ残った超大国です.そのアメリカの日常を,あるいは政治家やスターたちを,風刺と笑いで伝えます.


BG August 5, 2007

The Mideast needs more guns?

WP Monday, August 6, 2007

The Rush for a Legacy

By Jackson Diehl

NYT August 7, 2007

Those Missing Guns in Iraq

(コメント) 和平交渉の代わりに,巨額の武器援助をすることは,さまざまな批判を招いています.レイム・ダックのブッシュ政権が外交を支配することで,大きな過ちや危険を冒すのではないか,と恐れられています.アメリカが中東に持ち込んだ武器の多くは失われ,闇市場や武装勢力に流れています.


LAT August 5, 2007

Road kill

By Gregg Easterbrook

(コメント) 政治は死者と生者の分配関係も支配するようです.テロで死んだ者への報復はふんだんに行うけれど,自国の道路上の交通事故で死んだ者はそのまま放置される.

「9・11以後,245000人のアメリカ人がテロの犠牲になったとしよう.アメリカは完全に国家的危機の感情に支配されるだろう.アメリカの政治指導者たちは,たった一つのことしか話さない.アメリカ軍には戦う用意ができている,と.そしてホワイトハウスもアメリカ国民にとって危険が根絶されるまで休むことはない,と.

しかし,245000人のアメリカ人は,誰も気にしないような,特殊な脅威によって死んだ.9・11が3000人の命を奪った悲劇は二つの戦争を正当化し,その戦争でアメリカ兵たちは犠牲を強いられた.他方,245000人の命を奪ったのは,同じ期間にアメリカの道路システムが生じた交通事故である.そして,それに対する報復は何もない.テロは毎日,毎日,新聞のトップ記事になっている.しかし,メディアは死亡事故をほとんど伝えない.」

この10年は,おそらく人類史上で初めて,世界の戦争による死者(およそ10万人)よりも交通事故による死者(120万人)の方が多かった,と指摘します.

いくら慎重に運転しても避けられないような事故がある,とEasterbrookは主張します.それは社会的な責任であり,政策の問題です.たとえば,日々の輸送や移動をこれほどトラックや自家用車に依存しない社会であれば,交通事故による死者はもっと少ないはずです.自動車産業やメディアは道路の安全性について関心を持たないよう国民を誘導している,と批判します.あるいは,議会は運転中の携帯電話の使用や,安全性を無視したRUV,高馬力の自動車の市街地乗り入れを禁じる法律を制定するべきです.

テロの死者には何の猶予も与えないのに,なぜ交通事故の死者には政治が行動を起こさないのか?


LAT August 5, 2007

We're still the world's caped crusader

By Robert Kagan

WP Monday, August 6, 2007

The Next Intervention

By Ivo Daalder and Robert Kagan

(コメント) 冷戦終結とともに華やかに論壇をにぎわせた理想世界のイメージは,それが現れたときと同様,急速に死滅しました.イデオロギーや戦略の対立は消えてなくならなかったのです.リベラルな国際秩序も,国民国家の消滅も,まったくのたわごとでした.ロシア,中国,イスラム過激派などが入り乱れて,世界の秩序を混沌へ引き寄せます.大国間の対立や軍備増強は続いています.

あたかも,その責任がブッシュ氏の外交的な失敗,理想の秩序を破壊した軍事的冒険主義にある,と批判する者もいます.しかし,Kaganは逆だと確信しています.たとえば,ブッシュ大統領はイラク戦争を引き起こした歯車の一つに過ぎないのです.第二次世界大戦以来,アメリカは「人類の導く機関車」の役割を果たしてきました.バランス・オブ・パワーによる平和ではなく,アメリカが圧倒的な軍事的優位を占めることで,アメリカの理想が支配する平和を求めてきました.イラク戦争やブッシュ・ドクトリンはその歴史を引き継いでいます.

世界を国連安保理や,中国,ロシアなどの求める軍事的な駆け引き,また,地域によってはイスラム過激派のイデオロギーに,ゆだねる方が平和で,理想的な秩序になる,と本気で考える者がいるのでしょうか? Kaganは,リアリストの予想したような反アメリカの軍事聡明は形成されていない,と考えます.それゆえアメリカの優位を再建することが可能であり,唯一望ましい未来をもたらす秩序なのです.そのためには,カントの理想主義に劣るとしても,アメリカが国際的な関与を後退させてはなりません.

アメリカは将来も世界的な軍事的優位と正当な軍事力の行使を続けるだろう,と後者の論説は述べます.そのためには,1.アメリカの軍事力は,領土や自国の影響力拡大を目指して行使されるのではなく,他国における軍事的な悲劇を回避するために行使される.2.軍事力行使の正当性を,どうやって,だれが判断するのか? それが国連安保理であるためには,常任理事国の「脅威」に関する合意が条件となります.イラク戦争であれ,北朝鮮,イラン,コソボであれ,合意は存在しません.もしそうであれば,主要な民主主義諸国が合意することに,正当性の根拠を求めます.

IHT Tuesday, August 7, 2007

The dispensable nation?

By Brent Scowcroft

(コメント) Scowcroftは,グローバリゼーション,すなわち産業革命以来の世界の激変を強調します.国際秩序の性格が変わるのは避けられません.この新しい世界では,アメリカだけが新しい秩序の形成を促す「触媒」として機能できるでしょう.中国にも,ヨーロッパにもできません.

Scowcroftの考えるグローバリゼーションとは,国境が消えて,世界の中産階級が増大し,同時に,貿易や移民などで旧来の中産階級の地位が,それゆえ,国内政治が不安定化したことです.問題はますます世界的な解決策を必要としており,国際協力や国際秩序の重要性は増すでしょう.

そのような世界の再編過程で,最も重要な役割は大西洋同盟であり,それを率いるアメリカなのです.次の戦いは国家間ではなく,国家内で,特に破たん国家で始まるでしょう.世界システムに新しく参加した発展途上諸国が破たん国家に落ち込まないように,さまざまな予防策も必要です.

世界はアメリカの支配を嫌っているが,アメリカ抜きにできることは限られている.そのことをすべての国民が理解するでしょう.


The Guardian Monday August 6, 2007

Terrible, but not a crime

Oliver Kamm

(コメント) イギリスにおけるトライデント核配備に反対するグリーンピースなどが,ヒロシマ・ナガサキの核攻撃について,アメリカ政府の罪・間違いを批判している,ということです.Kammは,この二つの問題を同一視してはいけない,と主張します.

トルーマン大統領が核の使用を決めたのは,ソ連に対して核兵器の保有を誇示するためであった,すなわち,冷戦の始まりであった,という解釈にKammは反対しています.むしろ従来通り,それは日本が降伏するまでに犠牲者が増えることを防ぐのが主要な理由であっただろう,と考えます.それは,日本側の証言や研究でも,日本政府内の和平派を強めた,と.

アメリカ側が日本との本土決戦に及べば,双方に,大量の犠牲者が出ただろう,と考えたのは,それまで日本軍・大日本帝国が行った強制労働や捕虜への虐待,何より,日本国民自身の苦しみを終わらせるためであった,と考えます.玉砕や特攻隊,占領地域における支配や捕虜の扱いが,アメリカと日本の和平交渉を難しくしたのではないか,と私も思います.

私は,核攻撃を行った際の動機や理由がいろいろあり得たことを当然と思いますし,それを詳しく知りたいです.同時に,核攻撃などなくても,同じような望ましい結果や,もっと異なる歴史が可能であったことを研究できると思います.広島・長崎への原爆投下は正しい選択・政策だった,と説明するような研究は,そのどちらでもないのです.


WP Monday, August 6, 2007

A Less Ambitious Approach to Immigration

By Arlen Specter

DER SPIEGEL 31/2007 - July 30, 2007

Moroccan-Born Mayor Dispenses Tough Love to Immigrants

By Erich Wiedemann

(コメント) 1200万人の非合法移民に永住権や市民権を与える.国境警備を厳格にして,重要な個所には長大なハイテク・フェンスを建設する.その他の提案を,議会は受け入れませんでした.あまりにも野心的であり,負担も大きすぎるから.しかし,一時雇用や非合法移民がアメリカ社会に地下経済を拡大することは阻止しなければなりません.改革案には,家族の呼び寄せから熟練技術者の優先という移民政策の目的の変化も含まれていました.

モロッコ生まれのアムステルダム市長,Ahmed Marcouchについて,Wiedemannは書いています.2004112日に暗殺されたTheo van Goghは,イスラム教徒による女性差別を告発する映画を作りました.移民2世の犯人はイスラム原理主義に帰依し,この殺人を実行しています.その後,アムステルダム市長は,この町で多文化主義が生き残るためにも,治安維持のための強硬策が必要である,と主張するようになります.開放的な移民政策を維持する条件は,学校,警察,刑務所,でしょうか? 自分はイスラム教徒であるし,オランダを自分の国として誇りに思っている,と.

しかし,伝統的なイスラム教徒たちは,彼を背教者とみなします.


NYT August 6, 2007

Food That Travels Well

By JAMES E. McWILLIAMS

(コメント) 「フード・マイル」という言葉を知っていますか? 食べ物が食卓に届くまで,移動してきた距離を示します.この距離が大きいほど,世界の隅々まで,私たちの生活が影響を及ぼし,あるいは,輸送のためにエネルギーを費やしていることが分ります.ある種の環境保護論者たちは,地域の自給自足を理想にしています.自分たちの農地でとれたものを食べることが,最高に正しい・環境にやさしい生活である,と考えているのです.

フード・マイルが画期的に増大したのは,化石燃料の利用と関係あります.内燃機関と輸送システムが,植民地のプランテーションや国際分業を世界的に拡大した背景にありました.温暖化ガスの削減がフード・マイルとも結びつくわけです.

しかし,ヨーロッパの環境保護運動には,しばしばアメリカの環境学者が反対します.フード・マイルを減らすことが環境を悪化させる場合もある,というわけです.自由貿易に反対して自給自足を唱える者に反論するのと同じです.


NYT August 6, 2007

Career Women in Japan Find a Blocked Path

By MARTIN FACKLER

(コメント) 男女雇用機会均等法が1985年に成立したにもかかわらず,女性労働者は日本で差別されています.法律は,工場や建設現場,タクシー運転手に女性の雇用を増やしましたが,彼女たちが職場のボスになったケースは非常に限られています.2005年には,女性労働者が雇用の半数を占めていたのに,何らかの管理職は10.1%に過ぎず,アメリカの42.5%と比べて,大きな違いがあります.その原因は,単なる性差別というより,日本企業の一日中サラリーマンを拘束する「企業文化」にある,と主張します.

日本経済や社会の歪みが,私たちの生活を貧しくしている,と思います.


WP Tuesday, August 7, 2007

Not My Grandpa's Democrats

By Richard Cohen

(コメント) Richard Cohenの亡くなった祖父が,久しぶりに枕元に立って,民主党の変わり果てた姿に憤慨しています.彼は社会主義に近い考えを持った移民であり,その時代の良識を愛していました.

彼は新聞を持って怒っています.「民主党に何が起きたのか?」 と言うのです.「私の生きた時代には,民主党は弱い者の味方だった.」・・・「弁当箱を下げて,働きに行く労働者たちが,ヘッジファンドのマネージャーよりも高い率で税金を支払うのか?

Cohenは,彼らがリスクを冒して社会に大きな富をもたらしていること,そのキャピタル・ゲインは所得として15%の税率を認められていること.などを説明します.「これは合法なのだ.」

「合法? くそったれ!」と,おじいさんは怒ります.「おまえは,公平,という言葉を知らないのか?」

「でも,おじいさん,これは公平の問題ではないよ.マクロ経済学と税制に関するややこしい問題があってね.それを正しく扱わないと,経済が沈んでしまうから.」

「何様のつもりだ? 貧しい者が裕福なものよりも多くを負担して,それが正しいなどと,お前はそのマカロニ経済学で解説しようというのか? 恥を知れ!」 今の民主党員はウォール街のために仕事をしている,と不満を述べます.

あるいは,サブプライム・ピープルを話題にします.貧しい者にも住宅が買える,という夢をかなえてやると,銀行家たちは融資して,それを証券化しました.金利が上昇するとどうなるか,彼らは説明しなかったのです.そして,貧しい人たちは住宅を失ってしまいます.

「私に言わせれば,それは犯罪だ.誰かがやつらを処罰しなければならない.強盗と同じように.」・・・「民主党はどこへ行ったのか? 弱い者のための政党だった.それが,どこにもいない.この犯罪行為を糾弾し,街頭に出て抗議活動をしろ! 私の時代はそうだった.ボイコットを組織し,舞台ではショーをやれ.あるいは,そんなにウォール街が怖いのか?」

「それは無理だ,時代遅れだよ・・・」

「こぎれいなパンツをはいたら,そんなことも言えるのか.正直であるとか,公平さを求めたら,それは時代遅れだと? ブラックストーン・グループの会長が巨万の富を得て,しかも税金はほとんど支払わないのを知っているか? ニューヨークで何百万ドルもかけてパーティーをする.かつてロックフェラーが所有した35部屋もある屋敷を所有し,壁には美術品を並べる.ロビイストを何十人も雇って,税金を払わない.これが正しいのか?」

「多分,もう少し払った方が良い・・・」

「多分! たぶん,お前はコラムを書いて,民主党が誰のための政党なのか,奴らを蹴とばしてやるべきだ!」


FT August 7 2007

We need rules for sovereign funds

By Jeffrey Garten

(コメント) ヨーロッパやメキシコ,アジアの通貨危機の際に,ヘッジファンドの危険性が指摘されました.最近の国際的な企業買収についても,投資ファンドの危険性が指摘されました.各地の金融危機や経済危機について,多国籍企業の直接投資について,国際的な監視や規制を求める声がありました.しかし,主要国は動かなかったのです.

Gartenは,政府による投資ファンドが主要国の関心として国際規制に向かうことを支持しています.その理由は,規模が大きすぎるからです.しかも,産油諸国や中国,ロシア,など,自由主義的な国際秩序に対立する行動を取る危険がある,と考えます.サウジアラビア,日本,韓国,・・・アメリカの同盟国であっても信用できないようです.その源泉は国際収支不均衡であり,アメリカ政府の赤字やアメリカ系銀行の信用供与ではないのか?

その原因が何であれ,各地の不安や危機が急速に国際的な危機を呼び起こす点は問題です.既にアメリカのサブプライム.ローンで起きているように.しかし,株式市場や株主の売買,その資金の出所や使途について,制限することができるでしょうか? そのための情報の確認,公開,事後の調査を行う政治的意志があるのなら,もっと早く実行できたのではないか? と思います.

Gartenは,その原則を示します.透明性,相互性,そして,所有のガイドライン,です.政治的な主体として,その特異さを市場でも分類しておくべきだ,というわけです.


FT August 7 2007

Market fears must not drive the Fed

Caroline Baum Fed Gives Weak Nod to Growth and Credit Risks Aug. 8 (Bloomberg)

John M. Berry Fed Notes Market Turmoil, Sticks to Its Guns Aug. 8 (Bloomberg)

A Weak Dollar and the Fed NYT August 8, 2007

STEVEN R. WEISMAN Bush Faults Easy Money for Volatility NYT August 9, 2007

Walden Bello Marking time until the meltdown Asia Times Online, Aug 9, 2007

(コメント) 中央銀行は金融システムの不安を鎮静化しなければなりません.しかし,失敗した融資によって破たんする金融機関を救済してはなりません.この原則を守ることは難しいようです.

FTは,インフレ抑制のためにまだ金融引き締めを維持するべきである,と考え,サブプライム・ローンを理由に金融緩和することを批判します.

さまざまな論説を見て思うのは,中央銀行(あるいは総裁や金融政策)が評価に依存しており,その評価は非常にあいまいで,不確かな状況に依存しており,結果的に成功は評価を高めて,それゆえ,さらに多くの成功をもたらすけれど,同時にその結果,方針転換を間違ってしまうこともある(後でわかる),というようなことです.

金融政策や金融市場に大きく依存した社会システムに対して,スピード規制や社会規範を要求することには,十分な根拠があると思います.

Gillian Tett Whats Japanese for bail-out? FT August 8 2007

William Pesek Wolfowitz-san Should Be the BOJ's Next Governor Aug. 9 (Bloomberg)

Philip Bowring Japan plays it safe IHT Thursday, August 9, 2007

(コメント) ドイツの銀行IKBに対する救済は,日本が1990年代の金融危機において,主要銀行の奉加帳によって破たん銀行を救済したケースとそっくりだ,とTettは指摘します. そして,救済の過程で日本の銀行システムは信頼を回復できないまま,不況を長引かせた要因であったかもしれません.日本とドイツの集団主義的資本主義は,今度も,アングロサクソン型資本主義に破壊されるのでしょうか?

日本政府や官僚が日銀のトップを占めるなら,低金利と円安が永続化するのも不思議ではありません.それによって利益を得る者と,損失を強いられる者がいるのに,日本銀行は既得権による総裁決定を改める気がありません.世銀やIMFがトップの人選を公開し,審査を透明にする努力を始めたように,日銀も積極的に新しい人選を組織改革に向けて宣伝するときです.


FT August 8 2007

Summit sunshine

The Guardian Thursday August 9, 2007

Korea: Sun continues to shine

(コメント) 朝鮮半島の南北会談がにわかに期待を高めているようです.日本では拉致問題によって交渉が止まってしまいましたが,韓国や欧米との交渉は進んでいます.日本政府はどのように関与するのか?

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The Economist August 3rd 2007

How to deal with a falling population

Japans changing demography: Cloud, or silver linings?

Sovereign ?wealth funds: Governments go shopping

Sovereign-wealth funds: Keep your T-bonds, well take the bank

Peru: That elusive feel-good factor

Congo: Only just staying in one piece

Israels economy: Vigorous but vulnerable

Charlemagne: Money-go-round

(コメント) 高齢化から人口減少に進む世界,その先進国である日本について,The Economistは議論しています.社会としてそれに対応し,生活スタイルや企業などの制度を調整するなら,高齢化は日本を改善するチャンスです.今は,そうなっていません.

政府による投資信託の増大をThe Economistは支持しています.他方,EUは政府間の再分配を重視しています.

その他,小国の発展に関心を持ちました.ここでは,ペルー,コンゴ,イスラエルについて.