IPEの果樹園2007

今週のReview

7/9-14

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

宗教と政治, アジア通貨危機香港返還10周年, ブルームバーグ&シュワルツネッガー, アル・ゴア, サルコジ, メルケル, 中国にマルクス主義を輸出する, 中央政府を強化せよ, 戦禍の記憶, イギリスの憲法改正論, 自爆テロは滅ぼせない, ルワンダのカガメ

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


FT June 28 2007

How futile has been our faith in exorcising religion

By John Gray

世界情勢において,宗教は衰退する力であったが,再び決定的な要因になっている.ラシュディー事件,ブッシュ政権の受精卵研究反対,ポーランド政府の戦闘的な教権体制,などはほんの一例でしかない.将来もこの傾向は変わらないだろう.消えてなくなるとか,私的な生活に限られる,ということはなく,宗教が再び政治の核心に現れた.

多くの国の政治家はこのことに困惑している.世俗化が続くというのは,何世代も西側インテリの確信だった.コンドルセからマルクスまで,現在に至るまで,啓蒙主義の思想家は宗教を後進性の副産物とみなした.知識,富,教育,民主主義がひろまれば,宗教の力は弱まるに違いない,と.われわれの世界観は科学によって形成され,死後の平安を求めるよりも,人間の条件が絶えず改善されることを望むだろう.いつか,人類は宗教を必要としなくなるはずだ.

こうした意見にも関わらず,そのような世俗化が進む証拠はない.この10年ほどについて,確かに,アイルランドやスペイン,ポルトガルのようなカトリックのヨーロッパで教会は地盤を失い,イギリスはいつのまにかキリスト教国家でなくなった.しかし,近代民主主義の多くのパラダイムを示すアメリカは,トクヴィルが驚いたように,今も宗教が強い.また共産主義崩壊後のロシアでは,70年以上も宗教が迫害されたにも関わらず,エリツィン,ゴルバチョフ,プーチンはすべて信者であると言い,かつて皇帝が君臨した時代のように,ギリシャ正教が国家の一部になっている.

人生において宗教が重要でなくなると信じる理由は何もない.それ自体が世俗の時代の考えであって,疑わしい.過去の歴史を形作ってきた政治的大衆運動は,宗教の心理的・社会的機能に多くを頼っていた.ある時期,共産主義が,未来のユートピア的な約束を信じ,現実の醜さを都合よく忘れてしまう西側諸国の人々にとって,重要であった.しかし,ユートピアの見通しは色あせ,多くの者が宗教に回帰している.過去の正規の政治的信条が,伝統的な信念,残念だけれど,それはしばしば原理主義の戯画であるが,さまざまな変種に道を譲った.

宗教のない世界に向かうとか,それが衰退することは決してなく,世俗的時代が終わった,とさえ言えるだろう.過去の大衆運動は溶解して流れ去り,新しい世界秩序の展望はもはや信用できない.イラクにおける体制転換は,長く試みられてきたユートピア的プロジェクトの最後のものであったようだ.世俗的な自由民主主義ではなく,それはアナーキーとイスラム教的な神政政治をもたらした.いまでは,過去と同様に,権力と自然資源を求める闘争と並んで,宗教が戦争における有力な要因だ.

歴史が示すように,宗教が無際限な権力を握ることは危険である.しかし,世俗的な国家の制度化はこうしたリスクを減らさない.教会と国家とを憲法が分離しているアメリカでは,他の先進国では見られないほど,原理主義が政治に影響している.フランスで学校におけるスカーフの着用が問題になったように,世俗的な体制も信仰の問題を避けられない.

多元的社会では,単一の宗教型を排除するほど確立されることはありえない.しかし,公的な生活に諸宗教を統合することは,それらを永久に排除することより,当然重要になる.異なる歴史や条件を考えれば,それには大きな違いがあるだろう.単一の,普遍的な解決はない.しかし,世俗化を信じる原理主義は完全におしまいである.宗教は主要な人間的必要であり,それを否定することは無駄であり,生産的でない.多くの失敗を経て,宗教を社会から追い払うことではなく,対立する信仰が平和的に共存して生きていくことを学ぶ時代である.


William Pesek Democracy Can Wait While Asia's Economies Boom June 29 (Bloomberg)

Andy Mukherjee Hard-Landing Risk Is Rising for China's Economy July 2 (Bloomberg)

Matt Robinson Asia's slow financial comeback BG July 2, 2007

Jonathan Head The day the Thai economy crashed BBC 2007/07/02

(コメント) アジア通貨危機の10周年です.Pesekは,アジアの経済は回復したが,政治的な改革は進んでいない,と失望を表明します.アジア通貨危機は,ルービンも説得したように,中国が人民元を切り下げなかったことで回復をもたらします.しかし,ルービンがその後,中国に説得した「民主化」は受け入れませんでした.

「自由主義ではない,民主主義」に向けて,アジアは進んだ,と言われます.民主的な政府は大胆な経済改革を進める点で政治的に分裂する恐れがあります.経済的繁栄のためには,自由主義を犠牲にして,言論や出版の自由が規制され,民主主義が制限されているのも仕方ない,というわけです.

しかし,自由化と民主化が一致する,というのは,もっと時間を要する,というだけで,その主張を放棄することはない,と考えます.

また,1997年に危機を免れた中国では,今やインフレが進み,特に資産市場でバブルが生じています.実質マイナス金利の銀行預金が不安定化し,流出する兆候もあるようです.このまま貿易黒字や外貨準備の蓄積を続けていることはインフレを強めるという心配は本当でしょう.

危機を経験したタイ社会の変化について書いたHeadの記事が興味深いです.危機は再発するでしょうか? もちろん.人々は容易に忘れます.しかし,その後の成長は中国,インド,ベトナムに移りました.つまり,どこかで次の危機は準備されています.

FT July 1 2007

Wrong lessons from Asia’s crisis

By Chris Giles

(コメント) IMFのカムドシュ専務理事が腕組みして,インドネシアのスハルト大統領の署名を見下ろしている,あの有名な写真が撮られたのは,1998115日であったそうです.その後批判されたように,IMFの融資条件は細かい案件にまで要求があり,スハルトはそれらを政治的に受け入れられないと分かっていたけれど,通貨危機を回避するために署名しました.

アジア諸国は,スハルト独裁体制も崩壊するにいたった危機の経過を見て,二度とこのようなことを起こさない(許さない),という教訓を得たわけです.しかし,アジアは世界経済における輝きをすぐに回復し,その活力を示した,とIMFは評価します.

アン・クルーガー副専務理事は,大幅な切り下げは企業の倒産や債務不履行をもたらし,銀行は不良債権を抱えて,融資を削った.つまり景気が悪化していった.深刻な悪循環が発生したのである,と指摘しています.こうした金融危機を止めることができるのは,「最後の貸し手」だけです.

すなわち,あれは単にアジア通貨危機ではなく,ロシアやブラジルにも波及し,ニューヨークを経て,世界金融危機に至る始まりにすぎない,という恐怖が膨れ上がりました.IMFの融資は,あまりにも条件が多く,あまりにも少なかったのです.IMFは危機を鎮静化する保証にはならない,と分りました.LTCM危機を救済するために,アメリカ連銀が金融緩和したとき,ようやく国際金融危機は沈静化したのです.

Gilesは,危機による成長の落ち込みはその後の緩やかな回復では取り戻せなかった,と言及し,なぜ投資が以前よりも減ったのか,理由はわからない,とADBの研究に拠って述べています.それは貿易黒字の理由でもあるけれど,もっと改革を進めて危機の再発を恐れる投資家の懸念を払しょくすべきだ,と.しかし,これ(危機の再発)は国内制度だけでなく,国際制度や監視,資本移動についても言える問題です.

この点で,Nouriel Roubiniはアジア諸国が間違った教訓を学んだ,と主張します.すなわち,通貨を過小評価して貿易黒字による外貨準備の積み増しで危機の再発を防ぐことです.為替レート制度は,変動というレトリックによる,固定制でしかない,と.それは無害な努力であったけれど,今では外貨準備が政府と民間の対外短期債務を超えてしまい,中国経済の規模も増大して,世界経済に対する障害になっている,と注意します.

アジアはもっと違う形で安定化できたはずでした.その後,アメリカは「最後の貸し手」になり,「最後の買い手・消費者」にもなって,アジア諸国に対する赤字を拡大し,世界経済は安定しつつも不均衡を拡大しています.アジアの成長は輸出に依存し,アメリカの消費は不動産のような非貿易財の価格上昇に依存しています.たがいに,相手の間違った政策を非難し,自分たちはその犠牲者である,と主張しています.そして必要な政策転換を遅らせ,ますます国際協調は難しくなる.IMFは不均衡のハード・ランディングを心配します.

The Guardian, July 2, 2007

The Asian crisis 10 years later

Joseph Stiglitz

(コメント) 1997-98年の危機に続いて,国際金融システムの改革を議論されました.しかし,透明性,という掛け声も,危機の原因として預金口座やヘッジ・ファンドの情報開示が求められると忘れられました.アメリカやIMFの利益にならないことは,たとえ世界や発展途上諸国の利益になっても,実現しません.

アルゼンチンの危機によって求められるようになった国際的な破産処理も,OECDが求めた銀行預金の情報開示も,ブッシュ政権は拒みました.スティグリッツが指摘する二つの教訓とは,1.金融自由化は非常に危険であり,よほど慎重に準備するべきこと.2.世界的な金融市場の統合が進む中では,安定化のために国際機関が重要になること.

以前と違うのは,IMFが信用を失ったことと,発展途上諸国が外貨準備を増やし,自国通貨で内外の資金調達をするようになったことです.

July 4 (Bloomberg)

New Bubble Appears as Asian Tigers Roar Again

William Pesek

FT July 5 2007

The race is on to be Asia’s number one for finance

By Sundeep Tucker

(コメント) 3兆ドルという途方もないアジアの外貨準備について,Pesekは書いています.その影響で,@投機家が97年型の金儲けを考えなくなった.Aアジアが世界の金融に重大な衝撃を与える力を持った(秩序を,作ることはできなくても,破壊することができる).

まだ多くの貧しい国民がいるのに,これほどの外貨準備,もしくは過剰貯蓄を,投資も消費もせずに放置しておくことが,はたして正しい政策だと主張できるのか? そして逆に,アジアには過剰流動性やバブルによる危機が迫っている,と警告する意見を紹介します.

政府はその外貨準備の生産的な使い道に苦慮しています.ヘッジ・ファンドを介して,結局,政府自身が他国通貨の投機で儲ける・・・?


FT June 29 2007

A ‘Stalinist’ big tent?

By James Blitz

The Guardian Saturday June 30, 2007

Brown's immigration challenge

Will Somerville

The Japan Times: Saturday, June 30, 2007

Britain's future tied to Europe

By HUGH CORTAZZI

(コメント) イギリスの新しいブラウン政権について,華やかな雄弁家から,寡黙で地味な財政官へという変化を歓迎する者や懸念する者がいます.Blitzは,ダウニング街10番地における首相就任後の様子も,あまりに対照的であったことを伝えます.

どこの国でも政治家はパフォーマンスやスタイルを重視し,ある意味では,それに尽きるようです.ブラウンはブレアを真似るつもりはないようです.新しい内閣には若手を起用し,女性を起用し,労働党の自分を支持する人脈だけに偏らない,という開かれた姿勢を示しました.Blitzは,「スターリニスト」の政府は終わったのか? と皮肉な問いを立てます.

ブラウン政権の問題は,ライバルが見当たらないことです.もし厳しい情勢になれば,ブラウンは独裁的な決断をするしかありません.つまり,スターリニストが現れる? FTは労働党政権のスタイルを見極める点で慎重なわけです.

ブラウンの移民政策はどうか? イラク戦争とともに,イギリス国民が分裂する重要な争点です.ブラウンはブレア政権でも移民の経済的な利益に賛成し,イギリスが積極的な開放政策をとることを主張しました.しかし,同時に,国民が移民について厳しい見方に傾くと,「イギリス人らしさ」に関する演説を繰り返しました.開放政策と統合化を,このような形で政治的に維持したい,と考えたようです.

ヨーロッパとの関係はどうか? ブラウンが大蔵大臣であったとき,積極派のブレアに反対して,ユーロ加盟に慎重であったのは有名です.ブレアがEUの新条約に対してもオプト・アウトを要求したことはイギリスの「ヨーロッパ懐疑論」を意識しているでしょう.ブレアもブラウンも,条約を国民投票にかけることには反対です.

政府は国民の反応を予想して,微妙なバランスを取りながら,政策を指導します.それはアメリカとの関係についても言えます.イギリスが世界情勢について発言力を持つのは,スエズ危機以後,アメリカの姿勢と重なる時だけです.同時に,中国やインドが台頭する中で,イギリスはEU統合に加わるしかありません.こうした微妙な姿勢に,帝国の時代を懐かしむ感覚が混じります.移民政策でも,英連邦諸国からの移民に対する自由な姿勢が現在の情勢をもたらしました.

政治は可能性を操る技である,というビスマルクの言葉を引用します.


LAT June 29, 2007

Welcome back, 1912

By Joe Mathews

(コメント) ボディービルダーの移民にして映画俳優の人気者(そしてケネディー家に婿入りした!)からカリフォルニア知事になったシュワルツネッガーと,億万長者の金融情報支配者であるニューヨーク市長のブルームバーグが,政治的盟友関係を結びました.

それはアメリカ政治史において1912年を思い出させるようです.当時のニューヨーク市民であった元大統領のテディー・ルーズベルトが共和党を離党し,進歩党の候補として大統領選挙に参加すると表明したからです.しかも,それを支持して自分も共和党を離れたのが,カリフォルニア知事のハイラム・ジョンソンでした.

さらに投資家のウォーレン・バフェットは,ブルームバーグとシュワルツネッガーが正副のコンビで立候補することを支持しました.もちろん,移民であるシュワルツネッガーが立候補することは憲法が禁じているわけですが.

歴史はその結果を示しています.ルーズベルトは銃撃されて負傷します.ジョンソンは遅れた選挙戦を挽回できず,結局,共和党の分裂から民主党候補のウッドロー・ウィルソンが勝利します.


NYT June 29, 2007

The Murdoch Factor

By PAUL KRUGMAN

LAT July 3, 2007

Muzzling Murdoch

(コメント) いっそマードックもウォール・ストリート・ジャーナルを買収して,大統領を目指してはどうか? ブムームバーグ対マードック,金融メディアの世界権力闘争,になるわけです.

しかし,アメリカやイギリスが重要政策を誤ったのは政府やメディアによる情報操作があったからです.イラク戦争について間違った情報を信じている国民は,PBSではなくFoxニュースを観ていました.つまりマードックのニュース・メディアです.

マードックはアメリカでもイギリスでも中国でも,政治家と手を結び,政治をゆがめることで権力に近付いてきました.


WP Friday, June 29, 2007

A Model for Responsible Withdrawal

By Melvin R. Laird

Asia Times Online, Jul 6, 2007

Iraq, the new Israel

Comment by Pepe Escobar

(コメント) 戦争は些細なことがきっかけとなって起きるが,それを終えることは非常に難しい.ベトナムからの撤退を指導したLairdはイラクもそうであると書きます.反対する現地の指揮官や政府と対決しなければなりません.

ところが,ブッシュ大統領はイスラエルをイラクのモデルにするという方針を示しました.実際はパレスチナの方がはるかに近いにもかかわらず.それはアラブ世界全体にわたる最悪の方針であり,アメリカへの嫌悪を増すものでした.「悪の枢軸」,「大量破壊兵器」,などに続く,ブッシュの悪魔語録として加わった,「ニュー・イスラエル」!


Chinese inflation FT June 29 2007

Chan Akya Deja-Wu: Why China must revalue Asia Times Online, Jun 30, 2007

Sino-US trade FT July 1 2007

(コメント) 経常収支黒字が累積し,インフレ加速が生じている,と言えば,経済学者の答えはほぼ一致しています.切り上げ,もしくは引き締め政策です.失業者を心配する中国政府は後者をなかなか選択しませんから,切り上げが迫っているはずです.変動幅を拡大し,人民元の増価を認めることです.今度は世界にインフレを輸出する?

しかし,通貨政策が政治的であることを思えば,為替レートや金融引き締めがアメリカ大統領選挙と新政権の方針,北京オリンピックの成功,などに影響されるのは当然です.


The Guardian Saturday June 30, 2007

The city will not sleep

Chris Patten

FT June 30 2007

Hong Kong today

The Japan Times: Monday, July 2, 2007

Toast to Hong Kong's amazing success

By TOM PLATE

(コメント) アジア通貨危機と香港返還はほぼ同時でした.もちろん,香港返還は長く準備されていたことです.中国が支配する香港を,それまで支配したイギリスの代表であったクリス・パッテンはこの10年をどう見たのか?

冒頭に,オックスフォードのSamuel Finerが書いた政府(統治)に関する3刊本に,短い章があって,それは「リベラルであるが,民主的ではない」という分類の政府に関する記述でした.例としては,香港,それ一つであった,と書いています.

また,Fareed Zakariaはかつて「リベラルではないが,民主的である政府は,権威主義・専制政治に変わる」と警告したことを指摘します.民主主義的な政府が機能するためには,数年おきに選挙するだけではなく,独立した裁判制度や正当な手続き,言論の自由,信仰や結社の自由,質の高い社会サービスや警察,などがなければなりません.

イギリスは香港返還の直前に民主化の仕組みを与え,その後の発展を可能にした,とパッテンは書きます.しかし,中国はそれを許さず,民主化を阻止して直接介入も行いました.ただ,ケ小平の約束した「一国二制度」の原則は守った,と.香港にはすべての条件があるけれど,自分たちの政府を選ぶ権限だけはなかった.

それでも,香港市民の自信は経済成長の実績にありました.香港は空港を新設し,香港の法体系の下に中国企業や多国籍企業を呼び集めて,市民たちの自由を奪わないこと,その権利を守ることが中国政府の利益にもなる,と実証しました.香港は土地や株式に拠って資産を形成していました.それゆえ,生産拠点や財政基盤をSARS,アジア通貨危機は破壊しましたが,それを克服できたのも香港市民たちの努力と優れた公共サービスがあったからです.

一方では,香港人の中国化が進んでいる,と言われます.他方,台湾についても「一国二制度」の原則を掲げています.香港はますます,経済的にも,政治的にも,中国の将来にとって重要な基準点となる可能性を示しました.


CARLA ANNE ROBBINS Mr. Bush Gets Another Look Into Mr. Putin Eyes NYT June 30, 2007

Jim Hoagland Corleone Diplomacy WP Sunday, July 1, 2007

Adrian Karatnycky Escaping Putin's Energy Squeeze WP Sunday, July 1, 2007

Spengler What they didn't say at Kennebunkport Asia Times Online, Jul 3, 2007

(コメント) 民主的でない世界が世界情勢を決めている次の例はロシアです.ブッシュ大統領はミサイル防衛システムを完成させるために,それ以外の点ではロシアを喜ばせる戦略を採用してきました.しかし,ロシア政府の見方では,ロシアの力は回復しわのです.ロシアは石油によって莫大な外資を得,アメリカはイラクでの失敗で甚大なコストと外交的孤立に苦しんでいる,と.彼らの取引は次第に難しくなりました.

マフィアの親分が手打ちの儀式をおこなうように,ブッシュとプーチンは個人的な親密さや,メディアに明かされない黙約で外交を動かしました.Kennebunkportの別荘に呼んで歓談する,というのは,「ゴッドファーザー外交」です.

BG July 5, 2007

The lobster summit

By Graham Allison

(コメント) ハーヴァードのAllisonは,今回の首脳会談を強く支持します.その理由は,アメリカの国益になるから,です.

彼が指摘する最大の国益は,イランの核武装を排除することです.アメリカがロシアと組めば,それは大きく前進するでしょう.アメリカとロシアは冷戦を繰り返す条件などなく,核兵器の管理で協力しなければなりません.またブッシュは,国会や大統領の選挙を控えたプーチンが,自分の言葉で国民の支持を得ておく必要を理解しています.


NYT July 1, 2007

Moving Beyond Kyoto

By AL GORE

(コメント) アル・ゴアの地球救済政治は,止まるところを知りません.「私たちのすみかである地球が危険にさらされている.この惑星を破壊するリスクとは,人類が生きている条件を奪うリスクでもある.」

地球と人類,数百年や数千年の変化,南極や水位に関する科学的な予測,・・・ テロの脅威も重要だが,これは宇宙規模の脅威なのだ,と.

「二つの惑星を考えてみよう.地球と金星はほとんど厳密に同じ大きさであり,同じ炭素の量がある.その違いは,地球の炭素が地下にあることだ.この6億年のさまざまな生命活動によって炭素は地下に貯蔵された.他方,金星ではほとんどの炭素が大気中にある.その結果,地球の平均気温は快適な59度(華氏)であるが,金星は867度である.」

そして,2年間で開発諸国の温暖化ガスを90%削減するように,アメリカ政府が指導するべきだ,と主張します.それは新しいエネルギー産業への利益につながる.それ以上に,世代を超えた課題に挑戦する歴史的使命感,高い道義性によって,矮小な政治抗争を退け,精神性を取り戻せる,と.


FT July 1 2007

Four steps to make Europe more competitive

By Andrea Canino

(コメント) EUが企業の競争政策において,グローバリゼーションにおける戦略国家の役割を重視する方針を示しています.

「日本はあまりにも保護主義的な規制が多い.アメリカは我々が禁止している行為を許している.中国などの企業は反競争的な行動を取っている.我々はもはや外国政府や外国企業の反競争的な行動を無視して競争政策を実施できない.EUの規制を世界レベルで採用させる.」


FT July 1 2007

Sarkozy jeopardises the future of the eurozone

By Wolfgang Munchau

FT July 4 2007

Europe must give Sarkozy some fiscal leeway

By Charles Wyplosz

(コメント) Munchauは心配します.フランスの経済ナショナリズムへの後退は,ユーロ圏を解体させる方向に進むだろうか? そして,ユーロ成立に至る独仏の対立を思い出します.

ユーロ加盟をめぐる条件や,ユーロ圏加盟国における財政規律の問題は,繰り返し論争されました.今また,ドイツ政府は財政を均衡させるのに,フランス政府は財政赤字を増やそうとしています.サルコジは,財政赤字の規模を決める会議には政治家が集まるべきだし,為替レートの調整も政治が決めるべきだ,と考えます.

Nouriel Roubiniが指摘した主要なユーロ圏解体の要因は,非対称的ショック,資産バブル,労働市場の硬直さ,実質為替レートの調整不足,リスクや財政赤字を分散する金融システムの遅れ,などでした.しかも,こうした傾向は時とともに強まりつつある,という研究があります.

Wyploszは,フランス政府が改革を進める間,財政規律の制約を待ってやるのがよい,と主張します.なぜなら,この前,フランスが真剣な改革を試みたのは1981年のミッテラン政権であり,このときは1983年に危機が生じて一国ケインズ主義の復活が失敗して,それからユーロ圏の統一は大きく前進しました.

サルコジは,フランスの労働組合,労働契約,法律などを転換して,雇用を増やそうと考えています.その間,もし失業が増えたら財政的な刺激策が重要になるのです.サッチャーのように対決姿勢をとるとき,国民の世論だけがレフェリーです.支持を失えば改革は進みません.最終的に均衡を回復することが目的であるなら,政治的合意によってサルコジの改革を支援する例外を認めてもよいだろう,と.


Asia Times Online, Jul 3, 2007

Disarming the nuclear genie

By John Feffer

(コメント) アメリカが核兵器の廃絶を願っている,という前提が間違っているのでしょう.核兵器の使用を抑えたい,とは願うでしょうが,どこかの国が核兵器を保有できるのであれば,自国が保有しておかないことは考えられない.そして,戦争がはじまり,戦死者が増えれば,自国の死傷者を減らして敵を降伏させる手段として,次第に核兵器の使用も検討されるようになる.それは,朝鮮戦争でもそうでした.

核拡散防止条約は,アメリカによる他国の核保有を抑制する条約であって,ブッシュ政権になって顕著に核兵器開発を進める方針を示してからは,名指しで体制転換を求められた北朝鮮とイランに核兵器の保有を急がせました.それに対しても,アメリカ軍はバンカー・バスターを開発し,地下の核兵器開発・貯蔵庫を破壊する方針です.

ヘンリー・キッシンジャー,ジョージ・シュルツ,ウィリアム・ペリーなどによる「核兵器廃絶の呼びかけ」にも,ブッシュ政権は応えませんでした.核廃絶は技術的にも可能です.しかし,核を合理的に利用する,核の抑止において後れを取らない,というアメリカの方針は変わりません.唯一の核大国であることを,絶対,他国に譲る気はないのです.そして,核廃絶は戦争を増やす,という保守派の反対意見が広まります.

核兵器は今も,人類や国際社会を破壊する現実の脅威です.

「何を廃止する場合も,奴隷制であれ,差別であれ,根気がいる.核兵器に対しては,漸進的な一歩も称賛されるべきだろう.しかし,核兵器の管理が正義の枠組みにおいて実施されるときのみ,すなわち,ルールが公平に,すべての国に適用され,最初の行動を取り,その財政的な負担を担うのが最強の諸国である場合にのみ,そのような小さな一歩も最終的な目標に近づくだろう.すなわち,完全な,検証可能な,逆転不能の,核廃絶である.」


FT July 2 2007

How Merkel and Blackstone changed German capitalism

By Gerrit Wiesmann

(コメント) 2005年の二人の会談について,Wiesmannは書いています.

「シュワルツマンとメルケル.これは奇妙なカップルだった.シュワルツマンはフィラデルフィアの衣服商人の息子,今やニューヨークの億万長者である.メルケルは物理学者から政治家になった,東ドイツの元共産党員,今は摩擦の多い連立内閣の首相である.しかし二人には共通の目的があった.プライヴェート投資ファンドの力を利用して,ドイツテレコムを変身させる,さらに停滞するドイツ経済の改革に口火を切る,ということだ.」

メルケルは投資ファンドの短期志向を称賛した,と言います.それは金融市場から資金を呼び込むためでしたが,この話は少し,第一次大戦後のドーズ案に似ています.

ブラックストーンは少数株の保有ながら,ドイツ政府との約束でシュワルツマンが経営権を握ります.当初,業績は改善せず,株価は下落し,ブラックストーンは苦境に陥りますが,ドイツ政府は労使交渉を支援します.こうして労働組合から,ブラックストーンの経営陣が会社の支配権を奪って確立します.この方式はその後さまざまな企業に採用され,労使協調から離れて経営の改善を優先する中で,ドイツ経済の転換が進みました.


FT July 2 2007

Yen’s long-term value

July 3 (Bloomberg)

Yen-Carry Survives, China's Fake Water, AirAsia's Boom: Timshel

By William Pesek

(コメント) 円安が1ユーロ=167円などという水準に達したのでは,国際通貨制度における円の役割に各方面から疑義が寄せられるでしょう.概ね,1ドル=1ユーロ=100円,の近辺で主要通貨が安定するようなメカニズムは,将来,誕生するでしょうか?

現在の円安の原因として,主要国の金利の変化も円安が続くという予想に重なって,円キャリー・トレードを生じている,というわけです.それがヘッジ・ファンドなど,プロの投機であれば,不安定化を心配するだけですが,もし日本の高齢者が低金利に嫌気がさして外貨預金や投資ファンドなどに資産を移転したのであれば,将来の為替リスクを負わされるのではないか,と憂鬱になります.

Pesekが上げているその理由は,安倍政権の崩壊です.


Frederick Kempe China Challenges U.S., Europe in African Push July 3 (Bloomberg)

China must come clean about its poisonous environment FT July 3 2007

Chrysler Signs China Manufacturing Deal NYT July 4, 2007

Richard McGregor The static drama of China’s party reshuffle FT July 4 2007

TOM PLATE Troubles with 'China Inc.' The Japan Times: Thursday, July 5, 2007

(コメント) 中国の成長と国際的な役割には,今後も様々な懸念材料があります.アフリカにおける資源争いで中国が制裁を受けている国に接近し,あるいは制裁を発動することに反に対するのではないか? 中国における環境破壊が社会不安や汚染の国際的広がり,輸出にも影響するのではないか? いよいよ自動車の主要生産国になり,輸出も急増させて,日本の自動車産業が空洞化するのではないか? ・・・

日本人がやたらと新聞のトップ記事に為替レートのことを載せるように,中国では共産党の人事が注目を集めます.ポリトビューローについて,次第に大衆の目を意識するようになってくる,とFTが書いています.また,アメリカの台湾派や反中国のロビー活動が重要な影響を示します.次第に多元主義的な説明が用いられるようになっています.5年後,次の大会では,共産党内部の権力争いよりも,大衆行動が重要になるかもしれません.

アメリカにおける中国株式会社の輸出に対する不満は,貿易黒字からペット・フードや練り歯磨き,汚染食品に至って,一気に爆発しました.これも新しい保護主義でしょう.しかし,改善されなければ容易に事態を収拾できません.文革や天安門と同じく,この場合も中国発展の最大の敵は中国自身である,とコメントされます.

The Guardian Thursday July 5, 2007

Taking Marxism to China

David Boaz

(コメント) 中国の学校では,毛沢東やマルクス=レーニン主義を学ぶことが必修ですが,生徒たちは退屈だと言います.ジョン・レノンのような髪型で眼鏡をかけた学生は,金融論を専攻しています.学生たちは公式のイデオロギーを学ぶために教室ですわっていますが,何も聞いていません.しかし,共産党員になるためには必要であるし,批判されないために知っておくべきだろう,と考えています.

中国でも共産主義を熱心に教える知識人を見つけるのは難しい中で,ヴァーモント教員労組のオルガナイザー,Ellen David-Friedmanと,ヴァーモント中央病院のソーシャル・ワーカー,Stuart Friedmanが,中国で共産主義を教える助っ人になりました.Guangzhou Universityで彼らは何の検閲も受けずに「資本主義の恐怖」を教えています.彼らは,中国がすっかり共産主義の考えや労働者の利益を守ることから道を踏み外した,と考えています.

しかし,今の中国でなら,資本主義の恐ろしさや共産主義の必要性を説くことははるかに容易でしょう.中国はこうして,マルクス主義をアメリカから輸入します.


FT July 3 2007

Liberalism needs central power

By Adam Posensenior fellow at the Peterson Institute for International Economics

231年前の水曜日に,アメリカは独立した.アメリカの憲法はそれから13年後にできたが,その後も奴隷制などで論争は続き,経済問題に関して連邦主義の論争は南北戦争後にも続いた.憲法は経済分野で何も解決しなかった.

最近のEUサミットで経済的意思決定に関する合意ができたが,それに関して長期的な視野で考察したい.EU官僚たちはしばしばヨーロッパ統合をアメリカの初期に比較して言い訳にする.「たった数十年で我々はこんなに進んだ.これ以上に何を期待するのか?」

しかし,アメリカの経験が示すのは,彼らが考えるようなEUの最近の合意とアメリカ憲法に関する話ではない.アメリカでは,200年以上にわたって,中央と地方の政治が経済政策に持つ力は変化してきた.憲法の修正は少ししかなかったが.EUの新しい合意は,加盟諸国に比べて欧州委員会をあまりにも弱いまま放置している.

重要なことに,アメリカが対立したのは中央政府の権威をどの程度にするかであって,その規模や経済への介入の程度ではなかった.アメリカの経済政策決定が州レベルに残されたときは,市民権がそうであったように,反動的になる傾向があった.

ブラッセルに過度の権力が集中することを先天的に疑う人々にとっては皮肉なことだが,中央の機関が経済政策に強い権限を持つほど,自由化する影響も強まった.それはアメリカの州間交易における障壁であれ,欧州委員会の単一市場実現であれ,同じである.各州やEU加盟諸国が規制や実施の権限を得たとき,その分野では,アメリカの保険や不動産,EUの産業保護や専門資格でそうだが,その結果は反自由主義的で,経済的に有害であった.

強力なブラッセルの反対は地方分権的な自由市場や小さな政府ではない.それは経済政策決定がより政治的になされ,加盟諸国や地方政府による権限の濫用である.政治化が起きやすく,市場競争に反対するのは,連邦政府に権限があるときより,地方政府によって行われるときである.補完性(Subsidiarity)は多くの場合,腐敗,現職者の保身,補助金の奪い合いに向かった.政治的な拒否権が多いということは,それだけ多くゆすられる(賄賂を請求される)ということだ.

アメリカ経済のもっとも顕著な失敗分野を見よ.初等・中等教育,ヘルスケア,インフラ(例えば,ハリケーン・カトリーナとその対応),財政規律.これらはすべて地方や州の政府に,または議会に,大きすぎる権限を与えている分野である.連邦政府には小さな権限しかない.

明らかに,執行部の過剰な権力が濫用されることもある.現在のブッシュ=チェイニー政権のように.しかし,地方政治家が本当の自由化を窒息させるなら,停滞と不正義がもたらされることもあるのだ.強力な中央政府だけが,サッチャーのイギリスや小泉の日本のように,規制緩和や自由化を推進する力である.そうした前進への力は,EUのばらばらなシステムをともなう加盟諸国から生じると仮定されている競争圧力では生じないだろう.我々がこの50年間に見てきた以上に経済アプローチにおける収れんが起きるなら,そうではないかもしれない.

実際,ヨーロッパの経験が示すのは,市場統合や競争政策,情報開示,透明性を強制することが,EUの本当の利益になるということだ.それは,加盟諸国の特殊な願望から独立した,欧州委員会の権限があるときに,そうした分野で,実現したのだ.ブラッセルが強い時は,少なくともEU内の自由化進み,経済的な成果があった.加盟諸国がブラッセルから権限を奪うと,反動的な補助金の奪い合いと,仲間内の庇い合いになった.現在の循環的な景気回復の前に,ドイツとフランスが政府援助を増やしたり,財政規律を緩めたように.

それゆえ,アメリカとEUの歴史的経験が示す教訓とは,経済問題で十分に中央の決定権限がない状態で生じるコストへの警告である.取引のルールを標準化し,強制する強力な中央政府が無いということは,リベラルな価値や経済パフォーマンスを損なう.イギリスやポーランドは,そうではないと主張するが,ショック・セラピー,ディスインフレ,金融政策の独立,民営化,労働市場の改革,それらすべては執行権力(行政府)によって実施された.一国の政府から地方にあまりに多くの権限が移譲されていたら,それは不可能であっただろう.経済パフォーマンスがEUで最悪であるのが,改革の最も遅い,ベルギー,ドイツ,イタリアは偶然ではない.そこには十分な主権を持たない国民政府しかないからだ.

世界のほかと同じように,EUでは生命や自由が守られている.しかしリベラルな経済によって幸福を追求するには,個人の自由を可能にする権利とルールを強制できるだけ十分に強力な政府が必要だ.この点でヨーロッパは,特に経済に関して,民主的な赤字に苦しんでいるのではない.投票のルールはこうした問題を解決できない.サミットの取引でEUが政治統合に向けて前進した,と言うが,経済政策に関する欧州委員会に及ぶ加盟諸国の総体的権力は,阻止されないばかりか,むしろ強まる方向にある.フランス大統領になったサルコジがEUの基本目標として競争という言葉を変更することに成功したのは,その顕著な一つの例でしかない.

結果的に,EUの現在の政治状態はその経済パフォーマンスを掘り崩すだろうし,同盟の本当の経済成果が生じる唯一の源泉であるミクロ経済の統合化から目標を確実に遠ざけるだろう.イギリスやポーランドの政府は過度の集権化に抗して再び闘ったことを正当化するだろうが,彼らは意図せずにヨーロッパの経済自由化に向けた執行権力を弱めた.特に今日の政治情勢では,自由化はできないだろう.


FT July 3 2007

Why east Europeans continue to mention the war

By Stefan Wagstyl

(コメント) ドイツが主催したEUサミットで,ポーランドの双子の指導者たちはドイツとの戦争の話を繰り返しました.アジア経済サミットで,もし中国と韓国の指導者が,日本に戦争の話を繰り返したらどうなるだろうか? と思います.

西欧のために発言したルクセンブルグの代表に対して,ポーランド首相Jaroslaw Kaczynskiは言いました.「あなたは現在のことに簡単にジャンプできるようだが,いつも歴史の鏡を見ていたら,そんな幸せな気分は続かないぞ.」・・・安倍首相や麻生外相は何と答えるだろうか?

もちろん,Wagstylが言うように,歴史はそれほど単純ではないのです.ナチスの支配に協力者はいたし,ドイツ人と結婚した者や,その子孫もいます.確かに1989年まで続いた東欧における第二次世界大戦の抑圧体制は,彼らにとって生々しい集団的な記憶です.しかし,それを公式の場で触れるには注意が必要でしょう.東欧の解放や安全保障に,ドイツを含む西欧が果たした重要な役割を忘れてはなりません.また,自分たちの苦しみをすべて過去のドイツの仕業だとするのでは,スターリンやソ連が行った悪行を無視しています.東欧諸国がホロコーストに果たした役割も問われます.家族内の秘密にまで至るでしょう.

「東欧の市民たちは,もっと私情を離れた戦争についての記憶を,自分で作らなければならない.しかし西欧の市民たちも,(ドイツを除いて)西欧よりもはるかに破壊的であった東欧における戦争を,自分たちでよく理解するべきだ.1939-45年に,およそ4000万人が死んだが,そのうち西欧では200万人,ドイツで700万人,そして東欧とロシアでは3000万人以上が死んだ.」

・・・将来の日本の指導者たちも,繰り返し問われるはずです.


FT July 3 2007

Is it over for Japan’s Abe?

By David Pilling

FT July 3 2007

Japan’s reliance on US

(コメント) 安倍首相の権力崩壊を外国メディアも注目します.年金問題が深まって,安倍氏の支持率は急落しました(free fall).それは,もちろん,安倍氏が引き起こしたわけではありません.しかし,ブッシュのハリケーン・カトリーナと同様に,その対応にこそ政治家としてのセンスを問われたのです.論説に引用されたGerald Curtisの指摘は強烈です.

安倍の政治的情熱・情念が向かうものと国民感情が,まったく一致していないこと,それこそが致命的です.しかし,安倍政権の唯一の希望は,彼への失望が向かう受け皿がないことです.野党はバラバラで,優れた対案を示せるかどうか,有権者は疑います.参議院でたとえ大敗しても,衆議院における小泉の遺産はまだあります.・・・まるで国際通貨システムにおけるドルのように.

安倍政権が何を望むかとは別に,日本の役割は変わるでしょう.日本のアメリカ市場依存は終わるのか? とFTは解説しています.日本の最大の貿易相手国は,アメリカではなく,中国です.日本企業が利益を上げているのはアジアです.日本への観光客も,アメリカやヨーロッパではなく,アジアから来ます.日本企業はますます衰退する自国市場を見限って,アジアで生産し,アジアで雇用し,アジアから輸出して,アジア市場で儲けるのでしょうか?

しかし,この短い解説はそれを否定しています.一つは,アウトソーシングだからです.さまざまな政府間のFTAや企業のFDIによってパターンが変わったとしても,最終市場としてのアメリカは今も重要です.他方,拡大するアジア市場には不安な要因が多くあります.だから,日本はまだアメリカ市場を頼りにするだろう,と.


The Guardian Wednesday July 4, 2007

At long last, here is a chance to start rewiring Britain's creaky democracy

Jonathan Freedland

The Guardian Wednesday July 4, 2007

Constitutional reform

(コメント) イギリスでも憲法改正論議があるようです.ブラウン首相が長年の政治目標として要請してきたことです.それに加えて,1.ブレア政権が失った国民の政府に対する信頼を取り戻したい.そのためには,ブラウンがイングランド銀行に金融政策をゆだねたように,政府の重要な決定権を独立の委員会に付託した方が良い.宣戦布告,条約の承認,議会の招集と解散,判事の指名,など.

また,2.国民に信用される政府であれば,増税や支出削減を含めた財政の改革にも選択の余地が広がる.そして,3.憲法論争と,イギリス社会の文化的な宣言として,「イギリス人らしさ」に代る,イギリスに住むイスラム教徒たちも同意するような,新しい政治的表現を得たい,ということです.ブラウン首相はアメリカにおける憲法や独立宣言が多数の移入民を統合する核になった,と考えます.

憲法論議は,学者はともかく,イギリスでも封印されてきたようです.しかしブラウンが与えるかもしれない,憲法改正というチャンスを国民は生かすべきだ,とFreedlandは支持しています.


Sidney Blumenthal America's 21st century monarchy The Guardian Wednesday July 4, 2007

Michael Hardt Take the revolutionary road The Guardian Wednesday July 4, 2007

Lucky Libby LAT July 4, 2007

Looking Outward on the Fourth NYT July 4, 2007

(コメント) 7月と言えば,もう一つ,アメリカ独立記念日です.その理想主義とアメリカの現実との葛藤が,今年の論説には見られます.


NYT July 4, 2007

At a Theater Near You ...

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) タクシーはつかまらず,自動車爆弾が怖くて駐車場にも行けない.空港に突っ込んだ自動車は燃え上がり,運転していた男が自分も燃えながら叫んだ,・・・「アッラー アッラー!!

新しいロンドンの連続テロは,バクダッドを自分たちの町に再現しました.・・・しかし,とフリードマンは考えます.テロの背景は複雑で,そのたびに異なる意味を帯びてくる,と.9・11はアメリカ軍が中東に進出したことを不満とした.しかし,7・7はイギリス社会で失業し,孤立したイスラム教徒の若者だった.アラブ諸国でもインターネット・カフェができ,あるいは,せっかくイラクから早く撤退したスペインからの観光客がテロで殺される.・・・

「ソビエト連邦は簡単に見つかるし,殺すのは難しいが,それが滅んだ後は完全に死んだ.それは大衆的な支持を得ていなかったから,復活する心配はなかった.イラクやロンドンに現れたテロリストは,容易に見つからないが,殺すのは簡単だ.しかし抹殺することは難しい.新しく補充されるから.」

「もちろん,すべてのテロリストがイスラム教徒ではない.しかし,事実上,今日の自爆テロはイスラム教徒によるものだ.ノルウェー人は怒り狂ってもこんなことをしない.飢えたアフリカ人も,失業したメキシコ人も.イスラム教徒は,この<死のカルト>が彼らの信仰に根を張り,ガンのように膨れ上がってくることを知るべきだ.」

「このガンは文明の基本的な規範を消し去る.イラクで,自爆テロが葬列を爆破し,学校を爆破するのを,私たちは見てきた.イギリスでは,最近のテロに加わった8人のうち7人がイスラム教徒の医師や医学生である.医者が大量作人を計画する? そんなことがありえるのか? もしイスラム教の指導者たちがこのガンを取り除けないなら,それは彼らにしかできないが,ガンは転移し,無辜のイスラム教徒を汚染して」,彼らは互いに殺し合い,あるいは世界を破壊する.


The Japan Times: Thursday, July 5, 2007

Will the dollar lose its crown to the euro?

By WILLIAM L. SILBER

(コメント) ユーロはドルに代わるのか? アメリカの財政赤字や対外債務は不安を呼んでいます.しかし考察の結果は,ユーロの時代について否定的です.その理由は,1.ユーロの基盤は政治的に分裂している.2.ECBが金融市場から信頼されるためには,金準備ではないから,時間がもっとかかる.3.イギリスにとって第一次大戦がそうであったような,テロや金融データの破壊といった大きな衝撃が起きた場合,ドルだけでなく,ユーロにも及ぶ.その結果人々が頼るのは,再び金かもしれないし,予想出来ない.


NYT July 5, 2007

Africa: Land of Hope

By NICHOLAS D. KRISTOF

(コメント) ゼミ生たちと議論したように,アフリカの貧困は主に政府の失敗です.内戦や腐敗,汚職,独裁など,経済発展のため教育やインフラに投資する条件が無いのです.

しかし,アフリカを旅したKRISTOFは,最後に希望を伝えます.新しい指導者たちが育っている,と.民族抹殺の有名なケースであるルワンダにも,大統領のカガメがいます.彼は正直で,知性的で,有能であり,ハーヴァード・ビジネス・レビューを読んでいます.彼はアフリカのリー・クァン・ユーになれる,とKRISTOFは期待します.彼は自分たちの権力にも批判的であり,文化よりも,マラリアや害虫,そして間違った支配を警戒します.

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The Economist June 23rd 2007

Protest in China: Mobilised by mobile

Lexington: Pillorying Hillary

Cyber-crime: A good bot roast

Emerging-market debt: The sovereign loses its crown

Suicide: Elusive, but not always unstoppable

Economics focus: Misleading misalignments

(コメント) 国連安保理の常任理事国入りを求めた日本に対して大衆デモが日本大使館に向かったときも,インターネットや携帯電話が重要な役割を果たした,と言われました.今また,大衆抗議が起きて,中国政府をあわてさせているようです.なぜなら日本大使館ではなく,地方政府や北京を目指してデモが起きているからです.また,集まるのが賃金不払いを雇主に抗議する出稼ぎ労働者ではなく,生活環境の悪化を懸念する都市の中間階層だから.

ヒラリー・クリントンはなぜ嫌われるのか? 他人のパソコンを経由あるいはハイジャックして犯罪行為におよぶ者たちを裁く,地球連邦警察が誕生する?

自殺をめぐる考察も,為替レートの不整合に関する議論も,面白いですが決定的ではありません.多分,どのような指標であれ,それを単純化して判定することなどできない,ということです.