IPEの果樹園2007
今週のReview
7/2-7
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
******* 感嘆キー・ワード **********************
ブルームバーグ, 金融資本主義, 主権の喪失, 中国の政治改革, ブレアの時代, グローバル・ニュー・ディール, 軍事介入と開発援助, サンパウロのスラム, 社会構造と不平等
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor
NYT June 21, 2007
By CHARLES EUCHNER
NYT June 21, 2007
The Bloomberg Question
BBC 2007/06/21
Washington diary: Bloomberg's gamble
By Matt Frei
(コメント) 現ニューヨーク市長,マイケル・ブルームバーグが,共和党の大統領候補として争わず,独立候補として立つことになれば,アメリカ大統領選挙史上画期的な事件です.
元ニューヨーク市長のジュリアーニと,ヒラリー・クリントン上院議員と並んで,3人の候補がニューヨークを地盤に選挙を争うことになります.経歴も,選挙資金も申し分ない,互いをよく知る3人の候補が,ニューヨークの有権者を奪い合う結果,ここで勝利したものが大統領選挙で圧倒的に有利になるでしょう.
記事は,リンカーンやF.D.ルーズベルトに言及します.
他方,NYTの論説は,メディアを介して億万長者になった人物がアメリカ大統領になることに懐疑的です.しかし,以前から立候補しないことを前提に,積極的に論争に(公平な)注文をしていた姿勢から,にわかに変化することを,有権者はどう評価するか?
BBCの記事は,常に民主党候補を支持してきたニューヨークの姿勢が,これによってどうなるのか,注目します.その知名度やシュワルツネッガー,カリフォルニア知事の指示,などが指摘されます.
身長1メートル70センチ,ポーランド系ユダヤ人の家庭,簿記係の息子.二度,ニューヨーク市長になり,ブルームバーグ金融ニュースとデータ・サービスを設立,その資産はForbes誌によれば55億ドルです.
1992年のロス・ペローも一匹狼の億万長者でした.税金逃れ,ブッシュ嫌い.宇宙人のように登場し,アヒルのように喋った,・・・とBBCの表現力はなんともすごい! ワシントンの政界をののしるだけで,何の政策を示さなかったが,それでも19%の票が得ました.
イラク戦争で共和党支持者はさらに分裂しており,ブルームバーグはペローよりも選挙に私財を投じる覚悟がありそうです.しかも,ゲイや中絶に関して共和党の中では進歩的で,何より,ニューヨークの地下鉄をよみがえらせた功績があります.
しかし,と記事は書きます.ブルームバーグは勝てない.その人柄がドライで,有権者に嫌われる.特に民主党支持者は離れない.ジュリアーには苦しむだろう.勝てないのに,なぜ立候補するのか? それは65歳で政治に参加することが彼のバイアグラだから,と.
FT June 22 2007
Man in the news: Michael Bloomberg
By Christopher Grimes and Edward Luce
BG June 23, 2007
A billionaire mayor in the fray
By Scot Lehigh
WP Tuesday, June 26, 2007
The Rich Get Richer
By David Lebedoff
(コメント) FTはブルームバーグの詳しい生い立ちを紹介しています.資産評価額は130億ドル.統治不可能であった世界都市を管理した経営者.しかし,母親は彼を大学にやるために家政婦として働き,彼はハーヴァード・ビジネス・スクールを卒業してソロモン・ブラザーズに入り,成功します.街ごとにガールフレンドがいて,高級レストランの食事とブロードウェーの劇を楽しんだ,ということです.ブルームバーグ社を立ち上げ,二人の大きな娘がいた妻とは離婚.今はニューヨークの銀行委員会元委員長が恋人です.
教育や医療,芸術のために慈善活動するだけで,彼の全身にみなぎるエネルギーが尽くせるとは思えない,と友人は言います.
なお,アメリカでは一回の選挙に使ってよい資金が決まっている,ということです.しかし,さまざまな抜け道があり,大富豪や資金提供者に有利な選挙が許されています.
June 22 (Bloomberg)
Twenty Years Later, Echoes Linger From '87 Crash
Chet Currier
NYT June 28, 2007
Asia痴 Long Road to Recovery
By KEITH BRADSHER
(コメント) 20年前と同じように,主要諸国の株価は上昇し,金利水準はバラバラに上昇へ転じています.株価が暴落したことに驚いて,その後の不況を回避するためFRBは金利を引き下げました.それは,逆に大きなバブルを生じます.
10年たって,アジアはどうなったのか? 巨大な財閥も崩壊し,その後の回復には時間がかかったようです.かつてのような高成長が実現できた国はありません.今,10%の成長を実現している中国,インド,ベトナムは,97年の危機を免れました.
あれほど資本流入に頼ることはないでしょう.しかもアジア諸国は,アメリカ向けの輸出を中国に奪われました.より内需に依拠した成長を目指します.
FT June 25 2007
Why finance will not be unfettered
金融の自由化はグローバリゼーションの時代がもたらしたもっとも重要な変化の一つである.国境を超える資本移動の規模や,金融革新の程度,金融活動で作り出される富の大きさが,この時代の最も目立つ特徴である.しかし,束縛のない金融資本主義の存続は当然のことではありえない.それは人類の多くが自分たちの利益に役立つと考える間だけ続くだろう.それは決して確実ではないということが,投資ファンドに対する大西洋の両岸における逆風を見ればよく分かる.
金融活動の爆発的増大は目覚ましい.ある調査(the McKinsey Global Institute)では,世界生産に対する金融資産の比率は,1980年の109から,2005年には316に跳ね上がった.2005年までに,世界の株式と債券の総額は1400億ドルになった.その上に,さらに積み重なって,1990年には3兆4500億ドルにすぎなかったデリバティブの額面価値が,2006年に286兆ドルに達している.
こうした新しい金融手段を使って,賢明な新しいプレーヤーが登場した.ヘッジ・ファンドと投資ファンドはその代表であり,彼らは世界のどこかに過小評価されているものを見つけ出す.そうやって彼らは(裁定の)機会を利用し尽くし,たんにすべての資産の間だけでなく,世界中で共通の金融実践と評価方法を広めている.
これは金融のグローバリゼーションにとどまらず,株主価値の最大化を世界に広めることでもある.コーポレート・ガバナンスの評価や原則が収れんし,それにつれて我々の住む経済がさらにグローバル化する.
金融のグローバリゼーションは莫大な利益をもたらすことができる.非効率性を取り除き,最高の収益をもたらすならどこであれ資本を利用し,経営者の怠慢を是正し,リスクを管理するもっと良い機会を提供する.しかし誕生しつつある金融システムの複雑さと規模は大きな挑戦でもある.金融グローバリゼーションの利益を実現するためには,企業や金融監督,政策担当者は何をしておく必要があるのか?
第1に,今も,金融システムのコアには大銀行がある.それらは明示的であれ,暗黙であれ,政府のよって保証されている.金融監督は,過度のリスク・テイクが起きないように見張っておく必要がある.その場合,利益を私物化して,損失は納税者に負担させようとするから.
第2に,中央銀行は新しい金融システムが金融政策にどのように反応するかを理解する必要がある.信用創造の莫大な能力があるように見える.問題は,中央銀行がこの発展を政策として考慮できているかどうか,である.
第3に,民主主義は市民が公平に扱われているという認識に依拠している.多くの人はビジネスに成功して得た富を受け入れる.しかし,豊かな者が課税を免れる能力を受け入れる者ははるかに少ない.抜け穴がない,中立的な税制を求める声はかつてないほど強い.
第4に,規制は世界的でなければならない.それには税制も含まれる.金融が世界化するにともない,財政当局の協力も世界化しなければならない.世界の富豪階級がわずかな税金しか払わない,あるいは,まったく税金を支払わず,同時に,「小市民」に対する課税でもたらされる安定性から利益を得ているのは,持続可能ではない.
我々は経済のグローバリゼーションに関する政治的な現実を忘れてはならない.金融はグローバル化するが,政治箱億民的であり,世界で最も裕福な諸国では,それが民主的でもある.金融家たちは異なる惑星に住んでいるのではない.彼らは自分たちが依存する規制や制度を提供するため,彼らのビジネスを統治する人々を頼っている.政治的な反発がすでに目立っている.次の景気悪化が起きれば,それは強まるだろう.金融家たちはそれを無視してはならない.究極的には,彼らも政治のおかげで稼いでいるのだから.
FT June 26 2007
Risks and rewards of today’s unshackled global finance
Martin Wolf
“Finance is the brain of the market economy.” なるほど,そういうことは言える,と思います.金融取引は神経系統の集まりです.しかし同様に,筋肉や土地・資源がなければ富は存在しません.ただし,この論説が懸念するのは,神経の働きそれ自体です.それは「強欲から不安へ」一瞬で変化するだろう,と.
金融資本主義に対する,「不公正,非効率,不安定」という批判を,Wolfは,昔からある,と一蹴します.投資の利益を認めるのに,投機の利益を否定する.その区別はあいまいで,恣意的だ,というわけです.投棄も有益であり,それが成功するとき,社会も利益を受けているからです.
むしろ,金融資本主義への懸念は,それが経済効率を高めているか,という点です.金融の利益は,そのリスクと切り離せません.リスクを処理することが金融ビジネスの本質であり,社会への貢献です.こうしたリスクの分散システムは,幻想や詐欺,不確実さに弱いものです.それは,たとえアメリカで克服可能であったとしても,新興国の金融自由化でしばしば深刻な問題を引き起こしてきました.
それゆえ,最後に,金融システムの危機をもたらすリスクがあります.多くの投資家からなる市場がどう動くのか,予想がつきません.近年の成功に気を良くしてリスクを増やしている投資家たちが,下降局面では何をするか?
そこで,金融の頭脳を利用するに当たって,投資家たちが無責任な,短期の,破壊的行動を選択しないように,以下の注意を与えています.
1.政治的な理由で,所得や資産への課税を行う.
2.新興の小国を金融システムに組み入れるときは慎重に行う.
3.変動レート制に多くの重要な固定制を結び付けておくのは,大きな歪みを生じる.
4.金融政策が金融部門と資産価格にどのような反応をもたらすのか,よく検討する.
5.金融市場のリスクとその莫大な報酬との関係を詳しく検討する.
6.金融監督と財政当局との高水準における協力を促す.
たとえ問題を含むとしても,世界金融資本主義に代る可能性は,考えるのも恐ろしい,とWolfは主張します.
The Guardian Friday June 22, 2007
Hamas acted on a very real fear of a US-sponsored coup
Jonathan Steele
(コメント) 「基本的な原因は,もちろん,よく分かっている.アメリカに支援されたイスラエルが,昨年のパレスチナ選挙でハマスの勝利を受け入れようとしなかった.無気力なEUにも支持され,両政府はパレスチナの新しい交渉相手を政治的にボイコットし,経済援助を阻止することでパレスチナの有権者を罰した.彼らの政策は強烈な影響を与え,ガザ地区は一層顕著に天井のない牢獄となり,大量の人々が惨状を露呈した.その目的は有権者をハマスに敵対させることであったが,それはあまりにも愚かで,冷笑的な戦略であった.外部からの圧力は,通常,抵抗をもたらすのであり,服従を受け入れるものではない.」
「アメリカは昨年,マフムード・アッバスの大統領警備隊を武装し.訓練する計画を決定した.ハマスの軍隊と対決し,打ち倒すための巧妙な計画であった.イスラエルはすでに数十のハマス議員や市長をヨルダン川西岸から拘束していた.同じことを次はガザ地区で,しかもイスラエルではなくパレスチナ人にやらせることだった.」
「選挙で選ばれた政府に敵対する反政府軍を武装させるのは,アメリカの伝統的な犯罪であった.エリオット・アブラムズは国家安全保障の副顧問で,ハマス掃討の立案者であるが,1980年代に選挙で成立したニカラグア政府を攻撃するコントラにロナルド・レーガンが武器を供与する際にも主要な役割を果たした.」
「この計画のどこにトニー・ブレアを中東特使とするホワイトハウスの考えもあるのか? それは,ブッシュ,オルメルト,ブレア,という<不審者の同盟>である.サウジにゆだねるほうがましだろう.…ファタハには,良識も,民主的原則も,何もない.」
The Japan Times: Friday, June 22, 2007
Simpler treaty for EU's silent majority
NICOLAS SCHMIT
(コメント) 国民投票で,フランスやオランダが否決した憲法をEUは採用できません.そうかと言って,すでに18カ国が承認した憲法を破棄することもできません.それなら,国民投票にかけない形で,憲法条約を結ぼう,というわけです.
6カ国で始めた組織を27カ国で同じように運営することはできません.扱う問題も複雑で,難しくなりました.雇用,社会問題,環境保護,温暖化防止,健康,内外の安全保障,非合法移民,第三世界の貧困.EU市民は有効な政策を求めています.
こうした問題を単独で解決できないことは明らかです.EUとして強調した行動,共通政策が必要です.そのためにはEUの価値を明確にし,EUの意思決定を強化・民主化しなければならない,とSCHMITは主張します.
ヨーロッパが世界的な主体として重要な役割を担うには,と小国ルクセンブルグのEU代表は考えます,共通市場だけでなく,経済・社会・政治におよぶ統合が必要だ,と.つまり,共通市場の潜在力を発揮する改革,外交政策の統一,グローバリゼーションに挑戦する社会モデル,を必要としています.
Wolfgang Munchau Europe’s drift to mercantilism FT June 24 2007
Robert Kuttner European unity, leadership on climate change BG June 25, 2007
Niall Ferguson The EU's final battle LAT June 25, 2007
Christoph Meyer The EU needs a kick-out clause IHT Monday, June 25, 2007
Gideon Rachman Europe ditches clarity and embraces obfuscation FT June 25 2007
(コメント) EUの市民たちは,ますます,EUに保護と重商主義を求めています.単一市場によって均衡や自立が回復できる,というわけです.コルベールの見た経済ナショナリズム,保護貿易,政治家による為替レートの決定,短期的な目標に振り回されるマクロ経済政策.こうした啓蒙主義以前の時代に,ヨーロッパの未来を探してはいけない,とMunchauは主張します.
Rachmanは,その条約がさっぱり読めず,理解できない不明瞭な文書だ,と不満を示します.
The Guardian Monday June 25, 2007
Will Hutton
この数年で,イギリスの主権は著しく失われた.我々の主要企業の5社に1社は,前例のない,西側諸国の旺盛な買収騒動によって外国人の所有になった.ほとんどすべての投資銀行が外国人に所有され,公共事業や,鉄鋼を含む戦略部門もそうである.ブリティッシュ・ガスを所有するCentricaはもうすぐロシアのガス・プロムの買収を受け入れるだろうと思われる.また中国政府は外国企業を買収するために2000億ドルのファンドを準備したばかりだが,その主要な標的はイギリス企業だ.
このことについて,ほとんどすべての右寄りの新聞,保守党,イギリス独立党,といった新生ナショナリストたちは沈黙している.マンチェスター・ユナイテッドのサポーターたちはクラブがアメリカ人の買収されたとき短期間だけ抗議した.しかしイギリス人の多くはこれほど外国人の所有が増えても驚くほど落ち着いている.それが深刻なことだという政党は一つもない.
しかし右派の新聞のすべての社説が,EU改革条約について反対する大音響の宣伝を繰り返し,それが破滅への大安売りだと主張している.2年半の任期でEU大統領を置くこと,外交についての上級代表,欧州委員会の人数制限,こうしたすべてが我々の主権に対する致命的な脅威になる,と言うのだ.法に関する基本的権利については明確なオプト・アウトがある.しかし狂犬病患者のように泡をふいて,イギリス的なものの核心をヨーロッパが侵す,という彼らの乱暴な非難は続く.
もし彼らが外国投資家による買収にもう少し関心を払っているなら,私も少しは彼らに共感したかもしれない.20年前,スコットランド銀行がスコットランドにとっての重要性を理由にシティバンクの関心を拒んだ.そして世界のトップ・バンクの一つになった.しかしいまでは,そのような見方は示されない.Corus, Pilkington, O2, the British Airports Authority, P&O, Hanson and Abbey National,その他,まだまだある.
私は開放性を支持するが,外国人の所有が強さの源泉として疑いないと,あらゆる方面から称賛されるけれど,その証拠ははっきりしない.もちろん,それはシティにとって良いことである.しかしそれ以外では,調査によれば,多くの買収は失敗する.所有が重要であるから,多くの外国人はイギリス企業を買う.イギリスの大学卒業者が雇用を減らし,企業の意思決定が外国に移り,トップの地位が企業買収屋の幹部に独占される.そうした逸話に事欠かない.それでもEUに反対する者たちは小さな声も出さない.
二つの明確な立場がある.一つは開放性とグローバリゼーションを支持する立場だ.しかしEUのような国際機関の強化を求め,(イギリス企業をカジノのチップにしてしまうような)開放がもたらす潜在的な不公正さを是正する国内の試みに加えて,ガバナンスを改善しようとする.反対の立場は,すべての外国からくるものを呪いや悪魔の仕業とみなす.ブラッセルであれ,企業買収であれ.
イギリスの新しい外国人嫌いはブラッセルを悪魔とみなすが,外国人の所有は大目に見る.もちろん,一つの理由はあまりにも多くのイギリス・メディアが外国人(ルパート・マードック)や亡命者(the Barclay brothers)に所有されていることだ.保守党党首のキャメロンがゴードン・ブラウンに国民投票について質したとき,ブラウンは外国人の企業買収で反論した.もうすぐロシア人や中国人の買収がもっと問題になる.それに対する唯一の防衛はヨーロッパで共通の立場を取ることだ.キャメロンと新聞社説はにわかに音量を下げた.
NYT June 22, 2007
(コメント) 世界が驚嘆したように,中国はスターリン主義の指令経済から世界の主要貿易相手国に,「中国の奇跡」と呼ばれるほど,わずか数年で変わりました.ただし,その改革はまだ限られている,と気づいたわけです.
工場では奴隷労働が摘発され,機関車トーマスのおもちゃの塗装から銅が見つかりました.汚染されたドッグ・フード,石油を得るために人権抑圧するスーダン政府への肩入れ,都市と農村の所得格差,メディアへの統制.
政府や企業は中国の魅力に幻惑されて,人権や企業倫理を捨ててしまいそうです.中国の低コストによる生産拠点,市場の規模に殺到する企業は,グーグルやヤフーが言論統制を受け入れたように,次々と柔軟になっています.ワシントンや,その他の西側諸国の政治指導者が,中国首脳の訪問を待ちわびています.
「中国失敗の究極の源泉は,その共産党にある.彼らは破たんしたマルクス主義の教義を投げ捨てたけれど,その他のすべての分野で権威主義的な支配を手放すことなく,危険なほど不釣り合いな国家機構(ビヒモス)となった.」
中国と貿易するナとか,投資するな,と言うのではなく,人権を内政問題として黙認してはならない,とNYTは主張します.世界がアメリカをグァンタナモ基地の問題で,まさしく,痛罵することが正しいように,中国がその体制として,広範に人権を侵していることを批判するべきであり,それを抑制してはなりません.グローバリゼーションが民主化にも貢献するとしたら,そのような姿勢を維持するからです.
「中国の政治システムが改革されなければ,汚職がはびこり,短期的な経済利益だけを優先するだろう.それは国内の不平等と不公正を拡大し,汚染された輸出品を増やす.政治的改革を遂げた中国は,たとえ経済的により強力な国になろうとも,破壊的な国ではなくなる.」
WP Friday, June 22, 2007
Wrong Target
Asia Times Online Jun 23, 2007
Washington's China policy turns psychotic
By Donald Alford Weadon and Carol A Kalinoski
LAT June 23, 2007
China's charm offensive
By Joshua Kurlantzick
(コメント) 中国の人民元は切り上げることが望ましいけれど,それを強いるためにアメリカ議会が制裁や保護主義を唱えることは事態を改善するより悪化させる,とWPは心配します.どちらにしてもアメリカの貿易赤字が急速に改善する見込みはないのです.それに効果的な手段とは,アメリカ議会が財政赤字を減らすことです.
中国市場の魅力は世界の発展途上諸国,貧困国,独裁国家にも急速に広まっています.中国は経済援助や開発政策,教育やエネルギーなど,様々な分野で従来の欧米や日本の影響をしのぐほどになっています.
しかし,中国モデルが次の時代をリードするのか? という問いに,否定的な答えをLATの論説は示します.なぜなら中国モデルを重視する国は,その教育や農業を改革した過程ではなく,政治的支配を緩めなかった点に魅力を感じている場合が多いからです.それゆえ,中国の影響力は,それ自体,経済成長や制度改革にとっても破壊的でしょう.
Asia Times Online, Jun 27, 2007
China's farmers need a second liberation
By Lin Gan
Asia Times Online, Jun 28, 2007
Why China won't revalue
By Peter Morici
WP Thursday, June 28, 2007
China Lends A Hand
By Richard Holbrooke
(コメント) Lin Ganは,中国の経済格差やエネルギー問題,特に農村の貧困を解決するために,バイオマスのエネルギー供給システムを地方に分散させる計画を進めるように提案します.
Peter Moriciの論説で面白いのは,通常の保護貿易論と逆のことを主張している点です.中国は人民元を過小評価して直接投資を受け入れる.それゆえ,アメリカ企業は自国で生産していると儲からないが,中国の生産拠点から輸出すると非常に儲かるのです.中国からの輸入が増えて国内生産は捨てられます.
中国の政策はアメリカ経済に工業生産の減少というコストをもたらしていますが,それは一部の地域,一部の有権者にとどまり,逆に,安価な輸入品としてすべての有権者に利益を意識させる,というわけです.だから,アメリカの政治家は中国の通貨政策に強く反対できないのだ,と.
Holbrookeは,中国の外交が国際政治において協力する姿勢に変わってきたことを指摘します.中国は,北朝鮮,スーダン(ダルフール),ビルマ(ミャンマー)に対して,効果的な交渉手段を持っています.中国が国際的なルールの確立に協力する姿勢を示したから,北朝鮮は核処理を停止して査察を受け入れ,スーダン政府の最悪の虐殺行為を中国も非難し始め,ビルマ政府は反体制派との対話を持ったのです.
イランや環境問題でもアメリカは中国と協力すれば新しい国際的なルールを推進できます.最後に,G8が民主的な大国によって構成され,その政治的権威を再生するよう,願っています.
Will Somerville Blair's other legacy: immigration The Guardian Saturday June 23, 2007
A. A. GILL Tony Blair, Three-Time Loser NYT June 24, 2007
MICHAEL PORTILLO The Best of Enemies NYT June 24, 2007
A New Job for Tony Blair NYT June 25, 2007
(コメント) ブレアの国内政策で最も目立つものは移民であった,とSomervilleは考えます.
ブレア以前,1997年以前のイギリスに移民政策は,「移民ゼロ」政策と,アメリカの公民権運動に刺激された「人種差別禁止」政策,の二つに分裂していました.その後,ブレアは熟練労働者と学生を増やす方向に転換します.また,経済難民を受け入れる政策も確立します.ただし,移民受け入れの積極的な転換は,ブレア個人ではなく,その政策ネットワークを介した,グローバリゼーションの圧力による,と指摘されます.
GILLは,イギリスにおける政治文化においては,政治家や首相がいかに嫌われ,その地位を剥奪されるか,を説明しています.それでもすぐれた政治家を輩出するのはなぜでしょうか? 逆に保守党のPORTILLOがブレアの業績を称賛します.
ブレアなら,中東和平のために,ブッシュ大統領に対して厳しい真実も話すことができる,とNYTは期待します.
FT June 25 2007
Political lessons from the Blair era
By Philip Stephens
The Guardian Tuesday June 26, 2007
Goodbye Blair, hello Brown
Mick Fealty
NYT June 27, 2007
The Which Blair Project
(コメント) 左右の対立は不明瞭であり,ブレアが3度の選挙に勝ったのは,将来の課題を的確に見つけたからでした.しかし,教育や医療の改革は難しく,政府が基準や成果を決めることはできませんでした.国民的な基準と人々の選択を通じて,成果を期待するしかありません.三つ目に,ブレアはグローバリゼーションに対して市場を開放し,移民も受け入れました.それは基本的に正しく,イギリスを成長させましたが,その利益は国民すべてに行き渡りませんでした.政治家は国内問題に固執していますが,結びついた問題が国際的に波及し,協力を要請します.いかなるイギリスの指導者も,ドーバー海峡と大西洋の両方に強固な同盟を築かなければなりません.
NYTは,人間的なサッチャー主義であった,と考えます.北アイルランドと和解し,コソボやシエラレオネへの介入を指導しましたが,イラク戦争で失敗します.ブラウンは人道的な国際介入を控えるでしょう.
IHT June 27, 2007
No Thought Control Needed
By ROGER COHEN
(コメント) COHENは,ブレアとブラウンという対照的なコンビがもたらしたイギリスの開放性と経済的繁栄を称賛します.ブレアの時代にイギリスで暮らすことの魅力が大きく増した,と.彼らは二つの自由を与えました.ブレアは外国人労働者がイギリスで働く自由を与え,ブラウンはイングランド銀行が金融政策を決定する自由を与えたのです.
「自由は寛容さをもたらした.この数年で起きた王室の結婚式に最も近い出来事としては,サー・エルトン・ジョンとデイヴィッド・ファーニッシュとのシビル・パートナーシップを祝福する催しだった.このゲイ・ユニオンを,かつては想像もできない敬意をこめて,BBCが報道した.」
IAN DAVIDSON Just who is Gordon Brown? The Japan Times: Thursday, June 28, 2007
Martin Wolf A new chancellor and a new chance FT June 28 2007
Philip Stephens Brown takes the pulpit as Blair finally takes the stage FT June 28 2007
WP Sunday, June 24, 2007; B07
Wise Advice: Listen, and Engage
By David Ignatius
(コメント) 大統領執務室を出入りした外交顧問たちの中でも最長老の3人,ヘンリー・キッシンジャー(ニクソン,フォード),ズビグニュー・ブレジンスキー(カーター),ブレント・スコークロフト(フォード,ジョージ・H・W・ブッシュ),が会議に同席しました.思想的には対立してきた3人が,同じような言葉でアメリカの外交政策が進む方向を示したことに,記事は注目します.
「急激に変化する世界では,アメリカはパワーを行使する際に傲慢でないように,むしろ他国に語りかけるほうが良い.それは当然のことであるだろうが,アメリカはこの6年間全く逆のことを言ってきた.3人の大統領顧問がそろって対話をもっと増やすように,アメリカのイメージを改善するだけでなく,諸国民のゲームにおける新しいルールや機械をよく理解するために,求めた.」
イラク以後も,アメリカは世界に出ていくことになるが,そのためにも対話が必要です.
FT June 24 2007
Corporate Japan needs the activist touch
By Michiyo Nakamoto
(コメント) 企業にかかわる労働者や地域社会を重視する経営を目指すのか,株主の利益だけを考えてそれ以外の関係を断つのか,どちらの資本主義もそれだけでうまくいくとは思えません.しかし,この論説は日本でも株主が積極的に行動を起こして,企業の経営に革命を起こす,と期待しています.
問題は,日本に非効率な経営を続けて,経済の成長を損なっている企業がどれほどあるのか,ということです.また,それを改善する方法がないのか,と思います.
製造業はもはや日本の成長のエンジンではない,とNakamotoは主張します.日本人の年金を支えるためにも,企業はもっと収益率を高めて配当しなければなりません.世界最大の金融資産を持ちながらそれを有効に利用していない,という点に,日本の最大の問題があるわけです.うまくいけば,外国人投資家がそれを刺激するでしょう.
投資家は個人的な利益を求めているだけではなく,社会にとって資源をもっと有効に利用するよう求めているのです.それにつれて,日本の個人投資家が株式市場に戻り,キャリー・トレードも減る,と.
David Pilling Congress reignites Japan sex slave row FT June 27 2007
David Pilling Japan’s outsiders can come in from the cold FT June 27 2007
Japanese poison pills FT June 28 2007
(コメント) Pillingは,地下鉄サリン事件などを例に挙げて,日本人がよそ者に冷たく,仲間だけに親切である,と指摘します.株式のインサイダー取引にもつながるでしょう.関係を重視する資本主義は,企業間でもよそ者との取引を嫌います.しかし,それはバブルによって崩壊したシステムです.
外国人が保有する株式は1990年の4.7%から28%に上昇し,決定的な影響力を得ました.しかし日本では,まだ,機関投資家も企業も,外部から(よそ者)の買収に,協力して防戦します.
FT June 24 2007
Carmakers race to cut the cost of motoring
By John Reed and Amy Yee
(コメント) 今後,自動車市場はBRICsで急速に拡大する,と予想されています.ただし,そのためには自動車の価格が今の半分に下がるような供給システムを開拓しければなりません.将来は燃費でも,環境でもなく,価格革命が自動車業界の生存競争を変えるのです.それに勝つのはルノーでも,トヨタでもなく,もちろん,インドや中国のメーカーです.
FT June 24 2007
Harness market forces to share prosperity
By Lawrence Summers
FT June 25, 2007
Economists’ Forum
(コメント) Summersは,情報革命を実現した経済を前提に,新しい経済政策の必要を説きます.すなわち,所得分配の悪化を防ぐことです.
アメリカ経済の核をなす中産階級の所得は基本的に経済の一定割合を占めており,生産性が変化しても,分配は変化しない.だから,彼らの所得を増やすには,成長率を高めるしかないのだ,と理解されていました.
しかし,1990年代のデータはそれを否定しました.1979年以来,上位1%の家計の所得は,6640億ドル,家計あたり約60万ドル,43%増加しました.下位80%の家計の所得は,もし所得分配が一定であった場合よりも,6640億ドル減少しました.それは家計あたり7000ドル,14%の減少です.1979年から2004年まで,インフレを調整して,中位の家計が得た所得増はわずか14%です.もし中産階級が経済の成長と同じ速度で所得を増やせたら,その増加率は倍増したでしょう.この所得分配の差は,金融的な知識や教育によって説明できません.
こうした統計を示して,Summersは民主党ハミルトン・プロジェクトの基本方針を示します.すなわち,経済成長が中産階級の所得増大につながるような政策を実行することです.ただし,それはビジネスを規制し,グローバリゼーションを逆転させることではない,と考えます.そのような政策はアメリカの成長を損ない,今以上に貧しい人びとを苦しめます.
Summersは,その答えを「ニュー・ディール」の伝統に求めます.市場システムの成果を享受しつつ,証券市場の規制や社会保障を充実させることです.市場諸力を正しい流れに導き,そのあしき結果を緩和する.
エコノミスト・フォーラムでは,Adrian Woodが累進課税を主張しています.なぜサマーズはそれを避けたのか? と批判します.確かに一国で富裕層に効率の課税をすることは逃避を招きます.しかし,税務当局は国際協力を積極的に進めるべきだ,と.
他方,Allan Meltzerは,貧困が社会問題であり,経済学はさまざまな政策を駆使して貧困を減らすのであり,一つの答えはない,と主張しているようです.
Foreign Affairs, 27 June 2007
A New Deal for Globalization
Kenneth F. Scheve and Matthew J. Slaughter
グローバリゼーションが進むほど,アメリカでは保護主義が強まっている.その理由は,アメリカの労働者の多くが,グローバリゼーションによる利益を受けていないことに不満を持っているからだ.グローバリゼーションは彼らの賃金を低く抑え,所得分配を不公平にした.
しかし,グローバリゼーションがアメリカ経済全体にもたらした利益は莫大であり,その推計はおよそ5000億ドルという水準で一致している.これほどの利益を政府が再分配すれば,保護主義ではなくグローバリゼーションを支持するようになるだろう.グローバリゼーションのための「ニュー・ディール政策」が必要だ.
それは個人所得に対する累進課税ではなく,社会保障費の徴収において,アメリカの所得水準の注意より下の人々からは一切徴収しない,という方針が好ましい.こうした積極的な再分配を行わず,失業保険や教育・再訓練だけに頼るなら,グローバリゼーションの逆転を招くだろう.
WP Monday, June 25, 2007
The Next Globalization Backlash
By Sebastian Mallaby
FT June 27 2007
Why middle America needs free trade
By Clive Crook
(コメント) Mallabyは,グローバリゼーションに対して,すでに二つの対応が始まっている,と考えます.一つは政府による投資ファンドの設立,もう一つは株主資本主義への転換,です.前者は資源・エネルギー価格の上昇による外貨準備と,中国などの国際収支不均衡がもたらしたものです.
この二つの結びつきは何を意味するのか? Mallabyは,政府による投資ファンドは収益を改善するために企業に投資し始める.しかし,ブラックストーンへの投資をウェブ上で非難された中国政府が,経営陣に政治的な介入をするかもしれません.そんなとき,株主資本主義がそれにストップをかけるだろう,というわけです.経営者は政治的介入に弱いかもしれないが,株主たちは最善の投資だけを求めているのです.
Scheve and Slaughterのニュー・ディール政策について,CrookはRobert Lawrenceの研究に拠り,賃金の変化や分配をグローバリゼーションのせいで悪化した,という主張を退けます.もちろん,超富裕層が分配関係に影響したのは確かですが,彼らに対して再分配を強いる方策はない,というのです.結局,再分配しても,しなくても,グローバリゼーションを進めることが貧困の解消につながる,と.
The Guardian Monday June 25, 2007
The new world disorder
Dominique Moisi
(コメント) コソボ独立にはロシアが,ダルフールの人権擁護には中国が,安保理常任理事国として拒否権を握っています.あるいは中東情勢についても,ロシアと中国の台頭が,国際システムの変化を通じて影響するわけです.
両国が国際政治の舞台に再登場したことの意味は,中国にとって18世紀以来の中心的な地位の回復であり,最強の工業国として,世界全体とまでは言わないけれど,少なくともアジアにおける圧倒的な支配を確立することです.それが2008年北京オリンピックの政治的意味です.他方,ロシアにとってエリツィン時代の混乱から回復したことであり,まだ多くの不満を抱えながら,アメリカと外交上の対等な地位に戻った,と考えています.
中東情勢がさらに悪化すれば,両国は国際秩序の安定化に貢献する舞台を得るわけです.
FT June 25 2007
Spend on making wealth, not war
By Anatol Lieven
(コメント) アメリカであれ,日本であれ,国際政治に参加する究極の目的はほぼ同じです.すなわち,平和と繁栄を分かち合えるような状態,それを安定的に維持するメカニズムや制度を築くことです.もちろん,相互の不信や,自分たちの威信,相対的地位についての争いは絶えませんが.そうであれば,軍備増強や国際軍事介入も,開発援助も,代替的であり,バランスが問題なのです.
「近年,アメリカは軍備や,イラクとアフガニスタンでの戦争,そして特定の同盟国に対する軍事援助に,開発援助の10倍以上を支出してきた.」
つまり,軍事的な勝利をおさめたら,その後は,もっと経済援助によって人々を安定した民主的な政治経済体制に組込むべきではなかったか,というのです.ところが今でも,共和党だけでなく民主党の政策顧問も,議会も,莫大な軍備拡大と国際介入の準備を支持しています.それを正当化するために,「テロとの戦争」だけでなく,アメリカが軍事侵攻するケースを数え上げます.イランの核軍備,パキスタンの政治混乱,北朝鮮の体制崩壊,中国とロシアの軍事衝突,など.
他方,かつて植民地であったフィリピンへの経済援助は中国による援助の4分の1にも足らず,アフリカへの援助でも中国の方が多いのです.ウクライナではロシアが,ラテンアメリカではベネズエラが,アメリカよりも多くの援助を行っています.誰が誰に感謝する,と思うのでしょうか?
「重要な問題はアメリカの政治構造である.アメリカ議会は外国の敵に対する不安から,また莫大な軍事予算の一部を選挙区にもたらすという望みから,軍事支出を支持する.それは暗黙の国家的な開発計画でもある.これに対して,海外援助はそのような国内の有権者がいない.援助を大きく増やすには,長期を見据えた指導力とともに,相当な政治的勇気を要する.しかしワシントンでの裏取引で,パキスタンの地図に戦争ゲームをするような人々には全く必要ないものだ.」
The Independent, 26 June 2007
The Big Question: Why has social mobility declined, and what can be done to reverse the trend?
By Sean O'Grady, Economics Editor
(コメント) もしあなたが貧しい家庭に生まれたら,あなたも貧しいままであろう.社会は硬直化している.・・・ そのような調査が公表されました.イギリスのことですが,日本でも関心のある人は多いはずです.
The Guardian Thursday June 28, 2007
In these cities of no God, democracy is mocked by poverty and inequality
Timothy Garton Ash in Sao Paulo
(コメント) ブラジルのサンパウロを訪ねたアッシュはスラム地区を見て歩き,教会や学校を訪ねます.
「一般に,彼らは13歳か14歳で麻薬のギャング団に入る.最年長でも21歳だ.その後,どうなるか? 「ほとんどみんな死ぬ.」 他の犯罪者や警官と撃ち合って殺される.あるいはひどい刑務所で死ぬ.ロイヤル・パークのスラム街にある細い泥道に私は立っていた.そこからほんの数メーター離れると,サンパウロの最も裕福な層の住宅街が見える.美しく塗装された街は高い塀と,電気を流す防御フェンスに囲まれる.金持ちの子供は私立学校に通うが,麻薬を求めてスラム街に来る.「それはドライブ・スルーみたいなもんだ.」 大学を卒業して,ここに住み,コミュニティーの再生計画に尽くす私のガイドは話した.」
「息子が麻薬のギャング団に入ったら,その母親はどうするのか? 「教会に行く.」 狭い通りを抜けると,新ペンテコステ派の教会があった.ブラジルの貧困層に広く支持されている.それは汚れた掘立小屋に見えるが,表示がある.教会の前で運動着姿の10代の若者がたむろしていた.「写真はだめだ.」 私のガイドが告げた.彼らは麻薬のディーラーだ.金持ちのために庭の芝生を刈り,自動車を洗い,犬の散歩をさせる退屈な生活より,彼らは短く,興奮に満ちた,麻薬ギャングとして生きる方を彼らは好む.それは学校を潰す.ロッキーみたいな恰好でも彼らの方が学校の先生よりも収入が良い.なぜ教育になど関わるのか?」
それでも希望はあります.カルドーソもルーラも民主主義を維持し,貧困解消のための政策を取りました.たとえば,子供を学校にやれば母親は資金援助を受けます.しかし,法の下の平等は守られません.金持ちが刑務所に入ることはなく,警察は汚職に満ちています.このあからさまな貧困と格差,犯罪の中で,いつまで自由主義や民主主義を維持できるのか?
NYT June 28, 2007
New Commitment to Charity by Mexican Phone Tycoon
By ELISABETH MALKIN
(コメント) メキシコの通信産業を支配するCarlos Slim Heluはメキシコどころか世界でも資産第1位の大富豪です.ほかにも様々なビジネスを展開しています.彼自身はレバノンからの移民の息子であり,1990年にメキシコの国営通信企業を買収してから世界の資産番付に載りました.メキシコの所得格差を考えれば,彼に圧力がかかるので,さまざまな慈善事業も起こしつつあります.
アメリカでは富を得たものがコミュニティーの資源を利用できたおかげであるという思想がある.メキシコの富豪はそう考えない.「富は果樹園だ.果実を分けることは良いが,枝は取らない.そして富を得るために,もっと種をまく.」
The Guardian Thursday June 28, 2007
Mark Braund
一万年前に農業が始まった時から,貧富の格差は存在した.最近まで,格差はそれほど大きくなかった.技術が社会を作り変えてしまう前は,我々から恐ろしいほどかけ離れた生活をエリート層が送る手段は,要するに,存在しなかったのだ.
工業化以前は,ほとんどの人々が土地を必要とした.土地を所有する少数者は地代を支払う農民たちに依存して,その贅沢な生活を維持していた.相互依存が公平さを保証していたのだ.産業革命によってはじめて,不平等が拡大する条件は確立された.皮肉なことに,土地所有が富の分配で決定的要因になったのも,産業革命のせいだった.
工業経済がもたらす富の多くはますます土地の価値を増やすことになった.今日では住宅価格の急騰を目撃している.しかしさらに大規模に商業地の価格は上昇しており,特に,経済活動の集中する巨大な都市中心部でそれが起きている.経済成長率が高いほど,土地の価値に積み上がる富も増える.
それが一般に正しいなら,少数者が土地を所有し,貧富の格差は必然的に拡大する.富が広く波及する効果は全くなく,集合的な経済的成果を土地の価値上昇として地主が保持することを許すなら,むしろ,富が集中してしまう.富が増えるほど,富の集中も強まる.
富が分極化する過程は強められた.なぜなら非課税の富を土地の価値に蓄積することを許された人々は,それを担保に銀行から融資を受けたからだ.それは,例えば投資ファンドのような,その他の金儲けに投資された.
富が富をもたらす.銀行はほとんど意のままに信用を創造し,通常,富裕層の需要を満足させた.このことは大企業が莫大な利潤を最初に重役に与え,その報酬が前例のない水準に達するのを助けた.そして彼らは速やかに富を恒久的に保持するエリート層に加わった.
いくつかの解決策がある.民間部門を法律で規制して,経済のより大きな部分を国家管理の下に置くこと.そして所得や利潤に高率の課税を行うこと.どちらについても,その問題は労働意欲や企業家精神を殺ぐことだ.
それに代えて,土地所有の結果として広範に生じる予想外の利益に,企業でも個人でも,課税することができる.土地に課税するという考えが19世紀後半に広く支持されたのは偶然ではない.当時,工業化が多くの貧しい人びとに利益をもたらさないことがはっきりしたからであった.今,その道を政治は再現しつつある.
銀行が信用創造する能力も規制し,少なくとも人工的に増えた富が富裕層だけに渡ることがないような手段を取ることもできるだろう.
もし我々が不平等の拡大に真剣に取り組むなら,こうした選択肢の組み合わせを検討するべきだ.もちろん,いかなる政府もそのような計画を一方的に試みたりしない.そんなことをすれば,ただちに金融市場で身代金を要求される.強調して,国際的に導入するべきであり,もし政治家たちが真剣に指導しないなら,有権者たちが問題を世界的な課題にしなければならない.
それは経済学の問題であると同時に,個人の強欲の問題だ.人々は,政府によって据えられた経済構造から個人が過剰な富を得ることに道徳的な制限を示している.
民主主義においては,経済をどのように組み立てるか,我々すべてに発言権がある.我々は貧富の格差が急速に拡大するような条件を選択することもできるが,それを減らす手段を支持することもできる.我々は真に野心的になれば,不平等の構造的原因について,すべての人が公平に生きるチャンスを得られるように,対処できるだろう.
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The Economist June 16th 2007
Biology’s Big Bang
Europe’s population: Suddenly the old world looks younger
The candidates: Barack Obama, the campaign’s brightest star
Lexington: Vote for me, dimwit
Economics focus: Doffing the cap
(コメント) 生化学や人口学(出生率・高齢化)という,社会の再生産に基礎となるデータを説明することが今も非常に難しい,とわかりました.地球環境や大統領を選択するのも,もちろん,容易に合理的な説明を受け付けません.
ともかくも,オバマが民主党大統領候補として,まったく政治家としての経験も浅いのに,その優れた資質と政治的シンボルとしての卓越した機会により,大健闘している,という記事を読むのは楽しいです.アメリカ人が大統領として,あるいはその候補として,オバマのことを忘れたくないというのは,彼の知性や雄弁さが,その生い立ちやアメリカ社会の今の状況を反映して,新しい希望となるからです.