IPEの果樹園2007
今週のReview
6/4-6/9
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
******* 感嘆キー・ワード **********************
ロシア, 地球温暖化の対策, サマーズ, カストロ, 中国の教育熱, ホブズボーム, クジラと日本人, 東欧, 戦争を記念する, ゼーリック
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor
FT May 23 2007
America and Russia need a wider deal on missiles
By Stephen Rademaker
NYT May 24, 2007
Killing the Russian Media
FT May 24 2007
Europe must now stand up to Russia over Kosovo
By Philip Stephens
YaleGlobal, 24 May 2007
Russia Plays the Oil Card with a Divided Europe
Shada Islam
WP Sunday, May 27, 2007
Dealing With Putin
By Jim Hoagland
FT May 27 2007
Murder and oppression will not earn Russia respect
By Stefan Wagstyl
LAT May 28, 2007
Reviving the evil empire
Niall Ferguson
(コメント) 日本はブッシュによる「第二のニクソン・ショック」を恐れ,ロシアはブッシュによる「逆キューバ危機」を阻止する決意を示します.つまり,ブッシュが突如ピョンヤンに飛んで金正日と握手し,核保有のまま北朝鮮政府を認めて国交回復しようとする.他方,ブッシュはポーランドに10基の弾道ミサイル迎撃ロケットを配備し,ロシアは軍拡競争と冷戦を警告する.
プーチンは即座に対抗策を取り始めました.通常兵器や中距離ミサイルの制限協定から離脱する動きを見せています.実際,世界を完全に包括する核やミサイルの協定は存在しない以上,そのバランスは常に崩れてしまいます.
しかし,解決策は個別に核武装やミサイル配備を増やすことに無く,できるだけ包括的な合意と,それに含まれない国への圧力を協力して行使することです.つまり,ロシアもミサイル防衛網に参加することだ,とRademakerは主張します.もちろん人によっては,ここで,太平洋戦争が起きる前に日本政府の姿勢を質した入江昭の研究を思い出すでしょう.
戦前の日本政府がアメリカやヨーロッパの民主国家に受け入れられただろうか? という疑問が残ります.すなわち,今もロシアは欧米諸国から信頼されず,その政治的抑圧体制を非難されています.メディアやジャーナリストへの弾圧,コソボへの関心,石油の利用,亡命者たちも暗殺しているのではないか?
Hoaglandが懸念するように,リトヴィネンコ暗殺事件を含めて,プーチン政権が示す国際基準・規範からの逸脱ははなはだしく,秘密警察国家というイメージを強めています.それは冷戦の復活をも予感させます.論説は,西側がロシアの国内政治に無関心でありすぎた,ドイツ,フランス,イギリスは対ロシア政策を見直すべきだ,と主張します.
Fergusonは7年前の(Brigitte Granvilleとの共同)論文「ヴォルガ川沿いにできたワイマール」を思い出します.すなわち,1990年代のロシアは多くの点で1920年代のワイマール・ドイツに似ていた,と.
しかし比較はもちろん不完全です.1923年のインフレはドイツ政府を完全に崩壊させましたが,ロシアでも1992年にインフレ率が300%に達したものの,政府は崩壊しませんでした.それでも1990年代の経済的破壊はロシアの民主主義を根底から蝕んだのです.「自由な市場,法の支配,議会制度,国際的な経済開放,が信用を失い,ワイマール期のインフレーションが確実に国家社会主義を育てた」と結論しました.中期的に見て,インフレで破滅させられた者たちが政治的反動の支持者となりました.
しかし,その過激なレトリックにもかかわらず,現在のロシアはかつてのソ連ほど自律的ではなく,資源の輸出に依存しており,アメリカの技術力にも対抗できません.しかし,ロシアが挫かれた帝国であるほど,ワイマールと同様に,その弱さに対する政治的反発が起きるでしょう.ソ連が崩壊したことを「途方も無い民族的な悲劇であった」と述べた者こそ,プーチンでした.
FT May 23 2007
A price floor for oil
LAT May 28, 2007
Time to tax carbon
(コメント) 石油価格の高騰と,石油輸入に依存している状態は,アメリカにとって深刻な問題です.すべての大統領候補が沿う主張しますが,有効な対策を示せません.ただ一人,アル・ゴアだけは,二つの問題を解決するために石油に税金をかける,と主張しました.
石油の高価格は石油関連企業や,ロシア,ヴェネズエラなどの産油国に大きな利益をもたらしています.彼らの利益に課税することです.加えて,石油消費税(もしくはグリーン・タックス)は消費を抑制し,輸入石油への依存を減らし,代替エネルギーへの転換を促します.そのためにも税金で石油の最低価格を維持するようにします.歳入は,高価格によって生活が悪化している低所得者への社会的給付に使います.戦争するよりも,石油収入を武器の輸入や民主主義弾圧に使っている諸国に課税する方が,効果的です.
カリフォルニアの海岸で子どもたちを遊ばせておく方が良い.それがあるうちに.温暖化によって海面は7から23インチも上昇すると予想されています.カリフォルニアの砂浜は失われるでしょう.山は崩れ,津波が襲う.降水量が減り,飲み水が不足し,山火事が頻繁に起きる.・・・
さまざまな原因が複雑に関係しているために,提案される解決策も多く,複雑です.温室効果ガスの排出をやめよ,と命令するのは簡単ですが,効果は無いでしょう.より効果的なのは,上限を決めて排出権取引を認めることです.温室効果ガスの排出がより優れた除去技術を持つ生産者は利益を得て,技術が促進され普及します.
さらに優れた方法は,炭素排出税を課すことです.排出権取引をめぐる不正が回避でき,市場における予想外な価格変動を防ぐでしょう.ヨーロッパですでに試みられた排出権市場の経験から学ぶことが重要です.関連産業のロビー活動は熾烈で,排出権の上限が余りにも引き上げられました.また排出量を監視することは難しく,政府は容易にだまされて資金を失いました.
炭素税は単純で,効果的で,その他の税金を減らして増税を避けることもできます.多くのエコノミストも主張します.しかし,問題は有権者の示す増税嫌いと,政治家たちの姿勢です.
以下のサマーズの提言は非常に説得的だと思いました.日本政府も熟読してください.汚染を貧しい国に移せというサーマーズ・メモや,日本政府への要求,アジア通貨危機,学長辞任劇など,その偏狭な合理主義,傲岸不遜さは憎まれていますが.
FT May 28 2007
Practical steps to climate control
By Lawrence Summers
地球温暖化に関する最も不都合な真実とは,発展途上諸国で起きていることが最も重要であるということだ.次の一世代において排出される温室効果ガスの4分の3は発展途上諸国からのものだ.さらに,経済活動がますます国際的に移動するから,すべての場所ではなく,ある場所だけで排出を規制する政策は,排出源を再配置するだけで排出量全体を減らさないかもしれない.
現在の温室効果ガスは工業諸国が出した.発展途上諸国の一人当たりエネルギー利用は工業国の約5分の1だ.彼らは今後大幅にエネルギーを必要とする.成長の予測やエネルギーの利用技術については,大きな不確実性がある.こうしたことを知っている以上,発展途上諸国が将来の排出量を現在の工業国よりも低い水準に制限すると同意したがらないのは当然だ.
こうした理由も考慮して,私は京都議定書のアプローチ(目標値の設定)は国際連盟の平和維持に向けたアプローチに似ていると主張した.それは理想主義,未来志向であるが,しかし,実際的でない,結局,効果のない,そしておそらくは,貴重な政治的資本を消耗するという意味で逆効果でさえある,とわかった.私が間違っているならそれで良いが,今後数十年で排出量を大幅に減らすと約束することは攻撃や戦争を終わらせると約束するのと同様に現実的ではない.
では,京都議定書のアプローチに代わって,あるいはそれを補って,われわれは何をなすべきか? まず認識するべきことは,政府が約束し,それを守るには,政府が結果を保証できないものより,管理できる政策の方が良い,ということだ.交渉し,設定する目標が何であれ,意味のある影響をもたらす具体的な手段に強調が置かれるべきだ.
第一に,アメリカはエネルギー効率化計画を示すべきだ.それはただちに効果を発揮し,十分な刺激となるものでなければならない.発展途上諸国がアメリカを「ただ乗り」と非難できる限り,彼らも勝手にしたいことをするだろうし,真剣な対話は行えない.私は,許可システムと大規模管理アプローチより,炭素・ガソリン税の方が良いと思う.なぜなら,管理アプローチは非効率的で,時代に逆行しているから.重要な点は,アメリカが目標を示しただけで実際に行動を取らなかった京都以後,今度こそ政策が問われる,ということだ.
第二に,主要工業諸国は,温室効果ガスの蓄積を減らす見込みのある技術開発のために基金を大幅に積み増す,と約束する.再生可能なエネルギー,炭素の隔離,効率的なエンジン,などである.また薬品業界の経験から学び,クリーン・エネルギーに関する知的所有権について発展途上諸国は有利な条件で利用できる,と約束するべきだ.
第三に,世界銀行は,多分その他の地域開発銀行も,その株式保有者が「開発と地球環境のための銀行」に生まれ変わることを認めるべきだ.そして,国境を越えて環境の改善に役立つプロジェクトに助成された資本を提供することが主要な使命になる.発展途上諸国には,ほとんどあらゆる分野でエネルギー効率を高める必要があるのに,各国政府は地球規模の影響をまだ十分考慮していない.さらに,こうした機関は,主要な発展途上国が資本を輸入するより輸出する時代に,最貧国以外の国に対しても新しい役割を求めている.
第四に,世界で毎年2000億ドルも支出されているエネルギー補助金を2025年までに撤廃するという目標を掲げるべきだ.そして不適切な補助金のための貿易として取り締まることだ.これは環境と経済の要請が一致する点であり,ちょうど通商政策のように,多くの国で対外的な政策公約をすることが望ましい点である.エネルギー補助金の定義や測定には大変な作業が必要だ.しかしそれが,将来,もっと野心的な政策,たとえば,市場を越える世界エネルギー価格を調和させるために必要となる.
政策として重要な最後の点は,世界的な方針の決定に発展途上諸国を完全に参加させることだ.それは彼らの政策変更,それゆえ,彼らがそれを自分たちの利益とみなすかどうか,にかかっている.G7が決めたことを押し付けられるより,彼らが政策決定に参加した方が,それに従うだろう.
これがすべて満たされるというのは野心的過ぎるか? 多分,そんなことはない.野心的な政治目標は,東欧の民主化のように,それ自体が変化への力になる.ただし,それらはもっと直近の,現実に効果を示す,あまり極端ではない措置と組み合わせておかねばならない.
The Guardian Thursday May 24, 2007
A drive for global domination has put us in greater danger
Al Gore
WP Thursday, May 24, 2007
Get Out Of Our Garrisons
By Richard Feinberg
The Guardian Wednesday May 30, 2007
Fidel Castro
The Guardian Wednesday May 30, 2007
We had the very best of intentions
Richard Perle
(コメント) カーター元大統領はブッシュ氏を強く批判して顰蹙を買いましたが,アル・ゴア元大統領候補は批判する資格があると認められているのかも知れません.カーターはアメリカ史の谷間であり,ゴアはブッシュをそもそも倒すことができた候補だからです.
ここに並べた論説は,政治における理念,道徳,説得の重要性を示しています.ブッシュ政権,イラク統治,キューバ,ネオコン.そのいずれを取っても,政治における理念・信仰の意味を考えるでしょう.人は暴力によって征服するだけで勝利することはできない,と思います.
アル・ゴアの論説は,民主党の政治顧問たちがバランスを取って叙述したような,優れた政治的交通信号のようなポスト・ブッシュ宣言です.
クリントン政権で国家安全保障会議に参加していたFeinbergも,アメリカの外交を下から支えるはずの在外大使館が「中世の城砦」と化してしまった,と厳しく批判します.各地の激しい敵意に取り囲まれて,アメリカの考えや価値観を広めるどころではありません.
キューバのカストロは,衰弱と死に向き合いながらも,ブッシュ政権を批判します.彼の保有する武器は,アメリカの戦闘爆撃機や潜水艦,核ミサイルに数分も対抗できません.しかしカストロは,その言葉によって世界のメディアを使い,ブッシュの政治生命をさらに奪うでしょう.
「私はブッシュが殺せと命じた最初の一人ではないし,最後の一人でもない.」
作戦に失敗し,疲れ切って山中に逃れたカストロたちはバチスタの軍隊に逮捕された.そのとき兵士たちは激しい憎悪と興奮でわれわれに銃口を向けた,とカストロは回想します.しかし,黒人の中尉は押し殺した声で繰り返した.「理想は殺せない.」"Ideas cannot be killed."
Perle は勇敢にもThe Guardianの読者が何百人も集まった集会でアメリカのイラク政策をめぐって質問に答えたようです.聴衆を説得できなかったPerleは紙面で彼の意見を公表したわけです.そこには9・11後のブッシュ政権の思考回路が明確に示されており,興味深く,ある意味で,十分説得的なのです.
The Guardian Thursday May 24, 2007
China's lessons for the World Bank
Jeffrey Sachs
Shanghai Daily 2007-5-26
US economist upbeat on China's way to develop
Michael Spence
(コメント) 二人の優れたエコノミストが中国の成長を称えています.Jeffrey SachsとMichael Spenceです.
中国は,汚職追放に終始した世界銀行に代わってアフリカの開発を援助し,誤った市場自由主義のイデオロギーを破棄して,アフリカ諸国の政府がインフラや教育に公共投資を増やすことを支持しました.中国がアフリカ諸国を招いた会議で与えた助言はきわめて実際的で,正当なものだった,とSachsは考えます.すなわち,農民の生産性を高めなければならない,ということです.そして増加した農産物を都市の消費に結び付けるため,中国全土の村落と都市を結ぶ輸送インフラに政府が投資しました.
世界銀行は中国の成長に学ぶことです.他方,中国政府はもちろん人民元を徐々に切上げるでしょうが,それが成長を損なうほど大きなものであってはならない,と正しく考えているわけです.
May 25 (Bloomberg)
Is U.S. Ceding `Master of the Universe' Status?
Caroline Baum
May 25 (Bloomberg)
Greenspan Is Wary of China's Casino-Like Market
William Pesek
NYT May 25, 2007
China’s Leaders Confront Their Manic Market
By KEITH BRADSHER
(コメント) 中国の成長が,成長戦略や通商政策に影響しているだけでなく,アメリカや欧米先進工業諸国に代わって,世界をリードし,国際秩序を築くものになる,と考える論説も増えました.
その場合,アメリカと中国は対立し,戦争に向かうのでしょうか?
この二十年間,アメリカは他の工業諸国の成長をリードしてきました.それらの諸国で景気変動は同時化してきたのです.中国やインドはこの法則から外れます.アメリカがくしゃみしても,世界は風邪を引かなくなりました.
中国の成長で懸念されるのは金融システムです.特に,株式市場は過熱し,バブルが破裂するのを待っている状態です.しかし,グリーンスパンやリ・カシンが警告しても,株価の上昇は止まりません.もはや破裂を防ぐよりも,その波及を阻止することが求められます.たとえ日本のGDPの半分であるとしても,中国はアジアの「成長のエンジン」です.そして株価暴落が鎮静化すれば,それは次の成長を促すでしょう.
FT May 26 2007
Diversifying China
FT May 27 2007
US trade with China
FT May 29 2007
The right way to respond to China’s exploding surpluses
By Martin Wolf
(コメント) 中国は成長のエンジンであり,バブルと金融危機の震源です.中国に生産が集中し,貿易や決済が不均衡になればなるほど,中国の変動は世界に及びます.外貨準備の一部を投資ファンドに運用させても,不均衡を解消しない限り問題は解決しません.
Wolfは,ポールソン財務長官の米中二国間交渉より,G7による多角的交渉が望ましい,と主張します.第一期グローバリゼーションでは,アメリカが新興国として輸出を増やし,イギリスは資本を供給しました.しかし,現在のグローバリゼーションでは,中国が貿易黒字も資本供給も増やしています.それゆえ異常な低金利も続くのです.
中国の経常収支黒字はGDPの9.5%,長期資本流入も含めた基礎収支の黒字はGDPの12%にも達します.日本が巨額の黒字を批判されたときでも,1986年でGDPの4.3%でした.歴史的に見れば,1905-14年,アメリカの海外純投資がGNPの8%でした.さらに中国が異常であるのは,国内投資がGDPの40%に及ぶことです.要するに,国内でも世界でも,中国は驚異的な資本形成を担っています.
問題は,Wolfの見るところ,中国政府の介入がこの資本形成の主体として大きくなり過ぎていることです.もちろん,それは良いことかも知れません.短期的な投機的資本の流れに翻弄されるわけではないし,世界の金利は安く,中国が雇用を伸ばすだけでなく,その他の世界でも成長や雇用を促しているからです.
しかし,その反対に貿易赤字が集中しているアメリカで,もし景気が減速すれば,保護主義が強まるでしょう.さらに危険なことは,この外貨準備が人民元切上げ,すなわちドル価値の下落によって,巨額の為替差損をもたらすことです.中国政府も国内投資について不均衡の解消を唱えています.Nicholas Lardyによれば,不均衡は,消費の抑制,沿海部の過熱,地域格差,低い雇用増加率,エネルギーの浪費,低い国内金利と無駄な投資,などをもたらしています.
人民元を切上げ,インフレ圧力を取り除くべきです.政府はその資金で社会保障を整備するべきです.それは超大国アメリカが中国に譲歩を求めているのではなく,中国も他の指導的諸国とともに世界経済の対話に参加することを意味します.グローバリゼーションはG4(アメリカ,ユーロ圏,日本,中国)の時代を迎えたのです.
NYT May 28, 2007
By NICHOLAS D. KRISTOF
IHT day, May 29, 2007
Corruption in China: The anger boils over
By Carl Minzner
May 30 (Bloomberg)
China: Hegemonic Threat or Just Another Sputnik?
William Pesek
LAT May 30, 2007
Challenging China on genocide
(コメント) 冗談みたいですが,安倍首相の唱える「美しい国」とは,多分,中国語の「美国」つまりアメリカのことです.かつて多くの中国人が移民としてアメリカにわたったのは,そこに豊かな機会があり,特に,教育において世界最高であったからだ,とKRISTOFは指摘します.しかし,中国はこの点でも急速に追い上げている,と.なぜなら,@中国の学生たちは知識を渇望し,猛烈に学習している.A中国社会には知識を尊重する儒教の伝統がある.B中国のエリートたちは能力主義の原則を受け入れ,妥協しない.
他方,アメリカ人の(そして,もちろん日本人の)平均的な子どもたちは,勉強する以上に長い時間をテレビの前で過ごします.
KRISTOFは妻の故郷を訪れます.「朝6時30分.生徒たちは学校に来て,7時30分から始まる授業の前に,補習を受けていた.彼らは昼食を摂るために11時20分に下校し,午後は2時から5時まで授業がある.毎晩,週末も,8週間の夏休み中も,1時間から2時間は宿題をした.」
「私は妻の故郷を訪問した際のビデオをニュー・ヨーク・タイムズのホームページに公開した.驚いたことに,すぐにブログに書き込んだ女性がいた.彼女は昔その村に住んでいたのだ.この遠い親戚は,私のビデオに映っていた家で育った.彼女の両親は成績優秀ではなかったが,彼女は村からの最初の大学進学者であった.今はニューヨークのメリル・リンチで働いている.<農家の小娘>が<ウォール街の資本家>になった,と自称する.」
「これが教育の奇跡だ.彼女の後に13億人が続く.」
KRISTOFは考えます.「だから中国の貿易黒字に障壁を築いて対抗するのは止めた方が良い.むしろ1957年にソ連がスプートニクを打ち上げたときやったように,競争に負けない高い教育水準を目指すことだ.」
私たちの子どもや孫は,中国語を学んで,中国の大学へ留学し,中国国籍の取得や中国系企業への就職を夢見るようになるのでしょうか? つまり,日本の政治家たちが「美しい国」について勝手な自己満足を振り撒く中で,次の世代はアメリカではなく中国を目指しているのです.
中国の台頭は50年前のスプートニク打ち上げ成功によってアメリカがソ連の脅威を実感したショックに似ている,とPesekは書きます.アメリカ人の中国ヒステリーは高まり,中国がアメリカと経済規模で並ぶ時期は急速に近づいている,と感じています.それは,ソ連との冷戦や1980年代の日本叩きと比較されます.中国との貿易関係は,相互利益よりも脅威として嫌われます.
大統領選挙の影響もあるはずです.しかし1兆ドル以上のドル資産を保有し,急速に消費を増やしつつある中国市場の魅力を考えれば,このまま米中間の対立が過熱するとは言えません.
NYT May 24, 2007
Pirates and Sanctions
By NICHOLAS D. KRISTOF
DONGGUAN, China
(コメント) 世界の工場である中国に対して,アメリカは保護主義を取っても意味が無いだろう,とKRISTOFは警告します.中国の輸出は単に人民元が過小評価されていることで説明できません.その生産力と製品の品質は,世界市場で好まれているのです.
それは保護主義で解決できない問題です.・・・中国の労働者は昼夜を問わず働く.中国の輸出はこの5年に急増したが,アメリカ以外の国には赤字の場合もある.低賃金労働者を利用した加工部門だけが多国籍企業によって移された.そして,次第に賃金も上昇し,ベトナムやバングラデシュとの競争が始まり,より高い技術の製品を作るようになる.成長は国内消費に向かうだろう.他方,政治的指導力の弱さが新しい経済モデルや政治体制の移行を難しくしている,と.
George F. Will A Bill That Earned Its Doubters WP Thursday, May 24, 2007
PAUL KRUGMAN Immigrants and Politics NYT May 25, 2007
Charles Krauthammer The Amnesty Compromise Needs a Caveat WP Friday, May 25, 2007
US immigration FT May 25 2007
LAWRENCE DOWNES America the Generous: A Lost Story of Citizenship NYT May 27, 2007
ROBERT PEAR Many Employers See Flaws as Immigration Bill Evolves NYT May 27, 2007
Make a Bad Bill Better NYT 29, 2007
E. J. Dionne Jr.Window of Opportunity WP sday, May 29, 2007
Timothy Garton Ash Fortress America's gatekeepers need to remember: first impressions count The Guardian Thursday May 31, 2007
(コメント) 移民法改正の妥協案について,さまざまな論説が出ました.余りにも国境管理と非合法移民の処遇(アムネスティ)に関心が集中している,といえます.移民の増加は賃金を押し下げ,民主主義を混乱させる,とメディアは警告します.成長を維持しながら,民主的で平等な社会をどうすれば築けるのか? メキシコからの移民も,中国からの輸入も,アメリカ政府の分裂を強めます.
KRUGMANは,「事実上のアパルトヘイト」を回避するように求めます.
FT May 24 2007
The $2,500bn question
By Tony Tassell and Joanna Chung
FT May 24 2007
Asia explores ‘innovative’ approach to reserves
By Mark Schieritz in Frankfurt
(コメント) ノルウェイから中国,ボツワナ,オーストラリア,イラン,シンガポール,ブルネイ,カザフスタンにいたる諸政府が,投資ファンド(sovereign wealth funds: SWFs)を設立することは,世界にどのような影響を与えるのでしょうか?
その規模は2兆5000億ドルとなりましたが,民間の投資ファンド(年金,保険,信託)が55兆ドルに達することから,それほど重大な影響はないといわれます.しかし,すでにヘッジ・ファンドの規模を超えています.また,世界の外貨準備を考えると,単独で最も大きな影響を市場に与える資金源かも知れません.
それは不透明であり,市場に予想外のかく乱をもたらすでしょう.なによりも,SWFは政治的な産物です.その行動が何を意味するのか,情報の開示を求められる,と指摘します.
ブラックストーンなど,ある意味で,投資ファンドを解してアジア諸国の政府が欧米の証券市場に投資することは,国際協調を促す古典的な共同利益の担保である,という風に見えます.もしそうであれば,これは確かに革新的なアプローチの始まりです.
FT May 24 2007
Steering Chrysler
NYT 29, 2007
In China, a Stake in Blackstone Stirs Uncertainty
By KEITH BRADSHER and JOSEPH KAHN
(コメント) 投資ファンドによる協調戦略の限界が指摘されています.
The Guardian Friday May 25, 2007
McJobs are giving Britain a reputation as Europe's offshore banana republic
Polly Toynbee
FT May 26 2007
McJob for life
FT May 25 2007
The right to move
The Guardian Monday May 28, 2007
A decade of Blair has left society more segregated, fearful and divided
Gary Younge
(コメント) 「マック・ジョブ」は,「刺激のない,低賃金の職業で,昇進の見込みもない.サービス経済の拡大で急激に増えた.」 しかし,こんな言葉が辞書に載るのは,マクドナルドが困るでしょう.そこでマクドナルドは,「マック・ジョブ」をもっとプラスのイメージに再定義しようとしています.マクドナルドと言えば,日本では,それなりに清潔で,アルバイトの学生でも訓練された接客態度が売り物ですが,確かに外国ではそうでもないわけです.
これも,「ニュー・スピーク」でしょうか.「ジャンク・ボンド」は「高収益債券」になり,「第三世界」は「新興市場」となって,ブームに変わったのです.
マクドナルドは決して最悪の労働条件ではありませんが,しかし「マック・ジョブ」は現代の労働市場が階層的に分解されてしまった状態を表しています.彼らが昇進する可能性はくじ引きよりも当たりが少ない,とToynbeeは嘆きます.新しい経済には社会的に上昇する可能性が豊富に存在するはずではなかったか?
Toynbeeは,むしろイギリスに定着した低賃金文化を強調します.低賃金の重労働に耐える者たちがマクドナルドに利益をもたらし,富裕層の暮らしを支えます.さまざまな違法行為,低賃金の労働者を酷使する企業について,またそれを取り締まれない政府について,Toynbeeは憤慨します.イギリスは非合法移民と低賃金労働の天国になってしまいました.
東欧からの移民の権利も再定義されます.ローマ条約は,商品や資本だけでなく,人の自由な異動を唱えました.しかし,合意が失われれば,激しい分割競争が蘇えるでしょう.
FT May 25 2007
US and Berlin clash on G8 climate text
By Hugh Williamson in Berlin and Edward Luce in Washington
NYT May 30, 2007
The Coal Trap
WP Wednesday, May 30, 2007
A Full Tank of Hypocrisy
By Robert J. Samuelson
FT May 31 2007
Bush plays for time as the planet begins to burn
By Philip Stephens
(コメント) 地球温暖化を防ぐ新しい国際制度の枠組みについて,何か具体的に合意できるでしょうか? G8に注目が集まりました.しかし事前の調整に失敗し,アメリカとドイツが衝突したようです.メルケルの示す最終案に対するブッシュ政権の激しい非難は,ドイツ政府がサミットで排出量の上限を合意するつもりであるのに対して,アメリカ政府が主張する,強制的な削減より技術革新への投資を促す,という考え方がまったく無視されているからです.
赤インクで発表された声明は,アメリカ政府の不満が爆発したことを鮮明に示しており,いくらドイツ政府が強く合意を模索しても,今回のサミットでは難しくなった,と言えます.
Samuelsonはアメリカ政治家の偽善を攻撃します.一方ではガソリンの高価格を非難し,他方では温室効果ガスの排出や中東からの石油輸入を警告する.しかし,考えてみればすぐ分かるように,ガソリンの高価格は温室効果ガスを減らす効果的な手段である,と.民主党が多数の下院は,ガソリンの高価格を禁止する法案さえ通過させました.石油関連の大企業を攻撃することは政治ゲームの常道です.
ブッシュ政権の石油利権を握るチェイニー副大統領でさえ,地球温暖化を認めたようですが,その政策は変更されません.その原因はわれわれ裕福な国の温室効果ガスであるにもかかわらず,その被害は世界の最も貧しい地域に偏って生じるでしょう.そこでサミット主催国ドイツのメルケル首相は,温暖化を2度までに制限するような対策を合意したい,と考えました.
2050年までに温室効果ガスの排出を半減し,2020年までにエネルギー効率を20%改善する,という合意がヨーロッパ内でただちに成立しました.IPCCは何もしないコストよりも削減がはるかに安上がりだ,と主張しています.政府が上限を決めて,排出権を取引します.
漸く温暖化の問題を認めて国際的な枠組みに参加する意志を示したブッシュ政権ですが,ヨーロッパ諸国とはまったく姿勢が異なっている,と主張します.ブッシュ政権は以前と変わらず,世界的な排出権の市場を認めない,というわけです.少なくともブッシュ氏がホワイト・ハウスを出るまでは.それはアメリカだけは例外だ,と主張してイラク戦争を始めた姿勢とまったく同じだ,とヨーロッパ諸国は憤慨します.アメリカが排出量の削減に合意しなければ,中国も合意に参加しないでしょう.
アメリカの産業や消費者は,他国に比べてコストのかかる合意を避けてきましたが,すでに産業界や州によっては方針転換が明らかです.ブッシュ氏の非行動は,国際的枠組みを破壊し続ける点で重大な意味を持っています.
The Guardian Saturday May 26, 2007
Unsuitable, unsustainable
Matt Waldman(Oxfam's head of policy for Afghanistan)
(コメント) 国際社会はアフガニスタンでもイラクの間違いを繰り返しつつある,とOxfamは批判します.
戦争によってイスラム原理主義政権を倒しても,その後の援助は首都に集中し,しかも浪費されている.麻薬栽培の広がる危険な地域に援助が行われ,安全な地域に向けられていない.アメリカの建設業者が暴利を得ている.崩壊した地方の経済を再建しないなら,子ども達は泥を食べて生きるしかない.民間人の犠牲が増え,無政府状態が広がって,国際的な治安維持部隊は人々がますます外国の介入を嫌い始めた.民主主義は間違っており,イスラム的な価値を正しいと信じている.こうして,彼らが攻撃してくるのを見守るしかないだろう.
The Guardian Saturday May 26, 2007
A counsel of despair /Eric Hobsbawm at Hay
Alan Rusbridger
(コメント) 「帝国と国際的介入の時代」は終わりました.しかし,それに変わる時代が何になるか,まだ誰にも分かりません.
「裕福な世界に私たちは生きている.」と,広く尊敬されている共産主義者の歴史家,エリック・ホブズボームは集会のホームページに書いています.「それはあなたの人生を喜びと満足に導くだろうか?」
私たちは帝国を失ったことを決して後悔しないが,この不安定で危険に満ちた世界に生きるしかない,という現実を受け入れることに恐怖しています.帝国に代わる秩序は見当たりません.
しかし会場は,ホブズボームを絶望の言葉で退場させなかったようです.「シエラ・レオネをどう思うか?」 ホブズボームは地域社会に支持された介入が成功するケースもある,と認めます.しかし,民主主義や価値を押し付ける試みは必ず失敗する.しかも,敗北後も撤退は難しい.国連は答にならない.大国の合意によってのみ行動し,彼らの合意は難しいから.
宗教の役割を変えた1978/79年のペルシャ(イラン)革命は,歴史への影響という点で,フランス革命に並ぶだろう.グローバリゼーションは世界を理解できないほど大きくしてしまった.「市場国家」にも将来はない.ブッシュであれサッチャーであれ,政府を小さくできなかった.そして3年間の市場自由化という試みが,プーチンの反動政治を生んだ.
WP Sunday, May 27, 2007
Next Step on Iran
Asia Times Online,May 30, 2007
Why Iran will fight, not compromise
By Spengler
LAT May 31, 2007
The lessons of Vietnam
By Henry A. Kissinger
(コメント) イランの核開発を止める有効な手立てはありません.軍事攻撃も,経済制裁も,それによって核開発を放棄するほどの効果はありません.他方,その後の破壊的な影響は避けがたいのです.
国連安保理に戻り,期限を定めてIAEAの査察を受け入れるように説得することです.彼らの安全を保障し,貿易や投資の協力体制,技術援助,民間交流など,さまざまな回路を開いて互いに信頼を得るしかないでしょう.体制の内部には意見の違いがあるものです.穏健派と協力し,その政府を助ける機会があるでしょう.・・・
そんな考えは甘い.彼らは決して妥協しない.核武装し,帝国化し,影響圏を拡大して,緩衝地帯を確保する.敵を弱体化し,軍事的な脅威を排除することが目指されている.なぜなら彼らはイラン革命の絶対的な正義を確信しているから.・・・
内政の混乱から撤退に失敗したベトナムの教訓を忘れてはならない,とキッシンジャーは主張します.つまり,合意を維持するためにも軍事的な圧力は必要であったのに,議会はそれに反対し予算案を拒んだ.ニクソンは本当に一方的な撤退を行えたか? それがアメリカの利益になったか? ニクソンは南ベトナムが自由な国として生き残れる選択肢を模索した,と.
交渉が行き詰まりに達して,ニクソンは一方的な撤退を開始しました.ベトナム軍に移管し,戦闘は終わったのです.イラクが挑戦しているように.ニクソンは南ベトナムが自主的に選択する可能性を信じていました.
つまり,撤退の期限は決められない.それは戦略を拘束するから.他方,アメリカ国民の忍耐には限界がある.その意味で,アメリカ軍は撤退を急げ!
BBC 2007/05/27
By Richard Black
The Guardian Wednesday May 30, 2007
Whaling : Battle at sea
NYT May 31, 2007
Speak Whale to Me
By DAVID ROTHENBERG
(コメント) いよいよ国際捕鯨委員会が解体する,というニュースを観ました.日本は脱退し,新しい国際組織を模索します.・・・私たちがゼミで議論したように?
捕鯨国・日本を伝えるBBCの記事は,率直で,多面的,同情的です.
フランス人とイタリア人は馬を食べるが,イギリス人は馬を食べない.フィンランド人はトナカイを食べる.東京では女性がクジラの刺身を食べている.彼は尋ねた.あなたは犬を食べたことがありますか? もちろん,彼女はショックを受けた. ・・・クジラの刺身は美味しいけれど.
食事は呪縛と道徳的戒律に満ちています.一部の文明人にとってクジラは聖獣です.地球上の生物を代表して,クジラは人類の罪を問うわけです.
FT May 28 2007
Japan must open up if it is to catch its rivals
By Takatoshi Ito
FT May 31 2007
Banks as landlords
(コメント) 日本人はクジラを食べる,と驚くよりも,日本銀行の珍しい政策や土地の価格,大学の情景を知って驚く方が正常ではないでしょうか?
伊藤隆敏氏は,簡明に,「日本開放」戦略を政府に求めます.中国企業が東京証券取引所に株式を上場し,日本の貯蓄をもっと成長のために投資する.東京がアジアのロンドンになる.日本企業が脱出してしまわないために,日本はアメリカやEUと早急にFTAを結ぶ.中国や韓国に後れてはならない.そのために農業部門を大規模化し,生産性を高める.そして日本がWTOの自由化交渉を指導する.
資本も,人間も,財も,サービスも,日本は国境を開放しなければならない.そうすることで高齢化する社会に活力を取り戻せる.国際競争に生き残ることができる.
しかし,日本で外資系銀行が利益を上げるのは専ら土地の値上がりである,というのは心配です.中国の外貨準備が日本企業の買収に使われると,開放論より脅威論が強まるでしょう.大規模化した農場に雇用されるのは外国人出稼ぎ労働者であると思います.たとえ企業が日本に残ったとしても,雇用したいと思う勤勉で優秀な若者などいるでしょうか?
SPIEGEL ONLINE - May 29, 2007
CHAOS, CORRUPTION AND EXTREMISM :Political Crises Abound in Eastern Europe
By Walter Mayr, Marion Kraske and Jan Puhl
SPIEGEL ONLINE - May 31, 2007
SHE GOES WEST, HE GOES RIGHT :Lack of Women in Eastern Germany Feeds Neo-Nazis
(コメント) 民主主義? どんな民主主義か? 共産主義が崩壊して20年近く経っても,東欧諸国には安定した民主主義が現れません.スキャンダル,暴動,人種差別,極右政党.若い政治家たちは,イデオロギーでも,自由市場でも,なんでも輸入しました.しかし旧来の秩序は地下にもぐっただけです.
東欧に民主主義とヨーロッパの秩序を拡大した成功物語は消えてしまいました.労働者たちのストライキと,兵士に鼻を捧げる民衆の平和的デモが,世界政治を変えたように見えました.あれは幻影だったのか,と失望が広がります.共産主義体制が各地の市民社会を一掃してしまったからだ,と記事は主張します.歴史的にも,限られた土地でしか市民社会は育ちませんでした.
EUの法律,EUの制度,EUの補助金を受け取っても,政治的な文化は輸入できません.彼らにとっても,西側への移行は大きな失望をもたらしたのです.政治家たちが頼るのは,しばしば,過去の英雄や各地の革命家,そして中国の奇跡です.
想像してみればよい.・・・自国の制度は解体され,自分たちの努力は報われなかった.経済や社会は疲弊したまま,政治は中央から腐敗している.この先も,首都では争乱が繰り返されるだけだ.ますます多くの若者が外国に職を求め,若い女性は真っ先に買われていく.外国から入ってくるものと言えば,ネオナチの活動家,フットボール・フーリガンの蛮行.・・・
IHT Monday, May 28, 2007
Democracy a la carte
By Felix G. Rohatyn
The Japan Times: Monday, May 28, 2007
Sarkozy should look north for a model
By MELVYN KRAUSS
(コメント) Rohatynは,サルコジのフランスとアメリカの資本主義・民主主義について考えます.他方,KRAUSSは,ドイツの改革こそフランスのモデルである,と主張します.ドイツ企業と労働者はリストラを受け入れ,賃金を抑制し,生産性を高めました.二人とも,サルコジがそのアメリカ賛美と新自由主義を政策として実行するよう勧めていません.
NYT May 28, 2007
What the History of Memorial Day Teaches About Honoring the War Dead
By ADAM COHEN
(コメント) 5月の最終月曜日は,アメリカのメモリアル・デイ(戦没将兵記念日)です.
「メモリアル・デイは南北戦争後に始まった.解放奴隷と奴隷制廃止論者がチャールストンに集まって,奴隷制を倒すために命を捧げた北軍の兵士たちを称えた.祝日は北軍と奴隷制廃止に密接に結びついていたため,南部諸州はただちに独自のメモリアル・デイを決めた.」
「その後の50年で,メモリアル・デイは変わった.南北双方の兵士を称え,戦後の南北再統合を賛美するものになった.新しい祝日は人々を包み,未来志向で,その違いを乗り越えることに役立った.しかし,重要なものが失われた.それは南北戦争が,アメリカ黒人を奴隷制から解放する道義的戦いであったという認識である.」
そして,メモリアル・デイの変遷が紹介されています.
日本も先の戦争で戦った諸国に呼びかけて,共通の戦没者記念式典を行ってはどうでしょうか.戦争の歴史を共有し,その教訓を検証してください.
Marc Pitzke WORLD BANK CHIEF ZOELLICK :Bush's Quiet Idealist SPIEGEL ONLINE - May 30, 2007
The new World Bank president? LAT May 31, 2007
A Clean Start at the World Bank NYT May 31, 2007
STEVEN R. WEISMAN Bush’s Nominee Has New Agenda for Bank NYT May 31, 2007
Zoellick at the World Bank FT May 31 2007
Emad Mekay The right (wing) man for the World Bank job Asia Times Online, Jun 1, 2007
(コメント) 世界銀行のスキャンダルは,決して大きな改革ではなく,元通商代表・現国務副長官(そして財務長官候補と言われた)ロバート・ゼーリックを,ブッシュ大統領が新総裁に指名して終わりました.おそらくアメリカ高級官僚の中で最も優秀な一人です.
シュピーゲルは,多くのドイツ人にとってゼーリックはドイツ再統一を助けた恩人として記憶されている,と述べています.大西洋同盟論者(アトランティスト).ジェームズ・ベイカーの下で訓練され,その右腕となった.ブッシュ一族の親友であり,G・W・ブッシュがテキサス州知事の時代から大統領への道を準備したブレーンの一人.WTO貿易自由化交渉でEUのパスカル・ラミーと渡り合い,研究者のライスが国務長官として孤立しないよう,特に国務副長官として指名したほどの保守派の才人です.財務省長官に指名されると噂されたものの,ポールソンが指名され,2006年7月に政界を離脱,まるでポールソンと交代するようにゴールドマン・サックスの経営陣に加わっていました.
彼は有能で,仕事に忠実です.アメリカ・ファースト.あるいは,ブッシュ最優先.
Wu Zhong Politicizing China's stock market bubble Asia Times Online,May 30, 2007
Geoff Dyer Relax about China’s markets FT May 30 2007
China’s latest wobble FT May 30 2007
DAVID BARBOZA and KEITH BRADSHER Chinese Shares Plunge 6.5 Percent NYT May 31, 2007
John Ng A warning shot for China's markets Asia Times Online, May 31, 2007
Andy Mukherjee Greenspan's Caution Won't End Asia's Stock Boom May 31 (Bloomberg)
(コメント) いよいよ始まったのでしょうか? ・・・中国発の世界恐慌,第一幕です.あるいは,国際秩序再編の政治交渉と制度転換が間に合うでしょうか.
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The Economist May 19th 2007
America’s fear of China
China and US trade: Lost in translation
Japan’s ultra-nationalists: Old habits die hard
Trade and labour standards: A dubious deal
Immigration: Debate meets reality
Immigration: Came and fall on Slough
A special survey on international banking: The alchemists of finance
China’s stockmarkets: Feeding frenzy
(コメント) 貿易不均衡と,国際金融の発達,株式市場の過熱.これはまるで世界恐慌を準備しているようだ,と多くの人が思うでしょう.保護主義が強まり,金融危機が起き,株価が暴落するのです.それが資本主義システムに必要な調整に過ぎないのか,それとも各地で深刻な体制の崩壊をもたらすのか,主要国の合意や協力の姿勢,投資家の信頼,などがそれを決めます.あるいは,戦争によってどこかの国が覇権を築くというより,多極化した世界を円滑に調整できるようなメカニズムを築いて欲しい,と思います.
特集記事を斜め読みした限り,国際金融業に漂う不安の立ち入った解明は見つかりませんでした.金融業の活況が望ましい結果をいつまでもたらすのか,分からない,という印象です.また,人民元切上げを要求するアメリカの主張には,多くの間違った思い込みがある,と批判します.
アメリカの移民法改正案は非合法移民を減らす見込みがありません.他方,イギリスは開放政策を取って予想外の東欧移民を受け入れ,その結果に迷いを深めています.アメリカ政府は労働組合の要求してきた貿易に関する労働と環境の基準を認め,日本政府は右翼の政治的主張を受け入れてしまった・・・