IPEの果樹園2007

今週のReview

5/14-5/19

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

DCマダム, 新しい産業国家, 気候変動の政治力学, サルコジ当選, ブラインダーの「変節」, アジアの金融秩序1, ブレア辞任, ナイジェリア

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


CSM May 03, 2007

A new and improved Bush policy toward North Korea

By Pat M. Holt

FT May 3 2007

Why it is time for America to start talking to its enemy

By Philip Stephens

NYT May 9, 2007

Wrestling Nuclear Genies Back Into the Bottle, or at Least a Can

By CARLA ANNE ROBBINS

(コメント) 外交においては,「白か黒か」という単純な世界は存在しません.「悪の枢軸」と戦うブッシュ大統領はこれを無視してきましたが,イラクとイランを経て,とうとう北朝鮮に対しては「灰色の世界」を受け入れたように見えます.

灰色の特徴とは,軍事力だけに頼らず,敵とも話し合うこと,大国間で取引すること,です.これは安倍首相たちが恐れ,強く牽制し,非難すべきことでしょうか?

他方,EUはアメリカとイランとの関係正常化に向けて動いています.そのためにはイラン政府だけでなく,ヒズボラやイスラエル,パレスチナ自治政府や難民たちとの交渉も必要になるわけです.

どちらの場合も,交渉の基本は同じです.それは,ヨーロッパも日本も,アメリカとは異なる形で追求してきたものです.核武装を諦め,その代わりに安全保障と経済的な繁栄を共有したい,という合意を得ることです. そのような言葉だけの合意を信用できない,と考えるからこそ,大国(間)の保証が加わるのです.もし北朝鮮が違反すれば中国が,イランが違反すればEUが,アメリカとともに制裁(や軍事行動)に参加するでしょう.


May 4 (Bloomberg)

Sex Isn't the Only Thing for Sale in Washington

Ann Woolner

BG May 4, 2007

Facing the facts in Washington

By Ellen Goodman

(コメント) 驚き入るような話ではないかもしれませんが,ワシントンDCにおける買春スキャンダルです.すでに買春に反対する世界キャンペーンを担当していた国務次官補のRandall Tobiasが辞任しました.「DCマダム」に1時間300ドルの特別なエスコートを受けた,というわけです.ただし,それは「違法なセックス」を売買したのではないけれど,と.

ブッシュ政権にはさまざまな「ファンタシー」がつきものです.CIA,ペンタゴン,世界銀行,国務省,・・・ 妊娠中絶に反対し,テロや人身売買の根絶を訴え,イラクや環境破壊について世界の常識をまったく無視したブッシュ氏自身の嗜好を反映している,と見られるのは当然です.

あるいは,ハリウッドやMTVなど,あらゆるコマーシャルに溢れるセックスに依拠した利益至上主義の延長です.それを抑制するのは,HIVなどの性的感染と犯罪組織への警戒感でした.DCマダムが,「私たちはそうではないのですよ,これは違法なセックスでもないし・・・」と言ったのを政府高官も「犯罪」とは考えなかった,・・・という「犯罪」です.

だったら,いっそ,合法化せよ,という話になります.

Goodmanは,Randall Tobiasの仕事を高く評価しています.むしろ,実現できないようなイデオロギーを政策目標として掲げ,その結果を直視しないブッシュ政権の性格を批判します.


The Guardian Friday May 4, 2007

Phoney policies only backfire. We need an amnesty for illegal migrants

Polly Toynbee

(コメント) 政策には二つある.一つは,それが現実に効果を示し,それによって変化をもたらす政策.もう一つは,それが役に立つように見えるけれど,決して効果が期待できない,ということを誰もが知っている似非政策です.非合法移民に関するタブロイド紙の求める厳しい政策を,政治家たちが無意味と知りながら支持する様子に憤慨した内容の論説です.

犯罪を減らすためにますます多くの者を,矯正させるより凶悪化するような刑務所に収監する法律,麻薬を撲滅するために売人や常用者を厳しく取り締まり,その結果,路上で売られる価格が下がって利用者が増えるような政策,そして,非合法移民を取り締まる政策です.

Toynbeeは,遺伝子情報を組み込んだIDカードを使うよりも,難民申請者が国内で合法的に雇用される道を作ることや,非合法な就労や劣悪な労働条件を雇用者の側で厳しく取り締まる方が有効だ,と主張します.

IDカードや国外退去に税金を使うより,国内の非合法移民を合法的に滞在・就労できるような枠組みを示し,同時に,地下経済を根絶するような雇用者の取締りを強化せよ.


The Guardian Friday May 4, 2007

The New Industrial State

James K Galbraith

(コメント) ジョン・K・ガルブレイスの40年前に出した著書『新しい産業国家』の新装版に関して,その息子ジェイムズがコメントしています.当時の市場がもたらす富への称賛,「技術・官僚支配」への期待を,この本は批判しました.市場の経済学よりも,組織の経済学が必要だ,と主張したのです.

1960年代の大企業は研究所や技術部門を支配することで技術変化をコントロールした.マーケット・リサーチやデザイン,広告を通じて消費者をコントロールした.組合や規制,貿易障壁,鉄のカーテン,ブレトンウッズ国際金融システムといった巨大な網の目によって自分たちの地位を安定化した.」

「もちろん,1967年のアメリカ大企業による計画システムは永遠に続かなかった.ブレトンウッズ体制は崩壊し,OPECが石油価格を引き揚げ,日本企業は鉄鋼や自動車で挑戦し始め,その後は中国の台頭がアメリカ企業の安定した営業環境を破壊した.レーガノミクスが規制や組合の拮抗力を悪者にし,同時に,ウォール街を再強化した.大企業は資本調達のコストと安価な輸入財によって挟み撃ちにされた.脱工業化とグローバリゼーションが続いたのだ.その後,技術部門が巨大な統合型企業から独立し,ウォール街と一体化して資本調達する情報経済が現れた.ソフトウェアを開発する変人たちと金融街の帝王たちが共棲し始めた.そしてついに,われわれはエンロン,ワールドコム,タイコー,といった破壊王としてCEOたちに直面し,彼らが大企業やその技術支配を内側から略奪し,滅亡させるのを見た.」

企業買収,ITバブル,不正会計,さまざまな共棲関係について,ガルブレイスなら驚かなかったはずです.なぜなら,「市場」によって隠された,組織,情報,支配,権力,について彼は深く考えていたからです.

そういえば,ガルブレイスが亡くなって1年が経つのです.


NYT May 4, 2007

The Aussie ‘Big Dry’

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) オーストラリア首相,ジョン・ハワードは,ブッシュや安倍と強調を支持する保守派ですが,その旱魃の厳しさに,国民すべてが雨を祈るように求めました.というのも,旱魃や気候変動が国政選挙の最大の争点となったからです.

このままではオーストラリアの穀物と家畜の41%に水を供給するマレイ・ダーリング河が干上がってしまう,とナイル川による灌漑を禁止されたエジプトの神官のように,ハワードは悲観します.ハワードは「環境リアリスト」であると主張し,排出規制と原子力発電によって京都議定書を達成できる,と考えます.他方,労働党のケヴィン・ラッド党首は厳格な排出削減を主張します.

オーストラリアで雨が降らなくなったことは政治を激変させました.保守派は,ブッシュやハワードのように,環境破壊の予測を信用せず,それでも政策を提示する必要を認める者と,環境が政治の争点であることを理解し,リベラル派の支持者を奪うために積極的な政策を示すシュワルツネッガー(カリフォルニア知事)らキャメロン(英保守党党首)がいます.

ナイル川が干上がった古代エジプトのように,世界政治にも亀裂が生じ,激しい気候変動が続く国ほど政治党派の再編が加速していきます.


John Thornhill A sixties flashback in French politics FT May 4 2007

Is Paris yearning? BG May 6, 2007

Martin Newland Enough of the superiority. Life can be so much better in France The Observer Sunday May 6, 2007

ELAINE SCIOLINO and ARIANE BERNARD French Voters Pick Sarkozy to Be President; Turnout High NYT May 6, 2007

MAUREEN DOWD La Campagne, C’est moi NYT May 6, 2007

Caroline Wyatt The new face of France under Sarkozy BBC 2007/05/06

John Thornhill and Martin Arnold Sarkozy sweeps to power in France FT May 6 2007

Sarkozy’s mandate for change FT May 6 2007

France :A sharp right turn The Guardian Monday May 7, 2007

Philippe Marliere Strategy sellout The Guardian Monday May 7, 2007

Christopher S. Chivvis Pro-American yes, French poodle no IHT Monday, May 7, 2007

Business under Sarkozy FT May 7 2007

JOHN VINOCUR Royal Showed Early Promise, but Failed to Deliver NYT May 7, 2007

France elects a very Gallic liberal FT May 8 2007

France Under New Leadership NYT May 8, 2007

Paris spring CSM May 08, 2007

Patrick Sabatier France: Waiting for Reform YaleGlobal, 8 May 2007

Conrad de Aenlle Investing: French Elections Test Attitudes Toward Globalization The IHT, 8 May 2007

Jonathan Freedland Don't be fooled by Europe's mood. Globally, the left is reawakening The Guardian Wednesday May 9, 2007

Massimo D'Alema Ambition, not fear The Guardian Wednesday May 9, 2007

MARK LANDLER Look to Airbus for Clues to Sarkozy NYT May 9, 2007

A shakeup for France? The Japan Times: Thursday, May 10, 2007

(コメント) フランス大統領選挙の二次投票でサルコジが当選したことは大きなニュースとなりました.投票率は85%に達したようです.サッカーのワールドカップ決勝戦より多い2000万人が,サルコジの勝利の瞬間を観戦しました.53歳でもビキニと冷したチョコレートが似合いそうなロワイヤルを,しばしば抑制を失って暴言を吐く悪代官のようなサルコジが打ち倒してしまいました.・・・これが政治だ! 水戸黄門はいません.

彼はボルシェビキなのか,ナポレオンなのか,ドゴールなのか,ル・ペンなのか,・・・新大統領のサルコジは,すでに欧米の政治論調に台風を起こしています.

The Guardian, Webfeeds May 6, 2007

The right revolution for France

Dominique Moisi

WP Monday, May 7, 2007

Sarkozy's Dangerous Strengths

By Jim Hoagland

BBC 2007/05/07

What now for Nicolas Sarkozy?

By Henri Astier

FT May 7 2007

France braced for stiff dose of Thatcherism

By Gideon Rachman

(コメント) 1968年には,ド・ゴールが10年支配したあとで,高成長と完全雇用にもかかわらず,フランスは退屈だ,と言う学生たちの叛乱が起きました.ミッテランが14年,ジャック・シラクが12年支配したフランスは,成長率が最低,債務と失業率がヨーロッパ最高となって,その滅亡を噂されています.ロワイヤルは女性であったからではなく,女性であるにもかかわらず敗北しました.国民は変革を担える強い力を求めたようです.サルコジが強調したのは,愛し合うより,働くこと,です.サルコジを嫌うとしても,これがフランスの病気を治す苦い薬だ,と有権者は感じました.

しかし,問題は残ります.サルコジは,改革を阻む多くの利害集団に打ち勝つ情熱を,選挙の後も国民と共有できるでしょうか? フランスを改革することで,フランスはグローバリゼーションと国際政治の中に重要な地位を占めるでしょうか?

サルコジの強さには,すでに危険な兆候が見えます.国民は悲観論や自己不信,受動性を嫌いました.サルコジは行動と責任を訴えたのです.しかし,サルコジが税制や労働市場を改革するとき,彼らが支持するとは限りません.他方,フランス社会党は女性候補を立てるという点で選挙戦を勝てると考え,根本的な改革の展望を示せなかったわけです.

作戦本部を設置して,絶対的な権力を行使する,とサルコジは闘志満々です.自分への服従を求めれば,それだけ,失敗の責任も明白になります.反対派は政治的に無視されることを恐れています.民主主義を動かす拮抗力はどこにあるのか? 国内政治で行き詰まれば,EUや国際政治においては,むしろナショナリストとして本来の保守派にアピールするでしょう.

フランス各地の暴動によって歓迎されたサルコジ大統領は,本気で過去との「決別」を告げるなら,これがほんの食前酒に過ぎなかったと分かるほどの社会不安を引き起こすでしょう.ジュッペ,ラファン,ド・ビルパン,という3人の首相が改革を示して失脚してきました.フランス有権者はサルコジなら受け入れるのか?

サルコジの側近は,過去の改革が失敗したのは,それを実行する胆力の無いシラクが大統領だったからだ,と考えます.今やエリゼー宮にはサルコジがいるのです.彼の最初の100日が勝負です.

サルコジを倒す力はすでに戦いを準備しています.公共部門の労働組合はストライキを,学生たちはデモや抗議を,そして何より,パリや大都市周辺の移民居住区にはサルコジへの不満を蓄えた移民の若者たち,多くの失業者たちが出番を待っています.それは危険なカクテルです.

その勝利宣言は国民の和解を求めて,1979年のサッチャーを思わせるものでした.そして,それこそが厳しい社会的対決の時代を告げる合図となったのです.サルコジをサッチャリズムとして解説する者がいるのは当然です.

しかし,フランスでサッチャリズムを実行することは一層難しい,とRachmanは考えます.1.国家の衰退に関する危機意識が国民に足りない.2.サルコジは100日の成果を公言したが,サッチャーはもっと狡猾だった.フォークランド紛争により選挙で勝利してから,ようやく組合や鉱山労働者との対決に踏み切った.3.イギリスでは市場経済の原理を支持する市民意識があった.フランス人は違う.また,イギリス人には革命の伝統が無かった.鉱山ストライキに「連帯」を示す市民は少なかった.フランスで同じことをすれば,反応はまったく異なるだろう,と.

WP Tuesday, May 8, 2007

Progressives' French Lesson

By E. J. Dionne Jr.

FT May 8 2007

Why Sarkozy’s triumph portends strife in Europe

By Martin Wolf

IHT Wednesday, May 9, 2007

Right on economics, wrong on social justice

By Anthony Giddens

(コメント) ヨーロッパは右旋回し保守化するのか? 民主的な左派は衰退する? ブレアは辞任に追い込まれ,スウェーデンでもドイツでも社会民主党が権力を失いました.それに反対する動きもありますが,民主的な左派には手ごわい障害物があるからです.それこそグローバリゼーションです.

民主的左派が権力を取ることで約束してきた支持者への経済的な褒賞を,グローバリゼーションは奪ってしまいました.左派の政治的存在理由が失われ,右派にはイデオロギー的な基盤が与えられます.自由な市場と富を賛美するときも,国民や伝統を賛美するときも.

しかし,サルコジはアメリカを称賛するだけで支持されることもないでしょう.グローバル化した経済で「正義」を実現し,成長や雇用をもたらす有効な手段を政府が支配できないという意味では,アメリカ政府も答えを持っていないからです.サルコジは求めます.市民的自由,移民の権利,社会的連帯.

Wolfは,この選挙結果から,ヨーロッパ的なフランスが生まれるのか,フランス的(サルコジ的)なヨーロッパが生まれるのか,あるいは,ヨーロッパに敵対するフランスになるのか,と問います.フランス人は,たとえ改革雄支持しても,自由な市場や自由貿易は悪であり,アメリカの陰謀だ,と信じています.その感覚の由来を,Georges de Menilは,カトリック教会,デカルト的合理主義,革命的ユートピア,ナショナリズム,国家の支配,という伝統に見ています.

最後の二つが,右派政治家のサルコジをコルベール的な重商主義に向かわせるでしょう.しかし,市場改革を目指して労働者や市民と対決しても,フランス国家が必ず勝つとは言えません.そして,政治的対決を避ければ,異なるモデルを求めるでしょう.それが,「ヨーロッパ的フランス」です.EU内の競争を促進して,市場の自由化と制度的な補償・安定化とを両立させる(すくなとも提唱する)わけです.

サルコジの問題は,選挙戦において,メルケルらの求める方針をナショナリスティックに否定してきたことです.フランスがEUに敵対しても,成果は得られないでしょう.

Giddensは,サルコジは問題を認識しているが,その政策は不足している,と批判します.企業に投資を促し,政府の無駄遣いを止めさせ,自由市場を味方につける,と.しかし,これはフランスが必要としている改革ではないのです.むしろサルコジはロワイヤルの選挙公約を読むべきでしょう.最低賃金の引き上げ,若者への無利子融資,身体不自由者への社会保障給付増額.

ヨーロッパの指導者たちが連携するべきです.また,気候変動,エネルギー確保,犯罪の撲滅,においては左右の連携も求められるのです.


Andrew Edgecliffe-Johnson and Aline van Duyn The newspaperman FT May 4 2007

Jim Ottaway Jr.The Wrong Man for Dow Jones WP Monday, May 7, 2007

John Gapper Why Murdoch is good news for Dow Jones FT May 6 2007

Murdoch/Dow Jones FT May 7 2007

Thomson and Reuters FT May 8 2007

Michael Tomasky The Murdoch precedent The Guardian Wednesday May 9, 2007

(コメント) 最近のニュースを見れば,その生産する財・サービスに関係なく,つまり鉄でも,情報でも,融資でも,株式市場は企業買収を過熱させるように思えます.それがたとえ一部の人々に大きな利益をもたらしているとしても,社会にとっては好ましいことなのか? と思うのは当然でしょう.メディア王のマードック氏がダウ・ジョーンズ株価指数やウォール・ストリート・ジャーナルも買収してしまうのか?

この人物の紹介が最初のFTの記事です.オーストラリアの新聞主であった父から受け継いだ仕事を,イギリス大衆紙『サン』で爆発させ,世界メディア帝国への野望(?)を抱きます.・・・多くの人はそう思っています.

新聞やメディアにとって,個人資産家が支配し,売買を繰り返すことが好ましいとは思えません.


The Economic Observer, 4 May 2007

Sources: New Law to Jolt Outsourcing

By Shen Jianyuan

WP Sunday, May 6, 2007

Free Trade's Great, but Offshoring Rattles Me

By Alan S. Blinder

FT May 7 2007

America’s fast-track trade needs domestic safety net

By Jeffrey Garten

WP Wednesday, May 9, 2007

China's Trade Time Bomb

By Robert J. Samuelson

FT May 9 2007

Unfounded new fears on free trade

(コメント) アラン・ブラインダーの自由貿易批判が波紋を広げています.アウトソーシングの勢いは止まりません.UNCTADによれば,世界の上位1000社の内,70%は海外に低コストの生産拠点をもっています.賃金だけでなく,労働者や技術者を国内で訓練する手間を省くためにも,アウトソーシングが増えているようです.

エコノミストたちの非難を受けて,彼自身がWPに弁明コラムを載せました.私は正気であり,自由貿易の支持者であり,経済学を理解しており,自由貿易の敵を利するためではなく,保護主義に反対して,自由貿易を維持するために,サービス貿易の大規模なオフショアリングがもたらす失業の規模と,政治問題の重要性を指摘したのだ,と.

ブラインダーは,貿易理論が新しい現実を前にして変わらなければならない,と主張します.今や,輸出する財を箱につめて輸送する時代ではないのです.情報通信産業の技術革新と,中国やインドから世界市場に加わった15億人の新しい労働力が,貿易理論をまったく変えないと思うのは,その方がどうかしている,と.

グローバリゼーションは世界経済にとって良いことである.しかし,それで終わりか? アメリカの利益や,さまざまな工場や労働者の利益について,その破壊的な影響にも言及するべきではないか? 特にそれが政治的な大転換を意味するとしたら.それを認めることが,「背教」や「離党」と非難されるゆえんです.

結局は,うまく行く.全体として最後には利益になる.それがエコノミストの習慣的な発想法です.アメリカ人もインド人もオフショアリングから利益を得ているわけです.ブラインダーが注目するのは,たとえ部分的で一時的であるとしても,その不利益を大きさや程度です.どれくらいの数の労働者が,どれくらいの失業期間,もしくはどれくらいの賃金低下を受け入れなければならないか? このままでは,アメリカの多くの(30004000万人の)労働者が医療保険も年金も失ってしまうのです.

ブラインダーは,衰退産業を保護せよ,と主張しているのではない,と明言します.技術革新や企業家を支援し,グローバルな経済過程の中で優位にある職場を確保することです.教育システムを改善し,オフショアリングが難しいサービス分野で雇用を増やせるでしょう.それでも移行期の苦しみは決して小さくないのです.それにもかかわらずエコノミストたちが「自由貿易は利益になる」と教えるなら,人々は自由貿易を嫌い,反対するようになるだろう,と.

Jeffrey Gartenも,政府や議会を批判します.自由貿易やドーハ・ラウンドを議論するとき,誰もその重要な中心問題について発言しない.それは,「政府やビジネス界は,自由貿易や技術革新によって職場を失う労働者たちへの衝撃をどうやって緩和するのか? ますます拡大する経済的相互依存の時代に,公共部門と民間部門は協力し,経済的安定性に関して強まる不安を減らすことができるのか?」

ガー店は,その対策を「保護主義」とは呼ばず,「21世紀の社会保障」と呼びます.他の工業諸国は皆,同じ船に乗っている.それなのに,アメリカだけは富裕層の所得が急速に伸びて,中産層は減少し,労働者たちは貧しい.つまり,グローバリゼーションや技術革新の利益が不平等に分配されているのです.アメリカがグローバリゼーションのチャンピオンであるためには,国内の分配構造を改善しなければならない,とガーテンは主張します.

Robert J. Samuelsonはブラインダーの不安をさらに強めています.他方,FTは,それでもオフショアリングは自由貿易でしかない,と反対します.ブラインダーの政策はまるで陳腐であり,効果が無いでしょう.オフショアリングの特別視は「保護主義」の言い訳なのです.そして,オフショアリングも自由貿易の一部として,経済過程の変化に吸収されることで富を増やすのです.


The Japan Times: Saturday, May 5, 2007

Alliance transformation

IHT Tuesday, May 8, 2007

Do not neglect culture

By Nassrine Azimi

The Japan Times: Tuesday, May 8, 2007

Grand strategy for the Middle East

The Japan Times: Thursday, May 10, 2007

And now to trilateralism

By BRAD GLOSSERMAN and BONNIE GLASER

(コメント) 日本政府は日米安保条約を最も重要な土台と考えて,しかも戦後レジームを云々しています.アメリカ政府は日米安保も含めた安全保障構造を再編しています.

他方,戦前に比べて,日本の戦後復興と平和主義の浸透を教訓として,アフガニスタンでも生かせないか,という論説があります.

日本政府が,いくら「主張する外交」とキャッチフレーズにして中東和平を重視しても,それを支持するのはJapan Timesだけです.つまりこれは,「勝手に主張する外交」という安倍首相の国内政策なのです.

GLOSSERMANらの考える三極外交とは,日本がアメリカや中国と協力して,南北朝鮮を新しい安全保障や経済協力の枠組みの中で固めるものです.これには具体的な基礎があり,その障害となっているのは安倍氏の政治信条や自民党保守強硬派である,と見えるのですが.


WP Sunday, May 6, 2007

America the Fertile

By Nicholas Eberstadt

(コメント) アメリカの人口増加は持続する,ということの背景と,それが将来の国際政治に及ぼす影響を考察しています.アメリカの覇権は続く・・・かも知れませんが,もちろん,人口以外の要因でバランスが崩れることもあるでしょう.

急速に高齢化する中国については何がいえるのか? と考えてしまいます.


FT May 6 2007

ADB faces revolt on new policy

By David Pilling and Martin Wolf in Kyoto

FT May 6 2007

Asian monetary integration poses many questions

By Wolfgang Munchau

Asia Times Online, May 8, 2007

Japan, China as anchors of financial stability

By Hisane Masaki

FT May 8 2007

Reinventing Asia's development bank

May 9 (Bloomberg)

Next Emerging-Market Crisis Is Five Years Away

Andy Mukherjee

(コメント) アジア開発銀行(ADB)が京都で総会を開きました.このときに限れば,安倍政権以上に注目を集めています.

アジアにおける成長と貯蓄の増加,資本流入は,アジア開銀が融資よりも情報や分析の支援に重点を置いた活動に再編される,とアメリカ財務次官補Kenneth Peelが報告したようです.ADBと世界銀行,IMFの分業も主張されました.ADBの方針は,世界金融市場にますます統合されるだけではなかったはずですが.

膨大な外貨準備を共有する仕組みは,まだ水面下の構想です.MunchauはACUを厳しく批判しています.アジアはヨーロッパが互いの為替レートを安定化しようとし始めた1970年代のEMSに似た段階です.しかし,重要な違いがあるのです.ヨーロッパではドイツのブンデス・バンクが強く反対しても政治家たちが協力して構想を進めました.アジアにはそれが欠けています.

小川英次氏が指摘したような為替政策の不統一にとどまらず,そもそも日本は参加するのか? 円はドイツ・マルクのようなアンカーになれるのか? それを中国や韓国が受け入れるのか? マーストリヒト条約のような参加条件を示せるか? 財政規律を求めることができるか? 要するに,政治的な協調・合意なしに,こうした問題には答えられないのです.

ただし,それは不可能のように見えるが,一旦始まれば,それ自体で動く力を持つ,と.アジア諸国に対して,日本と中国が経済モデルや改革の道筋を示して競い合い,将来の危機回避に貢献することで自身の健全さをアピールするときでしょう.そして,円も,人民元も,互いに譲ることは無いのではないか,と思います.その意味では,アジアは統一通貨を展望するより,共通の枠組みを模索することが中心になるでしょう.

さて,容易に進まないエコノミストたちの議論を,一気に進めるのは次の危機です.Mukherjeeは,J. Frankelの仮説を借りて予想します.すなわち,アジアでは7年間資本流入が続いた後,それが止まって,7年間資本流出が続く.そして次の新世代がトレーディング・ルームを満たします.彼らは危機の話を知っているけれど,経験が無い.こうした15年周期を考えるなら,1997年から数えると,次の危機は2011年か12年です.

まだ危機は起きないだろう,とFrankelは会議で述べました.トルコやアルゼンチンの経験は鋭く残っています.これほど外貨準備があって,資本輸出を始めたアジアにも危機が起きるのか? ・・・もちろん.それは日本でも起きた危機です.過剰な流動性と低インフレ,土地・資産市場のバブル,そして,その破綻,銀行システムの崩壊,政治的混乱.

仮説の通り,まだ5年間バブルが蓄積されて,危機の破壊力を充電しています.


FT May 6 2007

China’s stock market

Asia Times Online, May 9, 2007

SUN WUKING :China's masses rise up and buy stocks

By Wu Zhong, China Editor

NYT May 9, 2007

Share Prices in China Hit Record High

By DAVID BARBOZA

(コメント) 中国株式市場の初期の狂乱です.いくらかの停滞期を振り切って,すぐまた新規上場や口座開設が急増し続けて,取引額や資本流入も増加し続けています.バブルを防ぐ政策手段は乏しく,強硬な課税策は反発を招くでしょう.最も期待されるのは株式発行を増やすことではないか,とFTは指摘します.

投機的な売買や企業買収を防ぐという意味では,中国の条件を利用して,独自の売買ルール(株式の長期保有や経営権を分離・プールする)を示してほしいです.

Wu Zhongは,中国人民の株式市場への関心を,文化大革命と同じ,伝統的行動パターンと見ます.426日には,その日だけで325000の投資口座が開設された,と言います.その合計は9250万口座,中国人(台湾を除く)の14人に一人が口座を持っている計算です.そこには投資口座を仲介しない株の売買が含まれていません.13億の人口の80%が農民であることを考えれば,都市人口のすべてが株式市場の投機ゲームに参加したわけです.

上海のタクシー運転手は,それが「パートタイム」の仕事であると言い,彼の「フルタイム」の仕事は株の売買です.学生たちも4年間ですっかり投機家になります.人々は列を成して銀行口座から預金を引き出し,証券会社に移している,ということです.彼らは中国市場がニューヨークやロンドンとは違うと信じているようです.

もちろん,その通り,中国市場は外国人を締め出しています.しかも,北京オリンピックもあります.1億人が加わった投機の過熱に対して政府が強硬手段を採用し,社会不安を爆発させるとは思えない,というわけです.ただし,無限に続くわけではない,と(少なくとも一部の者は)知っているでしょう.問題は,それがいつか,というだけです.・・・そして,暴落で儲ける方法を研究しているわけです.


Kenneth Anderson How the ethics committee failed Wolfowitz FT May 6 2007

Editorial comment: World Bank crisis becomes perilous FT May 10 2007

FT May 6 2007

The Wolfowitz affair and its consequences

By Joseph Stiglitz

WP Thursday, May 10, 2007

The Real World Bank Problem

By George F. Will

(コメント) Stiglitzから見れば,世界銀行を含めて,国際金融システムのガバナンスを改善するべきです.アメリカが世界銀行総裁を指名し,ヨーロッパがIMF専務理事を指名する仕組みは,不透明であり,非民主的な特権です.ウォルフォヴィッツはイラク戦争に貢献したことでブッシュ政権から指名されました.そして倫理規定に反するような行動を取り,世界銀行への信頼を損ないました.良好なガバナンスは得られません.

Stiglitzが十分な資格を持つとしてArminio FragaKemal Dervisの二人を指名しています.前者はプリンストンのPh.D,ソロス・ファンド,ソロモン・ブラザーズ,ブラジル中央銀行総裁,を経験しています.後者もプリンストンで教えたことがあり,国連の開発計画を指導し,世界銀行の副総裁,トルコが金融危機の際には財務大臣を引き受けました.

世界銀行もアジア開発銀行も,政府間の国際開発銀行として,共通の批判を受けています.それが市場による投資の評価を満たさない案件に資金を与えるのであれば,何を基準に資金提供するのか? 政治的な介入,スタッフの汚職,非効率,浪費,モラル・ハザード.世界の貧困を減らす役に立っているのか? 誰がそれを確かめるのか? 誰に責任を負っているのか? むしろ開発銀行など廃止した方が,資本市場は活発に有望な開発プロジェクトを見つけ出すのではないか? そして公的融資を最貧国の住民に絞るべきだ,とWillは考えます


LAT May 7, 2007

London's bridge has fallen down

Niall Ferguson

(コメント) ブレア辞任は,アメリカの外交政策に追随することが他国にとってどれほど効果的で,また,危険であるかを示しています.

ブレアが1983年に当選したとき,彼は当時の労働党の政策,すなわちEECを離脱し,一方的に核武装を廃棄する,という方針に逆らいました.首相としてのブレアは,ヨーロッパに接近し,アメリカとの協調関係を重視し,独自の核抑止政策を支持したのです.それは,ヨーロッパとアメリカとをつなぐ「橋」となることで,イギリス独自の政策を維持する,という方針でした.

それゆえ,ヨーロッパの一層の統合化と,アメリカの国益重視に挟撃されたときには,逆に,イギリスと自分の政策が孤立し,選択肢を失う結果にもなったわけです.9・11やイラク戦争はそのハイライトに過ぎません.

Caroline Michel In search of a Blair zeitgeist The Guardian Tuesday May 8, 2007

Gerard DeGroot The Tony Blair decade CSM May 09, 2007

Matthew Lynn Six Reasons to Celebrate Tony Blair's Departure May 9 (Bloomberg)

War cost Blair respect FT May 9 2007

Timothy Garton Ash Brown must learn the lessons from Blair's three big mistakes The Guardian Thursday May 10, 2007

Polly Toynbee Was it good enough? The Guardian Thursday May 10, 2007

Geoffrey Wheatcroft How will history judge Blair? BBC 2007/05/10

Quentin Peel How Iraq cast a shadow over Blair’s foreign policy FT May 10 2007

Samuel Brittan From a Nice decade to ‘not-so-bad’ FT May 10 2007

(コメント) 労働党におけるサッチャリズムの継承者.ブレアの時代をどのように評価するか,英米メディアは競いました.DeGrootは,ブレアがイデオロギーによる政治を破壊し,積極的な政策転換によって国民の合意形成に向けた政治のダイナミズムを取り戻した点に注目します.イギリス国民は,他国に比べて,自分たちが王室とブレアを持つことに概ね満足していたわけです.この1年を除けば.それはもっぱら,ブレア自身が高貴な目的を掲げて正当化した戦争が,アメリカの野蛮な冒険主義に終わったせいです.

DeGrootは,サッチャーよりも長くイギリス政治に残る革命をもたらした,とブレアを評価します.サッチャーは国民を分裂させ,互いを憎しみに染めました.ブレアの政治によって,階級やイデオロギーの違いは明確でなくなり,保守党も進歩的な政策を競うようになりました.それに変わって重視されるようになったのは,国民の合意です.それがブレア政権の長期化の背景であり,また,彼の辞任の真実なのです.

あるいは,ブレアの時代が終わったと言うことは,イデオロギーを軽視して政策転換を議論できた,短期的な政治論争が限界に達したのかもしれません.長期的な展望と政治信条が再び問われているわけです.ある世論調査では,国民の22%がブレアを信用できないと応え,59%がイギリスの国際的な地位を貶めた,と批判しました.

Ashは,ブレアのリベラルな国際(介入)主義が,今や,独裁者たちと同じ大量虐殺を助けたことの言い訳として嫌われている,と考えます.しかし,ブレアは国民生活を改善し,その意味ではフランスのシラクやドイツのシュレーダーよりも,またジョージ・ブッシュよりも,国民に支持されるはずでした.なぜなら,莫大な財源と人命を費やして,ブレアはイラク人の生活を破壊し,新世代のテロリストを育成し,世界の救うことができた貧しい人々を見殺しにしてきたからです.

ブレアは国民が嫌う政策を,それでもアメリカ政府を個人的に説得できるという理由で,支持し続けました.他方,EUに接近する政策は,EUを信用しない大衆紙の反感を買って進展しませんでした.ブレアの教訓として,1.リベラルな国際主義を安易に振り回すな.2.アメリカに対抗できるヨーロッパの統一を図れ.3.大衆紙の煽動に屈するな.これがAshのゴードン・ブラウンに向けた提言です.


FT May 7 2007

Why Tokyo is losing ground to New York and London

By Michiyo Nakamoto in Tokyo

(コメント) 景気の拡大が続いても東京が国際金融センターとして回復していない現状を考察します.このままでは製造業が中国へ,金融サービスはニューヨークや香港,シンガポール,上海へ,こうして日本には何も残りません.

その最大の理由は,ますます金融の主要な担い手になりつつあるファンドたちが東京に集まらないことです.なぜか,というのも無駄です.・・・東京にいても,最新の金融手段が使えない,英語で働く専門スタッフがいない,規制が古臭く,何より金融監督庁は信用できない.


A bully's behaviour FT May 7 2007

Funding Russia’s future FT May 7 2007

Chinese shadows BG May 8, 2007

Simon Tisdall Putin puts the boot in The Guardian Tuesday May 8, 2007

Sheila McNulty Politics of oil seen as threat to supplies FT May 9 2007

(コメント) ロシアの資源,中国の工業力・市場.それが政治と切り離せるはずはないし,将来の国際秩序にますます重要な修正が必要となる要因なのです.


FT May 9 2007

Japan’s carmakers likely to stiffen steel ties

By Paul Betts, Chris Hughes and Michiyo Nakamoto

The Japan Times: Thursday, May 10, 2007

Who benefits from M&A?

By HUGH CORTAZZI

(コメント) ミッタル製鉄に買収されることを拒むために,日本の製鉄会社は防衛策の準備に奔走しています.あるいはヘッジ・ファンドがすでに株式を買い集めているかもしれません.鉄鋼を利用している自動車メーカーも無関心ではありえません.

M&Aは誰の利益になるのか? 長期的に見て,競争力や効率性を改善するのか? もしそうであれば,M&Aに反対することは国民の利益に反することです.


WP Thursday, May 10, 2007

A Dayton Process For Iraq

By Rend Al-Rahim

(コメント) イラクの沈静化に,ボスニアの和平を実現したデイトン合意がモデルとして考察されています.アメリカが後押しし,信頼される仲介者と後見人となり,シーア派とスンニー派とが最高レベルの意志決定者において交渉権限を委ね,和平プロセスの継続を確認して,速やかに実行を積み重ねる.そして主要な関係諸国がこの合意を尊重しなければなりません.

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The Economist, April 28th 2007

European banking consolidation: Braveheart

European bank mergers: Sharpening the knives

Nigeria: Will Africa ever get it right?

Nigeria’s elections: Big men, big fraud and big trouble

China: The people’s republic in the grip of popular capitalism

Silicon Valley: Deportation order

(コメント) ABNアムロ銀行の買収が,いよいよヨーロッパの銀行業界を買収と合併の喧騒に引き入れる合図となりそうです.それは,1.欧州委員会がユーロ圏の競争促進を命じる権限によって各国政府の介入を牽制している,2.金融機関やヘッジ・ファンドなどの連携するコンソーシアムによる買収資金の動きがモデルとして確立され,買収後の整理・分割を迅速に行う,などを新しい条件とするものです.

それ以上に驚くべき内容は,ナイジェリアの「民主主義」が石油資金とギャング団の支配によって崩壊しているさまを描いた記事です.植民地支配が終わった後,なぜアジアはサハラ砂漠より南のアフリカ諸国に比べて34倍も早い成長を実現したのか? 植民地や人種支配,石油があったことなど,さまざまな理由を考えても,アフリカ諸国の無法さと荒廃は目立ちます.

民主主義による改革政府として国際機関や欧米からの支援を受けたナイジェリア政府が,その内実は投票の売買,武装集団による脅迫,投票所の襲撃,そもそも投票用紙そのものの大規模紛失,集計詐欺,などに満ちています.石油の無い,権力の継承に関心の無い指導者による繁栄した州もある,という以上,アフリカにも腐敗したシステムを倒す希望はあるわけです.

中国の株市場ブームと,シリコン・バレーからのインド人・中国人技術者流出が,次の資本や生産力の拠点を築く時代は,まだ少し先です.