IPEの果樹園2007

今週のReview

4/23-28

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* キー・ワード **********************

世界的不均衡, ドル暴落は起こらない, 温家宝来日, フランス大統領選挙, 臓器売買, 米中による国際秩序, バージニア大量殺人, エタノール

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


FT April 12 2007

Almost a new economic miracle

By Samuel Brittan

(コメント) ドイツはついに実物面で調整を達成した,とBrittanは考えます

単一通貨によって影響に固定為替レートを採用したヨーロッパ諸国は,それによってアメリカやイギリスよりも成長が抑えられ,失業者が増える,という劣悪な成果を示してきましたが,最近になってそれが変わりました.何よりもドイツの賃金が低下したのです.

それはフリードマンが変動レート制の擁護論で述べた理由を逆さまにしたものです.夏時間への転換を一斉に行うことで,昼の時間が延びたことを有効に利用できるわけですが,もし調整を行う共通の手段が失われたら,それでも昼時間と同じプラス効果を個別に実現できるわけです.一人ひとりが早起きすることで.

それに比べてイタリアは競争力を失っても通貨価値を下げることができず,苦しい調整を拒めば離脱の危険が生じます.ドイツはそれに耐えて,再びヨーロッパ経済の枢軸になる力を示した,というわけでしょうか.


April 13 (Bloomberg)

Asia Won't Finance U.S. Trade Deficit Forever

Michael R. Sesit

April 16 (Bloomberg)

What Grows $1 Million a Minute? China's Reserves

William Pesek

Asia Times Online, Apr 18, 2007

China's trillion-dollar investment blues

By Antoaneta Bezlova

(コメント) この二十年間も,アメリカの経常収支赤字は維持不可能である,と言われてきました.それを解消するにはドルの暴落とアメリカの不況が必要である,とエコノミストたちは主張したのです.

しかしその予測は外れ続けて,資本市場はアメリカの赤字を支え続けました.ドルは暴落せず,金利は暴騰せず,アメリカの景気や株価は崩れなかったのです.まるで無限に成長するつもりの中国経済みたいに.しかし,アメリカの外で景気が回復すれば,資本の流れは逆転します.

今は,毎分100万ドルのスピードで中国の外貨準備であるドル保有が増えています.2006年には毎月200億ドル,今年の2月と3月は500億ドルも増えました.いつまで続けるつもりでしょうか? 何のためにしているのか? ほかの用途に使うのはいつか? と私は思いました.

Pesekは,1.なぜこれほど急激に増えるのか? 2.何に使うのか? 3.中国は人民元の増かを避けられるのか? と問います.

1.資本流入が増えた.すなわち,中国の規制が緩和されて,銀行は外資を調達して国内の融資を拡大している.2.シンガポール(Temasek Holdings)を真似て,外貨準備を中国が海外投資するだろう.その運用が洗練すれば,中国の貨幣供給は中央銀行が決めようとしても決まらないだろう.3.もし無限に外貨準備を増やして海外投資にまわすなら,人民元のレートは変わらない.しかし,バブルが起こっている.

しかし,12000億ドルもの準備金をもっと有効に使え,という国内の政治圧力,もしくは政治的誘惑は強まっているでしょう.もっと高い利益を上げるとか,もっと国内の公共目的に使うとか,もっと海外の戦略的な目的を達成するとか.ドル安による価値の減少を避けるために,政府はすでに分散投資を主張しています.国民自身,もしくは銀行に輸出したドル債権の処分を委ねることはないようです.

FT April 17 2007

Global imbalances keep defying gravity

April 18 (Bloomberg)

Wolfowitz, Like Global Imbalances, Won't Go Away

William Pesek

FT April 18 2007

Dollar disorder

(コメント) IMFがバレンタイン・デイに出版したWorld Economic Outlookだが,中身はそれほど甘くない.という妙な冗談を交えて始まる論説です.IMFはまた,アメリカ,日本,中国,ユーロ圏,そしてサウジ・アラビアとの政策審議報告も出しました.

G7の強気な,楽天的自画自賛は,おそらく演出なのでしょう.どれほど成長率が高くても,それが不安定な基礎の上に立つのであれば,警戒しなければなりません.今後,アメリカ経済は減速,ユーロ圏と日本は回復を加速,人民元はさらに増価する.好ましい,楽天的なシナリオでは.

だからこそ,アメリカの減速と他地域の回復が確実と思えたら,投資家たちが資本を逆流させるのではないか? 悲観的なシナリオでは.

2002年のピークから,ドルは実質実効レートで18%減価しました.ユーロに対しては何と55%も減価したのです.ドルによる調整はうまく進むのでしょうか?

FT April 19 2007

The dollar may be volatile but pessimists are wrong

By David Hale

金融政策についての最近の思惑がドル安を促している.市場は,ECB(ユーロ圏)とBOE(ポンド)が金利を引き上げると予測したのだ.それはありそうなことである.他方,アメリカFRBのバーナンキは,インフレの様子を見て,金融緩和の可能性を検討しているだろう.少なくとも金利を上げることはない.

アメリカには巨額の経常赤字があるから,景気が悪化することや金融緩和することに対して脆弱である.毎月,600700億ドルの資本が流入している.経常赤字を十分に減らすにはドルが300%も減価する必要があると主張するエコノミストもいる.彼らの問題点は,アメリカが資本輸入する能力を過小評価し続けていることだ.

経常収支赤字の大きさではなく,資産市場のパフォーマンスに注目して,楽観論を取る者もいる.彼らはアメリカが外国の資本を引き寄せる桁外れの能力を持つと信じているから,対外赤字をそれほど気にしない.GDPに比べて経常赤字の割合がいくらか,ということに固執しないのだ.そうではなく,彼らは対外赤字をアメリカの資産市場に対する比率で考える.アメリカの家計が保有する資産は64兆ドル,非金融部門の金融資産は32兆ドルである.債務を差し引いた場合,民間の純資産は70兆ドルある.実物資産(その多くは土地)が346000億ドル,上場企業の株式が19兆ドル,その他の金融資産が195000億ドルである.経常収支赤字が民間資産のわずか1%であることから,アメリカが対外赤字の資金を得るのに何も問題は無い,と楽観論者は考える.

外国の投資家は資産によっては大きな割合をすでに所有している.彼らはアメリカへの直接投資28000億ドルを所有しているし,同じくらい巨額の流動的債券を所有している.すなわち,財務省の債券市場(26000億ドル)における43.9%や,企業債務市場(2700億ドル)の33.6%,株式市場の17%を所有している.このことは,外国投資家にとってまだ30兆ドルの流動的債券が購入可能であることを意味する.

アメリカの株式市場における外国人保有の所有率は,アメリカがまだ他の工業諸国に比べて,かなり低い.イギリスでは42%,日本は30%近くの株式を外国投資家が所有している.また多くの発展途上諸国では,外国投資家が株式市場の4050%を所有している.

アメリカの赤字と世界の貯蓄の規模とを比較することも有益だ.それは約21%であり,潜在的に,7兆ドルが投資できる.伝統的に投資家は国内市場に注目するが,この習慣は近年になって大幅に失われた.G7諸国の年金基金はその資産の少なくとも2030%を外国市場で運用している.世界資本移動の総額は,1990年代半ばにGDPの36%であったが,今では16%である.ドルは世界の過剰貯蓄が取る自然な貯蔵所である.なぜならアメリカの資産市場は,ユーロ圏の265000億ドル,円の173000億ドル,ポンド・スターリングの67000億ドルに比べて,476000億ドルもある.アメリカの実質債券利回りは2000年以来半減したが,それは世界金融システムにある過剰貯蓄がドルに投資されているからだ.

世界市場における資産の利回りについて投資家の認識は変化するから,ドルの浮動性は常にある.アメリカの展望を悲観して投資家たちが12月に引き揚げた資本は143000億ドルに過ぎず,それも信頼が回復した1月には反発し,974000億ドルが流入した.成長の勢いや連銀が金融政策を安定的に維持する能力について不安を持ったことで,この数日ドルは減価した.しかし現実には,消費が堅調で,アメリカの生産は緩やかに拡大し続けており,金融政策を維持することができる.ドルは景気見通しや議会の保護主義によって変動するだろう.しかしアメリカの資産市場は巨大で,弾力性に富んでいるから,資本の流入が途絶したり,ドルが減価し続けることは無い.


Read the signals in Iraq BG April 13, 2007

Setback for the surge? LAT April 13, 2007

Stuart Gottlieb Will Iraq Be the Next Rwanda? WP Sunday, April 15, 2007

James Dobbins Who lost Iraq? IHT April 16, 2007

John J. Sheehan Why I Declined To Serve WP Monday, April 16, 2007

Seth Freedman Choose life The Guardian Thursday April 19, 2007

Iraq's refugees must be saved from disaster FT April 19 2007

(コメント) イラクにおけるアメリカ軍の増派・再編にもかかわらず,テロの犠牲者は一向に減りません.むしろ増えているようです.

引き続く爆破テロは,イラクに関わる内外の政治抗争を表現しています.それらを憲法や選挙によって吸収できなかったわけです.

これは部族間の大量虐殺を組織したルワンダの状態に近づいているのでしょうか? 1994年の春,ルワンダとブルンジの大統領が乗った飛行機事故の後,アメリカなどが軍事介入をためらっている中で,約80万人のツチ族がフツ族により殺されました.イラクから撤退することを目指す民主党は,1990年代に「ルワンダを繰り返すな」と主張してボスニアに介入した,とGottliebは指摘します.もしイラクをルワンダにしてしまうなら,アメリカが失う利益とこの地域における犠牲は,将来,今以上に悔いを残すものになる,と.

アルゼンチンで通貨危機が起きたときも,何が原因か,誰が責任を負うべきか,論争がありました.イラク戦争と占領政策の失敗についてアメリカ国内で続く議論は,あのときとそっくりだ,と思わせるものがあります.

Dobbinsの論説は,誰が悪いのか,さまざまな批判・非難の声を整理しています.そして,結局,ソマリアであれ,ハイチであれ,コソボであれ,介入には多くの時間とお金,そして犠牲をともなう非常に困難な使命を引き受けるしかないのです.国民が非難合戦とイラク内戦を理由に,それを忘れることに注意します.

海軍の退役将軍であるSheehanは,ホワイト・ハウスの意思決定が,地域の意見とそのまとめ方をまったく考慮せずに進められていることが問題だ,と主張します.

テロリストや難民になる人々の多くが,イラク再建に欠かせない人々となりえたはずです.


World Bank: Wolfowitz on the ropes The Guardian Friday April 13, 2007

Sebastian Mallaby The World Bank, Stuck In the Mud WP Friday, April 13, 2007

Wolfowitz must be told to resign now FT April 13 2007

Why Bush should let a damaged Wolfowitz go FT April 14 2007

Time for Mr. Wolfowitz to Go NYT April 16, 2007

H.D.S. Greenway The problem that is Paul Wolfowitz BG April 17, 2007

Ruth Wedgwood The Wolfowitz non-story LAT April 17, 2007

Martin Wolf The World Bank must regain the high ground FT April 17 2007

Matthew Lynn Next at the World Bank? Bono, Blair or Rumsfeld? April 18 (Bloomberg)

(コメント) 世界銀行というのは不思議な組織です.世界の貧しい人々を助けるために存在しているのか,と思えば,ホワイト・ハウスからわずか3ブロックしか離れていない,政治のど真ん中に,巨大なビルが現れます.

2005年からPaul Wolfowitzが総裁になって,世銀は発展途上諸国の民主主義や腐敗の問題を重視するようになりました.その総裁自身が政策を少数のエコノミストだけで決めたり,ペンタゴンから連れてきた報道官を重視したり,自分のガールフレンドに関する不祥事で弁明を繰り返したりするのでは,お粗末です.また,西側の援助機関であった世銀の地位は,中国が経済援助を増加させたことでも脅かされています.

Wolfowitzがやっていることは露骨な偽善でしかない,とFTも即時の辞任を求めます.Wolfowitzが不人気とか,偏った人選,女性スタッフ(Shaha Riza,国務省でチェイニー副大統領の娘の秘書,その後,Wolfowitzが世銀総裁となって世銀に移動し,国務省を辞職)との恋愛や報酬などを非難しているのではなく,国際機関としての世銀の権威,その機能を損なっていることが問題なのです.この責任は世銀の最大株主であり,彼を示したブッシュ政権にもあります.ブッシュ氏への忠誠度が人事を歪めています.

Martin Wolfも,腐敗した政府が貧困を悪化させている,という主張に賛成しますが,だからこそ世銀は模範を示すべきである,とWolfowitz辞任という意見を支持します.一人の男がどうなるかより,この機関の道義性を回復することが重要です.

では次の総裁に誰を締めするのか? 援助キャンペーンで活躍したロック歌手のボノか,イギリスの首相であるブレアか,あるいは元国防長官,ラムズフェルドか?

The Guardian Thursday April 19, 2007

The World Bank at bay

Kenneth Rogoff

(コメント) Wolfowitzへの批判と辞任を世銀の改革として受け止めるなら,アメリカは次期総裁をホワイト・ハウスの指名によらず,アメリカ,ヨーロッパ,その他,発展途上国も含めて,優れた候補の中から選ぶべきである,と主張します.そして,ブッシュ政権が支持してくれているRogoffの世銀改革案,すなわち,融資ではなくすべて援助にせよ,という改革を実現するチャンスと考えます.IMFも世銀も,そのトップの人選が不透明であるにもかかわらず,発展途上諸国の政府にしばしば透明性を求めるのは矛盾している,と.


The Guardian Friday April 13, 2007

Growing pains

Joseph Stiglitz

(コメント) 中国は,単に外から知識や制度を輸入したのではなく,彼らの問題に独自の解決策を見出したから,30年間にわたって10%もの成長率を実現したのです.だから中国のしていることを単純にまねても,貧しい国が成長するとは限りません.

中国自身はその成長モデルを転換することに取り組んでいます.中国がアメリカのような成長モデルを求めれば,その環境を破壊するのは明らかであり,また現在のような輸出に依存した成長も他国からの非難を増すばかりで,今後の成長維持には足りません.

それゆえ中国は,環境を意識した,国内需要を促す成長を明確に目標としています.急速な都市化についても,今から公共交通システムを考え,資源不足や環境破壊を加速する輸出を減らして,国内消費を増やすため,社会保障を整備するでしょう.

経済学はプラス・サムである.中国の新しい成長モデルが成功することで,輸出市場や石油価格,環境問題など,私たちが多くを得るでしょう.

Asia Times Online, Apr 14, 2007

Those bubbling property markets

By Chan Akya

FT April 15 2007

Ownership is not the real problem with China

FT April 19 2007

China’s overheating economy

(コメント) 日本が示したように,経済発展における土地所有と市場の未整備は深刻なバブルやデフレを引き起こします.この経験を活かすより先に,アジア諸都市はバブルを輸入しました.あるいは,フランス企業は中国で知的所有権をめぐる法廷闘争を選択し,両国間で経済ナショナリズムを煽っています.中国の景気過熱やバブルが,テキスト的な金融政策で緩和できるとは思えません.

次に何が起きるのか? それが起きたときに考えるしか無いようです.


The Japan Times: Friday, April 13, 2007

Working with China

FT April 13 2007

Wen puts personal diplomacy to the fore

By Mure Dickie and David Pilling in Tokyo

IHT April 15, 2007

Remove all clippings Remove all read clippings China's soft power

By Philip Bowring

(コメント) 温家宝首相の日本訪問について,中国は着実に得点を得たように思います.政財界の指導者と談笑し,ジョギング中には庶民とも会話し,中国の存在感を大いに示したと思います.今から思えば,小泉首相が政治的資本を注いだブッシュ政権との親密さは裏目に出て,中国との強硬な冷淡さを選択したことによって政府が縛られているのです.そして,安倍政権の重視するタカ派の論点について,中国政府は妥協する姿勢を見せたくないでしょう.

もし安倍氏が,靖国参拝できるか,拉致家族を奪還できるか,憲法改正できるか,などという信条政治を強調すれば,中国との威信と威嚇,パワー・ポリティクスを呼ぶだけでしょう.むしろブッシュ政権が終幕に向けて追い詰められている今,ニクソンのように,中国政府が一緒に参拝できるような戦没者の共同追悼・平和記念施設を構想することで,政治的保守派を動かすべきでしょう.

問題は,日米首脳が重要問題を本気で語り合った,とはとても思えないことです.


WP Friday, April 13, 2007

A Power Outage: At the White House

By David Ignatius

BG April 14, 2007

The shifting burden of war

Geoffrey Wheatcroft

(コメント) ブッシュ政権の権力が今後も退潮し続けることは明白です.ホワイト・ハウスは世界の重要事件を予測して,それらが転換する秩序をアメリカに有利なものへ変える力を,すでに失いつつあります.

イラクの治安回復策でも,IMFによる国際不均衡解消策に関する懇談でも,中国との貿易不均衡でも,インドとの核開発協力や貿易・開発支援でも,ブッシュ氏がアメリカの影響力を維持するために奔走すればするほど,彼自身の退潮がアメリカを弱めます.

Wheatcroftは,アメリカやイギリスの政治指導者たちが,その子弟に戦争の負担を直接引き受けた過去の世代から見て,余りにかけ離れた無責任な行動を取っている,と嘆きます.


LAT April 14, 2007

Darfur needs peace, not peacekeepers

By Robert Menard and Stephen Smith

NYT April 19, 2007

No More Delay on Darfur

(コメント) 問題や紛争の背景にある構造を変えることなく,外国の軍隊が介入することで,長期的に持続する和平を実現できると思うのか? ブッシュ大統領が,イラクではなくスーダンに軍隊を送ったとしても,その結果が望ましいものであったとは確信できません.

「事実を直視せよ.スーダンと戦争することで,犠牲者は減らない.むしろ増えるだろう.」

もちろん,スーダン政府や武装勢力には圧力をかけ,難民たちを支援するべきでしょう.中国に拒否権を行使しないよう説得し,国連決議によって和平を監視することです.しかし,真っ先に平和維持軍を送り込めば事態は改善する,と考えるのは間違いだ,と.

他方,一刻の猶予も無い,とNYTは軍事介入を訴えています.ブッシュ政権は積極的な関与を明確にし,制裁や飛行禁止区域を準備しています.スーダン政府が和平に行動させるには,一層の圧力が必要だ,と.


The Observer Sunday April 15, 2007

This vacuum in Paris plays straight into le Pen's hands

Will Hutton

LAT April 15, 2007

Can France's next leader lead?

By Charles A. Kupchan

IHT April 17, 2007

Watching from across the divide

By Philip H. Gordon and Charles A. Kupchan

The Guardian Thursday April 19, 2007

A sick France means a sick Europe - and that must be bad for Britain

Timothy Garton Ash

(コメント) 保守派のサルコジNicolas Sarkozyと社会主義者のロワイヤルSegolene Royal,あるいは人種差別を公言するル・ペンJean-Marie le Penフランス大統領選挙をめぐる論説です.

サルコジ候補は,性的倒錯者は矯正できない遺伝子配置の欠陥だ.暴動を起こすアラブ人は社会のクズだ.移民を管理するオーウェル的なシステムを支持する.ロワイヤル候補は,フランス人に,家族,労働,国旗,を祝福するよう求めます.

失業や不道徳,国家の衰退に対する危機意識が,啓蒙主義のフランスを右に旋回させている,とHuttonは指摘します.フランスの選挙結果はヨーロッパの将来を示します.

「フランスの問題とは,その問題をもっと正直に描くことだ.もっと正直な政治家が必要だし,そのためには,もっと正直で幅広い文化が必要だ.フランス的なものの極端な意識(ウルトラ福祉主義,ウルトラ保護主義,ウルトラ愛国心)を緩和する必要がある.栄光の国家を称えるナポレオンの遺産を振り払い,もっと純粋な多元主義に向かうべきだ.そして,スカンジナビア諸国のように,開放性と社会的正義とを組み合わせるのだ.」

Kupchanの観察は少し異なります.フランスの有権者たちは決めかねているのです.移民やグローバリゼーションに対する右派と左派の提案のどちらを採用するべきか? また,二人の主要候補は,その特徴がフランス政界のアウトサイダー,です.この二年,シラク大統領に対する不信感,EUの混乱は,有権者をフランス政治家に対する不満と怒りに染めています.

サルコジ候補の改革精神,強硬姿勢は,魅力であると共に恐れられ,嫌われています.他方,社会福祉の維持や市場批判を掲げるロワイヤル候補も,国民に高まる愛国心やポピュリズムを吸収しています.移民問題は右派をますます右に向かわせ,グローバリゼーションは左派をますます左に向かわせます.

こうして中間・穏健派を見捨てた二人の対決に,ベイルFrancois Bayrou候補が急速に支持を増やし,反移民感情が強まればル・ペンLe Penがサルコジの支持層を奪います.論争は専ら国内政治に終始し,EUもアメリカも,中東問題も軽視されます.しかし,アメリカにとって本当に重要なのは,誰が勝つかではなく,フランスに強力で有能な政府が現れ,EUを指導し,中東やその他の地域でもアメリカに力を貸してくれることなのです.

Gordon and Kupchanは,アメリカでも関心が集まるフランスの大統領選挙について,サルコジが主張するアメリカ型の競争社会や,国際政治におけるアメリカとの同盟を期待し過ぎてはいけない,と考えます.サルコジでさえ,フランス国民の政治意識を代表しなければならず,ましてロワイヤルやベイルが大統領になれば,アメリカと明確に対立するでしょう.

ブレアがイギリスで政権から退く頃,フランスではブレア主義が誕生する,とAshは指摘します.「ブレア主義とは,イデオロギーを離れ,政治をプラグマチックに行うことを意味する.選挙においては左派も右派も糾合し,イデオロギー的な一貫性よりも結果を重視する.グローバリゼーションに対抗して,民間企業の経済的ダイナミズムと高雇用や社会正義とを,再分配的福祉国家で結びつける.その真の政治信条とは,『何であれ有効なものを採用せよ!』である.」

ベイルが最も鮮明なブレア主義者です.そして,ブレアが夢見たヨーロッパの三者同盟,ブレア=メルケル=サルコジ,の可能性は彼の退場によって消えますが,ブレア後も政治はその変化を継承しそうです.

FT April 15 2007

Why France may find its social model exacts too high a price

By John Thornhill

(コメント) Thornhillは,フランスの経済モデルがその経済的負担に耐えられない,と主張します.過激主義に走らず,ヨーロッパの理想やフランス型の社会モデルで世界を変える,というシラク大統領の理想が実現しなかったのは,財政赤字を増やして「新しい病人」と呼ばれ,グローバリゼーションを嫌って国際競争から撤退するだけ,という経済状態に手足を縛られたからです.

フランス政界に長く住み,その後,IMF専務理事も務めて多くの国に経済モデルの改革を求めてきたカムドシュは,自国について簡潔に述べます.もっと働くこと.アメリカの労働者に比べて,37%も生涯の労働時間が少ない.1991年と今を比べると,フランスの一人当たりGDPは世界8位から19位に下がり,それはアメリカの83%から71%に減った.失業率は25年間も8%を超えたままで,若者に限れば22%が職に就かず,成人労働者の41%しか働いていない.

フランスが問題を解決できないのは,それを国家の肥大化によって隠蔽してきたからです.ますます多くの労働者を国家が養うようになりました.その結果,彼らは市場競争や改革を嫌います.公共部門の雇用は労働者の約4分の1を占め,それは1970年の2倍,1936年の4倍です.老人たちは公共サービスに頼り,優秀な若者は公共部門に就職することを目指します.

フランス政府はその費用を債務で賄いました.その結果,民間部門には投資せず,競争力が失われました.その意味で,大統領選挙の論争は重要な問題に触れておらず,論争の質が批判されます.

フランスには話し合いで解決する伝統が無く,危機によって暴力的に体制を転換する道しかない,という意見もあります.しかし,カムドシュは多くの国の改革を見た結果,危機を経ずに改革できる,と主張します.そのためには,強いリーダーシップが必要です.

フランスが市場や改革を嫌うのは,歴史的な偶然(1930年代の経験とその後のド・ゴールによる国家的分配体制への権力集中)と合理的選択の結果である,とする研究もあります.成長が望めないからこそ,彼らは安定性や職場の維持を最優先するのです.


Orville Schell Clearing the Air With China WP Sunday, April 15, 2007

William Saletan The Organ Market WP Sunday, April 15, 2007

China’s Signals on Warming NYT April 16, 2007

Gideon Rachman Climate change is not a global crisis ? that is the problem FT April 16 2007

Dangerous weather FT April 19 2007

(コメント) 中国人は石炭を燃やし,アメリカ人は穀物をガソリンに変える.アメリカ人は中国が免れている温暖化の国際規制に従わず,中国は,たとえ環境破壊につながっても,アメリカと同じ生活水準を実現できる権利を主張します.

同日のWashington Postに載った論説は臓器市場の話でした.「もし職を失ったら,あなたは家を売るだろう.もし家を失っていたら,あなたは持ち物を売る.持ち物が無ければ,あなたは売春する.そして,何も無くなったら,あなたは自分の臓器を売るだろう.」 たとえば,貧しい地方の中国人は臓器を売り,サウジ・アラビアの富豪は病気の臓器を捨て,新しい臓器を買うのです.

たとえば,こうして新しい国際秩序は誕生します.しかし,温暖化を免れる国はないのであり,また,外国が輸入する中国人の臓器を,中国政府が安価に維持していることに不満が生じるかもしれません.秩序というものは,どのような政治的不満も,その正当性を失う前に吸収しなければなりません.すでに臓器売買を禁止もしくは規制する結果として,その差を利用した国際間の需要者の移動や闇取引が増えています.

Saletanは書きます.「たとえ自分(あるいは,娘や息子)が臓器を提供しなくても,他の誰かが提供するだろう.」 その通り.それは外国の労働者です.仕事が無く,家族を養うために,自分の臓器を売れるものなら売るでしょう.アメリカ人,イギリス人,日本人,韓国人,彼らは臓器を得るために外国へ行きます.彼らの国には死後に臓器を提供する人が少ないからです.

臓器売買を合法化し,市場を自由化するだけでは,貧しい国からますます多くの臓器が,生きたまま人々から切り取られて輸出されるでしょう.彼らが臓器を売ることを考えないのは,裕福な国で臓器が無償で手に入るときです.ただちに国民すべてにドナー・カードを持つよう法制化せよ,と.


FT April 16 2007

China and America need a new Shanghai agreement

By Robert Zoellick

LAT April 18, 2007

Dealing with China

NYT April 18, 2007

China Leans Less on U.S. Trade

By KEITH BRADSHER

(コメント) ゼーリックは1972年のニクソンと周恩来が合意して発表された「上海コミュニケ(米中共同声明)」の再現を主張します.

当時の米中にとって,経済関係を期待することは少なく,共通の関心はもっぱら「覇権」という表現で意識された「ソ連の脅威」でした.それは抽象的な合意でしたが,両国の国民が何のために協力するのか,その方向を示す点で重要な意義がありました.

今,米中は再び共同声明を必要としています.中国は急速に台頭する勢力であり,それゆえ周辺諸国や国際秩序に不安を生じています.他方,アメリカは支配的大国であり,しかも,大国として秩序を維持するだけでなく,他国においてもその秩序を改革することに関心をもち続けています.そのことが両国を国際秩序に関する協調について合意しなければならない理由なのです.

ゼーリックは「国際秩序の責任あるステークホルダー“responsible stakeholder”」という概念を強調します.中国もアメリカも,その平和と繁栄を維持するためには,国際秩序が安定し,円滑に機能することを願うからです.中国が示す「和平演変」や「調和的社会」のイデオロギーは,その必要を認めたからであり,それが現実に行動として示される保証を各国は求めています.

・・・北朝鮮,イラン,パキスタン,スーダン,と指摘しますが,彼らが合意するとしたら,台湾であり,日本ではないでしょうか?

貿易摩擦に関しては,WTOの役割を示すLATの論説.アメリカとの二国間不均衡と摩擦ではなく,全世界との貿易と不均衡を形成しつつある中国の貿易パターンを紹介するBRADSHERの論説.米中二国間合意ではない,多角的秩序の重要性を示す材料です.

Asia Times Online, Apr 17, 2007

A new breed of migrants fans out

By Bertil Lintner

Asia Times Online, Apr 19, 2007

A how-to guide for fleeing China

By Bertil Lintner

(コメント) 中国からの労働者の流入に,アジア諸国は「脅威」を感じ始めています.その規模だけでなく,質が変わった,とLintnerは指摘します.地方の言語を話し,中国政府を意識しなかった彼らが,北京の公用語を話し,自分たちは中国人であると意識する移民群に変わったのです.彼らは各地でマイノリティーになるのではなく,世界のマジョリティーであると自覚します.彼らの繁栄は中国経済の拡大に一致しているからです.

中国政府は移民を促しているわけではないけれど,地方の人口圧力を減らし,国民経済を拡大し,政治的・文化的な影響力を及ぼすことに関心を持っているはずです.旧移民はその国の文化に同化し,あるいは摩擦を避けようとしてきました.新移民は違います.中国は植民地を拡大しませんでしたが,もしある地域で中国人の方が多数を占め,あるいは,政治的・経済的な支配的地位を押さえるなら,その社会の秩序が根底から変わる可能性があります.

裕福な欧米諸国や日本に密入国させるビジネスは今も繁栄しています.


The Japan Times: Monday, April 16, 2007

Preserving the countryside

By HUGH CORTAZZI

(コメント) 美しい自然とその景観を破壊する点で,日本が欧米以上に熱心だというのは残念です.イギリス人から見ると,日本には自然保護の考え方が無いのか? というわけです.

「(イギリスの)現政権は地方のコミュニティーや美しいものに価値を認めない.大臣たちは自国の伝統的な芸術よりも,ポップ・カルチャーとスポーツに熱心だ.莫大な予算をロンドンのミレニアム・ドームに消尽し,今や無用の長物だ.富くじで集めた資金を2012年のロンドンオリンピックに使う予定だが,それでも大赤字が決まっている.自然や芸術は政府に脅かされている.

日本の方がましだとは思えない.・・・都市計画は何の脈絡も理由も無く決まり,東京の建物は,わずかな例外を除いて,醜悪な機能的ビルの寄せ集めである.

ほとんどの日本の街は画一的な商店街で区別がつかない.道路はアメリカと同じく大都市に向かい,中古車販売店,ファースト・フード店,スーパーマーケットが並ぶ.アメリカと唯一違うのは,ボーリング場ではなく,パチンコ屋が多いことだ.」


Asia Times Online, Apr 17, 2007

Clock running out on free trade

By Laura CarlsenForeign Policy in Focus

Asia Times Online, Apr 17, 2007

Asian transport network on track

By Michael Mackey

(コメント) Carlsenは,FTAや自由貿易に反対しています.NBCNews/Wall Street Journalによる3月の調査では,46%の人がFTAsは国の利益を損なったと答え,28%だけが助けたと答えています.輸出企業の利益だけでなく,国民全体の利益,そして国際社会の貧しい人々にも利益がもたらされるような条件を合意しなければならない,と.

Mackeyは,国連・ESCAPの計画,ハイウェイと鉄道によるアジア市場統合を紹介しています.


LAT April 17, 2007

Why they kill

James Alan Fox

大量殺人はもちろん1966年のテキサス・タワーで発明されたわけではない.歴史とともに,殺人や大量殺人は昔からある.しかし,1966年は転換点だった.テキサス大学の学生であったCharles Whitman27階のタワーに登り,警察に射殺されるまで,14人を殺害し,31人を負傷させた.その後,同様の事件が増え,ありふれたものになった.

バージニア工科大学で32人を殺害した事件は,アメリカで毎年起きる約20件の大量殺人の一つに過ぎない.

なぜこれほど増加したのか? 人類誕生から受け継がれた人間の属性が1966年に変化したのか? もちろん,そうではない.いくつかの要因が考えられる.一つは手に入る武器の性能だ.ピストルやライフルだけでなく,今では,セミオートマチックの銃器が容易に手に入る.

他方,大量殺人を増やしてきた社会変化もわかっている.1.殺人者は挫折や失敗,人生におよぶ長い絶望の記録を持つ.2.彼らはそれを他人や社会の責任にする.自分はチャンスをもらえなかった,と.3.友人や家族から心のこもった励ましを受けていない.4.突発的な事件,彼らが破局を感じるものに遭遇している.5.報復を実行できるほど強力な武器が手に入る.

何が変えられるだろうか? 近年のアメリカは食うか食われるかの競争を実現した.どんな犠牲を払っても目標を達成する者を称賛し,負けた者には同情しない.敗者の間に挫折感が増すのは確実だ.

また,伝統的なコミュニティーが崩壊した.離婚が増え,教会に通う者は減った.ますます多くのものが都市に住み,隣人のことを何も知らない.

多くのことは分かっているが,彼らをあらかじめ阻止することはできない.キャンパスを要塞にすることはできないし,するべきではない.こうした事件は非常にまれである.しかし,今後も起きるだろう.それは私たちの社会が開放的で,近代的で,民主的であることの,残念な,悲劇的代償である.

A Killer in Blacksburg WP Tuesday, April 17, 2007

Jonathan Zimmerman Facing up to violence in America CSM April 18, 2007

Dominion of death The Guardian Wednesday April 18, 2007

Simon Jenkins The Blacksburg tragedy is not the sign of a sick society The Guardian Wednesday April 18, 2007

Ryan Park The shame game The Guardian Wednesday April 18, 2007

Conor Clarke All talk, no action The Guardian Wednesday April 18, 2007

Edward Taehan Chang Cross ethnic lines to stop violence LAT April 18, 2007

Richard Cohen In the Reach of Madmen WP Wednesday, April 18, 2007

Jacob Weisberg Guns and America’s sacred rights FT April 18 2007

DAVID BROOKS The Morality Line NYT April 19, 2007

BOB HERBERT A Volatile Young Man, Humiliation and a Gun NYT April 19, 2007

The Silence of Politicians NYT April 19, 2007

Stephen Joel Trachtenberg Our Worst Nightmare WP Thursday, April 19, 2007

Kathryn Westcott Cho fits pattern of campus killers BBC 2007/04/19

(コメント) ブラックスバーグの悪夢.コロンバインと比較され,銃規制が問題になります.政治家たちは駆けつけて,亡くなった者とその家族に同情しますが,アメリカだけは他の世界と違って,銃器や殺人の熱狂に冒された者たちから,市民たちを守ろうとしません.

そのニュースを聞いて,最初に思ったことは,犯人がアラブ人ではないように,ということだったとJenkinsは書きます(私も,犯人は日本人だ,という間違った話を聞いて驚き,恐れました).そして次に,この事件は911と同じようにアメリカのイメージを損なうだろう,しかし,彼らを社会の病状と見なし,社会防衛を強化する,などと主張するべきではない,と.

Parkは事件の背景に,アジア系アメリカ人の「恥の文化」を考えます.他にも,さまざまな観点から事件を取り上げ,社会における暴力の問題を分析し理解しようとしています.

私たちは,長崎市長のテロ事件を,これほど深く議論したでしょうか?


NYT April 17, 2007

The Energy Challenge: A Renewed Push for Ethanol, Without the Corn

By MATTHEW L. WALD and ALEXEI BARRIONUEVO

(コメント) 石炭を液化するとか,サンド・オイルを抽出するという話は分かりますが,穀物をガソリンの代用物に変える,とは・・・? なんとも中世の錬金術を見るようです.しかし,廃棄される繊維からガソリンを経済的に作るのは,まだ技術的にも実現できないという内容です.


Daniel Altman Managing Globalization: Has It Hurt US Workers? The International Herald Tribune, 18 April 2007

Andy Mukherjee Goldman's BRIC Dream Shows No Sign of Ending April 19 (Bloomberg)

JOHN TAGLIABUE Eastern Europe Becomes a Center for Outsourcing NYT April 19, 2007

(コメント) アウトソーシングや雇用の移転,グローバリゼーションの抑制などを議論しています.

The Nation, 19 April 2007

The Establishment Rethinks Globalization

William Greider

(コメント) IBMの副社長であったRalph Gomoryの「貿易論」に関する疑問です.彼はアメリカ経済学会元会長のWilliam Baumolと共著で,Global Trade and Conflicting National Interests7年前に書きました.これまで無視されてきた研究が,ワシントンで注目されています.その要点は,アメリカからインドに雇用を移転することで,アメリカ企業もインドの労働者も利益を得るが,高賃金色を失うアメリカ国民は不利益を被る,ということです.

その対策は,雇用が移転されるスピードを遅くして,両国にとって利益が保証できるような貿易の上限を設けることです.


NYT April 19, 2007

Harvard’s Former Lightning Rod Is a Hit in Asia

By HEATHER TIMMONS

(コメント) 多分,サマーズはサッチャーをまねたのです.「問題はすべて工業化された世界の責任だ.」 他方,「その解決策はすべて発展途上の世界にある.」

ハーヴァードでは発言が物議をかもして辞任したサマーズですが,彼のアイデアはアジアで今も人気を博している,という記事です.たとえば,アジアにおける2兆ドルの外貨準備を(裕福な諸国が)恐れるより,民間に委託して投資信託の形で(発展途上の世界も含めて)運用すればよい,という提案を,インドと中国の政府が採用するために検討している,といった具合です.

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The Economist, April 7th 2007

Globalization’s offspring

IBM and Globalization: Hungry tiger, dancing elephant

Economics focus: Smaller shares, bigger slices

Ethanol: Castro was right

Trade policy: The trade two-step

Iran and the West: Sailing into troubles waters

Japan and China: Peace breaking out

France’s presidential race: The banlieue effect

(コメント) グローバリゼーションに関する考察は,多国籍企業や労働者,分配に関するものですが,記事には「切れ味」が欠けていると思いました.IBMもIMFも,グローバリゼーションの全体が労働者たちに支持される政治的な条件を満たしていない,という不安を抱くようになったのかもしれません.

ブッシュ政権がエタノールの利用や,(交渉権限の切れる25分前に署名できたという)米韓FTAで示したのは,いかにも政治的な介入で市場を造形し,「望ましい」社会秩序を演出しようとした感がぬぐえません.誰にとって「望ましい」? つまり,その政治学とは何か,

「エタノールを生産するためにアメリカがトウモロコシを利用するせいで,すでにトウモロコシの価格は上昇し,ますます多くの土地が他の作物の生産からトウモロコシに転換しています.こうして他の農産物の価格も上昇し,トウモロコシを飼料とする牛肉の価格も上昇する.食糧の供給は,言い換えると,アメリカの飢えた自動車たちを養うために奪われたのだ.」

「新しい補助金が得られるので農家は喜ぶ.中東の石油に依存しなくなるからタカ派も喜ぶ.環境にやさしい燃料に転換できると自動車業界も喜ぶ.燃料の大量消費を持続させるから石油業界も喜ぶ.彼らに補助金を与えて良い顔ができる政治家たちも喜ぶ.すべての付けが回ってくる納税者は,そのことを知る必要もない.」

イラン,日本,中国,フランス.どれもアメリカが嫌う(嫌った)異質な(理解できない)国ではないでしょうか? あるいは,アメリカと違って,複雑な歴史や文化を持ち,グローバリゼーションの中でも固有の文化を尊重する,誇り高い国々なのです.彼らは市場を武器としたアメリカ外交に容易になじみません.