IPEの果樹園2007

今週のReview

4/16-21

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* キー・ワード **********************

ミサイル防衛網, ブラジル大豆の中国向け輸出, ニュー・シルクロード, ジェフリー・サックスFTA論争1, 新作物の地球外耕作地帯, 中国と日本, 国際通貨制度改革, イェーナの復活, 中国特集, 眠ったコアラ

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


FT April 5 2007

Capital versus labour

(コメント) 資本の分配率が増えています.アメリカでも,ヨーロッパでも,日本でも,成長の割りに労働者の賃金は上昇しません.FTは,労働市場と教育投資を改善することで,こうした分配の格差を是正するべきだ,と主張します.

1980年代初めに比べて,中国,インド,旧共産圏が世界市場に参加し,世界の労働者は4倍に増えています.IMFは,2050年までにそれがさらに倍増する,と予測しています.賃金は停滞し,資産価格は上昇します.

失業も資産価格上昇も,その最も深い背景にはグローバリゼーションと技術革新とがあります.そのダイナミズムは,革新他統合化の過程で市場から退出や再配置を迫られる人々,資源の扱われ方にかかっているでしょう.IMFは三つの政策を要請します.労働市場を弾力化すること,潤沢なセーフティー・ネットを与えること,そして,再訓練・再教育に投資すること,です.

資本家たちがグローバリゼーションを謳歌するのは,おそらく,一時的なものです.不況が来ても,通貨危機が再発しても,それを克服できるような備えがあるでしょうか?


IHT Friday, April 6, 2007

Shield or sword?

Konstantin Kosachev

(コメント) ミサイル防衛網は,これまでの安全保障の枠組みを革新する考え方です.EUの分裂を招くでしょう.EUの承認を得ずに,加盟国が個別にアメリカとの防衛協力を合意しつつあります.

財政危機の市町村が原発を誘致するように,日本の市町村が個別にアメリカの防衛システムを誘致するようなものです.EUには独自の防衛政策も外交方針もなく,アメリカとの軍事協力がその地域への巨額の軍事支出や財政的援助をともない,移民枠の優遇や貿易・投資の積極的な拡大につながるとしたら,拒む国こそ無思慮ではないか?

さらに,問題はロシアです.ロシアとの関係において,近隣諸国はアメリカの強い軍事力を求め,離れた国ほどロシアのエネルギーを求めます.新しい攻撃システムと安全保障に,旧来の政治同盟が対応できません.冷戦の構図がなく,民主主義による投票が機能しない.各国の指導者は,イランや北朝鮮の核開発を理由にしたアメリカの防衛戦略に巻き込まれて,分断されます.

他方,台湾問題を抱えた中国と違い,ロシアはミサイル防衛網に反対しているのではなく,参加させるように要求しているのです.アメリカがロシアを排除し,ウクライナやグルジアを参加させるとき,ロシアはどうするのか?

他方,EUが統一を維持するには,ロシアを含む独自の防衛政策・安全保障システムを必要とします.


IHT Friday, April 6, 2007

Migration benefits all

Edward Mortimer

LAT April 7, 2007

Let in skilled labor

LAT April 10, 2007

Guest workers: a worn-out labor idea

By John J. Sweeney and Pablo Alvarado

(コメント) EU人口の9%,アメリカ国民の13%が,外国生まれです.この数字は歴史的に見て高いものであり,さらに上昇すると思われます.

ヨーロッパやアメリカが,日々の生活において大きく依存している移民たちの活動を,非合法化し,国外追放処分にすることは,倫理的に間違っているし,機能しないでしょう.非合法化された人々は犯罪者に搾取され,組織されます.

人々のアイデンティティーは重要ですが,不変のものではなく,移民たちを加えて形成されていくのです.ヨーロッパに大量のイスラム教徒が来ることを恐れる議論は時代錯誤です.彼らはすでにEUやアメリカの内部で生まれ,彼らがこの社会に属さないことを強調することは,決して好ましい結果をもたらしません.

アメリカやEUの移民政策論争は,特定の分野で熟練や技能を持った移民たちを歓迎し,同時に,短期の労働許可を与えるという,二重のシステムを目指しています.まるで周回遅れの日本が先頭に立ったような印象です.

Sweeney(AFL−CIO議長) and Alvaradoは,労働許可証やゲストワーカー制度に反対です.それは許可証を失う者に圧力をかけるでしょう.そして永久に下層労働者として働かせます.ゲストワーカーたちは多くの借金を背負い,家族を残して来ています.許可証を失っても,帰国することはできないのです.

言葉も分からず,お金もない彼らを,誰が助けるのか? むしろ,国内労働者と同じ条件で彼らを迎えるべきだ,と主張します.


NYT April 6, 2007

Cellphones, Maxi-Pads and Other Life-Changing Tools

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) アフリカを貧困と疫病,政治腐敗から救い出すにはどうすれば良いのか?

FRIEDMANは,その解決策を女性用のナプキン,選挙前でも安心して投資できる法と民主主義,そして,携帯電話,に見ます.ある村の農婦たちは携帯電話を共同で利用し,ヤギのナイロビ市場における価格をチェックしています.最後に,役割に応じた人材です.政府は腐敗一層のキャンペーンに国民的な長距離走の選手を指名しました.彼は国中を長距離走者でつないで,キャンペーンの灯火を掲げて走りました.

ケニヤ政府は,その問題を自分たちの手で,独自の方法によって解決しようとしています.


NYT April 6, 2007

How Supply-Side Economics Trickled Down

By BRUCE BARTLETT

(コメント) サプライ・サイド経済学ができた背景,その論理を簡潔に説明しています.インフレと不況が続く中で,財政赤字によってではなく,インフレ抑制のための高金利と景気刺激のための減税とを組み合わせるのがサプライ・サイダーの主張でした.

その後も,さまざまな政策や制度の社会的背景,制度的条件が議論されたわけです.サプライ・サイド経済学はその一つでした.


NYT April 6, 2007

To Fortify China, Soybean Harvest Grows in Brazil

By ALEXEI BARRIONUEVO

(コメント) ブラジルが中国への大豆の供給国として,アメリカに代わって,第一位になりました.ますます豊かになって,豚や家禽,牛を食べるために,中国人はその飼料である大豆を求めています.もちろん大豆だけでなく,あらゆる食料,自然資源,エネルギーを,世界の果てまで求めます.世界の農産物貿易は大きく変わるでしょう.

かつてはアメリカと日本の農産物貿易が世界市場の中心でした.アメリカが土地や規制によって,またエネルギーへの転換で供給を制約されているために,中国の需要はラテンアメリカの土地を急速に変化させています.中国とラテンアメリカとの長期契約が,世界の農産物市場を決定します.中国という日本の10倍の人口が示す食欲と投資は,アマゾンの熱帯雨林を広大な農地に変えます.

同時に,中国向け農産物輸出ブームが破綻する不安や,中国製の工業製品が急激に流入して赤字や失業をもたらす不安もブラジル側にあります.中国に大規模に輸出するためには輸送インフラへの投資が必要です.また,ブラジルの輸出用農産物を支配する巨大企業にとって大きな利益になっても,農民たちは貧しいままです.中国は仲介商人を入れずに,直接契約を望みます.しかしブラジル企業はアメリカとも組んで販売先を多様化します.

かつて大豆やトウモロコシを生産していた中国東北部は,次第に,地下水位が下がって,高価な果物などを耕作しています.農産物を大量に輸入することは,中国国内の水不足に対処して水を輸入する有効な方法なのです.

WP Monday, April 9, 2007

The New Silk Road

By Afshin Molavi

NYT April 10, 2007

Challenging China

FT April 11 2007

Why fast-changing China is turning back to Confucius

By Richard McGregor in Beijing

(コメント) 中国の胡錦涛主席がサウジアラビアを訪問した際,通訳は不要でした.なぜならサウジ・アラムコ社には多くの中国語を話す人々がいたからです.中国が最大の需要先になって,アラムコは一群の社員を中国に派遣し,中国語を学ばせました.

中東産油諸国はアジアとの貿易や投資を望んでいます.この新しい流れを「ニュー・シルクロード」と呼べるでしょう.Molaviは,現在,アメリカやイスラエルが戦っている国は次第に重要ではなくなり,世界の富や安全保障,エネルギーに関わるニュー・シルクロードの重要性を見誤っているかもしれない,と懸念します.むしろアメリカは,ラテンアメリカを含めたグローバル・シルクロードを築いて,各国に参加を呼びかけるべきだ,と.

NYTは,議会や国民の保護主義的な感情を利用したブッシュ政権の姿勢を批判します.アメリカが中国との貿易戦争によって得るものは何もない,と.

アメリカ政府は,中国政府が市場における違法コピーや偽物の販売を取り締まることに熱心でない,と批判し,WTOに提訴しました.また,政府の不当な補助金を受けて中国の製鉄所が輸出しているという理由で,関税を課しました.もしこれが中国政府の反省を促し,その行動を改めるきっかけになれば,双方にとって良いことです.

しかし,中国がアメリカに報復関税を課して,貿易戦争に拡大するなら,アメリカ企業や労働者が損害を被るでしょう.むしろアメリカ政府は自由貿易によるアメリカ国民の利益をよく理解してもらい,職場を失う労働者には十分な補償をおこなうべきでしょう.そもそも,労働者たちの生活を不安定にし,富裕層を優遇する減税によって彼らの貯蓄を奪ったのは,中国ではなく,ブッシュ政権なのです.

所得格差や社会対立が深まっている中国で,儒教に関する本が200万部に及ぶベストセラーになっています.いつもは宗教を抑圧する共産党が,この本については沈黙しています.それは,共産党の一党支配体制や,「調和ある社会」といった現政権の政治スローガンにとって有益な思想だからです.

いっそ中国は,「社会主義的民主主義」と「儒教的資本主義」の国である,と自己主張したいのではないか? それなら,かつての日本にも当てはまりそうです.そして中国における儒教の復活は,共産党の思惑を超えて,重要な転換をもたらすように思います.

儒教の中心的な聖地に集まる寺院群は,少なくとも60回以上破壊され,そのたびに復興された.最金の最も徹底した破壊は毛沢東が行った文化大革命であった,という記述が目を引きます.


FT April 6 2007

Free us from this slavery overload

By Christopher Caldwell

(コメント) 奴隷制廃止とその運動を指導した人物を記念することは,廃止がすべての人に称賛される行為だからです.しかし,今はむしろ,奴隷貿易がグローバリゼーションの栄光を物語る一部として称賛されている,とCaldwellは書きます.

人間型の人間を所有できる,という権利は,近代社会以前の戦争による奴隷がもたらした考え方です.他方,人身売買は違います.これはグローバリゼーションに加わる非合法活動の組織化です.しかしCaldwellは,この二つに共通する要素,すなわち,輸送と革新,を見ます.急激な革新を経た社会が,それをまだ利用できない社会と結びつくとき,人々は奴隷として売買の対象になるのです.

今も世界中で,セックス産業の奴隷として,女性や子供たちが輸送されています.ただし,社会が制度としての奴隷制を復活させる見込みは無いだろう,と.


FT April 6 2007

Lunch with the FT: Jeffrey Sachs

By Chris Giles

(コメント) Giles は,BBC Reith Lecturesのためにロンドンに滞在していたジェフリー・サックスに会って話します.それは1億人を超す観衆に世界の問題を話す講演会なのです.彼は貧困,疫病,温暖化,グローバリゼーションについて世界中の政府に助言を与えています.

インド料理店の名にちなんで,イギリスの支配を尋ねると,サックスは良い面がたくさんあった,と答ます.たとえば,鉄道は非常に有益であった,と.そして次に,Gilesは,ラテンアメリカや東欧における改革へのサックスの関与を尋ねます.彼の助言を受けた政府は,今,それほど良くなっていないのでは?

サックスはそれを否定します.1985年,最初に助言を与えたのはボリビアのハイパーインフレを退治することだった,と.Gilesはサックスと,ロシアの失敗を話し,ポーランドの成功を話し,何が成功の原因だと思うか? と話し合います.サックスは,それを「健全なファンダメンタルズ」と考えます.そして,ロシアがそうであったように,政治が経済的な答を圧倒してしまうとき,すべてが失敗する,と.

サックスが関わったロシアで,アメリカはロシアが弱体化することを歓迎し,クレムリンは共産党の復活を恐れ,結局,資産は一握りの富豪たちに奪われてしまった,と.

アフリカの貧困について,援助は何も役に立たなかった,というEasterlyの批判に反発し,余りにもわずかな援助に対して大きな成果を示した,とサックスは主張します.ミレニアム・ビレッジの企画にも,それは成功するかもしれないが,多くの失敗例を挙げることもできるだろう,というGilesの反対に,現実を変えようとするなら,失敗するかもしれないというだけで何もしないより,現実に試してみるべきだ,と譲りません.

Gilesは正しく指摘しています.「経済学は本当にこれらの世界的な問題を解決できるのか? サックスの世界では,問題とは本当は問題ではない.なぜなら,それらには常に単純な答があるから.(しかし現実の世界には,)既得権があるし,国民的な違いもある.改革はしばしば成功する者を振り落とし,失敗する者の抵抗は彼が思うよりもよほど手に負えないのだ.」

FT April 8 2007

Philanthropy ‘can eclipse G8’ on poverty

By Leyla Boulton and James Lamont

(コメント) G7よりも社会慈善事業化たち(すなわち超富裕層)の方が,アフリカの貧困を解決するのに重要だ,とJ・サックスは主張します.・・・本当に?

確かに,昨年,ゲイツ夫妻が基金に移した資産は400億ドルを超えます.「950人の億万長者の資産は,昨年,総額35000億ドルだ.この<基金>の年5%で1750億ドルになる.だからわれわれはG(など必要ないのだ.『フォーブズ』誌の長者番付950人がいれば良い.」 彼らが(ゲイツ夫妻のように)同意すれば,世界の貧困を解決できる,とサックスは考えます.


April 6 (Bloomberg)

Fortunetellers, Comedians Line Up to Run Tokyo

William Pesek

FT April 8 2007

The case against rate rises in Japan

(コメント) 1200万人を抱える首都,東京の都知事選挙について,占い師や運勢判断,街頭ミュージシャンなどが立候補する事情を伝えています.それはまるで『アキラ』のようです.

東京のGDPはオーストラリアよりも大きく,東京の契機が日本経済を指導します.日本は自民党による一党独裁の国であり,政治家たちの心配は職を失うことではありません.だから彼らは,たとえ中国やインドが経済競争において日本の地位に迫っていても,それを気にしなくて良いのです.

Pesekから見ると,石原は日本のル・ペンであり,あるいはフェミニストを激怒させた暴言癖のある小説家です.東京にオリンピックを誘致するのは,人々に夢を与えるためであり,これまでに税金で建設された競技場などが利用されないまま放置されているからです.

他方,日本に再来したのは,オリンピックではなく,デフレでした.日銀が理解したほど日本経済は活況に沸いておらず,インフレ懸念は遠く,労働力も生産設備もまだあまっていたわけです.


WP Saturday, April 7, 2007

The Subprime Meltdown and the Ownership Society

By Dean Baker

(コメント) 住宅の所有はイデオロギーとして支持され,制度的に助成されています.民主党は貧しい者への補助金として,共和党は「所有者の社会」という理想を称賛します.しかし,本当に貧しい家族の助けとなるのは借家である,と記事は指摘します.企業は利益が出なければ倒産しますが,政治家はどれほど失敗しても倒産しません.


The Japan Times: Saturday, April 7, 2007

U.S. and South Korea make a deal

The Korea Times, 11 April 2007

Accord Key to Sustainable Economic Development

By Lee Jun-kyu

(コメント) FTAには利益があり,韓国の農民は反対しても無駄であり,日本は自分たちが無視されているという不安に駆られて,世界の自由化を進めるでしょう・・・?

FTAを支持するLee Jun-kyuは,米韓FTAに関する韓国国内の反対派を分類します.すなわち,1.グローバリゼーションの一部だから反対.2.韓国の交渉力が劣っているから不利な内容に違いない.3.韓国経済がアメリカの衛星になってしまう.4.韓国の政治的独立が損なわれる.

市場を閉ざすことで生き残れるのか? とLeeは反問します.中国やインドはグローバリゼーションの機会を生かすことに成功し,周辺から急速に台頭している.「積極的に市場を開放する国は繁栄し,それを避ける国は衰退している,ということが分かる.」 「市場が自由化され,競争を促す政策が取られるなら,生産性が上昇する.これが生産性を高める道である.」


WP Sunday, April 8, 2007

A Korean Strategy For Iraq

By Jim Hoagland

LAT April 9, 2007

'Your Iraq plan?' is a pointless question

By Andrew J. Bacevich

(コメント) ブッシュ大統領は,イラクが決してベトナムの再現ではなく,むしろ韓国・朝鮮戦争であると国民に信じてほしいのです.1.イラクは内戦を続けるのか,2.和平の合意に達して各派閥が妥協するのか,あるいは,3.完全に分離した壁の後ろで,時間をかけて再建に努めるのか? ブッシュ氏は1ではなく2を目指してきましたが,次第に,3へと傾きます.それが民主党の支配する議会と妥協できる案でもあります.

Bacevichは,ヒラリーやオバマに「お前のイラク政策は何か?」 「成功する代策もないのにブッシュを批判するな」 という非難を浴びせるのは止めるべきだ,と考えます.ブッシュが辞めて,新しい大統領にできることは,何よりも,これまでの間違いを認め,先に進むことだから.


NYT April 8, 2007

Re: Framing

How to Confine the Plants of the Future?

By DENISE CARUSO

(コメント) 私はいつもSFのような話が好きです.この記事にはイラストがあって,地球を取り巻くチューブの中に穀物を栽培する土地?があり,コンバインか耕作ロボットが稼動しています.汚染された土壌や破壊された気象システム,『マトリックス』のように太陽を遮断された世界でも,なるほど,これなら食糧を得られるでしょう・・・!

ただし,地上でどのような生物が食糧を待っているのか,それは分かりません.

CARUSOによれば,新しい遺伝子組み換え穀物により,食糧だけでなく,医薬品や身体機能を代替する有機物,さまざまな工業原材料も経給できるでしょう.それに対する不安や攻撃も強まります.危険は管理できるし,その利益は圧倒的だ,というわけです.

政府の二つの役割が矛盾しており,問題を悪化させています.政府は食糧や医薬品の増産を支援し,同時に食品の安全性や国民の不安に政治的な配慮を示します.そのバランスを測る公的な機関が必要だ,とCARUSO言います.

重要な点は,と記事は続きます,遺伝子組み換えの種が畑から出て自然界に広がることです.なるほど,だから宇宙空間だ・・・!


FT April 8 2007

Americ’s bipartisan battle against free trade

By Jagdish Bhagwati

(コメント) BhagwatiはFTAを批判します.まず,それは多角的な自由貿易ではなく,差別的な特恵条約PTAsである.自由貿易という仮面をかぶっているだけに,より悪質だ.

また,自由貿易は「公正さ」によって攻撃されている.特に議会で,新しく多数を占めた民主党員たちだ.これをゼーリック元国務長官は「競争的な自由化」と呼んで正当化した.しかし,1.政府の努力を多角的交渉から離反させ,2.議会では自由貿易支持派を損なうから,「公正貿易」は自由貿易を実現しない.

さらに二つの自由貿易支持を損なっている主張がある.1.失業や低賃金を貿易やグローバリゼーションのせいにする人々は,特に,中国を非難する.もしそう思うなら,WTOを通じて争うべきだ,とBhagwatiは考えます

2.民主党員は労働や環境の(自国の)基準を重視する.それは国際競争を意識した「輸出保護主義」であるが,彼らはその主張を自分たちの特殊利益ではなく,相手の国の利益である,と主張する.その意味で,他国からより憎まれる議論だ.


FT April 8 2007

How China and Japan are starting to march in step

By Mure Dickie and David Pilling

IHT Tuesday, April 10, 2007

Trade heals old wounds

By Chong-Pin Lin

FT April 11 2007

China and Japan pledge closer ties

By Mure Dickie and David Pilling in Tokyo

(コメント) なぜ世界一裕福な国と世界一急速に成長する国が,仲良く付き合えないのか? 中国の諺にあるように,「二匹の虎が一つの山に住むことはできない.」

外交的な和解を求める流れを受けつつも,環境保護の技術協力以外では,解決の難しい問題が目立ちます.経済水域内の海底資源開発問題.新幹線輸出.軍備費増大や潜水艦の越境,衛星撃墜実験.安保理常任理事国.歴史問題.そして夏が来るたびに紛糾する靖国参拝問題.

アジアにおける二つの大国が反目し続けることはできません.その新しい話し合いのプロセスを築く試みは続くでしょう.

特に,日中間の貿易や投資は益々重要性を増して行きます.しかも台湾のChong-Pin Linは,日中間の相互依存が時間と共に中国にパワーをシフトさせる,と考えています.日本は分岐点に立つでしょう.アメリカとの軍事同盟を重視するか,日中間の経済的相互依存を重視するか? 次第に,日本政府は米中間の均等な重心を取れなくなりそうです.

April 9 (Bloomberg)

Asia Has Money to Burn; Where Are the Assets?

Andy Mukherjee

YaleGlobal, 11 April 2007

China and the US: To Hedge or Engage

David Shambaugh and Karl F. Inderfurth

Asia Times Online, Apr 12, 2007

A new world with Chinese characteristics

By David Gosset

The Japan Times: Thursday, April 12, 2007

Australia's anti-China pact

By GREGORY CLARK

(コメント) 世界経済の不均衡をもたらしている犯人かもしれないアジアの過剰貯蓄は,日本を除くアジア諸国に貯蓄に見合った投資できるだけの資産市場がない,という問題を示唆します.そこでMukherjeeは考えます.アジアの債務を証券化することができれば,それによってアジアで貯蓄を吸収できる,と.しかし,アジアにおける流動性の過剰供給は資産市場の成長を妨げ,結局,その貯蓄はアメリカに流れてしまいます.

Shambaugh and Inderfurthの論説を読むと,アジアの安定性を確保するために,北朝鮮の核危機を沈静化し,日本に安定した役割を担うよう求めるのは,アメリカと中国の協力姿勢である,となります.アメリカと日本ではなく.

中国の政治・経済・文化における復活は,世界秩序に中国の性質を反映させるだろう,とGossetは考えます.中国は非常に多様で,その国内市場は決して一つではなく,非常に開放されている.改革によって中国は大きく変わったが,それは新しい中国であって,その性格が世界を変えつつある.中国の復活は,そのアメリカとの相互依存関係も含めて,アジアと世界を安定化する力になる,と主張します.

他方,オーストラリアはアメリカや日本との同盟を強化して,中国による国際秩序の不安定化に対抗します.しかし,なぜオーストラリアは主要な貿易取引の相手である中国を敵視するのか? それをいつまで続けるのか? オーストラリアには二つの感情があります.

次の首相になりそうな労働党の48歳の党首Kevin Ruddは,元外交官であり,中国語を話します.彼が安倍首相に何を話すのか,ぜひ聞いてみたい,とクラークは書きます.


April 9 (Bloomberg)

Asia, Oil Nations Poke Holes in IMF Reserves

Michael R. Sesit

Guardian Unlimited Wednesday April 11, 2007

Global growth can be sustained, says IMF

Larry Elliott, economics editor

(コメント) IMFの機能は低下し続けています.IMFからの融資に頼らない外貨準備が,産油諸国やアジアで膨張しているからです.その資金を彼らは安定化基金として,また民間企業により資産運用しています.典型的には,アブダビやシンガポールがしていることです.中国政府もこの動きに従うでしょう.彼らは円建資産を増やして,日本の債券価格をさらに上昇させるかもしれません.

資産運用はその成果を競い合って,益々リスクの高い投資を増やします.IMFは彼らの金融政策や為替レート,外貨準備の運用をチェックできません.そして,彼らが引き起こす通貨危機をIMFは安定化融資できないでしょう.通貨危機の不安が広がると,彼らは資産運用を引き揚げて,自国通貨の防衛に使うでしょう.それは,当然,世界の資産市場をパニックで破壊します.

とはいえ,経常収支黒字の日本で円安が続くのはなぜでしょうか? つまり,それほど資本流出を続けるのは,なぜか? 再び,円は急騰するのか?

世界経済の成長を脅かす長期的な要因は? IMFによれば,保護主義と高齢化です.ケインズの基本的な理解によれば,世界の投資が持続することで成長は実現するのです.なるほど,中国やインドが嫌うのは保護主義であり,欧米や日本の投資家が嫌うのは高齢化です.しかし,石油価格やアメリカの住宅市場・金融システムは大丈夫でしょうか? IMFは,世界の成長がそれほど連動していない,と考えるようです.これこそ多極化した世界の福音です.今のうちに改革に励め,と.

FT April 12 2007

Wanted: a guardian of the world’s financial system

By John Grieve Smitha fellow of Robinson College, Cambridge

1944年のブレトン・ウッズ合意を更新する時期だ.IMFはもはや個別の国の経済政策を監視するだけでは十分でない.世界金融システムの守護者として活動するときだ.この二つの役割は,戦後の時期には同一視できた.なぜなら固定レートを資本規制があったから,外貨準備の危機は各国の経常赤字に起因し,その効果は波及しなかった.だからIMFは専ら個別の国の問題に対応し,緊急融資と政策監視を行った.

今日では資本が移動し,為替レートは変動する.危機は国際的に波及する傾向があり,その影響は金融市場と実物経済に及ぶ.1997年のアジア危機は衝撃的な実例だ.為替レートが急落し,資産価格や土地価格が暴落した.西側の銀行も融資について損失を出した.インドネシア,韓国,タイでは失業が2年で3倍以上になった.IMFはその権限を拡大し,世界金融・経済システムの円滑な運営により広い責任を受け持たねばならない.それは外国為替市場の全体と,資本市場の相互関係を含む.

IMFは[中央銀行間協力の]BISや[主要国政府による]金融安定フォーラムと緊密に協力して金融規制を改善するべきだ.アジア危機の事後検査は各国の過剰な借り入れに集中したが,いつでも借り入れに対しては貸し付けた側がある.この場合,それは工業化された諸国[の金融機関]だ.銀行融資についてはバーゼルUがあるけれど,ヘッジファンドやデリバティブにより金融システムは今も過剰な債務を作り出している.LTCMの瓦解を忘れて,誰もこの危険性を考えていない.

アジア危機では,各国経済の見通しに応じた短期資本の急激な逆転が為替レートを大幅に変動させた.しかし今日,最も大きな脅威は,基軸通貨,ドルが過大評価されているという確信であり,ドル暴落がウォール街の暴落と経済不況に至るという心配だ.IMFはドルの秩序ある減価を促し,主要為替レートの改善を実現する方法について,関心を集中するべきだ.

現状では,これを達成するために主要経済が何らかの合意に達するしかない.そこでIMFは重要な役割を担うだろう.中国などの諸国が国際収支の黒字を減らすよう求められる.それは長期的に,異なる地域間で,受け入れ可能な赤字と黒字のパターンを合意することであり,それによって為替レートのパターンを合意することだ.IMFの主要な任務は,そのような世界の収支戦略を形成し,それを達成する為替レートに向けて協力させることだ.

これは,変動レートに頼ることで十分な安定性を確保できるのか,何らかの管理されたシステム,もしくは複数のシステムに移行するべきではないか,という問題を提起する.現在,ユーロなどの通貨同盟か,あるいはドルやその他の主要通貨に為替レートを固定する,という極端な選択肢と,自由な変動レートという反対の極端な選択肢が流行している.われわれは,いわゆる「中間的選択肢」を考える.それは日々の変動を事前に決めたバンド内に制限し,パリティーやバンドの相対的に見て小刻みな調整を,時に応じて行うことである.そのような合意を現実に行えるのは地域的な基礎においてであり,ヨーロッパ以外でもこうしたグループ化が進むだろう.

地域グループの形成はIMFのような国際組織の機能を改善するために重要だ.現在,その意思決定は少数の大国により(その交渉で)行われる.小国や貧困国はそれから排除されていると感じる.もし地域の代表によって意思決定されるなら,こうした諸国ももっと満足するだろう.さらに,為替レート,金融規制,税問題について,参加者の数を絞る方が世界的な合意に達しやすい.それらは効果的な経済ガバナンスのために,今,必要性を増している.


WP Monday, April 9, 2007

Worse Than Apartheid?

By Robert D. Novak

(コメント) ヨルダン川西岸でイスラエルが占領地域に行っていることはアパルトヘイトよりも酷い,とパレスチナ人は思っています.キリスト教徒のパレスチナ人が多いBeit Sahour の村長Hani Hayekはセキュリティー・フェンスを示して憤慨します.彼らはわれわれを追い出そうとしている,と.実際,イスラエルはますます入植者を増やし,道路を建設しています.

自爆テロを防ぐために立てられたフェンスは,パレスチナ人の生活を悪化させています.そして,たとえば,売るための金属クズを集めようと銃撃区域に入ったパレスチナ人の男性は射殺されました.


IHT Tuesday, April 10, 2007

Getting tough with the petro-elites

By Thorsten Benner and Ricardo Soares de Oliveira

(コメント) アフリカからの石油輸出が増えているけれど,その富は腐敗したエリートに奪われている,と記事は批判します.「石油の呪い」を解くために,これまで試みられたボランタリーな「採取産業透明推進機構(EITI)」に強制力を持たせる必要があります.

まず,豊かな諸国はエネルギーの安定的な供給には採取国の安定性が必要であり,そのためには石油産業の透明性と政治的民主化が重要である,と合意することです.そして,産油諸国の腐敗したエリートたちが国外に旅行することを禁止し,彼らの富を国際的に移転することを世界的規模で監視し,積極的に消費者が圧力を行使するべきだ,と.


The Guardian Thursday April 12, 2007

Russia: Standing up to the west

LAT April 12, 2007

Tell us another one, Mr. Vice President

By Carl Levin

(コメント) もしプーチンとチェイニーがいなければ,今と違って,世界はもっと平和だった,と思う人は多いでしょう. 安全保障をめぐる重要な変数が,重要なポストを占める人物や,そのイデオロギー,発想のクセである,というのは正しいようです.


The Guardian Thursday April 12, 2007

So it went: Kurt Vonnegut was a writer for our times.

Ian Williams

(コメント) カート・ヴォネガット・Jrが亡くなりました.彼が『プレイヤー・ピアノ』という長編小説を発表したのは1952年です.55年も前です!

ヴォネガットはドイツ系移民の4世であり,ドレスデン大空襲を戦争捕虜として被災者の一人になって体験し,GEの宣伝部に勤めてから作家になります.自ら社会主義者であると公称し,ブッシュのイラク戦争に反対しました.


NYT April 13, 2007

Germany’s Export-Led Economy Finds Global Niche

By MARK LANDLER

(コメント) ドイツ経済の復活を,中世都市のイェーナで繁栄するJenoptik社の社長Alexander von Witzlebenが語ります.

彼の会社は優れた技術により中国と競争する必要はなく,ユーロ高に関係なく輸出を伸ばします.ドイツ復活の鍵は,労働市場の弾力化だった,と考えます.賃金は抑制され,失業が減ります.まだ消費を主要な成長の源泉とするまでに至っていませんが,アメリカがたとえ不況になってもドイツの成長は持続できるようです.それはドイツ企業が世界市場における隙間に適合したからです.それが工作機械や高度な工業技術です.世界では日本だけがドイツと競争できる,と.

大学や研究所の集まるイェーナはドイツのシリコン・バレーとして繁栄を続けるでしょうが,国内でも地域による景気の差は強まっており,産業再編が避けられないと言います.Jenoptik社はボーイングに星の位置から飛行進路を示す高度な測定器を供給しています.「15年前に共産主義的企業合併でボーイングの優良取引先を作ると言ったら,酔っ払いは黙れ,と言われただろう.」

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The Economist, March 31st 2007

China’s great game in Asia

Reaching for a renaissance: A special report on China and its region

(コメント) 19世紀にドイツが国際政治に登場したように,中国の台頭は国際秩序を転換するはずです.それは称賛され,期待される以上に,恐れられ,不安を広げるでしょう.中国政府は平和を重視し,繁栄を分かち合う姿勢を強調します.しかし,近隣諸国にとっては,その国境をめぐる紛争を解決できたと互いに合意してないことだけ見ても,中国の成長や軍備拡大は十分に大きな脅威です.今のうちに中国を「封じ込め」るべきだ,という強硬な意見も目立ちます.

少なくともアジアにおいて,中国はすでに秩序を転換する主役です.その繁栄を分かち合い,中国自身が膨大な需要の源であり,投資家であり,援助供与国です.マニラで開催された東アジアサミットに中国代表を迎えたフィリピンのアロヨ大統領は,オーウェル的な皮肉ではなく,「中国をわれわれのビッグ・ブラザーとして迎えることを幸せに思う」と挨拶しました.(「ビッグ・ブラザー」はオーウェルの小説『1984年』の支配者です.) 中国が公言する「善隣外交」,「スマイル・ディプロマシー」は,中国自身の重要な価値基準を侵すとき,妥協の余地なく他社を破壊するものに転じる,と今も危惧されているのです.

The Economistの記述そのものは常識的な内容です.中国は日本と違って,その成長に貿易や直接投資を大きく受け入れ,開放されたシステムに依拠している.だから決して国際システムと対立し無いだろう,と期待します.それはアジアを結びつけ,世界市場を再編・統合する,新しい積極的な力となるわけです.近隣諸国は中国に呑み込まれるのではなく,ASEANや東アジアなど,中国を地域統合に呑み込むこともできます.なんでも中国が最低価格を決める時代は終わり,国際分業と供給ラインが内陸やアジア各地に延びるでしょう.そして中国自身の需要が人民元の増価によって世界に向かいます.

中国にも不安があります.深刻な環境破壊,共産党の支配体制,国際秩序をめぐる駆け引きです.中国の成長が世界中で圧倒的に支持され,その外交姿勢が素直に歓迎されるとしたら,それは環境破壊を克服し,政治的な多元化や民主化に成功し,北朝鮮をカードに使う水準を超えて,アジアの平和と繁栄に貢献することを近隣諸国が明確に認めたときです.


The Economist, March 31st 2007

Robert Mugabe: The man behind the fist

Immigration in California: Escape from LA

Iran versus the west: Hostages to fortune

France’s presidential election: Four-way fight

NATO, Europe, and missile defences: A few interceptors, a big gap

The Australian economy: Downwonder

(コメント) ジンバブエの支配者が人間として示す強さと弱さ,その政治秩序が終わるときについて.また,移民やイラン,フランス大統領選挙,ミサイル防衛システムのNATO化,が示すいびつな?政治意識について.

経済をめぐって考察するのは,オーストラリア経済の好調さとその背景です.16年も続く成長を支えたのは,オーストラリアの資源輸出でした.中国などの需要が伸びて,オーストラリアは交易条件が改善し,ブームを享受しています.しかし,実際にはインフラや教育への投資を怠り,減税で支持され,改革の機会を消耗してきただけではないか? 資源ブームが終われば,カンガルーではなく,眠ったコアラになる・・・