IPEの果樹園2007
今週のReview
4/9-14
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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父親の要らない国家, 自由貿易論の見直し, 英兵解放, 米韓FTA, 中国の農村
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor
FT March 27 2007
The war on the traditional family
By Martin Wolf
動機付けは重要だ.もし社会が教育のない若い女性たちに未婚の母であれば報酬を与えると言うなら,彼らはそうするだろう.
これこそイギリスの政治家たちがしてきたことだ.特に,ゴードン・ブラウンの福祉国家間の中心である.彼らそれを成し遂げた.
政治家たちはそうするべきではないのだ.彼らも,その支持者も,イギリス社会の下層から結婚を廃止することが目的である,とは認めない.しかし,両親の選択をその子供たちの経済的福祉と無関係にするような試みは,必然的にそうした効果を持つ.
この政策を伝統的家族に対する「戦争」と呼んでも言い過ぎではない.この問題の著名な専門家であるPatricia Morganが最近発行した優れた本の題名だ(“The War Between the State and the Family”, Institute of Economic Affairs, 2007).
福祉国家が現れる前は,夫婦は互いを,そしてできれば大家族を,必要とした.なぜなら子供を育てて,同時に家族のために十分な収入を得ることは両立しないからだ.それは今も変わらない.変わったのは,税金でその所得を与えることだ.
Morganによれば,税の特典や還付により,また,資産チェックを要する給付により,多くの中所得の家族は,一人だけ働きに出ている場合,税制や給付で優遇された,はるかに低い総所得の家族と,非常に近い純所得になっている.また,低所得の家族は,完全に国から所得を与えられている家族と純所得がほとんど等しい.
まともな所得を得ている二人が,実質,安定した正式の夫婦になることを経済的に罰することになる.結婚を「偽る」経済的な動機は強力だ.結婚したことを偽って,未婚の母にした方が,二人の税負担は軽くなる.
なぜ福祉国家はこのような仕組みを作ったのか? 一つには,両親に関わらず,貧しい子供を救いたかったから.他にも,男性に従属する女性を解放するのは望ましい,と考えられていた.
しかし,動機付けによって行動パターンも変わってしまうのだ.
子供の貧困を救うために,その家族に補助金を与えるのは,ボロ舟を救済することでしかない.その社会的帰結は深刻だ.国が父親に代わる世界では,教育のない若い男たちが永久に思春期を味わう.父親の子供には有益だが,男にはほかに望ましい社会的役割がない.結婚していない男性は既婚者ほど働かない.それで結婚もしにくい.働く動機も少ない.
現状では,正式に結婚することを社会が選好する機会がほとんどない.しかし,結婚を差別することは止めることができる.
独身の親を優遇してはならない.給付は個人になされるべきで,家計ではない.それは課税の原理であり,福祉国家の原理でもあるべきだ.
貧困解消にだけ注目して,その長期的なコストを無視した政策は,社会にダメージを与え,貧困を増やすだろう.
FT March 29 2007
Britain still has too many poor children
The Guardian Friday March 30, 2007
The public worry more about Spanish donkeys than child poverty
Polly Toynbee
FT April 1 2007
Child poverty weakens the Anglo-American model
(コメント) 貧困問題と考えれば,福祉国家が介入するべきです.しかし家族の崩壊と考えれば,伝統的な家族の価値を守るべきだ,という意見になります.しかし,家族の崩壊を促す理由はいろいろです.
FTは,1999年にブレア首相が掲げた貧しい子供たちをなくす目標が達成できていないことを指摘し,政府が補助金よりも仕事をもたらすように求めます.それは労働党が固執してきた精神的目標です.
グローバリゼーションや技術革新が激しい社会で,それを達成することは困難です.しかし,貧しい子供を貧しい家庭として捉えたことは間違いだった,と記事は批判します.貧しい家庭に補助金をやるより,教育を改善し,雇用を増やすことに努めるべきだ,と.
Polly Toynbeeも,貧困が増加し,ジニ係数が1961年の水準に戻ってしまった,というニュースを考えます.一つはタイミング.この結果を変えることは,選挙までに間に合わない.もう一つは財源.税制によって貧困を減らすには追加の資金が要る.しかし,トライデント・ミサイルを買うではないか.最後は所得分配・不平等化と政治.貧富の格差が拡大しており,富裕層はもっと税金を支払うべきだ.
すべての子供たちを2020年までに貧困から救い出す.こうした政治目標を掲げる政党は,同じような主張をいい加減な手段で説く他の政党と比べて,労働党だけである,と.だから,UNICEFのショッキングな報告書は重要な論戦のスタートなのです.
アングロ・サクソン型経済が子供の貧困で最悪の結果を示している,というユニセフの報告を受け,FTの論説は,率直に,英米のネオリベラリズムに対する批判を展開しています.
どれほど多く生産するかではなく,その成果をどのように分配するか,について,社会民主的あるいはコーポラティスト的な政治合意を優先してきたヨーロッパ諸国の方が,国民の福祉は高いのです.ネオリベラリストが破壊するのに熱心であった社会福祉や失業手当,健康保険,などを高い税金で維持した諸国は,それらを失った国よりも,失業や犯罪,貧困,病気に苦しむことが少ないのは今や明らかです.
かつてフランクリン・ルーズベルトが1937年に述べたように,社会の進歩を富者の富の増加ではなく,貧しい者の十分な暮らしによって測るべきです.そして,その国のビジネスが雇用や富を偏ってしか提供しないなら,自由も民主主義も実現できない,と.
The Wall Street Journal, 29 March 2007
Capital Warfare
Heidi Crebo-Rediker and Douglas Rediker
FT April 1 2007
Cross-border banks require a single regulator
(コメント) 資本をめぐる戦いは,三つの次元で現れる,ということです.資本の供給,資本市場,資本の目的地(投資先).すでに,中国や産油諸国は,新しい資本供給国になりました.アメリカに彼らが投資しても,それはアメリカの利益になるはずですが,もし突然それを引き揚げたら,という不安が生じます.しかも,そのような政治論争が危機を誘発します.
特に,アメリカ以外の国に有望な投資先があれば,資本供給国は投資先を転換することを考えます.もしアメリカ政府がそれを懸念し,資本市場に規制を増やせば,それが市場としてもアメリカの地位を損なうでしょう.すでにロンドンや上海など,国際資本市場との競争が強まっています.
もう一つの問題は,銀行の決済や融資に関する監督が国境を越えて十分に行えるかどうか,です.ユーロが誕生したヨーロッパはもちろん,それに限らず,国際金融センターの銀行は世界中に向けて融資し,決済システムを支えています.
各国政府が自国の銀行を優先する以上,国際競争において不利にならないような,また,買収されて消えてしまわないような,国際規制を望みます.少なくとも次の深刻な危機が起きるまでは.
March 30 (Bloomberg)
China's Blessings Hide Potential Economic Curse
William Pesek
(コメント) アジア開発銀行ADBが中国経済の問題を集約しました.毎年,GDPの20%も投資し続けたら,経済は過剰投資の呪いを受けて,生産過剰とデフレに苦しむだろう,あるいは,インフレが起きるぞと警告します.この精神分裂病に近い中国経済を操縦する中国人民銀行総裁Zhou Xiaochuanは,ますます未知の領域で金利を動かすしかありません.
景気が過熱しても,社会的安定のために雇用を創出しなければならず,このままでは,資本流入を止めることができません.ところが中国にはインフレの前兆が見られず,むしろデフレが心配されています.こうした中国への投資と成長持続は,アジアや世界にとって祝福なのか,それとも呪いなのか?
Lee Feinstein and Michael Levi Got the stick. Now the talks IHT Friday, March 30, 2007
David B. Rivkin Jr. and Lee A. Casey Get tough on Iran LAT March 30, 2007
MAX HASTINGS Iran, the Vicious Victim NYT March 30, 2007
Dangerous test of wills in the Gulf FT March 31 2007
Niall Ferguson Iran exposes Britain's weakness LAT April 1, 2007
What does Iran want? LAT April 2, 2007
Ray Takeyh Time for D騁ente With Iran Foreign Affairs, March/April 2007
Jonathan Freedland If this crisis can be overcome, think about the negotiations that matter The Guardian Wednesday April 4, 2007
Abbas Edalat The US can learn from this example of mutual respect The Guardian Thursday April 5, 2007
Vali Nasr and Ray Takeyh What we can learn from Britain IHT Thursday, April 5, 2007
Iran's calculated end to hostages drama FT April 5 2007
(コメント) イランの革命防衛隊によるイギリス兵の拘束は解決に向かいました.英米とイランとの戦争に至る,という深刻な不安が解消されたことは良かったです.しかしその後の兵士たちの証言とその反応は,イランとの外交交渉を歓迎する雰囲気ではないようです.
国連安保理によるイランへの制裁決議,中国やロシアとの意見対立,イラクに関する周辺諸国の国際会議,中東和平,などがイギリス兵の拘束と並行していました.関係諸国は異なる問題を交渉し,取引したはずです.ブッシュ政権は,イデオロギーを主張するのではなく,国際社会の連帯を示すことができるでしょうか?
もちろん,今こそ軍事的な手段を用いて,イラン(の強硬派)を国際社会のルールに従わせるべきだ,という主張もあります.国際的な法の支配は,まず戦争の開始や終結をめぐって実効性を問われます.人質になった兵士たちを早急に救出するか,戦争を回避するため,安保理や国連事務総長による対応がイラン政府に解放を強いるべきだ,と.
こうした事件が起きた場合,政治家たちの言動は難しい.危機を煽ることは良くないが,強硬姿勢を好む国内の政敵に縛られて,妥協や取引が難しくなる.・・・ブレア首相がイラン政府の主張する領海侵犯に対する謝罪を強く拒んだのも,初期の対応を難しくしたかもしれません.イランには,人質事件として歴史的に悪名高い先例があります.
アメリカとの政治・軍事同盟や,イラク戦争によるアラブ諸国での反感が,事件の経過に影響します.それでも,アメリカと異なる交渉の知恵を,イギリスとして示すときです.核開発とイラク占領(そしてパレスチナ)という二つ(三つ)の難問に解決の見通しを与えることができるでしょうか? 他方,ブレアは奴隷貿易に関わったイギリスの歴史について謝罪と反省を述べました.
そもそも,イランによるイギリス兵の拘束は,アメリカにより進められた安保理のイラン制裁(強化)決議に対応したものであった,と指摘されています.アメリカ政府はこの事件をどのように理解し,何を学ぶのか? 中東において英米軍が長期駐留する場合,こうした事件は容易に再発するし,核開発を制裁によって放棄させることもできないでしょう.
中東世界の常識である人質交換によって,イギリス兵は13日目に生還できました.
THOMAS L. FRIEDMAN Many Plans, No News NYT March 30, 2007
Arab self-criticism FT March 30 2007
Salam Fayyad Palestinian hope held hostage LAT March 31, 2007
Martin Patience Israelis wary of Arab peace plan BBC 2007/03/31
A turn to reason in Riyadh BG April 2, 2007
Sami Abdel-Shafi Hopeless in Gaza The Guardian Wednesday April 4, 2007
(コメント) 中東では悪者だけが歴史を作る.穏健派はアラブでも,イスラエルでも,パレスチナでも,アメリカでも,事態を見守るだけだ,とFRIEDMANは嘆きます.暴力が決定する.そして,クリントンの調停案を拒否したアラファトの愚かさに言及します.
FTは,アブドラ国王によるアラブ連盟サミットでの挨拶に含まれた,厳しい自己批判に注目します.王権や独裁によってアラブ世界の改革を阻み,独自の和平案を推進できなかったのは自分たちだ,と.それは同時に,イラク,レバノン,シーア派の同盟者をイランの側に追いやった,アメリカ中東政策の失敗に憤慨したからです.アラブ連盟の和平案を支持せよ.イスラエルを認めないから交渉しない,という偽善を止めよ.和平は,敵との間で交渉し合意することだ,と.
しかし,ワッハーブ派に依拠するサウジ王族に何ができるのか?
ガザ地区に暮らしてきたBBC記者Alan Johnstonが3月12日に拉致されました.そのまま行方不明です.イスラエルの軍事占領によって,今もパレスチナ人の移動は制限されています.この町の無法さについて,身をもって批判し,報道してきたジャーナリストです.彼や,和平を願うパレスチナ人,イスラエル国民のために,イスラエル政府は妥協するべきだ,とSami Abdel-Shafiは主張します.
FT March 30 2007
Bernanke explains the Fed to the world
WP Wednesday, April 4, 2007
Priority for The Fed: Inflation
By Robert J. Samuelson
(コメント) アメリカ連銀を率いるバーナンキ議長とは,オズの魔法使いか,普通の人か? それは市場次第だろう,とSamuelsonは述べています.議会も,ウォール街も,エコノミストたちも,バーナンキの決定に干渉します.連銀の決定は全能である,という俗説は間違いです.銀行は金融システムの中心ではなくなったからです.金融政策がどのように機能し,結果的に効果を示すか,は謎です.
たとえば,雇用統計を見て,インフレの懸念はまだ残っている,と説明をすることに,どのような効果を期待するのか?
The Wall Street Journal, 30 March 2007
Pain From Free Trade Spurs Second Thoughts
David Wessel and Bob Davis
何十年も,アラン・ブラインダー(プリンストン大学教授,元連銀理事会副議長,民主党大統領候補の政策顧問)は,ほとんどのエコノミストと共に,自由貿易は,たとえ一部の労働者に不利益であっても,アメリカとその貿易相手国を豊かにする,と主張してきた.アダム・スミス以来,99%のエコノミストと同様,私は正真正銘の自由貿易論者だ,と2001年には書いた.
政治家たちはこの助言を受け入れ,ときに反対もあったが,貿易障壁は着実に取り除かれた.しかし,今,ブラインダーは助言を変えた.そして,以前理解していたよりも,今日の経済においては貿易の不利益が深刻である,というエコノミストや政策担当者の集団を励ましている.
ブラインダーは,その透徹した論述と的確な表現で強い影響力を持つが,今も関税や貿易障壁を断じて認めていない.しかし,最近,声高に主張しているのは,遠方からサービスを行える通信技術のような,新しい産業革命が起きて,4000万人ものアメリカ人が今後10年から20年で雇用を失うかもしれない,というわけだ.それは製造業で雇用されている現在の労働者の数の2倍以上である.こうした労働者が味わっている雇用不安は,「はるかに巨大な氷山のほんの先でしかない.」
財やサービス,人,金が,国境を越えて際限なく移動するのを許すようなことは,大衆の不信を招き,多くの民主党員と共和党員からも批判が起きる.こうした再考は自由貿易反対派を強め,グローバリゼーションで破壊された者をさらに支援し,激しい論争を巻き起こす.政府はグローバリゼーションを促進するべきか? あるいは,抑制するべきか?
1980年代,90年代に関税を削ったラテンアメリカの経済は不調で,もっと保護主義的な中国や東南アジアが好調であることは貿易論を悩ませる.世界的な規模で勝者と敗者の格差が拡大していることに驚く者もある.貿易問題を見直すことは,1990年代初めに多くのアメリカ人がアメリカを日本が乗っ取ってしまうと考えたとき以来の最重要問題である.
長い期間留保してきたが,批判を公表した者もある.ノーベル賞受賞者のポール・サミュエルソンも「グローバリゼーションについて経済学者が極端に単純化したモデルで満足していること」を断罪する.豊かな国の労働者が常に貿易の勝者にはならない.2004年の小論は仲間を驚かせた.クリントン政権の財務長官を務めた貿易拡大のチアリーダー,ローレンス・サマーズは,グローバリゼーションが不可避で,失業者には再訓練すればよい,と主張する人々は世界の中産階級に「水っぽいお粥」を与えるだけだ,と述べた.
IBMの元科学主任であるRalph Gomoryは,技術変化や中国・インドの台頭が,もし重要産業の多くを失えば,アメリカを敗者にする,と述べ,ハーヴァードのダニ・ロドリクは貿易交渉の焦点はグローバリゼーションに対する新しい障壁の築き方にするべきだ,という.障壁を下げるのではなく,貧しい国を助け,豊かな国が労働者を再訓練する時間を与えるために,障壁を築くのである.
ブラインダーによる雇用流出の推計は民主党に電撃を与えた.アウトソーシングやオフショアリングが非常に重要であることを知って,ヒラリー・クリントンやバラク・オバマは彼に対策を尋ねている.ブラインダーの答は,冷戦の闘士たちが共産主義に込めた軽蔑と同じ意味で,保護主義ではない,と考える.200年前のリーカードの原理は今も正しい.諸国は最善のものに焦点を絞る,すなわち「比較優位」を活かすことで,他国と貿易して豊かになる.アメリカはインドや中国と貿易することで,最終的に豊かになるし,雇用を増やし,生産性を高める.
しかし,失業やその苦痛は,貿易推進派が考える以上に大きく,破壊的だ.ブラインダーは政府に,今行われているような失業者への数ヶ月の再訓練よりも,もっと多くの支援を要求する.教育システムや税制を変えて,労働者が外国で働くことや,アメリカ国内で雇用をもたらす企業を奨励することを求める.
彼を批判する者は,そのような意見を少数派であると言い,貿易の利益はもっと大きいと主張する.コロンビア大学のバグワティは,貿易による雇用流出の推計について,5月にハーヴァードでブラインダーと討論した.製薬,法律,会計のような高度な熟練職では,「明らかに,失われるより得るほうが多い.」
ブラインダーは,それを誤解している,という.もとの産業革命では,農場から工場への移動により,明らかに生活水準が向上した.しかし激しい変化が起きた.「どのように,どこで暮らすか.どのように子供を教育し,ビジネスを組織し,政府の形態や働きをどうするか.」 今日の光ファイバーによりアメリカを脅かしている雇用流出も,同じような変化の始まりであり,アメリカ社会はそれに対応しなければならない,と.
ブラインダーが挙げた,海外に移転される恐れの高い分野とは,Computer programmers ;Data entry keyers ;Actuaries ;Film and video editors ;Mathematicians ;Medical transcriptionists ;Interpreters and translators ;Economists ;Graphic designers ;Bookkeeping, accounting and auditing clerks ;Microbiologists ;Financial analysts である.
LAT April 1, 2007
Shelters for Dickens, Shakespeare and the homeless
By Chip Ward
(コメント) 朝6時にシェルターを追い出されたホームレスについて,次に彼らが行くとしたら,図書館のような公共施設しかありません.ファストフード店やショッピングモール,ホテルのロビー,などは彼らを拒みます.ホームレスもいろいろで,図書館の彼らは長期的なホームレスではなく,一時的な性質のものだ,と書いてあります.彼らの多くは精神的な病気を患っています.しかし,病院も彼らを好みません.施設も資金も足りません.
アメリカという,超個人主義の文明がもたらす病でもあります.発明家,企業家,開拓者,芸術家,・・・ 他方で,コミュニティーは分裂し,崩壊します.
NYT April 2, 2007
Distract and Disenfranchise
By PAUL KRUGMAN
ブッシュ政権の権力濫用について,私は理論を考えた.権力濫用は拡大する不平等によって起きた.
1980年,ロナルド・レーガンが大統領になったとき,保守派のアイデアは多くの有権者を捉えた.その頃,われわれは真に中産階級の国であった.少なくとも白人有権者にとって,極端な不平等や社会的不正義は過去のものであり,リベラリズムに元来の魅力を発揮させる状態は,不幸な歴史のように見えた.だから,多くの有権者は容易に信じたのだ.大きな政府はあなた達の敵である.あなたたちは課税され,他の人々のための社会プログラムに支出される,と.
しかし,その後,再び深刻な不平等社会が現れた.所得の中央値は1980年以来わずか17%上昇しただけである.しかし,人口の0.1%という最富裕層の所得は4倍になった.富者と中産階級との格差は1920年代と同じくらいに広がり,そのような中で当時の政治家たちは連携し,ニュー・ディールを行った.
有権者たちは社会の変化を理解している.所得分配の表を見なくても,富裕層がかつての泥棒貴族よりも大きな邸宅を建てている.労働統計を見なくても,賃金がどうなっているか分かるはずだ.ある調査では,59%の労働者が20年もしくは30年前よりも,今の方がまともな暮らしを支える収入を得にくくなった,と信じている.
拡大する所得格差に関する認識が,再び政治の争点となったのだ.「われわれのダイナミックな経済が労働者たちを置き去りにしたということについて心配する市民がいる」と,ブッシュ大統領も認めた.
現在,共和党にはそれに対応する政策がない.なぜなら彼らの強硬派がそれを許さないから.共和党の大統領候補たちが,揃って,減税と民営化を要求する供給側の圧力団体the Club for Growthに表敬訪問したのは,そのジレンマを示す.
時代遅れのイデオロギーに問題を任せる共和党が,どうやって選挙に勝つのか?
その答は,政治の関心を分散し,権利を剥奪することだった.
9・11のテロ攻撃は,大規模な,共和党にとって幸運な,関心分散であった.そのころまでに国民はブッシュ氏が2000年の選挙で演じたような穏健派ではないと気づき,その政権にますます不満を感じていた.関心を分散する機会はさらに多くあった.諸問題で民主党と論争するより,共和党は民主党をテロに対する軟弱な姿勢で非難した.2004年の民主党大会が行われた直後には,古臭い,怪しげな情報によってテロの警戒レベルを高めた.
関心分散はその程度であった.もう一つの手段,権利剥奪が重要だ.不平等を改善するために何かしてくれる政党に投票する貧しい人々を,投票所から引き離したのだ.
200年フロリダの「重罪犯追放」を思い出す.多くの有権者が投票のための登録を拒まれた.それはブッシュ氏を大統領にするためだった.司法省の政治化も大いにこれと関係する.不正投票の嫌疑を受けて辞任した多くの判事が公民権運動の関係であった.
良いニュースもある.共和党の権力濫用をすべて使っても,2006年の選挙では彼らが敗北した.2008年は共和党にとって一層苦しい選挙だろう.なぜなら民主党は,クリントン政権が豊かな人々や企業に,自分たちはポピュリストではない,と確信させたからだ.時代が変化したことを民主党は理解している.
共和党が減税に忠誠をささげていたとき,民主党は国民全体への健康保険制度を実現すると約束した.共和党がこれに応えるとは思えない.
WP Sunday, April 1, 2007
The War of the Words
By Peter Beinart
(コメント) ブッシュ政権が終われば,「テロとの戦争」は終わる.当然です.アメリカは将来の9・11のようなテロ攻撃に備えて情報収集や警備を強化するでしょう.しかし,「テロリスト」であると非難して交渉から排除し,軍事的に殲滅する,まして「テロ」を敵として「戦争」を唱え,他国に侵攻することは,ブッシュ政権だけで終わります.
NYT April 1, 2007
Japan’s Textbooks Reflect Revised History
By NORIMITSU ONISHI
CSM April 02, 2007
Beyond apology, moral clarity
By Gi-Wook Shin
FT April 4 2007
Wen in war shrine appeal to Abe
By Mure Dickie in Beijing
(コメント) 安倍首相の政治信条は深刻な波紋を広げています.それは日本とアメリカや中国との関係を変えてしまいました.安倍政権の最も重要な,ただしマイナスの,外交政策となったわけです.単に方針転換を表明するだけでなく,支持者を説得して新しい合意を形成するなら,振り返って前進をもたらす転機だった,と言えるわけです.
FT April 2 2007
US and S Korea in landmark trade deal
By Anna Fifield in Seoul and Eoin Callan in Washington
NYT April 3, 2007
U.S. and South Korea in Landmark Trade Deal
By CHOE SANG-HUN
Asia Times Online, Apr 3, 2007
All fired up over Korea-US free trade
By Donald Kirk
IHT Tuesday, April 3, 2007
FTA is not the way
Philip Bowring
(コメント) FTが要約する米韓FTAのポイントは次のようになります.
1.3年以内に,商品から約94%の関税を撤廃する.
2.小型車(3000cc以下)の関税はただちに全廃し,大型車も3年以内の全廃する.
3.アメリカは繊維製品に対する関税を輸入額で61%に対して撤廃する.ただし,韓国の主要な輸出品を原産国規制から除く.
4.北朝鮮との「加工区」の扱いを米韓の委員会で検討する.
5.コメはFTAから除外する.
6.牛肉への関税は15年かけて撤廃する.アメリカはただちに輸入を再開する.
7.韓国は,オレンジその他の農産物に対する関税を維持する.
8.教育と医療に関して韓国は市場開放しない.会計,放送,法律に関しては漸次開放する.
他にも,製薬,投資家保護,紛争処理,について合意されたようです.
これはFTAというより,二国間貿易交渉であり,特恵的取り決め,です.つまり,自由貿易とは反対のものです.
しかしFTの記事は,この合意によりアジア諸国にFTAへの競争が起こり,ブッシュ政権の通商政策は自信を取り戻して,自由貿易への支持が強まる,と期待しています.これをアメリカ議会が承認するかどうか,まだ分かりません.業界や党派によって意見は分かれているようです.
NYTのCHOE SANG-HUNは,輸出による成長が行き詰まっている韓国経済にも,ファスト・トラックの期限が切れるブッシュ政権にも,この合意は必要だった,と指摘します.アメリカ農家と牧場にとって大きな利益になるでしょう.韓国の労働者や農民は街に出て抗議を続けています.双方の政府が,最も政治的に難しい問題,コメと牛肉について,妥協したことで合意できました.
両国の消費者が最大の勝者である,と記事は書きます.しかし,たとえば,農産物輸入が急増し,反米色で支持されていた韓国政府が混乱するかもしれない,と指摘します.
Donald Kirkによれば,それこそが最大の政治的成果なのです.アメリカと韓国の経済的結びつきが強められ,ノムヒョン大統領はアメリカから距離を取る政策を諦めるしかない.アメリカのビジネス界も韓国の保守派も,この隠れた理由で,FTAを歓迎します.韓国では,ある男性による抗議の焼身自殺が阻まれました.
Philip Bowringは,両国にとって短期的な利益があるとしても,長期的にはどうか? と問います.特に,WTOが成功することに比べて,この合意には大きな意味があるのか?
これが政治的な取引による内容であっても,韓国が主張してきたような,自動車,コンピューター,船を世界中で自由に売り,他方,国内農家にはEUのように十分な所得を保障する,というものではありません.韓国議会が承認することは難しいでしょう.
米韓FTAはNAFTAよりも各産業にとって防衛的な合意であり,世界の農産物貿易にも改革をもたらしません.
FT April 3 2007
A Korean-American strand enters trade’s spaghetti bowl
By Martin Wolf
(コメント) 今年はコーデル・ハルがその設立に尽くしたGATTの誕生60周年であるが,米韓FTAがGATTの無差別原則と正反対のものである,とWolfは主張します.
なぜ,たとえ二国間で特定の商品についてだけでも,自由化することが望ましいと支持しないのか? それは,こうした取り組みが増えることは,世界の貿易自由化を損なう恐れがあるからです.バグワティが主張するように,FTAは特恵的な取り決めであり,差別的なのです.
FTAは,一つには,原産国の判定や特恵の適用に煩雑な行政手続きを必要とし,また一つには,将来のFTAによってビジネス環境が変わる.こうしたコストや不確実さは世界貿易を阻害し,バグワティが名づけたように「スパゲッティ・ボウル」現象をもたらすだろう,と.
政治的にも,企業の市場アクセスが,商品の競争力ではなく,その国の政治的交渉力に依存するようになり,また,大国はFTAを張り巡らして互いに競争し,閉鎖的な貿易ブロックを作るようになるでしょう.こうした「パワー(大国)による貿易ブロック」は,GATTの創設者たちが望んだ世界とかけ離れています.
ただしWolfは,実際に,WTOによる自由化交渉がまとまらないのであれば,地域的な自由化を目指すことも仕方ない,と考えます.それでも,世界貿易を分裂させる懸念は強いのです.FTAを望ましいと想うなら,その国は複雑に入り組んだ世界を抜け出して,なぜWTOに向かうだろう,と.
FT April 3 2007
A tangled trade web
The Wall Street Journal, 3 April 2007
As Globalization’s Benefits Grow, So Do Its Skeptics
David Wessel
Asia Times Online, Apr 4, 2007
US readies for Korean business
By Emad Mekay
CSM April 04, 2007
Trading up with South Korea
(コメント) David Wesselの論説は的確です.自由貿易は常に支持されてきた目標ではない,と.それが支持されたのは,たとえば戦争を抑制することにつながるから,また冷戦においてソ連に勝つため,でした.さらに,クリントン政権がNAFTAを支持する理由としては,メキシコに親米的な体制を築くことでした.
今や,こうした政治的な支持は期待できないのです.貿易は中国が台頭する政治的な基盤となっており,9・11の後でアメリカに広がる排外主義は自由貿易にも敵対します.サマーズやブラインダーのような主流派の経済学者が自由貿易を無条件に支持しなくなったことも重要です.
自由貿易が長期的に世界を豊かにすることを否定しているのではなく,その利益の分配が問題なのです.もしアメリカの労働者が必ず勝者に入るのでなければ,これ以上のグローバリゼーションを支持する理由はないのです.
他方,CSMなどが指摘するように,アメリカとアジア諸国が拡大FTAのような形でつながるのであれば,アメリカやアジア企業の繁栄に貢献するかもしれません.
CSM April 02, 2007
Bush steps up to China
April 2 (Bloomberg)
China Has $1 Trillion to Fight a U.S. Trade War
Mark Gilbert
WP Monday, April 2, 2007
Free Trade: Pause or Fast-Forward?
By Sebastian Mallaby
(コメント) 輸入への支配は中国共産党の力にもなっています.貿易自由化はそれを奪うでしょう.ブッシュ政権は,昨年のポールソン財務長官らによる米中経済会談は成果が乏しく,最近の議会における対中保護主義の過熱に対抗して,中国を市場経済として認め,国際的な自由化のルールに従うよう求める方針に転換します.
しかし,何よりも中国のドル準備を安定的に維持してもらわなければなりません.アメリカの保護主義に対抗する巨大な棒を,中国政府は握っているのです.そして,アジアにおけるエネルギー危機や台湾海峡が懸念されます.アメリカもまた自由貿易の楽園とは程遠いのです.
WTOが農業補助金を削るとしたら,アメリカの利益としても歓迎するべきです.しかし,Sebastian Mallabyは,自由貿易からの「戦略的な後退」に反対します.保護主義は世界中でアメリカに対する訴訟を招き,WTOの内政干渉に憤慨する議会は完全な保護主義に転換するでしょう.実際,1980年代の議会における保護主義に反応して,レーガン政権は日本叩きを繰り返し,日米同盟に亀裂を生むまでに至った,と.
April 4 (Bloomberg)
U.S. Pockets Aren't Deep Enough to Win Yuan Row
William Pesek
(コメント) 人民元切り上げを求めて関税で圧力をかけるアメリカ議会と中国との対立は,昨年から人民元の漸進的な増価を認めた後,今でも続いています.しかし,日本やインドにも不満を示す議会ですが,William Pesekは,アメリカ政府に外貨準備がないこと,を指摘します.
もちろんアメリカは自国の通貨が国際決済に使えるという特権を持っています.他方(それゆえ)外貨準備は非常に少ないのです.アメリカの外貨準備は410億ドルです.これに比べて,中国は1兆700億ドル,日本8840億ドル,マレーシア820億ドル,ナイジェリア420億ドル,インドネシア460億ドル,ポーランド490億ドル,です.
それは金融市場・システムが非常に優れているからなのか? 単なる自己満足か? あるいは,途方もない傲慢さか? 将来,巨額の経常赤字や財政赤字をドルで賄うことに対して,海外の投資家の信用が失われる際に,外貨準備を必要とするかもしれません.
一方では,「再建ブレトン・ウッズ体制」として,ドルの地位が長期的に維持されると考えられます.他方,テロや戦争,鳥インフルエンザ,国際収支不均衡,円キャリー・トレード,中国経済の過熱,など多くのリスクがあります.アジア諸国がドル準備を増やしたことも,バブルの一種であった,と指摘します.その崩壊が迫っています.
Deutsche Welle, 4 April 2007
Turning Globalization on Its Head
Asia Times Online, Apr 5, 2007
Chinese heat is on US sweatshop lobby
By Brendan Smith, Tim Costello, and Jeremy Brecher
LAT April 5, 2007
Chinese tariff trouble
(コメント) インドからのハイテク投資でドイツの雇用が増えます.米中の活動家や法律化が協力して,苦汗工場を規制することができるでしょうか?
アメリカは中国の紙に関税を課しました.世界最大の市場が,世界最速の成長国に,貿易戦争を宣言します.ただし,どちらかが勝利することはできない戦争です.
Common Defense NYT April 2, 2007
Charles Gati and Heather Conley Backsliding in Central Europe IHT Tuesday, April 3, 2007
Britain opts for new nukes The Japan Times: Tuesday, April 3, 2007
Vive l'immigrant? CSM April 03, 2007
MELVYN KRAUSS Good reasons to be bullish about the Europe Union The Japan Times: Wednesday, April 4, 2007
(コメント) 「ミサイル防衛システムは良くない考えだ.その技術は不確かで,イランと北朝鮮の脅威はまだ外交的に対処できる.ロシアは繰り返しそれが問題となることを警告している.防衛システムはアメリカによって,アメリカ(とヨーロッパ)のために考えられた.それゆえ,アメリカの傲慢さや利己主義を強く意識させる.伝統的な外交を軽蔑してきたブッシュ政権は,長期に及ぶ同盟諸国とも,ライバルのロシアとも相談せず,そうした認識を強めてしまった.」
他にも,ポーランドなど,中欧諸国の政治が保守化と混乱を深めていること.イギリスは独自の核武装について労働党内部や国論が分裂していること.ヨーロッパ諸国の中で,移民問題が今度のフランス大統領選挙に与える影響は重大です.旧植民地からフランス国籍を持って入国した移民が約350万人,非合法移民も20万〜40万人います.
MELVYN KRAUSSは,特にドイツを見て,EUの成果を強調します.
FT April 3 2007
Agribusiness may reap profits and problems for China
By Geoff Dyer
(コメント) 中国の農民,農業,農村をめぐる政治問題を,アグリビジネスによる再編成が加速しています.都市における急速なスーパーマーケット,ショッピングモールの増加に対応して,中国にもアグリビジネスが一気に進出しました.大規模な農場と近代的農耕は生産性を高めますが,それは従来の小規模な農家を破綻させます.
マクドナルドのポテトに使用されるジャガイモは,アメリカ企業の支援を受けた農家が供給します.農耕を馬からトラクターに換えることは,効率的に経営できる農場規模を拡大しました.あるいは,上海周辺で「有機の」豚肉を供給する農場も現れました.野菜など,労働集約的な農産物では輸出も増えている,と言います.土地所有をめぐる抗争と重なって,中国の経済格差,社会不安,政治対立に予測できない激しい影響をもたらすでしょう.
膨大な農家の海に広がる,パッチワークのようなアグリビジネスは,当然,中国の政治・社会に深刻な影響を与えています.大量の失業者と,都市への移住が増えています.農村における土地の売買を認め,地方政府による恣意的な介入・土地収用を止めさせ,農民に十分な補償を支払うべきだ,とDyerは主張します.
そして,農民たち自身が農業共同体を組織し,その声を政治的に反映させることです.
Asia Times Online, Apr 4, 2007
It's not China's markets - it's the model
By Scott B MacDonald
WP Wednesday, April 4, 2007
In Fear Of Chinese Democracy
By Harold Meyerson
(コメント) MacDonaldは,中国経済の成功モデルが修正を求められている,という周知の議論を展開します.
Meyersonが論じるのは,民主主義の「スターバックス・ルール」です.「自由貿易の使途によれば,権威主義体制に,一旦,消費者の選択が持ち込まれれば,民主主義がそれに続くだろう.これをスターバックス・ルールと呼ぶ.つまり上海周辺に十分な数のスターバックスが開店すれば,共産党の支配体制は,紅茶に浸けたビスケットのように,崩れてしまう.」
ところが,上海にはすでに多くのスターバックスが開店しています.民主主義も,労働者の権利も,守られていません.
BG April 4, 2007
Cities are the answer
By Douglas Foy and Robert Healy
(コメント) 都市は嫌われています.しかし都市を変えることで,環境問題を解決できる,と主張します.エネルギー,水,土地,交通手段の効率的・民主的・平等な利用を実現し,高齢化,オープン・スペース,地球温暖化,にも都市なら取り組めます.
FT April 5 2007
Lex: IMF global outlook
YaleGlobal, 5 April 2007
Stock Market Hiccups No Cause for Worry
Manu Bhaskaran
(コメント) アメリカ経済の世界に占める重要性は低下していないようです.また,アメリカの景気減速があっても,もし各国が十分な弾力性を維持すれば,大きな不況には結びつかない,とIMFは楽観します.
インドや中国の景気変動は大きいでしょう.しかし,長期的には成長の能力が十分にあるからです.Bhaskaranは,それを「精神革命」と呼びます.それ以前の世代は,中国でもインドでも,低い成長で生きることを受け入れていました.しかし,もっと高い成長が可能であること,企業家としてもっと豊かになれることを知った今では,その成長を可能にする改革を受け入れ,要求します.長い間蓄積された成長の可能性が多くの分野で急速に利用され,経済が複雑になれば,新しい需要と企業が生まれます.
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The Economist, March 24th 2007
Human rights: Stand up for your rights
Iraq: Mugged by reality
Lexington: American identity
Palestine: The squeeze continues
Executive salaries: The politics of pay
America’s housing market: Cracks in the facade
(コメント) アムネスティ・インターナショナルが,人権だけでなく,さまざまな権利や要求を監視する方針に転換したことは間違いか? イラクの悲惨な現状がなぜもたらされたか,要約しています.アメリカの移民政策は移民の積極的な役割を認め,その貢献を称えるべきではないか?
ハマスが多数派となったパレスチナ自治政府へのアメリカとイスラエルの制裁はいつまで続くのか? パレスチナ経済の破壊は著しく,まるで財政削減による強行の実験や,輸送コスト上昇・治安悪化・占領と通行止めによる市場分断・分業破壊の実験,を試みているようです.かつてS.ストレンジが「非決定の決定」「構造的権力」と読んだ問題を思い出します.
アメリカ企業の重役たちは,その給与を公開するようにSECや監査委員会から求められます.また,住宅市場のバブルがはじけ,スブプライム・モーゲージ市場が沈没しつつあります.いずれの問題も,民主党主導のアメリカ議会が政治的に取り上げる材料となり,それゆえ,市場が崩壊するよりも,過剰な介入・救済を求める声にThe Economistは警戒します.