IPEの果樹園2007

今週のReview

4/2-7

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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スコットランド独立, アメリカとロシアの協力, チェイニーはイランのスパイ, EU誕生50周年100周年, 日本と安倍政権, 米中国交回復と中東和平, フランスを改革できる, 新しい戦争ゲーム, グローバリゼーション対策

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


BG March 20, 2007

Scotland's 300-year itch

By H.D.S. Greenway

(コメント) 1707年に,スコットランド議会はイギリスとの連邦制に賛成し,グレイト・ブリテンが誕生しました.当時も,この条約締結は非常に不人気であった,ということです.カフェの婦人トイレで最終文書が書かれた,という話があるほど.

何より,英連邦の成立はスコットランド自体を近代化し,開放的にしたのです.スコットランドは革新や才能を供給し,イングランドとともに産業革命や帝国の建設に取り組みました.トニー・ブレアはエジンバラに生まれ,次期首相となるだろうゴードン・ブラウンもスコットランド人です.

しかし,第二次世界大戦において頂点に達した両国の協力は,その後,スコットランドが衰え,イングランドに富が集まることで反転しました.スコットランド・ナショナリズムが生まれたのです.

独立を支持する感情は,かつて連邦を支持した感情と同じです.現状打破.

独立派が求める革命は,過去のような断絶ではなく,EUの中で,目に見えないような静かな革命を意味します.スコットランドは,イギリスの行政区(あるいは救貧院)ではなく,再び自分たちの運命を掌握し,アイルランドのように,イギリスを越える繁栄を実現したいのです.


IHT Tuesday, March 20, 2007

The icon and the eagle

Henry A. Kissinger

アメリカとロシアが協力することで多くの利益があり,対立は余りにも多くを失う.たとえば,ロシアとの協力関係を維持しなければ,アメリカ単独で核の拡散を防げないし,ロシアが国境線を問題にすれば,周辺諸国の安定は失われる.ともに,イスラム原理主義という共通の敵に直面している.

プーチンとブッシュの両大統領は個人的にも信頼関係を築いたが,彼らの任期が終わりまでに,長期的な協力関係の障害を取り除くことが重要だ.

両国の関係悪化は二つの問題に集約できる.アメリカがロシアを嫌い始めた.つまり,その国内問題やイランへの対応,旧ソ連から独立した諸国への対応,などについて失望がある.他方,ロシアもアメリカに不満がある.アメリカはロシアの事情を考慮せず,尊重もしない.十分に相談することもなく危機を招き,ロシアの国内事情として受け入れられないような介入を行う.

しかし,それをある程度は認めるとしても,両国が和解するには歴史的な経験の大きな相違を理解しなければならない.19世紀の,一見,良く似た両国の歴史は,フロンティアの拡大に費やされた.しかしそこには本質的な違いがあり,アメリカは開拓に参加した個人の財産となった.他方,ロシアは軍隊を利用し,住民たちを帝国に飲み込んだ.セント・ペテルスブルクは新しい占領地に何千もの住民を強制移住して建設した.

両国とも,領土の広大さと開放性は例外主義を育てた.アメリカでは個人主義が強調され,ロシアでは国民の神秘的な使命が強調された.アメリカの外交は,道義的な使命を除けば,基本的に孤立主義であった.ロシアは,ピーター大帝からゴルバチョフまで,中欧,太平洋,中央アジアへと,軍事的な拡大を目指した.

第二次大戦まで,ロシアとアメリカが世界的な規模で対峙することはなかった.アメリカは,ロシアの長距離ミサイルと9・11までは,二つの海に守られていた.他方,ロシアには自然の境界がなく,特に西側から,常に脅かされた.アメリカはその政治的価値や制度が拡大することを基準や平和と見なしたが,ロシアは安全のための緩衝地帯を求めた.

こうした対比は,近年の心理的な衝突の理由を示唆する.アメリカにとって,ソ連の崩壊は民主的な価値の証明であった.他方,多くのロシア人にとって,たとえソ連に反対した人々でも,帝国の崩壊はロシアのアイデンティティーを失う危機であった.1990年代を,アメリカ人は,改革と進歩の時代と考える.しかし,ロシア人には,屈辱と腐敗,民族の衰退を意味した.プーチンの体制を権威主義の復活と批判するが,その支持者にすれば,国際的な地位の回復が優先されるのだ.

プーチンはピーター大帝やエカテリーナの伝統を継承しており,ロシアを大国に引き上げた.歴史的な地位から見て,ロシアはアメリカにとって最も望ましい仲間である.アジアには中国がおり,ヨーロッパは分裂している.戦略的に見て,アメリカとロシアが互いを必要とする.ただし,両国がその態度を調整するなら.アメリカは説教を止め,ロシアは軍事的威嚇を止めることだ.そうすれば,核拡散防止や,イラン問題,ロシアの「近隣諸国」について,NATOを拡大するような発想ではなく,相互に理解し,協力できる.

ただし,アメリカ国民がロシア人と同様に,それ自身の歴史を共有していることを,ロシアの指導者は知るべきだ.その意味で,アメリカ人はいつも,他の社会を人権という観点から評価する.

あからさまな圧力は問題を増やす.ロシアの国内事情は,官僚支配と,歴史的な過去と,ソビエトの支配イデオロギーが崩壊した後のチャンス,が複合して生じた.西側の民主体制がすぐに成立することはないだろう.プーチンのロシアは,グローバル化した世界の要請とソビエトの閉鎖体制がぶつかった移行の衝撃がもたらした.それは歴史的な権威主義体制と,中央集権的な官僚国家,統一しつつあるヨーロッパと友好的なアメリカが協調関係の下で提示する機会,を併せ持つ.

アメリカの政策目標は,ロシアが民主的な基準を満たすように励ますことだ.しかしその進展は,国内的な要因で決まる.ロシアの政治的進化を強制する試みは,激しい反動を招くだろう.

IHT Tuesday, March 20, 2007

In Europe, the twain are yet to meet

Arnout Brouwers

The Daily Star, 20 March 2007

Caught in the Vise of Russia’s Illiberal “Liberal Empire”

Vladimer Papava

(コメント) ミサイル防衛構想は,ロシアを刺激し,それゆえ,EU内部の分裂と対立を刺激しました.ヨーロッパは,アメリカとの関係,ロシアとの関係を考えています.石油と安全保障は,日本の同様,ヨーロッパの生命線です.

ロシアは石油を輸出し,アメリカはイデオロギーを輸出します.旧ソ連圏から独立した諸国の政治に干渉することを,ロシアは「リベラル・エンパイアー」と呼びそうです.しかし,イスラエルや旧ユーゴのように,ロシア人が支配する村や町をロシアに組み入れようとするのであれば,その展望は暗いでしょう.


The Japan Times: Tuesday, March 20, 2007

China is sidelined and upset

By DAVID WALL

(コメント) なぜ温家宝は人民代表大会で,共産党の指導と軍備増強を主張したのか? 中国政府は,北朝鮮の非核化をめぐる六カ国協議を北京で主催したにもかかわらず,ブッシュ政権の交渉拒否によって参加諸国がバラバラに対立する状態を続けることを知りました.アメリカ政府の方針転換を待つしかなく,そのような事態を受け入れがたいと確信したでしょう.


NYT March 20, 2007

Iran’s Operative in the White House

By NICHOLAS D. KRISTOF

FT March 25 2007

Why little chance is left for Bush presidency

By Edward Luce in Washington

(コメント) KRISTOFは,アメリカ国民が苦しみを増すばかりの,現政権による失敗をどう理解すればよいか,その迷う気持ちを代弁します.つまり,チェイニーはイランのスパイだった,と.政府のやったことといえば,まずイランの東の不安,アフガニスタのタリバン政権を取り除き,さらにイランの一層深刻な西の脅威,サダム・フセインを追放して,バース党を解体したことです.さらに,・・・ 同じ意味で,北朝鮮や,アルカイダのスパイでもあるでしょう!

もちろん今の問題は,アメリカの外交と政府の考え方を正しい方向に戻すことです.ブッシュ政権の間違いは明白です.すなわち,「悪」と決め付けた相手とは交渉しない.問題解決のために軍事力を好んで行使する.同盟諸国を侮辱する.法律や倫理規範を無視する.特に,中東やイスラムに関わるものを拘留し,拷問まで許した.彼らは,200年に及ぶ外国のスパイの誰よりも,アメリカの国益を損なったのです

ブッシュ大統領は,まだ22ヶ月の任期を残して,レイム・ダックの状態に苦しんでいます.それはこれまでの大統領よりさらに悪い,とEdward Luceは懸念します.共和党は中間選挙で敗北し,次の大統領選挙にも現政権とまったく無関係な候補を求めています.ブッシュ政権のスキャンダルが続き,しかも大統領は幹部たちが議会の質問に答えることを強く拒んでいます.こうした対応は,レーガン政権の今トラ疑惑に比べても,議会との関係を著しく損なうでしょう.イラクの収拾策についても,ベイカー=ハミルトンの報告書を生かせず,民主党との協力は求めるより,敵対する姿勢に傾いています.そしてブッシュ大統領や側近のカール・ローブは,議会や国民よりも「歴史の審判」を主張します.

多くのネオコン幹部が政権を離れましたが,チェイニーは残り,今もライスの国務省と暗闘を続けています.残された数ヶ月でイラク問題を解決することはできないと自覚しています.しかし,ブッシュとチェイニーは,まだイラン問題を解決する意図を示しています.レイム・ダックだからこそ?


Kjetil Wiedswang Happy to be outside the EU club BBC 2007/03/20

Pascal Lamy Europe’s future? FT March 20 2007

Stephen Wall Vision and leadership are lacking today FT March 20 2007

Timothy Garton Ash Europe needs a bold new story - and to invent new ways to tell it The Guardian Thursday March 22, 2007

Stanley Kober Europe's approaching train wreck IHT Thursday, March 22, 2007

George Parker Europe’s child may look sickly at 50 but it lives and prospers FT March 22 2007

A collective approach to security serves European interests FT March 22 2007

Jean-Pierre Lehmann Can Europe Age Gracefully? ? Part II YaleGlobal, 23 March 2007

M K Bhadrakumar A new dividing line in Europe Asia Times Online, Mar 24, 2007

(コメント) EUに加盟していないスイスとノルウェー,リヒテンシュタイン,アイスランドが,ローマ条約の締結50周年を記念するパーティーに水を差します.ノルウェーはすでに4度も加盟を検討し,最後の1994年には長い交渉を経て合意した条約を国民投票が否決しました.それぞれの国には,加盟しない国民感情や事情があります.

WTO事務総長で,元EU通商代表のPascal Lamyは,1950年代がどれほど遠いかを指摘します.それは,ハンガリー動乱,スエズ危機の時代であり,ドイツを占領した連合諸国は対立を深めていました.その後もEUの流れは一様でなく,急流や逆流もあった,と巧みに整理します.外からは平和的な民主主義による問題解決をガバナンスのモデルとして賞賛されながら,EU市民がブラッセルの官庁街を嫌っているのは皮肉なことです.今後も,ブラッセルの曇り空だけでなく,EU全体で流れを深め,広げ,必要ならダムを造れ,と市民たちを励まします.

Timothy Garton Ashは,ポーランドの映画監督Krzysztof ZanussiがEUを50歳の人にたとえて,心理学者の診断を受けよ,と勧めたことに同意します.客観的な状況が彼の主観的な感覚と一致しなくなると,人はストレスを感じます.彼女(EU)は成功し,友人たちや家族からも愛されますが,自分の状態が悪く,不安を感じています.つまり,認識を改めるセラピーが必要なのです.しかし,5億の住民が?

Ashは,ベルリンに集まる政治指導者たちに問います.EU市民が最も重視する「自由」という価値をEUが実現してきたと,指導者たちは市民に説得できていない.EUを語る公共圏がなく,共通の新聞や,共通の政治舞台がない.新しいヨーロッパの物語を多くの言語に転換する仕事を重視するべきです.

しかし,コソボの今後のあり方に関する合意と関与についても,EUは限界を示しています.

JAN-WERNER MULLER Despite vision deficit, Europe survives The Japan Times: Sunday, March 25, 2007

Jim Hoagland Test Time For Europe's Fragile Unity WP Sunday, March 25, 2007; B07

Europe at 50: It's harder to look forward The Guardian Monday March 26, 2007

H.D. S. Greenway Tribute to a uniter of Europe BG March 27, 2007

Anne Applebaum Europe's Birthday Blahs WP Tuesday, March 27, 2007

Jean Pisani-Ferry In search of a balanced view of the European Bank FT March 28 2007

F. Stephen Larrabee and David E. Mosher Missile defense: Avoiding a crisis in Europe IHT Thursday, March 29, 2007

Bertrand Benoit Why Germany is again the engine of Europe FT March 29 2007

(コメント) JAN-WERNER MULLERは,EUのさまざまな自己認識を示しています.連邦主義や社会的市場モデル,超国家的な多様性を加味した民主主義,多文化主義,コモンウェルス,など.

他方,Jim Hoaglandのように,アメリカの評論の多くは常に悲観的です.ローマ,ナポレオン,ヒトラーのように軍事力によるのではなく,フランスのビジネスマンが自己利益を尊重した試みはヨーロッパ統一を目指しました.ジャン・モネです.しかし,さまざまな軍事的挑戦の恐れが消えたわけではありません.

Jean Pisani-Ferryは,フランス大統領選挙においてECBを非難するポピュリスト的論調を心配します.フランス人が,これほど容易に,石に刻まれたはずのECBの権限や独立性を問うのであれば,ドイツ人は大いに不満を感じるでしょう.しかし実際に,政府と中央銀行の関係は,その経験によってさまざまです.問題は,ECBの場合,それが依拠する統一国家はないということです.加盟諸国が異なった意見を述べれば,EUの金融政策が混乱します.それは自分たちを傷つける行為なのです.そしてミサイル防衛網も,混乱の種を撒いています.


FT March 20 2007

In this brave new world, Chindia’s uneven rise continues

By Martin Wolf

FT March 28 2007

A ringside view of history in the making

By Guy de Jonquieres

(コメント) 世界人口の38%を占める中国とインドが,古代文明とおびただしい貧困,近年の急成長という類似点を持つことを,インドの政治家Jairam Ramesh は強調して,“Chindia”と呼びました.Martin Wolfは,その成長を支える相違点に注目します.1978-2004年の両国に関してBrookings Institutionの出した Barry Bosworth and Susan Collins の研究によれば,その成果は明白です.供給側の改善について,次のように結論します.

「両経済は,中国が明確に優れているものの,注目すべき成果を上げてきた.インドのアウトソーシング部門はサービスが,中国では工業がそうであった.農業以外の雇用は緩やかに増大し,それゆえ農業人口の比率はまだ高い.2004年で中国47%,インド57%である.中国の生産性上昇は驚異的であり,工業部門の労働者一人当たり生産量が増大したからである.農業やサービスでも増加した.インドの生産性上昇もすばらしいが,それはもっぱらサービス部門による.」

中国についても,インドについても,成長が頓挫するリスクはあります.しかし,富裕な諸国との所得格差を考えれば,その成長はまだ続くでしょう.・・・新しい世界は,ここにある.

Guy de Jonquieresは,FTを退職するときを迎えて,アジアについての感想を残しています.

1.アジアの「経済的奇跡」は中国とインドに限られる.その他の諸国は,日本も含めて,成果を上げていない.2.中国は共産党の権力独占を維持するというだけで,経済のグランド・プランがない.中央と地方の権力争い,既得権の発生は,将来に不安をもたらす.3.成長維持がアジアの外交を支配する.しかし,かつてヨーロッパに関してNorman Angellが夢見たような平和は,アジアにおいても実現しないでしょう.4.アジアが緊密な共同体を築くには,まだ,長い時間がかかる.5.中国の「ソフト・パワー」は限られている.その外交は資源確保に偏る.6.アジアでヨーロッパは重要ではない.7.西側は製造業を失うことについて悲観するべきではない.8.「知識」社会や技術革新を目指すなら,表現の自由を抑圧してはならない.


David Pilling and Victor Mallet Japan moves to protect offshore rigs FT March 20 2007

David Fouse Japan's 'values-oriented diplomacy' IHT Tuesday, March 20, 2007

Victor Mallet Japan is back - and not just as an economy FT March 21 2007

Green and growing BG March 22, 2007

DAVID FOUSE Two-edged sword of values The Japan Times: Friday, March 23, 2007

BRAD GLOSSERMAN Baseless threats of cold war The Japan Times: Saturday, March 24, 2007

JUNBEOM PYON and YUKA TSUKAGOSHI Turn Japan-South Korean ties into a real partnership The Japan Times: Monday, March 26, 2007

Land of possibility BG March 28, 2007

Japanese borrowers and lenders FT March 28 2007

MARTIN FACKLER Mergers and Acquisitions No Longer Shock Japanese NYT March 29, 2007

(コメント) 温家宝首相の来日を前に,すべり込みで排他的経済水域の資源開発に関する法律が通過しました.中国が東シナ海で開発する海底油田をどうするのか? 日本の近海で中国との軍事衝突が起きた場合,どのように交渉できるのか?

日本は,アメリカに倣って,その価値(や秩序)を国際関係に反映させることが正しいと考え始めました.よりによって,ブッシュ政権から何を学ぶのか?

日本は価値を重んじる外交を展開し,ユーラシア圏に「自由と繁栄」をもたらしたい,と.なるほど,アメリカもEUも主張しそうなことです.それは,戦後外交において政治を経済と分離してきた姿勢を転換するものだ,と言います.福田ドクトリンのように,共産圏との融和を求めるより,価値を共有する国だけを支援し,分断を強める恐れがあります.

経済的には,日本も回復しつつあります.しかし,従軍慰安婦や戦争責任,北朝鮮問題で日本政府が孤立しているときに,価値や政治,を主張できるとは思えません.

まるで環境問題を克服した楽園のような紹介記事は過剰な称賛だと思います.多分,他の国にはもっと良いモデルがある,という主張なのです.

日本のゾンビ企業と銀行の不良債権は,消え去ったわけではなく,地方自治体に受け継がれた,とFTは指摘します.

Jeff Kingston Requiem for reconciliation IHT Thursday, March 22, 2007

Francis Fukuyama Straight talking The Guardian Monday March 26, 2007

David Pilling Abe apologises for wartime sex slavery FT March 26 2007

William Pesek Japan's Sex-Slave Controversy Has Economic Costs March 28 (Bloomberg)

Alexis Dudden Prime Minister Abe’s New Clothes YaleGlobal, 28 March 2007

(コメント) Jeff Kingstonは,日本政府がドイツの基金から学んで「アジアの未来基金」を設けて,謝罪と補償,融和を図るべきだ,と主張します.しかし日本政府は,従軍慰安婦への謝罪や補償においても,政府が民間の資金を加えて行っている基金の活動を狭く限定しており,多くの犠牲者たちに責任を拒んだままです.

他方,アメリカのブッシュ政権は,日本がイラクへの関与を続け,自衛隊の活動をアジアに拡大する憲法改正に向かうべきだ,と考えています.しかし,日本が中国と対立するような姿勢には賛成しないでしょう.日本が立つ位置は非常に狭隘で,ますますアメリカ,中国,アジアの間の軟弱な飛び地になります.

安倍首相の,従軍慰安婦に対する日本政府の責任を否定する発言は,日本とアジア諸国との貿易や投資,株式市場を介して,人々に経済的なコストを強いるものでした.また自民党や日本の政治家たちに,政治的な制約を課すものです.経済改革の長大なリストを先送りする代償として,首相が保守強硬派やブッシュ政権の支持・好意に頼るとしたら,そのコストはさらに日本国民を苦しめます.世界で最も活気ある地域で,政治信条を理由に孤立することを選ぶような政治家に,日本は将来を託すことができるでしょうか?

The Guardian Tuesday March 27, 2007

The secret war

David Wilson

The Guardian Tuesday March 27, 2007

Ways of saying sorry

David Beresford

(コメント) 戦争には,しばしば,兵士による略奪や強姦,殺人がともないます.アメリカの社会学者が書いた本(Bob LillyTaken by Force.)はそうした研究です.第二次世界大戦いついて,最近まで公的な記録が秘密にされていたのです.1942-45年にアメリカ兵GIsが,イギリス,フランス,ドイツで14000件の強姦に関わったという内容は,これまで英語による出版を不可能にしていました.

権力を与えられ,支配する地位を得た若者は,戦場や占領下において,それを濫用するケースが起きるのです.しかも政府やメディア,兵士たちを誇りとする家族たちが,そのような犯罪を隠し,彼らの役割を称賛します.その過ちを公表する研究を,封印してはなりません.

トニー・ブレアは奴隷貿易に関わったイギリスの歴史を謝罪し,南アフリカ政府はアパルトヘイトの犠牲者たちに謝罪しました.ただし,民族による財政移転という「謝罪」だけです.


March 21 (Bloomberg)

Government Is `Here to Help' Subprime Borrowers

Caroline Baum

BG March 27, 2007

Make mortgage lending more responsible

By Thomas Callahan

WP Wednesday, March 28, 2007

Beyond the Subprime Debacle

By Robert J. Samuelson

(コメント) サブプライム・ローンはアメリカ版の住専問題や住宅バブルになるのでしょうか? 金融市場の変化と法・制度の不備が,人々の動機を歪めます.Samuelsonは,銀行危機の歴史を振り返ります.そして,銀行はリスクを分散している,不良債権は一部でしかない,という説明を疑っています.


Be practical with the Palestinians LAT March 21, 2007

David Ignatius Rice's Mideast Minefield WP Wednesday, March 21, 2007; A15

THOMAS L. FRIEDMAN Abdullah’s Chance NYT March 23, 2007

The Hamas Conundrum NYT March 26, 2007

Eran Lerman Will the Riyadh summit advance peace? IHT Tuesday, March 27, 2007

Dennis Ross A plan for calm, hope and reform in the Middle East FT March 27 2007

John Hughes Cautious steps toward Middle East peace CSM March 28, 2007

Martin Patience Palestinians cling to 'right of return' BBC 2007/03/29

(コメント) 中東和平は再開されるでしょうか? チョムスキーの研究を知った後では,アメリカの主要メディアが示す事情を,そのまま信じることはできません.

アメリカやイスラエルの論理では,ハマスがイスラエルの存在を認めようとしないから,ハマスの閣僚を含むパレスチナ自治政府を交渉相手にはしない,というわけでした.まるで北朝鮮との交渉のように.しかも,こちらの方がはるかに酷いのです.イスラエルは占領し,抑圧している側ですから.ハマスを懲らしめるために,欧米は人道援助も阻止しました.市民を爆撃した,というわけではないですが,よく似た結果です.

EUは,援助を再開し,ハマスとも交渉することを求めていますが,アメリカ政府とメディアは批判的です.

アメリカのメディアは単純化します.石油価格が上昇すればサウジアラビアの主張が強まり,国内の政治的混乱が増せばエジプトの主張は弱まる,と.アブドラ国王は,もしパレスチナの領土を確立し,和平を実現するためになら,600万人の犠牲者を記念するホロコーストの聖地にも巡礼するでしょう.あるいは,それはFRIEDMANが指摘するように,ファンタシーなのでしょうか?

アラブの指導者たちは,1967年以来,イスラエルが占領した土地から撤退するなら,イスラエルを国家として承認することを話し合っています.Martin Patienceは,1948年にイスラエル誕生が強いた75万人の難民の一人から,60年に及ぶパレスチナ人の苦悩を伝えています.

LAT March 28, 2007

Richard Nixon's Mideast blunder

Milton Viorst

その新著『ニクソンと毛』において,Margaret MacMillanは,リチャード・ニクソンが果敢な外交的決断により,1972年にアメリカと中国の国交を回復したことは,世界を安全で安定した土地に変えた,と読者に教える.しかし他方で,読者はニクソンが中東においては機会を逸したことも理解する.世界はより不安定で,危険な場所になった.

国務長官のコンドリーザ・ライスは,2007年にパレスチナとイスラエルのつぎはぎに努力するわけだが,ニクソンの最初の国務長官,William P. Rogersが同じことをしていた.当時の状況はもっと流動的だった.1967年の6日間戦争がイスラエルの大勝利に終わり,その地域には憎悪が満ちていたが,占領地はイスラエルの入植者から自由であった.

ロジャーズの最大の敵は武闘派ではなく,ヘンリー・キッシンジャーであった.キッシンジャーはニクソンの国家安全保障顧問であった.二人は世界について違う見方をしていた.ロジャーズはこの地域を第三次世界大戦の火薬庫と見ていた.キッシンジャーはロシア人を打破する戦場と見なした.そして二人を比べれば,キッシンジャーの方が政治的な暗闘に長けていた.

ロジャーズの計画は,アメリカが推進した国連決議242に依拠して,土地と和平との交換を目指すものであった.1969年に,ロジャーズは述べた.「和平協定を達成することなく,国連決議の求める撤退をイスラエルに求めることは,アラブに偏った党派的な立場だ.イスラエルの撤退なしに和平を求めるのは,イスラエルに偏っている.・・・既存の国境線を書き換えるいかなる試みも,その征服によって測られるべきではなく,相互の安全を理由とした微小な変更にとどめるべきだ.・・・われわれの政策は,今も,これからも,バランスの取れたものである.」

しかし実際は,「(双方の)バランス」がアメリカの政策にはならなかった.イスラエルが要求した独自の国境線はロジャーズの要求を困惑させた.イスラエルの政治家たちは,占領地を植民地化せよ,という右派からの圧力を受けた.イスラエルは,ロジャーズの計画を宥和策と呼んで,ただちに拒否した.彼らもアラブ諸国も同様に頑迷であった.ロジャーズは主張を維持したが,キッシンジャーの影響により,ニクソンは自身の計画を取り下げた.ニクソンの支持を失って,ロジャーズの計画は頓挫したのだ.

双方に数千人の死者を出した1973年のヨム・キッパー戦争(第四次中東戦争)により,キッシンジャーは「シャトル外交」に乗り出す.彼はイスラエルに,アメリカからの武器と援助を条件に,シリアとエジプトに占領地を返還することを合意させる.しかし,ヨルダンと西岸については,多くの入植者が占領していたためイスラエルが譲歩に反対すると,要求を引っ込めた.それ以後,約50万人の入植者が西岸とエルサレムの郊外に移住した.

キッシンジャーはシリアとエジプトの戦略的価値を理解していたが,西岸とパレスチナ住民を軽視した.今となっては,彼の間違った判断をアラブとイスラエルの流血事件が毎日のように示している.

中国についても,中東についても,ニクソンとキッシンジャーの主要な関心は明らかにソ連のパワーであった.彼らが北京政府との交渉に動くのは,台湾がいつか本土を征服するという神話を捨てたからだ.アメリカは台湾の領土を保障し続けたが,中ソ関係を乱すことで利益を得た.

しかし中東では,ニクソンとキッシンジャーが(中国と)まったく異なるコースをたどる.イスラエルを反ソビエトの資産と見なし,軍事同盟を結んで,地域を分極化し,今では世界の安全を犠牲にしている分裂の種を撒いた.

ライスがどう思おうと,彼女はその前任者であるロジャーズの轍を踏んでいる.数年間の沈黙を経て,アメリカの国益はイスラエルとアラブとの和平にある,と明確にした.ロジャーズのように,彼女も支持を求めて地域を歴訪した.国内では,キッシンジャーではないが,チェイニー副大統領やエイブラムズ国家安全保障顧問代理の反対を受けている.彼らネオコンの声が大統領に影響する.その結果,和平キャンペーンは,ブッシュではなく彼女の政策と見なされている.時間とともに目標はぼやけ,大統領の支持がなければ成功の見込みもなくすだろう.

歴史は過去の可能性に目を閉ざさない.中国との関係修復で,ニクソンとキッシンジャーは世界平和に多大な貢献をした.もし彼らが同様の努力を中東でも行っていたら,と思う.


FT March 21 2007

The French will accept reforms, for the right price

By Jacques Delpla and Charles Wyplosz

(コメント) 二十年に及ぶ低成長と失業がフランスの改革を要請している,と論説は強調します.

その要点は,改革が成功しないのは,余りにも多くの既得権を持つ有権者が,若者や移民など,少数のアウトサイダーを無視して既存制度の擁護に奔走するからだ,というわけです.このままでは,いかなる改革も不可能で証.そこで,改革のための三つの方法を検討します.1.サッチャー・メソッド.2.グランド・バーゲイン.3.パレート的補償原理,です.

サッチャーが他の対決姿勢をフランスは嫌います.また,より全体的な利益を掲げて各集団に犠牲を強いることも難しいでしょう.つまり,この論者たち(特にCharles Wyploszは聡明です!)は,パレートの提唱した補償原理を掲げて改革を支持する政治を動かします.すなわち,改革によって損失を被る恐れを抱く集団には,潤沢な補償制度・財源を用意するのです.既得権者を制度から退場させることで,全体の弾力性は高まり,改革が容易になります.

その報酬はフランス経済全体を成長させることです.特に注意するべきは,ロビー活動に交渉を委ねないことです.詳しく検討した上で,正しい補償額を示し,個々の既得権者が交換を申し出る形を取ります.彼らは同意を強制されていません.

これは面白いな,と思って読んでいると,最後に例が出てきました.それは,明治維新です! 侍階級は禄を諦めて,工業化に投資した,と.


FT March 24 2007

Learning to swim in the modern economy

(コメント) 金融政策は万能ではありません.たとえ潮が満ちるとしても,あなたが浜辺に埋まっていたら,喜んではおれないだろう,・・・もちろん,溺れてしまいます.問題は,貧富の格差です.企業幹部の報酬に道徳的な自制を(空しく)求めるよりも,株主への情報公開や報酬を監視する代表を経営陣に入れるべきだ,とFTは考えます.

またバーナンキは,貧しい家庭の子供たちが貧しさを強いられる境遇を懸念します.グローバリゼーションを非難するよりも,不平等を直接に扱うほうが正しい,と.21世紀には,あらゆる階層がグローバリゼーションによる機会と変動にさらされます.

「技術革新やグローバリゼーションを止めようとしてはならない.それは,莫大な利益をもたらす上げ潮である.しかし,決して誰も浜に埋められてはいけない.」

FT March 26 2007

Cheerleaders threat to world trade

By Dani Rodrik

(コメント) グローバリゼーションの最大の脅威は,IMF・世銀総会に集まる反対派ではなく,市場開放を迫るチアリーダーたちである,とRodrikは主張します.なぜなら世界経済を健全に保つ条件は,市場開放だけではないからです.たとえドーハ・ラウンドが製鋼しなくても,市場開放は十分に進んでいます.むしろ成長を損なうのは,有権者の支持が必要なとき,政府が行動する能力を維持できないかもしれない,という問題です.

市場と政府にはバランスが必要です.19世紀のグローバリゼーションはそれに失敗して崩壊しました.戦後のブレトン・ウッズ体制は,それを十分に配慮して成長を維持しました.中国やインドが成功している理由も,それに似た制度を維持しているからです.裕福な国と貧しい国の成長する条件は異なるものです.

社会的な目標を達成する政策の余地を,各国は交渉によって残すべきです.グローバリゼーションには,市場だけでなく,社会的・政治的条件が必要なのだから.


NYT March 24, 2007

Unwary Investors

FT March 28 2007

A market correction is coming, this time for real

By William Rhodes

(コメント) 連銀の行動に関わらず,金融市場のリスクはなくなりません.投資家たちは,アメリカ経済に潜む問題を見ていないかもしれません.

シティ・グループのsenior vice-chairmanは,次の市場調整を予期していました.


Asia Times Online, Mar 24, 2007

Why Big Business needs China Games success

By Benjamin A Shobert

NYT March 27, 2007

Intel to Build Advanced Chip-Making Plant in China

By DAVID BARBOZA

Asia Times Online, Mar 30, 2007

Rural rags to urban riches

By Michael Jen-Siu

FT March 29 2007

Shanghai’s scandal fails to shake the status quo

By Geoff Dyer

The Wall Street Journal, 29 March 2007

Capital Warfare

Heidi Crebo-Rediker and Douglas Rediker

(コメント) 北京オリンピックは成功するか? 中国のイメージは? 多国籍企業の参加は? 情報産業やハイテク企業は研究開発部門を中国に移転するか? 政治スキャンダルは? 

中国政府が,地方の貧困解消に向けて,戸籍の管理を止めて出稼ぎや移住を促し,道路を建設し,バスの運行を拡大し,農民による土地の所有を権利として認めようとしている,というMichael Jen-Siuの記事に注目します.貧困層の公共料金を無料にし,国際NGOsによる指導や援助をもっと受け入れるかもしれません.

他方,逆に,アメリカ政府は中国資本による企業買収を規制しようとしています.


FT March 25 2007

As America falters, policymakers must look ahead

By Lawrence Summers

(コメント) 3ヶ月前には,投資家たちが恐れをなくしたことが恐ろしい,と書いたけれど,すでに住宅ローン市場から始まって,株価変動,キャリー・トレード,アメリカの景気後退,など,恐怖の大放出です.そこでSummersは政策担当者への処方箋を書き直しました.

それは,過去の失敗に囚われて,現在の必要な政策を見失うな,ということのようです.そして,アメリカは今も世界経済を支える「最後の買い手・消費者」なのです.

マクロ経済学のテキストでは,そのように教えているのかもしれません.しかし,都合の良い忘れっぷりだ,と非難されるでしょう.財務副長官として危機に介入し,アジア諸国(タイ,インドネシア,韓国,そして,日本)やロシア,アルゼンチンに対しては何と言ったのか?


LAT March 26, 2007

Fighting the next war

By Gary Anderson

(コメント) アメリカ軍は,多分,多くの国で,軍事戦略を研究し,兵士たちに教えるため,さまざまな戦争ゲームを開発します.新しい戦争の現実を,新しい戦争ゲームがどのように消化したか,紹介しています.

かつては青(連合軍)と赤(敵)のチームが戦いました.政策や戦術,武器が選択され,個々の戦闘の勝敗をダイスで決めました.戦争の評価にさまざまな数式を使ったのです.実際に,冷戦のゲームとして利用できました.

今ではダイスを振りません.各チームは統一されておらず,チームの中でも戦います.勝利を決めるのは赤チームだけではありません.ここに緑チームが加わるのです.緑とは,戦争に関わる市民やメディアです.彼らは信仰や民族で細分化されています.青にも赤にも味方(敵対)します.また,勝利を決めるのは個々の戦闘よりも,市民たちの反応であり,メディアの影響です.

それゆえ戦闘は,戦術や武器よりも,さまざまなチームの特徴を考えなければなりません.こうしたチームの指導者には,ギャングのメンバーや麻薬の運び屋が向いており,軍隊の中だけでは戦争ゲームを動かす人材が足りません.時代は大きく変わったわけです.


Iran has more to gain from diplomacy than anyone FT March 26 2007

Timothy Garton Ash Faced with Iranian blackmail, Europe must show real solidarity The Guardian Thursday March 29, 2007

Iran: Unacceptable behaviour The Guardian Thursday March 29, 2007

CHRISTOPH BERTRAM Getting to 'yes' with Iran The Japan Times: Thursday, March 29, 2007

(コメント) 日本人はイランとの戦争をどこまで本気で考えているでしょうか? アメリカ政府は,イランの核開発と中東における核拡散を阻止するために,空母を派遣して開戦も辞さない構えです.戦争は数ヶ月か,数年に及び,おそらく石油危機とテロを頻発するでしょう.

そして,(イランに拠れば)違法に領海に入ったという理由で,15人のイギリス海兵がイランによって拘束されました.ブレア首相は深刻な事態と認識しています.イランが兵士たちを裁判にかけるかもしれません.英米軍が人質奪回作戦を強行する可能性もあるでしょう.

もちろん,これによって英米とイランの交渉が進むかもしれません.国連やEU,ロシアが仲介するでしょう.イランは事態の沈静化を図り,国民のための経済復興に重点を置くのです.イランはますます孤立し,ワシントンの強硬派が再生する絶好の機会を提供してやるつもりでしょうか?

これは最新のキューバ危機かもしれません.


WP Tuesday, March 27, 2007

A Brokered Peace

By Carlos Pascual

(コメント) ブッシュ政権はイラクの平和を諦めています.国連を介してさまざまな集団を交渉に参加させ,和平に向けた政治的合意がなければ,誰も事態を改善できるという展望が持てないのです.UNHCRを介して,イラク内外の難民問題解決を交渉開始の最初の議題にしてはどうか,と提案します.そして,より重要な石油資源の開発と分配問題について,制度の構築を模索します.

優れた提案だと私は思います.かつて,国務省のイラク占領計画がチェイニーやラムズフェルドにより葬られたと聞きます.これもまたワシントンの暗闘です.


FT March 27 2007

Korea's early ageing

FT March 29 2007

South Korean economy

FT March 27 2007

The pain in Spain will follow years of rapid economic gain

By Martin Wolf

(コメント) 日本と同様に,韓国もグローバリゼーションや中国,排外主義,高齢化,あるいは戦後開発体制の「中年の危機」に苦しんでいます.FTは,日本をモデルとした輸出依存の政府介入・規制体質が成長を損なうようになった,と要約します.中国と日本に挟まれながら,労働者の権利回復や民主化を目指し,アメリカ軍の駐留を批判して,現政権の方針が動揺し続けることこそ「中年の危機」なのです.

スペインについては,EUとユーロによる改革の刺激を経て,その反動を味わっているようです.単一通貨であれば通貨危機を心配せずに投資できます.しかし,もし生産性上昇が遅れ,さらに,その他の要因によって,競争力を失えば,為替レートを介した調整を行えないのです.より苦しいデフレの時期を迎えるでしょう.あるいは,労働者が移住することです.

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The Economist, March 17th 2007

Europe’s mid-life crisis

Fit at 50? : A special report on the European Union

(コメント) The Economistの診断では,中年の女性(EU)の不満は,もっぱら,お金(そして,成長と雇用)が足りないことです.ややこしい教訓や説明書(EU憲章)を増やすより,もっとお金をもうけなさい!

特集記事も同じ話ですが,末尾に,EU100周年を祝う2057年の記事が載っています.

「アメリカ,中国,インドが支配する世界で,EUは無意味になる,という予言をくつがえした変化は,オバマがアメリカ大統領になってすぐ,2010年に起きた.アメリカの住宅バブルがはじけ,ドルが暴落したのだ.さらに重要なことは,ドイツとフランスが経済改革を実行した.これによって失業率が急速に低下し,生産性は上昇した.景気拡大を支えたのは,2025年に実現した取ることウクライナのEU加盟であった.また,北アフリカの国として初めて,モロッコも加盟した.」

「もちろん容易な航海だけではなかった.2015年にイタリアの大金融危機が起こり,イギリスがユーロをまさに採用しようとしたとき,イタリアはユーロから離脱してリラを復活させた.イタリア国債の保有者はデフォルトにより損失を被り,イタリア経済がスペインに追い抜かれ,金融市場の譲歩でイタリアはユーロを採用する.その苦痛に満ちた実験を見た以上,諸国から同じ過ちを試みる気配はなくなった.」

「EUの外交政策は,プーチンがロシア大統領の三期目に入り,ウクライナに侵攻する態勢に入ったとき,アメリカのオバマ政権を動かし,大量の核攻撃で報復する,という威嚇が成功した.ウクライナ危機に勝利して,EU拡大に弾みがつき,その後,皮肉なことにロシア自身が始めてEU加盟を申請した.」 ・・・


The Economist, March 17th 2007

Zimbabwe: Toppling a tyrant

Security in Asia: We’re just good friends, honest

Learning about the past: Where history isn’t bunk

Nigeria: Blood and oil

Russia politics: The Kremlin’s new cookbook

Mining: New frontiers

(コメント) 独裁者と制裁による経済破綻.アジアの貿易と安全保障をめぐるオーストラリアの二重生活.世界各国は,日本と似た意味で,過去についての教育を政府が模索しています.アイルランド,オーストラリア,ロシア,南アフリカ,トルコ,ギリシャの中で,日本に近いのは?

ナイジェリアも,ロシアも,マダガスカルも,資源によって政治が腐敗する問題を示します.


The Economist, March 17th 2007

Global imbalances: Sustaining the unsustainable

Big-money management: Buffettology for the chinese

(コメント) アメリカの経常収支赤字は持続不可能だ,という経済学の常識は,何年経っても現実を反映してこなかったせいで,持続可能だ,という説明が次々に提出されています.ドイツ銀行のエコノミストたちが示した再建ブレトン・ウッズ体制,バーナンキ議長が示した世界過剰貯蓄,さらに,この記事は新興富裕諸国の投資可能な資産不足,が指摘されます.

それと少し関連して,1965年にバフェットは落ち目の織物企業を買い,中国は文化大革命に励んでいたが,全然違う向きで,現在,同じような地点で出会っている,という記事も面白いです.どちらも莫大な資産を高い収益で,しかもドル暴落のリスクから切り離したいのです.