IPEの果樹園2007
今週のReview
3/12-3/17
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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株価暴落1,Krugman-2, 中国の社会変動, 円キャリー・トレード, 効率的市場仮説, 従軍慰安婦, 中央銀行の独立性
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor
Richard Beales The Short View: Ties that bind turmoil FT March 1 2007
EDUARDO PORTER Shanghai What-If: How a Shock Can Become a Shock Wave NYT March 4, 2007
Philip Bowring Don't blame China for falling markets IHT Monday, March 5, 2007
Martin Wolf Equities look overvalued, but where is the turning point? FT March 6 2007
Greenspan’s next act FT March 6 2007
William Pesek Paulson, in Asia, Visits Supposed Eye of Storm March 7 (Bloomberg)
Robert J. Samuelson A Costly Case of Market Jitters WP Wednesday, March 7, 2007; A17
William Keegan Listen to Mr Greenspan - there's nothing so fragile as a bubble The Observer Sunday March 11, 2007
(コメント) 株価が急落するのは,主に,その価格を支える買い手の利用したレバレッジ,すなわち,融資を引き揚げられる恐怖によるものです.
Alan BlinderやWilliam Clineなどの意見を紹介しつつ,EDUARDO PORTERは,リスク資産に投資されている資本が回収されるときにどうなるか,を考えます.このまま投資家たちがリスク資産に慎重な姿勢を回復し,正常化するのか,あるいは,何かのきっかけで危機に向かうのか? たとえば,日本からの融資で住宅モーゲージやトルコの国債に投資しているヘッジ・ファンドが,資金回収に走ります.
Philip Bowringは,中国の上海市場よりも,インドのムンバイ市場の方が重要だ,と指摘します.中国市場は海外投資家に閉鎖されたまま,より厳しく政府に管理されており,インド市場の方が自由で,先に15%も暴落していました.
問題は資金の利用可能性です.アメリカの貿易赤字,日本の低金利,中国の外貨準備など,豊富な資金供給を支える条件が今まで揃っていました.しかし,それが将来,変調をきたすときには,大きなショックが起きます.
Martin Wolfは,ときには下落を歓迎します.この程度でも,暴落を予想することを投資家は学んだでしょう.すでに株価の水準は高すぎるだろう,とも考えます.
問題は,大きな振幅が続くかどうかです.それを考える要因として,金融政策の信頼度,この四半世紀に中央銀行が達成したこと,中国の世界経済参入,財・サービス・資本の世界市場統合,中国の固定レートと製造業への価格下落圧力,世界所得が二つの高貯蓄グループに再分配されたこと,すなわちアジアと産油諸国,ドル建政府債務の累積,最後の貸手と借手としてのアメリカの役割,アメリカの生産性上昇,を挙げます.
他方,リスクもあります.市場の過剰反応,過剰貯蓄の是正と金利上昇,アメリカ生産性上昇の減速,世界の金融条件とアメリカの銀行,しかし,最大のリスクはアメリカの不動産市場である,と.
FT March 02, 2007
Barbarians at the gates: the balance of pros and cons
Comments by Willem Buiter
(コメント) Martin Wolfのプラーヴェート・エクアティに対する評価を,Willem Buiterがコメントしています.1.レバレッジ,2.短期主義,3.利益相反,4.情報開示,5.他のステークホルダー,6.規模,について.
March 2 (Bloomberg)
Where Even Ethiopia Is Doing Better Than Asia
William Pesek
FT March 2 2007
Habits of the super-rich
(コメント) アジア開発銀行のエコノミストRajat Nagが,銀座を見下ろす帝国ホテルの最上階でWilliam Pesekのインタビューに応えています.その要点は,「アジアの成長に惑わされていないか?」ということです.
中国に並ぶ,9%を超える高成長を遂げたインドを見ても,その貧困や栄養不良,衛生状態や教育条件の悪さは大問題なのです.それはエチオピアよりも悪い,と知っているでしょうか?
3歳以下の子供たちの中でユニセフが栄養不良と見なした率は,サブ・サハラ・アフリカで35%,中国で8%ですが,インドは46%です.デジタル・ディバイドよりも,デモグラフィック・ディバイド(人口の分断化)が深刻です.若者たちのますます多くが,生活を支える十分な職場を得られないでしょう.
1日2ドル以下で生活するアジアの人口は,中国の人口13億人よりも多い,と言います.食事はできても,学校には行けず,グローバリゼーションの中で仕事を得るだけの訓練をされていない人口です.この貧困層を抱える限り,成長過程は非常に脆弱です.
住宅を除いて,500万ドル以上の資産を持つアメリカ人は,2005年に26%も急増し,93万3000人に達したようです.その後ももちろん増えています.彼らが富を増やす秘訣は? 別に,飽食や高度な教育では内容です.その資産保有が示す原理とは,「節約と安全第一」.
NYT March 2, 2007
PAUL KRUGMAN
2008年2月27日 (つまり,来年,書かれるはずのコラムです.)
2007年の株式市場溶融は,ちょうど1年前,上海の株式市場で9%の下落,それに続いてダウが416ポイント下がったことで始まった.しかし,1997年夏にタイ通貨の切下げで始まった以前の世界的金融危機と同じく,人々がその被害の広がりを理解するには何ヶ月もかかった.
はじめは,アメリカの株価下落について,いい加減な説明が多く出された.たとえば,連銀の前議長であるグリーンスパンがしくじった,と言う者がある.当たり前のことを言っただけなのに,住宅価格の低迷が不況につながる可能性を示唆する彼の発言を,ニュースと考えたからだ.ある共和党議員は,イラク「増派」に反対するJohn Murtha議員の主張が市場を不安にした,と非難していた.
それどころか,上海市場の出来事がニューヨークの下落を引き起こしたというのはまったく愚かな主張だ.株式市場の規模が評価総額でアメリカの株式市場の5%程度でしかないのであるから,投資家たちへの目覚まし時計のベルとして以外には,考えられないことだ.
本当は,株価の下落を特定のニュースに結びつけることなど時間の無駄である.
賢明なアナリストなら,イエール大学のRobert Shillerが1987年10月19日に起きた株価暴落について行った古典的研究を思い出すだろう.彼の結論は,「19日やそれ以前に現れたいかなるニュースや噂話も,株価暴落に責任ない.」ということだ.1987年と同様,2007年にも,投資家たちが出口に殺到したのは市場の外で起きたことのせいではなく,彼らは他の投資家たちがそうすると考えたからだった.
なぜ市場はパニックにそれほど弱いのか? 過度の繁栄も歴史には多かったが,それはむしろ不合理なまでの自己満足が問題であった.
1990年代のハイテク・バブルが破裂しても世界的な破滅が訪れなかったから,投資家たちはまるで悪いことなど二度と起きないかのように行動し始めた.完璧に信頼された借り手よりも劣る者が融資される際に要求される追加のリターン,リスク・プレミアムが消え去ったのだ.
たとえば,2000年に入って,この10年の前半には高利回り社債(ジャンク・ボンド)が買い手を得るには,アメリカ国債よりも8〜10%は金利を上乗せしなければならなかった.2007年はじめには,それがわずか2%にまで下がっていた.
しばらくして,増大する自己満足が自己実現的な予言となった.何も心配なんて無い,という態度が広まったせいで,問題を抱えた債務者も容易に借り換えができて,デフォルト率が下がった.そして,リスクの高い債券が低利になるということは,その債券価格が上昇することだから,債券保有者たちは巨額のキャピタル・ゲインを得た.そのことがまたよリ多くの投資家たちをリスクなんて過去のものだと考えさせた.
しかし,遅かれ早かれ,現実が押し入ってきた.2007年はじめまでに,アメリカの住宅ブームは崩壊し,厳格な融資基準を満たせない住宅の買い手に融資するモーゲージにはデフォルトが広まった.貸手(銀行など)はそれを個々の切り離された問題であり,市場全体には広がらない,と主張していた.しかし,広がったのだ.
2月27日のショックの後,数ヶ月は市場が激しく振幅し,明らかに良いニュースがあれば急騰し,その後,また暴落した.しかし春の終わりまでに,自己増殖する満足のサイクルが増幅する不安のサイクルに道を譲ったことは明らかであった.
なお,一つのことが明らかではなかった.大手の市場参加者であった,大幅にレバレッジを効かせた特にヘッジ・ファンドは,リスクの高い資産を購入するために融資を受けていたが,その資産価格が下落することでデフォルトと破産の連鎖反応を引き起こしたのではないか? 今や,世界不況の金融的残骸を調査することで,われわれはその答を得る.
振り返るなら,危機の最初にあった投資家たちの自己満足はなんとも理解しがたいと思うだろう.なぜ彼らはリスクを見なかったのか?
まあ,物事は後からなら良くわかるものだ.その当時は,悲観論者でさえ,その根拠が曖昧だった.たとえば,Paul Krugman(という者)は,2007年3月2日のコラムに,金融溶解が起きる様子を描いて,でも言い訳のようにこう述べた.「私は,このように事態が推移すると言うのではない.しかし,もし危機が起きるとしたら,こんな風に起きるだろう.」
BG March 2, 2007
Lessons from JFK on power, diplomacy
By Graham Allison
(コメント) 空母を派遣して,ブッシュ政権の好戦的言動が目立ち,イラク戦争への過程と重なります.もしジョン・F・ケネディーが生きていたら,アメリカのイラン政策についてどんな助言をするでしょうか? 1.軍事力と交渉は組み合わせる必要がある.2.交渉を恐れることは間違いだ.3.体制転換より前に,交渉によって戦争や核開発阻止を実現する道を見出せ.
NYT March 3, 2007
Will Freedom Bloom in the Desert?
By FREDERICK VREELAND
(コメント) 1年前,9万人が暮らす難民キャンプを豪雨が襲いました.自ら国内改革に取り組むと同時に,このサハラ西部の紛争地域が陥った苦境について,モロッコの王子が自治区の設立を提案しました.武力よりも,国際的な合意によって問題を解決し,難民たち自身が苦境を打開する道を見出せるような,近隣諸国や国連も支持できる提案だ,とVREELANDは期待します.そしてアメリカが,アル・カイダなどのテロリストを供給する地域の窮状を改善するためにも,積極的に関与するよう求めています.
貧しい辺境の住民たちを助けるために,王子にできる最初の一歩です.
Colorado's immigration policy backfires LAT March 2, 2007
David Mas Masumoto For the sake of peaches, pass immigration reform LAT March 3, 2007
Gregory Rodriguez Illegal immigrants -- they're money LAT March 4, 2007
Mexico's own migra LAT March 6, 2007
Needed: immigration policy BG March 9, 2007
Ali Noorani US immigration system at its worst BG March 9, 2007
Joan Vennochi Fixing a broken system BG March 11, 2007
(コメント) LATとBGが,アメリカの東西で移民法改正キャンペーンを支援しました.
移民を徹底的に排除すればどうなるのか? 2004年の政治風刺映画「メキシコ人のいない日 "A Day Without a Mexican"」はそれを描きました.カリフォルニアは,ある朝,突然,メキシコ人が消えてしまったことに気づきます.誰も摘み取るものがおらず,作物は畑で腐っていきます.建設産業他その他の低熟練労働者に頼っている産業は労働者が足りない.いよいよ困った農家は,収穫のために囚人たちを利用することにします,・・・ 「なんと19世紀的な風景か!」
食卓に美味しいフルーツが並ぶには,それが手間のかかる品種や有機栽培であればなおさら,移民労働者たちの膨大な労苦が前提されている,と他の論説は主張します.豊かな暮らしを支える労働者を知らなければ,人種差別的な法案が人々の暮らしや生産・食生活のあり方まで変えてしまいます.
バンク・オブ・アメリカが非合法移民たちにクレジット・カードを発行したことについて,移民排斥を訴える者は強く抗議しました.しかし,Gregory Rodriguezは歓迎します.彼らを非合法状態に押さえつけているわれわれの法律は不当であり,市場において同等に競争できる条件を与えることが望ましい,と.
Ali Nooraniは,ブッシュ政権が移民の強制送還・国外退去を優先し始めたことに悲観し,憤慨します.New Bedfordの工場が捜索されて,非合法移民の若い母親たちが収容所に送られました.教会の地下室に集まった父親は赤ん坊が泣くのを止められません.仕事に出かけたまま帰らぬ母親がどこに行ったのか,彼にはわかりません.
彼らは工場の熟練労働者たちであり,たまたま,イラクの駐留アメリカ軍に必要な物資を生産するために雇われていました.ブッシュ政権は,国民の税金を費やして,こうしたアメリカの理想や将来のよりよい生活を求めて働く人々を苦しめ,「自由の女神」に詠われた理想に背を向けている,と批判します.
WP Friday, March 2, 2007
The Climate-Change Precipice
By David Ignatius
NYT March 4, 2007
Cloudy, With a Chance of Climate Change
In Alaska, Everyone’s Afraid of the Water
By SETH KANTNER
Losing Bangladesh, by Degrees
By TAHMIMA ANAM
Memories of a Colder Iceland
By KRISTIN STEINSDOTTIR
While Australi Burns
By IAIN McCALMAN
(コメント) 移民に負けない政治経済的なテーマ・次元・交渉課題になってきた環境政策については,未来学者のPeter Schwartzが"Impacts of Climate Change"で,環境破壊のストレスで苦しむ生態系や世界を書きました.都市や政治・経済システムは危機に瀕し,市民生活はアナーキーに近づき,現在のイラクにも似た状態です.結局,人間はそのストレスに耐えられるのか?
同様に,NYTのコラムがさまざまな破壊のイメージを特集しました.すなわち,アラスカ,バングラデシュ,アイスランド,オーストラリアに見る環境破壊です.
BG March 3, 2007
Beware of corporate do-gooding
By Robert Kuttner
(コメント) さまざまな企業や経営者の悪行を指摘して,この情報を元に,消費者として慎重に行動してほしい,とRobert Kuttnerは求めます.企業が利潤を追求するのは当然としても,社会が利潤だけを追求するなら,その結果は,経済そのものを危険にさらす,と.
NYT March 4, 2007
By DAVID BARBOZA
(コメント) たとえば中国でも,For Him Magazineのように,ますます強まる利潤動機と市場競争に応じて,セックスを挑発する映像やイメージが盛んに売買されています.いずれの国でも,露天に並ぶ新聞や雑誌の表紙にはセクシーな女優や歌手,スポーツ選手を並べ,ページをめくれば過激な記事が満載です.
「しかし中国では,セックスはいまだにタブーであり,画像(ポルノグラフィー)は共産党が禁止している.」 その映像が示す社会変動の激しさは,将来の政治問題も予見させます.「近代化への狂騒」,「個人主義」と「性革命」,・・・
しかし中国です.中国の歴史上には,もっとセックスに開放的な,むしろ支配層がセックスの話題や技法に耽溺する時代があった,と学者は指摘します.今と同じように,尊厳や恥辱を考えない人々が支配する時代を経て,国の秩序も失われた,と.他方,ポルノの禁止や処罰に関する議論や事例も紹介されています.
IHT Monday, March 5, 2007
The high cost of prosperity
Minxin Pei
競争的な選挙を行わない国では,議会が巧妙な劇場でしかない.しかし,急激な変化を経験する国として,中国の事態はそれほど単純ではない.
人民代表大会は憲法による最高の権限を持ちながら,一党支配国家として,共産党に忠実な党員ばかりが並んでいる.しかし,その議論は公共政策をめぐって白熱してきた.主要な議題は,1990年代初めから蓄積された著しい社会的弊害をどのように是正するべきか,である.
外に対しては目覚しい経済的成功が中国を表現しているが,中では15年に及ぶ二桁の成長率がもたらした恐るべきコストが累積している.環境が破壊され,医療や教育は利用できず,社会的なセーフティー・ネットも劣化し,不平等が拡大している.
汚染のコストは,追加的な医療費,資源の枯渇,乳幼児の死亡,などによって,中国のGDPの少なくとも8%に及ぶだろう.人口のわずか1割しか健康保険が利用できない.人口の半分以上が専門的な医療を受けられない.商業開発のために,4000万から5000万の農民が土地を失った.
こうした社会的弊害が中国の成長のエンジンを減速したわけではないが,大衆の不満は高まっている.中国のメディアも,近年では人民大会を報道して,こうした問題に指導者たちの注意を促している.
胡錦涛とその仲間たちは,修辞的に,「社会主義的な調和ある社会」を唱え,官僚に均衡成長や思いやりを求めた.経済的に,医療や教育に財政支出し,貧しい農民への極端に逆進的な課税を廃止した.政治的には,むしろ管理を強化した.メディア,NGO,社会活動家を新たに規制している.経済発展の現段階では,安定を維持するために国家の管理強化が必要だ,と主張する.彼らは社会問題を近代化のための「成長の苦しみ」とみなす.それは財政によって緩和される.
もっと競争的な政治システムにすることは,中国の指導者たちが好む政策ではなく,むしろ政治的安定を脅かすものと認識されている.こうした考え方こそが根本的に間違っている.
多くの著しい社会的弊害は,急速な近代化過程ではなく,政治的過程それ自体から生じている.中国の指導者たちはそれを無視している.
1989年の天安門事件以後,経済規模は4倍に増大し,社会もはるかに多様でダイナミックになった.ところが,政治システムはほとんど変わっていない.政府高官は共産党が指名し,大衆のニーズに応えるインセンティブが無い.実際,彼らは「上官による推挙」が昇進の最も重要な要因である,と考えている.
官僚たちはその成果をGDPの成長で競い合っているから,当然,利用できる資源を工場の建設や商業的資産に注いで,学校や病院は無視する.時間とともに,この戦略は彼らを昇進させるが,中国における政治的に無視されたグループ,たとえば,農民,出稼ぎ労働者,身体障害者,などはその犠牲になる.
支配的エリートたちの行動を制約しているガバナンスを改善することなしに,中国が調和ある社会を築けるだろうか? 明らかに,政治改革を避けて,修辞や財政支出を工夫しても,中国は変わらない.
社会不安とは,多くの場合,無責任で人民を無視した政治システムの症状にすぎない.
March 6 (Bloomberg)
China's War on Inequality Must Begin With Wages
Andy Mukherjee
The International Herald Tribune, 8 March 2007
Managing Globalization: How Fast China Grows Will Affect Everyone
Daniel Altman
(コメント) Andy Mukherjeeは,中国政府が目指す,より平等な,調和ある社会の達成手段を論評します.1.経済における賃金のシェアを増やす.2.企業ではなく消費者に,都市だけでなく農村に,富を利用させる.3.資本の浪費に傾く製造業よりも,もっと雇用をもたらすサービス業を拡大する.4.輸出向けの製造業に投資を集中するような減税その他の優遇措置を止める.
もちろん,不平等を排除する政策が発展途上国で貧困からの脱出を難しくしている面もある,と主張します.より多くの人々に富を分配するために,中国政府はサービス部門をもっと重視し,賃金の上昇を目指すべきだ,と.
もちろん,中国の成長のスピードやバランスは,世界の資源需要や貿易・生産パターンにも影響し,主要子億の共通の関心事となります.
WP Sunday, March 4, 2007; B07
The Nuclear Threat From China
By Mark Helprin
WP Sunday, March 4, 2007; B05
A Russian Plea for Collaboration
By Sergey Rogov
LAT March 5, 2007
Buy Chimerican
Niall Ferguson
(コメント) Mark Helprinは,アメリカが核保有を削減する一方で,中国は核の抑止力を目指して拡大している,と注意します.
他方,Sergey Rogovは,ロシアの立場で,冷戦の再現を懸念します.おそらくは,1990年代の移行をめぐる怨嗟が,アメリカへの一極集中に対する批判を強めています.
Niall Fergusonは,アメリカと中国が異なっているからこそ,結婚しても続きそうだ,と予想します.たとえば,株式市場の連動と介入政策でも,地域紛争への介入でも,むしろまったく異なっているからこそ取引できる・・・?
たとえば,二国を完全に一つとして考えればどうか? そこで,この国をChimericaと呼ぶ.地球の陸地の13%,世界人口の4分の1,世界生産の3分の1をChimericaが占めます.だからChimericaが自覚すれば,経済運営を積極的に協調し,世界の主要秩序を決める力があるでしょう.
FT March 5 2007
New laws but no democracy for China
Asia Times Online, Mar 6, 2007
A healthier - and better armed - China
By Wu Zhong, China Editor
BG March 7, 2007
The real China threat
(コメント) 政治システムは温存したまま,中国政府は法律の整備に努めています.FTは,それを評価していると思います.一つは,外国投資を優遇する措置を廃止すること.もう一つは,個人の所有権を保護することです.これで農民たちは土地収用に対抗できるでしょうか?
中国政府は,国内的には「調和ある社会」を目指しつつ,対外的には軍備を近代化・高度化しています.軍事予算が17.8%も増額されるのはなぜか? という疑問と不安が他国で強まります.しかし,Wu Zhongの記事は,温家宝首相の予算案が何を目指しているか,軍事費に限らず,政府の考え方を全体として紹介します.
BGも,18%も軍事費を増やす国が脅威であるのは当然だが,それはネグロポンティ国務副長官のようなアメリカ政府の超保守派が警告してきた意味ではない,と指摘します.むしろ,株式市場や国際金融を通じて及ぼす影響力,そして,外国政府の人権抑圧を軽視する態度がもたらす国際システムの変調を,BGは重大な脅威として捉えます.また,台湾や東シナ海におけるベトナム,日本との領土紛争,・・・ 中国政府は,人権を軽視したまま「国際システムの平和的転換」など実現できないことを知るべきです.
FT March 5 2007
How the yen carry trade could return
By John Plender
FT March 5 2007
Carry currency falls
FT March 7 2007
Grey power plays the yen long game
By David Pilling and David Turner in Tokyo
(コメント) 「円キャリー・トレード」とは,低金利の円を融資してもらい,これを外貨に転換して,もっと高利回りの外債に投資することです.もし為替レートが変化しなければ,金利の差だけ儲かるわけです.
しかし,為替レートは変動します.円安が進めばさらに儲けが増えますが,円高が進めば利益は失われ,損失が出ます.あわてて返済するために外債を売って円を買いますから,外国の株価が暴落し,金利が暴騰し,日本では円高が起きる,と恐れられているのです.ヘッジ・ファンドなどがレバレッジを利かせて膨大な資本を動かせば,世界の金融市場は激変し,日本も円高で不況やデフレが再生します.
円キャリー・トレードを生んだ背景は,日本が経験してきた波乱の歴史にあります.バブル崩壊でリスク資本を嫌悪するようになった日本の個人投資家は,ほとんどの資産を現金や預金として保有しており,デフレに落ち込みました.日銀のゼロ金利や量的緩和政策も,国内の支出を刺激することグリーンスパンはできず,資本流出と円安が生じたことで輸出を伸ばし,1970年代・80年代の輸出マシーンが働いて,景気回復とデフレ脱出に成功しました.また,キャリー・トレードの影響は資本が流入するニュージーランドやベトナムにも現れています.
キャリー・トレードは,投資ファンドなどのプロ集団が行う特別な契約であり,リスクを考慮して対策が取ってある,と言われます.しかし,危険でありながら,日本の個人投資家も高利だけに注目して外債を購入し始めているのです.アメリカの金利がこれ以上は上昇せず,日本の金利が明らかに上昇する中で,資本は日本へ還流するはずです.しかし日本には投資機会が乏しく,低金利が続くから,アメリカの景気落ち込みが回避されると分かれば,キャリー・トレードがもっと長期化する,と指摘します.
私は,なぜ日本から資本逃避が起きないのか? と以前不思議に思いました.その答として,老人が資産を持っているからだろう,と考えたのです.漸く参加したキャリー・トレードが,にわかに逆転しないのも,同じ理由かもしれません.その結果,日本が,特に老人が,わずかな貯蓄や資産を収奪されているのであれば,日本の金融規制や政策は間違っているのではないか? あるいは,日本の老人たちが貯蓄することで,世界の金融システムは安定性を維持しているのだ,と喜ぶような,日本の世界戦略だったのか?
Samantha Power How to stop genocide in Iraq LAT March 5, 2007
Patt Morrison If L.A. were Baghdad LAT March 8, 2007
How to make Baghdad conference a landmark FT March 9 2007
(コメント) アメリカ軍がイラクの大量虐殺を回避する道は,撤退までに,できるだけ平和的な形で,住民による自発的な非難と宗派間の住み替えを助けることである,とSamantha Powerは考えます.事実上の分離,イラク分割です.
Patt Morrisonは,イラクとカリフォルニアの面積がほぼ同じであることを利用して,その現状を説明します.つまり,同じことがカリフォルニアで起きているとしたら・・・? カリフォルニアやロサンジェルスのさまざまな場所と店で,爆弾が破裂し,死傷者が続出します.自分たちの身近な地名で,その距離と被害を実感できます.学校,教会,市場,・・・すべてが戦場です.
FTは,バクダッド会議の意義を強調しています.
WP Monday, March 5, 2007
By Sebastian Mallaby
40年前にシカゴのエコノミストEugene Famaが,金融市場は効率的である,と主張した.この命題は経済学の周辺から主流に入り,理性の再考の勝利であるとされている.気まぐれな,非理性的な投資家たちの行動が周期的に発作を起こすにもかかわらず,金融市場,すなわち,人々が将来についての意見を取引する市場が,すべて,情報を加工する最も間違いない方法である,と多くの人も信じている.今や,市場は何でも予測する.インフルエンザの流行から,ハリー・ポッターの新しいほんの売れ行きまで.
この勝利がどれほど完璧なものかを,先週の金融市場の混乱が示していた.
先週,「ダヴォスの分裂」が,ついに,緩和された.それは経済学者と政治学者との対立であった.先週の月曜まで,金融形はまったく有頂天であった.彼らはリスキーな借手にも極めて小さなプレミアムしか求めなかった.安価なローンの投入が世界の成長を加速し,プライヴェート・エクアティの儲けを増やし,IMFの危機管理に備える消防士たちを目標のない倦怠に落ち込ませていた.1月のダヴォスに集まったビジネス・リーダーたちは,イラクやイラン,世界の安全保障について暗いニュースがあったにもかかわらず,熱気に溢れていた.
それも月曜日までだった.市場の雰囲気は一変した.火曜日,S&P500が4年ぶりの大きな下げ幅を示した.不気味なまでに消えていた株式市場の浮動性が60%以上に跳ね上がった.冷静さは混沌に変わった.
このような回れ右は,効率的市場の理論を疑わせるものであった.もし「価格」が効率的であれば,そこには突然のUターンなどない.「効率的」とは,すべての情報が価格に反映されているということであり,新しい情報にだけ反応すれば良い.しかし,先週の浮動性の急上昇を説明するいかなる驚異的なニュースも無かった.アラン・グリーンスパンはモーゲージ市場に不安を表明したが,誰でも知っていたことだ.中国の株価が下がったけれど,外国人を排除した小さな市場であり,ロンドンやニューヨークの投資家を怖がらせることはできない.
本当は,たいした理由も無く,市場の雰囲気が変わったのだ.日によって,投資家たちは嵐の空から雷鳴を得たり,恐怖の叫びを上げたりする.驚くのは,これほど気まぐれな行動にもかかわらず,議会の誰も市場や投資家を非難する声を上げなかったことだ.ヘッジ・ファンドの情報公開を求め,年金を株式市場に投資することを非難するわけでもなかった.
それは良かったのだが,予想外である.いつの時代でも,どこの国でも,市場が混乱すると懐疑論が強まる.
マレーシア,ドイツ,フランス,アメリカ,繰り返し,指導的な政治家たちが市場を非難した.市場は効率的であるが,同時に,非合理的でもあるから,こうした非難は当然である.
もし政治家たちが市場を非難する十分な口実を持っているとしたら,なぜ彼らは先週の混乱に乗じてそうしなかったのか? 議会がウォール街の込み入った事情に配慮した,というのであれば大したものだ.しかしそうではないだろう.そんな細かいことを政治家は考えない.むしろ,市場の効率性に敬意を示すことが文化を変えてしまったのだ.
インターネットの時代に,多くの集団が分散して努力するほうが,専門家たちの作業よりも優れていると,人々は信じる傾向がある.ウィキペディアは伝統的な百科事典を圧倒し,eBayは地元の中古車販売店を廃業させる.そして政治家たちも市場の英知を尊重する特別な理由を持っている.アイオワ大学の政治的先物市場では,アマチュア・トレーダーたちが専門家の世論調査よりも,選挙結果を正しく予言するのだ.
Timo Notzel and Benjamin Schreer Germany must stop shirking a debate on its military FT March 6 2007
Demetri Sevastopulo How missile defence pits the Pentagon against allies FT March 6 2007
William Walker Scotland could go nuclear over the retention of Trident FT March 8 2007
Jack A Smith The futuristic battlefield Asia Times Online, Mar 9, 2007
Martin Kettle We don't need Trident, we need a whole new plan The Guardian Saturday March 10, 2007
(コメント) ドイツ議会はNATOによるアフガニスタンへの軍事支援を増強するかどうか,論争しています.ドイツにもNATOの同盟国として等しい分担を求める声に,ドイツの国内政治が合意を形成で規定ません.きっと日本も同じ問題を考えるでしょう.ただし,まだアジア版NATOがありません.
アメリカによるミサイル防衛網に,各国はどのように参加するのでしょうか? どのようなミサイルがどこから発射され,その場合,どこまでが防衛できるのか? それぞれの国で考えることは違うでしょう.
イギリスの核武装を更新する作業は,スコットランドの独立を刺激するかもしれません.あるいは,史上初めての主要国による核武装の解体,そして国際非核化体制をもたらすチャンスとなるのかもしれません.
LAT March 6, 2007
By Dinah L. Shelton
NYT March 6, 2007
No Comfort
LAT March 7, 2007
Paging the emperor
BG March 8, 2007
The Japan that can't say sorry
FT March 9 2007
Lunch with the FT: Masahiko Fujiwara
By David Pilling
The Japan Times: Friday, March 9, 2007
Retreat from responsibility
By TOM PLATE
(コメント) 従軍慰安婦問題がアメリカ議会で取り上げられ,日本の首相がそれを否定したということで,アメリカ議会と意見の対立になりました.日本政府は慰安婦を強制していない,と言うつもりか?
テレビで,麻生外務大臣がまともな反論もせずに,理不尽で無理解な外国からの非難を相手にせず,日本人にだけ通用する皮肉な笑いだけで,議論にふたをしてしまう様を,武村健一氏が引き継いで,スッパリ断定しました.日本政府が,日本人の拉致問題にだけ敏感で,朝鮮人の強制連行と言えば,韓国やアメリカの人にとって同じ問題であるのに,関心を示すことが無いとしたら,日本政府の主張は不当であると彼らは感じるだろう.そのような印象を与えてはならない,と.
麻生氏が応えなければならなかったアメリカの論説は,たとえば,こんな風に厳しい意見を示していました.「ヨーロッパ諸国では,ホロコーストを否定する発言をすれば処罰される.それに比べて,日本人の戦争犯罪は十分に告発されたことがないし,知らされてもいない.多くの犠牲者はまだ賠償を受けていない.」Dinah L. Shelton
安倍首相は,強制されて慰安婦となった証拠はない,と事実そのものを否定しました.軍が直接やったわけではない,と.番組で質問された麻生氏は,調査はすればよい,と投げやりな調子で応えていました.また麻生氏は,あれは拉致ではない,あのときは彼らも日本人だったから,と応えました.
「日本軍が運営,もしくは協力する約2000の売春宿で,おそらく10万から20万人の中国人や朝鮮人の女性が日本兵にセックスを強要された.多くは誘拐され,強姦され,だまされて連れて来られた.もちろん一部には」,安倍首相が言うような,「家族が娘を売った場合もあっただろう.」
生き残った慰安婦たちは,アメリカなど,外国の法廷で日本人の犯罪を告発してきました.しかし,日本人の犯罪を裁く権限が無い,という理由で,訴えは退けられています.そのことは,事実を否定したり,罪を認めない姿勢の理由にはなりません.ヨーロッパ諸国がナチスの犯罪に取り組んだ姿勢を,日本政府は今後,繰り返し,比較されるはずです.
「犠牲者たちの償われない悲嘆は,再び現れる.ときにはそれが,抑制できないような紛争になる.かつてのユーゴスラビアやルワンダで起きたことだ.」 日本政府は,特に自民党や,安倍首相,麻生外相のように戦争犯罪とのかかわりを問われる過去との関係を持った人々は,自ら積極的に情報を示して,説明し,理解や融和を求める責任があるはずです.それを機会としてアジアの戦争犯罪法廷を呼びかける勇気を示せないなら,彼らが日本政府を代表する地位にあることを,せめて,国民が深く後悔していると,内外に示すしかありません.
それ以外に日本が注目されたのは,キャリー・トレードと藤原氏のベストセラーです.
LAT March 6, 2007
Big business in body parts
By Kerry Howley
(コメント) LifeCell Corpは2006年に1億4000万ドル以上の収入があったけれど,その主要な源泉は「死体」であり,しかも,死者たちの遺族には支払いがなされていない,という論説に,誰もが少しは驚くでしょう.それは法律によってドナーへの支払いを禁止されているからだ,というわけで,Kerry Howleyは現代の医療と臓器や皮膚などの提供,売買を認める法制化に向けて,議論を求めているわけです.提供する側は善意や好意などによって無償の行為と認めていますが,その反面,提供される側は医療機関や患者への配分にお金が必要です.肉体を売買する倫理について議論するだけでは間に合わない.“We're knee-deep in the body bazaar.” 公正なルールを求める,と.
NYT March 7, 2007
The Value of Their Values
By RORY STEWART
(コメント) アフガニスタンの復興を願うRORY STEWARTは,欧米の介入が文化を軽視している,と批判します.さまざまな欧米学問のジャーゴンを基準に社会を爆撃し,貨幣を創出し,選挙を行う.それで,民主的な社会,自由な経済ができるだろうか? できないときには,現地社会や住民が非難される.それはたわごとだ.もし社会が復活するとしたら,新しい価値がその地域の文化によって受け入れられるからだろう.
「イラクでもアフガニスタンでも,人々は勇敢で,魅力的だ.そして寛大で,誇り高い.」 必ずしも援助や自由貿易は正しくない.政策顧問たちが何を押し付けるより前に,そのことを忘れるな・・・
FT March 8 2007
Regime change at the Bank 10 years on
By Samuel Brittan
(コメント) 中央銀行や金融政策の全盛時代はまだ続くのでしょうか? もう終わった?
「経済政策において流行は重要だ.イングランド銀行は,戦間期の失業に責任があると疑われて政界における憎悪の的になっていた.ウィンストン・チャーチルは,イングランド銀行のモンタギュー・ノーマン総裁に殺された,と感じていた.その後,サー・スタンフォード・クリップスが戦後の労働党政権で大蔵大臣を務めていたが,彼は国有化されたイングランド銀行を自分の「奴隷」だと自慢した.
しかし現代では,その振り子が逆の極端に振れている.中央銀行の独立性をたたえる意見が政治的党派の違いを超えてあふれている.多くの論説が中央銀行を全知全能のように扱う.この5月にブレア政権は5周年を迎えるが,その国内経済政策における最大の成果を,イングランド銀行に独立性を与えたこと,と評価する声がある.制度の改革はインフレ目標をマクロ経済政策の支配的な地位に高めることで実現した.ローマ人の諺にあるように,『もし平和を望むなら,戦争に備えよ.』 それを現代に当てはめれば,『もし成長を望むなら,物価の安定が必要だ.』」
「イングランド銀行独立最初の10年は,最も熱狂的な支持者たちも望み得なかったほどの大成功であった.9年間の完全な統計が利用できる.イギリスの小売物価指数は平均で2.5%の上昇であった.それは1970年代80年代の9.6%に比べて,はるかに低かった.経済停滞がもたらされると悲観論者は恐れていたが,生産や雇用の増大が加速した.
イングランド銀行は賢明にも成果を誇示していない.そして狡猾に,インフレの無い継続した拡大という,最近の「素晴らしい」時期に存在した幸運な要素を強調する.新興市場の低コスト生産者たちが物価を抑え,余分な需要を海外に吐き出したし,賃金が競りあがるよりも,新しい移民が流入した.イングランド銀行は今後の数年がそれほど「素晴らしい」時期ではないと心配する.すなわち,国際商品価格,安価な移民,特に,経常収支不均衡の持続不可能な状態と世界の実質金利水準である.また,対外赤字を減らすためにポンドの減価が必要になるかもしれない,と警告する.」
「イングランド銀行の顕著な特性は,期待と信認を強調する点である.もし雇用者も労働者もインフレが安定していると信じているなら,避けられないショックに対して賃金や価格を引き上げることで運命を変えようとしないだろう.それゆえイングランド銀行は大幅に動く必要が無く,市場の機能に任せるだけでよい.アメリカのベン・バーナンキFRB議長はさらに進んでいる.他方,イングランド銀行のメルヴィン・キングやECBのトリシェ総裁は,インフレと実物経済の両方を安定化する責任を認める.
バーナンキは,物価の安定性にゆるぎない信頼があるときだけ,連銀は実質的な需要を刺激できる,という.議会と大統領が一時的な財政刺激策を適用するほど激しい不況のときには,政府と中央銀行が共同行動を取ることも『有益で,さらには必要である.』 しかし,伝統的なタカ派として,正常な時期には財政規律を重視し,それは不況の際に景気刺激の余地にもなる.だからバーナンキは,ラモント卿の『イギリスのインフレ目標で歴史が終わるのではない』という注意に賛同する.」
March 8 (Bloomberg)
China's Tail Wags the U.S. Dog? C'mon
Caroline Baum
March 9 (Bloomberg)
BOJ, Fukui Must Go Radical to End Debt Crunch
William Pesek
FT March 9 2007
China deploys its reserves
(コメント) 株式市場と,円キャリー・トレードと,中国の外貨準備.それらはどの程度関連しているのか? たとえば,アメリカ政府と投資家がまともな水準を無視するほど愚かで,日本政府と日銀が不況対策を取れないほど愚かで,中国政府が国内の生活改善を軽視するほど愚かなために,世界中の企業や消費者が混乱しているのでしょうか?
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The Economist, February 24th 2007
Missile defence: Europe’s space wars
The world economy: Switching engines
Immigration: One more shove
Russia: The hollowing out of politics
Economics focus: Carry on speculating
(コメント) ミサイル防衛網をめぐるヨーロッパ各国の対立は,世界経済のエンジンが新興市場に移る話とともに,国際秩序の転換を考えさせられます.ロシアの国内政治はますます空洞化することを,チェチェンの現状から予想できます.
他方,日銀の金融政策決定が,円安やキャリー・トレードとの関係で海外から注目されていましたが,日本での論叢は今も政治家たちとの暗闘です.円キャリー・トレード? 金利平価はどうなったのか? 先物でカバーせずに主婦や老人たちが外債投資に向かうのか? あるいは,日本のファンド・マネージャーは何か変なことをしているのではないか? と疑われる気分を,すっきり解消させてはくれません.