IPEの果樹園2007

今週のReview

2/19-2/24

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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大企業と弁護士, プライヴェート・エクイティー・ファンド, 米中対立1,2, プーチンのロシア, アジアのバブル, フェンスに満ちた世界, 北朝鮮と6カ国協議

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


LAT February 9, 2007

Kiss a baby then, support our troops now

Rosa Brooks

WP Friday, February 9, 2007

Britney vs. The Terrorists

By Robert R. Reilly

(コメント) 「かつて政治家たちは赤ん坊を抱き上げてキスしたものだが,今は違う.」 テロと戦争の時代に,政治家のアクセサリーとしてふさわしいのは,赤ん坊ではなく,兵士たちです.どちらの陣営も口角泡を飛ばして兵士たちを称賛し,彼らの行動を支持します.

しかし,それはどういうことか?

右派の政治家はイラクに派遣した兵士たちをブッシュ政権の人質にして,自分たちを否定するのは論外だ,と考えます.他方,左派の政治家はブッシュの間違った判断で命を奪われる兵士を増やしてはいけない,と考えます.誰よりも,兵士に聞けば分かるじゃないか?

Rosa Brooksは,兵士たちを政争の具にするな,と主張します.兵士たちは国益を守るために命を危険にさらすと自ら志願した者たちであり,それを促す報酬や特典を与えられています.また,彼らはその決断において称賛されるのであって,戦場に立つからと言って,アメリカ外交の専門家になったわけではありません.

逆に,Robert R. Reillyは,アメリカ政府が「ボイス・オブ・アメリカ」のアラビア語ラジオ放送で,まともなニュースや解説を行わず,ブリトニー・スピアーズなどの音楽ばかり流している,と批判します.アラブ人たちはアメリカ政府が真実を語らず,アラブ世界の若者を愚昧化する,あるいは,真実など理解できないと思っている,と考えるでしょう.

MTVを世界化しても,反米感情を緩和するわけではありません.


Asia Times Online, Feb 9, 2007

Innovation the name of the game

By Dan Steinbock

Asia Times Online, Feb 10, 2007

Sun Tzu's art of investing

By Chan Akya

(コメント) 中国は,科学技術でもアメリカの覇権を奪うつもりです.欧米諸国や日本は,中国やインドが製造業で追いつくことを,自国の産業や雇用のハイテク化で解決できるでしょうか? 特に,主要な多国籍企業が,インドや中国に先端的な研究所を移し,大量の優秀なエンジニアや潤沢な政府補助金を確保することにより,先端分野の研究を低コストで,しかも加速する道に殺到するとき,その見通しの甘さは明白です.

中国が従うのは,IMFの指導より,孫子の兵法である,とChan Akya指摘します.ドルの外貨準備は他通貨に分散し,一流企業の株式を購入します.国際商品市場の投機に負けることは許されないし,中東地域からの石油輸入と交換に輸出を増やすでしょう.南アフリカのアパルトヘイトやイスラエルの核開発を支持し続けた欧米諸国が,中国に人権や核拡散で注文を付けるのは間違いです.

アメリカが中東の支配を維持するいためにイランを攻撃するなら,中国がアメリカに交代する時期を早めるだけです.


FT February 9 2007

Licensed to curb a retail leviathan

By Christopher Caldwell

The Observer Sunday February 11, 2007

Welcome to the Dark Age of capitalism

Will Hutton

(コメント) ウォルマートの年間収益が3000億ドルを超え,180万人を雇用している,ということです.この巨大な怪獣が暴れるのを,誰が抑えるのか?

カリフォルニアの法廷は,160万人の女性被雇用者を代表して性差別(Sexism)訴訟に立った人々に判決を示します.これは通常の裁判ではありません.その人数はウェールズの住民を超える規模です.彼らは特定の行為ではなく,ウォルマート(そしてアメリカ)の経営者たちが行ってきた賃金や昇進のすべてに女性差別を見ています.

歴史的に,政府が大企業を規制できないと分かったときには,大企業には向かう集団の束縛を解いて,彼らが伝統的な社会的制約を破ることを認めた.産業経済においては,労働組合が労働者個人の自由な労働契約を組合に従わせる強制力を与えられた.それが社会にもたらすことで,大企業の免責状態を崩す,という実際的な利益は憲法を破るコストよりも大きかった.今日,組合や反トラスト法の効果は失われ,ウォルマートを倒せるライセンスを認められたのは法廷弁護士たちだけである.彼らが処罰を与え,利益をもたらすだろう.」

さまざまな改革運動やユートピアンが現れています.しかし,消費社会におけるリバイアサンを本当に縛ることができるのは,法廷弁護士たちかもしれません.

イギリスの大型ショッピング・チェーンSainsbury買収に,プライヴェート・エクイティー・ファンドという怪物が近づいています.KKRCVCthe Blackstone Group,など.しかも,彼らが企業の買収に動けば,主要な銀行が彼らに巨額の融資を行います.Will Huttonは,資本主義なら当然だ,という考えを批判し,これは民主主義の問題だ,と主張します.なぜなら,もし予定通りSainsburyが買収されて株式が非公開にされてしまえば,100億ポンドの借金を返済するために何をするのか,人々は知ることができないからです.

あるいは,鶏インフルエンザはどうでしょうか? Sainsburyに限らず,大型チェーン店が鶏肉などの食品を,どれほど工場で大規模に処理しているか,実際に見れば大きなショックを受ける,とHuttonは書きます.消費者が鶏インフルエンザに感染した鶏肉を間違って口にしないためには,こうしたやり方を再考するべきではないか? その際,テスコやマークス&スペンサーのような企業と違って,市場に公開されていない大型店で何が行われているか,消費者には知る術がない?

プラーヴェート・エクイティーは,公開市場では許されないようなやり方で,短期的に収益を増やす方法を取ろうとします.彼らは店舗を売却し,労働者を解雇し,賃金を削って,収益を上げた分から莫大な成功報酬を得ます.その報酬についても情報は公開されません.

企業は,公開されていることで,社会的な説明責任を果たします.プラーヴェート・エクイティーによる買収の流行は「資本主義暗黒時代」の開幕です.


Chet Currier Fund Investors Make $1 Trillion Bet on the World Feb. 9 (Bloomberg)

CARTER DOUGHERTY Economic Powers to Study Growing Influence of Hedge Funds NYT February 11, 2007

Sundeep Tucker Asia appears fertile buy-out terrain but pitfalls lurk FT February 11 2007

Wolfgang Munchau The Germans have the right idea on hedge funds FT February 11 2007

China's welcome cools FT February 12 2007

Jonathan Spalter Hedge funds face stark choice: revelation or regulation FT February 13 2007

Private equity must be readier to explain what it does FT February 14 2007

Private equity antitrust FT February 15 2007

(コメント) グローバリゼーションの功罪を騒ぐことは勝手ですが,さまざまなヘッジ・ファンドのおかげで配当の増えた投資家もいたでしょう.グローバル・ファンドの規模は,2006年末で,1兆6000億ドルに達すると推計されます.私たちの貯金や年金が,知らぬ間に,世界中の債券や株式に換えられています.

そのリスクは明らかです.新しい投資機関や担当者たちが,次のショックにどのような反応を示すのか,よく分かりません.せめて,資産のどの程度までリスク資本として保有できるか,海外投資できるか,世界で統一した規則を決めておくべきだ,という議論が興ります.

ただし,エッセンで開かれたG7は,自主規制を求めただけでした.アメリカのポールソン財務長官も,その一つGoldman Sachsの出身です.

アジアにも,エクイティー・ファンドの進出が目立っています.欧米と同じように,金融緩和で低利の資金が豊富に利用できること,株式市場における情報公開から逃れた形で企業を合併・再編したいこと,がその主要な理由です.ただし,中国や韓国で顕著なように,外国投資家へのナショナリストの反感が制約になるでしょう.

それでも,1990年代にヨーロッパ企業がそうであったように,アジアのファミリー企業が株式化する場合,今後,エクイティー・ファンドの活躍が広がると期待しています.ただし,アジア通貨はいまだに分裂しており,ユーロ市場のような規模を持たないために,為替レートのリスクがより重要な制約になるかもしれません.

G8(G7+ロシア)において,ドイツはヘッジ・ファンド規制に積極的でした.ドイツの政治家や国民の一部には,ヘッジ・ファンドをひどく嫌う者がいます.それは畑を食い尽くす「バッタの大群」,貪欲や不幸の代名詞です.その感覚は,多分,日本人にも共通します.

Wolfgang Munchauは,ヘッジ・ファンドから企業を守るのは必ずしも正しいことではない,と考えます.大企業が私物化され,資本が浪費されている場合も多いからでしょう.しかし,銀行と同じように,それが大きな外部性を持つから,公的な規制の対象にするべきだ,と支持します.それほどヘッジ・ファンドの性格が変わった,と言えます.銀行預金からの融資を利用し,また,さらに資金を集めるため株式公開も始めたのです.

彼らが低利の短期融資を投機的な資産の売買に利用し,円キャリー・トレードで利益を得ることは,以前のように,資産家たちの私的運用で片付けられません.


IHT Friday, February 9, 2007

A two-edged weapon

Ian Bremmer

(コメント) 外交努力と軍事力の行使との間で,アメリカ政府は経済制裁を多用します.イラン,北朝鮮,キューバ,シリア,スーダン.しかし,その成果は乏しいものです.

なぜなら,アメリカ以外の多くの国に同調を求めることが難しいからです.制裁を有効にするために協力しなければならない国の数が増えています.そして特に,イランのように,石油を輸出している国や,北朝鮮のように,アメリカ以外の国が地域の安全保障に強い関心を持つ国が,制裁に同調せず,アメリカが強制できる相手でもない場合,制裁は名目的になります.

そして,軍事力ほどではないけれど,制裁にもリスクがあります.金正日やアフマディネジャドの政治基盤や選択肢,破壊的な行動を実際に取る可能性を,十分に考慮しなければなりません.


IHT Friday, February 9, 2007

More skirmishes do not make a war

Bruce Stokes YaleGlobalPublished: February 9, 2007

IHT Sunday, February 11, 2007

Engaging China will ease trans-Atlantic tensions

Philip H. Gordon

(コメント) アメリカ政府は中国の産業補助金についてWTOに提訴します.それは,保護主義に傾く議会を牽制する「先制攻撃」です.

アメリカ人は貿易不均衡や対外債務,中国の影響力を心配しています.アメリカがこれほど大きな貿易赤字を続けるのも,中国がそれを融資してくれるからだ,と分かっています.しかし,中国が「世界の工場」として力を付け,外貨準備を積みますほど,アジア諸国は中国の生産過程に組み込まれ,アメリカよりも中国の主張に耳を傾けるでしょう.アメリカが中国に何か要求しようとしても,ドルの外貨準備を売却するのではないか,と恐れなければなりません.

中国は人民元を不当に安くしている,と非難する声は強いものの,ウォール街は為替レートで米中が紛争を起こすことを強く嫌います.たとえ民主党議員でも,それを無視することはできません.また,アメリカは中国に対してだけ赤字を増やしているのではありません.貿易不均衡の原因は,中国にではなく,アメリカにあるのです.

議会が保護関税や人民元切り上げを求める前に,ブッシュ政権はより限定した中国の政府補助金に対する懲罰行動に出ました.しかしBruce Stokes,貿易摩擦や経済摩擦を繰り返すとしても,それが米中関係そのものを悪化させるとは考えません.緊密に統合した経済関係をめぐる米中摩擦は,もはや,戦争に至るわけではないのです.

Philip H. Gordonは,イラク戦争で激化した欧米間の対立が,最近,緩和している,と指摘します.今もアメリカは一方的な支配,ヨーロッパは多極的な世界を描いていますが,特に,イランの核開発を阻止するために協力し,その点で,安保理の制裁決議を拒む中国の姿勢を問題にしています.同じく,地球温暖化についても,アメリカの姿勢に変化が見られ,それに比べて中国の反応は鈍いものです.

ロシアの封じ込めに関して,かつて欧米関係は協調を重視してきました.今度は,中国の台頭を国際秩序に取り込むために,欧米の協調が重視されるでしょう.


NYT February 9, 2007

Not Their Parents’ Russia

By THOMAS L. FRIEDMAN

現在のロシアを描くには三つの視点がいる.

一方で,プーチン政権下のロシアをもはや「民主的」とは呼べない.議会を無力化し,メディアを潰すか買収し,主要なエネルギー企業を法的に服従させるか強制的に支配した.

他方,ロシア人にはボリス・エリツィンが,共産主義崩壊後,民主主義をもたらしたときに起きた破壊的で絶望的な混乱の激しさが良く話題になる.多くの人々が強い指導者,安定した経済,そして西側の消費財を買い溜めすることを渇望していた.だから,プーチンが支持されるのには理由がある.

そして第三に,現在のロシアは,資本家的な皇帝,ギャングの親分,ナショナリストたち,民主化運動,の狂ったキルト織の布である.全体主義的なソビエト・ロシアでは決してない.それはむしろ第二次世界大戦後のド・ゴールが支配した権威主義的フランスに,戦後イタリアが示した腐敗と混乱を大さじ一杯加えたような感じである.それらの国が第二次世界大戦から復興したときも,完璧な民主主義とは言えなかった.

しかし60年を経て,一人当たり所得は大幅に増え,フランスもイタリアも今では西欧の安定化に貢献している.その多くの欠陥にもかかわらず,その戦後政府は民主化の時代にふさわしい条件に維持し,基本的に自由な市場と自由な政治で一世代を育てた.私はまだ,時が来れば,ロシアも同じ道をたどるだろうと考えている.

「歴史的に見れば,移行は非常に急速であった.」とロシア政治テクノロジ^研究所の副所長,Boris Makarenkoは語った.「しかし私は47歳である.娘の将来については楽観している.・・・正常な中産階級が育っている.私自身がその結果を確認できるほど早くはないが.」

もちろん,エリツィンによる民主化の実験は終わった.カーネギー財団のモスクワ事務所長であるRose Gottemoellerは述べた.「1998年のルーブル危機がその正統性を奪い,極端な腐敗とオリガークによる支配が現れた.しかし,ロシア民主化の実験は終わっていない.なぜならロシアは変化し続けているから.」

Gottemoeller女史は,アメリカ人だが,最近,レーニンの生地Ulyanovskを訪問したときの話を語った.そこはロシアの老朽化した工業地帯で,みんな企業家の,三組のカップルと話し合った.彼らは質問がある,と言った.「あなたは中産階級を何だと定義しているのか?」 さらに,彼らのことを中産階級と思うか? アメリカで中産階級とは何なのか? と問うた.彼らは中産階級の広範なコミュニティーに結びついていると考えていた.彼らは決してプラカードを持って街頭に出ることはないが,その豊富は大きく,健全である,と.

自分のことを中産階級とみなす人々が,しばしば,その獲得したものを守るために法的・市民的な権利を要求して立ち上がる.彼らが何のために戦っているのか知らないとしても.それゆえ,ここでの民主化は三つの要素に依存するだろう.

一つは,新興の中産階級が得た物質的な条件を,石油・天然ガスの価格上昇により,どれほど政治から切り離しているか.もう一つは,遺伝子とも言えるロシアのナショナリズムである.それは常に膨張し,民主化を頓挫させる.私の滞在するホテルの前の通りでも,非合法移民を排斥する集団がユダヤ人と移民を非難して行進していた.

第三は,石油と天然ガスの価格である.ロシアを観察する者なら誰でも知っていることだが,石油価格と自由化とは反比例する.石油価格が下がれば自由化が進む.なぜならロシアは世界により大きく門戸を開き,人々に権力を譲らねばならなくなるから.

あなたがたアメリカ人にとって問題は,いつ石油価格が下がるか,である.それこそが,われわれロシアの民主化運動にとって唯一の希望である,とロシア国会のリベラル派,Vladimir Ryzhkovは言った.

NYT February 9, 2007

Another Bad Idea From the Kremlin

NYT February 11, 2007

Putin Says U.S. Is Undermining Global Stability

By THOM SHANKER and MARK LANDLER

(コメント) 早速,プーチンは天然ガスの供給諸国を集めて,新しいOPECを組織する意図を示しました.ただし天然ガスは石油と違ってパイプラインで供給し,備蓄が難しいため,カルテルになじみません.ロシアはOPECに加盟していません.

モスクワにおける安全保障会議で,プーチン大統領は,核拡散や中東情勢,特にバルチック海へのNATO拡大について,アメリカが世界を不安定化している,とブッシュ政権を非難しました.これに対して,逆に,ジョン・マッケイン上院議員はプーチンを批判します.イラン,イラク,チェチェン,グルジア,セルビア,コソボ,天然ガス禁輸,ミサイル防衛網,・・・ 日本政府は正しく発言できますか?


NYT February 10, 2007

India’s Economy Is on the Verge of Overheating

By KEITH BRADSHER

FT February 12 2007

Asian bubbles

Feb. 13 (Bloomberg)

Cheap Yen Is Vietnam's Woe, New Zealand's, Too

Andy Mukherjee

Feb. 14 (Bloomberg)

Independent Central Banks Are Rare Breed in Asia

William Pesek

FT February 14 2007

Central piggy banks

Feb. 15 (Bloomberg)

India Central Bank Plays '80s Music for Markets

Andy Mukherjee

(コメント) 改革と自由化,市場開放は,成長をもたらすだけでなく,格差と不安定性,景気過熱をもたらします.中央銀行はアジアにおいても経済状態の健全性を維持する役目を果たせるでしょうか? 

「ソウルの不動産,ベトナムの株式,中国の美術品,アジアの資産価格は上昇している.こうしたバブルがはじけるのは時間の問題か?」 しかし,低金利や資本流入はバブル破綻がまだ先であることを示しているようです.アジア諸国の中には,金融引き締めよりも資本流入規制を検討している国(タイに続いて,ベトナム)もあります.あるいは,さまざまな課税によって特定の資産価格の上昇を抑えることも試みます(韓国).

金利を上げれば資本が流入し,通貨の増価による一層の資本流入がバブルを膨らませます.特に,日本から流出する過剰な低金利の融資が,アジア諸国やオーストラリア,ニュージーランドのバブルにますます勢いを与えています.Bloombergの調査では,円で資金を調達してニュージーランド・ドルを買っておけば,過去半年でUSドルに換算して年率38%の利益を得たはずだ,ということです.

ニュージーランドの中央銀行も,住宅バブルを抑制するために高金利を採用して,ますます通貨が増価し,輸出や観光に悪影響が生じることを心配します.それでもだめなら? 各国は資本規制を真剣に検討しています.

アジアの政治家は,日本でも,中国でも,その他いたるところで,金融政策や債券市場を銀行家や投資家に任せるつもりはないようです.通貨高やインフレ抑制について,スムージングのために介入しています.しかし,バブルを抑制するのはどうか? 


The Guardian Saturday February 10, 2007

Turning tides

Joseph Stiglitz

IHT, Feb 14, 2007

Q & A with Joseph Stiglitz

Posted by Daniel Altman in Q & A

(コメント) 地球温暖化防止については,ヨーロッパの政治家たちが「有志連合」の形で,ブッシュ政権のアメリカを除いて,国際システムを立ち上げるチャンスになりそうです.

Making Globalization Work”の著者として,Joseph Stiglitzが以下のような質問に,簡潔かつ印象的に答えています.

Q.「なぜ貿易による制裁を政治目的に使用するのか?

Q.「グローバリゼーションは相対的な貧困を増やすのか?

Q.「グローバリゼーションが増幅する住宅バブルを抑制するために,世界的な規模の住宅価格(市場介入)体制が必要か?

Q.「インドはエネルギー安全保障のために人権問題を無視するべきか?

Q.「ベネズエラやチリの経済的成功についてどう思うか?

Q.「アメリカの賃金が上昇しないのは,グローバリゼーションのせいか,あるいは,技術革新のせいか? 何ができるのか?

Q.「NAFTAは正しかったのか? メキシコが宿題を残したままなのか? アメリカにとってNAFTA締結は良かったのか? 国境にフェンスを築くとどうなるか?」

Q.「WTOのルールに従ってEUがアフリカ諸国との経済関係から保護的な措置を取り除くことは,間違いではないか?

Q.「共有された意志なしに,グローバル・ガバナンスを動かせるか?


Meghan Daum I'm with Cupid LAT February 10, 2007

Alexandra Early A thorn in those Valentine's Day flowers BG February 13, 2007

Child-labor chocolates LAT February 14, 2007

(コメント) バレンタイン・デーについて.そのお金,その花,そのチョコレートやダイヤモンドは,<愛>の他に,この世界の何を表すのか?


FT February 10 2007

Back to school

(コメント) 肥満や消費者金融についての授業を必修科目にするような教育改革を,政府はするべきでない.学校が流行に振り回されることは良くない.


WP Sunday, February 11, 2007

A Change of Heart on Guest Workers

Janet Murguia president and chief executive of the National Council

(コメント) Janet Murguiaは,ブッシュ政権の「一時雇用ビザ」提案を,永遠の二流市民,下層労働者階級を作り出した,ブラセロ計画をまねるのである,と批判します.また,1986年の論争がそうであったように,アメリカの移民政策が機能していないことを根本的に解決することなしに,国内の非合法移民に国籍を与えるだけで,将来の無秩序な流入を阻止できる方策をともなわないような妥協を繰り返してはならない,と主張します.

そして,ヒスパニック系住民や移民たちの利益を代表して,完全な市民権に至る道を含む,アメリカ人労働者たちの賃金や権利を損なうことなく,安全で,権利を保護された,移民たちの働く機会を,移民たちの合法的経路として作りたい,と提案しています.

Gregory Rodriguez A town that wants illegal immigrants LAT February 11, 2007

B of A banks on illegal immigrants LAT February 14, 2007

JAN KRZYSZTOF BIELECKI Defending Polish plumbers makes sense The Japan Times: Thursday, Feb. 15, 2007

Nancy Lyall and Teresita Jacinto In Virginia, the Harm Of an Anti-Immigrant Bill WP Thursday, February 15, 2007

(コメント) 非合法であっても,彼らに生活できるような社会サービスを提供し,移民労働者のために十分な金利で小額の融資を行い,自由な移民労働者を受け入れながら,適切な社会政策を行うことが重要です.他方,その財源を移転しない,という法案が用意されています.


BG February 11, 2007

America's final mission in Iraq

By Chaim Kaufmann

(コメント) 民主的な憲法と選挙によって決まった議会や政府を持つ,アメリカ寄りの国家に再建する,というのがブッシュ大統領の描くイラク占領の使命でした.今は,もちろん,それどころではありません.

イラクの内戦を避けられるか,などと尋ねることが無意味なだけでなく,アメリカ軍が増派されても,イラクの分割を回避できるか,と問うことも無意味になってきた,とChaim Kaufmannは考えます.イラクやバクダッドの政治情勢に,フセイン政権崩壊後,アメリカ軍・政府が特別な影響力を行使できた条件は,すでに,はるか前に失われたのです.

事実上のイラク分割が進行しています.2003年以来,住居を追われたイラク人は200万人を超えると言います.アメリカ軍や政府からの圧力にもかかわらず,シーア派とスンニー派,クルド人は政治権力も石油の富も共有する意志を持っていません.アメリカ軍にできることは,この分割が進む過程で,罪もない市民たちが迫害され,財産だけでなく命まで失う状態に落ち込むのを,回避することです.事実上の分割ではなく,秩序ある,管理された分割を助けることが,将来の中東情勢を安定化し,アメリカの政治的な威信回復にもつながる最後のチャンスだ,とKaufmannは主張します.

あるいはイラクが,ナショナルリズムと大国の介入,という19世紀後半のバルカン半島情勢に似て,地域から世界に,戦争を引き起こす端緒になるかもしれません.

LAT February 11, 2007

A road map out of Iraq

By Zbigniew Brzezinski

WP Sunday, February 11, 2007

Victory Is Not an Option

By William E. Odom William E. Odom, a retired Army lieutenant general, was head of Army intelligence and director of the National Security Agency under Ronald Reagan. He served on the National Security Council staff under Jimmy Carter. A West Point graduate with a PhD from Columbia, Odom teaches at Yale and is a fellow of the Hudson Institute.

(コメント) Zbigniew Brzezinskiは,ブッシュ政権がその重要な戦略的決定を極めて少数の人々に依存している状態を憂慮します.アメリカが政策を転換しなければ,このまま情勢は悪化し続け,イランとの戦争や,イスラム圏全体に戦闘が拡大する事態も想像されます.

ブッシュ政権は,すでに,大量破壊兵器に関する間違った理由からイラクとの戦争を始め,それを正当化するためにナチズムやスターリニズムと同様,イスラム原理主義との戦いを鼓舞するイデオロギーを流布しています.こうした比喩は間違っており,イスラム圏を統一するイデオロギーや軍事力がアメリカと対立している現実など存在しないことをBrzezinskiは確認します

また,William E. Odomの経歴と意見を読めば,ブッシュ政権への政策転換を望む真摯な意見が強いことを実感します.


The Japan Times: Sunday, Feb. 11, 2007

It's increasingly a walled world after all

By GWYNNE DYER

もし良いフェンスが良い隣人を作るとしたら,世界にはかつて経験しなかったような隣人愛が満ち溢れているに違いない.前にもウォール・シティー(主に治安上の理由で,富裕層が居住する地区を防壁で囲んだ町)はあった.今や国全体を壁が防御している.

その最新の壁を建てたのはタイである.マレーシアとの境界で,75キロに及んで交流をできないようにする壁を計画している.バクダッドの政府によれば,言語や宗教を共有する,マレーシア北部からタイ南部のイスラム教徒が多数を占める地域へ,「テロリストたち」が流入するのを防ぐことが目的である.他の地域の例を見れば,境界線がすべて防壁で閉ざされるようになると思う.

インドも防壁で囲みつつある(ヒマラヤが北部に天然の防壁を提供する).パキスタンとの3000キロに及ぶ境界には,険しい,しかも内戦の地で,すでにフェンスや有刺鉄線の障害物に満ちたカシミールを除いて,ほとんど,壁は築かれてしまった.

さらにインドは,バングラデシュから流入する非合法移民を阻止するため,さらに長い3300キロの防壁を築きつつある.

中国政府が北朝鮮との境界に築いている防壁は,ピョンヤンの体制が崩壊した場合に備えて,中国に向かう膨大な難民を阻止するものである.

世界中で姿を現しつつある防壁の多くは,テロ攻撃を防ぐとか,非合法移民を阻止するものであるが,ときには,一方的にその国が主張する境界線を定めるためのものである.たとえば,モロッコが1975年に併合した西サハラを,アルジェリアに逃れた住民たちが難民キャンプから攻撃するゲリラ戦争は,1991年の停戦まで続いた.この土地を守るために2700キロの土塁,有刺鉄線,地雷,レーダー,塹壕,弾薬庫が築かれている.

ヨルダン川西岸を張り巡らせるイスラエルによる防御壁も同じ目的である.エジプト,ヨルダン,シリア,レバノンとの境界に,また,ガザ地区周辺に,イスラエルは地雷とモニターを備えた防壁を築いている.それは1967年の停戦協定に従わない.むしろそれは多くの点でパレスチナ居住区をまたいでユダヤ人入植地をイスラエル側に取り込み,アラブ系住民の多い東エルサレムを西岸から完全に切り離す.

パキスタンはアフガニスタンとの境界に2400キロの防壁を建設中であり,ウズベキスタンはタジキスタンとの境界を防壁で閉ざし,アラブ首長国連邦は周辺のオマーン,クウェートとの境界に,すでにイラクとの境界にある215キロに加えて,壁を建てている.しかし,最も驚くのは,サウジアラビアを取り囲む壁である.

何年もかけて,サウジ王室はイエメンとの間の不完全な境界を全域にわたって封鎖する壁を,85億ドルかけて建設する計画を静かに進めてきた.しかし,今最も優先されているのは,ハイテク完備の防壁をイラクとの境界線900キロに建てることだ.

「イラクが分解すれば,膨大な人々が南へ逃れるだろう.」と,国家安全保障評価委員会の委員長Nawaf Obaidは言う.「われわれは準備しておく必要がある.」

新しい防壁には,動体センサー,夜間監視カメラ,人物認識ソフト,電圧バリアに加えて,自動攻撃装置,有刺鉄線障害物,空堀,地雷,が完備してある.

それに比べれば,3360キロのアメリカ・メキシコ国境を比較的低いフェンスで塞ぎ,非合法移民を排除しよう,などという論争を果てしなく続けているのは,無邪気な過去の余韻に思える.アフリカからの非合法移民阻止に向けたEUの弱弱しい対応(モロッコにおけるスペインの飛び地をフェンスで囲み,カナリア諸島を海軍がパトロールする)は,単に,情緒的なものである.しかし,ヨーロッパでさえ,多分,こうしたことは過去の良き時代として最後のものになる.

アメリカがメキシコ国境を管理できないのは政治的な理由によるものであり,財源不足や技術の問題ではない.アメリカにおいて非合法に,それゆえ,非常に低賃金で働くメキシコ人「未登録」労働者を安定供給するために,国内の強力なロビーが動いている.

ジョージ・W・ブッシュ大統領は1125キロのフェンス建設計画を議会に承認されたが,いわゆる「ヴァーチャル・フェンス」の実験に成功しない限り,建設は進まない.

そのようなロビーはEU内にないから,EU内に本格的な防壁が現れるのは時間の問題である.特に,ロシア,ベラルーシ,ウクライナ,そしてトルコとの境界に築かれるだろう.世界中に壁が建てられる.そして,それらは永くそこに聳えるのだ.永久に,とは言わないが.


Let's try to make a deal LAT February 12, 2007

JIM YARDLEY Tentative Deal Reached With North Korea, Envoy Says NYT February 12, 2007

Anna Fifield N Korea agrees to shut nuclear plant FT February 13 2007

Anna Fifield N Korea is being lured back into the fold FT February 13 2007

John Gittings Back from the brink The Guardian Tuesday February 13, 2007

JIM YARDLEY North Korea to Close Reactor in Exchange for Aid NYT February 13, 2007

Donald Kirk North Korea accord: Now for the hard part Asia Times Online, Feb 14, 2007

From the axis of evil to a grand bargain FT February 14 2007

A good deal with North Korea BG February 14, 2007

North Korea: Bad behaviour works The Guardian Wednesday February 14, 2007

Multilateralism works on North Korea LAT February 14, 2007

The Lesson of North Korea NYT February 14, 2007

North Korea comes in from the cold CSM February 14, 2007

Gordon Corera Will the North Korean deal hold? BBC 2007/02/14

US enters the reality zone on North Korea Asia Times Online, Feb 15, 2007

Jim Lobe Political battles just beginning Asia Times Online, Feb 15, 2007

Jonathan Power A deal that's hardly sealed BG February 15, 2007

Bennett Ramberg How to live with a nuclear North Korea IHT Thursday, February 15, 2007

Breakthrough with North Korea The Japan Times: Thursday, Feb. 15, 2007

Shim Jae Hoon North Korean Nuclear Agreement: Back to the Future? YaleGlobal, 15 February 2007

William Pesek Happy Birthday, Kim Jong Il; Here's $14 Million Feb. 16 (Bloomberg)

Kim Myong-chol Bush waves a white flag Asia Times Online, Feb 16, 2007

(コメント) 6カ国協議によって北朝鮮が核の放棄に向けた合意を示したことは,ひとまず,大きなニュースです.それがアメリカで大きく取り上げられたのは,ブッシュ政権は外交的な成果を示したいし,また,政府に批判的な人々にとっても,イラク問題やイランの核放棄に新しい望みをつなぐものだ,と感じるからでしょう.それが,ひとまず,という限定を付けられ,大きく割り引かれた希望と,将来への警戒感と共に示されるのは,北朝鮮とのこれまでの合意が無駄であったからです.どこにも,これで解決した,と狂喜する意見はありません.

北朝鮮を正常な国際関係に戻すには,まず,そのプルトニウムを国際監視の下に置き,貯蔵された核物質を確認することだ,とFTは指摘します.しかし,交渉の見返りに石油を求めるようなやり方は拒むべきだ,と.

おそらく,マカオの銀行口座を凍結したことから,金正日一家の支出に障害が起きたわけです.それを解除して,さらにさまざまな援助物資を与える必要があるのか? 交渉から離脱し,完全な経済封鎖を行うほうが良いのではないか? 中国や韓国による説得と軍事圧力を強める?

6カ国協議,と言っても,米朝交渉が主な決定を左右しており,その他の国は何をしたのか,良く分かりません.東アジアの安全保障や北朝鮮の体制がどうなるのか,これから積極的に議論しなければならないでしょう.もしそれを避け,北朝鮮が「瀬戸際外交」を続ける一方,近隣諸国は非難と援助の循環を続けるとして,それで解決に向かうのでしょうか?

また,アメリカの政府内部におけるタカ派は次の展開をどう読み,ロシアや中国,韓国は何を主張するのか? 関係する大国の利益を計算し,取り引きするしかないでしょう.その合意を固める程度に応じて,北朝鮮の揺さぶりは効果を失います.

FTの予期に反して,ブッシュ政権の「悪の枢軸」論は消滅し,「グランド・バーゲン」論に変わりました.これで核は封じ込められて,平和が維持される? 先日まで,「ミュンヘン会談」や「独裁者への褒章」,「宥和政策」を激しく非難していたはずですが.彼らが嫌ってきた,クリントン政権の失敗を繰り返さないか?

ジョン・ボルトンは,この合意がブッシュ大統領のこれまでの主張に背いており,アメリカを弱く見せたという理由で,失敗だったと考えます.しかし,核保有を前提すれば,北朝鮮に安全保障を約束し,援助によって相互の信頼と市民生活の改善を図り,政治的改革を促すしか道はありません.当然,中国と韓国が重要な役割を担います.

あるいは,これは単に,金正日の誕生日を祝う賞品でしかなく,アメリカは白旗を掲げたのか?

日本政府は,まず,拉致問題を全面解決することだ,と主張しています.それを無視した6カ国協議そのものに不満を示す声をテレビは流しています.しかし,それは正常化交渉の一つとして考えるべきでしょう.合意は成果として,制限するのではなく,次の協議を加速してほしいです.


FT February 12 2007

America finds its hands tied by new rivals

By Daniel Dombey

LAT February 12, 2007

How to stop the U.S. from being Goliath

Niall Ferguson

FT February 12 2007

As America looks the other way, China’s rise accelerates

By Gideon Rachman

IHT Monday, February 12, 2007

Meanwhile: China changes, not Hong Kong

Philip Bowring

WP Tuesday, February 13, 2007; A21

America's Quiet Victories in Asia

By Michael J. Green

(コメント) Daniel Dombeyは,外交官や国際関係の専門家が描くイメージを要約します.アメリカの一極支配は終わり,明らかに多極化の時代が来ている,ということです.

これからは,アメリカでも国連安保理でもなく,それぞれの地域が,それぞれ異なったルールや覇権国を見出すでしょう.アメリカは,世界の安全保障や危機回避の役割を後退させて行きます.すでに,その行動は,ロシアや中国,イラン,などに制約されています.

多角主義,もしくは外交の時代になるでしょう.しかも,それはますます成果が乏しく,困難な時代になるのです.それでも,他の可能性はもっと悪い,という意味で,多角主義は続くでしょう.

Niall Fergusonは,アメリカの支配力が衰えた理由を,戦場の変化に見ています.かつて空爆によって,短期間で圧倒的な優位を示せたアメリカが,今では接近戦やゲリラの掃討に疲れて,兵士や武器,財源を消耗し続けています.

アメリカの兵士は確かによく訓練され,秀でた装備を持っている.しかし,反乱軍は自分たちの戦場のことをよく知っている,と.

Gideon RachmanPhilip Bowringは,中国について考えています.アジア全域に及ぶ中国の経済的影響力は,日本が安保理の常任理事国になろうとしたとき,シンガポール以外に,アジアの国で明確に支持したものはいなかったことに示されています.しかし,彼らも良く知っています.たとえばベトナムの政治家は述べました.「中国が隣人であれば,あなたは眠るときでも必ず片目を開けておくべきだ.」

もちろん,台湾海峡では対立がもっと鮮明です.しかし,あからさまに軍事力で独立を牽制する中国の姿勢に,アメリカは曖昧な容認を示しています.最優先するはずであった対中政策が,中東に関与して関心を失い,その間に,注五億の影響を拡大するままに放置する結果となっています.

しかし,Philip Bowringによれば,変わったのは香港ではなく,中国なのです.その意味で,将来,中国の台頭が話題になるとしても,その意味は変化し続けます.また,Michael J. Greenは,アジア諸国が中国に対する不安から,ますますアメリカの関与を強く求めていることを指摘します.「アジアの指導者たちは,太平洋を中国の池にするつもりはないのだ.」

YaleGlobal, 13 February 2007

America’s China Worries ? Part III

Bertil Lintner

CSM February 14, 2007

Major casting changes forthcoming for the world stage

By John Hughes

NYT February 15, 2007

Help Not Wanted

By MOISES NAIM

(コメント) MOISES NAIMは,私たちが中国と決して勝負できない事情を考えます.それは製品市場の話ではありません.「援助」です.しかも,たとえばナイジェリアで.

NAIMはそれを“rogue aid”と呼びます.中国による道路建設,鉄道網の整備や再建,発電所建設,などが「援助」として,以前は豊かな諸国が行っていた地域や分野で殺到しています.その理由は,豊富な外貨準備,資源への渇望,国際政治における影響力拡大,です.

それは中国に限ったことではないでしょう.政府援助というものは,しばしば,それ以外の理由で行われないのです.それゆえ,貧しい地域の住民が長期的に生活を改善できるかどうか,など,気にしません.


Feb. 12 (Bloomberg)

Let's Tap Japan's Baby `Machines,' Immigrants

William Pesek

FT February 14 2007

Why the yen borrowing game could end in players taking a tumble

By Peter Garnham and Gillian Tett

FT February 14 2007

Japanese economy

FT February 14 2007

The world should stop worrying about the yen

By Guy de Jonquieres

(コメント) William Pesekは,以前と同じように,「産む機械」発言に引っ掛けて,女性の地位向上と移民への開放を求めています.

日本に関して話題になったのは,金融政策と円安,キャリー・トレードの世界的な影響です.なぜなら,ハンガリーやラトビアでも,スイス・フランや円建の債券による資金調達によって,庶民が住宅を建設しているからです.ただし,彼らは為替リスクの恐怖を知りません.ヘッジ・ファンドや国家でも,為替リスクによって倒されます.

それが上手く行けば行くほど,その逆転が金融システムを破壊する心配も強まるのです.それは債務者を破綻させるだけでなく,資本が還流する日本でも円高を進めて景気を悪化させます.

他方,Guy de Jonquieresは,円安を非難する欧米の政治家たちは黙って,日本の市場が回復するのを支持せよ,と主張します.日本政府が為替レートを市場によって決めたい,というのであれば,反対する理由はない.むしろ国内消費を妨げている社会保障の削減や正規雇用の不足に,政府が積極的に取り組むことだ,と.

Japan’s strong growth FT February 15 2007

MARTIN FACKLER The ‘Toyota Way’ Is Translated for a New Generation of Foreign Managers NYT February 16, 2007

MARTIN FACKLER Japan Expected to Hold Rates Steady Despite Strong Growth NYT February 16, 2007


Better living through job help BG February 12, 2007

Minimum Wage, Minimum Tax Cuts NYT February 15, 2007

(コメント) 最低賃金あるいは生活賃金闘争を支持するべきか? あるいは雇用支援や,低所得者への税制を改めるべきか?


FT February 12 2007

Why hard assets are not easy to find

By Raghuram Rajan

(コメント) インフレが起きることもなく,世界的に低金利が続いています.流動性が過剰に供給されているのか? むしろ,投資できる資産が不足しているのではないか?

新興市場では所得が増え,貯蓄も増えています.他方,裕福な諸国の企業は収益を上げて投資を賄い,十分に資金調達を増やしません.世界の主要金融当局は流動性を抑制する政策協調に,まだ,習熟していないようです.


Vladimir Putin Unilateral force has nothing to do with global democracy The Guardian Tuesday February 13, 2007

Putin's NATO beef LAT February 13, 2007

Max Boot Putin: the louse that roared LAT February 14, 2007

THOMAS L. FRIEDMAN Putin Pushes Back NYT February 14, 2007

David Ignatius Putin's Moment To Seize WP Wednesday, February 14, 2007

(コメント) プーチンによるアメリカ一極集中批判,NATO拡大警戒論,です.


NYT February 13, 2007

Patenting Life

By MICHAEL CRICHTON

(コメント) 人間の遺伝子に特許が認められ,ついには,自分の体に特許使用料を支払う羽目になるのでしょうか? お金がないと遺伝子治療を拒まれ,赤ん坊も親の予算しだいで出生の条件が差別化される.スポーツ選手には遺伝子の値札が付き,ホームレスならぬ,ボディーレスになって貧困層が町をさ迷い歩く・・・というのでは,SFホラー映画も顔負けですね.

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The Economist, February 3rd 2007

The state of Britain: You’ve never had it so good

African science: Amaizing grace

Sudan and China: Mr Hu’s mission to Khartoum

Religion in China: When opium can be benign

Tibet: Still Tibetan after all these years

(コメント) グローバリゼーションにイギリスほど成功している国は無いのに,イギリス人であることに満足できず,分割したいと望むのはなぜか? 他方,ヨーロッパであれ,アメリカであれ,アジアであれ,かつて疫病が蔓延し,戦乱が頻発して,貧困と絶望に沈んでいた時代があった.ようやくアフリカにも科学的な知識が適用され,変化が訪れました.何が起きつつあるのか?

中国についての三つの記事も面白いです.アフリカに関与する中国の姿勢,その意味は何か? これまで破壊にいそしんできた宗教を復興させる中国政府の意図は何か? そして,チベットを軍事的に制圧しても,鉄道を敷設して,経済的繁栄をもたらし,移民を送り込んでも,彼らの精神を支配したわけではない?

(なお,イギリスについての特集記事と,インドのバブルを懸念するレポートがあります.時間が無くて飛ばし読みですが,期待したほどの内容ではなかったので,言及しません.)